説明

表示装置の製造方法

【課題】Al合金膜と透明画素電極との接触電気抵抗を低減でき、耐熱性にも優れているため、Al合金膜を透明画素電極に直接接触させることができ、しかも、Al合金の電気抵抗率も一層低減され、生産性もより高められたダイレクトコンタクト技術を提供する。
【解決手段】基板上にて、酸化物透明導電膜とAl合金膜が直接接触する構造を備えた表示装置の製造方法である。Al合金膜は、Ag、Zn、Cu、およびNiよりなる群から選択される少なくとも一種の合金元素を0.5原子%以下含有し、基板の温度を合金元素の析出温度以上に制御してAl合金膜の形成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法に関し、詳細には、基板上にて、酸化物透明導電膜とAl合金膜が直接接触する構造を備えた表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Al合金は、電気抵抗率が低く、加工が容易であるなどの理由により、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、フィールドエミッション表示装置などの薄型表示装置(FPD)の分野で、配線膜、電極膜、反射電極膜の薄膜材料などに利用されている。
【0003】
例えば、アクティブマトリクス型の液晶パネルは、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)、酸化物透明導電膜から構成される画素電極、および走査線や信号線を含む配線部を有するTFT基板を備えている。走査線や信号線を構成する配線材料には、一般に、純AlやAl−Nd合金の薄膜が用いられるが、これらの薄膜によって形成される各種電極部分を画素電極と直接接続すると、絶縁性の酸化アルミニウムなどが界面に形成されて接触電気抵抗が上昇するため、これまでは、上記Alの配線材料と画素電極の間に、Mo,Cr,Ti,W等の高融点金属からなるバリアメタル層を設けて接触電気抵抗の低減化を図ってきた。
【0004】
しかしながら、上記のようにバリアメタル層を介在させる方法は、製造工程が煩雑になって生産コストの上昇を招くなどの問題がある。
【0005】
そこで、バリアメタル層の形成を省略でき、Al合金膜を透明画素電極に直接接触させることが可能な技術(以下、このような技術を総称して、ダイレクトコンタクト技術と呼ぶ場合がある。)が検討されている。ダイレクトコンタクト技術では、高い表示品位の表示装置が得られるように、電極材料であるAl合金膜と透明画素電極との接触電気抵抗が低く、耐熱性に優れていることが要求される。
【0006】
本出願人も、ダイレクトコンタクト技術として、特許文献1に記載の方法を提案している。特許文献1には、Au、Ag、Zn、Cu、Ni、Sr、Ge、Sm、およびBiよりなる群から選ばれる少なくとも一種の合金元素を0.1〜6原子%含むAl合金膜の配線材料が開示されている。上記のAl合金膜を用いれば、当該Al合金膜と透明画素電極との界面に導電性の合金元素含有析出物が形成され、酸化アルミニウム等の絶縁物質の生成が抑制されるため、接触電気抵抗を低減することができる。また、合金元素の添加量が上記範囲内であれば、Al合金自体の電気抵抗率も低く抑えられる。また、上記のAl合金膜にNd、Y、Fe、Coの少なくとも一種の合金元素を更に添加すれば、ヒロック(コブ状の突起物)の生成が抑えられ、耐熱性が向上する。上記合金元素の析出物は、基板上にAl合金膜をスパッタリング法などによって成膜した後、150〜400℃(好ましくは200〜350℃)で15分〜1時間程度加熱(アニーリング)処理することによって得られる。
【0007】
特許文献1の方法によれば、応答速度が速くて高度の表示品位を有し、消費電力の少ない表示装置が得られる。
【特許文献1】特開2004−214606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、ユーザー側では、消費電力や応答速度などの更なる改善や生産性の向上に対する要求が強くなっている。前述した特許文献1に記載の方法は、ダイレクトコンタクト技術として非常に有用であるが、所望の効果を得るために、基板上にAl合金膜を成膜した後、所定の熱処理(後の加熱処理)を別途行なわなければならず、プロセスの簡略化が求められている。更に、Al合金自体の電気抵抗率の更なる低減化も要請されている。
【0009】
本明細書において、上記特許文献1のように、基板上にAl合金膜を成膜した後に合金元素を含む析出物を得るために行なわれる熱処理を、「後加熱処理」と呼ぶ場合がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、Al合金膜と透明画素電極との接触電気抵抗を低減でき、耐熱性にも優れているため、Al合金膜を透明画素電極に直接接触させることができ、しかも、Al合金の電気抵抗率も一層低減され、生産性もより高められた新規なダイレクトコンタクト技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできた本発明に係る表示装置の製造方法は、基板上にて、酸化物透明導電膜とAl合金膜が直接接触する構造を備えた表示装置の製造方法であって、前記Al合金膜は、Ag、Zn、Cu、およびNiよりなる群から選択される少なくとも一種の合金元素を0.5原子%以下含有し、前記基板の温度を前記合金元素の析出温度以上に制御してAl合金膜の形成を行うところに要旨が存在する。
【0012】
好ましい実施形態において、前記合金元素はNiであり、前記基板の温度は250℃以上である。
【0013】
本発明には、基板上にて、酸化物透明導電膜とAl合金膜が直接接触する構造を備えた表示装置であって、前記Al合金膜は、Ag、Zn、Cu、およびNiよりなる群から選択される少なくとも一種の合金元素を0.5原子%以下含有し、前記酸化物透明導電膜と前記Al合金膜との接触電気抵抗の分散を当該表示装置から得られた100個の試料に基づいてガウス分布で近似したとき、その分散係数σが0.5以下である表示装置も包含される。
【0014】
好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、薄膜トランジスタの走査線の構成部材である。
【0015】
好ましい実施形態において、前記Al合金膜は、薄膜トランジスタのドレイン電極の構成部材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、前述した特許文献1のように、基板にAl合金膜を成膜した後、所定の加熱処理(本発明の作用を発揮させるのに有用な、上記合金元素の析出物を得るための後加熱処理)を行う必要がなく、当該「後加熱処理」のための独立したプロセスを省略できる。
【0017】
また、本発明によれば、バリアメタル層を介在させずに、Al合金膜を酸化物透明導電膜からなる透明画素電極と直接接触させることができ、Al合金膜と透明画素電極との接触電気抵抗が低く、耐熱性も高められ、Al合金の電気抵抗率も低減された表示装置を提供することができる。更に、本発明によれば、当該表示装置から得られる試料間の接触電気抵抗のバラツキも顕著に抑えられる。
【0018】
従って、本発明の製造方法は、生産性に優れ、表示電位の一層高い表示装置を提供し得るダイレクトコンタクト技術として、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者は、前述した特許文献1に記載のダイレクトコンタクト技術について、特に、生産性の更なる向上と電気抵抗率の一層の低減化を目指して検討を重ねてきた。具体的には、特許文献1に記載の方法において、合金元素の析出物(以下では、単に「析出物」と呼ぶ場合がある。)を得るための「後加熱処理」を省略でき、Al合金の電気抵抗率を一層低減し得るダイレクトコンタクト技術を提供するため、検討をしてきた。
【0020】
その結果、(ア)上記特許文献1のように、基板上にAl合金膜を成膜した後、加熱処理をするのではなく、基板の温度を合金元素の析出温度以上に制御してからAl合金膜を成膜すれば、成膜後の「後加熱処理」を省略でき、生産性が高められること、(イ)しかも、本発明によれば、前述した特許文献1の方法に比べ、Alに添加される合金元素の量を低く制御している(上限0.5原子%)ため、Al合金の電気抵抗率が一層低減され、消費電力の削減効果や応答速度の向上効果が促進されること、(ウ)このようなAl合金膜形成工程を含む表示装置の製造方法を用いれば、当該表示装置の接触電気抵抗のバラツキを充分低く抑えられること、を見出し、本発明を完成した。
【0021】
ここで、Al合金膜に添加される合金元素の添加量と、Al合金の電気抵抗率および接触電気抵抗のバラツキとの関係について、もう少し詳しく説明する。
【0022】
一般に、AlにNiなどの合金元素を添加すると、合金元素量の増加につれてAl合金の電気抵抗率も上昇する傾向が認められる。電気抵抗率の上昇は、消費電力の増大や信号遅延(応答速度の遅れ)をもたらす。従って、前述した特許文献1の場合(合金元素の添加量の上限6原子%)に比べ、本発明のように合金元素の添加量の上限を0.5原子%と低く設定すれば、Al合金の電気抵抗率も低減することは、ある程度予想され得る。
【0023】
しかしながら、本発明者の検討によれば、合金元素の添加量の上限を0.5原子%と、著しく低く制御すると、Al合金の電気抵抗率は低減する一方、当該Al合金膜を有する表示装置から得られた試料間の接触電気抵抗のバラツキが大きくなることが判明した(後記する実施例を参照)。これは、特許文献1を含め、従来では、認識されていなかった課題である。
【0024】
本発明によれば、「Al合金の電気抵抗率の更なる低減化と後加熱処理などのプロセスの省略」という従来の解決課題を解消できるだけでなく、これまで認識されていなかった課題、すなわち、合金元素の添加量を著しく低く抑えたことによる新たな課題(接触電気抵抗のバラツキの抑制)も解決できる点で、極めて有用である。
【0025】
以下、本発明の製造方法について、詳細に説明する。
【0026】
本発明の製造方法は、基板上にて、酸化物透明導電膜とAl合金膜が直接接触する構造を備えた表示装置の製造方法であって、前記Al合金膜は、Ag、Zn、Cu、およびNiよりなる群から選択される少なくとも一種の合金元素を0.5原子%以下含有し、前記基板の温度を前記合金元素の析出温度以上に制御してAl合金膜の形成を行うものである。
【0027】
以下では、上記のAl合金膜を、単に、「Al合金膜」と略記する場合がある。
【0028】
本発明の特徴部分は、前述したように、基板上にAl合金膜を成膜するに当たり、基板の温度を合金元素の析出温度以上に高めたところにある。このように基板温度を予め、所定温度以上に高めてからAl合金膜を形成すれば、前述した特許文献1に記載されている成膜後の「後加熱処理」を省略しても、特許文献1と同様の析出物が得られる。従って、本発明法によれば、前述した特許文献1に比べて生産性が高められるほか、合金元素量の低減によるAl合金の電気抵抗率の低減、更には、接触電気抵抗のバラツキも著しく抑えられる。
【0029】
本明細書において、「合金元素の析出温度」とは、Al合金膜の電気抵抗率を熱履歴を加えたあとに計測したとき、電気抵抗率が急激に低下する温度範囲を意味する。具体的には、本発明で規定する合金元素(Ag、Zn、Cu、Ni)を含むAl合金膜を100〜300℃の温度範囲で30分間加熱した後、配線幅100μm、配線長1000μmのパターンを用いて4端子法でシート抵抗を測定し、電気抵抗率に換算したとき、電気抵抗率が急激に低下する温度範囲を、「合金元素の析出温度」とする。
【0030】
合金元素の析出温度は、母材のAlに対して添加する元素の種類ごとに一定の値を示す。合金元素の添加量が増加すると、析出温度は一定であるが、析出後の電気抵抗率は添加量の少ないものに比べて高い。
【0031】
表1に、0.5原子%の合金元素(Ag、Zn、Cu、Ni)を含むAl合金膜を用いたときの合金元素の析出温度を示す。また、実施例に用いたAl合金膜(合金元素の添加量=2.0原子%、0.3原子%、0.2原子%、0.1原子%)における合金元素の析出温度は、以下のとおりである。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明において、0.5原子%の合金元素を含むAl合金膜を用いる場合、基板の温度を、表1に示す合金元素の析出温度(少なくとも、表1に示す析出温度の範囲の下限以上の温度)以上に制御してからAl合金膜を成膜する。プロセスや装置管理の容易さ、ヒロック生成回避などの観点からすれば、基板温度はできるだけ低温であることが好ましい。なお、基板温度の上限は、主に、表示装置の製造工程における熱処理温度との関係で定められ、当該熱処理温度の上限を、おおむね、基板温度の上限とすれば良い。
【0034】
具体的には、合金元素としてNiを用いた場合の好ましい基板温度は、おおむね、250℃以上300℃以下である。Agを用いた場合の好ましい基板温度は、おおむね、200℃以上250℃以下である。Cuを用いた場合の好ましい基板温度は、おおむね、200℃以上250℃以下である。Znを用いた場合の好ましい基板温度は、おおむね、250℃以上300℃以下である。
【0035】
本発明では、基板全体の温度が上記範囲になるように制御されていれば良い。従って、基板温度を200℃に制御したい場合には、基板全体の温度が200℃以上になるよう、成膜工程の間200℃で保持すればよい。
【0036】
本発明に係るAl合金膜の成膜方法は、上記のように基板温度を制御したところに最大の特徴があり、上記以外の成膜工程は特に限定されず、通常、用いられる手段を採用することができる。
【0037】
Al合金膜の成膜方法としては、代表的には、スパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法が挙げられる。スパッタリング法とは、基板と、形成しようとする薄膜と同種の材料から構成されるスパッタリングターゲット(ターゲット材)との間でプラズマ放電を形成し、プラズマ放電によってイオン化した気体をターゲット材に衝突させることによってターゲット材の原子をたたき出し、基板上に積層させて薄膜を作製する方法である。スパッタリング法は、真空蒸着法やアークイオンプレーティング(AIP:Arc Ion Plating)法と異なり、ターゲット材と同じ組成の薄膜を形成できるというメリットを有している。特に、スパッタリング法で成膜されたAl合金膜は、平衡状態で固溶し得ないNdなどの合金元素を固溶でき、薄膜として優れた性能を発揮するなどの利点を有している。ただし、本発明は上記に限定する主旨ではなく、Al合金膜の成膜方法に通常用いられる方法を適宜採用することができる。
【0038】
本発明に用いられるAl合金膜は、合金元素として、Ag、Zn、Cu、およびNiよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5原子%以下含有している。これらの元素は、特に、Al合金膜と透明画素電極との接触電気抵抗を低減するのに有用である。これらは単独で添加しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
このうち、Niは、接触電気抵抗低減作用に極めて優れているため、本発明に用いられるAl合金膜は、少なくともNiを合金元素として含んでいることが好ましい。
【0040】
合金元素による上記作用を有効に発揮させるためには、合金元素のうち、コンタクト性に影響を与えるNi、Ag、Cu、Znの含有量を合計で、0.1原子%以上とすることが好ましく、0.2原子%以上とすることがより好ましい。ただし、合金元素の含有量が多くなると、Al合金の電気抵抗率が増加するため、本発明では、上限を0.5原子%とした。Al合金の電気抵抗率低減という観点からすれば、合金元素の含有量は少ない方が良い。合金元素の好ましい含有量は、接触電気抵抗の低減とAl合金の電気抵抗率の低減とのバランスによって適宜適切に定めることができる。
【0041】
本発明に用いられるAl合金膜は、前述した合金元素(Ag、Zn、Cu、およびNiの少なくとも一種)のほか、特許文献1に記載の耐熱性向上元素(Nd、Y、Fe、Coの少なくとも一種)を含有してもよい。また、上記以外の耐熱性向上元素(例えば、Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wの少なくとも一種、Mg,Cr,Mn,Ru,Rh,Pd,Ir,Pt,La,Gd,Tb,Dyの少なくとも一種)を添加してもよい。あるいは、Sr、Sm、Ge、Biの少なくとも一種を添加してもよい。これらの合金元素を更に添加しても、本発明の作用効果が得られることを、別途実験を行なって確認をしている。
【0042】
本発明に用いられるAl合金膜は、ソース−ドレイン電極やゲート電極の配線材料や反射膜の材料などとして適用することができる。
【0043】
本発明には、上記のAl合金膜と酸化物透明導電膜とが直接接触する構造を備えた表示装置も包含される。本発明の表示装置は、酸化物透明導電膜とAl合金膜との接触電気抵抗の分散(σ)を上記の表示装置から得られた100個の試料に基づいて、下記の式f(x)で表されるガウス分布で近似したとき、その分散係数σが0.5以下を満足している。すなわち、本発明によれば、試料間の分散のバラツキが著しく少ない表示装置が得られる。
【0044】
【数1】

【0045】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るTFT基板の好ましい実施形態を説明する。以下では、アモルファスシリコンTFT基板またはポリシリコンTFT基板を備えた液晶表示装置を代表的に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。本発明に用いられるAl合金膜は、例えば、反射型液晶表示装置等の反射電極、外部への信号入出力のために使用されるTAB(タブ)接続電極にも同様に適用できることを実験により確認している。
【0046】
(実施形態1)
図3を参照しながら、アモルファスシリコンTFT基板の実施形態を説明する。
図3は、本発明に係るボトムゲート型のTFT基板の好ましい実施形態を説明する概略断面説明図である。参考のため、図2に、従来の代表的なアモルファスシリコンTFT基板の概略断面説明図を添付する。
【0047】
図2に示すように、従来のTFT基板では、走査線25の上、ゲート電極26の上、ソースードレイン配線34の上または下に、それぞれ、バリアメタル層51、52、53、54が形成されているのに対し、本実施形態のTFT基板では、バリアメタル層51、52、54を省略することができる。すなわち、本実施形態によれば、従来のようにバリアメタル層を介在させることなく、TFTのソース−ドレイン電極29に用いられる配線材料を透明画素電極5と直接接続することができ、これによっても、従来のTFT基板と同程度以上の良好なTFT特性を実現できる。
【0048】
次に、図4から図11を参照しながら、図3に示す本発明に係るアモルファスシリコンTFT基板の製造方法の一例を説明する。ここでは、ソース−ドレイン電極およびその配線に用いられる代表的な材料として、Al−0.5原子%Ni−0.35原子%La合金を使用し、ゲート電極およびその配線に用いられる代表的な材料として、Al−0.5原子%Ni−0.35原子%La合金を使用しているが、これに限定する趣旨ではない。薄膜トランジスタは、水素化アモルファスシリコンを半導体層として用いたアモルファスシリコンTFTである。図4から図11には、図3と同じ参照符号を付している。
【0049】
まず、ガラス基板(透明基板)1aに、スパッタリング法を用いて、厚さ200nm程度のAl−0.5原子%Ni−0.35原子%La合金膜を成膜する。スパッタリングの成膜温度は、250℃とした。この膜をパターニングすることにより、ゲート電極26および走査線25を形成する(図4を参照)。このとき、後記する図5において、ゲート絶縁膜27のカバレッジが良くなる様に、上記積層薄膜の周縁を約30°〜40°のテーパー状にエッチングしておくのがよい。
【0050】
次いで、図5に示すように、例えばプラズマCVD法などの方法を用いて、厚さ約300nm程度の窒化シリコン膜(SiNx)でゲート絶縁膜27を形成する。プラズマCVD法の成膜温度は、約350℃とした。続いて、例えばプラズマCVD法などの方法を用いて、ゲート絶縁膜27の上に、厚さ50nm程度の水素化アモルファスシリコン膜(αSi−H)55および厚さ300nm程度の窒化シリコン膜(SiNx)を成膜する。
【0051】
続いて、ゲート電極26をマスクとする裏面露光により、図6に示すように窒化シリコン膜(SiNx)をパターニングし、チャネル保護膜を形成する。更にその上に、リン(P)をドーピングした厚さ50nm程度のn+型水素化アモルファスシリコン膜(na−Si−H)56を成膜した後、図7に示すように、水素化アモルファスシリコン膜(a−Si−H)55およびn型水素化アモルファスシリコン膜(na−Si−H)56をパターニングする。
【0052】
次に、その上に、スパッタリング法を用いて、厚さ50nm程度のMo膜53と厚さ300nm程度のAl−0.5原子%Ni−0.35原子%La合金膜28,29とを順次積層する。スパッタリングの成膜温度は、250℃とした。次いで、図8に示す様にパターニングすることにより、信号線と一体のソース電極28と、画素電極5に直接接続されるドレイン電極29とが形成される。更に、ソース電極28およびドレイン電極29をマスクとして、チャネル保護膜(SiNx)上のn型水素化アモルファスシリコン膜(na−Si−H)56をドライエッチングして除去する。
【0053】
次に、図9に示すように、例えばプラズマCVD装置などを用いて、厚さ300nm程度の窒化シリコン膜30を成膜し、保護膜を形成する。このときの成膜温度は、例えば250℃程度で行なわれる。次いで、窒化シリコン膜30上にフォトレジスト層31を形成した後、窒化シリコン膜30をパターニングし、例えばドライエッチング等によって窒化シリコン膜30にコンタクトホール32を形成する。同時に、パネル端部のゲート電極上のTABとの接続に当たる部分にコンタクトホール(不図示)を形成する。
【0054】
次に、例えば酸素プラズマによるアッシング工程を経た後、図10に示すように、例えばアミン系等の剥離液を用いてフォトレジスト層31を剥離する。最後に、例えば保管時間(8時間程度)の範囲内で、図11に示すように、例えば厚さ40nm程度のITO膜を成膜し、ウェットエッチングによるパターニングを行うことによって透明画素電極5を形成する。同時に、パネル端部のゲート電極のTABとの接続部分に、TABとのボンディングのためITO膜をパターニングすると、TFTアレイ基板1が完成する。
【0055】
このようにして作製されたTFT基板は、ドレイン電極29と透明画素電極5とが直接コンタクトされており、またゲート電極26とTAB接続用のITO膜も直接コンタクトされている。
【0056】
上記では、透明画素電極5として、ITO(酸化インジウムスズ)膜を用いたが、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンの少なくとも一種を含む複合酸化物を用いても良い。例えば、IZO膜(InOx−ZnOx系酸化物透明導電膜)を用いることもできる。また、活性半導体層として、アモルファスシリコンの代わりにポリシリコンを用いてもよい(後記する実施形態2を参照)。
【0057】
このようにして得られるTFT基板を使用し、例えば、以下に記載の方法によって、図21に示す液晶表示装置を完成させる。
【0058】
まず、上記のようにして作製したTFT基板1の表面に、例えばポリイミドを塗布し、乾燥してからラビング処理を行って配向膜を形成する。
【0059】
一方、対向基板2は、ガラス基板上に、例えばクロム(Cr)をマトリックス状にパターニングすることによって遮光膜9を形成する。次に、遮光膜9の間隙に、樹脂製の赤、緑、青のカラーフィルタ8を形成する。遮光膜9とカラーフィルタ8上に、ITO膜のような透明導電性膜を共通電極7として配置することによって対向電極を形成する。そして、対向電極の最上層に例えばポリイミドを塗布し、乾燥した後、ラビング処理を行って配向膜11を形成する。
【0060】
次いで、TFT基板1と対向基板2の配向膜11が形成されている面とを夫々対向するように配置し、樹脂製などのシール材16により、液晶の封入口を除いてTFT基板1と対向基板2とを貼り合わせる。このとき、TFT基板1と対向基板2との間には、スペーサー15を介在させるなどして2枚の基板間のギャップを略一定に保つ。
【0061】
このようにして得られる空セルを真空中に置き、封入口を液晶に浸した状態で徐々に大気圧に戻していくことにより、空セルに液晶分子を含む液晶材料を注入して液晶層を形成し、封入口を封止する。最後に、空セルの外側の両面に偏光板10を貼り付けて液晶表示装置を完成させる。
【0062】
次に、図21に示したように、液晶表示装置を駆動するドライバ回路13を液晶表示装置に電気的に接続し、液晶表示装置の側部あるいは裏面部に配置する。そして、液晶表示装置の表示面となる開口を含む保持フレーム23と、面光源をなすバックライト22と導光板20と保持フレーム23によって液晶表示装置を保持し、液晶表示装置を完成させる。
【0063】
(実施形態2)
図12を参照しながら、ポリシリコンTFT基板の実施形態を詳細に説明する。
図12は、本発明に係るトップゲート型のTFT基板の好ましい実施形態を説明する概略断面説明図である。
【0064】
本実施形態は、活性半導体層として、アモルファスシリコンの代わりにポリシリコンを用いた点、ボトムゲート型ではなくトップゲート型のTFT基板を用いた点、及びソース−ドレイン電極およびゲート電極の配線材料としてではなくソース−ドレイン電極の配線材料として、本発明の要件を満足するAl−0.2原子%Ag−0.35原子%La合金を用いた点において、前述した実施形態1と、主に相違している。詳細には、図12に示す本実施形態のポリシリコンTFT基板では、活性半導体膜は、リンがドープされていないポリシリコン膜(poly−Si)とリンもしくはヒ素(As)がイオン注入されたポリシリコン膜(npoly−Si)とから形成されている点で、前述した図3に示すアモルファスシリコンTFT基板と相違する。また、信号線は、層間絶縁膜(SiOx)を介して走査線と交差するように形成されている。
【0065】
本実施形態によれば、従来のようにバリアメタル層を介在させることなく、TFTのドレイン電極29に用いられる材料を透明画素電極5と直接接続することができ、これによっても、従来のTFT基板と同程度以上の良好なTFT特性を実現できることを実験によって確認している。
【0066】
本実施形態において、上記の合金を走査線の材料に適用すれば、バリアメタル層51、52を省略することができる。これらにおいても、従来のTFT基板と同程度以上の良好なTFT特性を実現できることを確認している。
【0067】
次に、図13から図19を参照しながら、図12に示す本発明に係るポリシリコンTFT基板の製造方法の一例を説明する。ここでは、ソース−ドレイン電極ならびにその配線材料として、Al−0.2原子%Ag−0.35原子%La合金を使用している。薄膜トランジスタは、ポリシリコン膜(poly−Si)を半導体層として用いたポリシリコンTFTである。図13から図19には、図12と同じ参照符号を付している。
【0068】
まず、ガラス基板1a上に、例えばプラズマCVD法などにより、基板温度約300℃程度で、厚さ50nm程度の窒化シリコン膜(SiNx)、厚さ100nm程度の酸化シリコン膜(SiOx)、および厚さ約50nm程度の水素化アモルファスシリコン膜(a−Si−H)を成膜する。次に、水素化アモルファスシリコン膜(a−Si−H)をポリシリコン化するため、熱処理(約470℃で1時間程度)およびレーザーアニールを行う。脱水素処理を行った後、例えばエキシマレーザアニール装置を用いて、エネルギー約230mJ/cm2程度のレーザーを水素化アモルファスシリコン膜(a−Si−H)に照射することにより、厚さが約0.3μm程度のポリシリコン膜(poly−Si)を得る(図13)。
【0069】
次いで、図14に示すように、プラズマエッチング等によってポリシリコン膜(poly−Si)をパターニングする。次に、図15に示すように、厚さが約100nm程度の酸化シリコン膜(SiOx)を成膜し、ゲート絶縁膜27を形成する。ゲート絶縁膜27の上に、スパッタリング等によって、厚さ約200nm程度のAl−0.2原子%Ag−0.35原子%La合金膜を成膜した後、ウェットエッチング等の方法でパターニングする。これにより、走査線となるゲート電極26が形成される。
【0070】
続いて、図16に示すように、フォトレジスト31でマスクを形成し、例えばイオン注入装置などにより、例えばリンを50keV程度で1×1015個/cm2程度ドーピングし、ポリシリコン膜(poly−Si)の一部にn型ポリシリコン膜(npoly−Si)を形成する。次に、フォトレジスト31を剥離し、例えば500℃程度で熱処理することによってリンを拡散させる。
【0071】
次いで、図17に示すように、例えばプラズマCVD装置などを用いて、厚さ500nm程度の酸化シリコン膜(SiOx)を基板温度約250℃程度で成膜し、層間絶縁膜を
形成した後、同様にフォトレジストによってパターニングしたマスクを用いて層間絶縁膜(SiOx)とゲート絶縁膜27の酸化シリコン膜をドライエッチングし、コンタクトホールを形成する。スパッタリングにより、厚さ50nm程度のMo膜53と厚さ450nm程度のAl−0.2原子%Ag−0.35原子%La合金膜を成膜した後、パターニングすることによって、信号線に一体のソース電極28およびドレイン電極29を形成する。その結果、ソース電極28とドレイン電極29は、Mo膜53を介して各々コンタクトホールを介してn型ポリシリコン膜(npoly−Si)にコンタクトされる。
【0072】
次いで、図18に示すように、プラズマCVD装置などにより、厚さ300nm程度の窒化シリコン膜(SiNx)を基板温度250℃程度で成膜し、層間絶縁膜を形成する。層間絶縁膜の上にフォトレジスト層31を形成した後、窒化シリコン膜(SiNx)をパターニングし、例えばドライエッチングによって窒化シリコン膜(SiNx)にコンタクトホール32を形成する。
【0073】
次に、図19に示すように、例えば酸素プラズマによるアッシング工程を経た後、前述した実施形態1と同様にしてアミン系の剥離液などを用いてフォトレジストを剥離してから、ITO膜を成膜し、ウエットエッチングによるパターニングを行って画素電極5を形成する。
【0074】
このようにして作製されたポリシリコンTFT基板では、ドレイン電極29はITO透明画素電極5に直接コンタクトされている。ドレイン電極29を構成するAl−0.2原子%Ag−0.35原子%La合金膜と画素電極5との界面にはAg析出物が生成すると同時に、Alの再結晶が促進され、Al合金の電気抵抗率も大幅に低減されるようになる。
【0075】
次に、トランジスタの特性を安定させるため、例えば250℃程度で1時間程度熱処理すると、ポリシリコンTFTアレイ基板が完成する。
【0076】
第2の実施形態に係るTFT基板、および該TFT基板を備えた液晶表示装置によれば、前述した第1の実施形態に係るTFT基板と同様の効果が得られる。また、第2の実施形態におけるAl合金は、反射型液晶表示装置の反射電極として用いることもできる。
【0077】
このようにして得られるTFTアレイ基板を用い、前述した実施形態1のTFT基板と同様にして液晶表示装置を完成させる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら制限されず、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
(実施例1)
[I]試験用試料の作製
ITO膜とAl合金膜との間の接触電気抵抗を調べるため、本発明の試験用試料(本発明試料)として、図1に示すケルビンパターンを作製した。ケルビンパターンの作製方法は、下記(1)〜(5)に示すとおりである。実施例1では、0.5原子%のNiを含むAl−0.5原子%Ni合金膜を用いた。また、Al合金膜の合金元素の含有量は、ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)法によって求めた(後記する実施例2も同じ)。
【0080】
(1)まず、無アルカリガラス(コーニング社製#1737)を基板として用い、上記基板を250℃(表1に示すNiの析出温度以上)に加熱した後、スパッタリング法によって厚さ300nmのAl−0.5原子%Ni合金膜を形成した。スパッタ条件は、以下のとおりである。
スパッタガス:Ar、スパッタ圧力:3mTorr
【0081】
(2)次に、フォトリソグラフィー法によるパターニングを行なった後、CVD法によって厚さ300nmの絶縁膜(SiN)を成膜した。
【0082】
(3)次いで、フォトリソグラフィー法によって80μm角のコンタクトホールをパターニングした後、以下の条件で反応性プラズマによるドライエッチング(RIE)を行ない、コンタクトホールを形成した。このエッチング処理により、最表層から約10nm厚さのAl合金膜が除去された。
エッチングガス:アルゴン/酸素/六フッ化硫黄混合ガス
エッチング時間:60秒
絶縁膜とAl合金膜の両方をエッチングするため、絶縁膜のエッチング時間に追加
して、時間換算で100%のオーバーエッチングを行なった。
【0083】
(4)その後、酸素プラズマによるアッシング工程を経た後、アミン系の剥離液(東京応化社製「剥離液106」)を用いて100℃で5分間洗浄し、フォトレジストを剥離した。これにより、Al合金膜の表層に形成されたフッ化物や酸化物、カーボンなどの汚染物質(厚さ約数mm程度)が除去された。
【0084】
(5)次いで、厚さ200nm程度のITO膜(酸化インジウムに10質量%の酸化スズを加えた酸化インジウムスズ)をスパッタリング法によって成膜した後、フォトリソグラフィー法によってパターニングを行い、本発明試料を得た。
【0085】
[II]参照試料の作製
比較のため、特許文献1と同様、Al合金膜の成膜後に後加熱処理を行った参照試料を作製した。
【0086】
具体的には、前述した本発明試料の作製法の工程(1)において、基板温度を室温とし、厚さ300nmのAl−0.5原子%Ni合金膜をスパッタリング法によって形成した後に、150℃の温度で15〜60分間加熱処理をしたこと以外は、本発明試料の作製法と同様にして参照試料を作製した。
【0087】
[III]接触電気抵抗の測定
図1に示すケルビンパターン(コンタクトホールサイズ:80μm角)を用い、マニュアルプローバと半導体パラメータアナライザー「HP4156A」(ヒューレットパッカード社製)を用いて、Al合金膜とITO膜との間の接触電気抵抗を4端子法で測定した。4端子法では、ITO−Al合金に電流を流し、別の端子でITO−Al合金間の電圧降下を測定した。具体的には、図1のI1−I2間に電流Iを流し、V1−V2間の電圧Vをモニターすることにより、コンタクト部Cの接触電気抵抗Rを[R=(V1−V2)/I2]として求めた。
【0088】
[IV]接触電気抵抗の分散係数σおよび平均値の測定
上記の方法によって本発明試料および参照試料を100個ずつ作製し、前述した方法に基づいて接触電気抵抗を測定した。次いで、前述した(1)式に基づき、本発明試料100個および参照試料100個の接触電気抵抗の分散係数σを算出した。
【0089】
図20に、上記試料のそれぞれのガウス分布(正規分布)曲線を示す。
【0090】
図20に示すように、本発明法で作製した本発明試料の接触電気抵抗の分散係数σは0.25と小さく、従来法で作製した参照試料(接触電気抵抗の分散係数0.5)に比べて、バラツキの程度が少なく、安定した接触電気抵抗が得られることが分かった。また、本発明試料の接触電気抵抗の平均値は150Ω・cmと、参照試料(接触電気抵抗の平均値250Ω・cm)に比べて低く抑えられた。
【0091】
従って、本発明の方法を用いれば、従来に比べ、接触電気抵抗が低く、バラツキが抑えられた表示装置が得られることが確認された。
【0092】
(実施例2)
本実施例では、表2に示す様々な組成のAl合金を用い、酸化物透明導電膜がITOの場合について、実施例1と同様にして本発明試料および参照試料を100個ずつ作製し、接触電気抵抗の分散係数σを算出した。これらの結果を表2に併記する。表2において、本発明試料の接触電気抵抗の平均値は、参照試料の接触電気抵抗の平均値を1としたときの相対値で示している。表2には、前述した実施例1(Ni=0.5原子%)の結果も併記した。
【0093】
【表2】

【0094】
まず、Niについて考察する。
【0095】
表2に示すように、本発明試料(合金元素の添加量≦0.5原子%)を用いれば、従来法で作製した参照試料に比べ、接触電気抵抗の平均値が小さくなり、且つ、接触電気抵抗のバラツキも小さく(詳細には、分散係数σ≦0.5)抑えることができる。
【0096】
例えば、Ni量=0.3原子%の場合、本発明試料の接触電気抵抗の分散係数σは0.25であり、参照試料(接触電気抵抗の分散係数σ=0.6)に比べて、小さくなった。また、本発明試料の接触電気抵抗の平均値は0.5以下に抑えられた。
【0097】
上記と同様の傾向は、Ni量=0.2原子%、0.1原子%のいずれの場合にも認められた。
【0098】
なお、表2では、参考のため、Ni量=2原子%と、本発明で規定する合金元素量の上限(0.5原子%)を超えるAl合金膜を用いた結果も併記している。これは、本発明の課題(接触電気抵抗のバラツキ抑制)は、合金元素量を本発明のように著しく低減した場合に特に顕著に見られることを実証するために行なったものである。
【0099】
すなわち、Ni量が2原子%の場合、本発明試料および参照試料のいずれを用いても、接触電気抵抗のバラツキが小さく抑えられた(本発明試料のσ=0.10、参照試料のσ=0.12)が、本発明のようにAl合金の電気抵抗率低減化を優先適用してNi量の上限を0.5原子%と低く抑えると、合金元素量の減少につれて接触電気抵抗のバラツキもほぼ増加する傾向を示すことが確認された。
【0100】
Niと同様の傾向は、他の合金元素(Ag、Cu、Zn)を用いたときにも見られた。
【0101】
更に、酸化物透明導電膜として前述したITOの代わりにIZOを用いたこと以外は、上記と同様にして実験を行なった。その結果を表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
表3に示すように、IZOを用いたときも、上記と同様の傾向を示す実験結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、Al合金膜と酸化物透明導電膜(ITO膜)との間の接続電気抵抗率の測定に用いたケルビンパターン(TEGパターン)を示す図である。
【図2】図2は、従来の代表的なアモルファスシリコンTFT基板の構成を示す概略断面説明図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態に係るTFT基板の構成を示す概略断面説明図である。
【図4】図4は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図5】図5は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図6】図6は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図7】図7は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図8】図8は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図9】図9は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図10】図10は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図11】図11は、図3に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図12】図12は、本発明の第2の実施形態に係るTFT基板の構成を示す概略断面説明図である。
【図13】図13は、図12に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図14】図14は、図12に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図15】図15は、図12に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図16】図16は、図12に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図17】図17は、図12に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図18】図18は、図12に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図19】図19は、図12に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図20】図20は、実施例1において、Al−0.5原子%Ni合金を用いて製造した本発明試料と参考試料の接触電気抵抗のガウス分布(正規分布)曲線である。
【図21】図21は、アモルファスシリコンTFT基板が適用される代表的な液晶表示装置の構成を示す概略断面拡大説明図である。
【符号の説明】
【0105】
1 TFT基板
2 対向基板
3 液晶層
4 薄膜トランジスタ(TFT)
5 透明画素電極
6 配線部
7 共通電極
8 カラーフィルタ
9 遮光膜
10a、10b 偏光板
11 配向膜
12 TABテープ
13 ドライバ回路
14 制御回路
15 スペーサー
16 シール材
17 保護膜
18 拡散板
19 プリズムシート
20 導光板
21 反射板
22 バックライト
23 保持フレーム
24 プリント基板
25 走査線
26 ゲート電極
27 ゲート絶縁膜
28 ソース電極
29 ドレイン電極
30 保護膜(シリコン窒化膜)
31 フォトレジスト
32 コンタクトホール
33 アモルファスシリコンチャネル膜(活性半導体膜)
34 信号線(ソース−ドレイン電極配線)
51、52、53 バリアメタル層
55 ノンドーピング水素化アモルファスシリコン膜(a−Si−H)
56 n型水素化アモルファスシリコン膜(na−Si−H)
100 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にて、酸化物透明導電膜とAl合金膜が直接接触する構造を備えた表示装置の製造方法であって、
前記Al合金膜は、Ag、Zn、Cu、およびNiよりなる群から選択される少なくとも一種の合金元素を0.5原子%以下含有し、
前記基板の温度を前記合金元素の析出温度以上に制御してAl合金膜の形成を行うことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記合金元素はNiであり、前記基板の温度を250℃以上に制御するものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
基板上にて、酸化物透明導電膜とAl合金膜が直接接触する構造を備えた表示装置であって、
前記Al合金膜は、Ag、Zn、Cu、およびNiよりなる群から選択される少なくとも一種の合金元素を0.5原子%以下含有し、
前記酸化物透明導電膜と前記Al合金膜との接触電気抵抗の分散を当該表示装置から得られた100個の試料に基づいてガウス分布で近似したとき、その分散係数σが0.5以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記Al合金膜が、薄膜トランジスタの走査線の構成部材である請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記Al合金膜が、薄膜トランジスタのドレイン電極の構成部材である請求項3に記載の表示装置。

【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−10052(P2009−10052A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168286(P2007−168286)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】