説明

自走式ロボット

【課題】 自走式ロボットの周囲の障害物を正確に検出する。
【解決手段】 進行方向V1に対して、超音波発信器s2を中心として、等間隔に、3台の超音波発信器と4台の超音波受信器とが交互に配設されている。ここでは、進行方向V1に向かって左側から、超音波受信器r1、超音波発信器s1、超音波受信器r2、超音波発信器s2、超音波受信器r3、超音波発信器s3、超音波受信器r4の順に配設されている。また、本体部10の中心点Oを通り、進行方向V1に平行な直線である中心線LSについて、3台の超音波発信器と4台の超音波受信器とが線対称な位置に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1の車輪の駆動軸を所定の回転速度で回転させる駆動手段と、進行方向を自在に設定する操舵手段とを備え、所定の領域内を走行する自走式ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、室内の床面の掃除を行う掃除ロボット等の所定の領域内を略均一に走行する自走式ロボットが知られている。ここで、所定の領域内において、自走式ロボットを略均一に走行させるためには、自走式ロボットの進行方向にある障害物を正確に検知する必要があり、この障害物を検知する方法について種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、4個の送信用超音波センサと5個の受信用超音波センサとを交互に配置し、1つの送信用超音波センサと両隣の2つの受信用超音波センサとの組み合わせで障害物検知を行い、しかもこの組み合わせを一定の時間間隔で順次切り換えて障害物検知を行うことにより、前方、左右の広い範囲にわたって障害物を検知する障害物検知装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−35774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている障害物検知装置では、前方正面の障害物の検出が2個の送信用超音波センサ(特許文献1の図5における送信用超音波センサS2、S3)からの超音波を用いて行われるため、前方正面の障害物を2つの受信用超音波センサで略同時に測定することは困難であり、前方正面の障害物の検出精度が充分ではない場合があった。
【0005】
すなわち、自走式ロボットは、所定の領域内を移動しながら障害物を検知する必要があるが、障害物検知を行うタイミングが異なると、その間に自走式ロボットが移動するため、その移動量に応じた測定誤差が発生するのである。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、周囲の障害物を正確に検出することの可能な自走式ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の自走式ロボットは、少なくとも1の車輪の駆動軸を所定の回転速度で回転させる駆動手段と、進行方向を自在に設定する操舵手段とを備え、所定の領域内を走行する自走式ロボットであって、自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線の近傍に配設され、自走式ロボットの進行方向に向けて信号を発信する第1発信手段と、前記第1発信手段によって発信された信号であって、前記所定の領域の外縁において反射した反射信号を受信する第1受信手段と、前記第1発信手段によって発信された信号が前記第1受信手段によって受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと前記所定の領域の外縁との間の距離を求める距離算出手段とを備え、前記第1受信手段が、前記中心線の両側に配設されていることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線の近傍に配設された第1発信手段によって、自走式ロボットの進行方向に向けて信号が発信され、第1受信手段によって、第1発信手段により発信された信号であって、所定の領域の外縁において反射した反射信号が受信される。そして、距離算出手段によって、第1発信手段により発信された信号が第1受信手段によって受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められる。ここで、第1受信手段は、自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線の両側に配設されている。
【0009】
従って、中心線の近傍に配設された第1発信手段によって、自走式ロボットの進行方向に向けて信号が発信され、中心線の両側に配設された第1受信手段によって、第1発信手段により発信された信号であって、所定の領域の外縁において反射した反射信号が受信されるため、1のタイミングで第1発信手段により発信された信号を用いて前方正面の少なくとも2方向について、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められ、前方正面の障害物が正確に検出される。
【0010】
請求項2に記載の自走式ロボットは、前記第1受信手段が、前記中心線に対して略線対称な位置に配設されていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、第1受信手段が、自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線に対して略線対称な位置に配設されているため、1のタイミングで第1発信手段により発信された信号を用いて前方正面の少なくとも2方向について、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められ、前方正面の障害物が更に正確に検出される。
【0012】
請求項3に記載の自走式ロボットは、前記第1受信手段が、前記中心線の両側にそれぞれ1個だけ配設されていることを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、第1受信手段が、自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線の両側にそれぞれ1個だけ配設されているため、簡単な構成で、前方正面の障害物が正確に検出される。
【0014】
請求項4に記載の自走式ロボットは、前記中心線に対して略線対称な位置に配設され、前記中心線から離間する方向に信号を発信する第2発信手段と、前記第2発信手段から発信された信号であって、前記所定の領域の外縁において反射した反射信号を受信する第2受信手段とを備え、前記距離算出手段が、前記第2発信手段によって発信された信号が前記第2受信手段によって受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと前記所定の領域の外縁との間の距離を求めることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、中心線に対して略線対称な位置に配設された第2発信手段によって、中心線から離間する方向に信号が発信され、第2受信手段によって、第2発信手段により発信された信号であって、所定の領域の外縁において反射した反射信号が受信される。そして、距離算出手段によって、第2発信手段により発信された信号が第2受信手段により受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められる。
【0016】
従って、第2発信手段によって中心線から離間する方向に信号が発信され、所定の領域の外縁において反射した反射信号が第2受信手段により受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められるため、中心線から離間する方向の自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が検出される。すなわち、進行方向に対して、左右方向(左右両側)の、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が検出される。
【0017】
請求項5に記載の自走式ロボットは、前記第2発信手段が、前記中心線に対して略線対称な位置に、それぞれ1個だけ配設されていることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、第2発信手段が、中心線に対して略線対称な位置にそれぞれ1個だけ配設されているため、簡単な構成で、中心線から離間する方向の自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が検出される。
【0019】
請求項6に記載の自走式ロボットは、前記第1発信手段及び第2発信手段が、予め設定された順序で順次発信することを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、第1発信手段及び第2発信手段が、予め設定された順序で順次発信されるため、進行方向の前方正面と、進行方向に対して左右方向とに関して、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が順次検出され、適正な検出が行われる。
【0021】
請求項7に記載の自走式ロボットは、前記距離算出手段によって求められた1の距離又は複数の距離の最小値を離間距離として検出する検出手段と、前記所定の領域の外縁に沿って走行させる制御モードである第1モードでの走行をさせるべく、前記操舵手段に対して進行方向を指示する第1走行手段と、前記領域内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードである第2モードでの走行をさせるべく、前記離間距離が予め設定された所定値以下となるまで直進し、前記離間距離が予め設定された所定値以下である場合に直進を停止して前記操舵手段に対して進行方向を所定方向に変更させる第2走行手段と、前記第2モードで走行中の直進走行開始から停止までの時間である直進走行時間を測定する直進時間測定手段と、2以上の所定回数分の直進走行時間を格納する直進時間記憶手段と、前記第1モードと第2モードとを切り換える切換手段とを備え、前記切換手段が、前記所定回数分の直進走行時間が所定の条件を満たす場合に、前記第2モードを前記第1モードへ切り換えることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、検出手段によって、距離算出手段によって求められた1の距離又は複数の距離の最小値が離間距離として検出される。そして、第1走行手段によって、所定の領域の外縁に沿って走行させる制御モードである第1モードでの走行をさせるべく、操舵手段に対して進行方向が指示され、第2走行手段によって、所定の領域内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードである第2モードでの走行をさせるべく、離間距離が予め設定された所定値以下となるまで直進し、離間距離が予め設定された所定値以下である場合に直進を停止して操舵手段に対して進行方向が所定方向に変更される。また、直進時間測定手段によって、第2モードで走行中の直進走行開始から停止までの時間である直進走行時間が測定され、直進時間記憶手段に、2以上の所定回数分の直進走行時間が格納される。更に、切換手段によって、所定回数分の直進走行時間が所定の条件を満たす場合に、第2モードが第1モードへ切り換えられる。
【0023】
従って、所定の領域内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードである第2モードで走行中の、2以上の所定回数分の直進走行開始から停止までの時間である直進走行時間が所定の条件を満たす場合に、制御モードが第2モードから、所定の領域の外縁に沿って走行させる制御モードである第1モードへ切り換えられるため、所定の領域内の外縁が複雑な形状である場合であっても、適度な頻度で第1モードへ切り換られ、所定の領域内を略均一に走行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、中心線の近傍に配設された第1発信手段によって、自走式ロボットの進行方向に向けて信号が発信され、中心線の両側に配設された第1受信手段によって、第1発信手段により発信された信号であって、所定の領域の外縁において反射した反射信号が受信されるため、1のタイミングで第1発信手段により発信された信号を用いて前方正面の少なくとも2方向について、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められ、前方正面の障害物を正確に検出できる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、第1受信手段が、自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線に対して略線対称な位置に配設されているため、1のタイミングで第1発信手段により発信された信号を用いて前方正面の少なくとも2方向について、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められ、前方正面の障害物を更に正確に検出できる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、第1受信手段が、自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線の両側にそれぞれ1個だけ配設されているため、簡単な構成で、前方正面の障害物を正確に検出できる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、第2発信手段により中心線から離間する方向に信号が発信され、所定の領域の外縁において反射した反射信号が第2受信手段により受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が求められるため、中心線から離間する方向の自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離を検出できる。すなわち、進行方向に対して、左右方向(左右両側)の、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離を検出できる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、第2発信手段が、中心線に対して略線対称な位置にそれぞれ1個だけ配設されているため、簡単な構成で、中心線から離間する方向の自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離を検出できる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、第1発信手段及び第2発信手段が、予め設定された順序で順次発信されるため、進行方向の前方正面と、進行方向に対して左右方向とに関して、自走式ロボットと所定の領域の外縁との間の距離が順次検出され、適正に検出を行うことができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、所定の領域内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードである第2モードで走行中の、2以上の所定回数分の直進走行開始から停止までの時間である直進走行時間が所定の条件を満たす場合に、制御モードが第2モードから、所定の領域の外縁に沿って走行させる制御モードである第1モードへ切り換えられるため、所定の領域内の外縁が複雑な形状である場合であっても、適度な頻度で第1モードへ切り換られ、所定の領域内を略均一に走行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1、2は、それぞれ、本発明に係る掃除ロボット(自走式ロボットに相当する)の一例を示す底面図及び斜視図である。ここでは、室内(所定の領域に相当する)の床面上の集塵を行う掃除ロボットについて説明する。掃除ロボット1は、略円筒形に構成された本体部10と、本体部10を床面に対して走行させる駆動部11(駆動手段、操舵手段に相当する)と、壁面(又は、障害物)との距離を測定する距離センサ12(第1発信手段の一部、第2発信手段の一部、第1受信手段の一部及び第2受信手段の一部に相当する)と、壁面(又は、障害物)との接触を検出するバンパ13と、床面を集塵する集塵部14と、本体部10を床面に対して略平行に支持する補助輪15と、壁面(又は、障害物)近傍の塵を本体部10側へ移動させるサイドブラシ16と、掃除ロボット1全体の動作を制御する制御部17(図示省略:図3参照)とを備えている。
【0032】
駆動部11は、進行方向V1に対して直行する方向の本体部10略両端位置に回転自在に軸支された駆動輪111a、111bと、駆動輪111a、111bをそれぞれ駆動するモータ113a、113bと、モータ113a、113bの回転速度を減速して駆動輪111a、111bにそれぞれ伝達する減速機112a、112bとを備えている。また、モータ113a、113bの適所には、モータ113a、113bの回転速度をそれぞれ検出するエンコーダ115a、115bが配設されている(図示省略)。
【0033】
距離センサ12は、超音波センサであって、3台の超音波発信器121(第1発信手段の一部及び第2発信手段の一部に相当する)と、4台の超音波受信器122(第1受信手段の一部及び第2受信手段の一部に相当する)とが交互に略等間隔にバンパ13に埋設されて構成されている。3台の超音波発信器121から発信された超音波を隣接する各2台の超音波受信器122で受信して、超音波発信器121による超音波信号の送信開始から超音波受信器122による超音波信号の受信開始までの時間に基づいて、壁面(又は、障害物)との距離を検出するものである。
【0034】
バンパ13は、本体部10の進行方向V1側に沿って半円筒形に形成され、図略のタッチセンサ131によって壁面(又は、障害物)との接触を検出するものである。
【0035】
集塵部14は、床面に対向して配設され、床面上の塵が吸入される集塵口141と、集塵口141からの塵を収納する集塵ボックス142と、集塵口141から塵を吸入するべく集塵ボックス142を負圧とするファン143とを備えている。
【0036】
補助輪15は、本体部10の底面を床面に対して略平行に支持するべく、本体部10の底面に回転自在に軸支され、進行方向V1について前方側と後方側とにそれぞれ1個及び2個だけ配設されている。
【0037】
サイドブラシ16は、壁面(又は、障害物)近傍の塵を、集塵口141から吸入可能な位置まで移動させるものである。すなわち、図4(a)にて後述するように、壁沿い走行をする場合には、進行方向V1に対して左側に壁面(又は、障害物)から所定距離(例えば、20mm)で離間して走行されるため、サイドブラシ16によって、壁面(又は、障害物)近傍の塵を、集塵口141から吸入可能な位置まで移動させる必要がある。
【0038】
図3は、掃除ロボット1の主要部の一例を示す構成図である。制御部17は、種々の処理を行うCPU(Central Processing Unit)171と、種々のデータを格納するRAM(Random Access Memory)172とを備えている。
【0039】
CPU171は、機能的に、掃除ロボット1の進行方向に向けて信号を発信する第1発信部171a(第1発信手段の一部に相当する)と、進行方向に対して左右方向に信号を発信する第2発信部171b(第2発信手段の一部に相当する)と、第1発信部171aにより発信された信号を受信する第1受信部171c(第1受信手段の一部に相当する)と、第2発信部171bにより発信された信号を受信する第2受信部171d(第2受信手段の一部に相当する)と、発信時刻から受信時刻までの経過時間を用いて壁面(又は、障害物)との距離を求める距離算出部171eと(距離算出手段に相当する)を備えている。
【0040】
また、CPU171は、機能的に、距離算出部171eによって求められた1の距離又は複数の距離の最小値である離間距離を検出する検出部171f(検出手段に相当する)と、壁面(又は、障害物)に沿って走行させる制御モードである壁沿いモード(第1モードに相当する)での走行をさせるべく、モータ113a、113bに対して進行方向を指示する壁沿い走行部171g(第1走行手段に相当する)と、室内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードであるランダムモード(第2モードに相当する)での走行をさせるべく、離間距離が予め設定された所定値以下となるまで直進し、離間距離が予め設定された所定値以下である場合に直進を停止してモータ113a、113bに対して進行方向を所定方向に変更させるランダム走行部171h(第2走行手段に相当する)とを備えている。
【0041】
更に、CPU171は、機能的に、ランダムモードで走行中の直進走行開始から停止までの時間である直進走行時間を測定する直進時間測定部171i(直進時間測定手段に相当する)と、壁沿いモードとランダムモードとを切り換える切換部171j(切換手段に相当する)と、ランダムモードでの走行時間が予め設定された所定時間に到達していない場合に、切換部171jの動作を禁止する禁止部171kと、集塵に関する制御を行うクリーナ制御部171mとを備えている。RAM172は、機能的に、2以上の所定回数(ここでは、3回)分の直進走行時間を格納する直進時間記憶部172a(直進時間記憶手段に相当する)を備えている。
【0042】
第1発信部171aは、検出部171fからの指示に基づき、図4(b)に示す所定の発信時間Ts2だけ、超音波発信器121(図4に示す中心線LS上に配設された超音波発信器s2)を介して、掃除ロボット1の進行方向に向けて所定の拡り角θs(図5参照)の超音波信号を発信するものである。
【0043】
第2発信部171bは、検出部171fからの指示に基づき、図4(b)に示す所定の発信時間Ts1だけ、超音波発信器121(図4に示す中心線LSに対して左側に配設された超音波発信器s1)を介して、掃除ロボット1の進行方向に対して左方向に向けて所定の拡り角θs(図5参照)の超音波信号を発信するものである。また、第2発信部171bは、検出部171fからの指示に基づき、図4(b)に示す所定の発信時間Ts3だけ、超音波発信器121(図4に示す中心線LSに対して右側に配設された超音波発信器s3)を介して、掃除ロボット1の進行方向に対して右方向に向けて所定の拡り角θs(図5参照)の超音波信号を発信するものである。
【0044】
第1受信部171cは、第1発信部171aにより超音波発信器s2を介して発信され、壁面(又は、障害物)で反射された反射信号の内、受信可能な角θr(図5参照)内の反射信号を、検出部171fからの指示に基づき、超音波受信器122(図4に示す中心線LSの左右に配設された超音波受信器r2、r3)を介して、図4(b)に示す所定の受信時間Tr2だけ受信するものである。
【0045】
第2受信部171dは、第2発信部171bにより超音波発信器s1を介して発信され、壁面(又は、障害物)で反射された反射信号の内、受信可能な角θr(図5参照)内の反射信号を、検出部171fからの指示に基づき、超音波受信器122(図4に示す中心線LSの左側に配設された超音波受信器r1、r2)を介して、図4(b)に示す所定の受信時間Tr1だけ受信するものである。また、第2受信部171dは、第2発信部171bにより超音波発信器s3を介して発信され、壁面(又は、障害物)で反射された反射信号の内、受信可能な角θr(図5参照)内の反射信号を、検出部171fからの指示に基づき、超音波受信器122(図4に示す中心線LSの右側に配設された超音波受信器r3、r4)を介して、図4(b)に示す所定の受信時間Tr3だけ受信するものである。
【0046】
距離算出部171eは、第1発信部171aによる発信時刻から第1受信部171cによる受信時刻までの経過時間を用いて壁面(又は、障害物)との距離を求めると共に、第2発信部171bによる発信時刻から第2受信部171dによる受信時刻までの経過時間を用いて壁面(又は、障害物)との距離を求めるものである。
【0047】
具体的には、距離算出部171eは、第1発信部171aによる超音波発信器s2からの発信時刻から第1受信部171cによる超音波受信器r2、r3での受信時刻までの経過時間を用いて進行方向正面前方の壁面(又は、障害物)との距離を求めるものである。
【0048】
また、距離算出部171eは、第2発信部171bによる超音波発信器s1からの発信時刻から第2受信部171dによる超音波受信器r1、r2での受信時刻までの経過時間を用いて進行方向左側の壁面(又は、障害物)との距離L11、L12(図5参照)を求めると共に、第2発信部171bによる超音波発信器s3からの発信時刻から第2受信部171dによる超音波受信器r3、r4での受信時刻までの経過時間を用いて進行方向右側の壁面(又は、障害物)との距離を求めるものである。
【0049】
検出部171fは、バンパ13に配設された3台の超音波発信器121と4台の超音波受信器122とを介して第1発信部171a、第2発信部171b、第1受信部171c及び第2受信部171dに対して指示情報を出力して、距離算出部171eによって検出された1の距離又は複数の距離の最小値を離間距離として検出するものである。以下、図4を用いて具体的に説明する。図4は、検出部171fの動作の一例を示す説明図である。
【0050】
(a)は、センサの配置と検出される距離との関係を示す平面図であり、(b)は、3台の超音波発信器121と4台の超音波受信器122との動作タイミングを示すタイミングチャートである。(a)に示すように、進行方向V1に対して、超音波発信器s2を中心(進行方向V1の先端位置)として、等間隔に、3台の超音波発信器121と4台の超音波受信器122とが交互に配設されている。ここでは、進行方向V1に向かって左側から、超音波受信器r1、超音波発信器s1、超音波受信器r2、超音波発信器s2、超音波受信器r3、超音波発信器s3、超音波受信器r4の順に配設されているものする。
【0051】
また、ここでは、本体部10の中心点Oを通り、進行方向V1に平行な直線である中心線LSについて、3台の超音波発信器121と4台の超音波受信器122とが線対称な位置に配設されている。具体的には、例えば、超音波発信器s1と超音波発信器s3とが中心線LSについて線対称な位置に配設され、また、超音波受信器r1と超音波受信器r4とが中心線LSについて線対称な位置に配設されている。
【0052】
ここでは、掃除ロボット1は、進行方向V1の左側に壁面Wが進行方向V1と平行に存在している場合について説明する。超音波発信器s1から発信された超音波が壁面Wで反射して超音波受信器r1及び超音波受信器r2に到達するが、その伝搬距離から、本体部10と壁面Wとの距離L11及びL12がそれぞれ求められる。ここでは、距離L11が距離L12より小さいため、検出部171fによって距離L11が離間距離として検出される。
【0053】
また、(b)に示すように、検出部171fから第1発信部171a、第2発信部171b、第1受信部171c及び第2受信部171dに対する指示情報に基づいて以下の動作が実行される。まず、所定の発信時間Ts1(例えば、2msec)だけ超音波発信器s1から超音波が発信され、超音波発信器s1からの超音波の発信が開始されてから所定の受信時間Tr1(例えば、4msec)だけ、超音波受信器r1及び超音波受信器r2で受信される。そして、超音波受信器r1及び超音波受信器r2での受信が停止されてから所定の休止時間(例えば、1msec)後に、所定の発信時間Ts2(例えば、2msec)だけ超音波発信器s2から超音波が発信され、超音波発信器s2からの超音波の発信が開始されてから所定の受信時間Tr2(例えば、4msec)だけ、超音波受信器r2及び超音波受信器r3で受信される。
【0054】
次いで、超音波受信器r2及び超音波受信器r3での受信が停止されてから所定の休止時間(例えば、1msec)後に、所定の発信時間Ts3(例えば、2msec)だけ超音波発信器s3から超音波が発信され、超音波発信器s3からの超音波の発信が開始されてから所定の受信時間Tr3(例えば、4msec)だけ、超音波受信器r3及び超音波受信器r4で受信される。そして、超音波受信器r3及び超音波受信器r4での受信が停止されてから所定の休止時間(例えば、1msec)後に、所定の発信時間Ts1(例えば、2msec)だけ超音波発信器s1から超音波が発信され、上記の動作が繰り返し実行される。
【0055】
このように、中心線LSの両側に配設された超音波受信器r2及び超音波受信器r3によって、超音波発信器s2から発信された超音波信号であって、壁面Wにおいて反射した反射信号が受信されるため、1のタイミングで超音波発信器s2から発信された超音波信号を用いて前方正面の2方向について、掃除ロボット1と壁面Wとの間の距離が求められ、前方正面の障害物が正確に検出されるのである。
【0056】
ここで、超音波発信器121から発信される超音波の大気中での伝搬速度を340m/secとすると、受信時間Tr1〜Tr3が4msecである場合には、本体部10からの距離が略680mm以下の範囲に壁面Wが存在すれば、超音波発信器121から発信された超音波が超音波受信器122で受信されるため、本体部10と壁面Wとの距離が原理的には検出され得る。しかし、ここでは、便宜上、距離算出部171eによって算出された本体部10と壁面Wとの距離が200mmを超える場合には、検出可能な壁面Wが存在しないものとしている。
【0057】
また、ここでは、壁沿い走行を行う場合に、(a)に示すように壁面Wが進行方向V1の左側になるように制御される。更に、壁沿い走行を行う場合に、基準として用いる壁面Wの方向は、離間距離が検出された超音波発信器121と超音波受信器122との組み合わせに応じて予め設定されている。具体的には、(a)に示すように、検出部171fによって距離L11が離間距離として検出される場合には、壁面Wの方向は、距離L11を示す線分と垂直な向き((a)に示す直線LVの向き)であるとして検出される。
【0058】
なお、以下の説明において、超音波発信器si(i=1〜3)から発信された超音波信号を、超音波受信器rj(j=1〜4)で受信することによって求められる壁面Wと本体部10との距離を距離Lijという。
【0059】
再び、図3に戻って、掃除ロボット1の主要部の構成について説明する。壁沿い走行部171gは、壁面(又は、障害物)に沿って走行させる制御モードである壁沿いモードでの走行をさせるべく、モータ113a、113bに対して進行方向を指示するものである。具体的には、検出部171fによって離間距離が検出された超音波発信器121と超音波受信器122との組み合わせに応じて予め設定されている方向(例えば、図4(a)に示す直線LVの向き)に沿って走行させるものである。
【0060】
ランダム走行部171hは、室内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードであるランダムモードでの走行をさせるべく、検出部171fによって検出された離間距離が予め設定された所定値(例えば、20mm)以下となるまで直進し、検出部171fによって検出された離間距離が予め設定された所定値(例えば、20mm)以下である場合に直進を停止して、モータ113a、113bに対して進行方向を所定方向に変更させるものである。具体的には、例えば、離間距離が検出部171fによって検出された方向に対して角度Δθ(=θ0+α)だけ回転させるものである(図7参照)。ただし、角度θ0は、離間距離が検出された超音波発信器121と超音波受信器122との組み合わせに応じて予め設定されている角度である。例えば、超音波発信器s2と超音波受信器r2とによって離間距離が検出された場合には、角度θ0は45度であり、超音波発信器s1と超音波受信器r1とによって離間距離が検出された場合には、角度θ0は22.5度である。また、角度αは、0〜90度の範囲でランダムに設定される(例えば、乱数を発生させて、発生された乱数に基づき設定される)角度である。
【0061】
直進時間測定部171iは、ランダム走行部171hによってランダムモードで走行中において、直進走行開始から停止までの時間である直進走行時間を測定し、測定された直進走行時間を直進時間記憶部172aに格納するものである。すなわち、回転を終了して、直進を開始した時点から、離間距離が予め設定された所定値(ここでは、20mm)以下となって停止される時点までの経過時間である直進走行時間を測定するものである。
【0062】
切換部171jは、所定回数(ここでは、3回)分の直進走行時間が所定の条件(以下、第1の条件という)を満たす場合に、ランダムモードを壁沿いモードへ切り換えるものである。なお、第1の条件は、ここでは、3回分の直進走行時間の和が予め設定された所定の閾値(例えば、3秒)以下であることとしている。
【0063】
また、切換部171jは、壁沿いモードでの走行時間が予め設定された所定時間(例えば、15秒)に到達した(以下、この条件を第2の条件という)場合に、壁沿いモードをランダムモードへ切り換えるものである。すなわち、切換部171jは、第1の条件を満たす場合に、ランダムモードを壁沿いモードへ切り換え、第2の条件を満たす場合に、壁沿いモードをランダムモードへ切り換えるものである。
【0064】
禁止部171kは、ランダムモードの走行時間が予め設定された所定時間(例えば、5分)に到達していない場合に、切換部171jの動作を禁止するものである。すなわち、禁止部171kは、ランダムモードでの走行が開始されると少なくとも5分間以上は必ずランダムモードの走行を継続させるものである。
【0065】
クリーナ制御部171mは、集塵に関する制御を行うものであって、具体的には、図1、2に示すファン143、サイドブラシ16等の制御を行うものである。
【0066】
直進時間記憶部172aは、直進時間測定部171iによって測定された直進走行時間を3回分だけ格納するものである。すなわち、直進時間測定部171iによって、4回目以降の直進走行時間が測定された場合には、直進時間記憶部172aに格納された直進走行時間は、格納された順(=測定された順)に、直進時間測定部171iによって順次上書きされるものである。
【0067】
図5は、超音波受信器122の受信可能な角θrが超音波発信器121の拡り角θsより大きい場合の死角の一例を示す図である。ここでは、受信可能な角θrが150°であり、拡り角θsが120°である場合について示している。(a)は、本願と同様に、中心線LS上に超音波発信器sa(図4の超音波発信器s2に対応する)が配設され、中心線LSについて線対称な位置に超音波受信器ra1、ra2(それぞれ、図4の超音波受信器r2、r3に対応する)が配設されている場合であり、(b)は、中心線LS上に超音波受信器rbが配設され、中心線LSについて線対称な位置に超音波発信器sb1、sb2が配設されている場合である。
【0068】
図の斜線部が検出可能な範囲であり、横線で示す領域BAA、BABが死角である。領域BABより、領域BAAは狭くなっており、超音波受信器122の受信可能な角θrが超音波発信器121の拡り角θsより大きい場合には、(a)に示す配置のほうが(b)に示す配置より、死角が小さくなることが分かる。すなわち、図4に示す本願のセンサ配置は、超音波受信器122の受信可能な角θrが超音波発信器121の拡り角θsより大きい場合には、死角においても良好な配置であることが分かる。
【0069】
図6は、制御部17の動作の一例を示すフローチャートである。まず、ランダム走行部171hによって、ランダムモードでの走行が行われ、タイマ等によって掃除時間の計時が開始される(ステップS101)。そして、掃除時間として予め設定された時間(例えば、30分)が経過したか否かが判定される(ステップS103)。30分が経過したと判定された場合(ステップS103でYES)には、処理が終了される。30分が経過していないと判定された場合(ステップS103でNO)には、禁止部171kによって、ランダムモードでの走行が開始されてから時間T1(ここでは、5分)以上経過したか否かの判定が行われる(ステップS105)。
【0070】
時間T1以上は経過していない(すなわち、経過時間が5分未満である)と判定された場合(ステップS105でNO)には、禁止部171kによって、処理がステップS101に戻される。時間T1以上経過したと判定された場合(ステップS105でYES)には、ランダムモードでの走行と壁沿いモードでの走行を交互に行うモード(以下、混合モードという)での走行が行われる(ステップS107)。
【0071】
そして、掃除時間として予め設定された時間(例えば、30分)が経過したか否かが判定される(ステップS109)。30分が経過したと判定された場合(ステップS109でYES)には、処理が終了される。30分が経過していないと判定された場合(ステップS103でNO)には、禁止部171kによって、混合モードでの走行が開始されてから時間T2(ここでは、5分)以上経過したか否かの判定が行われる(ステップS111)。時間T2以上は経過していない(すなわち、経過時間が5分未満である)と判定された場合(ステップS111でNO)には、禁止部171kによって、処理がステップS107に戻される。時間T2以上経過したと判定された場合(ステップS111でYES)には、処理がステップS101に戻される。
【0072】
図7は、図6に示すフローチャートのステップS107で行われる混合走行モードでの動作の一例を示す詳細フローチャートである。なお、以下の処理は、特に記載しない限り切換部171jによって行われる。また、ランダムモードを壁沿いモードへ切り換える条件を構成する、3回分の直進走行時間を、ここでは、第1直進走行時間TS1、第2直進走行時間TS2、第3直進走行時間TS3という。
【0073】
まず、直進走行時間の測定回数をカウントする回数カウンタNの値が1に初期化される(ステップS201)。そして、直進走行時間TSが0に初期化されて、直進走行時間TSの計時が開始される(ステップS203)。次いで、ランダム走行部171hによって、ランダムモードでの走行が行われる(ステップS205)。
【0074】
そして、直進時間測定部171iによって、直進走行時間TSが求められる(ステップS207)。次ぎに、直進時間測定部171iによって、第1直進走行時間TS1が第2直進走行時間TS2の値に更新され、第2直進走行時間TS2が第3直進走行時間TS3の値に更新され、第3直進走行時間TS3が直進走行時間TSの値に更新される(ステップS209)。
【0075】
そして、回数カウンタNの値が3以上であるか否かの判定が行われる(ステップS211)。回数カウンタNの値が3以上ではないと判定された場合(ステップS211でNO)には、回数カウンタNが1だけインクリメントされ(ステップS213)、処理がステップS203に戻される。回数カウンタNの値が3以上であると判定された場合(ステップS211でYES)には、3回分の直進走行時間の和(=TS1+TS2+TS3)である合計時間TTが求められ(ステップS215)、合計時間TTが閾値T0(ここでは、3秒)以上であるか否かの判定が行われる(ステップS217)。
【0076】
合計時間TTが閾値T0以下ではない(閾値T0より大きい)と判定された場合(ステップS217でNO)には、処理がステップS201に戻される。合計時間TTが閾値T0以下であると判定された場合(ステップS217でYES)には、壁沿い走行部171gによって、壁沿い走行が行われる(ステップS219)。そして、壁沿い走行を開始してからの経過時間が、予め設定された時間T3(ここでは、15秒)以上であるか否かの判定が行われる(ステップS221)。時間T3以上ではないと判定された場合(ステップS221でNO)には、処理がステップS219に戻される。時間T3以上であると判定された場合(ステップS221でYES)には、処理がリターンされる(=図6に示すフローチャートのステップS109が開始される)。
【0077】
図8は、図6に示すフローチャートのステップS101及び図7に示すフローチャートのステップS205で行われるランダム走行モードでの動作の一例を示す詳細フローチャートである。なお、以下の処理は、特に記載しない限りランダム走行部171hによって行われる。まず、直進が開始される(ステップS301)。そして、検出部171fによって、図4に示す距離L11〜L34が測定される(ステップS303)。次いで、検出部171fによって、距離L11〜L34の内最小値である離間距離LMが閾値LSH(ここでは、20mm)以下であるか否かの判定が行われる(ステップS305)。
【0078】
閾値LSH以下ではない(閾値LSHより大きい)と判定された場合(ステップS305でNO)には、処理がステップS301に戻され、直進が継続される。閾値LSH以下であると判定された場合(ステップS305でYES)には、走行が停止される(ステップS307)。そして、超音波発信器121と超音波受信器122との組み合わせに応じて予め設定されている角度θ0と0〜90度の範囲でランダムに設定される角度αとの和として回転角Δθが求められる(ステップS309)。次ぎに、回転角Δθだけ回転され(=進行方向が変更され)(ステップS311)、処理がリターンされる。
【0079】
図9は、図7に示すフローチャートのステップS219で行われる壁沿い走行モードでの動作の一例を示す詳細フローチャートである。なお、以下の処理は、特に記載しない限り壁沿い走行部171gによって行われる。まず、検出部171fによって、図4に示す距離L11〜L34が測定される(ステップS401)。次いで、最も近い壁面(又は、障害物)と平行な方向に回転される(ステップS403)。そして、直進が開始される(ステップS405)。
【0080】
次いで、検出部171fによって、距離L11〜L34が測定される(ステップS407)。そして、距離L22、L23、L33、L34の内、最小の距離が閾値LM(ここでは、20mm)以下であるか否かの判定が行われる(ステップS409)。閾値LM以下であると判定された場合(ステップS409でYES)には、処理がリターンされる(図7に示すフローチャートのステップS221の処理が開始される)。
【0081】
閾値LM以下ではない(閾値LMより大きい)と判定された場合(ステップS409でNO)には、進行方向を修正するパラメータα1〜α3が次の(1)〜(3)式により求められる(ステップS411、413、415)。
α1←(L01−L11)×A11 (1)
α2←(L02−L12)×A12 (2)
α3←(α1+α2)/2 (3)
ここで、距離L01、L02は、それぞれ、壁沿い走行モードでの距離L11、L12の基準距離である。例えば、距離L01、L02は、図4において、進行方向V1が壁面Wと平行であり、且つ、本体部10と壁面Wとの距離が閾値LMである場合の距離L11、L12の値である。また、定数A11、A12は、予め設定された比例定数である。
【0082】
そして、左右の車輪の周速VR、VLが、現在の周速Vを用いて、それぞれ次の(4)、(5)式で求められ、モータ113a、113bに対して指示され(ステップS417)、処理がステップS407に戻される。
VR←V−α3 (4)
VL←V+α3 (5)
【0083】
図10は、上述の混合走行モードと従来の走行制御(上述の特許文献1:特開2002−136454号公報参照)とを比較した制御結果の一例を示す図である。図は、掃除ロボット1を走行させる室内の平面図であり、(a)は従来の走行制御での走行結果、(b)は上述の混合走行モードでの走行結果を表している。室内ARには、左上側に、2箇所の障害物W1、W2が隣接して配置され、右下側に、障害物W3が配置されている。
【0084】
(a)に示すように、従来の走行制御では、障害物W1、W2、W3の近傍に、壁沿いモードでの走行範囲MCP1が7箇所発生している。これに対して、(b)に示すように、上述の混合走行モードでは、壁沿いモードでの走行範囲MCP2は、わずかに3箇所となっている。つまり、従来の走行制御では、壁沿いモードでの走行範囲となる領域の内、過半数の領域において、上述の混合走行モードでは、ランダムモードでの走行が行われることとなり、室内ARをより均一に走行させることが可能となるのである。
【0085】
上述のようにして、中心線LSの両側に配設された超音波受信器r2及び超音波受信器r3によって、超音波発信器s2から発信された超音波信号であって、壁面(又は、障害物)において反射した反射信号が受信されるため、1のタイミングで超音波発信器s2から発信された超音波信号を用いて前方正面の2方向について、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離が求められ、前方正面の障害物が正確に検出される。
【0086】
また、超音波受信器r2、r3が、掃除ロボット1の本体部10の中心Oを通り進行方向V1に平行な直線である中心線LSに対して線対称な位置に配設されているため、1のタイミングで超音波発信器s2から発信された超音波信号を用いて前方正面の2方向について、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離が求められ、前方正面の障害物が更に正確に検出される。
【0087】
更に、超音波受信器r2、r3が、掃除ロボット1の本体部10の中心Oを通り進行方向V1に平行な直線である中心線LSの両側にそれぞれ1個だけ配設されているため、簡単な構成で、前方正面の障害物が正確に検出される。
【0088】
加えて、超音波発信器s1によって中心線LSから離間する方向(=進行方向V1に対して左方向)に超音波信号が発信され、壁面(又は、障害物)Wにおいて反射した反射信号が超音波受信器r1、r2により受信されるまでの経過時間を用いて、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離が求められると共に、超音波発信器s3によって中心線LSから離間する方向(=進行方向V1に対して右方向)に超音波信号が発信され、壁面(又は、障害物)Wにおいて反射した反射信号が超音波受信器r3、r4により受信されるまでの経過時間を用いて、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離が求められるため、中心線LSから離間する方向の掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離が検出される。
【0089】
また、超音波発信器s1、s3が、中心線LSに対して線対称な位置にそれぞれ1個だけ配設されているため、簡単な構成で、中心線LSから離間する方向の掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離が検出される。
【0090】
更に、超音波発信器s1、s2、s3が、予め設定された順序(ここでは、超音波発信器s1、s2、s3の順)で順次発信されるため、進行方向の前方正面と、進行方向に対して左右方向とに関して、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離が順次検出され、適正な検出が行われる。
【0091】
加えて、室内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードであるランダムモードで走行中の、所定回数(ここでは、3回)分の直進走行時間TS1〜TS3が所定の条件を満たす場合に、ランダムモードが、室内の外縁に沿って走行させる制御モードである壁沿いモードへ切り換えられるため、室内の外縁が複雑な形状である場合であっても、適度な頻度で壁沿いモードへ切り換られ、室内を略均一に走行させることが可能となる。
【0092】
なお、本発明は以下の形態をとることができる。
【0093】
(A)本実施形態においては、自走式ロボットが掃除ロボット1である場合について説明したが、その他の所定の領域内を略均一に走行させる自走式ロボットでもよい。例えば、庭等の芝生上を走行する芝刈り機を備えた芝刈りロボットである形態でもよい。
【0094】
(B)本実施形態においては、距離センサ12が超音波センサを備える場合について説明したが、その他の種類の距離センサ(例えば、電磁波センサ等)である形態でもよい。
【0095】
(C)本実施形態においては、第1受信部171cが、2個の超音波受信器122(図4に示す中心線LSの左右に配設された超音波受信器r2、r3)を介して反射信号を受信する場合について説明したが、3個以上(例えば、4個)の超音波受信器122を介して反射信号を受信する形態でもよい。この場合には、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離を更に正確に測定することが可能となる。
【0096】
(D)本実施形態においては、第2発信部171bが、2個の超音波発信器121(図4に示す中心線LSに対して左右両側に配設された超音波発信器s1、s3)を介して、超音波信号を発信する場合について説明したが、3個以上(例えば、4個)の超音波発信器121を介して超音波信号を発信する形態でもよい。この場合には、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離を更に正確に測定することが可能となる。
【0097】
(E)本実施形態においては、超音波発信器121と超音波受信器122とが交互の配設されている場合(すなわち、2つの超音波発信器121の間に配設された超音波受信器122が、その2つの超音波発信器121から発信される超音波信号を時分割的に受信する)について説明したが、1の超音波受信器122が1の超音波発信器121から発信される超音波信号のみを受信する形態でもよい。この場合には、超音波発信器121の特性(例えば、超音波の周波数)に応じて超音波受信器122の特性(例えば、周波数特性)を微調整することが可能となり、掃除ロボット1と壁面(又は、障害物)Wとの間の距離を更に正確に測定することが可能となる。
【0098】
(F)本実施形態においては、ランダムモードが壁沿いモードへ切り換えられる条件(第1の条件)が3回分の直進走行時間TS1〜TS3の和が閾値T0未満であることである場合について説明したが、直進走行時間TS1〜TS3に関するその他の条件である形態でもよい。例えば、第1の条件が、「直進走行時間TS1〜TS3の加重和(例えば、0.5×TS1+TS2+1.5×TS3)が所定の閾値未満であること」である形態でもよい。この場合には、加重を適正に設定することにより、更に適正な走行制御を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係る掃除ロボットの一例を示す底面図である。
【図2】本発明に係る掃除ロボットの一例を示す斜視図である。
【図3】掃除ロボットの主要部の一例を示す構成図である。
【図4】検出部の動作の一例を示す説明図である。
【図5】超音波受信器の受信可能な角θrが超音波発信器の拡り角θsより大きい場合の死角の一例を示す図である。
【図6】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートのステップS107で行われる混合走行モードでの動作の一例を示す詳細フローチャートである。
【図8】図6に示すフローチャートのステップS101及び図7に示すフローチャートのステップS205で行われるランダム走行モードでの動作の一例を示す詳細フローチャートである。
【図9】図7に示すフローチャートのステップS219で行われる壁沿い走行モードでの動作の一例を示す詳細フローチャートである。
【図10】上述の混合走行モードと従来の走行制御とを比較した制御結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 掃除ロボット
10 本体部
11 駆動部
12 距離センサ
121 超音波発信器(第1発信手段の一部、第2発信手段の一部)
122 超音波受信器(第1受信手段の一部、第2受信手段の一部)
17 制御部
171 CPU
171a 第1発信部(第1発信手段の一部)
171b 第2発信部(第2発信手段の一部)
171c 第1受信部(第1受信手段の一部)
171d 第2受信部(第2受信手段の一部)
171e 距離算出部(距離算出手段)
171f 検出部(検出手段の一部)
171g 壁沿い走行部(第1走行手段)
171h ランダム走行部(第2走行手段)
171i 直進時間測定部(直進時間測定手段)
171j 切換部(切換手段)
171k 禁止部(禁止手段)
171m クリーナ制御部
172 RAM
172a 直進時間記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の車輪の駆動軸を所定の回転速度で回転させる駆動手段と、進行方向を自在に設定する操舵手段とを備え、所定の領域内を走行する自走式ロボットであって、
自走式ロボット本体の中心を通り進行方向に平行な直線である中心線の近傍に配設され、自走式ロボットの進行方向に向けて信号を発信する第1発信手段と、
前記第1発信手段によって発信された信号であって、前記所定の領域の外縁において反射した反射信号を受信する第1受信手段と、
前記第1発信手段によって発信された信号が前記第1受信手段によって受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと前記所定の領域の外縁との間の距離を求める距離算出手段とを備え、
前記第1受信手段は、前記中心線の両側に配設されていることを特徴とする自走式ロボット。
【請求項2】
前記第1受信手段は、前記中心線に対して略線対称な位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項3】
前記第1受信手段は、前記中心線の両側にそれぞれ1個だけ配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自走式ロボット。
【請求項4】
前記中心線に対して略線対称な位置に配設され、前記中心線から離間する方向に信号を発信する第2発信手段と、
前記第2発信手段によって発信された信号であって、前記所定の領域の外縁において反射した反射信号を受信する第2受信手段とを備え、
前記距離算出手段は、前記第2発信手段によって発信された信号が前記第2受信手段によって受信されるまでの経過時間を用いて、自走式ロボットと前記所定の領域の外縁との間の距離を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自走式ロボット。
【請求項5】
前記第2発信手段は、前記中心線に対して略線対称な位置に、それぞれ1個だけ配設されていることを特徴とする請求項4に記載の自走式ロボット。
【請求項6】
前記第1発信手段及び第2発信手段は、予め設定された順序で順次発信することを特徴とする請求項4又は5に記載の自走式ロボット。
【請求項7】
前記距離算出手段によって求められた1の距離又は複数の距離の最小値を離間距離として検出する検出手段と、
前記所定の領域の外縁に沿って走行させる制御モードである第1モードでの走行をさせるべく、前記操舵手段に対して進行方向を指示する第1走行手段と、
前記領域内を直進と回転とを繰り返して走行させる制御モードである第2モードでの走行をさせるべく、前記離間距離が予め設定された所定値以下となるまで直進し、前記離間距離が予め設定された所定値以下である場合に直進を停止して前記操舵手段に対して進行方向を所定方向に変更させる第2走行手段と、
前記第2モードで走行中の直進走行開始から停止までの時間である直進走行時間を測定する直進時間測定手段と、
2以上の所定回数分の直進走行時間を格納する直進時間記憶手段と、
前記第1モードと第2モードとを切り換える切換手段とを備え、
前記切換手段は、前記所定回数分の直進走行時間が所定の条件を満たす場合に、前記第2モードを前記第1モードへ切り換えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自走式ロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−323618(P2006−323618A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146130(P2005−146130)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】