説明

樹脂成型品とその成型方法、および、発光装置とその製造方法

【課題】不要な不純物、ガス等の取り込み量が少なく、保管中の環境の影響(吸湿等)を受け難い波長変換用樹脂成型品及びそれを用いたトランスファーモールドによる発光素子を被覆した発光装置を提供する。
【解決手段】波長変換用樹脂のキャスティング成型品20は、熱硬化性および透光性を有する液状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーが分散された成型材料20´が、トランスファーモールドに使用される所定の形状にキャスティング成型され、かつ、外面が合成樹脂製のシート23およびフィルム24によりラッピングされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型品とその成型方法、およびその樹脂成型品を用いてトランスファーモールド法により半導体発光素子を樹脂で被覆した発光装置とその製造方法に係り、特に波長変換物質を含む樹脂成型品およびその成型方法に関するもので、例えば白色発光ダイオードの製造に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
発光装置の製造に際して、トランスファーモールド法により半導体発光素子を樹脂で被覆する場合、タブレットあるいはペレットと称される樹脂成型品を金型内にセットする。この場合、例えば白色発光ダイオードの製造に用いられる樹脂成型品は、樹脂と、波長変換用の蛍光体と、無機フィラーとを含む。このような樹脂成型品の製造方法として、乾式方法と湿式方法(例えば特許文献1)が知られている。
【0003】
乾式方法は、パウダー状の樹脂、蛍光体、無機フィラーを混合して打錠により成型するものである。これに対して、湿式方法は、例えば特許文献1に開示されているように、透光性液状樹脂中に蛍光体粉末を湿式分散処理することにより蛍光体粉末が分散されたモールディング化合物樹脂体を形成する段階と、上記モールディング化合物樹脂体を粉末状に粉砕した後、上記樹脂粉末に所定の圧力を与えてタブレット状の波長変換用モールディング化合物を例えば打錠により成型するものである。
【0004】
上記湿式方法によれば、透光性液状樹脂内に蛍光体粉末を均一に分散させた波長変換用モールディング化合物樹脂タブレットを製造でき、上記モールディング化合物樹脂タブレットを用いたトランスファーモールディング法により白色発光ダイオードを製造することができる。しかし、タブレット状のモールディング化合物を形成する際、予め形成した樹脂体を粉末状に粉砕した後、打錠するので、製造工程が多くなって製造コストが高くなるという問題がある。しかも、樹脂体の粉砕、打錠の工程で、不要な不純物(金属)、空気、ガス等の外部雰囲気を取り込んでしまうので、このような工程を経たタブレットを用いてトランスファーモールディング法により発光ダイオードの被覆部を形成すると、コンタミネーション不良やボイドが発生し、被覆部の膜厚にばらつきが発生し、色むらが発生するおそれがある。また、従来は、タブレット状のモールディング化合物を形成した後の保管中に湿気を吸うので、このようなタブレットを用いたトランスファーモールディング工程により白色発光ダイオードの被覆部を形成すると、被覆部の膜質にばらつきが発生し、色むらが発生するおそれがある。
【特許文献1】特開2005−145049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記した従来の問題点を解決すべくなされたもので、不要な不純物、ガス等の取り込み量が少なく、保管中の環境の影響(吸湿等)を受け難い波長変換用樹脂成型品およびそれを用いたトランスファーモールドによる発光素子を被覆した発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波長変換用樹脂成型品は、熱硬化性および透光性を有する液状および/または固形状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーが分散された成型材料が、トランスファーモールドに使用される所定の形状にキャスティングされ、かつ、外面が合成樹脂製のシートおよび/またはフィルムからなるシート状部材によりラッピングされてなる。ここで、前記波長変換物質は例えば蛍光体粉末であり、成型用樹脂は例えばエポキシ樹脂であり、ラッピングシートは例えばポリプロピレン樹脂であり、フィルムは例えばポリプロピレン樹脂である。また、前記波長変換用樹脂成型品を、さらに粉末状に粉砕した後に打錠により成型した波長変換用樹脂成型品である。また、キャスティング成型品は、室温で固形あるいはゲル状であってもよい。また、樹脂成型品は、トランスファーモールドで使用される既存のタブレットあるいはペレットとの形状互換性を持たせることが望ましい。
【0007】
本発明の波長変換用樹脂成型品の成型方法は、熱硬化性および透光性を有する液状および/または固形状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーを分散させて混練した成型材料を準備する工程と、キャスティング成型用の金型の下型の凹部内に合成樹脂製のケースを嵌合させる工程と、前記キャスティング成型用の金型の下型のケース部からケース周辺部にかけて合成樹脂製のラッピングシートを載置し、前記キャスティング成型用の金型の上型の内面に離型フィルムをセットする工程と、前記ケース内に上方から前記成型材料を充填し、前記キャスティング成型用の金型により前記成型材料をキャスティング成型すると同時にキャスティング成型品を前記ラッピングシートおよび離型フィルムでラッピングする工程と、前記キャスティング成型用の金型からラッピング状態のキャスティング成型品を離す離型工程と、を具備する。また、本発明の波長変換用樹脂成型品の成型方法は、熱硬化性および透光性を有する液状および/または固形状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーを分散させて混練した成型材料を準備する工程と、キャスティング成型用の金型の下型の凹部内に合成樹脂製のケースを嵌合させる工程と、前記キャスティング成型用の金型の下型のケース部からケース周辺部にかけて合成樹脂製のラッピングシートを載置する工程と、前記ケース内に上方から前記成型材料を充填し、前記キャスティング成型用の金型により前記成型材料をキャスティング成型する工程と、前記キャスティング成型品を前記ラッピングシートでラッピングする工程と、前記キャスティング成型用の金型からラッピング状態のキャスティング成型品を離す離型工程と、を具備する。ここで、前記ケースの材料は例えばポリプロピレン樹脂、成型用樹脂は例えばエポキシ樹脂、シートの材料は例えばポリプロピレン樹脂、フィルムの材料は例えばポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂である。また、液状の成型用樹脂中に波長変換物質およびフィラーを分散させて混練した成型材料は、50℃〜150℃において粘度が1000cP以上であることが望ましい。
【0008】
本発明の発光装置の製造方法は、発光素子が搭載された基板に対して、熱硬化性および透光性を有する成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーが分散されたキャスティング成型品からなる波長変換用樹脂成型品を用いてトランスファーモールドを行い、前記基板上の発光素子を樹脂により被覆する。
【0009】
本発明の発光装置は、発光素子と、前記発光素子が搭載された基板と、内部に波長変換物質および/またはフィラーが分散されたキャスティング成型品からなる波長変換用樹脂成型品を用いてトランスファーモールドが行われることによって前記基板上の発光素子を被覆した透光性の樹脂層と、を具備する。ここで、前記発光素子として例えば青色発光ダイオードチップが使用され、前記蛍光物質として例えばアルミン酸塩蛍光体が使用されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の波長変換用樹脂成型品によれば、透光性樹脂中に波長変換物質等を均一に分散させることができ、不要な不純物、ガス等の取り込み量が少なく、保管中の吸湿のおそれがなく、取り扱いが容易であり、トランスファーモールディング法による発光素子の樹脂被覆に用いて好適なラッピングされた状態の樹脂成型品を提供することができる。
【0011】
請求項2乃至5記載の波長変換用樹脂成型品は、構成部材である波長変換物質、成型用樹脂、シート、フィルムの適切な具体例を例示したものである。
【0012】
請求項6記載の樹脂成型品によれば、前記波長変換用樹脂成型品さらに粉末状に粉砕した後に打錠により成型することにより、モールディング化合物樹脂体を粉末状に粉砕した後で打錠により成型した従来の成型品における不要な不純物、ガス等の取り込み量の最小値よりも、不要な不純物、ガス等の取り込み量が少ないので、トランスファーモールディング法による発光素子の樹脂被覆に用いた場合に、樹脂被覆部のコンタミネーション不良やボイド発生を抑制でき、光取り出し効率の良い発光装置が得られる。
【0013】
請求項7および8記載の波長変換用樹脂成型品の成型方法によれば、透光性液状樹脂中に波長変換物質等を分散処理する湿式方法を用い、かつ、キャスティング成型とラッピングを同時に行う簡単な工程によって、取り扱いが容易で保管中の環境の影響を受け難いラッピングされた状態の波長変換用樹脂成型品を低コストで実現することができる。また、粉末状の粉砕や打錠成型を行う必要がないので、不要な不純物、ガス等の取り込み量が少ない樹脂成型品を実現できるという利点がある。また、キャスティングによる樹脂成型品は、トランスファーモールドで使用される既存のタブレットあるいはペレットとの形状互換性を持たせることが望ましく、そのためには、前記ケースの形状を例えば有底円筒状とすれば、円柱状のキャスティング成型品を得ることができる。
【0014】
請求項9乃至12記載の波長変換用樹脂成型品の成型方法は、使用部材であるケース、成型用樹脂、シート、フィルムの適切な具体例を例示したものである。
【0015】
請求項13記載の成型方法によれば、成型材料は50℃〜150℃で粘度が1000cP以上であり、液状の成型用樹脂中に波長変換物質およびフィラーを均一に分散させた状態を維持することができる。
【0016】
請求項14記載の発光装置の製造方法によれば、本発明の波長変換用樹脂成型品を用いてトランスファーモールディング法により半導体発光素子を波長変換用樹脂で被覆することによって、樹脂被覆部のコンタミネーション不良やボイド発生を抑制でき、樹脂被覆部の膜厚や膜質にばらつきが少なく、色むらが少ない発光装置を低コストで実現することができる。
【0017】
請求項15記載の発光装置の製造方法によれば、波長変換用樹脂成型品は、室温で固形あるいはゲル状であり、取り扱いが容易である。
【0018】
請求項16記載の発光装置によれば、本発明の波長変換用樹脂成型品を用いてトランスファーモールディング法により形成された波長変換用樹脂の被覆部を有するので、樹脂被覆部のコンタミネーション不良やボイド発生を抑制でき、樹脂被覆部の膜厚や膜質にばらつきが少なく、色むらを少なくすることができる。
【0019】
請求項17記載の発光装置によれば、青色発光ダイオードチップとアルミン酸塩蛍光体が使用されており、白色系発光装置を安価に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の概要を工程順に示す説明図である。まず、熱硬化性および透光性を有する液状の成型用樹脂中に波長変換物質、フィラーを分散させて混練するブレンド工程を実施し、成型材料20´を準備する。次に、キャスティング成型用の金型21、合成樹脂製のケース22およびラッピングシート23、離型フィルム24を用いて、成型材料20´を所定の形状にキャスティング成型すると同時にラッピングシート23およびフィルム24でラッピングする。または、成型材料20´を所定の形状にキャスティング成型すると同時にラッピングシート23を折り畳むなどしてラッピングする。この後、ラッピング状態のキャスティング成型品20を金型21から離型させ、保管しておく。この場合、キャスティング成型品20は、トランスファーモールドで使用する際に適した形状に形成しておく。そして、キャスティング成型品20を使用する時には、ラッピングシート23およびフィルム24を剥離し、ベア状態の波長変換用樹脂成型品20を用いて通常のトランスファーモールディング法により半導体発光素子を樹脂で被覆する。
【0021】
液状の成型用樹脂に代えて、液状及び固形状の成型用樹脂を用いることもできる。液状の成型用樹脂と固形状の成型用樹脂とを別材料とすることもできる。また、液状の成型用樹脂に代えて、固形状の成型用樹脂を用いることもできる。ただし固形状の成型用樹脂を用いた場合、液状の成型用樹脂と異なり、成型用樹脂中に気体を含有してしまうことがあるため、脱泡工程を要する場合もある。
【0022】
本発明のキャスティング成型品は、合成樹脂製のシート、フィルムなどのシート状部材によりラッピングされていればよい。
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。この説明に際して、全図にわたり共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0024】
<第1の実施形態>
図2は、本発明の第1の実施形態に係る波長変換用樹脂成型品の成型方法の一例を工程順に示す側断面図である。
【0025】
まず、キャスティング成型用の下金型212の所定の形状を有する凹部内に所定の形状を有する合成樹脂製のケース22を嵌合させる。次に、下金型のケース22上からケース周辺部にかけて合成樹脂製のラッピングシート23を載置する。
【0026】
一方、熱硬化性および透光性を有する液状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーを分散させて混練した比較的高粘度の成型材料20´を準備する。ここで、成型用樹脂は例えばエポキシ樹脂、波長変換物質は例えば蛍光体粉末、フィラーは例えばシリカフィラーが用いられる。これらの成型用樹脂、波長変換物質および/またはフィラーを所定の割合で混合し、混練することにより、成型材料20´中に波長変換物質および/またはフィラーをほぼ均一に分散させることができ、しかも、その状態を維持することができる。
【0027】
次に、上記のように準備された成型材料20´を、ケース22の上方からケース内に充填する。一方、キャスティング成型用の上金型211の内面に沿って合成樹脂製の離型フィルム24をセットする。
【0028】
次に、成型材料20´をキャスティング成型すると同時にラッピングシート23および離型フィルム24でラッピングすることにより、ラッピングされた状態の成型品を得る。この後、金型を開き、ラッピング状態のキャスティング成型品20を離型させる。なお、上記キャスティング成型は、本例では金型を加熱して成型材料20´を硬化させる。
【0029】
このようにして得られたキャスティング成型品20は、熱硬化性および透光性を有する成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーがほぼ均一に分散された成型材料が、トランスファーモールドに使用される所定の形状にキャスティング成型されてなり、かつ、外面が合成樹脂製のラッピングシート23およびフィルム24によりラッピングされている。
【0030】
ここで、キャスティング成型品20における不要な不純物、ガス等の取り込み量は、従来の湿式分散処理により形成されたモールディング化合物樹脂体を粉末状に粉砕した後に打錠によりタブレット状のモールディング化合物に成型された品における不要な不純物、ガス等の取り込み量の最小値よりも少ないという利点がある。また、ラッピングされているキャスティング成型品20は、保管中の環境の影響(吸湿など)を受け難く、取り扱いが容易であり、トランスファーモールディング法による発光素子の樹脂被覆に用いて好適である。また、ラッピングされているキャスティング成型品20は、室温で固形あるいはゲル状のいずれであってもよい。
【0031】
前記した波長変換用樹脂成型品の成型方法によれば、液状樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーを分散処理する湿式方法を用い、かつ、キャスティング成型とラッピングを同時に行う簡単な工程によって、取り扱いが容易で保管中の環境の影響(吸湿など)を受け難いラッピングされた状態の波長変換用樹脂の成型品20を低コストで実現することができる。また、粉末状の粉砕や打錠成型を行う必要がないので、不要な不純物、ガス等の取り込み量が少ない樹脂成型品を実現できるという利点がある。
【0032】
また、キャスティング成型品20は、トランスファーモールドで使用される既存のタブレットあるいはペレットとの形状互換性を持たせることが望ましく、そのためには、前記ケースの形状を例えば有底円筒状とすれば、円柱状のキャスティング成型品を得ることができる。
【0033】
図3は、本発明のキャスティング成型品を使用してトランスファーモールディング法により発光素子を波長変換用樹脂で被覆する方法の一例を概略的に示す側断面図である。ここでは、例えば図4(a)に示すように、大きな基板11上に発光素子(例えばLEDチップ)12が例えば行列状の配置で実装された状態の実装済み基板10に対して複数個のLEDチップを一括して樹脂封止する様子を示している。
【0034】
図3中において、10は実装済み基板、20は熱硬化性および透光性を有する樹脂を用いた本発明のキャスティング成型品である。301および302は、例えばプランジャを備えたトランスファー成型機の上金型および下金型、303は下金型中央部に配設されたプランジャ、40は上金型301の内面に沿ってセットされる離型フィルムである。
【0035】
次に、図3および図4を参照しながら本発明の発光装置(例えばLEDデバイス)の製造工程を詳しく説明する。まず、図4(a)に示したような実装済み基板10を製造しておく。この際、LEDチップ12を基板11上にフェイスダウン状態で実装する場合には、例えば基板上の配線パターン部とLEDチップの電極部とが金属バンプ(図示せず)を介して接合するようにフリップチップ接続する。あるいは、LEDチップを基板上にフェイスアップ状態で実装する場合には、LEDチップの電極部と基板上の配線パターン部とを導電性ボンディングワイヤ(図示せず)を介して接続する。
【0036】
次に、離型フィルム40を上金型301の内面に沿ってセットし、実装済み基板10およびキャスティング成型品20を下金型302内の別々の位置にセットし、上金型301に離型フィルム40を吸着させ、下金型302に実装済み基板10を吸着させる。この際、前記したラッピング状態のキャスティング成型品20からラッピングシート23およびフィルム24を予め剥離する。
【0037】
次に、下金型302を押し上げて金型を締め付け、プランジャ303を押し上げる。この際、高温の金型内でキャスティング成型品20に温度、圧力をかけることによって金型内に樹脂を注入し、実装済み基板10上の複数のLEDチップ12に対して一括して樹脂層20aで被覆する。そして、樹脂層20aを一次硬化(半硬化、仮硬化)させた後、金型を開き、樹脂層で被覆された実装済み基板10aを金型から取り出す。さらに、このように樹脂層で被覆された実装済み基板10aをバッチオーブン(図示せず、バッチ処理用の電気炉)により二次硬化(本硬化)させる。
【0038】
このように二次硬化された樹脂層で被覆された状態の実装済み基板10aに対して、必要に応じて、所望の切断位置で樹脂層20aおよび基板11のダイシングを行い、複数のLEDデバイスに分割する。この際、切断予定位置で樹脂層表面の切削部に洗浄水を流しながらLEDチップを避けた切断予定位置で樹脂層をダイシング・ブレード(ダイシングソー)により切断する。さらに、実装済み基板10a上のLEDチップ配列の各列間で基板を切断するようにしてもよい。
【0039】
前記製造工程において、フィルムを用いたが、シートのみでラッピングすることもできる。例えば、所定形状にキャスティング成型した後に、または成型と同時に、シートを畳んでラッピングする。
【0040】
前記したLEDデバイスの製造方法は、本発明の波長変換用樹脂のキャスティング成型品20を用いて、トランスファーモールディング法によりLEDチップを波長変換用樹脂で被覆することによって、樹脂被覆部にコンタミネーション不良やボイド発生が少なく、樹脂被覆部の膜厚や膜質にばらつきが少なく、色むらが少ない発光装置を低コストで実現することができる。
【0041】
図4(c)は、前記した製造工程を経て得られたLEDデバイスの一例を概略的に示す断面図である。このLEDデバイスは、LEDチップ12と、このLEDチップが上面に搭載された基板11と、成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーがほぼ均一に分散されたキャスティング成型品からなる波長変換用樹脂を用いてトランスファーモールドが行われることによって基板11上のLEDチップ12を被覆した透光性の波長変換樹脂層20aと、を具備し、基板11および樹脂層20aは、樹脂封止後にそれぞれ切断された端面を有する。
【0042】
このようなLEDデバイスによれば、本発明の波長変換用樹脂のキャスティング成型品20を用いてトランスファーモールディング法により形成された熱硬化性および透光性を有する波長変換用樹脂の被覆部を有する。したがって、波長変換用樹脂にコンタミネーション不良やボイド発生が少なく、樹脂被覆部の膜厚や膜質にばらつきが少なく、色むらを少なくすることができる。
【0043】
以下、前記した製造工程における各構成要素について詳述する。
【0044】
(ケース22) ケースの材料は、以下に記載された熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、特殊樹脂からいずれか1つが選択される。
【0045】
I .熱硬化性樹脂グループ
エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂。
【0046】
II.熱可塑性樹脂グループ
アイオノマー樹脂、EEA 樹脂、AAS (ASA )樹脂、AS樹脂、ACS 樹脂、エチレン酢ビコポリマー、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、ABS 樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン、酢酸繊維素樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂(6 ,66)、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性エラストマー、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレー卜、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブチレンテレフタレー卜樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテンポリマー、生分解性プラスチック。
【0047】
III .特殊樹脂グループ
熱硬化性特殊樹脂
[ 有機・無機ミクロ複合ポリマー] 、[ ビニルエステル系FRP] 、[ アミノ系特殊樹脂] 、[ エポキシ樹脂系化学樹脂木材] 、[ 脱水ベンゾグアナミン樹脂] 、[ 光造形樹脂] 、[ ポリジシクロペンタジエン] 。
【0048】
熱可塑性特殊樹脂
[ スチレン系特殊透明樹脂] 、[ シラン架橋ポリオレフィン] 、[ オレフィン系難燃成形材料] 、[ 特殊オレフィン系難燃耐熱成形材料] 、[ 非結晶コポリエステル樹脂] 、[シンジオタクチックポリスチレン] 、[ チタン酸カリウム繊維複合樹脂] 、[ 高周波用樹脂複合材料] 、[ 特殊ポリプロピレン] 、[ スチレン- ブタジエン系透明樹脂] 、[ 有機・無機ミクロ複合ポリマー] 、[ マイカ複合樹脂] 、[ 真珠光沢樹脂] 、[ 艶消調樹脂] 、[ 耐熱透明樹脂] 、[ エチレン・メチルメタクリレートコポリマー] 、[ 含油プラスチック] 、[PVC木質コンパウンド] 、[ABS系木質コンパウンド] 、[ 耐熱性スチレン系複合樹脂] 、[ ポリケトン] 、[ ポリアミドイミド] 、[ スチレン系特殊共重合樹脂] 、[ ポリアミド系特殊樹脂] 、[ ポリエチレンナフタレート樹脂] 、[ 熱可塑性ポリイミド樹脂] 、[ スチレン系透明樹脂] 、[ スチレン系特殊透明樹脂] 、[ 変性マレイミド樹脂] 、[ 接着性ポリマー] ) 、[ エチレン酢ビ共重合体ケン化物] 、[ABS系永久制電性樹脂] 、[ 水溶性熱可塑性樹脂] 、[ ポリエーテルイミド] 、[ 高密度熱可塑性樹脂] 、[PC 系熱可塑性アロイ樹脂] 、[ ポリエーテルケトン] 、[ 電子線照射架橋電線用PEコンパウンド] 、[ 環状オレフィンコポリマー] 、[ ポリアクリロニトリル] 、[ 熱可塑性ポリイミド樹脂] 、[ 高結晶熱可塑性ポリイミド樹脂] 、[ 高摺動性特殊ポリエチレン] 、[ 環状オレフィン系透明樹脂] 、[ エチレン- メタクリル酸共重合体] 、[ シラン架橋ポリマー] 、[ カーボン系高導電性複合ポリマー] 、[ 高接着性ポリオレフィン] 、[ 特殊機能ポリマーアロイ] 、[ オレフィン系特殊共重合軟質樹脂] 、[ ポリアミドイミドアロイ成形材料] 、[ 難燃性コンパウンド] 、[ 摺動性コンパウンド] 、[ 導電性コンパウンド] 、〔導電性[ 永久制電性] コンパウンド〕。
【0049】
(シート23、フィルム24) シート、フィルムの材料は、以下に記載された汎用プラスチック、エンプラフィルム、スーパーエンプラフィルム、機能性フィルム、プラスチックシートのいずれか1つが選択される。
【0050】
汎用プラスチック
LDPE(含L−LDPE)フィルム、メタロセンPEフィルム、HDPEフィルム(70)、PEストレッチフィルム、PEシュリンクフィルム、L- LDPEシーラントフィルム、OPPフィルム、CPPフィルム、PPシュリンクフィルム、PO系ラップフィルム、EVAフィルム、EVOHフィルム、EVOH系共押出フィルム、PSフィルム、PVCシュリンクフィルム、PVCストレッチフィルム、PVCマーキングフィルム、PVCインテリアフィルム、PVDCフィルム、PVDC系共押出フィルム、二軸延伸PVAフィルム、PVA無延伸フィルム、PU(TPU)フィルム、セロハン、TACフィルム、VMフィルム。
【0051】
エンプラフィルム
PA延伸(ONY)フィルム、PA無延伸(CNY)フィルム、PETフィルム、PENフィルム、PCフィルム、PANフィルム、フッ素樹脂フィルム。
【0052】
スーパーエンプラフィルム
PIフィルム、PPSフィルム、アラミドフィルム、各種スーパーエンプラフィルム(PSF,PEI,PAR,PEEK,PES,LCP) 。
【0053】
機能性フィルム
バリアフィルム、ラベル用シュリンクフィルム、生分解性プラスチックフィルム・シート。
【0054】
プラスチックシート
HIPSシート、BOPSシート、PVCシート、A−PETシート、PPシート、EVOH系共押出シート。
【0055】
(キャスティング成型品20中の成形用樹脂) 成形用樹脂の材料は、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂のいずれか1つが選択される。
【0056】
また、成形用樹脂は、LEDチップからの光を効率よく外部に発するために、高い光の透過性(透光性)が要求されるが、本例では、耐候性に優れた透明エポキシ樹脂を用いる。LEDチップの電極と配線パターンとを導電性ワイヤで接続する構造では、樹脂は導電性ワイヤを保護する機能も有する。なお、導電性ワイヤに対する負担を少なくするためには、タック性のある柔らかいシリコーン樹脂を用いることが望ましい。また、樹脂に拡散剤を含有させることによって、LEDチップからの発光の指向性を緩和させ、視野角を増やすこともできる。また、樹脂を一定の膜厚に形成することにより、色の明るさのむらを抑制することが可能になる。
【0057】
(キャスティング成型品20中の蛍光物質) 成形用樹脂に混合される蛍光物質は、LEDチップからの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであり、YAG蛍光体(Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体)、窒化物蛍光体、その他の蛍光体を使用可能である。これらの蛍光体は、LEDチップからの励起光により、黄色、赤色、緑色、青色に発光スペクトルを有するものを使用することができるほか、これらの中間色である黄色、青緑色、橙色などに発光スペクトルを有するものも使用することができる。これらの蛍光体を様々と組み合わせて使用することにより、様々の発光色を有する発光装置を製造することができる。
【0058】
この際、YAG:Ce蛍光体(Y3 Al5 12:Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体であって、540nm近傍に発光ピーク波長を持つもの)を利用すると、その含有量によって、青色発光素子からの光を一部吸収して補色となる黄色系の発光が可能となる。したがって、青色発光のLEDチップと、透光性樹脂に含まれる蛍光物質としてYAG蛍光体との組み合わせを使用することによって、LEDチップによる発光とYAG蛍光体による発光との混色によって白色発光の発光装置を比較的簡単に信頼性良く形成できる。
【0059】
(キャスティング成型品20中のフィラー) 成形用樹脂に混合されるフィラーは、中心粒径が例えば1 μ〜20μであり、このような粒径のフィラーを透光性樹脂中に含有させることにより透光性樹脂の耐熱衝撃性を高めることができる。これにより、高温下での使用においても、発光素子と外部電極とを電気的に接続しているワイヤの断線や、樹脂のクラック、LEDチップ底面と基板上面との剥離等を防止することができる信頼性の高い発光装置が得られる。更には樹脂の流動性を長時間一定に調整することが可能となり所望とする場所内に封止部材を形成することができ歩留まり良く量産することが可能となる。このようなフィラーとしては、シリカやアルミナを用いることが好ましいが、ガラス、カオリン、タルク、その他の無機フィラーやシリコンゴムなどの有機フィラーも用いることができる。
【0060】
(基板11) 基板は、AlN基板、アルミナセラミックス基板、ガラスエポキシ基板などの絶縁基板上に金属箔による配線パターン(図示せず)あるいは接続端子部を有し、さらに必要に応じて所望の回路(図示せず)が形成されており、上面に搭載されるLEDチップと配線パターンあるいは接続端子部が電気的に接続される。なお、Si基板、金属基板を用いてもよい。
【0061】
(LEDチップ12) LEDチップは、460nm近傍に発光ピーク波長を持つ青色発光の発光素子、410nm近傍に発光ピーク波長を持つ青紫色発光の発光素子、365nm近傍に発光ピーク波長を持つ紫外線発光の発光素子などを使用することができる。また、緑色発光の発光素子、青緑色発光の発光素子、橙色発光の発光素子、赤色発光の発光素子、赤外線発光の発光素子などを使用することもできる。
【0062】
LEDチップの種類は特に制限されるものではないが、例えば、MOCVD法等によって基板上にInN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体を発光層として形成させたもの、一例として、サファイア基板上にn型GaNよりなるn型コンタクト層と、n型AlGaNよりなるn型クラッド層と、p型GaNよりなるp型コンタクト層とが順次に積層された構造のものを使用する。また、半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合などを有するホモ構造、ヘテロ結合あるいはダブルヘテロ結合のものが挙げられる。半導体の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択できる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることができる。また、活性層には、Si、Ge等のドナー不純物および/またはZn、Mg等のアクセプター不純物がドープされる場合もある。LEDチップの発光波長は、その活性層のInGaNのIn含有量を変えるか、または活性層にドープする不純物の種類を変えることにより、紫外領域から赤色まで変化させることができる。
【0063】
そして、LEDチップは、アノード(p電極)・カソード(n電極)に対応する一対の電極(パッド電極、パッド端子)を有し、一対の電極が配線基板1上の配線パターンに電気的に接続された状態で実装されている。
【0064】
ここで、フェイスダウン実装の場合には、例えば配線基板上の配線パターン部(あるいは導電パターン、リード電極)とLEDチップのパッド電極とが金属バンプ(例えば金バンプ)により接合されてフリップチップ接続されている。なお、フェイスダウン実装に際して、上記例に限らず、配線基板上の導電パターンとLEDチップのパッド電極との間が半田を用いて超音波接合された構造、金、銀、パラジウム、ロジウム等の導電性ペースト、異方性導電ペースト等を用いて接合された構造など、種々の形態を採用できる。
【0065】
一方、フェイスアップ実装の場合には、配線基板上にLEDチップが載置されてダイボンディングにより固着され、LEDチップの一対の電極と配線基板上の配線とが導電性ワイヤ(図示せず)によりボンディング接続されている。なお、フェイスアップ実装における配線基板とLEDチップとの接続は上記例に限らず樹脂接合、金属接合など種々の形態を採用できる。
【0066】
<第2の実施形態>
前述した第1の実施形態では、キャスティング成型品をラッピングシート23およびフィルム24によりラッピングしたが、これに限らず、成型材料20´を所定の形状にキャスティング成型すると同時にラッピングシート23を折り畳むなどしてキャスティング成型品をラッピングシート23のみでラッピングするようにしてもよい。
【実施例1】
【0067】
図2は、実施例1として、波長変換用樹脂のキャスティング成型品の成型方法の一例を工程順に示す側断面図である。まず、キャスティング成型用の下金型212の凹部内に所定の形状を有するポリプロピレン樹脂製のケース22を嵌合させる。次に、ケース22の内部からケース周辺部にかけてポリエチレン樹脂製のラッピングシート23を載置する。
【0068】
一方、熱硬化性および透光性を有する液状のエポキシ樹脂中に蛍光体粉末および/またはシリカフィラーを分散させて混練した比較的高粘度の成型材料20´を準備する。この際、成型用樹脂、波長変換物質およびフィラーを例えば100 :20:20(重量%)の割合で混合し、混練することにより、エポキシ樹脂中に蛍光体粉末およびシリカフィラーをほぼ均一に分散させることができ、しかも、その状態を長く維持することができる。
【0069】
次に、上記成型材料20´をケース上方からケース22内に充填する。一方、キャスティング成型用の上金型211の内面に沿ってポリエステル樹脂製の離型フィルム24をセットする。
【0070】
次に、前記成型材料20´をキャスティング成型すると同時にラッピングシート23および離型フィルム24でラッピングする。この後、金型を開き、ラッピング状態のキャスティング成型品20を離型させる。
【0071】
このようにして得られたキャスティング成型品20は、熱硬化性および透光性を有する成型用樹脂中に波長変換物質および無機フィラーがほぼ均一に分散された成型材料が、トランスファーモールドに使用される所定の形状にキャスティング成型され、かつ、外面が合成樹脂製のラッピングシート23およびフィルム24によりラッピングされている。
【0072】
実施例1の成型方法およびそれにより成型された波長変換用樹脂成型品によれば、第1の実施形態で前述したような効果が得られる。また、ケース22の形状を例えば有底円筒状とすれば、円柱状のキャスティング成型品を得ることができる。これにより、前記樹脂成型品は、トランスファーモールドで使用される既存の円柱状のタブレットあるいはペレットとの形状互換性を持たせることができるので、既存のトランスファーモールドの装置および方法を採用することができ、製造コストの増加をまねくことはない。
【実施例2】
【0073】
実施例2として、前記したキャスティング成型品20からラッピングシート23およびフィルム24を剥離し、トランスファーモールディング法によりLEDチップを波長変換用樹脂で被覆する方法の一例について、図3を参照しながら説明する。ここでは、図4(a)に示すように、大きな基板11上にLEDチップ12が行列状の配置で実装された状態の実装済み基板10に対して複数個のLEDチップを一括して樹脂封止する場合を説明する。
【0074】
まず、図4(a)に示したような実装済み基板10を製造しておく。次に、プランジャ303を備えたトランスファー成型機の上金型301の内面に沿って離型フィルム40をセットし、実装済み基板10およびキャスティング成型品20を下金型302内の別々の位置にセットし、真空吸引を行って上金型301に離型フィルム40を吸着させ、下金型302に実装済み基板10を吸着させる。
【0075】
一方、金型を予備加熱し、キャスティング成型品20を例えば高周波により予備加熱する。そして、下金型302を押し上げて金型を締め付け、プランジャ303を押し上げる。この際、金型内で温度、圧力をかけることによって高温の金型内にキャスティング成型品20の樹脂等を注入し、実装済み基板10上の複数のLEDチップに対して一括して樹脂層20aで被覆する。そして、樹脂層20aを一次硬化(予備硬化、仮硬化)させた後、金型を開き、樹脂層20aで被覆された実装済み基板10aを金型から取り出す。さらに、このように被覆された実装済み基板10aをバッチオーブン(図示せず、バッチ処理用の電気炉)により樹脂層20aを二次硬化(本硬化)させる。
【0076】
この後、実装済み基板10aに対して、所望の切断位置で樹脂層20aおよび基板11のダイシングを行い、例えば図4(c)に示したような複数のLEDチップ12を内蔵したLEDデバイス(LEDアレイ、LEDモジュール)42に分割する。この際、切断予定位置で樹脂層表面の切削部に洗浄水を流しながらLEDチップを避けた切断予定位置で樹脂層および基板をダイシング・ブレード(ダイシングソー)により切断する。さらに、実装済み基板10a上のLEDチップ配列の各列間で樹脂層および基板を切断し、例えば図4(b)に示したような個別のLEDデバイス41に分割する。なお、基板の切断に際して、基板の材質によっては、基板の厚み方向の途中まで切削溝を形成した後、最終的な基板の分割を機械的な破断により一括して行うようにしてもよい。
【0077】
実施例2によれば、実施例1の波長変換用樹脂のキャスティング成型品20を使用し、基板11上のLEDチップ12を波長変換用樹脂20aで被覆するようにトランスファーモールディング成型を行うことによって、樹脂被覆部20aにコンタミネーション不良やボイド発生が少なく、樹脂被覆部20aの膜厚や膜質にばらつきが少なく、色むらが少ないLEDデバイスを低コストで実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、照明用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、液晶のバックライト用光源などの製造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の概要を工程順に示す説明図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る波長変換用樹脂成型品の成型方法の一例を工程順に示す側断面図。
【図3】本発明のキャスティング成型品を使用してトランスファーモールディング法により発光素子を波長変換用樹脂で被覆する方法の一例を概略的に示す側断面図。
【図4】図3のトランスファーモールディング法で樹脂被覆の対象となる実装済み基板の一例を示す斜視図および樹脂被覆後に得られたLEDデバイスの二例を概略的に示す側断面図。
【符号の説明】
【0080】
10…実装済み基板、10a…樹脂層20aで被覆された実装済み基板、11…基板、12…発光素子(例えばLEDチップ)、20´…成型材料、211…上金型、212…下金型、20…キャスティング成型品、20a…樹脂層、22…ケース、23…ラッピングシート、24…離型フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性および透光性を有する液状および/または固形状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーが分散された成型材料が、トランスファーモールドに使用される所定の形状にキャスティング成型され、かつ、外面が合成樹脂製のシートおよび/またはフィルムからなるシート状部材によりラッピングされてなることを特徴とする波長変換用樹脂成型品。
【請求項2】
前記波長変換物質は蛍光体であることを特徴とする請求項1記載の波長変換用樹脂成型品。
【請求項3】
前記成型用樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の波長変換用樹脂成型品。
【請求項4】
前記シートは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂若しくは変成シリコーン樹脂の熱硬化性樹脂、または、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂の熱可塑性樹脂から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の波長変換用樹脂成型品。
【請求項5】
前記フィルムは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂若しくは変成シリコーン樹脂の熱硬化性樹脂、または、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂の熱可塑性樹脂から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の波長変換用樹脂成型品。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の波長変換用樹脂成型品を、さらに粉末状に粉砕した後に打錠により成型した波長変換用樹脂成型品。
【請求項7】
熱硬化性および透光性を有する液状および/または固形状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーを分散させて混練した成型材料を準備する工程と、
キャスティング成型用の金型の下型の凹部内に合成樹脂製のケースを嵌合させる工程と、
前記キャスティング成型用の金型の下型のケース部からケース周辺部にかけて合成樹脂製のシートを載置し、前記キャスティング成型用の金型の上型の内面に合成樹脂製のフィルムをセットする工程と、
前記ケース内に上方から前記成型材料を充填し、前記キャスティング成型用の金型により前記成型材料をキャスティング成型すると同時にキャスティング成型品を前記シートおよびフィルムでラッピングする工程と、
前記キャスティング成型用の金型からラッピング状態のキャスティング成型品を離す離型工程と、
を具備することを特徴とする波長変換用樹脂成型品の製造方法。
【請求項8】
熱硬化性および透光性を有する液状および/または固形状の成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーを分散させて混練した成型材料を準備する工程と、
キャスティング成型用の金型の下型の凹部内に合成樹脂製のケースを嵌合させる工程と、
前記キャスティング成型用の金型の下型のケース部からケース周辺部にかけて合成樹脂製のシートを載置する工程と、
前記ケース内に上方から前記成型材料を充填し、前記キャスティング成型用の金型により前記成型材料をキャスティング成型する工程と、
前記キャスティング成型品を前記シートでラッピングする工程と、
前記キャスティング成型用の金型からラッピング状態のキャスティング成型品を離す離型工程と、
を具備することを特徴とする波長変換用樹脂成型品の製造方法。
【請求項9】
前記ケースの材料は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂若しくは変成シリコーン樹脂の熱硬化性樹脂、または、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂の熱可塑性樹脂から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項7または8記載の波長変換用樹脂成型品の製造方法。
【請求項10】
前記成型用樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項7または8記載の波長変換用樹脂成型品の製造方法。
【請求項11】
前記シートは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂若しくは変成シリコーン樹脂の熱硬化性樹脂、または、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂の熱可塑性樹脂から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項7または8記載の波長変換用樹脂成型品の製造方法。
【請求項12】
前記フィルムは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂若しくは変成シリコーン樹脂の熱硬化性樹脂、または、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂の熱可塑性樹脂から選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項7記載の波長変換用樹脂成型品の製造方法。
【請求項13】
前記成型用樹脂中に波長変換物質およびフィラーを分散させて混練した成型材料は、50℃〜150℃における粘度が1000cP以上であることを特徴とする請求項7または8記載の波長変換用樹脂成型品の製造方法。
【請求項14】
発光素子が基板上に搭載され、前記発光素子が透光性の樹脂層により封止された発光装置の製造方法であって、
発光素子が搭載された基板に対して、熱硬化性および透光性を有する成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーが分散されたキャスティング成型品からなる波長変換用樹脂成型品を用いてトランスファーモールドを行い、前記基板上の発光素子を樹脂により被覆することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記波長変換用樹脂成型品は、室温で固形あるいはゲル状であることを特徴とする請求項14記載の発光装置。
【請求項16】
発光素子と、
前記発光素子が搭載された基板と、
熱硬化性および透光性を有する成型用樹脂中に波長変換物質および/またはフィラーが分散されたキャスティング成型品からなる波長変換用樹脂成型品を用いてトランスファーモールドが行われることによって前記基板上の発光素子を被覆した樹脂層と、
を具備することを特徴とする発光装置。
【請求項17】
前記発光素子として青色発光ダイオードチップが使用され、前記蛍光物質としてアルミン酸塩蛍光体が使用されていることを特徴とする請求項16記載の発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−301843(P2007−301843A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132772(P2006−132772)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】