説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】サリサイド技術を用いた半導体装置では、低コストかつ短工程でMIS型トランジスタのゲート電極と拡散領域との短絡を防ぐことが困難であった。
【解決手段】ゲート部とソース・ドレイン部とを有する半導体素子であって、ゲート部は、ゲート電極の側部にサイドウォールを備える。サイドウォールの上端部がゲート電極の上端部よりも高く形成しており、サイドウォールのゲート電極に接する面は、ゲート電極上面に対してほぼ直角である。サリサイド技術を用いても、ゲート電極上に形成されたチタンと、サイドウォールおよびソース・ドレイン部上に形成されたチタンとは離間した状態となっており、シリサイドによるゲート電極とその他の部分との短絡を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、さらに詳しくはゲート電極および拡散領域の構成材料と金属による合金層をゲート電極上および拡散領域上に形成する技術を用いた半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置における高速応答性への要求に伴い、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型トランジスタのゲート電極および拡散領域の配線抵抗の影響が無視できなくなってきている。配線抵抗の増大はトランジスタの応答速度を低下させる大きな要因の一つであり、半導体装置にとって深刻な課題である。そこで配線抵抗を低減する手法としてサリサイド技術が考案され、一般的に広く用いられている。
【0003】
サリサイド(Salicide)技術とは、MIS型トランジスタなどの各電極にシリサイド(金属とシリコンとの合金)を形成することで抵抗成分を下げる構造のことである。サリサイド技術を用いることでゲート電極や拡散領域、多結晶シリコン配線などを同時に低抵抗化することができるため、電極の低抵抗化技術として大変注目されている技術の一つである。
【0004】
シリサイドの形成にはいくつかの方法があるが、最も良く用いられているのは高融点金属をウェハ全面に成膜し、加熱処理を行ってゲート電極や拡散領域上にシリサイドを形成し、未反応の高融点金属を除去する方法である。この方法を用いることで、新規の工程をほとんど追加することなくシリサイドを形成することが可能である。
【0005】
サリサイド技術は、速い応答速度を要求する半導体装置に用いられるものであるが、このような半導体装置においては、MIS型トランジスタの微細化も同様に行われる場合が多い。微細化したMIS型トランジスタは、短チャネル効果と呼ばれる問題が起こりやすく、これを防止するために、MIS型トランジスタのゲート電極の側部にサイドウォールを設ける構造を採用している場合が多い。
サイドウォールの形成方法は、PSG(リン含有のシリコン酸化膜)などのシリコンを含有した絶縁体からなる膜を加工し、ゲート電極の側部にサイドウォールを形成する。
【0006】
このように、サイドウォールを備えたMIS型トランジスタを有する半導体装置に対して、サリサイド技術を用いると、サイドウォール上にもシリサイドが形成されてしまい、本来は電気的に絶縁されていなければならないゲート電極と拡散領域とが短絡してしまうと言う不具合が生じてしまう。
【0007】
このような問題を解決するため、サリサイド技術を用い、かつゲート電極の側部にサイドウォールを有しながらも、そのサイドウォールの形状を工夫することで、ゲート電極と拡散領域との電気的絶縁性を実現する手法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
図15は、特許文献1に示した従来技術を示す図である。11は半導体基板、13は素子分離絶縁膜、17はゲート酸化膜、20はゲート電極、25は低濃度拡散領域、28と29と30と31と32と33とは絶縁膜、37と38とは高濃度拡散領域、43と44と45とは合金層である。この合金層は、シリサイドである。
絶縁膜28、29、30でサイドウォール35を構成し、絶縁膜30、31、32でサ
イドウォール36を構成している。ゲート電極20の側部には、サイドウォール35、36とが形成しており、このサイドウォールとゲート電極20とでゲート部を形成し、低濃度拡散領域25と高濃度拡散領域37、38とでソース・ドレイン部を形成している。
ゲート電極20の上部には合金層43が形成しており、サイドウォール35、36の上部には合金層45が形成してあり、高濃度拡散領域38の上部には合金層44が形成してある。
【0009】
このサイドウォールには溝が設けてあるので、ゲート電極の上部の合金層43と高濃度拡散領域38の上部の合金層44とは接することはなく、したがって、ゲート部とソース・ドレイン部とが短絡してしまうという不具合は起きないのである。
【0010】
次に、図面を用いて、特許文献1に示した従来技術によるサリサイド技術を用いた半導体装置の製造方法について説明する。以下の説明では、半導体基板11にはシリコン基板を、ゲート電極20の材料には多結晶シリコンを用いている。
【0011】
図9に示すように、公知の材料および方法によって半導体基板11上に素子分離絶縁膜13、ゲート酸化膜17、ゲート電極20、低濃度拡散領域25を形成する。
【0012】
次に図10に示すように、半導体基板11上全面に絶縁膜28、29、30を成膜する。このとき、絶縁膜29の材料は、絶縁膜28および30の材料よりも、同一条件でのエッチングにおいてエッチングレートが高い材料を用いる。
【0013】
次に図11に示すように、半導体基板11全面を反応性異方性エッチング処理を行うことで絶縁膜28、29、30をゲート電極20のサイドウォール35として残す。このときサイドウォール35の表面は、絶縁膜28、29、30が交互に露出している。
【0014】
次に図12に示すように、ゲート電極20およびサイドウォール35をマスクとして高濃度のイオン注入を行い、高濃度拡散領域37を形成する。
【0015】
次に、図10から図12に示す工程と同様に、半導体基板11全面に絶縁体からなる膜を形成し、半導体基板11全面へ反応性異方性エッチング処理を行い、高濃度のイオン注入を行い、高濃度拡散領域38を形成する。
次に、図10から図12と同様の工程を再度1回行う。これにより、サイドウォール35の側部には、絶縁膜31、32、33からなるサイドウォール36が形成され、ゲート電極20の側部にサイドウォール35、36を有する図13に示す構造体を得ることができる。
【0016】
次に、図14に示すように選択的なエッチングを行い、エッチングレートの高い絶縁体からなる膜の露出した部分のみを除去することで、サイドウォール35、36の表面を凹凸形状にする。選択的なエッチング方法としてはHFガスによるエッチング等を用いることができる。
【0017】
次に図15に示すように、半導体基板11上全面に高融点金属を形成し、アニール処理を行い、ゲート電極20の上部に合金層43が形成され、サイドウォール35、36の上部には合金層45が形成され、高濃度拡散領域38の上部に合金層44が形成される。これらの合金層は、高融点金属と半導体との合金層であり、シリサイドである。このとき、サイドウォール35、36の上にもシリサイドが形成されるが、サイドウォールに溝が形成されているために、ゲート電極と拡散領域との短絡を防ぐのである。
【0018】
ところで、ゲート電極の側部に設けるサイドウォールの上部に形成したシリサイドを選
択的に除去する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2に示した従来技術では、プラズマを用いたドライエッチングにより、選択的にサイドウォールの上部のシリサイドを除去するものである。
【0019】
【特許文献1】特開平9−186317号公報(第3頁から4頁、図11)
【特許文献2】特開平5−109652号公報(第2頁から3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1に示した従来技術は、サイドウォールに設けた溝によりシリサイドによる短絡を防止することができるが、サイドウォールに溝を設けるための製造工程が複雑になるという問題がある。すなわち、絶縁膜の形成と全面への反応性異方性エッチング処理とイオン注入による拡散領域の形成という一連の製造工程を2回以上行う必要があり、かなり長い製造工程となる。したがって、低コスト化が要求されている半導体装置においては、この製造方法を採用することができないという問題がある。
【0021】
また、特許文献2に示した従来技術は、サイドウォールの上部のシリサイドを除去するために、プラズマを用いたドライエッチングを行うため、半導体素子がプラズマにさらされる時間が長くなり、プラズマによるダメージによって半導体素子が破壊されてしまうという問題点がある。
【0022】
特許文献1に示した従来技術も特許文献2に示した従来技術も、サイドウォールを備えたMIS型トランジスタを有する半導体装置に対して、サリサイド技術を用いる際の問題点を解決する方法とは言えず、微細化し高速動作を要求する半導体装置においては、依然としてゲート部とソース・ドレイン部との短絡の問題は解決できていない。
【0023】
そこで本発明は以上の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ゲート電極および拡散領域間の短絡を防止し、かつ短工程で低コストな半導体装置とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置は下記の構成を採用する。
【0025】
半導体基板に設ける能動領域にゲート部と拡散領域とを有する半導体素子を設け、ゲート部は、ゲート電極の側部にサイドウォールを備える半導体装置において、
サイドウォールの上端部をゲート電極の上端部よりも高くしたことを特徴とする。
【0026】
ゲート電極の上端部には、ゲート電極を構成する材料と高融点金属とからなる第1の合金層を有し、サイドウォールの表面には、サイドウォールを構成する材料と高融点金属とからなる第2の合金層を有し、拡散領域の表面には、拡散領域を構成する半導体材料と高融点金属とからなる第3の合金層を有し、第1の合金層と第2の合金層とは離間することを特徴とする。
【0027】
ゲート部の上部は凹部形状を有することを特徴とする。
【0028】
凹部の内壁であるサイドウォールの側面は、凹部の底部であるゲート電極の上面に対してほぼ直角であることを特徴とする。
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置の製造方法は下記の方法を採用する。
【0030】
半導体基板に能動領域を設ける工程と、能動領域にゲート電極を形成する工程と、 ゲート電極の上部すべてを覆う犠牲層を形成する工程と、半導体基板上に絶縁体からなる膜を形成し、ゲート電極と犠牲層との側部に絶縁体からなる膜を残しサイドウォールとして形成する工程と、能動領域に拡散領域を形成する工程と、犠牲層を除去する工程と、半導体基板上に高融点金属を形成する工程と、
加熱処理によって、ゲート電極の上部にはゲート電極を構成する材料と高融点金属とからなる第1の合金層と、
サイドウォールの表面にはサイドウォールを構成する材料と高融点金属とからなる第2の合金層と、
拡散領域の表面には拡散領域を構成する半導体材料と高融点金属とからなる第3の合金層とを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の半導体装置は、サリサイド技術を用いてもゲート電極と拡散領域との短絡を防止することができる。したがって、半導体装置の歩留まりを大幅に向上させることができる。しかも、本発明の半導体装置を製造する際にも、特別に新規のマスク作成やホトリソグラフィ工程、エッチング工程などの追加は必要ないので、低コストな半導体装置を提供することができる。
新規のホトリソグラフィ工程の追加がないと言うことは、位置合わせ精度の累積誤差を増加させる可能性がないということであり、微細な半導体素子の形成において歩留まりを低下させないで済むという効果がある。また、プラズマ処理工程のようなプラズマによるダメージが起こりやすい工程も追加することはないので、半導体装置の歩留まりを低下させることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の半導体装置は、ゲート電極の側部に設けるサイドウォールの上端部が、ゲート電極20の上端部よりも高く位置している。また、ゲート電極とサイドウォールとを有するゲート部の上部は、凹部形状を有している。
この凹部の内壁となるサイドウォールの側面は、この凹部の底部となるゲート電極の上面に対してほぼ直角である。つまり、サイドウォールのゲート電極に接する面は、ゲート電極の上面に対してほぼ直角であって、サイドウォールがゲート電極の上面を覆うことはない。
このため、サイドウォールの上部に形成する合金層は、ゲート電極の上部に形成する合金層と接することはなく、したがって、ゲート電極とその他の部分とが短絡することを防止できるのである。
【0033】
[構造の説明:図1]
以下、本発明の半導体装置について詳細に図面に基づいて説明する。図1は本発明の半導体装置を説明するための構造断面図である。
図1において、11は半導体基板、13は素子分離絶縁膜、17はゲート酸化膜、20はゲート電極、25は低濃度拡散領域、35はサイドウォール、37は高濃度拡散領域、43は第1の合金層、44は第3の合金層、45は第2の合金層である。これらの合金層は、高融点金属と半導体とで形成するシリサイドである。54はゲート部である。
ゲート電極20の側部には、サイドウォール35が形成しており、このサイドウォール35とゲート電極20とゲート酸化膜17とでゲート部54を形成し、低濃度拡散領域25と高濃度拡散領域37との拡散領域でソース・ドレイン部を形成している。
ゲート電極20の上部には第1の合金層43が形成しており、サイドウォール35の上部には第2の合金層45が形成してあり、高濃度拡散領域37の上部には第3の合金層44が形成してある。
以下の説明では半導体基板11にシリコン基板を、ゲート電極20に多結晶シリコンを
、合金層を形成するための高融点金属にチタンを用いる場合を例にして説明する。したがって、第1の合金層43と第2の合金層45と第3の合金層44とは、チタンシリサイドとなる
【0034】
図1に示すように、本発明の半導体装置は、半導体基板11としてシリコン基板を用い、半導体基板11上に素子分離絶縁膜13が形成されている。素子分離絶縁膜13のない部分が能動領域15である。素子分離絶縁膜13によって隣接する他の能動領域(図1には図示せず)との絶縁分離が行われている。
能動領域15上にゲート酸化膜17、さらにその上に多結晶シリコンからなるゲート電極20が形成されている。ゲート電極20の両側部には、絶縁体からなるサイドウォール35が形成されている。サイドウォール35は、その上端部がゲート電極20の上端部よりも高く位置しており、サイドウォール35のゲート電極20に接する面は、ゲート電極20上面に対してほぼ直角である。つまり、サイドウォールがゲート電極の上面を覆うことはない。
【0035】
したがって、半導体基板11の上部に高融点金属であるチタンを形成し、チタンシリサイドの合金層を形成するために熱処理を行っても、ゲート電極20の上面に形成する第1の合金層43であるチタンシリサイドと高濃度拡散領域37の上部に形成する第3の合金層44であるチタンシリサイドとは、サイドウォール35の上部に形成する第2の合金層45で短絡されることはない。すなわち、本発明の半導体装置は、サイドウォール35が山のように切り立っており、ゲート電極20に覆い被さることはないため、サイドウォール35に形成する第2の合金層45が、第1の合金層43と接触することはないのである。
【0036】
図1に示す本発明の半導体装置は、ゲート部54の上部のゲート電極20とサイドウォール35とによる段差、すなわちゲート部54の凹部を説明しやすくするために、この凹部が深いように記載した。この凹部により、平坦性が損なわれてしまうように思われるが、そうではない。ゲート電極20の上面部とサイドウォール35の上端部で形成される段差は微小なものである。
したがって、多層配線形成時などには、ゲート電極20やサイドウォール35および高濃度拡散領域37の上部に形成する層間絶縁膜(図示せず)によって段差は緩和され、半導体装置完成後に、段差により配線等の断線が起きることはなく、全く問題にはならないのである。
【0037】
半導体装置の電気的特性、例えば、しきい値を決める要因の1つに、ゲート電極20の膜厚がある。所望のしきい値を得るために、ゲート電極20の膜厚を薄く作らなければならないときがある。このような場合においては、ゲート部54の凹部はさらに深くなる。その際においては、チタンシリサイド形成後にゲート部54の凹部を絶縁膜等で埋めてしまえばよい。そうすることによって、後の製造工程では平坦性は全く問題にはならない。
【0038】
本発明の半導体装置では、高融点金属としてチタンを用いて説明を行ったが、高融点金属はチタンに限定されるものではなく、他の材料としてタンタルやジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、ニッケルなどを用いてもよいことは言うまでもない。ゲート電極20の配線幅や長さ、所望とする抵抗値などに応じて、高融点金属の材料を選択することが可能である。
【0039】
以上の説明で明らかなように、本発明の半導体装置を用いることで、短工程かつ低コストに、ゲート電極や拡散領域の抵抗値を下げつつもゲート電極と拡散領域との短絡を防いだ半導体装置を実現することが可能である。
【0040】
[製造方法の説明:図1から図8]
以下、図1から図8を用いて、本発明の半導体装置の製造方法について説明する。以下の説明では半導体基板11はn型のシリコン基板を、素子分離絶縁膜13としてシリコン酸化膜を、ゲート酸化膜17としてシリコン酸化膜を、ゲート電極20として多結晶シリコンを、犠牲層21はチタン窒化膜22とアルミニウム23の積層構造を、サイドウォール35としてPSG膜を、高融点金属41としてチタンを用いた場合を例にとって説明する。
【0041】
まず図2に示すように、シリコンからなるn型半導体基板11上に選択酸化法を用いて素子分離絶縁膜13としてシリコン酸化膜を500nmの膜厚で形成する。このシリコン酸化膜13の形成は、成膜速度の速いウェット酸化法を用いる。
シリコン酸化膜13に挟まれた領域が能動領域15となる。この能動領域15に後の工程によりMIS型トランジスタを形成する。また、半導体基板11には能動領域15が複数形成する場合があり、このシリコン酸化膜13によって能動領域15同士が絶縁分離される。さらに、図示はしないが、能動領域15の半導体基板11の表面にゲート酸化膜17を構成するためのシリコン酸化膜を10nmの膜厚で形成する。
【0042】
次に、図3に示すようにゲート電極20上に犠牲層21を形成する。その方法は次のようなものである。
半導体基板11上の全面に多結晶シリコンを形成し、さらに犠牲層21としてチタン窒化膜22、続いてアルミニウム23を形成する。多結晶シリコンは、CVD(Chemical Vapor Deposition)法にて300nmの膜厚で形成し、犠牲層であるチタン窒化膜22およびアルミニウム23は、スパッタリング法によって形成する。形成する膜厚は、チタン窒化膜22が10nm、アルミニウムが300nmである。
【0043】
ここで犠牲層21としてチタン窒化膜22とアルミニウム23の積層構造を用いている理由を説明する。
チタン窒化膜22は、ゲート電極20の構成材料である多結晶シリコンと、犠牲層として働くアルミニウム23との合金化を防ぐバリアメタルとしての役割を持つ。また、アルミニウム23はウェットエッチングによってエッチングしやすく、かつそのエッチング液がサイドウォール35に与えるダメージが少ないというメリットから用いている。
【0044】
もちろん犠牲層21の構成材料はチタン窒化膜とアルミニウムに限られたものではなく、バリアメタルとしてクロムやチタンタングステンなど、他の金属と合金を形成しにくい金属を用いることができる。アルミニウムの代わりとしてチタンなども使用可能である。また、犠牲層は2層に限られたものではなく、3層以上の組み合わせも可能であるし、単層の構成でもかまわない。
また、犠牲層21は導電材料に限られたものではなく、シリコン窒化膜などの絶縁材料も使用可能である。
【0045】
続いて、犠牲層21上の全面にホトレジスト(図示せず)を形成し、ホトリソグラフィによってゲート酸化膜17、多結晶シリコン、犠牲層21を所定の形状にパターンニングする。その後、ホトレジストを除去する。
これによって、他結晶シリコンはゲート電極20となり、このゲート電極20と半導体基板11との間にゲート酸化膜17を挟み、ゲート電極20上には、このゲート電極20の上部すべてを覆う犠牲層21が形成するという図3に示す構成となる。
【0046】
次に図4に示すように、半導体基板11上の全面にボロンなどのp型不純物イオンをドーズ量1×1013/cm程度でイオン注入する。
素子分離絶縁膜13が形成されている領域は、素子分離絶縁膜13がマスクとなって不
純物イオンが半導体基板11へ到達しない。また能動領域15は、ゲート電極20がマスクとなってゲート電極20以外の半導体基板11の表面に不純物イオンがイオン注入される。このイオン注入によって、半導体基板11の表面にp型の低濃度拡散領域25を形成する。
【0047】
次に図5に示すように、絶縁体からなる膜としてPSG膜(図示せず)を半導体基板11上の全面に200nmの膜厚で形成し、反応性異方性エッチング法を用いてエッチング処理を行うことでゲート電極20の側壁にサイドウォール35を形成する。この時、サイドウォール35は、ゲート酸化膜17、ゲート電極20および犠牲層21の側面を覆い、高さ方向は最大に高くても犠牲層21の上面を露出させる高さまでとする。これは後の工程で犠牲層21を除去する際に、犠牲層21表面が除去するための薬液やプロセスガスに触れる必要があるからである。
【0048】
続いて図6に示すように、犠牲層21を除去する。本発明の半導体装置では、アルミニウム23をリン酸と硝酸と酢酸との混合水溶液にてエッチングし、チタン窒化膜22を過酸化水素水とアンモニアとの混合水溶液にてエッチングする。リン酸と硝酸と酢酸との混合水溶液および過酸化水素水とアンモニアとの混合水溶液は、どちらもサイドウォール35をほとんどエッチングしないため、サイドウォール35の膜減りが生じることはない。
また、犠牲層21の除去は、ドライエッチングも可能である。例えば、アルミニウム23はCClやHBr、BCl、およびこれらの混合ガスなどをプロセスガスに用いてエッチングすることが可能である。また、チタン窒化膜22は、CClやCF、BCl、およびこれらの混合ガスなどをプロセスガスに用いてエッチングすることが可能である。
このように、犠牲層21を除去することで、ゲート酸化膜17とゲート電極20とサイドウォール35とからなるゲート部54が完成する。
【0049】
次に、図7に示すように、ゲート部54および素子分離絶縁膜13をマスクにして、半導体基板11全面へボロンなどのp型不純物イオンをドーズ量1×1015/cm程度でイオン注入する。素子分離絶縁膜13が形成されている領域は、素子分離絶縁膜13がマスクとなって不純物イオンが半導体基板11へ到達しない。また能動領域15は、ゲート部54がマスクとなってゲート部54以外の半導体基板11の表面に不純物イオンがイオン注入される。このイオン注入によって、半導体基板11の表面にp型の拡散領域37を形成する。
その後、例えば、窒素雰囲気中で、900℃の温度で30分程度の熱処理を行い、p型の低濃度拡散領域25とp型の拡散領域37とを活性化させる。
このようにして、p型の低濃度拡散領域25とp型の拡散領域37とからなるソース・ドレイン部が完成する。
【0050】
続いて図8に示すように、半導体基板11上全面へ高融点金属41を形成する。高融点金属41は、スパッタリング法によってチタンを膜厚100nm程度形成する。このときゲート部54では、サイドウォール35の上端部がゲート電極20の上端部よりも高く形成していることと、サイドウォール35のゲート電極20に接する面は、ゲート電極20上面に対してほぼ直角であることとにより、ゲート電極20上に形成されたチタンと、サイドウォール35および拡散領域37上に形成されたチタンとは離間した状態となっている。
【0051】
次に、シリサイド形成のためのアニール処理を行う。アニール処理の条件は、窒素雰囲気中で、600℃から650℃の温度で30秒間の急速熱処理(RTA)とする。急速熱処理によって、ゲート電極20上およびp型の拡散領域37上に、構成材料であるシリコンとチタンの合金層としてチタンシリサイドを形成する。ゲート電極20の上部には第1
の合金層43が形成され、p型の拡散領域37の上部には第3の合金層44が形成され、サイドウォール35の上部には第2の合金層45が形成される。
このとき、第2の合金層45と第3の合金層44とは接触するが、サイドウォール35の上端部がゲート電極20の上端部よりも高く形成されているため、第1の合金層43と第2の合金層45とは接触することなく、ゲート電極20と拡散領域37とは電気的に絶縁された状態となっている。
このようにして、図1に示す構成が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の半導体装置は、MIS型トランジスタの微細化と速い応答速度とを両立することができる。このため、高速動作を要求される電子機器用の半導体装置に適しており、さらに高集積化し小型化が必要な電子機器用の半導体装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態を示す構造断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す工程断面図である。
【図9】従来技術を示す工程断面図である。
【図10】従来技術を示す工程断面図である。
【図11】従来技術を示す工程断面図である。
【図12】従来技術を示す工程断面図である。
【図13】従来技術を示す工程断面図である。
【図14】従来技術を示す工程断面図である。
【図15】従来技術を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0054】
11 半導体基板
13 素子分離絶縁膜
15 能動領域
17 ゲート酸化膜
20 ゲート電極
21 犠牲層
22 チタン窒化膜
23 アルミニウム
25 低濃度拡散領域
35 サイドウォール
37 拡散領域
41 高融点金属
43 合金層
44 合金層
45 合金層
54 ゲート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設ける能動領域にゲート部と拡散領域とを有する半導体素子を設け、前記ゲート部は、ゲート電極の側部にサイドウォールを備える半導体装置において、
前記サイドウォールの上端部を前記ゲート電極の上端部よりも高くしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極の上端部には、前記ゲート電極を構成する材料と高融点金属とからなる第1の合金層を有し、
前記サイドウォールの表面には、前記サイドウォールを構成する材料と高融点金属とからなる第2の合金層を有し、
前記拡散領域の表面には、前記拡散領域を構成する半導体材料と高融点金属とからなる第3の合金層を有し、
前記第1の合金層と前記第2の合金層とは離間することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート部の上部は凹部形状を有することを特徴とする請求項1から2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記凹部の内壁である前記サイドウォールの側面は、前記凹部の底部である前記ゲート電極の上面に対してほぼ直角であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板に能動領域を設ける工程と、前記能動領域にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極の上部すべてを覆う犠牲層を形成する工程と、前記半導体基板上に絶縁体からなる膜を形成し、前記ゲート電極と前記犠牲層との側部に前記絶縁体からなる膜を残しサイドウォールとして形成する工程と、前記能動領域に拡散領域を形成する工程と、前記犠牲層を除去する工程と、前記半導体基板上に高融点金属を形成する工程と、
加熱処理によって、前記ゲート電極の上部には前記ゲート電極を構成する材料と前記高融点金属とからなる第1の合金層と、
前記サイドウォールの表面には前記サイドウォールを構成する材料と前記高融点金属とからなる第2の合金層と、
前記拡散領域の表面には前記拡散領域を構成する半導体材料と前記高融点金属とからなる第3の合金層とを形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−80321(P2006−80321A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263217(P2004−263217)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】