説明

発振器、PLL回路および受信機、送信機

【課題】 回路規模を縮小することができるとともに集積化に適した発振器、PLL回路および受信機、送信機を提供すること。
【解決手段】 可変容量回路230、230Aの静電容量を可変することによって電圧制御型発振器21の発振周波数が変更される。可変容量回路230は、制御信号によって静電容量が連続的に変更可能な複数の可変容量素子60〜64と、可変容量素子のそれぞれに対応しており静電容量が固定の複数のコンデンサ50〜54と、可変容量素子とこれに対応するコンデンサとからなる組合せ回路を一組として複数の可変容量素子60〜64と複数のコンデンサ50〜54のそれぞれの選択的な接続の有無を組合せ回路を単位として切り替える複数のスイッチ71〜74、81〜84とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御電圧に応じて発振周波数が設定される発振器、PLL回路および受信機、送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
受信機の小型化、低価格化を実現するために、VCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御型発振器)を含むフロントエンドモジュールをIC化する手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。VCOの発振周波数の制御は、VCOに含まれるバリキャップ素子に印加する電圧を可変することにより行われるが、IC上で実現可能なバリキャップ素子の容量変化は小さいため、特許文献1に開示された受信機では、複数のVCOを備えることで、広い周波数可変範囲をカバーしている。
【特許文献1】特開2003−110425号公報(第6−16頁、図1−46)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1に開示された受信機では、IC上に同じ基本構成を有する複数のVCOを備える必要があるため、装置規模が大きくなるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、回路規模を縮小することができるとともに集積化に適した発振器、PLL回路および受信機、送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の発振器は、可変容量回路の静電容量を可変することによって発振周波数が変更可能であり、可変容量回路は、制御信号によって静電容量が連続的に変更可能な複数の可変容量素子と、可変容量素子のそれぞれに対応しており、静電容量が固定の複数のコンデンサと、可変容量素子とこれに対応するコンデンサとからなる組合せ回路を一組として、複数の可変容量素子と複数のコンデンサのそれぞれの選択的な接続の有無を、組合せ回路を単位として切り替える複数のスイッチとを備えている。これにより、可変容量回路の静電容量を大きく変化させることが可能になり、一つの発振器を用いて発振周波数の範囲を広く設定することができるため、複数の発振器を用いる必要がなく、回路規模を縮小することができる。また、可変容量素子とコンデンサを組み合わせることで広範囲にわたる周波数の変更を実現しているため、集積化に適している。さらに、複数の発振器を選択的に用いる場合には、切替直後の動作の安定性を考慮すると、その時点で選択されている発振器以外の発振器にも待機電流を流しておく必要があるため、消費電力が多くなる。これに対し、複数の発振器の代わりに一つの発振器を用いることにより、低消費電力化を実現することができる。
【0006】
また、上述した組合せ回路は、少なくとも一組がスイッチを介さずに常時接続されていることが望ましい。これにより、スイッチの数を減らすとともにスイッチのオンオフ切替動作の簡略化が可能になる。また、スイッチを介さずに直接接続される組合せ回路を備えることにより、スイッチのオン抵抗や分布容量に起因するQの低下を防止することができる。
【0007】
また、上述した複数のスイッチの断続状態を切り替えることにより発振周波数の粗調整を行い、制御信号によって可変容量素子の静電容量を変更することにより発振周波数の微調整を行うことが望ましい。あるいは、上述した複数のスイッチの断続状態を切り替えることにより、互いに一部がオーバーラップした複数の発振周波数帯域のいずれかが選択され、制御信号によって可変容量素子の静電容量を変更することにより、選択された発振周波数帯域内における発振周波数の調整が行われることが望ましい。これにより、粗調整(発振周波数帯域の切り替え)と微調整を組み合わせることにより、広い範囲の発振周波数について微調整を行うことが可能になる。
【0008】
また、上述した複数のスイッチのそれぞれは、組合せ回路を構成する可変容量素子とコンデンサのそれぞれについて個別に設けられており、1つの組の組合せ回路に対応する複数のスイッチの断続状態を同時に切り替えることが望ましい。あるいは、上述した複数のスイッチのそれぞれは、組合せ回路毎に設けられていることが望ましい。このように、可変容量素子毎およびコンデンサ毎に、あるいは可変容量素子とコンデンサからなる組合せ回路毎にスイッチを設けることにより、組合せ回路単位の接続状態の切り替えを確実に行うことができる。
【0009】
また、上述した可変容量回路とともに共振回路を構成するインダクタと、共振回路に接続される増幅素子とを備えることが望ましい。LC共振回路を備える発振器では、インダクタのインダクタンスを広範囲に変更することはできないため、代わりに可変容量回路の静電容量を広範囲に変更することにより、発振周波数の範囲が広いLC発振器を実現することができる。
【0010】
また、CMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いて、インダクタを含む全ての構成部品を半導体基板上に一体形成することが望ましい。あるいは、CMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いて、インダクタ以外の全ての構成部品を半導体基板上に一体形成することが望ましい。これらのプロセスを用いて発振器を製造することにより、発振器の小型化、製造コストの低減が可能になる。インダクタを含む全ての構成部品を半導体基板上に形成する場合には外付け部品をなくすことにより、パッド数の低減、配線の容易化等が可能になる。一方、インダクタを外付けし、それ以外の構成部品を半導体基板上に形成する場合には、低い発振周波数および高いQ値を容易に実現することができる。
【0011】
また、本発明のPLL回路は、上述した発振器を位相同期ループ内に含んでいる。具体的には、本発明のPLL回路は、上述した発振器と、発振器の出力信号を外部から設定可能な分周比nで分周して出力する可変分周器と、可変分周器の出力信号と所定の基準周波数信号との位相比較を行う位相比較器と、位相比較器の出力を平滑して制御信号としての制御電圧を生成するローパスフィルタとを備えている。上述した発振器を用いることにより、発振周波数の範囲が広いPLL回路を容易に実現することができる。また、上述した発振器は、可変容量素子とコンデンサとの組を単位として選択状態が切り替わるため、選択状態にかかわらず、可変容量素子に入力する制御信号(制御電圧)の変化量ΔVに対する可変容量回路全体の静電容量の変化の傾向を同じにすることができる。したがって、発振周波数に関わらず、PLL回路の引き込み時間をほぼ一定にすることができる。
【0012】
また、本発明の受信機は、上述したPLL回路から出力される発振信号と、アンテナを介して受信した受信信号とを混合するミキサと、ミキサの出力信号に含まれる所定周波数成分を抽出するフィルタと、フィルタを通した後の信号に対して所定の復調処理を行う復調回路と、PLL回路に含まれる可変分周器の分周比nを設定することにより、受信周波数の設定、変更を行う制御部とを備えている。上述した発振器を備えたPLL回路を用いることにより、受信周波数の範囲、すなわち受信帯域が広い受信機を容易に実現することができる。また、引き込み時間がほぼ一定のPLL回路を用いることにより、切り替え先となる受信周波数によって周波数切り替え時間が変動することを防止することができる。
【0013】
また、本発明の送信機は、上述したPLL回路から出力される発振信号を搬送波として送信信号を生成してアンテナから送信する送信回路と、PLL回路に含まれる可変分周器の分周比nを設定することにより、送信周波数の設定、変更を行う制御部とを備えている。上述した発振器を備えたPLL回路を用いることにより、送信周波数の範囲、すなわち送信帯域が広い送信機を容易に実現することができる。また、引き込み時間がほぼ一定のPLL回路を用いることにより、切り替え先となる送信周波数によって周波数切り替え時間が変動することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した一実施形態の受信機について詳細に説明する。図1は、一実施形態の受信機の基本構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の受信機は、入力回路10、低雑音増幅器(LNA)14、ミキサ16、局部発振器(LO)20、中間周波フィルタ(IFフィルタ)26、中間周波増幅器(IFA)28、アナログ−デジタル変換器(ADC)30、信号処理部32、デジタル−アナログ変換器(DAC)34、スピーカ36、制御部40、操作部42、表示部44を備えている。この受信機は、例えばFM放送波を受信するものであるが、AM放送波やテレビジョン放送波を受信する場合の基本構成も同じである。また、この受信機は、アンテナ12やスピーカ36あるいはその他のわずかな部品(例えば信号処理部32の動作クロック生成に必要な水晶発振器や局部発振器20に含まれるインダクタ等)を除くほとんどの部品が、CMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いて半導体基板上に一体形成されている。
【0015】
入力回路10は、アンテナ12と低雑音増幅器14のインピーダンス整合を行い、受信を希望する放送波を選択する同調回路あるいはバンドパスフィルタなどを含んで構成されている。低雑音増幅器14は、入力回路10を介して入力された受信信号を増幅する。ミキサ16は、低雑音増幅器14によって増幅された受信信号と局部発振器20から出力される局部発振信号とを混合した信号を出力する。局部発振器20は、PLL回路としての構成を有しており、受信を希望する放送波の周波数に対して、中間周波数分ずれた周波数の局部発振信号を生成して出力する。例えば、約60MHz〜115MHzの周波数範囲の局部発振信号を出力する。
【0016】
中間周波フィルタ26は、ミキサ16の出力信号の中から中間周波数成分(中間周波信号)を抽出して出力する。中間周波増幅器28は、中間周波フィルタ26によって抽出された中間周波信号を増幅する。アナログ−デジタル変換器30は、中間周波増幅器28から出力される増幅後の中間周波信号を所定周波数でサンプリングしてデジタルデータに変換する。
【0017】
信号処理部32は、デジタルデータに変換された中間周波信号に対してFM検波、ステレオ復調等の復調処理を含む各種の信号処理を行って音声データを生成する。デジタル−アナログ変換器34は、信号処理部32から出力されたオーディオデータをアナログのオーディオ信号に変換し、スピーカ36から出力する。制御部40は、受信機全体の動作を制御する。具体的には、制御部40は、操作部42を用いた利用者による選局操作に応じて局部発振器20の発振周波数を切り替えるとともに、そのときの受信状態(受信周波数(または放送局名)や電波強度、出力音量等)を表示部44に表示する。
【0018】
また、図1に示すように、本実施形態の局部発振器20は、電圧制御型発振器(VCO)21、分周比nの可変分周器22、位相比較器(PD)23、ローパスフィルタ(LPF)24を備えている。電圧制御型発振器21の出力信号は、局部発振器20から出力される局部発振信号としてミキサ16に入力されるとともに、可変分周器22に入力される。可変分周器22の分周比nは制御部40によって変更可能であり、可変分周器22は、電圧制御型発振器21の出力信号を分周比nで分周し、この分周した信号を位相比較器23の一方の入力端子に入力する。位相比較器23は、この一方の入力端子に入力された信号と、他方の入力端子に入力された基準周波数信号frとの位相比較を行い、位相差に応じた信号を出力する。ローパルフィルタ24は、位相比較器23の出力信号を平滑して制御電圧VTを生成し、電圧制御型発振器21に印加する。電圧制御型発振器21の発振周波数は、印加される制御電圧に対応して設定される。
【0019】
図2は、電圧制御型発振器21の詳細構成を示す図である。図2に示すように、電圧制御型発振器21は、2つのpチャネルMOSFET(pMOSFET)200、202、2つのnチャネルMOSFET(nMOSFET)204、206、2つの抵抗210、212、インダクタ220、同じ構成を有する2つの可変容量回路230、230Aを含んで構成されている。2つのpMOSFET200、202は、それぞれのドレインが共通に接続され、この接続点が抵抗210を介して正極側電源ライン(VDD)に接続されている。2つのnMOSFET204、206は、それぞれのソースが共通に接続され、この接続点が抵抗212を介して接地されている。また、一方のpMOSFET200のソースと一方のnMOSFET204のドレインが接続されており(この接続点をaとする)、この接続点aに他方のpMOSFET202、nMOSFET206のそれぞれのゲートが接続されている。同様に、他方のpMOSFET202のソースと他方のnMOSFET206のドレインが接続されており(この接続点をbとする)、この接続点bに一方のpMOSFET200、nMOSFET204のそれぞれのゲートが接続されている。
【0020】
また、接続点aには、インダクタ220の一方端と、可変容量回路230の一方端が接続されている。接続点bには、インダクタ220の他方端と、可変容量回路230Aの一方端が接続されている。可変容量回路230、230Aのそれぞれの他方端はともに接地されている。
【0021】
上述したインダクタ220と2つの可変容量回路230、230AによってLC共振回路が構成されており、寄生容量等の各種の寄生成分を含んで決定される共振周波数で電圧制御型発振器21が発振する。なお、インダクタ220は、半導体基板上に配線パターンを渦巻き形状に形成することで実現するようにしてもよいが、図2に示すように、2つのパッド222、224を介して接続された外付け部品として実現するようにしてもよい。
【0022】
可変容量回路230は、5個のコンデンサ50〜54と、5個の可変容量素子60〜64と、8個のスイッチ71〜74、81〜84とを備えている。5個のコンデンサ50〜〜54のそれぞれの一方端は上述した接続点aに共通に接続されている。コンデンサ50の他方端は接地されている。コンデンサ51の他方端はスイッチ71を介して接地されている。同様に、コンデンサ52の他方端はスイッチ72を介して接地されている。コンデンサ53の他方端はスイッチ73を介して接地されている。コンデンサ54の他方端はスイッチ74を介して接地されている。また、5個の可変容量素子60〜64一方端には、それぞれの容量値を可変設定する制御信号としての制御電圧VTが共通に印加されている。可変容量素子60の他方端は上述した接続点aに接続されている。可変容量素子61の他方端はスイッチ81を介して接続点aに接続されている。同様に、可変容量素子62の他方端はスイッチ82を介して接続点aに接続されている。可変容量素子63の他方端はスイッチ83を介して接続点aに接続されている。可変容量素子64の他方端はスイッチ84を介して接続点aに接続されている。可変容量素子60〜64のそれぞれは、半導体基板上に形成可能な各種の素子を用いることができる。例えば、逆バイアス電圧に応じて静電容量が変化する可変容量ダイオードやゲート電圧に応じてゲート容量が変化するMOSバラクタ等を用いることができる。
【0023】
上述したスイッチ71、81は、制御部40から入力される切替信号S1によってオンオフ(断続制御)される。同様に、スイッチ72、82は、制御部40から入力される切替信号S2によってオンオフされる。スイッチ73、83は、制御部40から入力される切替信号S3によってオンオフされる。スイッチ74、84は、制御部40から入力される切替信号S4によってオンオフされる。なお、可変容量回路230Aも上述した可変容量回路230と同じ構成を有しており、詳細な説明は省略する。
【0024】
図3は、スイッチ71〜74、81〜84の等価回路である。図3に示すように、nMOSFETを用い、制御部40から出力される制御信号S1等をゲートに入力することで、ソース・ドレイン間をオンオフすることでスイッチ71等が実現される。
【0025】
図4は、スイッチ71〜74、81〜84の別の等価回路である。図4に示すように、pMOSFETとnMOSFETのそれぞれのソース・ドレイン間を並列接続し、pMOSFETのゲートには制御部40から出力される制御信号S1等を直接入力し、nMOSFETのゲートには制御信号S1等をインバータ回路で反転した信号を入力することで、スイッチ71等を実現するようにしてもよい。このような構成を用いることにより、ソース電位あるいはドレイン電位によるソース・ドレイン間のオン抵抗への影響を少なくすることができる。
【0026】
図5は、可変容量回路230、230Aの静電容量とインダクタ220のインダクタンスの組み合わせによって決まる電圧制御型発振器21の発振周波数と制御電圧VTとの関係を示す図である。図5において、縦軸は電圧制御型発振器21の発振周波数fVCOに、横軸は制御電圧VTに対応している。
【0027】
可変容量回路230に含まれる全てのスイッチ71〜74、81〜84をオフすると、接続点aには可変容量回路230内のコンデンサ50と可変容量素子60からなる組合せ回路のみが接続された状態となる。このような接続状態では、可変容量回路230の静電容量が最も小さくなる。なお、可変容量回路230Aについても同様であり、以下では一方の可変容量回路230のみに着目して説明を行うものとする。ところで、可変容量回路230の静電容量をC、インダクタ220のインダクタンスをLとすると、電圧制御型発振器21の発振周波数fVCOは、1/√(LC)に比例した値となる。したがって、可変容量回路230に含まれる全てのスイッチ71〜74、81〜84をオフした場合には、図5において特性Aで示すように、電圧制御型発振器21の発振周波数fVCOは最も高くなる。
【0028】
次に、可変容量回路230に含まれるスイッチ71、81のみをオンすると(それ以外のスイッチ72〜74、82〜84はオフ状態が維持される)、接続点aにはコンデンサ50と可変容量素子60からなる組合せ回路に、コンデンサ51と可変容量素子61からなる組合せ回路が追加された接続状態となる。この場合には、図5において特性Bで示すように、電圧制御型発振器21の発振周波数fVCOは、特性Aよりも低くなる。
【0029】
同様に、コンデンサ52、可変容量素子62からなる組合せ回路、コンデンサ53、可変容量素子63からなる組合せ回路、コンデンサ54、可変容量素子64からなる組合せ回路を順番に追加することにより、図5において特性C、D、Eで示すように、電圧制御型発振器21の発振周波数fVCOを次第に下げることができる。
【0030】
ところで、本実施形態では、図5に示す5つの特性A〜Eは、隣接するもの同士で互いに発振周波数がオーバーラップするように各コンデンサと可変容量素子の特性値(静電容量値)が設定されている。オーバーラップの程度は、CMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いてこれらの素子を半導体基板上に形成した場合の特性値のばらつきを考慮し、特性値が最大にばらついた場合であっても連続的な発振周波数を実現できるように設定すればよい。また、5つの特性A〜Eは、ほぼ等間隔ΔFとなるように設定することが望ましい。
【0031】
このように、可変容量素子とこれに対応するコンデンサとからなる組合せ回路を一組として、複数の可変容量素子60〜64と複数のコンデンサ50〜54のそれぞれの接続の有無を、組合せ回路を単位として切り替えることにより、可変容量回路230、230Aの静電容量を大きく変化させることが可能になる。これにより、一つの発振器(電圧制御型発振器21)を用いて発振周波数の範囲を広く設定することができるため、複数の発振器を用いる必要がなく、回路規模を縮小することができる。また、可変容量素子とコンデンサを組み合わせることで広範囲にわたる周波数の変更を実現しているため、集積化に適している。さらに、複数の発振器を選択的に用いる場合には、切替直後の動作の安定性を考慮すると、その時点で選択されている発振器以外の発振器にも待機電流を流しておく必要があるため、消費電力が多くなる。これに対し、複数の発振器の代わりに一つの発振器を用いることにより、低消費電力化を実現することができる。
【0032】
また、上述した組合せ回路は少なくとも一組(可変容量素子60とコンデンサ50によって構成される組合せ回路)がスイッチを介さずに常時接続されているため、スイッチ71等の数を減らすとともにスイッチのオンオフ切替動作の簡略化が可能になる。また、スイッチ71等を介さずに直接接続される組合せ回路を備えることにより、スイッチのオン抵抗や分布容量に起因するQの低下を防止することができる。
【0033】
また、本実施形態の電圧制御発振器21では、複数のスイッチ71〜74、81〜84の断続状態を切り替えることにより発振周波数の粗調整を行い、制御信号によって可変容量素子60〜64の静電容量を変更することにより発振周波数の微調整を行っている。すなわち、複数のスイッチ71〜74、81〜84の断続状態を切り替えることにより、互いに一部がオーバーラップした複数の発振周波数帯域のいずれかが選択され、制御信号によって可変容量素子60〜64の静電容量を変更することにより、選択された発振周波数帯域内における発振周波数の調整が行われる。これにより、粗調整(発振周波数帯域の切り替え)と微調整を組み合わせることにより、広い範囲の発振周波数について微調整を行うことが可能になる。
【0034】
また、複数のスイッチ71〜74、81〜84のそれぞれは、組合せ回路を構成する可変容量素子61〜64とコンデンサ51〜54のそれぞれについて個別に設けられており、1つの組の組合せ回路に対応する2つのスイッチの断続状態を同時に切り替えている。これにより、組合せ回路単位の接続状態の切り替えを確実に行うことができる。
【0035】
また、LC共振回路を備える電圧制御型発振器21では、インダクタのインダクタンスを広範囲に変更することはできないため、代わりに可変容量回路230、230Aの静電容量を広範囲に変更することにより、発振周波数の範囲が広いLC発振器を実現することができる。
【0036】
また、CMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いて、インダクタ220以外の電圧制御型発振器21および局部発振器20の全ての構成部品を半導体基板上に一体形成することにより、電圧制御型発振器21および局部発振器20の小型化、製造コストの低減が可能になる。インダクタ220を外付けし、それ以外の構成部品を半導体基板上に形成する場合には、低い発振周波数および高いQ値を容易に実現することができる。
【0037】
また、本実施形態の受信機では、上述した電圧制御型発振器21を用いることにより、発振周波数の範囲が広いPLL回路としての局部発振器20を容易に実現することができる。特に、電圧制御型発振器21は、可変容量素子とコンデンサとの組を単位として選択状態が切り替わるため、選択状態にかかわらず、可変容量素子に入力する制御信号(制御電圧)の変化量ΔVに対する可変容量回路全体の静電容量の変化の傾向を同じにすることができる。したがって、発振周波数に関わらず、PLL回路の引き込み時間をほぼ一定にすることができる。
【0038】
また、本実施形態の受信機では、上述した電圧制御型発振器21およびPLL回路としての局部発振器20を用いているため、受信周波数の範囲、すなわち受信帯域が広い受信機を容易に実現することができる。また、引き込み時間がほぼ一定のPLL回路を用いることにより、切り替え先となる受信周波数によって周波数切り替え時間が変動することを防止することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。図2に示した電圧制御型発振器21は、接続点aと接続点bの両方に同じ静電容量値を有する可変容量回路230、230Aが接続されたバランス型の構成を有するが、図6に示すように、接続点bに接続された可変容量回路230Aを、可変容量回路230に対して十分に大きな静電容量を有する固定のコンデンサ230Bに置き換えたアンバランス型の構成を採用するようにしてもよい。なお、この場合には、一方端が制御電圧VTの給電点に接続され、他方端が接地されたコンデンサ230Cを追加する必要がある。このコンデンサ230Cは、可変容量回路230に対して十分に大きな静電容量を有している。
【0040】
また、上述した実施形態では、図2に示した構成を有する電圧制御型発振器21に可変容量回路230を用いた場合について説明したが、他の構成を有するLC発振器、CR発振器に可変容量回路230を含ませて本発明を適用するようにしてもよい。
【0041】
また、図2に示した電圧制御型発振器21内の可変容量回路230では、コンデンサと可変容量素子を1対1に対応させて組合せ回路を構成したが、一部の可変容量素子を省略したり、2つあるいはそれ以上のコンデンサで一つの可変容量素子を共用するようにしてもよい。例えば、図7に示すように、可変容量素子63とスイッチ83を省略し(図2に示す構成に対して)、2つのコンデンサ52、53に一つの可変容量素子62を対応させるようにしてもよい。この場合には、制御信号S2によってスイッチ72のオンオフを制御し、制御信号S3によってスイッチ73のオンオフを制御すればよい点は図2に示した場合と同じであるが、共用される可変容量素子62が接続されたスイッチ82は、オア回路90によって2つの制御信号S2、S3の論理和信号S5を生成してオンオフ制御すればよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、組となる組合せ回路を構成する可変容量素子とコンデンサの両方に別々にスイッチを接続したが、これらのスイッチを一つにまとめるようにしてもよい。例えば、図8に示すように、スイッチ71〜74を廃止して、スイッチ81〜84を共用するようにしてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では受信機について説明したが、本発明の発振器を送信機に用いるようにしてもよい。図9は、他の実施形態の送信機としてのFMトランスミッタの基本構成を示す図である。図9に示すFMトランスミッタは、アナログフロントエンド(アナログFE)110、DSP(デジタル信号処理装置)120、デジタル−アナログ変換器(D/A)130、132、ミキサ140、142、加算器144、増幅器146、アンテナ148、クロック発生回路150、局部発振器(LO)160、水晶振動子170、発振器(OSC)172、分周器174、180、182、184、制御部190、操作部192、表示部194を備えている。
【0044】
アナログフロントエンド110は、L信号とR信号からなるアナログステレオ信号が入力されており、これをデジタルステレオデータとしてのLデータとRデータに変換する。DSP120は、アナログフロントエンド110から出力されるLデータおよびRデータに基づいて、ステレオ変調処理、FM変調処理、IQ変調処理をデジタル処理によって行う。また、このDSP120には、オーディオデータやRDSデータが入力されており、これらのデータを対象に上述した各種の処理を行うこともできる。DSP120からはIQ変調後のIデータおよびQデータが出力される。
【0045】
デジタル−アナログ変換器130は、DSP120から出力されるIデータをアナログのI信号に変換する。また、デジタル−アナログ変換器132は、DSP120から出力されるQデータをアナログのQ信号に変換する。ミキサ140は、一方のデジタル−アナログ変換器130から出力されるI信号と所定の局部発振信号(第1の局部発振信号と称する)とを混合して出力する。ミキサ142は、他方のデジタル−アナログ変換器132から出力されるQ信号と第1の局部発振信号に対して90°位相が異なる局部発振信号(第2の局部発振信号と称する)とを混合して出力する。加算器144は、2つのミキサ140、142から出力された信号を合成して出力する。加算器144の出力は、増幅器146によって電力増幅された後アンテナ148から送信される。ミキサ140、142、加算器144、増幅器146が送信回路に相当する。
【0046】
クロック発生回路150は、DSP120のデジタル処理に必要な動作クロック信号CLKを生成する。例えば、16.384kHzの基準周波数信号fr1が入力されており、この基準周波数信号に同期し、この周波数の2461倍の周波数(40.321MHz)のクロック信号CLKが生成される。このために、クロック発生回路150は、電圧制御型発振器(VCO)152、分周器(1/m)154、位相比較器(PD)156、ローパスフィルタ(LPF)158を備えている。電圧制御型発振器152は、制御電圧Vcに対応する周波数の発振動作を行う。分周器154は、電圧制御型発振器152の出力信号を固定の分周比m(=2461)で分周して出力する。位相比較器156は、分周器154から出力される分周信号と、基準周波数信号fr1との位相比較を行い、位相差に応じたデューティのパルス信号を出力する。ローパスフィルタ158は、位相比較器156から出力されるパルス信号を平滑して、電圧制御型発振器152に供給する制御電圧Vcを生成する。このように、クロック発生回路150は、PLL構成を有しており、基準周波数信号fr1の周波数の2461倍の周波数(40.321MHz)を有するクロック信号CLKを生成して、DSP120に入力する。
【0047】
局部発振器160は、ミキサ140、142に入力する第1および第2の局部発振信号を生成するために必要な発振信号を生成する。例えば、32.768kHzの基準周波数信号fr2が入力されており、この基準周波数信号に同期し、この周波数のn倍の周波数の信号が生成される。このために、局部発振器160は、電圧制御型発振器(VCO)162、可変分周器(1/n)164、位相比較器(PD)166、ローパスフィルタ(LPF)168を備えている。電圧制御型発振器162は、制御電圧VTに対応する周波数の発振動作を行う。可変分周器164は、電圧制御型発振器162の出力信号を可変の分周比nで分周して出力する。位相比較器166は、可変分周器164から出力される分周信号と、基準周波数信号fr2との位相比較を行い、位相差に応じたデューティのパルス信号を出力する。ローパスフィルタ168は、位相比較器166から出力されるパルス信号を平滑して、電圧制御型発振器162に供給する制御電圧VTを生成する。このように、局部発振器160は、PLL構成を有するPLL回路であって、基準周波数信号fr2の周波数のn倍の周波数を有する信号を生成する。可変分周器164の分周比nは、制御部190によって設定される。
【0048】
発振器172は、水晶振動子170が接続されており、この水晶振動子170の固有振動周波数で発振する。本実施形態では、入手が容易であって安価な32.768kHzの固有振動周波数を有する水晶振動子170が用いられている。発振器172から出力される32.768kHzの発振信号は、基準周波数信号fr2として局部発振器160に入力されるとともに、分周比が2の分周器174を通した後の16.384kHzの信号が基準周波数信号fr1としてクロック発生回路150に入力されている。
【0049】
3つの分周器180、182、184は、それぞれの分周比が2に設定されており、局部発振器160内の電圧制御型発振器162の出力信号に対して、1/4の周波数を有する信号を第1の局部発振信号として生成するとともに、この第1の局部発振信号と同じ周波数を有し、位相のみが90°異なる信号を第2の局部発振信号として生成する。
【0050】
制御部190は、FMトランスミッタの全体を制御する。例えば、制御部190は、局部発振器160内の可変分周器164の分周比を設定して、FM信号の送信周波数を決定する。操作部192は、利用者によって操作される各種のスイッチ類が備わっている。例えば、電源スイッチや、送信周波数の切り替えを指示するアップキー、ダウンキー、送信対象となるリソースを選択指示する(アナログオーディオ信号とデジタルオーディオデータのいずれを送信対象とするかを指示する)選択キーなどが備わっている。表示部194は、送信周波数や操作部192の操作内容、電池残量などを表示する。
【0051】
上述した構成を有するFMトランスミッタは、水晶振動子170、アンテナ148、操作部192、表示部194を除く全ての部品がCMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いて半導体基板上に一体形成されている。また、上述した局部発振器160内の電圧制御型発振器162を図2、図6、図7、図8のいずれかに示す構成とすることにより、受信機の場合と同様に、送信周波数の範囲、すなわち送信帯域を広くすることが容易となる。また、送信周波数を切り替える際に、切り替え先となる送信周波数によって周波数切り替え時間が変動することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一実施形態の受信機の基本構成を示す図である。
【図2】電圧制御型発振器の詳細構成を示す図である。
【図3】スイッチの等価回路である。
【図4】スイッチの別の等価回路である。
【図5】可変容量回路の静電容量とインダクタのインダクタンスの組み合わせによって決まる電圧制御型発振器の発振周波数と制御電圧VTとの関係を示す図である。
【図6】アンバランス型の電圧制御型発振器の構成を示す図である。
【図7】電圧制御型発振器の他の変形例を示す図である。
【図8】電圧制御型発振器の他の変形例を示す図である。
【図9】他の実施形態の送信機としてのFMトランスミッタの基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 入力回路
14 低雑音増幅器(LNA)
16 ミキサ
20 局部発振器(LO)
21 電圧制御型発振器(VCO)
26 中間周波フィルタ(IFフィルタ)
28 中間周波増幅器(IFA)
32 信号処理部
36 スピーカ
40 制御部
42 操作部
44 表示部
50〜54 コンデンサ
60〜64 可変容量素子
71〜74、81〜84 スイッチ
220 インダクタ
230、230A 可変容量回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量回路の静電容量を可変することによって発振周波数が変更可能な発振器であって、
前記可変容量回路は、
制御信号によって静電容量が連続的に変更可能な複数の可変容量素子と、
前記可変容量素子のそれぞれに対応しており、静電容量が固定の複数のコンデンサと、
前記可変容量素子とこれに対応する前記コンデンサとからなる組合せ回路を一組として、前記複数の可変容量素子と前記複数のコンデンサのそれぞれの選択的な接続の有無を、前記組合せ回路を単位として切り替える複数のスイッチと、
を備えることを特徴とする発振器。
【請求項2】
請求項1において、
前記組合せ回路は、少なくとも一組が前記スイッチを介さずに常時接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数のスイッチの断続状態を切り替えることにより発振周波数の粗調整を行い、前記制御信号によって前記可変容量素子の静電容量を変更することにより発振周波数の微調整を行うことを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記複数のスイッチの断続状態を切り替えることにより、互いに一部がオーバーラップした複数の発振周波数帯域のいずれかが選択され、
前記制御信号によって前記可変容量素子の静電容量を変更することにより、選択された発振周波数帯域内における発振周波数の調整が行われることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記複数のスイッチのそれぞれは、前記組合せ回路を構成する前記可変容量素子と前記コンデンサのそれぞれについて個別に設けられており、1つの組の前記組合せ回路に対応する複数の前記スイッチの断続状態を同時に切り替えることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記複数のスイッチのそれぞれは、前記組合せ回路毎に設けられていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記可変容量回路とともに共振回路を構成するインダクタと、前記共振回路に接続される増幅素子とを備えることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項7において、
CMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いて、前記インダクタを含む全ての構成部品を半導体基板上に一体形成することを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項7において、
CMOSプロセスあるいはMOSプロセスを用いて、前記インダクタ以外の全ての構成部品を半導体基板上に一体形成することを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の発振器を位相同期ループ内に含むことを特徴とするPLL回路。
【請求項11】
請求項10において、
前記発振器と、
前記発振器の出力信号を外部から設定可能な分周比nで分周して出力する可変分周器と、
前記可変分周器の出力信号と所定の基準周波数信号との位相比較を行う位相比較器と、
前記位相比較器の出力を平滑して前記制御信号としての制御電圧を生成するローパスフィルタと、
を備えることを特徴とするPLL回路。
【請求項12】
請求項11に記載のPLL回路と、
前記PLL回路から出力される発振信号と、アンテナを介して受信した受信信号とを混合するミキサと、
前記ミキサの出力信号に含まれる所定周波数成分を抽出するフィルタと、
前記フィルタを通した後の信号に対して所定の復調処理を行う復調回路と、
前記PLL回路に含まれる前記可変分周器の分周比nを設定することにより、受信周波数の設定、変更を行う制御部と、
を備えることを特徴とする受信機。
【請求項13】
請求項11に記載のPLL回路と、
前記PLL回路から出力される発振信号を搬送波として送信信号を生成してアンテナから送信する送信回路と、
前記PLL回路に含まれる前記可変分周器の分周比nを設定することにより、送信周波数の設定、変更を行う制御部と、
を備えることを特徴とする送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−81593(P2007−81593A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264631(P2005−264631)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(503084059)有限会社ニューロソリューション (20)
【Fターム(参考)】