説明

半導体装置の製造方法

【課題】 極短時間アニール処理を行う際に、基板自体の損傷を抑制する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体基板上にゲート電極を形成する工程と、前記半導体基板に導電性の不純物を導入する工程と、前記半導体基板及び前記ゲート電極上に保護膜を形成する工程と、前記保護膜を形成後に前記半導体基板の裏面全面を研磨する工程と、前記半導体基板の裏面全面を研磨した後に前記半導体基板の表面が1000℃以上での保持時間が0.1秒以下となるような加熱処理により前記不純物を活性化する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、特に極短時間アニール技術を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)素子の微細化進行に伴い、MOSFET素子の一部として形成される不純物活性層の薄膜化の要求も厳しくなってきている。この不純物活性層の薄膜化を実現するために、不純物活性化の際の熱処理に対して高温化と短時間化が同時に求められるようになってきている。
【0003】
近年ではフラッシュランプや赤外レーザーを用いた極短時間アニール(MSA:millisecond anneal)なども用いられるようになって来た。(例えば、特許文献1参照。)
しかし、このような極短時間アニール処理を用いる場合には、極端な非平衡状態で半導体基板熱が加えられるため、基板に加わる応力が大きくなることが問題となっている。具体的には、時間が非常に短くかつ半導体基板の表面側のみを過熱する機構であるため、熱処理中の半導体基板の温度は基板の厚さ方向で温度勾配が発生し、基板の裏面に大きな引っ張り応力を与えてしまう。
【0004】
ところで半導体装置の製造プロセスでは、MSA工程を行う以前にさまざまな工程を経ており、これらの工程における半導体基板の機械的な搬送やプロセス室での基板保持などにより、半導体基板の裏面にはさまざまな傷がつく機会が存在している。
【0005】
このような半導体基板の裏面についてしまう傷は、半導体製造装置によっては装置の調整によって軽減することが可能な場合があるが、製造装置の持つ機構によりどうしてもついてしまう傷や、たとえ調整を行っても偶発的についてしまう傷なども存在しており、この傷の発生機会を完全になくしてしまうことは事実上不可能である。
【0006】
MSA工程を適用する以前の半導体装置の製造プロセスにおいては、この裏面についてしまう傷は主に製品の不良率を上げてしまうパーティクルの発生源としてのみ問題視されてきた。しかし、MSA技術の適用によりこの傷がMSAプロセス中に発生する裏面応力の集中点として機能してしまい、裏面傷を起点とした基板の割れが発生してしまうことが問題となるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−108891
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、極短時間アニール処理を行う際に、基板自体の損傷を抑制する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート電極を形成する工程と、前記半導体基板に導電性の不純物を導入する工程と、前記半導体基板及び前記ゲート電極上に保護膜を形成する工程と、前記保護膜を形成後に前記半導体基板の裏面全面を研磨する工程と、前記半導体基板の裏面全面を研磨した後に前記半導体基板の表面が1000℃以上での保持時間が0.1秒以下となるような加熱処理により前記不純物を活性化する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極短時間アニール処理を行う際に、基板自体の損傷を抑制する半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る裏面傷による応力発生のメカニズムを模式的に表した断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るd/rの値の変化によって最大応力点に集中する応力が元の応力からどのぐらい増幅されるかを示したグラフである。
【図3】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す工程フロー図である。
【図4】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【図7】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す工程フロー図である。
【図8】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【図9】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【図10】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【図11】本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す工程フロー図である。
【図12】本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【図13】本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を模式的に表した工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、MSA工程によって引っ張り応力が半導体基板の裏面傷によって集中するメカニズムについて図1を用いて説明する。基板裏面に加わる応力をσとし、プロセス中に発生する基板裏面傷の深さをd、傷の先端部の曲率半径をrと仮定すると、基板裏面傷の先端付近の最大応力点(裏面傷の先端から深さ方向に2/r程度の領域)に集中する最大応力σmaxは具体的には以下の式で表すことができる。
【0014】
σmax〜(1+2(d/r)1/2)σ
上記の式より分かるように、dの値が大きくrの値が小さくなればなるほど最大応力点に集中する応力が大きくなる。つまり開口幅が狭く深い傷が、開口幅が広く浅い傷よりも問題となる。図2は、d/rの値の変化によって最大応力点に集中する応力が元の応力からどのぐらい増幅されるかを示したグラフである。
【0015】
図2に示すように、元の応力σの数倍から数十倍にも到達するため、MSA処理時に生じる引っ張り応力により、集中した応力値がシリコンの脆性破壊応力(1〜2GPa程度)を超えてしまい、シリコン基板が損傷するという問題が発生する。この問題を解決するためには、半導体基板裏面に応力が集中するような傷がない状態でMSA処理を行うことが求められる。
【0016】
これまでの半導体製造プロセスにおける裏面傷の観察の結果、裏面傷の深さdは1μm未満の浅いものから、10〜20μm程度の非常に深いものまでさまざまなものがあることが判明している。そのため、半導体基板裏面を少なくとも20μm以上研磨すれば、ほとんどの傷がなくなってしまうか、たとえ若干の傷が残ったとしても傷の深さが大幅に浅くなることからその傷による応力の集中度合いは小さくなることが考えられる。
【0017】
図3は、本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す工程フロー図である。また、図4乃至図6は図3に示したプロセスフローを模式的に表した工程断面図である。図3乃至図6を用いて本発明の実施例1について説明する。なお、図4乃至図6に示したそれぞれの構成は、実際の寸法比とは異なるものであることを断っておく。
【0018】
まず、図4(a)に示すように、半導体基板1の主面に例えばRIE(Reactive Ion Etching)法等を用いて溝を形成し、この溝の内部に絶縁膜を埋め込むことにより、素子分離絶縁領域2を形成する(S101)。続いて、イオン注入により半導体基板1の主面にウェル拡散層領域3を形成する(S102)。ウェル拡散層領域は各素子分離領域2に囲まれた領域毎にp型ウェルとn型ウェルに適宜作り分けても構わない。
【0019】
次に、図4(b)に示すように、周知のトランジスタ形成技術によって、ウェル拡散層領域3上にゲート絶縁膜4および多結晶シリコンなどのゲート電極5を形成する(S103)。ゲート電極絶縁膜4は、例えば、ウェル拡散層表面を熱酸化することによって形成したシリコン酸化膜(SiO)などを用い、ゲート電極は、ゲート絶縁膜4上に形成した多結晶シリコン膜、或いは金属膜等からなるゲート電極材料を加工することによって形成する。
【0020】
次いで、図4(c)に示すように、周知のイオン注入技術によって、ゲート電極4をマスクとしてイオン注入を行うことによってトランジスタのソース・ドレイン領域となるイオン注入領域6を形成する(S104)。
【0021】
続いて、図5(a)に示すように、半導体基板1及びゲート電極5を覆うようにゲート電極側壁材料(例えば、シリコン窒化膜)7を堆積し、さらに基板表面保護膜(例えば、シリコン酸化膜)8を形成する(S105)。この保護膜8は続いて行われる半導体基板1の裏面研磨工程において、半導体基板1表面を保護するために形成される。保護膜8の材料は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等が考えられる。
【0022】
保護膜8を形成した後、図5(b)に示すように、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いて半導体基板1の裏面全面を研磨する(S106)。ここで、半導体基板1の裏面とは、ゲート電極5が形成された面と反対側の面のことをいう。半導体基板1の裏面を研磨する量は適宜調整することが可能であるが、20μm以上であることが望ましい。少なくとも20μm以上研磨することによって、この工程までに半導体基板1の裏面全面に生じたほとんどの傷がなくなってしまうか、大幅に浅くなることから半導体基板1の損傷を効果的に抑制することができる。
【0023】
半導体基板1の裏面を研磨した後、図5(c)に示すように、保護膜8を例えば、希沸酸エッチング処理などを用いて除去する。(S107)。さらに露出したゲート電極側壁材料7をRIE(Reactive Ion Etching)法等を用いて加工することにより、ゲート電極側壁7を形成し、その後、図6(a)に示すように、MSA処理として、例えばキセノン(Xe)フラッシュランプを用いて光を半導体基板1全面に照射する(S108)。
【0024】
フラッシュランプの照射時間は10ms以下とし、照射エネルギー密度は20〜35J/cm2とする。この光照射(フラッシュランプアニール)により、イオン注入領域6に形成された結晶欠陥が回復すると同時に導入された不純物元素が活性化され、ソース・ドレイン拡散層領域9が得られる。フラッシュランプ光の照射に際しては、光照射前から予め基板を400℃程度の温度に加熱しておくことが望ましい。
【0025】
なお、MSA処理としてはフラッシュランプ光を用いたアニールの他に、COレーザーなどのガスレーザーや、YAGレーザーのような半導体レーザーなど、赤外から可視光のレーザー光用いたアニール処理を使用しても構わない。本実施例においてMSA処理とは、半導体基板1の表面が1000℃以上に加熱され、かつ半導体基板1の表面の1000℃以上での保持時間が0.1秒以下である熱処理のことを指す。
【0026】
また、本実施例においては、フラッシュランプアニールなどのMSA処理を行う前に、表面保護膜8の除去やゲート側壁材料7の加工を行っているが、保護膜8やゲート側壁材料7が基板表面全体に残った状態でMSA処理を行っても構わない。
【0027】
続いて、図6(b)に示すように、スパッタ法等により、半導体基板1の表面にニッケル(Ni)等の金属を堆積し、加熱処理を行うことによってゲート電極5及びソース・ドレイン拡散層領域9の表面をそれぞれシリサイド化し、ニッケルシリサイド膜10を形成する。加熱処理後、素子分離領域2上等に残った未反応の金属をウェットエッチング等により除去する。
【0028】
次に、図6(c)に示すように、半導体基板1の表面に、例えば、シリコン酸化膜等の層間絶縁膜11を堆積する。そして、ゲート電極5及びソース・ドレイン拡散層9の上の層間絶縁膜11に、コンタクトホールがそれぞれ開口される。それぞれのコンタクトホールに金属等の導電性材料を埋め込みコンタクトプラグ12を形成し、このコンタクトプラグ12に金属配線13を接続することにより半導体装置が製造される。
【0029】
以上示したように、本発明の実施例1に係る半導体装置の製造方法を用いることによって、MSA処理前に半導体基板1の裏面に生じた傷を除去、或いは浅くすることができる。そうすることにより、MSA処理時の半導体基板1への熱応力を緩和することができ、半導体基板1の損傷を抑制することができる。
【0030】
なお、半導体基板1の裏面の研磨を行う工程位置に関しては、MSA工程の直前が最も望ましいが、工程の組み合わせによってMSA工程直前に行うことが困難な場合においては、少なくともゲート電極4のパターンを形成し終えた後のいずれかのタイミングで半導体基板裏面の研磨を行うようにすれば、半導体基板1の損傷を抑制する効果を得ることができる。
【実施例2】
【0031】
続いて、本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法について説明する。図7は、本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す工程フロー図である。また、図8乃至図10は図7に示したプロセスフローを模式的に表した工程断面図である。図7乃至図10を用いて本発明の実施例2について説明する。本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法では、MSA処理と従来のRTA(Rapid Thermal Annealing)処理とを組み合わせた工程を有していることを特徴としている。
【0032】
以下にその実施例について説明する。まず、図8(a)に示すように、半導体基板21の主面に例えばRIE法等を用いて溝を形成し、この溝の内部に絶縁膜を埋め込むことにより、素子分離領域22を形成する(S201)。続いて、イオン注入により半導体基板21の主面にウェル拡散層領域23を形成する(S202)。ウェル拡散層領域は各素子分離領域22に囲まれた領域毎にp型ウェルとn型ウェルに適宜作り分けても構わない。
【0033】
次に、図8(b)に示すように、周知のトランジスタ形成技術によって、ウェル拡散層領域23上にゲート絶縁膜24および多結晶シリコンなどのゲート電極25を形成する(S203)。ゲート絶縁膜24材料は、例えば、ウェル拡散層23表面を熱酸化することによって形成したシリコン酸化膜などを用い、ゲート電極25は、ゲート絶縁膜24上に形成した多結晶シリコン膜、或いは金属膜等からなるゲート電極材料を加工することによって形成する。
【0034】
次いで、図8(c)に示すように、周知のイオン注入技術によって、トランジスタのソース・ドレイン・エクステンション領域となる比較的浅いイオン注入領域26を形成する(S204)。さらに、図9(a)に示すように、基板全面にシリコン酸化膜などを堆積しRIE法等を用いて加工することにより、ゲート側壁絶縁膜27を形成し(S205)、ゲート電極25とゲート側壁絶縁膜27をマスクにして、周知のイオン注入技術によって、トランジスタのソース・ドレイン・コンタクト領域となる比較的深いイオン注入領域28を形成する(S206)。
【0035】
続いて、図9(b)に示すように、基板表面全体に、シリコン窒化膜等の表面保護膜29を堆積し(S207)、RTA処理として、例えば1000〜1070℃程度のSpike RTAや、1000℃以下程度の10〜30秒程度のSoak RTA処理等を行うことによって、ソース・ドレイン・エクステンション領域となる比較的浅いイオン注入領域26やソース・ドレイン・コンタクト領域となる比較的深いイオン注入領域28の結晶欠陥を回復すると同時に、導入された不純物元素が活性化され、各々ソース・ドレイン・エクステンション拡散層領域30およびソース・ドレイン・コンタクト拡散層領域31が得られる。本実施例においてRTA処理とは、半導体基板21の温度が900℃以上1100℃以下の範囲に保たれる時間が、1秒以上120秒以下である熱処理のことを指す。
【0036】
ここで、シリコン窒化膜等の表面保護膜29材料に、高ストレスのシリコン窒化膜などを用いることによって、RTA処理による再結晶化の課程で多結晶シリコンゲート電極にストレスを蓄積し、トランジスタのチャネル領域のキャリア移動度を向上させる、いわゆるSMT(Stress Memorization Technology)技術と併用することも可能である。
【0037】
その後、図9(c)に示すように、例えばCMP法等を用いて半導体基板21の裏面を研磨する(S209)。半導体基板21の裏面を研磨する量は適宜調整することが可能であるが、20μm以上であることが望ましい。少なくとも20μm以上研磨することによって、この工程までに半導体基板21の裏面全面に生じたほとんどの傷がなくなってしまうか、大幅に浅くなることから半導体基板21の損傷を効果的に抑制することができる。
【0038】
半導体基板21の裏面を研磨した後、保護膜29を除去する。なお、保護膜29を介して後のMSA処理を行う場合には、MSA工程とこの工程の順序を入れ替えても構わない(S210)。また、本実施例では保護膜16の形成前にRTA処理を行っているため、保護膜を除去する際に結晶化されていない不純物拡散層がエッチングされることを抑制することができる。
【0039】
保護膜29を除去した後、図10に示すように、MSA処理として、例えばキセノン(Xe)フラッシュランプを用いて光を半導体基板21全面に照射する(S209)。フラッシュランプの照射時間は10ms以下とし、照射エネルギー密度は20〜35J/cmとする。この光照射(フラッシュランプアニール)により、ソース・ドレイン・エクステンション拡散層領域30、ソース・ドレイン・コンタクト拡散層領域31、および多結晶シリコンゲート電極25に導入された不純物の活性化率が上がり、素子の性能が向上する。フラッシュランプ光の照射に際しては、光照射前から予め半導体基板21を400℃程度の温度に加熱しておくことが望ましい。
【0040】
なお、MSA処理としてはフラッシュランプ光を用いたアニールの他に、COレーザーなどのガスレーザーや、YAGレーザーのような半導体レーザーなど、赤外から可視光のレーザー光を用いたアニール処理を使用しても構わない。本実施例においてMSA処理とは、半導体基板11の表面が1000℃以上に加熱され、かつ半導体基板11の表面の1000℃以上での保持時間が0.1秒以下である熱処理のことを指す。
【0041】
この後の工程については、前記した実施例1と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0042】
以上示したように、本発明の実施例2に係る半導体装置の製造方法を用いることによって、MSA処理前に半導体基板21の裏面に生じた傷を除去、或いは浅くすることができる。そうすることにより、MSA処理時の半導体基板21への熱応力を緩和することができ、半導体基板21の損傷を抑制することができる。また、保護膜29の形成前にRTA処理を行っていることにより、不純物層に残留する結晶欠陥の更なる抑制や、保護膜29除去時の不純物拡散層表面のエッチングを抑制することができる。
【0043】
なお、半導体基板21の裏面の研磨を行う工程位置に関しては、MSA工程の直前が最も望ましいが、工程の組み合わせによってMSA工程直前に行うことが困難な場合においては、少なくともゲート電極25のパターンを形成し終えた後のいずれかのタイミングで半導体基板裏面の研磨を行うようにすれば、半導体基板21の損傷を抑制する効果を得ることができる。
【実施例3】
【0044】
続いて、本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法について説明する。図11は、本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す工程フロー図である。また、図12乃至図14は図11に示したプロセスフローを模式的に表した工程断面図である。図12乃至図14を用いて本発明の実施例3について説明する。本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法では、実施例1の工程に加えてさらに半導体基板の裏面にホウ素ドープ多結晶シリコン膜、シリコン窒化膜の少なくとも一方を形成する工程を有していることを特徴としている。
【0045】
半導体装置の製造工程において、半導体基板の裏面に高濃度のホウ素(Boron)をドープした多結晶シリコンを付けておいたり、半導体基板の裏面にシリコン窒化膜を残しておいたりすることで、半導体製造プロセスにおける予期し得ない金属汚染における影響を低減するという手法が用いられる場合がある。ここでホウ素ドープ多結晶シリコン膜は主に金属元素に対するゲッタリング層の役割を、シリコン窒化膜は主に金属元素の汚染から半導体基板裏面を保護する保護層の役割を果たしている。半導体装置の製造工程で基板の裏面研磨を行う場合には、あらかじめ形成しておいた高濃度のホウ素をドープした多結晶シリコンやシリコン窒化膜が無くなってしまうという問題点は、以下のような方法により回避できる。
【0046】
まず、図12(a)に示すように、半導体基板41の主面に例えばRIE法等を用いて、溝を形成し、この溝の内部に絶縁膜を埋め込むことにより、素子分離絶縁領域42を形成する(S301)。続いて、イオン注入により半導体基板41の主面にウェル拡散層領域43を形成する(S302)。ウェル拡散層領域は各素子分離領域42に囲まれた領域毎にp型ウェルとn型ウェルに適宜作り分けても構わない。
【0047】
次に、図12(b)に示すように、周知のトランジスタ形成技術によって、ウェル拡散層領域43上にゲート絶縁膜44および多結晶シリコンなどのゲート電極45を形成する(S303)。ゲート絶縁膜44材料は、例えば、ウェル拡散層表面を熱酸化することによって形成したシリコン酸化膜(SiO)などを用い、ゲート電極45は、ゲート絶縁膜44上に形成した多結晶シリコン膜、或いは金属膜等からなるゲート電極材料を加工することによって形成する。
【0048】
次いで、図12(c)に示すように、周知のイオン注入技術によって、ゲート電極45をマスクとしてイオン注入を行うことによってトランジスタのソース・ドレイン領域となるイオン注入領域46を形成する(S304)。
【0049】
続いて、図13(a)に示すように、半導体基板41及びゲート電極45を覆うようにゲート電極側壁材料(例えばシリコン窒化膜)47を堆積し、さらに基板表面保護膜(例えばシリコン酸化膜)48を形成する(S305)。この保護膜48は続いて行われる半導体基板41の裏面研磨工程において、半導体基板41表面を保護するために形成される。保護膜48の材料としては、例えば、CVD法を用いたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等が考えられる。
【0050】
保護膜48を形成した後、例えばCMP法等を用いて半導体基板41の裏面全面を研磨する(S306)。ここで、半導体基板41の裏面とは、ゲート電極45が形成された面と反対側の面のことをいう。半導体基板41の裏面を研磨する量は適宜調整することが可能であるが、20μm以上であることが望ましい。少なくとも20μm以上研磨することによって、この工程までに半導体基板41の裏面全面に生じたほとんどの傷がなくなってしまうか、大幅に浅くなることから半導体基板41の損傷を効果的に抑制することができる。
【0051】
半導体基板41の裏面を研磨した後、図13(b)に示すように、スパッタ法やプラズマCVD法などの比較的低温で製膜可能でかつ基板裏面に選択的に堆積可能な方法によって、半導体基板41の裏面にホウ素ドープ多結晶シリコン膜49を形成する(S307)。ここで、ホウ素ドープ多結晶シリコン膜49の形成に続いて、ホウ素ドープ多結晶シリコン膜49上にシリコン窒化膜50を形成しても構わない。また、ホウ素ドープ多結晶シリコン膜49の形成なしに、半導体基板41の裏面に直接シリコン窒化膜を形成しても構わない。低温で成膜可能なプロセスを用いることによって、活性化の熱処理前にイオン注入領域25の不純物が拡散してしまうことを抑制することができる。
【0052】
さらに、ホウ素ドープ多結晶シリコン膜49やシリコン窒化膜50の製膜に、半導体基板41の表裏面に同時に製膜されるLP−CVD法等の堆積方法を用いても構わない。半導体基板41の表裏面に同時に成膜を行い、半導体基板41の表面側に堆積された膜のみを除去することでも、裏面保護膜を形成することが可能である。半導体基板41の表面側に堆積された膜を除去する方法として、表面保護膜48をエッチングストッパーとしたRIE法等によるエッチングを挙げることができる。
【0053】
続いて、図13(c)に示すように、表面保護膜48を例えば、希沸酸エッチング処理などを用いて除去する(S308)。さらに露出したゲート電極側壁材料(例えばシリコン窒化膜)47をRIE法等で加工することにより、ゲート電極側壁47を形成する。ゲート電極側壁47を形成した後に、MSA処理として、例えばキセノン(Xe)フラッシュランプを用いて光を半導体基板41全面に照射する(S309)。
【0054】
フラッシュランプの照射時間は10ms以下とし、照射エネルギー密度は20〜35J/cm2とする。この光照射(フラッシュランプアニール)により、イオン注入領域46に形成された結晶欠陥が回復すると同時に導入された不純物元素が活性化され、ソース・ドレイン拡散層領域51が得られる。フラッシュランプ光の照射に際しては、光照射前から予め半導体基板41を400℃程度の温度に加熱しておくことが望ましい。
【0055】
なお、MSA処理としてはフラッシュランプ光を用いたアニールの他に、COレーザーなどのガスレーザーや、YAGレーザーのような半導体レーザーなど、赤外から可視光のレーザー光を用いたアニール処理を使用しても構わない。本実施例においてMSA処理とは、半導体基板41の表面が1000℃以上に加熱され、かつ半導体基板41の表面の1000℃以上での保持時間が0.1秒以下である熱処理のことを指す。また、本実施例においては、フラッシュランプアニールなどのMSA処理を行う前に、表面保護膜48の除去やゲート側壁材料47の加工を行っているが、保護膜48やゲート側壁材料47が基板表面全体に残った状態でMSA処理を行っても構わない。
【0056】
この後の工程については、前記した実施例1と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0057】
以上示したように、本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を用いることによって、MSA処理前に半導体基板41の裏面に生じた傷を除去、或いは浅くすることができる。そうすることにより、MSA処理時の半導体基板41への熱応力を緩和することができ、半導体基板41の損傷を抑制することができる。
【0058】
なお、半導体基板41の裏面の研磨を行う工程位置に関しては、MSA工程の直前が最も望ましいが、工程の組み合わせによってMSA工程直前に行うことが困難な場合においては、少なくともゲート電極45のパターンを形成し終えた後のいずれかのタイミングで半導体基板裏面の研磨を行うようにすれば、半導体基板41の損傷を抑制する効果を得ることができる。
【0059】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。例えば、実施例2の工程に加えて実施例3に記載したホウ素ドープ多結晶シリコン膜やシリコン窒化膜を半導体基板裏面に形成しても構わない。
【符号の説明】
【0060】
1、21、41 半導体基板
2、22、42 素子分離領域
3、23、43 ウェル拡散層領域
4、24、44 ゲート絶縁膜
5、25、45 ゲート電極
6、46 イオン注入領域
7、27、47 ゲート側壁材料
8、29、48 保護膜
9、51 ソース・ドレイン拡散層領域
10 ニッケルシリサイド膜
11 層間絶縁膜
12 コンタクトプラグ
13 金属配線
26 浅いイオン注入領域
28 深いイオン注入領域
30 ソース・ドレイン・エクステンション拡散層領域
31 ソース・ドレイン・コンタクト拡散層領域
49 ホウ素ドープ多結晶シリコン膜
50 シリコン窒化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記半導体基板に導電性の不純物を導入する工程と、
前記半導体基板及び前記ゲート電極上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を形成後に前記半導体基板の裏面全面を研磨する工程と、
前記半導体基板の裏面全面を研磨した後に前記半導体基板の表面が1000℃以上での保持時間が0.1秒以下となるような加熱処理により前記不純物を活性化する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板に導電性の不純物を導入する工程は、前記半導体基板に少なくとも2種類以上の深さ分布を有する同一導電型の不純物を導入する工程であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板の温度を900℃以上1100℃以下の範囲に1秒以上120秒以下の時間保つ熱処理工程をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板の裏面全面を研磨する工程後に前記半導体基板の裏面に選択的に成膜を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記不純物の活性化工程前に前記保護膜を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記前記半導体基板の裏面全面を20μm以上研磨することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記不純物の活性化工程は、フラッシュランプアニールまたはレーザーアニールを用いて行われることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−258305(P2010−258305A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108354(P2009−108354)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】