説明

半導体発光素子の製造方法及び半導体発光素子用ウェーハ

【課題】成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷を抑制した半導体発光素子の製造方法及び半導体発光素子用ウェーハを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、凹凸が設けられた主面を有する第1基板の主面上に、発光層を含む窒化物半導体層を形成する工程と、窒化物半導体層と第2基板とを接合する工程と、第1基板を介して窒化物半導体層に光を照射して第1基板を窒化物半導体層から分離する工程と、を含む半導体発光素子の製造方法が提供される。窒化物半導体層を形成する工程は、凹凸の凹部の内壁面上に窒化物半導体層の少なくとも一部と同じ材料を含む薄膜を形成しつつ、凹部の内側の空間内に空洞を残すことを含む。分離する工程は、薄膜に光の少なくとも一部を吸収させて、窒化物半導体層のうちで凹部に対向する部分に照射される光の強度を、窒化物半導体層のうちで凹凸の凸部に対向する部分に照射される光の強度よりも低くすることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子の製造方法及び半導体発光素子用ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サファイアやSiCなどの基板上に窒化物半導体層を結晶成長することで、レーザダイオード(LD:Laser Diode)や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の半導体発光素子が作製される。
【0003】
半導体発光素子において、高い発光効率と、高い信頼性と、を得るために、放熱性を向上することが望まれる。成長させた窒化物半導体層を、成長用基板よりも放熱性の高い基板に接合し、成長用基板を剥離する構成がある。この剥離工程において、窒化物半導体層の割れや剥離が生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−214500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷を抑制した半導体発光素子の製造方法及び半導体発光素子用ウェーハを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、凹凸が設けられた主面を有する第1基板の前記主面の上に、発光層を含む窒化物半導体層を形成する工程と、前記窒化物半導体層と第2基板とを接合する工程と、前記第1基板を介して前記窒化物半導体層に光を照射して前記第1基板を前記窒化物半導体層から分離する工程と、を含む半導体発光素子の製造方法が提供される。前記窒化物半導体層を形成する工程は、前記凹凸の凹部の内壁面上に前記窒化物半導体層の少なくとも一部と同じ材料を含む薄膜を形成しつつ、前記凹部の内側の空間内に空洞を残すことを含む。前記分離する工程は、前記薄膜に前記光の少なくとも一部を吸収させて、前記窒化物半導体層のうちで前記凹部に対向する部分に照射される前記光の強度を、前記窒化物半導体層のうちで前記凹凸の凸部に対向する部分に照射される前記光の強度よりも低くすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の1つの工程を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法によって製造される半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す電子顕微鏡写真像である。
【図9】図9(a)〜図9(d)は、参考例の半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、参考例の半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図11】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法によって製造される別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法で用いられる部材を示す模式図である。
【図13】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法で用いられる部材を示す模式図である。
【図14】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法で用いられる部材を示す模式図である。
【図15】第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図16】第3の実施形態に係る半導体発光素子用ウェーハを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の1つの工程を例示する模式図である。
すなわち、図1(a)は、図1(b)のB1−B2線断面図であり、図1(b)は、図1(a)のA1−A2線断面図である。
図1(a)及び図1(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、凹凸50uが設けられた主面50aを有する第1基板50(成長用基板)が用いられる。そして、第1基板50の主面50aの上には、窒化物半導体層10sが設けられている。窒化物半導体層10sは、後述する発光層(図示しない)を含む。窒化物半導体層10sのうちの第1基板50に対向する部分には、例えばGaN層が用いられる。
【0010】
窒化物半導体層10sと第2基板70とが接合されている。この例では、窒化物半導体層10sと第2基板70とは、中間層75を介して接合されている。このように、窒化物半導体層10sと第2基板70とが、別の層を介して接合される場合も、窒化物半導体層10sと第2基板70とが接合されているものとする。中間層75の具体例については、後述する。
【0011】
凹凸50uは、凹部50dと凸部50pとを有する。図1(b)に表したように、この例では、凸部50pが連続的であり、複数の凹部50dが設けられている。このとき、主面50aに対して垂直な軸に沿ってみたときに、凸部50pは、複数の凹部50dのそれぞれを取り囲む。
【0012】
ただし、後述するように、凹部50dが連続的であり、複数の凸部50pが設けられても良い。
【0013】
図1(b)に示した例では、凹部50dの平面形状は円形である。実施形態はこれに限らず、凹部50d(及び凸部50p)の平面形状は任意である。
【0014】
凹凸50uの凹部50dの内壁面上には、薄膜65が設けられている。薄膜65は、窒化物半導体層10sの少なくとも一部と同じ材料を含む。この例では、薄膜65は、GaNを含む。そして、凹部50dの内側の空間内には空洞50cが存在している。
【0015】
本製造方法においては、第1基板50を介して窒化物半導体層10sに光Lrを照射して、第1基板50と窒化物半導体層10sとを分離する。このプロセスを、レーザリフトオフプロセスと呼ぶ場合がある。
【0016】
光Lrの少なくとも一部は、基板50を透過し、窒化物半導体層10sに吸収される。光Lrには、例えば、波長が248ナノメートル(nm)のKrFレーザが用いられる。光Lrは、窒化物半導体層10sの第1基板50に対向している部分(GaN層)に吸収され、その部分が分解する。これにより、第1基板50が窒化物半導体層10sから剥離される。
【0017】
この工程において、光Lrの少なくとも一部は薄膜65で吸収される。これにより、バッファ層60のうちで凹部50dに対向する部分(第1部分61)に照射される光の強度は、バッファ層60のうちで凸部50pに対向する部分(第2部分62)に照射される光の強度よりも低くなる。
【0018】
第2部分62は、凸部50pに接する。第2部分62には、剥離のために必要な強度の光が照射される。光Lrの照射により、第2部分62のGaN層は分解する。一方、照射される光の強度が低い第1部分61のGaN層が分解されなくても、第1部分61と第1基板50とは互いに離れている。このため、第2部分62のGaN層が分解することで、第1基板50が窒化物半導体層10sから剥離される。
【0019】
本実施形態においては、窒化物半導体層10sのうちの第1部分61に照射される光の強度が低い。このため、窒化物半導体層10sの全体としての損傷が抑制される。
本実施形態によれば、成長用基板の剥離の際の半導体層(窒化物半導体層10s)の損傷を抑制した半導体発光素子が得られる。
【0020】
ここで、図1(a)及び図1(b)に表したように、主面50aに対して垂直な軸をZ軸とする。Z軸に対して垂直な1つの軸をX軸とする。Z軸とX軸とに対して垂直な軸をY軸とする。
【0021】
以下、本実施形態に係る本実施形態に係る製造方法によって製造される半導体発光素子の構成の1つの例について説明する。
【0022】
図2は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法によって製造される半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図2に表したように、本実施形態に係る製造方法によって製造される半導体発光素子110は、第1電極(例えばn側電極10e)と、第2電極(例えば第2基板電極70e)と、窒化物半導体層10sと、を含む。窒化物半導体層10sは、第1電極と第2電極との間に設けられる。
【0023】
第1電極(例えばn側電極10e)は、例えば、第1導電層11と、第2導電層12と、第3導電層13と、を含む。第2導電層12は、第1導電層11と窒化物半導体層10sとの間に設けられる。第3導電層13は、第2導電層12と窒化物半導体層10sとの間に設けられる。
【0024】
第1導電層11には、例えばAuが用いられる。第2導電層12には、例えば、Alが用いられる。第3導電層13には、例えば、Tiが用いられる。実施形態はこれに限らず、第1導電層11、第2導電層12及び第3導電層13に用いられる材料は任意である。さらに、第1電極は、4層または、それ以上の積層構造を有していても良い。例えば、第1電極は、Ti層/Al層/Ni層/Au層の4層構造を有していても良い。また、第1電極は、Ti層/Al層/Ta層/Pt層/Auの5層構造を有していても良い。
【0025】
窒化物半導体層10sは、第1半導体層10と、第2半導体層20と、発光層30と、を含む。第1電極と第2半導体層20との間に発光層30が配置される。第1電極と発光層30との間に第1半導体層10が配置される。
【0026】
第1半導体層10は、窒化物半導体を含み、第1導電形である。第2半導体層20は、窒化物半導体を含み、第2導電形である。第2導電形は、第1導電形とは異なる。例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。実施形態はこれに限らず、第1導電形がp形で、第2導電形がn形でも良い。以下では、第1導電形がn形で、第2導電形がp形である場合として説明する。
【0027】
第1半導体層10には、例えば、GaNが用いられる。第1半導体層10には、例えば、シリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)等の不純物が添加される。第1半導体層10の厚さは、例えば約4マイクロメートル(μm)である。
【0028】
第1半導体層10は、例えば、複数のn形層を含むことができる。第1半導体層10は、例えば、第1n形層10aと、第2n形層10bと、を含む。第2n形層10bは、第1n形層10aと発光層30との間に設けられる。第1n形層10a及び第2n形層10bには、例えばGaNが用いられる。第1n形層10aは、例えば、コンタクト層として機能する。第1n形層10aは、第1電極(例えばn側電極10e)とオーミック接触する。第1n形層10aにおける不純物濃度は、第2n形層10bにおける不純物濃度よりも高い。
【0029】
発光層30は、例えば、複数の障壁層(図示しない)と、複数の障壁層どうしの間に設けられた井戸層(図示しない)と、を含む。発光層30は、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造を有することができる。このとき、発光層30は、2つの障壁層と、その障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む。例えば、発光層30は、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造を有することができる。このとき、発光層30は、3つ以上の障壁層と、障壁層どうしのそれぞれの間に設けられた井戸層と、を含む。
【0030】
井戸層は、例えば、Inx1Ga1−x1N(0.05≦x1≦0.5)を含む。障壁層は、例えばGaNを含む、障壁層がInを含む場合、障壁層のIII族元素中におけるInの組成比は、井戸層のIII族元素中におけるInの組成比(上記のx1)よりも低い。これにより、井戸層におけるバンドギャップエネルギーは、障壁層におけるバンドギャップエネルギーよりも小さくなる。井戸層の厚さは、例えば1nm以上5nm以下である、障壁の厚さは、例えば3nm以上15nm以下である。
【0031】
発光層30から放出される光のピーク波長は、例えば400nm以上650nm以下である。
【0032】
なお、第1半導体層10と発光層30との間に、多層構造体(例えば超格子層)が設けられても良い。多層構造体は、Z軸方向に交互に積層された複数の第1膜(例えばGaN膜)と複数の第2膜(例えばInGaN膜)とを含む。
【0033】
第2半導体層20は、例えばGaNを含む。第2半導体層20には、例えば、マグネシウム(Mg)及び亜鉛(Zn)等の不純物が添加される。第2半導体層20の厚さは、例えば約2μmである。
【0034】
第2半導体層20は、複数のp形層を含むことができる。第2半導体層20は、例えば、第1p形層20aと、第2p形層20bと、第3p形層20cと、を含む。第2p形層20bは、第1p形層20aと発光層30との間に設けられる。第3p形層20cは、第2p形層20bと発光層30との間に設けられる。
【0035】
第3p形層20cには、例えばAlGaNが用いられる。第3p形層20cは、例えば、電子オーバーフロー抑制層として機能する。第1p形層20a及び第2p形層20bには、例えば、GaNが用いられる。第1p形層20aは、コンタクト層として機能する。第1p形層20aにおける不純物濃度は、第2p形層20bにおける不純物濃度よりも高い。不純物としてMgを用いた場合、第1p形層20aにおける不純物濃度は、例えば、1×1020cm−3以上9×1021cm−3以下である。
【0036】
この例では、第1半導体層10の発光層30とは反対側の表面に凹凸(表面凹凸10u)が設けられている。表面凹凸10uの深さは、例えば、0.3μm以上5μm以下である。表面凹凸10uの頂部どうしの、Z軸に対して垂直な軸に沿う間隔は、例えば、0.5μm以上10μm以下である。第1半導体層10の表面凹凸10uが設けられている面が、光取り出し面となる。
【0037】
この例では、表面凹凸10uは、第1半導体層10の表面のうちの、n側電極10eに覆われていない部分に設けられている。ただし、実施形態はこれに限らない。表面凹凸10uが設けられている領域の少なくとも一部がn側電極10eに覆われても良い。表面凹凸10uは、第1半導体層10の表面の全面に設けられていても良い。表面凹凸10uは、例えば、粗面化処理が行われた面である。表面凹凸10uを設けることで、半導体発光素子110の光取り出し効率が高まる。
【0038】
第1電極(例えば、n側電極10e)の厚さは、表面凹凸10uの深さの2倍以上であることが望ましい。これにより、第1電極と第1半導体層10との電気的な接続が、安定して得られる。
【0039】
半導体発光素子110は、第2基板70と、第2半導体層側電極(例えばp側電極20e)と、バリアメタル膜(例えば第1バリアメタル層15)と、をさらに含むことができる。第2電極(例えば第2基板電極70e)と窒化物半導体層10sとの間に第2半導体層側電極が配置される。第2電極(例えば第2基板電極70e)と第2半導体層側電極との間にバリアメタル膜が配置される。第2電極(例えば第2基板電極70e)とバリアメタル膜との間に第2基板70が配置される。
【0040】
p側電極20eは、第2半導体層20とオーミック接触している。p側電極20eは、例えば、オーミックコンタクト電極と高反射電極との機能を有している。発光層30から放出された光の少なくとも一部は、p側電極20eで反射し、第1半導体層10の側の光取り出し面から外部に出射する。
【0041】
p側電極20eには、例えば、Niが用いられる。これにより、第2半導体層20との接触抵抗が低くできる。p側電極20eには、例えば、Ag及びAlの少なくともいずれかを用いることができる。これにより、高い反射率が得られる。
【0042】
p側電極20eとして、Ni層とAg層との積層膜を用い、約400℃でシンター(熱)処理することで、オーミックコンタクトと高い反射率と、が得られることを、発明者は実験的に見出している。この場合、Ni層の厚さは、薄く(例えば5nm以下)設定される。Agの厚さは、Ni層よりも厚く、例えば約200nmに設定される。
【0043】
p側電極20eは、Pt、Ru、Os、Rh、Ir及びPdの少なくともいずれかを含むことができる。すなわち、p側電極20eには、白金族を用いることができる。第2半導体層20における不純物濃度及び熱処理条件などによっては、Ni及びAg以外の金属でもオーミックコンタクトが得られる。
【0044】
本具体例では、p側電極20eの幅(Z軸に垂直な軸に沿った長さ)は、第2半導体層20の幅よりも広い。実施形態はこれに限らず、p側電極20eの幅と、第2半導体層20の幅と、の相対的な関係は任意である。
【0045】
第1バリアメタル層15は、例えば、第1層15aと、第2層15bと、第3層15cと、を含むことができる。第2層15bは、第1層15aとp側電極20eとの間に設けられる。第3層15cは、第2層15bとp側電極20eとの間に設けられる。第1層には、例えばAu層が設けられる。第2層には、例えばPt層が用いられる。第3層には例えばNi層が用いられる。これらの層は、例えば蒸着により形成される。または、スパッタにより形成されても良い。
【0046】
第1バリアメタル層15は、例えば、p側電極20eと、後述する接合層73と、の間の相互拡散を抑制する機能を有する。
【0047】
第3層15cには、例えば、p側電極20eとの間の付着力が高い金属が用いられる。第3層15cには、例えば、Ti及びNiの少なくともいずれかが用いられることが好ましい。第2層15bには、p側電極20eと、接合層73と、の間の相互拡散を抑制する機能が高い材料が用いられる。第2層15bには、例えば、Ptが用いられることが好ましい。第1層15aには、接合層73と混和しやすい金属が用いられる。第1層15aには、例えば、Au及びAuSnの少なくともいずれかが用いられることが好ましい。
【0048】
このような構成により、p側電極20eにおける高い反射率と、p側電極20eと接合層73との高い接合力と、を得ることができる。
【0049】
第2基板70は、支持基板71と、接合層73と、第2バリアメタル層72と、を含む。半導体発光素子110において、接合層73は、支持基板71と窒化物半導体層10sとの間に配置される。第2バリアメタル層72は、支持基板71と接合層73との間に設けられる。
【0050】
支持基板71には、導電性の基板が用いられる。支持基板71の熱伝導率は、第1基板50の熱伝導率よりも高い。支持基板71には、例えば、Ge、Si、Cu及びCuWなどが用いられる。これにより、電気伝導性と高い放熱性とを得ることができる。
【0051】
第1基板50と支持基板71と間の熱膨張係数差により、反りが大きくなる場合がある。反りが大きいと、レーザリフトオフプロセス時に支持基板71が割れる場合がある。このため、支持基板71として、金属基板よりも、Si基板またはGe基板を用いることが好ましい。さらに、個片化(チップ化)工程のおけるプロセス親和性の観点で、支持基板71としてSi基板を用いることがより好ましい。
【0052】
第2バリアメタル層72は、例えば、第4層72aと、第5層72bと、第6層72cと、を含むことができる。第5層72bは、第4層72aと支持基板71との間に設けられる。第6層72cは、第5層72bと支持基板71との間に設けられる。第4層72aには、例えばAu層が用いられる。第5層72bには、例えばPt層が用いられる。第6層72cには例えばNi層が用いられる。これらの層は、例えば蒸着により形成される。または、スパッタにより形成されても良い。
【0053】
第4層72aは、接合層73との混和の機能を有することができる。第5層72bは、例えば、支持基板71と、接合層73と、の間の相互拡散を抑制する機能を有することができる。第6層72cは、例えば、支持基板71と第5層72bとの間の付着力を高める機能を有することができる。
【0054】
接合層73は、第1バリアメタル層15と第2バリアメタル層72との間に配置されている。接合層73には、例えばAuSn層が用いられる。p側電極20e、第1バリアメタル層15、接合層73及び第2バリアメタル層72を介して、窒化物半導体層10sと、支持基板71と、が接合されている。
【0055】
第2基板電極70eは、第2基板70の窒化物半導体層10sとは反対側の面上に設けられる。すなわち、第2基板電極70eと窒化物半導体層10sとの間に第2基板70が配置される。第2基板電極70eには、例えば、Ti、Pt及びAuの少なくともいずれかを用いることができる。これにより、第2基板電極70eと第2基板70(具体的には、例えばSi基板である支持基板71)との間の抵抗を下げることができる。これにより、半導体発光素子110の動作電圧を下げることができる。
【0056】
第1電極(例えばn側電極10e)と、第2電極(例えば第2基板電極70e)と、の間に電圧を印加することで、第1半導体層10、第2半導体層20、p側電極20e、第1バリアメタル層15、接合層73、第2バリアメタル層72及び支持基板71を介して、発光層30に電流が流れ、発光層30から光が放出される。
【0057】
この例では、半導体発光素子110は、保護層80をさらに含む。保護層80は、窒化物半導体層10sの側面、及び、上面の一部を覆う。
【0058】
保護層80には、例えば、SiO及びSiNなどの絶縁材料が用いられる。保護層80は、例えば、窒化物半導体層10sの側壁及び光取出し面を除く外周部分に設けられる。保護層80は、窒化物半導体層10sの側面を保護する。この例では、保護層80は、p側電極20eの上面の一部の上にも形成されている。保護層80を設けることで、製造工程において付着する異物などによる短絡を抑制することができる。
【0059】
この例では、半導体発光素子110は、透光層85をさらに含む。透光層85は、例えば、第1半導体層10の表面凹凸10uの上に設けられる。透光層85の屈折率は、第1半導体層10の屈折率よりも低い。透光層85の屈折率は、例えば1.6以上2.5以下である。透光層85の厚さは、例えば50nm以上200nm以下である。発光層30から放出される光に対する透光層85の透過率は、例えば、90%以上である。透光層85は、例えば、屈折率調整層として機能する。これにより光取り出し効率が向上する。
【0060】
以下、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の1つの例について説明する。以下では、1枚の第1基板50から複数の半導体発光素子110を作製する場合の例について説明する。
【0061】
図3は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図4(a)〜図4(d)、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、及び、図7(a)〜図7(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
【0062】
図3に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法は、第1基板50の主面50aの上に、窒化物半導体層10sを形成する工程(ステップS110)を含む。第1基板50は、凹凸50uが設けられた主面50aを有する。窒化物半導体層10sは、発光層30を含む。
【0063】
すなわち、図4(a)に表したように、第1基板50の主面50aには、凹凸50uが設けられている。第1基板50には、例えばサファイアまたはSiCが用いられる。
【0064】
第1基板50の主面50a上に、窒化物半導体層10sの結晶が成長される。この成長においては、例えば、有機金属気相成長(MOCVD)法などが用いられる。ただし、実施形態はこれに限らず、窒化物半導体層10sの形成方法は任意である。
【0065】
図4(b)に表したように、主面50aの上に、窒化物半導体層10sの一部であるバッファ層60を形成する。バッファ層60は、窒化物半導体を含む。バッファ層60には、例えばGaNが用いられる。バッファ層60の厚さは、例えば0.5μm以上5μm以下である。
【0066】
窒化物半導体層10s(例えばバッファ層60)を形成する工程は、凹凸50uの凹部50dの内壁面上に薄膜65を形成しつつ、凹部50dの内側の空間内に空洞50cを残すこと含む。薄膜65は、窒化物半導体層10s(例えばバッファ層60)の少なくとも一部と同じ材料を含む。バッファ層60のうちの凹部50dに対向する部分が第1部分61となる。バッファ層60のうちの凸部50pに対向する部分が第2部分62となる。第2部分62は、凸部50pに接する。
【0067】
図4(c)に表したように、バッファ層60の上に、第1半導体層10を形成し、第1半導体層10の上に発光層30を形成し、発光層30の上に第2半導体層20を形成する。窒化物半導体層10sは、バッファ層60、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を含む。
【0068】
すなわち、図3に表したように、窒化物半導体層10sの形成(ステップS110)は、第1基板50の上にバッファ層60を形成すること(ステップS111)と、バッファ層60の上に第1半導体層10を形成し、第1半導体層10の上に発光層30を形成し、発光層30の上に第2半導体層20を形成すること(ステップS112)と、を含む。
【0069】
具体的には、第1半導体層10として、例えば、第1n形層10a及び第2n形層10bを形成する。第1半導体層10の成長温度は、例えば約1000℃以上約1100℃以下である。
【0070】
引き続き、発光層30となる障壁層及び井戸層を形成する。発光層30の成長温度は、例えば約700℃以上約900℃以下である。
【0071】
発光層30の上に第2半導体層20となる、例えば、第3p形層20c、第2p形層20b及び第1p形層20aを形成する。第2半導体層20の成長温度は、例えば約1000℃以上約1100℃以下である。
【0072】
図3に表したように、第2半導体層20の少なくとも一部の上に、第2半導体層側電極(例えばp側電極20e)を形成する(ステップS115)。
【0073】
この例では、図4(d)に表したように、第2半導体層20の一部の上に、p側電極20eを形成する。例えば、p側電極20eとして、第2半導体層20の上にNi層を形成し、Ni層の上にAg層を形成する。Ni層及びAg層は、例えば蒸着により形成される。
【0074】
図3に表したように、第2半導体層側電極の上に、バリアメタル膜(例えば第1バリアメタル層15)を形成する(ステップS116)。
【0075】
具体的には、図5(a)に表したように、p側電極20eの上、及び、第2半導体層20の上に、第1バリアメタル層15を形成する。例えば、第1バリアメタル層15として、Ti層(第3層15c)を形成し、Ti層の上にPt層(第2層15b)を形成し、Pt層の上にAu層(第1層15a)を形成する。
【0076】
図3に表したように、本製造方法は、窒化物半導体層10sと第2基板70とを接合する工程(ステップS120)をさらに含むことができる。
【0077】
図5(b)に表したように、本具体例では、第2基板70は、支持基板71と、接合層73と、第2バリアメタル層72と、含む。
【0078】
図5(b)に表したように、このような第2基板70の接合層73を、第1バリアメタル層15と接触させ、第1基板50と第2基板70とに荷重を加えながら加熱する。荷重は、例えば500ニュートン(N)以上1000N以下である。加熱の温度は、例えば280℃以上350℃以下である。これにより、窒化物半導体層10sと第2基板70とが接合される。
【0079】
実施形態において、接合層73の厚さは、例えば、2μm以上であることが好ましい。接合層73の厚さが2μm未満の場合には、接合条件によっては、十分な接合強度が得られない場合がある。接合強度が十分でないと、この工程以降での不良、または、半導体発光素子の不良が発生する場合がある。
【0080】
なお、この例においては、図1(a)に例示した中間層75に、p側電極20e及び第1バリアメタル層15が含まれる。また、第2基板70が支持基板71を含み、第2バリアメタル層72及び接合層73が第2基板70とは別体であるとする場合には、中間層75に、さらに、第2バリアメタル層72及び接合層73が含まれる。
【0081】
図3に表したように、本製造方法は、第1基板50を介して窒化物半導体層10sに光Lrを照射して、第1基板50と窒化物半導体層10sとを分離する工程(ステップS130)をさらに含む。
【0082】
すなわち、図5(c)に表したように、第1基板50の、窒化物半導体層10sとは反対側の面から光Lrを照射する。これにより、第1基板50と窒化物半導体層10sとが分離される。
【0083】
この分離する工程は、薄膜65に光Lrの少なくとも一部を吸収させて、窒化物半導体層10sのうちで凹部50dに対向する部分(第1部分61)に照射される光の強度を、窒化物半導体層10sのうちで凸部50pに対向する部分(第2部分62)に照射される光の強度よりも低くすることを含む。
【0084】
光Lrの照射には、例えばKrFのレーザが用いられる。光Lrの照射パワー密度は、例えば、0.65ジュール/平方センチメートル(J/cm)以上0.80J/cm以下である。ただし、光Lrの適切な照射パワー密度は、窒化物半導体層10sの面積、レーザビームの面内強度分布、及び、レーザビームの面積などに応じて、適正に調整される。
【0085】
図6(a)に表したように、第1基板50が窒化物半導体層10sから分離される。本実施形態においては、窒化物半導体層10sのうちの第1部分61に照射される光の強度が低くされる。これにより、窒化物半導体層10sの損傷が抑制される。すなわち、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷が抑制できる。
【0086】
この後、半導体発光素子の作製のための、例えば以下の工程を実施する。
例えば、図6(b)に表したように、バッファ層60を研磨して、第1半導体層10を露出させる。
【0087】
すなわち、図3に表したように、本実施形態に係る製造方法は、上記の分離する工程(ステップS130)の後に、窒化物半導体層10sの厚さを減少させる工程(ステップS140)をさらに含むことができる。これにより、窒化物半導体層10sは、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20との積層体となる。この研磨工程を実施することで、加工体の表面の平坦性が向上する。
【0088】
この後、図3及び図6(c)に表したように、窒化物半導体層10sを、半導体発光素子ごとの寸法に分断する(ステップS150)。図6(c)の例では、2つの半導体発光素子に対応する部分が例示されている。なお、図6(c)は、図6(b)に図示した状態から、図中の上下を反転させて描かれている。
【0089】
さらに、第1半導体層10の表面(第1半導体層10の発光層30とは反対側の面)に表面凹凸10uを形成する。表面凹凸10uは、例えば、強アルカリ水溶液による処理により形成される。強アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの少なくともいずれかを含む水溶液が用いられる。この処理の温度は、例えば、60℃以上80℃以下である。
【0090】
図7(a)に表したように、窒化物半導体層10sの側面、及び、上面の一部を覆う保護層80を形成する。
【0091】
図7(b)に表したように、第1半導体層10の表面凹凸10uの上に透光層85を形成する。
【0092】
図7(c)に表したように、第1半導体層10のうちの透光層85が設けられていない領域の上にn側電極10eを形成する。そして、第2基板70の窒化物半導体層10sとは反対側の面に第2基板電極70eを形成する。
【0093】
この後、半導体発光素子のそれぞれの間の領域の、第2基板70(及び第1バリアメタル層15)を分断する。この個片化(チップ化)工程においては、レーザスクライブ及びレーザダイサなどの方法を用いることができる。
これにより、半導体発光素子110が作製される。
【0094】
図8は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する電子顕微鏡写真像である。
すなわち、同図は、半導体発光素子110の製造工程の途中における第1基板50及び窒化物半導体層10sの断面の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)写真像である。
【0095】
この例では、第1基板50の主面50a上に、バッファ層60、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を順次形成した後の状態(例えば図4(c)の状態)の断面TEM写真が示されている。
【0096】
図8から分かるように、第1基板50の凹凸50uの凹部50dの内壁面上に薄膜65が形成されている。この薄膜65は、窒化物半導体層10sの少なくとも一部(具体的にはバッファ層60)と同じ材料を含む。そして、凹部50dの内側の空間内に空洞50cが残されている。
【0097】
窒化物半導体層10sのうちの、第1基板50の凹部50dに対向する部分(第1部分61)の下面は、平坦であり、主面50aに対して平行である。このように、実施形態においては、窒化物半導体層10sを形成する工程(ステップS110)は、窒化物半導体層10sのうちの、凹部50dに対向する部分(第1部分61)の下面の少なくとも一部を、基板50の主面50aに対して平行にすることを含む。
【0098】
このように、凹部50dに対向する部分(第1部分61)の下面が、主面50aに対して平行にすることで、第1基板50を分離した後の窒化物半導体層10sの表面の平坦性が向上する。これにより、窒化物半導体層10sの平坦化(例えば研磨工程など)が容易になる。
【0099】
第1部分61の下面のZ軸に沿う位置は、第2部分62の下面のZ軸に沿う位置と、実質的に同じである。すなわち、窒化物半導体層10sを形成する工程(ステップS110)は、窒化物半導体層10sのうちの、凹部50dに対向する部分(第1部分61)の下面の、Z軸(主面50aに対して垂直な軸)に沿う位置を、窒化物半導体層10sのうちの、凸部50pに対向する部分(第2部分62)の下面の、Z軸に沿う位置と実質的に同じにする。
【0100】
このように、第1基板50からみた時の、第1部分61の高さと第2部分62の高さとが同じになることで、例えば、窒化物半導体層10sの表面の平坦性が向上し、研磨工程などが容易になる。
【0101】
本実施形態に係る製造方法によって製造された半導体発光素子110においては、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷が抑制されている。これにより、例えば、高い発光効率が得られ、また、信頼性が向上する。
【0102】
図9(a)〜図9(d)、及び、図10(a)〜図10(c)は、参考例の半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図9(a)に表したように、参考例の製造方法においても、主面50aに凹凸50uが設けられた第1基板50が用いられる。
【0103】
図9(b)に表したように、主面50aの上にバッファ層60を形成する。参考例においては、第1基板50の凹部50dの内部は、バッファ層60と同じ材料により埋め込まれる。このため、空洞50c(及び薄膜65)は実質的に形成されない。すなわち、バッファ層60のうちの、凸部50pに対向する第2部分62に加え、凹部50dに対向する第1部分61も、基板50に接している。
【0104】
この後、図9(c)、図9(d)、図10(a)及び図10(b)に表したように、第1半導体層10、発光層30、第2半導体層20、p側電極20e、第1バリアメタル層15を形成し、第2基板70と接合する。
【0105】
そして、図10(c)に表したように、第1基板50と窒化物半導体層10s(バッファ層60)とを分離するために光Lrを照射する。このとき、バッファ層60の第1部分61及び第2部分62が第1基板50に接しているため、第1基板50は、バッファ層60から剥がれ難い。このため、分離に必要な、光Lrの強度が高い。これにより、窒化物半導体層10sが損傷され易い。また、凹部50d内に薄膜65(及び空洞50c)が設けられないため、第1部分61に照射される光の強度が高い。すなわち、窒化物半導体層10sの第1部分61及び第2部分62の両方が損傷を受ける。
【0106】
この後、実施形態と同様の工程を経て、参考例の半導体発光素子が得られる。参考例の半導体発光素子においては、窒化物半導体層10sの損傷が大きいため、例えば、発光効率が低く、また、信頼性が低い。
【0107】
これに対して、本実施形態に係る製造方法によれば、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷が抑制される。これにより、例えば、発光効率が高く、また、信頼性が向上した半導体発光素子が得られる。
【0108】
なお、凹凸50uが設けられない基板の上に窒化物半導体層10sを形成する別の参考例においては、窒化物半導体層10sにおける転位密度が高い。これに対して、本実施形態に係る製造方法においては、凹凸50uを有する第1基板50の主面50a上に窒化物半導体層10sを形成することで、転位密度が低くなる。本実施形態によれば、高品質な結晶を成長させることができる。これにより、高い効率が得られる。
【0109】
図11は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法によって製造される別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図11に表したように、本実施形態に係る製造方法によって製造される別の半導体発光素子111においては、窒化物半導体層10sの側面が傾斜している。例えば、図6(c)に関して説明した工程において、窒化物半導体層10sが、テーパ加工される。このテーパ形状は、窒化物半導体層10sの加工条件を適切に制御することで得られる。
このように、本実施形態に係る製造方法は、種々の変形が可能である。
【0110】
図12(a)〜図12(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法で用いられる部材を例示する模式図である。
図12(a)及び図12(c)は、本実施形態に係る製造方法において用いられる別の第1基板50を例示する走査型電子顕微鏡写真像である。図12(c)は、この例の第1基板50の構成を例示する模式的断面図である。
【0111】
図12(a)及び図12(b)に表したように、本製造方法において用いられる第1基板50の主面50aには、連続的な凹部50dと、複数の凸部50pと、が設けられている。この場合は、主面50aに対して垂直な軸に沿ってみたときに、凹部50dは、複数の凸部50pのそれぞれを取り囲む。この例では、凸部50pの平面形状は円形である。ただし、実施形態において、平面形状は任意である。
【0112】
図12(c)に表したように、凸部50pの上面は第1幅W1を有する。隣り合う2つの凸部50pの、Z軸に対して垂直な軸に沿うピッチは、第2幅W2である。隣り合う2つの凸部50pの中心同士を結ぶ軸に沿った凹部50dの幅は第3幅W3である。第1基板50の主面50aに対して垂直な軸(Z軸)と、凸部50pの斜面と、の間の角度は、傾斜角θである。
【0113】
図12(a)に示した例では、第1幅W1は約1μmであり、第2幅W2は約5μmであり、第3幅W3は約1.8μmであり、傾斜角θは約30度である。
【0114】
図12(b)に示した例では、第1幅W1は約1.4μmであり、第2幅W2は約5μmであり、第3幅W3は約1.9μmであり、傾斜角θは約40度である。
【0115】
本実施形態において、窒化物半導体層10sのうちで凸部50pに対向する部分(第2部分62)の面積は、窒化物半導体層10sのうちで凹部50dに対向する部分(第1部分61)の面積よりも小さいことが好ましい。第2部分62は、第1基板50と接する部分であり、第1部分61は、第1基板50と離れている部分である。第2部分62の面積を第1部分61の面積よりも小さくすることで、第1基板50と窒化物半導体層10sとの分離が容易になる。これにより、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷がより抑制される。
【0116】
第1基板50が、複数の凹部50dを有する場合、及び、複数の凸部50pを有する場合において、凸部50pの頂部の、主面50aに対して平行な第2軸(例えばX軸またはY軸など)に沿う幅、及び、凹部50dの底部の第2軸に沿う幅の少なくともいずれかは、0.5μm以上3μm以下であることが好ましい。これにより、第1基板50の主面50a上に窒化物半導体層10s(例えばバッファ層60)を形成する際に、安定して空洞50cを形成することができる。
【0117】
第1基板50において、主面50aに対して垂直なZ軸と、凹凸50uの側面と、の間の平均の角度は20度以上であることが好ましい。これにより、薄膜65を形成しつつ、安定して空洞50cを形成することができる。ここで、凹凸50uの側面は、例えば凸部50pの側面である。または、凹凸50uの側面は、凹部50dの側面である。
【0118】
図13は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法で用いられる部材を例示する模式図である。
同図は、本実施形態に係る製造方法において用いられる別の第1基板50の構成を例示する模式的断面図である。
【0119】
この例では、凸部50pが連続的で、複数の凹部50dが設けられている。このとき、凹部50dの上側部分の側面と、Z軸(主面50aに対して垂直な軸)と、の間の角度(上部傾斜角θ1)は、凹部50dの下側部分の側面と、Z軸と、の間の角度(下部傾斜角θ2)よりも小さいことが望ましい。
【0120】
これより、第1基板50の主面50a上に窒化物半導体層10sを形成する際に、凹部50dの底面部分へ適切な量のガスの供給が供給され、これにより、薄膜65を形成しつつ、安定して空洞50cを形成することができる。
【0121】
図14は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法で用いられる部材を例示する模式図である。
同図は、本実施形態に係る製造方法において用いられる別の第1基板50の構成を例示する模式的断面図である。
【0122】
この例では、凹部50dが連続的で、複数の凸部50pが設けられている。このとき、凸部50pの上側部分の側面と、Z軸と、の間の角度(上部傾斜角θ3)は、凸部50pの下側部分の側面のZ軸と、の間の角度(下部傾斜角θ4)よりも小さいことが好ましい。
【0123】
これより、第1基板50の主面50a上に窒化物半導体層10sを形成する際に、凹部50dの底面部分へ適切な量のガスの供給が供給され、これにより、薄膜65を形成しつつ、安定して空洞50cを形成することができる。
【0124】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、窒化物半導体層10sが形成された第1基板50が用意される。
すなわち、第1基板50と、発光層30を含む窒化物半導体層10sと、薄膜65と、を含む加工体が用意される。加工体は、例えば、図4(b)に例示した、第1基板50と窒化物半導体層10sとを含む積層体、及び、薄膜65を含む。
【0125】
加工体において、第1基板50は、凹凸50uが設けられた主面50aを有する。窒化物半導体層10sは、主面50aの上に設けられる。窒化物半導体層10sは、例えば、上記のバッファ層60、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を含む。すなわち、加工体は、図4(c)に例示した構成を有していても良い。
【0126】
薄膜65は、凹凸50uの凹部50dの内壁面上に設けられる。薄膜65は、窒化物半導体層10sの少なくとも一部と同じ材料を含む。加工体は、凹部50dの内側の空間内に設けられた空洞50cを有する。
【0127】
例えば、図5(a)に例示したように、加工体は、p側電極20e及び第1バリアメタル層15をさらに含むことができる。
【0128】
図15は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図15に表したように、本実施形態に係る製造方法は、加工体の窒化物半導体層10sと第2基板70とを接合する工程(ステップS120)を含む。例えば、図10(b)に関して説明した処理が行われる。
【0129】
図15に表したように、本製造方法は、第1基板50を介して窒化物半導体層10sに光Lrを照射して第1基板50を窒化物半導体層10sから分離する工程(ステップS130)をさらに含む。すなわち、図10(c)に関して説明した処理が行われる。
【0130】
すなわち、分離する工程(ステップS130)は、薄膜65に光Lrの少なくとも一部を吸収させて、窒化物半導体層10sのうちで凹部50dに対向する部分(第1部分61)に照射される光の強度を、窒化物半導体層10sのうちで凹凸50uの凸部50pに対向する部分(第2部分62)に照射される光の強度よりも低くすることを含む。
【0131】
これにより、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷を抑制した半導体発光素子が得られる。
【0132】
なお、既に説明したように、本製造方法において、窒化物半導体層10sは、第1基板50と発光層30との間に設けられたバッファ層60と、バッファ層60と発光層30との間に設けられた第1半導体層10と、第2半導体層20と、を含むことができる。第1半導体層10と第2半導体層20との間に発光層30が配置される。
このように、実施形態に係る製造方法は、Thin Film type LEDの製造に応用できる。
【0133】
実施形態に係る製造方法においては、窒化物半導体層10sの損傷や剥離が抑制された状態で、凹凸50uを有する第1基板50と、窒化物半導体層10sと、を分離する。そして、窒化物半導体層10sの結晶品質は高い。これにより、高出力で低コストの半導体発光素子を提供することができる。
【0134】
(第3の実施形態)
本実施形態は、半導体発光素子用ウェーハに係る。
図16は、第3の実施形態に係る半導体発光素子用ウェーハの構成を例示する模式的断面図である。
図16に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子用ウェーハ210は、基体(第1基板50)と、窒化物半導体層10sと、薄膜65と、を含む。第1基板50は、凹凸50uが設けられた主面50aを有する。窒化物半導体層10sは、主面50aの上に設けられる。窒化物半導体層10sは、発光層30を含む。薄膜65は、凹凸50uの凹部50dの内壁面上に設けられ、窒化物半導体層10sの少なくとも一部と同じ材料を含む。窒化物半導体層10sは、凹部50dの内側の空間内に空洞50cを形成している。
【0135】
半導体発光素子用ウェーハ210を用いることで、第1基板50を介して窒化物半導体層10sに光Lrを照射して第1基板50を窒化物半導体層10sから分離する工程において、薄膜65に光Lrの少なくとも一部を吸収させて、窒化物半導体層10sのうちで凹部50dに対向する部分(第1部分61)に照射される光の強度を、窒化物半導体層10sのうちで凹凸50uの凸部50pに対向する部分(第2部分62)に照射される光の強度よりも低くすることができる。
【0136】
本実施形態に係る半導体発光素子用ウェーハ210によれば、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷を抑制した半導体発光素子が実現できる。
【0137】
図16に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子用ウェーハ210において、窒化物半導体層10sは、第1基板50と発光層30との間に設けられたバッファ層60と、バッファ層60と発光層30との間に設けられた第1半導体層10と、第2半導体層20と、をさらに含むことができる。第1半導体層10と第2半導体層20との間に発光層30が配置される。
【0138】
また、半導体発光素子用ウェーハ210は、例えば、図4(d)に関して説明した、第2半導体層側電極(p側電極20e)をさらに含むこともできる。
また、半導体発光素子用ウェーハ210は、例えば、図5(a)に関して説明した、バリアメタル膜(第1バリアメタル層15)をさらに含むこともできる。
また、半導体発光素子用ウェーハ210は、例えば、図5(b)に関して説明した、第2基板70をさらに含むこともできる。
【0139】
実施形態によれば、成長用基板の剥離の際の半導体層の損傷を抑制した半導体発光素子の製造方法及び半導体発光素子用ウェーハが提供できる。
【0140】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0141】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれは良い。
【0142】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれる窒化物半導体層、バッファ層、第1半導体層、第2半導体層、発光層、電極、バリアメタル層(膜)、接合層、保護層、透光層及び支持基板など、及び、半導体発光素子の製造方法において用いられる第1基板などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0143】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子の製造方法及び半導体発光素子用ウェーハを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子の製造方法及び半導体発光素子用ウェーハも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0144】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
10…第1半導体層、 10a…第1n形層、 10b…第2n形層、 10e…n側電極、 10s…窒化物半導体層、 10u…表面凹凸、 11…第1導電層、 12…第2導電層、 13…第3導電層、 15…第1バリアメタル層、 15a…第1層、 15b…第2層、 15c…第3層、 20…第2半導体層、 20a…第1p形層、 20b…第2p形層、 20c…第3p形層、 20e…p側電極、 30…発光層、 50…第1基板、 50a…主面、 50c…空洞、 50d…凹部、 50p…凸部、 50u…凹凸、 60…バッファ層、 61…第1部分、 62…第2部分、 65…薄膜、 70…第2基板、 70e…第2基板電極、 71…支持基板、 72…第2バリアメタル層、 72a…第4層、 72b…第5層、 72c…第6層、 73…接合層、 75…中間層、 80…保護層、 85…透光層、 110、111…半導体発光素子、 210…半導体発光素子用ウェーハ、 θ…傾斜角、 θ1、θ3…上部傾斜角、 θ2、θ4…下部傾斜角、 Lr…光、 W1〜W3…幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸が設けられた主面を有する第1基板の前記主面の上に、発光層を含む窒化物半導体層を形成する工程と、
前記窒化物半導体層と第2基板とを接合する工程と、
前記第1基板を介して前記窒化物半導体層に光を照射して前記第1基板を前記窒化物半導体層から分離する工程と、
を備え、
前記窒化物半導体層を形成する工程は、前記凹凸の凹部の内壁面上に前記窒化物半導体層の少なくとも一部と同じ材料を含む薄膜を形成しつつ、前記凹部の内側の空間内に空洞を残すことを含み、
前記分離する工程は、前記薄膜に前記光の少なくとも一部を吸収させて、前記窒化物半導体層のうちで前記凹部に対向する部分に照射される前記光の強度を、前記窒化物半導体層のうちで前記凹凸の凸部に対向する部分に照射される前記光の強度よりも低くすることを含むことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記窒化物半導体層を形成する工程は、前記窒化物半導体層のうちの前記凹部に対向する前記部分の下面の少なくとも一部を、前記主面に対して平行にすることを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記凸部は連続的で、前記凹部は複数設けられ、
前記凹部の上側部分の側面と、前記主面に対して垂直な第1軸と、の間の角度は、前記凹部の下側部分の側面と、前記第1軸と、の間の角度よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記主面に対して垂直な第1軸と、前記凹凸の側面と、の間の平均の角度は20度以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記凸部の頂部の、前記主面に対して平行な第2軸に沿う幅、及び、前記凹部の底部の、前記第2軸に沿う幅の少なくともいずれかは、0.5マイクロメートル以上3マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記分離する工程の後に、前記窒化物半導体層の厚さを減少させる工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記窒化物半導体層のうちで前記凸部に対向する前記部分の面積は、前記窒化物半導体層のうちで前記凹部に対向する前記部分の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記窒化物半導体層の形成は、
前記第1基板の上に、窒化物半導体を含むバッファ層を形成し、
前記バッファ層の上に、窒化物半導体を含み第1導電形の第1半導体層を形成し、
前記第1半導体層の上に、前記発光層を形成し、
前記発光層の上に、窒化物半導体を含み前記第1導電形とは異なる第2導電形の第2半導体層を形成することを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
凹凸が設けられた主面を有する第1基板と、
前記主面の上に設けられ、発光層を含む窒化物半導体層と、
前記凹凸の凹部の内壁面上に設けられ前記窒化物半導体層の少なくとも一部と同じ材料を含む薄膜と、
を含み、前記凹部の内側の空間内に設けられた空洞を有する加工体の前記窒化物半導体層と、第2基板と、を接合する工程と、
前記第1基板を介して前記窒化物半導体層に光を照射して前記第1基板を前記窒化物半導体層から分離する工程と、
を備え、
前記分離する工程は、前記薄膜に前記光の少なくとも一部を吸収させて、前記窒化物半導体層のうちで前記凹部に対向する部分に照射される前記光の強度を、前記窒化物半導体層のうちで前記凹凸の凸部に対向する部分に照射される前記光の強度よりも低くすることを含むことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
凹凸が設けられた主面を有する基体と、
前記主面の上に設けられ、発光層を含む窒化物半導体層と、
前記凹凸の凹部の内壁面上に設けられ前記窒化物半導体層の少なくとも一部と同じ材料を含む薄膜と、
を備え、
前記窒化物半導体層は、前記凹部の内側の空間内に空洞を形成していることを特徴とする半導体発光素子用ウェーハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図8】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−4768(P2013−4768A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134969(P2011−134969)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】