説明

顕微鏡装置、外観検査装置、半導体外観検査装置及び顕微鏡装置における試料照明方法

【課題】 本発明は観察対象である試料を照明する照明手段と、この試料上のパターンの特定の空間周波数成分を除去する空間フィルタとを簡単な構成で実現する顕微鏡装置及びその照明方法を提供する。
【解決手段】 顕微鏡装置の光源40を、対物レンズ3の瞳面8又はこの瞳面と共役な平面23上に設け、これらの面上にこの光源40を支持するための支持手段40を空間フィルタとして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡により観察される試料の照明に関し、特に半導体ウエハ等の試料上に形成されたパターンの画像を捉え、画像信号を処理して欠陥部分を検出する外観検査装置に使用される顕微鏡の照明に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、半導体メモリ用フォトマスク、液晶表示パネルなどにおいては、所定のパターンが繰返し形成される。そこで、光学顕微鏡を使用してパターンの光学像を捉え、隣接するパターン同士を比較することによりパターンの欠陥を検出することが行われている(例えば、下記特許文献1)。比較の結果、2つのパターン間に差異がなければ欠陥のないパターンであり、差異があればいずれか一方のパターンに欠陥が存在すると判定する。また、以下の説明では、半導体ウエハ上に形成されたパターンの欠陥を検査する半導体ウエハ用外観検査装置を例として説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体メモリ用フォトマスクや液晶表示パネルなどの欠陥を検査する外観検査装置にも適用可能である。
【0003】
図1は、半導体ウエハ用外観検査装置の概略構成を示す図である。半導体ウエハ用外観検査装置は、図1に示すように、半導体ウエハ2を保持するステージ1と、半導体ウエハ2の表面の光学像を投影する対物レンズ3と、投影された半導体ウエハ2の表面の光学像を電気的な画像信号に変換する撮像装置(イメージセンサ)4と、対物レンズ3により投影された半導体ウエハ2の像をさらにイメージセンサ4上に投影するレンズ21、22と、イメージセンサ4から出力されたアナログ画像信号を処理して多値のデジタル画像データに変換する画像信号処理回路5と、デジタル画像データを処理してパターンの同一部分を比較し、欠陥を検出するデジタル画像データ処理回路6と、データ処理のために画像データを記憶する画像データメモリ7とを有する。また、半導体ウエハ2の表面を照明する照明光学系は、光源11と、照明用レンズ12、13と、対物レンズ3の投影光路中に設けられた半透鏡(ビームスプリッタ)15とを有する。
【0004】
撮像装置4としては、2次元CCD素子を使用したTVカメラなどを使用することも可能であるが、高精細の画像信号を得るためにはTDI等の1次元ラインセンサを使用して、ステージ1を半導体ウエハ2に対して相対移動させ(走査して)、ステージ1を駆動する駆動パルス信号に同期して、画像信号処理回路5がラインセンサ4の信号を取り込んで画像を取得することが多い。
【0005】
半導体ウエハ用外観検査装置の照明光学系について説明する。光源11からの照明光は、レンズ12、13を通して導かれ投影経路中に設けられた半透鏡15により対物レンズ3に向かって反射し、対物レンズ3を通って試料(ウエハ)2の表面を照明する。光源11の像は対物レンズ3の瞳位置8で示した位置に投影され、ウエハ2の表面では光量むらのない一様な照明になる。
【0006】
次に、外観検査装置の投影光学系(撮像光学系)について説明する。半導体ウエハ用外観検査装置には、対物レンズ3によって投影された試料2の像を、イメージセンサ4上に所望の倍率で投影するための撮像光学系であるレンズ21及び22が設けられている。ここで、撮像光学系には対物レンズ3の瞳面8と共役な面が存在し(例えば図1に示す概念図では、レンズ22の後ろ側焦点位置に対物レンズ3の瞳面8と共役な面23が生じる)、この面23上には観察対象である試料2の像の周波数成分強度分布像(フーリエ変換像)が生じる。
したがって、この瞳面8や瞳面8と共役な面23に空間フィルタ(空間周波数フィルタ)を設けることにより、例えば試料2の上に形成された周期性パターンの周波数成分をマスクしてそれ以外の部分、すなわち欠陥(短絡)部分から生じる回折光の相対信号強度を強めることが可能である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−149169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の構成によると、光源を対物レンズ3に導くための光学系(即ち照明用レンズ12、13及び半透鏡15)が必要になり、半導体ウエハ用外観検査装置に使用される顕微鏡の構成を複雑にしていた。また、試料上に形成された周期性パターンの周期性成分の除去を行うためには、上記の空間フィルタを設けまたは空間フィルタを出し入れ可能とする挿入機構を設ける必要があり、さらに構成を複雑としていた。
【0009】
また、従来の構成によると、光源11による照明光はウエハ2表面上で一様な照明光を提供する。したがって、例えば試料上の周期性パターンにより生じる低次回折光を空間フィルタを用いてカットするために、照明光の試料への入射角度を変更して回折光の対物レンズへの入射位置を変更したり、あるいは、試料上のパターンの方向性に合わせて照明光の方位角を変更するなどといった、照明光の制御ができなかった。
【0010】
そこで、本発明は観察すべき試料を照明する照明手段と、この試料上のパターンの特定の空間周波数成分を除去する空間フィルタとを簡単な構成で実現する顕微鏡装置及びその照明方法を提供することを目的とする。
あわせて、照明光の試料への入射角度や方位角を変更可能な照明手段を簡単な構成で実現する顕微鏡装置及びその照明方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、光源を対物レンズの瞳面又はこの瞳面と共役な平面上に設け、これらの面上にこの光源を支持するための支持手段を空間フィルタ(空間周波数フィルタ)として使用する。
【0012】
すなわち、本発明の第1形態に係る顕微鏡装置は、対物レンズの瞳面又はこの瞳面と共役な平面上に設けられ対物レンズを介して試料を照明する光源と、この光源を支持するとともに対物レンズにより瞳面又はこの瞳面と共役な平面に投影される試料の像の所定部分を遮る支持手段とを備える。
【0013】
また、本発明の第2形態に係る顕微鏡装置における試料照明方法は、対物レンズの瞳面又はこの瞳面と共役になる平面上に設けられた光源により、対物レンズを介して試料を照明するとともに、光源を支持する支持手段により対物レンズによって瞳面又はこの瞳面と共役になる平面に投影される試料の像の所定部分を遮る。
【0014】
前記の支持手段は、対物レンズの瞳面又はこの瞳面と共役な平面上に生じる試料のフーリエ変換像の所定部分を遮断することとしてよい。また、支持手段は、試料の像、試料のフーリエ変換像の所定部分を通過させるための開口部又は透過部を備えてもよい。
さらに、前記の光源は、支持手段の複数箇所に設けることとしてよく、支持手段の複数箇所に半導体発光素子アレイとして設けられることとしてよい。
【0015】
上記本発明の第1形態に係る顕微鏡装置及び第2形態に係る顕微鏡装置の照明方法は、試料表面に形成されたパターンを観察して試料の外観検査を行う外観検査装置に使用することとしてよく、半導体ウエハ、フォトマスク、液晶パネル等の表面に形成されたパターンを観察してこれら半導体ウエハ等の外観検査を行う半導体外観検査装置に使用してよい。
【発明の効果】
【0016】
光源を対物レンズの瞳面又はこの瞳面と共役な平面上に設け、これらの面上にこの光源を支持するための支持手段を空間フィルタとして使用することにより、光源を対物レンズ3に導くための光学系が不要になり、かつ上記の空間フィルタをまたは空間フィルタを出し入れ可能とする挿入機構を省略することができる。これにより顕微鏡の簡単な構成が実現される。特に、対物レンズ3の投影光路中に光源を設けることが可能となるため半透鏡15の設置を不要とする利点を有する。
さらに、光源を支持手段の複数箇所に設けることにより、照明光の試料への入射角度や方位角を簡単な構成で変更することが可能となる。また光源として半導体発光素子を使用することにより光源を長寿命とするとともに光量調整を容易にする。
また、支持手段に、試料の像や試料のフーリエ変換像の所定部分を通過させるための開口部又は透過部を設け、対物レンズの瞳面又はこの瞳面と共役になる平面に投影される試料上のパターンの空間周波数成分を適度に通過させることにより、実体顕微鏡を簡便に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図2は、本発明の第1実施例に係る半導体ウエハ用外観検査装置の光学系部分を示す図である。図1に示した他の部分はここでは省略している。また、以下の説明では半導体ウエハ上に形成されたパターンの欠陥を検査する半導体ウエハ用外観検査装置を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体メモリ用フォトマスクや、液晶表示パネルなどの半導体装置を検査する外観検査装置にも広く適用可能である。
【0018】
図2に示すように、本実施例の半導体ウエハ用欠陥検査装置は、半導体ウエハ2を保持するステージ1と半導体ウエハ2の表面の光学像を投影する対物レンズ3と、対物レンズ3を介して試料を照明する光源40と、光源40を対物レンズ3の瞳面8上に支持する支持手段30と、投影された半導体ウエハ2の表面の光学像を電気的な画像信号に変換するイメージセンサ4と、対物レンズ3を通過する半導体ウエハ2からの反射光をイメージセンサ4へ投影する投影レンズ9とを有する。なお、支持手段30は、対物レンズ3や投影レンズ9を保持するための鏡筒(図示せず)に固定されている。
【0019】
イメージセンサ4にはTDI等の1次元ラインセンサを使用することが好適である。そしてステージ1を半導体ウエハ2に対して相対移動させ(走査して)、ステージ1を駆動するステージ制御部66からの駆動パルス信号に同期して、画像信号処理回路5がラインセンサ4の信号を取り込んで画像を取得する。2次元CCD素子を使用したTVカメラなどを使用することも可能である。
【0020】
図3(A)は、支持手段30及び光源40を下方からz方向に見た底面図である。支持手段30は、対物レンズ3や投影レンズ9を保持するための鏡筒(図示せず)に固定される環状の縁部材31と、光源40を支持するために所定方向(x方向)に延在するビーム部材32とからなる。そして、環状の縁部材31内のビーム部材32以外の領域(図3(A)では縁部材31及びビーム部材32によって囲まれた領域)は、対物レンズ3によって瞳面8に投影される半導体ウエハ2からの反射光を遮らないように中抜きされ、この領域に遮蔽物を設けないように構成されているか、あるいはこの領域には透過性の高い部材で埋められている。
【0021】
図3(B)は、対物レンズ3の視野3’に捉えられた半導体ウエハ2上のパターンを示す図であり、図3(C)は、このときに対物レンズ3の瞳面8に投影された投影像を示す図である。図3(B)に示すような所定方向(図ではx方向)に一定の空間周波数成分を有する繰り返しパターンを観測する場合には、図3(C)に示すように、対物レンズ3の瞳面8に、繰り返しパターンに含まれる空間周波数に対応するスポット部51を有する周波数成分強度分布像を表すフーリエ変換像が生じる。
支持手段30は、対物レンズ3の瞳面8に投影されたフーリエ変換像のうち、繰り返しパターンに含まれる空間周波数に対応するスポット部51を生じる部分の投影光路を、そのビーム部材32で遮ることによって、観察対象の投影像から所定の空間周波数成分を除去する空間フィルタ(空間周波数フィルタ)としての効果を奏する。
【0022】
光源40は、図4(A)に示すようにビーム部材32上に位置を変えて複数設けてもよく、また対物レンズ3の光軸位置ではなく光軸から離れた位置に設けてもよい。光源40を対物レンズ3の光源から離れた位置に設けることにより、従来の照明装置のように垂直に半導体ウエハ2を照明するのではなく、入射角度を所望の角度に設定して斜めに半導体ウエハ2を照明することが可能となる。これにより、試料から生じた低次回折光に対応して現れる周波数強度信号の瞳面8上の位置が所望の位置となるようにを設定することが可能となる。
例えば、低次回折光に対応して現れる周波数強度信号の瞳面8上の位置を、この周波数強度信号を遮るビーム部材32が存在する位置となるようにして、低次回折光に含まれる信号強度を弱め、欠陥(短絡)部分から生じる回折光の信号強度を相対的に強めることができる。
また、光源40をビーム部材32上に位置を変えて複数設けることにより、これら複数の光源40を選択して点灯させ、対物レンズ3の視野に捉えられた半導体ウエハ2上のパターンに応じて入射角度を順次変更することとしてよい。
【0023】
光源40には発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)などの半導体発光素子が好適に使用されるが、その他の発光素子を使用してもよい。また、光源40をビーム部材32上に複数設ける場合には、半導体発光素子アレイを使用してよい。
【0024】
図5(A)〜(E)に、支持手段30及び光源40の様々な変更例を示す。
図5(A)に示す支持手段30のビーム部材32は、x方向及びy方向に空間周波数成分を有する繰り返しパターンによって瞳面8に生じる周波数成分強度分布像の周波数成分を除去する効果を奏する空間フィルタとしての機能を有する。なお、図中の白い円部分は全て光源40を示すが、図面では簡単のためその1つにのみ参照符号40を付しその他は省略する。以下の図5(B)〜(E)及び図7(A)及び(B)についても同様である。
【0025】
図5(B)に示す支持手段30のビーム部材32は、x軸方向と45°及び135°方向の方位角に空間周波数成分を有する繰り返しパターンによって瞳面8に生じる周波数成分強度分布像の周波数成分を除去する効果を奏する空間フィルタとしての機能を有する。
図5(C)に示すビーム部材は、図5(A)及び図5(B)に示すビーム部材32を組み合わせた態様であり、x軸方向及びy軸方向、ならびにx軸方向と45°及び135°方向の方位角に空間周波数成分を有する繰り返しパターンによって瞳面8に生じる周波数成分強度分布像の周波数成分を除去する効果を奏する空間フィルタとしての機能を有する。
【0026】
支持手段30は、図5(D)に示すように、ビーム部材32、33を格子状に設けることとしてもよい。
観察パターンが繰り返しパターンであるとき、瞳面8上には、瞳面8と対物レンズ3の光軸との交点を通り、かつ観察パターンの繰り返し方向に延びる直線上に沿って、比較的大きな径を有するスポット部分が並んで生じる。したがって、瞳面8と対物レンズ3の光軸との交点を通り、かつ観察パターンの繰り返し方向に延びるビーム部材32を比較的幅広に形成し、そうでないビーム部材33の幅を比較的狭く形成する。これにより必要以上に投影像を遮断することを防止する。また、比較的幅が狭いビーム部材33には光源40を設けないこととしてよい。なお、図5(E)は、図5(C)に示す支持手段30に、比較的幅が狭いビーム部材33を設け、ビーム部材を格子状に設けた形態である。
【0027】
さらに、ビーム部材33を、瞳面8において面内移動させる機構を備えることにより、このビーム部材33を、半導体ウエハ2上に形成された繰り返しパターンに応じて、このパターンからの反射回折光を最も効率よくフィルタリングすることができる最適位置に位置決め制御することとしてもよい。図6(A)に、ビーム部材33を瞳面8において面内移動させる機構を備える支持手段の上面図を示し、図6(B)に、図6(A)のA−A’断面図を示す。
【0028】
図示するように、支持手段30は、図のx方向に延在する複数のビーム部材33xとy方向に延在する複数のビーム部材33yを備えている。複数のビーム部材33xは、ビーム部材33xとリンク部材34xとを貫通して回転可能に連結する連結部材35xによって連結され、平行リンク機構を構成する。同様に複数のビーム部材33y、リンク部材34y及び連結部材35yも平行リンク機構を構成する。
リンク部材34xと支持手段の突起部36xもまた連結部材35xに貫通されて回転可能に連結されており、これによりリンク部材34xは、突起部36xとの連結箇所を支点として回転可能に支持される。同様にリンク部材34yは、突起部36yとの連結箇所を支点として回転可能に支持される。
【0029】
各ビーム部材33x、リンク部材34x及び連結部材35xからなる平行リンク機構は、光源制御部65からの制御信号に従う各駆動部37xの動作によって瞳面8を面内移動し、これによって光源制御部65は、複数のビーム部材33xのy方向位置及び相互間の間隔を変更することが可能である。同様に光源制御部65は駆動部37yを動作させることにより、複数のビーム部材33yのx方向位置及び相互間の間隔を変更することが可能である。このようにして、例えば光源制御部65は、半導体ウエハ2上に形成された繰り返しパターンの空間周波数に応じて、この空間周波数に対応して瞳面8に現れるスポット光の間隔と複数のビーム部材33x、33yの位置及び相互間の間隔(ピッチ)とを併せ、スポット光をカットするようにビーム部材33x、33yの位置を制御することが可能である。
【0030】
図5(A)〜(E)及び図6(A)に示すように、ビーム部材32を瞳面8上の異なる複数の方位に延在させ、かかるビーム部材上に複数の光源40を設けることにより、これら複数の光源40を選択して点灯させ異なる方位角の照明光で半導体ウエハ2を照明することが可能となる。これにより例えば、半導体ウエハ2上に形成されるパターンの方向に沿って照明光を与えることにより、パターンのエッジ部分で散乱する反射光を弱め、パターン間に存在する欠陥部分から生じる散乱光の信号強度を相対的に強めることが可能となる。
【0031】
さらに、図4(A)及び(B)を参照して上述した照明光の入射角度の変更と同様に、これら複数の光源40を選択して点灯させ、対物レンズ3の視野に捉えられた半導体ウエハ2上のパターンに応じて照明光の方位角を順次変更することとしてよい。
このように対物レンズ3の視野内にある半導体2表面のパターンに応じて、光源40を選択して点灯させるために、本実施例の外観検査装置は、図2に示すようにコンピュータ等により実現可能な計算機61と、半導体ウエハ2上の各位置に形成されたパターンの種類を示すパターンデータを入力する入出力部63と、入出力部63から入力されたパターンデータを記憶する記憶部64と、ステージ制御部66から出力されるステージ1の位置情報に基づいて、ステージ1に載置される半導体ウエハ2上の各位置に形成されたパターンの種類を記憶部64に記憶されるパターンデータから読み出し、この読み出されたパターンの種類に応じて複数の光源40を選択して点灯させる光源制御部65を備える。
【0032】
ステージ1上に載置される半導体ウエハ2の位置は既知であるため、光源制御部65はステージ制御部66から出力されるステージ1の位置情報に基づいて、対物レンズ3の視野が、ステージ1に載置される半導体ウエハ2上のいずれの位置にあるかを検知することが可能である。そして光源制御部65は、検知した半導体ウエハ2上の位置に形成されたパターンの種類を、記憶部64に記憶されるパターンデータから読み出し、このパターンデータにこの読み出されたパターン種類に応じて光源40を選択して点灯させる。
【0033】
例えば、半導体ウエハ2上に位置に形成されたパターンの方向性に関する情報がパターンデータに含まれている場合には、光源制御部65は対物レンズ3の視野内にあるパターンの方向性に関する情報を記憶部64から読み出し、その方向に沿う照明光を与える光源40を選択して点灯させる。
また例えば、半導体ウエハ2上に位置に形成されたパターンのピッチ(空間周波数)に関する情報がパターンデータに含まれている場合には、光源制御部65は対物レンズ3の視野内にあるパターンのピッチに関する情報を記憶部64から読み出し、かかるピッチと、対物レンズ3及び半導体ウエハ2間の距離(既知)と、光源40の発光波長40(既知)とに基づき、そのパターンから生じる低次回折光の反射角度を求める。そして、この低次回折光に対応する周波数成分強度信号が瞳面8上の所望の位置に生じるような入射角度の照明光を与える光源40を選択して点灯させる。
【0034】
光源制御部65は、ステージ制御部66から出力される逐次出力されるステージ1の位置情報に基づいて、対物レンズ3の視野内にある半導体ウエハ2のパターン種類を記憶部64から読み出し、このパターン種類に応じて点灯させる光源40を、外観検査の対物レンズ3走査中に動的かつ自由に変更することとしてよい。
【0035】
またパターンデータに半導体ウエハ2上の各領域に形成されたパターンの各空間周波数を含めておき、光源制御部65は、ステージ制御部66から出力される逐次出力されるステージ1の位置情報に基づいて、対物レンズ3の視野内にある半導体ウエハ2のパターンの空間周波数を記憶部64から読み出し、この空間周波数に応じて図6(A)及び(B)に示したビーム部材33x及び33yの平行リンク機構を移動させて、ビーム部材33x相互間及び33y相互間の間隔を動的かつ自由に変更することとしてよい。
【0036】
図7(A)及び(B)は、支持手段30及び光源40のその他の変更例を示す。図7(A)に示す支持手段30では縁部材31に光源40が設けられており、これにより光源40は、対物レンズ3の光軸周辺を除く周辺の範囲から斜めに半導体ウエハ2を照明する照明光を与える。
このように各光源40を配置すると、各光源40による各照明光が半導体ウエハ2で反射した各直接反射光が、瞳面8上において対物レンズ3の光軸に対してそれぞれの光源40と回転対称の位置に戻ってくることになり、この位置に存在する縁部42によって遮断されることになる。このように半導体ウエハ2による各直接反射光を遮断することにより、暗視野照明を実現することができる。
【0037】
図7(B)に示す支持手段30では、縁部材31に瞳面8に生じた半導体ウエハ2の像を部分的に通過させる開口部34を備える。図中の梨子地で示された円部分は全てこのような開口部34を示すが、図面では簡単のためその1つにのみ参照符号34を付しその他は省略する。このような開口部34を設けて直接反射光を部分的に通過させることにより、イメージセンサ4上に直接反射光により生じる像を投影する実体顕微鏡装置を実現することが可能となる。
またこのような開口部34に透過性の部材を埋めこみ透過部としてもよい。
【0038】
図8(A)及び図9(A)〜(C)は、支持手段30並びに光源40、43及び44のさらにその他の実施例を示す。図8(A)に示す光源43及び44は偏向された発光光を供給する光源素子であり、光源43は環状縁部材31の径方向の偏向光を発光する径方向偏向光源、光源44は環状縁部材31の周方向の偏向光を発光する周方向偏向光源である。このような偏向照明光を与える光源としては、偏向方向を有するレーザーダイオードを使用することとしてよく、無偏向照明光を与える光源に偏向フィルターを設けることにより実現してもよい。
なお、図8(A)において光源43及び光源44に示される矢印は偏向方向を示し、環状縁部材31の径方向の矢印が付された白円は全て径方向偏向光源43を示し、環状縁部材31の周方向の矢印が付された白円は全て周方向偏向光源44を示すが、図面の簡単のため各1つずつのみに参照符号を付し他を省略する。
【0039】
光源制御部65は、対物レンズ3の視野内にある半導体ウエハ2上に形成されたパターンの形状種類に応じて、径方向偏向光源43のみを選択して発光させ(図8(B)参照)、あるいは周方向偏向光源44のみを選択して発光させて(図8(C)参照)、半導体ウエハ2を照明する照明光の変更方向を切り替える。例えば、対物レンズ3の視野内にある半導体ウエハ2上に点状パターンが形成されている場合には、光源制御部65は径方向偏向光源43のみを選択して発光させ、線状パターンが形成されている場合には周方向偏向光源44のみを選択して発光させることとする。パターンの形状種類に応じて照明光の偏向方向を変更することにより、特定形状のパターンに対する撮像解像度を向上させることが可能である。
【0040】
さらに、パターンデータに半導体ウエハ2上の各領域に形成されたパターンの形状種類に関する情報を含めておき、光源制御部65は、ステージ制御部66から出力される逐次出力されるステージ1の位置情報に基づいて、対物レンズ3の視野内にある半導体ウエハ2のパターンの形状種類を記憶部64から読み出し、この種類に応じて径方向偏向光源43又は周方向偏向光源44を選択して発光させることとしてよい。
【0041】
また、このような径方向偏向光源43及び周方向偏向光源44と無偏向光源40とを併せて備えることとしてもよい。このように、偏向光源43、44と、無偏向光源40を併用することにより、光源光量を増加させるとともに特定形状のパターン部分を撮像した画像信号の撮像解像度を強めつつ、撮像パターンの他の部分(背景画像)もある程度取り込むことが可能となる。
図9(A)は、径方向偏向光源43及び無偏向光源40を併せた配置例を、図9(A)は、周方向偏向光源44及び無偏向光源40を併せた配置例を、図8(C)は、径方向偏向光源43、周方向偏向光源44及び無偏向光源40を併せた配置例を示す。
【0042】
図10は、本発明の第2実施例に係る半導体ウエハ用外観検査装置の光学系部分を示す図である。本実施例の半導体ウエハ用外観検査装置は、対物レンズ3により投影された半導体ウエハ2の像をさらにイメージセンサ4上に投影するためのレンズ21、22(リレーレンズ)を備えている。
そして、レンズ21の後ろ側焦点位置には、対物レンズ3の瞳面8と共役となる面23(以下、共役面と記す)が生ずる。この共役面23上に設けられた光源は対物レンズ3の瞳面8上にその像が結像され、また共役面23上には対物レンズ3の瞳面8上に生じる検査パターンのフーリエ変換像と同じ像が生じる。
したがって、本実施例に係る半導体ウエハ用外観検査装置では、対物レンズ3の投影光路中にある対物レンズ3の瞳面8と共役となる面23に、図3〜図9を参照して説明した上記の光源40、43、44及び支持手段30を設けることにより、本発明の第1実施例に係る半導体ウエハ用外観検査装置と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、顕微鏡装置や、半導体ウエハ、半導体メモリ用フォトマスクや、液晶表示パネルなどの半導体装置を検査する外観検査装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来の半導体ウエハ用欠陥検査装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る半導体ウエハ用外観検査装置の光学系部分を示す図である。
【図3】(A)は光源及び支持手段の底面図であり、(B)は対物レンズの視野内に捉えられた半導体ウエハ上のパターンを示す図であり、(C)は対物レンズの瞳面に生じるフーリエ変換像を示す図である。
【図4】(A)及び(B)はそれぞれ光源及び支持手段の変形例を示す図である。
【図5】(A)〜(E)はそれぞれ光源及び支持手段の変形例を示す図である。
【図6】(A)はビーム部材を移動可能に構成する支持手段の上面図であり、(B)はそのA−A’側面図である。
【図7】(A)及び(B)はそれぞれ光源及び支持手段の変形例を示す図である。
【図8】(A)は、偏向された照明光を供給する光源及び支持手段の底面図であり、(B)は(A)に示す光源のうち径方向に偏向された照明光の光源のみを点灯させた場合を示す図であり、(C)は(A)に示す光源のうち周方向に偏向された照明光の光源のみを点灯させた場合を示す図である。
【図9】(A)は径方向に偏向された照明光及び無偏向照明を供給する光源光源及び支持手段の底面図であり、(B)は周方向に偏向された照明光及び無偏向照明を供給する光源及び支持手段の底面図であり、(C)は周方向及び径方向に偏向された照明光並びに無偏向照明を供給する光源光源及び支持手段の底面図である。
【図10】本発明の第2実施例に係る半導体ウエハ用外観検査装置の光学系部分を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ステージ
2 ウエハ
3 対物レンズ
4 イメージセンサ
8 対物レンズの瞳面
30 支持手段
40 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズの瞳面又は該瞳面と共役になる平面上に設けられ該対物レンズを介して試料を照明する光源と、該光源を支持するとともに前記対物レンズにより前記瞳面又は該瞳面と共役になる平面に投影される前記試料の像の所定部分を遮る支持手段と、を備えることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記支持手段は、前記試料のフーリエ変換像の所定部分を遮断することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記光源を、前記支持手段の複数箇所に設けることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記支持手段は、前記試料の像の所定部分を通過させる開口部又は透過部を備えることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記光源は、前記支持手段の複数箇所に設けられる半導体発光素子アレイであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の顕微鏡装置により、前記試料表面に形成されたパターンを観察して該パターンの外観検査を行うことを特徴とする外観検査装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の顕微鏡装置により、半導体ウエハ表面に形成されたパターンを観察して該パターンの外観検査を行うことを特徴とする半導体外観検査装置。
【請求項8】
顕微鏡の対物レンズの瞳面又は該瞳面と共役になる平面上に設けられた光源により、前記対物レンズを介して試料を照明するとともに、前記光源を支持する支持手段により前記対物レンズによって前記瞳面又は該瞳面と共役になる平面に投影される前記試料の像の所定部分を遮ることを特徴とする顕微鏡装置における試料照明方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−71353(P2006−71353A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252664(P2004−252664)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】