説明

電界効果トランジスタ

【課題】高電圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを提供すること。
【解決手段】この電界効果トランジスタは、略同一の第1、第2トランジスタ部11,12を備える。第1のトランジスタ部11は、ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造、III族窒化物半導体層構造上に間隔をおいて配置されたソース電極5およびドレイン電極7、フィールドプレート91を有するゲート電極6、ドレイン電極7を被覆するように配置された絶縁体層8を有する。フィールドプレート91は、ドレイン電極7を覆うようにひさし状に延在する。第2のトランジスタ部12は、第1のトランジスタ部11と略面対称に配置されている。第1のトランジスタ部11のIII族窒化物半導体層構造、絶縁体層8およびドレイン電極7は、第2のトランジスタ部12において対応する構造または層と一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体を用いた高耐圧ヘテロ接合型電界効果トランジスタ(HFET)は、高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率を有する高周波のパワースイッチング素子として広く研究されている(例えば、特許文献1参照)。図12に、III族窒化物半導体を用いた代表的なnチャネル型HFETの概略断面を示す(特許文献1参照)。
【0003】
図12のトランジスタでは、基板1201上に、III族窒化物半導体を含むバッファ層1202が形成され、その上部にIII族窒化物半導体からなるチャネル層1203が形成され、その上部にチャネル層1203よりも大きなバンドギャップを持ったIII族窒化物半導体からなるバリア層1204が形成されている。互いに異なるバンドギャップを有するチャネル層1203とバリア層1204との界面にはヘテロ接合が形成されている。自発分極とピエゾ分極によりヘテロ接合界面の近傍は、電子が高濃度で蓄積する二次元電子ガス1220が存在すると共に、ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造になっている。また、二次元電子ガスのシート電子濃度は、チャネル層とバリア層の構成により異なるが、例えば、1×1012〜1×1013/cm程度になっている。
【0004】
ソース電極1205、ドレイン電極1207およびゲート電極1206がバリア層1204上部に形成され、絶縁体層1208がバリア層を覆うよう形成されている。
【0005】
上記ゲート電極1206は、ドレイン電極1207側にひさし状に張り出し絶縁体層1208上に形成されたフィールドプレート部1291を有している。これにより、電界効果トランジスタに高電圧を印加した際に、バリア層1204と接するドレイン電極1207側のゲート電極1206の端角部(図12のA部)に掛かる電界を緩和させる。この結果、前記のゲート電極1206の端角部に局所的に電界が集中することによるゲート電極1206の周囲での破壊を抑制し、トランジスタの破壊耐圧の低下を防ぐようになっている。
【0006】
尚、図12のようなトランジスタでは、ソース電極1205とドレイン電極1207との間の電流は、電子をキャリアとして、主に二次元電子ガス1220内を流れるようになっている。上記ゲート電極1206に印加する電圧を変化させることにより、オン/オフを切換えできるようになっている。
【0007】
しかし、図12に示すような構造の電界効果トランジスタにおいて、トランジスタがオフの状態で、ソース電極1205およびゲート電極1206と、ドレイン電極1207との間に高電圧を印加すると、素子内部にかかる電界によりキャリアが増大して、素子が壊れてしまう場合がある。
【0008】
詳しくは、従来のフィールドプレート構造を有する電界効果トランジスタに、高電圧を印加すると、「バリア層と接触しているドレイン側のゲート電極端角部(図12のA部)」だけでなく、「ドレイン電極との距離が最も短くなるフィールドプレート電極端角部(図12のB部)」と、「前記フィールドプレート電極端角部直下の絶縁体層および半導体からなるバリア層(図12のC部)」に局所的な電界集中が起こる。特に、ドレイン電極1207との距離が短くなった場合においては、フィールドプレート電極端角部(図12のB部)で非常に電界が集中しやすいことが知られている(非特許文献1参照)。
【0009】
このことにより、上記フィールドプレート電極端角部の周囲にある絶縁体層1208や半導体からなるバリア層1204(図12のB部およびC部)において、局所的に非常に大きな電界がかかる部分が生じ、キャリアが増大し素子が壊れることがある。
【0010】
このキャリアの増大は、高電圧を印加すると、素子内部に絶縁破壊強度を超える電界強度が局所的部分にかかり、その部分でなだれ降伏が起こることが一因であると考えられている。トランジスタを構成する絶縁体層1208や、バリア層1204などといった半導体部において、キャリアが急激に増加することにより、素子破壊が起こると考えられているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−200248号公報
【特許文献2】特開2004−177151号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Wataru Saito, Masahiko Kuraguchi, Yoshiharu Takada, Kunio Tsuda, Ichiro Omura, and Tsuneo Ogura "Design Optimization of High Breakdown Voltage AlGaN-GaN Power HEMT on an Insulating Substrate for RONA-VB Tradeoff Characteristics" IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, vol.52, No.1, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の課題は、高電圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明の電界効果トランジスタは、
第1のトランジスタ部と、
上記第1のトランジスタ部と略同一の第2のトランジスタ部と
を備え、
上記第1のトランジスタ部および上記第2のトランジスタ部は、夫々
ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造と、
上記III族窒化物半導体層構造上に間隔をおいて配置されたソース電極およびドレイン電極と、
上記III族窒化物半導体層構造上に上記ドレイン電極を被覆するように配置された第1の絶縁体層と、
上記ソース電極と上記ドレイン電極との間に、上記ソース電極および上記ドレイン電極に間隔をおいて位置するゲート電極本体と、上記第1の絶縁体層上に位置すると共に、上記ゲート電極本体から上記ドレイン電極に向けてひさし状に延びるフィールドプレートとを有するゲート電極と
を有し、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造と、上記第2のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記第1の絶縁体と、上記第2のトランジスタ部の上記第1の絶縁体とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極と、上記第2のトランジスタ部の上記ドレイン電極とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部と、第2のトランジスタ部とは、略面対称に配置され、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートと、上記第2のトランジスタ部のフィールドプレートとは、電気的に接続されていることを特徴としている。
【0015】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートと、上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面とのその上面の法線方向の最大の距離は、1ミクロン以上である。
【0016】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートは、上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面から上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートまでの上記上面の法線方向の距離が、上記第1のトランジスタ部の上記ゲート電極から上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極に行くにしたがって連続的に大きくなる部分を有している。
【0017】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートは、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面に略平行な状態で、その上面にその上面の法線方向に対向する第1の面を有する第1部分と、
上記法線方向において、上記第1部分の上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造側とは反対側に位置すると共に、上記上面に略平行な状態で上記上面に上記法線方向に対向する第2の面を有する第2部分と、
上記第1部分と上記第2部分とを連結する連結部と
を有し、
上記第1部分の延在方向の長さが、0.5μm以上かつ3μm以下であり、
上記第1の面と上記上面との上記法線方向の距離が、10μm以上かつ50μm以下である。
【0018】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部の上記第1の絶縁体層は、誘電率が互いに異なる複数の層を有している。
【0019】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部の上記ゲート電極と、上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面との間に第2の絶縁体層を備える。
【0020】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上記上面は、凹部を有し、
上記第1のトランジスタ部の上記ゲート電極は、上記凹部に上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面の法線方向に重なる位置に存在している。
【0021】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造は、
下層チャネル層と、
上記下層チャネル層の上面に配置された上層チャネル層と、
上記上層チャネル層の上面に配置されたバリア層と
を有し、
上記上層チャネル層は、上記バリア層および上記下層チャネル層のいずれよりも小さいバンドギャップを有している。
【0022】
また、一実施形態では、
上記第1のトランジスタ部および上記第2のトランジスタ部は、夫々導電性基板を備え
上記第1のトランジスタ部の上記導電性基板と、上記第2のトランジスタ部の上記導電性基板とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造は、上記第1のトランジスタ部の上記導電性基板上に配置されている。
【0023】
また、本発明の電界効果トランジスタは、
第1のトランジスタ部と、
上記第1のトランジスタと略同一の第2のトランジスタ部と
を備え、
上記第1のトランジスタ部および上記第2のトランジスタ部は、夫々
ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造と、
上記III族窒化物半導体層構造上に間隔をおいて配置されたゲート電極およびドレイン電極と、
上記III族窒化物半導体層構造上に、上記ドレイン電極および上記ゲート電極を被覆するように配置された第1の絶縁体層と、
上記ゲート電極の上記ドレイン電極側とは反対側に、上記ゲート電極に間隔をおいて位置するソース電極本体と、上記第1の絶縁体層上に位置すると共に、上記ソース電極本体から上記ドレイン電極に向けてひさし状に延びるフィールドプレートとを有するソース電極と
を有し、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造と、上記第2のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記第1の絶縁体と、上記第2のトランジスタ部の上記第1の絶縁体とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極と、上記第2のトランジスタ部の上記ドレイン電極とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部と、第2のトランジスタ部とは、略面対称に配置され、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートと、上記第2のトランジスタ部のフィールドプレートとは、電気的に接続されていることを特徴としている。
【0024】
また、一実施形態では、
上記第1トランジスタ部の上記フィールドプレートおよび上記第2のトランジスタ部の上記フィールドプレートは、貫通穴を有し、
上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極および上記第2のトランジスタ部の上記ドレイン電極は、上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極の上面の法線方向に、上記貫通穴に重なっている。
【発明の効果】
【0025】
従来のフィールドプレート構造を有する電界効果トランジスタに、高電圧を印加すると、「バリア層と接触しているドレイン側のゲート電極端角部(図12のA部)」だけでなく、「ドレイン電極との距離が最も短くなるフィールドプレート電極端角部(図12のB部)」と、「前記フィールドプレート電極端角部直下の絶縁体層および半導体からなるバリア層(図12のC部)」に局所的な電界集中が起こる。特に、ドレイン電極1207との距離が短くなった場合においては、フィールドプレート電極端角部(図12のB部)で非常に電界が集中しやすいことが知られている。
【0026】
また、フィールドプレート電極が、ソース電極1205とゲート電極1207のいずれか、または、それら両方の電極に接続されて、フィールドプレートがそれら電極の一部をなしているか否かに係わらずフィールドプレート電極(角)端への電界集中は発生する。
【0027】
このことにより、局所的に非常に大きな電界がかかる部分が生じ、周囲にある絶縁破壊が起こりやすい部分、例えば絶縁体層1208や半導体からなるバリア層1204で絶縁破壊が生じる。
【0028】
この結果、素子の破壊が起こり易くなり、絶縁破壊耐圧および信頼性低下の原因の一つとなってしまう。
【0029】
本発明によれば、局所的な電界集中の原因となるフィールドプレート電極端角部(図12のB部)がないことから、これに伴う、絶縁破壊が起こりやすい部分への電界集中を緩和することができる。したがって、絶縁耐層やバリア層など半導体層の絶縁破壊を防止することができて、トランジスタの破壊電圧(耐圧)を向上でき、高電圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第7実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第8実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第9実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図10A】従来の電界効果トランジスタについてのシミュレーションの結果を示す説明図であり、トランジスタ内部の電位の分布を示す図である。
【図10B】従来の電界効果トランジスタについてのシミュレーションの結果を示す説明図であり、トランジスタ内部の電界強度分布を示す図である。
【図11A】本発明の第1実施形態の電界効果トランジスタについてのシミュレーションの結果を示す説明図であり、トンジスタ内部の電位の分布を示す図である。
【図11B】本発明の第1実施形態の電界効果トランジスタについてのシミュレーションの結果を示す説明図であり、トランジスタ内部の電界強度分布を示す図である。
【図12】従来の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の各実施形態を、図面を用いて説明する。尚、図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されるものではない。
【0032】
本発明において、電界効果トランジスタとは、ゲート電極に加えた電圧(電荷)によりゲート電極下の半導体層のキャリアを制御し、ソース電極とドレイン電極との間の電流を増減させるトランジスタをいう。また、本発明の電界効果トランジスタは、ヘテロ接合型電界効果トランジスタであってもよい。
【0033】
尚、以下に示す第1乃至第9実施形態の電界効果トランジスタでは、いずれも、第1のトランジスタ部11,211,311,411,511,611,711,811,911と、第2のトランジスタ部12,212,312,412,512,612,712,812,912とは、略同一であり、かつ、略面対称に位置している。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電界効果トランジスタの構造を示す概略断面図である。
【0035】
この電界効果トランジスタは、第1のトランジスタ部11と、第2のトランジスタ部12とを備える。上記第1のトランジスタ部11は、第2のトランジスタ部12と略同一である。
【0036】
上記第1のトランジスタ部11は、導電性Si基板1、バッファ層2、III族窒化物半導体からなるチャネル層3、III族窒化物半導体からなるバリア層4、ソース電極5、ゲート電極6、ドレイン電極7および第1の絶縁体層としての絶縁体層8を有する。上記バッファ層2、チャネル層3およびバリア層4は、ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造を構成している。
【0037】
上記III族窒化物半導体からなるバッファ層2、III族窒化物半導体からなるチャネル層3およびIII族窒化物半導体からなるバリア層4は、導電性Si基板1上にこの順で設けられている。また、上記ソース電極5、ゲート電極6およびドレイン電極7は、バリア層4上にこの順で離間して設けられている。上記絶縁体層8は、ドレイン電極7を覆うように、III族窒化物半導体層構造上に配置されている。
【0038】
上記ゲート電極6は、ゲート電極本体90と、フィールドプレート91とを有し、このフィールドプレート91は、絶縁体層8上に位置すると共に、ゲート電極本体90からドレイン電極7側にひさし状に張り出している。
【0039】
言い換えると、上記フィールドプレート91は、ヘテロ構造を含むIII族窒化物半導体層構造の上面18の法線方向において、III族窒化物半導体層構造側とは反対側かつ上記法線方向に垂直な方向においてドレイン電極7側に延在している。
【0040】
上記第2のトランジスタ部12の導電性Si基板51は、導電性Si基板1と一体化され、第2のトランジスタ部12のIII族窒化物半導体層構造は、第1のトランジスタ部11のIII族窒化物半導体層構造と一体化されている。また、上記第2のトランジスタ部12の第1の絶縁体層としての絶縁体層58は、絶縁体層8と一体化され、第2のトランジスタ部12のドレイン電極57は、ドレイン電極7と一体化されている。上記第1のトランジスタ部11と第2のトランジスタ部12とは、略面対称に配置されている。もっと詳しくは、上記第2のトランジスタ部12は、図1の断面において、第1のトランジスタ部11に対して、ドレイン電極7を垂直に二等分する線(図1にZで示す)に対して、線対称となるように配置されている。
【0041】
上記第1のトランジスタ部11と第2のトランジスタ部12とは、互いに向かい合うように配置されている。上記第1のトランジスタ部11のフィールドプレート91と、第2のトランジスタ部12のフィールドプレート92とは、ドレイン電極7を被覆するように形成された絶縁体層8上で電気的に接続されている。
【0042】
尚、図1において、52は、第2のトランジスタ部12のバッファ層を示し、53は、第2のトランジスタ部12のチャネル層を示し、54は、第2のトランジスタ部12のバリア層を示し、56は、第2のトランジスタ部12のゲート電極を示し、70は、第2のトランジスタ部12の二次元電子ガスを示し、94は、第2のトランジスタ部12のゲート電極56のゲート電極本体を示している。
【0043】
上記基板1は、上部にチャネル層3などの半導体層を形成できる基板であれば如何なる基板であっても良い。上記基板1は、導電性基板であってもよく、高抵抗基板であってもよい。上記基板1としては、例えば、n型不純物をドープしたSi(n‐Si基板)、Si、GaN、SiC、Gaまたはサファイア基板等を使用できる。
【0044】
また、上記基板1は、導電性基板であってもよい。この場合、上記基板1と、ソース電極5とを、電気的に接続してもよい。このようにすると、上記基板1と、ドレイン電極5との間に電圧を印加できて、ゲート電極6と、ドレイン電極7との間にかかる電界を緩和することができる。そして、その結果、絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0045】
また、上記基板1が導電性基板である場合、ソース電極5および基板1を接地することもできる。また、上記基板1が導電性基板である場合、基板1と、ソース電極5とを電気的に接続することにより、ダイボンドやワイヤーボンドなどの実装工程を簡略化することができて、電界効果トランジスタをパッケージングする場合に、デバイスを小型化することができる。
【0046】
また、導電性基板は、ソース電極5と電気的に接続してもよい。このことにより、ソース電極5とドレイン電極7との間に電圧を印加した場合、基板1とドレイン電極7との間に縦方向の電界が生じドレイン電極7の下部のチャネル層3にかかる電界強度が大きくなる。その結果、ソース電極5およびゲート電極6とドレイン電極7との間の電界を緩和することができる。これらより、絶縁破壊が生じやすいドレイン電極7のゲート電極6側のチャネル層3にかかる電界強度を緩和することができ、絶縁破壊を抑制することができる。
【0047】
上記バッファ層2は、基板1の上に設けられることができ、上部にチャネル層3等の半導体層を形成で出来るものであれば、如何なる材料で構成されても良い。上記バッファ層2は半導体であっても良く、半導体の複数の層で構成されても良い。上記バッファ層2としては、例えば、化合物半導体である、GaN、AlN、InN、AlGa1−xN、InGa1−xN、SiC、BNなどの半導体を使用できる。
【0048】
また、上記バッファ層2は複数の半導体の超格子でも良い。このようにすると、上記チャネル層3およびバリア層4の欠陥密度を減らし、結晶性を向上させることができるため、良好なスイッチング特性のトランジスタを得ることができる。
【0049】
上記チャネル層3は、バッファ層2の上(もっと広くは基板1の上)に設けられることができ、かつ、ソース電極5とドレイン電極7との間の電流が流れうるものであれば如何なる材料からなっていても良い。また、キャリアは、電子であってもよい。上記チャネル層3は、例えば、III族窒化物半導体で構成されても良く、例えば、GaN、AlGa1−xN、InGa1−xN等で構成されても良い。なお、例えばxは0より大きく0.5以下でもよい。また、例えばxは、0.001以上0.1以下であってもよい。また、上記チャネル層3の厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜10μmであり、さらに好ましくは2μm〜5μmである。上記チャネル層3は、例えば、基板の上にMOCVDやMBEにより形成することができる。
【0050】
上記バリア層4は、チャネル層3の上に設けられることができ、チャネル層3との界面にヘテロ接合を形成できるものであれば如何なる材料からなっていても良い。上記バリア層4は、例えば、III族窒化物半導体からなっていても良く、例えば、AlN、AlGa1−xN、InGa1−xNなどからなってもよい。ここで、例えば、xは0.05以上0.5以下でもよい。また、例えば、xは、0.1以上0.3以下であってもよい。III族窒化物半導体は、絶縁破壊強度が高く熱伝導率が高いため、高周波のパワースイッチング素子とすることができる。また、例えば、チャネル層3がGaNまたはGaAl1−xNからなり、バリア層4がGaAl1−yNからなるとき、yはxより大きくてもよく、0.02≦(y−x)≦0.3であってもよい。このようにすると、上記バリア層4のバンドギャップは、チャネル層3のバンドギャップよりも大きくすることができる。
【0051】
また、上記バリア層4は、チャネル層3よりも大きいバンドギャップを有していても良い。このようにすると、上記チャネル層3との界面に、二次元電子ガス20を形成することができる。なお、AlGaN/GaNヘテロ接合では、自発分極と、ピエゾ分極とにより1×1012〜1×1013/cm程度のシート電子濃度が発生する。また、ソース電極5とドレイン電極7との間に流れる電流、つまりキャリアである電子の大部分を、チャネル層3内に流すことができる。また、バリア層4の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上0.1μm以下とすることができる。また、例えば、0.015μm以上0.05μm以下とすることができる。上記バリア層4は、例えば、チャネル層3の上にMOCVDやMBEにより形成することができる。
【0052】
本発明において、ソース電極5、ゲート電極6、ドレイン電極7は、本発明の電界効果トランジスタを構成することができる電極であれば特に限定されない。上記ソース電極5は、バリア層4上に、ソース電極5、ゲート電極6およびドレイン電極7の順で離間して設けられる電極であれば、如何なる材料からなり、如何なる構造であっても良い。ソース電極5の材料としては、例えば、Ti、Zr、Hf、Al、AlSi、W、WN、Au、Ptから選択された少なくとも一種の金属を用いることができる。また、上記ソース電極5は、例えば、Ti/Pt/Au、Hf/Al/Au、Ti/Alからなる電極とすることができる。
【0053】
上記ソース電極5は、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成することができる。また、バリア層4上に絶縁体層8を形成している場合、ソース電極5を形成する部分の絶縁体層8をエッチングにより除去して、ソース電極5がバリア層4に接触するように、ソース電極を形成することができる。
【0054】
また、上記ソース電極5は、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成した後、熱処理を行うことで形成できる。熱処理は、時間、温度は、限定されない。熱処理としては、例えば、800℃で1分間の熱処理を採用できる。このようにすると、ソース電極5とチャネル層3とを、オーミック接続させることができる。
【0055】
上記ソース電極5は、ソース電極5直下に形成されたn型不純物拡散層を介してオーミック接続する構成であっても良い。n型不純物拡散層は、ソース電極5直下のバリア層4およびチャネル層3にn型不純物をイオン注入することにより、形成することができる。また、イオン注入後に熱処理を行うことにより、n型不純物拡散領域を活性化することができる。このことによりソース電極5とチャネル層3との間の接触抵抗を低減することができる。また、ソース電極5は、真空蒸着法、スパッタ法などにより、上記n型不純物拡散領域直上に形成した後、熱処理されることができる。熱処理は、時間、温度は、限定されない。熱処理としては、例えば、550℃で1分間の熱処理を採用できる。このことにより、ソース電極5とチャネル層3とを、n型不純物拡散層を介したより良好なオーミック接続することができる。
【0056】
上記ドレイン電極7は、バリア層4上に、ソース電極5、ゲート電極6およびドレイン電極7の順で離間して設けられる電極であれば、如何なる材料からなっていても良く、如何なる構造を有していても良い。ドレイン電極7の材料としては、例えば、Ti、Zr、Hf、Al、AlSi、W、WN、Au、Ptから選択された少なくとも一種の金属を用いることができる。また、ドレイン電極7は、例えば、Ti/Pt/Au、Hf/Al/Au、Ti/Alからなる電極とすることができる。上記ドレイン電極は7、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成することができる。
【0057】
上記バリア層4上に絶縁体層8を形成している場合、ドレイン電極7を形成する部分の絶縁体層8をエッチングにより除去し、ドレイン電極7がバリア層4に接触するように、ドレイン電極7を形成することができる。上記ドレイン電極7は、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成した後、熱処理されることができる。熱処理は、時間、温度は、限定されない。熱処理としては、例えば、800℃で1分間の熱処理を採用できる。このことにより、ドレイン電極7とチャネル層3とを、オーミック接続することができる。また、上記ドレイン電極7は、ドレイン電極7直下に形成されたn型不純物拡散層を介してオーミック接続されても良い。ここで、上記n型不純物拡散層は、ドレイン電極7直下のバリア層4およびチャネル層3にn型不純物をイオン注入することにより、形成することができる。また、イオン注入後に熱処理を行うことにより、n型不純物拡散領域を活性化することができる。このことによりドレイン電極7とチャネル層3との間の接触抵抗を低減することができる。また、上記ドレイン電極7は、真空蒸着法、スパッタ法などにより前記n型不純物拡散領域直上に形成した後、熱処理されることができる。熱処理は、時間、温度は、限定されない。熱処理としては、例えば、550℃で1分間の熱処理を採用することができる。このことにより、ドレイン電極7とチャネル層3とを、n型不純物拡散層を介するより良好なオーミック接続することができる。上記n型不純物拡散領域に含まれるn型不純物は、特に限定されない。バリア層4およびチャネル層3がIII族窒化物である場合、上記n型不純物拡散領域に含まれるn型不純物としては、例えば、Si、Ge、Snを採用できる。
【0058】
上記ゲート電極6は、バリア層4上に接触し、ソース電極5、ゲート電極6およびドレイン電極7の順で離間して設けられる電極である。上述のように、上記第1のトランジスタ部11および第2のトランジスタ部12のフィールドプレート91,92が、ドレイン電極7を被覆するように形成された絶縁体層8上で接触している。
【0059】
上記ゲート電極6と、ドレイン電極7とは、一定の間隔を有するように設けられてもよい。また、ゲート電極6が有するチャネル層3に最も近い下面と、ドレイン電極7の下面は、一定の間隔を有するように設けられてもよい。上記ゲート電極6の材料としては、Ti、Zr、Hf、Al、AlSi、W、WN、Au、Ptから選択された少なくとも一種の金属を用いることができる。上記ゲート電極6は、真空蒸着法、スパッタ法により形成することができる。上記バリア層4上に絶縁体層8を形成している場合、ゲート電極6を形成する部分の絶縁体層8をエッチングにより除去し、ゲート電極6がバリア層4に接触するように、ゲート電極6を形成することができる。
【0060】
図1に示すように、上記絶縁体層8は、バリア層4の上で、ソース電極5とゲート電極6の間およびゲート電極6とドレイン電極7との間に設けられることができる。上記絶縁体層8は、ドレイン電極7を覆うように形成され、絶縁体層8の上部に、フィールドプレート91を設けることができる。
【0061】
上記絶縁体層8は、絶縁体であれば如何なる材料からなっていても良い。上記絶縁体層8の材料としては、例えば、SiO、SiON、SiN、ポリイミド、TaO、HfO等を採用することができる。上記絶縁体層8は、例えばCVD法、スパッタ法、スピンオン塗布により形成することができる。
【0062】
上記絶縁体層8の厚さは特に限定されないが、ドレイン電極7の直上部の厚さを1μm以上とすると良い。ドレイン電極7を接地し、トランジスタがオフの状態でドレイン電極7に高電圧を印加した場合、ドレイン電極7からドレイン電極7上部のフィールドプレート91に向けてかかる縦方向電界の影響により、ドレイン電極7端角部に電界が集中する。そこで、上記ドレイン電極7と、フィールドプレート91との距離を広く設計することにより、ドレイン電極7端に電界が集中することによる素子の破壊を防止することができる。
【0063】
上記第1実施形態の電界効果トランジスタによれば、トランジスタ特性を保持したまま、フィールドプレート91の端部周囲の絶縁破壊が起こりやすい絶縁体層8およびバリア層(半導体)4に大きな電界がかかることを抑制することができて、絶縁破壊の発生を抑制することができる。また、絶縁体層8を設けることにより、ソース電極5とゲート電極6との間の電界、およびゲート電極6とドレイン電極7との間の電界を緩和することができて、特に、チャネル層3などでの電界集中が生じるのを抑制することができる。この結果、高電圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを得ることができ、素子の破壊や信頼性の低下を抑制することができる。
【0064】
簡潔にいうと、第1実施形態の電界効果トランジスタは、第1のトランジスタ部11と、第2のトランジスタ部12とを備え、その第1のトランジスタ部11は、ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造を有し、そのIII族窒化物半導体層構造上に、ソース電極5、ゲート電極6およびドレイン電極7がこの順で離間して設けられている。また、第1のトランジスタ部11は、ゲート電極本体90に接続されドレイン電極7側にひさし状に張り出し、絶縁体層8上に形成されたフィールドプレート91を有する。
【0065】
上記第2のトランジスタ部12は、上記半導体層構造およびドレイン電極7が第1のトランジスタ部11と共通で、ドレイン電極7における図1の線分Zを軸に鏡面対称となるように配置されている。また、互いに向かい合うように形成された第1のトランジスタ部11および第2のトランジスタ部12のフィールドプレート91、92が、ドレイン電極7を被覆するように形成された絶縁体層8上で接するように形成されている。
【0066】
この構成によれば、トランジスタ特性を保持したまま、フィールドプレート91,92の端部周囲の絶縁破壊が起こりやすい絶縁体層8および半導体層に、大きな電界がかかることを抑制することができ、絶縁破壊の発生を抑制することができる。これにより、素子の破壊や信頼性の低下を抑制できる。
【0067】
また、本発明のトランジスタにおいて、最大の絶縁体層8の厚み(図1の線分X)は1μm以上有しても良い。これによれば、ゲート電極6とドレイン電極7との間に電圧を印加したとき、ドレイン電極7およびゲート電極6にかかる電位差により、ドレイン電極7の端に電界が集中することによる、絶縁破壊強度を超える電解集中を防止でき、素子の破壊を防止することができる。
【0068】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【0069】
尚、第2実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。
【0070】
尚、図2において、212は、第2のトランジスタ部を示し、258は、第2のトランジスタ部212の第1の絶縁体層としての絶縁体層を示す。
【0071】
図2に示すように、この電界効果トランジスタの第1トランジスタ部211は、ゲート電極206およびフィールドプレート291と、バリア層4の表面とのなす角度θが、鋭角、より詳しくは、略30°に設定されている。これにより、バリア層4と接すると共にドレイン電極7側のゲート電極206端角部に掛かる電界の集中を緩和することができる。
【0072】
この結果、ショットキー接合部のリーク電流や、ゲート電極206周囲の第1の絶縁体層としての絶縁体層208および半導体からなるバリア層4の絶縁破壊を防止することができる。
【0073】
尚、上記ゲート電極206と、バリア層4表面とのなす角度θは、15°〜45°に設定されると作用効果が顕著に現れて好ましい。上記絶縁体層208は、バリア層4およびドレイン電極7を覆うように形成されている。
【0074】
上記絶縁体層208は、絶縁体層208の最大の厚み(図2の線分X)が1μm以上になるように形成されている。言い換えれば、III族窒化物半導体層構造の上面の法線方向において、第1のトランジスタ部211のフィールドプレート291と、上記III族窒化物半導体層構造との最大の距離は、1ミクロン以上になっている。
【0075】
第2実施形態の電界効果トランジスタによれば、ゲート電極206と、半導体からなるバリア層4とのショットキー接合部のリーク電流や、ゲート電極206の周囲の絶縁体層208およびバリア層4の絶縁破壊を防止することができるため、高電圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを得ることができる。
【0076】
尚、第2実施形態は、ゲート電極206およびフィールドプレート291が斜めの斜めゲートを示す実施形態である。
【0077】
斜めゲートを有する本発明の電界効果トランジスタでは、バリア層からゲート電極またはゲート電極に接続されたフィールドプレートまでの高さは、ドレイン電極方向に向かうに従い、連続的に変化しても良い。これにより、バリア層と接しドレイン側のゲート電極端角部に掛かる電界の集中を緩和することができ、ショットキー接合部のリーク電流や、ゲート電極周囲の絶縁膜およびバリア層(半導体)の絶縁破壊を防止することができる。
【0078】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【0079】
尚、第3実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。
【0080】
尚、図3において、312は、第2のトランジスタ部を示し、358は、第2のトランジスタ部312の第1の絶縁体層としての絶縁体層を示し、392は、第2のトランジスタ部312のフィールドプレートを示す。
【0081】
第3実施形態の電界効果トランジスタは、ゲート電極306の一部をなすフィールドプレート391が、二段フィールドプレート構造を有している。ゲート電極306側の一段目のフィールドプレートを直上部に形成する絶縁層(図3のY部)は、幅が0.5〜3μm、高さが10〜50nmに設定されている。また、2段目のフィールドプレートを上部に形成する絶縁層308の最大の厚み(図3の線分X)は、1μm以上に設定されている。
【0082】
より詳しくは、第1のトランジスタ部311のフィールドプレート391は、III族窒化物半導体層構造の上面318に略平行な状態で、その上面318にその上面318の法線方向に対向する第1の面319を有する第1部分320と、その法線方向において、第1部分320の上記III族窒化物半導体層構造側とは反対側に位置すると共に、上記上面318に略平行な状態で上記上面318に上記法線方向に対向する第2の面329を有する第2部分330と、第1部分320と第2部分330とを連結する連結部331とを有する。
【0083】
上記第1部分320の上記法線方向に垂直な方向の長さは、0.5μm以上かつ3μm以下になっている。簡単に表現すると、第1部分320の延在方向の長さは、0.5μm以上かつ3μm以下になっている。また、上記第1の面319と上記上面318との上記法線方向の距離が、10μm以上かつ50μm以下になっている。
【0084】
上記第3実施形態の電界効果トランジスタによれば、バリア層4と接するドレイン電極7側のゲート電極306の端角部にかかる電界の集中を、より効果的に抑制することができる。したがって、上記ゲート電極306と、半導体からなるバリア層4とにおけるショットキー接合部のリーク電流や、ゲート電極周囲の絶縁体層308および半導体層での絶縁破壊を、より効果的に防止することができる。この結果、高耐圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを得ることができる。
【0085】
尚、第3実施形態は、薄いゲートFPを示す実施形態である。上述のように、第3実施形態の電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極306の一部をなすフィールドプレート391、392は、二段構造を有する。また、ゲート電極側の一段目のフィールドプレートを直上部に形成する絶縁層(図3のY部)は幅が0.5〜3μm、高さが10〜50nmを有し、2段目のフィールドプレートを上部に形成する絶縁層308の最大の厚み(図3の線分X)は1μm以上を有する。このことにより、バリア層4と接しドレイン電極7側のゲート電極306の端に掛かる電界の集中を、より効果的に抑制することができ、ゲート電極(金属)306とバリア層(半導体)4におけるショットキー接合部のリーク電流や、ゲート電極306の周囲の絶縁体層308および半導体層での絶縁破壊を、より効果的に防止することができる。
【0086】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【0087】
尚、第4実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。
【0088】
尚、図4において、406は、第1のトランジスタ部411のゲート電極を示し、491は、第1のトランジスタ部411のフィールドプレートを示し、412は、第2のトランジスタ部を示す。また、456は、第2のトランジスタ部412のゲート電極を示し、458は、第2のトランジスタ部412の第1の絶縁体層としての絶縁体層を示し、482は、第2のトランジスタ部412の上部絶縁体層を示す。また、483は、第2のトランジスタ部412の下部絶縁体層を示し、492は、第2のトランジスタ部412のフィールドプレートを示す。
【0089】
第4実施形態の電界効果トランジスタの基本構造は、図1と同様であるが、バリア層4上の絶縁体膜)が、二層構造を有している。すなわち、第4実施形態では、第1のトランジスタ部411の第1の絶縁体層としての絶縁体層408は、誘電率が互いに異なる二つの層480,481を有している。
【0090】
二層絶縁体構造は、例えば、SiN、SiOをこの順で設けてなる。二層絶縁体構造により、バリア層4と、上部絶縁体層480の下方に位置する下部絶縁体層481との界面における界面準位の低減と、絶縁体層408における絶縁破壊耐圧の向上とを、同時に実現することが可能になる。これにより、良好なスイッチング特性を持った高耐圧トランジスタを得ることができる。尚、この発明では、第1の絶縁体層は、誘電率の異なる複数の層を備えていてもよい。例えば、第1の絶縁体層は、Al、Ga、HfO、SiN、SiO、SiON、TaO、ZrOなどを有し、誘電率の異なる多層構造であっても良い。
【0091】
上記第4実施形態の電界効果トランジスタによれば、良好な絶縁特性を得ることができると共に、トランジスタを高耐圧なものにすることができ、スイッチング特性を良好なものにすることができる。
【0092】
(第5の実施形態)
図5は、本発明の第5実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【0093】
尚、第5実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。
【0094】
第5実施形態は、MISを示す実施形態である。尚、図5において、512は、第2のトランジスタ部を示している。
【0095】
第5実施形態の電界効果トランジスタは、第1のトランジスタ部511が、上側絶縁体層581の他に、ゲート電極506とバリア層4との間に下側絶縁体層582を備えている。これにより、トランジスタオフの状態でソース電極5を接地し、ドレイン電極7に高電圧を印加した際に、ゲート電極506と二次元電子ガス20との間で、バリア層4を介して流れるリーク電流を抑制することができるため、良好なゲート絶縁特性を得ることができる。
【0096】
上記下側絶縁体層582において、ゲート電極506と、第1のトランジスタ部511のIII族窒化物半導体層構造の上面との間に位置する部分、すなわち、下側絶縁体層582において、ゲート電極506と、第1のトランジスタ部511のIII族窒化物半導体層構造の上面とで挟まれている部分は、第2の絶縁体層を構成する。また、上記下側絶縁体層582のその部分以外の部分と、上側絶縁体層581とは、第1の絶縁体層を構成している。
【0097】
尚、上記下側絶縁体層582は、絶縁体であれば特に限定されない。上記下側絶縁体層582は、例えば、Al、Ga、HfO、SiN、SiO、SiON、TaO、ZrO膜で構成されることができる。また、上記下側絶縁体層582は、チャネル層3またはバリア層4の酸化膜を用いてもよい。また、上記下側絶縁体層582は、上側絶縁体層581と同一であってもよい。
【0098】
また、上記下側絶縁体層582の厚さは、特に限定されない。上記下側絶縁体層582の膜厚は、例えば、0.01μm〜0.1μmとすることができる。上記下側絶縁体層582は、例えば、CVD法、スパッタ法により形成することができる。第5実施形態の電界効果トランジスタによれば、良好なゲート絶縁特性を獲得することができる。
【0099】
(第6実施形態)
図6は、本発明の第6実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【0100】
尚、第6実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。尚、図6において、620は、二次元電子ガスを示し、681は、第1のトランジスタ部611の上側絶縁体層を示し、612は、第2のトランジスタ部を示す。
【0101】
第6実施形態のトランジスタは、第1のトランジスタ部611が、上層チャネル層631と下層チャネル層632から構成されたチャネル層603を有する。
【0102】
上記上層チャネル層631は、バリア層604および下層チャネル層632のいずれよりも小さいバンドギャップを有している。また、バリア層604および上層チャネル層631の一部をエッチングすることによるリセス構造を有し、ゲート電極606は、リセス構造の凹部699上に下側絶縁体層682を介して設けられている。
【0103】
上記第6実施形態の電界効果トランジスタによれば、ゲート電極606直下の上層チャネル層631には二次元電子ガス620を形成できないから、ゲート電極606に電圧を印加しない場合、ソース電極5とドレイン電極7の間にはほとんど電流が流れない。また、上記ゲート電極606にプラスの電圧を印加することにより、ゲート電極606の直下の上層チャネル層631に電子層を形成することができ、トランジスタをオンとすることができる。これにより、ゲート絶縁特性の優れたノーマリーオフ型のトランジスタを作成することができる。
【0104】
また、上記第6実施形態の電界効果トランジスタによれば、キャリアである電子の大部分が上層チャネル層631に閉じ込められるようなバンド構造となるので、電子が下層チャネル層632、バッファ層2、および基板1を介して移動することによるリーク電流を低減できる。この結果、ソース電極5とドレイン電極7の間を流れる電流を上層チャネル層631に集中して流すことができる。
【0105】
尚、上層チャネル層631の材料は、特に限定されないが、上層チャネル層631の材料としては、例えば、III族窒化物半導体である、GaN、AlGa1−xN、InGa1−xN等を用いることができる。尚、ここで、例えば、xは、0より大きく0.5より小さくてもよい。また、例えば、xは、0.001以上0.1以下であってもよい。
【0106】
また、上記上層チャネル層631の厚さは特に限定されないが、例えば、0.01μm以上0.1μm以下である。また、例えば、0.01μm以上0.05μm以下である。また、上記上層チャネル層631の厚さは、下層チャネル層632の厚さより小さくてもよい。このことにより、キャリアである電子を、より狭い範囲に閉じ込めることができる。
【0107】
上記下層チャネル層632の材料は、特に限定されない。上記下層チャネル層632の材料は、例えば、III族窒化物半導体である、AlGa1−xN、InGa1−xNなどからなってもよい。尚、ここで、例えば、xは、0.01以上0.5以下でもよい。また、例えば、xは、0.02以上0.2以下であってもよい。また、例えば、上記上層チャネル層631がGaNからなるとき、下層チャネル層632は、AlGa1−xN(0.01≦x≦0.2)からなっていてもよい。また、例えば、上記上層チャネル層631が、GaN又はAlGa1−xNからなり、下層チャネル層632がAlGa1−yNならなるとき、yはxより大きくてもよい。この場合、上記上層チャネル層631のバンドギャップは、下層チャネル層632のバンドギャップより大きくなるからである。また0.01≦(y−x)≦0.2であってもよい。
【0108】
上記下層チャネル層632の厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜10μmであり、さらに好ましくは、2μm〜5μmである。
なお、ゲート電極606は、リセス構造を有するバリア層604の凹部699の上に設けることもできる。上記下側絶縁体層682は、基板の法線方向において、バリア層604とゲート電極606との間に設けることもできる。
【0109】
上記第6実施形態の電界効果トランジスタによれば、良好なピンチオフ特性をもったノーマリオフ型のトランジスタを実現することができる。
【0110】
上述のように、第6実施形態は、ゲートリセス構造を示す実施形態である。すなわち、上記バリア層604またはチャネル層603は、リセス構造を有し、ゲート電極606は、リセス構造の凹部699上に設けられてもよい。この構成により、本発明のトランジスタは、良好なスイッチング特性を得ることができる。また、ゲート電極606とバリア層604またはチャネル層603との間に第2の絶縁体層688をさらに備え、かつチャネル層3をリセス構造とすることにより、ゲート絶縁特性の優れたノーマリオフ型のトランジスタとすることができる。
【0111】
(第7実施形態)
図7は、本発明の第7実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。第7実施形態は、ソースFPを有する実施形態である。
【0112】
尚、第7実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。
【0113】
第7実施形態の電界効果トランジスタの第1のトランジスタ部711は、ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造を備え、その半導体層構造上に、ソース電極705のソース電極本体790、ゲート電極706およびドレイン電極707がその順で離間して設けられている。
【0114】
この電界トランジスタは、第1のトランジスタ部711と、第2のトタンジスタ部712とを備える。上記第1のトランジスタ711部のソース電極705は、ソース電極本体790と、フィールドプレート791とを有し、フィールドプレート791は、ソース電極本体790につながると共に、ドレイン電極707側にひさし状に張り出している。
【0115】
上記第2トランジスタ712部のIII族窒化物半導体層構造は、第1のトランジスタ711部のIII族窒化物半導体層構造と一体化され、第2トランジスタ712部のドレイン電極57は、第1のトランジスタ部711のドレイン電極7と一体化されている。また、上記第2のトランジスタ部712の第1の絶縁体層としての絶縁体層758は、第1のトランジスタ部711の第1の絶縁体層としての絶縁体層708と一体化されている。上記第1のトランジスタ部711と第2のトランジスタ部712とは、図7において、一体化されたドレイン電7,57の垂直二等分線(図7にZで示す)に対して線対称な形状をしており、二等分線Zに対して、鏡面対称となるように配置されている。
【0116】
互いに向かい合うように形成された第1のトランジスタ部711および第2のトランジスタ部712のフィールドプレート791、792は、一体化されたゲート電極706,756および一体化されたドレイン電極7,57を被覆するように形成された一体化された絶縁体層708,758上で接触している。
【0117】
上記第1のトランジスタ部711は、ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造と、上記III族窒化物半導体層構造上に間隔をおいて配置されたソース電極本体790およびドレイン電極7と、ソース電極本体790とドレイン電極7との間に、ソース電極本体790およびドレイン電極7に間隔をおいて位置するゲート電極706とを有する。
【0118】
また、上記第1のトランジスタ部711は、上記III族窒化物半導体層構造の上面の法線方向において上記III族窒化物半導体層構造側とは反対側かつ上記法線方向に垂直な方向においてドレイン電極7側に延在するフィールドプレート791と、上記III族窒化物半導体層構造上に、ドレイン電極7およびゲート電極706を被覆するように配置された第1の絶縁体層としての絶縁体層708とを有する。
【0119】
上記第2のトランジスタ部712は、一体化されたドレイン電極7,57の垂直二等分面に対して第1トランジスタ部712と略面対称に位置する。上記第1のトランジスタ部711のフィールドプレート791と、第2のトランジスタ712部のフィールドプレート792とは、一体化された絶縁体層708,758上で接触している。
【0120】
上記第7実施形態の電界効果トランジスタは、第1実施形態の電界効果トランジスタとの比較において、ゲートフィールドプレート791,792の端角部で電界集中が起こってしまう。しかし、図12に示す従来の電界効果トランジスタと比較すると、上記ゲートフィールドプレート791,792の端角部周囲での電界集中を緩和することができる。また、素子の最表面がソース電極705,755になるため、ダイボンド、ワイヤーボンドまたはパッケージング等のトランジスタの後半の実装工程を格段に容易に行うことが可能になる。
【0121】
(第8実施形態)
図8は、本発明の第8実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【0122】
尚、第8実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。尚、図8において、812は、第2のトランジスタ部を示し、881は、第1のトランジスタ部812の第1の絶縁体層の上部絶縁体層を示し、882は、第1のトランジスタ部812の第1の絶縁体層の下部絶縁体層を示す。
【0123】
第8実施形態の電界効果トランジスタは、第1のトランジスタ部811のゲート電極806の一部をなすフィールドプレート891が、ドレイン電極7の直上部を覆わないように形成されている。
【0124】
第8実施形態の電界効果トランジスタは、第1実施形態の電界効果トランジスタと比較した場合、第1のトランジスタ部811のゲート電極806のフィールドプレート891の端角部が存在するため電界集中が起こってしまう。
【0125】
しかし、図12に示すような従来の電界効果トランジスタと比較した場合、のトランジスタ部811のゲート電極806の端角部への電界集中を緩和することができ、周囲部での素子の破壊を抑制することができる。
【0126】
また、トランジスタが環状に形成されている場合、穴の存在によって、ドレイン電極をトランジスタの上部から引き出すことができるため、ワイヤーボンドやダイボンドといった実装工程を容易に行うことができる。
【0127】
尚、第8実施形態は、ダブルヘテロ構造と、穴開きゲートを示す実施形態である。
【0128】
すなわち、第8実施形態では、第1のトランジスタ部811のチャネル層803は、上層チャネル層831と下層チャネル層832からなり、上層チャネル層831は、バリア層804および下層チャネル層832のいずれよりも小さいバンドギャップを有してもよい。このことにより、第1のトランジスタ部811のソース電極805と、第1のトランジスタ部811のドレイン電極807との間を流れる電流を、上層チャネル層831に集中して流すことができ、リーク電流を低減することができる。
【0129】
また、第8実施形態では、第1のトランジスタ部811のゲート電極806の一部をなすフィールドプレート891は、ドレイン電極807の直上部に形成されていない。このことにより、ワイヤーボンドやダイボンドといった実装工程を格段に容易に行うことができる。
【0130】
(第9の実施形態)
図9は、本発明の第9実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【0131】
尚、第9実施形態においては、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照番号を付して詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同一の構成および作用効果についても説明を省略する。尚、図9において、912は、第2のトランジスタ部を示し、992は、第2のトランジスタ部912のフィールドプレートを示し、981は、第1のトランジスタ部912の第1の絶縁体層の上部絶縁体層を示し、982は、第1のトランジスタ部912の第1の絶縁体層の下部絶縁体層を示す。
【0132】
第9実施形態の電界効果トランジスタは、第1のトランジスタ部911のゲート電極906の一部をなすフィールドプレート991が、第1のトランジスタ部911のドレイン電極7の直上部を覆わないように形成されている。
【0133】
第9実施形態の電界効果トランジスタは、第1実施形態の電界効果トランジスタと比較した場合、ゲートフィールドプレート991の端角部が存在することに起因する電界集中が起こってしまう。
【0134】
しかし、図12に示すような従来の電界効果トランジスタと比較した場合、ゲート電極991の端角部への電界集中を緩和することができ、周囲部での素子の破壊を抑制することができる。
【0135】
また、トランジスタが環状に形成されている場合、第1のトランジスタ部911のドレイン電極7をトランジスタの上部から引き出すことができるため、ワイヤーボンドやダイボンドといった実装工程を容易に行うことができる。
【0136】
尚、第9実施形態は、穴開きゲートを示す実施形態である。第9実施形態のように、ゲート電極906の一部をなすフィールドプレート991は、ドレイン電極7の直上部に形成しなくても良い。このことにより、ワイヤーボンドやダイボンドといった実装工程を容易にすることができる。
【0137】
以下、従来例の電界効果トランジスタと、本発明の電界効果トランジスタとの物理量のシミュミレーション結果を示し、本発明の電界効果トランジスタの優位性について説明する。
【0138】
先ず、従来の電界効果トランジスタについてのシミュレーション結果について説明する。
【0139】
図12に示す従来の電界効果トランジスタについて、トランジスタ内部の電界強度分布を調べるシミュレーションを行った。
【0140】
シミュレーションの条件としては、バッファ層1202およびチャネル層1203を厚さ5μmのGaN層、バリア層1204を厚さ0.025μmのAl1−xGaN(x=0.20)層とした。
【0141】
また、ソース電極1205とゲート電極1206との間、および、ゲート電極1206とドレイン電極1207との間にSiNからなる絶縁体層1208を設けた。上記ゲート電極1206の基部から1μmのフィールドプレートを延在させ、そのフィールドプレートは、絶縁体層1208上に位置するようにした。また、ソース電極1205とゲート電極1206との間隔を1μmとし、ゲート電極1206とドレイン電極1207との間隔を6μmとした。
【0142】
また、チャネル層1203とバリア層1204との界面に生じる二次元電子ガス1220のシートキャリア濃度を1×1013cm−2とした。
【0143】
また、基板1201を導電性基板とし、基板1201とソース電極1205とを電気的に接続し、接地した。また、ゲート電極1206には−10Vの電圧印加し、ドレイン電極1207には+600Vの電圧を印加したこととした。
【0144】
図10Aは、従来の電界効果トランジスタについて行ったシミュレーション結果であり、トランジスタ内部のポテンシャル(電位)分布を示す図である。また、図10Bは、従来の電界効果トランジスタについて行ったシミュレーション結果であり、トランジスタ内部の電界強度分布である。尚、図10Aのポテンシャル分布の間隔が密な場所ほど、図10Bの電界強度は大きくなる。
【0145】
従来例では、図10Aに示すように、バリア層1204と接触しているドレイン電極1207側のゲート電極端角部(図12のA部)だけでなく、ドレイン電極1207との距離が最も短くなるフィールドプレート1291,1292の端角部(図12のB部)でも、電界集中が生じていることがわかる。
【0146】
図10の最も電界の集中しているB部における絶縁破壊強度を計算すると、B部の下側の絶縁膜において15.9MV/cmの電界集中が起こることがわかった。シミュレーションに用いた絶縁膜である一般的なSiNの絶縁破壊電界強度は、およそ9MV/cmであることから、図10のB部付近で、絶縁破壊が起こってしまうことがわかる。
【0147】
次に、本発明の電界効果トランジスタについてのシミュレーション結果について説明する。
【0148】
図1に示す第1実施形態の電界効果トランジスタについて、トランジスタ内部の電界強度分布を調べるシミュレーションを行った。
【0149】
シミュレーションの条件としては、バッファ層2およびチャネル層3を厚さ5μmのGaN層、バリア層4を厚さ0.025μmのAl1−xGaN(x=0.20)層とした。また、バリア層4およびドレイン電極7上部にSiNからなる第1の絶縁体層としての絶縁体層8を設けたこととした。また、絶縁体層8の厚みをドレイン電極7の直上部において1μmとした。また、ソース電極5とゲート電極6との間隔を1μmとし、ゲート電極7とドレイン電極7との間隔を6μmとした。
【0150】
また、チャネル層3とバリア層4との界面に生じる二次元電子ガス20のシートキャリア濃度を2×1012cm−2とした。
【0151】
また、基板1を導電性基板とし、基板1とソース電極6とを電気的に接続し、接地した。また、ゲート電極6には−10Vの電圧印加し、ドレイン電極7には+600Vの電圧を印加した。
【0152】
図11Aは、本発明の電界効果トランジスタについて行ったシミュレーション結果であり、電界効果トランジスタを構成する第1のトランジスタ部711に関するシミュレーション結果である。図11Aは、トランジスタ内部のポテンシャル(電位)分布である。
【0153】
また、図11Bは、本発明の電界効果トランジスタについて行ったシミュレーション結果であり、電界効果トランジスタを構成する第1のトランジスタ部711に関するシミュレーション結果である。図11Bは、トランジスタ内部の電界強度分布である。
【0154】
尚、図11Aのポテンシャル分布の間隔が密な場所ほど、図11Bの電界強度は大きくなる。
【0155】
第1実施形態では、図11Bに示すように、バリア層4と接触しているドレイン電極7側のゲート電極6の端角部(図11AのA部)と、ドレイン電極7のゲート電極6側のチャネル層3およびバリア層4付近(図11AのD部)で電界集中が起きているのがわかる。図11Bに示すように、この角部のドレイン電極7側において7.1MV/cmの電界集中が起こる。しかし、角部の周囲を構成するSiN層の絶縁破壊電界強度は、およそ9MV/cmであることから、この付近では、この条件においては絶縁破壊が起こらない。
【0156】
また、図11Bに示すように、ドレイン電極7のゲート電極6側のチャネル層3およびバリア層4付近(図11AのD部)において、4.9MV/cmの電界集中が起こることがわかった。チャネル層3であるGaNおよびバリア層4であるAlGaNの絶縁破壊電界強度は、およそ5MV/cmであることから、この付近では、この条件においては絶縁破壊が起こらない。
【0157】
以上の結果から、従来の電界効果トランジスタではフィールドプレートの端角部で絶縁破壊が生じ素子の破壊を起こしてしまう条件において、本発明の電界効果トランジスタでは絶縁破壊が起こることはなく、素子の破壊を防止することができることがわかる。
【0158】
尚、第1実施形態のシミュレーション結果と、略同様のシミュレーション結果を、第2実施形態乃至第9実施形態でも得ている。
【0159】
また、この発明が、第1乃至第9実施形態のうちの2以上の構成を有していても良いことは、言うまでもない。また、その場合に、その発明が、対応する2以上の作用効果を奏することができることも言うまでもない。
【符号の説明】
【0160】
1 第1のトランジスタ部の基板
2 第1のトランジスタ部のバッファ層
3,603 第1のトランジスタ部のチャネル層
4,604,804 第1のトランジスタ部のバリア層
5,705,805 第1のトランジスタ部のソース電極
6,206,306,406,506,606,706,806,906 第1のトランジスタ部のゲート電極
7,807 第1のトランジスタ部のドレイン電極
8,208,308,408,708 第1のトランジスタ部の第1の絶縁体層に相当する絶縁体層
11,211,311,411,511,611,711,811,911 第1のトランジスタ部
12,212,312,412,512,612,712,812,912 第2のトランジスタ部
20,620,820 第1のトランジスタ部の二次元電子ガス
51 第2のトランジスタ部の基板
52 第2のトランジスタ部のバッファ層
53 第2のトランジスタ部のチャネル層
54 第2のトランジスタ部のバリア層
55,755 第2のトランジスタ部のソース電極
56,456,756 第2のトランジスタ部のゲート電極
57 第2のトランジスタ部のドレイン電極
58,258,358,458,758 第2のトランジスタ部の第1の絶縁体層に相当する絶縁体層
70 第2のトランジスタ部の二次元電子ガス
90 第1のトランジスタ部のゲート電極本体
91,291,391,491,791,891,991 第1のトランジスタ部のフィールドプレート
92,392,492,792,892,992 第2のトランジスタ部のフィールドプレート
94 第2のトランジスタ部のゲート電極本体
318 III族窒化物半導体層構造の上面
319 第1のトランジスタ部のフィールドプレートの第1部分の第1の面
320 第1のトランジスタ部のフィールドプレートの第1部分
329 第1のトランジスタ部のフィールドプレートの第2部分の第2の面
330 第1のトランジスタ部のフィールドプレートの第2部分
331 第1のトランジスタ部のフィールドプレートの連結部
480,881,981 第1のトランジスタ部の第1の絶縁体層の上部絶縁体層
481,882,982 第1のトランジスタ部の第1の絶縁体層の下部絶縁体層
482 第2のトランジスタ部の第1の絶縁体層の上部絶縁体層
483 第2のトランジスタ部の第1の絶縁体層の下部絶縁体層
581,681 第1のトランジスタ部の上側絶縁体層
582,682 第1のトランジスタ部の下側絶縁体層
631,831 第1のトランジスタ部の上層チャネル層
632,832 第1のトランジスタ部の下側チャネル層
699 第1のトランジスタ部の凹部
790 第1のトランジスタ部のソース電極本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタ部と、
上記第1のトランジスタ部と略同一の第2のトランジスタ部と
を備え、
上記第1のトランジスタ部および上記第2のトランジスタ部は、夫々
ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造と、
上記III族窒化物半導体層構造上に間隔をおいて配置されたソース電極およびドレイン電極と、
上記III族窒化物半導体層構造上に上記ドレイン電極を被覆するように配置された第1の絶縁体層と、
上記ソース電極と上記ドレイン電極との間に、上記ソース電極および上記ドレイン電極に間隔をおいて位置するゲート電極本体と、上記第1の絶縁体層上に位置すると共に、上記ゲート電極本体から上記ドレイン電極に向けてひさし状に延びるフィールドプレートとを有するゲート電極と
を有し、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造と、上記第2のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記第1の絶縁体と、上記第2のトランジスタ部の上記第1の絶縁体とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極と、上記第2のトランジスタ部の上記ドレイン電極とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部と、第2のトランジスタ部とは、略面対称に配置され、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートと、上記第2のトランジスタ部のフィールドプレートとは、電気的に接続されていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートと、上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面とのその上面の法線方向の最大の距離は、1ミクロン以上であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートは、上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面から上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートまでの上記上面の法線方向の距離が、上記第1のトランジスタ部の上記ゲート電極から上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極に行くにしたがって連続的に大きくなる部分を有していることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートは、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面に略平行な状態で、その上面にその上面の法線方向に対向する第1の面を有する第1部分と、
上記法線方向において、上記第1部分の上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造側とは反対側に位置すると共に、上記上面に略平行な状態で上記上面に上記法線方向に対向する第2の面を有する第2部分と、
上記第1部分と上記第2部分とを連結する連結部と
を有し、
上記第1部分の延在方向の長さが、0.5μm以上かつ3μm以下であり、
上記第1の面と上記上面との上記法線方向の距離が、10μm以上かつ50μm以下であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部の上記第1の絶縁体層は、誘電率が互いに異なる複数の層を有していることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部の上記ゲート電極と、上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面との間に第2の絶縁体層を備えることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上記上面は、凹部を有し、
上記第1のトランジスタ部の上記ゲート電極は、上記凹部に上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造の上面の法線方向に重なる位置に存在していることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造は、
下層チャネル層と、
上記下層チャネル層の上面に配置された上層チャネル層と、
上記上層チャネル層の上面に配置されたバリア層と
を有し、
上記上層チャネル層は、上記バリア層および上記下層チャネル層のいずれよりも小さいバンドギャップを有していることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1のトランジスタ部および上記第2のトランジスタ部は、夫々導電性基板を備え
上記第1のトランジスタ部の上記導電性基板と、上記第2のトランジスタ部の上記導電性基板とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造は、上記第1のトランジスタ部の上記導電性基板上に配置されていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項10】
第1のトランジスタ部と、
上記第1のトランジスタと略同一の第2のトランジスタ部と
を備え、
上記第1のトランジスタ部および上記第2のトランジスタ部は、夫々
ヘテロ接合を含むIII族窒化物半導体層構造と、
上記III族窒化物半導体層構造上に間隔をおいて配置されたゲート電極およびドレイン電極と、
上記III族窒化物半導体層構造上に、上記ドレイン電極および上記ゲート電極を被覆するように配置された第1の絶縁体層と、
上記ゲート電極の上記ドレイン電極側とは反対側に、上記ゲート電極に間隔をおいて位置するソース電極本体と、上記第1の絶縁体層上に位置すると共に、上記ソース電極本体から上記ドレイン電極に向けてひさし状に延びるフィールドプレートとを有するソース電極と
を有し、
上記第1のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造と、上記第2のトランジスタ部の上記III族窒化物半導体層構造とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記第1の絶縁体と、上記第2のトランジスタ部の上記第1の絶縁体とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極と、上記第2のトランジスタ部の上記ドレイン電極とは、一体化されており、
上記第1のトランジスタ部と、第2のトランジスタ部とは、略面対称に配置され、
上記第1のトランジスタ部の上記フィールドプレートと、上記第2のトランジスタ部のフィールドプレートとは、電気的に接続されていることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の電界効果トランジスタにおいて、
上記第1トランジスタ部の上記フィールドプレートおよび上記第2のトランジスタ部の上記フィールドプレートは、貫通穴を有し、上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極および上記第2のトランジスタ部の上記ドレイン電極は、上記第1のトランジスタ部の上記ドレイン電極の上面の法線方向に、上記貫通穴に重なっていることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−142182(P2011−142182A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1447(P2010−1447)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】