説明

液処理装置及び液処理方法

【課題】新たな手法を用いて基板の表面から膜を除去する液処理装置等を提供する。
【解決手段】第1の膜の上層に第2の膜が形成された基板から、第1の膜及び第2の膜を除去する液処理装置3において、第1の薬液供給部51は基板Wに第1の膜を溶解させるための前記第1の薬液を供給し、第2の薬液供給部51は前記第2の膜の強度を低下させるための第2の薬液を供給し、衝撃供給部としての機能を兼ねる流体供給部52は第2の膜に物理的衝撃を与えて当該第2の膜を破壊すると共に破壊された第2の膜の破片を流し去るための流体を供給する。制御部7は第2の薬液を供給し、次いで前記流体供給部52から流体を供給した後、第1の薬液を供給するように各部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面を液処理する技術に係り、特に基板表面に積層された膜を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化に伴って素子間を接続する配線についても微細化が進み、従来は主として例えばゲート電極などの素子形成に適用されていた技術が配線工程(BEOL(Back-End-of-Line)工程)にも適用されるようになってきている。その一例として、層間絶縁膜にビアホールをエッチング形成する工程などにおいて、露光時における反射光の影響を防止するための反射防止膜を塗布したり、配線の微細化に対応して薄膜化したレジストの膜厚を補うためのマスク層を形成したりするなど、パターニング対象の膜上に多層の膜を形成する場合がある(例えば特許文献1)。
【0003】
他方、エッチング対象の層間絶縁膜には、配線の微細化に伴う配線間容量の増加を抑えることを目的として従来のSiOよりも誘電率の小さな低誘電率材料であるいわゆるlow−k材料が採用されるようになってきている。こうしたlow−k材料には例えばSiOCHといった多孔質材料などが用いられ、SiOなどと比べて耐プラズマ性、耐薬品性が低い。このため例えば酸素プラズマを用いたアッシングやSPM(Sulfuric acid-hydrogen Peroxide Mixture)液を用いた剥離などの従来法にてこれら反射防止膜などを除去しようとすると、low−k材料からなる層間絶縁膜までもがダメージを受けてしまう場合があり、下地のパターン(low−k材料)を破壊しない新たな除去方法が求められている。
【0004】
こうしたlow−k材料への影響が小さい剥離法の一つとして、従来用いられていたSPM液などに比べて剥離性能の小さなアミン系の剥離剤などを有機溶剤に溶かした薬液を用いることが検討されている。ところがこうした薬液は、反射防止膜などを溶解する能力も弱い場合があり、アッシングやSPMを用いた方法と比較して時間がかかり、装置のスループットを向上させるうえでの制約となることも予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−15479:0030段落、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、新たな手法を用いて基板の表面から膜を除去する液処理装置及び液処理方法を提供することにある。
【0007】
また他の目的は、使用する薬液の回収を行う液処理装置及び液処理方法について、その薬液回収ラインの下流側に設けられるフィルターなど、回収された薬液中から膜の破片を取り除く機構における目詰まりの発生を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液処理装置は、第1の膜の上層に第2の膜が形成された基板から、第1の膜及び第2の膜を除去する液処理装置において、
前記基板に前記第1の膜を溶解させるための第1の薬液を供給する第1の薬液供給部と、
前記基板に前記第2の膜の強度を低下させるための第2の薬液を供給する第2の薬液供給部と、
前記第2の膜に物理的衝撃を与える衝撃供与部と、
物理的衝撃が与えられた第2の膜の破片を流すための流体を前記基板に供給する流体供給部と、
前記基板に、前記第2の薬液供給部から第2の薬液を供給し、次いで前記流体供給部から流体を供給した後、前記第1の薬液供給部から第1の薬液を供給するように各部を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記液処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記流体供給部は、当該流体供給部から供給される流体により第2の膜に物理的衝撃を与える衝撃供与部を兼用していること。
(b)前記基板に供給された後の薬液を回収する薬液回収ラインと、前記第2の膜の破片を含む流体を排出する排出ラインと、これら薬液回収ラインと排出ラインとの間で前記基板に供給された後の薬液または流体の流出先を切り替える切替部と、を備え、前記制御部は基板に供給された第1の薬液または第2の薬液を前記薬液回収ラインへと流出させ、第2の膜の破片を含む前記流体を前記排出ラインへと流出させるように、前記切替部を制御すること。
(c)前記第1の薬液と第2の薬液とが共通の薬液であり、前記第1の薬液供給部と第2の薬液供給部とを共用すること。
(d)前記流体供給部は、基板の表面に液体と気体との混合流体を噴射する二流体スプレーノズルであること。
(e)前記第1の薬液はアミン系の剥離剤を含むこと。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の膜の上層に形成された第2の膜に第2の薬液を供給することによってこの第2の膜の強度を低下させ、次いで基板の表面に流体により衝撃を与えて当該第2の膜を破壊して除去した後、第1の薬液により第1の膜を溶解させて除去するので、例えば第2の膜が第1の薬液によっては溶解しにくい場合であっても、基板から第1、第2の膜を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】液処理が行われるウエハ表面の構造を示す縦断側面図である。
【図2】実施の形態に係る液処理装置の構成を示す縦断側面図である。
【図3】前記液処理装置内に設けられているカップ体を上方から見た平面図である。
【図4】前記液処理装置への薬液等の供給、排液系統を示す説明図である。
【図5】前記液処理装置に設けられている二流体スプレーノズルの構成を示す縦断側面図である。
【図6】前記液処理装置の作用を示す説明図である。
【図7】前記液処理装置により液処理が行われているウエハ表面の様子を示す第1の説明図である。
【図8】前記液処理が行われているウエハ表面の様子を示す第2の説明図である。
【図9】前記液処理装置への薬液等の供給タイミング及び排液の排出先の切替タイミングを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施の形態として、図1(a)に示すように、例えばlow−k材料からなる層間絶縁膜101の上層に、レジスト膜104の波打ちを抑えるための犠牲膜102と反射防止膜の一種であるBARC(Bottom Anti-Reflection Coating)103とがこの順に積層されたウエハWについて、図1(b)に示すようにエッチングを行ってビアホール112を形成した後、層間絶縁膜101表面に残存している犠牲膜102及びBARC103を除去する液処理を実行する液処理装置について説明する。図1(a)、図1(b)中、104はレジスト膜、113はレジスト膜104に形成されたビアホールパターン、111はダマシン法などにより銅配線が埋め込まれるトレンチ、105は下層側の配線である。また図1(b)ではレジスト膜104はエッチングにより削り取られてしまっている。ここで犠牲膜102は本実施の形態の第1の膜に相当し、BARC103は第2の膜に相当している。
【0013】
図2の縦断側面図に示すように、液処理装置3は、ウエハWを回転可能に保持するウエハ保持機構4と、ウエハ保持機構4上に保持されたウエハWを取り囲むようにウエハWの周囲に設けられ、ウエハWから飛散した薬液等を受けるためのカップ体36と、ウエハWの表面に各種の薬液等の処理液を供給する処理液供給機構5と、を備えている。
【0014】
ウエハ保持機構4やカップ体36、処理液供給機構5は、共通の筐体31内に納められており、この筐体31はベースプレート300上に配置されている。筐体31の天井部には、外部に設けられたファンフィルタユニット(Fan Filter Unit;FFU)からの気流が導入される空間である気流導入部34が設けられている。この気流導入部34に流入した空気が筐体31の天井面に設けられた多数の通流孔331を介して筐体31内に流れ込むことにより、筐体31内には上方側から下方側へ向けて流れる清浄空気のダウンフローを形成することができる。筐体31に設けられた33は、外部の搬送機構のピック上に載置された状態でウエハWが搬入出される搬入出口、32は搬入出口33を開閉するシャッターである。
【0015】
ウエハ保持機構4は、ほぼ水平に保持されるウエハWの裏面側の、当該ウエハWと対向する位置に設けられた円板形状のアンダープレート41と、このアンダープレート41の中央部を裏面側から支持し、鉛直下方に伸びる円筒形状の回転軸43と、この回転軸43内に上下方向に貫挿され、アンダープレート41中央部の開口部からその上端部が突没可能に設けられたリフター45と、を備えている。ウエハ保持機構4は本実施の形態の基板保持部に相当する。
【0016】
アンダープレート41の周縁部には、アンダープレート41の上方位置にてウエハWをほぼ水平に支持するための、例えば3個の支持ピン42が設けられている。支持ピン42は例えばレバー形状の作動片として構成されており、その一端は短く折れ曲がっていてこの折れ曲がり部の先端にはウエハW外周部を底面側から支持するための切り欠き部421が形成されている。ここで図3の平面図に示すようにアンダープレート41の周縁部には、例えば周方向に沿って等間隔に離れた三箇所の位置に切り欠き部411が設けられている。そして例えば図2に示すように、支持ピン42は回転軸422によって各切り欠き部411内に取り付けられており、前述の折れ曲がり部をアンダープレート41の上面から突出させた状態となっている。
【0017】
この場合において支持ピン42は、ウエハWを支持していない状態においては切り欠き部421の形成された折れ曲がり部がアンダープレート41の径方向外側に向けて傾くように付勢されている。そして切り欠き部421にウエハWが載置されると、レバー形状の支持ピン42全体が回転軸422周りに回転しながら押し下げられて、折れ曲がり部が起き上がって鉛直方向を向き、これによりウエハWはアンダープレート41の上面と対向するようにほぼ水平に支持されることになる。
【0018】
アンダープレート41を裏面側から支持する回転軸43は、ベアリング等を内蔵した軸受け部44を介してベースプレート300上に回転可能に支持されている。回転軸43の下端部はベースプレート300の下方に突出しており、当該下端部にはプーリー474が設けられている一方、回転軸43の側方位置には回転モータ471が配設されていて、この回転モータ471の回転軸にもプーリー472が設けられている。そしてこれら2つのプーリー472、474に駆動ベルト473を捲回することにより回転軸43の回転機構が構成され、回転モータ471を駆動させることで回転軸43を所望の回転速度で回転させ、これにより各支持ピン42に保持されたウエハWやアンダープレート41を回転させることができる。
【0019】
回転軸43内に貫挿されたリフター45の上端部には扁平な円板形状のウエハ支持部451が設けられており、ウエハ支持部451をアンダープレート41から突出させた際に当該ウエハ支持部451上にウエハWを支持することができる。一方、リフター45の下端部には昇降板462を介してシリンダモータ461が接続されており、このシリンダモータ461を駆動させることによって昇降板462及びリフター45を上下方向に移動させ、アンダープレート41の上面からウエハ支持部451を突没させて、支持ピン42の上方に進入してきたピックとの間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0020】
カップ体36は、ウエハWから飛散した薬液等の液体を受ける液受け空間363が形成されたカップ体36と、このカップ体36の外周側の側壁部からアンダープレート41の周縁部の上方側へ向けて斜めに伸びだしており、これによりウエハWから飛散した液体を液受け空間363へ向けて案内するカバー部362と、がアンダープレート41の周りを囲むように形成されたリング形状の部材である。またカップ体36の底部には排液ライン681が設けられており、液受け空間363に溜まった液体を液処理装置3外に排出することができるようになっている。図4に示すように排液ライン681は切替バルブ69を介して薬液回収ライン682及び排出ライン683に分岐しており、薬液回収ライン682に接続されたリサイクルタンク61と、例えば除害設備等に接続された排出ライン683との間で液の排出先を切り替えることができる。
【0021】
図2に示すようにカップ体36を格納する筐体31の内側壁には、カップ体36のカバー部362の上方位置まで伸びだしたリング形状の板材である突片部35が設けられている。筐体31内を流れる清浄空気のダウンフローの一部は、これらカバー部362の上面と突片部35の下面との間の隙間からカップ体36の外周面と筐体31の内壁面との間の空間を介してアンダープレート41の下方側の空間に流れ込み、また前記ダウンフローの残る一部はカバー部362の下面とアンダープレート41の上面との間の隙間から液受け空間363内に進入し、カップ部361の内周壁部とアンダープレート41の下面との間の隙間を通ってアンダープレート41の下方側の空間に流れ込むようになっている。
【0022】
筐体31の底面には排気管311が接続されており、アンダープレート41の下方側に流れ込んだ気流は、この排気管311を介して例えば図示しない除害設備へ向けて排出されることとなる。図中、37はアンダープレート41の下方に流れ込んだ気流の回転軸43側への回り込みを防止するために、回転軸43及び軸受け部44を囲む円筒形状の隔壁部である。
【0023】
以上の構成を備えた液処理装置3は、犠牲膜102を溶解するための薬液をウエハW表面に供給する機能を備えていると共に、この犠牲膜102の上層に形成され、前記の薬液によっては溶解されにくいBARC103に対して物理的(言い替えると力学的)な衝撃を与えて破壊することによりBARC103を除去する機能を備えている。以下、これら機能の詳細な構成について説明する。
【0024】
図3の平面図に示すように、筐体31内の例えばカップ体36の側方位置には、処理液供給機構5が設けられている。処理液供給機構5は鉛直方向に伸びる棒状の回転軸55と、この回転軸55の上端部に片持ち支持され、水平方向に伸びる棒状のアーム部54と、このアーム部54の先端に支持された例えば3つのノズル51〜53とを備えており、回転軸55周りにアーム部54を旋回させることによって、ウエハ保持機構4に保持されたウエハWの上方の処理位置とこの処理位置から退避した退避位置との間でノズル51〜53を移動させることができる。
【0025】
薬液ノズル51は、本実施の形態の第1の薬液供給部に相当し、ウエハ保持機構4に保持されたウエハWに、犠牲膜102を溶解する第1の薬液(以下、単に薬液という。)を供給する役割を果たす。図4に示すように薬液ノズル51は薬液ノズルライン622、薬液供給ライン621を介して既述のリサイクルタンク61に接続されており、液処理装置3から排出された薬液をリサイクルして使用することができる。リサイクルタンク61には、例えば犠牲膜102を溶解させる例えばアミン系の剥離剤と、犠牲膜102の下層側のlow−k材料からなる層間絶縁膜101を保護する防食剤とを有機溶媒に溶解させた薬液が貯溜されており、この薬液はlow−k材料に殆どダメージを与えずに犠牲膜102を除去することができる。
【0026】
また上述の薬液は、犠牲膜102を溶解する場合に比べてBARC103を溶解する能力は小さく、薬液だけでBARC103を除去しようとすると長い時間がかかる。しかしながらこの薬液がBARC103の表面に供給されると、薬液は次第にBARC103内に浸透してBARC103を膨潤させ、BARC103の機械的強度を低下させる能力がある。この観点からは、薬液は第2の薬液の機能も兼ね備えており、薬液ノズル51はウエハWに第2の薬液を供給する本実施の形態の第2の薬液供給部として共用されているといえる。
【0027】
ここで図4において、薬液供給ライン621上の63は薬液を薬液ノズル51へ向けて送り出すポンプ、64はリサイクルタンク61内に流れ込んだ異物を除去するフィルター、65は薬液の温度調節を行うヒーターであり、薬液ノズルライン622上の671は開閉バルブ、66は流量調節バルブである。また、薬液供給ライン621はヒーター65の下流側で薬液ノズルライン622とバイパスライン623とに分岐しており、このバイパスライン623は薬液回収ライン682に接続されていて、液処理装置3をバイパスして薬液を循環させることができるようになっている。バイパスライン623上の672は開閉バルブである。
【0028】
バイパスライン623は、例えばポンプ63の稼動/停止の頻繁な切り替えを避けるため、例えば当該ポンプ63を常時稼動させておき、薬液ノズル51に薬液を供給していない期間中は薬液ノズルライン622の開閉バルブ671を閉、バイパスライン623の開閉バルブ672を開として薬液ノズル51をバイパスして薬液を循環させ、薬液供給時には開閉バルブ671、672の開閉状態を反転させて薬液ノズル51に薬液を供給する目的などに用いられる。
【0029】
二流体スプレーノズル52は、本実施の形態の衝撃供与部及び流体供給部に相当し、ウエハWの表面に例えば脱イオン水(Deionized Water:以下、DIWという)と窒素ガスとの混合流体を吹き付けて、薬液が供給され膨潤し、機械的強度が低下した後のBARC103に物理的な衝撃を与えて破壊する機能と、この破壊されたBARC103の破片を流し去ることによりBARC103を除去する機能とを兼ね備えている。
【0030】
薬液ノズル51は例えば図5に示すように、円筒状のノズル本体521内に鉛直軸方向に内管522を配置した二重管構造となっており、例えばDIWは内管522を通り、窒素ガスは内管522とノズル本体521との間の円筒状のガス通流路523を流れて各々の流れが先端部の気液混合領域525へ達する構造となっている。そしてこれらDIWと窒素ガスとが気液混合領域525で激しく混合され、窒素ガスから受ける剪断力によりDIWが破砕されて微細なミストが形成され、この気液混合領域525の直下に設けられた吐出口526から無数のミストを含む混合流体がウエハW表面へ向けて吐出されるようになっている。
【0031】
二流体スプレーノズル52の内管522は、図4に示すようにスプレーノズルライン572を介してDIW供給源57に接続されており、内管522上の571はポンプ、574は開閉バルブである。一方、ノズル本体521は窒素ガス供給ライン561を介して例えば窒素ガスボンベ等からなる窒素ガス供給源56に接続されており、窒素ガス供給ライン561上の562は開閉バルブである。
【0032】
また処理液供給機構5に設けられたもう一つのノズルであるリンスノズル53は、DIWなどの洗浄液をウエハW表面に供給する役割を果たす。リンスノズル53は例えばスプレーノズルライン572から分岐したリンスノズルライン573を介してDIW供給源57に接続されており、リンスノズルライン573上の575は開閉バルブである。このように、本実施の形態においては薬液ノズル51とリンスノズル53とを別々のノズルとして構成したが、例えばリンスノズル53を二流体スプレーノズル52にて共用してもよい。この場合には、BARC103の除去動作時には二流体スプレーノズル52に窒素ガスとDIWとを同時供給し、リンス洗浄時にはDIWのみを供給することなどにより、各動作を切り替えることができる。
また図4に示したリサイクルタンク61やポンプ63、窒素ガス供給源56、DIW供給源57等は例えば外部の薬液貯蔵ユニット内に設けられる。
【0033】
また液処理装置3は、図2、図4に示すように制御部7が接続されている。制御部7は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には液処理装置3の作用、つまり、各液処理装置3内にウエハWを搬入し、液処理装置3にて犠牲膜102やBARC103を除去してから、ウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。制御部7は例えば外部の機械制御ユニット内に設けられる。
【0034】
以上の構成を備えた本実施の形態に係る液処理装置3の作用について説明する。液処理装置3は筐体31のシャッター32を開き、リフター45のウエハ支持部451をアンダープレート41から突出させた状態で待機しており、ウエハWを保持した外部の搬送機構の不図示のピックがウエハ支持部451の上方位置まで進入する。そして例えばピックが降下してピックとウエハ支持部451とを交差させることによりウエハWがウエハ支持部451側に受け渡され、ピックは筐体31の外へ退避してシャッター32が閉じられる。一方、ウエハ支持部451は回転軸43内に没入して支持ピン42上にウエハWが保持される。このとき処理液供給機構5は、ウエハWの受け渡し動作と干渉しないようにアーム部54を退避位置まで退避させており、また筐体31内には清浄空気のダウンフローが継続的に形成されている。以上の動作の後、各液処理装置3内にて液処理が開始される。
【0035】
以下、各液処理装置3内にて実行される液処理の詳細について図6〜図9を参照しながら詳細に説明する。図6(a)〜図6(c)は液処理中の液処理装置3内の状態を模式的に示した説明図であり、図7(a)〜図8(c)はこの液処理が行われている期間中におけるウエハWの表面付近の様子を模式的に示した説明図である。また、図9(a)〜図9(c)は各ノズル51〜53の作動状態、図9(d)はカップ体36からの排液の排出先を時間軸に沿って示したタイムチャートである。
【0036】
ここで図7(a)に示したウエハWは、実際には背景技術にて説明した図1(b)の状態であり、層間絶縁膜101にはトレンチ111やビアホール112が形成され、BARC103や犠牲膜102にもビアホールのパターンがエッチングにより形成されているが、図7、図8の各図においてはこれらのパターンを省略して示してある。またこれら図7、図8に各種ノズル51、52を記載する場合には、そのときに使用しているノズル51、52のみを記載し、他のノズル51〜53については記載を省略してあり、図6においても例えば筐体31や軸受け部44、ベースプレート300等の記載を適宜省略してある。
【0037】
まずウエハ保持機構4に図7(a)の状態のウエハWが保持されると、処理液供給機構5はアーム部54を旋回させて図6(a)に示すように薬液ノズル51をウエハWの中央部上方位置まで移動させ、ウエハWの中央部上方に位置させる一方、回転軸43によりウエハWを鉛直軸周りに回転させる。そして図9(a)に示すように時刻Tにて薬液ノズル51から薬液の供給を開始する。
【0038】
既述のように本実施の形態に係る薬液は、BARC103内へと浸透する程度の能力は持っているので、図7(b)に示すように薬液はBARC103内に浸透してBARC103を膨潤させ、BARC103にはクラック121が形成され始める。さらに薬液が浸透すると、クラック121の数が増える共にBARC103の下面に到達した薬液によって犠牲膜102が溶解され始め、BARC103の下層側に液状部122が形成される(図7(c))。このように多数のクラック121や液状部122が形成されることによってBARC103の機械的な強度が低下し、BARC103は衝撃によって壊れやすい状態となる。また回転するウエハWから振り落とされた薬液の排出先に着目すると、排液ライン681は薬液回収ライン682側に接続されており、薬液はリサイクルタンク61へ回収されている(図6(a)、図9(d))。
【0039】
所定時間薬液を供給しBARC103の機械的強度が低下したら、時刻Tにて薬液ノズル51からの薬液の供給を停止した後、図6(b)、図9(b)に示すように二流体スプレーノズル52からDIWと窒素ガスとの混合流体を吐出して、BARC103を破壊する動作を開始する。このときウエハWは回転を継続しており、また二流体スプレーノズル52をウエハW中央と周縁部との間で予め定められた回数だけ径方向にスキャンさせてウエハWの前面に満遍なく衝撃を与えることにより、例えば図7(d)に示すようにBARC103を小さな破片であるBARC片106に破壊して、ウエハW表面を流れるDIWによってこのBARC片106を流し去ることができる。
【0040】
ここで例えば図示しない中央部用リンスノズルをさらに設け、ウエハWの中央部側の領域にリンス液を供給する構成としてもよい。中央部用リンスノズルは、例えばウエハWを径方向にスキャンする二流体スプレーノズル52がウエハWの中央部側の領域を離れている期間中に、当該中央部側の領域にDIWなどのリンス液を供給する役割を果たす。これにより、当該ウエハWの中央部側の領域の乾燥を防止してBARC片106をより効率的に流し去ることができる。
【0041】
図9(b)、図9(d)に示すように二流体スプレーノズル52からの混合流体の吐出が開始された時刻Tにおいて、排液ライン681の接続先は直ちに排出ライン683側に切り替えられるので、多量のBARC片106を含むDIWはリサイクルタンク61には流れ込まない。この結果、薬液をリサイクルしてもフィルター64の目詰まりが発生しにくいのでフィルター64の交換頻度を下げることができる。
【0042】
所定時間BARC103の除去動作を実行したらウエハWを回転させたまま薬液ノズル51からの混合流体の吐出を停止し、リンス洗浄を実行する(図9(c)の時刻T)。しかる後、薬液ノズル51をウエハWの中央部上方に位置させ、BARC103の除去されたウエハWの表面に薬液の供給を再開する(図6(c)、図9(a)の時刻T)。
【0043】
このときウエハWの表面には、例えば図8(a)に示すようにウエハWの面積比で1割〜3割程度のBARC片106が残存している可能性があるが、先行するBARC103の除去によりウエハWには犠牲膜102が露出しているので、図8(b)に示すように犠牲膜102は薬液の供給によって速やかに溶解し、これに伴ってBARC片106も溶解した犠牲膜102と共に流し去られる。以上の処理により犠牲膜102及びその上面に残存していたBARC片106が除去され、図8(c)に示すように層間絶縁膜101が露出した状態のウエハWを得ることができる。
【0044】
上述の動作においてもリンス洗浄を終え、薬液の供給を開始してからしばらくの間は薬液中にBARC片が含まれている可能性があるので、排液ライン681を排出ライン683側に接続して薬液は液処理装置3外へと排出し、予め定めた時間が経過した時刻Tにて排液ライン681の接続先を薬液回収ライン682に切り替えることにより、BARC片106のリサイクルタンク61への流入量を少なく抑えてフィルター64寿命を延ばすことができる(図9(d))。排液ライン681を薬液回収ライン682側に切り替えた後においてもBARC片106の一部はリサイクルタンク61内に流入する場合もあると考えられるが、その流入量は切り替えを行わない場合と比較してはるかに少ない。
【0045】
こうして犠牲膜102及びBARC103の除去を終えたら、薬液ノズル51からの薬液の供給を停止し、図9(c)、図9(d)に示すように時刻Tにて排液ライン681の接続先を排出ライン683に切り替え、リンス洗浄を実行して液処理を終える。この後、ウエハWの振切乾燥(処理液供給機構5にIPA(IsoPropyl Alcohol)の供給ノズルを設けてIPA乾燥を行ってもよい)を実行した後、搬入時とは逆の動作でウエハ支持部451から外部の搬送機構のピックにウエハWを受け渡し、ウエハWを液処理装置3から搬出して一連の動作を終える。
【0046】
本実施の形態に係る液処理装置3によれば以下の効果がある。犠牲膜102(第1の膜)の上層に形成されたBARC103(第2の膜)に薬液を供給することによって当該薬液を第2の薬液として作用させてBARC103の機械的強度を低下させ、次いでウエハWの表面に二流体スプレーノズル52から吐出された混合流体により衝撃を与えてBARC103を破壊して除去している。この結果、例えばlow−k材料からなる層間絶縁膜101へのBEOL工程において、パターニングされた層間絶縁膜101の上層側に強固に付着しているBARC103などの膜を短時間で除去することができる。
【0047】
また液処理装置3から排出される薬液にBARC片106が多く含まれている期間中は、その排液の排出先は排出ライン683側に切り替えられているので多量のBARC片106がリサイクルタンク61に流れ込むことがなく、リサイクルタンク61中の薬液を再使用してもフィルター64の目詰まりが発生しにくくなり、フィルター64の交換頻度を下げることができる。
【0048】
また上述の実施の形態においては、第2の膜であるBARC103の機械的強度を低下させる第2の薬液と、第1の膜である犠牲膜102を溶解させる第1の薬液とに共通の薬液を用いた例を示したが、第2の膜の機械的強度を低下させる機能、第1の膜を溶解させる機能の各々の機能を専用に備えた2種類の薬液を用いてもよい。
【0049】
また、図7〜図9を用いて説明した例においては、BARC103に薬液を供給してその機械的強度を低下させる工程と、二流体スプレーノズル52から吐出された混合流体によりBARC103を除去する工程とを1つのサイクルとしたとき、このサイクルを1回のみ実行した例を示した。しかしこのサイクルは1回のみ実行する場合に限らず2回以上の複数回行ってもよい。
【0050】
さらにまたBARC103(第2の膜)に物理的衝撃を与える手法も本例に示した二流体スプレーノズル52を用いる例に限定されず、例えばDIW等の液体や窒素ガス等の気体を各々単独で吐出するジェットノズルにより衝撃を与えてもよい。このほかBARC103に物理的衝撃を与えるスプレーノズル52の他に、BARC片106を流すために専用の流体ノズルを設けてもよい。また、BARC103に物理的衝撃を与える手法は流体を用いる手法に限らず、物理的な洗浄手段、例えば洗浄ブラシなどにより衝撃を与えてもよい。
【0051】
この他、上述の実施の形態において液処理装置3は、例えば図2に示したようにウエハWをほぼ水平に保持した状態で回転させる構成となっており、回転させたウエハWの表面に薬液を供給してスピン塗布し、また薬液ノズル51を径方向にスキャンさせることによりウエハW全面に満遍なく物理的な衝撃を与えることが可能となっているが、必ずしもウエハWを回転させなくてもよい。例えば水平保持されたウエハWの上方に、ウエハWと平行な面内を縦-横方向に自在に移動可能なように薬液ノズル51や二流体スプレーノズル52を設け、これらのノズルを横方向に往復させてウエハW表面を直線状にスキャンしながら、ウエハWまたはノズル51、52を縦方向に間欠的に移動させて一筆書きの要領で満遍なくウエハWの全面をスキャンすることにより薬液を供給したり物理的衝撃を与えたりしてもよい。
【0052】
以上の例に加えて第2の膜は、例えばレジスト膜の硬化層などであってもよく、またARCがレジスト膜の上層側に形成されたTARCであり、これが第2の膜となっている場合には、TARCの下層側に形成されたレジスト膜や犠牲膜が第1の膜となる。また、層間絶縁膜もlow−k材料により構成されている場合に限定されず、例えばポリシリコンやSiOに形成されたパターンを保護するためなどに、BARCやレジスト硬化層の溶解能力が小さな第1の薬液を用いる場合などにも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
W ウエハ
101 層間絶縁膜
102 犠牲膜
103 BARC
104 レジスト膜
105 配線
3 液処理装置
36 カップ体
4 ウエハ保持機構
5 処理液供給機構
51 薬液ノズル
52 二流体スプレーノズル
61 リサイクルタンク
682 薬液回収ライン
683 排出ライン
69 切替バルブ
7 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の膜の上層に第2の膜が形成された基板から、第1の膜及び第2の膜を除去する液処理装置において、
前記基板に前記第1の膜を溶解させるための第1の薬液を供給する第1の薬液供給部と、
前記基板に前記第2の膜の強度を低下させるための第2の薬液を供給する第2の薬液供給部と、
前記第2の膜に物理的衝撃を与える衝撃供与部と、
物理的衝撃が与えられた第2の膜の破片を流すための流体を前記基板に供給する流体供給部と、
前記基板に、前記第2の薬液供給部から第2の薬液を供給し、次いで前記流体供給部から流体を供給した後、前記第1の薬液供給部から第1の薬液を供給するように各部を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記流体供給部は、当該流体供給部から供給される流体により第2の膜に物理的衝撃を与える衝撃供与部を兼用していることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記基板に供給された後の薬液を回収する薬液回収ラインと、前記第2の膜の破片を含む流体を排出する排出ラインと、これら薬液回収ラインと排出ラインとの間で前記基板に供給された後の薬液または流体の流出先を切り替える切替部と、を備え、前記制御部は基板に供給された第1の薬液または第2の薬液を前記薬液回収ラインへと流出させ、第2の膜の破片を含む前記流体を前記排出ラインへと流出させるように、前記切替部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記第1の薬液と第2の薬液とが共通の薬液であり、前記第1の薬液供給部と第2の薬液供給部とを共用することを特徴とする請求項1ないし3に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記流体供給部は、基板の表面に液体と気体との混合流体を噴射する二流体スプレーノズルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項6】
前記第1の薬液はアミン系の剥離剤を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項7】
第1の薬液に溶解する第1の膜と、この第1の膜の上層に形成され、当該第1の膜よりも前記第1の薬液に溶解しにくい第2の膜とが形成された基板から、これら第1の膜及び第2の膜を除去する液処理方法において、
前記第2の膜の強度を低下させるため、前記基板に第2の薬液を供給する工程と、
次いで、前記第2の膜に物理的衝撃を与えて前記第2の膜を破壊する工程と、
基板に流体を供給して、物理的衝撃が与えられた第2の膜の破片を流体により流し去ることによって第2の膜を除去する工程と、
この後、前記基板に前記第1の薬液を供給し、前記第1の膜を溶解させて除去する工程と、を含むことを特徴とする液処理方法。
【請求項8】
前記流体は、気体と液体との二流体混合流体であることを特徴とする請求項7に記載の液処理方法。
【請求項9】
前記基板に第1の薬液、第2の薬液、または物理的衝撃を与えるための流体の少なくとも一つを供給する際に、当該基板をほぼ水平に保持した状態で回転させる工程を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の液処理方法。
【請求項10】
前記基板に供給された第1の薬液または第2の薬液は薬液回収ラインへと流出させ、前記第2の膜の破片を含む前記流体は排出ラインへと流出させるように、前記基板に供給された後の薬液または流体の流出先を切り替える工程を含むことを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一つに記載の液処理方法。
【請求項11】
前記液処理方法は、第1の膜及び第2の膜がlow−k材料の上層に形成された基板の表面から、これら第1の膜及び第2の膜を除去するためのものであることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一つに記載の液処理方法。
【請求項12】
前記第1の膜はレジスト膜であるか、このレジスト膜の下層に形成され、基板表面の凹凸をなだらかにして、前記レジスト膜の表面を平坦化するための膜であるかの少なくとも一方であり、前記第2の膜はレジスト膜の露光時における入射光の反射を抑える反射防止膜であるか、または前記レジスト膜を構成する材料が化学的に変化して形成された硬化層であることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1つに記載の液処理方法。
【請求項13】
前記第1の薬液はアミン系の剥離剤を含むことを特徴とする請求項7ないし12のいずれか一つに記載の液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−9300(P2011−9300A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149033(P2009−149033)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】