説明

移動体装置、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法

【課題】 粗微動ステージにおいて、微動ステージの位置を高精度に計測する。
【解決手段】 粗動ステージWCSに保持された微動ステージWFSのXY平面内での位置情報の計測には、微動ステージのXY平面に実質的に平行な一面に配置されたグレーティングRGに対向して配置され、該グレーティングに計測ビームを照射するヘッドを含むエンコーダシステムが用いられる。そして、微動ステージは、駆動系によって、エンコーダシステムで計測された位置情報に基づいて、単独で、若しくは粗動ステージと一体で駆動される。この場合、エンコーダシステムのヘッドを微動ステージ(グレーティング)に近接して配置することができ、これにより、エンコーダシステムによる微動ステージの位置情報の高精度な計測が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に係り、更に詳しくは、二次元平面に沿って移動可能な移動体を含む移動体装置、該移動体装置を含む露光装置及び移動体装置を利用する露光方法、並びに前記露光装置又は露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、一般的に、パターンが転写・形成されるウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、ウエハと総称する)を保持して2次元移動するウエハステージの位置が、レーザ干渉計を用いて計測されていた。しかし、近年の半導体素子の高集積化に伴うパターンの微細化により、さらに高精度なウエハステージの位置制御性能が要求されるようになり、その結果、レーザ干渉計のビーム路上の雰囲気の温度変化、及び/又は温度勾配の影響で発生する空気揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が、無視できなくなってきた。
【0004】
かかる不都合を改善するものとして、レーザ干渉計と同程度以上の計測分解能を有するエンコーダを、ウエハステージの位置計測装置として採用した露光装置に係る発明が、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかるに、特許文献1などに開示される液浸露光装置では、液体が蒸発する際の気加熱などの影響によりウエハステージ(ウエハステージ上面に設けられていたグレーティング)が変形するおそれがあるなど、未だ改善すべき点があった。
【0005】
かかる不都合を改善するものとして、例えば、特許文献2には、第5の実施形態として、光透過部材で構成されたウエハステージの上面にグレーティングを設け、ウエハステージの下方に配置されたエンコーダ本体から計測ビームをウエハステージに入射させてグレーティングに照射し、グレーティングで発生する回折光を受光することによって、グレーティングの周期方向に関するウエハステージの変位を計測するエンコーダシステムを備えた露光装置が開示されている。この装置では、グレーティングは、カバーガラスで覆われているので、気化熱などの影響は受け難く、高精度なウエハステージの位置計測が可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献2の第5の実施形態に係る露光装置で採用されるエンコーダ本体の配置は、定盤上を移動する粗動ステージと、ウエハを保持し、粗動ステージ上で粗動ステージに対して相対移動する微動ステージと、を組み合わせた、いわゆる粗微動構造のステージ装置で微動ステージの位置情報を計測する場合には、微動ステージと定盤との間に粗動ステージが配置されているため、採用することが困難であった。
【0007】
また、スキャナ等の露光装置で用いられる、露光対象となるウエハ又はガラスプレート等の基板は、次第に(例えばウエハの場合、10年おきに)大型化している。現在は、直径300mmの300mmウエハが主流となっているが、今や直径450mmの450mmウエハ時代の到来が間近に迫っている。450mmウエハに移行すると、1枚のウエハから採れるダイ(チップ)の数が現行の300mmウエハの2倍以上となり、コスト削減に貢献する。加えて、エネルギ、水、その他のリソースの効率的な利用により、1チップにかかるすべてのリソース使用を減少させられるものと期待されている。
【0008】
しかし、ウエハの大型化に伴い、ウエハを保持して移動するウエハステージが大型化、かつ重量化する。ウエハステージの重量化は、特に例えば米国特許第5,646,413号明細書などに開示されるようにレチクルステージとウエハステージとの同期移動中に露光(レチクルパターンの転写)が行われるスキャナの場合、ウエハステージの位置制御性能の悪化を招き易く、ウエハステージの大型化は、装置のフットプリントの増加を招く。このため、ウエハを保持して移動する移動部材を薄型化、軽量化することが望ましい。しかし、ウエハのサイズに比例してその厚みが大きくなるわけではないので、450mmウエハは、300mmウエハに比較して、強度が格段弱く、移動部材を薄型化した場合には、その移動部材がウエハの重量及びその自重により変形し、その結果、この移動部材に保持されたウエハが変形し、そのウエハに対するパターンの転写精度等が悪化するおそれがあった。従って、450mmウエハに対応が可能な新たなシステムの出現が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2007/097379号
【特許文献2】国際公開第2008/038752号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材と;前記第1移動部材に保持され、少なくとも前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能で、前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられた第2移動部材と;前記計測面に少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光するヘッド部を有し、該ヘッド部の出力に基づいて前記第2移動部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する第1計測系と;前記第1計測系で計測された前記位置情報に基づいて、前記第2移動部材を単独で若しくは前記第1移動部材と一体で駆動する駆動系と;を備える移動体装置である。
【0011】
これによれば、第1移動部材に保持された第2移動部材の二次元平面内での位置情報の計測には、第2移動部材の二次元平面に実質的に平行な一面に設けられた計測面に対向して配置され、該計測面に少なくとも1本の第1計測ビームを照射するヘッド部を含む第1計測系が用いられる。そして、第2移動部材は、駆動系によって、第1計測系で計測された位置情報に基づいて、単独で、若しくは第1移動部材と一体で駆動される。この場合、ヘッド部を第2移動部材(計測面)に近接して配置することができ、これにより、第1計測系による第2移動部材の位置情報の高精度な計測、ひいては駆動系による第2移動部材の高精度な駆動が可能になる。
【0012】
本発明は、第2の観点からすると、エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光装置であって、前記物体が前記第2移動部材上に載置される、本発明の移動体装置と;前記第2移動部材上に載置された前記物体に前記エネルギビームを照射するパターニング装置と;を備える第1の露光装置である。
【0013】
これによれば、移動体装置を構成する第2移動部材を精度良く駆動することができるので、この第2移動部材に載置された物体を精度良く駆動して、パターニング装置によりその物体にエネルギビームを照射することで、物体上に精度良くパターンを形成することが可能になる。
【0014】
本発明は、第3の観点からすると、エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光装置であって、少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材と;前記物体を保持して、前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能となるように、前記第2軸に平行な方向の一端部及び他端部が前記第1移動部材にそれぞれ支持された第2移動部材と;前記第2移動部材の前記一端部に駆動力を作用させる第1駆動部と、前記他端部に駆動力を作用させる第2駆動部とを含み、前記第2移動部材を単独で若しくは前記第1移動部材と一体で駆動する駆動系と;を備え、前記第1及び第2駆動部は、前記第2移動部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、前記第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力を作用させる第2の露光装置である。
【0015】
これによれば、第2移動部材は、物体を保持して、二次元平面に平行な面内で第1移動部材に対して相対移動可能となるように、その第2軸に平行な方向の一端部及び他端部が第1移動部材にそれぞれ支持されている。そして、駆動系の一部を構成する第1及び第2駆動部により、第2移動部材の第2軸に平行な方向の一端部及び他端部に対して、それぞれ、第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する駆動力(大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力)が作用させられる。従って、第1及び第2駆動部により、第2移動部材を第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向に駆動することができるのみならず、第1及び第2駆動部が同時に反対向きの第1軸に平行な軸回りの回転方向の駆動力を保持部材の一端部及び他端部に対して作用させることで、第2移動部材(及びこれに保持された物体)を第1軸に平行な方向から見て(第1軸に垂直な面内で)凹形状又は凸形状に変形させることができる。換言すれば、第2移動部材(及びこれに保持された物体)が自重等により変形する場合には、この変形を抑制することが可能になる。
【0016】
本発明は、第4の観点からすると、エネルギビームにより物体を露光する露光装置であって、二次元平面内で独立して移動可能な第1、第2の移動体と;
前記第1の移動体に相対移動可能に支持された保持部材に保持された物体に前記エネルギビームを照射する露光処理が行われる露光ステーションと;前記露光ステーションから前記二次元平面内の第1軸方向の一側に離れて配置され、前記第2の移動体に相対移動可能に支持された保持部材に保持された物体に対する計測処理が行われる計測ステーションと;前記第1の移動体に保持された前記保持部材の前記第2軸に平行な方向の一端部と他端部とに駆動力を作用させる第1駆動系と;前記第2の移動体に保持された前記保持部材の前記第2軸に平行な方向の一端部と他端部とに駆動力を作用させる第2駆動系と;を備え、前記第1及び第2駆動系は、前記各保持部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、前記第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力を作用させる第3の露光装置である。
【0017】
これによれば、第1、第2の移動体にそれぞれ相対移動可能に支持された各保持部材の第2軸に平行な方向の一端部及び他端部に対して、第1及び第2駆動系により、互いに逆向きの第1軸回りの回転方向の力を作用させることにより、露光ステーションにおける露光対象の物体及びこれを保持する保持部材の撓み補正を行うことができるとともに、計測ステーションにおける計測の際の保持部材及びこれに保持された物体の撓み補正を行うことができる。従って、物体の高精度な計測処理と、この計測結果を用いた物体の高精度な露光処理とを行うことが可能となる。
【0018】
本発明は、第5の観点からすると、本発明の第1〜第3の露光装置のいずれかを用いて物体を露光することと;前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法である。
【0019】
本発明は、第6の観点からすると、エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材に、少なくとも前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能に保持され、前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられた第2移動部材に、前記物体を載置する工程と;前記計測面に少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光するヘッド部の出力に基づいて前記第2移動部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測し、計測された前記位置情報に基づいて、前記第2移動部材を前記二次元平面内の走査方向に駆動することで、前記エネルギビームに対して前記物体を走査する工程と;を含む第1の露光方法である。
【0020】
これによれば、走査露光時に第2移動部材を高精度に駆動することができ、物体の高精度な露光が可能となる。
【0021】
本発明は、第7の観点からすると、エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材に、前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能となるように、前記物体を保持する第2移動部材の前記第2軸に平行な方向の一端部及び他端部のそれぞれを支持させることと;前記第2移動部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、前記第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力を作用させることと;を含む第2の露光方法である。
【0022】
これによれば、物体を保持する保持部材は、二次元平面に平行な面内で移動体に対して相対移動可能となるように、その第2軸に平行な方向の一端部及び他端部が移動体にそれぞれ支持される。そして、保持部材の第2軸に平行な方向の一端部及び他端部に対して、それぞれ、第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する駆動力(大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力)が作用させられる。従って、保持部材を第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向に駆動することができるのみならず、第1軸に平行な軸回りの反対向きの回転方向の駆動力を保持部材の第2軸に平行な方向の一端部及び他端部に対して同時に作用させることで、保持部材(及びこれに保持された物体)を第1軸に垂直な方向から見て凹形状又は凸形状に変形させることができる。換言すれば、保持部材(及びこれに保持された物体)が自重等により変形する場合には、この変形を抑制することが可能になる。
【0023】
本発明は、第8の観点からすると、本発明の第1、第2の露光方法のいずれかを用いて物体を露光することと;前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2(A)は、図1の露光装置が備えるステージ装置を示す−Y方向から見た側面図、図2(B)は、ステージ装置を示す平面図である。
【図3】図2(A)及び図2(B)のステージ装置の一部を構成する微動ステージの構成を示す斜視図である。
【図4】図1の露光装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す平面図である。
【図6】図6(A)は、微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す−Y方向から見た側面図、図6(B)は、微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す+X方向から見た側面図である。
【図7】図7(A)は、微動ステージをY軸方向に駆動する際の駆動原理を説明するための図、図7(B)は、微動ステージをZ軸方向に駆動する際の駆動原理を説明するための図、図7(C)は、微動ステージをX軸方向に駆動する際の駆動原理を説明するための図である。
【図8】図8(A)は、微動ステージを粗動ステージに対してZ軸回りに回転させる際の動作を説明するための図、図8(B)は、微動ステージを粗動ステージに対してY軸回りに回転させる際の動作を説明するための図、図8(C)は、微動ステージを粗動ステージに対してX軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図9】微動ステージの中央部を+Z方向に撓ませる際の動作を説明するための図である。
【図10】図10(A)は、計測アームの先端部を示す斜視図、図10(B)は、計測アームの先端部の上面を+Z方向から見た平面図である。
【図11】図11(A)は、Xヘッド77xの概略構成を示す図、図11(B)は、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム内での配置を説明するための図である。
【図12】相対ステージ位置計測系を構成するエンコーダヘッドとスケールの配置を示す平面図(その1)である。
【図13】図13(A)及び図13(B)は、相対ステージ位置計測系を構成するエンコーダヘッドとスケールの配置を示す平面図(その2及びその3)である。
【図14】図14(A)は、スキャン露光時のウエハの駆動方法を説明するための図、図14(B)は、ステッピング時のウエハの駆動方法を説明するための図である。
【図15】図15(A)〜図15(C)は、微動ステージ及びウエハホルダの構成を概略的に示す図である。
【図16】第1の変形例に係る微動ステージ駆動系を示す図である。
【図17】第3の変形例に係る露光装置を示す図である。
【図18】図17の露光装置の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図15(C)に基づいて説明する。
【0026】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0027】
露光装置100は、図1に示されるように、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、局所液浸装置8、微動ステージWFSを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。図1において、微動ステージWFS上には、ウエハWが載置されている。
【0028】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0029】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図4参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0030】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図4参照)に送られる。なお、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号などに開示されているように、エンコーダシステムによってレチクルステージRSTの位置情報を計測しても良い。
【0031】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10によってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上で前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTと微動ステージWFSとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクルR及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。ここで、投影ユニットPUはメインフレームBDに保持され、本実施形態では、メインフレームBDが、それぞれ防振機構を介して設置面(床面など)に配置される複数(例えば3つ又は4つ)の支持部材によってほぼ水平に支持されている。なお、その防振機構は各支持部材とメインフレームBDとの間に配置しても良い。また、例えば国際公開第2006/038952号パンフレットに開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルベースなどに対して投影ユニットPUを吊り下げ支持しても良い。
【0032】
局所液浸装置8は、本実施形態の露光装置100が、液浸方式の露光を行うことに対応して設けられている。局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図4参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように、不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。本実施形態では、主制御装置20が液体供給装置5(図4参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(図4参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体として、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。なお、ArFエキシマレーザ光に対する純水の屈折率nは、ほぼ1.44であり、純水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
【0033】
ステージ装置50は、図1に示されるように、床面上に防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたベース盤12、ウエハWを保持してベース盤12上で移動するウエハステージWST、ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系53(図4参照)及び各種計測系(16、70(図4参照)等)等を備えている。
【0034】
ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成り、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。
【0035】
ウエハステージWSTは、図1及び図2(A)等に示されるように、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12の上に浮上支持され、ウエハステージ駆動系53の一部を構成する粗動ステージ駆動系51(図4参照)により、XY二次元方向に駆動されるウエハ粗動ステージ(以下、粗動ステージと略記する)WCSと、粗動ステージWCSに非接触状態で支持され、粗動ステージWCSに対して相対移動可能なウエハ微動ステージ(以下、微動ステージと略記する)WFSとを有している。微動ステージWFSは、ウエハステージ駆動系53の一部を構成する微動ステージ駆動系52(図4参照)によって粗動ステージWCSに対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)に駆動される。本実施形態では、粗動ステージ駆動系51と微動ステージ駆動系52とを含んで、ウエハステージ駆動系53が構成されている。
【0036】
ウエハステージWST(粗動ステージWCS)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、ウエハステージ位置計測系16によって計測される。また、微動ステージWFSの6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報は微動ステージ位置計測系70(図4参照)によって計測される。ウエハステージ位置計測系16及び微動ステージ位置計測系70の計測結果は、粗動ステージWCS、微動ステージWFSの位置制御のため、主制御装置20(図4参照)に供給される。
【0037】
上記各種計測系を含み、ステージ装置50の構成各部の構成等については、後に詳述する。
【0038】
露光装置100では、投影ユニットPUの中心から+Y側に所定距離隔てた位置にウエハアライメント系ALG(図1では不図示、図4参照)が配置されている。ウエハアライメント系ALGとしては、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられる。ウエハアライメント系ALGは、主制御装置20により、ウエハアライメント(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA))の際に、後述する微動ステージWFS上の計測プレートに形成された第2基準マーク、又はウエハW上のアライメントマークの検出に用いられる。ウエハアライメント系ALGの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。主制御装置20は、ウエハアライメント系ALGの検出結果(撮像結果)と、検出時の微動ステージWFS(ウエハW)の位置情報とに基づいて、対象マークのアライメント時座標系におけるX,Y座標を算出する。
【0039】
この他、本実施形態における露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図4参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、不図示のAF信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図4参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、多点AF系AFの複数の検出点それぞれにおけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(面位置情報)を検出し、その検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、ウエハアライメント検出系ALGの近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント(EGA)時にウエハW表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報と、後述する微動ステージ位置計測系70の一部を構成するレーザ干渉計システム75(図4参照)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。なお、レーザ干渉計システム75ではなく、微動ステージ位置計測系70を構成する後述のエンコーダシステム73の計測値を、フォーカス・レベリング制御で用いても良い。
【0040】
また、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA,RA(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RAの紙面奥側に隠れている。)が配置されている。一対のレチクルアライメント系RA,RAは、投影光学系PLの直下に微動ステージWFS上の後述する計測プレートが位置する状態で、主制御装置20により、レチクルRに形成された一対のレチクルアライメントマーク(図示省略)の投影像と対応する計測プレート上の一対の第1基準マークとを投影光学系PLを介して検出することで、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影領域の中心と計測プレート上の基準位置、すなわち一対の第1基準マークの中心との位置関係を検出するために用いられる。レチクルアライメント系RA,RAの検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図4参照)。なお、レチクルアライメント系RA,RAは設けなくても良い。この場合、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号などに開示されるように、微動ステージWFSに光透過部(受光部)が設けられる検出系を搭載して、レチクルアライメントマークの投影像を検出することが好ましい。
【0041】
図4には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。制御系は、主制御装置20を中心として構成されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、前述の局所液浸装置8、粗動ステージ駆動系51、微動ステージ駆動系52など、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0042】
ここで、ステージ装置50の構成等について詳述する。ベース盤12の内部には、図1に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14を含む、コイルユニットが収容されている。
【0043】
コイルユニットに対応して、粗動ステージWCSの底面(後述する粗動スライダ部91の底面)には、図2(A)に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数の永久磁石91aから成る磁石ユニットが設けられている。磁石ユニットは、ベース盤12のコイルユニットと共に、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されるローレンツ電磁力駆動方式の平面モータから成る粗動ステージ駆動系51(図4参照)を構成している。コイルユニットを構成する各コイル14に供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される(図4参照)。粗動ステージWCSは、上記磁石ユニットが設けられた粗動スライダ部91の底面の周囲に固定された前述のエアベアリングによって、ベース盤12上に所定のクリアランス、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、粗動ステージ駆動系51を介して、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。なお、粗動ステージ駆動系51としては、ローレンツ電磁力駆動方式の平面モータに限らず、例えば可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。この他、粗動ステージ駆動系51を、磁気浮上型の平面モータによって構成しても良い。この場合、粗動スライダ部91の底面にエアベアリングを設けなくても良くなる。
【0044】
粗動ステージWCSは、ウエハステージWSTをY軸方向の中心近傍のXZ断面を概略的に示す図2(A)及びウエハステージWSTの平面図である図2(B)に示されるように、平面視(+Z方向から見て)でX軸方向を長手方向とする長方形の板状の粗動スライダ部91と、粗動スライダ部91の長手方向の一端部と他端部の上面にYZ平面に平行な状態でそれぞれ固定され、かつY軸方向を長手方向とする長方形板状の一対の側壁部92a,92bと、側壁部92a,92bそれぞれの上面に固定された一対の固定子部93a、93bと、を備えている。なお、図2(A)の断面図では、図面を見やすくするため、ハッチングは省略されている。粗動ステージWCSは、全体として、上面のX軸方向中央部及びY軸方向の両側面が開口した高さの低い箱形の形状を有している。すなわち、粗動ステージWCSには、その内部にY軸方向に貫通した空間部が形成されている。一対の固定子部93a、93bそれぞれは、外形が板状の部材から成り、その内部に微動ステージWFSを駆動するための複数のコイルから成るコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。コイルユニットCUa、CUbの構成については、さらに後述する。
【0045】
一対の固定子部93a,93bそれぞれは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする矩形板状の形状を有する。固定子部93aは、+X側の端部が側壁部92a上面に固定され、固定子部93bは、−X側の端部が側壁部92b上面に固定されている。
【0046】
微動ステージWFSは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視でX軸方向を長手方向とする八角形状を有する本体部81と、本体部81の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、を備えている。
【0047】
図3には、微動ステージWFSが一部破断して示されている。図3に示されるように、本体部81は、枠部FRと、該枠部FRの中央部に形成された円形開口内に隙間無く配置され、枠部FRに一体的に固定された中心部CRとの、2部分から構成されている。
【0048】
枠部FRは、天板81u、枠部材81c、及び底部81bを有している。天板81uは、平面視で(上方から見て)Y軸方向の長さに比べてX軸方向の長さが長い八角形状を有し且つその中心にウエハWより一回り大きい円形の開口が形成されている。枠部材81cは、天板81uの外形(輪郭)と同じ形状の外壁81rと、枠部材81cの円形開口と同じ形状の内壁81rと、外壁81rと内壁81rとを連結する複数のリブ81rとを有している。内壁81rの内側には、図3からわかるように、その下半部が上半部よりも内側に突出した段部が、内周面に沿って形成されている。
【0049】
天板81uが、枠部材81cの上面に固定されて両者が一体化されている。このとき、外壁81rと内壁81rとは、それぞれ、天板81uの外縁と内縁とを支持している。
【0050】
底部81bは、枠部材81cの底面に固定されている。この場合、天板81uと、枠部材81cと、底部81bとによって、枠部FRの内部に、複数のリブ81rによって区画された空間が形成される。底部81bは、天板81uと同じ形状の板状の部分と、そのX軸方向両側の一対の張り出し部とを有する(図2(A)参照)。
【0051】
枠部FRの少なくとも一部は、少なくとも中心部CRを構成する後述する透明板よりも軽く、強く、且つ熱膨張率の低い素材から構成される。このような材質として、例えば、セラミックスが好適である。セラミックスを採用する場合、枠部FRを一体物として作成しても良い。ここで、枠部を補強する(高い剛性を備えさせる)ために、リブ81rをさらに増やしても良いし、格子状等、適当な形状に複数のリブを組み合わせても良い。また、十分な枠部の強度が得られれば、必ずしも底部81b(ただし、上述の張り出し部を除く)を設ける必要はない。
【0052】
中心部CRは、透明板81gと、グレーティングRGと、カバーガラス84とを含む。透明板81gは、枠部材81cの内壁81rの内周面に形成された段部に嵌合する段部がその外周面に形成された円盤状の部材から成る。
【0053】
ここで、透明板81gは、内壁81rの高さより幾分厚い均一な厚みを有し、その内部を後述するエンコーダシステムの計測ビーム(レーザ光)が進行可能とする必要があることから、光が透過可能な部材(透明な素材)によって形成されている。また、透明板81gは、その内部におけるレーザ光に対する空気揺らぎの影響を低減するため、本実施形態では中実に形成されている(内部に空間を有しない)。なお、透明板81gは、低熱膨張率であることが好ましく、本実施形態では一例として合成石英(ガラス)などが用いられる。なお、本体部81は、その全体が透明な素材で構成されていても良い。
【0054】
グレーティングRGは、透明板81gの上面に、固定(あるいは形成)されている。グレーティングRGとしては、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む2次元グレーティングが、用いられている。本実施形態では、透明板81g上で2次元グレーティングが固定あるいは形成される領域(以下、形成領域)は、一例として、ウエハWよりも一回り大きな円形となっている。さらに本実施形態では、グレーティングRGの形成領域の直径は、内壁81rの内周面の直径に等しい。
【0055】
カバーガラス84は、グレーティングRGを保護する保護部材であり、グレーティングRGの上面に貼り付けられている。カバーガラス84は、天板81uの開口と同じ直径の円形を有し、その表面が天板81uと同一面を形成している。なお、保護部材(カバーガラス84)として、透明板81gと同じ素材を用いても良いが、これに限らず、例えば枠部81cと同じセラミックス或いは金属を用いても良い。また、グレーティングRGを保護するのに十分な厚みを要するため板状の保護部材が望ましいが、素材に応じて薄膜状の保護部材を用いても良い。なお、本実施形態では、カバーガラス84は、本体部81の上面のほぼ全面を覆うように設けられているが、グレーティングRGを含む本体部81の上面の一部のみを覆うように設けても良い。
【0056】
カバーガラス84の上面(微動ステージWFSの本体部81の上面中央)には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。本実施形態では、例えば環状の凸部(リム部)内に、ウエハWを支持する複数の支持部(ピン部材)が形成される、いわゆるピンチャック方式のウエハホルダが用いられ、一面(表面)がウエハ載置面となるウエハホルダの他面(裏面)側に前述のグレーティングRGなどが設けられる。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFSと一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。あるいは、ウエハホルダの裏面に、グレーティングRG及び透明板81gを一体的に固定して、このウエハホルダを微動ステージWFSに保持させても良い。なお、グレーティングRGの形成領域のうち、一部がウエハホルダの周囲にはみ出す場合には、そのはみ出した領域に対応するカバーガラス84の一面には、グレーティングRGに照射されるエンコーダシステムの計測ビームがカバーガラス84を透過しないように、すなわち、ウエハホルダ裏面の領域の内外で計測ビームの強度が大きく変動しないように、例えばその形成領域を覆う反射部材(例えば薄膜など)を設けることが望ましい。
【0057】
この他、一面にグレーティングRGが固定又は形成される透明板81gの他面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置し、かつその透明板81gの一面側に保護部材(カバーガラス84)を設ける、あるいは、保護部材(カバーガラス84)を設けずに、グレーティングRGが固定又は形成される透明板81gの一面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置しても良い。特に前者では、透明板の代わりにセラミックスなどの不透明な部材にグレーティングRGを固定又は形成しても良いし、あるいは、ウエハホルダの裏面にグレーティングRGを固定又は形成しても良い。また、ウエハホルダを、中実のガラス部材によって形成しても良い。そして、このウエハホルダを、微動ステージにマウントしても良い。
【0058】
本実施形態では、微動ステージWFSは、その本体部81(枠部FR)の内部に中空部が形成され、軽量化が図られているので、その位置制御性の向上が可能である。この場合において、微動ステージWFSの本体部81(枠部FR)形成された中空部に断熱材を配置することとしても良い。このようにすると、一対の可動子部82a、82b内の後述する磁石ユニットを含む微動ステージ駆動系で発生する熱が、グレーティングRGに悪影響を与えるのを防止することが可能になる。
【0059】
さらに、本体部81の上面(天板81uの上面)には、ウエハホルダ(ウエハWの載置領域)の外側に、図2(A)、図2(B)、及び図3に示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ天板81uに対応する八角形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)83が取り付けられている。プレート83の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。プレート83は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるように本体部81の上面に固定されている。また、プレート83には、図2(B)に示されるように、+X端部かつ−Y側端部近傍に円形の切り欠きが形成され、この切り欠きの内部に、その表面がプレート83の表面と、すなわちウエハWの表面とほぼ同一面となる状態で計測プレート86が埋め込まれている。計測プレート86の表面には、前述した一対のレチクルアライメント検出系RA,RAそれぞれにより検出される一対の第1基準マークと、ウエハアライメント系ALGにより検出される第2基準マークとが少なくとも形成されている(第1及び第2基準マークはいずれも図示省略)。なお、プレート83を本体部81に取り付ける代わりに、例えばウエハホルダを微動ステージWFSと一体に形成し、微動ステージWFSの、ウエハホルダを囲む周囲領域(プレート83と同一の領域(計測プレート86の表面を含んでも良い)の上面に撥液化処理を施して、撥液面を形成しても良い。
【0060】
本体部81は、図2(A)からもわかるように、長手方向の一端部と他端部との下端部に外側に突出した張り出し部が形成された全体として八角形板状部材から成り、その底面の、グレーティングRGに対向する部分に凹部が形成されている。本体部81は、グレーティングRGが配置された中央の領域は、その厚さが実質的に均一な板状に形成されている。
【0061】
本体部81(底部81b)の+X側、−X側の張り出し部それぞれの上面には、断面凸形状のスペーサ85a、85bが、それぞれの凸部89a、89bを、外側に向けてY軸方向に延設されている。
【0062】
可動子部82aは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向寸法(長さ)及びX軸方向寸法(幅)が、共に固定子部93aよりも短い(半分程度の)2枚の平面視矩形状の板状部材82a、82aを含む。これら2枚の板状部材82a、82aは、本体部81の長手方向の+X側の端部に対し、前述したスペーサ85aの凸部89aを介して、Z軸方向(上下)に所定の距離だけ離間した状態でともにXY平面に平行に固定されている。この場合、板状部材82aは、スペーサ85aと本体部81の+X側の張り出し部とによって、その−X側端部が挟持されている。2枚の板状部材82a、82aの間には、粗動ステージWCSの固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82a、82aの内部には、後述する磁石ユニットMUa、MUaが、設けられている。
【0063】
可動子部82bは、スペーサ85bにZ軸方向(上下)に所定の間隔が維持された2枚の板状部材82b、82bを含み、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。2枚の板状部材82b、82bの間には、粗動ステージWCSの固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82b、82bの内部には、磁石ユニットMUa、MUaと同様に構成された磁石ユニットMUb、MUbが、設けられている。
【0064】
ここで、前述したように、粗動ステージWCSは、Y軸方向の両側面が開口しているので、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに装着する際には、2枚の板状部材82a、82a、及び82b、82b間に固定子部93a、93bがそれぞれ位置するように、微動ステージのWFSのZ軸方向の位置決めを行い、この後に微動ステージWFSをY軸方向に移動(スライド)させれば良い。
【0065】
次に、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動するための微動ステージ駆動系52の構成について説明する。微動ステージ駆動系52は、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa、MUaと、固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb、MUbと、固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含む。
【0066】
これをさらに詳述する。図5及び図6(A)並びに図6(B)からわかるように、固定子部93aの内部における−X側の端部には、複数(ここでは、12個)の平面視長方形状のYZコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)55、57が、Y軸方向に等間隔でそれぞれ配置された2列のコイル列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。YZコイル55は、上下方向(Z軸方向)に重ねて配置された平面視長方形状の上部巻線55aと、下部巻線55bと、を有する。また、固定子部93aの内部であって、上述した2列のコイル列の間には、Y軸方向を長手方向とする細長い平面視長方形状の一つのXコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)56が、配置されている。この場合、2列のコイル列と、Xコイル56とは、X軸方向に関して等間隔で配置されている。2列のコイル列と、Xコイル56とを含んで、コイルユニットCUaが構成されている。
【0067】
なお、以下では、図5〜図7(C)を用いて、一対の固定子部93a、93bのうち、一方の固定子部93a、及びこの固定子部93aに支持される可動子部82aについて説明するが、他方(−X側)の固定子部93b及び可動子部82bは、これらと同様に構成され、同様に機能する。従って、コイルユニットCUb、磁石ユニットMUb,MUbは、コイルユニットCUa、磁石ユニットMUa,MUaと同様に構成されている。
【0068】
微動ステージWFSの可動子部82aの一部を構成する+Z側の板状部材82aの内部には、図5及び図6(A)並びに図6(B)を参照するとわかるように、X軸方向を長手方向とする平面視長方形の複数(ここでは10個)の永久磁石65a、67aが、Y軸方向に等間隔で配置された2列の磁石列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。2列の磁石列それぞれは、コイル55、57に対向して配置されている。
【0069】
複数の永久磁石65aは、図6(B)に示されるように、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極である永久磁石と、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極である永久磁石とが、Y軸方向に交互に配列されている。複数の永久磁石67aから成る磁石列は、複数の永久磁石65aから成る磁石列と同様に構成されている。
【0070】
また、板状部材82aの内部であって、上述の2列の磁石列の間には、X軸方向に離間して配置されたY軸方向を長手方向とする一対(2つ)の永久磁石66a、66aが、コイル56に対向して配置されている。図6(A)に示されるように、永久磁石66aは、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極となっており、永久磁石66aは、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極となっている。
【0071】
上述した複数の永久磁石65a、67a及び66a、66aによって、磁石ユニットMUaが構成されている。
【0072】
−Z側の板状部材82aの内部にも、図6(A)に示されるように、上述した+Z側の板状部材82aと同様の配置で、永久磁石65b、66b、66b、67bが配置されている。これらの永久磁石65b、66b、66b、67bによって、磁石ユニットMUaが構成されている。なお、−Z側の板状部材82a内の永久磁石65b、66b、66b、67bは、図5では、永久磁石65a、66a、66a、67aに対して、紙面奥側に重なって配置されている。
【0073】
ここで、微動ステージ駆動系52では、図6(B)に示されるように、Y軸方向に隣接して配置された複数の永久磁石(図6(B)において、Y軸方向に沿って順に永久磁石65a〜65aとする)は、隣接する2つの永久磁石65a及び65aそれぞれが、YZコイル55の巻線部に対向したとき、これらに隣接する永久磁石65aが、上述のYZコイル55に隣接するYZコイル55の巻線部に対向しないように(コイル中央の中空部、又はコイルが巻き付けられたコア、例えば鉄芯に対向するように)、複数の永久磁石65及び複数のYZコイル55のY軸方向に関する位置関係(それぞれの間隔)が設定されている。なお、図6(B)に示されるように、永久磁石65a及び65aそれぞれは、YZコイル55に隣接するYZコイル55の巻線部に対向する。永久磁石65b、67a、67bのY軸方向に関する間隔も、同様になっている(図6(B)参照)。
【0074】
従って、微動ステージ駆動系52では、一例として図6(B)に示される状態で、図7(A)に示されるように、コイル55,55の上部巻線及び下部巻線それぞれに、+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル55,55には−Y方向の力(ローレンツ力)が作用し、その反作用として、永久磁石65a、65bそれぞれには、+Y方向の力が作用する。これらの力の作用により、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して+Y方向に移動する。上記の場合とは逆に、コイル55,55に、それぞれ+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して−Y方向に移動する。
【0075】
コイル57に電流を供給することにより、永久磁石67(67a,67b)との間で電磁相互作用が行われ、微動ステージWFSをY軸方向に駆動することができる。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFSのY軸方向の位置を制御する。
【0076】
また、微動ステージ駆動系52では、一例として図6(B)に示される状態で、図7(B)に示されように、コイル55の上部巻線に+Z方向から見て左回りの電流、下部巻線に+Z方向から見て右回りの電流がそれぞれ供給されると、コイル55と永久磁石65aとの間に吸引力、コイル55と永久磁石65Bとの間に反発力(斥力)がそれぞれ発生し、微動ステージWFSは、これらの吸引力及び反発力によって粗動ステージWCSに対して上方(+Z方向)、すなわち浮上する方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、浮上状態の微動ステージWFSのZ方向の位置を制御する。
【0077】
また、図6(A)に示される状態で、図7(C)に示されるように、コイル56に+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル56に+X方向の力が作用し、その反作用として永久磁石66a、66a、及び66b、66bそれぞれには、−X方向の力が作用し、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して−X方向に移動する。また、上記の場合とは逆に、コイル56に+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、永久磁石66a、66a、及び66b、66bには、+X方向の力が作用し、微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに対して+X方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFSのX軸方向の位置を制御する。
【0078】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、主制御装置20は、Y軸方向に配列された複数のYZコイル55、57に対して、一つおきに電流を供給することによって、微動ステージWFSをY軸方向に駆動する。また、これと併せて、主制御装置20は、YZコイル55、57のうち、微動ステージWFSのY軸方向への駆動に使用していないコイルに電流を供給することによって、Y軸方向への駆動力とは別に、Z軸方向への駆動力を発生させ、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させる。そして、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置に応じて、電流供給対象のコイルを順次切り替えることによって、微動ステージWFSの粗動ステージWCSに対する浮上状態、すなわち非接触状態を維持しつつ、微動ステージWFSをY軸方向に駆動する。また、主制御装置20は、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させた状態で、Y軸方向と併せて独立にX軸方向にも駆動可能である。
【0079】
また、主制御装置20は、例えば図8(A)に示されるように、微動ステージWFSの+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる大きさのY軸方向の駆動力(推力)を作用させることによって(図8(A)の黒塗り矢印参照)、微動ステージWFSをZ軸回りに回転(θz回転)させることができる(図8(A)の白抜き矢印参照)。なお、図8(A)とは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる駆動力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFSをZ軸に対して左回りに回転させることができる。
【0080】
また、主制御装置20は、図8(B)に示されるように、微動ステージWFSの+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる浮上力(図8(B)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをY軸回りに回転(θy駆動)させること(図8(B)の白抜き矢印参照)ができる。なお、図8(B)とは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる浮上力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFSをY軸に対して左回りに回転させることができる。
【0081】
さらに、主制御装置20は、例えば図8(C)に示されるように、微動ステージWFSの可動子部82a、82bそれぞれにおいて、Y軸方向の+側と−側とに、互いに異なる浮上力(図8(C)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをX軸回りに回転(θx駆動)させること(図8(C)の白抜き矢印参照)ができる。なお、図8(C)とは反対に、可動子部82a(及び82b)の−Y側の部分に作用させる浮上力を+Y側の部分に作用させる浮上力よりも小さくすることで、微動ステージWFSをX軸に対して左回りに回転させることができる。
【0082】
以上の説明からわかるように、本実施形態では、微動ステージ駆動系52により、微動ステージWFSを、粗動ステージWCSに対して非接触状態で浮上支持するとともに、粗動ステージWCSに対して、非接触で6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)へ駆動することができるようになっている。
【0083】
また、本実施形態では、主制御装置20は、微動ステージWFSに浮上力を作用させる際、固定子部93a内に配置された2列のコイル55、57(図5参照)に互いに反対方向の電流を供給することによって、例えば図9に示されるように、可動子部82aに対して、浮上力(図9の黒塗り矢印参照)と同時にY軸回りの回転力(図9の白抜き矢印参照)を作用させることができる。同様に、主制御装置20は、微動ステージWFSに浮上力を作用させる際、固定子部93b内に配置された2列のコイル55、57に互いに反対方向の電流を供給することによって、可動子部82bに対して、浮上力と同時にY軸回りの回転力を作用させることができる。
【0084】
すなわち、本実施形態では、微動ステージ駆動系52の一部を構成するコイルユニットCUaと、磁石ユニットMUa、MUaとによって、微動ステージWFSの+X側の端部に対して、それぞれ、Y軸方向、X軸方向、Z軸方向、及びθy方向、並びにθx方向の駆動力を作用させる第1駆動部が構成され、微動ステージ駆動系52の一部を構成するコイルユニットCUbと、磁石ユニットMUb、MUbとによって、微動ステージWFSの−X側の端部に対して、それぞれ、Y軸方向、X軸方向、Z軸方向、及びθy方向、並びにθx方向の駆動力を作用させる第2駆動部が構成されている。
【0085】
また、主制御装置20は、上記の第1、第2駆動部を介して一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力(θy方向の力)を作用させることによって、微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向又は−Z方向に撓ませることができる(図9のハッチング付き矢印参照)。従って、図9に示されるように、微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向に(凸状に)撓ませることによって、ウエハW及び本体部81の自重に起因する微動ステージWFS(本体部81)のX軸方向の中間部分の撓みを打ち消して、ウエハW表面のXY平面(水平面)に対する平行度を確保できる。これにより、ウエハWが大径化して微動ステージWFSが大型化した時などに、特に効果を発揮する。
【0086】
また、ウエハWが自重等により変形すると、照明光ILの照射領域(露光領域IA)内において、微動ステージWFS上に載置されたウエハWの表面が、投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入らなくなるおそれもある。そこで、主制御装置20が、上述した微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向に撓ませる場合と同様に、上記の第1、第2駆動部を介して一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力を作用させることによって、ウエハWがほぼ平坦になるように変形され、露光領域IA内でウエハWの表面が投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入るようにすることもできる。なお、図9には、微動ステージWFSを+Z方向に(凸形状に)撓ませる例が示されているが、コイルに対する電流の向きを制御することによって、これとは反対の方向に(凹形状に)微動ステージWFSを撓ませることも可能である。
【0087】
本実施形態の露光装置100では、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)は、主制御装置20により、後述する微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73(図4参照)を用いて計測される。また、微動ステージWFSと粗動ステージWCSとの間のXY平面内の相対位置情報(θz方向の相対位置情報を含む)は、主制御装置20により、後述する相対ステージ位置計測系17(図4参照)を用いて計測される。微動ステージWFSの位置情報及び微動ステージWFSと粗動ステージWCSとの間の相対位置情報は、主制御装置20に送られ、主制御装置20は、これらの位置情報に基づいて微動ステージWFS及び粗動ステージWCSの位置を制御する。
【0088】
これに対し、ウエハステージWSTが微動ステージ位置計測系70の計測領域外に位置する際には、ウエハステージWSTの位置情報は、主制御装置20により、ウエハステージ位置計測系16(図4参照)を用いて計測される。ウエハステージ位置計測系16は、図1に示されるように、粗動ステージWCS側面に鏡面加工により形成された反射面に測長ビームを照射してウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)を計測するレーザ干渉計を含んでいる。なお、図1では図示が省略されているが、実際には、粗動ステージWCSには、Y軸に垂直なY反射面とX軸に垂直なX反射面とが形成され、これに対応して、レーザ干渉計もX反射面、Y反射面にそれぞれ測長ビームを照射するX干渉計、Y干渉計とが設けられている。なお、ウエハステージ位置計測系16では、例えばY干渉計は複数の測長軸を有し、各測長軸の出力に基づいて、ウエハステージWSTのθz方向の位置情報(回転情報)をも計測できる。なお、ウエハステージWSTのXY平面内での位置情報は、上述のウエハステージ位置計測系16に代えて、その他の計測装置、例えばエンコーダシステムによって計測しても良い。この場合、例えばベース盤12の上面に2次元スケールを配置し、粗動ステージWCSの底面にエンコーダヘッドを設けることができる。
【0089】
次に、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報の計測に用いられるエンコーダシステム73と、微動ステージWFSのZ、θx、及びθy方向の位置情報の計測に用いられるレーザ干渉計システム75とを含む、微動ステージ位置計測系70(図4参照)の構成について説明する。微動ステージ位置計測系70は、図1に示されるように、ウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態で、粗動ステージの内部に設けられた空間部内に挿入される計測部材(計測アーム)71を備えている。計測アーム71は、露光装置100のメインフレームBDに支持部72を介して片持ち支持(一端部近傍が支持)されている)。なお、計測部材は、ウエハステージの移動の妨げにならない構成を採用する場合には、片持ち支持に限らず、その長手方向の両端部で支持されても良い。
【0090】
計測アーム71は、Y軸方向を長手方向とする、幅方向(X軸方向)よりも高さ方向(Z軸方向)の寸法が大きい縦長の長方形断面を有する四角柱状(すなわち直方体状)の部材であり、光を透過する同一の素材、例えばガラス部材が複数貼り合わされて形成されている。計測アーム71は、後述するエンコーダヘッド(光学系)が収容される部分を除き、中実に形成されている。計測アーム71は、前述したようにウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態では、先端部が粗動ステージWCSの空間部内に挿入され、図1に示されるように、その上面が微動ステージWFSの下面(より正確には、本体部81(図1では不図示、図2(A)等参照)の下面)に対向している。計測アーム71の上面は、微動ステージWFSの下面との間に所定のクリアランス、例えば数mm程度のクリアランスが形成された状態で、微動ステージWFSの下面とほぼ平行に配置される。なお、計測アーム71の上面と微動ステージWFSの下面との間のクリアランスは、数mm以上でも以下でも良い。
【0091】
微動ステージ位置計測系70は、図4に示されるように、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向、及びθz方向の位置を計測するエンコーダシステム73と、微動ステージWFSのZ軸方向、θx方向及びθy方向の位置を計測するレーザ干渉計システム75とを備えている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ73x、微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ73ya、73yb(以下、適宜これらを併せてYリニアエンコーダ73yとも呼ぶ)を含む。エンコーダシステム73では、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び国際公開第2007/083758号(対応する米国特許出願公開第2007/288121号明細書)などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜ヘッドと略述する)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。ただし、本実施形態では、ヘッドは、後述するように光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測アーム71の外部に配置され、光学系のみが計測アーム71の内部に、すなわちグレーティングRGに対向して配置されている。以下、特に必要な場合を除いて、計測アーム71の内部に配置された光学系をヘッドと呼ぶ。
【0092】
図10(A)には、計測アーム71の先端部が斜視図にて示されており、図10(B)には、計測アーム71の先端部の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を1つのXヘッド77x(図11(A)及び図11(B)参照)で計測し、Y軸方向の位置を一対のYヘッド77ya、77yb(図11(B)参照)で計測する。すなわち、グレーティングRGのX回折格子を用いて微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXヘッド77xによって、前述のXリニアエンコーダ73xが構成され、グレーティングRGのY回折格子を用いて微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド77ya、77ybによって、一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybが構成されている。
【0093】
ここで、エンコーダシステム73を構成する3つのヘッド77x、77ya、77ybの構成について説明する。図11(A)には、3つのヘッド77x、77ya、77ybを代表して、Xヘッド77xの概略構成が示されている。また、図11(B)には、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム71内での配置が示されている。
【0094】
図11(A)に示されるように、Xヘッド77xは、その分離面がYZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、反射ミラーR2a,R2b、及び反射ミラーR3a,R3b等を有し、これらの光学素子が所定の位置関係で配置されている。Yヘッド77ya、77ybも同様の構成の光学系を有している。Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれは、図11(A)及び図11(B)に示されるように、ユニット化されて計測アーム71の内部に固定されている。
【0095】
図11(B)に示されるように、Xヘッド77x(Xリニアエンコーダ73x)では、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられた光源LDxから−Z方向にレーザビームLBxが射出され、計測アーム71の一部にXY平面に対して45°の角度で斜設された反射面RPを介してY軸方向に平行にその光路が折り曲げられる。このレーザビームLBxは、計測アーム71の内部の中実な部分を、計測アーム71の長手方向(Y軸方向)に平行に進行し、図11(A)に示される反射ミラーR3aに達する。そして、レーザビームLBxは、反射ミラーR3aによりその光路が折り曲げられて、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。レーザビームLBxは、偏光ビームスプリッタPBSで偏光分離されて2つの計測ビームLBx1,LBx2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1は反射ミラーR1aを介して微動ステージWFSに形成されたグレーティングRGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2は反射ミラーR1bを介してグレーティングRGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0096】
計測ビームLBx1,LBx2の照射によってグレーティングRGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームそれぞれは、レンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0097】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。それにより、計測ビームLBx1,LBx2それぞれの1次回折ビームは同軸上に合成ビームLBx12として合成される。合成ビームLBx12は、反射ミラーR3bでその光路が、Y軸に平行に折り曲げられて、計測アーム71の内部をY軸に平行に進行し、前述の反射面RPを介して、図11(B)に示される、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられたX受光系74xに送光される。
【0098】
X受光系74xでは、合成ビームLBx12として合成された計測ビームLBx1,LBx2の1次回折ビームが不図示の偏光子(検光子)によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、微動ステージWFSが計測方向(この場合、X軸方向)に移動すると、2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、微動ステージWFSのX軸方向に関する位置情報として主制御装置20(図4参照)に供給される。
【0099】
図11(B)に示されるように、Yヘッド77ya、77ybには、それぞれの光源LDya、LDybから射出され、前述の反射面RPで光路が90°折り曲げられたY軸に平行なレーザビームLBya、LBybが入射し、前述と同様にして、Yヘッド77ya、77ybから、偏向ビームスプリッタで偏向分離された計測ビームそれぞれのグレーティングRG(のY回折格子)による1次回折ビームの合成ビームLBya12、LByb12が、それぞれ出力され、Y受光系74ya、74ybに戻される。ここで、光源LDya、LDybから射出されるレーザビームLBya、LBybとY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とは、図11(B)における紙面垂直方向に重なる光路をそれぞれ通る。また、上述のように、光源から射出されるレーザビームLBya、LBybとY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とが、Z軸方向に離れた平行な光路を通るように、Yヘッド77ya、77ybでは、それぞれの内部で光路が適宜折り曲げられている(図示省略)。
【0100】
図10(A)及び図10(B)に示されるように、Xヘッド77xは、計測アーム71のセンターラインCLから等距離にある、X軸に平行な直線LX上の2点(図10(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上に計測ビームLBx、LBx(図10(A)中に実線で示されている)を照射する。計測ビームLBx、LBxは、グレーティングRG上の同一の照射点に照射される(図11(A)参照)。計測ビームLBx、LBxの照射点、すなわちXヘッド77xの検出点(図10(B)中の符号DP参照)は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致している(図1参照)。なお、計測ビームLBx、LBxは、実際には、本体部81と空気層との境界面などで屈折するが、図11(A)等では、簡略化して図示されている。
【0101】
図11(B)に示されるように、一対のYヘッド77ya、77ybそれぞれは、計測アーム71のセンターラインCLの+X側、−X側に配置されている。Yヘッド77yaは、図10(A)及び図10(B)に示されるように、Y軸に平行な直線LYa上に配置され、直線LXからの距離が等しい2点(図10(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上の共通の照射点に図10(A)においてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya,LByaを照射する。計測ビームLBya,LByaの照射点、すなわちYヘッド77yaの検出点が、図10(B)に符号DPyaで示されている。
【0102】
Yヘッド77ybは、Yヘッド77yaと同様に、計測アーム71のセンターラインCLから直線LYaと同一距離離れたY軸に平行な直線LYb上に配置され、直線LXからの距離が等しい2点(図10(B)の白丸参照)から、計測ビームLByb,LBybを、グレーティングRG上の共通の照射点DPybに照射する。図10(B)に示されるように、計測ビームLBya,LBya及び計測ビームLByb,LBybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。ここで、主制御装置20では、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、2つのYヘッド77ya、77ybの計測値の平均に基づいて決定する。従って、本実施形態では、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点を実質的な計測点として計測される。そして、Yヘッド77ya、77ybによる検出点DPya、DPybの中点は、計測ビームLBx,LBXのグレーティングRG上の照射点DPと一致する。すなわち、本実施形態では、微動ステージWFSのX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する。従って、本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム73を用いることで、微動ステージWFS上に載置されたウエハWの所定のショット領域にレチクルRのパターンを転写する際、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報の計測を、常に露光位置の直下(裏側)で行うことができる。また、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置をそれぞれ計測する、X軸方向に離間して配置された一対のYヘッド77ya、77ybの計測値の差に基づいて、微動ステージWFSのθz方向の回転量を計測する。
【0103】
レーザ干渉計システム75は、図10(A)に示されるように、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzを計測アーム71の先端部から、微動ステージWFSの下面に入射させる。レーザ干渉計システム75は、これら3本の測長ビームLBz、LBz、LBzそれぞれを照射する3つのレーザ干渉計75a〜75c(図4参照)を備えている。
【0104】
レーザ干渉計システム75では、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzは、図10(A)及び図10(B)に示されるように、計測アーム71の上面上の同一直線上に無い3点それぞれから、Z軸に平行に射出される。ここで、3本の測長ビームLBz、LBz、LBzは、図10(B)に示されるように、その重心が、照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する、二等辺三角形(又は正三角形)の各頂点の位置から、それぞれ照射される。この場合、測長ビームLBzの射出点(照射点)はセンターラインCL上に位置し、残りの測長ビームLBz、LBzの射出点(照射点)は、センターラインCLから等距離にある。本実施形態では、主制御装置20は、レーザ干渉計システム75を用いて、微動ステージWFSのZ軸方向の位置、θz方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、レーザ干渉計75a〜75cは、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられている。レーザ干渉計75a〜75cから−Z方向に射出された測長ビームLBz、LBz、LBzは、前述の反射面RPを介して計測アーム71内をY軸方向に沿って進行し、その光路がそれぞれ折り曲げられて、上述の3点から射出される。
【0105】
本実施形態では、微動ステージWFSの下面に、エンコーダシステム73からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタ(図示省略)が設けられている。この場合、波長選択フィルタは、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。波長選択フィルタは、波長選択性を有する薄膜などが用いられ、本実施形態では、例えば透明板81gの一面に設けられ、グレーティングRGはその一面に対してウエハホルダ側に配置される。
【0106】
以上の説明からわかるように、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75を用いることで、微動ステージWFSの6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム73では、計測ビームの空気中での光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。従って、エンコーダシステム73により、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報(θz方向も含む)を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム73によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティング上の検出点、及びレーザ干渉計システム75によるZ軸方向の微動ステージWFS下面上の検出点は、それぞれ露光領域IAの中心(露光位置)に一致するので、いわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。従って、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70を用いることで、アッベ誤差なく、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。
【0107】
次に、微動ステージWFSと粗動ステージWCS間の相対位置情報の計測に用いられる相対ステージ位置計測系17(図4参照)について説明する。相対ステージ位置計測系17は、第1エンコーダシステム17aと第2エンコーダシステム17bとから構成される。
【0108】
図12には、第1エンコーダシステム17aを構成する3つのエンコーダヘッド17Xa,17Xa,17Yaとグレーティング17Gaの配置が示されている。ここで、グレーティング17Gaは、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む2次元グレーティングである。
【0109】
図12に示されるように、グレーティング17Gaは、微動ステージWFS(の本体部81)の+X端部に固定された可動子部82a(の板状部材82a)の−Z面に配置されている。グレーティング17Gaは、Y軸方向を長手方向とする矩形状を有する。ここで、グレーティング17GaのY軸方向に関する長さは、一例として板状部材82aの長さにほぼ等しい(若干短い)。一方、X軸方向に関する幅は、微動ステージWFSの本体部81の幅と粗動ステージWCSに固定された固定子部93a,93bの離間距離との差にほぼ等しい。
【0110】
エンコーダヘッド17Xa,17Xa及び17Yaは、それぞれ、X軸方向及びY軸方向を計測方向とする1次元エンコーダヘッドである。ここで、エンコーダヘッド17Xa,17XaをXヘッドと、エンコーダヘッド17YaをYヘッドと呼ぶ。本実施形態では、Xヘッド17Xa,17Xa及びYヘッド17Yaとして、図11(A)に示された前述のヘッド77x、77ya、77ybと同様の構成のヘッドが採用されている。
【0111】
図12に示されるように、Xヘッド17Xa,17Xa及びYヘッド17Yaは、粗動ステージWCSに固定された固定子部93a内に、計測ビームの射出部を+Z側に向けて、埋め込み配置されている。ここで、微動ステージWFSが粗動ステージWCSによりそのほぼ中央に支持されている状態において、Yヘッド17Yaはグレーティング17Gaの中心に対向する。より正確には、Yヘッド17Yaの計測ビームの照射点が、グレーティング17Gaの中心に一致する。Xヘッド17Xa,17Xaは、Yヘッド17Yaから、それぞれ±Y側に、等距離離間する。すなわち、グレーティング17Ga上において、Xヘッド17Xa,17Xaの計測ビームの照射点は、Yヘッド17Yaの計測ビームの照射点を中心に、それぞれ±Y側に、等距離離間する。
【0112】
Xヘッド17Xa,17XaのY軸方向に関する離間距離は、一例としてグレーティング17Gaの長さの2倍と、微動ステージWFSの粗動ステージWCSに対する移動ストロークと、の差にほぼ等しい(若干短い)。そのため、図13(A)に示されるように、微動ステージWFSが粗動ステージWCSに対して+Y方向に駆動され、移動ストロークの+Y端に達した場合、Xヘッド17Xa,17Xa及びYヘッド17Yaはグレーティング17Gaの−Y端部近傍に対向する。また、図13(B)に示されるように、微動ステージWFSが粗動ステージWCSに対して−Y方向に駆動され、移動ストロークの−Y端に達した場合、Xヘッド17Xa,17Xa及びYヘッド17Yaはグレーティング17Gaの+Y端部近傍に対向する。すなわち、微動ステージWFSの全移動ストロークにおいて、Xヘッド17Xa,17Xa及びYヘッド17Yaは必ずグレーティング17Gaに対向する。
【0113】
Xヘッド17Xa,17Xaは、対向するグレーティング17Gaに計測ビームを照射し、グレーティング17Gaからの戻り光(回折光)を受光することにより、粗動ステージWCSに対する微動ステージWFSのX軸方向に関する相対位置情報を計測する。同様に、Yヘッド17Yaは、粗動ステージWCSに対する微動ステージWFSのY軸方向に関する相対位置情報を計測する。これらの計測結果は、主制御装置20に供給される(図4参照)。
【0114】
主制御装置20は、供給された計測結果を用いて、微動ステージWFSと粗動ステージWCS間のXY平面内の相対位置情報を求める。ここで、前述の通り、Xヘッド17Xa,17Xaの計測ビームのグレーティング17Ga上の照射点(すなわち計測点)は、Yヘッド17Yaの計測ビームの照射点(すなわち計測点)を中心に、±Y方向に離間している。従って、Xヘッド17Xa,17Xaの計測結果から、Yヘッド17Yaの計測点を基準点とする、微動ステージWFSのX軸方向及びθz方向の相対位置情報が求められる。また、Yヘッド17Yaの計測結果から、微動ステージWFSのY軸方向の相対位置情報が求められる。
【0115】
第2エンコーダシステム17bも、第1エンコーダシステム17aと同様に、2つのXヘッドと1つのYヘッドと2次元グレーティングから構成される。2つのXヘッドと1つのYヘッドは粗動ステージWCSに固定された固定子部93bに、2次元グレーティングは微動ステージWFS(の本体部81)の−X端部に固定された可動子部82b(の板状部材82b)の−Z面に配置されている。これらの配置は、第1エンコーダシステム17aを構成するXヘッド17Xa,17Xa、Yヘッド17Ya、及びグレーティング17Gaと、Y軸に関して対称である。
【0116】
第2エンコーダシステム17bを構成する2つのXヘッドと1つのYヘッドの計測結果も、主制御装置20に供給される(図4参照)。主制御装置20は、供給された計測結果を用いて、微動ステージWFSと粗動ステージWCS間のXY平面内の相対位置情報を求める。主制御装置20は、第1及び第2エンコーダシステム17a,17bの計測結果から求められる2つの相対位置情報に基づいて、例えば平均して、粗動ステージWCSに対する微動ステージWFSの相対位置情報を最終決定する。なお、微動ステージWFSと粗動ステージWCSとの相対位置情報として、XY平面内の相対位置情報に代えて、あるいは加えて、Z軸方向、θx方向及びθy方向の少なくとも1つの方向に関して相対位置情報を計測しても良い。
【0117】
主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70を用いて計測される微動ステージWFSの位置情報と、相対ステージ位置計測系17を用いて計測される微動ステージWFSと粗動ステージWCS間の相対位置情報と、から、粗動ステージWCSのXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)を求める。その結果に基づいて、主制御装置20は、粗動ステージWCSの位置を制御する。特に、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、主制御装置20は、粗動ステージWCSを非走査方向にステップ駆動する。
【0118】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、デバイスの製造に際し、まず、主制御装置20により、ウエハアライメント系ALGを用いて、微動ステージWFSの計測プレート86上の第2基準マークが検出される。次いで、主制御装置20により、ウエハアライメント系ALGを用いてウエハアライメント(例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示されるエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)など)などが行われる。なお、本実施形態の露光装置100では、ウエハアライメント系ALGは、投影ユニットPUからY軸方向に離間して配置されているので、ウエハアライメント行う際、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム(計測アーム)による微動ステージWFSの位置計測ができない。そこで、露光装置100では、レーザ干渉計システム(不図示)を介してウエハW(微動ステージWFS)の位置を計測しながらウエハアライメントを行うものとする。ただし、これに限らず、上述した微動ステージ位置計測系70の計測アーム71と同様の構成の計測アームを含む第2の微動ステージ位置計測系(図示省略)をウエハアライメント系ALGの近傍に設け、これを用いてウエハアライメント時における微動ステージのXY平面内の位置計測を行っても良い。また、ウエハアライメント系ALGと投影ユニットPUとが離間しているので、主制御装置20は、ウエハアライメントの結果得られたウエハW上の各ショット領域の配列座標を、第2基準マークを基準とする配列座標に変換する。
【0119】
そして、主制御装置20は、露光開始に先立って、前述の一対のレチクルアライメント系RA,RA、及び微動ステージWFSの計測プレート86上の一対の第1基準マークなどを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順(例えば、米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順)で、レチクルアライメントを行う。そして、主制御装置20は、レチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を行い、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンをそれぞれ転写する。この露光動作は、前述したレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期移動を行う走査露光動作と、ウエハステージWSTをショット領域の露光のための加速開始位置に移動するショット間移動(ステッピング)動作とを交互に繰り返すことで行われる。この場合、液浸露光による走査露光が行われる。本実施形態の露光装置100では、上述の一連の露光動作中、主制御装置20により、微動ステージ位置計測系70を用いて、微動ステージWFS(ウエハW)の位置が計測され、この計測結果に基づいてウエハWの位置が制御される。
【0120】
なお、上述の走査露光動作時は、ウエハWをY軸方向に高加速度で走査する必要があるが、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20は、走査露光動作時には、図14(A)に示されように、原則的に粗動ステージWCSを駆動せず、微動ステージWFSのみをY軸方向に(必要に応じて他の5自由度方向にも併せて)駆動する(図14(A)の黒塗り矢印参照)ことで、ウエハWをY軸方向に走査する。これは、粗動ステージWCSを駆動する場合に比べ、微動ステージWFSのみを動かす方が駆動対象の重量が軽い分、高加速度でウエハWを駆動できて有利だからである。また、前述のように、微動ステージ位置計測系70は、その位置計測精度がウエハステージ位置計測系16よりも高いので、走査露光時には微動ステージWFSを駆動した方が有利である。なお、この走査露光時には、微動ステージWFSの駆動による反力(図14(A)の白抜き矢印参照)の作用により、粗動ステージWCSが微動ステージWFSと反対側に駆動される。すなわち、粗動ステージWCSがカウンタマスとして機能し、ウエハステージWSTの全体から成る系の運動量が保存され、重心移動が生じないので、微動ステージWFSの走査駆動によってベース盤12に偏加重が作用するなどの不都合が生じることがない。
【0121】
一方、X軸方向にショット間移動(ステッピング)動作を行う際には、微動ステージWFSのX軸方向への移動可能量が少ないことから、主制御装置20は、図14(B)に示されるように、粗動ステージWCSをX軸方向に駆動することによって、ウエハWをX軸方向に移動させる。ここで、粗動ステージWCSの位置情報は、微動ステージ位置計測系70と相対ステージ位置計測系17とを用いて計測されるので、微動ステージWFSの駆動制御の精度とほぼ同程度の精度で粗動ステージWCSを駆動制御することができる。
【0122】
次に、ウエハホルダによるウエハの吸着保持及びその吸着の解除について説明する。図15(A)には、微動ステージWFSの構成が概略的に示されている。
【0123】
図15(A)に示されるように、微動ステージWFSの本体部81には、吸引用開口部81aが形成されている。吸引用開口部81aの位置は、特に限定されず、例えば本体部81の側面、下面などに形成することができる。また、本体部81の内部には、ウエハホルダWHの底部に形成された開口部、及び吸引用開口部81aを介して外部空間と、ウエハホルダWHとウエハWの裏面との間に形成される減圧室88とを連通させる配管部材87aが設けられている。配管部材87aの管路の途中には、チェックバルブCVaが配置されている。チェックバルブCVaは、配管部材87a内における気体の流れる方向を、減圧室88から外部空間に向かう一方向(図15(A)の黒塗り矢印参照)に制限すること、すなわち、外部空間から減圧室88内に、減圧室88内の気体よりも高い圧力の気体が流入しないようにすることにより、減圧室88の減圧状態を維持する。
【0124】
また、露光装置100は、ウエハステージWSTが所定のウエハ交換位置に位置されたときに、図15(B)及び図15(C)に示されるように、吸引用開口部81aを介して配管部材87a内にその一端が挿入されるように位置決めされた吸引用配管80aを有している。吸引用配管80aの他端は、図示しないバキュームポンプに接続されている。主制御装置20(図4参照)は、ウエハWが図示しないウエハ搬送装置によりウエハホルダWH上に載置されると、バキュームポンプを制御して、減圧室88内の気体を吸引させる。吸引用配管80aと配管部材87aとの間は、図示しないOリングなどにより密閉されている。これにより、減圧室88内の圧力が外部空間の圧力よりも低くなり、ウエハWがウエハホルダWHに吸着保持される。また、減圧室88内の圧力が所定の圧力になると、主制御装置20は、バキュームポンプによる減圧室88の気体の吸引を停止する。この後、ウエハステージWSTがウエハ交換位置から移動して吸引用配管80aが配管部材87aから抜き取られても、チェックバルブCVaにより配管部材87aの管路の途中が閉塞されているので、減圧室88の減圧状態が維持され、ウエハWがウエハホルダWHに吸着保持された状態が維持される。従って、微動ステージWFSに対して、例えば減圧室88内の気体を吸引するための配管部材(例えばチューブ)などを接続する必要がない。
【0125】
また、減圧室88の減圧状態が常に維持されていると、ウエハWのアンロードが困難になるため、本体部81には、図15(A)に示されるように、減圧室88の減圧状態を解除させるための配管部材87bが設けられている。配管部材87bは、配管部材87aと同様にウエハホルダWHの底部に形成された開口部、及び本体部81に形成された解除用開口部81bを介して、減圧室88と外部空間とを連通させている。解除用開口部81bの位置は、特に限定されず、例えば本体部81の側面、下面などに形成することができる。配管部材87bの管路の途中には、チェックバルブCVbが配置されている。チェックバルブCVbは、配管部材87b内における気体の流れる方向を、外部空間から減圧室88に向かう一方向(図15(A)の矢印参照)に制限する。なお、チェックバルブCVbの弁部材(図15(A)〜図15(C)では、例えばボール)を閉位置に付勢するバネは、減圧室88が減圧空間となっている状態(図15(A)に示される状態)で弁部材が開位置に移動しないように(図15(B)の状態でチェックバルブが開かないように)バネ定数が設定されている。
【0126】
また、露光装置100は、ウエハステージWSTが所定のウエハ交換位置に位置されたときに、図15(B)及び図15(C)に示されるように、解除用開口部81bから配管部材87b内にその一端が挿入されるように位置決めされた気体供給用配管80bを有している。気体供給用配管80bの他端は、図示しない気体供給装置に接続されている。ウエハWをアンロードする際、主制御装置20(図4参照)は、気体供給装置を制御して、配管部材87b内に高圧気体を噴出させる。これにより、チェックバルブCVbが開状態となり、減圧室88内に高圧気体が導入され、ウエハホルダWHによるウエハWの吸着保持が解除される。また、気体供給装置から減圧室88に導入される気体は、ウエハWの下方から、ウエハWの裏面に向けて噴出されるため、ウエハWの自重がキャンセルされる。すなわち、気体供給装置は、ウエハ搬送装置がウエハWをウエハホルダWHから持ち上げる動作をアシストする。従って、ウエハ搬送装置を小型化することができる。
【0127】
ここで、実際には、ウエハホルダWHの裏面かつグレーティングの形成範囲外の位置に配管部材87a、87bに連通する前述の開口部が形成されている。あるいは、ウエハホルダWHに側面に開口部を形成して、配管部材87a、87bを接続しても良い。
【0128】
なお、ウエハホルダとして、ウエハを静電吸着により保持するウエハホルダを用いる場合、微動ステージに充電可能なバッテリーを搭載し、所定のウエハ交換位置で、ウエハの交換と併せてバッテリーの充電を行うと良い。この場合、微動ステージに受電用端子を設けるとともに、ウエハ交換位置の近傍に、ウエハステージがウエハ交換位置に位置する際に、上記受電用端子に電気的に接続されるように位置決めされた給電用端子を配置しておくと良い。
【0129】
以上説明したように、本実施形態の露光装置100によると、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報は、主制御装置20により、微動ステージWFSに配置されたグレーティングRGに対向して配置された計測アーム71を有する微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73を用いて計測される。この場合、粗動ステージWCSには、その内部に空間部が形成され、微動ステージ位置計測系70の各ヘッドは、この空間部内に配置されているので、微動ステージWFSとそれらのヘッドとの間には、空間が存在するのみである。従って、各ヘッドを微動ステージWFS(グレーティングRG)に近接して配置することができ、これにより、微動ステージ位置計測系70による微動ステージWFSの位置情報の高精度な計測、ひいては主制御装置20による粗動ステージ駆動系51及び/又は微動ステージ駆動系52を介した微動ステージWFSの高精度な駆動が可能になる。また、この場合、計測アーム71から射出される、微動ステージ位置計測系70を構成するエンコーダシステム73、レーザ干渉計システム75の各ヘッドの計測ビームのグレーティングRG上の照射点は、ウエハWに照射される露光光ILの照射領域(露光領域)IAの中心(露光位置)に一致している。従って、主制御装置20は、いわゆるアッベ誤差の影響を受けることなく、微動ステージWFSの位置情報を高精度に計測することができる。また、計測アーム71をグレーティングRGの直下に配置することによって、エンコーダシステム73の各ヘッドの計測ビームの大気中の光路長を極短くできるので、空気揺らぎの影響が低減され、この点においても、微動ステージWFSの位置情報を高精度に計測することができる。
【0130】
また、本実施形態の露光装置100によると、ウエハステージ駆動系53の一部を構成する微動ステージ駆動系52、より正確には微動ステージ駆動系52の一部をそれぞれ構成する第1及び第2駆動部により、XY平面に平行な面内で粗動ステージWCSに対して相対移動可能となるように、微動ステージWFSが非接触で支持されている。そして、第1及び第2駆動部により、微動ステージWFSのX軸方向の一端部及び他端部に対して、それぞれ、Y軸方向及びX軸方向、Z軸方向、並びにθy方向、及びθx方向に関する駆動力が作用させられる。各方向の駆動力は、主制御装置20によって、前述のコイルユニットCU1、CU2の各コイルに供給される電流の大きさ及び/又は方向が制御されることによって、その大きさ及び発生方向が、それぞれを独立に制御される。従って、第1及び第2駆動部により、微動ステージWFSをY軸方向、X軸方向、Z軸方向、θz、θy及びθx方向の6自由度方向に駆動することができるのみならず、第1及び第2駆動部が同時に反対向きのθy方向の駆動力を微動ステージWFSのX軸方向の一端部及び他端部に対して作用させることで、微動ステージWFS(及びこれに保持されたウエハW)をY軸に垂直な面(XZ面)内で凹形状又は凸形状に変形させることができる。換言すれば、微動ステージWFS(及びこれに保持されたウエハW)が自重等により変形する場合には、この変形を抑制することが可能になる。
【0131】
また、本実施形態の露光装置100によると、微動ステージWFSを精度良く駆動することができるので、この微動ステージWFSに載置されたウエハWをレチクルステージRST(レチクルR)に同期して精度良く駆動し、走査露光により、レチクルRのパターンをウエハW上に精度良く転写することが可能になる。また、微動ステージWFS及びウエハWの撓みの補正もできるので、走査露光中に、ウエハW表面の照明光ILの照射領域(露光領域IA)を含む領域を投影光学系PLの焦点深度の範囲内に維持して、でフォーカスによる露光不良のない高精度な露光が可能となる。
【0132】
なお、自重撓み補正及び/又はフォーカス・レベリング制御のためだけでなく、ウエハのショット領域内の所定点が露光領域IAを横切る間に、焦点深度の範囲内でその所定点のZ軸方向の位置を変化させて実質的に焦点深度を増大させる超解像技術を採用する場合にも、微動ステージWFS(及びこれに保持されたウエハW)をY軸に垂直な面(XZ面)内で凹形状又は凸形状に変形させる手法を適用ことができる。
【0133】
《第1の変形例》
なお、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動する微動ステージ駆動系52(第1、第2駆動部)の構成は、上記実施形態で説明したものに限られない。図16には、微動ステージ駆動系の他の例が示されている。上述した実施形態で説明した微動ステージ駆動系52では、共通のYZコイル55、57を用いて微動ステージWFSをY軸方向及びZ軸方向に駆動したが、図13に示される微動ステージ駆動系152では、微動ステージWFSをZ軸方向に駆動するための専用のZ駆動用コイル155、158と、微動ステージWFSをY軸方向に駆動するための専用のY駆動用コイル157とが設けられている。微動ステージ駆動系152では、固定子部93a内の−X側の端部近傍に複数の第1のZ駆動用コイル155がY軸方向に沿って配置され、これらの+X側には、微動ステージWFSをX軸方向に駆動する、Y軸方向を長手方向とする一つのX駆動用コイル156が配置されている。また、X駆動用コイル156の+X側には、複数のY駆動用コイル157がY軸方向に沿って配置され、さらに、これらの+X側には、複数の第2のZ駆動用コイル158がY軸方向に沿って配置されている。微動ステージWFSの板状部材82a、82aには、これらのコイル155〜158に対向して永久磁石165a〜168a、165b〜168bが配置されている(各永久磁石の配置については、図5、図6(A)及び図6(B)参照)。図13に示される微動ステージ駆動系152では、Z駆動用コイル155、158とY駆動用コイル157とを独立して制御できるので、制御が容易である。また、微動ステージWFSのY軸方向に関わらず、一定の浮上力で微動ステージWFSを浮上支持できるので、ウエハWのZ軸方向の位置が安定する。
【0134】
《第2の変形例》
また、前述した実施形態において、例えばウエハW上のショット領域のX軸方向のサイズと同距離以上、微動ステージWFSと粗動ステージWCSとが、X軸方向に関して、相対移動可能となるように構成しても良い。この場合、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動する微動ステージ駆動系52は、基本的には上記実施形態と同様の構成であるが、X軸方向の駆動ストロークが長くなるような構成を採用すれば良い。例えば、磁石ユニットMUaの一部を構成する一対(2つ)の永久磁石66a、66a及び磁石ユニットMUaの一部を構成する永久磁石66b、66bとして、X軸方向の長さ(幅)が、所望の駆動ストロークに対応する長さの磁石を採用し、コイルユニットCUaの一部を構成するXコイル56として、これらの永久磁石66a、66a、66b、66bに対応する寸法のコイルを採用する。磁石ユニットMUb、MUb、及びコイルユニットCUbについても同様の構成を採用する。この他、X軸方向についても、Y軸方向と同様に、磁石列とコイル列との組み合わせから成るリニアモータ構成としても良い。
【0135】
いずれにしても、Y軸方向のみならず、X軸方向についても、微動ステージWFSと粗動ステージWCSとが、所定距離以上相対移動可能な構成を採用する場合には、微動ステージ駆動系52による微動ステージWFSのY軸方向の駆動時と同様に、X軸方向の駆動時にも、粗動ステージWCSがカウンタマスとして機能する。この場合、走査露光動作のみならず、ショット間移動(ステッピング)動作をも微動ステージWFS(ウエハW)を駆動して行うようにすることができ、いずれの動作のときにおいても、ウエハステージWSTの全体から成る系の運動量が保存される。
【0136】
また、この場合、例えば、米国特許出願公開第2008/0143994号明細書に開示されるように、ウエハW上の第1ショット領域の加速開始位置で、粗動ステージWCSにその第1ショット領域が属する第1行のショット領域の露光の際の微動ステージWFS(ウエハW)のステッピング方向(一例として+X方向とする)の初速vを与えるため、主制御装置20は、次式(1)で表される力積Ft1を粗動ステージWCSを与えることとしても良い。
【0137】
Ft1=(M+m)・SD/T ……(1)
ここで、Mは粗動ステージWCSの質量、mはウエハW等を含む微動ステージWFSの質量、すなわち(M+m)は、ウエハステージWSTの全体から成る系の質量、SDはステッピング方向(X軸方向)に関する隣接するショット領域の中心同士の間隔(すなわち、ステップ移動動作時のステップ距離)、Tはあるショットの露光のための微動ステージWFSの走査終了時点からX軸方向に隣接する次のショット領域の露光のための微動ステージWFSの走査終了時点までの時間を表す。
【0138】
力積Ft1の作用により、粗動ステージWCSには、次式(2)で表される初速vが付与される。
【0139】
=(M+m)・SD/T/M ……(2)
本例の場合、微動ステージWFSと粗動ステージWCSとを含むウエハステージWSTの全体から成る系の運動量はほぼ保存されると考えて差し支えないので、これ以後、粗動ステージWCSは、外力の作用に起因する運動量に比べて、v・M=Ft1だけ大きな運動量を持つことになる。
【0140】
そして、第1ショット領域が属する第1行のショット領域の露光が、交互スキャンにより行われる間、上記米国特許出願公開第2008/0143994号明細書にも詳細に開示されるように、ウエハステージWSTの全体から成る系の重心は、+X方向に等速運動をする。すなわち、本例では、初速vは、前記系の重心を等速運動させるような初速であり、粗動ステージWCSの質量Mと、ウエハW等を含む微動ステージWFSの質量mとに基づいて、前述の値に定められており、この初速vを粗動ステージWCSに与えるべく、前述の力積Ft1が設定されている。
【0141】
また、第1行に属するショット領域の露光が終了すると、主制御装置20は、上述と逆向き(−X方向)で同じ大きさの初速vを粗動ステージWCSに付与するための力積を、粗動ステージWCSに与える。そして、完全交互スキャンによって、第2行のショット領域の露光が、交互スキャンにより行われる間、ウエハステージWSTの全体から成る系の重心は、−X方向に等速運動をする。
【0142】
以後、第3行、第4行、……に属するショット領域の露光の度に、前の行と逆向きで同じ大きさの初速vを粗動ステージWCSに付与するための力積が、主制御装置20によって、粗動ステージWCSに与えられ、ウエハステージWSTの全体から成る系の重心は、+X方向、−X方向に等速運動をする。
【0143】
以上詳細に説明したように、本例では、主制御装置20は、微動ステージWFSが例えば、+X方向(又は−X方向)に移動する際に、粗動ステージWCSに+X方向(又は−X方向)の初速vを与えることから、微動ステージ駆動系52により駆動されて微動ステージWFSが+X方向(又は−X方向)に移動するとき、その駆動力の反力を受けて粗動ステージWCSが運動量保存の法則に従い−X方向(又は+X方向)に移動するが、そのとき前記初速に起因する+X方向(又は−X方向)の移動も同時に行われているので、結果的に、微動ステージWFSの+X方向(又は−X方向)の駆動力の反力の作用による運動量保存の法則に従った自由運動の際の粗動ステージWCSの移動距離から前記初速に起因する+X方向への移動距離分を差し引いた距離だけ、−X方向(又は+X方向)に粗動ステージWCSが移動し、その移動距離が短くなる。
【0144】
また、本例では、ステッピングの際、微動ステージWFSが加減速を伴って例えば+X方向(又は−X方向)に移動するので、微動ステージWFSの減速時間中は、粗動ステージWCSは+X方向(又は−X方向)に加速され、これにより微動ステージWFSの+X方向(又は−X方向)の駆動力の反力を受けた粗動ステージWCSの−X方向(又は+X方向)の移動距離をさらに短くすることができる。
【0145】
従って、本例によると、粗動ステージWCSの移動に必要なストロークを短くすることができる。特に、微動ステージWFSが+X方向(又は−X方向)へステップ移動を含む動作を行う、すなわち、微動ステージWFSが、+X方向(又は−X方向)に関する加速と減速とを交互に繰り返すので、粗動ステージWCSの移動に必要なX軸方向に関するストロークを最も短くすることができる。
【0146】
さらに、本例では、主制御装置20は、微動ステージWFSと粗動ステージWCSとを含む系の重心がX軸方向に関する等速移動を行うように、粗動ステージWCSに前記初速を与える。この結果、ウエハW上の同一行の複数のショット領域に対する露光動作が行われる間、粗動ステージWCSは、ステッピング、停止、を交互に繰り返しながら+X方向(又は−X方向)に徐々に移動する微動ステージWFSに対して、該微動ステージWFSの位置を基準として一定の範囲内(例えば±Δxとする)の範囲内で往復運動をする。従って、粗動ステージWCSのストロークとして、2Δxに幾分のマージンを加えた距離を用意しておけば足りる。視点を変えて、粗動ステージWCSを基準として考えれば、ステッピングの際に、先に説明したように、粗動ステージWCSをX軸方向に駆動するのであれば、微動ステージWFSと粗動ステージWCSとを含む系の重心がX軸方向に関する等速移動を行うような初速を、微動ステージWFSに与えても良い。この場合には、微動ステージWFSのストロークとして、2Δxに幾分のマージンを加えた距離を用意しておけば足りることとなる。
【0147】
また、粗動ステージWCS(又は微動ステージWFS)に初速を与える際、粗動ステージWCSを、微動ステージに対してその初速の方向にΔxずらしておいても良い。また、微動ステージWFSをY軸方向に駆動する際にも、主制御装置20は、上記と同様に、粗動ステージWCSに駆動方向と同じ方向の初速を与えるようにしても良い。
【0148】
なお、上記実施形態では、レーザ干渉計システム(不図示)を介してウエハW(微動ステージWFS)の位置を計測しながらウエハのアライメントを行うものとしたが、これに限らず、上述した微動ステージ位置計測系70の計測アーム71と同様の構成の計測アームを含む第2の微動ステージ位置計測系をウエハアライメント系ALGの近傍に設け、これを用いてウエハアライメント時における微動ステージのXY平面内の位置計測を行うものとしても良い。
【0149】
《第3の変形例》
図17には、このような第2の微動ステージ位置計測系を備えた第3の変形例に係る露光装置1000の構成が示されている。露光装置1000は、投影ユニットPUが配置された露光ステーション(露光処理部)200と、アライメント系ALGが配置された計測ステーション(計測処理部)300とを備えたツインウエハステージタイプの露光装置である。ここで、前述した第1の実施形態の露光装置100と同一又は同等の構成部分については、同一若しくは類似の記号を用いると共に、その説明を省略又は簡略するものとする。また、同等の部材が露光ステーション200と計測ステーション300とにある場合、識別のため、各部材の符号の末尾にA,Bを付して表記する。ただし、2つのウエハステージの符号は、WST1,WST2と表記する。
【0150】
露光ステーション200は、図1と図17とを比較するとわかるように、基本的には、前述した第1の実施形態の露光装置100と同様に構成されている。また、計測ステーション300には、露光ステーション200側の微動ステージ位置計測系70Aと、左右対称の配置で微動ステージ位置計測系70Bが配置されている。また、計測ステーション300には、アライメント系ALGに代えて、アライメント装置99がメインフレームBDから吊り下げ状態で取り付けられている。アライメント装置99として、例えば国際公開第2008/056735号に詳細に開示される、5つのFIA系を備えた5眼のアライメント系が用いられている。
【0151】
また、露光装置1000では、ベース盤12の露光ステーション200と計測ステーション300との間の位置には、上下動可能なセンターテーブル130が取り付けられている。センターテーブル130は、駆動装置132(図18参照)によって上下動可能な軸134と、軸134の上端に固定された平面視Y字形のテーブル本体136とを備えている。また、ウエハステージWST1、WST2をそれぞれ構成する粗動ステージWCS1、WCS2のそれぞれは、粗動スライダ部91の長手方向の中央の分離線を境として、第1部分と第2部分との2つの部分に分離可能に構成されている。また、粗動ステージWCS1、WCS2それぞれの底面には、軸134より幅の広い、第1部分と第2部分との分離線を含む全体としてU字状の切り欠きが形成されている。これにより、ウエハステージWST1、WST2は、いずれもテーブル本体136の上方に微動ステージWFS1又はWFS2を搬送できるようになっている。
【0152】
図18には、露光装置1000の制御系の主要な構成が、ブロック図にて示されている。
【0153】
このようにして構成された露光装置1000では、露光ステーション200において、ウエハステージWST1を構成する粗動ステージWCS1に支持された微動ステージWFS1上のウエハWに対して露光が行われるのと並行して、計測ステーション300において、ウエハステージWST2を構成する粗動ステージWCS2に支持された微動ステージWFS2上のウエハWに対してウエハアライメント(例えばEGAなど)等が行われる。
【0154】
そして、露光が終了すると、ウエハステージWST1が、テーブル本体136の上方に露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS1を搬送する。そして、センターテーブル130が、駆動装置132によって上昇駆動され、主制御装置20により、ウエハステージ駆動系53Aの粗動ステージ駆動系が制御されて粗動ステージWCS1が第1部分と第2部分とに分離される。これにより、微動ステージWFS1が粗動ステージWCS1からテーブル本体136に渡される。そして、センターテーブル130が、駆動装置132によって下降駆動された後、粗動ステージWCS1が分離前の状態に戻る(一体化する)。そして、一体化した粗動ステージWCS1にウエハステージWST2が−Y方向から近接又は接触し、アライメント済みのウエハWを保持する微動ステージWFS2が、粗動ステージWCS2から粗動ステージWCS1に移載される。この一連の動作は、主制御装置20が、ウエハステージ駆動系53Bの粗動ステージ駆動系と微動ステージ駆動系とを制御することで行われる。
【0155】
その後、微動ステージWFS2を保持した粗動ステージWCS1が、露光ステーション200に移動し、レチクルアライメント、そのレチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われる。
【0156】
この露光と並行して、粗動ステージWCS2が、−Y方向に退避し、テーブル本体136上に保持されている微動ステージWFS1が、不図示の搬送系によって、所定の位置まで搬送され、その微動ステージWFS1に保持されている露光済みのウエハWが、新たなウエハWに、不図示のウエハ交換機構によって交換される。ここで、ウエハ交換位置では、微動ステージWFS2のウエハホルダ(図示省略)とウエハWの裏面とにより形成される減圧室(減圧空間)が、不図示の排気管路及び配管を介してバキュームポンプに接続されており、このバキュームポンプを主制御装置20が作動させることにより、減圧室内の気体が排気管路及び配管を介して外部に排気され、減圧室内が負圧となって、ウエハホルダによるウエハWの吸着が開始される。そして、減圧室内が所定の圧力(負圧)となったとき、主制御装置20によりバキュームポンプが停止される。バキュームポンプが停止されると、不図示のチェック弁の作用により、排気管路は閉じられる。従って、減圧室の減圧状態が維持され、減圧室の気体を真空吸引するためのチューブなどを微動ステージWFS2に接続しなくても、ウエハWがウエハホルダに保持される。このため、微動ステージWFS2を、粗動ステージから分離して支障なく搬送することができる。
【0157】
そして、新たなウエハWを保持した微動ステージWFS1が、搬送系によってテーブル本体136上に搬送され、さらに、テーブル本体136上から粗動ステージWCS2上に渡される。以後、上記と同様の処理が、繰り返し行われる。
【0158】
従って、この変形例に係る露光装置1000では、露光ステーション200において、ウエハWの露光を行う際の微動ステージWFS1、WFS2のXY平面内の位置情報は、主制御装置20により、計測アーム71Aを有する微動ステージ位置計測系70Aのエンコーダシステムを用いて、前述した実施形態と同様にして、高精度に計測される。また、主制御装置20がウエハステージ駆動系53A(の微動ステージ駆動系)を制御することで、露光ステーション200における露光対象のウエハに対する撓み補正を前述と同様にして行うことができる。
【0159】
これに加え、この変形例に係る露光装置1000では、計測ステーション300において、ウエハWのアライメントを行う際の微動ステージWFS1、WFS2のXY平面内の位置情報が、主制御装置20により、計測アーム71Bを有する微動ステージ位置計測系70Bのエンコーダシステムを用いて、前述と同様、高精度に計測され、これにより、レーザ干渉計システムを介してウエハW(微動ステージ)の位置を計測しながらウエハのアライメントを行う場合に比べて、高精度なウエハアライメントが可能になる。そして、このウエハアライメントの結果(例えばEGAにより得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を第2基準マークを基準とする座標に変換した情報)、及びレチクルアライメントの結果等に基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式で、ウエハWの露光が行われる。また、計測ステーション300におけるウエハアライメントの際に、主制御装置20がウエハステージ駆動系53B(の微動ステージ駆動系)を制御することで、前述した微動ステージの撓み補正、すなわちウエハの撓み補正を行うことができる。かかる場合には、高精度なアライメントマークの位置計測を行うことができる。従って、変形例に係る露光装置1000によると、高精度なアライメント結果に基づいた、より高精度なウエハの露光が可能になる。また、変形例では、前述の実施形態と同様に、微動ステージWFS1,WFS2の内部に中空部が形成され、軽量化、ひいてはその位置制御性の向上が図られている。
【0160】
なお、上記実施形態及び変形例では、微動ステージを、粗動ステージに対して移動可能に支持すると共に、6自由度方向に駆動する第1、第2駆動部として、コイルユニットを一対の磁石ユニットで上下から挟み込むサンドイッチ構造が採用される場合について例示した。しかし、これに限らず、第1、第2駆動部は、磁石ユニットを一対のコイルユニットで上下から挟み込む構造であっても良いし、サンドイッチ構造でなくても良い。また、コイルユニットを微動ステージに配置し、磁石ユニットを粗動ステージに配置しても良い。
【0161】
また、上記実施形態及び変形例では、第1、第2駆動部により、微動ステージを、6自由度方向に駆動するものとしたが、必ずしも6自由度に駆動できなくても良い。例えば、第1、第2駆動部をθx方向に関して微動ステージを駆動できなくても良い。
【0162】
なお、上記実施形態では、微動ステージ位置計測系70が、全体が例えばガラスによって形成され、内部を光が進行可能な計測アーム71を備える場合を説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、計測アームは、少なくとも前述の各レーザビームが進行する部分が、光を透過可能な中実な部材によって形成されていれば良く、その他の部分は、例えば光を透過させない部材であっても良いし、中空構造であっても良い。また、例えば計測アームとしては、グレーティングに対向する部分から計測ビームを照射できれば、例えば計測アームの先端部に光源や光検出器等を内蔵していても良い。この場合、計測アームの内部にエンコーダの計測ビームを進行させる必要は無い。
【0163】
また、計測アームは、各レーザビームが進行する部分(ビーム光路部分)が中空などでも良い。あるいは、エンコーダシステムとして、格子干渉型のエンコーダシステムを採用する場合には、回折格子が形成される光学部材を、セラミックス又はインバーなどの低熱膨張性のアームに設けるだけでも良い。これは、特にエンコーダシステムでは、空気揺らぎの影響を極力受けないように、ビームが分離している空間が極めて狭く(短く)なっているからである。さらに、この場合、温度制御した気体を、微動ステージ(ウエハホルダ)とアームとの間(及びビーム光路)に供給して温度安定化を図っても良い。
【0164】
さらに、計測アームは、その形状は特に問わない。また、微動ステージ位置計測系70は、必ずしも、計測アームを備えている必要はなく、粗動ステージWCSの空間部内にグレーティングRGに対向して配置され、該グレーティングRGに少なくとも1本の計測ビームを照射し、該計測ビームのグレーティングRGからの回折光を受光するヘッドを有し、該ヘッドの出力に基づいて微動ステージWFSの少なくともXY平面内の位置情報を計測できれば足りる。
【0165】
また、上記実施形態では、エンコーダシステム73が、Xヘッドと一対のYヘッドを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッド(2Dヘッド)を、1つ又は2つ設けても良い。2Dヘッドを2つ設ける場合には、それらの検出点がグレーティング上で露光位置を中心として、X軸方向に同一距離離れた2点になるようにしても良い。
【0166】
また、微動ステージ位置計測系70は、レーザ干渉計システム75を備えることなく、エンコーダシステム73のみで微動ステージの6自由度方向に関する位置情報を計測できるようにしても良い。この場合、例えばX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダを用いることができる。例えば、2次元のグレーティングRG上の同一直線上に無い3つの計測点に、X軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダと、Y軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダとを含む合計3つのエンコーダから計測ビームを照射し、グレーティングRGからのそれぞれの戻り光を受光することで、グレーティングRGが設けられた移動体の6自由度方向の位置情報を計測することとすることができる。また、エンコーダシステム73の構成は上記実施形態に限られないで任意で構わない。
【0167】
なお、上記実施形態では、微動ステージの上面、すなわちウエハに対向する面にグレーティングが配置されているものとしたが、これに限らず、グレーティングは、ウエハを保持するウエハホルダに形成されていても良い。この場合、露光中にウエハホルダが膨張したり、微動ステージに対する装着位置がずれたりした場合であっても、これに追従してウエハホルダ(ウエハ)の位置を計測することができる。また、グレーティングは、微動ステージの下面に配置されていても良く、この場合、エンコーダヘッドから照射される計測ビームが微動ステージの内部を進行しないので、微動ステージを光が透過可能な中実部材とする必要がなく、微動ステージを中空構造にして内部に配管、配線等を配置することができ、微動ステージを軽量化できる。
【0168】
なお、上記実施形態では、微動ステージWFSは、ローレンツ力(電磁力)の作用により粗動ステージWCSに非接触支持されたが、これに限らず、例えば微動ステージWFSに真空予圧空気静圧軸受等を設けて、粗動ステージWCSに対して浮上支持しても良い。また、上記実施形態では、微動ステージWFSは、全6自由度方向に駆動可能であったが、これに限らず少なくともXY平面に平行な二次元平面内を移動できれば良い。また、微動ステージ駆動系52は、上述したムービングマグネット型のものに限らず、ムービングコイル型のものであっても良い。さらに微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに接触支持されていても良い。従って、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動する微動ステージ駆動系52としては、例えばロータリモータとボールねじ(又は送りねじ)とを組み合わせたものであっても良い。
【0169】
また、上記実施形態では、相対ステージ位置計測系17を構成する第1エンコーダシステム17aと第2エンコーダシステム17bのそれぞれが、2つのXヘッドと1つのYヘッドを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッド(2Dヘッド)を、各2つ備えることとしても良い。また、光学式エンコーダに限らず磁気式エンコーダを用いることとしても良い。
【0170】
なお、ウエハステージWSTの移動範囲全域でその位置計測が可能となるように微動ステージ位置計測系を構成しても良い。この場合にはウエハステージ位置計測系16が不要になる。また、上記実施形態において、ベース盤12をウエハステージの駆動力の反力の作用により移動可能なカウンタマスとしても良い。この場合、粗動ステージをカウンタマスとして使用してもしなくても良いし、粗動ステージを上記実施形態と同様にカウンタマスとして使用するときでも粗動ステージを軽量化することができる。
【0171】
なお、上記実施形態では、露光装置が液浸型の露光装置である場合について説明したが、これに限られるものではなく、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも本発明は好適に適用することができる。
【0172】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0173】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0174】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0175】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0176】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダシステム及びレーザ干渉計システムを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0177】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0178】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0179】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0180】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0181】
なお、本発明の移動体装置は、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
【0182】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0183】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、所定平面内で移動体を駆動するのに適している。また、本発明の露光装置は、エネルギビームを物体上に照射して物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0184】
10…照明系、17…相対ステージ位置計測系、20…主制御装置、70…微動ステージ位置計測系、IL…照明光、R…レチクル、RST…レチクルステージ、WST…ウエハステージ、WCS…粗動ステージ、WFS…微動ステージ、PL…投影光学系、W…ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材と;
前記第1移動部材に保持され、少なくとも前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能で、前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられた第2移動部材と;
前記計測面に少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光するヘッド部を有し、該ヘッド部の出力に基づいて前記第2移動部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する第1計測系と;
前記第1計測系で計測された前記位置情報に基づいて、前記第2移動部材を単独で若しくは前記第1移動部材と一体で駆動する駆動系と;を備える移動体装置。
【請求項2】
前記計測面には、グレーティングが形成され、
前記ヘッド部は、第1計測ビームの前記グレーティングからの回折光を受光する請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記グレーティングは、前記第1軸及び第2軸に平行な方向をそれぞれ周期方向とする第1及び第2回折格子を含み、
前記ヘッド部は、前記第1計測ビームとして前記第1及び第2回折格子にそれぞれ対応する第1軸方向計測用ビーム及び第2軸方向計測用ビームを照射し、前記第1軸方向計測用ビーム及び第2軸方向計測用ビームそれぞれの前記グレーティングからの回折光を受光し、前記第1計測系は、前記ヘッド部の出力に基づいて、前記第2移動部材の前記第1軸及び第2軸に平行な方向に関する位置情報を計測する請求項2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記ヘッド部は、前記第1軸方向計測用ビームとして、前記第1回折格子上の照射点が前記第2軸方向で互いに異なる少なくとも2本の計測用ビームを、前記第1回折格子に照射する請求項3に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記少なくとも2本の計測用ビームと前記第2軸方向計測用ビームとは、前記グレーティング上の前記第2軸に平行な直線上の照射点にそれぞれ照射される請求項4に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記第2移動部材に複数の第2計測ビームを照射し、その反射光を受光して前記第2移動部材の前記二次元平面に直交する方向及び該二次元平面に対する傾斜方向の位置情報を計測する第2計測系をさらに備え、
前記駆動系は、前記第1及び第2計測系の出力に基づいて、前記第2移動部材を駆動する請求項1〜5のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記第2移動部材は、一端部及び該一端部とは前記計測面を挟んで反対側の他端部が前記第1移動部材にそれぞれ支持され、
前記駆動系は、前記第2移動部材の前記一端部に駆動力を作用させる第1駆動部と、前記他端部に駆動力を作用させる第2駆動部とを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記第1及び第2駆動部それぞれは、前記第1移動部材と前記第2移動部材との一方に配置されたコイルユニットと、前記第1移動部材と前記第2移動部材との他方に配置された磁石ユニットとを含み、前記第2移動部材を非接触駆動する請求項7に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記第1及び前記第2駆動部は、前記第1軸及び第2軸に平行な方向、及び二次元平面に直交する方向、並びに前記第1軸及び第2軸それぞれに平行な軸回りの回転方向に駆動力を発生可能であり、その駆動力の大きさ及び発生方向それぞれが独立に制御可能である請求項7又は8に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記第1移動部材は、前記二次元平面に平行な上面を有するベース上に非接触支持されている請求項9に記載の移動体装置。
【請求項11】
前記駆動系は、前記ベース上で、前記第1移動部材を駆動する第3駆動部をさらに含み、
前記第1、第2駆動部を介して、前記第2移動部材を前記第1軸又は第2軸に平行な方向のうちの第1方向に移動させる際に、前記第3駆動部を介して前記第1移動部材に前記第1方向の初速を与える制御装置をさらに備える請求項10に記載の移動体装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第2移動部材と前記第1移動部材とを含む系の重心が前記第1方向に関する等速移動を行うように、前記第1移動部材に前記初速を与える請求項11に記載の移動体装置。
【請求項13】
前記第1移動部材と前記第2移動部材との少なくとも前記二次元平面内の相対位置情報を計測する第3計測系をさらに備え、
前記駆動系は、前記第1計測系により計測された前記第2移動部材の前記位置情報と前記第3計測系により計測された前記相対位置情報とに基づいて、前記第1移動部材を駆動する請求項1〜12のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項14】
エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光装置であって、
前記物体が前記第2移動部材上に載置される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の移動体装置と;
前記第2移動部材上に載置された前記物体に前記エネルギビームを照射するパターニング装置と;を備える露光装置。
【請求項15】
前記第2移動部材は、その内部を光が進行可能な中実部を少なくとも一部に有し、
前記計測面は、前記第2移動部材の前記物体の載置面側に前記中実部に対向して配置され、
前記ヘッド部は、前記物体の載置面とは反対側に前記中実部に対向して配置されている請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記第2移動部材は、前記中実部を支持する支持部をさらに有し、
前記支持部は、その少なくとも一部が前記中実部より軽い素材から成る請求項15に記載の露光装置。
【請求項17】
前記支持部は中空である請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記支持部の内部には断熱材が配置される請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
前記ヘッド部から前記計測面に対して照射される前記第1計測ビームの照射点の中心である計測中心は、前記物体に照射される前記エネルギビームの照射領域の中心である露光位置に一致する請求項14〜18のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項20】
前記第1移動部材は、内部に空間部を有し、
前記第1計測系のヘッド部は、前記第1移動部材の空間部内に前記計測面に対向して配置されている請求項14〜19のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項21】
前記第1移動部材は、支持している前記第2移動部材の前記第1軸及び第2軸に平行な方向に関する駆動力の作用により、運動量保存の法則に従って前記第2移動部材と反対方向へ移動する請求項14〜20のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項22】
エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光装置であって、
少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材と;
前記物体を保持して、前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能となるように、前記第2軸に平行な方向の一端部及び他端部が前記第1移動部材にそれぞれ支持された第2移動部材と;
前記第2移動部材の前記一端部に駆動力を作用させる第1駆動部と、前記他端部に駆動力を作用させる第2駆動部とを含み、前記第2移動部材を単独で若しくは前記第1移動部材と一体で駆動する駆動系と;を備え、
前記第1及び第2駆動部は、前記第2移動部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、前記第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力を作用させる露光装置。
【請求項23】
前記第1及び第2駆動部は、前記第2移動部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な前記第2軸に平行な軸回りの駆動力をさらに作用させる請求項22に記載の露光装置。
【請求項24】
前記第1及び第2駆動部それぞれは、
前記第1移動部材及び前記第2移動部材の一方に前記第2軸に平行な方向に並んで配置された2つのコイル列を含むコイルユニットと、前記第1移動部材及び前記第2移動部材の他方に前記2つのコイル列に対応して前記第2軸に平行な方向に並んで配置された2つの磁石列を含む磁石ユニットとを有し、該磁石ユニットと前記コイルユニットとの間の電磁相互作用によって発生する電磁力により、前記第2移動部材を非接触駆動する請求項22又は23に記載の露光装置。
【請求項25】
前記第1移動部材は、前記二次元平面に平行な上面を有するベース上に非接触支持されている請求項22〜24のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項26】
前記駆動系は、前記ベース上で、前記第1移動部材を駆動する第3駆動部をさらに含み、
前記第1、第2駆動部を介して、前記第2移動部材を前記第1軸又は第2軸に平行な方向のうちの第1方向に移動させる際に、前記第3駆動部を介して前記第1移動部材に前記第1方向の初速を与える制御装置をさらに備える請求項25に記載の露光装置。
【請求項27】
前記制御装置は、前記第2移動部材と前記第1移動部材とを含む系の重心が前記第1方向に関する等速移動を行うように、前記第1移動部材に前記初速を与える請求項26に記載の露光装置。
【請求項28】
前記第2移動部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する第1計測系と;
前記第2移動部材に少なくとも3つの第2計測ビームを照射し、その反射光を受光して前記第2移動部材の前記二次元平面に直交する方向の位置情報を少なくとも3点で計測する第2計測系と;をさらに備え、
前記駆動系は、前記第1、第2計測系の出力に基づいて、前記第2移動部材を駆動する請求項22〜27のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項29】
前記第1移動部材は、内部に空間部を有し、
前記第2移動部材は、その内部を光が進行可能な中実部を少なくとも一部に有し、
前記第2移動部材の前記物体の載置面側に前記中実部に対向する前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられ、
前記第1計測系は、前記物体の載置面とは反対側に前記中実部に対向して、前記第1移動部材の空間部内に配置され、前記計測面に少なくとも1本の計測ビームを照射し、該計測ビームの前記計測面からの光を受光するヘッド部を有し、該ヘッド部の出力に基づいて前記第2移動部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する請求項28に記載の露光装置。
【請求項30】
前記ヘッド部から前記計測面に対して照射される前記計測ビームの照射点の中心である計測中心は、前記物体に照射される前記エネルギビームの照射領域の中心である露光位置に一致する請求項29に記載の露光装置。
【請求項31】
前記物体が載置された前記第2移動部材の撓みを調整するように、前記第2計測系の出力に基づいて、前記駆動系を制御する制御装置をさらに備える請求項28〜30のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項32】
前記制御装置は、前記物体の自重変形を抑制するために前記駆動系を制御する請求項31に記載の露光装置。
【請求項33】
前記物体に照射される前記エネルギビームが経由する光学系をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2移動部材上に載置された前記物体表面の前記エネルギビームの照射領域を含む領域が、前記光学系の焦点深度の範囲内に入るように前記駆動系を制御する請求項31に記載の露光装置。
【請求項34】
前記エネルギビームに対して、前記物体を前記二次元平面内の走査方向に走査する走査露光に際し、
前記駆動系は、前記第2移動部材のみを、前記第1計測系で計測された前記位置情報に基づいて、前記走査方向に走査駆動する請求項14〜21,28〜33のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項35】
エネルギビームにより物体を露光する露光装置であって、
二次元平面内で独立して移動可能な第1、第2の移動体と;
前記第1の移動体に相対移動可能に支持された保持部材に保持された物体に前記エネルギビームを照射する露光処理が行われる露光ステーションと;
前記露光ステーションから前記二次元平面内の第1軸方向の一側に離れて配置され、前記第2の移動体に相対移動可能に支持された保持部材に保持された物体に対する計測処理が行われる計測ステーションと;
前記第1の移動体に保持された前記保持部材の前記第2軸に平行な方向の一端部と他端部とに駆動力を作用させる第1駆動系と;
前記第2の移動体に保持された前記保持部材の前記第2軸に平行な方向の一端部と他端部とに駆動力を作用させる第2駆動系と;を備え、
前記第1及び第2駆動系は、前記各保持部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、前記第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力を作用させる露光装置。
【請求項36】
前記第1、第2の移動体は、前記二次元平面に平行な上面を有するベース上に非接触支持されている請求項35に記載の露光装置。
【請求項37】
前記ベース上で、前記第1、第2移動体を駆動する第3駆動系をさらに備える請求項36に記載の露光装置。
【請求項38】
前記第1駆動系又は第2駆動系を介して、前記保持部材を前記第1軸又は第2軸に平行な方向のうちの第1方向に移動させる際に、前記第3駆動系を介して前記第1移動体又は第2移動体に前記第1方向の初速を与える制御装置をさらに備える請求項37に記載の露光装置。
【請求項39】
前記制御装置は、前記保持部材と前記第1移動体又は第2移動体とを含む系の重心が前記第1方向に関する等速移動を行うように、前記第1移動体又は第2移動体に前記初速を与える請求項38に記載の露光装置。
【請求項40】
前記第1、第2移動体は、内部に空間部を有し、
前記第1移動体の空間部内に配置され、前記第1移動体に支持された前記保持部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を下方から計測する第1計測系と;
前記第2移動体の空間部内に配置され、前記第2移動体に支持された前記保持部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を下方から計測する第2計測系と;をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1計測系の計測情報に基づいて前記第1移動体に支持された前記保持部材を単独で又は前記第1移動体と一体で駆動し、前記第2計測系の計測情報に基づいて前記第2移動体に支持された前記保持部材を単独で又は前記第2移動体と一体で駆動する請求項38又は39に記載の露光装置。
【請求項41】
請求項14〜40のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体を露光することと;
前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法。
【請求項42】
エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、
少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材に、少なくとも前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能に保持され、前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられた第2移動部材に、前記物体を載置する工程と;
前記計測面に少なくとも1本の第1計測ビームを照射し、該第1計測ビームの前記計測面からの光を受光するヘッド部の出力に基づいて前記第2移動部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測し、計測された前記位置情報に基づいて、前記第2移動部材を前記二次元平面内の走査方向に駆動することで、前記エネルギビームに対して前記物体を走査する工程と;を含む露光方法。
【請求項43】
前記ヘッド部の出力に基づいて前記第2移動部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測するとともに、前記第1移動部材と前記第2移動部材との少なくとも前記二次元平面内の相対位置情報を計測し、計測された前記位置情報及び前記相対位置情報に基づいて、前記第1移動部材を前記二次元平面内の非走査方向にステップ駆動する工程をさらに含む請求項42に記載の露光方法。
【請求項44】
エネルギビームの照射によって物体にパターンを形成する露光方法であって、
少なくとも互いに直交する第1軸及び第2軸を含む二次元平面に沿って移動可能な第1移動部材に、前記二次元平面に平行な面内で前記第1移動部材に対して相対移動可能となるように、前記物体を保持する第2移動部材の前記第2軸に平行な方向の一端部及び他端部のそれぞれを支持させることと;
前記第2移動部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、前記第1軸及び第2軸に平行な方向、前記二次元平面に直交する方向、並びに前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な駆動力を作用させることと;を含む露光方法。
【請求項45】
前記駆動力を作用させる際に、前記第2移動部材の前記一端部及び他端部に対して、それぞれ、大きさ及び発生方向それぞれを独立に制御可能な前記第2軸に平行な軸回りの駆動力をさらに作用させる請求項44に記載の露光方法。
【請求項46】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材の一方に前記第2軸に平行な方向に並んで配置された2つのコイル列を含むコイルユニットと、前記第1移動部材及び前記第2移動部材の他方に前記2つのコイル列に対応して前記第2軸に平行な方向に並んで配置された2つの磁石列を含む磁石ユニットとの間の電磁相互作用によって発生する電磁力を各方向の駆動力として、前記第2移動部材を非接触駆動する請求項44又は45に記載の露光方法。
【請求項47】
前記物体が載置された前記第2移動部材の撓みを調整するように、前記第2移動部材の前記二次元平面に対する傾斜方向の位置情報に基づいて、前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する駆動力を制御する請求項44〜46のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項48】
前記物体の自重変形を抑制するために前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する駆動力を制御する請求項47に記載の露光方法。
【請求項49】
前記エネルギビームは、光学系を介して前記第2移動部材上に載置された前記物体表面に照射され、その照射領域が、前記光学系の焦点深度の範囲内に入るように、前記前記第1軸に平行な軸回りの回転方向に関する駆動力を制御する請求項47に記載の露光方法。
【請求項50】
前記第1移動部材は、内部に空間部を有する請求項44〜49のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項51】
請求項42〜50のいずれか一項に記載の露光方法を用いて物体を露光することと;
前記露光された物体を現像することと;を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−2441(P2011−2441A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217103(P2009−217103)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】