説明

薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの製造方法

【課題】酸化物をチャネル及びゲート絶縁層に適用した薄膜トランジスタの高性能化、又はそのような薄膜トランジスタの製造プロセスの簡素化と省エネルギー化を実現する。
【解決手段】本発明の1つの薄膜トランジスタ100は、ゲート電極220とチャネル40との間に、ゲート電極20に接する、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる第1酸化物(不可避不純物を含み得る)の層32と、チャネル40に接する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる酸化物、及びストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)とからなる酸化物の群から選択される1種の第2酸化物(不可避不純物を含み得る)の層34との積層酸化物30を備え、チャネル40が、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなるチャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低い駆動電圧で高速にスイッチングすることを目的として、ゲート絶縁層として強誘電体材料(例えば、BLT(Bi4−XLaTi12)、PZT(Pb(Zr,Ti1−X)O))を採用した薄膜トランジスタが開示されている。一方、キャリア濃度を高くすることを目的として、酸化物導電性材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、あるいはLSCO(LaSr1−XCuO))をチャネル層として採用した薄膜トランジスタも開示されている(特許文献1)。
【0003】
ここで、上述の薄膜トランジスタの製造方法について見てみると、まず、ゲート電極としてTi及びPtの積層膜が、電子ビーム蒸着法により形成されている。そのゲート電極上に、ゾルゲル法によって上述のBLT又はPZTからなるゲート絶縁層が形成される。さらに、そのゲート絶縁層上には、RFスパッタ法により、ITOからなるチャネル層が形成される。続いて、そのチャネル層上にTi及びPtが電子ビーム蒸着法によって形成されることにより、ソース電極とドレイン電極とが形成される。その後、RIE法及びウェットエッチング法(HFとHClと混合溶液)により、素子領域が他の素子領域から分離されることになる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−121029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の薄膜トランジスタでは、ゲート絶縁層又はチャネルが複合酸化物によって形成された例は幾つか存在するが、薄膜トランジスタとしての高い特性を実現する材料及びそのための適切な製造方法の選定は、未だ道半ばである。また、ゲート絶縁膜及び/又はチャネルのそれぞれの高性能化に加えて、それらを積み重ねたときの全体としての性能向上を図ることも、薄膜トランジスタの高性能化のために解決すべき技術課題の1つである。なお、ゲート絶縁層及びチャネルに加えて、ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極をも酸化物によって形成した薄膜トランジスタについては、その実現までにさらに多くの研究開発の余地が残されている。
【0006】
また、従来技術では、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を要するプロセスが一般的であるため、原材料や製造エネルギーの使用効率が非常に悪くなる。上述のような製造方法が採用された場合、薄膜トランジスタを製造するために多くの処理と長時間を要するため、工業性ないし量産性の観点から好ましくない。また、従来技術には、大面積化が比較的困難であるという問題も存在する。
【0007】
本発明は、上述の諸問題の少なくとも1つを解決することにより、酸化物を少なくともチャネル及びゲート絶縁層に適用した薄膜トランジスタの高性能化、又はそのような薄膜トランジスタの製造プロセスの簡素化と省エネルギー化を実現する。その結果、本発明は、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの提供に大きく貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、数多く存在する酸化物の中から、ゲート絶縁膜又はチャネルとしての機能を適切に発揮させる酸化物の選定と組み合わせについて鋭意研究と分析を重ねた。興味深いことに、例えば、ゲート絶縁層の酸化物の性能が高い場合であっても、チャネルとなる酸化物との相性(例えば、各層間の界面における原子相互拡散の度合いとそれによる界面欠陥密度の差など)が悪ければ、それらを積層したときにゲート絶縁層としての性能の高さが全く活かされない場合や、ゲート絶縁層又はチャネルとしてほとんど機能しない場合がある。
【0009】
しかしながら、本願発明者らは、多くの試行錯誤と詳細な分析の結果、ゲート絶縁層をある特定の酸化物層の組み合わせによって形成した特殊な積層構造とした上で、そのゲート絶縁層の性能が適切に発揮されるチャネル層を見出すことに成功した。その結果、それらの酸化物をチャネル及びゲート絶縁層に適用した高性能の薄膜トランジスタを実現することが可能となった。加えて、本願発明者らは、従来と比較して大幅に簡素化ないし省エネルギー化が可能であるとともに大面積化も容易なプロセスによって、それらの酸化物を製造することができることを知見した。そして、この知見は、薄膜トランジスタにおけるゲート電極及び/又はソース電極やドレイン電極として適用できる酸化物が見出されたときに、さらにその有益性を高めることになった。本発明は上述の各視点に基づいて創出された。
【0010】
本発明の1つの薄膜トランジスタは、ゲート電極とチャネルとの間に、そのゲート電極に接する、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物、又はビスマス(Bi)と亜鉛(Zn)とニオブ(Nb)とからなる酸化物である第1酸化物(不可避不純物を含み得る)の層と、前記チャネルに接する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる酸化物、及びストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)とからなる酸化物の群から選択される1種の第2酸化物(不可避不純物を含み得る)の層との積層酸化物を備えている。加えて、この薄膜トランジスタにおける前述のチャネルが、チャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)である。
【0011】
この薄膜トランジスタは、ゲート電極に接する第1酸化物と、チャネルに接する第2酸化物との積層酸化物を、ゲート電極とチャネルとの間に備えている。ここで、第1酸化物は、比較的高誘電率ではあるが、リーク電流値が大きく、表面の平坦性が低い。一方で、第2酸化物は、比較的低誘電率ではあるが、リーク電流値が非常に小さく、表面平坦性に優れている。加えて、本願発明者らによる詳細な分析によれば、その積層酸化物は、第1酸化物をゲート側に配置し、第2酸化物をチャネル側に配置することによって、それぞれの良さが適切に発揮されることが見出された。具体的には、第1酸化物という高容量ゲート絶縁物が、トランジスタ特性において、ゲート電圧に対するドレイン電流の急峻な立ち上がりやオン電流の増加に寄与し得る。さらに、第2酸化物の存在が、低リーク電流と表面の平滑性に貢献し得ることにより、ゲート電圧に対するドレインのオフ電流の低減や電界効果移動度の増加を可能にする。従って、この薄膜トランジスタによれば、ゲート絶縁層及びチャネルをいずれも酸化物によって形成した高性能の薄膜トランジスタが実現される。
【0012】
上述の薄膜トランジスタの別態様として、さらに、ゲート電極が、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物、アンチモン(Sb)と錫(Sn)とからなる酸化物、及びインジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物の群から選択される1種のゲート電極用酸化物(不可避不純物を含み得る)であることは、好ましい一態様である。これにより、ゲート電極、ゲート絶縁層、及びチャネルの全てが酸化物によって形成された高性能の薄膜トランジスタが実現される。
【0013】
上述の薄膜トランジスタの別態様として、その薄膜トランジスタが、ソース電極及びドレイン電極をさらに備えるとともに、そのソース電極及びそのドレイン電極が、インジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物(不可避不純物を含み得る)又はランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物(不可避不純物を含み得る)であることは、好ましい一態様である。これにより、ゲート電極、ゲート絶縁層、チャネル、ソース電極、及びドレイン電極の全てが酸化物によって形成された高性能の薄膜トランジスタが実現される。
【0014】
また、本発明の1つの薄膜トランジスタの製造方法は、次の(1)及び(2)の各工程を、ゲート電極層の形成工程(以下、「ゲート電極層形成工程」ともいう。)とチャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成するチャネルの形成工程(以下、「チャネル形成工程」ともいう。)との間に含んでいる。
(1)ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、又はビスマス(Bi)を含む前駆体、亜鉛(Zn)を含む前駆体、及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液である第1前駆体溶液を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、そのビスマス(Bi)とそのニオブ(Nb)、又はそのビスマス(Bi)とその亜鉛(Zn)とそのニオブ(Nb)からなる第1酸化物(不可避不純物を含み得る)を、ゲート電極層に接するように形成する第1酸化物形成工程
(2)ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、ランタン(La)を含む前駆体及びジルコニウム(Zr)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、ストロンチウム(Sr)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液の群から選択される1種の第2前駆体溶液を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、そのランタン(La)とそのタンタル(Ta)、そのランタン(La)とそのジルコニウム(Zr)、又はそのストロンチウム(Sr)とそのタンタル(Ta)とからなる第2酸化物(不可避不純物を含み得る)を、チャネルに接するように形成する第2酸化物形成工程
なお、各工程の間に基板の移動や検査等の本発明の要旨とは関係のない工程が行われることを妨げるものではない。
【0015】
この薄膜トランジスタの製造方法によれば、フォトリソグラフィー法を用いない比較的簡素な処理(例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、凹版/凸版印刷法、又はナノインプリント法)によって第1酸化物及び第2酸化物が形成され得る。加えて、大面積化も容易である。従って、この薄膜トランジスタの製造方法によれば、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。
【0016】
また、上述の薄膜トランジスタの製造方法における別態様として、さらに、ゲート電極層形成工程が、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、アンチモン(Sb)を含む前駆体及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、又はインジウム(In)を含む前駆体と錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液ゲート電極用前駆体溶液を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、そのランタン(La)とそのニッケル(Ni)とからなる酸化物、そのアンチモン(Sb)とその錫(Sn)とからなる酸化物、又はそのインジウム(In)とその錫(Sn)とからなる酸化物であるゲート電極用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成する工程であるであることは、好ましい一態様である。これにより、ゲート電極、ゲート絶縁層、及びチャネルの全てが酸化物によって形成された高性能の薄膜トランジスタが実現される。
【0017】
また、上述の薄膜トランジスタの製造方法における、さらなる別態様として、第1酸化物形成工程又は第2酸化物形成工程において、第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層又は第2前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層を、第1酸化物又は第2酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、前述の第1前駆体層又は前述の第2前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含むことは、もう1つの好ましい一態様である。これにより、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、前述の各プロセスを要せずに、比較的低温の加熱処理によって第1酸化物及び第2酸化物が形成されるため、工業性ないし量産性に優れる。
【0018】
また、上述の薄膜トランジスタの製造方法における、さらなる別態様として、チャネル形成工程において、チャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層を、チャネル用酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、そのチャネル用前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含むことは、もう1つの好ましい一態様である。これにより、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、前述のプロセスを要せずに、比較的低温の加熱処理によってゲート電極用酸化物が形成されるため、工業性ないし量産性に優れる。
【0019】
また、上述の薄膜トランジスタの製造方法における、さらなる別態様として、ゲート電極層形成工程において、ゲート電極用前駆体溶液を出発材とするゲート電極用前駆体層を、ゲート電極用酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、そのゲート電極用前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含むことは、もう1つの好ましい一態様である。これにより、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、前述のプロセスを要せずに、比較的低温の加熱処理によってゲート電極用酸化物が形成されるため、工業性ないし量産性に優れる。
【0020】
さらに、上述の薄膜トランジスタの製造方法における、さらなる別態様として、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程において、ソース/ドレイン電極用前駆体溶液からなるソース/ドレイン電極用前駆体層を、ソース電極用酸化物又はドレイン電極用酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、そのソース/ドレイン電極用前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含むことは、もう1つの好ましい一態様である。これにより、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、前述のプロセスを要せずに、比較的低温の加熱処理によってソース電極用酸化物及びドレイン電極用酸化物が形成されるため、工業性ないし量産性に優れる。
【0021】
ところで、本願において、「型押し」は「ナノインプリント」と呼ばれることもある。
【発明の効果】
【0022】
本発明の1つの薄膜トランジスタによれば、ゲート絶縁層及びチャネルをいずれも酸化物によって形成した高性能の薄膜トランジスタが実現される。また、本発明の1つの薄膜トランジスタの製造方法によれば、比較的簡素な処理によって第1酸化物及び第2酸化物が形成されるため、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1C】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1D】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1E】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1F】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1G】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1H】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1J】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1K】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1L】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1M】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタのVg−Id特性を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態の第1酸化物の製造工程と同じ工程を経て作製された第1酸化物を含む積層構造を示す断面TEM写真である。
【図4】本発明の第1の実施形態の第2酸化物の製造工程と同じ工程を経て作製された第2酸化物の表面のAFM像である。
【図5】本発明の第2乃至第4の実施形態における薄膜トランジスタのVg−Id特性を示すグラフである。
【図6】本発明の第1乃至第4の実施形態における第1酸化物層の、周波数(Hz)に対するtanδ値を示すグラフである。
【図7A】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7B】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7C】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7D】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7E】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7F】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7G】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図8】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタの光学顕微鏡による平面写真である。
【図9】本発明の第5の実施形態における薄膜トランジスタのVg−Id特性を示すグラフである。
【図10A】本発明の第6の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図10B】本発明の第6の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図10C】本発明の第6の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図10D】本発明の第6の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図10E】本発明の第6の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図11A】本発明の第7の実施形態における薄膜トランジスタにおけるチャネルの製造工程と同様の工程によって形成された酸化インジウム層のX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。
【図11B】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタにおけるチャネルの製造工程と同様の工程によって形成されたIZO層のX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。
【図12】本発明の第7の実施形態における薄膜トランジスタのVg−Id特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態である薄膜トランジスタ100及びその製造方法を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0025】
<第1の実施形態>
図1A〜図1Mは、それぞれ、本実施形態における薄膜トランジスタ100の製造方法の一過程を示す断面模式図である。なお、文字の見やすさを考慮して、図1Hの後の図面番号を図1Jとする。また、本実施形態の薄膜トランジスタは、いわゆるボトムゲート構造を採用しているが、本実施形態はこの構造に限定されない。従って、当業者であれば、通常の技術常識を以って本実施形態の説明を参照することにより、工程の順序を変更することにより、トップゲート構造を形成することができる。また、本出願における温度の表示は、ヒーターの設定温度を表している。また、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。
【0026】
[薄膜トランジスタ100の製造工程]
(1)ゲート電極の形成
本実施形態では、まず、図1Aに示すように、基材である高耐熱ガラス基板(具体的には、コーニング(登録商標)1737)10上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液(ゲート電極用前駆体溶液という。以下、ゲート電極用前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とするゲート電極用前駆体層20aを形成する。その後、予備焼成として、約5分間、250℃に加熱する。なお、この予備焼成は、酸素雰囲気中又は大気中(以下、総称して、「酸素含有雰囲気」ともいう。)で行われる。さらにその後、本焼成として、ゲート電極用前駆体層20aを、酸素雰囲気中(例えば100体積%であるが、これに限定されない。以下の「酸素雰囲気」についても同じ。)、約20分間、550℃に加熱することにより、図1Bに示すように、高耐熱ガラス10上に、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなるゲート電極用酸化物層20(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。
【0027】
ここで、本実施形態では、上述の基材として高耐熱ガラスが採用されているが、本実施形態の基材は高耐熱ガラスに限定されない。例えば、高耐熱ガラス以外の絶縁性基板(例えば、SiO/Si基板、アルミナ(Al)基板、STO(SrTiO)基板、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板など。)、半導体基板(例えば、Si基板、SiC基板、Ge基板など。)を含む、種々の基材を用いることができる。
【0028】
また、本実施形態におけるゲート電極用酸化物層20のためのランタン(La)を含む前駆体の例は、酢酸ランタンである。その他の例として、硝酸ランタン、塩化ランタン、又は各種のランタンアルコキシド(例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンエトキシド、ランタンメトキシエトキシド)が採用され得る。また、本実施形態におけるゲート電極用酸化物層20のためのニッケル(Ni)を含む前駆体の例は、酢酸ニッケルである。その他の例として、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、又は各種のニッケルアルコキシド(例えば、ニッケルイソプロポキシド、ニッケルブトキシド、ニッケルエトキシド、ニッケルメトキシエトキシド)が採用され得る。
【0029】
加えて、本実施形態では、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなるゲート電極用酸化物層20が採用されているが、ゲート電極用酸化物層20はこの組成に限定されない。例えば、アンチモン(Sb)と錫(Sn)とからなるゲート電極用酸化物層(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)を採用することもできる。その場合、アンチモン(Sb)を含む前駆体の例として、酢酸アンチモン、硝酸アンチモン、塩化アンチモン、又は各種のアンチモンアルコキシド(例えば、アンチモンイソプロポキシド、アンチモンブトキシド、アンチモンエトキシド、アンチモンメトキシエトキシド)が採用され得る。また、錫(Sn)を含む前駆体の例として、酢酸錫、硝酸錫、塩化錫、又は各種の錫アルコキシド(例えば、錫イソプロポキシド、錫ブトキシド、錫エトキシド、錫メトキシエトキシド)が採用され得る。また、インジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)を採用することもできる。その場合、インジウム(In)を含む前駆体の例は、酢酸インジウム、硝酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド(例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。また、錫(Sn)を含む前駆体の例は、前述の例と同じである。
【0030】
(2)ゲート絶縁層の形成
次に、図1Cに示すように、ゲート電極用酸化物層20上に、公知のスピンコーティング法により、ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液(第1前駆体溶液という。以下、第1前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とする第1前駆体層32aを形成する。その後、予備焼成として、約5分間、250℃に加熱する。本実施形態では、最終的に十分な第1酸化物層32の厚み(例えば、約180nm)を得るために、前述のスピンコーティング法による第1前駆体層32aの形成と予備焼成を5回繰り返した。さらにその後、本焼成として、第1前駆体層32aを、酸素雰囲気中、約20分間、550℃に加熱することにより、図1Dに示すように、ゲート電極用酸化物層20上に、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる第1酸化物層32(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる第1酸化物層32は、BNO層とも呼ばれる。
【0031】
ここで、本実施形態における第1酸化物層32のためのビスマス(Bi)を含む前駆体の例は、オクチル酸ビスマスである。その他の例として、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、又は各種のビスマスアルコキシド(例えば、ビスマスイソプロポキシド、ビスマスブトキシド、ビスマスエトキシド、ビスマスメトキシエトキシド)が採用され得る。また、本実施形態における第1酸化物層32のためのニオブ(Nb)を含む前駆体の例は、オクチル酸ニオブである。その他の例として、塩化ニオブ、硝酸ニオブ、又は各種のニオブアルコキシド(例えば、ニオブイソプロポキシド、ニオブブトキシド、ニオブエトキシド、ニオブメトキシエトキシド)が採用され得る。
【0032】
その後、図1Eに示すように、第1酸化物層32上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液(第2前駆体溶液という。以下、第2前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とする第2前駆体層34aを形成する。その後、予備焼成として、約5分間、250℃に加熱する。本実施形態では、最終的に十分な第2酸化物層34の厚み(例えば、約20nm)を得るために、前述のスピンコーティング法による第2前駆体層34aの形成と予備焼成を1回実施した。さらにその後、本焼成として、第2前駆体層34aを、酸素雰囲気中、約15分間、550℃に加熱することにより、図1Fに示すように、第1酸化物層32上に、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる第2酸化物層34(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる第2酸化物層34は、LTO層とも呼ばれる。
【0033】
ところで、本実施形態の薄膜トランジスタ100では、上述の第1酸化物層32と第2酸化物層34との積層酸化物がゲート絶縁層30として用いられることになる。なお、本実施形態の第1酸化物層32におけるビスマス(Bi)とニオブ(Nb)との原子組成比は、ビスマス(Bi)が1としたときにニオブ(Nb)が1であった。また、本実施形態の第2酸化物層34におけるランタン(La)とタンタル(Ta)との原子組成比は、ランタン(La)を1としたときにタンタル(Ta)が1.5であった。また、このときの第1酸化物層32の厚みは約160nmであり、第2酸化物層34の厚みは約20nmであった。なお、第1酸化物層32におけるビスマス(Bi)とニオブ(Nb)との原子組成比については、ビスマス(Bi)が1としたときにニオブ(Nb)が0.33以上3以下であれば、本実施形態の効果の少なくとも一部の効果が確度高く奏され得る。また、第2酸化物層34におけるランタン(La)とタンタル(Ta)との原子組成比については、ランタン(La)を1としたときにタンタル(Ta)が0.11以上9以下であれば、少なくとも一部の効果が確度高く本実施形態の効果が奏され得る。
【0034】
ここで、本実施形態における第2酸化物層34のためのランタン(La)を含む前駆体の例は、酢酸ランタンである。その他の例として、硝酸ランタン、塩化ランタン、又は各種のランタンアルコキシド(例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンエトキシド、ランタンメトキシエトキシド)が採用され得る。また、本実施形態における第2酸化物層34のためのタンタル(Ta)を含む前駆体の例は、タンタルブトキシドである。その他の例として、硝酸タンタル、塩化タンタル、又はその他の各種のタンタルアルコキシド(例えば、タンタルイソプロポキシド、タンタルブトキシド、タンタルエトキシド、タンタルメトキシエトキシド)が採用され得る。
【0035】
加えて、本実施形態では、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる第2酸化物層34が採用されているが、第2酸化物層34はこの組成に限定されない。例えば、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる第2酸化物層(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。また、LZO層とも呼ばれる。)を採用することもできる。その場合、ランタン(La)を含む前駆体の例は、酢酸ランタンである。その他の例として、硝酸ランタン、塩化ランタン、又は各種のランタンアルコキシド(例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンエトキシド、ランタンメトキシエトキシド)が採用され得る。また、ジルコニウム(Zr)を含む前駆体の例は、ジルコニウムブトキシドである。その他の例として、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、又はその他の各種のジルコニウムアルコキシド(例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムメトキシエトキシド)が採用され得る。また、ストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)とからなる第2酸化物層(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。また、STO層とも呼ばれる。)を採用することもできる。その場合、ストロンチウム(Sr)を含む前駆体の例は、酢酸ストロンチウムである。その他の例として、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、又は各種のストロンチウムアルコキシド(例えば、ストロンチウムイソプロポキシド、ストロンチウムブトキシド、ストロンチウムエトキシド、ストロンチウムメトキシエトキシド)が採用され得る。またタンタル(Ta)を含む前駆体の例は、前述の例と同じである。
【0036】
(3)チャネルの形成
その後、図1Gに示すように、第2酸化物層34上に、公知のスピンコーティング法により、インジウム(In)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とするチャネル用前駆体溶液(以下、チャネル用前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とするチャネル用前駆体層40aを形成する。その後、予備焼成として、チャネル用前駆体層40aを約5分間、250℃に加熱する。その後、本焼成として、チャネル用前駆体層40aを、酸素雰囲気中、約15分間、350℃以上550℃以下に加熱することにより、図1Hに示すように、第2酸化物層34上に、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなるチャネル用酸化物層40(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなるチャネル用酸化物層40は、IZO層とも呼ばれる。また、本実施形態のチャネル用酸化物層40におけるインジウム(In)と亜鉛(Zn)との原子組成比は、インジウム(In)を1としたときに亜鉛(Zn)が0.5であった。また、チャネル用酸化物層40の厚みは約20nmであった。なお、特に、チャネル用酸化物40における、インジウム(In)を1としたときの亜鉛(Zn)の原子組成比が0.25以上1以下である薄膜トランジスタは、電界効果移動度を向上させる観点から好適な一態様である。
【0037】
ここで、本実施形態におけるチャネル用酸化物層40のためのインジウム(In)を含む前駆体の例は、インジウムアセチルアセトナートである。その他の例として、硝酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド(例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。また、本実施形態におけるチャネル用酸化物層40のための亜鉛(Zn)を含む前駆体の例は、塩化亜鉛である。その他の例として、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、又は各種の亜鉛アルコキシド(例えば、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛メトキシエトキシド)が採用され得る。
【0038】
加えて、本実施形態では、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなるチャネル用酸化物層40が採用されているが、チャネル用酸化物層はこの組成に限定されない。例えば、チャネル用酸化物が、ガリウム(Ga)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、アルミニウム(Al)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、亜鉛(Zn)と錫(Sn)とからなる酸化物、亜鉛(Zn)とインジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物、インジウム(In)とガリウム(Ga)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、ランタン(La)とインジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、ハフニウム(Hf)とインジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、スカンジウム(Sc)とインジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物の群から選択される1種であっても、本実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。なお、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、又は錫(Sn)を含む前駆体の例としては、金属有機酸塩、金属無機酸塩、金属ハロゲン化物、又は各種の金属アルコキシドが採用され得る。
【0039】
従って、チャネル用酸化物層40を形成する工程が、
インジウム(In)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
ガリウム(Ga)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
アルミニウム(Al)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
亜鉛(Zn)を含む前駆体及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
亜鉛(Zn)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
インジウム(In)を含む前駆体、ガリウム(Ga)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
ランタン(La)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
ハフニウム(Hf)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
スカンジウム(Sc)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
の群から選択される1種のチャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、
そのインジウム(In)とその亜鉛(Zn)とからなる酸化物、そのガリウム(Ga)とその亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
そのアルミニウム(Al)とその亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
その亜鉛(Zn)とその錫(Sn)とからなる酸化物、
その亜鉛(Zn)とそのインジウム(In)とその錫(Sn)とからなる酸化物、
そのインジウム(In)とそのガリウム(Ga)とその亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
そのランタン(La)とそのインジウム(In)とその亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
そのハフニウム(Hf)とそのインジウム(In)とその亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
そのスカンジウム(Sc)とそのインジウム(In)とその亜鉛(Zn)とからなる酸化物
の群から選択される1種のチャネル用酸化物を形成する工程であることは、採用し得る一態様である。なお、最終的に得られる上述の各酸化物はアモルファス状の酸化物であるため、チャネルに接する第2酸化物との良好な界面状態が得られると考えられる結果、トランジスタとしての電気特性が向上する。
【0040】
なお、上述の各チャネル用酸化物の厚みが5nm以上80nm以下である薄膜トランジスタは、高い電界効果移動度(μFE)を得る観点から好適な一態様である。加えて、その厚みが20nm以上40nm以下である薄膜トランジスタは、さらに好適な一態様である。特に、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなるチャネル用酸化物層40の厚みの範囲が前述の20nm以上80nm以下であれば、1(cm/Vs)以上の電界効果移動度(μFE)が得られ、その厚みが20nm以上40nm以下であれば、5(cm/Vs)以上の電界効果移動度(μFE)が得られる。
【0041】
(4)ソース電極及びドレイン電極の形成
さらにその後、図1Jに示すように、チャネル用酸化物層40上に、公知のフォトリソグラフィー法によってパターニングされたレジスト膜90が形成された後、チャネル用酸化物層40及びレジスト膜90上に、公知のスパッタリング法により、ITO(indium tin oxide)層50を形成する。本実施形態のターゲット材は、5wt%酸化錫(SnO)を含有するITOであり、室温下において形成された。その後、レジスト膜90が除去されると、図1Kに示すように、チャネル用酸化物層40上に、ITO層によるドレイン電極52及びソース電極54が形成される。
【0042】
その後、ドレイン電極52、ソース電極54、及びチャネル用酸化物層40上に、公知のフォトリソグラフィー法によってパターニングされたレジスト膜90が形成された後、レジスト膜90、ドレイン電極52の一部、及びソース電極54の一部をマスクとして、公知のアルゴン(Ar)プラズマによるドライエッチング法を用いて、露出しているチャネル用酸化物層40を除去する。その結果、パターニングされたチャネル用酸化物層40が形成されることにより、薄膜トランジスタ100が製造される。
【0043】
上述のとおり、本実施形態の薄膜トランジスタ100は、ゲート電極、ゲート絶縁層、チャネル、ソース電極、及びドレイン電極が、いずれも金属酸化物によって形成されている点は特筆すべきである。加えて、本実施形態では、ゲート電極、ゲート絶縁層、及びチャネルが、いずれも各種の前駆体溶液を酸素含有雰囲気中で加熱することによって形成されているため、従来の方法と比較して大面積化が容易になるとともに、工業性ないし量産性が格段に高められる。
【0044】
[薄膜トランジスタ100の特性]
次に、発明者らは、上述の製造方法によって製造した薄膜トランジスタ100の各種特性について調査を行った。
【0045】
[1.電流−電圧特性]
図2は、薄膜トランジスタ100のVg−Id特性を示すグラフである。また、表1は、薄膜トランジスタ100における、サブスレッショルド特性(SS)、電界効果移動度(μFE)、及び積層酸化物であるゲート絶縁層30の単位面積当たりの容量(COX)に関する特性を示している。
【0046】
【表1】

【0047】
図2及び表1に示すように、上述の第1の実施形態における薄膜トランジスタ100のVg−Id特性を調べたところ、トランジスタとしての良好な特性が得られた。
【0048】
ところで、上述のとおり、本実施形態の薄膜トランジスタ100は、第1酸化物層32及び第2酸化物層34から形成された積層酸化物をゲート絶縁層30として用いている点は特筆すべきである。本願発明者らによる多くの試行錯誤により、誘電率が非常に高い(代表的には、ε値が60以上250以下)、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる第1酸化物層32が発見された。しかしながら、本実施形態では、第1酸化物層32上に、アモルファス状の酸化物であるチャネル層を配置すると、いわゆるリーク電流が多く(代表的には、1MV/cmにおいて、10−6A/cm以上)、表面平坦性が低いことに加え、チャネル材料との界面における原子相互拡散がかなり大きいためにトランジスタとしての十分な特性を得ることが困難であることが分かった。その後、更なる研究と詳細な分析が行われた結果、単体として非常にリーク電流の少なく(代表的には、1MV/cmにおいて、10−7A/cmオーダー以下)、非常に表面平坦性に優れ、かつチャネル材料との界面における原子相互拡散が抑制された第2酸化物層34を第1酸化物層32とチャネル用酸化物層40との間に介在させることにより、トランジスタとしての十分な特性を得ることができた。
【0049】
また、第1酸化物層32及び第2酸化物層34から形成された積層酸化物であるゲート絶縁層30の合成容量は、5×10−8F/cm以上1×10−6F/cm以下であることが好ましい。この範囲内であれば、トランジスタ特性において、ゲート電圧に対するドレイン電流の急峻な立ち上がりやオン電流の増加が図られるとともに、ゲート電圧に対するドレインのオフ電流の低減や電界効果移動度の増加を可能にする。前述の観点で言えば、さらに好ましい合成容量の範囲は、1×10−7F/cm以上1×10−6F/cm以下である。なお、前述のトランジスタ特性の向上を図る観点から第1酸化物層32及び第2酸化物層34から形成された積層酸化物の合成された誘電率は、60以上200以下であることが好ましい。
【0050】
[2.断面TEMによる観察]
また、種々の分析の過程において、第1酸化物層32は、結晶相及びアモルファス相を含んでいることが確認された。より詳細に見れば、第1酸化物層32は、結晶相、微結晶相、及びアモルファス相を含んでいることが分かった。図3は、本実施形態の第1酸化物32の製造工程と同じ工程を経て作製された第1酸化物を含む積層構造を示す断面TEM(Transmission Electron Microscopy)写真である。図3に示すように、第1酸化物32中には、少なくとも一部には結晶構造を有する領域が存在することが確認された。より詳細には、第1酸化物32中には、アモルファス相、微結晶相、及び結晶相が確認された。なお、本出願において、「微結晶相」とは、ある層状の材料が形成されている場合に、その層の膜厚方向の上端から下端に至るまで一様に成長した結晶相ではない結晶相を意味する。また、その後の発明者らによる研究によれば、第1酸化物層32が微結晶を含むアモルファス状であるために、第1酸化物層32が概して高誘電率を備えているが、リーク電流値が薄膜トランジスタへの適用の許容範囲を超えるとともに、第1酸化物層32の表面の平坦性が低いと考えられる。
【0051】
一方、第2酸化物層34は、特定の結晶構造が確認されない、実質的にアモルファス状の層であるという興味深い知見が得られた。図4は、本実施形態の第2酸化物34の製造工程と同じ工程を経て作製された第2酸化物の表面のAFM(Atomic force microscopy)像である。図4に示すように、一定の結晶構造を有する第1酸化物層32とは異なり、第2酸化物層34がアモルファス状であること確認される。従って、このような第2酸化物層34が、チャネル用酸化物層40との良好な接合界面(原子相互拡散の少ない界面)の形成に貢献し、その結果、リーク電流が低減されたものと考えられる。また、本実施形態では、第1酸化物層32及び第2酸化物層34が完全に結晶化をさせない状態で形成されることによって上述の電気的特性を発揮していることから、本実施形態のゲート絶縁層30が、比較的低温の加熱処理によって形成され得る点は、特筆に値する。
【0052】
<第2の実施形態>
本実施形態は、基材、ゲート電極、及び第2酸化物層におけるランタン(La)とタンタル(Ta)との原子組成比が異なる点を除いて、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0053】
図1Mは、本実施形態の薄膜トランジスタ200の構造を示す断面模式図についても示している。本実施形態の薄膜トランジスタ200のゲート電極は、白金(Pt)層220によって形成されている。この白金層220は、公知のスパッタリング法により基材であるSiO/Si基板(すなわち、シリコン基板上に酸化シリコン膜を形成した基板)210上に形成される。なお、白金(Pt)層220と基材であるSiO/Si基板との接着性を高めるために、本実施形態では、SiO上に約10nm厚のTiO膜(図示しない)が形成されている。また、本実施形態の第2酸化物層234におけるランタン(La)とタンタル(Ta)との原子組成比は、ランタン(La)を1としたときにタンタル(Ta)が4であった。
【0054】
<第3の実施形態>
本実施形態は、第2酸化物層が異なる点を除いて、第2の実施形態と同様である。したがって、第1及び第2の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0055】
図1Mは、本実施形態の薄膜トランジスタ300の構造を示す断面模式図も示している。本実施形態の第2酸化物層334は、ランタン(La)を含む前駆体及びジルコニウム(Zr)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液から形成された、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる、いわゆる複合酸化物である。なお、本実施形態の第2酸化物層334におけるランタン(La)とジルコニウム(Zr)との原子組成比は、ランタン(La)を3としたときにジルコニウム(Zr)が7であった。また、このときの第1酸化物層32の厚みは約160nmであり、第2酸化物層334の厚みは約20nmであった。
【0056】
<第4の実施形態>
本実施形態も、第2酸化物層が異なる点を除いて、第2の実施形態と同様である。したがって、第1及び第2の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0057】
図1Mは、本実施形態の薄膜トランジスタ400の構造を示す断面模式図も示している。本実施形態の第2酸化物層434は、ストロンチウム(Sr)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液から形成された、ストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)とからなる、いわゆる複合酸化物である。なお、本実施形態の第2酸化物層434におけるストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)との原子組成比は、ストロンチウム(Sr)を1としたときにタンタル(Ta)が1であった。また、このときの第1酸化物層32の厚みは約160nmであり、第2酸化物層434の厚みは約20nmであった。
【0058】
[第2乃至第4の実施形態における薄膜トランジスタ200,300,400の特性]
上述の第2乃至第4の実施形態における薄膜トランジスタ200,300,400のVg−Id特性を調べたところ、第1の実施形態の薄膜トランジスタ100と遜色ない結果が得られた。
【0059】
図5は、薄膜トランジスタ200,300,400のVg−Id特性を示すグラフである。また、表2は、薄膜トランジスタ200,300,400における、サブスレッショルド特性(SS)、電界効果移動度(μFE)、及び積層酸化物であるゲート絶縁層30の単位面積当たりの容量(COX)に関する特性を示している。
【0060】
【表2】

【0061】
また、上述の各第2酸化物層334,434が採用された場合であっても、リーク電流値が、代表的には、1MV/cmにおいて、10−7A/cmオーダー以下であった。特に、LZO層である第2酸化物層334におけるリーク電流値は、代表的には、1MV/cmにおいて、10−8A/cmオーダー以下であった。
【0062】
また、LTO層である第2酸化物層234が採用された場合、第1酸化物層32と第2酸化物層234との積層酸化物の合成された比誘電率εrは、約123であった。また、LZO層である第2酸化物層334が採用された場合、第1酸化物層32と第2酸化物層334との積層酸化物の合成された比誘電率εrは、約94であった。一方、STO層である第2酸化物層434が採用された場合、第1酸化物層32と第2酸化物層434との積層酸化物の合成された比誘電率εrが約134という高い値となった点は特筆すべきである。
【0063】
ところで、上述の各実施形態における第1酸化物層32は、ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を焼成することによって形成されている。本出願では、前述のように、前駆体溶液を出発材とし、それを焼成することによって第1酸化物層32やその他の酸化物層を形成する方法を、便宜上、「溶液法」とも呼ぶ。この溶液法によって形成された第1酸化物層32は、誘電損失が小さい点ても好ましい絶縁層である。図6は、溶液法によって形成された第1酸化物層32における、周波数(Hz)に対する誘電損失の割合を示すtanδ値を示すグラフである。なお、図6には、本実施形態における第1酸化物層32の変形例である「他の実施例1」として、公知のスパッタリング法によって形成されたBNO層、及び「他の実施例2」として、第1の実施形態と同様に、溶液法によって形成したビスマス(Bi)と亜鉛(Zn)とニオブ(Nb)とからなる複合酸化物(BZNO層)の結果が合わせて示されている。また、この他の実施例2における複合酸化物の前駆体溶液は、ビスマス(Bi)を含む前駆体の例は、オクチル酸ビスマスである。その他の例として、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、又は各種のビスマスアルコキシドが採用され得る。また、亜鉛(Zn)を含む前駆体の例は、塩化亜鉛である。その他の例として、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、又は各種の亜鉛アルコキシド(例えば、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛メトキシエトキシド)が採用され得る。なお、亜鉛(Zn)を含む前駆体として酢酸亜鉛の採用する場合、亜鉛の溶解性を高めるため、酢酸亜鉛中に添加物モノエタノールアミンを少量加えることは好適な一態様である。その他の添加物として、ジエチルアミノエタノール、アセチルアセトン、又はジエタノールアミンなども採用できる。また、ニオブ(Nb)を含む前駆体の例は、オクチル酸ニオブである。その他の例として、塩化ニオブ、硝酸ニオブ、又は各種のニオブアルコキシド(例えば、ニオブイソプロポキシド、ニオブブトキシド、ニオブエトキシド、ニオブメトキシエトキシド)が採用され得る。
【0064】
図6に示すように、本実施形態の第1酸化物層32及びスパッタリング法によるBNO層(他の実施例1)は、他の実施例2に対してtanδ値、すなわち誘電損失が少ないことが分かった。さらに組成は同じであっても、溶液法によって形成された第1酸化物層32は、スパッタリング法によるBNO層(他の実施例1)よりも、さらに誘電損失が少ないことが明らかとなった。
【0065】
上述のとおり、溶液法によって形成された第1酸化物層32は、比誘電率が高いうえに誘電損失が少ないという特性を備えている。加えて、真空装置等の複雑で高価な設備を要することなく比較的短時間で形成されるため、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの提供に大きく貢献する。同様に、溶液法によって形成された第2酸化物層34,234,334,434、チャネル用酸化物40、及びゲート電極用酸化物20,220も、真空装置等の複雑で高価な設備を要することなく比較的短時間で形成されるため、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの提供に大きく貢献する。従って、溶液法を用いて形成した第1酸化物層32を備える薄膜トランジスタは、その第1酸化物層32中に亜鉛(Zn)を含まずに薄膜トランジスタの高性能化を実現することができる点で優れているといえる。なお、上述の「他の実施例2」で採用したBZNO膜は、誘電損失の観点では第1酸化物層32(つまり、BNO層)に劣るが、BZNO膜を用いた薄膜トランジスタのリーク電流が比較的少ないため、BZNO膜もBNO層に代替し得る一例である。
【0066】
<第5の実施形態>
本実施形態では、主として、第1の実施形態における一部の層の形成過程において型押し加工が施されている点を除いて、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0067】
[薄膜トランジスタ500の製造工程]
図7A〜図7Gは、それぞれ、本実施形態における薄膜トランジスタ500の製造方法の一過程を示す断面模式図である。また、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。
【0068】
(1)ゲート電極の形成
本実施形態では、まず、基材であるSiO/Si基板(以下、単に「基板」ともいう)210上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とするゲート電極用前駆体層520aを形成する。その後、予備焼成として、約5分間、ゲート電極用前駆体層520aを大気中において150℃に加熱する。この予備焼成により、ゲート電極用前駆体層520a中の溶媒を十分に蒸発させるとともに、将来的な塑性変形を可能にする特性を発現させるために好ましいゲル状態(熱分解前であって有機鎖が残存している状態と考えられる)を形成することができる。前述の観点をより確度高く実現するから言えば、予備焼成温度は、80℃以上250℃以下が好ましい。その後、ゲート電極のパターニングを行うために、図7Aに示すように、200℃に加熱した状態で、ゲート電極用型M1を用いて、5MPaの圧力で型押し加工を施す。その結果、本実施形態のゲート電極用型M1により、層厚が約100nm〜約300nmの厚層部と層厚が約10nm〜約100nmの薄層部とを備えるゲート電極用前駆体層520aが形成される。
【0069】
また、発明者らの研究によれば、上述の型押し加工の際、ゲート電極用前駆体層520aを80℃以上300℃以下の範囲内で加熱することにより、ゲート電極用前駆体層520aの塑性変形能力が高くなるとともに、主溶媒を十分に除去できることが明らかとなった。従って、ゲート電極用前駆体層520aを、型押し加工の際、80℃以上300℃以下の範囲内で加熱することは好ましい一態様である。ここで、型押し加工時の加熱温度が80℃未満である場合には、ゲート電極用前駆体層520a前駆体層の温度が低下することに起因して各前駆体層の塑性変形能力が低下することになるため、型押し構造の成型時の成型の実現性、又は成型後の信頼性ないし安定性が乏しくなる。また、型押し加工時の加熱温度が300℃を超える場合には、塑性変形能の根源である有機鎖の分解(酸化熱分解)が進むため、塑性変形能力が低下するからである。さらに、前述の観点から言えば、ゲート電極用前駆体層520aを、型押し加工の際、100℃以上250℃以下の範囲内で加熱することは、さらに好ましい一態様である。
【0070】
その後、ゲート電極用前駆体層520aを全面エッチングすることにより、図7Bに示すように、ゲート電極に対応する領域以外の領域からゲート電極用前駆体層520aを除去する(ゲート電極用前駆体層520aの全面に対するエッチング工程)。なお、本実施形態のエッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われたが、プラズマを用いた、いわゆるドライエッチング技術によってエッチングされることを妨げない。なお、プラズマ処理を大気圧下において行う公知技術を採用することも可能である。
【0071】
さらにその後、本焼成として、ゲート電極用前駆体層520aを、酸素雰囲気中、約15分間、580℃に加熱することにより、図7Cに示すように、基板210上に、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなるゲート電極用酸化物層520(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。
【0072】
(2)ゲート絶縁層の形成
次に、基板210及びパターニングされたゲート電極用酸化物層520上に、第1の実施形態と同様に、ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層32aを形成する。第1の実施形態と同様に予備焼成を行った後、本焼成として、第1前駆体層32aを、酸素雰囲気中、約20分間、550℃に加熱した。
【0073】
その後、第1酸化物層32上に、第1の実施形態と同様に、ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層34aを形成する。第1の実施形態と同様に予備焼成を行った後、本焼成として、第2前駆体層34aを、酸素雰囲気中、約15分間、550℃に加熱した。その結果、図7Dに示すように、第1酸化物層32上に、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる第2酸化物層34(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。
【0074】
ところで、本実施形態の薄膜トランジスタ500においても、上述の第1酸化物層32と第2酸化物層34との積層酸化物がゲート絶縁層30として用いられることになる。なお、本実施形態における第1酸化物層32の厚みは約180nmであり、第2酸化物層34の厚みは約20nmであった。
【0075】
(3)チャネルの形成
その後、第2酸化物層34上に、第1の実施形態と同様に、インジウム(In)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とするチャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層が形成する。その後、第1の実施形態と同様に予備焼成及び本焼成が行われる。その結果、第2酸化物層34上に、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなるチャネル用酸化物層40(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、本実施形態のチャネル用酸化物層40の厚みは約20nmであった。
【0076】
なお、本実施形態では、チャネルのパターニングをー行うために、チャネル用前駆体層に対する予備焼成の後に、ゲート電極のパターニングと同様に、チャネル専用の型(図示しない)を用いて型押し加工を施すことも、採用し得る他の一態様である。すなわち、チャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層を、チャネル用酸化物40を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、チャネル用前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含むことも、採用し得る他の一態様である。また、チャネルを形成するための型押し加工に対しても、ゲート電極のパターニングと同様の好適な加熱温度範囲や圧力等の諸条件が適用し得る。
【0077】
(4)ソース電極及びドレイン電極の形成
本実施形態では、その後、溶液法を採用した上で型押し加工を施すことにより、ITO層からなるソース電極及びドレイン電極が形成される。具体的には、以下のとおりである。
【0078】
まず、チャネル用酸化物層40上に、公知のスピンコーティング法により、インジウム(In)を含む前駆体及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とするソース/ドレイン電極用前駆体溶液(以下、ソース/ドレイン電極用前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とするソース/ドレイン電極用前駆体層550aを形成する。
【0079】
ここで、本実施形態におけるソース/ドレイン電極用酸化物層550のためのインジウム(In)を含む前駆体の例として、酢酸インジウム、硝酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。また、本実施形態におけるソース/ドレイン電極用酸化物層550のための錫(Sn)を含む前駆体の例として、酢酸錫、硝酸錫、塩化錫、又は各種の錫アルコキシド例えば、錫イソプロポキシド、錫ブトキシド、錫エトキシド、錫メトキシエトキシド)が採用され得る。
【0080】
その後、予備焼成として、約5分間、ソース/ドレイン電極用前駆体層550aを大気中において150℃に加熱する。その後、ソース/ドレイン電極のパターニングを行うために、図7Eに示すように、200℃に加熱した状態で、ソース/ドレイン電極用型M2を用いて、5MPaの圧力で型押し加工を施す。その結果、将来的にソース電極及びドレイン電極となる領域(図7Fの(a))上には、約100nm〜約300nmの層厚のソース/ドレイン電極用前駆体層550aが形成される。また、将来的にチャネル用酸化物層40が残される領域(図7Fの(b))上には、約10nm〜約100nmの層厚のソース/ドレイン電極用前駆体層550aが形成される。一方、将来的にチャネル用酸化物層40が取り除かれる領域(図7Fの(c))上には、約10nm〜約100nmの層厚のソース/ドレイン電極用前駆体層550aが形成される。なお、ソース/ドレイン電極用型M2を用いて、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工を施すことにより、本実施形態の効果の少なくとも一部が奏され得る。
【0081】
その後、本焼成として、ソース/ドレイン電極用前駆体層550aを、大気中で、約5分間、250℃以上400℃以下に加熱することによりソース/ドレイン電極用酸化物層550が形成される。
【0082】
その後、ソース/ドレイン電極用酸化物層550の全面に対して、アルゴン(Ar)プラズマによるドライエッチングを行う。その結果、最も薄い領域(図7Fの(c))のソース/ドレイン電極用酸化物層550が最初にエッチングされ、その後継続して、露出したチャネル用酸化物層40がエッチングされることになる。続いて、2番目に薄い領域(図7Fの(b))のソース/ドレイン電極用酸化物層550がエッチングされるとともに、最も薄い領域(図7Fの(c))におけるチャネル用酸化物層40がエッチングされたときに、プラズマ処理を停止する。このように、本実施形態では、上述の領域(b)と領域(c)の各層厚を調整することにより、領域(b)のチャネル用酸化物層40を残した状態で、領域(c)のチャネル用酸化物層40が取り除かれる。その結果、図7Gに示すように、チャネル領域自身の分離が実現されるとともに、ソース電極554及びドレイン電極552がチャネル領域を介して完全に分離されるように形成される。
【0083】
本実施形態では、さらに、窒素雰囲気中で、約15分間、500℃に加熱することにより、本実施形態の薄膜トランジスタ500が製造される。この加熱処理により、ITO中の酸素が欠損し、この欠損が導電性の酸素欠損キャリアとなるため、導電性向上が図られる。図8は、本実施形態で製造された薄膜トランジスタ500の光学顕微鏡による平面写真である。図8に示すように、本実施形態の型押し工程によって、サブミクロンオーダー(具体的には、約500nm)のチャネル領域の分離が実現されたことは特筆に値する。また、本実施形態において形成されたソース電極554及びドレイン電極552の抵抗率は、10−3Ωcmのオーダー以下であった。
【0084】
なお、本実施形態のエッチング工程は、アルゴン(Ar)プラズマによるドライエッチングによってエッチングされたが、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われることを妨げない。
【0085】
また、発明者らの研究によれば、上述の予備焼成の際、ソース/ドレイン電極用前駆体層550aを80℃以上250℃以下の範囲内で加熱することにより、ソース/ドレイン電極用前駆体層550aの塑性変形能力が高くなるとともに、主溶媒を十分に除去できることが明らかとなった。従って、ソース/ドレイン電極用前駆体層550aを、80℃以上250℃以下の範囲内で加熱することは好ましい一態様である。なお、前述の予備焼成の際の温度範囲の上限及び加減についての根拠は、上述のゲート電極用前駆体層520aの予備焼成に関する根拠と同じである。また、ソース/ドレイン電極用前駆体層550aの加熱温度のより好ましい範囲は、100℃以上250℃以下である。
【0086】
上述のように、本実施形態では、一部の酸化物層に対して型押し加工を施すことによって型押し構造を形成する、「型押し工程」が採用されている。この型押し工程が採用されることにより、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、本実施形態では、ソース電極及びドレイン電極も溶液法によって形成されているため、ゲート電極、ゲート絶縁膜、チャネル、ソース電極、及びドレイン電極というデバイスを構成する全ての酸化物層が溶液法によって形成されている点は、特筆に値する。従って、本実施形態の薄膜トランジスタ500は、極めて工業性ないし量産性に優れている。
【0087】
[第5の実施形態における薄膜トランジスタ500の特性]
上述の第5の実施形態における薄膜トランジスタ500のVg−Id特性について調べた結果、トランジスタとしての良好な特性が得られた。
【0088】
図9は、薄膜トランジスタ500のVg−Id特性を示すグラフである。また、表3は、薄膜トランジスタ500における、サブスレッショルド特性(SS)、電界効果移動度(μFE)に関する特性を示している。なお、図9におけるVは、薄膜トランジスタ500のソース電極とドレイン電極間に印加された電圧(V)である。
【0089】
【表3】

【0090】
図9及び表3に示すように、薄膜トランジスタ500のON/OFF比は、概ね10のオーダーであることが分かる。上述のとおり、薄膜トランジスタ500は、それを構成する各層が酸化物層であるとともに、溶液法及び型押し加工を採用することによって形成されているが、トランジスタとしての機能を発揮し得ることが確認された。
【0091】
<第6の実施形態>
本実施形態では、主として、第5の実施形態におけるゲート絶縁層の形成過程において型押し加工が施されている点を除いて、第5の実施形態と同様である。したがって、第1又は第5の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0092】
[薄膜トランジスタ600の製造工程]
図10A〜図10Dは、それぞれ、本実施形態における薄膜トランジスタ600の製造方法の一過程を示す断面模式図である。また、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。
【0093】
(1)ゲート電極の形成
本実施形態では、第5の実施形態と同様に、まず、基材であるSiO/Si基板210上にゲート電極用前駆体層520aを形成する。その後、予備焼成として、約5分間、ゲート電極用前駆体層520aを80℃以上250℃以下に加熱する。その後、ゲート電極のパターニングを行うために、図10Aに示すように、80℃以上300℃以下に加熱した状態で、ゲート電極用型M1を用いて、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工を施す。その結果、本実施形態のゲート電極用型M1により、層厚が約100〜約300nmの厚層部と層厚が約10nm〜約100nmの薄層部とを備えるゲート電極用前駆体層520aが形成される。
【0094】
その後、ゲート電極用前駆体層520aを全面エッチングすることにより、ゲート電極に対応する領域以外の領域からゲート電極用前駆体層520aを除去する(ゲート電極用前駆体層520aの全面に対するエッチング工程)。その後、第5の実施形態と同様に本焼成することにより、基板210上に、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなるゲート電極用酸化物層520(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。
【0095】
(2)ゲート絶縁層の形成
次に、基板210及びパターニングされたゲート電極用酸化物層520上に、第1の実施形態と同様に、ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層632aを形成する。その後、酸素含有雰囲気中で、80℃以上250℃以下に加熱した状態で予備焼成を行う。
【0096】
続いて、第1前駆体層632a上に、第1の実施形態と同様に、ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層634aを形成する。その後、酸素含有雰囲気中で、80℃以上250℃以下に加熱した状態で予備焼成を行う。
【0097】
本実施形態では、予備焼成のみを行った積層状態の第1前駆体層632a及び第2前駆体層634aに対して、型押し加工を施す。具体的には、ゲート絶縁層のパターニングを行うため、図10Bに示すように、80℃以上300℃以下に加熱した状態で、ゲート絶縁層用型M3を用いて、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工を施す。その結果、本実施形態のゲート絶縁層用型M3により、いずれも、層厚が約100nm〜約300nmの厚層部と層厚が約10nm〜約100nmの薄層部とを備える、第1前駆体層632aと第2前駆体層634aとの積層構造を備えたゲート絶縁層用前駆体層630aが形成される。
【0098】
その後、ゲート絶縁層用前駆体層630aを全面エッチングすることにより、図10Cに示すように、ゲート絶縁層630に対応する領域以外の領域からゲート絶縁層用前駆体層630aを除去する(ゲート絶縁層用前駆体層630aの全面に対するエッチング工程)。なお、本実施形態のゲート絶縁層用前駆体層630aのエッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われたが、プラズマを用いた、いわゆるドライエッチング技術によってエッチングされることを妨げない。
【0099】
その後、約20分間、550℃で本焼成することにより、ゲート電極用酸化物層520上に、第1酸化物層632と第2酸化物層634との積層酸化物を備えたゲート絶縁層630(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、本実施形態における第1酸化物層632の厚みは約50nm〜約250nmであり、第2酸化物層634の厚みは約5nm〜約50nmであった。
【0100】
(3)チャネル、ソース電極、及びドレイン電極の形成
その後、第5の実施形態と同様に、チャネル用酸化物層40が形成された後、ソース電極554及びドレイン電極552がチャネル領域を介して完全に分離されるように形成される。その結果、図10Eに示す薄膜トランジスタ600が製造される。従って、上述のとおり、溶液法及び型押し工程を採用することにより、ゲート電極、ゲート絶縁層、チャネル、ソース電極、及びドレイン電極が、いずれも簡便にパターニングされ得るため、本実施形態の薄膜トランジスタ600は、極めて工業性ないし量産性に優れている。
【0101】
<第7の実施形態>
本実施形態では、主として、第2の実施形態におけるチャネルの材料が酸化インジウムである点を除いて、第2の実施形態と同様である。したがって、第1又は第2の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0102】
図1Mは、本実施形態の薄膜トランジスタ700の構造を示す断面模式図についても示している。但し、本実施形態の薄膜トランジスタ700のチャネルの材料は、上述のとおり酸化インジウムである。
【0103】
本実施形態のチャネルの形成工程においては、まず、第2酸化物層34上に、公知のスピンコーティング法により、インジウム(In)を含む前駆体を溶質とするチャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層を形成ずる。その後、予備焼成として、この前駆体層を約5分間、250℃に加熱する。その後、本焼成として、この前駆体層を、酸素雰囲気中、約15分間、350℃以上550℃以下に加熱することにより、第2酸化物層34上に、酸化インジウムからなるチャネル用酸化物層740が形成される。なお、チャネル用酸化物層740の厚みは約20nmであった。
【0104】
ここで、本実施形態におけるチャネル用酸化物層740のためのインジウム(In)を含む前駆体の例は、インジウムアセチルアセトナートである。その他の例として、硝酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド(例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。
【0105】
また、本実施形態のチャネル用酸化物層740と同様の製造工程と同様の工程によって形成された酸化インジウム層のX線回折(XRD)を調査したところ、興味深い結果が得られた。図11Aは、薄膜トランジスタ700におけるチャネルの製造工程と同様の工程によって形成された酸化インジウム層のX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。比較のために、図11Bには、第1の実施形態における薄膜トランジスタにおけるチャネルの製造工程と同様の工程によって形成されたIZO層のX線回折(XRD)の結果が示されている。
【0106】
図11Aでは、In(222)を示すと考えられる(a)が示すピークと、In(400)を示すと考えられる(b)が示すピークが確認された。従って、本実施形態のチャネル用酸化物層740は少なくとも結晶性を有していることが分かった。一方、図11Bでは、既に述べたとおり、ピークは確認されなかったため、少なくとも本測定の範囲においてアモルファス状であることが確認された。なお、図11Aにおける(c)のピークは、酸化インジウム層が形成された基板上の酸化シリコン(SiO2)に由来するピークであり、図11Bにおける(d)のピークは、IZO層が形成された基板(石英)に由来するピークである。
【0107】
次に、本実施形態の薄膜トランジスタ700の電気特性を調査した。図12は、本実施形態における薄膜トランジスタ700のVg−Id特性を示すグラフである。また、表4は、薄膜トランジスタ700における、サブスレッショルド特性(SS)、電界効果移動度(μFE)に関する特性を示している。
【0108】
【表4】

【0109】
図12及び表4に示すように、薄膜トランジスタ700のON/OFF比は、10のオーダーを超える値であることが分かった。また、その他の電気特性もトランジスタとして良好な結果であることが確認された。
【0110】
従って、薄膜トランジスタ700は、その構成の一部であるチャネルが結晶性を有している場合であっても、良好な電気特性が得られることが確認された。
【0111】
<その他の実施形態>
ところで、上述の各実施形態における効果を適切に奏させるために、第1前駆体溶液の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールの群から2種が選択されるアルコールの混合溶媒であることが好ましい。また、第2前駆体溶液の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールの群から選択される1種のアルコール溶媒、又は酢酸、プロピオン酸、オクチル酸の群から選択される1種のカルボン酸たる溶媒であることが好ましい。また、チャネル用前駆体溶液の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールの群から選択される1種のアルコール溶媒、又は酢酸、プロピオン酸、オクチル酸の群から選択される1種のカルボン酸たる溶媒であることが好ましい。
【0112】
加えて、上述の各実施形態における効果を適切に奏させるために、ゲート電極用前駆体溶液の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールの群から選択される1種のアルコール溶媒、又は酢酸、プロピオン酸、オクチル酸の群から選択される1種のカルボン酸である溶媒であることが好ましい。また、ソース/ドレイン電極用前駆体溶液の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールの群から選択される1種のアルコール溶媒、又は酢酸、プロピオン酸、オクチル酸の群から選択される1種のカルボン酸である溶媒であることが好ましい。
【0113】
また、上述の各実施形態においては、溶液法における本焼成として、第1酸化物を形成するための加熱温度が450℃以上700℃以下であれば、上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。また、溶液法における本焼成として、第2酸化物を形成するための加熱温度が250℃以上700℃以下であれば、上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。また、溶液法における本焼成として、チャネル用酸化物を形成するための加熱温度が250℃以上700℃以下であれば、上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0114】
加えて、上述の各実施形態においては、溶液法における本焼成として、ゲート電極用酸化物を形成するための加熱温度が500℃以上900℃以下であれば、上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。また、溶液法における本焼成として、ソース/ドレイン電極用酸化物を形成するための加熱温度が450℃以上700℃以下であれば、上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0115】
また、上述の第5及び第6の実施形態では、幾つかの酸化物層の形成の際に、型押し加工を施す「型押し工程」が行われている。この型押し工程における圧力は、代表的に例示されている5MPaには限定されない。幾つかの例で既に述べたとおり、この型押し工程における圧力が1MPa以上20MPa以下の範囲内の圧力であれば、上述の各実施形態の少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0116】
上述の第5及び第6の実施形態では、高い塑性変形能力を得た各前駆体層に対して型押し加工を施すこととしている。その結果、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa以上20MPa以下という低い圧力であっても、各前駆体層が型の表面形状に追随して変形するようになり、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。また、その圧力を1MPa以上20MPa以下という低い圧力範囲に設定することにより、型押し加工を施す際に型が損傷し難くなるとともに、大面積化にも有利となる。
【0117】
ここで、上記の圧力を「1MPa以上20MPa以下」の範囲内としたのは、以下の理由による。まず、その圧力が1MPa未満の場合には、圧力が低すぎて各前駆体層を型押しすることができなくなる場合があるからである。他方、その圧力が20MPaもあれば、十分に前駆体層を型押しすることができるため、これ以上の圧力を印加する必要がないからである。前述の観点から言えば、上述の第5及び第6の実施形態における型押し工程においては、2MPa以上10MPa以下の範囲内にある圧力で型押し加工を施すことがより好ましい。
【0118】
また、上述の各実施形態における各酸化物層を形成するための予備焼成の際、予備焼成温度は、もっとも好ましくは、100℃以上250℃以下である。これは、各種の前駆体層中の溶媒をより確度高く蒸発させることが出来るからである。また、特に、その後に型押し工程を行う場合は、前述の温度範囲で予備焼成を行うことにより、将来的な塑性変形を可能にする特性を発現させるためにより好ましいゲル状態(熱分解前であって有機鎖が残存している状態と考えられる)を形成することができる。
【0119】
また、上述の第5及び第6の実施形態における型押し工程において、予め80℃以上300℃以下に加熱した型(代表的には、ゲート電極用型M1、ソース/ドレイン電極用型M2、又はゲート絶縁層用型M3)を用いて型押し加工を施すことは、他の好ましい一態様である。
【0120】
型の好適な温度を80℃以上300℃以下としたのは、以下の理由による。まず、80℃未満の場合には、各前駆体層の温度が低下することに起因して各前駆体層の塑性変形能力が低下することになる。加えて、300℃を超える場合には、各前駆体層の固化反応が進みすぎることに起因して各前駆体層の塑性変形能力が低下する。上記観点から言えば、型押し工程において、100℃以上250℃以下に加熱した型を用いて型押し加工を施すことがより好ましい。
【0121】
また、上述の型押し工程において、予め、型押し面が接触することになる各前駆体層の表面に対する離型処理及び/又はその型の型押し面に対する離型処理を施しておき、その後、各前駆体層に対して型押し加工を施すことが好ましい。そのような処理を施すことにより、各前駆体層と型との間の摩擦力を低減することができるため、各前駆体層に対してより一層精度良く型押し加工を施すことが可能となる。なお、離型処理に用いることができる離型剤としては、界面活性剤(例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等を例示することができる。
【0122】
また、上述の各実施形態における各前駆体層に対する型押し工程と本焼成の工程との間に、型押し加工が施された各前駆体層(例えば、ゲート電極用前駆体層)のうち最も層厚が薄い領域においてその前駆体層が除去される条件で、その前駆体層を全体的にエッチングする工程が含まれることは、より好ましい一態様である。これは、各前駆体層を本焼成した後にエッチングするよりも容易に不要な領域を除去することが可能なためである。従って、上述の各実施形態において、本焼成後に全面エッチングを行っている工程の代わりに、前述のより好ましい一態様を採用することができる。
【0123】
以上述べたとおり、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0124】
10 高耐熱ガラス
20,520 ゲート電極用酸化物層
20a,520a ゲート電極用前駆体層
30,630 ゲート絶縁層
32,632 第1酸化物層
32a,632a 第1前駆体層
34,234,334,434,634 第2酸化物層
34a,634a 第2前駆体層
40,740 チャネル用酸化物層、
40a チャネル用前駆体層、
50 ITO層
52,552 ドレイン電極
54,554 ソース電極
90 レジスト膜、
210 基板
100,200,300,400,500,600,700 薄膜トランジスタ
220 白金層
550 ソース/ドレイン電極用酸化物層
550a ソース/ドレイン電極用前駆体層
630a ゲート絶縁層用前駆体層
M1 ゲート電極用型
M2 ソース/ドレイン電極用型
M3 ゲート絶縁層用型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極とチャネルとの間に、
前記ゲート電極に接する、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物、又はビスマス(Bi)と亜鉛(Zn)とニオブ(Nb)とからなる酸化物である第1酸化物(不可避不純物を含み得る)の層と、前記チャネルに接する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる酸化物、及びストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)とからなる酸化物の群から選択される1種の第2酸化物(不可避不純物を含み得る)の層との積層酸化物を備え、
前記チャネルが、チャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)である、
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記チャネル用酸化物が、アモルファス状である、
請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネルが、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、ガリウム(Ga)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、アルミニウム(Al)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、亜鉛(Zn)と錫(Sn)とからなる酸化物、亜鉛(Zn)とインジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物、インジウム(In)とガリウム(Ga)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、ランタン(La)とインジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、ハフニウム(Hf)とインジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、スカンジウム(Sc)とインジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物、及び酸化インジウムの群から選択される1種のチャネル用酸化物である、
請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記ゲート電極が、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物、アンチモン(Sb)と錫(Sn)とからなる酸化物、及びインジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物の群から選択される1種のゲート電極用酸化物(不可避不純物を含み得る)である、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
ソース電極及びドレイン電極をさらに備えるとともに、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極が、インジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物(不可避不純物を含み得る)又はランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物(不可避不純物を含み得る)である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記第2酸化物が、アモルファス状である、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記第1酸化物が、結晶相及びアモルファス相を含む、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記積層酸化物の合成容量が、5×10−8F/cm以上1×10−6F/cm以下である、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記積層酸化物の合成された誘電率が、60以上200以下
である、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記チャネルの層の厚みが、5nm以上80nm以下である、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記第1酸化物が、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物(不可避不純物を含み得る)であり、かつ前記ビスマス(Bi)が1としたときに前記ニオブ(Nb)の原子組成比が、0.33以上3以下であり、
前記第2酸化物が、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物(不可避不純物を含み得る)であり、かつ前記ランタン(La)を1としたときの前記タンタル(Ta)の原子組成比が、0.11以上9以下である、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項12】
前記チャネル用酸化物が、インジウム(In)と亜鉛(Zn)とからなる酸化物であり、かつ、前記インジウム(In)を1としたときの前記亜鉛(Zn)の原子組成比が、0.25以上1以下である、
請求項1又は請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項13】
ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、又はビスマス(Bi)を含む前駆体、亜鉛(Zn)を含む前駆体、及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液である第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前記ビスマス(Bi)と前記ニオブ(Nb)、又は前記ビスマス(Bi)と前記亜鉛(Zn)と前記ニオブ(Nb)からなる第1酸化物(不可避不純物を含み得る)を、ゲート電極層に接するように形成する第1酸化物形成工程と、
ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、ランタン(La)を含む前駆体及びジルコニウム(Zr)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、及びストロンチウム(Sr)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液の群から選択される1種の第2前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前記ランタン(La)と前記タンタル(Ta)、前記ランタン(La)と前記ジルコニウム(Zr)、又は前記ストロンチウム(Sr)と前記タンタル(Ta)とからなる第2酸化物(不可避不純物を含み得る)を、チャネルに接するように形成する第2酸化物形成工程とを、
前記ゲート電極層の形成工程とチャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成する前記チャネルの形成工程との間に含む、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記チャネル用酸化物が、アモルファス状である、
請求項13に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記チャネルの形成工程が、
インジウム(In)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
ガリウム(Ga)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
アルミニウム(Al)を含む前駆体及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
亜鉛(Zn)を含む前駆体及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
亜鉛(Zn)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
インジウム(In)を含む前駆体、ガリウム(Ga)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
ランタン(La)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
ハフニウム(Hf)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、
スカンジウム(Sc)を含む前駆体、インジウム(In)を含む前駆体、及び亜鉛(Zn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、及び
インジウム(In)を含む前駆体
の群から選択される1種のチャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、
前記インジウム(In)と前記亜鉛(Zn)とからなる酸化物、前記ガリウム(Ga)と前記亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
前記アルミニウム(Al)と前記亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
前記亜鉛(Zn)と前記錫(Sn)とからなる酸化物、
前記亜鉛(Zn)と前記インジウム(In)と前記錫(Sn)とからなる酸化物、
前記インジウム(In)と前記ガリウム(Ga)と前記亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
前記ランタン(La)と前記インジウム(In)と前記亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
前記ハフニウム(Hf)と前記インジウム(In)と前記亜鉛(Zn)とからなる酸化物、
前記スカンジウム(Sc)と前記インジウム(In)と前記亜鉛(Zn)とからなる酸化物、及び
酸化インジウム
の群から選択される1種の前記チャネル用酸化物を形成する工程である、
請求項13に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記第1酸化物を形成するための加熱温度が、450℃以上700℃以下であり、
前記第2酸化物を形成するための加熱温度が、250℃以上700℃以下であり、
前記チャネル用酸化物を形成するための加熱温度が、250℃以上700℃以下である、
請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記ゲート電極層の形成工程が、
ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、アンチモン(Sb)を含む前駆体及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液、又はインジウム(In)を含む前駆体と錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液であるゲート電極用前駆体溶液を出発材とするゲート電極用前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前記ランタン(La)と前記ニッケル(Ni)とからなる酸化物、前記アンチモン(Sb)と前記錫(Sn)とからなる酸化物、又は前記インジウム(In)と前記錫(Sn)とからなる酸化物であるゲート電極用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成する工程である、
請求項13乃至請求項16のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記ゲート電極用酸化物を形成するための加熱温度が、500℃以上900℃以下である、
請求項17に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項19】
ソース電極及びドレイン電極を形成する工程をさらに含み、
前記ソース電極及びドレイン電極を形成する工程が、
インジウム(In)を含む前駆体及び錫(Sn)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液又はランタン(La)を含む前駆体とニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液であるソース/ドレイン電極用前駆体溶液を出発材とするソース/ドレイン電極用前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前記インジウム(In)と前記錫(Sn)とからなる酸化物又はランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物であるソース/ドレイン電極用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成する工程である、
請求項13乃至請求項18のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項20】
前記ソース/ドレイン電極用酸化物を形成するための加熱温度が、450℃以上700℃以下である、
請求項19に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項21】
前記第1酸化物形成工程又は前記第2酸化物形成工程において、
前記第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層又は前記第2前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層を、前記第1酸化物又は前記第2酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、前記第1前駆体層又は前記第2前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含む、
請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項22】
前記チャネルの形成工程において、
前記チャネル用前駆体溶液を出発材とするチャネル用前駆体層を、前記チャネル用酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、前記チャネル用前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含む、
請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項23】
前記ゲート電極層の形成工程において、
前記ゲート電極用前駆体溶液を出発材とするゲート電極用前駆体層を、前記ゲート電極用酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、前記ゲート電極用前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含む、
請求項17又は請求項18に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項24】
前記ソース電極及びドレイン電極を形成する工程において、
前記ソース/ドレイン電極用前駆体溶液を出発材とするソース/ドレイン電極用前駆体層を、前記ソース/ドレイン電極用酸化物を形成する前に、酸素含有雰囲気中において、80℃以上300℃以下で加熱した状態で型押し加工を施すことにより、前記ソース/ドレイン電極用前駆体層に対して型押し構造を形成する型押し工程をさらに含む、
請求項19又は請求項20に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項25】
前記第2酸化物が、アモルファス状である、
請求項13乃至請求項24のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項26】
前記第1酸化物が、結晶相及びアモルファス相を含む、
請求項13乃至請求項25のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項27】
前記型押し工程において、1MPa以上20MPa以下の範囲内の圧力で前記型押し加工を施す、
請求項13乃至請求項24のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項28】
前記型押し工程において、予め、80℃以上300℃以下の範囲内の温度に加熱した型を用いて前記型押し加工を施す、
請求項13乃至請求項24のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110175(P2013−110175A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252174(P2011−252174)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】