説明

車両およびその制御方法

【課題】エンジンの吸気系へ排気を供給するためのバルブの開固着異常が生じたときにより長く走行を継続する。
【解決手段】バルブの開固着異常が判定されたときにはエンジンを所定回転数Nrefで運転してバッテリを充電しながら要求トルクTr*で走行する充電走行を行なうようエンジンと2つのモータを制御し(S140〜S190)、エンジンの排気系に取り付けられた浄化触媒の触媒温度Tcが閾値Tth1以上に至ったときには(S130)、スロットルバルブの開度を所定開度THrefにすると共に(S220)エンジンへの燃料噴射を停止してエンジンの回転数を徐減させながら要求トルクTr*で走行するようエンジンと2つのモータとを制御する(S230〜S250,S160〜S190)。これにより、より長く走行を継続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、排気経路から吸気経路に通じる排気ガス通路を有するエンジンが搭載され、排気ガスを排気経路から吸気経路に再循環させる排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation、以下EGRという)を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、排気ガス通路を開閉するEGR弁が開いたまま閉じなくなる開固着状態となったときには、複数気筒のうち一部の気筒で燃料の噴射をカットする減筒運転を行なうことにより、吸入空気量に対する排気量の割合であるEGR率を低下させてエンジンの燃焼状態をより向上させることができると共にエンジンからの動力で車両を走行させることができるとしている。
【特許文献1】特開2005−207285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、上述した車両では、EGR弁に開固着異常が生じたときに車両をどのようにして走行させるかが重要な課題として考えられている。ところで、こうしたEGRが可能なエンジンと共に、走行用の動力を出力可能な電動機と、エンジンからの動力で発電する発電装置と、電動機や発電装置と電力をやり取りする蓄電装置と、を搭載したハイブリッド車では、EGR弁に開固着異常が生じたときには、エンジンの運転を中止して電動機からの動力のみで走行させることが考えられるが、蓄電装置の蓄電量に限りがあるため、長い時間や長い距離に亘って走行させることができない。一方、ハイブリッド車でエンジンを運転しながら走行する場合、エンジンの運転中に排気ガスを浄化する触媒の温度が高温になると触媒の劣化が促進されるため、こうした触媒の劣化についても考慮する必要がある。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、内燃機関の排気の吸気系への供給量を調整するバルブの異常が生じたときに内燃機関の排気を浄化する触媒の劣化を抑制しながらより長く走行を継続することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
内燃機関と、該内燃機関の排気の吸気系への供給量を調整するバルブを有し該バルブを開いて前記排気を前記吸気系に供給する排気供給手段と、前記内燃機関の排気を浄化する触媒を有する排気浄化手段と、前記内燃機関からの動力で発電可能な発電手段と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記発電手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える車両であって、
前記排気浄化手段の触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記排気供給手段のバルブの開固着による異常が判定されたときには前記内燃機関を予め設定された第1の回転数で負荷運転して前記蓄電手段を充電しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する充電走行制御を実行し、該充電走行制御を実行している最中に前記触媒温度検出手段により検出された触媒の温度が第1の温度以上に至ったときには前記内燃機関の回転数が前記第1の回転数より低い第2の回転数に至るまで前記内燃機関のスロットル開度を所定開度とした状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射を停止した状態で前記内燃機関の回転数を徐減させながら前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する燃料噴射停止制御を実行すると共に前記内燃機関の回転数が前記第2の回転数に至ったときには前記内燃機関への燃料噴射を開始して前記充電走行制御を開始するバルブ開固着異常時制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、排気供給手段のバルブの開固着による異常が判定されたときには内燃機関を予め設定された第1の回転数で負荷運転して蓄電手段を充電しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する充電走行制御を実行する。蓄電手段を充電しながら走行するから、内燃機関を負荷運転して蓄電手段を充電することなく電動機からの動力で走行するものに比して、より長く走行を継続することができる。また、こうした充電走行制御を実行している最中に触媒の温度が第1の温度以上に至ったときには内燃機関の回転数が第1の回転数より低い第2の回転数に至るまで内燃機関のスロットル開度を所定開度とした状態で且つ内燃機関への燃料噴射を停止した状態で内燃機関の回転数を徐減させながら要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する燃料噴射停止制御を実行すると共に内燃機関の回転数が第2の回転数に至ったときには内燃機関への燃料噴射を開始して充電走行制御を開始する。充電走行制御を実行している最中に触媒の温度が第1の温度に至ったときには、スロットル開度を所定開度した状態で且つ内燃機関への燃料噴射を停止した状態で内燃機関の回転数を徐減させながら要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御するから内燃機関で吸入した空気を用いて触媒の冷却を促進して触媒の高温による劣化を抑制することができる。そして、こうして走行している最中に内燃機関の回転数が第2の回転数に至ったときには内燃機関への燃料噴射を開始して充電走行制御を開始するから、内燃機関の運転をより確実に開始して充電走行制御を開始することができる。よって、触媒の劣化を抑制しながらより長く走行を継続することができる。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記バルブ開固着異常時制御手段は、前記燃料噴射停止制御を実行している最中に前記触媒温度検出手段により検出された触媒の温度が前記第1の温度未満の第2の温度に至ったときには前記内燃機関への燃料噴射を開始して前記充電走行制御を開始する手段であるものとすることもできる。こうすれば、燃料噴射停止制御を実行している最中に触媒の温度が低下して第2の温度未満に至ったときには速やかに充電走行制御を開始することができる。
【0009】
また、本発明の車両において、前記第1の回転数および前記第2の回転数は、前記内燃機関をアイドル運転するときの前記内燃機関の回転数より高い回転数であるものとすることもできる。こうすれば、充電走行制御を実行しているときや充電走行制御を開始する際により安定して内燃機関を運転して走行を継続することができる。
【0010】
さらに、本発明の車両において、前記所定の開度は、前記内燃機関をアイドル運転するときスロットル開度より大きい開度であるものとすることもできる。こうすれば、触媒の冷却をより促進することができる。
【0011】
そして、本発明の車両において、前記発電手段は、動力を入出力する発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を有する手段であり、前記電動機は、回転軸が前記駆動軸に接続されてなるものとすることもできる。なお、「3軸式動力入出力手段」としては、シングルピニオン式またはダブルピニオン式の遊星歯車機構やデファレンシャルギヤなどが含まれる。
【0012】
本発明の車両は、
内燃機関と、該内燃機関の排気の吸気系への供給量を調整するバルブを有し該バルブを開いて前記排気を前記吸気系に供給する排気供給手段と、前記内燃機関の排気を浄化する触媒を有する排気浄化手段と、前記内燃機関からの動力で発電可能な発電手段と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記発電手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記排気供給手段のバルブの開固着による異常が判定されたときには前記内燃機関を予め設定された第1の回転数で負荷運転して前記蓄電手段を充電しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する充電走行制御を実行し、該充電走行制御を実行している最中に前記排気浄化手段の触媒の温度が第1の温度以上に至ったときには前記内燃機関の回転数が前記第1の回転数より低い第2の回転数に至るまで前記内燃機関のスロットル開度を所定開度とした状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射を停止した状態で前記内燃機関の回転数を徐減させながら前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する燃料噴射停止制御を実行すると共に前記内燃機関の回転数が前記第2の回転数に至ったときには前記内燃機関への燃料噴射を開始して前記充電走行制御を開始する、
ことを特徴とする。
【0013】
この本発明の車両では、排気供給手段のバルブの開固着による異常が判定されたときには内燃機関を予め設定された第1の回転数で負荷運転して蓄電手段を充電しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する充電走行制御を実行する。蓄電手段を充電しながら走行するから、内燃機関を負荷運転して蓄電手段を充電することなく電動機からの動力で走行するものに比して、より長く走行を継続することができる。また、こうした充電走行制御を実行している最中に触媒の温度が第1の温度以上に至ったときには内燃機関の回転数が第1の回転数より低い第2の回転数に至るまで内燃機関のスロットル開度を所定開度とした状態で且つ内燃機関への燃料噴射を停止した状態で内燃機関の回転数を徐減させながら要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する燃料噴射停止制御を実行すると共に内燃機関の回転数が第2の回転数に至ったときには内燃機関への燃料噴射を開始して充電走行制御を開始する。充電走行制御を実行している最中に触媒の温度が第1の温度に至ったときには、スロットル開度を所定開度した状態で且つ内燃機関への燃料噴射を停止した状態で内燃機関の回転数を徐減させながら要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御するから内燃機関で吸入した空気を用いて触媒の冷却を促進して触媒の高温による劣化を抑制することができる。そして、こうして走行している最中に内燃機関の回転数が第2の回転数に至ったときには内燃機関への燃料噴射を開始して充電走行制御を開始するから、内燃機関の運転をより確実に開始して充電走行制御を開始することができる。よって、触媒の劣化を抑制しながらより長く走行を継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0016】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、排気バルブ129を開くことにより一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される共にEGR(Exhaust Gas Recirculation)システム160を介して吸気側に供給される。EGRシステム160は、浄化装置134の後段に接続されて排気を吸気側のサージタンクに供給するためのEGR管162と、EGR管162に配置されステッピングモータ163により駆動されるEGRバルブ164とを備え、EGRバルブ164の開度の調節により、不燃焼ガスとしての排気を供給量を調整して吸気側に供給する。エンジン22は、こうして空気と排気とガソリンとの混合気を燃焼室に吸引することができるようになっている。
【0017】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた図示しない圧力センサからの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブ129を開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられて吸入空気の質量流量を検出するエアフローメータ148からの吸入空気量,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,吸気管内の圧力を検出する吸気圧センサ158からの吸気圧,浄化触媒134aの温度を検出する温度センサ134bからの触媒温度Tc,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号,EGRバルブ164の開度を調節するステッピングモータ163への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0018】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0019】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやり取りを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0020】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量SOCを演算したり、演算した残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやり取りを行なっている。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、EGRバルブ164が開いた状態から閉じなくなる開固着異常が生じている際の動作について説明する。図3はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される開固着異常時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、EGRバルブ164の開固着異常が判定された後、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、EGRバルブ164の開固着異常の判定は、空燃比センサ135aのリーン出力により主空燃比補正量がリッチ側に演算され、酸素センサ135bのリッチ出力により通常の制御で起こり得る範囲を超えて補助空燃比補正量がリーン側に演算されたときにバルブの開固着を判定するものとした。
【0024】
開固着異常時駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,触媒温度Tc,フューエルカットフラグFなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。そして、触媒温度Tcは、温度センサ134bにより検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、フューエルカットフラグFは、触媒温度Tcが高温に至ってエンジン22への燃料噴射を停止(フューエルカット)しているか否かを示すフラグであり、初期値として値0が設定され、触媒温度Tcが所定の高温に至ってエンジン22をフューエルカットしているときに値1が設定されるものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0026】
続いて、フューエルカットフラグFの値を調べると共に(ステップS120)触媒温度Tcと閾値Tth1とを比較する(ステップS130)。ここで、閾値Tth1は、浄化触媒134aが高温のために劣化するか否かを判定するために用いられる値であり、例えば、900℃や910℃,920℃などに設定するものとした。フューエルカットフラグFが値0、即ち、エンジン22がフューエルカットされていなくて触媒温度Tcが閾値Tth1未満であるときには(ステップS120,S130)、エンジン22を負荷運転しても差し支えないと判断して、エンジン22の目標回転数Ne*を所定回転数Nrefに設定してエンジン22の目標トルクTe*を所定トルクTerefに設定すると共に設定した目標回転数Ne*,目標トルクTe*をエンジンECU24に送信する(ステップS140)。目標回転数Ne*,目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。ここで、所定回転数Nrefは、エンジン22をアイドル運転する回転数(例えば、例えば、800rpmや900rpm,1000rpmなど)より高くエンジン22を比較的安定して負荷運転可能な回転数(例えば、1900rpmや2000rpm、2100rpmなど)であって予め実験や解析などにより定めたものを用いるものとし、所定トルクTerefは、モータMG2から走行用の駆動力を出力しながら走行する際にバッテリ50を充電するパワーPbとして予め実験や解析などにより定めたものを所定回転数Nrefで除したトルクとして設定するものとした。
【0027】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定したら、設定したエンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)とを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS150)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図5に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0028】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0029】
そして、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS160)バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(4)および式(5)により計算し(ステップS170)、設定した仮トルクTm2tmpを式(6)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS180)。ここで、式(3)は、図5の共線図から容易に導くことができる。
【0030】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0031】
こうしてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信し(ステップS190)、開固着異常時駆動制御ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、エンジン22が運転中で触媒温度Tcが閾値Tth1未満であるときには、エンジン22を回転数Nrefで運転してバッテリ50を充電しながら要求トルクTrで走行する充電走行を行なうことができる。これにより、エンジン22を負荷運転せずにバッテリ50を充電することなくモータMG2からの駆動力で走行するものに比して、より長く走行を継続することができる。
【0032】
こうしてエンジン22を運転しながら走行している最中に触媒温度Tcが閾値Tth1以上に至ったときには(ステップS120,S130)、浄化触媒134aが劣化するおそれがあると判断して、触媒温度Tcが閾値Tth1より低い閾値Tth2(例えば、800℃)未満に至るか(ステップS200)、エンジン22の回転数Neが閾値Nth未満に至るまで(ステップS210)、エンジン22への燃料噴射を停止した状態で走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を制御する燃料噴射停止走行制御を実行する。ここで、閾値Tth2は、触媒温度Tcがエンジン22を負荷運転しても触媒の劣化が進まない程度の温度であるか否かを判定するために実験や解析などにより求めたものを用いるものとした。また、閾値Nthは、エンジン22をアイドル運転する回転数Nidlより大きく所定回転数Nrefより小さい回転数であって、エンジン22の燃料噴射を開始したときに失火が生じる可能性が低く確実にエンジン22の運転を開始できる回転数(例えば、1100rpmや1150rpm,1200rpmなど)として予め実験や解析などにより求めたものを用いるものとした。
【0033】
燃料噴射停止走行制御は、具体的には、まず、エンジン22のスロットルバルブ124の目標開度TH*をエンジン22をアイドル運転する際の開度THidlより大きい所定開度THrefに設定すると共に設定した目標開度TH*をエンジンECU24に送信し(ステップS220)、フューエルカット指令をエンジンECU24に送信する(ステップS230)。目標開度TH*とフューエルカット指令とを受信したエンジンECU24は、スロットルバルブ124の開度が目標開度TH*となるようスロットルモータ136を駆動制御すると共にエンジン22への燃料噴射を停止する処理を実行する。続いて、フューエルカットフラグFを値1に設定し(ステップS240)、モータMG1のトルク指令Tm1*を値0に設定する(ステップS250)。エンジン22をフューエルカットすると共にモータMG1からトルクを出力していない状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図6に示す。この場合、エンジン22の回転数は、エンジン22のイナーシャーによって徐々に低下していくことになる。
【0034】
モータMG1のトルク指令Tm1*を設定したら、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG1,MG2をトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動制御し(ステップS160〜S190)、開固着異常時駆動制御ルーチンを終了する。こうした制御により、エンジン22のスロットル開度THを目標開度TH*にした状態でエンジン22への燃料噴射を停止してエンジン22の回転数を徐減させることができる。これにより、エンジン22で吸入した空気を用いて浄化触媒134aの冷却を促進して浄化触媒134aの高温による劣化を抑制することができる。
【0035】
こうして燃料噴射停止制御を実行しているときに、触媒温度Tcが閾値Tth2以上であってもエンジン22の回転数Neが閾値Nth未満に至ったときには(ステップS200,S210)、これ以上エンジン22の回転数が小さくなるとエンジン22への燃料噴射を開始したときにエンジン22が失火する可能性があるためエンジン22の運転を開始すべきと判断して、エンジン22への燃料噴射を開始して、エンジン22からの動力でバッテリ50を充電しながらリングギヤ軸32aに要求トルクTr*に基づくトルクを出力しながら走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を駆動制御して(ステップS260,S270,S140〜S190)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、エンジン22の回転数Neが閾値Nth未満になったときにはエンジン22への燃料噴射を開始するから、より確実にエンジン22の運転を開始して充電走行を行なうことができる。
【0036】
また、こうして燃料噴射停止制御を実行しているときに触媒温度Tcが閾値Tth2未満に至ったときには(ステップS200)、エンジン22への燃料噴射を開始しても差し支えないと判断して、エンジンECU24へ燃料噴射指令を送信すると共に(ステップS260)フューエルカットフラグFを値0に設定(ステップS270)、エンジン22からの動力でバッテリ50を充電しながらリングギヤ軸32aに要求トルクTr*に基づくトルクを出力しながら走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を駆動制御して(ステップS140〜S190)、開固着異常時駆動制御ルーチンを終了する。ステップS260の処理で、燃料噴射指令を受信したエンジンECU24は、エンジン22への燃料噴射を開始する処理を実行する。こうした制御により、燃料噴射停止制御を実行しているときに触媒温度Tcが閾値Tth2未満に至ったときには迅速にエンジン22への燃料噴射を開始して充電走行を行なうことができる。
【0037】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、EGRバルブ164の開固着異常が判定されたときにはエンジン22を所定回転数Nrefで運転してバッテリ50を充電しながら要求トルクTrで走行する充電走行を行なうから、エンジン22を負荷運転してバッテリ50を充電せずにモータMG2からの動力で走行するものに比して、より長く走行を継続することができる。また、こうした充電走行を行なっているときに触媒温度Tcが閾値Tth1以上に至ったときには、スロットルバルブ124の開度を所定開度THrefにすると共にエンジン22への燃料噴射を停止してエンジン22の回転数を徐減させながら要求トルクTr*で走行するから、エンジン22で吸入した空気を用いて浄化触媒134aの冷却を促進して浄化触媒134aの高温による劣化を抑制することができる。そして、こうして走行している最中にエンジン22の回転数が閾値Nth未満に至ったときには、エンジン22の燃料噴射を開始して充電走行を行なうから、エンジン22の運転をより確実に開始して充電走行を開始することができる。よって、触媒の劣化を抑制しながらより長く走行を継続することができる。また、燃料噴射停止制御を実行しているときに触媒温度Tcが閾値Tth2未満に至ったときには、エンジン22の燃料噴射を開始して充電走行を行なうから、迅速にエンジン22への燃料噴射を開始して充電走行を行なうことができる。さらに、エンジン22を負荷運転するとき回転数Nrefやエンジン22への燃料噴射を開始するか否かを判定するための閾値Nthをエンジン22をアイドル運転する際の回転数Nidlより高く設定したから、より安定してエンジン22を運転して走行を継続することができる。そして、エンジン22への燃料噴射を停止している際のスロットル開度をエンジン22をアイドル運転をする際のスロットル開度より大きい開度であるものとしたから、触媒の冷却を促進することができる。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS200,S210の処理でエンジン22の触媒温度Tcとエンジン22の回転数Neとを用いてエンジン22への燃料噴射を開始するか否かを判定するものとしが、ステップS200を実行せずにステップS210のみを実行して、即ち、エンジン22の回転数Neのみを用いてエンジン22への燃料噴射を開始するか否かを判定するものとしてもよい。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS220の処理でスロットルバルブ124の目標開度TH*をアイドル運転する際の開度THidlより大きい所定開度THrefに設定するものとしたが、目標開度TH*をアイドル運転する際の開度THidlに設定するものしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図7の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図7における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22からの動力により発電する発電機としてのモータMG1と、モータMG1やバッテリ50からの電力により駆動輪63a,63bの車軸側に動力を出力するモータMG2とを備える、いわゆるシリーズハイブリッド車の形態としてもよい。
【0042】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の電車などの車両の形態としても構わない。さらに、こうした車両の制御方法の形態としてもよい。
【0043】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、EGRシステム160が「排気供給手段」に相当し、浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134が「排気浄化手段」に相当し、モータMG1と動力分配統合機構30とが「発電手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、温度センサ134bが「触媒温度検出手段」に相当し、EGRバルブ164の開固着異常が判定されたときにはエンジン22の目標回転数Ne*に所定回転数Nrefを設定すると共にエンジン22が目標回転数Ne*で運転されると共に要求トルクTrで走行するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信する図3の開固着時駆動制御ルーチンのステップS100〜S190の処理やこうした充電走行を行なっているときに触媒温度Tcが閾値Tth1以上に至ったときには、スロットルバルブ124の目標開度TH*に所定開度THrefを設定した設定値とフューエルカット指令をエンジンECU24に送信すると共にエンジン22の回転数を徐減させながら要求トルクTr*で走行するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して設定値をモータECU40に送信するステップS100〜S130、S210、S220〜S250,S160〜S190の処理、エンジン22の回転数Neが閾値Nthに至ったときにはエンジンECU24に燃料噴射指令を送信すると共にエンジン22の目標回転Ne*に所定回転数Nrefを設定すると共にエンジン22が目標回転数Ne*で運転されると共に要求トルクTr*で走行するようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信するステップS210,S260,S270,S140〜S190の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と受信したフューエルカット指令や燃料噴射指令,目標回転数Ne*,目標トルクTe*に基づいてエンジン22を運転制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*でモータMG1,MG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なうモータECU40とが「バルブ開固着異常時制御手段」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。
【0044】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「排気供給手段」としては、EGRシステム160に限定されるものではなく内燃機関の排気の吸気系への供給量を調整するバルブを有しバルブを開いて排気を吸気系に供給するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電手段」としては、モータMG1と動力分配統合機構30とを組み合わせたものに限定されるものではなく、前記内燃機関からの動力で発電可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、発電手段および電動機と電力のやり取りが可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「触媒温度検出手段」としては、温度センサ134bに限定されるものではなく、排気浄化手段の触媒の温度を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「バルブ開固着異常時制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「バルブ開固着異常時制御手段」としては、EGRバルブ164の開固着異常が判定されたときにはエンジン22の定回転数Nrefで負荷運転すると共にバッテリ50を充電しながら要求トルクTr*で走行する充電走行を行なうようエンジン22やモータMG1,MG2を制御し、充電走行を行なっているときに触媒温度Tcが閾値Tth1以上に至ったときには、スロットルバルブ124の目標開度TH*に所定開度THrefしてエンジン22をフューエルカットした状態でエンジン22の回転数を徐減させながら要求トルクTr*で走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を制御し、エンジン22の回転数Neが閾値Nthに至ったときにはエンジン22への燃料噴射を開始してエンジン22を所定回転数Nrefで運転してバッテリ50を充電しながら要求トルクTr*で走行するようエンジン22やモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、排気供給手段のバルブの開固着による異常が判定されたときには内燃機関を予め設定された第1の回転数で負荷運転して蓄電手段を充電しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する充電走行制御を実行し、充電走行制御を実行している最中に触媒温度検出手段により検出された触媒の温度が第1の温度以上に至ったときには内燃機関の回転数が第1の回転数より低い第2の回転数に至るまで内燃機関のスロットル開度を所定開度とした状態で且つ内燃機関への燃料噴射を停止した状態で内燃機関の回転数を徐減させながら要求駆動力により走行するよう内燃機関と発電手段と電動機とを制御する燃料噴射停止制御を実行すると共に内燃機関の回転数が第2の回転数に至ったときには内燃機関への燃料噴射を開始して充電走行制御を開始するものであれば如何なるものとしても構わない。また、「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力するものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせたものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され、3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0045】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0046】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70に実行される開固着異常時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図6】エンジン22をフューエルカットしてモータMG1からトルクを出力しない状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0049】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、129 排気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 浄化触媒(三元触媒)、134b 温度センサ、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136 スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、158 吸気圧センサ、160 EGRシステム、162 EGR管、163 ステッピングモータ、164 EGRバルブ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、該内燃機関の排気の吸気系への供給量を調整するバルブを有し該バルブを開いて前記排気を前記吸気系に供給する排気供給手段と、前記内燃機関の排気を浄化する触媒を有する排気浄化手段と、前記内燃機関からの動力で発電可能な発電手段と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記発電手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える車両であって、
前記排気浄化手段の触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記排気供給手段のバルブの開固着による異常が判定されたときには前記内燃機関を予め設定された第1の回転数で負荷運転して前記蓄電手段を充電しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する充電走行制御を実行し、該充電走行制御を実行している最中に前記触媒温度検出手段により検出された触媒の温度が第1の温度以上に至ったときには前記内燃機関の回転数が前記第1の回転数より低い第2の回転数に至るまで前記内燃機関のスロットル開度を所定開度とした状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射を停止した状態で前記内燃機関の回転数を徐減させながら前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する燃料噴射停止制御を実行すると共に前記内燃機関の回転数が前記第2の回転数に至ったときには前記内燃機関への燃料噴射を開始して前記充電走行制御を開始するバルブ開固着異常時制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記バルブ開固着異常時制御手段は、前記燃料噴射停止制御を実行している最中に前記触媒温度検出手段により検出された触媒の温度が前記第1の温度未満の第2の温度に至ったときには前記内燃機関への燃料噴射を開始して前記充電走行制御を開始する手段である
車両。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両であって、
前記第1の回転数および前記第2の回転数は、前記内燃機関をアイドル運転するときの前記内燃機関の回転数より高い回転数である
車両。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の車両であって、
前記所定の開度は、前記内燃機関をアイドル運転するときのスロットル開度より大きい開度である
車両。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の車両であって、
前記発電手段は、動力を入出力する発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を有する手段であり、
前記電動機は、回転軸が前記駆動軸に接続されてなる
車両。
【請求項6】
内燃機関と、該内燃機関の排気の吸気系への供給量を調整するバルブを有し該バルブを開いて前記排気を前記吸気系に供給する排気供給手段と、前記内燃機関の排気を浄化する触媒を有する排気浄化手段と、前記内燃機関からの動力で発電可能な発電手段と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記発電手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記排気供給手段のバルブの開固着による異常が判定されたときには前記内燃機関を予め設定された第1の回転数で負荷運転して前記蓄電手段を充電しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する充電走行制御を実行し、該充電走行制御を実行している最中に前記排気浄化手段の触媒の温度が第1の温度以上に至ったときには前記内燃機関の回転数が前記第1の回転数より低い第2の回転数に至るまで前記内燃機関のスロットル開度を所定開度とした状態で且つ前記内燃機関への燃料噴射を停止した状態で前記内燃機関の回転数を徐減させながら前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記発電手段と前記電動機とを制御する燃料噴射停止制御を実行すると共に前記内燃機関の回転数が前記第2の回転数に至ったときには前記内燃機関への燃料噴射を開始して前記充電走行制御を開始する、
ことを特徴とする車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−105626(P2010−105626A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282148(P2008−282148)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】