説明

車両のオートクルーズ装置

【課題】車両の加減速を行う車両のオートクルーズ装置において、タイヤの空気圧が低下している場合に該タイヤの劣化を抑制する。
【解決手段】車両1の走行状態が所定の目標走行状態となるように車両1を加減速させる加減速制御を行う加減速制御部30aを備える車両のオートクルーズ装置であって、車両1の少なくとも1つのタイヤ19aの空気圧に関する値を検出する空気圧センサ70aと、空気圧センサ70aの検出結果に基づいて、少なくとも1つのタイヤ19aの空気圧が所定の低下状態になったことを判定する空気圧低下判定部30bと、をさらに備え、加減速制御部30aは、空気圧低下判定部30bにより少なくとも1つのタイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったと判定されたときに、加減速制御における加速を中断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の加減速を行う車両のオートクルーズ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車の走行状態が、所定の目標走行状態となるように車両を加減速させる加減速制御を行う車両のオートクルーズ装置がある。
【0003】
例えば、自車前方の先行車を検出して、先行車との間で安全な車間距離を有した状態で該先行車に追従するように加減速制御を行う車両のオートクルーズ装置が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された車両のオートクルーズ装置においては、先行車を検出して判別すると共に、この先行車に応じて目標速度を設定し、自車の車速が目標速度となるようにブレーキアクチュエータやスロットルアクチュエータを駆動させて車両の加減速を行っている。
【特許文献1】特開2000−235699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両は、タイヤが走行中にパンク等してタイヤの空気圧が低下する場合がある。このようにタイヤの空気圧が低下した場合において、タイヤの空気圧が低下した状態のまま車両を加速させると、タイヤを劣化させてしまう。通常運転時、即ち、運転者の意思により車両を加減速させて運転している場合には、乗り心地や何らかの報知手段等によりタイヤの空気圧が低下していることに気づくことができ、それ以降の加速を控えることによって空気圧低下時のタイヤの劣化を抑制することができる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された車両のオートクルーズ装置のように、自動的に車両の加減速を行って車両を走行させている場合には、タイヤの空気圧が低下しているかどうかにかかわらず車両を加速させてしまい、タイヤを劣化させる虞がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の加減速を行う車両のオートクルーズ装置において、タイヤの空気圧が低下している場合に該タイヤの劣化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤの空気圧が低下している場合には、車両の加減速制御における加速を抑制するようにしたものである。
【0008】
第1の発明は、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、車両を加減速させる加減速手段と、上記走行状態検出手段によって検出される走行状態に応じて、車両の走行状態が所定の目標走行状態となるように上記加減速手段により車両を加減速させる加減速制御を行う加減速制御手段と、を備える車両のオートクルーズ装置が対象である。
【0009】
また、この車両のオートクルーズ装置は、車両の少なくとも1つのタイヤの空気圧に関する値を検出する空気圧検出手段と、上記空気圧検出手段の検出結果に基づいて、少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定の低下状態になったことを判定する空気圧低下判定手段と、をさらに備えている。
【0010】
そして、上記加減速制御手段は、上記空気圧低下判定手段により少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定の低下状態となったと判定されたときに、上記加減速制御による加速を抑制するように制御するものとする。
【0011】
上記の構成の場合、上記加減速制御手段による加減速制御実行中には、車両は、その走行状態が目標走行状態となるように上記加減速手段により加速又は減速されながら走行する。そして、この加減速制御実行中に車両のタイヤの空気圧が上記空気圧低下判定手段によって所定の低下状態となったと判定されると、上記加減速制御における加速が抑制される。こうすることによってタイヤの空気圧が低下しているときには加速を抑制することができる。ここで、「加速を抑制」するとは、加速度を低減させること及び加速度を零、即ち加速を中止又は中断することを含む。
【0012】
したがって、タイヤの空気圧が低下しているときには、上記加減速制御における加速を抑制するため、タイヤの空気圧が低下した状態のまま加速して、タイヤを劣化させることを抑制することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記加減速制御手段は、上記加減速制御の実行によって車両を加速させている最中に、上記空気圧低下判定手段により少なくとも1つのタイヤの空気圧が上記所定の低下状態となったと判定されたときには、該加減速制御を中断する一方、上記加減速制御の実行によって車両を減速させている最中に、上記空気圧低下判定手段により少なくとも1つのタイヤの空気圧が上記所定の低下状態となったと判定されたときには、該減速させる制御が終了した後に該加減速制御を中断するものとする。
【0014】
上記の構成の場合、上記加減速制御手段による加減速制御実行中に、空気圧低下判定手段により上記空気圧低下判定手段により少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定の低下状態となったと判定されたときには、該加減速制御を中断することにより、タイヤの空気圧低下時に加減速制御による加速が行われないようにしている。ただし、このとき、加減速制御における減速を行っている場合には該減速させる制御が終了後に加減速制御を中断する。こうすることによって、必要な減速が突然中断されることによって乗員に違和感を与えることを防止することができる。一方、加減速制御における加速を行っている場合には、加速中であっても加減速制御を中断して、タイヤの空気圧低下時に加減速制御による加速が行われることを防止する。つまり、加速中は、タイヤの劣化を防止することを優先する。
【0015】
したがって、加減速制御における加速を実行中であって且つ、タイヤの空気圧が所定の低下状態であるときには、加速中であっても加減速制御を中断することによって、空気圧低下時の加速によるタイヤの劣化を抑制することができる。一方、加減速制御における減速を実行中であって且つ、タイヤの空気圧が所定の低下状態であるときには、その減速させる制御が終了した後に加減速制御を中断することによって、必要な減速を突然中断することで乗員へ違和感を与えることを防止しつつ、減速させる制御を終了させた以降は、加減速制御による加速を防止して、空気圧低下時の加速によるタイヤの劣化を抑制することができる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記加減速制御手段は、スイッチ操作に応じて上記加減速制御を開始、終了及び再開させると共に、上記加減速制御実行中にブレーキ操作が検出されたときには該加減速制御を中断するように構成されていて、上記ブレーキ操作により上記加減速制御が中断されたときには、上記スイッチ操作に応じて該加減速制御を再開する一方、上記空気圧低下判定手段によって少なくとも1つのタイヤの空気圧が上記所定の低下状態と判定されたことにより上記加減速制御が中断されたときには、上記スイッチ操作がされても該加減速制御を再開しないものとする。
【0017】
上記の構成の場合、上記ブレーキ操作によって加減速制御が中断されたときには、上記スイッチ操作に応じて加減速制御を再開させることができる。つまり、運転者のブレーキ操作及びスイッチ操作により、運転者が任意に加減速制御を中断及び再開させることができる。これに対し、上記空気圧低下判定手段によって少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定の低下状態と判定されたことにより上記加減速制御が中断されたときには、運転者が上記スイッチ操作をしても加減速制御を再開させることができない。つまり、タイヤの空気圧が低下しているときには、運転者が上記スイッチ操作により加減速制御を再開させようとしても、加減速制御を中断した状態を維持させ、タイヤの空気圧低下時に加減速制御による加速が行われることを防止する。
【0018】
したがって、上記加減速制御がブレーキ操作によって中断された加減速制御は、運転者の上記スイッチ操作により再開させることができるけれでも、上記空気圧低下判定手段によってタイヤの空気圧が所定の低下状態と判定されたことにより中断された加減速制御は、運転者が上記スイッチ操作をしても再開させないように構成することによって、上記ブレーキ操作及びスイッチ操作によって加減速制御の中断及び再開を運転者の任意で行うことができると共に、加減速制御がタイヤの空気圧低下により中断された場合には、上記スイッチ操作による再開を禁止して、タイヤの空気圧低下時における加速によるタイヤの劣化を抑制することができる。
【0019】
第4の発明は、第1〜3の何れか1つの発明において、上記空気圧低下判定手段は、上記空気圧検出手段の検出結果を所定の判定閾値と比較することで、タイヤの空気圧が上記所定の低下状態となっていることを判定するように構成されていて、上記加減速制御手段による加減速制御実行中においては、上記判定閾値を該加減速制御停止中よりも所定値だけ高くする、又は、上記空気圧検出手段の検出値から所定値を減算した値と上記判定閾値とを比較するものとする。
【0020】
上記空気圧低下判定手段によってタイヤの空気圧が所定の低下状態にあると判定されてから、上記加減速制御における加速を抑制して、実際に車両の加速が抑制されるまでにはタイムラグが生じる。つまり、このタイムラグの間は、タイヤの空気圧が所定の低下状態になっているにもかかわらず加速が行われる場合がある。そこで、上記の構成においては、上記加減速制御実行中においては、加減速制御停止中よりも判定閾値を高く設定する、又は、上記空気圧検出手段の検出値から所定値だけ減算した値と上記判定閾値とを比較することによって、加減速制御実行中においては、実際のタイヤの空気圧が所定の低下状態となる前にタイヤの空気圧が所定の低下状態となったと判定して、加減速制御における加速を早期に抑制している。
【0021】
したがって、上記加減速制御実行中にタイヤの空気圧が所定の低下状態となって該加減速制御における加速を抑制する際に、上記判定閾値を該加減速制御停止中よりも所定値だけ高くする、又は、上記空気圧検出手段の検出値から所定量を減算した値と上記判定閾値とを比較することによって、上記加減速制御手段が加減速制御における加速を抑制してから実際に車両の加速が抑制されるまでのタイムラグの間のタイヤの劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空気圧検出手段によりタイヤの空気圧を検出して、空気圧低下判定手段によりタイヤの空気圧が所定の低下状態になっているか否かを判定すると共に、タイヤの空気圧が所定の低下状態となっているときには、上記加減速制御における加速を抑制することによって、タイヤの空気圧が低下しているときには、車両を加速することを抑制して、空気圧低下時の加速によるタイヤの劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
《発明の実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る車両のオートクルーズ装置を採用した車両の概略図を示す。車両1には、エンジン10と、車両1の左前、右前、左後、右後それぞれに設けられ、タイヤ19aとディスクホイール(図示省略)とを有する4つの車輪19、19、…と、4つの車輪19、19、…に個別に配設された4つのブレーキ装置11、11、…と、ダッシュパネルに設けられた警報/表示装置44と、車両前部に配設されて車両1の前方の障害物(例えば、先行車やガードレール等)を検出するためのレーダ20と、先行車が存在しない場合は設定車速での定速制御を行い、先行車が存在する場合にはこの先行車との車間距離が目標車間距離となるような追従制御を行い、さらに、追従制御中に先行車が補足できなくなったときには定速制御に移行するように、車両1を加減速する加減速制御を行うACC(Adaptive Cruse Control)用CPU3aと、タイヤ19a、19a、…の空気圧が低下したことを検出するタイヤ空気圧検出制御を行うTPMS(Tire Pressure Monitoring System)用CPU3bとが設けられている。
【0025】
上記各タイヤ19aには、空気圧検出手段としての空気圧センサ70aが内蔵されている。この空気圧センサ70aはタイヤ19aの空気圧に関する値を検出すると共に、その検出信号を無線送信する。また、各タイヤ19aの近傍には、TPMS用CPU3bに接続されたアンテナ70bが設けられていて、このアンテナ70bが上記空気圧センサ70aの検出信号を受信して、TPMS用CPU3bへ入力する。
【0026】
上記各ブレーキ装置11は、車輪19と共に回転するディスクロータ11aと、パッドをディスクロータ11aに押し当てて車輪19にブレーキ力を付与するキャリパ11bとを有していて、ブレーキアクチュエータ40によってそのブレーキ力が調整される。
【0027】
レーダ20は、車両前方にミリ波を所定角度の範囲でスキャンして発信すると共に、車両1の前方に存在する障害物からの反射波に基づいて該障害物の位置を検出するスキャン式のミリ波レーダである。このレーダ20は、物体検出手段を構成する。尚、レーダ20は、ミリ波レーダに限られず、レーザレーダや超音波レーダ等、車両1の前方に存在する障害物を検出できるセンサであれば種々のものを採用することができる。
【0028】
警報/表示装置44は、ダッシュパネルに設けられ、上記加減速制御中の車両1の走行状態(車速や先行車との車間距離等)を表示すると共に、先行車との車間距離が短くなったときに、その旨を運転者に報知するための警報ランプや警報ブザーを有する。また、タイヤ19aの空気圧が低下したときに、その旨を運転者に報知するための警報ランプや警報ブザーを有する。
【0029】
次に、車両のオートクルーズ装置の制御系について図2の制御ブロック図を用いて説明する。オートクルーズ装置は、ACC用CPU3a及びTPMS用CPU3bを中心に構成されている。
【0030】
TPMS用CPU3bは、空気圧センサ70a、70a、…の検出信号がアンテナ70b、70b、…を介して入力される。そして、空気圧低下判定手段としての空気圧低下判定部30bによってタイヤ19a、19a、…の空気圧が低下しているか否かを判定して、タイヤ19a、19a、…の空気圧が低下しているときには、警報/表示装置44を制御してその旨を運転者に報知すると共に、ACC用CPU3aに空気圧低下信号を出力する。また、ACC用CPU3aから後述する加減速制御実行中か否かを示すモード信号が入力されている。
【0031】
ACC用CPU3aは、上記TPMS用CPU3bからの空気圧低下信号以外に、レーダ20、車速センサ21、操舵角センサ22、ヨーレートセンサ23及び各種設定スイッチ24〜29から信号が入力される。そして、加減速制御手段としての加減速制御部30aによってブレーキアクチュエータ40、エンジンの点火時期調整手段41、燃料噴射弁42、スロットルアクチュエータ43及び警報/表示装置44を制御することにより、車両1を加速又は減速させて上記加減速制御を行う。これらブレーキアクチュエータ40、エンジンの点火時期調整手段41、燃料噴射弁42及びスロットルアクチュエータ43が加減速手段を構成する。
【0032】
上記車速センサ21は、車輪19の回転速度に対応した信号を出力する。操舵角センサ22は、ハンドルの絶対的な操舵角(直進時の操舵位置を基準とした実際の操舵角)に関連する信号を出力する。尚、操舵角センサ22は、ハンドルの相対的な操舵角(操舵角の変化量)に関連する信号を出力するように構成してもよい。ヨーレートセンサ23は、車両1のヨーレートに対応した信号を出力する。これら車速センサ21、操舵角センサ22及びヨーレートセンサ23が走行状態検出手段を構成する。
【0033】
上記各種設定スイッチ24〜29のうち、24は加減速制御のオン・オフを行うACCメインスイッチ、25は定速制御の設定速度を設定するセットスイッチ及び設定速度を減速させるコーストスイッチ、26は加減速制御が中断された場合に再び加減速制御を再開させるリジュームスイッチ及び設定速度を増速させるアクセルスイッチ、27は加減速制御を中断させるキャンセルスイッチ、28は追従制御(車間距離制御)における先行車との目標車間距離を設定する目標車間距離設定スイッチ、29は運転者がブレーキペダルを踏むことによってオンとなり、キャンセルスイッチ27の操作とは別に加減速制御をキャンセルするブレーキスイッチである。これらの加減速制御の設定スイッチ24〜29は、運転席に配置されたステアリングシャフトから車幅方向に延設されたレバー部材に集中配置されている。これらACCメインスイッチ24及びリジューム/アクセルスイッチ26が加減速制御を開始、終了、再開させるスイッチを構成する。
【0034】
そして、上記セット/コーストスイッチ25、及びリジューム/アクセルスイッチ26についてさらに詳しく説明すると、上記セット/コーストスイッチ25は、ACCメインスイッチ24をオンした後に操作された場合にはセットスイッチとして機能し、上記セット/コーストスイッチ25をオンしたときの現車速を設定車速として設定するようになっている。一方、加減速制御中、すなわち、すでに設定車速が設定されている状態でセット/コーストスイッチ25が操作された場合にはコーストスイッチとして機能する。これは定速制御中であれば、このセット/コーストスイッチ25をオンすることによって、スロットルバルブが全閉となり、車両が減速する。このとき、車速センサ21により検出されたサンプリング周期毎の車速が設定車速に随時更新される。一方、追従制御中に上記セット/コーストスイッチ25が瞬間的に操作された場合には設定車速を1km/hだけ減速させるようになり、また、追従制御中に上記セット/コーストスイッチ25をオンにした状態が保持された場合には、そのオンされた時間、例えば200ms毎に1km/hだけ設定車速を減速させるようになっている。
【0035】
一方、上記リジューム/アクセルスイッチ26は、加減速制御中に操作された場合にはアクセルスイッチとして機能する。そして、定速制御中であれば、このリジューム/アクセルスイッチ26をオンすることによって、現車速に応じた目標加速度が設定され、この目標加速度に基づいて燃料噴射弁42及び/又はスロットルアクチュエータ43が制御されて車両が増速する。このとき、車速センサ21により検出されたサンプリング周期毎の車速が設定車速に随時更新される。一方、追従制御中にリジューム/アクセルスイッチ26が瞬間的に操作された場合には、設定車速を1km/hだけ増速させるようになり、追従制御中に上記リジューム/アクセルスイッチ26をオンにした状態が保持された場合には、そのオンされた時間、例えば200ms毎に1km/hだけ設定車速を増速させるようになっている。これに対し、加減速制御がキャンセルされた状態で上記リジューム/アクセルスイッチ26が操作された場合にはリジュームスイッチとして機能し、加減速制御をキャンセルする直前の加減速制御の状態、例えば設定車速や設定車間時間での加減速制御に再開するようになっている。
【0036】
次に、上記オートクルーズ装置における加減速制御について、図3〜5に示すフローチャートに基づいて説明する。この加減速制御のフローチャートはACCメインスイッチ24がオンされることによってスタートするようになっている。このACCメインスイッチ24がオンされたときに、制御モードを1に設定する。この制御モードは加減速制御実行中か加減速制御中断中かを判定するためのフラグであり、1の場合は制御実行中を、0の場合は制御中断中を示す。尚、上記キャンセルスイッチ27又はブレーキスイッチ29によって加減速制御が中断されたとき、並びにACCメインスイッチ24をオフにして加減速制御を終了するときには、制御モードを0に設定する。そして、この制御モードに対応するモード信号がACC用CPU3aからTPMS用CPU3bへ出力される。
【0037】
そして、まず、ステップS1において、加減速制御の各種設定スイッチ25〜29からの信号の読み取りを行う。
【0038】
その後、ステップS2へ進み、このステップS2においては、先行車の有無を判定する。具体的には、まず、上記車速センサ21の出力信号及び上記レーダ20から出力される障害物の位置に関連する信号から、車両1の前方に障害物が存在するか否か、存在する場合には障害物情報として障害物の車両1に対する位置及び相対速度を検出して、どのような障害物であるか(例えば、移動物か停止物か)を判定する。次に、車速センサ21、操舵角センサ22及びヨーレートセンサ23の出力信号から、車両1の進行方向を検出する。具体的には、ヨーレート及び操舵角が0の場合は車両1が直進していると判断する一方、ヨーレート又は操舵角が0でない場合は、車速とヨーレート及び/又は操舵角とからカーブする進行方向を検出する。そして、上記障害物情報と車両1の進行方向に基づいて、車両1の前方に先行車が存在するか否かを判断する。こうして、先行車が存在しない場合には、定速制御を行うべくステップS3へ進む一方、先行車が存在する場合には、追従制御を行うべくステップS18へ進む。
【0039】
まず、定速制御について説明する。ステップS3においては、セット/コーストスイッチ25がセットスイッチとしてオンされたときの現車速を設定車速とすると共に、リジューム/アクセルスイッチ26がアクセルスイッチとして、又はセット/コーストスイッチ25がコーストスイッチとして操作されたときは、その操作に応じて加減速制御を実施する。すなわち、アクセルスイッチ又はコーストスイッチの操作に応じて、車両1を加速又は減速させて、設定車速を設定し直す。
【0040】
そして、ステップS4において、制御中断中か否かを判定する。具体的には、上記制御モードによって判定する。つまり、ACCメインスイッチ24をオンにしたときのまま、即ち制御モードが1の場合は、ステップS4において制御実行中と判定されステップS5へ進む。一方、上記キャンセルスイッチ27やブレーキスイッチ29により加減速制御が中断され、制御モードが0に設定されている場合は、制御中断中と判定されステップS14へ進む。
【0041】
ステップS5では、ブレーキスイッチ29がオンか否かが判定される。オンの場合はステップS13へ進む。ブレーキスイッチ29がオン、即ち、加減速制御中に運転者自らがブレーキ操作した場合には、加減速制御を中断させる。そこで、ステップS13において加減速制御を中断すべく制御モードが0に設定されてリターンへ進む。一方、ブレーキスイッチ29がオフの場合は、ステップS6へ進む。
【0042】
そして、ステップS6においては、後述するタイヤ空気圧低下判定があったか否かを判定する。すなわち、上記TPMS用CPU3bによってタイヤ19a、19a、…の何れかの空気圧が低下していると判定されて上記空気圧低下信号が入力されている場合は、ステップS11へ進む一方、上記空気圧低下信号が入力されていない場合は、ステップS7へ進む。
【0043】
ステップS7においては、設定車速と現車速との偏差(=設定速度−現速度)が正の所定値よりも大きいか否かを判定する。つまり、現速度が設定速度よりも遅いか否かを判定する。上記偏差が正の所定値よりも大きい場合はステップS8へ進む一方、偏差が正の所定値以下の場合はステップS9へ進む。ここで、現速度が設定速度よりも遅くても上記偏差が正の所定値以下の場合には、現速度は設定速度と略同じと判断してステップS9へ進む。
【0044】
ステップS8においては、現速度を設定速度と一致させるべく、設定速度と現速度との偏差に応じた加速度となるように、エンジンの加速制御を行う。具体的には、上記燃料噴射弁42の噴射燃料を増加させるように、及び/又はスロットルアクチュエータ43によりスロットルバルブを開けるように制御して、現車速を増速させる。このとき、加減速モードを1に設定する。この加減速モードは、車両1が定速状態か、加速中か又は減速中かを判定するためのフラグであり、0の場合は加速も減速もしてない定速状態を、1の場合は加速中を、2の場合は減速中を示す。その後、リターンする。
【0045】
一方、ステップS9においては、設定車速と現車速との偏差が負の所定値よりも小さいか否かを判定する。つまり、現速度が設定速度よりも速いか否かを判定する。上記偏差が負の所定値よりも小さい場合はステップS10へ進む一方、負の所定値以上の場合はリターンへ進む。ここで、現速度が設定速度よりも速くても上記偏差が負の所定値以上の場合には、現速度は設定速度と略同じと判断してリターンへ進む。すなわち、ステップS7からS9を介してリターンへ進む場合は、現車速が、設定速度を中心に正の所定値と負の所定値との幅の中に入っており、設定速度と略同じとして車速の調整を行わない。このとき、加減速モードを定速状態を意味する0に設定する。
【0046】
ステップS10においては、現速度を設定速度と一致させるべく、設定速度と現速度との偏差に応じた減速度となるように、エンジンの減速制御を行う。具体的には、点火時期調整手段41によりエンジンの点火時期を遅らせて出力を落とすこと、燃料噴射弁42の噴射燃料を減少させること及びスロットルアクチュエータ43によりスロットルバルブを閉じることのうちの少なくとも1つの方法により、現車速を減速させる。尚、上記の減速よりもさらに大きく減速させるために、ブレーキアクチュエータ40を作動させて減速させるように構成してもよい。このとき、加減速モードを、減速中を意味する2に設定する。その後、リターンする。
【0047】
また、上記ステップS6において、タイヤ空気圧低下判定があると判定されてステップS11へ進んだ場合には、ステップS11において減速中か否かが判定される。具体的には、上記加減速モードが2か否かを判定する。そして、減速中でない場合は、ステップS12へ進み、ステップS12において加減速制御を中断する。その後リターンへ進む。一方、減速中である場合は、ステップS9へ進む。つまり、タイヤ空気圧低下判定があった場合は、減速中でない限り、ステップS12において加減速制御を中断する。一方、減速中である場合には、ステップS9、S10においてエンジンの減速制御が続行される。そして、設定速度と現速度との偏差が上記負の所定値より大きくなり、ステップS9からリターンへ進んで定速状態となると、ステップS11で減速中でないと判定され、ステップS12において加減速制御を中断する。
【0048】
また、上記ステップS4において、制御中断中と判定されステップS14へ進んだ場合には、ステップS14においてリジューム/アクセルスイッチ26がリジュームスイッチとしてオン操作されたか否かを判定する。リジュームスイッチがオン操作されていない場合は、リターンする。そして、リジュームスイッチがオン操作されるまでステップS1〜S14のステップを繰り返す。一方、リジュームスイッチがオン操作されている場合は、ステップS15へ進む。
【0049】
ステップS15においては、上記ステップS6と同様に、後述するタイヤ空気圧低下判定があったか否かを判定する。すなわち、上記TPMS用CPU3bによってタイヤ19a、19a、…の何れかの空気圧が低下していると判定されて上記空気圧低下信号が入力されている場合は、ステップS17へ進む一方、上記空気圧低下信号が入力されていない場合は、ステップS16へ進む。
【0050】
ステップS16においては、リジュームスイッチのオン操作により制御を再開すべく制御モードが1に設定され、その後リターンする。
【0051】
一方、ステップS17においては、タイヤ19aの空気圧が低下しているため加減速制御を再開できない旨を運転者に報知すべく、警報/表示装置44を制御して警報ブザーを鳴らすと共にその旨を表示する警報ランプを点灯させる。その後、制御モードは0のまま、リターンする。つまり、タイヤ空気圧低下判定があった場合には、リジュームスイッチをオン操作しても加減速制御を再開することができない。
【0052】
尚、イグニッションがオフとなり、加減速制御が終了した場合には、タイヤ空気圧低下判定の有無や制御モード等の情報はリセットされ、次に開始したときには加減速制御が最初から実行される。つまり、イグニッションを再度オンにしたときに、タイヤ19aの空気圧が依然として所定の低下状態である場合には、ACCメインスイッチ24をオンさせたとしても上記のステップによって加減速制御が中断される。一方、イグニッションを再度オンにしたときに、空気圧が低下したタイヤ19aが修理されている場合には、ACCメインスイッチ24をオンすることにより加減速制御を実行することができる。
【0053】
次に、追従制御について説明する。ステップS2において、先行車があると判断された場合には、ステップS18へ進み、ステップS18において、目標車間距離設定スイッチ28の操作に応じて目標車間距離を設定する。その後、ステップS19へ進む。
【0054】
ステップS19においては、制御中断中か否かを判定する。具体的には、制御モードが0か否かを判定する。制御モードが1の場合は、ステップS19において制御実行中と判定されステップS20へ進む。一方、制御モードが0に設定されている場合は、制御中断中と判定されステップS14へ進む。
【0055】
そして、ステップS20においては、ブレーキスイッチ29がオンか否かが判定される。オンの場合はステップS30へ進み、ステップS30においては、上記ステップS13と同様に、加減速制御を中断すべく制御モードが0に設定されてリターンへ進む。一方、ブレーキスイッチ29がオフの場合は、ステップS21へ進む。
【0056】
ステップS21においては、上記ステップS6と同様に、後述するタイヤ空気圧低下判定があったか否かを判定する。すなわち、上記TPMS用CPU3bによってタイヤ19a、19a、…の何れかの空気圧が低下していると判定されて上記空気圧低下信号が入力されている場合は、ステップS28へ進む一方、上記空気圧低下信号が入力されていない場合は、ステップS22へ進む。
【0057】
そして、ステップS22においては、現車間距離と目標車間距離との偏差(=現車間距離−目標車間距離)が正の所定値よりも大きいか否かを判定する。つまり、現車間距離が目標車間距離よりも長いか否かを判定する。上記偏差が正の所定値よりも大きい場合はステップS23へ進む一方、偏差が正の所定値以下の場合はステップS24へ進む。ここで、現車間距離が目標車間距離よりも長くても上記偏差が正の所定値以下の場合には、現車間距離は目標車間距離と略同じと判断してステップS24へ進む。
【0058】
ステップS23においては、現車間距離を目標車間距離と一致させるべく、現車間距離と目標車間距離との偏差に応じた加速度となるように、エンジンの加速制御を行う。具体的な制御については、上記ステップS8と同様である。その後、リターンする。
【0059】
一方、ステップS24においては、現車間距離と目標車間距離との偏差が第1の負の所定値よりも小さいか否かを判定する。つまり、現車間距離が目標車間距離よりも短いか否かを判定する。上記偏差が第1の負の所定値よりも小さい場合はステップS25へ進む一方、偏差が第1の負の所定値以上の場合はリターンへ進む。ここで、現車間距離が目標車間距離よりも短くても上記偏差が第1の負の所定値以上の場合には、現車間距離は目標車間距離と略同じと判断してリターンへ進む。すなわち、ステップS22からS24を介してリターンへ進む場合は、現車間距離が、目標車間距離を中心に正の所定値と負の所定値との幅の中に入っており、目標車間距離と略同じとして車両1の加減速による車間距離の調整を行わない。このとき、加減速モードを定速状態を意味する0に設定する。
【0060】
ステップS25においては、さらに、現車間距離と目標車間距離との偏差が、第1の負の所定値よりも小さい第2の負の所定値よりも小さいか否かを判定する。つまり、現車間距離が目標車間距離よりもかなり短いか否か、即ち急激な減速が必要か否かを判定する。上記偏差が第2の負の所定値よりも小さい場合はステップS27へ進む一方、偏差が第2の負の所定値以上の場合はステップS26へ進む。
【0061】
ステップS26においては、現車間距離を目標車間距離と一致させるべく、現車間距離と目標車間距離との偏差に応じた減速度となるように、エンジンの減速制御を行う。具体的な減速制御は、上記ステップS10と同様である。その後、リターンへ進む。
【0062】
ステップS27においては、急激な減速が必要な場合であるので、現車間距離と目標車間距離との偏差に応じたより大きな減速度となるように、ブレーキアクチュエータ40を作動させてブレーキ制御を行う。このとき、必要に応じて、上記エンジンの減速制御を組み合わせてもよい。そして、さらに、先行車との車間距離が短いことを運転者に報知すべく、警報/表示装置44を制御して警報ブザーを鳴らすと共にその旨を表示する警報ランプを点灯させる。このとき、加減速モードを、減速中を意味する2に設定する。その後、リターンする。
【0063】
また、上記ステップS19において、制御中断中と判定されステップS14へ進んだ場合には、上述の通り、リジューム/アクセルスイッチ26がリジュームスイッチとしてオン操作されたか否か、タイヤ空気圧低下判定があるか否かに応じて、加減速制御を再開するか否かを判定する。
【0064】
続いて、タイヤ空気圧検出制御について図6に示すフローチャートに基づいて説明する。このタイヤ空気圧低下検出制御のフローチャートはイグニッションがオン操作されることによってスタートするようになっている。
【0065】
まず、ステップS40において、空気圧センサ70a、70a、…の検出信号に基づいてタイヤ19a、19a、…の空気圧を検出する。
【0066】
そして、ステップS41において、上記加減速制御が実行中か否かを判定する。詳しくは、ACC用CPU3aからTPMS用CPU3bに入力された上記制御モードに対応するモード信号に基づいて、制御モードが1である場合は、加減速制御中であると判定することができる。そうして、加減速制御中である場合はステップS43へ進む。一方、制御モードが0である場合、すなわち加減速制御が中断している通常走行時には、ステップS42へ進む。
【0067】
ステップS42においては、各空気圧センサにより検出された各タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となっているか否かを判定するための判定閾値を、所定の第1判定閾値に設定する。その後ステップS44へ進む。所定の低下状態とは、タイヤ19aの空気圧が、その状態で走行を継続すると、タイヤ19aの劣化を促進させてしまう程度の値になっている、又はタイヤ19aが一般的にパンクしたと判定し得る値となっている状態をいい、そのときの空気圧を所定の第1判定閾値とする。
【0068】
一方、ステップS43においては、上記判定閾値を、第1判定閾値よりも所定量だけ高い所定の第2判定閾値に設定する。その後ステップS44へ進む。
【0069】
そして、ステップS44においては、各タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となっていると判定する判定閾値より低いか否かを判定する。タイヤ19a、19a、…のうち少なくとも1つのタイヤ19aの空気圧が判定閾値よりも低い場合には、ステップS45へ進む。一方、全てのタイヤ19a、19a、…の空気圧が判定閾値以上である場合には、リターンへ進む。
【0070】
ステップ45においては、タイヤ空気圧が低下していると判定して、上記ACC用CPU3aに空気圧低下信号を出力すると共に、タイヤ19aが所定の低下状態となっていることを運転者に報知すべく、警報/表示装置44を制御して警報ブザーを鳴らすと共にその旨を表示する警報ランプを点灯させる。
【0071】
つまり、このタイヤ空気圧低下検出制御においては、空気圧センサ70a、70a、…によりタイヤ19a、19a、…の空気圧を検出すると共に、タイヤ19a、19a、…の空気圧が所定の低下状態となっているか否かを検出する。このとき、上記加減速制御を実行してい場合は、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となっていると判定するための判定閾値を通常走行時よりも高い値に設定して、タイヤ19aの空気圧が、実際には所定の低下状態とはなっていないけれども、タイヤ空気圧が所定の低下状態となる少し前の状態で、所定の低下状態になったと判定する。つまり、所定の第2判定閾値は、上記タイムラグの間の加速によってタイヤ19aが劣化しない程度の空気圧であって且つ、タイムラグ経過中に空気圧が低下して、該タイムラグ経過後にはタイヤ19aの劣化を促進させてしまう、又はタイヤ19aが一般的にパンクしたと判定し得る程度の空気圧に設定するとよい。
【0072】
このように本実施形態に係る車両のオートクルーズ装置では、車両1の前方に先行車がない場合には車速が設定速度になるように車両1を加減速して定速走行する一方、先行車がある場合には該先行車と車間距離が目標車間距離となるように車両1を加減速して追従走行する加減速制御が行われている。それに加えて、イグニッションがオンのときには、常時、タイヤ19a、19a、…の空気圧が監視されており、少なくとも1つのタイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったときには、その旨を運転者に報知すると共に、上記加減速制御を中断する。
【0073】
したがって、本実施形態では、加減速制御による定速走行中又は追従走行中に、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったときには、加減速制御を中断して、加減速制御による加速を中断することによって、タイヤ19aの空気圧が低下した状態のまま加速してタイヤを劣化させることを防止することができる。
【0074】
また、上記オートクルーズ装置を、加減速制御における加速中に、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったときには、加速中であっても加減速制御を中断して加速を行わないようにする一方、加減速制御における減速中に、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったときには、現速度がそのときの設定速度となる又は車間距離がそのときの目標車間距離となるまで減速を行った後で加減速制御を中断して、それ以降加速を行わないように構成することによって、加減速制御における加速中は、優先的に加速を中断して空気圧低下時の加速によるタイヤ19aの劣化を防止することができると共に、加減速制御における減速中は、定速走行中又は追従走行中の減速が突然中断されることで乗員に違和感を与えることを防止しつつ、減速終了後以降の空気圧低下時の加速によるタイヤ19aの劣化を防止することができる。
【0075】
さらに、上記オートクルーズ装置を、運転者のブレーキ操作により加減速制御が中断されたときには、リジューム/アクセルスイッチ26をリジュームスイッチとしてオンさせることによって加減速制御を再開させる一方、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったことにより加減速制御が中断されたときには、リジューム/アクセルスイッチ26をリジュームスイッチとしてオンさせても加減速制御を再開させないように構成することによって、運転者の任意の操作(ブレーキ操作)で加減速制御が中断されたときには、運転者の任意の操作(リジューム/アクセルスイッチ26の操作)で加減速制御が再開できると共に、タイヤ19aの空気圧の低下により加減速制御が中断されたときには、運転者がリジューム/アクセルスイッチ26を操作しても加減速制御の再開を禁止して、空気圧低下時における加速によるタイヤ19aの劣化を確実に防止することができる。
【0076】
さらにまた、加減速制御中は、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったと判定する判定閾値を、加減速制御停止中の通常走行時の第1判定閾値よりも所定量だけ高い第2判定閾値に設定するため、タイヤ19aの空気圧が、実際には所定の低下状態とはなっていないけれども、タイヤ空気圧が所定の低下状態となる少し前の状態で、所定の低下状態になったと判定して加減速制御を中断する。その結果、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったと判定されてから実際の車両1の加速が中断されるまでのタイムラグの間は、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態よりも少し高い状態となっているため、該タイムラグの間にタイヤ19aの空気圧が所定の低下状態で加速されてタイヤ19aの劣化させてしまうことを防止することができる。
【0077】
《その他の実施形態》
本発明は、以下のような構成としてもよい。すなわち、上記実施形態では、空気圧検出手段として各タイヤ19aの中に内蔵された空気圧センサ70aを採用しているが、これに限られず、タイヤ19aの空気圧に関する値を検出できるものであれば任意のセンサ等を採用することができる。例えば、各車輪19に車輪速センサを設けて、4つの車輪19、19、…の車輪速のバランスからタイヤ19a、19a、…の空気圧に関する値を検出するように構成してもよい。かかる場合は、上記ステップS42及びS43において、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態になったと判定する判定閾値を、それぞれ車輪間の車輪速偏差に対応する所定の第1閾値及び第1閾値よりも低い第2閾値に設定すると共に、ステップS44において、車輪速偏差が該判定閾値よりも大きいときにタイヤ19aの空気圧が所定の低下状態になったと判定するように構成すればよい。
【0078】
また、上記実施形態では、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったと判定されたときに、加減速制御を中断するように構成されているが、これに限られるものではない。すなわち、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったと判定されたときに、加減速制御の加速における加速度の上限値をタイヤ19aの劣化を促進させない程度の値に制限する、又は、加速度に所定のゲインを乗じて一定率だけ低減させるように構成してもよい。こうすることによって、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となっても、加減速制御を維持しつつ、タイヤ19aの劣化を抑制することができる。尚、かかる場合には、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態である間は、リジューム/アクセルスイッチ26のリジュームスイッチとしての操作やアクセルスイッチとしての操作が行われても、加速度の上限値の制限を解除しないように、又はゲインを乗じて加速度を低減することをやめないように構成することが好ましい。
【0079】
さらに、上記実施形態では、加減速制御実行中には、ステップS43においてタイヤ19aの空気圧が所定の低下状態となったと判定する判定閾値を通常走行時の第1判定閾値よりも高い第2判定閾値に設定して、タイヤ19aの実際の空気圧が所定の低下状態になる前に所定の低下状態になったと判定するように構成しているがこれに限られるものではない。例えば、空気圧検出手段としての空気圧センサ70aの検出量から所定量だけ減ずること、すなわち、空気圧センサ70aの検出信号に基づいて検出されるタイヤ19aの空気圧が実際のタイヤ19aの空気圧よりも低めになるように構成することにより、結果として、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態になったとみなす空気圧を所定量だけ高くすることができる。こうすることにより、タイヤ19aの空気圧が所定の低下状態になったと判定されてから実際の車両1の加速が中断されるまでのタイムラグの間のタイヤ19aの劣化を防止することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、ACC用CPU3aとTPMS用CPU3bとの2つのCPUを設けているが、これに限られるものではない。つまり、1つのCPU又はコントロールユニット内に加減速制御部30aと空気圧低下判定部30bを設けて、加減速制御とタイヤ空気圧検出制御とを1つのCPU又はコントロールユニットで行うように構成してもよい。
【0081】
さらに、上記実施形態では、加減速制御として先行車の有無により定速制御と追従制御とを切り替えて行うように構成されているが、加減速制御としてどちらか一方を行うように構成されているものであってもよい。また、上記定速制御及び追従制御に限られず、自車の走行状態に応じて目標走行状態になるように加減速制御する構成であれば、任意の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の概略平面図である。
【図2】車両のオートクルーズ装置の制御系を示す制御ブロック図である。
【図3】車両のオートクルーズ装置の加減速制御のフローチャートの一部である。
【図4】車両のオートクルーズ装置の加減速制御のフローチャートの一部である。
【図5】車両のオートクルーズ装置の加減速制御のフローチャートの一部である。
【図6】車両のオートクルーズ装置のタイヤ空気圧検出制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1 車両
19a タイヤ
21 車速センサ(走行状態検出手段)
22 操舵角センサ(走行状態検出手段)
23 ヨーレートセンサ(走行状態検出手段)
26 リジューム/アクセルスイッチ(再開スイッチ)
30a 加減速制御部(加減速制御手段)
30b 空気圧低下判定部(空気圧低下判定手段)
40 ブレーキアクチュエータ(加減速手段)
41 点火時期調整手段(加減速手段)
42 燃料噴射弁(加減速手段)
43 スロットルアクチュエータ(加減速手段)
70a 空気圧センサ(空気圧検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
車両を加減速させる加減速手段と、
上記走行状態検出手段によって検出される走行状態に応じて、車両の走行状態が所定の目標走行状態となるように上記加減速手段により車両を加減速させる加減速制御を行う加減速制御手段と、を備える車両のオートクルーズ装置であって、
車両の少なくとも1つのタイヤの空気圧に関する値を検出する空気圧検出手段と、
上記空気圧検出手段の検出結果に基づいて、少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定の低下状態になったことを判定する空気圧低下判定手段と、をさらに備え、
上記加減速制御手段は、上記空気圧低下判定手段により少なくとも1つのタイヤの空気圧が所定の低下状態となったと判定されたときに、上記加減速制御による加速を抑制するように制御することを特徴とする車両のオートクルーズ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のオートクルーズ装置において、
上記加減速制御手段は、
上記加減速制御の実行によって車両を加速させている最中に、上記空気圧低下判定手段により少なくとも1つのタイヤの空気圧が上記所定の低下状態となったと判定されたときには、該加減速制御を中断する一方、
上記加減速制御の実行によって車両を減速させている最中に、上記空気圧低下判定手段により少なくとも1つのタイヤの空気圧が上記所定の低下状態となったと判定されたときには、該減速させる制御が終了した後に該加減速制御を中断することを特徴とする車両のオートクルーズ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のオートクルーズ装置において、
上記加減速制御手段は、
スイッチ操作に応じて上記加減速制御を開始、終了及び再開させると共に、
上記加減速制御実行中にブレーキ操作が検出されたときには該加減速制御を中断するように構成されていて、
上記ブレーキ操作により上記加減速制御が中断されたときには、上記スイッチ操作に応じて該加減速制御を再開する一方、
上記空気圧低下判定手段によって少なくとも1つのタイヤの空気圧が上記所定の低下状態と判定されたことにより上記加減速制御が中断されたときには、上記スイッチ操作がされても該加減速制御を再開しないことを特徴とする車両のオートクルーズ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の車両のオートクルーズ装置において、
上記空気圧低下判定手段は、
上記空気圧検出手段の検出結果を所定の判定閾値と比較することで、タイヤの空気圧が上記所定の低下状態となっていることを判定するように構成されていて、
上記加減速制御手段による加減速制御実行中においては、上記判定閾値を該加減速制御停止中よりも所定値だけ高くする、又は、上記空気圧検出手段の検出値から所定値を減算した値と上記判定閾値とを比較することを特徴とする車両のオートクルーズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−205801(P2006−205801A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17890(P2005−17890)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】