説明

成膜方法及び処理システム

【課題】例えばCu膜に対するバリヤ性及び密着性を高く維持することができる層構造を形成する成膜方法を提供する。
【解決手段】真空引き可能になされた処理容器132内で、表面に凹部2を有する被処理体Wの表面に成膜処理を施す成膜方法において、遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜210を形成する遷移金属含有膜形成工程と、元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜212を形成する金属膜形成工程とを有するようにする。これにより、例えばCu膜に対するバリヤ性及び密着性を高く維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体の表面に、例えばバリヤ層としてマンガン(Mn)含有膜とルテニウム(Ru)膜を形成するための成膜方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請より、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や、トレンチ、ホールなどの凹部内への埋め込み材料としては、各種寸法の微細化により、より電気抵抗を小さくする必要から電気抵抗が非常に小さくて且つ安価である銅を用いる傾向にある(特許文献1)。そして、この配線材料や埋め込み材料として銅を用いる場合には、その下層への銅の拡散バリヤ性等を考慮して、一般的にはタンタル金属(Ta)やタンタル窒化膜(TaN)等がバリヤ層として用いられる。
【0003】
そして、上記凹部内を銅で埋め込むには、まずプラズマスパッタ装置内にて、この凹部内の壁面全体を含むウエハ表面全面に銅膜よりなる薄いシード膜を形成し、次にウエハ表面全体に銅メッキ処理を施すことにより、凹部内を完全に埋め込むようになっている。その後、ウエハ表面の余分な銅薄膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等により研磨処理して取り除くようになっている。
【0004】
この点については図14を参照して説明する。図14は半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。この半導体ウエハWに形成された、例えば層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、例えばデュアルダマシン構造を形成するビアホールやスルーホールや溝(トレンチ)等に対応する凹部2が形成されており、この凹部2の底部には、例えば銅よりなる下層の配線層3が露出状態で形成されている。
【0005】
具体的には、この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがコンタクトホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお、下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。
【0006】
上記絶縁層1は例えば主成分がSiO よりなる膜により形成されている。上記凹部2は設計ルールの微細化に伴ってその幅、或いは内径は例えば120nm程度と非常に小さくなっており、アスペクト比は例えば2〜4程度になっている。なお、拡散防止膜およびエッチングストップ膜等については、図示を省略し形状を単純化して記載している。
【0007】
この半導体ウエハWの表面には上記凹部2内の内面も含めて略均一に例えばTaN膜及びTa膜の積層構造よりなるバリヤ層4がプラズマスパッタ装置にて予め形成されている(図14(A)参照)。そして、プラズマスパッタ装置にて上記凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に亘って金属膜として薄い銅膜よりなるシード膜6を形成する(図14(B)参照)。このシード膜6をプラズマスパッタ装置内で形成する際、半導体ウエハ側に高周波のバイアス電力を印加して、銅の金属イオンの引き込みを効率良く行うようになっている。更に、上記ウエハ表面に銅メッキ処理を施すことにより上記凹部2内を例えば銅膜よりなる金属膜8で埋め込むようになっている(図14(C)参照)。その後は、上記ウエハ表面の余分な金属膜8、シード膜6及びバリヤ層4を上記したCMP処理等を用いて研磨処理して取り除くことになる。
【0008】
ところで、最近にあっては、上記バリヤ層の更なる信頼性の向上を目標として種々の開発がなされており、中でも上記Ta膜やTaN膜に代えてMn膜等を用いた自己形成バリヤ層が注目されている(特許文献2、3)。このMn膜は、スパッタリングにより成膜されて、更にこのMn膜自体がシード膜となるので、この上方にCuメッキ層を直接形成できメッキ後にアニールを施すことで自己整合的に下層の絶縁膜であるSiO 層と反応して、このSiO 層とMn膜との境界部分にMnSixOy(x、y:任意の正数「以下同様」)膜、或いはマンガン酸化物MnOx(x:任意の正数)膜というMnバリヤ膜が形成されるため、製造工程数も削減できる、という利点を有する。
【0009】
この場合、Mn膜が薄いときには膜全体がMnOxやMnSixOyとなる。なおマンガン酸化物は、Mnの価数によってMnO、Mn、Mn、 MnO等の種類が存在するが、ここではこれらを総称してMnOxと記述する 。
【0010】
【特許文献1】特開2004−107747号公報
【特許文献2】特開2005−277390号公報
【特許文献3】特開2007−067107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述したMnバリヤ膜はCu膜に対するバリヤ性は比較的優れているが、上記Mn膜やMnバリヤ膜上に形成されるCu膜は、これら膜上における濡れ性がそれ程良好ではない。この結果、上記Mn膜やMnバリヤ膜上に形成されたCu膜の密着性が劣化し、Cu膜とこれらの膜との間に密着不良を生ずる恐れがある、といった問題が生じた。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、例えばCu膜に対するバリヤ性及び密着性を高く維持することができる層構造を形成する成膜方法及び処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器内で、表面に凹部を有する被処理体の表面に成膜処理を施す成膜方法において、遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する遷移金属含有膜形成工程と、元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、を有することを特徴とする成膜方法である。
【0014】
このように、被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する遷移金属含有膜形成工程と、元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜を形成する金属膜形成工程とを行って遷移金属含有膜と金属膜との積層構造としたので、例えばこの積層構造上に形成される例えばCu膜に対するバリヤ性及び密着性を高く維持することができる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記熱処理は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記熱処理は、前記原料ガスと還元ガスとを用いる熱CVD法であることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記金属膜形成工程では、熱処理が行われることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記熱処理は、CVD法であることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記遷移金属含有膜形成工程と前記金属膜形成工程とは同一の処理容器内で連続的に行われ、前記両工程の移行時には前記遷移金属含有原料ガスの供給量を次第に減少させつつ前記VIII族の元素を含むVIII族原料ガスの供給量を次第に増加させるようにして前記遷移金属と前記VIII族の元素とを含む混合層を形成するようにしたことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記金属膜形成工程では、スパッタ法により成膜が行われることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記金属膜形成工程の後に、銅膜を堆積して前記凹部内に埋め込む埋め込み工程を行うことを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記埋め込み工程は、CVD法により行うことを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項8の発明において、前記埋め込み工程は、メッキ法により行うことを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項8の発明において、前記埋め込み工程は、スパッタ法により行うことを特徴とする。
【0021】
請求項12の発明は、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の発明において、前記埋め込み工程の後に、前記被処理体をアニールするアニール工程を行うことを特徴とする。
【0022】
請求項13の発明は、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発明において、前記薄膜の下地膜は、SiO 膜とSiOF膜とSiC膜とSiN膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする。
【0023】
請求項14の発明は、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の発明において、前記凹部の下部には、配線層が形成されていることを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項14の発明において、前記遷移金属含有原料は、有機金属材料、或いは金属錯体材料よりなることを特徴とする。
【0024】
請求項16の発明は、請求項15の発明において、前記遷移金属は、マンガン(Mn)よりなり、該マンガンを含む有機金属材料は、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH)Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM)[=Mn( C1119]、Mn(acac)[=Mn(C]、Mn(hfac)[=Mn(CHF]、((CHCp)Mn[=Mn((CH]よりなる群から選択される1以上の材料であることを特徴とする。
【0025】
請求項17の発明は、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の発明において、前記熱処理ではプラズマが併用されることを特徴とする。
請求項18の発明は、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の発明において、前記VIII族の元素は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptよりなる群から選択される1以上の元素であることを特徴とする。
【0026】
請求項19に係る発明は、被処理体の処理システムにおいて、前記被処理体の表面に遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する処理装置と、前記被処理体の表面に元素周期表のVIII族の原素を含む金属膜を形成する処理装置と、前記被処理体の表面に、銅膜を形成する処理装置と、前記各装置が連結された共通搬送室と、前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【0027】
請求項20に係る発明は、被処理体の処理システムにおいて、前記被処理体の表面に遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する成膜処理と、元素周期表のVIII族の原素を含む金属膜を形成する成膜処理とを行う処理装置と、前記被処理体の表面に、銅膜を形成する処理装置と、前記各処理装置が連結された共通搬送室と、前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【0028】
請求項21に係る発明は、請求項19記載の処理システムを用いて請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体である。
請求項22に係る発明は、請求項20記載の処理システムを用いて請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体である。
請求項23に係る発明は、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法によって形成された膜構造を有することを特徴とする半導体装置である。
請求項24に係る発明は、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法によって形成された膜構造を有することを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る成膜方法及び処理システムによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する遷移金属含有膜形成工程と、元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜を形成する金属膜形成工程とを行って遷移金属含有膜と金属膜との積層構造としたので、例えばこの積層構造上に形成される例えばCu膜に対するバリヤ性及び密着性を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明に係る成膜方法と処理システムの一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
<処理システム>
まず、本発明の成膜方法を実施するための処理システムについて説明する。図1は本発明の処理システムの第1実施形態を示す概略構成図、図2は本発明の処理システムの第2実施形態を示す概略構成図である。
【0031】
まず第1実施形態について説明すると、図1に示すように、この処理システム10は、複数、例えば4つの処理装置12A、12B、12C、12Dと、略六角形状の共通搬送室14と、ロードロック機能を有する第1及び第2ロードロック室16A、16Bと、細長い導入側搬送室18とを主に有している。
【0032】
ここでは、上記4つの処理装置12A〜12Dの内、1つ目の処理装置、例えば処理装置12Aは被処理体である半導体ウエハに対して前処理を行う第1の処理装置12Aとして構成され、2つ目の処理装置、例えば処理装置12Bは半導体ウエハWに対して遷移金属含有膜を形成する第2の処理装置12Bとして構成され、3つ目の処理装置、例えば処理装置12Cは半導体ウエハWに対して元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜を形成する第3の処理装置12Cとして構成され、4つ目の処理装置、例えば処理装置12Dは半導体ウエハWに対して銅膜を堆積させる第4の処理装置12Dとして構成されている。
【0033】
ここで、上記第1及び第4の処理装置12A、12Dは、ここに設けなくてもよく、この処理システム10以外に設けた別の処理装置において上記第1及び第4の処理装置における各処理を行うようにしてもよい。また上記第1の処理装置12Aとしては、一般的な清浄処理装置が用いられ、第4の処理装置12Dとしては熱CVD等の熱成膜処理装置が用いられる。
【0034】
具体的には、略六角形状の上記共通搬送室14の4辺に上記各処理装置12A〜12Dが接合され、他側の2つの辺に、上記第1及び第2ロードロック室16A、16Bがそれぞれ接合される。そして、この第1及び第2ロードロック室16A、16Bに、上記導入側搬送室18が共通に接続される。
【0035】
上記共通搬送室14と上記4つの各処理装置12A〜12Dとの間及び上記共通搬送室14と上記第1及び第2ロードロック室16A、16Bとの間は、それぞれ気密に開閉可能になされたゲートバルブGが介在して接合されて、クラスタツール化されており、必要に応じて共通搬送室14内と連通可能になされている。ここで、この共通搬送室14内は真空引きされている。また、上記第1及び第2各ロードロック室16A、16Bと上記導入側搬送室18との間にも、それぞれ気密に開閉可能になされたゲートバルブGが介在されている。この第1及び第2のロードロック室16A、16Bは真空引き、及び大気圧復帰がウエハの搬出入に伴って繰り返される。
【0036】
そして、この共通搬送室14内においては、上記2つの各ロードロック室16A、16B及び4つの各処理装置12A〜12Dにアクセスできる位置に、屈伸及び旋回可能になされた多関節アームよりなる搬送機構20が設けられており、これは、互いに反対方向へ独立して屈伸できる2つのピック20A、20Bを有しており、一度に2枚のウエハを取り扱うことができるようになっている。尚、上記搬送機構20として1つのみのピックを有しているものも用いることができる。
【0037】
上記導入側搬送室18は、横長の箱体により形成されており、この横長の一側には、被処理体である半導体ウエハを導入するための1つ乃至複数の、図示例では3つの搬入口が設けられ、各搬入口には、開閉可能になされた開閉ドア22が設けられる。そして、この各搬入口に対応させて、導入ポート24がそれぞれ設けられ、ここにそれぞれ1つずつカセット容器26を載置できるようになっている。各カセット容器26には、複数枚、例えば25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるようになっている。このカセット容器26内は、例えば密閉状態になされており、内部にはN ガス等の不活性ガスの雰囲気に満たされている。
【0038】
この導入側搬送室18内には、ウエハWをその長手方向に沿って搬送するための導入側搬送機構28が設けられる。この導入側搬送機構28は、屈伸及び旋回可能になされた2つのピック28A、28Bを有しており、一度に2枚のウエハWを取り扱い得るようになっている。この導入側搬送機構28は、導入側搬送室18内に、その長さ方向に沿って延びるように設けた案内レール30上にスライド移動可能に支持されている。
【0039】
また、導入側搬送室18の一方の端部には、ウエハの位置合わせを行なうオリエンタ32が設けられる。上記オリエンタ32は、駆動モータによって回転される回転台32Aを有しており、この上にウエハWを載置した状態で回転するようになっている。この回転台32Aの外周には、ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ32Bが設けられ、これによりウエハWの位置決め切り欠き、例えばノッチやオリエンテーションフラットの位置方向やウエハWの中心の位置ずれ量を検出できるようになっている。
【0040】
この処理システム10はシステム全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなるシステム制御部34を有している。そして、この処理システム全体の動作制御に必要なプログラムはフレキシブルディスクやCD(Compact Disc)やハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶媒体36に記憶されている。具体的には、このシステム制御部34からの指令により、各ガスの供給の開始、停止や流量制御、プロセス温度(ウエハ温度)プロセス圧力(処理容器内の圧力)の制御、ウエハの搬送作業等が行われる。
【0041】
このように、構成された処理システム10における概略的な動作について説明する。まず、導入ポート24に設置されたカセット容器26からは、未処理の半導体ウエハWが導入側搬送機構28により導入側搬送室18内に取り込まれ、この取り込まれたウエハWは導入側搬送室18の一端に設けたオリエンタ32へ搬送されて、ここで位置決めがなされる。上記ウエハWは例えばシリコン基板よりなり、この表面には凹部2(図14参照)が予め形成されている。
【0042】
位置決めがなされたウエハWは、上記導入側搬送機構18により再度搬送され、第1或いは第2のロードロック室16A、16Bの内のいずれか一方のロードロック室内へ搬入される。このロードロック室内が真空引きされた後に、予め真空引きされた共通搬送室14内の搬送機構20を用いて、上記ロードロック室内のウエハWが共通搬送室14内に取り込まれる。
【0043】
そして、この共通搬送室14内へ取り込まれた未処理のウエハは、まず第1の処理装置12A内に搬入され、ここでウエハWに対して前処理が行われる。この前処理としては、一般的なデガス(degas)処理やウエハ表面の凹部2内の洗浄処理が行われる。この洗浄処理としては、H プラズマ処理、Arプラズマ処理、有機酸を用いたドライクリーニング処理、或いはHot−Wire原子状水素を用いたクリーニング処理等が行われる。
【0044】
この前処理が完了したウエハWは、次に第2の処理装置12B内へ搬入され、ここでウエハWの表面に遷移金属含有膜を形成する遷移金属含有膜形成工程が行われる。この遷移金属含有膜形成工程では、後述するように、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスを用いて熱CVD等の熱処理を行うことにより成膜が行われる。ここで遷移金属としてはMnが用いられ、遷移金属含有膜(Mn含有膜)としてはMnOx膜が形成される。
【0045】
この遷移金属含有膜形成工程が完了したウエハWは、次に第3の処理装置12C内へ搬入され、ここでウエハWの表面に元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜を形成する金属膜形成工程が行われる。この金属膜としては、後述するように例えばRu(ルテニウム)が用いられ、金属膜としてRu膜を形成する。このように、上記MnOx膜とRu膜との層構造でCu膜に対するバリヤ層が形成されることになる。
【0046】
この金属膜形成工程が完了したウエハWは、次に第4の処理装置12D内へ搬入され、ここでウエハWの表面に銅膜を堆積して上記凹部2内を埋め込む埋め込み工程が行われる。そして、この埋め込み工程が完了したならば、この処理システム10での処理は完了することになる。この処理済みのウエハWは、いずれか一方のロードロック室16A又は16B、導入側搬送室18を経由して導入ポート24の処理済みウエハ用のカセット容器26内へ収容されることになる。尚、共通搬送室14内は、ArやHe等の希ガスやドライN 等の不活性ガスの雰囲気で減圧状態になされている。
【0047】
上記処理システムの第1実施形態の場合には、第2の処理装置12Bと第3の処理装置12Cとを別々に設けて、遷移金属含有膜形成工程と金属膜形成工程とをそれぞれ別の処理装置で行うようにしたが、これらの両工程を同一の処理装置内で行うようにしてもよい。このような処理システムが図2に示す第2実施形態である。尚、図2においては、図1に示した構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図2に示すように、ここでは図1中の第2の処理装置12Bに替えて5つ目の処理装置として第5の処理装置12Eを設けており、第3の処理装置12C(図1参照)は設置していない。この第5の処理装置12Eにおいて、後述するように遷移金属含有膜である例えばMnOx膜と金属膜である例えばRu膜とが連続的に成膜されることになる。この場合には、処理装置の設置台数が一台減少した分だけ、設備コストを削減することができる。また第3の処理装置12Cがあった位置に、スループット向上のため第4の処理装置12Dをもう一台設けてもよい。
【0049】
<第2の処理装置12Bの説明>
前述したように、第1の処理装置12Aは一般的な洗浄処理装置なので、その説明は省略し、上記第2の処理装置12Bについて説明する。図3は第2の処理装置の一例を示す構成図である。この第2の処理装置12Bは、遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理によりウエハ表面に遷移金属含有膜を形成する装置であり、ここでは遷移金属含有膜としてMnOx(X:任意の正数)を形成する場合を例にとって説明する。
【0050】
この第2の処理装置12Bは、例えば断面の内部が略円形状になされたアルミニウム製の処理容器132を有している。この処理容器123内の天井部には必要な処理ガス、例えば成膜ガス等を導入するためにガス導入手段であるシャワーヘッド部134が設けられており、この下面のガス噴射面に設けた多数のガス噴射孔136から処理空間Sに向けて処理ガスを噴射するようになっている。
【0051】
このシャワーヘッド部134内には、中空状のガス拡散室138が形成されており、ここに導入された処理ガスを平面方向へ拡散した後、ガス拡散室138に連通されたガス噴射孔136より吹き出すようになっている。このシャワーヘッド部134の全体は、例えばニッケルやハステロイ(登録商標)等のニッケル合金、アルミニウム、或いはアルミニウム合金により形成されている。そして、このシャワーヘッド部134と処理容器132の上端開口部との接合部には、例えばOリング等よりなるシール部材140が介在されており、処理容器132内の気密性を維持するようになっている。
【0052】
また、処理容器132の側壁には、この処理容器132内に対して被処理体としての半導体ウエハWを搬入搬出するための搬出入口142が設けられると共に、この搬出入口142には気密に開閉可能になされたゲートバルブGが設けられている。
【0053】
そして、この処理容器132の底部144に排気空間146が形成されている。具体的には、この容器底部144の中央部には大きな開口148が形成されており、この開口148に、その下方へ延びる有底円筒体状の円筒区画壁150を連結してその内部に上記排気空間146を形成している。そして、この排気空間146を区画する円筒区画壁150の底部152には、これより起立させて円筒体状の支柱154が設けられ、この支柱154の上端部に半導体ウエハWを載置する載置台156が固定されている。
【0054】
また、上記載置台156は、例えばセラミック材や石英ガラスよりなり、この載置台156内には、加熱手段として通電により熱を発生する例えばカーボンワイヤヒータ等よりなる抵抗加熱ヒータ158が収容されて、この載置台156の上面に載置された半導体ウエハWを加熱し得るようになっている。
【0055】
上記載置台156には、この上下方向に貫通して複数、例えば3本のピン挿通孔160が形成されており(図3においては2つのみ示す)、上記各ピン挿通孔160に上下移動可能に遊嵌状態で挿通させた押し上げピン162を配置している。この押し上げピン162の下端には、円形リング形状に形成された例えばアルミナのようなセラミックス製の押し上げリング164が配置されており、この押し上げリング164に、上記各押し上げピン162の下端を固定されない状態にて支持させている。この押し上げリング164から延びるアーム部166は、容器底部144を貫通して設けられる出没ロッド168に連結されており、この出没ロッド168はアクチュエータ170により昇降可能になされている。
【0056】
これにより、上記各押し上げピン162をウエハWの受け渡し時に各ピン挿通孔160の上端から上方へ出没させるようになっている。また、アクチュエータ170の出没ロッド168の容器底部の貫通部には、伸縮可能なベローズ172が介設されており、上記出没ロッド168が処理容器132内の気密性を維持しつつ昇降できるようになっている。
【0057】
そして、上記排気空間146の入口側の開口148は、載置台156の直径よりも小さく設定されており、上記載置台156の周縁部の外側を流下するガスが載置台156の下方に回り込んで開口148へ流入するようになっている。そして、上記円筒区画壁150の下部側壁には、この排気空間146に臨ませて排気口174が形成されており、この排気口174には、真空排気系176が接続される。
【0058】
この真空排気系176は、上記排気口174に接続された排気通路178を有し、この排気通路178には、圧力調整弁180や真空ポンプ182や除害装置(図示せず)等が順次介設され、上記処理容器132内及び排気空間146の雰囲気を圧力制御しつつ真空引きして排気できるようになっている。
【0059】
そして、上記シャワーヘッド部134には、これに所定のガスを供給するために、遷移金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系88が接続されている。具体的には、上記遷移金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系88は、上記ガス拡散室138のガス入口186に接続された原料ガス流路94を有している。
【0060】
この原料ガス流路94は、途中に開閉弁96及びマスフローコントローラのような流量制御器98を順次介設して遷移金属含有原料を収容する第1の原料タンク100に接続されている。
【0061】
そして、この第1の原料タンク100内には、その先端部が第1の原料タンク100の底部近傍に位置されたバブリングガス管114が挿入されている。そして、このバブリングガス管114にはマスフローコントローラのような流量制御器108及び開閉弁106が順次介設されており、バブリングガスを流量制御しつつ第1の原料タンク100内に導入して原料110をガス化して原料ガスを供給するようになっている。そして、発生したこの原料ガスはバブリングガスに随伴されて供給されることになる。
【0062】
上記バブリングガスとしては、ここでは還元ガスであるH ガスを用いている。また、この第1の原料タンク100には、気化を促進させるために原料110を加熱するタンク加熱部112が設けられている。ここでは上記原料110としては、例えばマンガンを含む液体原料である(EtCp) Mn(プリカーサ)を用いることができる。
【0063】
尚、上記バブリング用の上記還元不活性ガスとしてHガスに代えて、Nや He、Ne、Ar等の希ガスからなる不活性ガスを用いることができる。そして、上記原料ガス流路94、これに介設される開閉弁96、流量制御器98には、原料ガスが再凝縮することを防止するためにテープヒータ、アルミブロックヒータ、マントルヒータ或いはシリコンラバーヒータ等(図示せず)が巻回され、これらを加熱するようになっている。
【0064】
また図示されないが、パージ用のガス供給手段が上記シャワーヘッド部134に接続されており、必要に応じてパージガスを供給するようになっている。このパージ用ガスとしては、N ガス、Arガス、Heガス、Neガス等の不活性ガスやH等の還元性ガスを用いることができる。
【0065】
そして、このような装置全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなる制御部206を有しており、上記各ガスの供給の開始と停止の制御、供給量の制御、処理容器40内の圧力制御、ウエハWの温度制御等を行うようになっている。そして、上記制御部206は、上記した制御を行うためのコンピュータプログラムを記憶するための記憶媒体208を有している。上記記憶媒体208としては、例えばフレキシブルディスク、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD(Compact Disc)等を用いることができる。また上記制御部206は、システム制御部34(図1参照)の支配下で動作するようになっている。
【0066】
次に、以上のように構成された第2の処理装置12Bの動作について説明する。まず、半導体ウエハWは、搬送機構20(図1参照)に保持されて開状態となったゲートバルブG、搬出入口142を介して処理容器132内へ搬入され、このウエハWは、上昇された押し上げピン160に受け渡された後に、この押し上げピン160を降下させることにより、ウエハWを載置台156の上面に載置してこれを支持する。
【0067】
次に、遷移金属含有原料ガス供給系88を動作させて、シャワーヘッド部134へ成膜ガスを流量制御しつつ供給して、このガスをガス噴射孔136より噴射し、処理空間Sへ導入する。
【0068】
そして真空排気系176に設けた真空ポンプ182の駆動を継続することにより、処理容器132内や排気空間146内の雰囲気を真空引きし、そして、圧力調整弁180の弁開度を調整して処理空間Sの雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。この時、ウエハWの温度は、載置台156内に設けた抵抗加熱ヒータ158により加熱されて所定のプロセス温度に維持されている。これにより、半導体ウエハWの表面に所望の遷移金属含有膜、すなわちここではMnOx膜が形成されることになる。
【0069】
<第3の処理装置12Cの説明>
次に、上記第3の処理装置12Cについて説明する。尚、前述したように、第4の処理装置12Dは一般的な熱成膜処理装置なので、その説明は省略する。図4は第3の処理装置の一例を示す構成図である。この第3の処理装置12Cは、ウエハ表面にVIII族の元素を含む金属膜を形成する装置であり、ここでは金属膜としてRu膜を形成する場合を例にとって説明する。
【0070】
この第3の処理装置12Cは、その構成はほぼ第2の処理装置12Bと同じで あり原料ガス供給系のみが異なっている。
【0071】
そして、上記シャワーヘッド部134には、これに所定のガスを供給するために、金属膜の原料ガスを供給する原料ガス供給系184が接続されている。具体的には、上記金属膜の原料ガス供給系184は、上記ガス拡散室138のガス入口186に接続された原料ガス流路188を有している。
【0072】
この原料ガス流路188の他端は、ここでは固体状の原料190を収容する第2の原料タンク192に接続されている。また、この原料ガス流路188の途中には、開閉弁194及びこの原料ガス流路188内の圧力を測定する圧力計196が設けられる。この圧力計196としては、例えばキャパシタンスマノメータを用いることができる。上記原料ガス流路188は、ここで用いる原料190の蒸気圧が非常に低くて気化し難いことから、気化を促進させるために比較的大口径になされ、且つ流路長もできるだけ短く設定して第2の原料タンク192内の圧力が処理容器132内の圧力に近くなるように設定している。
【0073】
そして、この第2の原料タンク192内には、その先端部が第2の原料タンク192の底部近傍に位置されたバブリングガス管198が挿入されている。そして、このバブリングガス管198にはマスフローコントローラのような流量制御器200及び開閉弁202が順次介設されており、バブリングガスを流量制御しつつ第2の原料タンク192内に導入して原料190をガス化して原料ガスとするようになっている。そして、発生したこの原料ガスはバブリングガスに随伴されて供給されることになる。
【0074】
上記バブリングガスとしては、ここでは不活性ガスであるN ガスを用いているが、これに代えてCO(一酸化酸素)、或いはHe、Ar等の希ガスを用いてもよい。また、この第2の原料タンク192には、気化を促進させるために原料190を加熱するタンク加熱部204が設けられている。ここでは上記原料190としては、元素周期表のVIII族の元素の一例であるRuを含む粒状固体のルテニウムカルボニル(Ru (CO)12)を用いている。
【0075】
そして、上記原料ガス流路188、これに介設される開閉弁194には、原料ガスが再凝縮することを防止するためにテープヒータ、アルミブロックヒータ、マントルヒータ或いはシリコンラバーヒータ等(図示せず)が巻回され、これらを加熱するようになっている。
【0076】
また図示されないが、パージ用の不活性ガス供給手段が上記シャワーヘッド部134に接続されており、必要に応じてパージガスを供給するようになっている。このパージ用ガスとしては、N ガス、Arガス、Heガス、Neガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0077】
そして、このような装置全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなる制御部206を有しており、上記ガスの供給の開始と停止の制御、供給量の制御、処理容器132内の圧力制御、ウエハWの温度制御等を行うようになっている。そして、上記制御部206は、上記した制御を行うためのコンピュータプログラムを記憶するための記憶媒体208を有している。
【0078】
ここで原料ガスの流量を制御するために、バブリングガスの流量と、原料ガスの流量と、その時の圧力計196の測定値との関係が予め基準データとして記憶媒体208に記憶されており、成膜時には、圧力計196の測定値に基づいてバブリングガスの流量を制御することによって原料ガスの供給量を制御するようになっている。上記記憶媒体208としては、例えばフレキシブルディスク、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD(Compact Disc)等を用いることができる。また上記制御部206は、システム制御部34(図1参照)の支配下で動作するようになっている。
【0079】
次に、以上のように構成された第3の処理装置12Cの動作について説明する。まず、半導体ウエハWは、図示しない搬送アームに保持されて開状態となったゲートバルブG、搬出入口142を介して処理容器132内へ搬入され、このウエハWは、上昇された押し上げピン162に受け渡された後に、この押し上げピン162を降下させることにより、ウエハWを載置台156の上面に載置してこれを支持する。
【0080】
次に、原料ガス供給系184を動作させて、シャワーヘッド部134へ原料ガスを流量制御しつつ供給して、このガスをガス噴射孔136より噴射し、処理空間Sへ導入する。このガスの供給態様については後述するように種々存在する。
【0081】
そして真空排気系176に設けた真空ポンプ182の駆動を継続することにより、処理容器132内や排気空間146内の雰囲気を真空引きし、そして、圧力調整弁180の弁開度を調整して処理空間Sの雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。この時、ウエハWの温度は、載置台156内に設けた抵抗加熱ヒータ158により加熱されて所定のプロセス温度に維持されている。これにより、半導体ウエハWの表面に所望の金属膜、すなわちここではRu膜が形成されることになる。
【0082】
<第5の処理装置12Eの説明>
次に、上記第5の処理装置12E(図2参照)について説明する。図5は第5の処理装置の一例を示す構成図である。尚、図3及び図4に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0083】
この第5の処理装置12Eは、1台の処理装置でMnOx膜とRu膜とを成膜することができるようになっている。この第5の処理装置12Eは、例えば断面 の内部が略円形状になされたアルミニウム製の処理容器40を有している。この処理容器40内の天井部には必要な処理ガス、例えば成膜ガス等を導入するためにガス導入手段であるシャワーヘッド部42が設けられており、この下面のガス噴射面に設けた多数のガス噴射孔42A、42Bから処理空間Sに向けて処理ガスを噴射するようになっている。
【0084】
このシャワーヘッド部42内には、中空状の2つに区画されたガス拡散室44A、44Bが形成されており、ここに導入された処理ガスを平面方向へ拡散した後、各ガス拡散室44A、44Bにそれぞれ連通された各ガス噴射孔42A、42Bより吹き出すようになっている。すなわち、ガス噴射孔42A、42Bはマトリクス状に配置されており、各ガスの噴射孔42A、42Bより噴射された各ガスを処理空間Sで混合するようになっている。
【0085】
尚、このようなガス供給形態をポストミックスと称す。このシャワーヘッド部42の全体は、例えばニッケルやハステロイ(登録商標)等のニッケル合金、アルミニウム、或いはアルミニウム合金により形成されている。そして、このシャワーヘッド部42と処理容器40の上端開口部との接合部には、例えばOリング等よりなるシール部材46が介在されており、処理容器40内の気密性を維持するようになっている。
【0086】
そして、上記シャワーヘッド部42には、これに所定のガスを供給するために、遷移金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給系88と金属膜の原料ガスを供給する原料ガス供給系184が接続されている。具体的には、上記遷移金属含有原料ガス供給系88は、上記2つのガス拡散室の内の一方のガス拡散室44Aのガス入口92に接続された原料ガス流路94を有している。また上記金属膜の原料ガスを供給する原料ガス供給系184は、上記ガス拡散室の内の他方のガス拡散室44Bのガス入口102に接続された原料ガス流路188を有している。
【0087】
また図示されないが、パージ用の不活性ガス供給系が上記シャワーヘッド部42に接続されており、必要に応じてパージガスを供給するようになっている。このパージ用ガスとしては、N ガス、Arガス、Heガス、Neガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0088】
この場合、上記遷移金属含有ガス供給系88のガス流路94と上記原料ガス供給系184のガス流路188を、別々のガス入口92と102に接続している(ポストミックス)が、図3、図4に示すようなガス拡散室を1つだけもったシャワーヘッド部に、これら両ガス流路を接続(プリミックス)してもよい。
【0089】
この第5の処理装置12Eによれば、この1台の処理装置で上述したようにMnOx膜とRu膜とをそれぞれ成膜することができるのみならず、後述するように、Mn含有原料ガスとRu含有原料ガスとを同時に流すことにより、MnとRuとの混合層を形成することができる。
【0090】
<本発明の成膜方法>
次に、図1乃至図5に示したような処理システムや処理装置を用いて行われる本発明の成膜方法について具体的に説明する。図6は半導体ウエハの凹部を中心とした各工程における薄膜の堆積状況の一例を示す図、図7は本発明方法の基本的な各工程を示すフローチャート、図8は埋め込み工程を実施するための各種態様を示す図、図9は金属膜形成工程を実施する時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャート、図10はMnとRuとを含む混合層を形成する時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャート、図11はシード膜を形成した時の凹部の最終的な埋め込み状態を示す断面図、図12は半導体ウエハの凹部の底部において埋め込み金属と配線層とが直接接続された状態を示す断面図、図13はMnとRuとを含む混合層を形成した時の凹部の最終的な埋め込み状態を示す断面図である。
【0091】
本発明の目的の1つは、バリヤ層の一部を形成する遷移金属含有膜やMnバリヤ膜と、凹部2の埋め込み膜であるCu膜と間にVIII族のRu膜を介在させて、Cu膜に対するバリヤ性を高く維持し、且つCu膜の密着性も高く維持することである。ここで遷移金属含有膜とは、第2の処理装置12B或いは第5の処理装置12Eで成膜されたMn膜、MnOx膜等であり、Mnバリヤ膜とは下地膜との境界部分に形成されたMnOx膜、MnSixOy膜等である。
【0092】
まず、図1或いは図2に示す処理システム10内へウエハWが搬入される時には、図6(A)に示すように、ウエハWに形成された、例えば層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、トレンチやホールのような凹部2が形成されており、この凹部2の底部に銅等よりなる下層の配線層3が露出している。
【0093】
具体的には、この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがコンタクトホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。下地膜となる上記絶縁層1は、シリコンを含む酸化物、窒化物などからなり、例えばSiO よりなる。
【0094】
さて、本発明方法では、このような状態の半導体ウエハWの表面に、まず前処理としてデガス処理や洗浄処理を施して凹部2内の表面をクリーニングする。この洗浄処理は第1の処理装置12A(図1参照)にて行われる。この洗浄処理としては、前述したようにH プラズマ処理、Arプラズマ処理、有機酸を用いたドライクリーニング処理、或いはHot−Wire原子状水素を用いたクリーニング処理などが適用される。
【0095】
このように、ウエハWに対する前処理が完了したならば、次に成膜過程へ移行する。まず、最初に上記前処理後のウエハWの表面に、図6(B)に示すように遷移金属含有膜210を形成する遷移金属含有膜形成工程を施す(図7中のS1)。この工程は第2の処理装置12B、或いは第5の処理装置12E(図2参照)で行う。これにより、上記凹部2内の底部を除き、凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に遷移金属含有膜210が形成される。この遷移金属含有膜210は、ここでは主にMnOx膜、或いはMn膜よりなり、下地の絶縁層1との境界部分ではMnバリヤ膜であるMnOxまたはMnSixOy(x、yは任意の正数)が形成される。
【0096】
また、上記遷移金属含有膜210の形成は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法が望ましいが、ALD法(Atomic Layered Deposition)法でもよい。ここで、上記ALD法とは、異なる成膜用ガスを交互に供給して原子レベル、或いは分子レベルの薄膜を1層ずつ繰り返し形成して積層させる成膜方法をいう。
【0097】
上記遷移金属含有膜形成工程が完了したならば、次に、図6(C)に示すように、金属膜形成工程(図7中のS2)を行ってウエハWの表面に元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜212を形成する。この工程は、第3の処理装置12C、或いは第5の処理装置12Eで行う。これにより、上記凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に金属膜212が形成されることになり、そして、上記遷移金属含有膜210と、この金属膜212とでバリヤ層214が形成されることになる。
【0098】
上記金属膜212は、ここでは例えばRu膜よりなる。また、上記金属膜212の形成は、CVD法、ALD法、スパッタ法のいずれを用いてもよい。尚、スパッタ法を行う場合には、第3の処理装置12Cとしては、Ru金属をターゲットとしてスパッタリングを行うスパッタ成膜装置を用いる。
【0099】
上記金属膜形成工程が完了したならば、次に、図6(D)に示すように埋め込み工程を行って凹部2内を埋め込み金属216により埋め込む(図7中のS3)。この埋め込み工程は、第4の処理装置12Dで行う。これにより、上記凹部2内を完全に埋め込むと同時にウエハ表面全体に埋め込み金属216が形成されることになる。この埋め込み金属216としては、ここではCu(Cu膜)が用いられる。
【0100】
上記埋め込み金属216の形成は、CVD法、ALD法、PVD(スパッタ)法、超臨界CO 法、メッキ法のいずれを用いてもよい。尚、メッキ法や超臨界CO 法による埋め込み処理を行う場合には、第4の処理装置12DにてCuシード膜を堆積し、この処理システム10の外に設けた処理装置にてこの埋め込み処理を行ってもよい。
【0101】
また、上記金属膜212であるRu膜は、Cuに対してシード膜としての機能も併せ持つので、Cuメッキ、超臨界Cu成膜を行う場合には、Cuシード膜を施すことなくRu膜上にCuを堆積することができる。ただし、Cuの堆積を確実に行うために、上記Ru膜上に、従来方法と同様にCuシード膜を施した後にCuメッキ、超臨界Cu成膜を行うようにしてもよく、この場合には、断面構造は図11に示すようになり、Ru膜の金属膜212とCuよりなる埋め込み金属216との間にシード膜218が介在された構造となる。以上のようにして、成膜処理は終了することになり、以後は、ウエハ表面上の余分な埋め込み金属216等をCMP処理により削り取ることになる。
【0102】
このように、被処理体、例えば半導体ウエハWの表面に薄膜を形成する成膜方法において、遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜210を形成する遷移金属含有膜形成工程と、元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜212を形成する金属膜形成工程とを行って遷移金属含有膜210と金属膜212との積層構造としたので、例えばこの積層構造上に形成される例えばCu膜に対するバリヤ性及び密着性を高く維持することができる。
【0103】
ここで上記各工程について、詳しく説明する。まず、第2の処理装置12Bを用いて遷移金属含有膜210(MnOx膜、Mn膜等のMn含有膜)を形成する遷移金属含有膜形成工程(S1)の場合には、CVD法で行うのが好ましい。
【0104】
具体的には、Mn含有原料ガスを還元ガスである水素でバブリングして供給し、熱CVD法によりMn含有膜を形成する。この場合には、Mn含有原料ガスが下地のSiOからなる絶縁層の表面または表面近傍の酸素成分や水分と反応し て、或いはSiO 中のO(酸素)と反応して、最終的にMnOx膜が形成されることになる。
【0105】
ただし、この場合、凹部2のホール2Bの底部は、Cuよりなる配線層3が露出しており、その表面は前処理により銅酸化物が除去されているので、CVD−MnOxの成長選択性によりMn膜がほとんど堆積せず、またMn含有原料ガスからMn原子が分離したとしてもMnはCu中に固溶・拡散するためMnOx膜を形成することはないので、このホール2Bの底部では埋め込み金属216であるCu膜と配線層3のCuとが直接的に、或いは金属のRu膜を介して接合されることになる。従って、この接合部は金属コンタクトの状態になって電気抵抗の比較的大きいMnOx膜が介在しないような状態となっているので、その分、この接合部のコンタクト抵抗を小さくすることができる。
【0106】
この時の凹部2の断面形状は図12に示されており、凹部2のホール2Bの底部では、配線層3と金属膜212であるRu膜とが直接的に接続されて良好な状態となっている。また、この時のプロセス条件は、プロセス温度(ウエハ温度「以下同じ」)が70〜450℃、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。またMn含有原料ガスの流量は特に制限はないが、成膜速度等を考慮すると0.1〜10sccm程度である。
【0107】
次に、金属膜212(Ru膜)を形成する金属膜形成工程(S2)の場合には、図7のS2において説明したように、CVD法とALD法とスパッタ法の3種類がある。第1の方法であるCVD法は、図9(A)又は図9(B)に示すような方法で行われる。すなわち、図9(A)に示す成膜方法は図4に示す第3の成膜装置12C、或いは図5に示す第5の成膜装置12Eを用いて行われる。
【0108】
図9(A)に示す成膜方法では、ルテニウムカルボニルよりなる原料190を気化して作ったRu含有原料ガスを、バブリングガスと共に流し、CVD法により熱分解させてRu膜よりなる金属膜212を形成する。この時のプロセス条件は、プロセス圧力が0.1mTorr〜200mTorrの範囲内、より好ましくは2mTorr〜50mTorrの範囲内、プロセス温度が50〜500℃の範囲内、より好ましくは150℃〜350℃である。
【0109】
またガス流量の制御は、前述したように圧力計196の測定値に基づいてバブリングガスの流量を制御することによって行う。例えばバブリングガスの流量は0.1〜1000sccmの範囲内である。
【0110】
また、図9(B)に示すCVD法では還元ガスとしてH を用いている。尚、このH を用いたCVD法は、図4に示す第3の処理装置12Cにおいて、更にH ガス供給系をシャワーヘッド部134に追加して接続した処理装置を用いる。
【0111】
この場合には、Ru含有原料ガスとH ガスとを同時に流し、H ガスによりRu含有原料ガスの分解乃至還元を促進させるようにしてRu膜よりなる金属膜212を形成する。この場合には、還元ガスを供給した分だけRu膜の材料特性を改善させる効果、例えばRu膜の電気抵抗の低減等、がある。この時のプロセス圧力やプロセス温度等のプロセス条件は、図9(A)において説明した内容と同じである。
【0112】
また図9(C)に示す第2の方法であるALD法では、図9(B)にて説明した処理装置を用い、Ru含有原料ガスと還元ガスであるH ガスとを交互に間欠的に流し、原子レベル、或いは分子レベルの薄膜を積層させてRu膜よりなる金属膜212を形成する。
【0113】
この時のプロセス圧力やプロセス温度等のプロセス条件は、図9(A)において説明した内容と同じである。尚、ここで上記還元ガスはH に限定されず、COやシリコン含有ガス、ボロン含有ガス、窒素含有ガス等を用いることができる。シリコン含有ガスとしては例えばSiH 、Si 、SiCl 等であり、ボロン含有ガスとしては例えばBH 、B 、B 等であり、窒素含有ガスとしては例えばNH である。
【0114】
また第3の方法であるスパッタ法の場合には、前述したように第3の処理装置12Cとしてスパッタ成膜装置を用い、Ru金属をターゲットとしてスパッタリング処理によりウエハWの表面にRu膜を形成する。
【0115】
次に、凹部2の埋め込みを行う埋め込み工程(S3)の場合には、図8に示すようにCVD法とALD法とPVD(スパッタ)法とメッキ法と超臨界CO 法の5種類がある。また、メッキ法や超臨界CO 法を用いる場合には、埋め込み処理を行う前にCu等の導電性金属からなるシード膜を形成するようにしてもよい。また、埋め込み処理を行った後に、アニール処理を行うのが好ましい。
【0116】
第1の方法であるCVD法の場合には、Cu含有原料ガスと還元ガスとしてのH ガスとを同時に流し、CVD法によりCu膜を形成して凹部2の埋め込みを行う。第2の方法であるALD法の場合には、Cu含有原料ガスとH ガスとを、例えば図9(C)にて説明したと同様に交互に繰り返し流すようにする。あるいはH ガスは流さずに、Cu含有原料ガスを間欠的に流し、単なる熱分解反応によりCu膜よりなるCu膜を形成してもよい。
【0117】
この時のプロセス条件は(CVD処理の場合も含む)、プロセス温度が70〜350℃程度、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。またCu含有原料ガスの流量は1〜100sccm程度、H ガスの流量は5〜500sccm程度である。
【0118】
特に、上記CVD法やALD法の場合には、メッキ法よりも微細な凹部の内壁に薄膜が堆積し易くなるので、凹部が更に微細化しても、内部にボイド等を生ぜしめることなく凹部の埋め込みを行うことができる。またアニール処理を行う場合には、上記埋め込み処理が完了したウエハWを、所定の濃度の酸素含有ガスの雰囲気中で所定のプロセス温度、例えば100〜450℃程度に加熱し、これにより、Mn含有膜と下地膜となるSiO 膜よりなる絶縁層1との境界部分に、自己整合的にバリヤ性を高めるMnバリヤ膜(MnOx膜、MnSixOy膜等)を確実に形成する。
【0119】
このアニール処理は、上記Mnバリヤ膜を確実に形成することを目的としており、従って、前工程でMnバリヤ膜の自己形成にとって十分に高い温度、例えば100〜150℃以上の高温のプロセス温度で行われていれば、上記Mnバリヤ膜はすでに十分な厚さで形成された状態となっているので、上記アニール処理を不要とすることができる。ここで上記Cu含有原料ガスとしては、特開2001−053030号公報に示されているようなCu(I)hfac TMVS(銅錯体)、Cu(hfac) 、Cu(dibm) 等を用いることができる。
【0120】
以上のように、本発明では、被処理体の表面に薄膜を形成する成膜方法において、遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する遷移金属含有膜形成工程と、元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜を形成する金属膜形成工程とを行って遷移金属含有膜と金属膜との積層構造としたので、例えばこの積層構造上に形成される例えばCu膜に対するバリヤ性及び密着性を高く維持することができる。
【0121】
また、上述した大部分の一連の処理を同一の処理システム内で、すなわちin−situで大気曝露することなく連続処理を行うことができるので、スループットを向上させることができるとともに膜質や密着性の向上を図ることができる。
尚、上記各実施形態では、VIII族の元素としてRuを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、他のZZ族の元素、例えばFe、Co、Ni、Rh、Pd、Os、Ir、Ptとよりなる群から選択される1つ或いはこれらの合金も用いることができる。
【0122】
実際に、上記VIII族の元素を中心として銅膜との密着性について評価実験を行ったところ、良好な結果が得られた。この評価実験では、下記に示す各元素の金属膜をスパッタ法や蒸着法で形成し、その上にCu膜を形成し、これをテープテストで引き剥がす実験を行った。すなわち、VIII族以外の元素であるTi、Ta、Ag、Au膜に関しては、十分な密着性が得られなかったが、VIII族の元素であるRu、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptについては、高い密着性を有しており、本発明の有効性を確認することができた。また同じVIII族の元素であるFe、Osについてはデータが得られていないが、これらについても高い密着性を有するものと思われる。
【0123】
また上記実施形態では、Mn含有膜と、この上層のRu膜とが明確に分離されている場合を例にとって説明したが、これに限定されず、上記両膜の境界部分でMnとRuとの混合層を形成するようにしてもよい。このような混合層は、図5に示す第5の処理装置12Eを用いて、図10に示すように、Mn含有原料ガスを当初は規定量流してMn膜(MnOx膜)を形成し、途中から、すなわち遷移金属含有膜形成工程から金属膜形成工程への移行時にはMn含有原料ガスの供給量を流量ゼロに向けて次第に減少させつつRu含有原料ガスの供給量を次第に増加させてRu含有原料ガスの供給量を最終的に規定量流すようにする。
【0124】
この結果、図13に示すように、Mn含有膜210とRu膜の金属膜212との間に両元素の混合層222を形成することができる。この場合には、Mn含有膜210とRu膜212との密着性の更なる向上を図ることができる。
【0125】
尚、上記実施形態では、熱CVD及び熱ALDによる成膜方法を例にとって説明したが、これに限定されず、プラズマCVD、プラズマALD、紫外線やレーザ光を用いた光CVD、光ALD等による成膜方法を用いてもよい。
【0126】
また、上記Mn含有原料を用いた有機金属材料としては、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH )Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(hfac) [=Mn(C HF ]、((CH Cp Mn[ =Mn((CH ]よりなる群から選択される1以上の材料を用いることができる。また有機金属材料の他にも、金属錯体材料を用いることができる。
【0127】
また、ここでは下地膜である絶縁層1としてSiO を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、膜中にO(酸素)またはC(炭素)を含む層間絶縁層として用いられるLow−k(低比誘電率)材料であるSiOC膜、SiCOH膜等を用いるようにしてもよく、具体的には、上記下地膜は、SiO 膜(熱酸化膜とプラズマTEOS膜を含む)とSiOF膜とSiC膜とSiN膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つの或いはこれらの積層膜を用いることができる。これら層間絶縁膜中のO、Cは、例えばMn膜との境界部分において、Mn酸化物、あるいはMnカーバイトを形成し、バリヤ機能を発揮することになる。
【0128】
更には、ここでは遷移金属としてMnを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、他の遷移金属、例えばNb、Zr、Cr、V、Y、Pd、Ni、Pt、Rh、Tc、Al、Mg、Sn、Ge、Ti、Reよりなる群から選択される1以上の金属を用いることができる。
【0129】
また、ここで説明した各処理装置は単に一例を示したに過ぎず、例えば加熱手段として抵抗加熱ヒータに代えてハロゲンランプ等の加熱ランプを用いるようにしてもよいし、熱処理装置は枚葉式のみならずバッチ式のものであってもよい。
【0130】
更には、熱処理による成膜に限定されず、例えばシャワーヘッド部42、134を上部電極とし、載置台60、156を下部電極として両電極間に高周波電力を必要に応じて印加してプラズマを立てるようにし、成膜時にプラズマによるアシストを加えるようにしてもよい。更に、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【0131】
また本願発明のCVD法による遷移金属含有膜によれば、半導体ウエハ上に大小さまざまのトレンチ、ホールが混在していても、全ての凹部に対して十分に薄くて均一な自己整合バリヤ膜が形成できる。このためCu多層配線において、下層のローカル配線から上層のグローバル配線に亘り本発明の技術を適用することができ、Cu多層配線の微細化が可能となる。これにより得られる効果として、半導体装置(デバイス)の高速化、微細化などにより、小型でありながら高速で信頼性のある電子機器を作ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の処理システムの第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の処理システムの第2実施形態を示す概略構成図である。
【図3】第2の処理装置の一例を示す構成図である。
【図4】第3の処理装置の一例を示す構成図である。
【図5】第5の処理装置の一例を示す構成図である。
【図6】半導体ウエハの凹部を中心とした各工程における薄膜の堆積状況の一例を示す図である。
【図7】本発明方法の基本的な各工程を示すフローチャートである。
【図8】埋め込み工程を実施するための各種態様を示す図である。
【図9】金属膜形成工程を実施する時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャートである。
【図10】MnとRuとを含む混合膜を形成する時の各ガスの供給状態を示すタイミングチャートである。
【図11】シード膜を形成した時の凹部の最終的な埋め込み状態を示す断面図である。
【図12】半導体ウエハの凹部の底部において埋め込み金属と配線層とが直接接続された状態を示す断面図である。
【図13】MnとRuとを含む混合膜を形成した時の凹部の最終的な埋め込み状態を示す断面図である。
【図14】半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。
【符号の説明】
【0133】
1 絶縁層
2 凹部
3 配線層
10 処理装置
12A,12B,12C,12D,12E 処理装置
14 共通搬送室
18 導入側搬送室
20 搬送機構
34 システム制御部
36 記憶媒体
40 処理容器
42 シャワーヘッド部(ガス導入手段)
62 加熱手段
88 遷移金属含有原料ガス供給系
90 酸素含有ガス供給系
100 水蒸気源
120 還元ガス源
122 制御部
124 記憶媒体
132 処理容器
134 シャワーヘッド部(ガス導入手段)
184 原料ガス供給系
192 第2の原料タンク
206 制御部
208 記憶媒体
210 遷移金属含有膜(MnOx膜)
212 金属膜(Ru膜)
214 バリヤ層
216 埋め込み金属(Cu)
218 シード膜
222 混合膜
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引き可能になされた処理容器内で、表面に凹部を有する被処理体の表面に成膜処理を施す成膜方法において、
遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する遷移金属含有膜形成工程と、
元素周期表のVIII族の元素を含む金属膜を形成する金属膜形成工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記熱処理は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法であることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記熱処理は、前記原料ガスと還元ガスとを用いる熱CVD法であることを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記金属膜形成工程では、熱処理が行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記熱処理は、CVD法であることを特徴とする請求項4記載の成膜方法。
【請求項6】
前記遷移金属含有膜形成工程と前記金属膜形成工程とは同一の処理容器内で連続的に行われ、
前記両工程の移行時には前記遷移金属含有原料ガスの供給量を次第に減少させつつ前記VIII族の元素を含むVIII族原料ガスの供給量を次第に増加させるようにして前記遷移金属と前記VIII族の元素とを含む混合層を形成するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記金属膜形成工程では、スパッタ法により成膜が行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記金属膜形成工程の後に、銅膜を堆積して前記凹部内に埋め込む埋め込み工程を行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記埋め込み工程は、CVD法により行うことを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
前記埋め込み工程は、メッキ法により行うことを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
【請求項11】
前記埋め込み工程は、スパッタ法により行うことを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
【請求項12】
前記埋め込み工程の後に、前記被処理体をアニールするアニール工程を行うことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記薄膜の下地膜は、SiO 膜とSiOF膜とSiC膜とSiN膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記凹部の下部には、配線層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記遷移金属含有原料は、有機金属材料、或いは金属錯体材料よりなることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記遷移金属は、マンガン(Mn)よりなり、該マンガンを含む有機金属材料は、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH)Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM)[=Mn(C1119]、Mn(acac)[=Mn(C]、Mn(hfac)[=Mn(CHF]、((CHCp)Mn[=Mn((CH]よりなる群から選択される1以上の材料であることを特徴とする請求項15記載の成膜方法。
【請求項17】
前記熱処理ではプラズマが併用されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記VIII族の元素は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptよりなる群から選択される1以上の元素であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項19】
被処理体の処理システムにおいて、
前記被処理体の表面に遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する処理装置と、
前記被処理体の表面に元素周期表のVIII族の原素を含む金属膜を形成する処理装置と、
前記被処理体の表面に、銅膜を形成する処理装置と、
前記各装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項20】
被処理体の処理システムにおいて、
前記被処理体の表面に、遷移金属含有原料ガスを用いて熱処理により遷移金属含有膜を形成する成膜処理と、元素周期表のVIII族の原素を含む金属膜を形成する成膜処理とを行う処理装置と、
前記被処理体の表面に、銅膜を形成する処理装置と、
前記各処理装置が連結された共通搬送室と、
前記共通搬送室内に設けられて、前記各処理装置内へ前記被処理体を搬送するための搬送機構と、
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように処理システム全体を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項21】
請求項19記載の処理システムを用いて請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。
【請求項22】
請求項20記載の処理システムを用いて請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するように制御するコンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。
【請求項23】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法によって形成された膜構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項24】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の成膜方法によって形成された膜構造を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−21447(P2010−21447A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182062(P2008−182062)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】