説明

基板移送装置

【課題】クランプ時に基板に無理な力が生じることにより発生する課題を解決する装置の提供。
【解決手段】大型ガラス基板等の基板0をその保持高さを精密に維持しつつ面内方向に自由に移動できるように案内する基板案内手段と、当該基板案内手段に保持された前記基板を面内の特定の方向に移動させるための基板駆動手段とを具備してなり、基板駆動手段が、大型ガラス基板等の基板を把持するための複数のクランプ部と、これらのクランプ部を同期させて駆動することにより、基板を基板案内手段に保持させつつ、特定方向に移動させ位置決めを行う基板駆動部とを具備してなる基板移送装置4において、クランプ部21により基板0をクランプした際に、その基板0に無理な力が作用しないように、クランプ部21を基板0の面外方向に逃がすための逃がし機構59をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を移送するための基板移送装置に係るものであり、特に、大型ガラス基板の高さを精密に維持してかつこれを移動させながらレーザビームで加工する大型ガラス基板のレーザ加工機等に好適に使用される基板移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、太陽電池パネル製造ライン等に用いられるレーザ加工機においては、大型ガラス基板の基板案内手段として、セット台上面に設置されたガラス基板を、前記セット台上面に設けた複数のエアー噴出孔からエアーを噴出させて浮上させるようにしたものが用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、従来、前記ガラス基板の端部を複数のクランプ機構で把持し、このクランプ機構をリニアモータ等で移動させることで前記ガラス基板を所定の方向に移動させ位置決めする基板駆動手段が用いられている。このとき前記ガラス基板の上面或いは下面側から該ガラス基板の表面にレーザビームを照射してその焦点を該ガラス基板表面に結ぶようにして該ガラス基板を加工していた(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
従来の装置では、前記ガラス基板の表面に焦点を結んだレーザビームを照射する都合から、前記ガラス基板の加工位置を移動させる際も該ガラス基板の設置高さを数十〜数百μmの精密な精度で維持しなくてはならない。このために前述したエアー浮上式の基板案内手段を設けたものであるが、このようなエアー浮上式の基板案内手段と、前記ガラス基板の端部を複数のクランプ機構で把持する基板駆動手段とを併用する場合、前記ガラス基板の浮上高さと該ガラス基板をクランプするクランプの把持高さとが一致していないと前記ガラス基板が浮上した際に前記クランプによって該ガラス基板に無理な力が生じて該ガラス基板の浮上高さが狂ってしまうか或いは該ガラス基板そのものを破損してしまうという問題があった。特に近年の2mを超える大型ガラス基板を加工する装置では、この問題が実用上顕著になってきている。
【0005】
また、以上に述べた事情は、レーザ加工機の大型ガラス基板を移送する基板移送装置に限らず、大型の基板を移送する基板移送装置全般において顕在化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4231538号公報
【特許文献2】特開2005−288488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、クランプ時に基板に無理な力が生じて基板の浮上高さが狂ってしまうか或いは該基板そのものを破損してしまうという課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る基板移送装置は、大型ガラス基板等の基板をその保持高さを所定の値に維持しつつ面内方向に自由に移動できるように案内する基板案内手段と、当該基板案内手段に保持された前記基板を面内の特定の方向に移動させるための基板駆動手段とを具備してなるものにおいて、前記基板駆動手段を、前記基板を把持するための少なくとも2個のクランプ部と、これらのクランプ部を同期させて駆動することにより前記基板を前記基板案内手段に保持させつつ前記特定方向に移動させ位置決めを行う基板駆動部とを具備してなるものにし、さらに前記クランプ部により前記基板をクランプした際にその基板に無理な力が作用しないように前記クランプ部を前記基板の面外方向に逃がすための逃がし機構を備えていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、クランプ部を前記基板の面外方向に逃がすことにより、基板に無理な力が作用することを防止又は抑制することができる。
【0010】
基板に無理な力が作用することをより有効に防止又は抑制できるようにするためには、前記基板駆動部が、前記各クランプ部をそれぞれ支持して移動する複数の単位ベースを備えたものであり、前記各単位ベースと前記各クランプ部とによってクランプ機構をそれぞれ構成するとともに、それら各クランプ機構に前記逃がし機構を設けているものが望ましい。このようなものであれば、各クランプ部と、各クランプ部がそれぞれ把持する基板の部位との相対高さ位置がどのようなものであっても、各クランプ部が属するクランプ機構の逃がし機構を機能させてクランプ部を前記基板の面外方向に逃がすことにより、基板に無理な力が作用することを防止又は抑制することができるからである。
【0011】
また、前記基板案内手段が、気体を吹出させて前記基板を浮上させる方式のものである場合には、特に有効な作用効果を得ることができる。すなわち、このような方式のものに本発明を適用した場合には、クランプ時に基板が破損することを防止することができるだけでなく、前記基板が浮上した際に前記クランプ部によって該基板に無理な力が生じて浮上高さが狂ってしまうという不具合の発生をも防止又は抑制することができる。
【0012】
本発明に係る効果をより高めるための構成の一つとして、前記逃がし機構が、前記クランプ部に作用する重力の影響を相殺又は軽減するバランス要素を備えているものが挙げられる。このようなものであれば、クランプ位置と基板の保持高さ位置との不一致に基づいてクランプ時に基板に無理な力が作用するという不具合を解消することができるだけでなく、クランプ部に作用する重力の影響により基板が上下いずれかの方向に付勢されるという現象をも解消又は軽減することが可能になる。
【0013】
本発明に係る基板移送装置を簡単な構成で実現するための構成の一例として、前記クランプ部が、前記基板を厚み方向から挟持する第1及び第2のクランプメンバと、これら対をなすクランプメンバを枢結するピボット軸とを有したものであり、前記逃がし機構が、前記第1のクランプメンバ、第2のクランプメンバ、及び前記ピボット軸のうち少なくとも2つを前記基板の面外方向に遊動可能に構成したものが挙げられる。
【0014】
本発明は、種々の分野における基板移送装置に適用することが可能であるが、移送中の大型ガラス基板にレーザビームを照射して加工を施すように構成されたレーザ加工機の基板移送装置に適用すると特に好ましいものとなる。すなわち、このようなレーザ加工機は、移送中の大型ガラス基板に、その表面に焦点を結ぶように設定されたレーザビームが照射されるようにしている。そのため、このようなレーザ加工機における基板移送装置に本発明を適用すれば、大型ガラス基板の保持高さをより精密に維持することができるため、レーザビームの焦点がずれる不具合の発生を防止又は抑制することができ、加工精度を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のようにクランプ部を基板の面外方向に逃がすための逃がし機構を設け、基板に対して移送に必要な方向にのみ駆動力が伝達されるようにしているので、クランプ時に基板に無理な力が作用することを防止又は抑制することができ、移送の際に基板に面外方向の無理な応力が加わって基板の変形や破損が生じるという不具合の発生を防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工機の斜視図。
【図2】同実施形態に係る基板移送装置のクランプ機構の正面図。
【図3】同実施形態に係る基板移送装置のクランプ機構の動作説明図。
【図4】同実施形態に係る基板移送装置のクランプ機構の斜視図。
【図5】同実施形態に係る基板移送装置のクランプ機構の分解斜視図。
【図6】図2におけるVI−VI線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について述べる。
【0018】
本実施形態は、本発明を図1に示すようなレーザ加工機1の基板移送装置4に適用した場合のものである。このレーザ加工機1は、太陽電池パネル製造ライン等に用いられるもので、大型ガラス基板0を載置するための架台2と、この架台2上の大型ガラス基板0を移送するための本発明に係る基板移送装置4と、この基板移送装置4により移送される大型ガラス基板0の表面にレーザビームを照射するための加工ノズル11を備えたレーザ照射装置3とを具備してなる。
【0019】
前記架台2は、前記図1に示すように、その上面に、作業領域2aと、この作業領域2aの両側にそれぞれ設定された前後退避領域2b、2cとが形成されている。そして、前記作業領域2aに対応する部位に、前記レーザ照射装置3を配設している。
【0020】
前記レーザ照射装置3は、前記図1に示すように、幅方向に複数個の加工ノズル11を配列してなる。前記加工ノズル11は、例えば、大型ガラス基板0の下方からレーザを発射し、大型ガラス基板0を透過させて上面側の被加工面に焦点を結んで照射する。これらの加工ノズル11には光ファイバ13を接続しており、図示しないレーザ発振機から供給されるレーザ光を前記光ファイバ13を経由してそれぞれ導入する。詳述すれば、例えば、前記作業領域2aの直下に梁15を横架し、この梁15に前記加工ノズル11をそれぞれ支持させている。各加工ノズル11は、梁15に敷設した図示しないレールに沿って幅方向に移動可能である。加工ノズル11の駆動源は、例えばリニアサーボモータである。しかしてこのレーザ照射装置3は、前記基板移送装置4により移送される大型ガラス基板0に対してレーザビームを照射し、前記大型ガラス基板0の前記作業領域2aを通過しつつある部位に順次レーザ加工を施すようにしたものである。
【0021】
前記基板移送装置4は、前記図1に示すように、大型ガラス基板0をその保持高さを所定の値に維持しつつ面内方向に自由に移動できるように案内する基板案内手段4aと、当該基板案内手段4aに保持された前記大型ガラス基板0を面内の特定の方向に移動させるための基板駆動手段4bとを具備してなる。
【0022】
前記基板案内手段4aは、前記図1に示すように、前記架台2の作業領域2aに配設した精密浮上装置17と、前記架台2の前後退避領域2b、2cにそれぞれ配設した浮上装置19、19とにより構成してなる。前記精密浮上装置17は、気体を吹出させて前記大型ガラス基板0を浮上させるとともに、その噴出度合いを制御して浮上高さを精密に維持しうるように構成されている。ここで、前記精密浮上装置17は、大型ガラス基板0の表面の焦点を結んだレーザビームを照射する都合から、数十〜数百μmの精密な精度で大型ガラス基板0の表面の設置高さを制御可能に構成されている。一方、前記浮上装置19は、気体を吹出させて前記大型ガラス基板0を浮上させるように構成されたもので、前記精密浮上装置17に隣接させるのに適した範囲の精度に設定されている。すなわち、前記精密浮上装置17の浮上高さ制御の精度は、前記浮上装置19の浮上高さ制御の精度よりも高く設定されている。このようにしてなる基板案内手段4aにより案内された大型ガラス基板0を、前記基板駆動手段4bにより、面内の特定方向に移動させるようにしてある。
【0023】
前記基板駆動手段4bは、例えば、図1〜図6に示すように、前記大型ガラス基板0の四隅部をそれぞれ把持するための4個のクランプ部21と、これらのクランプ部21を同期させて駆動することにより前記大型ガラス基板0を前記基板案内手段4aに保持させつつ前記特定方向に移動させ位置決めを行う基板駆動部23とを具備してなる。ここで、前記基板駆動部23は、前記クランプ部21をそれぞれ支持して移動させるための4個の単位ベース25を備えており、前記各単位ベース25と前記各クランプ部21とによって前記図4に斜視図を示すようなクランプ機構Kがそれぞれ構成されている。言い換えれば、この基板駆動手段4bは、前記クランプ機構Kにより前記大型ガラス基板0の四隅部をそれぞれクランプして前記架台2の長手方向に沿って移動させ得るようになっている。
【0024】
前記クランプ部21は、図2〜図6に示すように、前記大型ガラス基板0を厚み方向から挟持する上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29と、これら対をなす上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29を枢結するピボット軸31と、前記上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29を駆動してクランプ動作を行わせるクランプ用シリンダ33と、このクランプ用シリンダ33の駆動力が消勢した際に前記上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29にクランプ解除動作を行わせるクランプ解除用バネ35とを具備してなる。
【0025】
前記上クランプメンバ27は、前記図2、図3、及び図5に示すように、一端に大型ガラス基板0の上面に係わる上把持部37を備えるとともに、中間部に前記ピボット軸31に軸支させるための軸受部39を有してなる。前記上把持部37は、移送方向に細長い角柱状のもので、その下面にゴム等の弾性材により形成した弾性層37aを有してなる。前記軸受部39は、軸挿通孔39aを有したブロック状のもので、前記図5及び図6に示すように、その軸挿通孔39aの開口両端部にラジアル・スラストベアリング41が嵌挿されている。
【0026】
前記下クランプメンバ29は、前記図2、図3、及び図5に示すように、一端に大型ガラス基板0の下面に係わる下把持部43を備えるとともに、中間部に前記ピボット軸31に軸支させるための軸受部45を有してなる。前記下把持部43は、移送方向に細長い角柱状のもので、その上面にゴム等の弾性材により形成した弾性層43aを有してなる。前記軸受部45は、軸挿通孔45aを有した厚板状のもので、前記上クランプメンバ27の軸受部39の軸方向両側に位置するようにして一対設けられており、前記図5及び図6に示すように、それら軸受部45の軸挿通孔45aにラジアル・スラストベアリング47が嵌挿されている。
【0027】
前記クランプ用シリンダ33は、下クランプメンバ29の他端近傍部に取り付けられており、その出力ロッド33aで前記上クランプメンバ27の他端部を押圧し得るようになっている。
【0028】
前記ピボット軸31は、前記図2〜図6に示すように、軸心が大型ガラス基板0の移送方向に平行となる姿勢で前記単位ベース25に固定してなるもので、その外周に前記上クランプメンバ27の軸受部39及び下クランプメンバ29の軸受部45が軸心周りに回転可能にかつ軸心方向に移動不能に外装されている。具体的には、このピボット軸31は、前記図5及び図6に示すように、軸本体49と、この軸本体49の両端に軸心を一致させて一体形成した小径部51とを具備してなるもので、前記軸本体49の両端部外周に雄ネジ部49aを有している。このピボット軸31の両端に設けられた前記小径部51は、前記単位ベース25に固設されたブラケット25aに軸取付部材53を介して軸心方向に移動不能に、かつ軸心周りに回転不能に取付けられている。このピボット軸31の軸本体49の外周には、上クランプメンバ27の軸受部39を構成するラジアル・スラストベアリング41、及び下クランプメンバ29の軸受部45を構成するラジアル・スラストベアリング47がそれぞれ外装されている。上クランプメンバ27のラジアル・スラストベアリング41の内輪41aと下クランプメンバ29のラジアル・スラストベアリング47の内輪47aとの間にはスペーサ55が介在させてあり、このスペーサ55介在状態で前記雄ネジ部49aに螺着したナット57を相寄る方向に締め付けることにより、前記上クランプメンバ27と前記下クランプメンバ29とが、前記ピボット軸31に対して軸心方向にリジッドで、かつ軸心周りに回転自在に取付けられている。
【0029】
なお、前記上クランプメンバ27及び前記下クランプメンバ29の他端側は、前記単位ベース25に対して自由に回動しうるようになっており、これにより、クランプした際に大型ガラス基板0に面外方向の無理な力が作用するのを防止又は抑制するようにしている。すなわち、本実施形態では、上クランプメンバ27、下クランプメンバ29、及びピボット軸31のうち、上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29を大型ガラス基板0の面外方向に遊動可能にすることによって、逃がし機構59を構成している。また、この逃がし機構59は、バランス要素61も備えている。
【0030】
このバランス要素61は、前記下クランプメンバ29の前記他端部を上方に付勢し、クランプ部21に作用する重力の影響を相殺又は軽減する。具体的に説明すれば、前記図2、図3、及び図5に示すように、前記下クランプメンバ29の他端部と、この下クランプメンバ29と一体化された前記クランプ用シリンダ33の上端面に取り付けたバネ受板63とに貫通孔29a、63aを軸心を一致させて穿設し、それら貫通孔29a、63aに下端を前記単位ベース25に支持させたリテーナ65を相対移動可能に遊嵌させている。このリテーナ65の下端は、前記単位ベース25の上面に設けた剛性板25b上にボール65bを介して傾動可能に支持させてある。そして、このリテーナ65の中間位置に固定した鍔部65aと、前記バネ受板63との間に、バランス要素61である圧縮コイルバネ67を前記リテーナ65に巻装して介在させている。この圧縮コイルバネ67の付勢力は、前記クランプ部21のピボット軸31よりも一端側に作用する重力と、前記クランプ部21のピボット軸31よりも他端側に作用する重力との差を相殺しうる値に設定されている。
【0031】
なお、前記図2〜図6における符号69は、前記クランプ部21が必要な作動領域外に垂れ下がるのを防止するためのストッパであり、前記下クランプメンバ29の一端部の下面を係止しうるようになっている。従って、前記下クランプメンバ29及び前記上クランプメンバ27は、クランプ動作に必要な作動領域内において遊動可能となっている。
【0032】
また、前記図2及び図3における符号71は、前記クランプ部21のクランプ状態を検知するためのクランプ状態検知器である。このクランプ状態検知器71は、発光素子と受光素子とを対向配置してなる光学センサ71aを上下に間隔をあけて2組配置したもので、これらの光学センサ71aを下クランプメンバ29の他端部に設けた遮蔽版71bで選択的に遮蔽することによりクランプ部21のクランプ状態とクランプ解除状態とを検出することができるようになっている。
【0033】
前記基板駆動部23は、前記図2及び図3に示すように、前記架台2の上面の両側端部に大型ガラス基板0の移送方向に沿って敷設したレール73と、このレール73に案内されて前記移送方向に往復動作を行い得る前記単位ベース25と、これら単位ベース25を前記レール73に沿って走行駆動するリニアモータ75とを具備してなるもので、レーザ加工時には全ての前記単位ベース25が同期して作動するように前記リニアモータ75の制御が行われる。また、前記図2及び図3における符号77は、前記各リニアモータ75の作動位置を検知してフィードバックするための位置検知装置である。この位置検知装置77は、例えば、前記架台2に固定したリニアスケール77aと、このリニアスケール77aの目盛を読み取って電気信号に変換するセンサ77bとを具備してなるもので、リニアモータ75の制御については、通常のものであるため説明を省略するものである。
【0034】
本実施形態のレーザ加工機1の動作を以下に示す。
【0035】
まず、大型ガラス基板0を後退避領域2cに配置した状態で、クランプすべき位置に前記クランプ部21を移動させて停止させる。このクランプ部21の上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29は、前記クランプ解除用バネ35の付勢力により前記図2に示すようなクランプ解除状態にある。
【0036】
次いで、前記クランプ用シリンダ33を作動させると、前記上クランプメンバ27の他端部が前記下クランプメンバ29の他端部に対して上動する。このとき、前記上把持部37と前記下把持部43とが相寄る方向に移動し、これら上把持部37及び下把持部43が大型ガラス基板0を挟持することにより、前記クランプ部21は前記図3に示すようなクランプ状態となる。ここで、前記上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29は、いずれもピボット軸31の軸心周りに回転自在であるので、クランプ動作の際に前記上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29のいずれかが先に大型ガラス基板0に衝き当たると、以下のようにして逃がし機構59が機能する。すなわち、前記上クランプメンバ27の上把持部37が先に大型ガラス基板0に衝き当たると、前記下クランプメンバ29は前記上クランプメンバ27を足場として前記下把持部43が大型ガラス基板0に接近する方向に移動し、前記クランプ状態となる。逆に、前記下クランプメンバ29の下把持部43が先に大型ガラス基板0に衝き当たると、前記上クランプメンバ27は前記下クランプメンバ29を足場として前記上把持部37が大型ガラス基板0に接近する方向に移動し、前記クランプ状態となる。すなわち、クランプ部21が大型ガラス基板をクランプする際に上述したように逃がし機構59が機能するので、大型ガラス基板0には面外方向の無理な力が作用せず、従って大型ガラス基板0の破損を防ぐことができる。
【0037】
それから、大型ガラス基板0の四隅部をそれぞれクランプした状態で、クランプ機構Kを同期させて後退避領域2cから作業領域2aを経て前退避領域2bに向かう移送方向に駆動する。すると、大型ガラス基板0はクランプ機構Kから移送方向に向かう作用を受けて、後退避領域2cから作業領域2aを通過し前退避領域2bに移動する。ここで、大型ガラス基板0が作業領域2aを通過する際に、前記レーザ照射装置3によりレーザビームを照射して加工を施す。
【0038】
大型ガラス基板0の全体の前退避領域2bへの移動が完了した後は、前記レーザ照射装置3の加工ノズル11を幅方向に移動させ、次いで、大型ガラス基板0の四隅部をそれぞれクランプしたままクランプ機構Kを同期させて前退避領域から作業領域2aを経て後退避領域2cに向かう移送方向に駆動する。すると、大型ガラス基板0はクランプ機構Kから移送方向に向かう作用を受けて、前退避領域2bから作業領域2aを通過し後退避領域2cに移動する。ここで、大型ガラス基板0が作業領域2aを通過する際に、前記レーザ照射装置3によりレーザビームを照射して加工を施す。以下、大型ガラス基板0の被加工面の全体に加工を施し終わるまで、前記レーザ照射装置3の加工ノズル11を幅方向に移動させ、大型ガラス基板0を往復移動させる前記動作を繰り返す。
【0039】
ここで、本実施形態では、大型ガラス基板0を往復移動させる際に、精密浮上装置17又は浮上装置19による大型ガラス基板0の保持高さとクランプ高さとが一致しない場合、前記上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29は、いずれもピボット軸31の軸心方向にリジッドでかつ軸心周りに回転自在であるので、クランプ部21は大型ガラス基板0をクランプし、移送方向に向かう作用を与えつつ、面外方向に変位することができる。すなわち、逃がし機構59が機能して大型ガラス基板0には面外方向の無理な力が作用しないので、大型ガラス基板0の破損を防ぐことができる。
【0040】
また、前記大型ガラス基板0を精密浮上装置17及び浮上装置19により浮上させる際に、前記クランプ部21により大型ガラス基板0が上方又は下方に押圧されて大型ガラス基板0の浮上高さが狂ってしまう不具合の発生をも防止又は抑制することもできる。
【0041】
さらに、各クランプ機構Kの単位ベース25に対して各クランプ部21の前記上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29が回動自在となるように、各クランプ機構Kに逃がし機構59を設けているので、各クランプ部21と、各クランプ部21がそれぞれ把持する大型ガラス基板0の部位との相対高さ位置がどのようなものであっても、各クランプ部21を前記大型ガラス基板0の面外方向に逃がすことにより、大型ガラス基板0に無理な力が作用することを防止又は抑制することができる。
【0042】
加えて、前記バランス要素61である圧縮コイルバネ67により下クランプメンバ29の前記他端部を上方に付勢しているので、前記ピボット軸31をクランプ部21の一端部側に配設しているにもかかわらず、クランプ部21に作用する重力の影響により大型ガラス基板0が上下いずれかの方向に付勢されるという現象をも解消又は軽減することができる。
【0043】
そして本実施形態の構成によれば、移送中の大型ガラス基板0に、その表面に焦点を結ぶように設定されたレーザビームが照射されるレーザ加工機1の基板移送装置4において大型ガラス基板0の保持高さをより精密に維持することができるので、レーザビームの焦点がずれる不具合の発生を防止又は抑制することができ、従って、加工精度を高めることができる。
【0044】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られず、種々に変更してもよい。
【0045】
例えば、レーザ加工機の加工対象物である基板は、大型ガラス基板に限らず、例えば、金属板等、どのような基板であってもよい。
【0046】
また、バランス要素は、上述した実施形態に述べたバネを利用するものだけでなく、例えば、クランプメンバの把持部側に設けた錘を利用するもの等、ピボット軸の両側に作用する重力をバランスさせることができるものであれば任意の構成を採用してもよい。
【0047】
さらに、上述した実施形態では、クランプ部21の逃がし機構59が、上クランプメンバ27、下クランプメンバ29、及びピボット軸31のうち、上クランプメンバ27及び下クランプメンバ29を大型ガラス基板0の面外方向に遊動可能に構成したものであるが、ピボット軸31も大型ガラス基板0の面外方向に遊動可能に構成してよい。また、ピボット軸31と上クランプメンバ27又は下クランプメンバ29のいずれか一方とを大型ガラス基板0の面外方向に遊動可能に構成し、上クランプメンバ27又は下クランプメンバ29の他方を大型ガラス基板0に対して固定してもよい。
【0048】
また、クランプ部には、基板の面外方向に平行移動可能で前記基板を厚み方向から挟持する第1及び第2のクランプメンバと、これら第1及び第2のクランプメンバを平行移動可能に支持する支持機構とを具備する構成のものを採用してもよい。この場合でも、逃がし機構を、前記第1のクランプメンバ、第2のクランプメンバ、及び前記ピボット軸のうち少なくとも2つを前記基板の面外方向に遊動可能に構成したものであれば、上述した実施形態における逃がし機構の構成に係る効果、すなわち、クランプ部が基板0をクランプしたまま面外方向に逃げることができるので、基板には面外方向の無理な力が作用せず基板の破損を防ぐことができるという効果は同様に得られる。
【0049】
加えて、気体を吹出させて前記基板を浮上させる方式の基板案内手段に限らず、例えば、基板を載置した状態のステージを基板の面内方向に自由に移動できるよう案内する基板案内手段等、種々の基板案内手段を採用してもよい。
【0050】
さらに、基板の幅方向に対をなして設けた単位ベースと、これら単位ベースのそれぞれに配設した複数のクランプ部とによりクランプ機構を形成してもよい。
【0051】
また、第1及び第2のクランプメンバを基板の幅方向、すなわち基板面に沿う面内において移送方向に直交する方向に延びる軸の周りに回動可能とするように逃がし機構を構成してもよい。このようなものであれば、基板が反っている場合にも基板に面外方向への無理な力を作用させずに基板をクランプできる。
【0052】
そして、本発明は、移送中の大型ガラス基板にレーザビームを照射して加工を施すように構成されたレーザ加工機に限らず、基板をその保持高さを所定の値に維持しつつ面内方向に自由に移動できるように案内する基板案内手段と、当該基板案内手段に保持された前記基板を面内の特定の方向に移動させるための基板駆動手段とを具備する基板移送装置一般に採用してよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0054】
4…基板移送装置
4a…基板案内装置
4b…基板駆動装置
21…クランプ部
23…基板駆動部
25…単位ベース
27…上クランプメンバ(クランプメンバ)
29…下クランプメンバ(クランプメンバ)
31…ピボット軸
59…逃がし機構
61…バランス要素
K…クランプ機構
0…大型ガラス基板(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ガラス基板等の基板をその保持高さを所定の値に維持しつつ面内方向に自由に移動できるように案内する基板案内手段と、当該基板案内手段に保持された前記基板を面内の特定の方向に移動させるための基板駆動手段とを具備してなる基板移送装置において、
前記基板駆動手段を、前記基板を把持するための少なくとも2個のクランプ部と、これらのクランプ部を同期させて駆動することにより前記基板を前記基板案内手段に保持させつつ前記特定方向に移動させ位置決めを行う基板駆動部とを具備してなるものにし、さらに前記クランプ部により前記基板をクランプした際にその基板に無理な力が作用しないように前記クランプ部を前記基板の面外方向に逃がすための逃がし機構を備えていることを特徴とする基板移送装置。
【請求項2】
前記基板駆動部が、前記各クランプ部をそれぞれ支持して移動する複数の単位ベースを備えたものであり、前記各単位ベースと前記各クランプ部とによってクランプ機構をそれぞれ構成するとともに、それら各クランプ機構に前記逃がし機構を設けている請求項1記載の基板移送装置。
【請求項3】
前記基板案内手段が、気体を吹出させて前記基板を浮上させる方式のものである請求項1又は2記載の基板移送装置。
【請求項4】
前記逃がし機構が、前記クランプ部に作用する重力の影響を相殺又は軽減するバランス要素を備えている請求項1、2又は3記載の基板移送装置。
【請求項5】
前記クランプ部が、前記基板を厚み方向から挟持する第1及び第2のクランプメンバと、これら対をなすクランプメンバを枢結するピボット軸とを有したものであり、前記逃がし機構が、前記第1のクランプメンバ、第2のクランプメンバ、及び前記ピボット軸のうち少なくとも2つを前記基板の面外方向に遊動可能に構成したものである請求項1、2、3又は4記載の基板移送装置。
【請求項6】
移送中の大型ガラス基板にレーザビームを照射して加工を施すように構成されたレーザ加工機に適用される請求項1、2、3、4又は5記載の基板移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26093(P2011−26093A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175776(P2009−175776)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(598072179)株式会社片岡製作所 (24)
【Fターム(参考)】