説明

穴形状測定装置および穴形状測定方法

【課題】 穴の全体形状だけでなく、穴の壁面に形成された微細な凹凸形状をも精度良く測定する。
【解決手段】 管状プローブ80からレーザ光を測定対象穴の壁面に照射し、レーザ光の焦点位置と壁面における反射位置とのずれ量(焦点ずれ量)に応じたフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路111,112を備える。コントローラ100は、管状プローブ80を回転させながらZ方向(管状プローブの中心軸方向)に移動させて、レーザ光を測定対象穴の壁面に螺旋状に照射する。そして、管状プローブ80のZ方向位置と、管状プローブ80の回転角度と、フォーカスエラー信号から得た焦点ずれ量とに基づいて測定対象穴の3次元形状を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象穴に管状プローブを挿入し、管状プローブの先端から測定対象穴の壁面に向けてレーザ光を出射するとともに、壁面からの反射光を管状プローブを介して光検出器で受光し、光検出器における受光信号に基づいて穴の形状を測定する穴形状測定装置および穴形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を用いて穴の内面形状を測定する穴形状測定装置が知られている。例えば、特許文献1に提案された穴形状測定装置は、測定対象となる穴に管状プローブを挿入し、管状プローブ内を通過したレーザ光を管状プローブの先端に設けたプリズムで90°より小さい角度曲げて穴の壁面に照射し、壁面で反射した反射光をプリズムに戻して管状プローブを通過させ集光レンズに導きPSD(半導体位置検出素子)上で結像させる。そして、反射光のPSD上での結像位置から、3角測量の原理にてプリズムから壁面までの距離を演算している。穴形状測定装置は、管状プローブを回転させるモータと、管状プローブを軸方向に移動させるモータとを備え、その2つのモータを駆動しながらレーザ光を壁面に照射して、管状プローブの回転角度と軸方向の移動量ごとの、プリズムから壁面までの距離を算出することで、穴の内面3次元形状を測定する。
【特許文献1】特開平5−99631号公報
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、上記の穴形状測定装置では、穴の全体的な形状は測定できても、穴の壁面に形成された微細な凹凸形状をも測定しようとした場合には精度が不足してしまう。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、穴の全体的な形状だけでなく、穴の壁面に形成された微細な凹凸形状をも精度良く測定する穴形状測定装置および穴形状測定方法を提供することを目的とする。
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、レーザ光を出射するレーザ光出射手段と、測定対象穴に挿入される管状体であって、先端に前記レーザ光出射手段から出射したレーザ光を集光させる対物レンズとレーザ光の進行方向を前記測定対象穴の壁面に向かうように変える反射部材とを備え、前記レーザ光出射手段から出射したレーザ光と前記測定対象穴の壁面で反射した反射光とが通過する通路となる管状プローブと、前記管状プローブを通過して戻った前記反射光を受光し、受光状態に応じた信号を出力する光検出器と、前記対物レンズにより集光されるレーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対応して、前記光検出器に受光される反射光の受光状態を変化させる受光光学系と、前記光検出器が出力する信号に基づいて、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量を検出する焦点ずれ量検出手段と、前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を前記管状プローブの中心軸方向に変化させる移動手段と、前記管状プローブを前記管状プローブの中心軸周りに回転させる、あるいは、前記測定対象穴を前記測定対象穴の中心軸回りに回転させる回転手段と、前記移動手段により前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置が基準相対位置から変化した移動量を検出する移動量検出手段と、前記回転手段により前記管状プローブあるいは前記測定対象穴が基準回転位置から回転した回転角度を検出する回転角度検出手段と、前記移動手段と前記回転手段とを作動させながら、前記焦点ずれ量検出手段が検出する前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量と、前記移動量検出手段が検出する移動量と、前記回転角度検出手段が検出する回転角度とを取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得した前記ずれ量と前記移動量と前記回転角度とに基づいて、前記測定対象穴の形状データを算出する穴形状算出手段とを備えたことにある。
【0005】
本発明においては、測定対象穴に管状プローブが挿入され、管状プローブの先端からレーザ光が測定対象穴の壁面に向けて照射される。測定対象穴としては、例えば、円筒状内壁面で囲まれた穴が適している。レーザ光は、レーザ光出射手段から略平行光として出射され、管状プローブの先端に設けた対物レンズを通過するとともに反射部材で方向を変えて測定対象穴の壁面に向かう。管状プローブの先端から壁面に向かうレーザ光は、対物レンズにより集光され焦点位置で収束する。レーザ光は、測定対象穴の壁面で反射し、管状プローブを戻って受光光学系を介して光検出器に受光される。受光光学系は、対物レンズにより集光されるレーザ光の焦点位置と測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対応して光検出器に受光される反射光の受光状態を変化させる。従って、光検出器の信号から、レーザ光の焦点位置と測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量(以下、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量、あるいは、焦点ずれ量と呼ぶ)に応じて出力が変化するフォーカスエラー信号を生成することができる。焦点ずれ量検出手段は、こうしたフォーカスエラー信号を使って、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量を検出する。
【0006】
管状プローブの中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離は一定であるため、焦点ずれ量検出手段により検出される焦点ずれ量から、管状プローブの中心軸から測定対象穴の壁面までの距離を検出することができる。従って、測定対象穴の壁面全体にわたって、管状プローブの中心軸からの距離を検出することで測定対象穴の形状を精度良く測定することができる。
【0007】
測定対象穴の形状を測定するにあたっては、移動手段と回転手段とを作動させることによりレーザ光の測定対象穴の壁面への照射位置を変化させ、その照射位置ごとのレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量を焦点ずれ量検出手段により検出する。移動手段は、管状プローブと測定対象穴との相対位置関係を管状プローブの中心軸方向(中心軸の向いている方向)に変化させる。これにより、レーザ光の照射位置は、測定対象穴の壁面を管状プローブの中心軸方向に移動する。この場合、移動手段は、管状プローブを移動させてもよいし、測定対象穴を移動(つまり、測定対象穴を形成した測定体を移動)させてもよい。一方、回転手段は、管状プローブを管状プローブの中心軸周りに回転させる、あるいは、測定対象穴を測定対象穴の中心軸回りに回転させる。これにより、レーザ光の照射位置は、測定対象穴の壁面を周方向に移動する。
【0008】
レーザ光の測定対象穴への照射位置は、移動量検出手段と回転角度検出手段とにより検出することができる。移動量検出手段は、移動手段により管状プローブと測定対象穴との相対位置が基準相対位置から変化した移動量を検出し、回転角度検出手段は、回転手段により管状プローブあるいは測定対象穴が基準回転位置から回転した回転角度を検出する。
【0009】
そして、情報取得手段が、移動手段と回転手段とを作動させながら、焦点ずれ量検出手段が検出する焦点ずれ量と、移動量検出手段が検出する移動量と、回転角度検出手段が検出する回転角度とを取得する。こうした情報(焦点ずれ量、移動量、回転角度)は、移動手段と回転手段との作動中において所定のタイミングで繰り返し取得され、例えば、メモリに記憶される。
【0010】
穴形状算出手段は、情報取得手段により取得した焦点ずれ量と移動量と回転角度とに基づいて測定対象穴の形状データを算出する。例えば、管状プローブを測定対象穴の中心軸位置に配置して測定する場合には、管状プローブの中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離(一定値)に焦点ずれ量を加減算することにより測定対象穴の半径が求められ、この半径と移動量と回転角度とから3次元の穴形状データを作成できる。また、管状プローブを測定対象穴の中心軸位置とは異なる位置に測定対象穴の中心軸と平行に配置して、測定対象穴をその中心軸周りに回転させて測定することもできる。この場合には、測定対象穴の中心軸から管状プローブの中心軸までの距離と管状プローブの中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離との合計値に焦点ずれ量を加減算することにより測定対象穴の半径が求められ、この半径と移動量と回転角度とから3次元の穴形状データを作成できる。
【0011】
このように本発明によれば、レーザ光の焦点位置と測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に応じて変化する信号、つまり、フォーカスエラー信号を使って穴形状を測定するため、穴の全体形状だけでなく、穴の壁面に形成された微細な凹凸形状までも精度良く測定することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記受光光学系は、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対する受光状態の変化が大きい第1受光光学系と、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対する受光状態の変化が小さい第2受光光学系との少なくとも2種類の受光光学系を備え、前記光検出器は、前記第1受光光学系を介して反射光を受光する第1光検出器と、前記第2受光光学系を介して反射光を受光する第2光検出器との少なくとも2つの光検出器を備え、前記焦点ずれ量検出手段は、少なくとも前記第1光検出器が出力する信号と前記第2光検出器が出力する信号とを選択可能な受光信号選択手段を備えたことにある。
【0013】
レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に対する受光状態の変化の度合いは、受光光学系の設定により調整することができる。その場合、焦点ずれ量に対する受光状態の変化を大きく設定すると、焦点ずれを精度良く検出できるものの、焦点ずれの検出範囲が狭くなる。逆に、焦点ずれ量に対する受光状態の変化を小さく設定すると、焦点ずれの検出精度は劣るが、焦点ずれの検出範囲を広くすることができる。例えば、非点収差法を用いて焦点ずれを測定する場合には、受光光学系の設定によりフォーカスエラー信号に発生するS字状波形信号の形状を調整できる。受光光学系により、焦点ずれ量に対する受光状態の変化を大きく設定すると、S字状波形のピーク値間距離であるS字検出距離が短くなる。この場合には、焦点ずれの検出精度が高いが検出範囲が狭くなる。逆に、受光光学系により、焦点ずれ量に対する受光状態の変化を小さく設定すると、S字検出距離が長くなる。この場合には、焦点ずれの検出精度が低いが検出範囲が広くなる。
【0014】
本発明においては、少なくとも2種類の特性を有する受光光学系を備え、その受光光学系を介して受光して得た光検出信号を受光信号選択手段により選択できるようにしたため例えば、焦点ずれの検出範囲の広い受光信号を選択することにより、焦点ずれ量を用いて管状プローブと測定対象穴との位置調整を行うことができる。従って、位置調整後は、焦点ずれの検出精度の高い受光信号を選択しても、測定対象穴全体にわたってレーザ光の反射位置が焦点ずれの検出範囲内に収まる。この結果、測定対象穴全体にわたって精度の高い形状測定を行うことができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を前記管状プローブの中心軸と直交する少なくとも2方向に変化させるプローブ位置可変手段と、前記受光信号選択手段により前記第2光検出器が出力する信号を選択した状態で前記回転手段を作動させ、その回転作動中に前記回転角度検出手段により検出された回転角度と前記焦点ずれ量検出手段により検出された前記ずれ量とから前記レーザ光が壁面に照射された照射軌跡となる前記測定対象穴の1周における円形状プロファイルを算出し、前記算出した円形状プロファイルから前記測定対象穴の照射位置における円の中心位置を検出する中心位置検出手段と、前記プローブ位置可変手段を作動させて、前記管状プローブを前記中心位置検出手段により検出された中心位置にセットするプローブ位置制御手段とを備えたことにある。
【0016】
本発明においては、第2光検出器が出力する信号、つまり、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量の検出範囲の広い受光信号を使って、管状プローブを測定対象穴の中心位置にセットする。管状プローブを測定対象穴の中心位置にセットするにあたって、中心位置検出手段が、第2光検出器が出力する信号を選択した状態で、回転手段を作動させ、その回転作動中に回転角度検出手段により検出された回転角度と焦点ずれ量検出手段により検出された焦点ずれ量とからレーザ光が壁面に照射された照射軌跡となる測定対象穴の1周における円形状プロファイルを算出し、算出した円形状プロファイルから測定対象穴の照射位置における円の中心位置を検出する。そして、プローブ位置制御手段は、プローブ位置可変手段を作動させて、管状プローブと測定対象穴との相対位置関係を前記管状プローブの中心軸と直交する方向に変化させて、管状プローブを中心位置検出手段により検出された中心位置にセットする。従って、本発明によれば、焦点ずれ量に基づいて、簡単に管状プローブを測定対象穴の円の中心位置にセットすることができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を前記管状プローブの中心軸と直交する少なくとも2方向の軸回りに変化させるプローブ傾斜可変手段と、前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置が前記管状プローブの中心軸方向に異なる少なくとも2つの照射位置において、前記中心位置検出手段を使って前記測定対象穴の円の中心位置を取得し、前記取得した少なくとも2つの照射位置における前記測定対象穴の円の中心位置に基づいて、前記測定対象穴の中心軸に対する前記管状プローブの中心軸の傾きを算出する傾斜検出手段と、前記傾斜検出手段により検出された前記傾きに基づいて、前記プローブ傾斜可変手段を作動させて前記測定対象穴の中心軸方向と前記管状プローブの中心軸方向とを一致させるプローブ傾斜制御手段とを備えたことにある。
【0018】
本発明においては、第2光検出器が出力する信号、つまり、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量の検出範囲の広い受光信号を使って、管状プローブの中心軸の向きと測定対象穴の中心軸の向きとを一致させる。管状プローブの中心軸の向きを測定対象穴の中心軸の向きと一致させるにあたって、傾斜検出手段が、管状プローブと測定対象穴との相対位置が管状プローブの中心軸方向に異なる少なくとも2つの照射位置において、中心位置検出手段を使って測定対象穴の円の中心位置を取得し、取得した少なくとも2つの照射位置における測定対象穴の円の中心位置に基づいて、測定対象穴の中心軸に対する管状プローブの中心軸の傾きを算出する。そして、プローブ傾斜制御手段は、傾斜検出手段により検出された傾きに基づいて、プローブ傾斜可変手段を作動させて、管状プローブと測定対象穴との相対位置関係を管状プローブの中心軸と直交する方向の軸回りに変化させ、測定対象穴の中心軸方向と管状プローブの中心軸方向とを一致させる。従って、本発明によれば、焦点ずれ量に基づいて、管状プローブの中心軸方向と測定対象穴の中心軸方向とを簡単に一致させることができる。この結果、目視では管状プローブの向きを測定対象穴の向きに合わせにくい場合、例えば、測定対象穴が深い場合でも、深い部分で穴形状が測定できなくなる(反射位置が焦点ずれ検出範囲から外れる)といった不具合を低減することができる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、前記対物レンズは、2つの異なる焦点位置を有する2焦点レンズであり、前記2焦点レンズにより一方の焦点位置で集光したレーザ光の前記測定対象穴の壁面からの反射光と、他方の焦点位置で集光したレーザ光の前記測定対象穴の壁面からの反射光とを分離する光分離手段を備え、前記光検出器と前記受光光学系とは、それぞれ前記光分離手段により分離された反射光を別々に受光するように2組設けられ、前記焦点ずれ量検出手段は、前記2組の光検出器が出力する信号に基づいて、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量を検出することにある。
【0020】
本発明においては、対物レンズとして2つの異なる焦点位置を有する2焦点レンズが使用される。光分離手段は、測定対象穴の壁面で反射した反射光を、一方の焦点位置で集光したレーザ光の反射光と、他方の焦点位置で集光したレーザ光の反射光とに分離する。分離されたレーザ光は、それぞれ別々に受光光学系を介して光検出器に受光される。そして、焦点ずれ量検出手段が、2組の光検出器が出力する信号に基づいて、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量を検出する。この場合、2つの焦点位置に対する反射位置のずれ量を検出するため、焦点ずれの検出精度を高精度に維持したまま、焦点ずれを検出できる範囲を広くすることができる。従って、管状プローブと測定対象穴との相対位置関係(管状プローブから測定対象穴の壁面までの距離)をあまり精度良く合わせなくても、測定対象穴全体にわたって精度の高い形状測定を行うことができる。
【0021】
本発明の他の特徴は、前記対物レンズと前記反射部材との間隔を調整する間隔調整手段を備えたことにある。
【0022】
本発明においては、間隔調整手段を使って対物レンズと反射部材との間隔を調整することにより、管状プローブの中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離を変更することができる。このため、穴径が異なる種々の測定対象穴に対して形状測定が可能となる。
【0023】
また、本発明の他の特徴は、前記間隔調整手段により調整された前記対物レンズと前記反射部材との間隔を測定するための目盛表示部と、前記対物レンズと前記反射部材との間隔に対応した間隔データを入力し、前記間隔データに基づいて前記管状プローブの中心軸から前記レーザ光の焦点位置までの距離を算出する焦点位置算出手段とを備えたことにある。
【0024】
本発明においては、間隔調整手段により調整された対物レンズと反射部材との間隔を作業者が目盛表示部から目視で読み取ることができる。読み取られた間隔は、間隔データとして焦点位置算出手段に入力される。焦点位置算出手段は、入力した間隔データに基づいて、管状プローブの中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離を算出する。このため、穴径が異なる種々の測定対象穴の形状測定がさらに容易となる。
【0025】
また、本発明の他の特徴は、前記回転手段は、回転テーブルを備え、前記測定対象穴を形成した測定体を、前記回転テーブルの回転軸と前記測定対象穴の中心軸とが合致するように前記回転テーブルにセットした状態で前記回転テーブルを回転させるものであり、前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を、前記管状プローブの先端から前記測定対象穴の壁面に向けて出射するレーザ光の出射方向に変化させるプローブ位置可変手段と、前記プローブ位置可変手段により前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を変化させながら、前記焦点ずれ量検出手段により前記ずれ量が検出できる前記相対位置を検出し、前記検出した相対位置を前記測定対象穴の測定時における前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置として設定する測定位置設定手段と、前記測定位置設定手段により設定された相対位置における、前記回転テーブルの回転軸と前記管状プローブの中心軸との間の距離である軸間距離を検出する軸間距離検出手段とを備え、前記穴形状算出手段は、前記軸間距離検出手段により検出した軸間距離を加味して前記測定対象穴の形状データを算出することにある。
【0026】
本発明においては、測定対象穴を形成した測定体を回転テーブルにセットし、回転テーブルを回転手段により回転させる。この場合、測定体は、測定対象穴の中心軸が回転テーブルの回転軸と合致するようにセットされる。管状プローブは、回転テーブルにセットされた測定体の測定対象穴に挿入されており、プローブ位置可変手段により、測定対象穴との相対位置関係がレーザ光の出射方向に変化できるようになっている。プローブ位置可変手段は、管状プローブを移動させてもよいし、回転テーブルを移動させてもよい。
【0027】
プローブ位置可変手段により管状プローブと測定対象穴との相対位置を変化させていくと、レーザ光の焦点位置が測定対象穴の壁面と接近し、焦点ずれ量検出手段によりレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量を検出できるようになる。測定位置設定手段は、管状プローブと測定対象穴との相対位置関係を変化させながら、焦点ずれ量検出手段により焦点ずれ量が検出できる相対位置を検出して、その相対位置を測定対象穴の測定時における管状プローブと測定対象穴との相対位置として設定する。このとき、軸間距離検出手段は、測定位置設定手段により設定された相対位置における、回転テーブルの回転軸と管状プローブの中心軸との間の距離である軸間距離を検出する。
【0028】
測定対象穴の形状測定時には、測定位置設定手段により設定された相対位置にて回転手段が回転テーブルを回転させるとともに、移動手段が管状プローブと測定対象穴との相対位置関係を管状プローブの中心軸方向に変化させる。そして、情報取得手段が、焦点ずれ量検出手段により検出したずれ量と、移動量検出手段により検出した移動量と、回転角度検出手段により検出した回転角度とを取得する。この場合、測定対象穴の半径は、管状プローブの中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離と、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量と、軸間距離検出手段により検出された軸間距離とにより算出することができる。このため、穴形状算出手段は、情報取得手段により取得したずれ量と移動量と回転角度と、軸間距離検出手段により検出した軸間距離とに基づいて測定対象穴の形状データを算出する。
【0029】
従って、本発明によれば、管状プローブの中心軸を測定対象穴の中心軸に一致させなくてもよいため、測定対象穴の径に左右されず穴形状測定を行うことができる。このため、
穴径が異なる種々の測定対象穴に対して形状測定が可能となる。
【0030】
また、本発明の他の特徴は、前記測定位置設定手段は、前記プローブ位置可変手段により前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を変化させながら、前記焦点ずれ量検出手段により前記ずれ量が検出できる前記相対位置の範囲を検出し、前記検出した相対位置の範囲の中心位置に基づいて、前記測定対象穴の測定時における前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置を設定することにある。
【0031】
本発明においては、ずれ量検出手段により焦点ずれ量が検出できる相対位置の範囲を検出して、その相対位置の範囲の中心位置に基づいて、測定対象穴の測定時における管状プローブと測定対象穴との相対位置を設定するため、最適な測定位置を設定することができる。このため、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に基づく穴形状測定を良好に行うことができる。
【0032】
更に、本発明の実施にあたっては、穴形状測定装置の発明に限定されることなく、穴形状測定方法の発明としても実施し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る穴形状測定装置の概略システム構成図である。この穴形状測定装置は、測定対象穴hを形成した測定体OBを載置固定するとともに測定体OBのX,Y方向位置(本実施形態においては水平方向位置)と傾きとを調整するステージ駆動装置10と、測定対象穴hの壁面wにレーザ光を照射するとともに壁面wからの反射光を受光して受光信号を出力するレーザ光照射装置50と、レーザ光照射装置50のZ方向位置(本実施形態においては高さ方向位置)を調整するZ方向駆動装置90と、各装置の作動を制御してレーザ光照射装置50からの受光信号に基づいて穴形状を測定するコントローラ100とを備えている。測定体OBは、有底あるいは無底の円筒体であって、円筒状の壁面wで囲まれた測定対象穴hが形成されている。
【0034】
まず、レーザ光照射装置50について説明する。レーザ光照射装置50は、図2に示すように、本体部60と、本体部60に接続される管状プローブ80とを有する。本体部60は、本体ケース61内に、レーザ光源62、コリメートレンズ63、偏光ビームスプリッタ64、ビームスプリッタ65、1/4波長板66、第1集光レンズ67、第2集光レンズ68、第1シリンドリカルレンズ69、第2シリンドリカルレンズ70、第1フォトディテクタ71、第2フォトディテクタ72、プローブ回転機構73、プローブ回転モータ74を備えている。
【0035】
レーザ光源62は、レーザ駆動回路120から出力された駆動信号により所定強度(距離測定に適した強度)のレーザ光を出射する。レーザ光源62を出射したレーザ光は、コリメートレンズ63を通過して平行光になり、偏光ビームスプリッタ64に入射する。偏光ビームスプリッタ64は、その透過軸の向きが入射したレーザ光の偏光方向と同じ方向に設定されている。従って、レーザ光は、偏光ビームスプリッタ64をそのまま透過してビームスプリッタ65に入射する。ビームスプリッタ65に入射したレーザ光は、半分が反射し残り半分が透過する。ビームスプリッタ65を透過したレーザ光は、1/4波長板66を通過して円偏光となる。1/4波長板66を通過したレーザ光の進行方向には、管状プローブ80が設けられている。
【0036】
管状プローブ80は、直線状の管体である管本体83と、管本体83の先端に設けられる対物レンズ81と、対物レンズ81よりも更に先端側の管本体83に設けられるミラー82とを備えている。管本体83は、その中心軸がレーザ光の光軸と同軸となるように向けられて本体ケース61から露出して設けられる。管本体83の基端部には、プローブ回転機構73が設けられている。プローブ回転機構73は、管本体83と一体的に回転する歯車73gを備えている。この歯車73gは、プローブ回転モータ74の出力軸に固着した歯車74gと噛合し、プローブ回転モータ74の出力軸の回転を管状プローブ80に伝達する。従って、管状プローブ80は、プローブ回転モータ74を駆動することにより、その中心軸周りに回転するようになっている。
【0037】
1/4波長板66を通過したレーザ光(平行光)は、管本体83の内部を通って対物レンズ81に入射する。レーザ光は、対物レンズ81を通過して集光しながらミラー82に入射する。ミラー82は、レーザ光を管本体83の中心軸(以下、管状プローブ80の中心軸と呼ぶ)に直交する方向に反射して測定対象穴hの壁面wに照射する。このミラー82は、本発明の反射部材に相当する。レーザ光は、測定対象穴hの壁面wで反射し、上述した経路を戻る。つまり、レーザ光は、ミラー82で管状プローブ80の中心軸方向に反射し、対物レンズ81を通過して、管本体83内を通って1/4波長板66を通過する。1/4波長板66を通過したレーザ光は、1/4波長板66を2回通過したことになるため、レーザ光源62から出射されたレーザ光とは偏光方向が90°相違したものとなる。
【0038】
1/4波長板66を通過したレーザ光は、その半分がビームスプリッタ65で反射し、残りの半分がビームスプリッタ65を透過する。ビームスプリッタ65を透過した半分のレーザ光は、偏光ビームスプリッタ64に入射する。偏光ビームスプリッタ64に入射したレーザ光は、レーザ光源から出射されたレーザ光とは偏光方向が90°相違しているため、偏光ビームスプリッタ64で反射する。偏光ビームスプリッタ64の反射方向には、第1集光レンズ67、第1シリンドリカルレンズ69、第1フォトディテクタ71が設けられている。偏光ビームスプリッタ64で反射したレーザ光は、第1集光レンズ67と第1シリンドリカルレンズ69を通過して第1フォトディテクタ71に集光される。第1フォトディテクタ71は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子にて構成され、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として出力する。また、第1フォトディテクタ71は、4つの受光素子が配置された中央に反射光が集光するように固定されている。
【0039】
一方、ビームスプリッタ65の反射方向には、第2集光レンズ68、第2シリンドリカルレンズ70、第2フォトディテクタ72が設けられている。ビームスプリッタ65で反射したレーザ光は、第2集光レンズ68と第2シリンドリカルレンズ70を通過して第2フォトディテクタ72に集光される。第2フォトディテクタ72は、第1フォトディテクタ71と同様に、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子にて構成され、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として出力する。また、第2フォトディテクタ72は、第1フォトディテクタ71と同様に、4つの受光素子が配置された中央に反射光が集光するように固定されている。
【0040】
第1,第2フォトディテクタ71,72に集光されるレーザ光のスポット形状は、対物レンズ81により集光されるレーザ光の焦点位置と測定対象穴hの壁面wで反射する位置(以下、反射位置と呼ぶ)とのずれ量に応じて変化し、例えば、焦点位置と反射位置とが一致しているときには、円形となり、焦点位置と反射位置とがずれていれば、そのずれ量が大きいほど扁平な楕円となる。また、焦点位置に対して反射位置が近い場合と遠い場合とで、楕円の長軸の向きが90°異なる。これは、集光レンズ67と非点収差を有するシリンドリカルレンズ69とを組み合わせた受光光学系、および、集光レンズ68と非点収差を有するシリンドリカルレンズ70とを組み合わせた受光光学系により実現される。第1,第2フォトディテクタ71,72は、受光したレーザ光のスポットの楕円軸が、受光領域を4分割する分割線と45°の角度をなすように配置される。これにより、例えば、反射位置が焦点位置より手前のときにはレーザ光のスポットが受光領域A,Cに拡がり、反射位置が焦点位置より遠方のときにはレーザ光のスポットが受光領域B,Dに拡がるように構成される。
【0041】
従って、第1,第2フォトディテクタ71,72の受光信号(a,b,c,d)から((a+c)−(b+d))という演算を行えば、その演算結果を反射位置と焦点位置とのずれ量として求めることができる。こうした演算は、一般に、非点収差法を用いたフォーカスサーボ制御を行うときに使われ、この演算結果を表す信号はフォーカスエラー信号と呼ばれている。
【0042】
図3は、レーザ光の焦点位置に対して照射面の位置を光軸方向に変化させたときの、非点収差法を用いた演算により得られるフォーカスエラー信号の波形を表す。フォーカスエラー信号は、図示するようにS字状波形となる。照射面を対物レンズから充分に離れた状態から対物レンズに接近させていくと、フォーカスエラー信号の出力(波高値)は、ゼロレベルから一旦減少したのち増加しゼロレベルでクロスする。このゼロクロス点P0が、照射面が焦点位置と一致しているポイントといえる。そして、照射面をさらに対物レンズに接近させていくと、フォーカスエラー信号は増大したのち減少しゼロレベルに至る。
【0043】
従って、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量は、フォーカスエラー信号により検出することができる。この場合、ずれ量の検出は、S字状波形信号の正負のピーク点P1,P2の間のエリア(以下、このエリアをS字検出エリアと呼び、ピーク点の間の距離をS字検出距離と呼ぶ)において可能となる。ずれ量の検出は、S字検出距離が短いほど検出精度が高くなるが検出できる範囲が狭い。
【0044】
本実施形態においては、第1集光レンズ67,第1シリンドリカルレンズ69,第1フォトディテクタ71の位置関係と、第2集光レンズ68,第2シリンドリカルレンズ70,第2フォトディテクタ72の位置関係とを相違させることにより、第1フォトディテクタ71と第2フォトディテクタ72とに受光されるレーザ光のスポット形状が異なるように設定されている。以下、第1集光レンズ67,第1シリンドリカルレンズ69からなる受光光学系を第1受光光学系と呼び、第2集光レンズ68,第2シリンドリカルレンズ70からなる受光光学系を第2受光光学系と呼ぶ。第1受光光学系は、第2受光光学系に比べて、焦点位置と反射位置とのずれ量に対する受光状態の変化(フォトディテクタ71における受光状態の変化)が大きく設定されている。従って、第1フォトディテクタ71の受光信号から作成したフォーカスエラー信号は、第2フォトディテクタ72の受光信号から作成したフォーカスエラー信号に比べて、焦点ずれの検出精度は高いがS字検出距離が短い。
【0045】
第1フォトディテクタ71から出力される受光信号(a,b,c,d)は、第1フォーカスエラー信号生成回路111に入力され、第2フォトディテクタ72から出力される受光信号(a,b,c,d)は、第2フォーカスエラー信号生成回路112に入力される。各フォーカスエラー信号生成回路111,112は、それぞれ入力した受光信号(a,b,c,d)を増幅した後、((a+c)−(b+d))という演算によりフォーカスエラー信号を生成する。以下、第1フォーカスエラー信号生成回路111により生成された信号を第1フォーカスエラー信号と呼び、第2フォーカスエラー信号生成回路112により生成された信号を第2フォーカスエラー信号とよび、それらを区別しないときは、単にフォーカスエラー信号と呼ぶ。
【0046】
図4は、第1フォーカスエラー信号と第2フォーカスエラー信号とを表す。第2フォーカスエラー信号は、第1フォーカスエラー信号に比べてS字検出距離が長い。従って、第2フォーカスエラー信号を使えば、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量の検出できる範囲が広くなり、第1フォーカスエラー信号を使えば、ずれ量に対する信号変化量が大きくなるため検出精度が高くなる。尚、本実施形態においては、測定対象穴hの反射率は同一としている。もし測定対象穴hの反射率が測定体OBにより異なる場合は、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に対するフォーカスエラー信号の強度が異なる。即ち、図4の波形は測定対象穴hの反射率が異なると縦軸の目盛が異なることになる。この場合は、フォーカスエラー信号として((a+c)−(b+d))/(a+b+c+d)の演算により作成された信号を使用すればよい。これによれば測定対象穴hの反射率が異なっても、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に対するフォーカスエラー信号の強度は同一となる。
【0047】
また、焦点位置と反射位置とのずれ量の検出にあたっては、異なるずれ量に対してフォーカスエラー信号が同じ波高値を出力しないようにするため、図の破線で示した信号を除去する必要がある。この場合、第1,第2フォトディテクタ71,72から入力した受光信号(a,b,c,d)を使って、それらの合計値(a+b+c+d)を演算したSUM信号を生成し、このSUM信号の波高値が基準強度以下となるときのフォーカスエラー信号をマスクすればよい。このマスク処理により、ゼロクロス点P0を中心とした正負のピーク点までの範囲のフォーカスエラー信号を生成することができる。これにより、レーザ光の焦点位置に対する反射位置のずれ量と、フォーカスエラー信号の波高値との関係が一対一の関係となる。尚、測定対象穴hの反射率が測定体OBにより異なる場合は、SUM信号の波高値の基準強度が異なるため、最初にレーザ光の焦点位置を変化させてSUM信号の最大値を取得し、この最大値から基準強度を設定するようにすればよい。
【0048】
第1フォーカスエラー信号と第2フォーカスエラー信号とは、信号選択スイッチ113に入力される。信号選択スイッチ113は、入力した2つのフォーカスエラー信号のうち、コントローラ100から指定された片方のフォーカスエラー信号を選択して出力する。選択されたフォーカスエラー信号は、A/D変換器114に入力される。A/D変換器114は、クロック信号発生回路115が出力するクロック信号(パルス信号)を入力するたびに、信号選択スイッチ113から入力したフォーカスエラー信号をデジタル信号に変換してコントローラ100に出力する。クロック信号発生回路115は、コントローラ100からの指令を入力すると、所定周期のクロック信号を出力する。
【0049】
次に、Z方向駆動装置90について図2を用いて説明する。Z方向駆動装置90は、図示しない本体フレームに固定される支持アーム91を備えている。この支持アーム91には、フィード用電動モータ92(以下、フィードモータ92と呼ぶ)が固定される。フィードモータ92の出力軸には、雄ネジ93gが形成されたネジシャフト93が連結されている。ネジシャフト93の先端は、ネジ送りフレーム94に回転可能に軸支されている。ネジシャフト93には、その雄ネジ93gと噛合する雌ネジ(図示略)が形成されたナット95が挿通されている。ナット95は、ネジ送りフレーム94に設けた回転止め部材(図示略)より回転規制され、ネジシャフト93の軸線方向にのみ移動可能となっている。このため、フィードモータ92の回転によりナット95が上下移動するネジ送り機構が構成されている。レーザ光照射装置50は、管状プローブ80の中心軸とネジシャフト93の中心軸とが平行となるように、ナット95と本体ケース61が連結される。従って、レーザ光照射装置50は、フィードモータ92を駆動(正回転駆動、逆回転駆動)することによりZ方向(管状プローブ80の中心軸方向)に移動可能に構成されている。
【0050】
レーザ光照射装置50は、フィードモータ92と同時にプローブ回転モータ74を駆動することにより、管状プローブ80から水平方向に出射されるレーザ光を、測定対象穴hの壁面wに対して螺旋状に照射することができる。この場合、レーザ光の焦点位置は、管状プローブ80の中心軸を中心とした一定半径の螺旋状ルートを移動するため、上述したフォーカスエラー信号をこの螺旋状ルートに沿って検出することにより、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量から、測定対象穴hの壁面wの凹凸形状を検出することができる。
【0051】
フィードモータ92には、同モータ92の回転を検出して、その回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ92aが組み込まれている。この回転検出信号は、フィードモータ92が所定の微少な回転角度だけ回転するたびに電圧レベルがハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号であって、互いにπ/2だけ移相のずれた2つのA相信号とB相信号とからなる。回転検出信号は、フィードモータ制御回路116と移動量検出回路117とに出力される。
【0052】
フィードモータ制御回路116は、コントローラ100から初期位置移動指令を入力すると、フィードモータ92を駆動してレーザ光照射装置50を上方向に移動させる。初期位置移動指令は、移動量検出回路117にも入力される。移動量検出回路117は、この初期位置移動指令を入力すると、エンコーダ92aから出力されるパルス列信号が停止したとき、つまり、レーザ光照射装置50が上方向の駆動限界位置に到達したときにフィードモータ制御回路116に対して駆動停止信号を出力する。フィードモータ制御回路116は、移動量検出回路117から駆動停止信号を入力するとフィードモータ92の駆動を停止する。これによりレーザ光照射装置50は、最上位置で停止する。この最上位置がレーザ光照射装置50の初期位置となる。
【0053】
移動量検出回路117は、駆動停止信号を出力したときに、エンコーダ92aから入力したパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。その後は、エンコーダ92aから入力したパルス列のパルス数をカウントアップあるいはカウントダウンし、このカウント値からレーザ光照射装置50の初期位置からの移動量(管状プローブ80の移動量でもあり、レーザ光の照射スポット位置の移動量でもある)を計算し、計算した移動量をコントローラ100に出力する。
【0054】
フィードモータ制御回路116は、コントローラ100から正方向移動指令を入力したときには、フィードモータ92を駆動してレーザ光照射装置50を設定速度で下方向に移動させ、コントローラ100から逆方向移動指令を入力したときには、フィードモータ92を駆動してレーザ光照射装置50を設定速度で上方向に移動させる。フィードモータ制御回路116は、フィードモータ92を駆動するにあたっては、エンコーダ92aから入力したパルス列信号を用いて、単位時間当たりのパルス数が設定速度に対応したパルス数と等しくなるようにフィードモータ92の回転速度を制御する。
【0055】
プローブ回転モータ74にも、同モータ74の回転を検出して、その回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ74aが組み込まれている。この回転検出信号は、管状プローブ80の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号(パルス信号)と、管状プローブ80が所定の微少な回転角度だけ回転するたびに電圧レベルがハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号であって、互いにπ/2だけ移相のずれた2つのA相信号とB相信号とからなる。回転検出信号は、プローブ回転モータ制御回路118と回転角度検出回路119とに出力される。
【0056】
プローブ回転モータ制御回路118は、コントローラ100から作動指令を入力すると、エンコーダ74aの出力するパルス列信号を用いて、パルス列信号の単位時間当たりのパルス数が予め設定されている回転速度に対応したパルス数に等しくなるようにプローブ回転モータ74を駆動する。また、回転角度検出回路119は、コントローラ100から作動指令を入力すると、エンコーダ74aの出力するパルス列信号とインデックス信号とを用いて、管状プローブ80の基準回転位置からの回転角度θを算出し、算出した回転角度θを表すデジタルデータを所定の周期でコントローラ100に出力する。
【0057】
次に、ステージ駆動装置10について説明する。ステージ駆動装置10は、測定対象穴hを形成した測定体OBを載置固定するステージ11と、ステージ11をX方向に移動させるX方向モータ12と、ステージ11をY方向に移動させるY方向モータ13と、ステージ11をX軸回りに傾けるX角度モータ14と、ステージ11をY軸回りに傾けるY角度モータ15とを備えている。X方向とは、管状プローブ80の中心軸に対して直交する1つの方向であり、図1の例では奥行き方向となる。Y方向とは、管状プローブ80の中心軸に対して直交し、かつ、X方向とも直交する方向であり、図1の例では左右方向となる。また、X軸回りとは、X方向に向けられた軸を中心として回転する方向であり、図1の例では紙面と平行な面において右あるいは左に回転する方向となる。Y軸回りとは、Y方向に向けられた軸を中心として回転する方向であり、図1の例では紙面と直交する鉛直平面において前方あるいは後方に回転する方向となる。
【0058】
X方向モータ12、Y方向モータ13、X角度モータ14、Y角度モータ15は、それぞれX方向モータ制御回路22、Y方向モータ制御回路23、X角度モータ制御回路24、Y角度モータ制御回路25から出力される駆動信号により回転する。X方向モータ12、Y方向モータ13、X角度モータ14、Y角度モータ15には、それぞれモータ回転角度を検出して、その回転角度を表す回転検出信号を出力するエンコーダ12a,13a,14a,15aが組み込まれている。各エンコーダ12a,13a,14a,15aの出力する回転検出信号は、いずれも、フィードモータ92に組み込まれたエンコーダ92aの出力する回転検出信号と同様なパルス列信号である。エンコーダ12a,13a,14a,15aから出力される回転検出信号は、X方向位置検出回路32、Y方向位置検出回路33、X角度検出回路34、Y角度検出回路35に入力される。
【0059】
X方向モータ制御回路22は、コントローラ100から出力されたX方向位置指令を入力すると、X方向位置検出回路32が出力するX方向検出位置に基づいて、X方向検出位置がコントローラ100により指令されたX方向位置になるまでX方向モータ12を駆動する。X方向位置検出回路32は、エンコーダ12aの出力するパルス列信号のパルス数をカウントアップあるいはカウントダウンすることによりステージ11のX方向の移動量を計算し、計算した移動量を原点位置(原点位置を表す移動量)に加減算することによりX方向位置を算出してX方向モータ制御回路22に出力する。X方向の原点位置は、ステージ11のX方向移動可能範囲における中心位置に設定されている。
【0060】
X方向モータ制御回路22は、コントローラ100から限界位置移動指令を入力すると、X方向モータ12を駆動してステージ11をX軸の正方向に移動させる。限界位置移動指令は、X方向位置検出回路32にも入力される。X方向位置検出回路32は、この限界位置移動指令を入力すると、エンコーダ12aから出力されるパルス列信号が停止したとき、つまり、ステージ11がX方向の駆動限界位置に到達したときにX方向モータ制御回路22に対して駆動停止信号を出力する。X方向モータ制御回路22は、X方向位置検出回路32から駆動停止信号を入力するとX方向モータ12の駆動を停止する。X方向位置検出回路32は、駆動停止信号を出力したときに、エンコーダ12aから入力したパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。従って、X方向の原点位置は、ステージ11をX方向移動可能範囲の一方端から他方端まで移動させたときにエンコーダ12aが出力するパルス列信号のパルス数の1/2の値に設定されている。
【0061】
Y方向モータ制御回路23は、コントローラ100から出力されたY方向位置指令を入力すると、Y方向位置検出回路33が出力するY方向検出位置に基づいて、Y方向検出位置がコントローラ100により指令されたY方向位置になるまでY方向モータ13を駆動する。Y方向位置検出回路33は、エンコーダ13aの出力するパルス列信号のパルス数をカウントアップあるいはカウントダウンすることによりステージ11のY方向の移動量を計算し、計算した移動量を原点位置(原点位置を表す移動量)に加減算することによりY方向位置を算出してY方向モータ制御回路23に出力する。Y方向の原点位置は、ステージ11のY方向移動可能範囲における中心位置に設定されている。
【0062】
Y方向モータ制御回路23は、コントローラ100から限界位置移動指令を入力すると、Y方向モータ13を駆動してステージ11をY軸の正方向に移動させる。限界位置移動指令は、Y方向位置検出回路33にも入力される。Y方向位置検出回路33は、この限界位置移動指令を入力すると、エンコーダ13aから出力されるパルス列信号が停止したとき、つまり、ステージ11がY方向の駆動限界位置に到達したときにY方向モータ制御回路23に対して駆動停止信号を出力する。Y方向モータ制御回路23は、Y方向位置検出回路33から駆動停止信号を入力するとY方向モータ13の駆動を停止する。Y方向位置検出回路33は、駆動停止信号を出力したときに、エンコーダ13aから入力したパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。従って、Y方向の原点位置は、ステージ11をY方向移動可能範囲の一方端から他方端まで移動させたときにエンコーダ13aが出力するパルス列信号のパルス数の1/2の値に設定されている。
【0063】
X角度モータ制御回路24は、コントローラ100から出力されたX軸回り回転角度指令を入力すると、X角度検出回路34が出力するX軸回り検出角度に基づいて、X軸回り検出角度がコントローラ100により指令されたX軸回り回転角度になるまでX角度モータ14を駆動する。X角度検出回路34は、エンコーダ14aの出力するパルス列信号のパルス数をカウントアップあるいはカウントダウンすることによりステージ11がX軸回りに回転した角度を計算し、計算した角度を原点位置の角度に加減算することによりX軸回り回転角度を算出してX角度モータ制御回路24に出力する。X軸回りの原点位置の角度は、ステージ11のX軸回りの回転可能範囲における中心位置に設定されている。
【0064】
X角度モータ制御回路24は、コントローラ100から限界位置移動指令を入力すると、X角度モータ14を駆動してステージ11をX軸回りに傾ける。限界位置移動指令は、X角度検出回路34にも入力される。X角度検出回路34は、この限界位置移動指令を入力すると、エンコーダ14aから出力されるパルス列信号が停止したとき、つまり、ステージ11がX軸回りの傾斜限界位置に到達したときにX角度モータ制御回路24に対して駆動停止信号を出力する。X角度モータ制御回路24は、X角度検出回路34から駆動停止信号を入力するとX角度モータ14の駆動を停止する。X角度検出回路34は、駆動停止信号を出力したときに、エンコーダ14aから入力したパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。従って、X軸回り原点位置は、ステージ11をX軸回りに傾斜可能範囲の一方端から他方端まで回転させたときにエンコーダ14aが出力するパルス列信号のパルス数の1/2の値に設定されている。
【0065】
Y角度モータ制御回路25は、コントローラ100から出力されたY軸回り回転角度指令を入力すると、Y角度検出回路35が出力するY軸回り検出角度に基づいて、Y軸回り検出角度がコントローラ100により指令されたY軸回り回転角度になるまでY角度モータ15を駆動する。Y角度検出回路35は、エンコーダ15aの出力するパルス列信号のパルス数をカウントアップあるいはカウントダウンすることによりステージ11がY軸回りに回転した角度を計算し、計算した角度を原点位置の角度に加減算することによりY軸回り回転角度を算出してY角度モータ制御回路25に出力する。Y軸回りの原点位置の角度は、ステージ11のY軸回りの回転可能範囲における中心位置に設定されている。
【0066】
Y角度モータ制御回路25は、コントローラ100から限界位置移動指令を入力すると、Y角度モータ15を駆動してステージ11をY軸回りに傾ける。限界位置移動指令は、Y角度検出回路35にも入力される。Y角度検出回路35は、この限界位置移動指令を入力すると、エンコーダ15aから出力されるパルス列信号が停止したとき、つまり、ステージ11がY軸回りの傾斜限界位置に到達したときにY角度モータ制御回路25に対して駆動停止信号を出力する。Y角度モータ制御回路25は、Y角度検出回路35から駆動停止信号を入力するとY角度モータ15の駆動を停止する。Y角度検出回路35は、駆動停止信号を出力したときに、エンコーダ15aから入力したパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。従って、Y軸回り原点位置は、ステージ11をY軸回りに傾斜可能範囲の一方端から他方端まで回転させたときにエンコーダ15aが出力するパルス列信号のパルス数の1/2の値に設定されている。
【0067】
コントローラ100は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを主要部として備えた電子制御装置である。コントローラ100には、穴形状測定等において取得したデータや各種の設定値等を記憶するためのメモリ103が内蔵されている。また、コントローラ100には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置101と、作業者に対して検査結果や作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置102とが接続されている。コントローラ100は、移動量検出回路117が出力したZ方向の移動量のデジタルデータと、A/D変換器114が出力したフォーカスエラー信号のデジタルデータと、回転角度検出回路119が出力した管状プローブ80の回転角度のデジタルデータとを入力し、後述する穴形状測定ルーチンを実行することにより測定対象穴hの形状を測定する。
【0068】
このように構成された穴形状測定装置は、管状プローブ80から出射されたレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に基づいて測定対象穴hの形状を測定するが、その測定にあたってはいくつかの準備が必要となる。以下、その準備について説明する。
【0069】
作業者は、まず、フォーカスエラー信号の波高値と、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量との関係を測定し、コントローラ100内のメモリ103に記憶させる。この関係の測定にあたっては、図5に示すように、管状プローブ80から出射するレーザ光が垂直に照射されるように直方体の被照射体OBtestを精密移動ステージST上に固定する。そして、精密移動ステージSTを作動させて被照射体OBtestをレーザ光の出射方向に少量ずつ移動させながら、各移動位置毎に第1フォーカスエラー信号生成回路111が出力するフォーカスエラー信号の波高値をA/D変換器114を介して取得する。同様に、第2フォーカスエラー信号生成回路112が出力するフォーカスエラー信号の波高値をA/D変換器114を介して取得する。こうした波高値の取得は、複数回行ってデータを平均化するとよい。精密移動ステージSTの移動位置(管状プローブ80の中心軸から被照射体OBtestの反射面までの距離に相当する)と、フォーカスエラー信号の波高値との関係は、例えば、図4に示すようなS字状波形になる。
【0070】
レーザ光は、フォーカスエラー信号がゼロクロスするときに、その焦点位置が被照射体OBtestの反射面の位置と一致する。従って、反射面のゼロクロス点P0からの距離とフォーカスエラー信号の波高値との関係を表すテーブルを作成し、このテーブルをコントローラ100のメモリ103に記憶しておく。このテーブルは、第1フォーカスエラー信号と第2フォーカスエラー信号との両方において作成する。こうしたテーブルを記憶しておくことで、フォーカスエラー信号からレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量を取得することができる。尚、この関係は、レーザ光照射装置50の光学系を変えない限り大きく変化しないので、一度記憶しておけば、頻繁に記憶し直す必要はない。
【0071】
次に、作業者は、管状プローブ80の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離を測定し、コントローラ100のメモリ103に記憶させる。この距離測定にあたっては、図6に示すように、管状プローブ80の側面を固定壁Wsの側面に押し当て、この固定壁Wsと被照射体OBtestとの間にゲージブロックGBを挿入する。そして、ゲージブロックGBを被照射体OBtestと固定壁Wsとの間で挟んだ状態でフォーカスエラー信号を測定し、S字状波形信号が得られるまで、ゲージブロックGBを取り替える。フォーカスエラー信号は、SUM信号の波高値が基準値以下となる場合にはマスクされるように生成されるため、S字検出エリア以外ではゼロレベル信号となる。従って、ゼロより大きな波高値のフォーカスエラー信号が得られるゲージブロックGBを探すことになる。こうした作業を行って、S字検出信号が得られた(ゼロより大きな)フォーカスエラー信号の波高値を取得し、上述したテーブルから、この波高値に対応するレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量devを求める。
【0072】
ゲージブロックGBの厚さ(固定壁Wsと被照射体OBtestとの間の距離)から管状プローブ80の半径値を減算してずれ量devを加算した値が、管状プローブ80の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離となる。作業者は、計算した管状プローブ80の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離Fをコントローラ100のメモリ103に記憶させる。この距離Fについても、大きく変化しないので、一度記憶しておけば、頻繁に記憶し直す必要はない。
【0073】
このようなテーブル、および、管状プローブ80の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離Fがコントローラ100のメモリ103に記憶されると、測定対象穴hの形状測定が可能となる。つまり、図7に示すように、回転角度検出回路119が出力する回転角度θ、移動量検出回路117が出力する移動量z(Z方向位置)、フォーカスエラー信号の波高値からテーブルを参照して得られるレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量dを取得し、これに管状プローブ80の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離Fを用いて、測定点の3次元座標が((F+d)・cosθ,(F+d)・sinθ,z)として求められる。
【0074】
従って、プローブ回転モータ74とフィードモータ92とを駆動して、レーザ光の焦点位置を管状プローブ80の中心軸を中心とした半径Fの螺旋状に移動させることにより、その螺旋状ルートに沿った複数ポイントの3次元座標を取得して穴形状を測定することができる。
【0075】
ただし、第1フォーカスエラー信号は、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれの検出精度が高いがS字検出距離が短いため、管状プローブ80の中心軸と測定対象穴hの中心軸とがずれていると、反射位置がS字検出エリアから外れてしまい測定不能になる部分が発生する可能性がある。そこで、以下に説明する穴形状測定処理においては、管状プローブ80の中心軸と測定対象穴hの中心軸とを一致させる処理が組み込まれている。
【0076】
以下、コントローラ100が実行する穴形状測定処理について説明する。図8A〜図8Fは、穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。穴形状測定ルーチンは、コントローラ100のROM内に制御プログラムとして記憶されており、ステップS10にて開始される。コントローラ100は、まず、ステップS12において、X方向モータ制御回路22、Y方向モータ制御回路23、X方向位置検出回路32、Y方向位置検出回路33に対して、ステージ11のX方向,Y方向における駆動限界位置への移動指令を出力する。この移動指令により、X方向モータ12とY方向モータ13とが回転して、ステージ11がX方向およびY方向の駆動限界位置に向かって移動する。そしてステージ11が駆動限界位置に到達すると、X方向位置検出回路32とY方向位置検出回路33とは、それぞれエンコーダ12a,13aの出力するパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。
【0077】
続いて、コントローラ100は、ステップS14において、X方向モータ制御回路22、Y方向モータ制御回路23に対して、原点位置への移動指令を出力する。この移動指令により、X方向モータ制御回路22、Y方向モータ制御回路23は、それぞれX方向モータ12、Y方向モータ13を原点方向に駆動し、X方向位置検出回路32、Y方向位置検出回路33により検出されるX方向位置、Y方向位置が原点位置になったところで駆動を停止する。
【0078】
続いて、コントローラ100は、ステップS16において、X角度モータ制御回路24、Y角度モータ制御回路25、X角度検出回路34、Y角度検出回路35に対して、ステージ11のX軸回り,Y軸回りの傾斜限界位置への移動指令を出力する。この移動指令により、X角度モータ14とY角度モータ15とが回転して、ステージ11がX軸回りおよびY軸回りの傾斜限界位置に向かって回転する。そしてステージ11が傾斜限界位置に到達すると、X角度検出回路34とY角度検出回路35とは、それぞれエンコーダ14a,15aの出力するパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。
【0079】
続いて、コントローラ100は、ステップS18において、X角度モータ制御回路24、Y角度モータ制御回路25に対して、原点位置への移動指令を出力する。この移動指令により、X角度モータ制御回路24、Y角度モータ制御回路25は、それぞれX角度モータ14、Y角度モータ15を原点方向に駆動し、X角度検出回路34、Y角度検出回路35により検出されるX軸回り角度、Y軸回り角度が原点位置となる角度になったところで駆動を停止する。
【0080】
このステップS12〜S18の処理により、ステージ11は、X−Y平面座標上での原点で、かつ、傾斜角が0となる水平状態にセットされる。
【0081】
続いて、コントローラ100は、ステップS20において、フィードモータ制御回路116と移動量検出回路117とに対して初期位置移動指令を出力する。フィードモータ制御回路116は、コントローラ100から初期位置移動指令を入力すると、フィードモータ92を駆動してレーザ光照射装置50を上方向に移動させ、上方向の駆動限界位置に達したときに移動量検出回路117から出力される駆動停止信号を入力してフィードモータ92の駆動を停止する。こうして、レーザ光照射装置50が最上位置にセットされる。
【0082】
続いて、コントローラ100は、ステップS22において、表示装置102を用いて測定体OBをステージ11へセットするように作業者に指示する。作業者は、この指示に基づいて、測定体OBをステージ11上にセットし、マニュアル操作でフィードモータ92を作動させてレーザ光照射装置50を下方に移動させる。このとき、作業者は、管状プローブ80が測定対象穴hの中心軸付近に配置されるように測定体OBのセット位置を調整する。
【0083】
コントローラ100は、ステップS24において、作業者が入力装置101にセット完了を表す入力操作を行うまで待機し、入力操作を検出すると、ステップS26において、表示装置102を用いて測定対象穴hの深さを入力するように作業者に指示する。コントローラ100は、ステップS27において、作業者が測定対象穴hの深さの入力操作を行うまで待機し、その入力操作を検出すると、ステップS28において、フィードモータ制御回路116に対して、正方向移動開始指令を出力する。フィードモータ制御回路116は、この指令により、フィードモータ92を設定速度で正回転駆動する。これにより、レーザ光照射装置50が下方向へ移動し始める。
【0084】
続いて、コントローラ100は、ステップS30において、プローブ回転モータ制御回路118に対して、プローブ回転開始指令を出力する。プローブ回転モータ制御回路118は、この指令により、プローブ回転モータ74を設定速度で駆動する。これにより、管状プローブ80がその中心軸を回転中心として回転し始める。
【0085】
続いて、コントローラ100は、ステップS32において、レーザ駆動回路120に対して、レーザ照射開始指令を出力する。レーザ駆動回路120は、この指令により、レーザ光源62に駆動信号を出力する。これにより、回転する管状プローブ80の先端から径方向外側に向けてレーザ光が出射される。
【0086】
続いて、コントローラ100は、ステップS33において、信号選択スイッチ113に対して第2フォーカスエラー信号の選択指令を出力する。信号選択スイッチ113は、この選択指令により、第2フォーカスエラー信号生成回路112の出力部とA/D変換器114の入力部とを導通状態にする。続いて、コントローラ100は、ステップS34において、クロック信号発生回路115に対して、クロック信号の出力開始指令を出力する。クロック信号発生回路115は、この指令により所定周期のクロック信号をA/D変換器114に出力する。従って、クロック信号に同期してA/D変換器114から第2フォーカスエラー信号がデジタル信号に変換されてコントローラ100に入力される。
【0087】
続いて、コントローラ100は、ステップS36において、第2フォーカスエラー信号の波高値Iを入力し、ステップS38において、波高値の絶対値|I|が基準値Aを上回ったか否かを判断する。レーザ光照射装置50が下降移動を開始した時点においては、管状プローブ80の先端は、まだ測定対象穴hの中に入っていない。このため、第2フォトディテクタ72には反射光が受光されず、第2フォーカスエラー信号の波高値Iはゼロとなっている。波高値の絶対値|I|が基準値Aを上回るまで、ステップS36,S38の処理が繰り返される。そして、管状プローブ80の先端が測定対象穴hの上端に進入すると、レーザ光が測定対象穴hの壁面wで反射し第2フォトディテクタ72に反射光が受光される。これにより、第2フォーカスエラー信号の波高値の絶対値|I|が基準値Aを上回るようになる。尚、第2フォーカスエラー信号は、S字検出距離が長いため、管状プローブ80の先端が測定対象穴hに進入したとき、レーザ光の反射位置がS字検出エリア内に入る。また、基準値Aは、このとき波高値の絶対値|I|に対して下回るように設定されている。
【0088】
コントローラ100は、第2フォーカスエラー信号の波高値の絶対値|I|が基準値Aを上回ったことを検出すると、ステップS40において、移動量検出回路117から移動量を入力し、移動量z0としてメモリ103に記憶する。続いて、ステップS42において、移動量検出回路117から移動量zを入力し、ステップS44において、移動量zから移動量z0を減算した値(z−z0)が微少量B以上となったかを判断する。つまり、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの上端から微少量Bだけ下方に移動したか否かを判断する。コントローラ100は、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの上端から微少量Bだけ下方に移動するまでステップS42,S44の処理を繰り返す。そして、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの上端から微少量Bだけ下方に移動すると、ステップS46において、フィードモータ制御回路116に対して停止指令を出力する。これにより、フィードモータ92の駆動が停止され、レーザ光照射装置50の移動が停止する。
【0089】
続いて、コントローラ100は、ステップS48において、変数nの値を「0」にセットし、次に、ステップS50において、回転角度検出回路119から回転角度θを入力し、ステップS52において、回転角度θが予め設定した極少角度Cを下回っているか否かを判断する。コントローラ100は、回転角度θが極少角度Cを下回るまで、つまり、管状プローブ80の回転角度がほぼ0°となる回転位置になるまでステップS50,S52の処理を繰り返す。そして、管状プローブ80の回転角度がほぼ0°となる回転位置に達すると、コントローラ100は、ステップS54において、その回転角度θを回転角度θ(n)としてメモリ103に記憶する。この場合、n=0であるため、管状プローブ80の回転角度がほぼ0°となる回転位置がθ(0)として記憶される。
【0090】
続いて、コントローラ100は、ステップS56において、第2フォーカスエラー信号の波高値のIを入力し、ステップS58において、上述したテーブルを参照して、波高値Iからレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量を算出し、ずれ量d(n)としてメモリ103に記憶する。以下、このずれ量d(n)を焦点ずれd(n)と呼ぶ。続いて、ステップS60において、変数nの値を「1」だけインクリメントし、ステップS62において、変数nに単位測定角度Δθを乗算した値(n・Δθ)が360°を上回ったか否かを判断する。単位測定角度Δθとは、測定対象穴hの円の1周を測定ポイント数で分割した角度である。従って、測定対象穴hの円の1周を細かく分割して測定するほど単位測定角度Δθは小さな値となる。
【0091】
コントローラ100は、ステップS62において、「No」、つまり、測定対象穴hの円の1周分の焦点ずれを検出していないと判断した場合は、その処理をステップS64に進める。コントローラ100は、ステップS64において、回転角度検出回路119から回転角度θを入力し、ステップS66において、その回転角度θが、変数nに単位測定角度Δθを乗じた値を越えたか否かを判断する。つまり、次の測定ポイントとなる回転角度(n・Δθ)に到達したかを判断する。回転角度θが次の測定ポイントとなる回転角度(n・Δθ)に到達するまでステップS64,S66の処理が繰り返される。そして、回転角度θが次の測定ポイントとなる回転角度(n・Δθ)に到達すると、コントローラ100は、その処理をステップS54に戻し、上述した処理を繰り返す。
【0092】
こうした処理を繰り返すことにより、コントローラ100は、測定対象穴hの円の1周分の焦点ずれd(n)データをメモリ103に記憶する。この記憶した焦点ずれd(n)データは、測定対象穴hの上端付近における壁面wの周形状(レーザ光が壁面wに照射された照射軌跡となる円形状)を表す2次元データ群の元となるデータ(θ(n),d(n))、つまり、プロファイルとなる。コントローラ100は、測定対象穴hの円の1周分の焦点ずれd(n)の検出が完了したことを判断すると(S62:Yes)、その処理をステップS68の処理に進める。
【0093】
コントローラ100は、ステップS68において、フィードモータ制御回路116に対して、正方向移動開始指令を出力する。これにより、フィードモータ制御回路116がフィードモータ92を設定速度で正回転駆動して、レーザ光照射装置50が下方向へ移動し始める。続いて、ステップS70において、移動量検出回路117から移動量zを入力し、ステップS72において、移動量zから移動量z0を減算した値(z−z0)が、作業者が入力した穴の深さよりも微少量Dだけ短い距離を上回ったかを判断する。つまり、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの下端から微少量Dだけ上方の位置にまで移動したか否かを判断する。コントローラ100は、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの下端から微少量Dだけ上方の位置に移動するまでステップS70,S72の処理を繰り返す。そして、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの下端から微少量Dだけ上方の位置にまで移動すると、ステップS74において、フィードモータ制御回路116に対して停止指令を出力する。これにより、フィードモータ92の駆動が停止され、レーザ光照射装置50の移動が停止する。
【0094】
続いて、コントローラ100は、ステップS75において、変数sの値を「0」にセットし、次に、ステップS76において、変数mの値を「0」にセットする。続いて、コントローラ100は、ステップS78からの処理を行う。このステップS78からステップS94までの処理は、測定対象穴hの下端付近における壁面wの周形状を表す2次元データ群の元となるデータ(θ(m),d(m))、つまり、プロファイルを取得する処理であり、上述したステップS50からステップS66の処理と同様である。従って、ここでは説明を省略する。尚、この場合、変数nに変えて変数mを用いてプロファイルを取得する。
【0095】
コントローラ100は、ステップS78〜S94により、測定対象穴hの下端付近における壁面wの周形状を表すプロファイルを取得すると、続いて、ステップS96において、変数sの値が「1」であるか否かを判断する。この場合、変数sは「0」にセットされているため、コントローラ100は、「No」と判断して、その処理をステップS98に進める。
【0096】
コントローラ100は、ステップS98において、測定対象穴hの上端付近における壁面wの周形状を表すプロファイル(θ(n),d(n))と、測定対象穴hの下端付近における壁面wの周形状を表すプロファイル(θ(m),d(m))とに基づいて、測定対象穴hの中心軸のZ方向に対する傾きを計算し、測定対象穴hの中心軸をZ方向に向けるために必要なX軸回りの回転角度ΔθxとY軸回りの回転角度Δθyとを計算する。このΔθx,Δθyの計算に当たっては、まず、プロファイル(θ(n),d(n))から測定対象穴hの上端付近における円の中心座標を、プロファイル(θ(m),d(m))から測定対象穴hの下端付近における円の中心座標をそれぞれ計算する。そして、図9に示すように、2つの円の中心座標のXY平面上における差を計算し、この差と測定対象穴hの上端付近から下端付近までのZ方向の距離とから、測定対象穴hの中心軸の傾き方向と傾き角度とを計算する。これにより、測定対象穴hの中心軸をZ方向に向けるために必要なX軸回りの回転角度ΔθxとY軸回りの回転角度Δθyとを算出することができる。
【0097】
続いて、コントローラ100は、ステップS100において、X角度モータ制御回路24に対して回転角度Δθxの回転指令を、Y角度モータ制御回路25に対して回転角度Δθyの回転指令を出力する。これにより、X角度モータ14およびY角度モータ15が駆動して、測定対象穴hの中心軸がZ軸と平行、つまり、管状プローブ80の中心軸と平行となる。
【0098】
このように測定対象穴hの上端付近と下端付近における壁面wの周形状を表すプロファイルから測定対象穴hの中心軸の傾き方向と傾き角度とを計算するステップS54〜ステップS98の処理が本発明の傾斜検出手段に相当する。また、検出された傾斜に基づいて測定対象穴hの中心軸方向を管状プローブ80の中心軸方向と一致させるステップS100の処理が本発明のプローブ傾斜制御手段に相当する。
【0099】
続いて、コントローラ100は、ステップS102において、変数sの値を「1」だけインクリメントして、その処理を上述したステップS76に進める。従って、ステップS76〜S94の処理により、再度、測定対象穴hの下端付近における壁面wの周形状を表すプロファイル(θ(m),d(m))が取得される。コントローラ100は、ステップS90において、1周分のプロファイル(θ(m),d(m))の取得完了を確認すると、ステップS96において、変数sの値が「1」であるか否かについて判断する。この場合、変数sは「1」にセットされているため、コントローラ100は、「Yes」と判定して、その処理をステップS104に進める。
【0100】
コントローラ100は、ステップS104において、測定対象穴hの下端付近における壁面wの周形状を表すプロファイル(θ(m),d(m))から、測定対象穴hのXY平面上における円の中心座標を計算し、図10に示すように、管状プローブ80の中心軸からのずれ量ΔX,ΔYを計算する。続いて、コントローラ100は、ステップS106において、X方向モータ制御回路22に対して、ずれ量ΔXをX方向移動量とした移動指令を出力し、Y方向モータ制御回路23に対して、ずれ量YをY方向移動量とした移動指令を出力する。これにより、X方向モータ12、Y方向モータ13が駆動してステージ11が移動し、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とが一致する。
【0101】
このように測定対象穴hの1周におけるプロファイルから測定対象穴hのXY平面上における中心座標を計算するステップS82〜ステップS104の処理が本発明の中心位置検出手段に相当する。また、その検出した測定対象穴hの中心位置に管状プローブ80の中心位置をセットするステップS106の処理が本発明のプローブ位置制御手段に相当する。
【0102】
続いて、コントローラ100は、ステップS108において、信号選択スイッチ113に対して第1フォーカスエラー信号の選択指令を出力する。信号選択スイッチ113は、この選択指令により、第1フォーカスエラー信号生成回路111の出力部とA/D変換器114の入力部とを導通状態にする。測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とが一致していない状況においては、S字検出距離の短いフォーカスエラー信号を使って焦点ずれを測定すると、レーザ光の反射位置がS字検出エリアから外れて測定不能になってしまう可能性がある。そのため、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とを一致させるまでの期間においては、上述したようにS字検出距離の長い第2フォーカスエラー信号を使用し、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とを一致させた後は、焦点ずれの測定精度の高い第1フォーカスエラー信号を使用する。
【0103】
続いて、コントローラ100は、ステップS110において、変数nの値を「0」にセットする。次に、ステップS112において、回転角度検出回路119から回転角度θを入力し、ステップS114において、回転角度θが予め設定した極少角度Cを下回っているか否かを判断する。コントローラ100は、回転角度θが極少角度Cを下回るまで、つまり、管状プローブ80の回転角度がほぼ0°となる回転位置になるまでステップS112,S114の処理を繰り返す。そして、管状プローブ80の回転角度がほぼ0°となる回転位置に達すると、コントローラ100は、ステップS116において、フィードモータ制御回路116に対して、逆方向移動開始指令を出力する。これにより、フィードモータ制御回路116がフィードモータ92を設定速度で逆回転駆動して、レーザ光照射装置50が上方向へ移動し始める。
【0104】
続いて、コントローラ100は、ステップS118において、回転角度θを回転角度θ(n)としてメモリ103に記憶する。この場合、n=0であるため、管状プローブ80の回転角度がほぼ0°となる回転位置がθ(0)として記憶される。次に、コントローラ100は、ステップS120において、第1フォーカスエラー信号の波高値Iを入力し、ステップS122において、移動量検出回路117から移動量zを入力し、入力した移動量zを移動量z(n)としてメモリ103に記憶する。続いて、コントローラ100は、ステップS124において、上述したテーブルを参照して、波高値Iから焦点ずれを算出し、焦点ずれd(n)としてメモリ103に記憶する。
【0105】
続いて、コントローラ100は、ステップS126において、移動量z(n)が移動量z0未満になった否かを判断する。つまり、レーザ光照射装置50の上方向の移動により、管状プローブ80の先端から出射されるレーザ光の照射位置が測定対象穴hの上端に達したか否かを判断する。レーザ光の照射位置が測定対象穴hの上端に達していなければ、ステップS128において、変数nの値を「1」だけインクリメントする。続いて、ステップS130において、回転角度検出回路119から回転角度θを入力し、ステップS132において、回転角度θと回転角度θ(n)との差、つまり、回転角度θの増加分が単位測定角度Δθを越えたか否かを判断する。回転角度θの増加分が単位測定角度Δθを越えていない場合には、ステップS134において、回転角度θが極少角度Cを下回っているか否かを判断する。コントローラ100は、回転角度θが極少角度Cを下回っていなければ、その処理をステップS130に戻し、回転角度θが極少角度Cを下回っていれば、その処理をステップS118に戻す。従って、回転角度θがほぼ0°になるたびに、および、回転角度θの増加分が単位測定角度Δθを越えるたびに、回転角度θ(n)、移動量z(n)、焦点ずれd(n)がメモリ103に逐次記憶される。
【0106】
つまり、管状プローブ80を測定対象穴h内で回転させながら上昇移動させ、それに伴って螺旋状に移動するレーザ光の焦点位置とレーザ光の測定対象穴hにおける反射位置とのずれ量である焦点ずれd(n)を、管状プローブ80が回転角0°から単位測定角度Δθだけ回転するたびに計算してメモリ103に記憶する。同時に、その焦点ずれd(n)を検出した位置データとして、回転角度θ(n)と移動量z(n)とをメモリ103に記憶する。これにより、測定対象穴hの3次元データ群の元となるデータ(θ(n),d(n),z(n))、つまり、プロファイルが取得される。このステップS118〜ステップS134の処理によりデータ(θ(n),d(n),z(n))を取得する処置が本発明の情報取得手段に相当する。
【0107】
こうした処理が繰り返され、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの上端に達すると(S126:Yes)、コントローラ100は、ステップS136において、プローブ回転モータ制御回路118に対してプローブ回転停止指令を出力して管状プローブ80の回転を停止させる。次に、ステップS138において、レーザ駆動回路120に対してレーザ照射停止指令を出力して管状プローブ80からのレーザ光の出射を停止させ、ステップS140において、クロック信号発生回路115に対してクロック信号の出力停止指令を出力してクロック信号発生回路115の作動を停止させる。
【0108】
続いて、コントローラ100は、ステップS142において、移動量検出回路117から移動量zを入力し、ステップS144において、移動量zが微少量Dを下回ったか否か、つまり、レーザ光照射装置50が初期位置(上限位置)近傍に達したか否かを判断する。コントローラ100は、レーザ光照射装置50が初期位置近傍に達するまで待ったのち、ステップS146において、フィードモータ制御回路116に対して停止指令を出力する。これにより、フィードモータ92の駆動が停止され、レーザ光照射装置50の移動が停止する。
【0109】
続いて、コントローラ100は、ステップS148において、メモリ103に記憶したデータ(θ(n),d(n),z(n))と、管状プローブ80の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離Fとに基づいて、3次元形状データ群を計算する。
例えば、3次元座標は、
((F+d(n))・cosθ(n),(F+d(n))・sinθ(n),z(n))として算出することができる。このステップS148の処理が、本発明の穴形状算出手段に相当する。
【0110】
続いて、コントローラ100は、ステップS150において、3次元形状データ群から3次元画像データを作成し、そのデータから3次元画像を表示装置102に表示する。そして、ステップS152において、穴形状測定制御ルーチンを終了する。
【0111】
尚、上述した穴形状測定ルーチンにおいて、測定対象穴hの円のプロファイルを用いて測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とを一致させたが、そうした処理を行うためには、予め、測定対象穴hの円のプロファイルにおけるXY軸方向と、実際のステージ駆動装置10のXY軸方向とを一致させておく、あるいは、両者の関係を測定して記憶しておく必要がある。つまり、測定対象穴hの円のプロファイルは、エンコーダ74aからインデックス信号が出力されるときの管状プローブ80の回転角度を基準回転角度0°としているために、この基準回転角度0°の方向がステージ駆動装置のX軸の方向と一致していない場合には、その相違する角度を予め記憶しておいて、プロファイルから測定対象穴hのXY座標における中心位置を計算するときに角度補正する必要がある。
【0112】
そこで、本実施形態においては、上述した穴形状測定ルーチンを行う前に、測定対象穴hの円のプロファイルにおけるX軸の方向(基準回転角度0°の方向)と、ステージ駆動装置10のX軸の方向とのなす角度を測定し、その角度を補正角度としてコントローラ100のメモリ103に記憶させておく。例えば、図11に示すように、測定体OBと同様形状の円筒体であって、その壁面wに1本の細い溝pit1を軸方向に形成した試料OB1を用意してステージ11にセットする。このとき、試料OB1の中心軸から溝pit1に向かう方向をステージ駆動装置10のX軸の方向に合わせておく。そして、上述した穴形状測定ルーチンのステップS12〜S66、ステップS116,ステップS136〜S148を行って、試料OB1の穴h1の1周におけるプロファイルを取得する。この取得されたプロファイルから得られる穴h1の周形状は、例えば、図12のようになる。従って、穴hの中心位置O1から溝位置Pを結ぶラインL1とステージ駆動装置10のX軸とのなす角度を計算し、この角度を補正角度θcとしてコントローラ100のメモリ103に記憶させておく。これにより、上述した穴形状測定ルーチンの実行時において、回転角度検出回路119により検出した回転角度θから補正角度θcだけ減算した角度を管状プローブ80の回転角度とすることで、測定対象穴hのプロファイルにおけるX,Y軸と、ステージ駆動装置10のX,Y軸とを一致させることができる。
【0113】
以上説明した第1実施形態の穴形状測定装置によれば、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に基づいて、測定対象穴hの壁面wの表面形状を測定するため、測定対象穴hの全体形状だけでなく、壁面wの微細な凹凸形状までも精度良く検出することができる。また、S字検出距離の短い第1受光光学系から生成される第1フォーカスエラー信号と、S字検出距離の長い第2受光光学系から生成される第2フォーカスエラー信号とを使い分けることができる。このため、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とが一致していない状態であっても、第2フォーカスエラー信号を用いて焦点ずれ量を検出することにより、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とのずれを測定することができる。また、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80との中心軸とを一致させた後は、第1フォーカスエラー信号を用いても、測定対象穴h全体にわたってレーザ光の反射位置がS字検出エリア内に収まるようになり、精度の高い穴形状測定を行うことができる。
【0114】
また、測定対象穴h内で管状プローブ80を1回転させて得た測定対象穴hのプロファイルから測定対象穴hの中心位置を算出するため、測定対象穴hの中心位置と管状プローブ80の中心位置との平面上のずれ量を良好に検出できる。また、測定対象穴hのプロファイルを測定対象穴hの上端付近と下端付近との2箇所で取得して測定対象穴hの中心軸方向を算出するため、管状プローブ80の中心軸に対する測定対象穴hの中心軸の傾き方向と傾き角度とを良好に検出できる。従って、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ80の中心軸とを確実に一致させることができる。このため、作業者の目視による調整が不要であり、しかも、位置調整を高精度に行うことができる。
【0115】
尚、本実施形態において、レーザ光を平行光にして管状プローブ80に出射する構成(レーザ駆動回路120,レーザ光源62,コリメートレンズ63)が本発明のレーザ光出射手段に相当し、第1集光レンズ67,第1シリンドリカルレンズ69からなる第1受光光学系と第2集光レンズ68,第2シリンドリカルレンズ70からなる第2受光光学系が本発明の受光光学系に相当する。また、第1フォトディテクタ71、第2フォトディテクタ72が本発明の光検出器に相当する。また、第1フォーカスエラー信号生成回路111、第2フォーカスエラー信号生成回路112、および、それらの出力するフォーカスエラー信号に基づいて焦点ずれ量を検出するコントローラ100の機能部が本発明の焦点ずれ量検出手段に相当する。また、第1フォーカスエラー信号と第2フォーカスエラー信号とを選択する信号選択スイッチ113が本発明の受光信号選択手段に相当する。
【0116】
また、Z方向駆動装置90におけるフィードモータ92およびフィードモータ制御回路116が本発明の移動手段に相当し、エンコーダ92aおよび移動量検出回路117が本発明の移動量検出手段に相当する。また、プローブ回転モータ74およびプローブ回転モータ制御回路118が本発明の回転手段に相当し、エンコーダ74aおよび回転角度検出回路119が本発明の回転角度検出手段に相当する。
【0117】
また、ステージ駆動装置10におけるX方向モータ12、Y方向モータ13、X方向モータ制御回路22、Y方向モータ制御回路23が本発明のプローブ位置可変手段に相当し、X角度モータ14、Y角度モータ15、X角度モータ制御回路24、Y角度モータ制御回路25が本発明のプローブ傾斜可変手段に相当する。
【0118】
次に、第1実施形態の変形例について説明する。上述した穴形状測定装置においては、管状プローブ80の中心軸から焦点位置までの距離Fが一定であるため、限られた穴径のものしか測定することができない。そこで、測定可能な穴径の範囲を広くした穴形状測定装置について説明する。図13は、変形例としての穴形状測定装置におけるレーザ光照射装置150を表す。この変形例は、レーザ光照射装置150の管状プローブ180の構成に特徴があり、管状プローブ180以外は第1実施形態のものと同一である。
【0119】
この変形例の管状プローブ180は、直線状の管体である管本体183と、第1実施形態と同様の対物レンズ81,ミラー82とを備えている。管本体183は、プローブ回転機構73に連結される内管183inと、内管183inの外径よりも大きな内径を有する外管183outとから構成されている。内管183inの外周面には雄ネジ183aが形成されている。外管183outの基端部には、この雄ネジ183aと螺合する雌ネジ183bを内周面に形成したネジ部184が設けられる。従って、外管183outをその中心軸周りに回転させることにより外管183outが内管183inに対して中心軸方向に進退移動可能となっている。内管183inの先端には、対物レンズ81が設けられる。外管183outは、その先端が内管183inの先端よりも突出して設けられ、先端部にミラー82が設けられる。
【0120】
このように構成された管状プローブ180は、外管183outを回転させることにより、対物レンズ81に対してミラーの位置が変化し、対物レンズ81とミラー82との光軸方向の間隔を変更することができる。従って、管状プローブ180は、本発明の間隔調整手段を備えたものである。対物レンズ81とミラー82との光軸方向の間隔が変われば、図14(a),(b)に示すように、管状プローブ180の中心軸L0からレーザ光の焦点位置までの距離Fも変わる。従って、外管183outの内管183inに対する進退位置を調整することで、管状プローブ180の中心軸L0からレーザ光の焦点位置までの距離Fを調整することができ、測定対象穴hの穴径のバリエーションに対応させることができる。
【0121】
管状プローブ180の内管183inの外周面には、外管183outの進退位置を表す目盛(図示略)が刻印されている。外管183outのネジ部184の上端面が位置する目盛を読むことにより、内管183inに対する外管183outの進退位置を測定できる。また、外管183outのネジ部184の外周面には、内管183inに対する外管183outの相対回転角度を表す目盛(図示略)が刻印されている。この回転角度から内管183inに対する外管183outの微少進退位置を測定できる。この目盛は、例えば、マイクロメータで用いられているような目盛を使用することができる。従って、内管183inの目盛と外管183outの目盛とを組み合わせた値(以下、目盛値と呼ぶ)から、内管183inに対する外管183outの進退位置を正確に読み取ることができるようになっている。この管状プローブ180に刻印された目盛が、本発明の目盛表示部に相当する。
【0122】
目盛表示により読み取られる目盛値と、管状プローブ180の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離Fとは、一対一の関係となる。コントローラ100は、メモリ103に図6に示す方法で測定した距離F(管状プローブ180の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離)と目盛値とを関係づけた関係データをテーブルや計算式等の形で記憶しており、作業者が入力装置101を使って入力した目盛値と関係データとから距離Fを算出する。
【0123】
この場合、例えば、上述した穴形状測定ルーチン(図8A)のステップS27とS28との間に、図23に示すようなステップS13,S15,S17の処理を組み込むと良い。ステップS13においては、表示装置102を使って作業者に対して目盛値の入力操作を行うように指示し、ステップS15においては、目盛値が入力装置101から入力されたことを確認する。そして、目盛値の入力が確認されると、ステップS17において、メモリ103に記憶されている関係データを参照して、入力された目盛値から距離Fを算出する。この距離Fは、ステップS148における3次元形状データ群の計算に用いられる。尚、目盛値を入力して距離Fを計算するステップS17の処理が本発明の焦点位置算出手段に相当する。また、上記ステップS13,S15,S17の処理は、3次元形状データ群の計算処理(S148)を行う前であれば、任意の位置に組み込むことができる。
【0124】
この変形例の穴形状測定装置によれば、穴径が異なる種々の測定対象穴hに対して形状測定が可能となる。また、作業者が入力した目盛値を使ってコントローラ100により管状プローブ180の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離Fを算出するため、作業者による計算処理が不要となり形状測定が容易である。
【0125】
次に、第2実施形態の穴形状測定装置について説明する。図15は、第2実施形態に係る穴形状測定装置の概略システム構成図であり、図16は、穴形状測定装置に設けられたレーザ光照射装置250の概略構成図である。尚、第1実施形態と同一の構成のものについては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0126】
第2実施形態の穴形状測定装置は、測定体OBを載置固定するとともに測定体OBのX,Y方向位置と傾きとを調整するステージ駆動装置10と、測定対象穴hの壁面wにレーザ光を照射するとともに壁面wからの反射光を受光して受光信号を出力するレーザ光照射装置250と、レーザ光照射装置250のZ方向位置(本実施形態においては高さ方向位置)を調整するZ方向駆動装置90と、各装置の作動を制御してレーザ光照射装置250からの受光信号から穴形状を測定するコントローラ200とを備えている。ステージ駆動装置10とZ方向駆動装置90に関しては、第1実施形態のものと同一構成である。
【0127】
レーザ光照射装置250は、図16に示すように、本体部260と、本体部260に接続される管状プローブ280とを有する。本体部260は、本体ケース261内に、第1レーザ光源262、第1コリメートレンズ263、第1偏光ビームスプリッタ264、第1・1/4波長板265、第2・1/4波長板266、ダイクロイックミラー267、第2偏光ビームスプリッタ268、第1集光レンズ269、第2集光レンズ270、第1シリンドリカルレンズ271、第2シリンドリカルレンズ272、第1フォトディテクタ291、第2フォトディテクタ292、第2レーザ光源283、第2コリメートレンズ284、プローブ回転機構73、プローブ回転モータ74を備えている。
【0128】
第1レーザ光源262は、第1レーザ駆動回路221から出力された駆動信号により所定強度のレーザ光を出射する。第1レーザ光源262を出射したレーザ光(以下、第1レーザ光と呼ぶ)は、コリメートレンズ263を通過して平行光になり、第1偏光ビームスプリッタ264に入射する。第1偏光ビームスプリッタ264は、その透過軸の向きが入射した第1レーザ光と同じ方向に設定されている。従って、第1レーザ光は、第1偏光ビームスプリッタ264をそのまま透過する。第1偏光ビームスプリッタ264を透過した第1レーザ光は、第1・1/4波長板265を通過して円偏光となり、ダイクロイックミラー267に入射する。
【0129】
ダイクロイックミラー267は、第1レーザ光の波長と同じレーザ光を透過する特性を有する。従って、第1レーザ光は、そのままダイクロイックミラー267を透過する。ダイクロイックミラー267を透過した第1レーザ光は、管状プローブ280の管本体83の内部を通って対物レンズ281を通過し、ミラー82で反射して測定対象穴hの壁面wに照射される。第1レーザ光は、壁面wで反射して管本体83内に戻りダイクロイックミラー267に入射し、そのままダイクロイックミラー267を透過する。ダイクロイックミラー267を透過した第1レーザ光は、第1・1/4波長板265を通過し第1偏光ビームスプリッタ264に入射する。このとき、第1レーザ光は、第1・1/4波長板265を2回通過したことになるため、第1レーザ光源から出射されたときとは偏光方向が90°相違したものとなる。従って、第1レーザ光は、第1偏光ビームスプリッタ264で反射して第1集光レンズ269と第1シリンドリカルレンズ271とを通過して第1フォトディテクタ291に集光される。第1集光レンズ269、第1シリンドリカルレンズ271は、第1レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に応じて、第1フォトディテクタ291に受光される第1レーザ光のスポット形状を変化させる。以下、第1集光レンズ269、第1シリンドリカルレンズ271からなる受光光学系を第1受光光学系と呼ぶ。
【0130】
第2レーザ光源283は、第2レーザ駆動回路222から出力された駆動信号により所定強度のレーザ光を出射する。第2レーザ光源283から出射されるレーザ光(以下、第2レーザ光と呼ぶ)は、その波長が第1レーザ光の波長と相違している。第2レーザ光源283を出射した第2レーザ光は、第2コリメートレンズ284を通過して平行光となり、第2偏光ビームスプリッタ268に入射する。第2偏光ビームスプリッタ268は、その透過軸の向きが入射した第2レーザ光と90°相違するように設定されている。従って、第2レーザ光は、第2偏光ビームスプリッタ268で反射し、第2・1/4波長板266を通過して円偏光となり、ダイクロイックミラー267に入射する。第2レーザ光は、その波長がダイクロイックミラー267を透過できる波長と異なるため、ダイクロイックミラー267で反射する。従って、第1レーザ光と第2レーザ光とが合成されてダイクロイックミラー267から出射されることになる。
【0131】
ダイクロイックミラー267で反射した第2レーザ光は、管状プローブ280の管本体83の内部を通って対物レンズ281を通過し、ミラー82で反射して測定対象穴hの壁面wに照射される。第2レーザ光は、壁面wで反射して管本体83内に戻りダイクロイックミラー267に入射する。第2レーザ光は、ダイクロイックミラー267で反射して第1レーザ光から分離し、第2・1/4波長板266を通過して第2偏光ビームスプリッタ268に入射する。このとき、第2レーザ光は、第2・1/4波長板266を2回通過したことになるため、その偏光方向が第2偏光ビームスプリッタ268の透過軸の向きと同じになる。従って、第2レーザ光は、第2偏光ビームスプリッタ268をそのまま透過して第2集光レンズ270と第2シリンドリカルレンズ272を通過して第2フォトディテクタ292に集光される。第2集光レンズ270、第2シリンドリカルレンズ272は、第2レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に応じて、第2フォトディテクタ292に受光される第2レーザ光のスポット形状を変化させる。以下、第2集光レンズ270、第2シリンドリカルレンズ272からなる受光光学系を第2受光光学系と呼ぶ。
【0132】
第1フォトディテクタ291、第2フォトディテクタ292は、第1実施形態と同様に、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子にて構成され、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として出力する。また、4つの受光素子が配置された中央に反射光が集光するように固定されている。
【0133】
管状プローブ280の管本体83の先端に設けられる対物レンズ281は、2つの焦点を有する2焦点レンズである。対物レンズ281は、図17に示すように、表面に回折格子281aが形成されており、波長の異なるレーザ光(第1レーザ光、第2レーザ光)のうちの一方のレーザ光のみが回折する。このため、第1レーザ光の焦点位置と第2レーザ光の焦点位置とが異なる。図の例では、第1レーザ光に比べて第2レーザ光のほうが焦点位置が遠方となっている。従って、管状プローブ280の中心軸L0から第1レーザ光の焦点位置までの距離F1は、管状プローブ280の中心軸L0から第2レーザ光の焦点位置までの距離F2よりも短くなっている。
【0134】
第1フォトディテクタ291には、第1フォーカスエラー信号生成回路231が接続され、第2フォトディテクタ292には、第2フォーカスエラー信号生成回路232が接続される。第1,第2フォーカスエラー信号生成回路231,232は、第1実施形態と同様に、それぞれ入力した受光信号(a,b,c,d)を増幅した後、((a+c)−(b+d))という演算によりフォーカスエラー信号を生成する。以下、第1フォーカスエラー信号生成回路231により生成された信号を第1フォーカスエラー信号と呼び、第2フォーカスエラー信号生成回路232により生成された信号を第2フォーカスエラー信号とよび、それらを区別しないときは、単にフォーカスエラー信号と呼ぶ。
【0135】
図18は、管状プローブ280の中心軸からレーザ光の反射位置までの距離に対するフォーカスエラー信号の出力(波高値)、つまり、S字状波形を表す。第1フォーカスエラー信号と第2フォーカスエラー信号とにおけるS字状波形は、対物レンズ281を2焦点レンズで構成したため横軸方向(距離方向)にずれる。従って、図18のように、第1フォーカスエラー信号の波高値が最小となるポイントと、第2フォーカスエラー信号の波高値が最大となるポイントとが同時に(同一距離で)得られるようにすれば、焦点ずれ量の測定精度を高精度に維持したまま、測定可能範囲を2倍にすることができる。本実施形態においては、第1受光光学系と第2受光光学系とにおいて、各素子の配置等を調整することによりフォーカスエラー信号の出力特性を図18のように設定する。
【0136】
第1フォーカスエラー信号がゼロクロス(この点をゼロクロス点P0aと呼ぶ)するときに、第1レーザ光の焦点位置が測定対象穴hの反射位置と一致する。また、第2フォーカスエラー信号がゼロクロス(この点をゼロクロス点P0bと呼ぶ)するときに、第2レーザ光の焦点位置が測定対象穴hの反射位置と一致する。従って、第1レーザ光の反射位置がゼロクロス点P0aからずれている距離(焦点ずれ)に応じて第1フォーカスエラー信号の波高値が変化し、第2レーザ光の反射位置がゼロクロス点P0bからずれている距離(焦点ずれ)に応じて第2フォーカスエラー信号の波高値が変化する。コントローラ200は、各レーザ光の焦点ずれと各フォーカスエラー信号の波高値との関係を表すテーブルをメモリ203に記憶している。これにより、2つのフォーカスエラー信号からレーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量を取得することができる。尚、図18中において、範囲Aが第1フォーカスエラー信号により焦点ずれを検出できる範囲を表し、範囲Bが第2フォーカスエラー信号により焦点ずれを検出できる範囲を表す。
【0137】
また、管状プローブ280の中心軸から第1レーザ光の焦点位置までの距離F1、および、管状プローブ280の中心軸から第2レーザ光の焦点位置までの距離F2についても、第1実施形態と同様にゲージブロックGB等を使って測定され、その測定値がメモリ203に記憶されている。従って、管状プローブ280の中心軸から測定対象穴hの壁面wまでの距離は、記憶した距離F1,F2と、フォーカスエラー信号の波高値から得られる焦点ずれ量とから計算することができる。
【0138】
第1フォーカスエラー信号生成回路231から出力される第1フォーカスエラー信号は、第1A/D変換器223に入力され、第2フォーカスエラー信号生成回路232から出力される第2フォーカスエラー信号は、第2A/D変換器224に入力される。各A/D変換器223,224は、クロック信号発生回路115が出力するクロック信号を入力するたびに、フォーカスエラー信号の波高値をデジタル信号に変換してコントローラ200に出力する。
【0139】
次に、コントローラ200が実行する穴形状測定処理について説明する。図19A〜図19Cは、穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。穴形状測定ルーチンは、コントローラ200のROM内に制御プログラムとして記憶されている。以下、穴形状測定ルーチンについて説明するが、第1実施形態における穴形状測定ルーチンの処理と同一の処理については、図面のステップ番号の隣に、第1実施形態で用いたステップ番号を括弧書きで添えることにより簡単な説明にとどめる。
【0140】
穴形状測定ルーチンがステップS300にて起動すると、コントローラ200は、表示装置102を用いて測定体OBをステージ11へセットするように作業者に指示し(S302)、測定体OBのセット完了を表す入力操作を入力装置101から検出すると(S304)、表示装置102を用いて測定対象穴hの深さを入力するように作業者に指示する(S306)。そして、測定対象穴hの深さの入力操作を入力装置101から検出すると(S308)、フィードモータ制御回路116に正方向移動開始指令を出力して、レーザ光照射装置250の下方向への移動を開始させる(S310)。
【0141】
続いて、コントローラ200は、ステップS312において、第1レーザ駆動回路221と第2レーザ駆動回路222とに対して、レーザ光照射開始指令を出力する。これにより、第1レーザ光源262から第1レーザ光が出射され、第2レーザ光源283から第2レーザ光が出射される。両レーザ光は、管状プローブ280の先端から出射されて測定対象穴hの壁面wに照射される。次に、コントローラ200は、クロック信号発生回路115に対して、クロック信号の出力開始指令を出力し(S314)、次に、ステップS316において、第1A/D変換器223を介して第1フォーカスエラー信号の波高値Iaを、第2A/D変換器224を介して第2フォーカスエラー信号の波高値Ibをそれぞれ入力する。そして、ステップS318において、波高値Iaと波高値Ibとの合計の絶対値(|Ia+Ib|)が基準値Aを上回ったか否かを判断する。
【0142】
レーザ光照射装置250が下降移動を開始した時点においては、管状プローブ280の先端は、まだ測定対象穴hの中に入っていないため、波高値Iaと波高値Ibはともにゼロとなるが、管状プローブ280の先端が測定対象穴hの上端に進入すると、レーザ光が測定対象穴hの壁面wで反射し第1フォトディテクタ291および第2フォトディテクタ292に反射光が受光される。この場合、第1フォーカスエラー信号あるいは第2フォーカスエラー信号の何れかで波高値が変化して、その絶対値が基準値Aを越える。コントローラ200は、ステップS318において、「Yes」と判定すると、移動量検出回路117から移動量zを入力し、その移動量zを移動量z0としてメモリ203に記憶する(S320)。そして、フィードモータ制御回路116に対して停止指令を出力してレーザ光照射装置250の下降移動を停止させる(S322)。
【0143】
続いて、コントローラ200は、プローブ回転モータ制御回路118に対してプローブ回転開始指令を出力し、管状プローブ280の回転を開始させる(S324)。次に、変数nの値を「0」にセットする(S325)。続いて、回転角度検出回路119から回転角度θを入力し、回転角度θが予め設定した極少角度Cを下回るまで待機してから(S326,S328)、つまり、管状プローブ280の回転角度がほぼ0°となる回転位置に達するまで待機してから、フィードモータ制御回路116に正方向移動開始指令を出力して、レーザ光照射装置250の下方向への移動を開始させる(S330)。次に、回転角度θを回転角度θ(n)としてメモリ203に記憶する(S332)。
【0144】
続いて、コントローラ200は、ステップS334において、第1フォーカスエラー信号の波高値Iaと第2フォーカスエラー信号の波高値Ibとをそれぞれ入力する。次に、移動量検出回路117から移動量zを入力し、入力した移動量zを移動量z(n)としてメモリ203に記憶する(S336)。続いて、コントローラ200は、ステップS338において、上述したテーブルを参照して、波高値Iaあるいは波高値Ibから焦点ずれを算出し、焦点ずれd(n)としてメモリ203に記憶する。2つのフォーカスエラー信号の一方は、その波高値が必ずゼロになる。従って、ステップS338においては、波高値がゼロになっていないほうのフォーカスエラー信号の特性から、その焦点位置と反射位置とのずれ量を焦点ずれ量d(n)として算出する。従って、このステップS338においては、どちらのフォーカスエラー信号に基づいた焦点ずれd(n)であるかを識別する信号識別データも一緒に記憶する。
【0145】
続いて、コントローラ200は、ステップS340において、移動量z(n)から移動量z0を減算した値(z(n)−z0)が、測定対象穴hの深さから微少量Dだけ減算した値より大きくなったか否かを判断する。つまり、管状プローブ280が下方移動して、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの下端近傍に達したか否かを判断する。レーザ光の照射位置が測定対象穴hの下端近傍に達していなければ、変数nの値を「1」だけインクリメントし(S342)、回転角度検出回路119から回転角度θを入力し(S344)、回転角度θと回転角度θ(n)との差、つまり、回転角度θの増加分が単位測定角度Δθを越えたか否かを判断する(S346)。回転角度θの増加分が単位測定角度Δθを越えていない場合には、回転角度θが極少角度C(0°に近い値)を下回っているか否かを判断し(S348)、回転角度θが極少角度Cを下回っていなければ、その処理をステップS344に戻し、回転角度θが極少角度Cを下回っていれば、その処理をステップS332に戻す。従って、回転角度θがほぼ0°になるたびに、および、回転角度θの増加分が単位測定角度Δθを越えるたびに、回転角度θ(n)、移動量z(n)、焦点ずれd(n)がメモリ203に逐次記憶される。尚、焦点ずれd(n)のデータには、信号識別データも含まれている。
【0146】
こうした処理が繰り返され、レーザ光の照射位置が測定対象穴hの下端近傍に達すると(S340:Yes)、コントローラ200は、フィードモータ制御回路116に対して停止指令を出力してレーザ光照射装置250の下降移動を停止させ(S350)、次に、プローブ回転モータ制御回路118に対してプローブ回転停止指令を出力して管状プローブ280の回転を停止させる(S352)。続いて、第1レーザ駆動回路221および第2レーザ駆動回路222に対してレーザ照射停止指令を出力して管状プローブ280からのレーザ光の出射を停止させ(S354)、次に、クロック信号発生回路115に対してクロック信号の出力停止指令を出力してクロック信号発生回路115の作動を停止させる(S356)。
【0147】
続いて、コントローラ200は、フィードモータ制御回路116に対して逆方向移動開始指令を出力してレーザ光照射装置250を上方向へ移動させる(S358)。そして、移動量検出回路117から移動量zを入力し(S360)、移動量zに基づいてレーザ光照射装置250が初期位置(上限位置)近傍に達したところで(S362)、フィードモータ制御回路116に対して停止指令を出力してレーザ光照射装置250の移動を停止させる(S364)
【0148】
続いて、コントローラ200は、ステップS366において、メモリ203に記憶したデータ(θ(n),d(n),z(n))と、管状プローブ280の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離F1,F2とに基づいて、3次元形状データ群を計算する。例えば、信号識別データが第1フォーカスエラー信号を表している場合には、3次元座標は、
((F1+d(n))・cosθ(n),(F1+d(n))・sinθ(n),z(n))として算出することができる。
また、信号識別データが第2フォーカスエラー信号を表している場合には、3次元座標は、
((F2+d(n))・cosθ(n),(F2+d(n))・sinθ(n),z(n))として算出することができる。
【0149】
続いて、コントローラ200は、ステップS368において、3次元形状データ群から3次元画像データを作成し、そのデータから3次元画像を表示装置102に表示する。そして、ステップS370において、穴測定制御ルーチンを終了する。
【0150】
以上説明した第2実施形態の穴形状測定装置によれば、第1実施形態と同様に、レーザ光の焦点位置と反射位置とのずれ量に基づいて測定対象穴hの壁面wの表面形状を測定するため、測定対象穴hの全体形状だけでなく、壁面wの微細な凹凸形状までも精度良く検出することができる。また、波長の異なる2つのレーザ光源262,283と、2つのレーザ光を合成して管状プローブ280に出射するとともに測定対象穴hからの反射光を2つのレーザ光に分離して受光する光学系と、管状プローブ280から出射したレーザ光が収束する焦点を2個所に形成する対物レンズ281(2焦点レンズ)とを用いることにより、S字状波形が測定距離方向にずれた2つのフォーカスエラー信号を作成する。このため、高い測定精度を保ったまま測定可能範囲を広くすることができる。従って、穴形状測定ルーチンのなかに、測定対象穴hの中心軸と管状プローブ280の中心軸とを一致させる処理を組み込まなくても、作業者が目視で位置合わせすることにより穴形状測定が可能となる。この結果、コントローラ200の行う制御処理を簡略化することができ、また、測定時間を短縮することもできる。
【0151】
尚、測定体OBを管状プローブ280に対して適正位置にセットできなかった場合には、測定対象穴hの周回りの一部において、反射位置が測定可能範囲から外れることもある。この場合であっても、測定できた焦点ずれd(n)を用いて測定対象穴hの円のプロファイルを計算することができるため、測定対象穴hの中心軸をZ方向に向けるために必要なX軸回りの回転角度ΔθxとY軸回りの回転角度Δθy、および、測定対象穴hの中心軸の管状プローブ280の中心軸からのずれ量ΔX,ΔYを計算することができる。従って、計算したΔθx,Δθy,ΔX,ΔYに基づいて、第1実施形態のように、ステージ11の位置、傾斜角度を調整し、再測定することにより、測定対象穴hの全体にわたって形状測定することができる。
【0152】
次に、第3実施形態の穴形状測定装置について説明する。図20は、第3実施形態に係る穴形状測定装置の概略システム構成図である。尚、第2実施形態と同一の構成のものについては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0153】
第3実施形態の穴形状測定装置は、測定体OBを載置固定した状態で回転させるステージ回転装置310と、測定対象穴hの壁面wにレーザ光を照射するとともに壁面wからの反射光を受光して受光信号を出力するレーザ光照射装置350と、レーザ光照射装置350のZ方向位置(本実施形態においては高さ方向位置)を調整するZ方向駆動装置90と、レーザ光照射装置350のX方向位置を調整するX方向駆動装置380と、各装置の作動を制御してレーザ光照射装置350からの受光信号から穴形状を測定するコントローラ300とを備えている。Z方向駆動装置90に関しては、第1,第2実施形態のものと同一構成である。尚、ステージ回転装置310が本発明の回転手段に相当し、X方向駆動装置380が本発明のプローブ位置可変手段に相当する。
【0154】
ステージ回転装置310は、測定体OBを載置固定するステージ311と、ステージ311を回転させるステージ回転モータ312とを備えている。ステージ311は、Z方向に向いた回転軸313により回転可能に設けられ、ステージ回転モータ312の駆動により回転するもので、本発明の回転テーブルに相当する。ステージ回転モータ312には、モータの回転角度を検出して、その回転角度を表す回転検出信号を出力するエンコーダ312aが組み込まれている。この回転検出信号は、ステージ311の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号(パルス信号)と、ステージ311が所定の微少な回転角度だけ回転するたびに電圧レベルがハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号であって、互いにπ/2だけ移相のずれた2つのA相信号とB相信号とからなる。回転検出信号は、ステージ回転モータ制御回路314と回転角度検出回路315とに出力される。
【0155】
ステージ回転モータ制御回路314は、コントローラ300から作動指令を入力すると、エンコーダ312aの出力するパルス信号列を用いて、パルス列信号の単位時間当たりのパルス数が予め設定されている回転速度に対応したパルス数に等しくなるようにステージ回転モータ312を駆動する。また、回転角度検出回路315は、コントローラ300から作動指令を入力すると、エンコーダ312aの出力するパルス列信号とインデックス信号とを用いて、ステージ311の基準回転位置からの回転角度θを算出し、算出した回転角度θを表すデジタルデータを所定の周期でコントローラ300に出力する。
【0156】
レーザ光照射装置350は、第2実施形態のレーザ光照射装置250から、プローブ回転機構73,プローブ回転モータ74,プローブ回転モータ制御回路118,回転角度検出回路119を省略し、管状プローブ280を本体部260に回転不能に固定したものである。管状プローブ280のミラー82の向き、つまり、管状プローブ280の先端からレーザ光の出射する方向は、X方向(図20では左方向)に向けられている。他の構成については、第2実施形態のレーザ光照射装置250と同一である。
【0157】
X方向駆動装置380は、Z方向駆動装置90の支持アーム91を支える支柱96をX方向に移動させるX方向モータ381を備えている。支柱96は、基台382に対してX方向に移動可能に設けられる。基台382には、図示しないネジ送り機構が設けられており、X方向モータ381の回転運動がねじ送り機構により支柱96のX方向の直線運動に変換されるように構成されている。従って、X方向モータ381の回転によりレーザ光照射装置350がX方向(レーザ光の照射方向)に移動する。この場合、管状プローブ280の中心軸が、ステージ311の回転中心軸を含むX方向の平面内をX方向に移動するように、ステージ311とレーザ光照射装置350との位置関係が設定されている。
【0158】
X方向モータ381には、同モータ381の回転を検出して、その回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ381aが組み込まれている。この回転検出信号は、第2実施形態のエンコーダ12aの出力と同様なパルス列信号である。回転検出信号は、X方向位置検出回路384に出力される。X方向モータ制御回路383は、コントローラ300から出力されたX方向位置指令を入力すると、X方向位置検出回路384が出力するX方向検出位置に基づいて、X方向検出位置がコントローラ300により指令されたX方向位置になるまでX方向モータ381を駆動する。X方向位置検出回路32は、エンコーダ381aの出力するパルス列信号のパルス数をカウントアップあるいはカウントダウンすることにより管状プローブ280のX方向の移動量を計算し、計算した移動量を原点位置(原点位置を表す移動量)に加減算することによりX方向位置を算出してX方向モータ制御回路383に出力する。このX方向の原点位置は、管状プローブ280の中心軸がステージ311の回転中心軸と一致する位置に設定される。
【0159】
管状プローブ280を原点位置にセットするための初期設定は次のように行われる。X方向モータ381は、原点位置を中心に正方向と逆方向とに同じ回転数だけ回転可能に設けられている。また、X方向モータ381を回転可能範囲の一方端から他方端まで移動させたときにエンコーダ381aが出力するパルス列信号のパルス数Npは予めわかっている。初期設定時においては、コントローラ300から、X方向モータ制御回路383とX方向位置検出回路384とに初期設定指令が出力される。X方向モータ制御回路383は、初期設定指令を入力すると、X方向モータ381を駆動してレーザ光照射装置350をX軸正方向に移動させる。X方向位置検出回路384は、エンコーダ381から出力されるパルス列信号を入力し、パルス信号が停止したとき、つまり、X方向モータ381が駆動限界位置に到達したときにX方向モータ制御回路383に対して駆動停止信号を出力する。X方向モータ制御回路383は、この駆動停止信号を入力するとX方向モータ381の駆動を停止する。X方向位置検出回路384は、駆動停止信号を出力したときに、エンコーダ381aから入力したパルス列信号のパルス数のカウント値を0にリセットする。これにより、X方向位置検出回路384は、エンコーダ381aが出力するパルス列信号のパルス数のカウント値がNp/2(X方向モータ381を駆動可能範囲の一方端から他方端まで移動させたときにエンコーダ381aが出力するパルス列信号のパルス数Npの半分)となるX方向位置を原点位置と認識することができ、以下、パルス数のカウント値に基づいて管状プローブ280の原点位置からの移動量を検出できるようになる。その後、X方向モータ制御回路383は、X方向モータ381を逆方向に回転駆動し、X方向位置検出回路384が出力するX方向検出位置に基づいて、管状プローブ280を原点位置にまで移動させる。
【0160】
この第3実施形態の穴形状測定装置は、上記第1,第2実施形態のように管状プローブ80,180の中心軸を測定対象穴hの中心軸と一致させて穴形状測定を行うものではなく、レーザ光の焦点位置が測定対象穴hの壁面w位置となるように管状プローブ280の位置を調整しておき、図21(a),(b)に示すように、測定体OBを測定対象穴hの中心軸回りに回転させ、その時に得られる焦点ずれ量から測定対象穴hの表面形状を測定するものである。従って、種々の径の測定対象穴hに対して形状測定が可能になっている。この場合、管状プローブ280の中心軸L0からレーザ光の焦点位置までの距離に、ステージ311の回転中心軸Lsから管状プローブ280の中心軸L0までの距離を加算した距離を上記距離Fとすることにより、第1実施形態と同様に、距離F、焦点ずれd、移動量z、回転角度θに基づいて穴形状を測定することができる。
【0161】
以下、穴形状測定に先立って行う管状プローブ280の位置調整について説明する。図22A〜図22Cは、プローブ位置調整ルーチンを表すフローチャートである。プローブ位置調整ルーチンは、コントローラ300のROM内に制御プログラムとして記憶されている。
【0162】
プローブ位置調整ルーチンがステップS200にて起動すると、コントローラ300は、ステップS202において、表示装置102を用いて測定体OBをステージ311へセットするように作業者に指示する。作業者は、この指示により、測定体OBを測定対象穴hの中心軸がステージ311の回転中心軸と一致するようにステージ311上にセットする。この場合、ステージ311に位置決め用マークを表示して測定体OBを所定位置にセットしやすいようにしても良いし、位置決め治具等を設けて測定体OBを所定位置にセットするようにしても良い。
【0163】
コントローラ300は、ステップS204において、作業者が入力装置101にセット完了を表す入力操作を行うまで待機し、その入力操作を検出すると、ステップS206において、表示装置102を用いて測定対象穴hへ管状プローブ280を挿入するように作業者に指示する。作業者は、マニュアル操作でフィードモータ92を作動させてレーザ光照射装置350を下方向に移動させる。尚、レーザ光照射装置350は、上述した初期設定処理により予め原点位置にまで移動されている。従って、管状プローブ280は、中心軸L0が測定対象穴hの中心軸を移動するように挿入されることになる。
【0164】
続いて、コントローラ300は、ステップS208において、作業者が管状プローブ280の挿入完了を表す入力操作を行うまで待機し、入力操作を検出すると、ステップS210において、第1レーザ駆動回路221と第2レーザ駆動回路222とに対してレーザ光照射開始指令を出力する。これにより、第1レーザ光源262から第1レーザ光が出射され、第2レーザ光源283から第2レーザ光が出射される。両レーザ光は、管状プローブ280の先端から出射されて測定対象穴hの壁面wに照射される。次に、コントローラ300は、ステップS212において、クロック信号発生回路115に対して、クロック信号の出力開始指令を出力する。続いて、コントローラ300は、ステップS214において、変数nの値を「0」にセットする。
【0165】
続いて、コントローラ300は、ステップS216において、X方向モータ制御回路383に対してX方向の位置n・ΔXへの移動指令を出力する。このΔXは、ステージ311をX方向に移動させる単位移動量であり、モータ回転角度の分解能に応じた微少値に設定されている。X方向モータ制御回路383は、X方向位置検出回路384が出力するX方向検出位置に基づいて、指令された位置n・ΔXにまでレーザ光照射装置50を移動させる。この移動方向は、レーザ光の照射方向と同一方向となる。従って、第1,第2レーザ光の焦点位置が測定対象穴hの壁面wにΔXだけ接近する。尚、ステップS216が最初に行われるときには、n=0に設定されているため、移動量はゼロである。
【0166】
続いて、コントローラ300は、ステップS218において、第1フォーカスエラー信号と第2フォーカスエラー信号とから波高値Ia(n)と波高値Ib(n)とを入力し、次に、ステップS220において、波高値Ia(n)と波高値Ib(n)との合計の絶対値(|Ia(n)+Ib(n)|)が基準値Aを上回ったか否かを判断する。この基準値Aは極小値に設定されているため、ステップS220の判断は、絶対値(|Ia(n)+Ib(n)|)がゼロか否かを判断するものといえる。管状プローブ280が測定対象穴hの中央に位置するうちは、第1,第2レーザ光の焦点位置が測定対象穴hの壁面wよりもかなり手前となる。従って、波高値Ia(n)と波高値Ib(n)は、第1,第2レーザ光の反射位置がS字検出エリアから外れているため、ともにゼロとなる。
【0167】
コントローラ300は、ステップS220において「No」と判定した場合には、ステップS222において、変数nの値を「1」だけインクリメントして、その処理をステップS216に戻す。こうして、管状プローブ280は、波高値Iaと波高値Ibとの合計の絶対値(|Ia(n)+Ib(n)|)が基準値Aを上回るまで、測定対象穴hの壁面wに接近移動する。第2レーザ光の焦点位置は、第1レーザ光の焦点位置に比べて管状プローブ280から遠い位置にある。従って、管状プローブ280が測定対象穴hの壁面wに接近すると、先に、第2レーザ光の反射位置が第2フォーカスエラー信号のS字検出エリア内に入り、絶対値(|Ia(n)+Ib(n)|)が基準値Aを上回る。
【0168】
コントローラ300は、絶対値(|Ia(n)+Ib(n)|)が基準値Aを上回ったことを検知すると(S220:Yes)、ステップS224において、波高値Ia(n)と波高値Ib(n)とをメモリ303に記憶する。次に、ステップS226において、変数nの値を「1」だけインクリメントする。続いて、コントローラ300は、ステップS228において、X方向モータ制御回路383に対してX方向の位置n・ΔXへ移動指令を出力する。
【0169】
続いて、コントローラ300は、ステップS230において、第2フォーカスエラー信号の波高値の変化量(|Ib(n)−Ib(n-1)|)が基準値Bより大きいか否かを判断する。この基準値Bは、極小値に設定されているため、ステップS230の判断は、第2レーザ光の反射位置が図18に示すS字検出エリアB内に存在しているか否かを判断するものである。第2レーザ光の反射位置がS字検出エリアB内に存在しているあいだは、ステップS230において「Yes」と判定され、その処理がステップS224に戻される。従って、その間は、管状プローブ280がレーザ光照射方向に移動し測定対象穴hの壁面wに接近していくとともに、各移動位置n・Δxにおける波高値Ia(n),Ib(n)が記憶される。
【0170】
そして、第2レーザ光の反射位置が第2フォーカスエラー信号のS字検出エリアBから外れると、コントローラ300は、ステップS230において「No」と判定し、ステップS232において、第1フォーカスエラー信号の波高値の変化量(|Ia(n)−Ia(n-1)|)が基準値Bより大きいか否かを判断する。つまり、第1レーザ光の反射位置が図18に示すS字検出エリアA内に存在しているか否かを判断する。図18に示すように、第2フォーカスエラー信号のS字状波形の最大ピーク点(S字検出エリアBの終了点)は、第1フォーカスエラー信号のS字状波形の最小ピーク点(S字検出エリアAの開始点)とX方向において同一位置となるように設定されている。従って、ステップS232の判断が行われたときには、第1レーザ光の反射位置がS字検出エリアA内に入っている。このため、S232において「Yes」と判定され、その処理がステップS224に戻される。従って、その間は、管状プローブ280がさらにレーザ光照射方向に移動し測定対象穴hの壁面wに接近していくとともに、各移動位置n・Δxにおける波高値Ia(n),Ib(n)が記憶される。
【0171】
そして、第1レーザ光の反射位置が第1フォーカスエラー信号のS字検出エリアAから外れると、コントローラ300は、ステップS232において「No」と判定し、その処理をステップS234に進める。コントローラ300は、ステップS234において、逐次記憶した波高値Ia(n),Ib(n)と移動位置n・ΔXとの関係(図18に示す関係曲線)から、測定可能範囲の中心位置Xcを計算する。つまり、S字検出エリアBの開始点からS字検出エリアAの終了点までの間の中間位置を計算する。
【0172】
続いて、コントローラ300は、ステップS236において、X方向モータ制御回路383に対して測定可能範囲の中心位置Xcへの移動指令を出力する。これにより、X方向モータ制御回路383は、X方向位置検出回路384が出力するX方向検出位置に基づいて、X方向モータ381を駆動してレーザ光照射装置350を中心位置Xcにまで移動させる。次に、コントローラ300は、ステップS238において、ステージ回転モータ制御回路314に対して回転開始指令を出力する。これにより、ステージ回転モータ制御回路314がステージ回転モータ312を所定回転速度で駆動し、ステージ311の回転が開始される。次に、コントローラ300は、ステップS240において、変数nの値を0にクリアする。
【0173】
続いて、コントローラ300は、ステップS242において、回転角度検出回路315から回転角度θを入力し、ステップS244において、回転角度θが予め設定した極少角度Cを下回るまで、つまり、管状プローブ280の回転角度がほぼ0°となる回転位置に達するまで待機する。そして、回転角度θが予め設定した極少角度Cを下回ると、コントローラ300は、ステップS246において、第1フォーカスエラー信号の波高値Ia(n)と第2フォーカスエラー信号の波高値Ib(n)とをそれぞれ入力し、ステップS248において、2つの波高値Ia(n),Ib(n)から焦点ずれd(n)を算出してメモリ303に記憶する。コントローラ300は、第2実施形態と同様に、各レーザ光の焦点ずれと各フォーカスエラー信号の波高値との関係を表すテーブルをメモリ303に記憶しており、このテーブルを参照して、焦点ずれd(n)を算出する。次に、コントローラ300は、ステップS250において、変数nの値を「1」だけインクリメントし、ステップS252において、この変数nに単位測定角度Δθを乗算した値(n・Δθ)が360°を上回ったか否かを判断する。
【0174】
コントローラ300は、ステップS252において、「No」、つまり、測定対象穴hの円の1周分の焦点ずれを検出していないと判断した場合は、ステップS254において、回転角度検出回路315から回転角度θを入力し、ステップS256において、その回転角度θが、変数nに単位測定角度Δθを乗じた値を越えたか否かを判断する。回転角度θが次の測定ポイントとなる回転角度(n・Δθ)に到達するまでステップS254,S256の処理が繰り返される。そして、回転角度θが次の測定ポイントとなる回転角度(n・Δθ)に到達すると、コントローラ300は、その処理をステップS246に戻し、上述した処理を繰り返す。
【0175】
コントローラ300は、こうした処理を繰り返して、測定対象穴hの1周分の焦点ずれd(n)を記憶すると(S252:Yes)、ステップS258において、ステージ回転モータ制御回路314に対して回転停止指令を出力してステージ311の回転を停止させ、ステップS260において、第1レーザ駆動回路221および第2レーザ駆動回路222に対してレーザ照射停止指令を出力して管状プローブ280からのレーザ光の出射を停止させ、ステップS262において、クロック信号発生回路115に対してクロック信号の出力停止指令を出力してクロック信号発生回路115の作動を停止させる。
【0176】
続いて、コントローラ300は、ステップS264において、焦点ずれd(n)の平均値daveを算出する。次に、ステップS266において、X方向モータ制御回路383に対して、(Xc+dave)の位置へ移動するように指令を出力する。これにより、X方向モータ制御回路383は、X方向位置検出回路384による検出位置に基づいて、管状プローブ280を現在位置Xcからdaveだけ移動させる。従って、この位置は、測定対象穴hの全周を測定するのに最適な位置となる。(Xc+dave)の値は、ステージ311の回転中心軸と管状プローブ280の中心軸との間の軸間距離を表しており、ステップS266において、X方向モータ制御回路383に移動指令を出力したときに、メモリ303に記憶される。
【0177】
続いて、コントローラ300は、ステップS268において、フィードモータ制御回路116に対して逆方向移動開始指令を出力してレーザ光照射装置350を上方向へ移動させる。続いて、ステップS269において、移動量検出回路117から移動量zを入力し、ステップS270において、移動量zに基づいてレーザ光照射装置350が初期位置近傍(極少量D)に達するまで待機し、移動量zが極少量Dを下回ったところで、ステップS272において、フィードモータ制御回路116に対して停止指令を出力してレーザ光照射装置350の移動を停止させる。そして、ステップS274にて本プローブ位置調整ルーチンを終了する。
【0178】
作業者は、本プローブ位置調整ルーチンが終了すると、入力装置101を操作して、穴形状測定ルーチンを開始させる。この場合、穴形状測定ルーチンは、図19A〜図19Cに示す第2実施形態のものと同一であるが、測定体OBと管状プローブ280との位置決めは完了しているので、ステップS302,S304の処理は省略する。また、ステップS366において、測定対象穴hの3次元座標データを計算する場合には、管状プローブ280の中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離(第1,第2実施形態における距離F)に、ステップS266において管状プローブ280が移動した距離(Xc+dave)、つまり、ステージ311の回転中心軸と管状プローブ280の中心軸との間の軸間距離を加算した値を、新たな距離Fとして使用する。
【0179】
このプローブ位置調整ルーチンを実行して、管状プローブ280と測定対象穴hとの相対位置を設定するコントローラ300の処理が本発明の測定位置設定手段に相当する。また、管状プローブ280を原点位置から移動させる位置(Xc+dave)を算出し、その位置を軸間距離として記憶するステップS234,S264,S266が本発明の軸間距離検出手段に相当する。
【0180】
以上説明した第3実施形態の穴形状測定装置は、管状プローブ280におけるレーザ光照射位置(ミラー82の位置)と測定対象穴hの壁面wとの距離を一定にしておき、測定体OBを測定対象穴hの中心軸周りに回転させたときに得られる焦点ずれd(n)から穴形状測定を行うため、種々の径の測定対象穴hを精度良く測定することができる。しかも、第2実施形態と同様に、S字状波形が測定距離方向にずれた2つのフォーカスエラー信号を使って焦点ずれを検出するため、高い測定精度を保ったまま測定可能範囲を広くすることができる。
【0181】
また、穴形状測定を行う前の管状プローブ280の位置調整にあたっては、管状プローブ280をレーザ光の照射する方向、つまり、測定対象穴hの壁面wに向かう方向に進退移動させ、そのときに得られるフォーカスエラー信号に基づいて、管状プローブ280の位置を自動調整するため調整が容易である。また、そのとき、2つのフォーカスエラー信号から焦点ずれを測定できる測定可能範囲の中心位置Xcを算出し、管状プローブ280をこの中心位置Xcに設定して測定対象穴hの1周分の焦点ずれd(n)を求め、更に、焦点ずれd(n)の平均値dave分だけ管状プローブ280の位置を補正するため、管状プローブ280と測定対象穴hとの位置関係を最適にすることができる。これらの結果、焦点ずれd(n)を使って高精度に穴形状を測定することができ、しかも、測定不能となる個所が発生してしまうことを防止できる。
【0182】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0183】
例えば、第1、第2実施形態においては、ステージ11の位置と傾きとの調整により管状プローブ80,180の中心軸と測定対象穴hの中心軸とを一致させる構成を採用しているが、測定体OBの全てが、測定対象穴hの中心軸がステージ11に対して垂直になるものであれば、ステージ11を傾斜させる構成を削除してもよい。この場合には、システムの簡略化によりコストダウンを図ることもできる。また、管状プローブ80,180を回転させる構成に代えて、ステージ11を管状プローブ80,180の中心軸回りに回転させる構成を採用することもできる。
【0184】
また、第1、第2実施形態においては、測定対象穴hと管状プローブ80,180との位置関係を調整するに当たって、ステージ駆動装置10によりステージ11の水平位置と傾きとを調整する構成を採用しているが、これに代えて、レーザ光照射装置50,250の水平位置と傾きとを調整する構成を採用することもできる。また、第1〜第3実施形態においては、レーザ光照射装置50,150,250,350を上下方向に移動させることにより、管状プローブ80,180,280を測定対象穴h内に挿入させる構成を採用しているが、これに代えて、ステージ11,311を上下方向に移動させて管状プローブ80,180,280が測定対象穴h内に挿入する構成を採用することもできる。
【0185】
要するに、測定対象穴と管状プローブとにおける軸方向(本実施形態では上下方向)の相対位置関係、その軸に直交する径方向(本実施形態では水平方向)の相対位置関係、軸回りの回転方向の相対位置関係を変更できる構成であれば、どちらを移動させるものであってもよく、どちらも同じ作用効果が得られる。
【0186】
また、第1実施形態においては、S字検出距離の異なる2つのフォーカスエラー信号を選択使用する構成を採用しているが、受光光学系,フォトディテクタ,フォーカスエラー信号生成回路をそれぞれ3つ以上設けて、S字検出距離の異なる3つ以上のフォーカスエラー信号を選択使用する構成を採用することもできる。この場合には、測定対象穴hの壁面wの凹凸の程度や、上端から下端までのあいだの穴径の変化の程度に大きな差があっても、最適なS字検出距離のフォーカスエラー信号を選択することで広範囲な測定が可能となる。
【0187】
また、第1実施形態の変形例においては、管状プローブ180の外管183outを回転させることにより対物レンズ81とミラー82との光軸方向の間隔を変更する構成を採用しているが、例えば、外管183outをその軸線方向にそってスライド移動させる構成など、回転方式とは異なる方式を採用する事もできる。また、この変形例の管状プローブ180を第2実施形態の穴形状測定装置、あるいは、第3実施形態の穴形状測定装置に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】第1実施形態に係る穴形状測定装置の概略システム構成図である。
【図2】第1実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成図である。
【図3】フォーカスエラー信号の波形図である。
【図4】第1実施形態に係る2つのフォーカスエラー信号の波形図である。
【図5】第1実施形態に係るステージの移動位置とフォーカスエラー信号の波高値との関係を測定する方法を説明する説明図である。
【図6】第1実施形態に係る管状プローブの中心軸からレーザ光の焦点位置までの距離を測定する方法を説明する説明図である。
【図7】第1実施形態に係る測定対象穴の壁面の3次元座標を表す説明図である。
【図8A】第1実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図8B】第1実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図8C】第1実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図8D】第1実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図8E】第1実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図8F】第1実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図9】第1実施形態に係る測定対象穴の傾きを計算する方法を説明する説明図である。
【図10】第1実施形態に係る測定対象穴のXY方向のずれ量を計算する方法を説明する説明図である。
【図11】第1実施形態に係る測定対象穴のプロファイルとステージ駆動装置のX,Y軸を一致させるための試料の斜視図である。
【図12】第1実施形態に係る測定対象穴のプロファイルとステージ駆動装置のX,Y軸のずれ角を表す説明図である。
【図13】第1実施形態の変形例に係るレーザ光照射装置の概略構成図である。
【図14】第1実施形態の変形例に係るレーザ光照射装置の機能を説明する説明図である。
【図15】第2実施形態に係る穴形状測定装置の概略システム構成図である。
【図16】第2実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成図である。
【図17】第2実施形態に係るレーザ光照射装置の機能を説明する説明図である。
【図18】第2実施形態に係るフォーカスエラー信号の波形図である。
【図19A】第2実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図19B】第2実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図19C】第2実施形態に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【図20】第3実施形態に係る穴形状測定装置の概略システム構成図である。
【図21】第3実施形態に係る穴形状測定の原理を説明する説明図である。
【図22A】第3実施形態に係るプローブ位置調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図22B】第3実施形態に係るプローブ位置調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図22C】第3実施形態に係るプローブ位置調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図23】第1実施形態の変形例に係る穴形状測定ルーチンを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0189】
10…ステージ駆動装置、11,311…ステージ、12…X方向モータ、13…Y方向モータ、14…X角度モータ、15…Y角度モータ、12a,13a,14a,15a…エンコーダ、22…X方向モータ制御回路、23…Y方向モータ制御回路、24…X角度モータ制御回路、25…Y角度モータ制御回路、32…X方向位置検出回路、33…Y方向位置検出回路、34…X角度検出回路、35…Y角度検出回路、50,150,250,350…レーザ光照射装置、62,262,283…レーザ光源、63,263,284…コリメートレンズ、67,68,269,270…集光レンズ、69,70,271,272…シリンドリカルレンズ、71,72,291,292…フォトディテクタ、73…プローブ回転機構、74…プローブ回転モータ、74a…エンコーダ、80,180,280…管状プローブ、81,281…対物レンズ、82…ミラー、83…管本体、90…Z方向駆動装置、92…フィードモータ、92a…エンコーダ、100,200,300…コントローラ、101…入力装置、102…表示装置、103,203,303…メモリ、111,112,231,232…フォーカスエラー信号生成回路、113…信号選択スイッチ、116…フィードモータ制御回路、117…移動量検出回路、118…プローブ回転モータ制御回路、119…回転角度検出回路、120,221,222…レーザ駆動回路、183…管本体、183out…外管、183in…内管、183b…雌ネジ、183a…雄ネジ、184…ネジ部、267…ダイクロイックミラー、281a…回折格子、310…ステージ回転装置、312…ステージ回転モータ、312a…エンコーダ、313…回転軸、314…ステージ回転モータ制御回路、315…回転角度検出回路、380…X方向駆動装置、381…X方向モータ、381a…エンコーダ、383…X方向モータ制御回路、384…X方向位置検出回路、w…壁面、h…測定対象穴、OB…測定体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光出射手段と、
測定対象穴に挿入される管状体であって、先端に前記レーザ光出射手段から出射したレーザ光を集光させる対物レンズとレーザ光の進行方向を前記測定対象穴の壁面に向かうように変える反射部材とを備え、前記レーザ光出射手段から出射したレーザ光と前記測定対象穴の壁面で反射した反射光とが通過する通路となる管状プローブと、
前記管状プローブを通過して戻った前記反射光を受光し、受光状態に応じた信号を出力する光検出器と、
前記対物レンズにより集光されるレーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対応して、前記光検出器に受光される反射光の受光状態を変化させる受光光学系と、
前記光検出器が出力する信号に基づいて、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量を検出する焦点ずれ量検出手段と、
前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を前記管状プローブの中心軸方向に変化させる移動手段と、
前記管状プローブを前記管状プローブの中心軸周りに回転させる、あるいは、前記測定対象穴を前記測定対象穴の中心軸回りに回転させる回転手段と、
前記移動手段により前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置が基準相対位置から変化した移動量を検出する移動量検出手段と、
前記回転手段により前記管状プローブあるいは前記測定対象穴が基準回転位置から回転した回転角度を検出する回転角度検出手段と、
前記移動手段と前記回転手段とを作動させながら、前記焦点ずれ量検出手段が検出する前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量と、前記移動量検出手段が検出する移動量と、前記回転角度検出手段が検出する回転角度とを取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得した前記ずれ量と前記移動量と前記回転角度とに基づいて、前記測定対象穴の形状データを算出する穴形状算出手段と
を備えた穴形状測定装置。
【請求項2】
前記受光光学系は、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対する受光状態の変化が大きい第1受光光学系と、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対する受光状態の変化が小さい第2受光光学系との少なくとも2種類の受光光学系を備え、
前記光検出器は、前記第1受光光学系を介して反射光を受光する第1光検出器と、前記第2受光光学系を介して反射光を受光する第2光検出器との少なくとも2つの光検出器を備え、
前記焦点ずれ量検出手段は、少なくとも前記第1光検出器が出力する信号と前記第2光検出器が出力する信号とを選択可能な受光信号選択手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の穴形状測定装置。
【請求項3】
前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を前記管状プローブの中心軸と直交する少なくとも2方向に変化させるプローブ位置可変手段と、
前記受光信号選択手段により前記第2光検出器が出力する信号を選択した状態で前記回転手段を作動させ、その回転作動中に前記回転角度検出手段により検出された回転角度と前記焦点ずれ量検出手段により検出された前記ずれ量とから前記レーザ光が壁面に照射された照射軌跡となる前記測定対象穴の1周における円形状プロファイルを算出し、前記算出した円形状プロファイルから前記測定対象穴の照射位置における円の中心位置を検出する中心位置検出手段と、
前記プローブ位置可変手段を作動させて、前記管状プローブを前記中心位置検出手段により検出された中心位置にセットするプローブ位置制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項2記載の穴形状測定装置。
【請求項4】
前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を前記管状プローブの中心軸と直交する少なくとも2方向の軸回りに変化させるプローブ傾斜可変手段と、
前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置が前記管状プローブの中心軸方向に異なる少なくとも2つの照射位置において、前記中心位置検出手段を使って前記測定対象穴の円の中心位置を取得し、前記取得した少なくとも2つの照射位置における前記測定対象穴の円の中心位置に基づいて、前記測定対象穴の中心軸に対する前記管状プローブの中心軸の傾きを算出する傾斜検出手段と、
前記傾斜検出手段により検出された前記傾きに基づいて、前記プローブ傾斜可変手段を作動させて前記測定対象穴の中心軸方向と前記管状プローブの中心軸方向とを一致させるプローブ傾斜制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項3記載の穴形状測定装置。
【請求項5】
前記対物レンズは、2つの異なる焦点位置を有する2焦点レンズであり、
前記2焦点レンズにより一方の焦点位置で集光したレーザ光の前記測定対象穴の壁面からの反射光と、他方の焦点位置で集光したレーザ光の前記測定対象穴の壁面からの反射光とを分離する光分離手段を備え、
前記光検出器と前記受光光学系とは、それぞれ前記光分離手段により分離された反射光を別々に受光するように2組設けられ、
前記焦点ずれ量検出手段は、前記2組の光検出器が出力する信号に基づいて、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量を検出することを特徴とする請求項1記載の穴形状測定装置。
【請求項6】
前記管状プローブは、前記対物レンズと前記反射部材との間隔を調整する間隔調整手段を備えたこと特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項記載の穴形状測定装置。
【請求項7】
前記間隔調整手段により調整された前記対物レンズと前記反射部材との間隔を測定するための目盛表示部と、
前記対物レンズと前記反射部材との間隔に対応した間隔データを入力し、前記間隔データに基づいて前記管状プローブの中心軸から前記レーザ光の焦点位置までの距離を算出する焦点位置算出手段と
を備えたことを特徴とする請求項6記載の穴形状測定装置。
【請求項8】
前記回転手段は、回転テーブルを備え、前記測定対象穴を形成した測定体を、前記回転テーブルの回転軸と前記測定対象穴の中心軸とが合致するように前記回転テーブルにセットした状態で前記回転テーブルを回転させるものであり、
前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を、前記管状プローブの先端から前記測定対象穴の壁面に向けて出射するレーザ光の出射方向に変化させるプローブ位置可変手段と、
前記プローブ位置可変手段により前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を変化させながら、前記焦点ずれ量検出手段により前記ずれ量が検出できる前記相対位置を検出し、前記検出した相対位置を前記測定対象穴の測定時における前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置として設定する測定位置設定手段と、
前記測定位置設定手段により設定された相対位置における、前記回転テーブルの回転軸と前記管状プローブの中心軸との間の距離である軸間距離を検出する軸間距離検出手段と
を備え、
前記穴形状算出手段は、前記軸間距離検出手段により検出した軸間距離を加味して前記測定対象穴の形状データを算出することを特徴とする請求項1または5記載の穴形状測定装置。
【請求項9】
前記測定位置設定手段は、前記プローブ位置可変手段により前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置関係を変化させながら、前記焦点ずれ量検出手段により前記ずれ量が検出できる前記相対位置の範囲を検出し、前記検出した相対位置の範囲の中心位置に基づいて、前記測定対象穴の測定時における前記管状プローブと前記測定対象穴との相対位置を設定することを特徴とする請求項8記載の穴形状測定装置。
【請求項10】
先端に対物レンズと反射部材とを設けた管状プローブを測定対象穴に挿入し、前記管状プローブの先端から、レーザ光をその照射位置が測定対象穴の壁面を螺旋状に移動するように出射させる照射ステップと、
前記レーザ光が測定対象穴の壁面で反射した反射光を前記管状プローブに通過させて受光し、前記対物レンズにより集光されるレーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対応した信号を光検出器に出力させる光検出ステップと、
前記光検出ステップにより出力される信号から、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量を検出する焦点ずれ量検出ステップと、
前記照射ステップによりレーザ光が前記測定対象穴の壁面に照射される照射位置と、前記焦点ずれ量検出ステップにより検出される前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量とを取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにより取得した照射位置とずれ量とに基づいて、前記測定対象穴の形状を算出する穴形状算出ステップと
を含む穴形状測定方法。
【請求項11】
前記光検出ステップは、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対して変化が大きい第1信号と、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に対して変化が小さい第2信号との少なくとも2種類の信号を出力し、
前記焦点ずれ量検出ステップは、前記第1信号と前記第2信号とを含む複数の信号から1つの信号を選択して、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量を検出することを特徴とする請求項10記載の穴形状測定方法。
【請求項12】
前記対物レンズとして、2つの異なる焦点位置を有する2焦点レンズを使用し、
前記光検出ステップは、前記2焦点レンズにより一方の焦点位置で集光したレーザ光の前記測定対象穴の壁面からの反射光と、他方の焦点位置で集光したレーザ光の前記測定対象穴の壁面からの反射光とを分離し、それぞれ分離した反射光における焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量に応じた信号を別々に出力させるものであり、
前記焦点ずれ量検出ステップは、前記光検出ステップにより別々に出力された信号に基づいて、前記レーザ光の焦点位置と前記測定対象穴の壁面での反射位置とのずれ量を検出することを特徴とする請求項10記載の穴形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−101731(P2010−101731A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272956(P2008−272956)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】