説明

磁気ディスクの両面欠陥検査方法及びその装置

【課題】
磁気ディスクの両面を同時に検査することを可能にして、検査のスループットを向上させる。
【解決手段】
磁気ディスクの表面の傷や欠陥を光学的に検出する表面側欠陥検出手段と、磁気ディスクの裏面の傷や欠陥を光学的に検出する裏面側欠陥検出手段とを備えた磁気ディスクの両面欠陥検査装置において、裏面側欠陥検出手段に光路切替え部を設けて、レーザ光源から発射されたレーザを反射してレーザの光路を磁気ディスクの裏面の方向に切替えるとともにフレネルレンズで集光された散乱光を反射して集光された散乱光の光路を第1の光電変換器の方向に切替えるようにして、磁気ディスクの裏面側の狭い空間でも光学的に欠陥を検出することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクの表面と裏面との両面の欠陥を検査する方法及びその装置に係り、特に、磁気ディスクの両面を同時に光学的に検査して基板両面の凹みや傷及び両面面に付着した異物を検出するのに適した磁気ディスクの両面欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの基板の表面の微細な欠陥を光学的に検査する装置は、検査の高感度化及び高スループット化が要求されてきている。このうち高感度化に対しては、例えば特許文献1(特開平3−186739号公報)や特許文献2(特開平5−21561号公報)に記載されているように、光源にレーザを用いて照明光の強度を上げて基板からの反射光や散乱光を高感度なセンサで検出する方法がとられている。しかし、照明光のパワーが強すぎると基板表面にダメージを与えてしまう。そのため、限られた照射強度の照明光で照明された基板表面の欠陥からの反射散乱光を最大限の検出感度で検出する必要がある。この反射散乱光を最大限の検出感度で検出する構成として、特許文献2には光電子増倍部を採用する構成が開示されている。
【0003】
一方、高スループット化に関しては、特許文献3(特開平6−118015号公報)に磁気ディスクの表面検査部と裏面検査部との間に基板反転部を設けて磁気ディスクの表面と裏面との検査を順次行ってスループットを向上させる検査システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献4(特開平8−22619号公報)には、ハンドリング装置を用いて磁気ディスクを複数種類の磁気ディスク検査装置間で受け渡して一連の検査を行う検査システムにおいて、光学的な異物検査手段において、磁気ディスクの表面と裏面とを同時に光学的に検査することが記載されている。
【0005】
また、特許文献5(特開2009−175121号公報)には、ディスクの両面に同時に光を照射して欠陥を検査する構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−186739号公報
【特許文献2】特開平5−21561号公報
【特許文献3】特開平6−118015号公報
【特許文献4】特開平8−22619号公報
【特許文献5】特開2009−175121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微細欠陥からの散乱光は、欠陥のサイズが小さくなるほど単位面積当たりの散乱光の光量が減ると共に欠陥上方の全空間に広がる特性を持つ。したがって、同一光量の照明光を用いて微細欠陥を感度よく検出するためには、欠陥からの散乱光をより広い領域で効率よく集光して検出することが必要になる。散乱光をより広い領域で集光するためには、基板からの散乱光を集光するための対物レンズを大型化して開口数(NA)を大きく(大開口数化)すればよい。しかし、対物レンズを検査装置に取付ける上で他の部品との干渉を避けるために、現実的には対物レンズを大型化して開口数を大きくすることには限界がある。特に、基板の両面を同時に検査しようとする場合、通常、基板の裏面側には基板を保持し駆動する機構があるために空間的に狭くなっており、表面側と同じ検査光学系を採用することが難しい。
また、対物レンズを大型化して開口数を大きくすると、この対物レンズで集光した散乱光を検出器の検出面上に収束させるための集束レンズも大型化しなければならず、この大型化したレンズ群を支持する鏡筒も大型化するために検出光学系が大きくなり、装置の小型軽量化を図ることが難しくなる。
【0008】
特許文献1(特開平3−186739号公報)や特許文献2(特開平5−21561号公報)には、欠陥の検出感度を上げるうえで、装置を大型化することなく対物レンズの開口数(NA)をより大きくして、同じ照明光量に対して検出する散乱光の光量を大きくするという点については配慮されていない。
【0009】
特許文献3(特開平6−118015号公報)に開示されている磁気ディスクの表面欠陥検査方法は、磁気ディスクを2つの検査部間で順次移動させて表面と裏面との欠陥検査を行うことで両面検査のスループットを上げることができるが、検査部を2ユニット並べて設置し、その間に磁気ディスクの反転機構を設けることから、装置の設置面積が大きくなってしまう。
【0010】
また、特許文献4(特開平8−22619号公報)には、磁気ディスクの表面と裏面とを同時に光学的に検査することが記載されているが、その具体的な構成については開示されていない。
【0011】
更に、特許文献5(特開平4−62457号公報)にはディスクの一方の面を左右対称に配置した光源で斜方照明してカメラで撮像する構成をディスクの表面と裏面とに配置して両面を同時に光学的に検査することが記載されているが、ディスクの両面でより大きなNAの光学系を用いて微細な欠陥からの散乱光を検出するという構成については配慮されていない。
本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解決して、磁気ディスクの両面を検査する装置において、装置を大型化することなく、より微細な欠陥を感度よく抽出することを可能にする磁気ディスクの両面欠陥検査方法及びその装置を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、検出光学系を非球面フレネルレンズを組合せて構成してコンパクト化を図ることにより磁気ディスクの両面を同時に検査できるようにし、装置を大型化することなく、より微細な欠陥を感度よく抽出することを可能にした。
【0013】
即ち、本発明では、磁気ディスクを載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、テーブル手段に載置された磁気ディスクの表面の傷や欠陥を光学的に検出する表面側欠陥検出手段と、磁気ディスクの裏面の傷や欠陥を光学的に検出する裏面側欠陥検出手段と、表面側欠陥検出手段の検査結果と裏面側欠陥検出手段とを処理する処理手段と、処理手段で処理した検査結果を出力する出力手段とを備えた磁気ディスクの両面欠陥検査装置において、
裏面側欠陥検出手段を、レーザを発射するレーザ光源と、レーザ光源から発射されたレーザが照射された磁気ディスクの裏面からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光をフレネルレンズで集光する集光部と、集光部で集光された散乱光を検出する第1の光電変換器と、レーザ光源から発射されたレーザを反射してレーザの光路を磁気ディスクの裏面の方向に切替えるとともに集光部のフレネルレンズで集光された散乱光を反射して集光された散乱光の光路を第1の光電変換器の方向に切替える光路切替え部とを備えて構成した。
【0014】
また、本発明では、テーブルに載置されて回転しながら一方向に移動している磁気ディスクの表面と裏面とにそれぞれレーザを照射し、照射されたレーザによる表面からの反射光を受光して処理することにより磁気ディスクの表面側の傷や欠陥を検出し、裏面に照射されたレーザによる裏面からの反射光を受光して処理することにより磁気ディスクの裏面側の傷や欠陥を検出する磁気ディスクの両面の欠陥を検査する方法において、裏面側の傷や欠陥を検出することを、レーザ光源から発射されたレーザをプリズムの第1の面で反射させてレーザの光路を磁気ディスクの裏面の方向に切替え、光路を切替えたレーザを磁気ディスクの裏面に照射し、レーザが照射された磁気ディスクの裏面からの散乱光をフレネルレンズを透過させて集光し、フレネルレンズを透過した散乱光をプリズムの第2の面で反射させて散乱光の光路を第1の光電変換器の方向に切替え、光路を切替えられた散乱光を第1の光電変換器で検出し、磁気ディスクの裏面からの正反射光を第2の光電変換器で検出し、第1の光電変換器で検出して得た信号と第2の光電変換器で検出して得た信号とを処理して前記裏面側の傷や欠陥を検出するようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検出光学系を非球面フレネルレンズを組合せて構成してコンパクト化したことにより磁気ディスクの両面を同時に検査することを可能にし、検査装置を大型化することなく、より微細な欠陥を感度よく抽出することを可能にした
また、本発明によれば、従来に比べて半分以下の設置面積の装置を用いて磁気ディスクの両面を同時に検査することが可能になったので、高い検査スループットでコストパフォーマンスの高い検査を実現することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】表面欠陥検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】表面側の検査光学系の概略の構成を示す正面図である。
【図3】裏面側の検査光学系の概略の構成を示す(a)正面図と、(b)A-A方向から見た側面図である。
【図4】非球面フレネルレンズの断面図及びそれに対応する非球面レンズの断面図である。
【図5】表面側の検査光学系の第1の光電変換器125と第2の光電変換器129の出力信号の例を示すグラフである。
【図6】検査結果を出力したGUIの一例を示す表示画面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
試料の両面を同時に検査する構成において微細な欠陥を感度よく検出できるようにするために、本発明では、従来のレンズを用いた検出光学系に替えて、比較的狭い空間でより大きな開口数(NA)を持つ光学系を組むことが可能な非球面フレネルレンズを用いた光学系を採用した。
【0018】
また、本発明では、磁気ディスクの表面の傷や欠陥を光学的に検出する表面側欠陥検出手段と、磁気ディスクの裏面の傷や欠陥を光学的に検出する裏面側欠陥検出手段とを備えた磁気ディスクの両面欠陥検査装置において、裏面側欠陥検出手段に光路切替え部を設けて、レーザ光源から発射されたレーザを反射してレーザの光路を磁気ディスクの裏面の方向に切替えるとともにフレネルレンズで集光された散乱光を反射して集光された散乱光の光路を第1の光電変換器の方向に切替えるようにして、磁気ディスクの裏面側の狭い空間でも光学的に欠陥を検出することを可能にした。
以下に、本発明を磁気ディスクの欠陥検査装置に起用した例を図を用いて説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、本実施例による磁気ディスクの欠陥検査装置の全体構成を示す図である。欠陥検査装置は大きくは、検査対象の試料を載置するテーブル部110、表面側検査光学系120、裏面側検査光学系130、信号処理・制御系140で構成されている。
テーブル部110は、試料(磁気ディスク)100を載置して回転可能なテーブル111、テーブル111を回転の主軸に直角な方向に移動可能なステージ112を備えている。また、テーブル部は、図示していない試料100をチャックして保持する機構を備えている。
【0020】
基板100の表面側1001の欠陥を検出する表面側検査光学系120の概略の構成を図2に示す。表面側検査光学系120は、照明系1201と散乱光検出系1202及び正反射光検出系1203で構成される。
【0021】
表面側の照明系1201は第1のレーザ光源121、第1のレーザ光源121から発射されたレーザを拡大する拡大レンズ1221、拡大されたレーザを集光する集光レンズ1222、集光されたレーザを試料100の表面に集束させる集束レンズ1223を備える。
【0022】
表面側の散乱光検出系1202は、試料100の表面からの反射光(正反射光と散乱光)のうち散乱光を集光する対物レンズに相当する第1の非球面フレネルレンズ123、集光された散乱光を集束させる集束レンズに相当する第2の非球面フレネルレンズ124、第2の非球面フレネルレンズ124で集束された散乱光を高感度に検出する第1の光電変換器125(例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)や光電子増倍管(PMT)など)を備える。
【0023】
表面側の正反射光検出系1203は、試料100からの反射光(正反射光と散乱光)のうち正反射光を反射して光路を切替えるミラー126、光路を切替えられた正反射光を集光させる集光レンズ127、集光された正反射光を結像する結像レンズ128、結像レンズ128で結像された正反射光の像を検出する第2の光電変換器129(例えば複数の画素を有するフォトダイオードアレイ)を備えている。ミラー126は、正反射光以外の光(散乱光)を反射しないように、十分に小さい形状に形成されている。
【0024】
基板100の裏面側1002の欠陥を検出する裏面側検査光学系130の概略の構成を図3(a)及び(b)に示す。裏面側検査光学系130は照明系1301と散乱光検出系1302及び正反射光検出系1303で構成される。
【0025】
裏面側検査光学系130の照明系1301は、図3(a)に示すように、第2のレーザ光源131、第2のレーザ光源131から発射したレーザを拡大する拡大レンズ1321、拡大されたレーザを集光する集光レンズ1322、集光されたレーザを試料100の裏面に集束させる集束レンズ1323、集光レンズ1323を透過したレーザの光路を折り曲げるプリズム133を備えて構成される。プリズム133でレーザの光路を折り曲げる構成としたので第2のレーザ光源131を基板100の下部の比較的狭い空間から離れた場所に設置することができ、従来の片面だけを検査する装置に比べてテーブル部110に大きな変更を加えることなく裏面側の検査を可能になった。
裏面側の散乱光検出系1302は、レーザが照射された試料100の裏面から発生した反射光のうち散乱光を集光する対物レンズに相当する第3の非球面フレネルレンズ1341、集光された散乱光を集束させる集束レンズに相当する第4の非球面フレネルレンズ1342、第4の非球面フレネルレンズ1342を透過してプリズム133で光路を切替えられた散乱光を通過させるピンホール1352を有して散乱光以外の迷光を遮光するピンホール板1351、ピンホール板1351のピンホール1352を通過した散乱光を高感度に検出する第3の光電変換器136(例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)や光電子増倍管(PMT)など)を備えて構成される。裏面側の散乱光検出系1302に非球面フレネルレンズを組合せて用いたことにより、光学系を基板100の下部の比較的狭い空間から離れた場所に設置することができ、更に、プリズム133で散乱光の光路を折り曲げて検出する構成としたので、従来の片面だけを検査する装置に比べてテーブル部110に大きな変更を加えることなく裏面側の検査を可能になった。
【0026】
裏面側の正反射光検出系1303は、レーザが照射された試料100の裏面からの反射光(正反射光と散乱光)のうち正反射光の光路を切替えるミラー137(図3(a)の構成では、図面に垂直な方向に反射する)、光路を切替えられた正反射光を集光する集光レンズ1381、集光された正反射光の像を形成する結像レンズ1382、形成された正反射光の像を検出する第4の光電変換器139(例えば複数の画素を有するフォトダイオードアレイ)、結像レンズ1382と第4の光電変換器139との間に配置されて結像レンズ1382を透過した正反射光を通過させて正反射光以外の迷光を遮光するピンホール1352を有するピンホール板1351を備えている。
【0027】
図4の(a)は通常の光学レンズ1340を示し、(b)にはそれと同じ開口数(NA)を有する非球面フレネルレンズ134の例を示す。この図からもわかるように、非球面フレネルレンズ134は、同じ開口を有する通常の光学レンズ1340と比べて、比較的薄い寸法で形成することができる。本実施例においては、このような特性を持つ非球面フレネルレンズを散乱光検出光学系に用いる。
【0028】
非球面フレネルレンズは通常の光学ガラスのほかに、プラスチックでも形成することができる。プラスチックで形成する場合、任意の形状に加工することが可能である。また、素材がプラスチックであるために軽量であり、所望の形状に加工した複数の非球面フレネルレンズを組合せて用いる場合に、それらを支持する鏡筒部は通常のガラスレンズを用いる場合と比べて強度を必要としないので、比較的スリムな構造にすることができる。
【0029】
図1において、信号処理・制御系140は、表面側検査光学系120から出力される検出信号をA/D変換して増幅する第1のA/D変換部141と、裏面側検査光学系130から出力される検出信号をA/D変換して増幅する第2のA/D変換部142と、 第1のA/D変換部141からの出力を受けて信号処理する第1の信号処理部1431と、第2のA/D変換部142からの出力を受けて信号処理する第2の信号処理部1432と、第1の信号処理部1431で処理された信号と第2の信号処理部1432で処理された信号とを統合して処理する統合信号処理部144、統合信号処理部144で処理された結果を記憶する記憶部145と、統合信号処理部144で処理された結果を出力する表示画面を備えた出力部146、全体を制御する全体制御部147、全体制御部147の制御信号を受けてテーブル部110を制御するテーブル制御部148、全体制御部147の制御信号を受けて表面側の検査光学系120と裏面側の検査光学系130とを制御する検査光学系制御部149を備えている。
【0030】
次に、各部の動作を説明する。
図示していないロード機構で試料100をテーブル部110のテーブル111に載置し図示していないチャック機構でチャックして保持した状態で、テーブル部110はテーブル制御部148で制御されてテーブル111を回転させると共に、テーブル111の回転と同期してステージ112をテーブル111の回転の主軸に直角な方向に移動させる。
【0031】
テーブル部110により試料100を回転、移動させながら、検査光学系制御部149で制御されている表面側検査光学系120の第1のレーザ光源121及び裏面側検査光学系130の第2のレーザ光源131を作動させてそれぞれレーザを発射させる。
【0032】
第1のレーザ光源121からレーザが発射された表面側検査光学系120においては、図2に示すように、拡大レンズ1221で第1のレーザ光源121から発射されたレーザのビーム径が拡大され、集光レンズ1222で拡大されたレーザが集光され、集束レンズ1223で試料100の表面1001に30度前後の入射角度で集束して入射する。集束したレーザが照射された試料100の表面1001からは、表面の欠陥や傷、面の微小な凹凸(荒れ)などの状態に応じた反射光(散乱光と正反射光)が発生する。このとき、散乱光は試料100の表面1001の欠陥の大きさに応じて分布する。すなわち、大きな欠陥や傷からの散乱光は比較的強い強度で指向性を持って分布し、微小な欠陥や傷からの散乱光は比較的弱い強度で等方的に分布する。
試料100の表面1001から発生した反射光のうち、散乱光を集光する対物レンズに相当する第1の非球面フレネルレンズ123の方向に向かった反射光は、焦点の位置が試料100の表面1001のレーザ照射位置に合うように設置された第1の非球面フレネルレンズ123に入射し、集光されて平行光として第1の非球面フレネルレンズ123から出斜する。一方、第1の非球面フレネルレンズ123の方向に向かった反射光のうち正反射光は第1の非球面フレネルレンズ123の前方に配置したミラー126で反射されて光路が切替えられて、第1の非球面フレネルレンズ123には入射しない。
【0033】
第1の非球面フレネルレンズ123に入射して集光されて平行光となった試料100からの散乱光は、第2の非球面フレネルレンズ124に入射して第2の非球面フレネルレンズ124の焦点位置に集束させられる。第1の光電変換器125は、検出面がこの第2の非球面フレネルレンズ124の焦点位置に位置するよう配置されており、第2の非球面フレネルレンズ124で集束された試料100からの散乱光を検出する。第1の光電変換器125で試料100からの散乱光を検出して得た信号はA/D変換部141のA/D変換器1411に入力してデジタル信号に変換されて増幅された後、表面側検出信号処理部143に入力される。
【0034】
一方、ミラー126で反射されて光路が切替えられた試料100からの正反射光は、焦点位置が試料100のレーザ照射位置に合うように配置された集光レンズ127に入射して平行光となって集光レンズ127から出射し、結像レンズ128に入射する。結像レンズ128に入射した正反射光は、結像レンズ128から出射して結像レンズ128の像面に正反射光の像を結像する。この像面に第2の光電変換器129の検出面が重なるように第2の光電変換器129を配置することにより、複数の画素を有するフォトダイオードアレイなどで構成される第2の光電変換器129で正反射光の像が検出される。第2の光電変換器129で検出した正反射光の像の信号はA/D変換部141のA/D変換器1412に入力してデジタル信号に変換されて増幅された後、表面側検出信号処理部1431に入力される。
【0035】
表面側検出信号処理部1431に入力した第1の光電変換器125からの検出信号と第2の光電変換器125からの検出信号とはそれぞれ処理されて試料100の表面側1001の欠陥が検出される。
【0036】
図5には、試料100上の表面側1001の同じ箇所からの正反射光を検出した第2の光電変換器129からの出力信号波形(a)の例と、散乱光を検出した第1の光電変換器125からの出力信号波形(b)の例を示す。例えば、第1の光電変換器125からの出力信号のうち第1のしきい値Th1より大きい部分と第2の光電変換器129からの出力信号のうち第2のしきい値Th2より大きい部分とが共に広い裾野を持つ欠陥Aの場合には基板上の傷と判定し、第1の光電変換器125からの出力信号の第1のしきい値Th1より大きい部分と第2の光電変換器129からの出力信号の第2のしきい値Th2より大きい部分とが共に幅が狭く大きなピーク値を持つ欠陥Bの場合には異物と判定し、第1の光電変換器33からの出力信号の第1のしきい値Th1より大きい部分が比較的幅が広く第2の光電変換器129からの出力信号が第2のしきい値Th2より小さい欠陥Cの場合には基板のへこみと判定する。また、第2の光電変換器129で撮像した正反射光の画像の画素数の情報を用いて検出した各欠陥のサイズレベル(例えば、大、中、小)を判定する。
信号処理部1431で判定した結果は、欠陥の位置情報と共に統合処理部144に送られる。
【0037】
次に、第2のレーザ光源131からレーザが発射された裏面側検査光学系130においては、図3(a)に示すように、拡大レンズ1321でレーザのビーム径が拡大され、この径が拡大されたレーザは集光レンズ1322で集光されて平行光となる。集束レンズ1323を透過したレーザはプリズム133の面1331で反射されて光路が切替えられ、集束レンズ132の焦点位置に配置された試料100の裏面1002に集束させられる。プリズム133の面1331は、反射されたレーザが試料100の裏面1002に所望の角度(30度前後)で入射するように設定されている。集束したレーザが照射された試料100の裏面1002からは反射光(正反射光と散乱光)が発生するが、そのうち散乱光を集光する対物レンズに相当する第3の非球面フレネルレンズ1341の方向に向かった反射光は、焦点の位置が試料100の裏面1002のレーザ照射位置に合うように設置された第3の非球面フレネルレンズ1341に入射し、集光されて平行光として第3の非球面フレネルレンズ1341から出斜する。一方、第3の非球面フレネルレンズ1341の方向に向かった反射光のうち正反射光は第3の非球面フレネルレンズ1341の前方に配置したミラー137で反射されて光路が切替えられて、第3の非球面フレネルレンズ123には入射しない。
【0038】
第3の非球面フレネルレンズ1341に入射して集光されて平行光となった試料100の裏面1002からの散乱光は、第4の非球面フレネルレンズ1342に入射し、第2の非球面フレネルレンズ1342を透過した後にプリズム133の面1332で反射されて光路が切替えられ第4の非球面フレネルレンズ1342の焦点位置に集束させられる。プリズム133の面1332は、反射した散乱光が所望の方向(試料100の裏面1002と平行な方向)に光路が切替るように角度が設定されている。なお、本実施例においては、第2のレーザ光源131から発射されたレーザはプリズム133の面1331に到達するまで試料100の裏面1002に対して平行に進むように裏面側の照明系を設定して、面1331と面1332とは同じ傾斜角度に設定されている。プリズム133の面1331と面1332とは、それぞれミラーで構成されていてもよい。
【0039】
第4の非球面フレネルレンズ1342の焦点位置にはピンホール板1351が配置されており、焦点位置に集束した試料からの散乱光を通過させるようにピンホール1352が空けられている。一方、散乱光以外の光(プリズム133など光学部品からの反射光:迷光)の大部分はピンホール1352を通過できずにピンホール板1351で遮光されるため、第3の光電変換器136で検出される光のほとんどはピンホール1352を通過した試料100の裏面1002からの散乱光になる。
【0040】
第3の光電変換器136で試料100の裏面1002からの散乱光を検出して得た信号はA/D変換部142のA/D変換器1421に入力してデジタル信号に変換されて増幅された後、裏面側検出信号処理部1432に入力される。
【0041】
一方、ミラー137で反射されて光路が切替えられた試料100からの正反射光は、図3(b)に示すように、焦点位置が試料100の裏面側1002のレーザ照射位置に合うように配置された集光レンズ1381に入射して平行光となって集光レンズ1381から出射し、結像レンズ1382に入射する。結像レンズ1382に入射した正反射光は、結像レンズ1382から出射してピンホール板1353に空けたピンホール1354を通過して迷光が除去された後、結像レンズ1382の像面に正反射光の像を結像する。この像面に第4の光電変換器139の検出面が重なるように第4の光電変換器139を配置することにより、複数の画素を有するフォトダイオードアレイなどで構成される第4の光電変換器139で正反射光の像が検出される。第4の光電変換器139で検出した正反射光の像の信号はA/D変換部142のA/D変換器1422に入力してデジタル信号に変換されて増幅された後、裏面側検出信号処理部1432に入力される。
【0042】
裏面側検出信号処理部1432に入力した第3の光電変換器136からの検出信号と第4の光電変換器139からの検出信号とはそれぞれ処理されて試料100の裏面側1002の欠陥が検出される。裏面側検出信号処理部1432においても、先に表面側検出信号処理部1431における信号処理で説明したように、第3の光電変換器136からの検出信号と第4の光電変換器139からの検出信号とをそれぞれしきい値と比較することにより、欠陥の種類と大きさを判定し、その結果を欠陥の位置情報と共に統合処理部144に送る。
【0043】
本実施例に拠れば、従来と比べてより小さい欠陥からの散乱光を検出できるようになったので、例えばスクラッチ欠陥について、従来の光学レンズを用いた検出光学系では数100nm程度の大きさのものまでしか検出できなかったのに対して、本実施例による検出光学系では100nm程度の大きさのものまでを、基板の両面を同時に検査しながら検出することが可能になった。
【0044】
また、本実施例に拠れば、非球面フレネルレンズを組合せて高NAの検出光学系をコンパクトに構成できるようになったので、装置を大型化することなくより微細な欠陥を基板の両面同時に検出することが可能になった。
【0045】
また、裏面検査光学系130にプリズム133を用いることにより、試料100の裏面側1002に30度前後の入射角度で入射させるレーザの光源131や30度前後の方向に出射した散乱光を検出する光学系をテーブル11及びステージ112から離れた場所に設置することが可能になり、装置全体をコンパクトに作成することを可能にした。
【0046】
表面側検出信号処理部1431と裏面側検出信号処理部1432とで処理されたデータは統合処理部144へ送られて処理され、試料100の両面の欠陥情報として記憶部145に送られて格納されると共に、出力部146にも送られて検査結果の情報を出力する。
【0047】
図6に出力部146から出力される検査結果の情報の一例を示す。この例は、表示画面601上に試料100の表面で検出された欠陥の種類ごとの分布602と裏面で検出された欠陥の種類ごとの分布603の状態をマップ形式で並べて表示した例を示す。ユーザは、画面上に表示指定エリア604で任意の欠陥種とサイズを指定することにより、指定された欠陥種の表面の分布602と裏面の分布603との状態を視覚的に把握することができる。
【0048】
また、本実施例では試料100の表面1001と裏面1002とを同時に検査しているので、表面1001の側で検出された欠陥と裏面1002の側で検出された欠陥との相対的な位置関係を把握することが可能になり、製造プロセスを管理する上で有効な情報として使うことができる。
【符号の説明】
【0049】
110・・・テーブル部 111・・・テーブル 112・・・ステージ 120・・・表面側検査光学系 121・・・第1のレーザ光源 1221・・・拡大レンズ 1222・・・集光レンズ 1223・・・集束レンズ 123・・・第1の非球面フレネルレンズ 124・・・第2の非球面フレネルレンズ 125・・・第1の光電変換器 126・・・ミラー 127・・・集光レンズ 128・・・結像レンズ 129・・・第2の光電変換器 130・・・裏面側検査光学系 131・・・第2のレーザ光源 1321・・・拡大レンズ 1322・・・集光レンズ 1323・・・集束レンズ 133・・・プリズム 1341・・・第3の非球面フレネルレンズ 1342・・・第4の非球面フレネルレンズ 1351、1353・・・ピンホール板 136・・・第3の光電変換器 137・・・ミラー 1381・・・集光レンズ 1382・・・結像レンズ 139・・・第4の光電変換器 140・・・信号処理・制御系 141・・・第1のA/D変換部 142・・・第2のA/D変換部 1431・・・第1の信号処理部 1432・・・第2の信号処理部 144・・・統合信号処理部 145・・・記憶部 146・・・出力部 147・・・全体制御部 148・・・テーブル制御部 149・・・検査光学系制御部 601・・・出力表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクを載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、
該テーブル手段に載置された磁気ディスクの表面の傷や欠陥を光学的に検出する表面側欠陥検出手段と、
前記磁気ディスクの裏面の傷や欠陥を光学的に検出する裏面側欠陥検出手段と
前記表面側欠陥検出手段の検査結果と前記裏面側欠陥検出手段とを処理する処理手段と、
該処理手段で処理した検査結果を出力する出力手段と
を備えた磁気ディスクの両面欠陥検査装置であって、前記裏面側欠陥検出手段を、
レーザを発射するレーザ光源と、
該レーザ光源から発射されたレーザが照射された前記磁気ディスクの裏面からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光をフレネルレンズで集光する集光部と、
該集光部で集光された散乱光を検出する第1の光電変換器と、
前記レーザ光源から発射されたレーザを反射して該レーザの光路を前記磁気ディスクの裏面の方向に切替えるとともに前記集光部のフレネルレンズで集光された散乱光を反射して該集光された散乱光の光路を前記第1の光電変換器の方向に切替える光路切替え部と
を備えて構成したことを特徴とする磁気ディスクの両面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記光路切替え部を表面に入射した光を該表面で全反射する反射面を有するプリズムで構成したことを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記裏面側欠陥検出手段は、前記磁気ディスクの裏面からの反射光のうちの正反射光を光路の途中で反射して前記反射光のうちの散乱光から分離する反射板と、該反射板で反射された正反射光の像を形成する結像光学系部と、該結像光学系部で形成された正反射光の光学像を検出して光電変換する第2の光電変換器とを更に備えて構成したことを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
前記フレネルレンズを、前記試料からの散乱光を集光する第1の非球面フレネルレンズと、該第1の非球面フレネルレンズで集光された散乱光を集束させる第2の非球面フレネルレンズとで構成したことを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項5】
前記表面側欠陥検出手段は、レーザを発射するレーザ光源と、該レーザ光源から発射されたレーザが照射された前記磁気ディスクの表面からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光をフレネルレンズで集光する集光部と、該集光部で集光された散乱光を検出する第1の光電変換器と、前記磁気ディスクの裏面からの反射光のうちの正反射光を反射して前記反射光のうちの散乱光から分離する反射板と、該反射板で反射された正反射光の像を形成する結像光学系部と、該結像光学系部で形成された正反射光の光学像を検出して光電変換する第2の光電変換器とを備えて構成したことを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項6】
テーブルに載置されて回転しながら一方向に移動している磁気ディスクの表面と裏面とにそれぞれレーザを照射し、
前記表面に照射されたレーザによる前記表面からの反射光を受光して処理することにより前記磁気ディスクの表面側の傷や欠陥を検出し、
前記裏面に照射されたレーザによる前記裏面からの反射光を受光して処理することにより前記磁気ディスクの裏面側の傷や欠陥を検出する
磁気ディスクの両面の欠陥を検査する方法であって、前記裏面側の傷や欠陥を検出することを、
レーザ光源から発射されたレーザをプリズムの第1の面で反射させて該レーザの光路を前記磁気ディスクの裏面の方向に切替え、
該光路を切替えたレーザを前記磁気ディスクの裏面に照射し、
該レーザが照射された前記磁気ディスクの裏面からの散乱光をフレネルレンズを透過させて集光し、
該フレネルレンズを透過した散乱光を前記プリズムの第2の面で反射させて該散乱光の光路を第1の光電変換器の方向に切替え、
該光路を切替えられた散乱光を前記第1の光電変換器で検出し、
前記磁気ディスクの裏面からの正反射光を第2の光電変換器で検出し、
前記第1の光電変換器で検出して得た信号と前記第2の光電変換器で検出して得た信号とを処理して前記裏面側の傷や欠陥を検出する
ことにより行うことを特徴とする磁気ディスクの両面欠陥検査方法。
【請求項7】
前記レーザが照射された前記磁気ディスクの裏面からの反射光のうち正反射光を反射板で反射させて光路を切替えることにより、前記反射光から散乱光と正反射光とを分離することを特徴とする請求項6記載の磁気ディスクの両面欠陥検査方法。
【請求項8】
前記レーザが照射された前記磁気ディスクの裏面からの散乱光をフレネルレンズを透過させて集光することを、先ず第1の非球面フレネルレンズで散乱光を集光し、次に第2の非球面フレネルレンズで前記第1の非球面フレネルレンズで集光した散乱光を集束させることにより行うことを特徴とする請求項6記載の磁気ディスクの両面欠陥検査方法。
【請求項9】
前記磁気ディスクの表面側の傷や欠陥を検出することを、前記レーザが照射された前記磁気ディスクの表面からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光をフレネルレンズで集光し、該集光した散乱光を第1の光電変換器で検出し、前記磁気ディスクの表面からの反射光から正反射光を反射板で反射させて分離し、該分離した正反射光を結像させて該正反射光の像を第2の光電変換器で検出し、前記第1の光電変換器で検出して得た信号と前記第2の光電変換器で検出して得た信号とを処理して前記裏面側の傷や欠陥を検出することを特徴とする請求項6記載の磁気ディスクの両面欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−76669(P2011−76669A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227196(P2009−227196)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】