説明

半導体集積回路及びLSIシステム

【課題】CMOS論理回路を小さいスイッチで高速動作させることができ、サブスレッショルドリーク電流を効果的に低減可能な半導体集積回路及びLSIシステムを提供すること。
【解決手段】半導体集積回路は、CMOS論理回路と、CMOS論理回路の電圧供給源とCMOS論理回路の電源端の間に設けられた、第1のMOSFETを有するスイッチ回路と、第1のMOSFETと逆チャネルの第2のMOSFETと、第2のMOSFETのドレインに接続された第1の抵抗と、第1の抵抗及び第1のMOSFETのソースに接続された第2の抵抗と、を有するデジタルアナログ変換回路とを備える。第1のMOSFETのバックゲートと、第1の抵抗と第2の抵抗の接続点が接続される。また、第1のMOSFETのゲートに供給される制御信号と第2のMOSFETのゲートに供給される制御信号が共通である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOS論理回路を有する半導体集積回路及びLSIシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高集積化、並びに、動作時の高速化及び停止時の低消費電力化のために、CMOS論理回路の電源を遮断する機能を備えた半導体集積論理回路が広く用いられている。図9は、従来の半導体集積回路の構成を示す概略図である。
【0003】
図9(a)に示すように、半導体集積回路9は、CMOS論理回路91の電源遮断用として挿入されたスイッチ(MOSFET(Mn11))の基板に、MOSFET(Mn11)を順方向のダイオード構成(D11)となるように接続されている。さらに、ダイオードD11のカソード側が、MOSFET(Mn12)のゲート電極に接続されている。図9(b)及び図9(c)は、それぞれMOSFET(Mn11)のオン、オフ時における等価回路を示す図である。
【0004】
図9(b)に示すように、MOSFET(Mn11)のゲートにCMOS論理回路91の供給電圧を印加してオンすると、ダイオードD11は逆方向、MOSFET(Mn11)の基板とソース間の寄生ダイオードD12は順方向となる。このとき、ダイオードD11、D12に流れる電流は、ダイオードD11の暗電流で決定され、基板電位VbはダイオードD12の閾値電圧付近となり、MOSFET(Mn11)のバックゲート電極は正電圧にバイアスされる。このため、MOSFET(Mn11)の見かけ上の閾値が低くなってオン抵抗が下がる。この結果、CMOS論理回路91は大電流を駆動できるようになる。
【0005】
一方、図9(c)に示すように、ゲート電圧Vgが0Vになると、基板電圧Vbが0Vに収束するまでダイオードD11、D12に順方向電流が流れる。そして、基板電圧Vbが0Vに収束すると、MOSFET(Mn11)への基板バイアス効果がなくなるため、MOSFET(Mn11)の見かけ上の閾値は元の高い状態に変化し、スイッチとしての抵抗が高くなる。これにより、CMOS論理回路91に流れるサブスレッショルドリーク電流が抑えられる。
【0006】
このように、図9に示した半導体集積回路9は、最小限の素子を追加するのみで、サブスレッショルドリーク電流を効果的に抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
LSI(Large Scale Integration)における低消費電力設計は、CMOS論理回路の電源を遮断するスイッチによってサブスレッショルドリーク電流を低減すること、及び回路の動作モードによって動作周波数と電源電圧を動的に制御する等の電力制御技術が主流である。
【0008】
LSIでは、電源電圧を区切られた機能ブロック(以下、「電源ドメイン」という)毎に個別に設定できることが最も望ましいが、電源ドメイン毎に多種の電源を用意することは実質的に不可能である。一般に、一つのLSIには電源が共通である複数の電源ドメインが存在する。このように、電源が共通である複数の電源ドメインにおいて、その中の一部の電源ドメインが低速動作や待機状態であった場合、当該電源ドメインの電源遮断用スイッチの抵抗を高くし、CMOS論理回路へ印加される見かけ上の電源電圧をCMOS論理回路が動作する最低限の電圧まで下げることにより、CMOS論理回路に流れるサブスレッショルドリークを低減することができる。
【0009】
しかし、図9に示した半導体集積回路9の場合、電源遮断用のスイッチであるMOSFET(Mn11)のオン時に基板にバイアスされる電圧は、自動的に基板バイアスがかかり、MOSFET(Mn11)のオン抵抗が強制的に下げられてしまう。さらに、MOSFET(Mn11)にバイアスされる電圧も、ダイオード構成D11の閾値に固定されるため、ダイナミックな調節ができない。
【0010】
【特許文献1】特開平9−121152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、CMOS論理回路を小さいスイッチで高速動作させることができ、サブスレッショルドリーク電流を効果的に低減可能な半導体集積回路及びLSIシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、CMOS論理回路と、前記CMOS論理回路の電圧供給源と前記CMOS論理回路の電源端の間に設けられた、第1のMOSFETを有するスイッチ回路と、前記第1のMOSFETと逆チャネルの第2のMOSFETと、前記第2のMOSFETのドレインに接続された第1の抵抗と、前記第1の抵抗及び前記第1のMOSFETのソースに接続された第2の抵抗と、を有するデジタルアナログ変換回路と、を備え、前記第1のMOSFETのバックゲートと、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の接続点が接続され、前記第1のMOSFETのゲートに供給される制御信号と前記第2のMOSFETのゲートに供給される制御信号が共通である半導体集積回路を提供する。
【0013】
この構成により、スイッチ回路のオン時に基板電位をフォアード方向へバイアスしてオン抵抗を低くし、オフ時にバイアスを解除して抵抗を高くすることで、従来よりも小さいスイッチでCMOS論理回路を大電流で駆動して高速動作させることができる。また、デジタルアナログ変換回路の抵抗値をCMOS論理回路の動作状態に応じて動的に制御することにより、CMOS論理回路のサブスレッショルドリーク電流を効果的に低減し、半導体集積回の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0014】
また、上記半導体集積回路では、前記第1のMOSFETはNチャネルMOSFETであり、前記NチャネルMOSFETは、前記CMOS論理回路の低電圧側の電圧供給源と電源端に接続されている。
【0015】
この構成により、スイッチ回路のNチャネルMOSFETがオンした際に、基板電位をフォアード方向へバイアスしてオン抵抗を低くし、オフ時にバイアスを解除して抵抗を高くすることにより、CMOS論理回路を高速動作させることができる。また、デジタルアナログ変換回路の抵抗値をCMOS論理回路の動作状態に応じて動的に制御することにより、サブスレッショルドリーク電流を効果的に低減し、低消費電力化を図ることができる。
【0016】
また、上記半導体集積回路では、前記第1のMOSFETはPチャネルMOSFETであり、前記PチャネルMOSFETは、前記CMOS論理回路の高電圧側の電圧供給源と電源端に接続されている。
【0017】
この構成により、スイッチ回路のNチャネルMOSFETがオンした際に、基板電位をフォアード方向へバイアスしてオン抵抗を低くし、オフ時にバイアスを解除して抵抗を高くすることにより、CMOS論理回路を高速動作させることができる。また、デジタルアナログ変換回路の抵抗値をCMOS論理回路の動作状態に応じて動的に制御することにより、サブスレッショルドリーク電流を効果的に低減し、低消費電力化を図ることができる。
【0018】
また、上記半導体集積回路では、前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗の少なくとも一方は、可変抵抗である。
【0019】
この構成により、デジタルアナログ変換回路の抵抗値をCMOS論理回路の動作状態に応じて動的に制御することができ、サブスレッショルドリーク電流を効果的に低減し、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0020】
また、上記半導体集積回路では、前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗は、前記第1のMOSFETと同種類のMOSFETである。
【0021】
この構成により、抵抗素子とMOS領域の分離レイヤをなくすことができ、高密度にレイアウト設計することが可能になるとともに、抵抗素子を作成するためのマスクレイヤが不要となるのでコストを低減することができる。
【0022】
また、上記半導体集積回路では、前記デジタルアナログ変換回路は、バンドギャップリファレンス回路を含む。
【0023】
この構成により、ダイナミックな電源電圧変動の影響を受けない安定したバイアス電圧Vbを得ることができ、サブスレッショルドリーク電流を効果的に低減して、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0024】
また、上記半導体集積回路では、前記第2の抵抗は、前記第1のMOSFETとの抵抗値の比率が整数の関係を有する単位トランジスタ構成のMOSFETである。
【0025】
この構成により、スイッチ回路のソース電極側の抵抗をMOS抵抗に置き換えることで、閾値のバラツキを自動的に補正することができ、従来必要としていた閾値バラツキを補正するためのトリミングが不要となり、コスト低減が可能となる。
【0026】
また、上記半導体集積回路では、前記デジタルアナログ変換回路は、前記CMOS論理回路及び前記スイッチ回路の電源と異なる電源に接続されている。
【0027】
この構成により、従来よりも小さいスイッチでCMOS論理回路を高速動作させることができるとともに、サブスレッショルドリーク電流をさらに低減して一層の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0028】
また、上記半導体集積回路では、前記スイッチ回路は、複数のMOSFETから構成され、前記複数のMOSFETの各ゲートが個別に制御され、かつ、前記第2のMOSFETのゲートの論理が前記複数のMOSFETの各ゲートにそれぞれ印加される信号と共通である。
【0029】
この構成により、CMOS論理回路についてより広範囲の電流能力の調整ができるとともに、サブスレッショルドリーク電流を低減し、半導体集積回の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0030】
本発明は、上記半導体集積回路からなるLSIシステムであって、電源遮断制御レジスタ、周波数設定レジスタ、電源電圧設定レジスタ及び温度センサ判定結果保存レジスタを含むレジスタ群と、前記レジスタ群の出力に基づいて、前記スイッチ回路及び前記デジタルアナログ変換回路のオン/オフ、並びに、前記第2の抵抗の値を調節するデコーダと、を備えたLSIシステムを提供する。
【0031】
この構成により、CMOS論理回路についてより広範囲の電流能力の調整ができるとともに、半導体集積回路のサブスレッショルドリーク電流を低減し、LSIシステムの低消費電力化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る半導体集積回路及びLSIシステムによれば、CMOS論理回路を小さいスイッチで高速動作させることができ、サブスレッショルドリーク電流を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図である。図1に示すように、第1の実施形態の半導体集積回路1は、CMOS論理回路11と、電源遮断スイッチ12と、抵抗分圧型のデジタルアナログ変換器(以下「DAC」という)13とを備える。
【0035】
電源遮断スイッチ12は、CMOS論理回路11のVss側電源端に接続された2個のNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)から構成され、それぞれのバックゲート電極にDAC13の出力電圧Vbが印加される。
【0036】
DAC13は、CMOS論理回路11のVdd側電源端に接続されたPチャネルMOSFET(Mp1)と、そのドレイン端に接続された抵抗R1と、抵抗R1と電源遮断スイッチ12のNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)のソース側に接続された可変抵抗R2とを有する。抵抗R1と可変抵抗R2の接続点にNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)のバックゲート電極が接続されている。このため、NチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)のバックゲート電極には、抵抗R1と可変抵抗R2によって分圧された電圧Vbが印加される。
【0037】
また、電源遮断スイッチ12のNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)のゲート電極は共通に接続され、インバータを介してDAC13のPチャネルMOSFET(Mp1)のゲート電極に接続されている。このため、NチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)のゲート電極に共通に印加される制御信号Saに応じて電源遮断スイッチ12がオフすると、DAC13もオフとなり、電圧VbはVss電位となる。
【0038】
以下、本実施形態の半導体集積回路1の動作について説明する。まず、電源遮断スイッチ12がオンした際の動作について説明する。
【0039】
一般に、MOSFETの動作電流Idsは、以下の式(1)で表される。なお、式(1)において、kは定数、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgsはゲートソース間電圧、Vthは閾値である。
【0040】
Ids=k(W/L)(Vgs−Vth) …(1)
【0041】
式(1)によれば、閾値Vthが高いほどIdsが大きくなり、MOSFETとしての駆動能力が高くなる。
【0042】
一方、閾値Vthは、以下の式(2)で表される。なお、式(2)において、VthはVsb=0である時の閾値電圧、Vsbはソース−基板間電位(Vs−Vb)、γは定数、Φは定数である。
【0043】
Vth=Vth+γ{√(2Φ+Vsb)−√(2Φ)} …(2)
【0044】
仮に、MOSFETをNチャネルMOSFETとし、そのソース電位Vs=0Vとする。この場合、電位Vbがマイナス方向に大きくなると、閾値Vthが高くなる。逆に、電位Vbがプラス方向に大きくなると、閾値Vthが低くなる。したがって、小さなスイッチで大電流を駆動するためには、電圧Vbをプラス方向に大きくして閾値Vthを下げることで対応できる。
【0045】
図1に示した半導体集積回路1の場合、電源遮断スイッチ12がオンすると同時にDAC13がオンするため、抵抗R1と可変抵抗R2で分圧された電圧Vbは電源遮断スイッチ12のソース電位(Vss)よりも高くなる。したがって、電源遮断スイッチ12の閾値Vthが下がり、CMOS論理回路11を大電流で駆動できる。このバイアス効果を考慮して電源遮断スイッチ12のサイズを設計すれば、回路面積を小さくすることが可能となる。
【0046】
次に、電源遮断スイッチ12がオフした際の動作について説明する。電源遮断スイッチ12がオフした場合は、CMOS論理回路11の電流駆動能力は必要ないが、サブスレッショルドリーク電流Ileakが流れる。電源遮断スイッチ12に流れるサブスレッショルドリーク電流Ileakは、CMOS論理回路11に流れるサブスレッショルドリーク電流よりも十分小さいため、電源遮断スイッチ12がないときよりもリーク電流を低減できる。しかし、電源遮断スイッチ12のリーク電流自体が半導体集積回路1の消費電力を決定することとなる。
【0047】
電源遮断スイッチ12のサブスレッショルドリーク電流Ileakは、以下の式(3)で表される。なお、式(3)において、Vthは閾値、Sは係数、λは0.1〜1の定数、Wはチャネル幅、Lはチャネル長である。
【0048】
Ileak=λ(W/L)10((Vgs−Vth)/S) …(3)
【0049】
式(3)より、サブスレッショルドリーク電流leakを低減するには、チャネル幅Wを小さくし、かつ、閾値Vthを高くすればよいことがわかる。
【0050】
図1に示した半導体集積回路1の場合、電源遮断スイッチ12がオフすると同時にDAC13がオフとなり、電圧VbはVss電位となる。すなわち、電圧Vbが電源遮断スイッチ12のソース電位(Vss)と等しくなるため、電源遮断スイッチ12のオン時より閾値Vthが高くなり、サブスレッショルドリーク電流leakを低減できる。また、電源遮断スイッチ12のオン時における閾値Vthのシフト分を予め考慮して電源遮断スイッチ12のサイズを決定し、チャネル幅Wを小さく設計することによってさらにサブスレッショルドリーク電流leakを低減できる。
【0051】
次に、第1の実施形態の半導体集積回路1において、電源遮断スイッチ12がオンの状態であり、かつ、CMOS論理回路11が低速で動作する場合又は待機状態における動作について説明する。
【0052】
CMOS論理回路11が低速で動作する場合又は待機状態におけるCMOS論理回路11の電流駆動能力は、電源遮断スイッチ12の動作電流Idsを示す上式(1)によって表される。しかし、CMOS論理回路11の動作速度が許容できるならば、式(1)中の「Vgs−Vt」を下げて電流駆動能力を下げてもよい。
【0053】
「Vgs−Vt」を下げるには、電源遮断スイッチ12のオン抵抗を高くするとともに、CMOS論理回路11の電源端電圧Vssaを高くすればよい。電源端電圧Vssaを高くすると、式(3)よりVgsが小さくなり、サブスレッショルドリーク電流Ileakが減少する。
【0054】
電源遮断スイッチ12のオン抵抗は、DAC13の出力電圧Vbが高くなる方向にバイアスしている。このため、DAC13から印加される電圧Vbを下げてバイアスを解除し、電源遮断スイッチ12の見かけ上の閾値Vthを下げればよい。
【0055】
このように、CMOS論理回路11の低速動作を考慮しながら、動的に電源遮断スイッチ12のオン抵抗を制御することにより、半導体集積回路1の低消費電力化が可能となる。
【0056】
以上説明したように、第1の実施形態の半導体集積回路1によれば、電源遮断スイッチ12と、基板バイアス用の抵抗分圧型DAC13を備える。半導体集積回路1において、電源遮断スイッチ12のオン時に電位Vbをフォアード方向へバイアスしてオン抵抗を低くし、電源遮断スイッチ12のオフ時にバイアスを解除してオン抵抗を高くすることで、従来よりも小さいスイッチでCMOS論理回路11を大電流で駆動し、高速動作させることができる。
【0057】
また、DAC13の可変抵抗R2の抵抗値をCMOS論理回路11の動作状態に応じて動的に制御することにより、CMOS論理回路11のサブスレッショルドリーク電流Ileakを効果的に低減し、半導体集積回路1の低消費電力化を図ることができる。
【0058】
なお、図1に示した半導体集積回路1では、電源遮断スイッチ12が2つのNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)から構成されているが、例えば、図2に示す半導体集積回路2のように、2つのPチャネルMOSFET(Mp2、Mp3)から構成される電源遮断スイッチ22であってもよい。
【0059】
この場合、電源遮断スイッチ22はCMOS論理回路11のVdd側電源端に接続され、NチャネルMOSFET(Mn3)、抵抗R1及び可変抵抗R2を有するDAC23が電源遮断スイッチ22に接続される。そして、DAC23がオフのとき、電圧Vbは電源電圧Vddに等しくなる。
【0060】
図3は、電源遮断スイッチをCMOS論理回路11のVdd側電源端及びVss側電源端の双方に接続した場合の半導体集積回路3の構成を示す概略図である。
【0061】
Vdd側電源端に接続される電源遮断スイッチは、PチャネルMOSFET(Mp4)から構成され、Vss側電源端に接続される電源遮断スイッチは、NチャネルMOSFET(Mn4)から構成される。
【0062】
DAC33は、相補接続されたNチャネルMOSFET(Mn5)及びPチャネルMOSFET(Mp5)と、CMOS論理回路11のVdd側及びVss側の各電源端にそれぞれ接続された分圧抵抗R11、R12と、分圧抵抗R21、R22とを有する。この構成によれば、DAC33がオフのときは、Vss側の電圧Vb1=Vssとなり、Vdd側の電圧はVb2=Vddとなる。
【0063】
図2に示した半導体集積回路2及び図3に示した半導体集積回路3の各動作は、前述した図1の半導体集積回路1の動作と同様であるため説明を省略する。
【0064】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図である。なお、図1に示した第1の実施形態の半導体集積回路1が有する構成要素と同じ構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
図4に示すように、第2の実施形態の半導体集積回路4は、CMOS論理回路11と、電源遮断スイッチ12と、デジタルアナログ変換器(DAC)43とを備える。DAC43は、CMOS論理回路11のVdd側電源端に接続されたPチャネルMOSFET(Mp1)と、2個のNチャネルMOSFET(Mn6、Mn7)とを有する。NチャネルMOSFET(Mn6、Mn7)は、第1の実施形態のDAC13が有する抵抗R1、R2の代わりに設けられている。
【0066】
DAC43の抵抗素子をMOS抵抗とすることにより、MOS領域との分離レイヤをなくせるため、半導体集積回路4を高密度にレイアウト設計できる。
【0067】
また、半導体集積回路において抵抗素子を拡散する場合は、一般に、MOSFETの作成とは別のマスクレイヤが必要となる。また、LSIによってはアナログ回路を一切含まず、抵抗素子のマスクレイヤを搭載しないプロセスを使用することがある。このような用途のLSIにおいて、本実施形態は余分なコストを発生することがなく、かつ低消費電力化が可能となる。
【0068】
なお、本実施形態では、2個のNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)から電源遮断スイッチ12を構成したが、第1の実施形態で説明した図2と同様に、PチャネルMOSFET(Mp2、Mp3)から構成してもよい。
【0069】
以上説明したように、第2の実施形態の半導体集積回路4によれば、第1の実施形態と同様に、従来よりも小さいスイッチでCMOS論理回路11を大電流で駆動し、高速動作させることができる。また、第1の実施形態と同様に、サブスレッショルドリーク電流Ileakを効果的に低減し、半導体集積回路4の低消費電力化を図ることができる。また、本実施形態では、DAC43の抵抗素子をMOSFETで構成したため、抵抗素子を作成するためのマスクレイヤが不要となる。したがって、コストを低減できる。
【0070】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図である。なお、図1に示した第1の実施形態の半導体集積回路1が有する構成要素と同じ構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図5に示すように、第3の実施形態の半導体集積回路5は、CMOS論理回路11と、電源遮断スイッチ12と、バンドギャップリファレンス回路を含むDAC53とを備える。
【0072】
図1に示した第1の実施形態の半導体集積回路1の場合、パワー制御用のMOSFETのオン抵抗を無視すると、DAC13の抵抗R1、R2に流れる電流I1は、以下の式(4)で表される。
I1=Vdd/(R1+R2) …(4)
【0073】
また、DAC13の抵抗R1と可変抵抗R2によって分圧された電圧Vbは、以下の式(5)で表される。
Vb=I1(R1/(R1+R2)) …(5)
【0074】
式(4)及び式(5)より、第1の実施形態のようにDAC13を用いた場合、電源電圧Vddが変動すると電流I1も変動して、電圧Vbも変動する。
【0075】
一方、バンドギャップリファレンス回路を含むDAC53を備えた本実施形態の半導体集積回路5の場合、抵抗R1、R2を流れる電流I1は以下の式(6)及び式(7)で表される。また、DAC53に設けられたMOSFET(Ma)のゲートソース間電圧Vgsaは、以下の式(8)で表される。式(7)及び式(8)において、α、kは定数であり、I2はミラー電流である。
【0076】
I1=Vgsa/(R1+R2) …(6)
I1=αI2 …(7)
Vgsa=√(I2/k)+Vth …(8)
【0077】
式(6)〜(8)に示されるように、抵抗R1、R2に流れる電流I1を決定する要因に電源電圧Vddが関係しないため、電流I1及び電圧Vbは電源電圧Vddの変動の影響を受けない。このように、DACにバンドギャップリファレンス回路を搭載することにより、電源電圧Vddの変動の影響を受けない安定した電圧VbをNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)のバックゲート電極に印加することができる。
【0078】
なお、図5に示した半導体集積回路5では、電源遮断スイッチ12が2つのNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)から構成されているが、例えば、図2に示す半導体集積回路2のように、2つのPチャネルMOSFET(Mp2、Mp3)から構成される電源遮断スイッチ22であってもよい。
【0079】
以上説明したように、第3の実施形態の半導体集積回路5によれば、第1の実施形態と同様に、従来よりも小さいスイッチでCMOS論理回路11を大電流で駆動し、高速動作させることができる。また、第1の実施形態と同様に、サブスレッショルドリーク電流Ileakを効果的に低減し、半導体集積回路5の低消費電力化を図ることができる。また、本実施形態では、電源電圧Vddの変動を受けることなく安定した電圧Vbが得られる。
【0080】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図である。なお、図1に示した第1の実施形態の半導体集積回路1が有する構成要素と同じ構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
図6に示すように、第4の実施形態の半導体集積回路6は、CMOS論理回路11と、電源遮断スイッチ12と、DAC63とを備える。DAC63では、第1の実施形態に示した電源遮断スイッチ12のソース電極側の可変抵抗R2を、NチャネルMOSFET(Mn7)であるMOS抵抗に替え、かつ、電源遮断スイッチ12とMOS抵抗の抵抗値の比率が整数の関係を有する単位トランジスタ構成で設計されている。
【0082】
NチャネルMOSFET(Mn7)のオン抵抗Ronは、次の式(9)で表される。
Ron={k(W/L)(Vgs−Vth)−1 …(9)
【0083】
本実施形態では、NチャネルMOSFET(Mn7)は、電源遮断スイッチ12のNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)と同種類のMOSFETである。このため、例えば、電源遮断スイッチ12の閾値Vthが製造バラツキによって高い方にΔVthシフトすると、NチャネルMOSFET(Mn7)も同様にΔVthシフトする。
【0084】
式(9)に示されているように、閾値Vthが高くなるとオン抵抗Ronも高くなるため、DAC63の出力電圧Vbも、ΔVthに相当して補正するように高くなる。同様に、低い方にΔVthシフトした場合も閾値の製造バラツキを補正する効果がある。このように、DACに設けられた電源遮断スイッチ12のソース電極側の抵抗をMOS抵抗に置き換えることによって、閾値Vthのバラツキを自動的に補正できる。その結果、従来必要とされた閾値バラツキを補正するためのトリミングが不要となるため、コスト低減が可能となる。
【0085】
なお、図6に示した半導体集積回路6では、電源遮断スイッチ12が2つのNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)から構成されているが、例えば、図2に示す半導体集積回路2のように、2つのPチャネルMOSFET(Mp2、Mp3)から構成される電源遮断スイッチ22であってもよい。
【0086】
以上説明したように、第4の実施形態の半導体集積回路6によれば、電源遮断スイッチ12のソース電極側の抵抗をMOS抵抗に置き換えることによって、閾値Vthのバラツキを自動的に補正することができる。その結果、従来必要とされた閾値バラツキを補正するためのトリミングが不要となるため、コスト低減が可能となる。
【0087】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図である。なお、図1に示した第1の実施形態の半導体集積回路1が有する構成要素と同じ構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
図7に示すように、第5の実施形態の半導体集積回路7では、第1の実施形態で示した抵抗分圧型のDAC13が有するPチャネルMOSFET(Mp1)のゲート電極に供給するパワー制御用の信号を削除し、かつ、DAC73に使用する電源がCMOS論理回路11や電源遮断スイッチ12の電源と異なる。
【0089】
第1の実施形態で説明した式(2)に示したように、電圧Vbがマイナス方向に大きくなると閾値Vthが高くなり、逆に、プラス方向に大きくなると閾値Vthが低くなる。第1の実施形態では、電圧Vbをプラス方向にバイアスして閾値Vthを下げることで、電源遮断スイッチ12の駆動能力を向上する。本実施形態では、DAC73の電源として、電源遮断スイッチ12のソース電位(Vss)よりαVだけ低い電圧源を使用しているため、電圧Vbをマイナス方向により低く変更することができる。
【0090】
当該構成によれば、電源遮断スイッチ12のオフ時に電圧Vbをマイナス方向へシフトすると、式(3)に示されるように、サブスレッショルドリーク電流Ileakをさらに低減できる。
【0091】
なお、図7に示した半導体集積回路7では、電源遮断スイッチ12が2つのNチャネルMOSFET(Mn1、Mn2)から構成されているが、例えば、図2に示す半導体集積回路2のように、2つのPチャネルMOSFET(Mp2、Mp3)から構成される電源遮断スイッチ22であってもよい。
【0092】
以上説明したように、第5の実施形態の半導体集積回路7によれば、第1の実施形態と同様に、従来よりも小さいスイッチでCMOS論理回路11を大電流で駆動し、高速動作させることができる。また、第1の実施形態と同様に、サブスレッショルドリーク電流Ileakをさらに効果的に低減し、半導体集積回路7の低消費電力化を図ることができる。
【0093】
(第6の実施形態)
図8は、第6の実施形態に係るLSIシステムの概略構成を示す図である。図8に示すLSIシステム8は、電源制御レジスタ83と、温度センサ判定結果保存レジスタ84と、周波数設定レジスタ85と、電源電圧設定レジスタ86と、デコーダ87とを備える。当該LSIシステムによれば、レジスタ83〜86の各出力をデコーダ87でデコードすることによって、第1の実施形態の半導体集積回路1と同様の複数の半導体集積回路D1〜D4の各電源ドメインに搭載された電源遮断スイッチ82とDAC83の出力電圧Vbを動的に制御する。
【0094】
第1の実施形態で説明したように、DAC13が有する可変抵抗R2の抵抗値を変えることにより電圧Vbを変化させ、CMOS論理回路11の電源端電圧Vssaを変化させることができる。但し、この可変範囲は式(1)の閾値Vthの変化分に限定される。
【0095】
一方、電源遮断スイッチ82の制御信号S1〜S4を個別にオン/オフさせると、式(1)に示したチャネル幅Wの変更と同様なことが可能である。チャネル幅Wは最大でスイッチの搭載個数分分割することが可能であり、閾値Vthによる電源端電圧Vssaの変更より精度は粗いが広い範囲を調節ができる。
【0096】
このように、LSIシステム8では、DAC83の電圧Vbによる電源端電圧Vssaの調整は微調整で、電源遮断スイッチ82のオン個数の調整は電源端電圧Vssaの粗調整として使用することで、より広範囲の電流能力の調整が可能となる。
【0097】
なお、本実施形態では、電源遮断スイッチ82がNチャネルMOSFETから構成されているが、例えば、図2に示すようにPチャネルMOSFETから構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る半導体集積回路は、CMOS論理回路を小さいスイッチで高速動作させ、サブスレッショルドリーク電流を低減可能なLSIシステム等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図
【図2】第1の実施形態の半導体集積回路の変形例の構成を示す概略図
【図3】第1の実施形態の半導体集積回路の他の変形例の構成を示す概略図
【図4】第2の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図
【図5】第3の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図
【図6】第4の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図
【図7】第5の実施形態の半導体集積回路の構成を示す概略図
【図8】第6の実施形態のシステムLSIの構成を示す概略図
【図9】(a)従来の半導体集積回路の構成を示す概略図、(b)従来の半導体集積回路において、Vg=Vddである時の等価回路を示す図、(c)従来の半導体集積回路において、Vg=0Vである時の等価回路を示す図
【符号の説明】
【0100】
1〜7 半導体集積回路
8 システムLSI
11 CMOS論理回路
12、22、82 電源遮断スイッチ
13、23、33、43、63、73、83 DAC
53 バンドギャップリファレンス回路
81 電源制御レジスタ
82 温度センサ判定結果保存レジスタ
83 周波数設定レジスタ
84 電源電圧設定レジスタ
85 デコーダ
D1〜D4 電源ドメイン
R1、R3、R11、R21 抵抗
R2、R12、R22 可変抵抗
Mn1〜Mn8 NチャネルMOSFET
Mp1〜Mp5 PチャネルMOSFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMOS論理回路と、
前記CMOS論理回路の電圧供給源と前記CMOS論理回路の電源端の間に設けられた、第1のMOSFETを有するスイッチ回路と、
前記第1のMOSFETと逆チャネルの第2のMOSFETと、前記第2のMOSFETのドレインに接続された第1の抵抗と、前記第1の抵抗及び前記第1のMOSFETのソースに接続された第2の抵抗と、を有するデジタルアナログ変換回路と、を備え、
前記第1のMOSFETのバックゲートと、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の接続点が接続され、
前記第1のMOSFETのゲートに供給される制御信号と前記第2のMOSFETのゲートに供給される制御信号が共通である半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体集積回路であって、
前記第1のMOSFETはNチャネルMOSFETであり、
前記NチャネルMOSFETは、前記CMOS論理回路の低電圧側の電圧供給源と電源端に接続された半導体集積回路。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体集積回路であって、
前記第1のMOSFETはPチャネルMOSFETであり、
前記PチャネルMOSFETは、前記CMOS論理回路の高電圧側の電圧供給源と電源端に接続された半導体集積回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体集積回路であって、
前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗の少なくとも一方は可変抵抗である半導体集積回路。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体集積回路であって、
前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗は、前記第1のMOSFETと同種類のMOSFETである半導体集積回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体集積回路であって、
前記デジタルアナログ変換回路は、バンドギャップリファレンス回路を含む半導体集積回路。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体集積回路であって、
前記第2の抵抗は、前記第1のMOSFETとの抵抗値の比率が整数の関係を有する単位トランジスタ構成のMOSFETである半導体集積回路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体集積回路であって、
前記デジタルアナログ変換回路は、前記CMOS論理回路及び前記スイッチ回路の電源と異なる電源に接続されている半導体集積回路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体集積回路であって、
前記スイッチ回路は、複数のMOSFETから構成され、
前記複数のMOSFETの各ゲートが個別に制御され、かつ、前記第2のMOSFETのゲートの論理が前記複数のMOSFETの各ゲートにそれぞれ印加される信号と共通である半導体集積回路。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体集積回路からなるLSIシステムであって、
電源遮断制御レジスタ、周波数設定レジスタ、電源電圧設定レジスタ及び温度センサ判定結果保存レジスタを含むレジスタ群と、
前記レジスタ群の出力に基づいて、前記スイッチ回路及び前記デジタルアナログ変換回路のオン/オフ、並びに、前記第2の抵抗の値を調節するデコーダと、
を備えたLSIシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−93318(P2010−93318A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258178(P2008−258178)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】