説明

半導体装置の製造方法ならびに半導体装置

【課題】400℃程度の耐熱性を有するNd添加量2at%のAlNd層をプラズマエッチングにおいてフェンスと呼ばれる反応生成物の堆積を抑制できるエッチング方法を提供する。
【解決手段】プラズマエッチングを行うエッチングガスとして塩素ガスを用い、エッチング速度を250nm/分以下のエッチング速度でエッチングが行われるよう塩素ガスを供給する。ネオジム塩化物は蒸気圧がアルミニウム塩化物に比べて低いが、250nm/分以下のエッチング速度となるようプラズマエッチングすることで、アルミニウム塩化物と同時に蒸発させることができるため、フェンスの発生を抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法ならびに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム(以下Alと記載する)にネオジム(以下Ndと記載する)を添加した合
金(以下、AlNdと記載する)は、熱処理時に発生するヒロック(微細な突起状欠陥)
の発生を純Alを用いた場合と比べ、抑えることができる。非特許文献1に示されるよう
に、Ndを2at%程度添加することで400℃1時間の熱処理に耐える特性を有してい
る。また、Ndの添加量が少なくてもヒロックの発生を抑えられることから、他の物質を
加えてヒロックを抑えた場合と比べ、合金散乱による抵抗率上昇を最低限に抑えることが
できる。
【0003】
たとえばAlNd層を用い、このAlNd層をマスクとして薄膜トランジスタ(以下、
TFTと呼称する)にイオン注入された不純物を活性化する熱処理として、400℃程度
の熱処理が必要となるが、2at%程度のNdを含むAlNd層はこの工程に耐える耐熱
性を有している。そのため、液晶パネル等の配線材料として好適に用いられている。2a
t%程度のNdを含むAlNdをエッチングする工程では、特許文献2に示すように、主
にウェットエッチングが用いられている。
【0004】
近年、ディスプレイパネルに求められてきている高精細化に対応するため、ウェットエ
ッチング法で得られる寸法精度では不足となり、寸法精度が高いドライエッチング法が研
究されてきている。そして、選択的な方向にエッチング反応種を基板に導入させることが
できるプラズマエッチング法が好適な方法として活用されてきている。たとえば、プラズ
マエッチング法を用いて2at%程度のNdを含むAlNdをエッチングする方法として
、非特許文献1に示すエッチング方法が知られている。これは、エッチングガスとして、
アルゴン300sccm、三塩化硼素ガスを約160sccm、塩素ガスを約20scc
mの流量で供給される硼素リッチなエッチングガスを用いてプラズマエッチングを行うも
のである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−55842号公報
【特許文献2】特開2004−296297号公報
【非特許文献1】神戸製鋼技報/Vol.52.No.2(Sep.2002)・2頁−11頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2at%程度のNdを含むAlNdに対しプラズマエッチングを行うと、エッチングに
より得られたパターン側面にフェンスと呼ばれる、反応生成物が堆積した領域が生じる場
合がある。これは、三塩化硼素ガスの流量比を多くした条件を用いてプラズマエッチング
を行う場合に頻発する。
【0007】
図7は、基板上に形成されたAlNdパターン側面に反応生成物が付着した状態を示す
SEM写真である。これは、ヒドロキシルアミン系の溶剤に可溶であることから、AlN
dがスパッタされて再付着したものではなく、AlやNdの塩化物や酸化物が堆積された
ものと推測されている。フェンスの存在により、AlNd層をゲート電極としてTFTを
形成した場合、ゲート電極脇に電気的に不安定な領域ができることから、TFTの電気的
特性が不安定になるおそれがある。また、フェンス内には活性の高い塩素ガスや酸素が含
まれるため、AlNd層を用いたゲート電極や他の配線層を徐々に腐蝕し、信頼性を低下
させる要因となる課題がある。
【0008】
また、プラズマエッチング装置内に反応生成物(たとえば酸化硼素)が付着するため、
頻繁にプラズマエッチング装置のクリーニングを行う必要が生じ、量産性が低下するとい
う課題がある。
【0009】
また、プラズマエッチングを行う場合の雰囲気ガスとして、非特許文献1にあるように
、塩素ガスに加えられる三塩化硼素ガスの添加比率を低下させることでフェンスの形成を
抑制できるが、特許文献1(段落0028)に記載されているように、1at%超のNd
を添加したAlNd層のプラズマエッチングを行う場合には、実用的な条件範囲では三塩
化硼素ガスの添加比率を下げることが困難となる。
【0010】
さらに特許文献1(段落0067)では、「塩素ガス/塩化硼素ガス=120sccm
/60sccm」と、塩化硼素ガスが1/3を占めるガス流量比を用いた例について記載
しているが、よりエッチングが困難な条件となる塩化硼素ガスの比率を低下させた場合の
対応については一切触れられていない。
【0011】
そのため、塩化硼素ガスの比率を低下させた場合、あるいは塩素ガスのみを用いる場合
の対応についての説明はなく、塩化硼素ガスの比率が少ない、あるいは純塩素ガスによる
AlNd層のプラズマエッチング方法についての技術が開示されておらず、Ndの添加量
が高い場合のプラズマエッチングが行えないという課題がある。
【0012】
また、非特許文献1に示されるように、Ndの添加量が0.7at%程度の場合、耐熱
性としては250℃1時間程度となり、TFTにイオン注入された不純物を活性化しうる
温度に耐えられなくなる。そのため、不純物の活性化に有効な400℃の熱処理に耐えう
る、Ndを2at%程度含むAlNd層をエッチングする場合にはウェットエッチングを
用いることが現状であるが、上述したように、ウェットエッチングは寸法精度が低く、近
年求められている高精細ディスプレイに対しての適用は困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形
態または適用例として実現することが可能である。なお、「上」とは、基板内部からネオ
ジムが添加されたアルミニウム合金層側に向かう方向と定義する。
【0014】
[適用例1]本適用例にかかる半導体装置の製造方法は、ネオジムが添加されたアルミ
ニウム合金層上に、マスクパターンが形成された基板をプラズマエッチングする半導体装
置の製造方法であって、プラズマエッチングを行うエッチングガスとして塩素ガスを用い
、エッチング速度が150nm/分以上250nm/分以下の範囲でエッチングが行われ
るよう塩素ガスを供給することを特徴とする。
【0015】
これによれば、ネオジム塩化物の蒸発速度と比較して遅い速度でエッチングを行うこと
が可能となる。ネオジム塩化物は蒸気圧がアルミニウム塩化物に比べて低いが、250n
m/分以下のエッチング速度となるようプラズマエッチングすることで、アルミニウム塩
化物と同時に蒸発させることができるため、フェンス(エッチングにより露出した配線層
側面に反応生成物が堆積したもの)の発生を抑えることが可能となる。また、エッチング
速度を150nm/分以上とすることで、短いエッチング時間で加工を行うことが可能と
なり、量産性を確保することが可能となる。
【0016】
[適用例2]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、前記アルミニウム合
金層の前記基板側にチタン、窒化チタン、モリブデン、クロム、タンタル、タングステン
からなる層を密着形成していることを特徴とする。
【0017】
上記した適用例によれば、ネオジムが添加されたアルミニウム合金層に発生するボイド
(空洞状の欠陥)や、ヒロックの発生を抑えることが可能となる。ボイドや、ヒロックの
発生を抑える機構は明確には把握していないが、金属層が、密接する他の層との間に生じ
る製造工程中の熱応力を緩和する緩衝層として機能しているものと推測している。
【0018】
[適用例3]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、前記アルミニウム合
金層の前記基板と反対側にチタン、窒化チタン、モリブデン、クロム、タンタル、タング
ステンからなる層を密着形成していることを特徴とする。
【0019】
上記した適用例によれば、ネオジムが添加されたアルミニウム合金層に発生するボイド
や、ヒロックの発生を抑えることが可能となる。ボイドや、ヒロックの発生が押えられる
機構については明確ではないが、金属層が、密接する他の層との間に生じる製造工程中の
熱応力を緩和する緩衝層として機能しているものと推測している。また、適用例2と適用
例3を合わせて、アルミニウム合金層を挟むように上記した金属層を密着形成しても良い
。この場合、より確実にボイドや、ヒロックの発生を抑制することが可能となる。
【0020】
[適用例4]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、前記エッチングガス
として塩素ガスに代え、塩素ガスを標準状態に換算した流量に対して、塩化硼素ガスを標
準状態に換算した流量で20%以下の比率で添加したエッチングガスを用いたことを特徴
とする。
【0021】
上記した適用例によれば、プラズマエッチングを行う処理室内に堆積される硼素起因の
反応生成物の付着を抑えることができる。塩化硼素ガスは、残留酸素等に起因するネオジ
ム酸化物を還元する機能を有しており、ネオジム酸化物残りを抑えた状態でプラズマエッ
チングを行うことが可能となる。塩素ガスを標準状態に換算した流量に対して、標準状態
に換算した流量で、20%以下の塩化硼素ガスを添加した場合では、プラズマエッチング
は塩素イオンや塩素ラジカルを主としてエッチングが進められ、さらに残留酸素分との反
応に伴うネオジム残渣を除去できる。また、塩化硼素ガスの標準状態換算での流量比率は
塩素ガスの20%と比べ少ないため、フェンスの発生を抑えることが可能となる。
【0022】
[適用例5]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、前記エッチングガス
に希ガスを加えてプラズマエッチングを行うことを特徴とする。
【0023】
上記した適用例によれば、ネオジム塩化物濃度を、プラズマエッチングに対する寄与が
小さい希ガスの導入により相対的に薄めることが可能となる。そのため、フェンスの発生
を抑えることが可能となる。
【0024】
[適用例6]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、ネオジムの添加量は
、アルミニウムに対して0.5at%以上3.0at%以下であることを特徴とする。
【0025】
上記した適用例によれば、ネオジムの添加量を0.5at%以上にすることで、純アル
ミニウムを用いた場合と比べ、熱処理に伴うヒロック(微細な突起状欠陥)の発生を抑制
することが可能となる。そして、ネオジムの添加量を3.0at%以下に抑えることで、
フェンスの発生を抑えることを可能とする半導体装置の製造方法を提供することが可能と
なる。さらに、塩化硼素ガスの標準状態での流量を塩素ガスの標準状態の20%以下に抑
えることで、プラズマエッチング装置内に付着する反応生成物の量を抑えることが可能と
なるため、プラズマエッチング装置のクリーニング頻度を下げることが可能となり、プラ
ズマエッチング装置の稼働率を上げることが可能となる。
【0026】
[適用例7]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、ネオジムの添加量は
、アルミニウムに対して1.0at%超2.5at%以下であることを特徴とする。
【0027】
上記した適用例によれば、ネオジムの添加量を1.0at%超とすることで、350℃
程度の熱処理を行ってもヒロック(微細な突起状欠陥)の発生を抑制することが可能とな
る。特に、1.8at%以上2.2at%以下のネオジムを添加することで、400℃1
時間の熱処理を行ってもヒロックの発生が抑えられ、高い不純物活性化効率を有する熱処
理が可能となる。そして、ネオジムの添加量を2.5at%以下に抑えることで、フェン
スの発生や、合金散乱による導電率の低下を防いだ条件で半導体装置の製造方法を提供す
ることが可能となる。
【0028】
[適用例8]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、プラズマを発生させ
るためのパワー密度を0.4W/cm2以上1.0W/cm2以下とすることを特徴とする

【0029】
上記した適用例によれば、0.4W/cm2以上の出力でプラズマを発生させることで
、実用的なエッチング速度(塩素ガス流量範囲)でネオジムが添加されたアルミニウム合
金層をプラズマエッチングすることが可能となる。また、1.0W/cm2以下の出力で
プラズマを発生させることで、60°以下程度の順テーパー角をもってプラズマエッチン
グすることが可能となる。順テーパー角をもってネオジムが添加されたアルミニウム合金
層をエッチングすることで、ネオジム反応生成物を滞留させることなく放出させることが
可能となる。そのため、ネオジムに起因するフェンスの発生を抑制することが可能となる

【0030】
[適用例9]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、プラズマを基板側に
引き出すバイアス電力を0.75W/cm2以上1.5W/cm2以下とすることを特徴と
する。
【0031】
上記した適用例によれば、0.75W/cm2以上のバイアス電力を用いることで、実
用的なエッチング速度(塩素ガス流量範囲)を得ることができる。そして1.5W/cm
2以下のバイアス電力を用いることで、プラズマの過剰な引き込みによるネオジム塩化物
の基板からの放出を妨げることなくエッチングを行うことができ、ネオジムに起因するフ
ェンスの発生を抑制することが可能となる。
【0032】
[適用例10]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法であって、プラズマを基板側
に引き出すバイアス周波数を2.0MHz以上6.0MHz以下とすることを特徴とする

【0033】
上記した適用例によれば、2.0MHz以上の周波数を用いることで過剰な物理的イオ
ンの衝突(イオンボンバード)による損傷を抑制することができる。そして、6.0MH
z以下の周波数を用いることで蒸気圧が低いネオジム塩化物を機械的(イオンの衝突)に
より除去することで、フェンスの発生を抑制することが可能となる。
【0034】
[適用例11]上記適用例にかかる半導体装置の製造方法を用いて形成されることを特
徴とする半導体装置。
【0035】
これによれば、ネオジムが添加されたアルミニウム合金層をフェンスを残すことなく加
工した電極や、配線を用いて半導体装置を形成することが可能となるため、基板内での面
内分布を抑え、かつ信頼性の高い半導体装置を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(第1実施形態:プラズマエッチング装置の構成)
以下、第1実施形態としてプラズマエッチング装置の構成について図面を用いて説明す
る。図1は、本実施形態にかかるプラズマエッチング装置として好適に用いられるICP
(誘導結合プラズマ)エッチング装置の構成を示す外略図である。ICPエッチング装置
100は、基板200を搬送する搬送系101、ゲートバルブ102、処理室103、対
向電極104、基板支持部105、結合コンデンサ106、ACバイアス電源107、ア
ンテナ108、ガス供給系109、ガス排気系110、RF電源111、予備排気系11
2、予備排気室113を含み、基板200を処理する。
【0037】
搬送系101は、基板200を大気中から、処理室103へと搬送する機能を有してい
る。ゲートバルブ102は、大気と処理室103との間を気密封止し、基板200を処理
室103から挿入/排出する場合に開放される。予備排気室113は、基板200を大気
中から搬送した際に入る大気を予備排気系112より排出し、処理室103への大気の混
入を抑制する機能を果たしている。
【0038】
アンテナ108は、処理室103内で、ガス供給系109から供給されるエッチングガ
スを励起し、誘導結合によりプラズマを発生させる機能を有している。そして、ガス供給
系109は、図示せぬガス流量コントローラから供給されるエッチングガスを処理室10
3に導入する機能を有している。ガス排気系110は、図示せぬターボ分子ポンプや圧力
制御機構により、処理室103内の圧力を制御している。
【0039】
RF電源111は、13.56MHzの高周波電力をアンテナ108に供給することで
、処理室103内でのプラズマを発生、維持するためのエネルギーを供給している。
【0040】
ACバイアス電源107は、結合コンデンサ106を介して、対向電極104と基板2
00との間にDCバイアスを発生させ、異方性エッチングのアスペクト比や、プラズマ中
からのイオンの引き込みによるエッチング(イオンボンバードメント)状態の制御を行っ
ている。結合コンデンサ106は、ACバイアス電源107からの高周波電力を受けて、
プラズマ中に発生するDC電位を保持する機能を有している。
【0041】
図中、アンテナ108として2ターンの構成を有するものを用いているが、これは1タ
ーン型のものや、多ターン型のものを用いても良い。また、ここではICPエッチング装
置について説明したが、これはECR(電子サイクロトロンスピン共鳴)プラズマエッチ
ング装置や、HWP(ヘリコン波励起プラズマ)エッチング装置等、プラズマ励起エネル
ギーとプラズマ引き込みエネルギーとを独立して扱えるプラズマエッチング装置を用いて
も良い。また、図1において、対向電極104は省略可能であり、プラズマと基板200
との間にバイアス電力を供給するようにしても良い。
【0042】
次にECRプラズマエッチング装置の概要について説明する。図5は、ECRプラズマ
エッチング装置の外略図である。給排気系や搬送系は省略している。石英窓から入射され
たマイクロ波により励起されたプラズマは、磁石からの磁気と協働して電子サイクロトロ
ン共鳴を起こし、高効率なプラズマを発生する。プラズマは、ACバイアス電源との間に
挿入された、直流成分を遮るためのコンデンサを介して処理室内に配置された基板にAC
バイアスが与えられる。このACバイアスにより、プラズマ内にDC電位が発生し(電子
とイオンとの速度差により生じている)、基板のエッチング状態を制御している。即ち、
プラズマを生成する電力と、プラズマを引き込む電力とは、独立して制御されている。
【0043】
次に、HWPエッチング装置の概要について説明する。図6は、HWPエッチング装置
の外略図である。給排気系や搬送系は省略している。RF電源からアンテナに供給された
高周波電力は、磁石と協働してヘリコン波を発生させる。ヘリコン波により励起されたプ
ラズマは、ACバイアス電源との間に挿入された、直流成分を遮るためのコンデンサを介
して処理室内に配置された基板にACバイアスが与えられる。このACバイアスにより、
プラズマ内にDC電位が発生し(電子とイオンとの速度差により生じている)、基板のエ
ッチング状態を制御している。即ち、プラズマを生成する電力と、プラズマを引き込む電
力とは、独立して制御されている。
【0044】
このように、生成する電力とプラズマを引き込む電力とが、独立に制御できるプラズマ
エッチング装置を用いる場合、以下に示すプラズマエッチング法が適用可能である。
【0045】
(第2実施形態:プラズマエッチング工程)
以下、第2実施形態としてプラズマエッチング工程について図面を用いて説明する。プ
ラズマエッチング工程に用いる装置としては、たとえば第1実施形態で説明したICPエ
ッチング装置や、ECRプラズマエッチング装置、HWPエッチング装置等、プラズマ励
起エネルギーとプラズマ引き込みエネルギーとを独立して扱えるプラズマエッチングを用
いることが好適である。本実施形態では、例としてECRプラズマエッチング装置を用い
た例について説明する。
【0046】
図2(a)〜(c)は、プラズマエッチング工程を行うパターンとして、典型的な例と
なるゲート電極の形成を行う工程を示す工程断面図である。図2(a)は、プラズマエッ
チングを行う前の状態の工程断面図を示している。図2(a)に示されるように、無アル
カリガラスを用い、バッファ層として酸化珪素が堆積された基板200上には、多結晶シ
リコン層201が島状に配置されている。そして、多結晶シリコン層201上には、ゲー
ト絶縁層202として層厚100nm程度の酸化珪素層が形成されている。ゲート絶縁層
202の厚みは、後述するTFTの耐圧に依存するため、この層厚は一例を示すべく目安
として記載している。ゲート絶縁層202上には、2at%程度のNdが添加されたAl
Nd層203が形成されている。AlNd層203は、たとえばスパッタ法を用いて形成
することができる。ここで、Ndの添加量としては、0.5at%超3.0at%以下で
あることが好適で、純アルミニウムと比べ、熱処理を行ってもヒロック(微細な突起状欠
陥)の発生が抑制される。
【0047】
また、1.0at%超2.5at%以下のNdを添加することで、350℃程度の熱処
理を行ってもヒロック(微細な突起状欠陥)の発生を抑制することが可能となる。そして
、Ndの添加量を2.5at%以下に抑えることで、フェンスの発生や、合金散乱による
導電率の低下を防いだ条件で半導体装置の製造方法を提供することが可能となる。
【0048】
特に、1.8at%以上2.2at%以下のNdを添加することで、400℃1時間の
熱処理を行ってもヒロックの発生が抑えられ、高い不純物活性化効率を有する熱処理が可
能となる。そして、Ndの添加量を3.0at%以下に抑えることで、フェンスの発生や
、合金散乱による導電率の低下を抑制することが可能となる。
【0049】
AlNd層203上には、マスクパターンとしてのフォトレジスト層230が形成され
ている。ここで、フォトレジスト層230の形状としては、40°以上90°未満程度の
テーパー角を持って形成されていることが好ましい。90°未満程度のテーパー角にする
と、AlNd層203をプラズマエッチングする際にフォトレジスト層230やAlNd
層203をプラズマエッチングすると同時に発生する反応生成物ガスを滞留させることな
く処理室103(図1参照)を介してガス排気系110(図1参照)に排気させることが
できる。また、40°以上のテーパー角にすることで、フォトレジスト層230の加工が
容易となる上、パターン精度を落とすことなくAlNd層203を加工することが可能と
なる。
【0050】
また、プラズマエッチングの進行に伴い、フォトレジスト層230の一部も同時に進行
し、AlNd層203にもテーパー角が形成され、反応生成物ガスの排出を妨げることな
くプラズマエッチングを行うことが可能となる。AlNd層203のテーパー角としては
、50°以上80°以下程度が好ましい。80°以下のテーパー角をとることで、AlN
d層203をプラズマエッチングする際にフォトレジスト層230やAlNd層203を
プラズマエッチングすると同時に発生する反応生成物ガスを滞留させることなく処理室1
03(図1参照)を介してガス排気系110(図1参照)に排気させることができる。ま
た50°以上のテーパー角にすることで、AlNd層203の加工が容易となる上、パタ
ーン精度を落とすことなくAlNd層203を加工することが可能となる。図2(b)は
、プラズマエッチング途中での状態を示す工程断面図である。
そして、プラズマエッチング終了後、フォトレジスト層230をたとえばアッシング等
の処理により、除去する。図2(c)は、フォトレジスト層230を除去し、ゲート電極
として機能するAlNd層203のプラズマエッチング工程を終えた状態での工程断面図
である。
【0051】
プラズマエッチング条件としては、エッチングガスとして塩素ガスを用い、150nm
/分以上250nm/分以下のエッチング速度でエッチングされるように塩素ガス流量を
制御することが好ましい。Nd塩化物は蒸気圧がAl塩化物に比べて低いが、250nm
/分以下のエッチング速度となるようプラズマエッチングすることで、Al塩化物と同時
に蒸発させることができるため、フェンスの発生を抑えることが可能となる。また、エッ
チング速度を150nm/分以上とすることで、短いエッチング時間で加工を行うことが
可能となり、量産性を確保することが可能となる。
【0052】
また、上記した工程を行う場合に、塩素ガスに加えて塩素ガスの流量に対して20%以
下の流量の塩化硼素ガスを添加しても良い。この程度の塩化硼素ガスの添加では、プラズ
マエッチングを行う処理室103(図1参照)内に堆積される硼素起因の反応生成物の付
着量は塩素ガスや、塩素ガスと希ガスを混入したガスを用いた場合に準ずる程度に抑える
ことができる。塩化硼素ガスは、残留酸素等に起因するNd酸化物を還元する機能を有し
ており、Nd酸化物の残渣を除去しうる条件でプラズマエッチングを行うことが可能とな
る。
【0053】
また、塩素ガスや、塩素ガスに塩化硼素を添加したエッチングガスに、アルゴンやヘリ
ウム、ネオン、クリプトン、キセノンに代表される希ガスを混入しても良い。この場合、
Nd塩化物濃度を、プラズマエッチングに対する寄与が小さい希ガスの導入により相対的
に薄めることが可能となる。そのため、フェンスの発生を抑えることが可能となる。
【0054】
そして、プラズマを励起する条件としては、パワー密度として0.4W/cm2以上1
.0W/cm2以下程度の値を用いることが好適である。0.4W/cm2以上の出力でプ
ラズマを発生させることで、実用的なエッチング速度でAlNdをプラズマエッチングす
ることが可能となる。また、1.0W/cm2以下の出力でプラズマを発生させることで
、60°以下程度の順テーパー角をもってプラズマエッチングすることが可能となる。順
テーパー角をもってAlNd層をエッチングすることで、Ndを含む反応生成物を滞留さ
せることなく放出させることが可能となる。そのため、Ndに起因するフェンスの発生を
抑制することが可能となる。
【0055】
そして、プラズマを基板側に引き出すバイアス電力は、0.75W/cm2以上1.5
W/cm2以下であることが好適である。0.75W/cm2以上のバイアス電力を用いる
ことで、実用的なエッチング速度を得ることができる。そして1.5W/cm2以下のバ
イアス電力を用いることで、プラズマの過剰な引き込みによるNd塩化物の基板からの放
出を妨げることなくエッチングを行うことができ、Ndに起因するフェンスの発生を抑制
することが可能となる。
【0056】
また、プラズマを基板側に引き出すバイアス周波数は2.0MHz以上6.0MHz以
下程度とすることが好適である。2.0MHz以上の周波数を用いることで過剰な物理的
イオンの衝突(イオンボンバード)による損傷を抑制することができる。そして、6.0
MHz以下の周波数を用いることで蒸気圧が低いNd塩化物を機械的(イオンの衝突)に
より除去することで、フェンスの発生を抑制することが可能となる。
【0057】
そして、上記した条件範囲の一例として、以下の条件でプラズマエッチングを行った。
図3は、以下に示す条件で図1に示すICPエッチング装置100を用いてプラズマエッ
チングを行った場合の断面SEM写真である。
【0058】
電極間距離(図1に示す対向電極104と基板支持部105との距離):150mm、
処理室103内の圧力:0.6Pa、プラズマ励起出力:1500W、プラズマ引き込み
出力:2500W、プラズマ引き込み周波数:3.0MHz、塩素ガス流量:200sc
cm、プラズマ励起周波数:13.56MHz、基板200には400mm×500mm
の寸法を有する無アルカリガラスを用いている。図3に示すように、図7で見られたフェ
ンスは無く、テーパー形状を有するAlNd層203をプラズマエッチング法で加工する
ことが可能である。
【0059】
ここで、同様の条件を用いることで、図5に示したECRプラズマエッチング装置や、
図6に示したHWPエッチング装置等、プラズマ励起エネルギーとプラズマ引き込みエネ
ルギーとを独立して扱えるプラズマエッチング装置を用いた場合でも、図3に示すように
フェンス形成を抑えた形状にプラズマエッチングを行うことが可能である。なお、図1に
示した対向電極104を有さない装置を用いる場合には、上記した電極間距離という記載
は無効となる。これは、対向電極を有さない他のプラズマエッチング装置を用いた場合に
おいても同様である。この場合においては、対向電極104に代えてプラズマと基板20
0との間に、プラズマ引き込みエネルギーが印加されることとなる。すなわち、プラズマ
と基板との平均距離が電極間距離として存在するものとしてエッチングが進行する。
【0060】
図5に示したECRプラズマエッチング装置や、図6に示したHWPエッチング装置等
を用いても、図3に示すように、図7で見られたフェンスは無く、テーパー形状を有する
AlNd層203をプラズマエッチング法で加工することが可能である。
【0061】
本実施形態の特徴としては、たとえば塩素ガスの標準状態での流量に対して、塩化硼素
ガスを標準状態の流量で20%以下(0%を含む)の比率で添加したエッチングガスを用
いていることが挙げられる。塩素ガスが占める割合が高いエッチングガスを用いることで
、フェンスの発生や処理室103内に付着する反応生成物の量を抑えることが可能となる
。また、処理室103内のクリーニング頻度を下げることが可能となる。
【0062】
また、上記した実施形態では、AlNd層203を単層で用いた例について述べたが、
これは、AlNd層203の基板200側に、チタン、窒化チタン、モリブデン、クロム
、タンタル、タングステンを含む層を形成しても良い。この場合、AlNd層203に発
生するボイド(空洞状の欠陥)や、ヒロックの発生を抑えることが可能となる。ボイドや
、ヒロックの発生を抑える機構は明確には把握していないが、金属層が、基板との間に生
じる製造工程中の熱応力を緩和する緩衝層として機能しているものと推測している。
【0063】
AlNd層203の、基板200と対向する方向にチタン、窒化チタン、モリブデン、
クロム、タンタル、タングステンを含む層を形成しても良い。この場合でも、AlNd層
203に発生するボイドや、ヒロックの発生を抑えることが可能となる。ボイドや、ヒロ
ックの発生が抑えられる機構については明確ではないが、金属層が密接する他の層との間
に生じる製造工程中の熱応力を緩和する緩衝層として機能しているものと推測している。
【0064】
また、AlNd層203の両側にチタン、窒化チタン、モリブデン、クロム、タンタル
、タングステンを含む層を形成しても良い。この場合、より確実にボイドや、ヒロックの
発生を抑えることが可能となる。
【0065】
(第3実施形態:半導体装置)
以下、第3実施形態として、半導体装置としてのTFTについて説明する。本実施形態
のTFTは、第2実施形態で例示したプラズマエッチング法を用いてエッチングしたAl
Nd層203をゲート電極として用いている。図4は、第2実施形態で例示したプラズマ
エッチング法を用いて形成したTFTの断面図である。
【0066】
なお、第2実施形態で例示したように、ECRプラズマエッチング装置や、HWPエッ
チング装置等、プラズマ励起エネルギーとプラズマ引き込みエネルギーとを独立して扱え
るプラズマエッチング装置を用いてAlNd層203をエッチングしたものを用いても良
い。TFT220は、基板200、多結晶シリコン層201、ゲート絶縁層202、ゲー
ト電極としてのAlNd層203、ソース204、ソース側LDD205、チャネル20
6、ドレイン側LDD207、ドレイン208、を含む。
【0067】
基板200上には、多結晶シリコン層201を用いたソース204、ソース側LDD2
05、チャネル206、ドレイン側LDD207、ドレイン208、ソース側電極209
、ドレイン側電極210が形成される。ここで、AlNd層203のNd濃度を2at%
程度としている。
【0068】
ソース204とドレイン208は、チャネル206を通して伝達されるキャリアを供給
する機能を有している。ソース204とドレイン208は、図示せぬ電極に対してオーム
性接触を可能とすべく、高い不純物濃度が与えられている。
【0069】
ソース側LDD205、ドレイン側LDD207は、チャネル206の端部近傍に配置
され、ソース204とドレイン208と、チャネル206との間の不純物濃度を備え、A
lNd層203(ゲートとして機能する)の端部で生じる電界集中を緩和するために形成
されている。
【0070】
チャネル206は、AlNd層203(ゲートとして機能する)からゲート絶縁層20
2を介して印加される電界に応じたキャリアを誘起し、TFT220のコンダクタンスを
変調する機能を有している。
【0071】
ソース側電極209はソース204と、ドレイン側電極210はドレイン208と、そ
れぞれ接続され、図示せぬ外部回路とTFT220とを電気的に接続させる機能を有して
いる。
【0072】
上記したように、AlNd層203のNd濃度を2at%程度にすることで、400℃
1時間のアニールがヒロックを発生させることなく行えるため、高い濃度の不純物が添加
されたソース204とドレイン208中の不純物を活性化させることが可能となる。その
ため、ソース側電極209とソース204とのコンタクト抵抗、およびドレイン側電極2
10とドレイン208とのコンタクト抵抗を低い値で、かつ面内分布を抑えて電気的に接
続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ICPエッチング装置の構成を示す外略図。
【図2】(a)〜(c)は、プラズマエッチング工程を行うパターンとして、典型的な例となるゲート電極の形成を行う工程を示す工程断面図。
【図3】本実施形態のエッチング条件でICPエッチング装置を用いてプラズマエッチングを行った場合の断面SEM写真。
【図4】第2実施形態で示したプラズマエッチング法を用いて形成したTFTの断面図。
【図5】ECRプラズマエッチング装置の外略図。
【図6】HWPエッチング装置の外略図。
【図7】基板上に形成されたAlNdパターン側面に反応生成物が付着した状態を示すSEM写真。
【符号の説明】
【0074】
100…ICPエッチング装置、101…搬送系、102…ゲートバルブ、103…処
理室、104…対向電極、105…基板支持部、106…結合コンデンサ、107…AC
バイアス電源、108…アンテナ、109…ガス供給系、110…ガス排気系、111…
RF電源、112…予備排気系、113…予備排気室、200…基板、201…多結晶シ
リコン層、202…ゲート絶縁層、203…AlNd層、204…ソース、205…ソー
ス側LDD、206…チャネル、207…ドレイン側LDD、208…ドレイン、209
…ソース側電極、210…ドレイン側電極、220…TFT、230…フォトレジスト層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジムが添加されたアルミニウム合金層上に、マスクパターンが形成された基板をプ
ラズマエッチングする半導体装置の製造方法であって、プラズマエッチングを行うエッチ
ングガスとして塩素ガスを用い、エッチング速度が150nm/分以上250nm/分以
下の範囲でエッチングが行われるよう塩素ガスを供給することを特徴とする半導体装置の
製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、前記アルミニウム合金層の前記基板
側にチタン、窒化チタン、モリブデン、クロム、タンタル、タングステンからなる層を密
着形成していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法であって、前記アルミニウム合金層の
前記基板と反対側にチタン、窒化チタン、モリブデン、クロム、タンタル、タングステン
からなる層を密着形成していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記エッチング
ガスとして塩素ガスに代え、塩素ガスを標準状態に換算した流量に対して、塩化硼素ガス
を標準状態に換算した流量で20%以下の比率で添加したエッチングガスを用いたことを
特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記エッチング
ガスに希ガスを加えてプラズマエッチングを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法

【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、ネオジムの添加
量は、アルミニウムに対して0.5at%以上3.0at%以下であることを特徴とする
半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、ネオジムの添加
量は、アルミニウムに対して1.0at%超2.5at%以下であることを特徴とする半
導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、プラズマを発生
させるためのパワー密度を0.4W/cm2以上1.0W/cm2以下とすることを特徴と
する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、プラズマを基板
側に引き出すバイアス電力を0.75W/cm2以上1.5W/cm2以下とすることを特
徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、プラズマを基板
側に引き出すバイアス周波数を2.0MHz以上6.0MHz以下とすることを特徴とす
る半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法を用いて形成されること
を特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−141082(P2010−141082A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315308(P2008−315308)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】