説明

半導体集積回路装置

【課題】 完全空乏型SOIデバイス構造を有するパワーマネージメント半導体装置やアナログ半導体装置において、ESD保護素子がESD破壊強度を充分に確保しつつ内部素子のESD保護を可能とする構造を提供する。
【解決手段】 半導体薄膜層上に形成される完全空乏型SOICMOSのNMOSドレインは、一辺がソースに対向するように形成されるのに対し、ESD入出力保護素子となるNMOS保護トランジスタを半導体支持基板上に形成し、N型保護トランジスタのドレインはソースの周囲を囲うようにして形成され、ソース周囲からドレインまでの最短距離は常に一定とすることで、ESD破壊強度を充分に確保し、かつESDノイズに弱い完全空乏型SOICMOSデバイスの入出力保護、特に出力保護を可能にする構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOI(Silicon On Insulator)基板上に設けられたMOSトランジスタを静電気等により発生した過大電流から保護するための構造を有する半導体集積回路装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンなどの抵抗体を使用した抵抗回路を有する半導体集積回路装置において、静電気等の外部から規格以上の過大電流が入力されたときに内部回路を構成する内部素子の破壊を防止するため、一般的に内部回路と外部入出力端子の間にダイオードやMOSトランジスタを用いた入力保護素子もしくは出力保護素子が配置されている。
【0003】
従来から使われているこの保護回路を備えた半導体集積回路装置の入出力回路部の例を図2に示す。図2(A)において、CMOSで構成される内部素子10としてN型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタで構成されるCMOSインバータ11が記載されており、このCMOSインバータ11と、入力端子301間、出力端子302間、さらにVdd線303とVss線304の間に保護素子20としてN型MOSトランジスタが設けられている。ただし、内部素子の回路構成は、説明の都合上CMOSインバータ11として表現している。
【0004】
上記の構成においては、例えば入力もしくは出力端子に負の過電圧が印加されると、保護素子20のNMOSトランジスタのPN接合は順方向となるため、保護NMOSトランジスタに電流が流れて内部素子を保護する。一方、正の過電圧が印加された場合は、保護素子20のNMOSトランジスタにおけるPN接合のアバランシェブレークダウンにより電流を保護MOSトランジスタへ流す。このようにして入出力保護素子を介し、接地された基板に過大電流を直接逃がして内部素子へ過大電流が流れないようにしている。
【0005】
図2(B)の内部素子10を構成するNMOSトランジスタ113の入出力保護、および図2(C)の内部素子10をPMOSで構成するPMOSトランジスタ112の入出力保護においても同様にしてESD保護を行っている。
【0006】
ところで一般的にSOI基板上、特に薄膜SOI基板上に形成されたデバイス素子は埋込絶縁膜及び素子分離絶縁膜により周囲を囲まれた構造となるため放熱性が悪く、過大電流による発熱により素子が破壊されやすい。そのためSOIデバイスはESDに非常に弱い構造となっている。内部の回路を保護するためにESD保護素子をSOI半導体薄膜層上に形成すると、過大電流による発熱により、やはり保護素子が破壊されやすくなるので、十分なESD耐性を得るために様々な工夫がされてきた。
【0007】
例えば内部素子の入力保護素子としてCMOSバッファ型ESD保護回路をSOI基板上に形成した半導体集積回路装置において、ESD耐性を向上させるためにCMOSバッファ型ESD保護回路の前段にさらにPNPおよびNPNダイオードを付加することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このようにSOI基板上にESD保護素子を形成する場合、十分なESD耐性を得るために保護素子自体を大きくしたり保護素子を増やしたりするため、保護回路の面積が大きくなりチップ面積が増大してしまうデメリットを有している。
【0009】
一方、十分なESD耐性を得るための手段のひとつとして、内部素子10はSOI半導体薄膜層に設け、そして入力保護素子は半導体支持基板に設ける構成とする半導体集積回路装置があり、例えば特許文献2あるいは3に示されている。
【特許文献1】特許 第3447372号公報(第6頁、第2図)
【特許文献2】特開平4−345064号公報(第9頁、第1図)
【特許文献3】特開平8−181219号公報(第5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、SOI基板の半導体薄膜層および埋込絶縁膜の一部を除去し開口した半導体支持基板に保護素子を形成した場合、保護素子自体はESD耐性を十分確保できるが、十分に内部素子を保護することができないという問題を有している。
【0011】
それは、ESDノイズが入ってきた時、内部素子よりも先にESD保護素子にノイズが逃げるように通常設計されるが、半導体支持基板上のESD保護素子の耐圧が大きすぎると、ESDノイズが出力端子302から入ってきた時に保護素子が動作しきれずに、SOI半導体薄膜層に形成される内部素子にノイズが流れ込み、内部素子が破壊に至るというメカニズムによる。そのため半導体支持基板上のESD保護素子は破壊強度を十分確保しつつ、ESD保護動作を開始する電圧を内部素子の耐圧より下げる必要がある。
【0012】
本発明は、半導体支持基板上にESD保護素子を形成した場合にもESD保護素子がESD保護動作を開始する電圧を内部素子の耐圧より下げることのできるESD保護素子の構成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は次の手段を用いた。
(1) 半導体支持基板上に積層された絶縁膜と前記絶縁膜上に積層された半導体薄膜層から構成されるSOI基板の前記半導体薄膜層表面に配置された第1のN型MOSトランジスタと、前記半導体薄膜層表面に配置された第1のP型MOSトランジスタと、抵抗体と、ドレインがゲート電極を介して一定の距離でソースの周囲を囲うように配置され、前記SOI基板の一部であって前記半導体薄膜層と埋込絶縁膜とが除去された前記半導体支持基板表面に配置されたESD保護素子として働く第2のN型MOSトランジスタとからなる半導体集積回路装置とした。
(2) ESD保護素子として働く第2のN型MOSトランジスタのソース領域形状が円形であることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(3) ESD保護素子として働く第2のN型MOSトランジスタのソース領域形状が惰円形であることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(4) ESD保護素子として働く第2のN型MOSトランジスタのソース領域形状が多角形であることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(5) 前記第1のN型MOSトランジスタのゲート電極は導電型がN型であり、前記第2のP型MOSトランジスタのゲート電極は導電型がP型である半導体集積回路装置とした。
(6) 第1のN型MOSトランジスタのN型ゲート電極、および第1のP型MOSトランジスタのP型ゲート電極、さらにはESD保護素子として働く第2のN型MOSトランジスタのゲート電極が、第1の多結晶シリコンからなることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(7) 第1のN型MOSトランジスタのN型ゲート電極および第1のP型MOSトランジスタのP型ゲート電極、さらにはESD保護素子として働く第2のN型MOSトランジスタのP型ゲート電極が、第1の多結晶シリコンと高融点金属シリサイドの積層構造であるポリサイド構造からなることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(8) 抵抗体が、能動素子である第1のN型MOSトランジスタおよび第1のP型MOSトランジスタ、そしてESD保護素子である第2のN型MOSトランジスタのゲート電極を形成する第1の多結晶シリコンとは膜厚が異なる第2の多結晶シリコンで形成されていることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(9) 抵抗体が半導体薄膜層の単結晶シリコンで形成されていることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(10) 抵抗体が、Ni−Cr合金もしくはクロムシリサイドもしくはモリブデンシリサイドもしくはβ‐フェライトシリサイドなどの薄膜金属抵抗体で構成されていることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(11) SOI基板を構成する半導体薄膜層の膜厚が0.05μmから0.2μmであることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(12) SOI基板を構成する絶縁膜の膜厚が0.1μmから0.5μmであることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
(13) SOI基板を構成する絶縁膜は、ガラス、もしくはサファイヤ、もしくはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などのセラミック、などの絶縁材料からなることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、半導体集積回路装置において、半導体薄膜層上に形成される内部素子であるNMOSのソース領域の形状が多角形であって、同じく多角形であるドレイン領域の一辺のみ対向しているのに対し、半導体支持基板上に形成されるESD入出力保護素子となるソース領域の周囲がドレイン領域によって囲まれているN型MOS構造の保護素子とすることで、ESDノイズが入力された場合の保護素子におけるバイポーラ動作電圧を容易に制御、低耐圧化することができ、支持基板上に形成することによりESD破壊強度を確保しつつ、ESDノイズを先に吸収し、ESDノイズに弱い半導体薄膜上の内部素子の入出力保護、特に出力保護、をすることが可能となる。
【0015】
特に、入出力の電気特性が重要なパワーマネージメント半導体集積回路装置やアナログ半導体集積回路装置において、保護効果が一層発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。図1(a)は本発明による半導体集積回路装置の第一の実施例を示す模式的断面図である。
【0017】
SOI基板は、たとえばP型である単結晶からなる半導体支持基板101、埋込絶縁膜103、そして素子を形成するP型の単結晶からなる半導体薄膜層102で構成され、このP型半導体薄膜層102上に第1のN型MOSトランジスタ(以下NMOS)113と第1のPMOSトランジスタ(以下PMOS)112で構成される内部素子10であるCMOSインバータ11と、抵抗素子30である多結晶シリコンで形成されたP型抵抗体114が形成されている。ただし内部素子10はCMOSインバータ11に限られたものではなく、種々に変更が可能である。
【0018】
また半導体支持基板101上には、保護素子20が形成される領域にはNMOSトランジスタで構成されたESD保護トランジスタ111(以後NMOS保護トランジスタと称す)が形成された半導体集積回路装置となっている。
【0019】
薄膜SOIデバイス、特に低電圧動作や低消費電力に対して非常に適している完全空乏型(ully epleted;FD)SOIデバイスは、CMOSトランジスタのゲート構造がいわゆる同極ゲート構造となっている。この同極ゲート構造は、NMOSトランジスタのゲート電極がN型の多結晶シリコンであり、PMOSトランジスタ112のゲート電極がP型の多結晶シリコンで構成される。図1の本実施例のCMOSインバータ11も同様に以下の構造となっている。以後FD構造SOIデバイスの場合について述べる。このトランジスタのゲートを形成する多結晶シリコンを第1の多結晶シリコンとする。
【0020】
まずNMOSトランジスタ113はP型半導体薄膜層102上にソース・ドレインとなるN型不純物拡散層105と、例えば酸化膜からなるゲート絶縁膜107上に形成されたN型多結晶シリコン109からなるゲート電極で構成されている。またPMOSトランジスタ112はP型半導体薄膜層に形成されたNウェル104上にソース・ドレインとなるP型不純物拡散層106と、例えば酸化膜からなるゲート絶縁膜107上に形成されたP型多結晶シリコン110からなるゲート電極で構成されている。そしてNMOSトランジスタ113およびPMOSトランジスタ112は、例えばLOCOS(Local xidation of ilicon)法により形成したフィールド絶縁膜108と埋込絶縁膜103で完全素子分離されている。
【0021】
またフィールド絶縁膜上に、電圧を分圧するためのアナログ回路であるブリーダー分圧回路もしくは時定数を設定するCR回路などに用いられる抵抗素子30を構成する、例えば高抵抗のP型抵抗体114が形成されている。このP型抵抗体はこの実施例では多結晶シリコンで形成されている。
【0022】
次に保護素子20を構成するNMOS保護トランジスタ111は、半導体薄膜層102と埋込絶縁膜103の一部を除去して表面化した半導体支持基板101上に、N型不純物拡散層からなる円形に設けられたソース305とこのソースの周囲をとり囲むように配置されたN型不純物拡散層からなるドレイン405と、例えば酸化膜からなるゲート絶縁膜107上に設けられた、内部素子のNMOSトランジスタ113と同様のN型多結晶シリコン109からなるゲート電極で構成されている。NMOS保護トランジスタ111のゲート電極は、内部素子のNMOSトランジスタ113とは異なりP型多結晶シリコンとしても良い。あるいは、ソース・ドレインを分離するための領域には、フィールド絶縁膜108を用いても良い。
【0023】
従来の構造である図8の構造においても保護素子として、NMOS保護トランジスタ211が形成されている。FD型SOIデバイスである内部素子のNMOS213の保持電圧は、一般に非常に低くなる傾向にある。そのため外部から、サージが印加されたときに、NMOS保護トランジスタ211より低い電圧で内部素子のNMOS213がバイポーラ動作に入ってしまうために、内部素子が破壊に至ってしまう。
【0024】
また、保護素子の破壊を防ぐ目的でNMOS保護トランジスタ211のL長を大きくすれば、保持電圧はあがってしまい、さらに、保護素子がかなり大きな面積を占有することになってしまう。
【0025】
それに比べ図1の実施例のように、保護素子を、ソース305が円形で、ソースの周囲を囲むようにドレイン405を配置したNMOS保護トランジスタ111を用いることで、ソースの面積(円形の場合、半径と言い換えても良い)を調整することによりバイポーラ動作時のhFEを制御できるので保持電圧を変えることが容易である。具体的には、ソース面積を小さくするとhFEが増加し保持電圧が下がり、ソース面積を大きくするとhFEが減少し、保持電圧が上がることになる。従って、内部素子の破壊を防ぐためにはNMOS保護トランジスタ111のソース面積を小さくすることになり、保護素子の全体の面積は小さくなることになる。
【0026】
さらにL長(これはバイポーラでいうところのベース幅)を調整する事でさらに保持電圧を上昇させたり、下降させたりすることができるため、所望の特性を持つ保護素子を形成することが容易であり、FD構造SOIデバイスで構成された内部素子より先にバイポーラ動作にてESDノイズを逃がす事が可能となる。
【0027】
尚、P型ゲート電極を構成するP型多結晶シリコン110は濃度が1×1018atoms/cm3以上のボロンまたはBF2などのアクセプター不純物を含み、またN型ゲート電極を構成するN型多結晶シリコン109は濃度が1×1018atoms/cm3以上のリンもしくは砒素などのドナー不純物を含んでいる。
【0028】
また内部素子10のNMOSトランジスタ113および保護素子20のNMOS保護トランジスタ111のソース・ドレインであるN型不純物拡散層105は、リンもしくは砒素で形成され濃度は1×1019atoms/cm3以上となっている。このときNMOSトランジスタ113とNMOS保護トランジスタ111のN型トランジスタ113は砒素、そしてNMOS保護トランジスタ111はリンでN型不純物拡散層を形成しても良い。またその逆の構成でも構わない。PMOSトランジスタ112のソース・ドレインであるP型不純物拡散層106は、ボロンもしくはBF2で形成され濃度は1×1019atoms/cm3以上となっている。
【0029】
SOI基板はその動作電圧により半導体薄膜層102および埋込絶縁膜103の厚さが決まる。埋込絶縁膜103は主にシリコン酸化膜で構成され、その膜厚は0.1μmから0.5μmとなっている。なお埋込絶縁膜はガラスやサファイヤ、シリコン窒化膜などで構成しても構わない。半導体薄膜層102の膜厚は薄膜SOIデバイスである完全空乏型(FD)SOIデバイスの機能・性能に応じて決まり0.05μmから0.2μmとなっている。
【0030】
また図1の実施例において、アナログ回路で使用される抵抗素子30のP型抵抗体114は、CMOSのゲート電極の多結晶シリコン109および110とは別工程で形成され、これらのゲート電極より薄い膜厚の第2の多結晶シリコンで形成されている。例えばゲート電極の膜厚は2000Åから6000Å程度の膜厚であるのに対し、P型抵抗体114の膜厚は500Åから2500Åで形成される。これは多結晶シリコンを用いた抵抗体は、膜厚は薄い方がシート抵抗値を高く設定でき、また温度特性も良くなるため、より精度を向上させることができるためである。シート抵抗値はその抵抗の用途にもよるが通常の分圧回路においては数kΩ/□から数十kΩ/□の範囲で使われる。この時の不純物はボロンないしBF2を用い1×1014〜9×1018atoms/cm3程度の濃度としている。また図1にはP型抵抗体114を示している。これらの抵抗体の特徴と製品に要求される特性を考慮し、低抵抗である高不純物濃度P型抵抗体、あるいは不純物の極性が逆のN型抵抗体を用いる場合もある。
【0031】
なお、この抵抗素子30を図2の入力端子301もしくは出力端子302と内部素子10の間に付加することで、よりESD保護耐性を強化することも可能である。
【0032】
図1(b)は図1(a)に示した半導体集積回路装置の一実施例における模式的平面図である。説明の都合上、抵抗素子は示していない。
【0033】
内部素子のNMOSトランジスタ113および内部素子のPMOSトランジスタ112のソースおよびドレイン領域の形状は多角形(図では四角形で示しているがそれ以上の多角形でも良い)であり、一般にソース領域の一辺にドレイン領域の一辺が向かい合うレイアウトとなっているのに対し、NMOS保護トランジスタ111のソース305形状は円形であり、かつドレイン405はソース305の周囲を囲うようにして形成されている。すなわちソース305〜ドレイン405間の最短距離は常に一定となっている。なお、NMOS保護トランジスタ111のソース形状305は円形に限らない。楕円形でも多角形でもかまわない。より好ましくは円形である。楕円形あるいは多角形の場合もドレイン405はソース305の周囲を囲うようにして形成され、ソース305周囲からドレイン405までの最短距離は常に一定にレイアウトする。
【0034】
ソース305〜ドレイン405間の表面には多結晶シリコン109がゲート絶縁膜を介して設置されており、ソース305、ドレイン405の不純物導入はこれをマスクとして行われることにより、ソース305〜ドレイン405間の距離はセルフアライン(自己整合的)に形成できるため高精度にレイアウトできる。なお、図には示していないが、この多結晶シリコン109は金属配線を介してソース305に結線される。また、多結晶シリコン109にはN型の不純物たとえばP(リン)が導入されており、高不純物濃度のN型の半導体となっている。
【0035】
ウエル電極P型層106(バイポーラでいうところのベース電極)はドレイン405の外周において、ドレイン405N型領域からある距離も隔てて設けられており、ドレイン405領域とベース電極P型層106の距離は、所望のESD保護トランジスタとしての特性を考慮して設定される。
【0036】
図3は本発明による半導体集積回路装置の第二の実施例を示す模式的断面図である。
図1に示す本発明の第一の実施例においてはゲート電極を汎用的な多結晶シリコン単層としたが、その場合、特にP型多結晶シリコン110単層ではシート抵抗値は100Ω/□程度と大きく、高速動作や高周波対応の必要な半導体装置への適用には向いていない。その対策としてN型多結晶シリコン109およびP型多結晶シリコン110の上にタングステンシリサイドやモリブデンシリサイドやチタンシリサイドやプラチナシリサイドなどの高融点金属シリサイド116を形成したいわゆるポリサイド構造をゲート電極とし低抵抗化したのが図3に示す構造である。シート抵抗値は高融点金属シリサイドの種類と膜厚によるが、標準的には500Åから2500Åの膜厚で十数Ω/□から数Ω/□のシート抵抗値とすることができる。
【0037】
またこのときMOSの動作そのものはN型多結晶シリコン109およびP型多結晶シリコン110と半導体薄膜層との仕事関数で決まるため、ゲート電極が低抵抗化される分さらに半導体装置の性能の向上となる。
【0038】
以下ではさらに別の実施例による構造を図4から図7に示す。
【0039】
図4は図1で示した本発明による半導体集積回路装置の変形例を示す模式的断面図である。
【0040】
本発明の基本構成である、内部素子であるCMOSインバータ11と、内部素子のESD入出力保護をするNMOS保護トランジスタ111からなる保護素子20と、アナログ回路で使用される抵抗素子30を図4においても示しているが、図1と異なる点としては抵抗素子30を多結晶シリコンではなく半導体薄膜層の単結晶シリコンで、P型抵抗体114を形成しているという点である。
【0041】
アナログ回路ではブリーダー分圧回路によって電圧を精度よく分割する必要があるため、ブリーダー抵抗体に要求される特性として抵抗比精度が高いことが挙げられる。例えば電圧検出器(ボルテージディテクター;VD)などはそのチップ面積に対する抵抗回路30の面積の割合が非常に大きいため、精度よくかつ抵抗素子の面積を縮小が図れれば、それがチップ面積の縮小につながりコストを下げることが可能となる。
【0042】
この抵抗体を単結晶シリコンであるSOI基板の半導体薄膜層を利用して形成した場合、抵抗体に結晶粒界が存在しないため粒界に依存する抵抗のばらつきが皆無であり、抵抗体の高抵抗化かつ面積縮小も可能であるため、抵抗体として利用するには非常に有効である。
【0043】
なお、図4で示した一実施例である半導体集積回路装置は、図1で示した半導体集積回路装置と全く同じ機能および効果を有している。
【0044】
図5は図3で示した実施例による半導体集積回路装置の変形例を示す模式的断面図であり、図4と同様に抵抗素子30を多結晶シリコンではなく半導体薄膜層の単結晶シリコンで、P型抵抗体114を形成している。尚、図5で示した半導体集積回路装置は、図3で示した半導体集積回路装置と全く同じ機能および効果を有し、かつ、図4で示した単結晶シリコンで形成した抵抗体のメリットも有している。
【0045】
図6は図1に示した実施例による半導体集積回路装置のさらに別の変形例を示す模式的断面図である。
【0046】
既に示した実施例の基本構成である、内部素子であるCMOSインバータ11と、内部素子のESD入出力保護をするP+ゲートNMOS保護トランジスタ111からなる保護素子20と、アナログ回路で使用される抵抗素子30を図6においても示しているが、図1と異なる点としては抵抗素子30に多結晶シリコンではなく薄膜金属抵抗体118を用いている点である。
【0047】
図6の実施例では薄膜金属抵抗体118にクロムシリサイド119を用いているが、Ni−Cr合金やモリブデンシリサイド、β−フェライトシリサイドなどの金属シリサイドを用いることも可能である。クロムシリサイドは金属シリサイドの中でも高抵抗であり、膜厚を100Åから300Å程度に薄膜化することで抵抗体として用いることが可能である。この薄膜金属抵抗体118を多結晶シリコンの代わりに用いることで、分圧回路の比精度や抵抗値のバラツキ、温度係数を小さくすることが可能となる。なお、図6で示した一実施例である半導体集積回路装置は、図1で示した半導体集積回路装置と全く同じ機能および効果を有している。
【0048】
図7は図3に示した実施例による半導体集積回路装置のさらに別の変形例を示す模式的断面図であり、図6と同様に抵抗素子30に多結晶シリコンではなく薄膜金属抵抗体118を用いている。尚、図6で示した半導体集積回路装置は、図3で示した半導体集積回路装置と全く同じ機能および効果を有し、かつ図5で示した薄膜金属で形成した抵抗体のメリットも有している。
【0049】
以上本発明の実施の形態をP型半導体支持基板、P型半導体薄膜層のSOI基板を用いた実施例により説明してきたが、これらはN型半導体基板、N型半導体薄膜層のSOI基板を用いても構わない。この時N型半導体支持基板上に形成した、N基板Pウェル型のP+ゲートNMOS保護トランジスタにおいても以上に説明してきた内容と原理に従い、ESD破壊強度を確保しつつESD保護動作耐圧を薄膜SOIデバイスの内部素子耐圧より下げ、内部素子より先にESDノイズを逃がす事が可能である。
【0050】
またSOI基板には素子を形成する半導体薄膜を貼り合わせて作製する、貼り合わせSOI基板、半導体基板に酸素イオンを注入し熱処理を施し埋込酸化膜を形成するSIMOX基板があり本発明ではどちらを用いることも可能である。さらに貼り合わせSOI基板を用いた場合、半導体薄膜層と半導体基板の極性を、異なる導電型にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)本発明の半導体集積回路装置の一実施例を示す模式的断面図。 (b)本発明の半導体集積回路装置の一実施例を示す模式的平面図。
【図2】保護回路を備えた半導体集積回路装置の入出力回路部の例を示す回路図
【図3】本発明による半導体集積回路装置の別の一実施例を示す模式的断面図。
【図4】本発明による半導体集積回路装置の別の一実施例を示す模式的断面図。
【図5】本発明による半導体集積回路装置の別の一実施例を示す模式的断面図。
【図6】本発明による半導体集積回路装置の別の一実施例を示す模式的断面図。
【図7】本発明による半導体集積回路装置の別の一実施例を示す模式的断面図。
【図8】従来の半導体集積回路装置の模式的断面図
【図9】従来の半導体集積回路装置の別の模式的断面図
【符号の説明】
【0052】
10 内部素子
20 保護素子
30 抵抗素子
101、201 P型半導体支持基板
102、202 P型半導体薄膜層
103、203 埋込絶縁膜
104、204 Nウェル
105、205 N型不純物拡散層
106、206 P型不純物拡散層
107、207 ゲート絶縁膜
108、208 フィールド絶縁膜
109、209 N型多結晶シリコン
110、210 P型多結晶シリコン
111、211 NMOS保護トランジスタ
112、212 PMOSトランジスタ
113、213 NMOSトランジスタ
114、214 P型抵抗体
115、215 P型多結晶シリコン
116、216 高融点金属シリサイド
117 P型単結晶シリコン
118 薄膜金属抵抗体
119 クロムシリサイド
301 入力端子
302 出力端子
303 Vdd
304 Vss
305 ソース
405 ドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体支持基板上に積層された絶縁膜と前記絶縁膜上に積層された半導体薄膜層から構成されるSOI基板の前記半導体薄膜層表面に配置された第1のN型MOSトランジスタと、
前記半導体薄膜層表面に配置された第1のP型MOSトランジスタと、
抵抗体と、
ドレインがゲート電極を介して一定の距離でソースの周囲を囲うように配置され、前記SOI基板の一部であって前記半導体薄膜層と埋込絶縁膜とが除去された前記半導体支持基板表面に配置されたESD保護素子として働く第2のN型MOSトランジスタと、からなる半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記第2のN型MOSトランジスタのソース領域形状が円形であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記第2のN型MOSトランジスタのソース領域形状が楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記第2のN型MOSトランジスタのソース領域形状が多角形であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記第1のN型MOSトランジスタのゲート電極は導電型がN型であり、前記第2のP型MOSトランジスタのゲート電極は導電型がP型である請求項1から4までに記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記第1のN型MOSトランジスタのN型ゲート電極、および前記第1のP型MOSトランジスタのP型ゲート電極、さらにはESD保護素子として働く前記第2のN型MOSトランジスタのゲート電極が、第1の多結晶シリコンからなることを特徴とする請求項5に記載の半導体集積回路装置。
【請求項7】
前記第1のN型MOSトランジスタのN型ゲート電極、および前記第1のP型MOSトランジスタのP型ゲート電極、さらにはESD保護素子として働く前記第2のN型MOSトランジスタのゲート電極が、第1の多結晶シリコンと高融点金属シリサイドの積層構造であるポリサイド構造からなることを特徴とする請求項5に記載の半導体集積回路装置。
【請求項8】
前記抵抗体が、能動素子である前記第1のN型MOSトランジスタおよび前記第1のP型MOSトランジスタ、そしてESD保護素子である前記第2のN型MOSトランジスタのゲート電極を形成する第1の多結晶シリコンとは膜厚が異なる第2の多結晶シリコンから形成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項9】
前記抵抗体が前記半導体薄膜層の単結晶シリコンで形成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項10】
前記抵抗体が、Ni−Cr合金もしくはクロムシリサイドもしくはモリブデンシリサイドもしくはβ‐フェライトシリサイドなどの薄膜金属抵抗体で構成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項11】
前記SOI基板を構成する前記半導体薄膜層の膜厚が0.05μmから0.2μmであることを特徴とする請求項1から10までのいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項12】
前記SOI基板を構成する前記絶縁膜の膜厚が0.1μmから0.5μmであることを特徴とする請求項1から10までのいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項13】
前記SOI基板を構成する前記絶縁膜は、ガラス、もしくはサファイヤ、もしくはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などのセラミック、などの絶縁材料からなることを特徴とする請求項1から12までのいずれかに記載の半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−165492(P2007−165492A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358464(P2005−358464)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】