説明

感光性組成物、それに用いる化合物および樹脂、およびそれを用いたパターン形成方法

【課題】感光性組成物、特に、二層、あるいは多層レジストに好適な感光性組成物、感光性組成物に好適な樹脂、および該樹脂の製造に好適な化合物、該組成物を用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)酸の作用により分解して脱離する基を有する特定のシロキサン単位を含有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、および(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とする感光性組成物、該樹脂、および該樹脂の製造に好適な化合物、および該組成物を用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠紫外線に感応する半導体素子等の微細加工用ポジ型フォトレジスト組成物に関するものであり、更に詳しくは、高解像度のフォトリソグラフィーを行うための深紫外線、特に193nmおよび243nmの二層レジストシステムにおいて有用な遠紫外線露光用ポジ型フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(高集積回路)の高密度化、高集積化に対する要求に対し、より微細なパターンを形成できるレジストのフォトレジストの開発が必要とされる。一般に、フォトレジストの解像度、フォトスピード、焦点深度、およびその他の特性における改善が要求される。解像度の改善は、より大きい開口数(numerical aperture)を利用する露光システムによってもなされることができる。残念ながらより大きい開口数によって解像度が改善されるにつれ、最良解像度での焦点深度は光学的効果のため通常減少する。従って、レジストの焦点深度の改善もまた望ましい。
【0003】
最も一般的なレジストは、画像形成およびプラズマエッチ抵抗の機能をレジストがともに有する「単一層」と称される。第2の種類のレジストは、頂部層に画像形成の機能が割り当てられており、また下層にプラズマエッチ抵抗の機能が割り当てられている「二層レジスト」と称される。酸素エッチ段階では、画像形成されたパターンが下層に移される。二層レジストは、一般にシリコンを含有しまたより薄い画像形成フィルムを使用することから解像度についてある種の利点をもたらし、また多くの場合、二層レジスト/アンダーコートの組み合わせは、より良い基板プラズマエッチ抵抗をもたらす。二層レジストの例は、例えば特許文献1〜3の中に開示されている。
【0004】
ポリシロキサン系ポリマーはドライエッチング耐性に優れ、既に幾つかレジスト材料に用いられる例が知られている。例えば、特許文献4にはポリ(2−カルボキシエチルシロキサン)のカルボキシル基をt−ブチル基等の酸の作用により分解してアルカリ現像液に溶解する基(酸解分解基)で保護したポリマーを用いたポジ型レジストが開示されている。しかしながら、これらのシロキサン系ポリマーを用いたレジスト材料は、活性光線又は放射線に対する透明性、解像度、現像性等のレジストとしての基本物性の点で十分とはいえず、さらなる改善が求められていた。
さらに、特許文献5には、カルボキシル基を有する非芳香族系の単環式もしくは多環式炭化水素基または有橋環式炭化水素基を側鎖に有し、かつ該カルボキシル基の少なくとも1部が酸不安定性基で置換されたシロキサン系ポリマー、例えば5−位にt−ブトキシカルボニル基を有するノルボルニル基がケイ素原子に結合したシロキサン系ポリマー等、および該ポリマーを用いたレジスト材料が開示されており、このレジスト材料は、KrFエキシマレーザー(波長248nm)あるいはArFエキシマレーザー(波長193nm)の吸収が小さく、パターン形状が良好であり、また感度、解像度、ドライエッチング耐性等にも優れているとされている。また、特許文献6には、一つのカルボキシル基を置換基として持つ特定のノルボルネン系脂環式構造を有するシロキサン系ポリマーを含有するレジストが遠紫外線、電子線、X線等の放射線を用いるパターン形成に有用であると開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献5、および特許文献6に記載のこれらのシロキサン系ポリマーを含めても、レジスト材料の樹脂成分として有用なシロキサン系ポリマーの種類は少なく、シロキサン系ポリマーを樹脂成分として、短波長の放射線に有効に感応し、高度のドラ
イエッチング耐性を備えつつ、レジストとしての基本物性に優れた感光性組成物の開発は、半導体素子における微細化の進行に対応しうる技術開発の観点から重要な課題となっている。
【特許文献1】米国特許第6,359,078号明細書
【特許文献2】米国特許第5,985,524号明細書
【特許文献3】米国特許第6,028,154号明細書
【特許文献4】特開平8−160623号公報
【特許文献5】特許第3533951号
【特許文献6】特開平2002−278073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、短波長の放射線に有効に感応し、高度のドライエッチング耐性を備えつつ、レジストとしての基本物性に優れた感光性組成物、特に、二層、あるいは多層レジストに好適な感光性組成物を提供することにある。また、本発明のさらなる課題は、感光性組成物に好適な樹脂、および該樹脂の製造に好適な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は以下の<1>〜<9>によって達成された。
【0008】
<1>(A)一般式(I)に示す構造単位を有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、および(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(I)中、
Aは多環状炭化水素基を示す。Qは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基あるいはアリール基を示す。
及びXは、それぞれ独立して、酸の作用により分解して脱離する基を示す。
【0011】
<2> 樹脂(A)が、さらに式(II)に示す構造単位を有することを特徴とする上記<1>に記載の感光性組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
<3> 一般式(I)におけるAが、一般式(III)で示される多環状炭化水素基であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の感光性組成物。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(III)において、
mは0〜3の整数を示す。
1は一般式(I)におけるSi原子との結合手を表す。
2は一般式(I)における−COOX1および−COOX2との結合手を表す。
【0016】
<4> 一般式(III)におけるmが、0であることを特徴とする上記<3>に記載の感光性組成物。
【0017】
<5> 一般式(I)におけるX、Xが、下記一般式(IV)で示される酸の作用により分解して脱離する基である上記<1>〜<4>のいずれかに記載の感光性組成物。
【0018】
【化4】

【0019】
一般式(IV)において、R〜Rは各々独立してアルキル基又はシクロアルキル基を示す。RとRとが結合して環を形成してもよい。
【0020】
<6> 第1のレジスト層を設けた基板上に、上記<1>〜<5>のいずれかに記載の感光性組成物により第2のレジスト層を形成し、露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0021】
<7> 一般式(V)で示される化合物。
【0022】
【化5】

【0023】
一般式(V)において、
Aは多環状炭化水素基を示す。
Qはアルキル基、シクロアルキル基、あるいはアリール基を示す。
及びXは、それぞれ独立して、酸の作用により分解してアルカリ現像液に溶解する基を生じる有機基を示す。
及びRは、各々独立して、アルコキシ基を示す。
<8> 一般式(V)におけるAが、一般式(III)で示される多環状炭化水素基であることを特徴とする一般式(V)で示される化合物。
【0024】
【化6】

【0025】
一般式(III)において、mは0〜3の整数を示す。
1は一般式(I)におけるSi原子との結合手を表す。
2は一般式(I)における−COOX1および−COOX2との結合手を表す。
<9> 一般式(V)で示される化合物を重合成分の一つとする樹脂(A)。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、短波長の放射線に有効に感応し、高度のドライエッチング耐性を備えつつ、レジストとしての基本物性に優れた感光性組成物、特に、二層、あるいは多層レジストに好適な感光性組成物を提供することができる。特に、本発明の酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂の多環状炭化水素基は、活性光線又は放射線の照射により酸の作用によりカルボン酸基を発生する基を複数有しているため、感度、あるいはドライエッチング耐性を高めることができる。
また、本発明による、感光性組成物に好適な重合体(シロキサン系ポリマー)、および該シロキサン系ポリマーの製造に好適な化合物(シリルモノマー)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の感光性組成物について詳しく説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0028】
<(A)一般式(I)に示す構造単位を有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大するシロキサン樹脂>
本発明の感光性組成物は、(A)一般式(I)に示す構造単位を有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大するシロキサン樹脂((A)成分、樹脂(A)ともいう)を含有する。
【0029】
【化7】

【0030】
一般式(I)中、
Aは多環状炭化水素基を示す。
Qは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基あるいはアリール基を示す。Qは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基あるいは炭素数6〜12のアリール基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、あるいはフェニル基が好ましい。
、Xは、それぞれ独立して酸の作用により分解してアルカリ現像液に溶解する基を生じる有機基を示す。
【0031】
樹脂(A)は、酸の作用により分解し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(酸分解性樹脂)であり、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂である。
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
酸で分解し得る基(酸分解性基)として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0032】
一般式(I)において、X、Xは、それぞれ独立して酸の作用により分解して脱離する基を示す。具体的には、上述した酸で脱離する基等が挙げられる。
【0033】
、Xとしては、下記一般式(IV)で示す有機基が特に好ましい。
【0034】
【化8】

【0035】
一般式(IV)において、R〜Rは各々独立してアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を示し、RとRは結合して環を形成してもよい。
ここで、アルキル基は直鎖または分岐アルキル基のいずれでもよい。シクロアルキル基は、単環状あるいは多環状アルキル基のいずれでも良い。
は炭素数1〜6の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖アルキル基が特に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基が特に好ましい例として挙げることができる。
、Rは、炭素数20以下のアルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基が特に好ましい例として挙げることができる。
また、RとRは結合して環を形成することも好ましい例であり、RとRは結合して炭素数5〜20の脂環を形成することが好ましく、炭素数5〜12の脂環を形成することが特に好ましい。脂環として、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタンを形成することが特に好ましい。
〜Rはさらに置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例としては炭素数1〜6のアルキル基が示され、メチル基が特に好ましい。
【0036】
一般式(I)において、Aで示される多環状炭化水素基は、炭素数7から20の多環状炭化水素基であることが好ましく、炭素数7から12の多環状炭化水素基であることが特に好ましい。Aで示される多環状炭化水素基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例としては炭素数1〜6のアルキル基が示され、メチル基が特に好ましい。
【0037】
より具体的には、Aで示される多環状炭化水素基は、一般式(III)で示される多環状炭化水素基であることが特に好ましい。
【0038】
【化9】

【0039】
一般式(III)において、
mは0〜3の整数を示す。mは0〜2の整数が好ましく、mは0または1がさらに好ましく、0であることが特に好ましい。
1は一般式(I)におけるSi原子との結合手を表す。
2は一般式(I)における−COOX1および−COOX2との結合手を表す。
尚、mが2または3のとき、P1は多環を構成する何れの炭素原子から結合していてもよい。
【0040】
樹脂(A)は、さらに式(II)に示す構造単位を有することが好ましい。
【0041】
【化10】

【0042】
樹脂(A)の具体例としては、下記のものをあげることができる。
【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
樹脂(A)は、一般式(I)で表される構造単位と、任意で式(II)やその他の構造
単位を含む重合体であり、重合は2次元(平面)的であっても3次元(立体)的であってもよい。即ち、たとえば籠型ポリシルセスキオキサン樹脂や、ラダー型ポリシルセスキオサン樹脂であってもよい。
【0051】
本発明の樹脂(A)は、一般式(V)で示されるシリルモノマー化合物と、任意で一般式(II)で表される構造単位等その他の構造単位を形成するモノマー化合物とを重合することで得られる。
以下に本発明の一般式(V)で示される化合物に関して説明する。
【0052】
【化18】

【0053】
一般式(V)において、A、Q,X、Xは、それぞれ前記、一般式(I)と同義である。R、Rはアルコキシ基を示すが、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖アルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜3の直鎖アルコキシ基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基が特に好ましい例として挙げられる。
【0054】
一般式(V)で示される化合物は、たとえば以下の方法で合成することができる。
【0055】
【化19】

【0056】
<工程1>
C−1を出発物質として、塩基存在下において、X‐OH、X‐OHを反応させ、C−2に変換する。C−1において、Bは一般式(V)におけるAの不飽和体に相当する。L、Lは、それぞれ脱離基を示し、塩素、臭素等のハライド、メシル基、トシル基などの置換スルホニル基を好まし例として挙げることができ、塩素、臭素等のハライドが特に好ましい例として挙げることができる。この時、用いる塩基としては無機塩基、有機塩基いずれでもよく、特に好ましい無機塩基の例としてはt−ブトキシカリウム、特に好ましい有機塩基の例としてはDBU等をあげることができる。
【0057】
重縮合反応に用いる溶媒としては、直鎖状もしくは分岐状のケトン類、環状のケトン類、エステル類、エーテル類、アルコール類、炭化水素類を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキシルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、n−プロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。溶媒の使用量は、前記一般式(V)で示される化合物に対して、通常、200質量部以下である。
【0058】
反応温度は、通常、−50〜+300℃、好ましくは20〜150℃であり、反応時間は、通常、1分〜100時間程度であり、好ましくは30分〜48時間である。
【0059】
<工程2>
C−2とC−3を溶媒に溶解した後、触媒存在下において反応させて本発明の一般式(V)の化合物を製造する。C−3において、R、R、およびQは前記と同義である。用いる触媒としては、例えばロジウム系触媒を用いることができる。
重縮合反応に用いる溶媒としては、直鎖状もしくは分岐状のケトン類、環状のケトン類、エステル類、エーテル類、アルコール類、炭化水素類を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキシルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、n−プロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。溶媒の使用量は、前記一般式(V)で示される化合物に対して、通常、200質量部以下である。
【0060】
反応温度は、通常、−50〜+300℃、好ましくは20〜150℃であり、反応時間は、通常、1分〜100時間程度であり、好ましくは30分〜48時間である。
【0061】
以下に本発明のシロキサン樹脂の製造に関して、説明する。
本発明のシロキサン樹脂は、前記一般式(V)で示される化合物を酸性触媒または塩基性触媒の存在下、無溶媒または溶媒中で、常法により重縮合させることによって製造することができる。
【0062】
前記酸性触媒の具体的な例として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、燐酸、四塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等の無機酸類を用いることができ、例えば、ぎ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、n−プロピオン酸、酪酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸類を用いることができる。これらの酸性触媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
前記塩基性触媒の具体的な例として、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基類を用いることができる。
【0064】
また、例えば、直鎖状、分岐状もしくは環状のモノアルキルアミン類、ジアルキルアミン類、トリアルキルアミン類および芳香族アミン類を用いることができる。また、イミダゾール類、ピリジン類;ピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ [2.2.2] オクタン等の他の含窒素複素環化合物等を用いることができる。これらの塩基性触媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
前記酸性触媒および塩基性触媒のうち、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水酢酸、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン等が好ましく、トリフルオロ酢酸が特に好ましい。酸性触媒または塩基性触媒の使用量は、前記一般式(V)で示される化合物に対して、通常、0.01〜1000質量部であり、好ましくは0.1〜100質量部である。
【0066】
また、重縮合反応に用いる溶媒としては、直鎖状もしくは分岐状のケトン類、環状のケ
トン類、エステル類、エーテル類、アルコール類、炭化水素類を用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキシルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、n−プロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。溶媒の使用量は、前記一般式(V)で示される化合物に対して、通常、200質量部以下である。
【0067】
重縮合反応に際しては、反応系に水を添加することもできる。この場合の水の添加量は、前記一般式(V)で示される化合物に対して、通常、1000質量部以下である。
【0068】
さらに、本発明のシロキサン樹脂を製造する重縮合に際しては、前記一般式(V)で示される化合物とともに、シラン化合物を混合して用いることが好ましい。シラン化合物としては、テトラアルコキシシラン化合物、アルキルトリアルコキシシラン化合物、ジアルキルジアルコキシシラン化合物、トリアルキルアルコキシシラン化合物などを好ましい例としてあげることができ、前記一般式(II)に示す構造単位を構成するシラン化合物を用いることが特に好ましい。より具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピルシラン等のシラン化合物を特に好ましい例として挙げることができる。
【0069】
得られる樹脂の分子量を制御し、また得られるポリマーの安定性を向上させるために、ヘキサメチルジシロキサンを添加することができる。ヘキサメチルジシロキサンの添加量は、シラン化合物の全量100質量部に対して、通常、500質量部以下、好ましくは50質量部以下である。この場合、ヘキサメチルジシロキサンの添加量が500質量部を超えると、得られるポリマーの分子量が小さくなり、ガラス転移温度(Tg)が低下する傾向がある。重縮合反応における反応温度は、通常、−50〜+300℃、好ましくは20〜150℃であり、反応時間は、通常、1分〜100時間程度であり、好ましくは30分〜48時間である。
【0070】
本発明のシロキサン樹脂において、構造単位(I)の合計含有率は、全構造単位に対して、通常、1〜100モル%、好ましくは10〜100モル%、特に好ましくは20〜100モル%である。
前記一般式(II)に示す構造単位の合計含有率は、全構造単位に対して、通常、0.1〜30モル%、好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
【0071】
本発明のシロキサン樹脂において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、500〜1,000,000、好ましくは500〜500,000、特に好ましくは1,000〜100,000である。この場合、Mwが500未満では、得られるポリマーのガラス転移温度が低下する傾向があり、一方1,000,000を超えると、得られるポリマーの溶剤への溶解性が低下する傾向がある。
また、ガラス転移温度(Tg)は、通常、−50〜+500℃、好ましくは0〜300℃である。この場合、ガラス転移温度(Tg)が−50℃未満では、レジスト材料としたときにパターンの形成が困難となる傾向があり、一方500℃を越えると、得られるポリマーの溶剤への溶解性が低下する傾向がある。
【0072】
本発明において、上記樹脂(A)の使用量は、組成物中の固形分を基準として、通常99.99〜70質量%の範囲で用いられ、好ましくは99.9〜75質量%、更に好ましくは99〜85質量%の範囲で使用される。
本発明において、シロキサン樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。この場合、上記樹脂(A)を含むシロキサン樹脂の総使用量が、組成物中の固形分を基準として、通常99.99〜70質量%の範囲で用いられ、好ましくは99.9〜75質量%、更に好ましくは99〜85質量%の範囲で使用される。
【0073】
(B)活性光線又は放射線の照射により、酸を発生する化合物
本発明の感光性組成物は、活性光線又は放射線の照射により、酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。
本発明で使用される酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている公知の光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームにより酸を発生する化合物およびそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0074】
また、その他の本発明に用いられる酸発生剤としては、たとえばジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する酸発生剤、イミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物等を挙げることができる。
また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖または側鎖に導入した化合物を用いることができる。
【0075】
さらに、V. N. R. Pillai, Synthesis, (1), 1 (1980)、A. Abad et al., Tetrahedron
Lett., (47) 4555 (1971)、D. H. R. Barton et al., J. Chem. Soc.,(C), 329 (1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0076】
上記酸発生剤(B)の中で、特に有効に用いられるものについて、以下の<A−1>〜<A−4>に説明する。
<A−1>: トリハロメチル基が置換した下記一般式(PAG1)で表されるオキサゾール誘導体又は下記一般式(PAG2)で表されるS−トリアジン誘導体。
【0077】
【化20】

【0078】
式中、R201は、アリール基またはアルケニル基を示し、R202はアリール基、アルケニル基、アルキル基、または−C(Y)3を示す。Yは塩素原子または臭素原子を示す。
具体的には以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
【化21】

【0080】
<A−2>: 下記の一般式(PAG3)で表されるヨードニウム塩、または一般式(PAG4)で表されるスルホニウム塩。
【0081】
【化22】

【0082】
式中、Ar1およびAr2は、各々独立に、アリール基を示す。R203、R204およびR205は、各々独立に、アルキル基又はアリール基を示す。
-は対アニオンを示し、例えば、BF4-、AsF6-、PF6-、SbF6-、SiF62-、ClO4-、CF3SO3-等のパーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン等のアルキルスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トリイソプロピルベンゼンスルホン酸アニオン等の芳香族スルホン酸アニオン、ナフタレン−1−スルホン酸アニオン等の縮合多核芳香族スルホン酸アニオン、アントラキノンスルホン酸アニオン、スルホン酸基含有染料等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらのアニオン種は、更に置換基を有していてもよい。
またR203、R204、R205のうちの2つおよびAr1、Ar2はそれぞれの単結合または置換基を介して結合してもよい。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
【化23】

【0084】
【化24】

【0085】
【化25】

【0086】
【化26】

【0087】
【化27】

【0088】
【化28】

【0089】
【化29】

【0090】
一般式(PAG3)または(PAG4)で示される上記オニウム塩は公知であり、例えば、J. W. Knapczyk et al., J. Am. Chem. Soc., 91, 145 (1969)、A. L. Maycok et al., J. Org. Chem., 35, 2532, (1970)、E. Goethas et al., Bull.
Soc. Chem. Belg., 73, 546, (1964)、H. M. Leicester, J. Ame. Chem. Soc.,
51, 3587 (1929)、J. V. Crivello et al., J. Polym. Chem. Ed., 18, 2677 (1980)、米国特許第2,807,648号および同4,247,473号、特開昭53-101,331号等に記載の方法により合成することができる。
【0091】
<A−3>: 下記一般式(PAG5)で表されるジスルホン誘導体または一般式(PAG6)で表されるイミノスルホネート誘導体。
【0092】
【化30】

【0093】
式中、Ar3及びAr4は、各々独立にアリール基を示す。R206はアルキル基又は、アリール基を示す。Aはアルキレン基、アルケニレン基、又はアリーレン基を示す。
【0094】
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
【化31】

【0096】
【化32】

【0097】
【化33】

【0098】
<A−4>: 下記一般式(PAG7)で表されるジアゾジスルホン誘導体。
【0099】
【化34】

【0100】
式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基あるいはアリール基を表す。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
【化35】

【0102】
本発明において、酸発生剤は、1種単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。
酸発生剤の添加量(総量)は、組成物中の固形分を基準として、通常0.001〜40質量%の範囲で用いられ、好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%の範囲で使用される。
【0103】
本発明の感光性組成物には、必要に応じて各種添加物を添加することができる。
【0104】
<溶剤>
前記各成分を溶解させて感光性組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、炭素数4〜10の環状ラクトン、炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0105】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0106】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0107】
炭素数4〜10の環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0108】
炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0109】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0110】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0111】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0112】
本発明の感光性組成物の固形分は、上記溶剤に溶解し固形分濃度として、3〜40質量%溶解することが好ましい。より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは7〜20質量%である。
【0113】
塩基性化合物
本発明の感光性組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0114】
【化36】

【0115】
一般式(A)〜(E)中、
200 、R201及びR202 は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0116】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203 、R204、R205及びR206 は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0117】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0118】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0119】
塩基性化合物の使用量は、感光性組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0120】
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0121】
界面活性剤
本発明の感光性組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0122】
本発明の感光性組成物が上記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0123】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0124】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C37基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0125】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0126】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0127】
(F)界面活性剤の使用量は、感光性組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0128】
カルボン酸オニウム塩
本発明における感光性組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有しても良い。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明のカルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環または多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0129】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0130】
これらのカルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0131】
カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0132】
パターン形成方法 本発明の基板上にパターン化された画像をつくる方法は、例えば下記の方法により得ることができる。
【0133】
また、本発明の感光性組成物は異物等を除去する目的で、溶剤で溶液として調製した後、通常たとえば口径0.05〜0.2μm程度のフィルターでろ過することによって用いることが好ましい。
【0134】
本発明の感光性組成物には、必要に応じて更に、酸分解性溶解阻止化合物、可塑剤、光増感剤、架橋剤、光塩基発生剤、熱塩基発生剤、分光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)、露光により塩基性が低下する化合物(フォトべース)、等を含有させることができる。
【0135】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号、欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
【0136】
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0137】
本発明の感光性組成物に使用できる酸分解性溶解阻止化合物としては、例えば、特開平5−134415号、特開平6−51519号などに記載の低分子酸分解性溶解阻止化合物を用いることができる。
【0138】
本発明の感光性組成物は、好ましくは精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)、ガラス、セラミックス、金属等の基板上に予め塗設されたの第1層レジスト上に塗布する第2層レジストとして用いられる。本発明の感光性組成物の層形成は、各成分を溶剤に溶解させ、得られた溶液をスピンコート法、スプレー法等により塗布することにより行なわれる。
【0139】
本発明に用いられる第2レジスト層の現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ類の水溶液にアルコール類、界面活性剤、芳香族水酸基含有化合物等を適当量添加して使用することもできる。中では、特にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いることが最も好ましい。
【0140】
上記の第1層レジストとしては、適当な有機高分子膜が用いられるが、各種公知のフォトレジストを使用してもよい。たとえば、富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ株式会社製FHシリーズ、FHiシリーズ或いは住友化学社製PFIシリーズの各シリーズを例示することができる。
【0141】
本発明の感光性組成物を使用するには、先ず、基板上に第1レジスト層を形成する。この層の形成は、第1レジスト層に含有される化合物を、適当な溶剤に溶解させ、得られる溶液をスピンコー卜法、スプレー法等により塗布することにより行われる。第1レジスト層の膜厚は、0.1〜2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、特に好ましくは0.25〜1.2μmである。
【0142】
次いで、本発明のレジスト組成物を使用して第2レジスト層の形成を行うが、その前に
、第1レジスト層を熱処理することが好ましい。熱処理の温度としては、150〜250℃が好ましく、さらには170〜240℃が好ましく、180〜230℃が特に好ましい。この熱処理は、ホットプレートや熱オーブン等の装置を用いて行うことが出来る。
また、熱処理の時間は、上記熱処理温度によって異なるが、10秒〜1000秒の範囲に設定されることが好ましく、さらには20〜600秒が好ましい。
【0143】
次いで、本発明の感光性組成物を使用して第2レジスト層を第1レジスト層の上に形成させるが、上記の第1レジスト層の形成と同様に行うことができる。
塗布後のベーク温度は通常60〜150℃、好ましくは、90〜130℃である。
第2レジスト層の膜厚は、0.03〜0.6μmであることが好ましく、より好ましくは0.04〜0.5μmであり、特に好ましくは0.05〜0.45μmである。
【0144】
得られた2層レジストは次にパターン形成工程に付されるが、その第1段階として、まず第2層のレジスト組成物の膜にパターン形成処理を行う。必要に応じてマスク合わせを行い、このマスクを通して高エネルギー線を照射することにより、照射部分のレジスト組成物をアルカリ水溶液に可溶とし、アルカリ水溶液で現像してパターンを形成する。高エネルギー線の照射には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)あるいはArFエキシマレーザー(波長193nm)等の遠紫外線のほか、極端紫外線(EUV)、電子線、X線等の放射線を用いることができる。
第2層(上層)の現像時間は通常10〜100秒、好ましくは、20〜60秒である。
【0145】
次いで、第2段階としてドライエッチングを行うが、この操作は上記レジスト組成物の膜のパターンをマスクとして酸素プラズマエッチングにより実施し、アスペクト比の高い微細なパターンが形成される。この酸素プラズマエッチングによる有機高分子膜のエッチングは、従来のフォトエッチング操作による基板のエッチング加工の終了後に行われるレジスト膜の剥離の際に利用されるプラズマエッチングとまったく同一の技術である。この操作は、例えば円筒形プラズマエッチング装置により、反応性ガス、すなわちエッチングガスとして酸素を使用して実施することができる。酸素ガスに亜硫酸ガス等のガスを混合して用いることもできる。
尚、本発明のレジストは、液浸リソグラフィーにも好適に用いることができる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0147】
〔合成例1〕
5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステルの合成例
28gのt−ブトキシカリウムに300mLのTHFを加え、氷冷下にて25gの5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸クロリドを滴下した。滴下終了後、還流下にて4時間攪拌した後、氷水を加えた。反応液を酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1/9)で精製し、23gの5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステルを得た。
【0148】
得られた5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸 t−ブチルエステル(14.7g)を70mLのトルエンに溶解し、攪拌下にて50mgのロジウム錯体を加えた後、外温100℃にて13mLのメチルジエトキシシランを滴下した。4時間反応させた後、反応液をろ過し、ろ液を減圧下にて留去した。残留物を中性シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)で精製し、18gの5−(メチルジエトキシ
シリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステルを得た。
FABMS:m/z=429
【0149】
〔合成例2〕
5−(フェニルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステルの合成例
合成例1において、メチルジエトキシシランをフェニルジエトキシシランに替え、あとは同様に合成して5−(フェニルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステルを得た。
FABMS:m/z=491
【0150】
〔合成例3〕
3−(メチルエトキシシリル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−8,9−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステルの合成例
合成例1において、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸クロリドをテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸クロリドに替え、あとは同様に合成して3−(メチルエトキシシリル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−8,9−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステルを得た。
FABMS:m/z=495
【0151】
〔合成例4〕
5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1−メチルシクロヘキシル)エステルの合成例
23gの1−メチルシクロヘキサノール、に300mLのTHFを加え、20gのトリエチルアミンを加えて氷冷下にて24gの5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸クロリドを滴下した。滴下終了後、還流下にて4時間攪拌した後、氷水を加えた。反応液を酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=2/8)で精製し、20gの5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1−メチルシクロヘキシル)エステルを得た。
【0152】
得られた5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1−メチルシクロヘキシル)エステル(19g)を70mLのトルエンに溶解し、攪拌下にて50mgのロジウム錯体を加えた後、外温100℃にて13mLのメチルジエトキシシランを滴下した。4時間反応させた後、反応液をろ過し、ろ液を減圧下にて留去した。残留物を中性シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1/10)で精製し、12gの5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1−メチルシクロヘキシル)エステルを得た。
FABMS:m/z=509
【0153】
〔合成例5〕
5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1−メチルシクロペンチル)エステルの合成例
合成例4において、1−メチルシクロヘキサノールを1−メチルシクロペンタノールに替え、あとは同様に合成して5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1−メチルシクロペンチル)エステルを合成した。
FABMS:m/z=481
【0154】
〔合成例6〕
5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1、1-ジ
メチル−1−(4−メチルシクロヘキシル)メチル)エステルの合成例
合成例4において、1−メチルシクロヘキサノールを1、1-ジメチル−1−(4−メチルシクロヘキシル)メタノール、トリエチルアミンをDBUに替え、あとは合成例4に準じて、5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジ(1、1-ジメチル−1−(4−メチルシクロヘキシル)メチル)エステルを合成した。
FABMS:m/z=593
【0155】
〔合成例7〕
3−(メチルエトキシシリル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−8,9−ジカルボン酸 (1,1-ジメチル−1−(4−メチルシクロヘキシル)メチル)エステルの合成例
合成例4において、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸クロリドをテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸クロリド、1−メチルシクロヘキサノールを1、1-ジメチル−1−(4−メチルシクロヘキシル)メタノール、トリエチルアミンをDBUに替え、あとは合成例4に準じて合成して3−(メチルエトキシシリル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−8,9−ジカルボン酸 (1、1-ジメチル−1−(4−メチルシクロヘキシル)メチル)エステルを得た。
FABMS:m/z=660
【0156】
〔合成例8〕
シロキサン樹脂 P−2の合成例
0.46gの5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステル、0.67μLのトリフルオロ酢酸に3.85μLのエタノールを加え、密栓下にて5時間還流させた。反応液の溶媒を減圧下にて留去した後、60℃で1日間乾燥し、目的とするシロキサン樹脂 P−2を合成した。Tg:80℃
【0157】
〔合成例9〕
シロキサン樹脂 P−9の合成例
0.46gの5−(メチルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステル、0.31gのTEOS、0.67μLのトリフルオロ酢酸に3.85μLのエタノールを加え、密栓下にて5時間還流させた。反応液の溶媒を減圧下にて留去した後、60℃で1日間乾燥し、目的とするシロキサン樹脂 P−2を合成した。
Tg:100℃
【0158】
〔合成例10〕
シロキサン樹脂 P−10の合成例
0.49gの5−(フェニルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸
ジt−ブチルエステル、0.31gのTEOS、0.67μLのトリフルオロ酢酸に3.85μLのエタノールを加え、密栓下にて5時間還流させた。反応液の溶媒を減圧下にて留去した後、60℃で1日間乾燥し、目的とするシロキサン樹脂 P−10を合成した。
Tg:110℃
【0159】
シロキサン樹脂P−11、シロキサン樹脂P―12、シロキサン樹脂P―18およびシロキサン樹脂P―19は合成例1から合成例7によって合成されるジエステル化合物を用いて上記合成例9に準じて合成できる。
【0160】
〔合成例11〕
シロキサン樹脂 P−13の合成例
合成例1で得られた0.43gの5−(フェニルジエトキシシリル)ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸 ジt−ブチルエステル、0.31gのTEOS、0.35gのメチルトリエトキシシラン、0.67μLのトリフルオロ酢酸に3.85μLのエタノールを加え、密栓下にて5時間還流させた。反応液の溶媒を減圧下にて留去した後、60℃で1日間乾燥し、目的とするシロキサン樹脂 P−13を合成した。
Tg:105℃
【0161】
シロキサン樹脂 P−14〜シロキサン樹脂P−17、およびシロキサン樹脂P−20は合成例1から合成例7によって合成されるジエステル化合物を用いて上記合成例11に準じて合成できる。
【0162】
〔実施例1〜12及び比較例1〕
<レジスト調製>
(上層レジスト層組成物の形成)
表1に示す実施例1〜12として示す、上記で合成したシロキサン樹脂の各々について、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)/シクロヘキサノン(8/2質量比)混合溶媒に溶解させ固形分濃度7質量%の溶液を調製し、酸発生剤(PAG4−38:トリt-ブチルフェニルスルホニウムノナフレート)組成物中の固形分を基準として5質量%と塩基性化合物(2−フェニルベンズイミダゾール)組成物中の固形分を基準として0.5質量%と界面活性剤(メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製))組成物中の固形分を基準として0.01質量%を添加し、得られた溶液を0.1μm口径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、上層レジスト組成物1〜12を得た。
【0163】
(下層レジスト層の形成)
6インチシリコンウェハにFHi−028DDレジスト(富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ株式会社製i線用レジスト)を東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用い塗布し、90℃、90秒ベークして膜厚0.55μmの均一膜を得た。
これをさらに200℃、3分加熱し、膜厚0.40μmの下層レジスト層を得た。
【0164】
(上層レジスト層の形成)
上記の第1レジスト層の上に、固形分濃度6%の上層レジスト組成物を前記下層レジスト層の形成と同様に塗布し、130℃、90秒加熱して、膜厚0.15μmの上層レジスト層を得た。
【0165】
〔比較例1〕
シロキサン樹脂を特開2002−278073号公報の合成例8に記載の方法に従って合成した下記構造を有する樹脂(比較樹脂)に代える以外は実施例1〜12と同様にして上層レジスト組成物の調製を行い、下層レジスト、上層レジストの塗設を行った。
【0166】
【化37】

【0167】
<レジスト評価>
こうして得られた各ウェハをASML社製ArFエキシマステッパーに解像力マスクを装填して露光量を変化させながら露光した。
その後、クリーンルーム内で100℃、90秒加熱した後、テトラヒドロアンモニウムヒドロキシド現像液(2.38質量%)で60秒間現像し、蒸留水でリンス、乾燥してパターンを得た(上層パターン)。さらにプラズマシステム製平行平板型リアクティブイオンエッチング装置DES−245Rを用い、上記上層パターンを有するウェハをエッチング(ドライ現像)し、下層にパターン形成した。エッチングガスは酸素、圧力は20ミリトール、印加パワー100mW/cm2とした。形成されたレジストパターンを走査型電子顕微鏡で観察した。
【0168】
下記の方法により、感度、解像力、エッチング耐性を評価した。
(1)感度:感度は、0.1μmのマスクパターンを再現する露光量で示した。
(2)解像力:解像力は、0.1μmのマスクパターンを再現する露光量における限界解像力で示した。
(3)エッチング耐性:エッチング耐性は、ポリヒドロキシスチレンとのエッチング速度の相対比で示した。1.0以上1.2未満のものを良好(○)、1.2以上1.5未満のものを許容(△)、1.5以上のものを不可(×)とした。
【0169】
【表1】

【0170】
本発明の感光性組成物は、ArFエキシマレーザーに対して高い解像性能を示すことが明らかとなった。また、比較レジストと比べ、感度、エッチング耐性に優れていることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)に示す構造単位を有する、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増大する樹脂、および(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、を含有することを特徴とする感光性組成物。
【化1】

一般式(I)中、
Aは多環状炭化水素基を示す。Qは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基あるいはアリール基を示す。
及びXは、それぞれ独立して、酸の作用により分解して脱離する基を示す。
【請求項2】
樹脂(A)が、さらに式(II)に示す構造単位を有することを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【化2】

【請求項3】
一般式(I)におけるAが、一般式(III)で示される多環状炭化水素基であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性組成物。
【化3】

一般式(III)において、
mは0〜3の整数を示す。
1は式(I)におけるSi原子との結合手を表す。
2は式(I)における−COOX1および−COOX2との結合手を表す。
【請求項4】
一般式(III)におけるmが、0であることを特徴とする請求項3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
一般式(I)におけるX、Xが、下記一般式(IV)で示される酸の作用により分解して脱離する基である請求項1〜4のいずれかに記載の感光性組成物。
【化4】

一般式(IV)において、R〜Rは各々独立してアルキル基又はシクロアルキル基を示す。RとRとが結合して環を形成してもよい。
【請求項6】
第1のレジスト層を設けた基板上に、請求項1〜5のいずれかに記載の感光性組成物により第2のレジスト層を形成し、露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
一般式(V)で示される化合物。
【化5】

一般式(V)において、
Aは多環状炭化水素基を示す。
Qはアルキル基、シクロアルキル基、あるいはアリール基を示す。
及びXは、それぞれ独立して、酸の作用により分解してアルカリ現像液に溶解する基を生じる有機基を示す。
及びRは、各々独立して、アルコキシ基を示す。
【請求項8】
一般式(V)におけるAが、一般式(III)で示される多環状炭化水素基であることを特徴とする請求項7に記載の化合物。
【化6】

一般式(III)において、mは0〜3の整数を示す。
1は式(I)におけるSi原子との結合手を表す。
2は式(I)における−COOX1および−COOX2との結合手を表す。
【請求項9】
一般式(V)を重合成分の一つとする樹脂(A)。
【化7】

一般式(V)において、
Aは多環状炭化水素基を示す。
Qはアルキル基、シクロアルキル基、あるいはアリール基を示す。
及びXは、それぞれ独立して、酸の作用により分解してアルカリ現像液に溶解する基を生じる有機基を示す。
及びRは、各々独立して、アルコキシ基を示す。

【公開番号】特開2008−162952(P2008−162952A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355081(P2006−355081)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】