説明

表面処理装置

【課題】熱交換機構の流路部分の電界腐食を抑え、エッチングやプラズマCVDにおいてエッチングレートやデポレートが低下するのを防ぐ。
【解決手段】内部を真空に排気する排気系22、内部にガスを導入するガス導入系21を有する処理室1と、処理室1の内部に配置され基板4が載置される載置手段と、処理室1の内部に配置された対向電極2及び基板載置電極3と、対向電極2及び基板載置電極3に電圧を印加してガスをプラズマ化する基板載置電極用電源13及び静電チャック電極用電源15と、媒体供給手段から供給されて循環される冷却水の流路を内部に有し、電極の近傍に配置されて電極の温度を調整するための水冷ホルダー6及び冷媒ジャケット8とを備える。そして、水冷ホルダー6及び冷媒ジャケット8は、誘電体によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマやイオンやラジカル等を利用して半導体基板等の処理対象物を処理する表面処理装置に関し、特に熱交換機構の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large-Scale Integration)等の半導体の製造工程で用いられる各種の表面処理装置が用いられている。表面処理装置として、例えばプラズマ処理装置では、プラズマに接する部分、例えば対向電極や、処理対象物としての基板が載置される基板載置電極を冷媒によって冷却する冷却機構を備えている(特許文献1,2参照)。冷却機構は、これら電極の温度上昇を防ぎ、電極を均一な温度に保ち、基板を均一に処理する技術として多用されている。
【0003】
ここではスパッタ装置におけるターゲットのバッキングプレート水冷機構を一例に挙げて説明するが、プラズマエッチング、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等の他のプラズマ処理装置でも同様である。図5は、従来の、ターゲットのバッキングプレート水冷機構を説明するための図である。
【0004】
従来の、ターゲットのバッキングプレート水冷機構は、図5に示すように、ターゲット101が載置されるバッキングプレート102を備えており、バッキングプレート102の内部に冷却水路122が設けられている。バッキングプレート102は、導電性材料で形成されており、冷却水路122の両端に、冷却水が流入及び排出される水流入口141及び水排出口142が設けられている。また、バッキングプレート102には、冷却水路122が蛇行して設けられることによって放熱用のフィン123が形成されている。水流入口141から冷却水路122に流入した冷却水は、フィン123を介して熱交換して水排出口142から排出される。
【特許文献1】特開2003−158120号公報
【特許文献2】特開2003−257943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のバッキングプレート水冷機構は、フィンによって冷却効率が向上するものの、導電性材料で形成されたバッキングプレートが電極を兼ねている。このため、従来のバッキングプレート水冷機構は、直流又は高周波出力が電極に印加されたときに、バッキングプレート水冷機構に電界がかかり、電界腐食が発生するという問題があった。このため、バッキングプレート水冷機構を定期的に交換する必要がある。
【0006】
このような問題は、スパッタ装置に限らずに、プラズマ処理装置等の熱媒体として水や純水を用いる熱交換機構一般に関わる問題である。特に、高周波電力を用いる場合には、冷却水のイオン濃度が高いときに、高周波電界がバッキングプレート水冷機構の表面を伝わり冷却水路に到達して、導電率が上昇した冷却水に直接印加され、冷却水に高周波電力が吸収され、外部に流出するという問題がある。このような損失は、出力効率を低下させるだけでなく、プラズマ状態が変化するので、基板の処理レートの低下を招くという問題がある。
【0007】
エッチング装置では、基板温度と、基板に対向する対向電極の温度とを一定に保てない場合には、基板でのラジカルやイオンの反応が変化するので、エッチング特性が大幅に変わってしまうという問題がある。また、基板に対向する対向電極の温度が変わった場合には、ラジカルやイオンの反応が変化し、この反応物が再び気相中に戻り、気相中のラジカル密度が変化し、基板のエッチング特性を変化させるという問題がある。
【0008】
このため、基板を載置する基板載置電極や対向電極の温度を一定に保つ熱交換機構の冷媒として工業用水を用いずに、純水を用いて循環させて、熱交換機によって一定温度に保つという構成を採っている。しかし、このように構成することで、金属材料からなる熱交換器から電界腐食によってイオンが純水に溶け、この溶けたイオンによってさらに電界腐食が進んでしまう問題点がある。したがって、熱交換機構の寿命が短くなるだけでなく、高周波電力が、イオン濃度が高くなった純水から外部に抜けるという問題が避けられない。これを防ぐために、イオンフィルターによって純水中のイオンを除く方式が採られているが、イオンが完全に取り除かれずに、高周波電力の抜けを十分に防ぐことができない。加えて、フィルター装置の製造コストが増加する。このため、冷媒としては、純水ではなくガルテン等の有機液体が用いられている。しかし、これら有機液体は、純水に比べて冷却効率が数分の一程度しか得られないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、熱媒体として純水を用いた場合あっても、熱交換機構の流路部分の電界腐食が抑制され、エッチングやプラズマCVDにおいてエッチングレートやデポレートが低下するのを防ぐことができる表面処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明に係る表面処理装置は、内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
処理室の内部に配置され、処理対象物が載置される載置手段と、
処理室の内部に配置された電極と、
電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、又は、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、電極の近傍に配置されて電極の温度を調整するための熱交換機構と、を備える。そして、熱交換機構は、誘電体又は非金属材料によって構成されている。
【0011】
また、本発明に係る他の表面処理装置は、内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
処理室の内部に配置された電極と、
電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、又は、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、電極の近傍に配置されて電極の温度を調整するための熱交換機構と、
熱交換機構の上に配置された誘電部材と、を備える。そして、熱交換機構は誘電体によって構成され、誘電部材と熱交換機構との間にシート状の前記電極が設けられる。
【0012】
また、本発明に係る他の表面処理装置は、内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
処理室の内部に配置された電極と、
電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、あるいは、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、電極の近傍に配置されて電極の温度を調整するための熱交換機構と、
熱交換機構の上に配置される処理対象物を静電吸着する静電吸着機構と、を備える。そして、熱交換機構は誘電体によって構成され、静電吸着機構と熱交換機構との間にシート状の電極が設けられる。
【0013】
また、本発明に係る他の表面処理装置は、内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
処理室の内部に配置された電極と、
電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、又は、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、電極の近傍に配置されて電極の温度を調整するための熱交換機構と、
熱交換機構の上に配置された誘電部材と、を備える。そして、熱交換機構は非金属材料によって構成され、誘電部材と熱交換機構との間にシート状の前記電極が配置される。
【0014】
なお、本発明において「熱媒体」とは、冷却するための冷媒や、冷媒と反対に、加熱するための温媒を含んで指している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱交換機構の流路部分の電界腐食が抑制され、高周波電力がイオンを含む純水から抜けることでプラズマ密度が低下して、エッチングやプラズマCVDにおいてエッチングレートやデポレートが低下するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本発明に係る表面処理装置について、本実施形態では、プラズマ処理装置の一例として、エッチング装置に適用する場合について説明する。なお、本発明はエッチング装置に限定されるものではなく、例えばスパッタ装置やプラズマCVD装置にも同様に適用することが可能である。
【0018】
図1に第1の実施形態を示す。図1に示すように、本実施形態のエッチング装置は、処理対象物としての基板4を処理する処理室1と、対向電極2と、基板4が載置される載置手段としての基板載置電極3とを備えている。また、このエッチング装置は、処理室1の内部にガスを導入するガス導入手段としてのガス導入系21と、処理室1の内部を排気する排気手段としての排気系22とを備えている。そして、本発明における熱交換機構は、対向電極2及び基板載置電極3の近傍にそれぞれ設けられており、これら対向電極2及び基板載置電極3の温度を所望の温度に調整するために用いられている。
【0019】
基板載置電極3は、基板4を静電吸着する静電吸着機構としての静電チャック5と、静電チャック5用の電極と基板載置電極3の電極とを兼ねた電極5aと、電極用の電磁シールド25とを有している。電極5aは、処理室1の内部に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段としての、基板載置電極用電源13と、静電チャック電極用電源15とに電気的に接続されている。電磁シールド25は、アース線26によって処理室1の内壁に接続されてアースに接続されている。
【0020】
また、基板載置電極3は、熱交換機構としての水冷ホルダー6を有している。水冷ホルダー6は、誘電体によって形成されており、冷却水入口6aと、冷却水路6bと、冷却水出口6aとを有している。熱媒体としての冷却水は、媒体供給手段としてのポンプによって送られると共に、図示しない冷却機によって所定の温度に制御されて、水冷ホルダー6の冷却水路6bを循環される。また、水冷ホルダー6の下方には、処理室1の内部が真空に排気されたときに、水冷ホルダー6に圧力がかからないようにするためのギャップ11が設けられており、このギャップ11と処理室1内部とが通気孔11aを介して連通されている。
【0021】
対向電極2には、プラズマに接する側から順に、ガス孔7aを有するガス板7、静電チャック5c、静電チャック5cの電極と対向電極2の電極とを兼ねた電極5b、熱交換機構としての冷媒ジャケット8、ガス分散板9の順序に設置されている。電極5bは、静電チャック電極用電源15aと対向電極用電源12に電気的に接続されている。冷媒ジャケット8は、誘電体によって形成されている。冷媒ジャケット8の内部には、冷媒ジャケット水路8bが設けられており、水路入口8aから供給された冷却水が、水路出口8cから排出される。この冷却水は、図示しない冷却機によって、所定の温度に制御されている。静電チャック5cは、誘電体によって形成されており、冷媒ジャケット8の上に配置されている(図1では冷媒ジャケット8の下方に配置されている)。
【0022】
処理室1には、対向電極2を支持する部分に絶縁体10が設けられている。電極5bは、シート状に形成されており、誘電体で形成された誘電部材としての静電チャック5cと、冷媒ジャケット8との間に挿入されて配置されている。
【0023】
本実施形態のエッチング装置では、冷却水として純水を用いて、冷却機と冷媒ジャケット8との間を冷却水が循環するクローズドシステムとして構成することで、エッチング特性の変化が抑制され、安定したエッチングを行うことができる。つまり、冷却水が循環するクローズドシステムとして構成することで、例えば水道、貯水タンク等の水源から供給される工業用水(雑用水)を用いる場合のように、温度管理が不充分な工業用水の温度変化に影響されることが避けられる。また、プラズマCVD装置であっても、温度に敏感な成膜である場合には、上述と同様にクローズドシステムが好ましい。また、温度に敏感な成膜で無い場合には、工業用水を、冷却機を通して直接、熱交換機構としての冷媒ジャケット水路8bや水冷ホルダー6の冷却水路6bに流すことができる。
【0024】
図2は、水冷ホルダーを示す図であり、(a)が横断面図、(b)が縦断面図である。図2(a),図2(b)に示すように、水冷ホルダー6は、冷却水入口6aと、冷却水出口6cとを有している。この水冷ホルダー6は、図1に示した構成と比較して、冷却水出口6cの位置が異なっており、水冷ホルダー6の中央側に配置されている。また、水冷ホルダー6は、伝熱フィン6d及びフィン6eを介して、冷却水路6bが複数に分かれている。また、水冷ホルダー6には、静電チャック5に保持された基板4を押し上げるための突き上げピン31を上下方向に移動させる突き上げピン孔31aが設けられている。
【0025】
本実施形態のエッチング装置を動作させる際には、まず、排気系によって処理室1内部を真空に排気した後、搬送室(不図示)から搬送された基板4を、突き上げピン31を上昇させて受け取り、静電チャック5上に載置する。次に、静電チャック電源15によって静電チャック5の電極5aに電圧を印加することで基板4を吸着固定して、ガス導入系21から対向電極2に処理ガスを送り、処理室1の内部を一定圧力にする。
【0026】
その後、対向電極用電源12から周波数がVHF帯(例えば60MHz)の高周波電力を対向電極2に供給し、基板載置電極3に基板載置電極用電源13から周波数がHF帯(例えば1.6MHz)の高周波電力を供給する。これによって、VHF帯の高周波電力によって比較的高密度のプラズマ及びエッチャントが生成され、HF帯の高周波電力によってイオン衝撃エネルギがプラズマ密度とは独立に制御されて、目的とするエッチング処理が実行される。
【0027】
このように水冷ホルダーを誘電体で形成することで、電界腐食が避けられ、またこれによって、純水のイオン濃度が上昇して高周波電力が外部に抜ける問題を回避することができることは従来技術で説明した。また、水冷ホルダー6が誘電体で形成されているので、電極5aから電磁シールド25までの距離が比較的長く確保され、電極5aの側面のみを電磁シールド25で覆えば良い。なお、必要に応じて、電磁シールド25は、従来のように、処理室1の底面まで延ばして設けられても良い。
【0028】
なお、誘電体の材質としては、例えば、アルミナやチッ化アルミニウムや弗化アルミニウム等を採用することができる。アルミナは、熱伝導係数が23W/(m・K)でアルミニウムの10%程度しかないが、冷却水路6bから電極5aまでの距離は10mm程度あれば良い。したがって、アルミナは、エッチングにおける基板への入熱量が、通常、1W/cm2であり、基板の温度上昇がアルミニウムよりも4.4℃程度だけ高いが、許容範囲である。
【0029】
上述したように、本実施形態によれば、水冷ホルダー6や冷媒ジャケット8の水路部分が電界腐食されることが抑制される。したがって、本実施形態によれば、イオンを含む純水から高周波電力が抜けてプラズマ密度が低下し、エッチングやプラズマCVDにおいてエッチングレートやデポレートが低下するのを防ぐことができる。また、本実施形態によれば、純水をイオン交換フィルター無しで使うことが可能になる。さらに、水冷ホルダーや冷媒ジャケットが金属材料からなる場合には、不要な部分で放電が生じることを防ぐために、水冷ホルダー及び冷媒ジャケットの外側に誘電体を設置し、さらに誘電体の外側に、電極用の電磁シールドを設置する必要がある。しかしながら、本実施形態によれば、水冷ホルダー6や冷媒ジャケット8が誘電体からなるので、水冷ホルダー6や冷媒ジャケット8の外側に誘電体を設置することなく、電極用の電磁シールドを設けることができる。このため、本実施形態によれば、エッチング装置全体の小型化を図ることができる。
【0030】
以下、第2及び第3の実施形態について簡単に説明する。これら第2及び第3の実施形態は、上述した実施形態の構成と比較して、水冷ホルダーの構成のみが異なるため、水冷ホルダーについてのみ説明する。
【0031】
(第2の実施形態)
図3に示すように、第2の実施形態における水冷ホルダー26は、上述の水冷ホルダー6が断面四角形状の冷却水路6bを備えていたのに対して、冷却水路26bの断面形状を円形に形成されている。このように構成することで、冷却水圧による応力が冷却水路26bの内面に均一にかかるので、冷却水路26bを電極5bに更に近づけることができる。図3では、冷却水路26bが電極5aに近づけて配置される構成を強調して、冷却水路26bを、水冷ホルダー26の上方に寄せて配置したが、この構成に限定されるものではない。例えば、水冷ホルダー26の厚みを比較的薄く形成して、冷却水路26bを厚み方向の中央に配置されてもよいことは勿論である。
【0032】
また、水冷ホルダー26を形成する材料としては、誘電体の代わりに、カーボン系の非金属材料が用いられてもよい。なお、この構成の場合、カーボン系の非金属材料は電気を伝えるので、電極5aを省くこともできる。しかし、カーボン製の水冷ホルダーの外周部を、導電性が比較的大きい例えば銀、アルミニウム、銅等の導電材料からなる薄い膜で覆う構成や、ミクロン単位の薄膜をスパッタリング、熱CVD、プラズマCVD等によって付着させて覆う構成が採られてもよい。
【0033】
また、こうした導電材料を電界メッキで付着させたり、表面にはけ等で塗布し、熱炉で焼き固めたりしても良い。焼き固めることによって、蒸気圧が低い物質が抜けてエッチング中にも不純ガスが発生せず、エッチングに影響を及ぼさない。
【0034】
また、水冷ホルダー及び冷媒ジャケットは、誘電体又はカーボンによって構成され、水路部分の周辺のみが金属材料によって構成されてもよい。あるいは、水冷ホルダー及び冷媒ジャケットは、誘電体によって構成され、水路部分の周辺のみがカーボンによって構成されてもよい。
【0035】
さらに、電極5bも同様に、アルミニウム等の金属材料で形成されるのが好ましい。このように構成するのは、高周波、特に60MHz程度にもなると、表皮効果で高周波電流が導電材料の表面しか流れずに、カーボンの実質的な抵抗が上昇するためである。各材料の熱伝導率は、次の通りで、カーボンは、アルミニウムに匹敵する熱伝導度が得られる。
アルミニウム 240W/(m・K)
カーボン系 50W〜300W/(m・K)
アルミナ 23W/(m・K)
【0036】
次に、純水とガルテンの熱伝達特性を比較する。
(1)ガルテンHT135 アウジモント製
動粘度ν 10-62/sec
密度ρ 1.73g/cm3=1.73・103kg/m3
熱伝導率λ 0.000155cal/cm・sec・℃=0.000651W/cm・K=0.065W/m・K
比熱Cp 0.23cal/g℃=0.966kJ/kg℃
粘度μ=νρ 10-62/s・1.73g/cm3=10-62/s・1.73・103kg/m3=1.73・10-3kg/m・s
(2)純水
動粘度ν =μ/ρ=(10.2・10-4kg/m・s)/(1・103kg/m3)=1.02-62/sec
密度ρ 1g/cm3=1・103kg/m3
熱伝導率λ 0.001429cal/cm・sec・deg=0.0060W/cm・K=0.60W/m・K
比熱Cp 1.00cal/g℃=4.2kJ/kg℃
粘度μ=νρ 10.2×10-3ポイズ=10.2×10-3g/cm・s=10.2・10-4kg/m・s
【0037】
熱伝達係数は以下の式から導かれる。ただし、ν:動粘度、λ:熱伝導率、ρ:密度、Cp:比熱、u:代表速度、d:代表長さ、とする。
レイノルズ数 Re=ud/ν
プラントル数 Pr=Cpμ/κ
ヌセルト数 Nu=0.023Re0.8Pr0.4=0.023・25000.8(Cpμ/κ)0.4
熱伝達係数 h=0.023×ν-0.4×λ0.6×ρ0.4×Cp0.4×u0.8×d-0.2
【0038】
伝熱特性を比較するためには、熱伝達量=熱伝達係数×温度差の関係から、両者の熱伝達係数を比較すれば良い。なお、u:代表速度と、d:代表長さは、装置構造に依存する量なので除外すれば、ν:動粘度、λ:熱伝導率、ρ:密度、比熱:Cpについての(ガルテン/水)の値は次のようになる。
ガルテン/水
動粘度ν =10/1.02=9.8
密度ρ =1.73
熱伝導率λ =0.065/0.60=0.108
比熱Cp =0.966/4.2=0.23
【0039】
この値を熱伝達係数の式に代入することで、ガルテンと水の熱伝達係数の比が次のように算出される。
熱伝達係数の比(ガルテン/水)=9.8-0.4×0.1080.6×1.730.4×0.230.4=0.073
【0040】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態における水冷ホルダーを示す断面図である。第3の実施形態の水冷ホルダー36は、誘電体によって形成されており、図3に示した第2の実施形態における水冷ホルダー26の冷却水路26bの内部を金属管36fで覆って構成されている。このように構成することで、金属管36fの内部で電界腐食が生じる可能性があるが、誘電体を介しているので、電圧のかかり方が減り、電界腐食の程度が低下する。
【0041】
水冷ホルダー36は、あらかじめリークが生じない金属管36fを設置し、熱CVDやプラズマCVDによって金属管36fの周辺に誘電体やカーボンを蒸着させ、その後、必要な形状に加工することで形成される。あるいは、水冷ホルダー36は、金属管36fの周辺に粉末状の誘電体を塗り固め、焼き固めて切削加工することで形成されてもよい。あるいは、水冷ホルダー36は、金属管36fの周辺に、溶射によって誘電体を吹き付けることによっても形成することが可能である。また、金属管36fの内部をカーボン等で被覆することで、電界腐食を防ぎ、かつ、リークを防ぐことができる。
【0042】
これらの場合には、温度が上昇するので、タングステンや超合金等の軟化温度が比較的高い金属材料を用いたり、クロムとアルミナのような線膨張率が近い材料を組合せたりするのが好ましい。
【0043】
スパッタ装置の場合には、ターゲットが載せられるバッキングプレート(熱交換機構)の材料をカーボンや誘電体に変更すれば良い。特に、ターゲットが、誘電体等の割れ易いものである場合には、カーボンのようなヤング率が比較的大きな、柔軟な材質は効果的である。このように、ターゲットと同一の誘電体でバッキングプレートを形成することで、熱応力によって割れる可能性が小さくなる。なお、ターゲットとバッキングプレートとが全く同じ誘電体で形成されない場合であっても、誘電体は熱膨張率が比較的小さいので、熱応力を緩和させることができる。また、バッキングプレートの上には、ターゲット又は導電性材料を介して、ターゲットが接合されてもよい。
【0044】
なお、上述した実施形態では、熱媒体として冷却水を用いて、電極を冷却するための水冷ホルダー6,26,36や冷媒ジャケット8を挙げて説明したが、例えば、熱媒体として加熱水を用いて、熱交換機構によって加熱する構成が採られてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態のエッチング装置を示す縦断面図である。
【図2】第1の実施形態の水冷ホルダーの水路を示す図であり、(a)が横断面図、(b)が縦断面図である。
【図3】第2の実施形態の水冷ホルダーの水路を示す縦断面図である。
【図4】第3の実施形態の水冷ホルダーの水路を示す縦断面図である。
【図5】従来のバッキングプレート冷却機構の水路を示す図であり、(a)が透視側面図、(b)が透視正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 処理室
2 対向電極
3 基板載置電極
4 基板
5 静電チャック
5a 電極
5b 電極
5c 静電チャック
6 水冷ホルダー
6b 冷却水路
7 ガス板
7a ガス孔
8 冷媒ジャケット
8b 冷媒ジャケット水路
21 ガス導入系
22 排気系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
前記処理室の内部に配置され、処理対象物が載置される載置手段と、
前記処理室の内部に配置された電極と、
前記電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、又は、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、前記電極の近傍に配置されて前記電極の温度を調整するための熱交換機構と、を備え、
前記熱交換機構は、誘電体又は非金属材料によって構成されている表面処理装置。
【請求項2】
内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
前記処理室の内部に配置された電極と、
前記電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、又は、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、前記電極の近傍に配置されて前記電極の温度を調整するための熱交換機構と、
前記熱交換機構の上に配置された誘電部材と、を備え、
前記熱交換機構は誘電体によって構成され、前記誘電部材と前記熱交換機構との間にシート状の前記電極が設けられている表面処理装置。
【請求項3】
内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
前記処理室の内部に配置された電極と、
前記電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、あるいは、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、前記電極の近傍に配置されて前記電極の温度を調整するための熱交換機構と、
前記熱交換機構の上に配置される処理対象物を静電吸着する静電吸着機構と、を備え、
前記熱交換機構は誘電体によって構成され、前記静電吸着機構と前記熱交換機構との間にシート状の前記電極が設けられている表面処理装置。
【請求項4】
内部を真空に排気する排気手段と、内部にガスを導入するガス導入手段とを有する処理室と、
前記処理室の内部に配置された電極と、
前記電極に電圧を印加してガスをプラズマ化する電圧印加手段と、
水源から供給される水、又は、媒体供給手段から供給されて循環される熱媒体、の流路を内部に有し、前記電極の近傍に配置されて前記電極の温度を調整するための熱交換機構と、
前記熱交換機構の上に配置された誘電部材と、を備え、
前記熱交換機構は非金属材料によって構成され、前記誘電部材と前記熱交換機構との間にシート状の前記電極が配置されている表面処理装置。
【請求項5】
前記電極には、前記載置手段が設けられている、請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記シート状の電極は、前記静電吸着機構の電極を兼ねている、請求項3に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記シート状の電極の外側には、誘電体又は電極用の電磁シールドが設置されている、請求項2ないし4、6のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記熱媒体は、水である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項9】
前記熱交換機構は、誘電体又はカーボンによって構成され、該熱交換機構の上に、ターゲット又は導電性材料を介して、ターゲットが接合されている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項10】
前記熱交換機構は、誘電体又はカーボンによって構成され、前記熱媒体の前記流路の周辺のみが金属材料によって構成されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項11】
前記熱交換機構は、誘電体によって構成され、前記熱媒体の前記流路の周辺のみがカーボンによって構成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−64952(P2009−64952A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231350(P2007−231350)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】