説明

車両用動力伝達装置用制御装置

【課題】差動機構を高回転化から保護しつつエンジントルク低下を補うことが可能な車両用動力伝達装置用制御装置を提供する。
【解決手段】許容回転速度設定手段96は、所定の加速操作量OPAC及びエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが、エンジン14の出力トルク特性を示す予め設定された関係から上記所定の加速操作量OPAC及びエンジン回転速度Neに基づいて定まる基準エンジントルクTesよりも低いと判断された場合には、そうでない場合と比較して、差動機構である第1遊星歯車装置20の許容入力回転速度N1inを高く設定する。従って、許容入力回転速度N1inの制限によって第1遊星歯車装置20を高回転化から保護することが可能であると共に、許容入力回転速度N1inの変更に応じてエンジン回転速度Neを引き上げてエンジントルクTeを上昇させエンジントルク低下を補うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置の動力伝達経路において回転速度を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成し差動用電動機が制御されることにより差動状態が制御される差動機構を備えた車両用動力伝達装置を制御するための車両用動力伝達装置用制御装置が、よく知られている。例えば、特許文献1に開示されたハイブリッド車の機関回転速度制御装置がそれである。一般にエンジンでは、エンジンが吸入する空気の気圧が低下するほどエンジントルクは低下する。例えば、上記空気の気圧すなわち大気圧は、車両が位置する標高が高いほど低下するものである。そこで、特許文献1の機関回転速度制御装置は、大気圧低下によるエンジントルクの低下量に応じて前記差動用電動機(発電機)の回転速度を高めると共にそれによってエンジン回転速度を上昇させる。このようにして上記機関回転速度制御装置は、大気圧低下によるエンジントルクの低下を補うようにエンジンを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−213592号公報
【特許文献2】特開2006−125245号公報
【特許文献3】特開2009−280094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンからの駆動力は多数の回転部材等を介して駆動輪へと伝達される。そして、その多数の回転部材等にはそれぞれ回転速度の上限値すなわち許容回転速度が存在するものであり、例えば前記差動機構にも許容回転速度が設定されている。従って、特許文献1の機関回転速度制御装置が大気圧の低下に応じてエンジン回転速度を上昇させる際に、上記多数の回転部材等の許容回転速度たとえば上記差動機構における許容回転速度の制限によって、エンジントルクの低下を補うほどにはエンジン回転速度を上昇させられないことが想定された。また、大気圧の低下時にエンジン回転速度を上昇させる際には、上記許容回転速度による制限を解除するということも想定されるが、そのようにしたとすれば、例えば前記差動機構の耐久性が損なわれる等の可能性があるものと考えられた。なお、このような課題は未公知である。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、前記差動機構を高回転化から保護しつつエンジントルク低下を補うことが可能な車両用動力伝達装置用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a)エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成し差動用電動機が制御されることにより差動状態が制御される差動機構を備えた車両用動力伝達装置において、前記エンジンから入力される前記差動機構の入力回転速度に対して許容入力回転速度を設定する車両用動力伝達装置用制御装置であって、(b)所定の加速操作量およびエンジン回転速度のときに前記エンジンから出力されるエンジントルクが、そのエンジンの出力トルク特性を示す予め設定された関係からその所定の加速操作量およびエンジン回転速度に基づいて定まる基準エンジントルクよりも低い場合には、そのエンジントルクがその基準エンジントルク以上である場合と比較して、前記許容入力回転速度を高くすることにある。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、前記許容入力回転速度の制限によって前記差動機構を高回転化から保護することが可能であると共に、エンジントルクが低くなれば上記許容入力回転速度が高められるので、その許容入力回転速度の変更に応じてエンジン回転速度を引き上げてエンジントルクを上昇させ、エンジントルク低下を補うことが可能となる。なお、前記差動機構の耐久性等は差動機構の入力回転速度と入力される入力トルクとの両方の影響を受ける。例えば、その入力トルクが大きければ入力回転速度を低くする必要がある一方で、その入力トルクが小さければ入力回転速度を高くしても差し支えない。従って、差動機構に入力されるエンジントルクが低下した場合にそれに応じて前記許容入力回転速度を引き上げることは可能である。
【0008】
ここで、好適には、(a)前記予め設定された関係は、予め定められた基準気圧の空気を吸入して駆動される前記エンジンの出力トルク特性を示すものであり、(b)前記エンジンに吸入される空気の気圧が前記基準気圧よりも低い場合には、前記所定の加速操作量およびエンジン回転速度のときに前記エンジンから出力されるエンジントルクが前記基準エンジントルクよりも低いと判断する。このようにすれば、エンジントルクを検出しなくても、前記気圧を検出し又は推定することで、前記許容入力回転速度を高くするか否かを決定することができる。
【0009】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、(a)エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成し差動用電動機が制御されることにより差動状態が制御される差動機構を備えた車両用動力伝達装置において、前記エンジンから入力される前記差動機構の入力回転速度に対して許容入力回転速度を設定する車両用動力伝達装置用制御装置であって、(b)前記エンジンに吸入される空気の気圧が予め定められた基準気圧よりも低い場合には、そのエンジンに吸入される空気の気圧がその基準気圧以上である場合と比較して、前記許容入力回転速度を高くすることにある。ここで、同一の吸入空気量且つ同一のエンジン回転速度の下で比較すれば、エンジントルクは前記エンジンに吸入される空気の気圧が低いほど低下する傾向にある。従って、請求項3に係る発明のようにすれば、前記許容入力回転速度の制限によって前記差動機構を高回転化から保護することが可能であると共に、上記気圧が低くなれば上記許容入力回転速度が高められるので、その許容入力回転速度の変更に応じてエンジン回転速度を引き上げてエンジントルクを上昇させ、上記気圧の低下に起因したエンジントルク低下を補うことが可能となる。
【0010】
ここで、好適には、車両が位置する標高に基づいて、前記エンジンに吸入される空気の気圧が前記基準気圧よりも低いか否かを判断する。このようにすれば、エンジントルクや上記気圧を検出しなくても、上記車両が位置する標高を検出し又は推定することで、前記許容入力回転速度を高くするか否かを決定することができる。例えば、上記車両が位置する標高は、カーナビゲーション装置の地図情報などを活用して容易に取得することが可能である。
【0011】
また、好適には、前記基準気圧に対応した標高が基準標高として予め定められており、車両が位置する標高がその基準標高よりも高い場合には前記エンジンに吸入される空気の気圧が前記基準気圧よりも低いと判断する。このようにすれば、上記車両が位置する標高を検出し又は推定することで、エンジンに吸入される空気の気圧について判断する場合と同様にして、前記許容入力回転速度を高くするか否かを決定することができる。
【0012】
また、好適には、車両が位置する標高が高いほど、前記許容入力回転速度を高くする。ここで、上記標高が高いほど、エンジンに吸入される空気の気圧は低下しエンジントルクも低下する。従って、このようにすれば、上記気圧の低下に起因して低下したエンジントルクに対して過不足ない前記許容入力回転速度を設定することが可能である。
【0013】
また、好適には、(a)車両加速時におけるエンジン回転速度の目標値と実際値との差の単位時間当たりの増大量であるエンジン回転速度差増大率を算出し、(b)そのエンジン回転速度差増大率に基づいて、前記車両が位置する標高を推定する。このようにすれば、車両では一般的に検出される物理値であるエンジン回転速度を用いて、容易に前記車両が位置する標高を推定し前記許容入力回転速度を設定することが可能である。
【0014】
また、好適には、(a)前記差動機構は、前記差動用電動機に連結されたサンギヤと、前記駆動輪に連結されたリングギヤと、そのサンギヤとそのリングギヤとの間に介装されたピニオンギヤを自転および公転可能に支持すると共に前記エンジンに連結されたキャリヤとを有する遊星歯車装置であり、(b)前記許容入力回転速度を高くするほど前記差動用電動機の回転速度を上昇させる。このようにすれば、高められた許容入力回転速度に応じてエンジン回転速度を引き上げ、それによりエンジントルクを上昇させることができる。
【0015】
また、好適には、前記差動機構の耐久性を損なわないように、その差動機構の有する歯車の疲労を促進しないように、或いは、前記差動機構の回転部分に焼きつきが発生しないように、前記許容入力回転速度を決定する。このようにすれば、上記差動機構の耐久性を損なうこと等がないようにエンジンを駆動することが可能である。
【0016】
また、好適には、エンジントルクに対抗する前記差動用電動機の反力トルクに基づきそのエンジントルクを検出する。このようにすれば、上記差動用電動機の反力トルクをその差動用電動機の制御電流値などから算出することにより、容易に上記エンジントルクを求めることができる。
【0017】
なお、前記請求項1に係る発明および前記請求項3に係る発明は各々独立した請求項として記載されているが、前記エンジンに吸入される空気の気圧が低下するほどその空気は希薄になりエンジントルクは低下するので、請求項3では「前記許容入力回転速度を高くする」ことを判断する条件にエンジントルクを用いていると見ることもできる。従って、請求項1に係る発明および請求項3に係る発明は、「エンジントルクが所定のトルク値よりも低い場合には、そうでない場合と比較して、前記許容入力回転速度を高くする」という同一の特別な技術的特徴を有しているので、そのことにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関していると言える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用される車両用動力伝達装置を説明するための骨子図である。
【図2】図1の車両用動力伝達装置を制御するための電子制御装置に入力される信号及びその電子制御装置から出力される信号を例示した図である。
【図3】図2の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する実施例1の機能ブロック線図である。
【図4】図1の車両用動力伝達装置のエンジン制御において、エンジン動作の許容範囲であるエンジン動作範囲が、エンジン回転速度と車速とからなる二次元座標を用いて定められた例を示す図である。
【図5】図1の車両用動力伝達装置において、高地走行の場合と標準状態の場合との各々のエンジンの出力トルク特性の一例を示した図である。
【図6】図1の車両用動力伝達装置において、予め定められた基準気圧の空気を吸入して駆動されるエンジンの出力トルク特性を示した図である。
【図7】図2の電子制御装置が実行する制御において、アクセルペダルが一定量踏み込まれてその後アクセル開度が一定に保持された車両走行を例とした、エンジン回転速度差増大率がどのように算出されるかを説明するためのタイムチャートである。
【図8】図2の電子制御装置が実行する制御において用いられる、推定される車両標高である推定高度とエンジン回転速度差増大率との予め実験的に設定された関係を示した推定高度マップである。
【図9】図3の許容回転速度設定手段が許容入力回転速度を設定する際に基本的に用いる許容入力回転速度と車速との予め設定された関係を示した図である。
【図10】図3の許容回転速度設定手段が図9に対して高く許容入力回転速度を設定する際に用いる許容入力回転速度と車速との予め設定された関係を示した図である。
【図11】図2の電子制御装置の制御作動の第1の要部、すなわち、エンジンおよび第1電動機を駆動する制御作動を説明するための実施例1,2のフローチャートである。
【図12】図2の電子制御装置の制御作動の第2の要部、すなわち、第1遊星歯車装置の許容入力回転速度を設定する制御作動を説明するための実施例1のフローチャートである。
【図13】図2の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する実施例2の機能ブロック線図であり、図3に相当する図である。
【図14】図2の電子制御装置の制御作動の第2の要部、すなわち、第1遊星歯車装置の許容入力回転速度を設定する制御作動を説明するための実施例2のフローチャートであり、図12に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明が適用される車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」という)を説明するための骨子図である。図1において、動力伝達装置10は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン14と駆動輪40との間に介装されており、そのエンジン14からの駆動力を駆動輪40に伝達するトランスアクスルである。そして、動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース12(以下、「ケース12」という)内において、エンジン14側から順番に、そのエンジン14の出力軸(例えばクランク軸)に作動的に連結されてエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパー16、そのダンパー16を介してエンジン14によって回転駆動させられる入力軸18、第1電動機M1、動力分割機構(動力分配機構)として機能する第1遊星歯車装置20、減速装置として機能する第2遊星歯車装置22、および、駆動輪40(図3参照)に動力伝達可能に連結された第2電動機M2を備えている。
【0021】
この動力伝達装置10は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪40を駆動するために好適に用いられるものである。動力伝達装置10では、エンジン14の動力がカウンタギヤ対32の一方を構成する動力伝達装置10の出力回転部材としての出力歯車24からカウンタギヤ対32、ファイナルギヤ対34、差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される(図3参照)。このように、本実施例では、入力軸18とエンジン14とはダンパー16を介して作動的に連結されており、エンジン14の出力軸がエンジン14の出力回転部材であることはもちろんであるが、この入力軸18もエンジン14の出力回転部材に相当する。
【0022】
入力軸18は、両端がボールベアリング26および28によって回転可能に支持されており、一端がダンパー16を介してエンジン14に連結されることでエンジン14により回転駆動させられる。また、他端には潤滑油供給装置としてのオイルポンプ30が連結されており入力軸18が回転駆動されることによりオイルポンプ30が回転駆動させられて、動力伝達装置10の各部例えば第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置22、ボールベアリング26、および28等に潤滑油が供給される。
【0023】
第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部を構成する差動機構である。すなわち、第1遊星歯車装置20は本発明の差動機構に対応する。具体的に、第1遊星歯車装置20は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、および、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1遊星歯車装置20のギヤ比ρ0は、第1サンギヤS1の歯数をZS1とし第1リングギヤR1の歯数をZR1とすれば、「ρ0=ZS1/ZR1」で算出される。
【0024】
そして、第1遊星歯車装置20は、入力軸18に伝達されたエンジン14の出力を機械的に分配する機械的な動力分配機構であって、エンジン14の出力を第1電動機M1および出力歯車24に分配する。つまり、この第1遊星歯車装置20においては、第1回転要素としての第1キャリヤCA1は入力軸18すなわちエンジン14に連結され、第2回転要素としての第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第3回転要素としての第1リングギヤR1は出力歯車24すなわちその出力歯車24に作動的に連結された駆動輪40に連結されている。これより、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1は、それぞれ相互に相対回転可能となることから、エンジン14の出力が第1電動機M1および出力歯車24に分配されると共に、第1電動機M1に分配されたエンジン14の出力で第1電動機M1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機M2が回転駆動されるので、動力伝達装置10は、例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、第1遊星歯車装置20の差動状態が第1電動機M1により制御されることにより、エンジン14の所定回転に拘わらず出力歯車24の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
【0025】
第2遊星歯車装置22は、シングルピニオン型の遊星歯車装置である。第2遊星歯車装置22は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、および、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を回転要素として備えている。なお、第1遊星歯車装置20のリングギヤR1および第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は一体化された複合歯車となっており、その外周部に出力歯車24が設けられている。
【0026】
この第2遊星歯車装置22においては、第2キャリヤCA2は非回転部材であるケース12に連結されることで回転が阻止され、第2サンギヤS2は第2電動機M2に連結され、第2リングギヤR2は出力歯車24に連結されている。すなわち、第2電動機M2は出力歯車24と第1遊星歯車装置20のリングギヤR1とに第2遊星歯車装置22を介して連結されている。これにより、例えば発進時などは第2電動機M2が回転駆動することにより、第2サンギヤS2が回転させられ、第2遊星歯車装置22によって減速させられて出力歯車24に回転が伝達される。
【0027】
本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は何れも、発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、差動用電動機として機能する第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、走行用電動機として機能する第2電動機M2は車両6の駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。更に、第1電動機M1と第2電動機M2とは相互に電力授受可能に構成されている。
【0028】
図2は、本実施例の車両用動力伝達装置10を制御するための車両用動力伝達装置用制御装置としての機能を有する電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン14、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するものである。
【0029】
電子制御装置80には、図2に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、エンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Neを表すエンジン回転速度センサ50からの信号、出力歯車24の回転速度NOUT(以下、「出力回転速度NOUT」という)に対応する車速Vを表す車速センサ52からの信号、フットブレーキ操作を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを表す信号、車両6の前後加速度Gを表す信号、各車輪(すなわち駆動輪40に従動輪を加えた各車輪)の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、「第1電動機回転速度NM1」という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、「第2電動機回転速度NM2」という)を表す信号、蓄電装置56(図3参照)の温度である蓄電装置温度THBATを表す蓄電装置温度センサからの信号、蓄電装置56の充電または放電電流ICDを表す信号、蓄電装置56の電圧VBATを表す信号、蓄電装置56の充電残量(充電状態)SOCを表す信号、シフトレバーの操作位置(操作ポジション)POPEを検出する為の位置センサであるレバー操作位置センサ48からの操作ポジションPOPEに応じたシフトレバー位置信号、加速度センサ42からの車両6の加速度を表す信号、車両6まわりの大気圧すなわちエンジン14に吸入される空気の気圧を表す気圧センサ43からの信号、カーナビゲーション装置44からの車両6が位置する標高等を含む地図情報等が、それぞれ供給される。なお、電子制御装置80は、車両6の勾配(路面勾配)すなわち路面の傾きを、例えば、車両6の停止中に加速度センサ42によって検出される車両6の加速度から、或いは、カーナビゲーション装置44からの地図情報から取得する。
【0030】
また、電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図3参照)への制御信号例えばエンジン14の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン14の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン14の点火時期を指令する点火信号、各電動機M1,M2の作動を指令する指令信号等が、それぞれ出力される。
【0031】
図3は、電子制御装置80に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図3に示すように、電子制御装置80は、ハイブリッド制御部としてのハイブリッド制御手段82と、エンジントルク判断部としてのエンジントルク判断手段90と、高度情報取得部としての高度情報取得手段94と、許容回転速度設定部としての許容回転速度設定手段96とを備えている。
【0032】
図3において、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン14と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて、電気的な無段変速機として機能する第1遊星歯車装置20の変速比γ0(=入力軸18の回転速度/出力歯車24の回転速度)を制御する。例えば、ハイブリッド制御手段82は、エンジン駆動制御手段として機能して、車速V及びアクセル開度Accを逐次検出しており、上記変速比γ0を制御する際そのときの走行車速Vにおいて、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて車両6の目標(要求)出力を逐次算出し、その算出した目標出力が得られるように、エンジン出力Peの目標値である目標エンジン出力Pe*を逐次決定する。そのとき、蓄電装置56に対して充放電を行う充電制御における充電要求値、エアコン等の補機による負荷、および、第2電動機M2のアシストトルク等を加味した上で上記目標エンジン出力Pe*を決定する。そして、ハイブリッド制御手段82は、予め定められた関係(マップ等)を用いてその目標エンジン出力Pe*が得られる目標エンジン回転速度Ne*及びエンジン14の目標出力トルクTe*(目標エンジントルクTe*)を決定し、エンジン回転速度Ne及びエンジン14の出力トルクTe(エンジントルクTe)がそれぞれ上記目標エンジン回転速度Ne*及び目標エンジントルクTe*に一致するように、エンジン14を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。そして、その目標エンジン出力Pe*に基づくエンジン回転速度Neの制御及び第1電動機M1の発電量の制御に伴い、第1遊星歯車装置20の変速比γ0をその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。なお、本実施例では後述する図4に示すエンジン動作範囲が設定されており、ハイブリッド制御手段82は、上記のエンジン14および第1電動機M1の制御において、エンジン14がそのエンジン動作範囲内で動作するように、すなわち、エンジン回転速度Neがそのエンジン動作範囲から車速Vに応じて定まる許容エンジン回転速度N1eの上限側許容値と下限側許容値との間の範囲内に入るように、エンジン14および第1電動機M1を駆動する。
【0033】
ハイブリッド制御手段82は、前記第1電動機M1の発電量を制御する際、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン14の動力の主要部は機械的に出力歯車24へ伝達されるが、エンジン14の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から出力歯車24へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン14の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。前記蓄電装置56は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどであって、第1電動機M1及び第2電動機M2に電力を供給し且つそれらの各電動機M1,M2から電力の供給を受けることが可能な電気エネルギ源、すなわち、第1電動機M1と第2電動機M2とのそれぞれに対し電力授受可能な電気エネルギ源ある。
【0034】
また、ハイブリッド制御手段82は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、動力伝達装置10の電気的CVT機能によって、例えば、第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度Neを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御する。つまり、ハイブリッド制御手段82は、第1遊星歯車装置20を介して入力軸18(すなわちエンジン14の出力軸)に作動的に連結される第1電動機M1をその入力軸18に動力伝達可能な駆動装置として機能させることで、第1電動機M1にエンジン14を回転駆動させる。例えば、ハイブリッド制御手段82は車両走行中にエンジン回転速度Neを引き上げる場合には、車速V(駆動輪40)に拘束される出力回転速度NOUTを略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
【0035】
また、ハイブリッド制御手段82は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64によって電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン14の出力制御を実行する。例えば、ハイブリッド制御手段82は、アクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。このスロットル制御ではアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとは一対一の関係で対応する。また、上記エンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段82による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
【0036】
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14の運転を停止した状態で蓄電装置56からの電力により第2電動機M2を駆動してその第2電動機M2のみを車両6の駆動力源とするモータ走行(EV走行)を実行することができる。例えば、このハイブリッド制御手段82によるEV走行は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTe域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
【0037】
ハイブリッド制御手段82は、このEV走行時には、運転を停止しているエンジン14の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、動力伝達装置10の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度Neを零乃至略零に維持する。つまり、ハイブリッド制御手段82は、EV走行時には、エンジン14の運転を単に停止させるのではなく、エンジン14の回転も停止させる。ここで、本実施例で燃費とは、例えば、単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両6全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、車両6全体としての燃料消費率が大きくなることである。
【0038】
また、ハイブリッド制御手段82は、車両停止中やEV走行中にエンジン14の始動を行うエンジン始動制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1に通電して第1電動機回転速度NM1を引き上げることで、すなわち、第1電動機M1をスタータとして機能させることで、エンジン回転速度Neを完爆可能な所定回転速度Ne’以上に引き上げると共に、所定回転速度Ne’以上にて例えばアイドル回転速度以上の自律回転可能なエンジン回転速度Neにて燃料噴射装置66により燃料を供給(噴射)し点火装置68により点火してエンジン14を始動する。
【0039】
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を駆動力源とするエンジン走行中には、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪40にトルクを付与することにより、エンジン14の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0040】
また、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、動力伝達装置10がトルクの伝達を不能な状態すなわち動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ第2電動機M2を無負荷状態として動力伝達装置10からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段82は、電動機M1、M2を無負荷状態とすることにより動力伝達装置10をニュートラル状態とすることが可能である。
【0041】
また、ハイブリッド制御手段82は、アクセルオフの車両減速走行時や制動時には車両の運動エネルギ、すなわち、駆動輪40から第2電動機M2の側へ伝達される逆駆動力により、第2電動機M2を回転駆動させて発電機として作動させ、その第2電動機M2の発電による電気エネルギをインバータ54を介して蓄電装置56へ充電する所謂回生制動を実行する回生ブレーキ制御手段として機能する。
【0042】
本実施例では、動力伝達装置10の耐久性やエンジン14の耐久性などを考慮して、エンジン14に対してはその動作を許容するエンジン動作範囲が予め定められている。例えば図4がそれである。図4は、エンジン回転速度Neと車速Vとからなる二次元座標を用いて上記エンジン動作範囲を定めたものであり、ハイブリッド制御手段82によるエンジン制御ではそのエンジン動作範囲内すなわち図4の実線L0EGで囲まれた範囲内でエンジン14が動作するように車速Vに応じてエンジン回転速度Neが制限される。図4において、範囲R01として図示した低車速域ではエンジン回転速度Neの上限値がエンジン自体での許容回転速度であるエンジン最高回転速度Nemaxよりも低い回転速度に設定されているが、これは、第1電動機M1の最高回転速度(許容回転速度)による制限、または、第1遊星歯車装置20における第1サンギヤS1と第1リングギヤR1との間の差速(回転速度差)によって自転する第1ピニオンギヤP1の最高回転速度(許容回転速度)による制限に基づいてエンジン動作範囲が設定されるためである。図4の範囲R02でも同様である。
【0043】
ところで、車両6が標高の高い高地で走行(高地走行)する場合、図5に示すように、その高地でのエンジン出力Peは気圧の低下により、標準状態(例えば標高0m)でのエンジン出力Peと比較して低下する。そして、前記図4のエンジン動作範囲は上記標準状態での走行を前提に設定されている。ここで、上記高地走行において車速VがV01であるときにエンジン回転速度NeがNe01であれば、それよりもエンジン回転速度Neを上昇させることができず且つ気圧の低下によりエンジントルクTeが不足し、エンジン出力Peが十分に得られないことが考えられる。一方で、第1遊星歯車装置20や第1電動機M1の耐久性等を加味した場合、図5に示すように高地走行時のエンジントルクTeは標準状態と比較して低下するので、その分、エンジン回転速度Neを引き上げる余地があると言える。そこで、本実施例では、図4の実線L0EGにおける範囲R01に設定されたエンジン回転速度Neの上限値(許容エンジン回転速度N1e)を破線L1EGで示すように引き上げる制御が実行される。このように高地走行時において、エンジン回転速度Neの上記範囲R01における上限値が引き上げられれば、ハイブリッド制御手段82はエンジン制御においてエンジン回転速度NeをNe01からNe02に引き上げ、それによりエンジントルクTeをTe01からTe02に引き上げることが可能となり、気圧低下に起因したトルク不足を解消または軽減することができる。電子制御装置80は、この図4に示す上記範囲R01におけるエンジン回転速度Neの上限値を変更する制御を実行するための制御機能を備えており、その制御機能の要部を、以下に説明する。
【0044】
エンジントルク判断手段90は、所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが、エンジン14の出力トルク特性(エンジントルク特性)を示す予め設定された関係から上記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neに基づいて定まる基準エンジントルクTesよりも低いか否かを判断する。上記加速操作量OPACとは車両6を加速させるための操作量であり、例えば、スロットル弁開度θTH、アクセル開度Acc等が該当する。上記エンジントルク特性を示す予め設定された関係とは、例えば図6に示すような、スロットル弁開度θTH毎に実験的に求められたエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係であり、その関係ではスロットル弁開度θTHが大きくなるに従ってエンジントルクTeが大きくなる。このエンジントルク特性を示す予め設定された関係(図6)は、予め定められた基準気圧PASTDの空気を吸入して駆動されるエンジン14の出力トルク特性を示すものである。従って、前記基準エンジントルクTesとは、所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときに、基準気圧PASTDの空気を吸入して駆動されるエンジン14から出力されるエンジントルクTeである。
【0045】
例えば図6において、基準エンジントルクTesは、所定の加速操作量OPAC(例えばθTH=θ1TH)に基づいて定まるエンジントルク特性が実線L01で示され、且つ、所定のエンジン回転速度NeがNe03である場合には、点P03が示すTe03になる。そして、そのときのエンジントルクTe、すなわちその所定の加速操作量OPAC(θ1TH)およびエンジン回転速度Ne(Ne03)のときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが上記Te03よりも低いTe04であれば、エンジントルク判断手段90は、所定の加速操作量OPAC(θ1TH)およびエンジン回転速度Ne(Ne03)のときにエンジン14から出力されるエンジントルクTe(Te04)が前記基準エンジントルクTes(Te03)よりも低いと判断する。
【0046】
また、前記基準気圧PASTDは車両6がよく使用される環境での気圧であれば幾つであっても差し支えないが、本実施例では1気圧程度とされている。そして、前記図5における標準状態とは例えば上記基準気圧PASTDにおける車両6の使用環境を意味しており、前記図4に実線実線L0EGで囲んで示したエンジン動作範囲は、エンジン14が上記基準気圧PASTDにおけるエンジントルク特性を発揮するものとして設定されている。
【0047】
エンジントルク判断手段90は、所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度NeのときのエンジントルクTeが基準エンジントルクTesよりも低いか否かを判断するため、例えば、エンジントルクTeをトルクセンサ等を用いて直接に検出してもよい。或いは、ハイブリッド制御手段82が、エンジントルクTeを第1遊星歯車装置20を介して駆動輪40に伝達するために、エンジントルクTeに対抗する反力トルクとしての第1電動機M1の出力トルクTM1(以下、「第1電動機トルクTM1」という)を第1電動機M1に出力させるので、エンジントルク判断手段90は、第1電動機M1の制御電流値に基づいて第1電動機トルクTM1を算出し、この第1電動機トルクTM1、第1遊星歯車装置20のギヤ比ρ0等に基づいて、エンジントルクTeを検出してもよい。例えば、エンジントルクTeと第1電動機トルクTM1とが0ではなく釣り合っている場合すなわち定常走行状態においては、下記の式(1)によってエンジントルクTeが算出(検出)される。なお、その式(1)の右辺にマイナス符号があるのはエンジントルクTeに対し第1電動機トルクTM1の方向が逆方向だからである。
=−TM1×(1+ρ0)/ρ0 ・・・(1)
【0048】
しかし、本実施例では、エンジントルク判断手段90は、エンジン回転速度Neの変化から、所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度NeのときのエンジントルクTeが基準エンジントルクTesよりも低いか否かを判断する。そのために、エンジントルク判断手段90は、回転速度差増大率算出部としての回転速度差増大率算出手段92を備えている。その回転速度差増大率算出手段92は、エンジン回転速度センサ50からの信号に基づきエンジン回転速度(実エンジン回転速度)Neを逐次取得しており、車両加速時におけるエンジン回転速度の目標値Ne*と実際値Neとの差DNEすなわちエンジン回転速度差DNEを算出し、それと共に、その算出したエンジン回転速度差DNEの単位時間当たりの増大量であるエンジン回転速度差増大率DDNEを算出する。上記エンジン回転速度の目標値Ne*とは目標エンジン回転速度Ne*のことであり、例えば、前述したハイブリッド制御手段82による第1遊星歯車装置20の変速比γ0の制御の際に目標エンジン出力Pe*に基づき逐次決定される。上記エンジン回転速度の実際値Neとはエンジン回転速度センサ50からの信号に基づき検出されるエンジン回転速度Neすなわち実エンジン回転速度Neのことである。なお、本実施例では、単にエンジン回転速度Neといえば特記がない限り実エンジン回転速度Neを意味しており、目標エンジン回転速度Ne*と明確に区別して判り易く説明するために実エンジン回転速度Neという表現を用いることがある。回転速度差増大率算出手段92がエンジン回転速度差増大率DDNEを算出する一例を図7のタイムチャートを用いて説明する。
【0049】
図7は、アクセルペダルが一定量踏み込まれてその後アクセル開度Accが一定に保持された車両走行を例とした、エンジン回転速度差増大率DDNEがどのように算出されるかを説明するためのタイムチャートである。回転速度差増大率算出手段92はエンジン回転速度差増大率DDNEを算出するために用いる予め定められた複数の適用可能走行パターンを記憶しており、図7の走行パターンはその適用可能走行パターンに1つに該当しているものとする。例えば、上記適用可能走行パターンは、アクセル開度Acc、路面勾配、エンジン水温TEMPWで表されるエンジン温度、エンジン14に供給される燃料種、及び、エンジン14の点火時期等をパラメータとして含んでおり、図7の走行パターンはそれら全てのパラメータが上記適用可能走行パターンの1つと一致するため、その適用可能走行パターンの1つに該当する。図7のt1時点においてアクセルペダルが踏み込まれてその後アクセル開度Accは一定になっており、ハイブリッド制御手段82が決定する目標エンジン回転速度Ne*はt1時点から時間経過に従って上昇しており、それと共に実エンジン回転速度Neもt1時点から上昇しているが、それらの差すなわちエンジン回転速度差DNEはt1時点から時間経過に従って増大している。回転速度差増大率算出手段92はt1時点から一定期間、実エンジン回転速度Neとハイブリッド制御手段82から得られる目標エンジン回転速度Ne*とを逐次取得する。そして、その一定期間経過後に、そのt1時点から一定期間内の走行パターンが前記適用可能走行パターンの1つに一致していると判断する。回転速度差増大率算出手段92は、その判断後、逐次取得した実エンジン回転速度Neと目標エンジン回転速度Ne*とに基づいて、t1時点からの経過時間に対応させてエンジン回転速度差DNE(=Ne*−Ne)を算出する。そして、その算出したエンジン回転速度差DNEに基づいてエンジン回転速度差増大率DDNE(=dDNE/dt)を算出する。例えば、t1時点から上記一定期間後のエンジン回転速度差DNEとt1時点のエンジン回転速度差DNEとの差を上記一定期間を示す時間(単位は例えばsec)で除したものをエンジン回転速度差増大率DDNEとして算出する。
【0050】
このようにして回転速度差増大率算出手段92がエンジン回転速度差増大率DDNEを算出した後、エンジントルク判断手段90は、そのエンジン回転速度差増大率DDNEが予め定められたエンジン回転速度差増大率判定値TDDNEよりも大きいか否かを判断する。例えば、エンジン回転速度差増大率DDNEが大きいほど実エンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Ne*に追従しておらず、そのときにエンジン14から出力されているエンジントルクTeが不足していると言える。そこで、エンジントルク判断手段90は、エンジン回転速度差増大率DDNEがエンジン回転速度差増大率判定値TDDNEよりも大きい場合には、エンジントルクTeが不足していることになるので、前記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが前記基準エンジントルクTesよりも低いと判断する。一方、エンジン回転速度差増大率DDNEがエンジン回転速度差増大率判定値TDDNE以下である場合には、前記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが前記基準エンジントルクTes以上であると判断する。なお、前記エンジン回転速度差増大率判定値TDDNEは、例えば、上記エンジントルクTeが上記基準エンジントルクTesよりも低いか否かを判断できるように複数の前記適用可能走行パターンの各々に対応して実験的に設定されており、エンジントルク判断手段90の判断でエンジン回転速度差増大率DDNEと比較されるエンジン回転速度差増大率判定値TDDNEは、実際の走行パターンが該当する適用可能走行パターンに応じて変更される。
【0051】
図3の高度情報取得手段94は、車両6の現在位置の高度(標高)に関する高度情報を取得する。すなわち、車両6が位置する標高である車両標高を推定する。例えば、その車両標高が高く空気が希薄になれば、エンジントルクTeは同一の加速操作量OPAC及び同一のエンジン回転速度Neの下で比較して低下するので、エンジン回転速度差増大率DDNEは大きくなる。そこで、高度情報取得手段94は、回転速度差増大率算出手段92が算出したエンジン回転速度差増大率DDNEに基づいて、車両6が位置する標高を推定する。例えば、高度情報取得手段94は、図8に示すように、推定される上記車両標高である推定高度h1とエンジン回転速度差増大率DDNEとの予め実験的に設定された関係である推定高度マップを記憶している。その図8の推定高度マップにおいて推定高度h1は、エンジン回転速度差増大率DDNEが所定の閾値DDNE1以下である範囲では0mであり、エンジン回転速度差増大率DDNEがその閾値DDNE1よりも大きい範囲では0mよりも高く、且つ、その推定高度h1はエンジン回転速度差増大率DDNEが大きくなるほど高くなる。そして、高度情報取得手段94は、図8の推定高度マップからエンジン回転速度差増大率DDNEに基づいて推定高度h1を求め、その求めた推定高度h1を前記車両標高とする。
【0052】
許容回転速度設定手段96は、エンジン14から入力される第1遊星歯車装置20の入力回転速度Ninに対して許容入力回転速度N1inを設定する。図1に示すように、その第1遊星歯車装置20の入力回転速度Ninは第1キャリヤCA1の回転速度であり、第1キャリヤCA1は入力軸18及びエンジン14と一体回転するので、第1遊星歯車装置20の入力回転速度Ninはエンジン回転速度Neと同じである。従って、本実施例では許容入力回転速度N1inは、エンジン回転速度Neに対する許容エンジン回転速度N1eと同じであり、許容入力回転速度N1inを設定することは許容エンジン回転速度N1eを設定することである。
【0053】
許容回転速度設定手段96は、入力回転速度Ninに対して許容入力回転速度N1inを設定するのであるが、具体的には、図4のエンジン動作範囲を表す実線L0EGを構成するように、上記許容入力回転速度N1inすなわち許容エンジン回転速度N1eを設定する。例えば、低車速域におけるエンジン回転速度Neの上限側である実線L0EGの範囲R01(図4参照)に着目すれば、許容回転速度設定手段96は、図9の基準線図の実線L02に示すようにエンジン最高回転速度Nemaxよりも低い範囲で、車速Vが高いほど、すなわち第1リングギヤR1の回転速度が高いほど、許容入力回転速度N1inを高く設定する。すなわち、図9の実線L02は図4の範囲R01において実線L0EGを構成するものであり、エンジン14に吸入される空気の気圧が前記基準気圧PASTDであるときの許容入力回転速度N1inと車速Vとの関係を示すものである。
【0054】
許容回転速度設定手段96は、上記のように基本的には図9の実線L02から車速Vに基づいて許容入力回転速度N1inを設定するが、エンジントルク判断手段90によって、前記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが前記基準エンジントルクTesよりも低いと判断された場合、すなわち、前記エンジン回転速度差増大率DDNEが前記エンジン回転速度差増大率判定値TDDNEよりも大きいと判断された場合には、上記エンジントルクTeが上記基準エンジントルクTes以上であると判断された場合と比較して、許容入力回転速度N1inを高く設定する。言い換えれば、同一車速で比較して、許容入力回転速度N1inを図9の実線L02から設定されるものよりも高く設定する。更に、許容回転速度設定手段96は、許容入力回転速度N1inを図9の実線L02から設定されるものよりも高く設定する場合には、高度情報取得手段94により推定された推定高度h1が高いほど、すなわち前記車両標高が高いほど、許容入力回転速度N1inを高く設定する。例えば、図10に示すように、図9の実線L02よりも許容入力回転速度N1inの高い側で、許容入力回転速度N1inと車速Vとの関係が、推定高度h1が高いほど許容入力回転速度N1inの高い側にずれた高地用線図(マップ、図10の破線)が予め設定されており、許容回転速度設定手段96は、その図10に示す高地用線図から推定高度h1に基づいて許容入力回転速度N1inを設定することで、前記車両標高(推定高度h1)が高いほど許容入力回転速度N1inを高く設定する。なお、図9および図10に示す許容入力回転速度N1inと車速Vとの関係は、例えば、第1遊星歯車装置20の耐久性を損なわないように、その第1遊星歯車装置20の有する第1ピニオンギヤP1等の歯車の疲労を促進しないように、その第1遊星歯車装置20の軸受等の回転部分に焼きつきが発生しないように、或いは、それら全てを満足するように、予め実験的に設定されている。そのため、許容回転速度設定手段96は、第1遊星歯車装置20の耐久性を損なわないように、その第1遊星歯車装置20の有する第1ピニオンギヤP1等の歯車の疲労を促進しないように、その第1遊星歯車装置20の軸受等の回転部分に焼きつきが発生しないように、或いは、それら全てを満足するように、許容入力回転速度N1inを決定することになる。
【0055】
例えば、ハイブリッド制御手段82は、エンジン制御において許容入力回転速度N1in(許容エンジン回転速度N1e)の制限を受けてエンジン回転速度Neをその許容エンジン回転速度N1eにまで既に引き上げているときに、許容回転速度設定手段96が上記許容エンジン回転速度N1eを高くした場合には、許容回転速度設定手段96がその許容エンジン回転速度N1eを高くするほど第1電動機回転速度NM1を上昇させ、第1遊星歯車装置20の差動作用によりエンジン回転速度Neを新たに設定された許容エンジン回転速度N1eにまで上昇させる。
【0056】
図11は、電子制御装置80の制御作動の第1の要部、すなわち、エンジン14および第1電動機M1を駆動する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図11のフローチャートを構成する全てのステップはハイブリッド制御手段82に対応する。
【0057】
先ず、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、アクセル開度センサからの信号によりアクセル開度Accが検出されると共に、車速センサ52からの信号により車速Vが検出される。
【0058】
次にSA2においては、車両6の目標(要求)出力すなわち要求パワーがアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて算出される。そして、目標エンジン出力Pe*が、上記算出した車両6の目標出力が得られるように算出または決定される。
【0059】
次にSA3においては、SA2で決定された目標エンジン出力Pe*が得られる目標エンジン回転速度Ne*及び目標エンジントルクTe*が決定される。そして、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeがそれぞれ上記目標エンジン回転速度Ne*及び目標エンジントルクTe*に一致するように、エンジン14および第1電動機M1の制御が実行されると共に、アシストトルクを出力する第2電動機M2の制御が実行される。このエンジン14および第1電動機M1の制御において、エンジン14は前記エンジン動作範囲によりエンジン回転速度Neが制限されており、具体的にエンジン14は、エンジン回転速度Neが車速Vに応じて定まる許容エンジン回転速度N1e(許容入力回転速度N1in)を超えないように、上記エンジン動作範囲内で動作させられる。
【0060】
図12は、電子制御装置80の制御作動の第2の要部、すなわち、第1遊星歯車装置20の許容入力回転速度N1inを設定する制御作動を説明するためのフローチャートである。
【0061】
先ず、許容回転速度設定手段96に対応するSB1においては、車速センサ52からの信号により車速Vが検出される。SB1の次はSB2へ移る。
【0062】
回転速度差増大率算出手段92に対応するSB2においては、実際の走行において実エンジン回転速度Neと目標エンジン回転速度Ne*とが取得され記憶される。例えばそれらの実エンジン回転速度Neおよび目標エンジン回転速度Ne*は、ある一定期間にわたって経過時間の関数として連続的に取得される。SB2の次はSB3へ移る。
【0063】
回転速度差増大率算出手段92に対応するSB3においては、エンジン回転速度差DNE(=Ne*−Ne)が、SB2で取得された実エンジン回転速度Neと目標エンジン回転速度Ne*とに基づいて算出される。SB3の次はSB4へ移る。
【0064】
回転速度差増大率算出手段92に対応するSB4においては、エンジン回転速度差増大率DDNE(=dDNE/dt)が、SB3で算出されたエンジン回転速度差DNEに基づいて算出される。SB4の次はSB5へ移る。
【0065】
エンジントルク判断手段90に対応するSB5においては、SB4で算出されたエンジン回転速度差増大率DDNEが前記エンジン回転速度差増大率判定値TDDNEよりも大きいか否かが判断される。前記SB4で算出されたエンジン回転速度差増大率DDNEが、経過時間の関数として変化するような場合には、例えば、エンジン回転速度差増大率DDNEの平均値がエンジン回転速度差増大率判定値TDDNEと比較される。このSB5の判断が肯定された場合、すなわち、エンジン回転速度差増大率DDNEがエンジン回転速度差増大率判定値TDDNEよりも大きい場合には、SB6に移る。一方、このSB5の判断が否定された場合には、SB8に移る。
【0066】
高度情報取得手段94に対応するSB6においては、推定高度h1が、SB4で算出されたエンジン回転速度差増大率DDNEに基づいて図8の推定高度マップから求められる。前記SB4で算出されたエンジン回転速度差増大率DDNEが、経過時間の関数として変化するような場合には、例えば、エンジン回転速度差増大率DDNEの平均値に基づいて推定高度h1が求められる。SB6の次はSB7へ移る。
【0067】
許容回転速度設定手段96に対応するSB7においては、許容入力回転速度N1inすなわち許容エンジン回転速度N1eが、図10の高地用線図から、車速Vおよび推定高度h1に基づいて設定される。
【0068】
許容回転速度設定手段96に対応するSB8においては、許容入力回転速度N1inすなわち許容エンジン回転速度N1eが、図9の基準線図から、車速Vに基づいて設定される。
【0069】
本実施例には次のような効果(A1)乃至(A6)がある。(A1)本実施例によれば、エンジントルク判断手段90は、所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが、エンジン14の出力トルク特性を示す予め設定された関係から上記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neに基づいて定まる基準エンジントルクTesよりも低いか否かを判断する。そして、許容回転速度設定手段96は、前記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが前記基準エンジントルクTesよりも低いと判断された場合には、上記エンジントルクTeが上記基準エンジントルクTes以上であると判断された場合と比較して、第1遊星歯車装置20の許容入力回転速度N1inを高く設定する。従って、その許容入力回転速度N1inの制限によって第1遊星歯車装置20を高回転化から保護することが可能であると共に、エンジントルクTeが低くなれば許容入力回転速度N1inが高められるので、その許容入力回転速度N1inの変更に応じてエンジン回転速度Neを引き上げてエンジントルクTeを上昇させ、エンジントルク低下を補うことが可能となる。
【0070】
(A2)また、本実施例によれば、許容回転速度設定手段96は、例えば図10の高地用線図から判るように、高度情報取得手段94により推定された推定高度h1が高いほど、すなわち車両6が位置する標高(車両標高)が高いほど、許容入力回転速度N1inを高く設定する。ここで、上記車両標高が高いほど、エンジン14に吸入される空気の気圧は低下しエンジントルクTeも低下する。従って、上記気圧の低下に起因して低下したエンジントルクTeに対して過不足ない許容入力回転速度N1inを設定することが可能である。
【0071】
(A3)また、本実施例によれば、回転速度差増大率算出手段92は、車両加速時におけるエンジン回転速度の目標値Ne*と実際値Neとの差DNEすなわちエンジン回転速度差DNEを算出し、それと共に、その算出したエンジン回転速度差DNEの単位時間当たりの増大量であるエンジン回転速度差増大率DDNEを算出する。そして、高度情報取得手段94は、回転速度差増大率算出手段92が算出したエンジン回転速度差増大率DDNEに基づいて、車両6が位置する標高を推定する。従って、通常の車両で一般的に検出される物理値であるエンジン回転速度Neを用いて、容易に車両6が位置する標高を推定し許容入力回転速度N1inを設定することが可能である。
【0072】
(A4)また、本実施例によれば、第1遊星歯車装置20は、第1電動機M1に連結された第1サンギヤS1と、駆動輪40に連結された第1リングギヤR1と、その第1サンギヤS1とその第1リングギヤR1との間に介装された第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持すると共にエンジン14に連結された第1キャリヤCA1とを有しており、ハイブリッド制御手段82は、許容回転速度設定手段96が許容入力回転速度N1inを高くするほど第1電動機回転速度NM1を上昇させる。従って、高められた許容入力回転速度N1inに応じてエンジン回転速度Neが第1遊星歯車装置20の差動作用により引き上げられ、それによりエンジントルクTeを上昇させることができる。
【0073】
(A5)また、本実施例によれば、許容回転速度設定手段96は、第1遊星歯車装置20の耐久性を損なわないように、その第1遊星歯車装置20の有する第1ピニオンギヤP1等の歯車の疲労を促進しないように、或いは、その第1遊星歯車装置20の軸受等の回転部分に焼きつきが発生しないように、許容入力回転速度N1inを決定するので、第1遊星歯車装置20の耐久性を損なうこと等がないようにエンジン14を駆動することが可能である。
【0074】
(A6)また、本実施例によれば、エンジントルク判断手段90は、エンジントルクTeに対抗する反力トルクとしての第1電動機トルクTM1及び第1遊星歯車装置20のギヤ比ρ0等に基づいて、エンジントルクTeを検出してもよく、そのようにしたとすれば、第1電動機トルクTM1を第1電動機M1の制御電流値等から算出することにより、容易にエンジントルクTeを求めることができる。
【0075】
続いて、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0076】
前述の実施例1では、第1遊星歯車装置20の許容入力回転速度N1in(許容エンジン回転速度N1e)がエンジン回転速度差増大率DDNEに基づいて設定変更されるが、本実施例では、それとは異なるパラメータに基づいて設定変更される。以下、前述の実施例1とは異なる点について主として説明する。
【0077】
図13は、本実施例の電子制御装置180に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図13に示すように、電子制御装置180は、ハイブリッド制御手段82と、高度情報取得部としての高度情報取得手段182と、吸入空気状態判断部としての吸入空気状態判断手段184と、許容回転速度設定部としての許容回転速度設定手段186とを備えている。
【0078】
図13において、高度情報取得手段182は、車両6の高度情報、すなわち、車両6が位置する標高である前記車両標高を求める。具体的には、車両6まわりの大気圧すなわちエンジン14に吸入される空気の気圧に基づいて上記車両標高(推定高度h1)を求める。例えば、車両6まわりの大気圧すなわちエンジン14に吸入される空気の気圧はその車両標高が高いほど低くなるので、高度情報取得手段182は、その車両標高が予め定められた基準標高hSTD(=0m程度)であるときに上記大気圧が前記基準気圧PASTD(=1気圧程度)であるとして予め実験的に設定された車両標高と大気圧との関係から、気圧センサ43によって検出した上記大気圧に基づいて上記車両標高を推定し求める。或いは、上記大気圧以外のパラメータで上記車両標高を求めてもよい。例えば、高度情報取得手段182は、カーナビゲーション装置44から得られる地図情報等と車両6の現在位置とに基づいて上記車両標高を推定し求めてもよい。
【0079】
吸入空気状態判断手段184は、前記車両標高が、前記基準気圧PASTDに対応して予め定められた前記基準標高hSTDよりも高いか否かを判断する。エンジン14に吸入される空気の気圧はその車両標高が高いほど低下し希薄になり、その空気の密度(空気密度)はその気圧が低いほど小さくなるからである。
【0080】
ここで、本実施例の吸入空気状態判断手段184は上記のように前記車両標高について判断するが、上記基準気圧PASTDと基準標高hSTDとは相互に対応付けされて定められているので、エンジン14に吸入される空気の気圧について判断しても差し支えない。そのようにする場合には例えば、高度情報取得手段182は、エンジン14に吸入される空気の気圧を気圧センサ43によって検出する気圧検出手段として機能し、吸入空気状態判断手段184は、その高度情報取得手段182により検出された気圧が上記基準気圧PASTDよりも低いか否かを判断する。或いは別の例として、吸入空気状態判断手段184は前記車両標高に基づいて、エンジン14に吸入される空気の気圧が上記基準気圧PASTDよりも低いか否かを判断してもよい。例えば、吸入空気状態判断手段184は、高度情報取得手段182により求められた前記車両標高が前記基準標高hSTDよりも高いか否かを判断し、その車両標高が基準標高hSTDよりも高い場合にはエンジン14に吸入される空気の気圧が基準気圧PASTDよりも低いと判断するようにしてもよい。
【0081】
許容回転速度設定手段186は、基本的には実施例1の許容回転速度設定手段96と同じであるが、吸入空気状態判断手段184の判断に基づいて許容入力回転速度N1inを変更することが許容回転速度設定手段96とは異なる。すなわち、許容回転速度設定手段186は、吸入空気状態判断手段184によって前記車両標高が基準標高hSTDよりも高いと判断された場合には、その車両標高が基準標高hSTD以下であると判断された場合と比較して、許容入力回転速度N1inを高くする。或いは、吸入空気状態判断手段184がエンジン14に吸入される空気の気圧について判断しているのであれば、許容回転速度設定手段186は、吸入空気状態判断手段184によってエンジン14に吸入される空気の気圧が基準気圧PASTDよりも低いと判断された場合には、そのエンジン14に吸入される空気の気圧が基準気圧PASTD以上であると判断された場合と比較して、許容入力回転速度N1inを高くする。
【0082】
また、許容回転速度設定手段186は、許容入力回転速度N1inを図9の実線L02から設定されるものよりも高く設定する場合には、図10に示すように、前記車両標高が高いほど許容入力回転速度N1inを高く設定するという点でも、実施例1の許容回転速度設定手段96と同じであるが、その車両標高を高度情報取得手段182から得るという点が許容回転速度設定手段96と異なる。
【0083】
図14は、電子制御装置180の制御作動の第2の要部、すなわち、第1遊星歯車装置20の許容入力回転速度N1inを設定する制御作動を説明するためのフローチャートである。なお、実施例1の図11のフローチャートは本実施例でも同じである。
【0084】
先ず、許容回転速度設定手段186に対応するSC1においては、車速センサ52からの信号により車速Vが検出される。SC1の次はSC2へ移る。
【0085】
高度情報取得手段182に対応するSC2においては、気圧センサ43からの信号またはカーナビゲーション装置44から得られる地図情報等に基づいて、車両6の高度情報である前記車両標高が推定され求められる。SC2の次はSC3へ移る。
【0086】
吸入空気状態判断手段184に対応するSC3においては、前記車両標高が基準標高hSTDよりも高いか否かが判断される。このSC3の判断が肯定された場合、すなわち、車両標高が基準標高hSTDよりも高い場合には、SC4に移る。一方、このSC3の判断が否定された場合には、SC5に移る。
【0087】
SC4は、図12のSB7と同じである。また、SC5は、図12のSB8と同じである。上記SC4およびSC5は許容回転速度設定手段186に対応する。
【0088】
本実施例には、前述の実施例1の効果(A2)、(A4)、及び(A5)に加え次のような効果(B1)乃至(B3)がある。(B1)本実施例によれば、吸入空気状態判断手段184は、エンジン14に吸入される空気の気圧が前記基準気圧PASTDよりも低いか否かを判断してもよく、そのようにするのであれば、許容回転速度設定手段186は、吸入空気状態判断手段184によってエンジン14に吸入される空気の気圧が基準気圧PASTDよりも低いと判断された場合には、そのエンジン14に吸入される空気の気圧が基準気圧PASTD以上であると判断された場合と比較して、許容入力回転速度N1inを高くする。ここで、同一の吸入空気量且つ同一のエンジン回転速度Neの下で比較すれば、エンジントルクTeはエンジン14に吸入される空気の気圧が低いほど低下する傾向にある。従って、第1遊星歯車装置20の許容入力回転速度N1inの制限によって第1遊星歯車装置20を高回転化から保護することが可能であると共に、上記気圧が低くなれば許容入力回転速度N1inが高められるので、その許容入力回転速度N1inの変更に応じてエンジン回転速度Neを引き上げてエンジントルクTeを上昇させ、上記気圧の低下に起因したエンジントルク低下を補うことが可能となる。
【0089】
(B2)また、本実施例によれば、吸入空気状態判断手段184は前記車両標高に基づいて、エンジン14に吸入される空気の気圧が前記基準気圧PASTDよりも低いか否かを判断してもよく、そのようにしたとすれば、
エンジントルクTeや上記気圧を検出しなくても、車両6が位置する標高(車両標高)を検出し又は推定することで、許容入力回転速度N1inを高くするか否かを決定することができる。例えば、気圧センサ43が不要になるという利点があり、車両6が位置する標高は、カーナビゲーション装置44の地図情報などを活用して容易に取得することが可能である。
【0090】
(B3)また、本実施例によれば、前記基準気圧PASTDに対応した標高が基準標高hSTDとして予め定められており、吸入空気状態判断手段184は、高度情報取得手段182により求められた前記車両標高が前記基準標高hSTDよりも高いか否かを判断し、その車両標高が基準標高hSTDよりも高い場合にはエンジン14に吸入される空気の気圧が基準気圧PASTDよりも低いと判断するようにしてもよい。そのようにしたとすれば、車両6が位置する標高を検出し又は推定することで、エンジン14に吸入される空気の気圧について判断する場合と同様にして、許容入力回転速度を高くするか否かを決定することができる。
【0091】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0092】
例えば、前述の実施例1において、回転速度差増大率算出手段92は、エンジン回転速度差増大率DDNEを算出するために、エンジン回転速度センサ50からの信号に基づきエンジン回転速度Neを検出するが、エンジン回転速度Neは第1キャリヤCA1の回転速度であり車速Vと第1電動機回転速度NM1とから算出できるので、回転速度差増大率算出手段92は、車速Vおよび第1電動機回転速度NM1の変化からエンジン回転速度差増大率DDNEを算出しても差し支えない。
【0093】
また、前述の実施例1,2において、図9,10に示すように、許容回転速度設定手段96,186によって設定される許容入力回転速度N1inは車速Vが高くなるほど高められるが、そのように車速Vに応じて変化しなくても差し支えない。
【0094】
また、前述の実施例1,2において、図10の高地用線図に示すように、許容入力回転速度N1inは前記車両標高(推定高度h1)が高いほど高く設定されるが、例えば実施例1であれば、図12のSB7で設定される許容入力回転速度N1inが、同一車速で比較してSB8で設定されるものよりも高ければ、上記車両標高に応じて変更されなくても差し支えない。
【0095】
また、前述の実施例2において、吸入空気状態判断手段184は、エンジン14に吸入される空気の気圧が前記基準気圧PASTDよりも低いか否かを判断してもよいが、その空気の空気密度は気圧が低いほど小さくなるので、吸入空気状態判断手段184は、その空気の空気密度について判断しても差し支えない。例えばそのようにする場合には、基準気圧PASTDに対応した空気密度が基準空気密度として予め定められており、吸入空気状態判断手段184は、エンジン14に吸入される空気の空気密度が上記基準空気密度よりも小さいか否かを判断する。そして、許容回転速度設定手段186は、吸入空気状態判断手段184によって上記空気密度が上記基準空気密度よりも小さいと判断された場合には、その空気密度が基準空気密度以上であると判断された場合と比較して、許容入力回転速度N1inを高くする。
【0096】
また、前述の実施例1,2の第1遊星歯車装置20において、第1キャリヤCA1はエンジン14に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車24に連結されているが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン14、第1電動機M1、出力歯車24は、それぞれ第1遊星歯車装置20の3つの回転要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0097】
また、前述の実施例1,2において、第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は第1遊星歯車装置20のリングギヤR1に対し一体的に連結されているが、上記リングギヤR2の連結先は、上記リングギヤR1に限定されるものではなく、例えば第1遊星歯車装置20の第1キャリヤCA1に連結されていても差し支えない。また、上記リングギヤR2は、上記リングギヤR1ではなく第1遊星歯車装置20と駆動輪40との間の動力伝達経路のどこかに連結されていても差し支えない。
【0098】
また、前述の実施例1,2において、車両用動力伝達装置10は第2電動機M2と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部に第2遊星歯車装置22を備えているが、第2遊星歯車装置22が無く第2電動機M2が出力歯車24に直接連結されていても差し支えない。
【0099】
また、前述の実施例1,2において、出力歯車24と駆動輪40との間の動力伝達経路に変速機は設けられていないが、その動力伝達経路に、手動変速機もしくは自動変速機が設けられていても差し支えない。
【0100】
また、前述の実施例1,2において、入力軸18はダンパー16を介してエンジン14に連結されているが、そのダンパー16が無く、入力軸18が直接に或いは伝動ベルトや歯車等を介してエンジン14に連結されていても差し支えない。
【0101】
また、前述の実施例1,2の動力伝達装置10において、エンジン14と第1遊星歯車装置20との間にクラッチ等の動力断続装置は設けられていないが、そのような動力断続装置がエンジン14と第1遊星歯車装置20との間に介装されていても差し支えない。また、第1電動機M1及び第2電動機M2に関しても同様であり、上記動力断続装置が、第1電動機M1と第1遊星歯車装置20との間または第2電動機M2と第2遊星歯車装置22との間に介装されていても差し支えない。
【0102】
また前述の実施例1,2においては、第1電動機M1の運転状態が制御されることにより、第1遊星歯車装置20はその変速比が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであるが、例えば第1遊星歯車装置20の変速比を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであってもよい。
【0103】
また、前述の実施例1,2において、第1遊星歯車装置20および第2遊星歯車装置22は何れもシングルプラネタリであるが、それらの一方または両方がダブルプラネタリであっても差し支えない。
【0104】
また前述の実施例1,2においては、第1遊星歯車装置20を構成する第1キャリヤCA1にはエンジン14が動力伝達可能に連結され、第1サンギヤS1には第1電動機M1が動力伝達可能に連結され、第1リングギヤR1には駆動輪40への動力伝達経路が連結されているが、例えば、第1遊星歯車装置20が2つの遊星歯車装置に置き換えられて、その2つの遊星歯車装置がそれを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、その遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、電動機、駆動輪が動力伝達可能に連結されており、その遊星歯車装置の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により有段変速と無段変速とに切換可能な構成であってもよい。
【0105】
また、前述の実施例1,2の第2電動機M2はエンジン14から駆動輪40までの動力伝達経路の一部を構成する出力歯車24に第2遊星歯車装置22を介して連結されているが、第2電動機M2がその出力歯車24に連結されていることに加え、クラッチ等の係合要素を介して第1遊星歯車装置20にも連結可能とされており、第1電動機M1の代わりに第2電動機M2によって第1遊星歯車装置20の差動状態を制御可能とする動力伝達装置10の構成であってもよい。
【0106】
また前述した複数の実施例はそれぞれ、例えば優先順位を設けるなどして、相互に組み合わせて実施することができる。例えば、前述の実施例1および実施例2を互いに組み合わせるとすれば、エンジントルク判断手段90は、前記車両標高が予め定められた前記基準標高hSTDよりも高い場合、または、エンジン14に吸入される空気の気圧が予め定められた前記基準気圧PASTDよりも低い場合に、前記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが前記基準エンジントルクTesよりも低いと判断する。一方、前記車両標高が基準標高hSTD以下である場合、または、エンジン14に吸入される空気の気圧が基準気圧PASTD以上である場合には、前記所定の加速操作量OPACおよびエンジン回転速度Neのときにエンジン14から出力されるエンジントルクTeが前記基準エンジントルクTes以上であると判断する。そして、許容回転速度設定手段96は、前述の実施例1と同様にして許容入力回転速度N1inを設定する。
【符号の説明】
【0107】
6:車両
10:動力伝達装置(車両用動力伝達装置)
14:エンジン
20:第1遊星歯車装置(差動機構)
40:駆動輪
80:電子制御装置(車両用動力伝達装置用制御装置)
M1:第1電動機(差動用電動機)
CA1:第1キャリヤ(キャリヤ)
S1:第1サンギヤ(サンギヤ)
R1:第1リングギヤ(リングギヤ)
P1:第1ピニオンギヤ(ピニオンギヤ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成し差動用電動機が制御されることにより差動状態が制御される差動機構を備えた車両用動力伝達装置において、前記エンジンから入力される前記差動機構の入力回転速度に対して許容入力回転速度を設定する車両用動力伝達装置用制御装置であって、
所定の加速操作量およびエンジン回転速度のときに前記エンジンから出力されるエンジントルクが、該エンジンの出力トルク特性を示す予め設定された関係から該所定の加速操作量およびエンジン回転速度に基づいて定まる基準エンジントルクよりも低い場合には、該エンジントルクが該基準エンジントルク以上である場合と比較して、前記許容入力回転速度を高くする
ことを特徴とする車両用動力伝達装置用制御装置。
【請求項2】
前記予め設定された関係は、予め定められた基準気圧の空気を吸入して駆動される前記エンジンの出力トルク特性を示すものであり、
前記エンジンに吸入される空気の気圧が前記基準気圧よりも低い場合には、前記所定の加速操作量およびエンジン回転速度のときに前記エンジンから出力されるエンジントルクが前記基準エンジントルクよりも低いと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置用制御装置。
【請求項3】
エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成し差動用電動機が制御されることにより差動状態が制御される差動機構を備えた車両用動力伝達装置において、前記エンジンから入力される前記差動機構の入力回転速度に対して許容入力回転速度を設定する車両用動力伝達装置用制御装置であって、
前記エンジンに吸入される空気の気圧が予め定められた基準気圧よりも低い場合には、該エンジンに吸入される空気の気圧が該基準気圧以上である場合と比較して、前記許容入力回転速度を高くする
ことを特徴とする車両用動力伝達装置用制御装置。
【請求項4】
車両が位置する標高に基づいて、前記エンジンに吸入される空気の気圧が前記基準気圧よりも低いか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用動力伝達装置用制御装置。
【請求項5】
車両が位置する標高が高いほど、前記許容入力回転速度を高くする
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置用制御装置。
【請求項6】
車両加速時におけるエンジン回転速度の目標値と実際値との差の単位時間当たりの増大量であるエンジン回転速度差増大率を算出し、
該エンジン回転速度差増大率に基づいて、前記車両が位置する標高を推定する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用動力伝達装置用制御装置。
【請求項7】
前記差動機構は、前記差動用電動機に連結されたサンギヤと、前記駆動輪に連結されたリングギヤと、該サンギヤと該リングギヤとの間に介装されたピニオンギヤを自転および公転可能に支持すると共に前記エンジンに連結されたキャリヤとを有する遊星歯車装置であり、
前記許容入力回転速度を高くするほど前記差動用電動機の回転速度を上昇させる
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置用制御装置。
【請求項8】
前記差動機構の耐久性を損なわないように、該差動機構の有する歯車の疲労を促進しないように、或いは、前記差動機構の回転部分に焼きつきが発生しないように、前記許容入力回転速度を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置用制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−46053(P2012−46053A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189303(P2010−189303)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】