説明

研削装置

【課題】保持テーブルの回転によるワークの位置ずれを抑制でき、ワークの位置を精度よく検出できる研削装置を提供すること。
【解決手段】研削装置の検出手段における保持テーブル8aは、上面中央に吸引口8lを有する基台部8gと、基台部8g上に吸引口8lを囲むように配設された環状部材8hと、基台部8g上の環状部材8hの内側に配設された中央部材8iと、を有し、環状部材8hは非通気性と弾性とを有しワークW表面に貼着された保護テープの凹凸を吸収できる厚みであり、中央部材8iは通気性と弾性とを有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハなどのワーク(被加工物)を研削加工する際に、チャックテーブルに対してワークを所定の位置に位置付け可能な研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状であるワークの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって区画された複数の領域それぞれにIC,LSIなどのデバイスを形成した後、研削装置によってワーク裏面を研削してワークを所定の厚みに加工し、研削加工済みのワークを分割予定ラインに沿って切断することによって個々のチップへと分割する。
【0003】
研削装置においては、ワークを所定の向きおよび位置に位置付けてチャックテーブルに搬入し、ワークを保持したチャックテーブルと研削ホイールとの相対回転によってワークを研削する。ワークには、外周縁部に結晶方位を示すオリエンテーションフラットまたはオリエンテーションノッチと呼ばれる切り欠きが形成され、この切り欠きによりワークの向きが特定される。
【0004】
従来、チャックテーブルにワークを搬入する前に、ワークの向きおよび位置を検出する検出手段を備えた研削装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この検出手段は、保持テーブル上にバキューム方式で保持したワークを回転し、撮像手段でこのワークの外周縁部を順次撮像して、ワークの位置および向きを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−147134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワーク表面にバンプと呼ばれる複数の突起物が形成されていると、ワーク表面に保護テープを貼着しても表面の凹凸を完全に吸収できない場合がある。この場合、バンプが形成された面を下向きにしてワークを検出装置の従来のセラミックや金属で形成された保持テーブルに載置すると、ワーク表面(テープ表面)と保持テーブルとの間に隙間ができるため、バキューム方式の保持テーブルにおける吸着力が十分に作用せず、保持テーブルの回転によってワークが水平方向に位置ずれし、検出精度が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、保持テーブルの回転によるワークの位置ずれを抑制でき、ワークの位置を精度よく検出できる研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の研削装置は、表面から突出した複数の電極を有するワーク表面に保護テープが貼着され、前記表面に貼着された前記保護テープを介して前記ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたワークを裏面側から研削加工する研削手段と、前記保持手段にワークを搬入する前に、ワークの中心位置を検出する検出手段と、を含む研削装置であって、前記検出手段は、前記ワークを保持する保持テーブルと、前記保持テーブルの鉛直方向を回転軸として前記保持テーブルを回転させる回転部と、前記保持テーブルに保持された前記ワークの外周を撮像する撮像手段と、を有し、前記保持テーブルは、上面中央に吸引口を有する基台部と、前記基台部上に前記吸引口を囲むように配設された環状部材と、前記基台部上の前記環状部材の内側に配設された中央部材と、を有し、前記環状部材は非通気性と弾性とを有し前記ワーク表面に貼着された前記保護テープの凹凸を吸収できる厚みであり、前記中央部材は通気性と弾性とを有することを特徴とする。
【0009】
この研削装置によれば、研削装置の検出手段における保持テーブルは、上面中央に吸引口を有する基台部と、前記基台部上に前記吸引口を囲むように配設された環状部材と、前記基台部上の前記環状部材の内側に配設された中央部材と、を有し、前記環状部材は非通気性と弾性とを有し前記ワーク表面に貼着された前記保護テープの凹凸を吸収できる厚みであり、前記中央部材は通気性と弾性とを有するため、前記ワークを載置した際に前記ワークの表面形状に沿って前記保持テーブル表面が変形し、表面に凹凸を有するワークであっても保持テーブルにワークが適切に保持される。また、中央部材は通気性を有するため、ワークと中央部材との間に発生するバキューム方式の保持テーブルにおける吸着力が適切に作用する。そのため、保持テーブルの回転によるワークの位置ずれを抑制でき、ワークの位置を精度よく検出できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保持テーブルの回転によるワークの位置ずれを抑制でき、ワークの位置を精度よく検出できる研削装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施の形態に係る研削装置の外観斜視図である。
【図2】研削装置における検出手段の一部の(a)斜視図、(b)分解斜視図である。
【図3】検出手段における保持テーブルとワークとの関係を示す断面模式図である。
【図4】検出手段における撮像手段による撮像データおよび実測データの取得処理の説明図である。
【図5】研削装置におけるワーク中心位置の算出処理の説明図である。
【図6】研削装置におけるワーク中心位置の算出処理の説明図である。
【図7】研削装置におけるワーク中心位置の算出処理の説明図である。
【図8】研削装置における基準データの一例を示す図である。
【図9】研削装置におけるオリエンテーションフラット形成位置の算出処理の説明図である。
【図10】研削装置におけるチャックテーブルに対するワーク位置および向きの位置付け動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る研削装置1の外観斜視図である。なお、以下の説明では、本発明の特徴部分である検出手段を研削装置に適用した例について説明するが、例えば、ワークの向きおよび中心位置をチャックテーブルに位置付ける他の加工装置に適用することも可能である。
【0013】
図1に示すように、研削装置1は、複数の電極(バンプ)が形成された面を下向きにしてワークWを保持するチャックテーブル2と研削ユニット3の研削ホイール3aとを相対回転して、ワークW裏面に研削加工を施すように構成される。
【0014】
ここで、研削装置1の被加工物であるワークWについて説明する。ワークWは、略円板状に形成されており、表面に分割予定ラインが格子状に配列され、この分割予定ラインによって区画された複数の領域それぞれに図示しないデバイスが形成されている。そして、これらのデバイスと基板などを接続するための端子として、図示しないバンプがワークW表面から突出して形成されている。バンプは、ワークW表面に所定の間隔を空けて配置され、ワークW表面に凹凸を形成する。さらに、ワークW表面には、ワークW裏面の研削加工時にデバイスを保護するための保護テープが貼着される。また、ワークWの外周縁部には、結晶方位を示すオリエンテーションフラットOFが形成されている。
【0015】
なお、本実施の形態においては、ワークWとしてシリコンウェーハなどの半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、ワークWは特に限定されるものではなく、例えば、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)などの半導体ウェーハや、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料、さらにはミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:Total Thickness Variation)が要求される各種加工材料をワークWとしてもよい。
【0016】
研削装置1は、略直方体状の基台4を有し、この基台4には、前面4aからY軸方向に突出する一対のカセット載置部5a,5bが設けられている。カセット載置部5aは、搬入口として機能し、加工前のワークWを収容した搬入側のカセット6aが載置される。また、カセット載置部5bは、搬出口として機能し、加工後のワークWを収容した搬出側のカセット6bが載置される。
【0017】
基台4上に、カセット6a,6bに対してワークWの搬入および搬出を行う搬入搬出アーム7が、カセット載置部5a,5bに面して設置されている。搬入搬出アーム7は、駆動領域の広い多節リンク機構7aと、多節リンク機構7aの先端に設けられた保持部7bとを含んで構成される。搬入搬出アーム7は、多節リンク機構7aを駆動して搬入側のカセット6a内に収容されたワークWを検出部8に搬入し、また、洗浄部9から搬出側のカセット6b内にワークWを収容する。
【0018】
搬入搬出アーム7の一方側に、加工前のワークWの中心位置およびオリエンテーションフラットOFを検出する検出手段としての検出部8が設けられている。検出部8は、搬入搬出アーム7によって搬入されたワークWを保持する保持テーブル8aと、保持テーブル8aに保持したワークWを撮像する撮像手段としての撮像部8bと、Z軸方向(鉛直方向)を回転軸として保持テーブル8aを回転させる回転部8c(図1に不図示、図2参照)と、を含んで構成される。保持テーブル8aは、円板状に形成されており、ワークWを吸引保持する吸引源に連結されている。また、保持テーブル8aの外径は、ワークWの外径とほぼ同径に設定されている。さらに、保持テーブル8a表面は、ワークWを載置すると、弾性によりワークWの表面形状に沿って変形する。
【0019】
撮像部8bは、L字状の支持アーム8dを介して保持テーブル8aの上方に支持される。撮像部8bは、保持テーブル8aの断続的な回転に合わせてワークWの外周縁部を逐次撮像する。撮像部8bは、撮像素子(CCD)などで構成され、撮像した画像信号を制御部10に送り、ワークWの中心位置およびオリエンテーションフラットOFの形成位置が検出される。
【0020】
搬入搬出アーム7の他方側に、加工後のワークWを洗浄する洗浄部9が設けられている。洗浄部9は、ワークWよりも小径な円板状の洗浄テーブル9aを備えている。洗浄テーブル9aは、加工後のワークWが載置されると開口部9bを介して基台4内に下降して、洗浄液が噴射された状態で高速回転することでワークWを洗浄し、その後ワークWを乾燥する。
【0021】
検出部8と洗浄部9との間には、チャックテーブル2に加工前のワークWを供給するワーク供給部11と、チャックテーブル2から加工後のワークWを回収するワーク回収部12とが設けられている。ワーク供給部11は、Z軸方向に延在する回転軸11aと、回転軸11aの上端に支持された旋回アーム11bと、旋回アーム11bの先端に設けられたワークWを吸着保持する吸着保持部11cとを備える。回転軸11aは、Y軸およびZ軸方向に移動自在、かつ、Z軸まわりに回転自在に設けられ、Y軸およびZ軸方向の移動量ならびにZ軸まわりの回転量は制御部10によって制御される。吸着保持部11cは、回転軸11aのY軸方向の移動およびZ軸まわりの回転により水平面内における位置を調整でき、回転軸11aのZ軸方向の移動により高さ方向における位置を調整できる。ワーク供給部11は、保持テーブル8aからワークWを吸着保持して持ち上げ、チャックテーブル2上に載置する。このとき、保持テーブル8aの中心およびチャックテーブル2の中心がワーク供給部11の旋回軌跡上に位置するため、ワークWの中心がチャックテーブル2の中心に一致するように位置合わせされる。
【0022】
ワーク回収部12は、ワーク供給部11と略同一の構成であり、チャックテーブル2からワークWを吸引保持して持ち上げ、洗浄テーブル9a上に載置する。このとき、チャックテーブル2の中心および洗浄テーブル9aの中心がワーク回収部12の旋回軌跡上に位置するため、ワークWの中心が洗浄テーブル9aの中心に一致するように位置合わせされる。
【0023】
基台4上には、ワーク供給部11およびワーク回収部12に隣接して、Y軸方向に延在する矩形状の開口部13が設けられている。開口部13には、チャックテーブル2とともに移動可能な移動板14および蛇腹状の防水カバー15により被覆される。防水カバー15の下方には、チャックテーブル2をY軸方向に移動する図示しないボールねじ式の移動機構が設けられている。チャックテーブル2は、この移動機構により、ワーク供給部11およびワーク回収部12によってワークWが移載される移載位置と、研削ユニット3によってワークWが研削加工される加工位置との間を往復移動する。
【0024】
移動板14上に、保持手段としてのチャックテーブル2が設置されている。チャックテーブル2は、円板状に形成されており、ワークWを吸着保持するワーク保持部2aを備える。ワーク保持部2aは、例えば、ポーラスセラミック材により形成されており、基台4内に設置された図示しない吸引源に接続される。また、ワーク保持部2aは、ワークWの外形形状に沿って、オリエンテーションフラットOFに対応する部分を切り欠いた形状に設定されている。これにより、チャックテーブル2の向きが規定される。さらに、チャックテーブル2は、図示しない回転駆動機構により回転可能に構成されている。これにより、チャックテーブル2は、ワーク供給部11によってワークWを載置する際に、ワークWのオリエンテーションフラットOFの向きにワーク保持部2aの向きを合わせるように回転駆動される。
【0025】
基台4上には、開口部13に隣接して支柱部16が立設されており、支柱部16にはZ軸方向に形成された一対のZ軸ガイドレール17a,17bが配設されている。Z軸テーブル18は、Z軸ガイドレール17a,17bに沿ってZ軸方向に移動自在に設置されている。Z軸テーブル18の背面部には、図示しないナット部が形成され、ナット部にボールねじ19が螺合されている。そして、ボールねじ19の端部には、駆動モータ20が連結され、駆動モータ20によりボールねじ19が回転駆動される。
【0026】
Z軸テーブル18には、支持部21を介して研削手段としての研削ユニット3が支持されている。研削ユニット3には、図示しないスピンドルの下端に研削ホイール3aが着脱自在に装着される。研削ホイール3aは、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンドなどの結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成されている。研削ユニット3は、図示しないノズルから研削液を噴射しながら、チャックテーブル2に保持されたワークWを研削加工する。このとき、研削液の表面張力によってワークWとワーク保持部2aとの隙間がシールされるため、ワーク保持部2aに接するワークW表面に凹凸が形成されていたとしても、ワーク保持部2aによってワークWを適切に保持できる。
【0027】
制御部10は、CPU,ROM,RAMなどのハードウェア資源で構成されており、CPUがROMに記憶されている制御用ソフトウェアを読み出してプログラムに従って処理を実行する。制御部10は、検出部8によるワークWの中心位置およびオリエンテーションフラットOF形成位置の算出処理、ワーク供給部11によるワークWの位置合わせ処理、チャックテーブル2によるワークWに対する向き合わせ処理などの各処理を実行する。また、ROMやRAMには、制御用ソフトウェア以外に、画像データ用の直交平面座標系(図10参照)も記憶されている。
【0028】
次に、研削装置1における検出部8について詳細に説明する。図2は、研削装置1における検出部8の一部の(a)斜視図、(b)分解斜視図である。
【0029】
保持テーブル8aは、上面中央に吸引口8lを有する基台部8gと、基台部8g上に吸引口8lを囲むように配設された環状部材8hと、基台部8g上の環状部材8hの内側に配設された中央部材8iと、から構成される。環状部材8hは、非通気性および弾性を有し、ワークW表面のバンプおよびバンプを被覆する保護テープが沈み込む程度の厚み、すなわち、ワークW表面に貼着された保護テープの凹凸を吸収できる厚み、例えば、1.0mm程度に設定される。環状部材8hは、例えば、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴムなどを原料とする独立気泡のゴムスポンジで構成される。特に、密度が0.1〜0.25[g/cm]であり、ASKER C型の計測器で測定する硬度が5〜15度である材料で構成することが望ましい。このような環状部材8hを用いると、保持テーブル8aに載置された際に環状部材8hと接触するワークWは、環状部材8hから適度な摩擦力を受けることになる。また、環状部材8hの外径は基台部8gの外径とほぼ同径に設定され、環状部材8hの内径は中央部材8iの外径とほぼ同径に設定される。
【0030】
一方、中央部材8iは、通気性および弾性を有し、環状部材8hと同程度または1.0mm程度厚い厚みに設定される。中央部材8iは、例えば、ポリウレタン(PU)などを原料とする連続気泡のスポンジで構成される。特に、密度が0.1〜0.25[g/cm]であり、ASKER C型の計測器で測定する硬度が5〜15度である材料で構成することが望ましい。このようなスポンジの一例としては、密度が0.21[g/cm]であり、ASKER C型の計測器で測定する硬度が11度であるソフラス(登録商標)スポンジが挙げられる。中央部材8iを構成するスポンジの連続気泡のセルが大きすぎる場合、バキューム時におけるスポンジのつぶれが大きくなるため、中央部材8iとワークWとの間に空間ができて、ワークW表面と保持テーブル8a表面とが密着しないおそれがある。一方、中央部材8iを構成するスポンジの連続気泡のセルが小さすぎる場合、ワークWを載置した際にワークWの表面形状に沿ってスポンジが変形せず、ワークW表面と保持テーブル8a表面とが密着しないおそれがある。したがって、適度な大きさのセルを有する連続気泡のスポンジとして上記密度と硬度を有するスポンジを採用することが望ましい。
【0031】
ここで、図3を参照して、保持テーブル8aとワークWとの関係について説明する。図3は、検出部8における保持テーブル8aとワークWとの関係を示す断面模式図である。図3(a)に示すように、ワークW表面には複数のバンプ30が形成され、ワークW表面およびバンプ30を保護テープ31が被覆している。保持テーブル8aにおいては、中央部材8iの厚みが環状部材8hより厚く設定されている。これは、外縁部に配置された環状部材8hに比べて、中央部材8iがワークWの自重により沈み込みやすいことを考慮したためである。
【0032】
図3(b)に示すように、保持テーブル8a上にワークWを載置すると、中央部材8iおよび環状部材8hは、弾性によりワークWの表面形状に沿って変形する。そのため、ワークW表面と保持テーブル8a表面とは隙間なく密着する。この状態で、吸引源により吸引口8lを介してワークWを吸引すると、通気性を有する中央部材8i部分のみでワークWが吸着される。この結果、ワークWと環状部材8hとの間に発生する摩擦力およびワークWと中央部材8iとの間に発生するバキューム方式の保持テーブル8aにおける吸着力が適切に作用するため、保持テーブル8aの回転によるワークWの水平方向への位置ずれが抑制できる。
【0033】
回転部8cは、出力軸8eを介して保持テーブル8aを所定の角度間隔で断続的に回転させる。ロータリエンコーダ8fは、スリット円板8jと、フォトインタラプタ8kとから構成され、回転部8cの回転位置を検出する。スリット円板8jの一部は、フォトインタラプタ8kの発光素子と受光素子との間に介在する。ロータリエンコーダ8fは、検出した信号を制御部10に送り、これにより回転部8cによる保持テーブル8aの回転が制御される。なお、本実施の形態ではロータリエンコーダ8fは透過型としたが、反射型としてもよい。
【0034】
検出部8における撮像部8bは、上述のとおりL字状の支持アーム8dを介して保持テーブル8aの上方に支持され、撮像範囲をワークWの外周縁部に位置付けている。撮像部8bは、保持テーブル8aの所定の角度間隔による断続的な回転に合わせてワークWを撮像し、撮像データおよび実測データを取得する。撮像データは、一定間隔に設定された保持テーブル8aの各停止角度におけるワークWの外周縁部の位置を示す。また、実測データは、保持テーブル8aの回転に伴うワークWの外周縁部の位置変化を示す。
【0035】
撮像部8bから出力された撮像データおよび実測データは、制御部10においてワークWの中心位置およびオリエンテーションフラットOFの形成位置の算出処理に用いられる。本実施の形態に係る検出部8は、保持テーブル8a表面に弾性を有する環状部材8hおよび中央部材8iが配置されているため、ワークWを載置した際にワークWの表面形状に沿って保持テーブル8a表面が変形することによりワークWの水平方向の位置ずれを防止する。そのため、保持テーブル8aを断続的に回転させながら、撮像部8bによりワークWの外周縁部を精度よく撮像できる。
【0036】
以下、図4から図9を参照して、ワークWの中心位置およびオリエンテーションフラットOFの形成位置の算出処理について具体的に説明する。なお、以下の説明において、ワークWの中心位置およびオリエンテーションフラットOFの形成位置の算出処理は一例に過ぎず、どのような方法で算出されてもよい。また、以下の説明では、検出部8における撮像部8bをCCDラインセンサとして説明する。
【0037】
図4は、本実施の形態に係る研削装置1が有する撮像部8bによる撮像データおよび実測データの取得処理の説明図である。なお、図4において、一点鎖線が撮像部8bの撮像範囲Ec、二点鎖線が保持テーブル8aの停止角度をそれぞれ示している。
【0038】
図4に示すように、撮像部8bの撮像範囲Ecには、保持テーブル8aに載置されたワークWの外周縁部が位置付けられている。撮像部8bは、撮像範囲Ecに位置付けられたワークWの外周縁部の位置(CCDラインセンサの座標)を検出して出力する。したがって、撮像部8bは、保持テーブル8aを断続的に回転させながら撮像範囲EcのワークWを撮像することによって、ワークWの外周縁部の全周にわたって撮像データおよび実測データを取得する。
【0039】
本実施の形態では、保持テーブル8aは、ワークWの初期位置の回転角度(0°)を基準として、24°間隔で断続的に回転される。撮像部8bは、保持テーブル8aの各停止角度におけるワークWの外周縁部の位置を撮像データとして取得する。また、撮像部8bは、これと並行して、保持テーブル8aの回転時に、撮像範囲Ecを通過するワークWの外周縁部の位置変化を実測データとして取得する。
【0040】
撮像データおよび実測データが取得されると、図5から図7に示すように、ワークWの中心位置の算出処理が実施される。図5は、ワークWの中心位置の算出処理の説明図である。図6は、ワークWの中心位置の算出処理の他の説明図である。図7は、ワークWの中心位置の算出処理の他の説明図である。なお、図5において、二点鎖線が保持テーブル8aの停止角度を示し、図6において、一点鎖線が仮想円を示している。
【0041】
図5に示すように、制御部10は、24°ごとの各停止角度におけるワークWの外周縁部の位置を示す撮像データP1〜P15を取得し、これら撮像データP1〜P15を用いてワークWの中心位置を算出する。具体的には、制御部10は、15点P1〜P15の120°間隔の3点を1組とし、各組の3点によって定まる円の中心位置(仮中心位置)を算出する。例えば、図6に示すように、P5,P10,P15の組では、一点鎖線で示す仮想円の仮中心位置O1が算出される。制御部10は、この処理を他の各組についても実施し、図7に示すように、5組それぞれの仮中心位置O1〜O5を算出する。
【0042】
次に、制御部10は、算出した仮中心位置O1〜O5に基づいてワークWの中心位置を算出する。制御部10は、算出した仮中心位置O1〜O5のうち、その位置が大きく外れるものはオリエンテーションフラットOF上の点を含んで算出されたと考え、ワークWの中心位置の算出処理に用いるデータからこれらの点を除外する。例えば、図7に示したP5,P10,P15の組は、オリエンテーションフラットOF上の点P15を含むため、仮中心位置O1は、オリエンテーションフラットOFを含まない他の組の仮想円の仮中心位置から大きく外れる。P4,P9,P14の組も同様である。このため、制御部10は、全ての仮中心位置を比較し、仮中心位置O2,O3,O4から大きく外れた2組の仮中心位置O1,O5をワークWの中心位置の算出処理に用いるデータから除外する。
【0043】
これにより、オリエンテーションフラットOF上の点P14,P15を除いてワークWの中心位置が算出される。なお、ここでは、除外する仮中心位置を2組としたが、この数は異形状部の大きさや停止角度の間隔等に応じて適宜変更可能である。そして、制御部10は、残った3組の仮中心位置O2、O3、O4を用い、これらの重心を算出してワークWの中心位置とする。
【0044】
ワークWの中心位置が算出されると、制御部10は、オリエンテーションフラットOFの形成位置を検出する際の基準となる基準データを生成する。図8は、基準データの一例を示す図である。
【0045】
図8に示すように、制御部10は、オリエンテーションフラットOF上の点を除いた点(仮中心位置O2,O3,O4を算出するのに用いた3組9点)を用いて基準データを生成する。具体的には、組ごとに、3点によって定まる仮想円の円周上位置が撮像部8bの撮像範囲に位置付けられたときの位置変化を算出する。この場合、保持テーブル8aの回転中心に対して、各組の仮想円の仮中心位置がわずかに偏芯しているためsinカーブが得られる。そして、3組それぞれについて作成されたsinカーブを平均化して、図8に示す基準データとする。基準データは、ワークWにオリエンテーションフラットOFを含まない円形状で形成された場合の位置変化を示す。
【0046】
次に、制御部10は、算出した基準データと上記した実測データとを比較することによってオリエンテーションフラットOFの形成位置を検出する。図9は、オリエンテーションフラットOFの形成位置の算出処理の説明図である。なお、図9において、実線W1が基準データ、一点鎖線W2が実測データ、二点鎖線W3が基準データと実測データとの差分値をそれぞれ示している。
【0047】
上述のとおり、実測データは、オリエンテーションフラットOFを含むワークWの外周縁部の位置変化を示している。制御部10は、二点鎖線に示すように、基準データと実測データとの差分値を回転角度ごとに算出する。そして、算出した差分値が、差分値の目盛0に対してあらかじめ設定されるしきい値Thを超えている角度範囲Lを、オリエンテーションフラットOFの形成位置として検出する。このオリエンテーションフラットOFの形成位置(角度範囲)からワークWの向きが検出される。
【0048】
図10を参照して、本実施の形態に係る研削装置1が有するチャックテーブル2に対するワークWの位置および向きの位置付け動作について説明する。図10は、本実施の形態に係る研削装置1が有するチャックテーブル2に対するワークWの位置および向きの位置付け動作の説明図である。
【0049】
図10に示すように、直交平面座標系には、あらかじめ記憶されたチャックテーブル2の中心座標C2、算出されたワークWの中心座標C1およびワークWの向きを示す角度θ1が設定されている。まず、制御部10によりチャックテーブル2の中心座標C2とワークWの中心座標C1との差分に基づいて、ワーク供給部11の回転軸11aのY軸方向の移動量およびZ軸まわりの回動量が算出されると共に、ワークWの向きを示す角度θ1に基づいてチャックテーブル2の回転量が算出される。
【0050】
次に、ワーク供給部11は、保持テーブル8aの上方に位置した状態から、回転軸11aを−Z軸方向に移動(下降)させて吸着保持部11cによりワークWを吸着保持した後、Z軸方向に移動する(上昇)。次に、ワーク供給部11は、制御部10に算出された回転軸11aのY軸方向の移動量およびZ軸まわりの回転量に応じて回転軸11aを駆動し、ワークWをチャックテーブル2の上方に位置させる。この時点で、ワークWの中心位置とチャックテーブル2の中心位置とが一致している。
【0051】
次に、チャックテーブル2は、Y軸方向を向いた初期状態から角度θ1だけ回転し、ワークWの向きにチャックテーブル2の向きを一致させる。次に、ワーク供給部11は、回転軸11aを−Z軸方向に移動(下降)させて、吸着保持部11cの吸着を解除する。このようにして、ワークWの中心がチャックテーブル2の中心に位置合わせされるとともに、ワークWの向きがチャックテーブル2の向きに合わせられる。
【0052】
このように、ワークWの向きがチャックテーブル2の向きに合わせられた状態で、ワークWがチャックテーブル2に位置合わせされるため、ワークWがチャックテーブル2のワーク保持部2aに合致するように載置される。したがって、ワークWに形成されたオリエンテーションフラットOFとワーク保持部2aにおけるオリエンテーションフラットOFに対応する部分が一致し、このワークWとワーク保持部2aとの位置ずれにより吸着力が低下することが防止される。
【0053】
続いて、本実施の形態に係る研削装置1による研削加工の流れについて説明する。まず、搬入搬出アーム7によってカセット6aから加工前のワークWを搬出し、検出部8における保持テーブル8aに載置する。次に、保持テーブル8aを断続的に回転し、撮像部8bによってワークWの外周縁部を撮像する。このとき、保持テーブル8a表面の弾性によりワークWの表面形状に沿って保持テーブル8a表面が変形しているため、ワークWの水平方向の位置ずれが防止され、撮像部8bによる精度よい撮像が実現できる。次に、撮像結果に基づいてワークWの中心位置および向きが算出され、この結果に基づいてワークW中心がチャックテーブル2中心に一致し、かつ、ワーク保持部2aの向きと一致するようにワーク供給部11によってワークWを位置合わせする。
【0054】
次に、チャックテーブル2に保持されたワークWを、加工位置において研削ユニット3によって所定の厚みまで研削する。研削加工終了後、移載位置においてワークWをワーク回収部12によって洗浄部9の洗浄テーブル9aに載置する。洗浄処理終了後、洗浄テーブル9aからワークWを搬入搬出アーム7によって搬出し、カセット6b内に収容する。
【0055】
以上のように、本実施の形態に係る研削装置1によれば、研削装置1の検出部8における保持テーブル8aは、上面中央に吸引口8lを有する基台部8gと、基台部8g上に吸引口8lを囲むように配設された環状部材8hと、基台部8g上の環状部材8hの内側に配設された中央部材8iと、を有し、環状部材8hは非通気性と弾性とを有しワークW表面に貼着された保護テープの凹凸を吸収できる厚みであり、中央部材8iは通気性と弾性とを有するため、ワークWを載置した際にワークWの表面形状に沿って保持テーブル8a表面が変形し、表面に凹凸を有するワークWであっても保持テーブル8aにワークWが適切に保持される。また、中央部材8iは通気性を有するため、ワークWと中央部材8iとの間に発生するバキューム方式の保持テーブル8aにおける吸着力が適切に作用する。これより、保持テーブル8aの回転時におけるワークWの水平方向の位置ずれが防止できる。したがって、保持テーブル8aを断続的に回転させながら、撮像部8bによりワークWの外周縁部を精度よく撮像でき、ワークの位置を精度よく検出することが可能となる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0057】
例えば、上記実施の形態においては、ワークWにはバンプが形成され、ワークW表面が凹凸を有する構成としたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ワークW表面が凹凸を有さない構成であっても、ワークWを載置した際に弾性を有する保持テーブル8a表面が変形することにより、保持テーブル8a回転時におけるワークWの水平方向の位置ずれが防止できる。
【0058】
また、上記実施の形態においては、保持テーブル8aの外径がワークWの外径とほぼ同径、すなわち環状部材8hの外径がワークWの外径とほぼ同径に設定された構成としたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。保持テーブル8aがワークWを吸引保持可能であればよいので、環状部材8hの内径よりもワークWの外径が大きく設定された構成であればよい。もちろん、保持テーブル8aの外径がワークWの外径よりも小さく設定された構成としてもよい。このような構成とすることで、大きさの異なるワークWに対しても同一の保持テーブル8aを使用することができ、また、ワークWと保持テーブル8aとの間の異物のかみ込みを低減することができる。
【0059】
また、上記実施の形態においては、保持テーブル8aの回転がロータリエンコーダ8fの出力に基づいて制御される構成としたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。回転部8cが保持テーブル8aの回転量を出力可能であれば、ロータリエンコーダ8fを設けない構成としてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態においては、検出部8によってワークWの中心位置およびオリエンテーションフラットOFの形成位置(ワークWの向き)を検出する構成としたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。検出部8が、ワークWの中心位置または向きのいずれか一方のみを検出する構成としてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態においては、ワークWの向きを規定する異形状部としてオリエンテーションフラットOFを例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ワークWの外周縁部においてワークWの向きを特定可能であればよく、例えば、オリエンテーションノッチを設ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、保持テーブルの回転によるワークの位置ずれを抑制でき、ワークの位置を精度よく検出できるため、上記研削装置に限られず、研削加工、レーザ加工などを行う種々の加工装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 研削装置
2 チャックテーブル
2a ワーク保持部
3 研削ユニット
3a 研削ホイール
4 基台
4a 前面
5a,5b カセット載置部
6a,6b カセット
7 搬入搬出アーム
7a 多節リンク機構
7b 保持部
8 検出部
8a 保持テーブル
8b 撮像部
8c 回転部
8d 支持アーム
8e 出力軸
8f ロータリエンコーダ
8g 基台部
8h 環状部材
8i 中央部材
8j スリット円板
8k フォトインタラプタ
8l 吸引口
9 洗浄部
9a 洗浄テーブル
9b 開口部
10 制御部
11 ワーク供給部
12 ワーク回収部
11a 回転軸
11b 旋回アーム
11c 吸着保持部
13 開口部
14 移動板
15 防水カバー
16 支柱部
19 ボールねじ
20 駆動モータ
21 支持部
30 バンプ
31 保護テープ
W ワーク
OF オリエンテーションフラット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から突出した複数の電極を有するワーク表面に保護テープが貼着され、前記表面に貼着された前記保護テープを介して前記ワークを保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されたワークを裏面側から研削加工する研削手段と、
前記保持手段にワークを搬入する前に、ワークの中心位置を検出する検出手段と、を含む研削装置であって、
前記検出手段は、
前記ワークを保持する保持テーブルと、
前記保持テーブルの鉛直方向を回転軸として前記保持テーブルを回転させる回転部と、
前記保持テーブルに保持された前記ワークの外周を撮像する撮像手段と、を有し、
前記保持テーブルは、
上面中央に吸引口を有する基台部と、
前記基台部上に前記吸引口を囲むように配設された環状部材と、
前記基台部上の前記環状部材の内側に配設された中央部材と、を有し、
前記環状部材は非通気性と弾性とを有し前記ワーク表面に貼着された前記保護テープの凹凸を吸収できる厚みであり、前記中央部材は通気性と弾性とを有することを特徴とする研削装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−121096(P2012−121096A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273519(P2010−273519)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】