説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】酸化物半導体膜を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を作製することを課題の一とする。
【解決手段】ゲート絶縁層上に膜厚が2nm以上15nm以下の薄い第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の加熱処理を行って第1の酸化物半導体膜の表面から内部に向かって結晶成長させて第1の結晶層を形成し、第1の結晶層上に第1の酸化物半導体膜よりも厚い第2の酸化物半導体膜を形成し、第2の加熱処理を行って第1の結晶層からその上の第2の酸化物半導体膜表面に向かって結晶成長させて第2の結晶層を形成し、第2の結晶層を形成した後、さらに酸素ドープ処理を行って第2の結晶層に酸素原子を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化物半導体を用いる半導体装置及びその作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜(厚さ数十〜数百nm程度)を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を構成する技術が注目されている。薄膜トランジスタはICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に画像表示装置のスイッチング素子として開発が急がれている。金属酸化物は多様に存在しさまざまな用途に用いられている。
【0004】
金属酸化物の中には半導体特性を示すものがある。半導体特性を示す金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛などがあり、このような半導体特性を示す金属酸化物をチャネル形成領域とする薄膜トランジスタが既に知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体はデバイス作製工程において、電子供与体を形成する水素や水の混入などが生じると、その電気伝導度が変化する恐れがある。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、酸化物半導体膜を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を作製することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示する発明の一態様は、ゲート電極層を形成し、ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上に膜厚が2nm以上15nm以下の薄い第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の加熱処理を行って第1の酸化物半導体膜の表面から内部に向かって結晶成長させて第1の結晶層を形成し、第1の結晶層上に第1の酸化物半導体膜よりも厚い第2の酸化物半導体膜を形成し、第2の加熱処理を行って第1の結晶層からその上の第2の酸化物半導体膜表面に向かって結晶成長させて第2の結晶層を形成し、第1の結晶層及び第2の結晶層の積層上にソース電極層およびドレイン電極層を形成し、第2の結晶層を形成した後、さらに酸素ドープ処理を行って第2の結晶層に酸素原子を供給する工程を有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0009】
なお、上記作製方法において、第1の加熱処理または第2の加熱処理により、結晶化させることによって、高密度な酸化物半導体膜を得ることができる。そして、高密度な酸化物半導体膜に対して酸素ドープ処理を行って、酸化物半導体膜中に酸素原子を供給し、酸素原子が供給された酸化物半導体膜に熱処理を行う。
【0010】
また、開示する発明の別の一態様は、ゲート電極層を形成し、ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層にハロゲンドープ処理を行い、ゲート絶縁層上に膜厚が2nm以上15nm以下の薄い第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の加熱処理を行って第1の酸化物半導体膜の表面から内部に向かって結晶成長させて第1の結晶層を形成し、第1の結晶層上に第1の酸化物半導体膜よりも厚い第2の酸化物半導体膜を形成し、第2の加熱処理を行って第1の結晶層からその上の第2の酸化物半導体膜表面に向かって結晶成長させて第2の結晶層を形成し、第1の結晶層及び第2の結晶層の積層上にソース電極層およびドレイン電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0011】
なお、上記作製方法において、第1の加熱処理条件によっては、ゲート絶縁層の酸素が抜けてしまう恐れがあるため、第1の加熱処理よりも前に、質量の大きい塩素をゲート絶縁層に添加してゲート絶縁層における酸素の低減を防ぐことが有用である。さらに、第2の加熱処理後、酸素ドープ処理を行ってもよい。
【0012】
本明細書において、ハロゲン元素とは周期表において第17族元素(フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)など)のことを意味し、代表的には、フッ素、塩素を用いることができ、用いるハロゲン元素は一種でも複数種でもよい。
【0013】
ハロゲン元素を含むガス雰囲気下でのハロゲンドープ処理によってゲート絶縁層にハロゲン元素を添加する。なお、上記の「ハロゲンドープ」とは、塩素やフッ素に代表されるハロゲンをバルクに添加することを言う。例えば、ハロゲンとして塩素を用いる場合、少なくとも、塩素ラジカル、塩素原子、塩素イオン、のいずれかをバルクに添加する。なお、当該「バルク」の用語は、ハロゲンを、薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、「ハロゲンドープ」には、プラズマ化したハロゲンをバルクに添加する「ハロゲンプラズマドープ」が含まれる。また、ハロゲン元素は、ゲート絶縁層の成膜時に含ませて成膜することもできる。
【0014】
また、上記各作製方法において、第1の結晶層は、その表面に対して垂直方向にc軸配向をしていることを特徴の一つとしている。また、上記作製方法において、第2の結晶層は、第2の結晶層の表面に対して垂直方向にc軸配向をしていることを特徴の一つとしている。
【0015】
なお、上記の「酸素ドープ」とは、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)をバルクに添加することを言う。なお、当該「バルク」の用語は、酸素を、薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、「酸素ドープ」には、プラズマ化した酸素をバルクに添加する「酸素プラズマドープ」が含まれる。
【0016】
上記の酸素ドープ処理によって、酸化物半導体膜の膜中(バルク中)、絶縁膜の膜中(バルク中)、酸化物半導体膜と絶縁膜の界面、のいずれかには少なくとも化学量論比を超える量の酸素が存在する。酸素の量は、好ましくは化学量論比の1倍を超えて4倍まで(4倍未満)、より好ましくは、1倍を超えて2倍まで(2倍未満)である。ここで、化学量論比を超える酸素過剰な酸化物の一例として、その組成が見かけ上、InGaZnSiAlMg(a,b,c,d,e,f,及びgは0以上)で表されるとき、2g>3a+3b+2c+4d+3e+2f、を満たす酸化物が挙げられる。上記以外の組成を有する酸化物であっても同様に考えればよい。なお、酸素ドープ処理によって添加された酸素は、酸化物半導体の格子間に存在する場合もある。
【0017】
また、上記ハロゲンドープ処理を行う半導体装置の作製方法により得られる本発明の一態様は、ゲート電極層上にハロゲン元素を含むゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に、表面に対して平行方向にa−b面を有し、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている第1の結晶層と、第1の結晶層上に接し、且つ、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている第2の結晶層と、第1の結晶層及び第2の結晶層の積層上にソース電極層およびドレイン電極層とを有し、第1の結晶層及び第2の結晶層は、酸化物半導体膜であることを特徴とする半導体装置である。
【0018】
なお、第1の結晶層及び第2の結晶層である酸化物半導体膜は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系の材料や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系の材料、In−Sn−Zn−O系の材料、In−Al−Zn−O系の材料、Sn−Ga−Zn−O系の材料、Al−Ga−Zn−O系の材料、Sn−Al−Zn−O系の材料や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系の材料、Sn−Zn−O系の材料、Al−Zn−O系の材料、Zn−Mg−O系の材料、Sn−Mg−O系の材料、In−Mg−O系の材料、In−Ga−O系の材料や、単元系金属酸化物であるIn−O系の材料やSn−O系の材料などがある。また、上記の材料にSiOを含ませてもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系の材料とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物、という意味であり、その組成比は特に問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでいてもよい。
【0019】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0020】
また、上記半導体装置の作製方法において、ゲート絶縁層、及び/又は第1の結晶層、及び/又は第2の結晶層、及び/又は絶縁層を作製する際に、成膜室の排気は吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。上記吸着型の真空ポンプは、ゲート絶縁層、及び/又は酸化物半導体膜、及び/又は絶縁層に含まれる水素、水、水酸基又は水素化物の量を低減するように作用する。
【発明の効果】
【0021】
結晶化させて高密度化させた酸化物半導体膜を有するトランジスタは、バイアス−熱ストレス(BT)試験前後においてもトランジスタのしきい値電圧の変化量が低減でき、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一態様を示す工程断面図。
【図2】本発明の一態様を示す工程断面図。
【図3】本発明の一態様を示す断面図。
【図4】半導体装置の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置の一形態を説明する図。
【図7】電子機器を示す図。
【図8】電子機器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置の作製方法について、図1を用いて説明する。
【0025】
まず、絶縁表面を有する基板100上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりゲート電極層112を形成する(図1(A)参照)。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0026】
基板100の材質等に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐える程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
【0027】
下地膜となる絶縁膜を基板100とゲート電極層112との間に設けてもよい。下地膜は、基板100からの不純物元素の拡散を防止する機能を有し、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0028】
また、ゲート電極層112は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0029】
次いで、ゲート電極層112上にゲート絶縁層102を形成する(図1(A)参照)。
【0030】
ゲート絶縁層102には、後に形成される酸化物半導体膜とはエッチング(酸化物半導体膜の選択的なエッチング)におけるエッチングレートが大きく異なる絶縁材料を用いることが好ましい。ゲート絶縁層102は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。ただし、トランジスタのゲート絶縁層として機能することを考慮して、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート、などの比誘電率が高い材料を採用しても良い。なお、水素や水などが混入しにくいという点では、スパッタリング法が好適である。
【0031】
また、ゲート絶縁層102として、上記材料からなる絶縁膜と、酸化ガリウム膜との積層を用いてもよい。
【0032】
次に、ゲート絶縁層102に対して、ハロゲン180による処理(ハロゲンドープ処理や、ハロゲンプラズマドープ処理ともいう)を行い、ゲート絶縁層102中にハロゲンを含有させる(図1(B)参照)。ハロゲン180は、塩素やフッ素などを用いることができる。塩素やフッ素などのハロゲンは電気陰性度が大きいため、トランジスタの劣化の原因となる水素イオンを、捕獲することができる。また、ゲート絶縁層102に塩素などのハロゲンを含有させることで、ゲート絶縁層102中の水素を固定化し、ゲート絶縁層102中から、後の工程でゲート絶縁層102上に接して形成される酸化物半導体膜への水素の拡散を防ぐことができる。よって、トランジスタに光照射が行われ、またはBTストレスが与えられても、トランジスタ特性の劣化は抑制され、または低減される。
【0033】
ここで、塩素は、フッ素に比べて原子半径が大きく、拡散係数が小さいので、水素イオンをゲート絶縁層102中に固定しやすい。特に後に行う加熱処理の際に、塩素の方がフッ素より動きにくいので、より効果的に水素イオンを捕獲しておくことができる。よって、ハロゲン180としては、塩素を用いるのが好ましい。本実施の形態においてはハロゲン180として塩素を用いる。ハロゲン180として塩素を用いる場合、ハロゲン180には、少なくとも、塩素ラジカル、塩素原子、塩素イオン、のいずれかが含まれている。
【0034】
上述のハロゲン180による処理は、プラズマ発生装置やオゾン発生装置によって行うことができる。より具体的には、例えば、半導体装置に対してエッチング処理を行うことができる装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うことができる装置などを用いてハロゲン180を発生させ、ゲート絶縁層102を処理することができる。なお、ハロゲンの添加は、ゲート絶縁層102の表面に与えるダメージが最小限となる条件で行うことが好ましい。
【0035】
なお、ハロゲンの添加をより好適に行うためには、ハロゲンによる処理時に基板には電気的なバイアスを加えておくことが望ましい。基板に印加するバイアスを大きくすることで、より深くまでハロゲンを添加することができる。
【0036】
ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)装置を用いて塩素を添加する場合、プラズマ発生源であるICPコイルに1kW以上10kW以下の高周波電源を印加し、プラズマを発生させた状態を一定時間(30秒以上600秒以下)維持することが好ましい。例えば、ICPパワー6000W、バイアスパワー250W、塩素ガス流量を500sccm、処理室内の圧力を1.3Pa、処理時間60秒、という条件で塩素ドープ処理を行えばよい。
【0037】
また、電界で加速したハロゲンイオンを照射して、ハロゲンを添加してもよい。また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDを用いてハロゲンを添加してもよい。μ波を用いた高密度プラズマCVDを用いた場合、酸化物半導体積層へのハロゲン添加時にダメージがほとんどない。
【0038】
また、塩素に代表されるハロゲンと同時に酸素を添加しても良い。
【0039】
次いで、ゲート絶縁層102上にゲート電極層112と重畳するように厚さ2nm以上15nm以下の第1の酸化物半導体膜108aを形成する(図1(C)参照)。なお、第1の酸化物半導体膜108aは、酸化物半導体膜の成膜後に結晶化のための第1の加熱処理を行い結晶化させた膜である。
【0040】
本実施の形態では、酸化物半導体ターゲット(In−Ga−Zn−O系酸化物半導体ターゲット(In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]))を用いて、基板とターゲットの間との距離を170mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素のみ、アルゴンのみ、又はアルゴン及び酸素雰囲気下で膜厚5nmの第1の酸化物半導体層を成膜する。本実施の形態では、後に加熱処理を行い意図的に結晶化させるため、結晶化が生じやすい酸化物半導体ターゲットを用いることが好ましい。また、第1の酸化物半導体層の成膜において、減圧状態に保持された成膜室内に被成膜基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上500℃以下、さらに好ましくは300℃以上500℃以下として成膜する。結晶化させるための第1の加熱処理は、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。こうして、第1の加熱処理によって表面から結晶成長した結晶層を有する第1の酸化物半導体膜108aを形成する。
【0041】
第1の酸化物半導体膜108aの結晶層は、表面から内部に向かって結晶成長し、2nm以上10nm以下の平均厚さを有する板状結晶である。また、表面に形成される結晶層は、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている。
【0042】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。また、HOが20ppm以下の乾燥空気雰囲気下で第1の加熱処理を行っても良い。
【0043】
次いで、第1の酸化物半導体膜108a上に、少なくとも第1の酸化物半導体膜108aよりも膜厚の厚く、10μm以下の膜厚範囲の第2の酸化物半導体膜108bを形成する(図1(D)参照。)。また、第2の酸化物半導体層の成膜において、減圧状態に保持された成膜室内に被成膜基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上500℃以下、さらに好ましくは300℃以上500℃以下として成膜する。なお、第2の酸化物半導体膜108bは、酸化物半導体膜の成膜後に結晶化のための第2の加熱処理を行い結晶化させた膜である。第2の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜108aの結晶層を種として結晶成長を行う。第2の加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上650℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。
【0044】
また、第1の酸化物半導体膜108aと第2の酸化物半導体膜108bは、同一成分を含む材料を用いること、あるいは同一の結晶構造かつ近似した格子定数(格子定数の差が1%以下)を有することが好ましい。同一成分を含む材料を用いる場合、後に行われる結晶化において第1の酸化物半導体膜108aの結晶層を種として結晶成長が行いやすくなる。また、同一成分を含む材料である場合には、密着性などの界面物性や電気的特性も良好である。
【0045】
なお、第1の酸化物半導体膜108aと第2の酸化物半導体膜108bからなる酸化物半導体積層のうち、ゲート絶縁層の凹凸と重なる領域は結晶粒界があり、多結晶体となる。また、酸化物半導体積層のうち、チャネル形成領域となる領域は、少なくとも平坦面を有し、第1の酸化物半導体膜108aと第2の酸化物半導体膜108bが同じc軸配向をしている結晶構造である。また、酸化物半導体積層のうち、チャネル形成領域も多結晶のa軸或いはb軸の向きがずれることもありうる。
【0046】
次に、第1の酸化物半導体膜108aと第2の酸化物半導体膜108bからなる酸化物半導体積層を加工して島状の酸化物半導体膜を形成する(図1(E)参照)。
【0047】
酸化物半導体積層の加工は、所望の形状のマスクを第2の酸化物半導体膜108b上に形成した後、当該酸化物半導体膜をエッチングすることによって行うことができる。上述のマスクは、フォトリソグラフィなどの方法を用いて形成することができる。
【0048】
次に、必要があれば、酸化物半導体積層に対して、酸素による処理(酸素ドープ処理や、酸素プラズマドープ処理ともいう)を行ってもよい。なお、酸素の添加をより好適に行うためには、基板には電気的なバイアスを加えておくことが望ましい。また、酸素ドープ処理を行った酸化物半導体積層に熱処理を行ってもよい。当該熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。また、酸素ドープ処理と熱処理を繰り返して行っても良い。当該処理を繰り返して行うことにより、トランジスタの信頼性をさらに高めることができる。なお、繰り返しの回数は適宜設定することができる。
【0049】
次いで、ゲート絶縁層102および酸化物半導体積層上に、ソース電極層およびドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成し、当該導電膜を加工して、ソース電極104aおよびドレイン電極104bを形成する(図1(F)参照)。なお、ここで形成されるソース電極層104aの端部とドレイン電極層104bの端部との間隔によって、トランジスタのチャネル長Lが決定されることになる。
【0050】
ソース電極層104aおよびドレイン電極層104bに用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等がある。また、Al、Cuなどの金属膜の下側または上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた導電膜を用いても良い。
【0051】
また、いわゆる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成されたレジストマスクは、複数の膜厚を有する形状となり、アッシングによってさらに形状を変形させることができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることが可能である。このため、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。つまり、工程の簡略化が可能となる。
【0052】
次に、第2の酸化物半導体膜108bの一部と接し、かつ、ソース電極層104aおよびドレイン電極層104bを覆う絶縁膜110a、絶縁膜110bを形成する(図1(F)参照)。
【0053】
絶縁膜110aは、第2の酸化物半導体膜108bと同種の成分でなる絶縁材料を用いると特に好ましい。このような材料は酸化物半導体膜との相性が良く、これを絶縁膜110aに用いることで、第2の酸化物半導体膜108bとの界面の状態を良好に保つことができるからである。ここで、「第2の酸化物半導体膜108bと同種の成分」とは、第2の酸化物半導体膜108bの構成金属元素から選択される一または複数の元素を含むことを意味する。例えば、第2の酸化物半導体膜108bがIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分でなる絶縁材料としては酸化ガリウムなどがある。
【0054】
また、絶縁膜110aは酸素を含有していることが好ましく、化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)酸素を含有していることが好ましい。このように絶縁膜110aが過剰な酸素を有することにより、第2の酸化物半導体膜108bおよび第2の酸化物半導体膜108bとの界面に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0055】
また、絶縁膜110bは、ゲート絶縁層102と同様に形成することができる。すなわち、絶縁膜110bは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。
【0056】
また、絶縁膜110bは酸素を含有していることが好ましく、化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)酸素を含有していることが好ましい。このように絶縁膜110bが過剰な酸素を有することにより、第2の酸化物半導体膜108bおよび第2の酸化物半導体膜108bとの界面に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0057】
以上の工程でトランジスタ120が形成される。
【0058】
図1(F)に示すトランジスタ120は、基板100上のゲート電極層112、ゲート絶縁層102、第1の酸化物半導体膜108a、第2の酸化物半導体膜108b、ソース電極層104a、ドレイン電極層104b、絶縁膜110a、絶縁膜110bを含む。
【0059】
図1(F)に示すトランジスタ120において、ゲート絶縁層102に対してハロゲンドープ処理が行われ、第1の酸化物半導体膜108a、及び第2の酸化物半導体膜108bは、少なくとも第2の酸化物半導体膜108bの一部が結晶化して得られた結晶層の表面に対して垂直方向にc軸配向をしており、信頼性が高められたトランジスタ120が実現する。
【0060】
また、トランジスタ120において、ゲート絶縁層102にハロゲンを含有させることにより、塩素やフッ素などのハロゲンは、酸化物半導体積層中の金属(Zn、Ga、In)よりも電気陰性度が大きいので、酸化物半導体積層中のM−H結合から水素原子を奪うことができる。このようにして、酸化物半導体積層とゲート絶縁層102の界面に添加された塩素やフッ素などのハロゲンは、トランジスタ120の劣化の原因となる酸化物半導体積層中のM−H結合から脱離した水素イオンを、捕獲することもできる。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と一部異なる工程例を図2を用いて説明する。なお、図2において、図1と同一の箇所には同じ符号を用いる。
【0062】
まず、実施の形態1と同様に、絶縁表面を有する基板100上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりゲート電極層112を形成する。そして、ゲート電極層112上にゲート絶縁層102を形成する(図2(A)参照)。
【0063】
なお、必要があれば、実施の形態1と同様にゲート絶縁層102形成後にハロゲンドープ処理を行ってもよい。また、成膜時にハロゲン元素をゲート絶縁層102中に含有させてもよい。その場合、例えばテトラフルオロシランと酸素を用いてプラズマCVD法によりフッ素を含む酸化珪素膜を形成し、ゲート絶縁層102として用いる。また、予め成膜室をClFやNF等のフッ素化合物系ガスを用いてクリーニングを行った後、ゲート絶縁層102の形成を行うことで、成膜室の内壁に吸着したフッ素や塩素などを意図的にゲート絶縁層102中に取り込ませてもよい。
【0064】
次いで、ゲート絶縁層102上にゲート電極層112と重畳するように厚さ2nm以上15nm以下の第1の酸化物半導体膜108aを形成する(図2(B)参照)。なお、第1の酸化物半導体膜108aは、実施の形態1と同様に、酸化物半導体膜の成膜後に結晶化のための第1の加熱処理を行い結晶化させた膜である。
【0065】
次いで、第1の酸化物半導体膜108a上に、少なくとも第1の酸化物半導体膜108aよりも膜厚の厚く、10μm以下の膜厚範囲の第2の酸化物半導体膜108bを形成する(図2(C)参照。)。なお、第2の酸化物半導体膜108bは、実施の形態1と同様に、酸化物半導体膜の成膜後に結晶化のための第2の加熱処理を行い結晶化させた膜である。
【0066】
次に、第1の酸化物半導体膜108aと第2の酸化物半導体膜108bからなる酸化物半導体積層を加工して島状の酸化物半導体膜を形成する(図2(D)参照)。
【0067】
酸化物半導体積層の加工は、所望の形状のマスクを酸化物半導体積層上に形成した後、当該酸化物半導体積層をエッチングすることによって行うことができる。上述のマスクは、フォトリソグラフィなどの方法を用いて形成することができる。または、インクジェット法などの方法を用いてマスクを形成しても良い。
【0068】
なお、酸化物半導体積層のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。もちろん、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0069】
なお、酸化物半導体積層は必ずしも島状に加工しなくてもよい。
【0070】
次に、第2の酸化物半導体膜108bに対して、酸素182による処理(酸素ドープ処理や、酸素プラズマドープ処理ともいう)を行う(図2(E)参照)。ここで、酸素182には、少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかが含まれている。酸化物半導体積層に酸素ドープ処理を行うことにより、酸化物半導体積層中、酸化物半導体積層界面近傍、または、酸化物半導体積層中および該界面近傍に酸素を含有させることができる。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体積層の化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)、とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量をYとして、Yを超える程度、好ましくは、Yを超えて2Yまでとすることもできる。あるいは、酸素の含有量は、酸素ドープ処理を行わない場合の絶縁膜中の酸素の量Zを基準として、Zを超える程度、好ましくは、Zを超えて2Zまでとすることもできる。なお、上述の好ましい範囲に上限が存在するのは、酸素の含有量を多くしすぎると、水素吸蔵合金(水素貯蔵合金)のように、かえって酸化物半導体積層が水素を取り込んでしまう恐れがあるためである。なお、酸化物半導体積層において酸素の含有量は水素の含有量より大きくなる。
【0071】
化学式がInGaO(ZnO)(m>0)で表現される材料の場合、例えば、m=1(InGaZnO)の結晶構造を基準にすれば、InGaZnOにおいてxは4を越えて8まで、また、m=2(InGaZn)の結晶構造を基準にすれば、InGaZnにおいてxは5を越えて10まで、が許容される。なお、このような酸素過剰領域は、酸化物半導体積層の一部(界面を含む)に存在していればよい。
【0072】
なお、酸化物半導体膜において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物半導体膜中の酸素濃度を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物半導体膜に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0073】
ところで、酸素には17Oや18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体膜中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜に意図的に酸素が添加されたか否かを判別しても良い。
【0074】
例えば、18Oの濃度を基準に用いると、酸化物半導体膜において、酸素が添加された領域における酸素の同位体の濃度D1(18O)と、酸素が添加されていない領域における酸素の同位体の濃度D2(18O)との間には、D1(18O)>D2(18O)が成立するといえる。
【0075】
また、酸化物半導体積層に添加される酸素182の少なくとも一部は、酸化物半導体積層中において不対結合手を有することが好ましい。不対結合手を有することにより、膜中に残存しうる水素と結合して、水素を固定化(非可動イオン化)することができるためである。
【0076】
上述の酸素182は、プラズマ発生装置やオゾン発生装置によって発生させることができる。より具体的には、例えば、半導体装置に対してエッチング処理を行うことができる装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うことができる装置などを用いて酸素182を発生させ、酸化物半導体積層を処理することができる。また、電界で加速した酸素イオンを照射して、酸素を添加してもよい。また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDを用いて酸素を添加してもよい。μ波を用いた高密度プラズマCVDを用いた場合、酸化物半導体積層への酸素添加時にダメージがほとんどない。
【0077】
なお、酸素の添加をより好適に行うためには、酸素添加時に基板には電気的なバイアスを加えておくことが望ましい。例えば、ICP装置を用いて酸素を添加する場合、ICPコイルに印加する高周波電力は、1kW以上10kW以下とし、基板ステージに基板バイアス1000Wを加えればよい。
【0078】
なお、酸素ドープ処理を行った酸化物半導体積層に熱処理を行ってもよい。当該熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0079】
当該熱処理により、酸素と酸化物半導体材料に含まれる水素との反応によって生成された水、水酸化物(OH)などを酸化物半導体膜から除去することができる。また、上述の酸素ドープ処理において、酸化物半導体積層などに混入した水素なども当該熱処理で除去することができる。熱処理は、水、水素などが十分に低減された窒素、酸素、超乾燥空気(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)などの雰囲気下で行えばよく、特に酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。また、熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度は、6N(99.9999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下)とするのが好ましく、7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を0.1ppm以下)とすると、より好ましい。
【0080】
また、酸素ドープ処理と熱処理を繰り返して行っても良い。当該処理を繰り返して行うことにより、トランジスタの信頼性をさらに高めることができる。なお、繰り返しの回数は適宜設定することができる。
【0081】
本実施の形態に係る上記の熱処理においては、酸素を含む雰囲気下で酸化物半導体積層を加熱するのが望ましい。したがって、上述の結晶化処理によって減少してしまう可能性のある酸素を、酸化物半導体積層へ供給することも可能である。この意味において、当該熱処理を、加酸化(加酸素化)と呼ぶこともできる。また、結晶化処理は、酸化物半導体中に含まれる水素を含む不純物(水、OHなど)を脱離させる脱水化(または脱水素化)とも呼ぶこともできる。
【0082】
なお、加酸化を目的とする熱処理のタイミングは、酸化物半導体積層の形成後であれば特に限定されない。例えば、後述する絶縁膜110aの形成後に加酸化を目的とする熱処理を行っても良い。または、ゲート電極層の形成後に加酸化を目的とする熱処理を行っても良い。または、脱水化等を目的とする熱処理に続けて加酸化を目的とする熱処理を行っても良いし、脱水化等を目的とする熱処理に加酸化を目的とする熱処理を兼ねさせても良いし、加酸化を目的とする熱処理に脱水化等を目的とする熱処理を兼ねさせても良い。
【0083】
上述のように、脱水化等を目的とする熱処理と、酸素ドープ処理または加酸化を目的とする熱処理とを適用することで、酸化物半導体積層を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。高純度化された酸化物半導体積層中にはドナーに由来するキャリアが極めて少ない(ゼロに近い)。
【0084】
なお、本実施の形態においては、結晶化等を目的とする熱処理を行い、酸化物半導体積層を島状に加工し、酸素ドープ処理を行い、加酸化を目的とする熱処理を行ったが、これらの工程はこの順番に限られるものではない。
【0085】
次いで、ゲート絶縁層102および酸化物半導体積層上に、ソース電極層およびドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成し、当該導電膜を加工して、ソース電極層104aおよびドレイン電極層104bを実施の形態1と同様に形成する(図2(F)参照)。
【0086】
次に、第2の酸化物半導体膜108bの一部と接し、かつ、ソース電極層104aおよびドレイン電極層104bを覆う絶縁膜110a、絶縁膜110bを実施の形態1と同様に形成する(図2(F)参照)。
【0087】
以上の工程でトランジスタ130が形成される。トランジスタ130は、酸化物半導体積層を結晶化し、さらに酸素ドープ処理によって酸化物半導体膜中の酸素の含有量を増大させることで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化を抑制し、光による劣化を低減することができる。
【0088】
なお、上述の説明は、島状に加工された酸化物半導体積層に対して酸素ドープ処理を行う例についてのものだが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、結晶化および酸素ドープ処理を行った後に、酸化物半導体積層を島状に加工しても良いし、ソース電極層104aおよびドレイン電極層104bを形成した後に酸素ドープ処理を行っても良い。
【0089】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図1に示すトランジスタ120や、図2に示すトランジスタ130の変形例として、トランジスタ140、トランジスタ150の断面図を示す。
【0090】
図3(A)に示すトランジスタ140は、基板100上のゲート電極層112、ゲート絶縁層102、第1の酸化物半導体膜108a、第2の酸化物半導体膜108b、ソース電極層104a、ドレイン電極層104b、絶縁膜110a、絶縁膜110bを含む点で、トランジスタ120と共通している。トランジスタ140とトランジスタ120との相違は、第2のゲート絶縁層103と、上述の構成要素を覆う絶縁膜114の有無である。すなわち、トランジスタ140は、第2のゲート絶縁層103と、絶縁膜114を有している。その他の構成要素については図1のトランジスタ120と同様であるから、詳細は、図1に関する記載を参酌することができる。
【0091】
なお、第2のゲート絶縁層103は、第1の酸化物半導体膜108aと同種の成分でなる絶縁材料を用いると特に好ましい。このような材料は第1の酸化物半導体膜108aとの相性が良く、これを第2のゲート絶縁層103に用いることで、第1の酸化物半導体膜108aとの界面の状態を良好に保つことができるからである。ここで、「第1の酸化物半導体膜108aと同種の成分」とは、第1の酸化物半導体膜108aの構成金属元素から選択される一または複数の元素を含むことを意味する。例えば、第1の酸化物半導体膜108aがIn−Ga−Zn系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分でなる絶縁材料としては酸化ガリウムなどがある。
【0092】
なお、絶縁膜114は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ガリウム、これらの混合材料、などを用いて形成することができる。特に、絶縁膜114として窒化シリコン膜を用いる場合には、添加された酸素の外部への放出を防ぐことができると共に、酸化物半導体積層への外部からの水素等の混入を効果的に抑制することができるため好適である。特に絶縁膜114において、水素の含有量は、窒素の含有量の10分の1以下とし、好ましくは1×1020cm−3未満とし、さらに好ましくは5×1018cm−3未満とする。なお、絶縁膜114上に、ソース電極層104aやドレイン電極層104b、ゲート電極層112などと接続される配線を形成しても良い。
【0093】
図3(B)に示すトランジスタ150は、基板100上のゲート電極層112、ゲート絶縁層102、第1の酸化物半導体膜108a、第2の酸化物半導体膜108b、ソース電極層104a、ドレイン電極層104b、絶縁膜110a、絶縁膜110bを含む点で、トランジスタ120と共通している。トランジスタ150とトランジスタ120との相違は、第2のゲート電極層105の有無である。すなわち、トランジスタ150は、第2のゲート電極層105を有している。その他の構成要素については図1のトランジスタ120と同様であるから、詳細は、図1に関する記載を参酌することができる。
【0094】
なお、第2のゲート電極層105は、バックゲートとして機能させることのできる電極層であり、そのバックゲートの電位は、固定電位、例えば0Vや、接地電位とすることができ、実施者が適宜決定すればよい。また、酸化物半導体積層の上下にゲート電極層を設けたトランジスタ150とすることによって、トランジスタの信頼性を調べるためのBT試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変化量を低減することができる。即ち、酸化物半導体膜の上下にゲート電極層を設けることによって、信頼性を向上することができる。また、バックゲートに加えるゲート電圧を制御することによって、しきい値電圧を制御することもできる。また、第2のゲート電極層105に遮光性の導電膜を用いれば、酸化物半導体積層の遮光膜としても機能させることができ、信頼性を向上させることもできる。
【0095】
本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【0096】
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3のいずれか一で例示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0097】
図4(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図4(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0098】
図4(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図4(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図4(B)(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0099】
また図4(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0100】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図4(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図4(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図4(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0101】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0102】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0103】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1乃至3のいずれか一で例示したトランジスタを適用することができる。
【0104】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0105】
半導体装置の一形態について、図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6は、図4(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0106】
図5及び図6で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0107】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0108】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図5及び図6では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図6では、トランジスタ4010、4011上に、絶縁層4021が設けられている。
【0109】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1乃至3のいずれか一で示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ4010、トランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図5及び図6で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0110】
また、本実施の形態では、絶縁層上において駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置には導電層を設けてもよい。導電層を酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0111】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0112】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0113】
図5に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図5において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0114】
またスペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なおスペーサ4035の形状は、柱状に限定されるものではなく、例えば、球状のスペーサを用いていても良い。
【0115】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0116】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0117】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0118】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。高純度の酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0119】
本実施の形態で用いるトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることもできる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0120】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0121】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0122】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0123】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0124】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0125】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。
【0126】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0127】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0128】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0129】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0130】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0131】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0132】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0133】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0134】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0135】
図6に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図6の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。
【0136】
トランジスタ4010と接続する第1の電極層4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極層4031との間には黒色領域4615a及び白色領域4615bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ4612を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極層4031が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極層4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0137】
なお、図5及び図6において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0138】
絶縁層4021は、無機絶縁材料又は有機絶縁材料を用いて形成することができる。なお、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いると、平坦化絶縁膜として好適である。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0139】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)等を用いることができる。
【0140】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0141】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層4030及び第2の電極層4031(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0142】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0143】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0144】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0145】
以上のように、実施の形態1乃至3のいずれか一で例示したトランジスタを適用することで、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0146】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0147】
(実施の形態5)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0148】
図7(A)は電子書籍(E−bookともいう)であり、筐体9630、表示部9631、操作キー9632、太陽電池9633、充放電制御回路9634を有することができる。図7(A)に示した電子書籍は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。なお、図7(A)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ(以下、コンバータと略記)9636を有する構成について示している。実施の形態4で示した半導体装置を表示部9631に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。
【0149】
図7(A)に示す構成とすることにより、表示部9631として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想され、太陽電池9633による発電、及びバッテリー9635での充電を効率よく行うことができ、好適である。なお太陽電池9633は、筐体9630の空きスペース(表面や裏面)に適宜設けることができるため、効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0150】
また図7(A)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図7(B)にブロック図を示し説明する。図7(B)には、太陽電池9633、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0151】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池9633で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0152】
次いで外光により太陽電池9633により発電がされない場合の動作の例について説明する。バッテリー9635に蓄電された電力は、スイッチSW3をオンにすることでコンバータ9637により昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作にバッテリー9635からの電力が用いられることとなる。
【0153】
なお太陽電池9633については、充電手段の一例として示したが、他の手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0154】
図8(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態4で示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0155】
図8(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。実施の形態4で示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0156】
図8(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0157】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図8(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図8(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。実施の形態4で示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍2700とすることができる。
【0158】
また、図8(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源スイッチ2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0159】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0160】
図8(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態4で示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0161】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図8(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0162】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図8(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0163】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0164】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0165】
図8(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態4で示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0166】
図8(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態4で示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることができる。
【0167】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0168】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0169】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0170】
100 基板
102 ゲート絶縁層
103 第2のゲート絶縁層
104a ソース電極層
104b ドレイン電極層
105 第2のゲート電極層
108a 第1の酸化物半導体膜
108b 第2の酸化物半導体膜
110a 絶縁膜
110b 絶縁膜
112 ゲート電極層
114 絶縁膜
120 トランジスタ
130 トランジスタ
140 トランジスタ
150 トランジスタ
180 ハロゲン
182 酸素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極層を形成し、
前記ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層にハロゲンドープ処理を行い、
前記ゲート絶縁層上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
第1の加熱処理を行って前記第1の酸化物半導体膜の表面から内部に向かって結晶成長させて第1の結晶層を形成し、
前記第1の結晶層上に第2の酸化物半導体膜を形成し、
第2の加熱処理を行って前記第1の結晶層からその上の前記第2の酸化物半導体膜表面に向かって結晶成長させて第2の結晶層を形成し、
前記第1の結晶層及び前記第2の結晶層の積層上にソース電極層およびドレイン電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第2の結晶層を形成した後、さらに酸素ドープ処理を行って前記第2の結晶層に酸素原子を供給することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
ゲート電極層を形成し、
前記ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
第1の加熱処理を行って前記第1の酸化物半導体膜の表面から内部に向かって結晶成長させて第1の結晶層を形成し、
前記第1の結晶層上に第2の酸化物半導体膜を形成し、
第2の加熱処理を行って前記第1の結晶層からその上の前記第2の酸化物半導体膜表面に向かって結晶成長させて第2の結晶層を形成し、
前記第1の結晶層及び前記第2の結晶層の積層上にソース電極層およびドレイン電極層を形成し、
前記第2の結晶層を形成した後、さらに酸素ドープ処理を行って前記第2の結晶層に酸素原子を供給する工程を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、前記第1の結晶層は、前記第1の結晶層の表面に対して垂直方向にc軸配向をしていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、前記第2の結晶層は、前記第2の結晶層の表面に対して垂直方向にc軸配向をしていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、前記第2の酸化物半導体膜の厚さは前記第1の酸化物半導体膜の厚さよりも厚いことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
ゲート電極層上にハロゲン元素を含むゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている第1の結晶層と、
前記第1の結晶層上に接し、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている第2の結晶層と、
前記第1の結晶層及び前記第2の結晶層の積層上にソース電極層およびドレイン電極層とを有し、
前記第1の結晶層及び前記第2の結晶層は、酸化物半導体膜であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−9843(P2012−9843A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112149(P2011−112149)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】