説明

基板処理装置

【課題】薬液処理時に発生する薬液蒸気が処理槽を有するシンク外へ飛散するのを効果的に抑えて高品質の基板処理を可能にした基板処理装置を提供すること。
【解決手段】上方が開口した有底の容器からなる処理槽2A〜2Dと、ウェーハWを把持する把持機構11と、把持機構が連結されてウェーハの処理槽内に貯留された処理液への浸漬及び処理槽内からの引き上げを行う昇降装置10と、昇降装置が連結されてウェーハを処理槽へ搬送する搬送装置7と、を備える基板処理装置1において、処理槽から蒸気が平常時よりも多量に発生上昇するときに処理槽の開口部を覆うことができる搬送装置に連結された飛散防止カバー8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板や液晶ガラス基板等の各種基板を複数種類の処理液に浸漬して、その表面の洗浄等を行う基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や液晶ガラス基板等の各種基板(以下、「ウェーハ」という)は、その表面にパーティクル、有機汚染物、金属不純物等(以下、纏めて「コンタミネーション」という)が付着しているので、このコンタミネーションを除去するのに様々な洗浄装置が使用されている。この種の洗浄装置の中でウエットタイプの洗浄装置はコンタミネーションを効果的に除去でき、しかもスループットが高いことから広く使用されている。
【0003】
このタイプの洗浄装置は、概ねウェーハを搬入する搬入部と、搬入されたウェーハを洗浄等する洗浄処理部及び洗浄処理後に乾燥する乾燥処理部並びに処理済みのウェーハを取り出す搬出部とで構成されている。このうち洗浄処理部は、複数種類の処理液、例えばアンモニアやフッ酸、硫酸などの薬液及び純水等の洗浄液が貯留されてウェーハの各種の処理を行う処理槽が複数個一列に配列されて、個々の処理槽でウェーハに対して薬液処理が行われ、この薬液処理後に純水によって水洗洗浄処理が行われている。また、これら処理槽間は、搬送装置によってウェーハの移送が行われている。
【0004】
ところが、このような洗浄装置は、薬液処理の際に処理槽に貯留される薬液、例えば過酸化水素水が添加された硫酸が高温、例えば約120度に加熱されるので、このような高温の薬液にウェーハが浸漬され、薬液処理後に処理槽から取り出されると、このとき、搬送機構のウェーハチャック及び処理済みウェーハに付着した薬液が蒸発し、薬液ミストとなって装置内に飛散及び拡散して、他のウェーハや他の装置部材を汚染してしまう恐れがある。そこで、このような洗浄装置には、処理槽を隔離する隔壁等からなる飛散防止手段が設けられている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0005】
例えば、下記特許文献1に開示された基板処理装置は、処理槽とウェーハを搬送するハンドリング手段との間に隔壁を設けたものである。この隔壁により、処理槽から発生する薬液蒸気がハンドリング手段の可動機構等へ侵入することが阻止されるので、薬液蒸気によって可動機構等が腐食されることがなくなり、逆に機構部からのパーティクルが処理槽側へ侵入することがなくなる。
【0006】
また、下記特許文献2に開示された洗浄装置は、処理槽の周囲を仕切板及び遮蔽板で囲ったものである。なお、図5は下記特許文献1に記載されたウエットタイプ洗浄装置の一部、すなわち薬液処理槽付近を示した斜視図、図6はこの洗浄装置の縦断面図である。
この洗浄装置20は、図5に示すように、薬液洗浄処理槽23の前後に水洗洗浄処理槽22、24が配列され、この薬液洗浄処理槽23は、外側の外槽23aと薬液が貯留されてウェーハWがその中に浸漬される内槽23bとで構成されている。
【0007】
外槽23aは、その後端部に仕切板25及び前端部に遮蔽板(ミストセパレータ)26がそれぞれ設けられ、仕切板25は、図6に示すように、天井部に位置するファン・フィルタ・ユニットFが吊設され、遮蔽板26は外槽23aの外側にボルト等で固着されている。遮蔽板26は、略U字型に成形されてその略中央部には切欠凹部26aが形成されている。この切欠凹部26aは、ウェーハチャック21の上下動の動きに合わせた大きさになっている。また、水洗洗浄処理槽22の前後端には、遮蔽板26及び仕切板25と同じ構成の遮蔽板27及び仕切板28が設けられ、更に水洗洗浄処理槽24の前後端にも遮蔽板29及び仕切板30が設けられている。それぞれの遮蔽板26、27、29及び各仕切板25、28、30は相互に気密に連結されている。
【0008】
また、洗浄処理部内は、図6に示すように、遮蔽板26列を境として、前面側に搬送装置が移動するスペース領域の駆動エリアXと、背面側に各処理槽が存在する処理エリアYとに区分されて分離されている。
【0009】
この洗浄装置20によると、内槽23bの前後に遮蔽板26及び仕切板25が配置され、さらに上方からファン・フィルタ・ユニットFによって清浄な空気が下方に向けて吹き出されているので、ウェーハチャック21の上下動の際などに発生する薬液ミストは外槽23aと内槽23bの間の空隙から、内槽23b下方の空間Pを経て効率よく排気口31から排気される。これにより、薬液ミストが装置内に拡散することがなくなる。また、このとき内槽23bの後方は仕切板25によって完全に遮られ、前方側も遮蔽板26によって相当程度遮られるので、薬液ミストは気流共々極めて効率よく排気される。さらに洗浄処理部内は、遮蔽板列によって駆動エリアXと処理エリアYとに分離され、しかも各エリアに対して夫々ファン・フィルタ・ユニットFから給気される一方、駆動エリアXは排気板31から排気され、さらに処理エリアYは外槽23aと内槽23bの間の空隙から排気される。したがって、それぞれのエリア毎に給排気量を制御して装置内の雰囲気をコントロールして淀みのない気流を発生させて、装置内に薬液ミストやパーティクルが拡散されるのを防止できる。
【0010】
【特許文献1】特開平10−27770号(段落〔0016〕、図2)
【特許文献2】特開平7−176509号(段落〔0043〕〜〔0047〕、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に開示された基板処理装置によれば、処理槽とウェーハを搬送するハンドリング手段との間に隔壁が設けられているため、処理槽から発生する薬液蒸気がハンドリング手段の可動機構等へ侵入するのが阻止されるので、薬液蒸気によって可動機構等が腐食されることがなくなる。しかしながら、隔壁は処理槽とハンドリング手段との間に設けられているだけで、隔壁が存在しない箇所から薬液蒸気が漏れて他へ侵入する恐れがある。
【0012】
これに対して上記特許文献2に開示された洗浄装置20は、処理槽22〜24の周囲が仕切板25、28、30及び遮蔽板26、27、29で覆われるので、薬液蒸気が洗浄装置20内へ拡散するのを効果的に防止できる。しかしながら、この洗浄装置20は、1列に配列された個々の処理槽22〜24にそれぞれ仕切板25、28、30及び遮蔽板26、27、29を装着して、それぞれの遮蔽板26、27、29及び仕切板25、28、30で囲まれているが、例えば各遮蔽板26、27、29には搬送アームが挿入される大きな凹状溝が必要となる。このため、この凹状溝を通過する気体の流れは、搬送機構の移動に伴い搬送機構から処理槽に向かう方向と、その逆の処理槽から搬送機構に向かう方向の両方向に発生する。また、この装置では駆動エリアXと空間Pとの間にある排気用の穴によって駆動エリアXに侵入した蒸気を排出しているが、一度は駆動エリアXに侵入しており、搬送機の動きなどによって排気用の穴より下方においても滞留する可能性がある。また、薬液蒸気は上部ファン・フィルタ・ユニットFの給気によって押下げることになるが、このファン・フィルタ・ユニットFは装置内全体に常時同じ量しか供給できないので、薬液蒸気の発生が多いときに多くエアーを供給し、蒸気が少ないときにはエアーを少なくするような制御が難しい。
【0013】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、薬液処理時に発生する薬液蒸気が処理槽外へ飛散するのを効果的に抑えて高品質の基板処理を可能にした基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の基板処理装置の発明は、上方が開口した有底の容器からなる処理槽と、被処理基板を把持する把持機構と、前記把持機構が連結されて前記被処理基板の前記処理槽内に貯留された処理液への浸漬及び該処理槽内からの引き上げを行う昇降装置と、該昇降装置が連結されて前記被処理基板を前記処理槽へ搬送する搬送装置と、を備える基板処理装置において、
前記処理槽から蒸気が平常時よりも多量に発生上昇するときに前記処理槽の開口部を覆うことができる前記搬送装置に連結された飛散防止カバーを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記処理槽の開口部には該開口部を開閉する蓋体が設けられ、前記飛散防止カバーは、前記蓋体が開かれたときに前記開口部の上部を覆うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の基板処理装置において、前記飛散防止カバーは外周囲が側板で囲まれその上方が閉鎖されるとともに下方が開放されたカバー体からなり、該飛散防止カバーの下方の開放口を通して内部へ前記把持機構が出し入れされるようになし、前記昇降装置により前記被処理基板を前記処理槽から引上げる際には、前記被処理基板を把持する前記把持機構及び該被処理基板が前記飛散防止カバー内に収容されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の基板処理装置において、前記飛散防止カバーは、その天井内面に不活性ガスを噴射させる噴射ノズルが設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の基板処理装置において、前記飛散防止カバーの開放口は、前記処理槽を収容するシンクの開口部に近接する位置まで延設されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置において、前記飛散防止カバーは前記昇降装置とは別の一対の支持部材により、水平方向に移動する前記搬送装置に連結されることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の基板処理装置において、前記飛散防止カバーの内部に収容された前記把持機構と、前記飛散防止カバーの外部にある前記昇降装置を支持アームにより連結し、前記飛散防止カバーには前記支持アームが前記昇降装置による前記把持機構の昇降動作の妨げにならないように、前記飛散防止カバーの一側板にスリットを形成することを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の基板処理装置において、前記飛散防止カバーは、内部を透視できる透明部材で形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理槽、把持機構、搬送装置、昇降装置及び飛散防止カバーは、清浄気流発生手段が設けられた収容室に収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下に示す優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、処理槽から蒸気が多量に発生するときに飛散防止カバーを搬送装置により処理槽上に移動できるので、この蒸気が外部に放出されることを防止できる。例えば高温の薬液が蒸発しても薬液により処理槽外が汚染されることが防止できる。したがって、従来技術のように、個々の処理槽と搬送装置の間の仕切板を設ける必要がなくなり、簡単な構成で処理液の飛散を効果的に抑制することができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、処理槽の上部に蓋体を設け、この蓋体が開かれたときに飛散防止カバーにより処理槽を覆うので、効果的に蒸気の外部への放出を抑制できる。
【0025】
請求項3の発明によれば、被処理基板を処理槽から引上げる際に、この被処理基板を把持する把持機構及び被処理基板がこの飛散防止カバー内に収容されるので、この被処理基板等に付着した処理液から蒸発した薬液蒸気が飛散防止カバー外へ飛散されるのを阻止できる。また、蓋を開けたときのみに上昇する蒸気に対しても同様の効果がある。
【0026】
請求項4の発明によれば、飛散防止カバーの天井内面に噴射ノズルを設けることにより、被処理基板を処理槽から引上げる際に、天井の噴射ノズルから不活性ガスを噴射させることが可能になり、飛散防止カバー内の処理液の蒸気等を効率よく排出させることができる。また、高温処理液から引上げられた基板を冷却する効果もあり、基板を水洗処理槽へ入れたときの熱衝撃も緩和できる。
【0027】
請求項5の発明によれば、飛散防止カバー開放口を処理槽が収容されたシンクの開口部に近接する位置まで延設することにより飛散防止カバーが長尺の筒状体になり、処理槽から引上げられる被処理基板及びこれを把持する把持機構がこの長尺の飛散防止カバーで覆われて飛散防止カバー外への処理液の飛散量が低減される。
【0028】
請求項6の発明によれば、飛散防止カバーは把持機構が連結された昇降装置とは別の一対の支持部材を介して搬送装置に連結固定されているので、昇降装置の上下動作は飛散防止カバーや支持部材によって妨げられず、基板の昇降・搬送がスムーズに行われる。
【0029】
請求項7の発明によれば、飛散防止カバーの一側壁面に、把持機構を支持した支持アームが上下動できるスリットを設けることにより、把持機構の移動がスムーズになる。
【0030】
請求項8の発明によれば、飛散防止カバーは内部を透視できる透明部材で形成されるので、防止カバー内の状態を簡単に検視することが可能になる。
【0031】
請求項9の発明によれば、清浄気流発生手段により収容室内の清浄度を維持することができる。また、搬送装置は飛散防止カバーとともに移動するので、搬送装置があるエリアとないエリアが生じる。搬送装置がないエリアでは清浄気流発生手段による清浄なエアーの供給とシンクからの排気が釣り合っている。しかしながら、搬送装置があるエリアでは搬送装置と飛散防止カバーが清浄気流発生手段からの清浄エアーがシンクの排気に抜けることを妨げるので、飛散防止カバー付近では気圧が高まると同時に気流の流速が速くなる。さらに飛散防止カバー内では、シンクからの排気によって気圧が低くなるので、スリットを介してカバーの外側の清浄エアーが飛散防止カバー内に入る方向に気流が発生する。これにより飛散防止カバー内の薬液蒸気はスリットから飛散防止カバー外へは流出することはないので、搬送装置が薬液蒸気により錆びることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための基板処理装置を例示するものであって、本発明をこの基板処理装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。なお、図1は本発明の実施形態に係る基板処理装置の一部構成を模式して示した概略正面図、図2は図1の基板処理装置における1個の処理槽とこの処理槽を収容したシンク及び搬送室の概略を示した縦断面図、図3は図2のX−X線で切断した断面図、図4は飛散防止カバーを斜め後方から見た斜視図である。また、以下の説明において、特に区別する必要がある場合以外は、薬液と洗浄液(純水)とを総称したものを処理液と呼び、さらに説明の便宜上薬液を貯留する処理槽を薬液処理槽、純水を貯留する処理槽を水洗処理槽と呼ぶことにする。
【0033】
本発明の実施形態に係る基板処理装置1は、複数枚のウェーハWを複数種類の処理液に浸漬することによりウェーハW表面に所定の化学処理を施すウエットタイプの処理装置であって、装置の全体図に関する詳細な図示は省略するが、この基板処理装置1は、未処理のウェーハWをカセットC単位で投入する搬入部と、搬入されたウェーハWに対して洗浄等の処理を行う基板処理部と、洗浄処理後に乾燥する乾燥処理部と、処理後のウェーハWをカセットC単位で取り出す搬出部を有している。これらの搬入・搬出部及び基板処理部並びにこれらの付属部品等は所定大きさの収容室に収納されている。
【0034】
搬入部は、未処理のウェーハWを複数数、例えば25枚収納されたカートリッジからなるカセットCを2個載置する載置部Aと、カセットCを移送する図示しない搬送機構とを有している。また、基板処理部は、一方向に並設された複数個の処理槽2A〜2D及び隣接する処理槽2A〜2D間でウェーハWを搬送すると共に処理槽2A〜2D内へウェーハWを収容及び取り出す搬送・昇降装置を有し、搬送・昇降装置にはウェーハWを把持するウェーハチャック11が取り付けられて、このウェーハチャック11でウェーハWが把持されて処理槽2A〜2D間に移送されると共に、処理槽2A〜2D内に収容及び取り出しができるようになっている。なお、処理槽2A〜2Dについての詳細の構造は後述する。更に、搬出部も搬入部と略同じ載置部B及び搬送機構を有している。
【0035】
図1は基板処理装置1の搬入部及び一部の基板処理部を示している。この基板処理装置1は、図1に示すように、搬送機構により搬入されたカセットCに収納されたウェーハWを載置する載置部Aと、この載置部Aに隣接して略1列に配列された複数個の処理槽2A〜2Dと、洗浄処理後に乾燥する乾燥処理槽2Eと、処理槽2A〜2Eにおいて処理されたウェーハWが載置される載置部Bと、を有している。
【0036】
これらの処理槽2A〜2Eは、例えば、処理槽2AはウェーハW表面の有機汚染物、金属不純物、パーティクル等の不純物質を薬液によって薬液処理する薬液処理槽であり、処理槽2Bは薬液処理槽2Aで処理されたウェーハWを洗浄液、すなわち純水によって洗浄処理する水洗処理槽である。また、この水洗処理槽2Bで処理されたウェーハWに対して、異なる薬液で処理する必要がある場合や同一の薬液を用意してスループットを高める必要がある場合には、水洗処理槽2Bに隣接して薬液処理槽2C及び水洗処理槽2Dをさらに設けて、それぞれ異なるあるいは同一の薬液による処理が行われる。更に他の処理液で処理する必要がある場合においては、薬液処理槽2C及び水洗処理槽2Dと同様に、水洗処理槽2Dに隣接して薬液処理槽及び水洗処理槽をそれぞれ1乃至複数個配設すればよい。また、図1に示す基板処理装置1においては、水洗処理槽2Dに隣接して超音波等によるファイナルリンス、及び、乾燥媒体、例えばIPA(イソプロピルアルコール)等で蒸気乾燥する処理を行う乾燥処理槽2Eが設けられ、各処理槽2A〜2Dで処理されたウェーハWの仕上げ処理(すなわち最終洗浄と乾燥処理)を行う。そして、この乾燥処理槽2Eに隣接してウェーハWの搬出部となる載置部Bが設けられ、ここで後の処理を行うための搬出がなされる。なお、薬液にはアンモニア、フッ化アンモニウム、燐酸、硫酸、フッ化水素酸等が使用される。薬液によっては過酸化水素が添加される。また、図1では処理槽2A〜2Eとして薬液、水洗及び乾燥処理槽を示したが、これらの処理槽2A〜2Eの他にウェーハチャック11を洗浄、乾燥するチャック処理槽等を設けてそれぞれの処理を行うと好ましい。
【0037】
1列に配列された処理槽2A〜2Dには、図2に示すように、隣接する処理槽間を移動等する搬送・昇降装置6が計2つ設けられている。この搬送・昇降装置6のうち、前段側に位置する搬送・昇降装置6は、配列された処理槽2A〜2Dのうち、薬液処理槽2Aを中心にしてその前後の距離を移動する。詳しくは、載置部AからウェーハWを搬送して薬液処理槽2A内の処理液にウェーハWを浸漬し、処理されたウェーハWを薬液処理槽2Aから引上げて隣接する水洗処理槽2Bへ搬送するものである。図1には搬送・昇降装置6に装着されたチャックカバー8、8を示し、前段側の搬送・昇降装置6に装着されたチャックカバー8は、搬送装置7により処理槽2Aを中心にしてその前後の距離L、すなわち載置部A及び処理槽2Bの間を移動する。後段側の搬送・昇降装置6に装着された他のチャックカバー8は、薬液処理槽2Cを中心にしてその前後の距離L、すなわち水洗処理槽2B及び載置部Bの間を移動するようになっている。
これらの載置部A、B、処理槽2A〜2D及び搬送・昇降装置6並びにこれらの付属部品等は、エアーコントロールされた収容ケース4内に収納されている。
【0038】
薬液処理槽2Aの上方には、図2に示すように、搬送・昇降装置6が設けられて、これらの薬液処理槽2A及び搬送・昇降装置6が収容ケース4内に収納されている。この薬液処理槽2Aは、所定量の処理液及び複数枚のウェーハWを収容できる大きさの有底で上方に開口を有する箱型の内槽2と、この内槽2の外周囲にあって内槽2からオーバーフローする処理液を回収する外槽2と有し、内槽2の底壁近傍にウェーハWが載置される保持台2が設けられている。この処理槽2Aには、処理液を供給する不図示の処理液供給手段及び内外槽2、2から排出される使用済み処理液を基板処理装置1の外へ排出する不図示の排出手段が設けられている。
【0039】
薬液処理槽2A及び2Cは、内槽2でオーバーフローした処理液が外槽2で回収されて更に循環路を介して循環され、この循環時にそれぞれの処理液内に蓄積された不純物が除去されるようになっている。また、処理液の温度や濃度を調整する機能も備えている。なお、循環路は図示しないが、この循環路には、循環処理液をろ過するフィルタ、処理液を給送するポンプ及び処理液供給源等が配設されるとともに、これらが配管で接続されたもので構成されている。また、内槽2の開口部2には、この開口部2を開閉する蓋体3が設けられている。この蓋体3は薬液処理槽2A、2Cの開口部2から揮発する薬液等が外部へ漏れ出ることを防止するために設けられるものであって、蓋体3を移動させる開閉機構(図示省略)に連結されている。この開口部2は、内槽2に薬液が貯留或いはウェーハが処理されているときは閉じられ、ウェーハWが開口部2を通過するときのみ開かれる。なお、蓋は蒸気が発生上昇しやすい液の槽のみに取付けられている。
【0040】
搬送・昇降装置6は、図2及び図4に示すように、水平方向に移動される搬送装置7と、この搬送装置7に取り付けられて上下動可能の昇降装置10とで構成されている。
このうち、搬送装置7には所定の間隔をあけてそれぞれ垂直に立設された2本の支持支柱(支持部材)7、7が連結され、この支持支柱7、7は、その頂部7、7からそれぞれ略直角に延設された一対の支持アーム7、7と、これらの支持アーム7、7から吊設されたチャックカバー8とを備えている。そして、搬送機構7は各支持支柱7、7の基部7、7が連結されて水平方向へ移動させる水平移動機構と、この水平移動機構を作動させる駆動手段(図示省略)とを更に有している。この水平移動機構及び駆動手段には、例えばモータを利用した機構・手段が使用される。
【0041】
チャックカバー8は、チャックアーム11、11及びこのチャックアーム11、11に把持されたウェーハWを囲むように設けられている。このチャックカバー8は、これらのウェーハW等に付着した処理液、特に高温の薬液が蒸発し、この蒸発した蒸気が飛散するのを防止する飛散防止カバーであって、この飛散防止カバー、すなわちチャックカバー8は、一対のチャックアーム11、11及びこれらのチャックアーム11、11が収容される空間S(図2参照)を内部に有し、天井8が閉鎖され下方に開放口8を有し周囲が側板8〜8(図2及び図3参照)で囲まれた筒状体からなり、耐薬品性及び耐熱性を有する合成樹脂材で作成されている。このチャックカバー8は、内部を透視できる透明な樹脂材で作成するのが好ましい。チャックカバー8を透明な樹脂材で形成することにより、チャックカバー8内にウェーハチャック11及びこのウェーハチャック11で把持されたウェーハWが収容されたときに、これらの部材を目視できるので、不具合があれば簡単に検知できる。勿論、チャックカバー8内の汚染具合等も簡単に見つけ出すことができる。
【0042】
また、チャックカバー8の後方の一側壁8には一対の支持アーム10、10が上下動可能に挿通されるスリット8、8が形成されている(図3参照)。そして、このチャックカバー8は薬液処理槽2Aの開口からウェーハWを出し入れできる開放口8をその下端部に有し、この開放口8の端部は支持アーム7、7から垂下された状態でシンクの開口部に達する長さを有している。また、このような長さにするとチャックカバー8は縦長になり不安定になるので、支持支柱7、7の中間部とチャックカバー8の一側面とが連結部材7で結合されている。
【0043】
チャックカバー8の天井面8には、窒素ガス(Nガス)を噴射する噴射ノズル9〜9が設けられている。これらの噴射ノズル9〜9は、複数本の供給管9に形成されており、これらの供給管9はNガス供給源(図示省略)に接続されている。これらの噴射ノズル9〜9は、ウェーハWが処理槽2Aで薬液処理された後、ウェーハチャック11で把持されてチャックカバー8内に収容されたとき、あるいはその直前に不図示の制御装置による制御によって、Nガス供給源からNガスが給送されて、ダウンフローされるようになっている。
【0044】
昇降装置10は、図2〜図4に示すように、搬送装置7の各支持支柱7、7に沿って上下移動される垂直な支持棒10と、この支持棒10の頂部10から略直角にそれぞれ延設された一対の支持アーム10、10と、各支持アーム10、10から垂下された対向する一対のチャックアーム11、11と、支持棒10の基部に連結された昇降装置10を上下に駆動する駆動手段(図示省略)とを有している。この駆動手段には、サーボモータを利用した機構・手段が使用される。支持棒10は搬送装置7の各支持支柱7、7の間に配設されて上下動可能に装着されるとともに、支持支柱7、7と同一の搬送装置に接続されて一緒に水平移動されるようになっている。このように支持棒10を各支持支柱7、7の間に設け、さらに搬送装置を1つに統一できるので、基板処理装置1全体が小型化できる。
【0045】
一対のチャックアーム11、11は、上端が不図示のアーム作動機構に連結され、下端にウェーハWを把持するチャック11を有し、チャック開閉機構は各支持アーム10、10に装着されている。各チャックアーム11、11によるウェーハWの把持等は、アーム作動機構に連結されたチャックボックス(10)内の駆動手段(図示省略)によって行われる。ちなみに、チャックアーム11、11によるウェーハWの把持あるいは把持の解除は駆動手段によってチャックアーム11、11が僅かに回転することによりなされる。
【0046】
搬送室4の天井部には、清浄気流発生手段5が設けられている。この清浄気流発生手段5は、不図示の送風用ファンを内蔵した給気部と、その下部に配設される空気清浄フィルタとを有し、搬送室4内に向けてクリーンエアーを流下させてダウンフローを形成するように構成されている。すなわち、処理槽2Aから発生する処理液蒸気や基板移送に伴う浮遊パーティクルをダウンフローと共に流下させつつ強制排気口を介して吸引排気するようになっている。
【0047】
このシンクには、搬送室4の清浄気流発生手段5及びチャックカバー8内の噴射ノズル9〜9から吹き出された気体や処理液蒸気等を装置外へ排出する排出路が形成されている。この排出路は、例えば搬送室4とシンクとの境界部分の壁面に隔壁4aが立設して形成され、清浄気流発生手段5からダウンフローされたエアー等は、この隔壁4aにガイドされて処理槽2Aの下方に設けられた不図示の排気設備により装置外へ排出されるような経路となっている。また、搬送機の基部がある機械室は僅かな隙間から装置内外の圧力差を利用して装置外へ僅かずつ排気されている。このため機械室のパーティクルは装置外へ出される。
【0048】
この基板処理装置1は、上記のように構成されるが、搬送装置7、昇降装置10、清浄気流発生手段5並びに各処理槽2A〜2Dへの処理液の供給及び排出等は、不図示の制御装置に接続されて、この制御装置に搭載された制御プログラムによって各装置及び機構が作動されるようになっている。
【0049】
次に、このように構成された基板処理装置1の動作を説明する。なお、図1においては前段と後段にそれぞれ搬送・昇降装置6、6を設けているが、この搬送・昇降装置6、6は同一の動作を行うので、その説明は省略する。
先ず、搬送装置7により搬入部の載置部Aから薬液処理槽2Aの真上へウェーハWがチャックカバー8内に収容されたまま搬送される。次いで、噴射ノズル9〜9からNを供給して蓋体3を開くときの蒸気上昇に備える。そして、薬液処理槽2Aの蓋体3を開くとともに昇降装置10を作動させて、ウェーハチャック11に把持されたウェーハWを処理槽2A内に貯留された薬液に浸漬し保持台2上にウェーハWを載置して、所定時間掛けて薬液処理を行う。この薬液処理中は、処理槽2Aの開口は蓋体3で閉じられている。しばらくして各噴射ノズル9〜9からNの供給を止める。この処理槽2Aには、例えば過酸化水素水を添加された高温(約120℃)の硫酸が貯留されている。
【0050】
次に、薬液処理が終了する直前に各噴射ノズル9〜9からNが供給され、薬液処理が終了すると、蓋体3が開かれ、再びウェーハチャック11が薬液処理槽2Aに挿入されて処理済みのウェーハWを把持して、上方へ引上げる。この際、上方にはチャックカバー8が装着されているので引上げられたウェーハWはチャックカバー8内に収容される。
このとき、薬液処理槽2Aから引上げられたウェーハW及びウェーハチャック11には高温の薬液が付着しているので、即座に蒸発して蒸気となって飛散する。しかし、ウェーハチャック11及びウェーハWはチャックカバー8内に収容されているので、飛散する蒸気は、このチャックカバー8内に留まりチャックカバー8外への飛散が抑制される。
【0051】
一方、常に清浄気流発生手段5からクリーンエアーをダウンフローで吹き付けられており、また、このときはチャックカバー8内の噴射ノズル9〜9からNガスを同様にダウンフローで吹き付けられるので、更に常に処理槽2Aの下方に設けられた排気施設に連結された排気手段で収容カバー4内を吸引していることにより、飛散した薬液蒸気が基板処理装置1外へ効率よく排出される。なお図2に点線の矢印で示したものは、エアー及びNガス並びに薬液蒸気の流れを示している。この図示した流体の流れにみられるように、発生した薬液蒸気はNガス及びクリーンエアーと共に装置外へ排出されるので、薬液蒸気が拡散されて搬送装置、他のウェーハ及びその他の部材に付着して汚染、腐食させるようなことが防止できる。また、基板の冷却効果もあり、水洗槽に入れたときに熱衝撃を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る基板処理装置の一部構成を模式して示した概略正面図である。
【図2】図2は図1の基板処理装置における1個の処理槽とこの処理槽を収容した収容室の概略を示した縦断面図である。
【図3】図3は図2のX−X線で切断した断面図である。
【図4】図4は飛散防止カバーを斜め後方から見た斜視図である。
【図5】図5は従来技術の洗浄装置における薬液処理槽付近を示した斜視図である。
【図6】図6は図5の洗浄装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基板処理装置
2A、2C 処理槽(薬液)
2B、2D 処理槽(水洗)
2E 処理槽(乾燥)
3 蓋体
4 搬送室(収容ケース)
5 清浄気流発生手段
6 搬送・昇降装置
7 チャックカバーの搬送装置
8 チャックカバー(飛散防止カバー)
9 供給管
〜9 噴射ノズル
10 ウェーハの昇降装置
11 ウェーハチャック(把持機構)
11、11 チャックアーム
A、B 載置部
S 空間
W ウェーハ(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した有底の容器からなる処理槽と、被処理基板を把持する把持機構と、前記把持機構が連結されて前記被処理基板の前記処理槽内に貯留された処理液への浸漬及び該処理槽内からの引き上げを行う昇降装置と、該昇降装置が連結されて前記被処理基板を前記処理槽へ搬送する搬送装置と、を備える基板処理装置において、
前記処理槽から蒸気が平常時よりも多量に発生上昇するときに前記処理槽の開口部を覆うことができる前記搬送装置に連結された飛散防止カバーを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記処理槽の開口部には該開口部を開閉する蓋体が設けられ、前記飛散防止カバーは、前記蓋体が開かれたときに前記開口部の上部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記飛散防止カバーは外周囲が側板で囲まれその上方が閉鎖されるとともに下方が開放されたカバー体からなり、該飛散防止カバーの下方の開放口を通して内部へ前記把持機構が出し入れされるようになし、前記昇降装置により前記被処理基板を前記処理槽から引上げる際には、前記被処理基板を把持する前記把持機構及び該被処理基板が前記飛散防止カバー内に収容されることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記飛散防止カバーは、その天井内面に不活性ガスを噴射させる噴射ノズルが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記飛散防止カバーの開放口は、前記処理槽を収容するシンクの開口部に近接する位置まで延設されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記飛散防止カバーは前記昇降装置とは別の一対の支持部材により、水平方向に移動する前記搬送装置に連結されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記飛散防止カバーの内部に収容された前記把持機構と、前記飛散防止カバーの外部にある前記昇降装置を支持アームにより連結し、前記飛散防止カバーには前記支持アームが前記昇降装置による前記把持機構の昇降動作の妨げにならないように、前記飛散防止カバーの一側板にスリットを形成することを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記飛散防止カバーは、内部を透視できる透明部材で形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記処理槽、把持機構、搬送装置、昇降装置及び飛散防止カバーは、清浄気流発生手段が設けられた収容室に収納されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−147303(P2008−147303A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330903(P2006−330903)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(391060395)エス・イー・エス株式会社 (46)
【Fターム(参考)】