説明

炭化珪素半導体の洗浄方法

【課題】SiC半導体の表面特性を向上できるSiC半導体の洗浄方法を提供する。
【解決手段】SiC半導体の洗浄方法は、以下の工程を備えている。SiC半導体の表面にイオン注入する。表面に酸化膜を形成する。酸化膜を除去する。形成する工程では、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いて酸化膜を形成する。形成する工程は、SiC半導体の表面およびオゾン水の少なくとも一方を加熱する工程を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(SiC)半導体の洗浄方法に関し、より特定的には酸化膜を有する半導体デバイスに用いるSiC半導体の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの作製において、半導体の表面の洗浄を行なう。このような半導体の表面の洗浄として、たとえば、特許第3733792号公報(特許文献1)、特開平6−314679号公報(特許文献2)に開示の技術が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、アニール後のSiC表面の異常堆積物、組成変化、表面形状の変化等の影響を除去することを目的として、SiC基板にイオン注入された不純物を活性化するためのアニール後、表面清浄化の前処理法としてRCA洗浄を行なってからプラズマによる表面エッチングを行なうことが開示されている。
【0004】
特許文献2には、半導体の表面に付着しているパーティクルや金属不純物を除去することを目的として、以下のように半導体の表面の洗浄を行なうことが開示されている。すなわち、シリコン(Si)基板をオゾンを含む超純水で洗浄してSi酸化膜を形成し、このSi酸化膜の内部や表面にパーティクルおよび金属不純物を取り込む。次に、このSi基板を希フッ酸水溶液で洗浄してSi酸化膜をエッチング除去し、同時にパーティクルおよび金属不純物を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3733792号公報
【特許文献2】特開平6−314679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示の洗浄方法は、RCA洗浄を行なってからプラズマによる表面エッチングを行なっている。しかしながら、プラズマによる表面エッチングを行なっても、表面特性を十分に向上できないことを本発明者は見出した。
【0007】
上記特許文献2に開示の洗浄方法は、Si半導体に関する。上記特許文献2の洗浄方法をSiC半導体に適用すると、SiCはSiよりも熱的に安定な化合物であるので、SiC半導体の表面が酸化されにくいことを本発明者は見出した。つまり、上記特許文献2の洗浄方法は、Siの表面を酸化することはできるが、SiCの表面を十分に酸化できない。このため、SiCの表面を十分に洗浄することはできないので、SiC半導体の表面特性を向上できない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、SiC半導体の表面特性を向上できるSiC半導体の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、表面にイオン注入されたSiC半導体は、結晶性が崩れていることに着目し、この結晶を除去する洗浄方法について鋭意研究した。また、本発明者は、安定な化合物であるSiC半導体に対する洗浄効果を発現するための条件について鋭意研究した。その結果、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、SiC半導体の洗浄方法は、以下の工程を備えている。SiC半導体の表面にイオン注入する。表面に酸化膜を形成する。酸化膜を除去する。形成する工程では、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いて酸化膜を形成する。
【0011】
本発明者は、安定な化合物であるSiC半導体の表面を酸化するための酸化剤として、酸化力の高いオゾン水を用いることを見出した。そして、本発明者がイオン注入により崩れた結晶を酸化するための条件について鋭意研究した結果、オゾン水の濃度を150ppm以上にすることによって、イオン注入により劣化した結晶を酸化できることを見出した。
【0012】
したがって、本発明のSiC半導体の洗浄方法によれば、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いることにより、SiC半導体の表面とオゾン水との反応を高めることができるので、安定性の高い化合物であるSiC半導体の表面に深く酸化膜を形成することができる。このため、イオン注入により崩れた結晶を酸化した酸化膜を形成できるので、この酸化膜を除去することで、SiC半導体の表面のイオン注入により崩れた結晶を除去することができる。したがって、SiC半導体の表面特性を向上することができる。
【0013】
上記SiC半導体の洗浄方法において好ましくは、形成する工程は、表面およびオゾン水の少なくとも一方を加熱する工程を含む。
【0014】
安定な化合物であるSiC半導体の表面を酸化するため本発明者が鋭意研究した結果、オゾン水とSiC半導体の表面との接液面を加熱することにより、SiC半導体の表面の酸化をより促進できることを見出した。このため、SiC半導体の表面およびオゾン水の少なくとも一方を加熱することで、酸化膜を容易に形成することができる。したがって、SiC半導体の表面特性をより向上することができる。
【0015】
上記SiC半導体の洗浄方法において好ましくは、加熱する工程は、オゾン水を25℃以上90℃以下に加熱する工程を含む。上記SiC半導体の洗浄方法において好ましくは、加熱する工程は、SiC半導体の表面を25℃以上90℃以下に加熱する工程を含む。
【0016】
本発明者が、SiC半導体の表面の酸化を促進するための条件について鋭意研究した結果、上記の条件を見出した。25℃以上の場合、酸化反応を促進でき、90℃以下の場合、オゾンの分解を抑制できる。
【0017】
上記SiC半導体の洗浄方法において好ましくは、除去する工程では、フッ化水素(HF)を用いて酸化膜を除去する。
【0018】
これにより、酸化膜を容易に除去できるので、表面に残存する酸化膜を低減することができる。
【0019】
上記SiC半導体の洗浄方法において好ましくは、上記表面は、{0001}面に対して50°以上65°以下のオフ角を有する。
【0020】
本発明者は、表面が上記範囲のオフ角を有する場合に、イオン注入により崩れた結晶が酸化されやすい特性を有することを見出した。このため、上記表面を有するSiC半導体の洗浄効果をより効果的に発現することができる。
【0021】
上記SiC半導体の洗浄方法において好ましくは、形成する工程と、除去する工程とを、同時に行なう。
【0022】
これにより、イオン注入により崩れた結晶を酸化できるとともに、酸化膜を除去することができるので、SiC半導体を洗浄する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明のSiC半導体の洗浄方法によれば、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いてSiC半導体の表面に酸化膜を形成することにより、イオン注入により崩れた結晶を除去できるので、SiC半導体の表面特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態におけるSiC半導体の洗浄方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態におけるSiC基板を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態においてエピタキシャル層を形成した状態を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態においてイオン注入されたエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるSiC半導体の洗浄装置を概略的に示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例におけるSiC半導体の洗浄装置を概略的に示す模式図である。
【図7】本発明例1、比較例1、2で洗浄するエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。また、本明細書中においては、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0026】
図1〜図6を参照して、本発明の一実施の形態のSiC半導体の洗浄方法について説明する。
【0027】
まず、図1および図2に示すように、表面2aを有するSiC基板2を準備する(ステップS1)。SiC基板2は、特に限定されないが、たとえば以下の方法により準備することができる。
【0028】
具体的には、たとえば、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライド気相成長)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法、OMVPE(OrganoMetallic Vapor Phase Epitaxy:有機金属気相成長)法、昇華法、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着)法などの気相成長法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相成長法などにより成長されたSiCインゴットを準備する。その後、SiCインゴットから表面を有するSiC基板を切り出す。切り出す方法は特に限定されず、SiCインゴットからスライスなどによりSiC基板を切り出す。次いで、切り出したSiC基板の表面を研磨する。研磨する面は、表面のみでもよく、表面と反対側の裏面をさらに研磨してもよい。研磨する方法は特に限定されないが、表面を平坦にするとともに、傷などのダメージを低減するために、たとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)を行なう。CMPでは、研磨剤としてコロイダルシリカ、砥粒としてダイヤモンド、酸化クロム、固定剤として接着剤、ワックスなどを用いる。なお、CMPと併せて、あるいは代わりに、電界研磨法、化学研磨法、機械研磨法などの他の研磨をさらに行なってもよい。また研磨を省略してもよい。これにより、図2に示す表面2aを有するSiC基板2を準備することができる。このようなSiC基板2として、たとえば導電型がn型であり、抵抗が0.02Ωcmの基板を用いる。
【0029】
SiC基板2の表面2aは、{0001}面に対して50°以上65°以下のオフ角を有することが好ましく、<1−100>方向とのなす角が5°以下のオフ角を有することがより好ましい。特に、SiC基板2の表面2aは、<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角が−3°以上+5°以下であることが好ましく、<1−100>方向における(0−33−8)面に対するオフ角が−3°以上+5°以下であることがさらに好ましい。SiC基板2の表面2aをこのような面にすることにより、この上に形成するエピタキシャル層の表面120a(図3参照)も同様の面に形成することができる。
【0030】
次に、図1および図3に示すように、SiC基板2の表面2a上に、気相成長法、液相成長法などにより、エピタキシャル層120を形成する(ステップS2)。本実施の形態では、たとえば以下のようにエピタキシャル層120を形成する。
【0031】
具体的には、図3に示すように、SiC基板2の表面2a上に、バッファ層121を形成する。バッファ層121は、たとえば導電型がn型のSiCからなり、たとえば厚さが0.5μmのエピタキシャル層である。またバッファ層121における導電性不純物の濃度は、たとえば5×1017cm-3である。
【0032】
その後、図3に示すように、バッファ層121上に耐圧保持層122を形成する。耐圧保持層122として、気相成長法、液相成長法などにより、導電型がn型のSiCからなる層を形成する。耐圧保持層122の厚さは、たとえば15μmである。また耐圧保持層122におけるn型の導電性不純物の濃度は、たとえば5×1015cm-3である。
【0033】
次に、図1および図4に示すように、エピタキシャル層120の表面120aにイオン注入する(ステップS3)。本実施の形態では、図4に示すように、p型ウエル領域123と、n+ソース領域124と、p+コンタクト領域125とを、以下のように形成する。まず導電型がp型の不純物を耐圧保持層122の一部に選択的に注入することで、ウエル領域123を形成する。その後、n型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってソース領域124を形成し、また導電型がp型の導電性不純物を所定の領域に選択的に注入することによってコンタクト領域125を形成する。なお不純物の選択的な注入は、たとえば酸化膜からなるマスクを用いて行われる。
【0034】
このようなイオン注入工程(ステップS3)の後、活性化アニール処理が行われてもよい。たとえば、アルゴン雰囲気中、加熱温度1700℃で30分間のアニールが行われる。
【0035】
これらの工程により、SiC基板2と、SiC基板2上に形成されたエピタキシャル層120とを備えたエピタキシャルウエハ100を準備することができる。エピタキシャルウエハ100において、イオン注入した表面120aの結晶性は崩れている。言い換えると、イオン注入により表面120aはダメージを受けている。
【0036】
エピタキシャルウエハ100の表面120aは、{0001}面に対して50°以上65°以下のオフ角を有することが好ましく、<1−100>方向とのなす角が5°以下のオフ角を有することがより好ましい。特に、エピタキシャルウエハ100の表面120aは、<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角が−3°以上+5°以下であることが好ましく、<1−100>方向における(0−33−8)面に対するオフ角が−3°以上+5°以下であることがより好ましい。表面120aがこのような範囲のオフ角を有する場合に、イオン注入(ステップS3)により崩れた結晶が酸化されやすい特性を有する。このため、後述する酸化膜を形成するステップS4および酸化膜を除去するステップS5による、上記表面120aを有するエピタキシャルウエハ100の洗浄効果をより効果的に発現することができる。
【0037】
また、表面120aが上記範囲のオフ角を有する場合、この表面120aを洗浄して半導体デバイスを作製すると、以下の点で有利である。オフ角が43.3°の(01−14)面からオフ角が51.5°の(01−13)面にかけてオフ角の増大とともにキャリア移動度の顕著な増大が見られるため、表面120aは{0001}面に対して50°以上であることが好ましい。オフ角が62.1°の(01−12)面からオフ角が90°の(01−10)面に掛けてオフ角の増大とともにキャリア濃度の顕著な減少が見られるため、表面120aは{0001}面に対して65°以下であることが好ましい。<1−100>方向はSiCにおける代表的なオフ方位であり、オフ角を<1−100>方向とのなす角を5°以下にすることにより、製造工程における加工のばらつきを低減できる。SiC基板2の表面2aについて、<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角が−3°以上+5°以下である場合、特に高いチャネル移動度が得られる。{03−38}面の中でも特にC(カーボン)面側の面である(0−33−8)面に絶縁膜を形成する構造を採用することにより、キャリア移動度が大幅に向上する。
【0038】
ここで、「面方位{03−38}に対してオフ角が−3°以上+5°以下である」状態とは、<0001>方向およびオフ方位の基準としての<01−10>方向の張る平面への上記表面の法線の正射影と、{03−38}面の法線とのなす角度が−3°以上+5°以下である状態を意味し、その符号は、上記正射影が<01−10>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。
【0039】
次に、エピタキシャルウエハ100においてエピタキシャル層120の表面120aに、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いて酸化膜を形成する(ステップS4)。このステップS4では、エピタキシャル層120の表面120aを酸化できるので、ステップS3においてイオン注入で結晶性が崩れた表面を酸化できる。また、エピタキシャルウエハ100の表面120aに付着しているパーティクル、金属不純物などを酸化膜の表面や内部に取り込むことができる。なお、酸化膜は、たとえば酸化シリコンである。
【0040】
このステップS2では、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いて酸化膜を形成する。150ppm以上の場合、表面120aとオゾンとの反応速度を高めることができるので、実質的に表面120aに酸化膜を形成することができる。SiCは化学的に安定な化合物であるので、オゾン水の溶存オゾン濃度が高いほど酸化反応が促進されて好ましいが、製造上の理由から、上限はたとえば300ppmである。このような観点から、オゾン水の濃度は、150ppm以上300ppm以下であることが好ましい。
【0041】
なお、上記オゾン水は、150ppm以上のオゾンを含む水であれば特に限定されないが、150ppm以上のオゾンを含む超純水であることが好ましい。また、上記オゾン水の濃度は、イオン注入された表面120aに供給されたときの濃度である。
【0042】
このステップS4では、表面120aおよびオゾン水の少なくとも一方を加熱することが好ましい。これにより、表面120aとオゾン水との接液面が加熱されることになる。この接液面の温度が高い場合、酸化反応を促進することができる。この観点から、接液面が25℃以上90℃以下になるように加熱することが好ましい。つまり、表面120aおよびオゾン水の少なくとも一方を25℃以上90℃以下になるように加熱することが好ましい。25℃以上の場合、酸化反応を促進でき、90℃以下の場合、オゾンの分解を抑制できる。
【0043】
エピタキシャルウエハ100の加熱方法は、特に限定されないが、たとえばSiC基板2の裏面側にヒータを配置して裏面側から加熱することができる。オゾン水の加熱方法は特に限定されないが、たとえばオゾン水を供給する供給部を加熱することができる。
【0044】
オゾン水の酸化還元電位は、500mV以上であることが好ましく、1V以上であることがより好ましい。これにより、オゾン水の酸化力がより高まるので、表面120aにおける酸化反応をより促進することができる。
【0045】
このステップS4では、オゾン水に炭酸ガスを混合させてもよい。炭酸ガスを混合させることで、オゾン水のpHを下げることができ、オゾンの分解を抑制することができると共に、表面120aに付着している金属を有効に取り除くことができる。このため、炭酸ガスを用いてオゾン水のpHを調整することにより、表面120aの酸化反応を促進するように炭酸ガスを混合して、オゾン水のpHを調整することが好ましい。
【0046】
またこのステップS4では、エピタキシャルウエハ100の表面120aにオゾン水をたとえばウエハ洗浄用の洗浄装置を用いて、スイングするオゾン水供給ノズル等を用いて、エピタキシャルウエハ100の表面120aの全面へ、30秒以上3分以下供給する。30秒以上の場合、エピタキシャルウエハ100の表面120aにより確実に酸化膜を形成することができる。3分以下の場合、エピタキシャルウエハ100の表面120aの洗浄のスループットを高めることができる。実際にはエピタキシャルウエハ100の表面120aの外径サイズや、オゾン水供給の流量や、ノズルの本数など、洗浄装置システムにおける供給の機能性に依存するが、実用上は、3分程度にて行なうことが可能である。
【0047】
またこのステップS4では、たとえば10nm以上100nm以下の厚みの酸化膜を形成する。10nm以上の厚みの酸化膜を形成することにより、イオン注入(ステップS3)で崩れた結晶を酸化することができる。100nm以下の厚みの酸化膜を形成することにより、イオン注入(ステップS3)において結晶性に変化のない領域を酸化することを抑制できる。
【0048】
ここで、図5を参照して、このステップS4で酸化膜を形成するために使用可能なSiC半導体の洗浄装置の主要な構成について説明する。
【0049】
図5に示すように、SiC半導体の洗浄装置は、オゾン水供給部205と、オゾン水供給部205と接続された反応容器251とを主に備えている。オゾン水供給部205は、上述したオゾン水215を内部に保持するとともに、反応容器251に供給する。反応容器251は、内部にオゾン水215とエピタキシャルウエハ100とを収容する。反応容器251は、オゾン水供給部205からオゾン水215を流入するための開口部251aと、オゾン水215を外部に排出するための開口部251bとを有している。
【0050】
なお、SiC半導体の洗浄装置は、上記以外の様々な要素を含んでいてもよいが、説明の便宜上、これらの要素の図示および説明は省略する。
【0051】
このSiC半導体の洗浄装置を用いてエピタキシャルウエハ100の表面120aに酸化膜を形成する場合には、たとえば以下のように行なう。すなわち、上述したオゾン水をオゾン水供給部205の開口部251aから、図5の矢印のように反応容器251の内部に、数L/mの流量で供給する。そして、反応容器251の開口部251bから図5の矢印のようにオゾン水をオーバーフローさせる。これにより、反応容器251の内部にオゾン水215を貯留することができる。また、反応容器251の内部にエピタキシャルウエハ100を収容する。収容するエピタキシャルウエハ100の枚数は特に限定されないが、スループットを向上する観点から、複数枚であることが好ましい。これにより、オゾン水に浸漬されたエピタキシャルウエハ100の表面120aと、オゾン水とを反応させることができるので、エピタキシャルウエハ100の表面120aに酸化膜を形成することができる。
【0052】
次に、エピタキシャルウエハ100の表面120aを純水で洗浄する(純水リンス工程)。純水は超純水であることが好ましい。純水に超音波を印加して洗浄してもよい。なお、この純水リンス工程は省略されてもよい。
【0053】
次に、エピタキシャルウエハ100の表面120aを乾燥する(乾燥工程)。乾燥する方法は特に限定されないが、たとえばスピンドライヤー等により乾燥する。なお、この乾燥工程は省略されてもよい。
【0054】
次に、酸化膜を除去する(ステップS5)。このステップS5では、イオン注入により崩れた結晶を酸化した酸化膜を除去するので、イオン注入(ステップS3)により崩れた結晶を除去することができる。同時に、不純物、パーティクルなどを取り込んだ酸化膜を除去するので、不純物、パーティクルなどを除去することができる。
【0055】
酸化膜の除去方法は、特に限定されず、たとえばウエットエッチング、ドライエッチング、熱分解、ハロゲンプラズマ、Hプラズマなどを用いることができる。
【0056】
ウエットエッチングは、たとえばHF、NH4F(フッ化アンモニウム)などの溶液を用いて酸化膜を除去する。ウエットエッチングは、HFを用いることが好ましく、1%以上10%以下の希HF(DHF)を用いることがより好ましい。HFを用いて除去する場合には、たとえば反応容器にHFを貯留させて、エピタキシャルウエハ100をHFに浸漬させることで酸化膜を除去することができる。
【0057】
ウエットエッチングなどの液相を用いたウエット洗浄をする場合には、ウエット洗浄後に、エピタキシャルウエハ100の表面を純水で洗浄してもよい。純水は超純水であることが好ましい。純水に超音波を印加して洗浄してもよい。なお、この工程は省略されてもよい。
【0058】
また、ウエット洗浄をする場合には、エピタキシャルウエハ100の表面を乾燥してもよい。乾燥する方法は特に限定されないが、たとえばスピンドライヤー等により乾燥する。なお、この工程は省略されてもよい。
【0059】
ドライエッチングは、たとえば1000℃以上SiCの昇華温度以下で、水素(H2)ガスおよび塩化水素(HCl)ガスの少なくとも一方のガスを用いて、酸化膜を除去する。1000℃以上の水素ガスおよび塩化水素ガスは、酸化膜を還元する効果が高い。酸化膜がSiOxの場合、水素ガスはSiOxをH2OとSiHyとに分解し、塩化水素ガスはSiOxをH2OとSiClzとに分解する。SiCの昇華温度以下にすることで、エピタキシャルウエハ100の劣化を抑制できる。また、ドライエッチングは、反応を促進できる観点から、減圧下で行なうことが好ましい。
【0060】
熱分解は、Oを含まない雰囲気で、1200℃以上SiCの昇華温度以下で、酸化膜を熱分解することが好ましい。1200℃以上のOを含まない雰囲気で酸化膜を加熱すると、酸化膜を容易に熱分解することができる。SiCの昇華温度以下にすることで、エピタキシャルウエハ100の劣化を抑制できる。また、熱分解は、反応を促進できる観点から、減圧下で行なうことが好ましい。
【0061】
ハロゲンプラズマとは、ハロゲン元素を含むガスから生成されるプラズマを意味する。ハロゲン元素とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)である。「ハロゲンプラズマを用いて酸化膜を除去する」とは、ハロゲン元素を含むガスを用いたプラズマにより酸化膜をエッチングすることを意味する。言い換えると、ハロゲン元素を含むガスから生成されるプラズマによって処理されることにより、酸化膜を除去することを意味する。
【0062】
ハロゲンプラズマとしては、Fプラズマを用いることが好ましい。Fプラズマとは、F元素を含むガスから生成されるプラズマを意味し、たとえば四フッ化炭素(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、フロン(C26)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)、二フッ化キセノン(XeF2)、フッ素(F2)、および三フッ化塩素(ClF3)の単独ガスあるいは混合ガスをプラズマ発生装置に供給することにより発生させることができる。「Fプラズマを用いて酸化膜を除去する」とは、F元素を含むガスを用いたプラズマにより酸化膜を除去することを意味する。言い換えると、F元素を含むガスから生成されるプラズマによって処理されることにより、酸化膜を除去することを意味する。
【0063】
Hプラズマとは、H元素を含むガスから生成されるプラズマを意味し、たとえばH2ガスをプラズマ発生装置に供給することにより発生させることができる。「Hプラズマを用いて酸化膜を除去する」とは、H元素を含むガスを用いたプラズマにより酸化膜をエッチングすることを意味する。言い換えると、H元素を含むガスから生成されるプラズマによって処理されることにより、酸化膜を除去することを意味する。
【0064】
このステップS5でハロゲンプラズマまたはHプラズマを用いる場合には、20℃以上400℃以下の温度で酸化膜を除去することが好ましい。この場合、エピタキシャルウエハ100へのダメージを低減できる。
【0065】
また、このステップS5でハロゲンプラズマまたはHプラズマを用いる場合には、0.1Pa以上20Pa以下の圧力で酸化膜を除去することが好ましい。この場合、ハロゲンプラズマまたはHプラズマと、酸化膜との反応性を高めることができるので、酸化膜を容易に除去することができる。
【0066】
また、酸化膜を形成するステップS4と酸化膜を除去するステップS5とを同時に行なってもよい。ここで、同時とは、少なくとも一部のステップが重複していればよい。つまり、開始および終了の少なくとも一方が同じタイミングであってもよく、開始および終了のタイミングが異なっていてもよい。
【0067】
酸化膜を形成するステップS4と酸化膜を除去するステップS5とを同時に行なう場合には、たとえばオゾン水とHFとを同時に供給する。これにより、エピタキシャルウエハ100の表面120aに酸化膜を形成しながら、酸化膜を除去することができる。
【0068】
以上の工程(ステップS1〜S5)を実施することにより、イオン注入(ステップS3)により崩れた結晶を除去することができる。また、表面120aに付着していた不純物、パーティクルなども除去することができる。
【0069】
ここで、上記ステップS5実施後の表面120aについて、表面120aをXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線分光分析)法などを用いて結晶性を確認することが好ましい。この確認工程において、イオン注入(ステップS3)により崩れた結晶が除去されていれば、洗浄を完了する。一方、この確認工程において、イオン注入(ステップS3)により崩れた結晶が残留していれば、上記酸化膜を形成するステップS4および酸化膜を除去するステップS5を繰り返す。
【0070】
なお、SiC基板を準備した(ステップS1)後に必要に応じて、同様の薬液または他の薬液での洗浄工程、純水リンス工程、乾燥工程などを追加して実施してもよい。他の薬液は、たとえば硫酸と過酸化水素水とを含むSPMが挙げられる。SPMで洗浄する場合には有機物を除去することもできる。また、RCA洗浄などを行なってもよい。
【0071】
(変形例)
図6を参照して、変形例のSiC半導体の洗浄方法について説明する。変形例におけるSiC半導体の洗浄方法は、図5に示すSiC半導体の洗浄装置の代わりに図6に示すSiC半導体の洗浄装置を用いる点において異なる。
【0072】
図6に示すSiC半導体の洗浄装置は、チャンバ201と、ウエハ保持部202と、支持台203と、駆動部204と、オゾン水供給部205と、HF供給部206とを主に備えている。図6に示すSiC半導体の洗浄装置は、エピタキシャルウエハ100の表面120aに形成した酸化膜を除去するための装置でもある。
【0073】
チャンバ201は、内部にウエハ保持部202と、支持台203と、駆動部204とを備えている。ウエハ保持部202は、エピタキシャルウエハ100を保持する。保持するエピタキシャルウエハ100の枚数は特に限定されないが、酸化膜を面内均一性を向上して形成する観点から、たとえば1枚である。支持台203は、ウエハ保持部202と接続され、ウエハ保持部202を保持する。駆動部204は、支持台203と接続され、支持台203を介してウエハ保持部202を回転させる。つまり、駆動部204により、ウエハ保持部202上に載置されたエピタキシャルウエハ100を図6に示す矢印のように回転することが可能である。駆動部204は、たとえばモータである。
【0074】
オゾン水供給部205は、上述したオゾン水215を内部に保持するとともに、ウエハ保持部202に載置されたエピタキシャルウエハ100の表面120aにオゾン水を供給する。オゾン水供給部205は、オゾン水215を排出するためのノズル205aを有する。ノズル205aの先端とエピタキシャルウエハ100の表面120aとの距離Lは、たとえば3cm以下であることが好ましい。この場合、オゾン水がノズルから排出したときの圧力と、エピタキシャルウエハ100への供給時の圧力との差によるオゾン分解を低減できるので、エピタキシャルウエハ100の表面120aとの反応前にオゾンが分解することを抑制でき、表面120aでの酸化反応を効率的に行なうことができる。
【0075】
HF供給部206は、上述したHF216を内部に保持するとともに、ウエハ保持部202に載置されたエピタキシャルウエハ100の表面120aにHFを供給する。HF供給部206は、HF216を排出するためのノズル206aを有する。
【0076】
なお、図6に示すSiC半導体の洗浄装置は、上記以外の様々な要素を含んでいてもよいが、説明の便宜上、これらの要素の図示および説明は省略する。また、図6に示すSiC半導体の洗浄装置は、枚葉式に特に限定されない。
【0077】
図6のSiC半導体の洗浄装置を用いてエピタキシャルウエハ100の表面120aを洗浄する場合には、たとえば以下のように行なう。すなわち、ステップS3でイオン注入された表面120aが、オゾン水供給部205およびHF供給部206と対向するように、ウエハ保持部202上にエピタキシャルウエハ100を載置する。次に、オゾン水供給部205のノズル205aからエピタキシャルウエハ100の表面120aに上述したオゾン水215を供給する。駆動部204によりウエハ保持部202上に載置されたエピタキシャルウエハ100をたとえば200rpmで回転させる。ノズルを左右にスイングしながら供給してもよい。これにより、エピタキシャルウエハ100の表面120aに均一に150ppm以上の濃度を有するオゾン水を供給することができる。その結果、供給されたオゾン水とエピタキシャルウエハ100の表面120aとを反応させることができるので、エピタキシャルウエハ100の表面120aに酸化膜を形成することができる。酸化膜の形成が完了すると、オゾン水供給部205からオゾン水の供給を停止する。
【0078】
次に、酸化膜を除去するステップS5では、HF供給部206からエピタキシャルウエハ100の表面120aに上述したHFを供給する。駆動部204によりエピタキシャルウエハ100を同様に回転させる。これにより、エピタキシャルウエハ100の表面120aに均一にHFを供給することができる。その結果、供給されたHFと、エピタキシャルウエハ100の表面120aに形成された酸化膜とを反応させることができるので、表面120aに形成された酸化膜を除去することができる。
【0079】
なお、図6の装置が純水供給部(図示せず)を備えている場合には、ステップS4またはステップS5の後に、エピタキシャルウエハ100の表面120aに純水を供給してもよい。この場合、純水リンス工程を行なうことができる。
【0080】
酸化膜を形成するステップS4と酸化膜を除去するステップS5とを同時に行なう場合には、オゾン水供給部205から排出されるオゾン水と、HF供給部206から排出されるHFとを同時にエピタキシャルウエハ100に供給する。これにより、酸化膜を形成する反応と、形成した酸化膜を除去する反応とを同時に発生させることができる。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ100の洗浄方法によれば、エピタキシャルウエハ100が酸化されにくいSiC半導体であっても、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いることにより、イオン注入(ステップS3)により表面120aに析出したCを酸化させてCOやCO2として除去することができる。また、表面120aに発生したSiドロップレットおよびSiC表面120aを酸化することができる。つまり、イオン注入(ステップS3)で劣化した結晶を酸化できる。このため、この酸化膜を除去することで、エピタキシャルウエハ100の表面120aのイオン注入により崩れた結晶を除去することができる。また、化学量論組成に近い表面に形成することもできる。さらに、表面120aに存在していた不純物、パーティクルなどを酸化膜に取り込むこともできるので、酸化膜を除去することにより、表面の清浄化もできる。したがって、エピタキシャルウエハ100の表面特性を向上することができる。
【0082】
なお、酸化膜を形成するステップS4および酸化膜を除去するステップS5を実施することで、酸化膜を形成せずに表面120aをエッチング等により直接除去するステップを実施する場合よりも、表面特性が高くなるという知見を本発明者は得ている。
【0083】
このように、エピタキシャルウエハ100のイオン注入された表面120aの特性を向上できるので、洗浄後の表面上にゲート酸化膜などの半導体デバイスを構成する絶縁膜を形成して半導体デバイスを作製すると、絶縁膜の特性を向上できるとともに、洗浄した表面と絶縁膜との界面、および絶縁膜中に存在する不純物、パーティクルなどを低減することができる。したがって、半導体デバイスの逆方向電圧印加時の耐圧を向上できるとともに、順方向電圧印加時の動作の安定性および長期信頼性を向上することができる。よって、本発明のSiC半導体の洗浄方法は、ゲート酸化膜形成前のエピタキシャルウエハ100の表面120aに特に好適に用いられる。
【0084】
なお、本実施の形態で洗浄したエピタキシャルウエハ100は、洗浄した表面100aに絶縁膜を形成することで絶縁膜の特性を向上できるので、絶縁膜を有する半導体デバイスに好適に用いることができる。したがって、本実施の形態で洗浄したエピタキシャルウエハ100は、たとえばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの絶縁ゲート型電界効果部を有する半導体デバイスや、JFET(Junction Field-Effect Transistor:接合電界効果トランジスタ)などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0085】
本実施例では、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いて、SiC半導体の表面に酸化膜を形成することの効果について調べた。
【0086】
(本発明例1)
本発明例1のSiC半導体として、図7に示すエピタキシャルウエハ130を洗浄した。
【0087】
具体的には、まず、SiC基板2として、(0−33−8)面を表面として有する4H−SiC基板を準備した(ステップS1)。
【0088】
次に、エピタキシャル層120を構成する層として、10μmの厚みを有し、1×1016cm-3の不純物濃度を有するp型SiC層131をCVD法により成長した(ステップS2)。
【0089】
次に、SiO2をマスクとして用いて、リン(P)をn型不純物として1×1019cm-3の不純物濃度を有するソース領域124およびドレイン領域129をイオン注入により形成した(ステップS3)。また、アルミニウム(Al)をp型不純物として1×1019cm-3の不純物濃度を有するコンタクト領域125をイオン注入により形成した(ステップS3)。なお、各々のイオン注入をした後には、マスクを除去した。
【0090】
次に、活性化アニール処理を行なった。この活性化アニール処理としては、Arガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1700〜1800℃、加熱時間30分と条件とした。
【0091】
これにより、イオン注入された表面130aを有するエピタキシャルウエハ130を準備した。
【0092】
次に、150ppmの濃度を有するオゾンを含む超純水を25℃に加熱して、図6に示す枚葉式のSiC半導体の洗浄装置を用いて、エピタキシャルウエハ130の表面130aに1slmの流量で供給した。このとき、エピタキシャルウエハ100の回転速度は200rpmであった。これにより、エピタキシャルウエハ130の表面130aに酸化膜を形成できる(ステップS4)ことを確認した。
【0093】
次に、超純水で、1分間エピタキシャルウエハ130の表面130aを洗浄した(純水リンス工程)。
【0094】
次に、5%以上10%以下の濃度の希HFをエピタキシャルウエハ130の表面130aに供給した。これにより、ステップS4で形成した酸化膜を除去できる(ステップS5)ことを確認した。
【0095】
次に、超純水で、1分間エピタキシャルウエハ130の表面130aを洗浄した(純水リンス工程)。
【0096】
以上の工程(ステップS1〜S5)により、エピタキシャルウエハ130の表面130aを洗浄した。洗浄後の表面130aは、XPS法によりイオン注入(ステップS3)により崩れた結晶が除去されているとともに、不純物およびパーティクルが低減されていることを確認した。
【0097】
(比較例1)
比較例1は、基本的には本発明例1と同様であったが、ステップS4において、20ppmのオゾン水をエピタキシャルウエハ130の表面130aに供給した点において異なっていた。この場合には、表面130aに酸化膜が形成されないことを確認した。このため、比較例1の洗浄後の表面130aは、イオン注入(ステップS3)により崩れた結晶を除去することもできず、かつ不純物およびパーティクルはほとんど低減されていなかった。
【0098】
(比較例2)
比較例2は、基本的には本発明例1と同様であったが、ステップS4において、30ppmのオゾン水をエピタキシャルウエハ130の表面130aに供給した点において異なっていた。この場合には、表面130aに酸化膜は形成されたが非常に薄い厚みであった。このため、比較例2の洗浄後の表面130aは不純物およびパーティクルは低減されていたが、イオン注入(ステップS3)により崩れた結晶を除去することはできなかった。
【0099】
また、30ppmの濃度のオゾン水を複数回供給したが、形成された酸化膜の厚みが非常に薄かったため、30ppmの濃度のオゾン水を用いてイオン注入(ステップS3)により崩れた結晶を除去することは工業的に難しいことがわかった。
【0100】
以上より、本実施例によれば、150ppm以上のオゾン水を用いることにより、SiC半導体の表面に厚い酸化膜を形成できることがわかった。このため、SiC半導体の表面に酸化膜を形成し、かつこの酸化膜を除去することにより、イオン注入により崩れた結晶を除去できることがわかった。
【0101】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
2 SiC基板、2a,100a,130a 表面、100,130 エピタキシャルウエハ、100a,130a 表面、120 エピタキシャル層、121 バッファ層、122 耐圧保持層、123 ウエル領域、124 ソース領域、125 コンタクト領域、129 ドレイン領域、131 p型SiC層、201 チャンバ、202 ウエハ保持部、203 支持台、204 駆動部、205 オゾン水供給部、205a,206a ノズル、206 HF供給部、215 オゾン水、251 反応容器、251a,251b 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素半導体の表面にイオン注入する工程と、
前記表面に酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜を除去する工程とを備え、
前記形成する工程では、150ppm以上の濃度を有するオゾン水を用いて前記酸化膜を形成する、炭化珪素半導体の洗浄方法。
【請求項2】
前記形成する工程は、前記表面および前記オゾン水の少なくとも一方を加熱する工程を含む、請求項1に記載の炭化珪素半導体の洗浄方法。
【請求項3】
前記加熱する工程は、前記オゾン水を25℃以上90℃以下に加熱する工程を含む、請求項2に記載の炭化珪素半導体の洗浄方法。
【請求項4】
前記加熱する工程は、前記表面を25℃以上90℃以下に加熱する工程を含む、請求項2または3に記載の炭化珪素半導体の洗浄方法。
【請求項5】
前記除去する工程では、フッ化水素を用いて前記酸化膜を除去する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体の洗浄方法。
【請求項6】
前記表面は、{0001}面に対して50°以上65°以下のオフ角を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体の洗浄方法。
【請求項7】
前記形成する工程と、前記除去する工程とを、同時に行なう、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129295(P2012−129295A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277997(P2010−277997)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】