説明

MEMS素子及びMEMS素子の製造方法

【課題】素子面積を減少させることができるとともに、製造コストを低減することができるMEMS素子を提供する。
【解決手段】半導体基板20と、半導体基板20の主面20aに、半導体基板20と相対変位可能に設けられた可動部33と、半導体基板20の主面20a上に、可動部33を覆うように設けられた蓋部50と、半導体基板20の主面20aであって、かつ、蓋部50の外側の領域に設けられた第1の電極端子41と、蓋部50の半導体基板20と対向する面に形成されており、第1の電極端子41と可動部33とを電気的に接続する第1の配線51とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS素子及びMEMS素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、加速度センサ、振動子、メカニカルフィルタ等の機能を有するMEMS素子が開発されている。
【0003】
MEMS素子として、例えばSOI基板よりなる半導体基板に形成されているものがある。SOI基板は、支持基板上に絶縁層が形成されており、絶縁層上に導体層(活性層)が形成されている。支持基板は、例えばSiより形成され、絶縁層は、例えばSiOより形成されている。さらに、絶縁層上に形成されている導体層は、例えば導電性シリコンより形成されている。
【0004】
このようなSOI基板よりなる半導体基板に形成されているMEMS素子として、半導体基板と、台座支持部と、梁と、可動部と、端子部と、配線部と、台座部と、キャップとを備えたMEMS素子の例が開示されている(例えば特許文献1参照)。台座支持部は、半導体基板に固定され、所定領域を囲むように形成されている。梁は、半導体基板に接続され、所定領域内に形成されている。可動部は、梁に接続され、かつ、所定領域内の空間に懸架されている。端子部は、台座支持部に囲まれた所定領域の外側に形成されている。配線部は、可動部と端子部とを台座支持部を貫通して接続する。台座部は、台座支持部及び配線部上に形成され、所定領域を囲むように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−046078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記したMEMS素子には、以下のような問題がある。
【0007】
MEMS素子には、アルミニウム(Al)とポリシリコン(Si)よりなり、端子部と可動部とを電気的に接続する配線が形成される。配線は、例えば可動部が接続されている梁等を含む本体素子に形成されることがある。
【0008】
ところが、例えば加速度センサの高機能化に伴って、可動部の本数が増加する等、可動部のパターンが複雑化することがある。従って、端子部から一の可動部との間に、例えば他の可動部が形成されていることがある。このような配置において、本体素子に配線を形成するときは、端子部と一の可動部とを接続する配線を、他の可動部を避けるように配置する必要があるため、配線パターンが複雑になるとともに、MEMS素子の面積が大きくなるという問題がある。
【0009】
他の可動部を避けるように、容易に配線を配置するためには、蓋部(キャップ)に開口部を形成し、開口部に可動部と電気的に接続された貫通電極を設けるとともに、蓋部の上面に貫通電極と端子部とを電気的に接続するための配線を形成することが考えられる。しかし、蓋部に開口部を形成し、開口部に貫通電極を設ける工程を有するため、製造コストが増大するという問題がある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、素子面積を減少させることができるとともに、製造コストを低減することができるMEMS素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明に係るMEMS素子は、半導体基板と、前記半導体基板の主面に、前記半導体基板に対して相対変位可能に設けられた可動部と、前記半導体基板の前記主面上に、前記可動部を覆うように設けられた蓋部と、前記半導体基板の前記主面であって、前記蓋部の外側の領域に設けられた第1の電極端子と、前記蓋部の前記半導体基板と対向する面に形成されており、前記第1の電極端子と前記可動部とを電気的に接続する第1の配線とを有する。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に係るMEMS素子において、前記蓋部は、前記半導体基板と対向する面に凹部が形成されており、前記第1の配線は、前記凹部内に形成されている。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に係るMEMS素子において、前記凹部は、開口径が深さ方向に減少するものである。
【0015】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかに係るMEMS素子において、前記蓋部は、熱圧着接合、半田接合又は共晶結合により前記半導体基板に接合されたものである。
【0016】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかに係るMEMS素子において、前記半導体基板の前記主面に設けられており、前記半導体基板に固定された固定部と、前記半導体基板の前記主面であって、前記蓋部の外側の領域に設けられた第2の電極端子と、前記蓋部の前記半導体基板と対向する面に形成されており、前記第2の電極端子と前記固定部とを電気的に接続する第2の配線とを有し、前記蓋部は、前記半導体基板の前記主面上に、前記可動部と前記固定部とを覆うように設けられている。
【0017】
第6の発明に係るMEMS素子の製造方法は、半導体基板の主面に、前記半導体基板に対して相対変位可能な可動部を形成する可動部形成工程と、前記半導体基板の前記主面であって、蓋部が設けられる領域の外側に第1の電極端子を形成する電極端子形成工程と、前記蓋部の一の面に前記第1の電極端子と前記可動部とを電気的に接続するための第1の配線を形成する配線形成工程と、前記第1の配線が形成された前記蓋部を、前記蓋部の前記一の面が前記半導体基板の前記主面と対向した状態で前記蓋部が前記可動部を覆うとともに、前記第1の電極端子と前記可動部とが前記第1の配線を介して電気的に接続されるように、前記半導体基板に接合する接合工程とを有する。
【0018】
第7の発明は、第6の発明に係るMEMS素子の製造方法において、前記蓋部の前記一の面に凹部を形成する凹部形成工程を有し、前記配線形成工程は、前記凹部内に前記第1の配線を形成するものである。
【0019】
第8の発明は、第7の発明に係るMEMS素子の製造方法において、前記凹部形成工程は、シリコン基板よりなる前記蓋部の前記一の面をアルカリ性のエッチング液によりエッチングすることによって、開口径が深さ方向に減少するように、前記凹部を形成するものである。
【0020】
第9の発明は、第6の発明から第8の発明のいずれかに係るMEMS素子の製造方法において、前記接合工程は、前記蓋部を、熱圧着接合、半田接合又は共晶結合により前記半導体基板に接合するものである。
【0021】
第10の発明は、第6の発明から第9の発明のいずれかに係るMEMS素子の製造方法において、前記可動部形成工程は、前記半導体基板の前記主面に、前記可動部とともに、前記半導体基板に固定された固定部を形成するものであり、前記電極端子形成工程は、前記蓋部が設けられる領域の外側に、前記第1の電極端子とともに第2の電極端子を形成するものであり、前記配線形成工程は、前記蓋部の前記一の面に、前記第1の配線とともに、前記第2の電極端子と前記固定部とを電気的に接続するための第2の配線を形成するものであり、前記接合工程は、前記第1の配線と前記第2の配線とが形成された前記蓋部を、前記蓋部の前記一の面が前記半導体基板の前記主面と対向した状態で前記蓋部が前記可動部と前記固定部とを覆うとともに、前記第1の電極端子と前記可動部とが前記第1の配線を介して電気的に接続され、前記第2の電極端子と前記固定部とが前記第2の配線を介して電気的に接続されるように、前記半導体基板に接合するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、素子面積を減少させることができるとともに、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その1)である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その2)である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その3)である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その4)である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子が加速度センサとして動作している状態を模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その1)である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その2)である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その3)である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その4)である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その5)である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その6)である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その7)である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その8)である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その9)である。
【図16】比較例1に係るMEMS素子の構成を模式的に示す平面図である。
【図17】比較例1に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図18】比較例2に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す平面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その1)である。
【図21】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その2)である。
【図22】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その3)である。
【図23】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図(その4)である。
【図24】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その1)である。
【図25】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その2)である。
【図26】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その3)である。
【図27】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その4)である。
【図28】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その5)である。
【図29】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その6)である。
【図30】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その7)である。
【図31】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その8)である。
【図32】本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図(その9)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。なお、以下において、図示を容易にするために、平面図であっても断面図と同一のハッチングを施す場合がある。
(第1の実施の形態)
始めに、本発明の第1の実施の形態に係る微小電気機械システム素子(以下「MEMS素子」という。)及びMEMS素子の製造方法を説明する。
【0025】
最初に、図1から図5を参照し、本実施の形態に係るMEMS素子を説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す平面図である。
【0027】
MEMS素子10は、半導体基板20、支持部30、第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33、固定部34、第1の電極端子41、第2の電極端子42、蓋部50、第1の配線51及び第2の配線52を有する。また、半導体基板20の主面20aであって、第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33及び固定部34が形成されている領域を、素子形成領域DAと称する。素子形成領域DAに形成されている部分は、本体素子に相当する。
【0028】
なお、図1では、図示を容易にするために、蓋部50、第1の配線51及び第2の配線52の図示を省略している。ただし、図1において、半導体基板20の主面20aであって、蓋部50が設けられている領域を、点線で囲まれた領域Iで示す。そして、蓋部50の第1の配線51が形成されている領域を、点線で囲まれた領域IIで示し、蓋部50の第2の配線52が形成されている領域を、点線で囲まれた領域IIIで示す。
【0029】
支持部30は、半導体基板20の主面20aであって、素子形成領域DAを囲むように形成されている。
【0030】
第1の梁部31及び第2の梁部32は、素子形成領域DAに形成されている。第1の梁部31及び第2の梁部32は、下層の半導体基板20に固定されている。図1に示すように、第1の梁部31は、支持部30の後述する第1の電極端子41が形成されている側と直接接続されていなくてもよく、第2の梁部32は、支持部30の後述する第2の電極端子42が形成されている側と直接接続されていなくてもよい。
【0031】
可動部33は、素子形成領域DAに複数設けられており、複数の可動部33が第1の梁部31に接続されている。可動部33は、半導体基板20に対して相対変位可能に設けられており、例えば加速度センサの質量部として機能する。
【0032】
固定部34は、素子形成領域DAに複数設けられており、複数の固定部34が第2の梁部32に接続されている。固定部34は、半導体基板20に固定されている。複数の可動部33及び固定部34は、交互に配置されており、隣り合う固定部34がそれぞれ可動部33を挟み込むように設けられている。可動部33と固定部34とは、容量素子を構成しており、可動部33がY方向に変位するときに、可動部33と固定部34との間の容量が変化することによって、Y方向の加速度を検出できるように構成されている。
【0033】
第1の梁部31が接続されている支持部30の上面には、可動部側電極35が形成されており、第2の梁部32が接続されている支持部30の上面には、固定部側電極36が形成されている。可動部側電極35は、後述する第1の配線51に電気的に接続されており、固定部側電極36は、後述する第2の配線52に電気的に接続されている。可動部側電極35は、第1の梁部31の上面及び可動部33の上面にも形成されていてもよく、固定部側電極36は、第2の梁部32の上面及び固定部34の上面にも形成されていてもよい。
【0034】
支持部30の上面には、素子形成領域DAから領域Iの外側の領域へ延在するように、配線部43、44が形成されている。配線部43は、後述する第1の配線51と電気的に接続されており、配線部44は、後述する第2の配線52と電気的に接続されている。
【0035】
第1の電極端子41は、半導体基板20の主面20aであって、蓋部50が設けられている領域Iの外側の領域に形成されている。第1の電極端子41は、後述する第1の配線51により、可動部側電極35と電気的に接続されている。すなわち、可動部33は、可動部側電極35、第1の配線51を介し、第1の電極端子41と電気的に接続されている。
【0036】
第2の電極端子42は、半導体基板20の主面20aであって、蓋部50が設けられている領域Iの外側の領域に形成されている。第2の電極端子42は、後述する第2の配線52により、固定部側電極36と電気的に接続されている。すなわち、固定部34は、固定部側電極36、第2の配線52を介し、第2の電極端子42と電気的に接続されている。
【0037】
なお、第1の電極端子41、第2の電極端子42、配線部43及び配線部44は、主面20a上に、図示しない絶縁膜を介して形成されていてもよい。これにより、各電極端子及び各配線部の半導体基板20との電気的な絶縁性を確保することができる。
【0038】
図2から図5は、本実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図である。図2から図5は、それぞれ図1におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線に沿う断面図である。
【0039】
半導体基板20として、SOI(Silicon On Insulator)基板が用いられている。SOI基板は、支持基板21上に絶縁層22が形成されており、絶縁層22上に導体層(活性層)23が形成されている。支持基板21は、例えば、シリコン(Si)により形成することができる。絶縁層22は、例えば、酸化シリコン(SiO)により形成することができる。導体層23は、例えば導電性シリコン(Si)により形成することができる。
【0040】
支持基板21の厚さは、例えば、数十〜数百μmとすることができる。絶縁層22の厚さは、例えば、数〜数十μmとすることができる。導体層23の厚さは、例えば、数十〜数百μmとすることができる。本実施の形態では、SOI基板を用いた例を説明するが、半導体基板20としてSOI基板に限定されるものではなく、例えば、表面MEMS技術を用いた導電性ポリシリコン、または、例えば、ニッケル(Ni)等のめっき金属を導体層として用いてもよい。
【0041】
図2から図5に示すように、導体層23及び絶縁層22を加工することによって、支持部30、第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33及び固定部34が形成されている。すなわち、導体層23及び絶縁層22をパターニングして、支持部30、第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33及び固定部34が形成されている。
【0042】
第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34では、導体層23が下層の絶縁層22を介して支持基板21に固定されている。一方、可動部33では、導体層23の下層に形成されている絶縁層22は除去され、空間に懸架された状態となっている。従って、可動部33は、半導体基板20の素子形成領域DAに、第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34に対して相対変位可能に設けられている。
【0043】
蓋部50は、半導体基板20の主面20a上に、素子形成領域DAを覆うように形成されている。蓋部50の半導体基板20と対向する面には、凹部53が形成されている。蓋部50は、例えばシリコン基板、ガラス基板等の各種の基板により形成することができる。
【0044】
蓋部50は、例えば熱圧着接合、半田接合、共晶結合等により、支持部30と接合されている。このとき、素子形成領域DAは、気密封止されていることが好ましい。
【0045】
第1の配線51は、蓋部50の半導体基板20と対向する面に形成されている。また、第1の配線51は、凹部53内、すなわち凹部53の底面に形成されている。前述したように、第1の配線51は、配線部43と可動部側電極35とを電気的に接続するように形成されている。
【0046】
第2の配線52は、蓋部50の半導体基板20と対向する面に形成されている。また、第2の配線52は、凹部53内、すなわち凹部53の底面に形成されている。前述したように、第2の配線52は、配線部44と固定部側電極36とを電気的に接続するように形成されている。
【0047】
凹部53の深さは、凹部53の底面に第1の配線51及び第2の配線52が形成された場合でも、蓋部50が第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33及び固定部34と接触しないような深さを有することが好ましい。
【0048】
また、凹部53は、凹部53の開口径が深さ方向に徐々に減少するテーパ形状を有することが好ましい。凹部53がテーパ形状を有することにより、凹部53の側壁に第1の配線51及び第2の配線52を容易に形成することができるからである。後述するように、蓋部50が、例えば半導体基板20と対向する面が(100)面方位を有するシリコン単結晶基板であるときに、このようなテーパ形状を有する凹部53を容易に形成することができる。
【0049】
次に、図6を参照し、本実施の形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0050】
図6は、本実施の形態に係るMEMS素子が加速度センサとして動作している状態を模式的に示す平面図である。
【0051】
加速度がY方向に印加されると、可動部33が弾性変形してY方向に移動する。これにより、可動部33と固定部34の間のY方向の距離が変化する。従って、可動部33と固定部34とで構成される容量素子の静電容量が変化する。この静電容量の変化を外部電気回路などにより検知することによって、加速度を測定することができる。可動部33は、第1の配線51を介して第1の電極端子41に接続されており、固定部34は、第2の配線52を介して第2の電極端子42に接続されている。従って、MEMS素子10と別の容量計測用回路に第1の電極端子41及び第2の電極端子42を電気的に接続することによって、可動部33と固定部34との間の静電容量の変化を計測することができる。あるいは、MEMS素子10と同一の半導体基板20上に、容量計測用回路を形成し、この容量計測用回路に第1の電極端子41及び第2の電極端子42、又は可動部側電極35及び固定部側電極36を電気的に接続するようにしてもよい。
【0052】
次に、図7から図15を参照し、本実施の形態に係るMEMS素子の製造方法について説明する。図7から図15は、本実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図である。なお、図7及び図15は、図1におけるA−A線に沿う断面図を示し、図8、図9及び図14は、図1におけるB−B線に沿う断面図を示し、図10から図13は、図1におけるC−C線に沿う断面図を示す。なお、図7から図15において、図1から図5と同一部分については、同一符号を付し、その説明は省略する場合がある。
【0053】
始めに、図7に示す工程では、導体層23上に、例えばスパッタリング法により、例えばアルミニウム(Al)よりなる導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いることにより、導電膜をパターニングする。これにより、半導体基板20の主面20aに、可動部側電極35、配線部43及び第1の電極端子41を形成する(電極端子形成工程)。また、図示を省略するが、図1に示す固定部側電極36、配線部44及び第2の電極端子42も、導電膜をパターニングすることにより形成される。そして、第1の電極端子41と第2の電極端子42とは、蓋部50が設けられる領域Iの外側の領域に形成される。
【0054】
導電膜の材料として、アルミニウム(Al)に限定されるものではなく、例えば金(Au)線、半田等のボンディング材との組み合わせにより、例えば、金(Au)、銅(Cu)等の各種の金属材料等を用いることができる。
【0055】
次いで、図8に示す工程では、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いることにより、導体層23をパターニングし、支持部30及び可動部33を形成する。また、図示を省略するが、図1に示す第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34も、導体層23をパターニングすることにより形成される。
【0056】
次いで、図9に示す工程では、可動部33の下層における絶縁層22をエッチングにより除去することにより、可動部33を空間に懸架する。これにより、図1のY方向に移動可能な可動部33を形成することができる(可動部形成工程)。一方、第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34の下層における絶縁層22は除去しない。これにより、第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34を、絶縁層22を介して支持基板21に固定することができる。
【0057】
次いで、図10に示す工程では、蓋部50の半導体基板20と対向する面(下面)に凹部53を形成する(凹部形成工程)。
【0058】
蓋部50が例えばシリコン基板よりなるときは、例えば水酸化カリウム(KOH)、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等のアルカリ性のエッチング液を用いたウェットエッチングにより、蓋部50の半導体基板20と対向する面(下面)に凹部53を形成することができる。
【0059】
更に、蓋部50が、下面が(100)面方位を有するシリコン単結晶基板よりなり、上記したアルカリ性のエッチング液を用いてエッチングするときは、エッチング速度の異方性に起因し、シリコン単結晶基板は、(111)面が露出するようにエッチングされる。これにより、凹部53の開口径が深さ方向に徐々に減少するテーパ形状を有するように形成することができ、後述する導電膜54が凹部53の側壁を被覆できず、導電膜54が凹部53の側壁で途切れることを防止できる。
【0060】
あるいは、蓋部50が例えばガラス基板よりなるときは、例えばフッ酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングにより、蓋部50の下面に凹部53を形成することができる。
【0061】
次いで、図11に示す工程では、蓋部50の半導体基板20と対向する面に、導電膜54を形成する。
【0062】
例えばスパッタリング法により、例えばアルミニウム(Al)よりなる導電膜54を形成する。
【0063】
蓋部50が例えばシリコン基板よりなるときは、蓋部50の半導体基板20と対向する面に、予め、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、例えば酸化シリコンよりなる絶縁膜を形成しておき、絶縁膜を介して導電膜54を形成するようにしてもよい。
【0064】
次いで、図12に示す工程では、導電膜54が形成されている蓋部50の半導体基板20と対向する面に、レジスト膜55を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いることにより、レジスト膜55をパターニングする。これにより、第1の配線51及び第2の配線52を形成するためのマスクパターンを形成する。
【0065】
次いで、図13に示す工程では、レジスト膜55よりなるマスクパターンを用いたエッチング技術により、導電膜54をパターニングする。これにより、第1の配線51及び第2の配線52を形成することができる(配線形成工程)。
【0066】
導電膜54が例えばアルミニウム(Al)よりなるときは、エッチング技術として、アルカリ性のエッチング液を用いたウェットエッチング、又は、例えば塩素ガス(Cl)等のエッチングガスを用いたドライエッチングを用いることができる。
【0067】
次いで、図14及び図15に示す工程では、蓋部50を半導体基板20の支持部30に接合する(接合工程)。接合方法として、例えば熱圧着接合、プラズマやイオンによる表面活性化を用いた常温接合等の直接接合を用いることができる。また、例えば半田接合、共晶結合等の間接接合を用いることができる。更に、例えばガラスフリット等の接着剤による接合を用いることができる。
【0068】
例えば、蓋部50を、凹部53が形成された面が半導体基板20の主面20aと対向した状態で蓋部50が素子形成領域DAを覆うように、半導体基板20の支持部30上に配置し、蓋部50を支持部30に加圧した状態で熱処理することによって、蓋部50を支持部30に接合する。このとき、図1におけるB−B線に沿う断面では、図14に示すように、蓋部50の第1の配線51が形成されていない部分と、支持部30の可動部側電極35が形成されていない部分とが接合される。また、図1におけるA−A線に沿う断面では、図15に示すように、第1の配線51と、可動部側電極35が接合されるとともに、第1の配線51と、配線部43が接合される。その結果、図1におけるB−B線に沿う断面では、図3に示すように、蓋部50と支持部30とが接合される。そして、図1におけるA−A線に沿う断面では、図2に示すように、第1の配線51と可動部側電極35とが接合されるとともに、第1の配線51と配線部43とが接合される。また、図示を省略するが、第2の配線52と固定部側電極36とが接合されるとともに、第2の配線52と配線部44とが接合される。
【0069】
蓋部50を熱圧着接合、半田接合又は共晶結合により支持部30に接合することによって、第1の電極端子41と可動部側電極35とを、第1の配線51を介して電気的に良好に接続することができる。また、蓋部50を熱圧着接合、半田接合又は共晶結合により支持部30に接合することによって、第2の電極端子42と固定部側電極36とを、第2の配線52を介して電気的に良好に接続することができる。
【0070】
また、蓋部50を支持部30に接合する際、真空中等の減圧雰囲気下で接合することによって、素子形成領域DAを真空封止してもよい。あるいは、例えば窒素(N)ガス等の不活性雰囲気ガス中で接合することによって、素子形成領域DAを不活性雰囲気下で封止してもよい。
【0071】
また、上記した工程は、素子ごとに、すなわちチップレベルで行ってもよい。しかし、素子を個片化していない状態で、すなわちウェハレベルで行ってもよい。そして、上記の工程をウェハレベルで行った後、ダイシングして素子ごとに個片化するようにしてもよい。
【0072】
次に、図16及び図17を参照し、本実施の形態に係るMEMS素子が、素子面積を減少させることができる作用効果について、比較例1と対比しながら説明する。
【0073】
図16は、比較例1に係るMEMS素子の構成を模式的に示す平面図である。図17は、比較例1に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図である。図17は、図16におけるB−B線に沿う断面図である。
【0074】
比較例1に係るMEMS素子110は、第1の実施の形態に係るMEMS素子10と同様に、半導体基板120、支持部130、第1の梁部131、第2の梁部132、可動部133、固定部134、可動部側電極135、固定部側電極136、第1の電極端子141、第2の電極端子142、配線部143、144、蓋部150、第1の配線151及び第2の配線152を有する。また、半導体基板120は、支持基板121、絶縁層122及び導体層(活性層)123を有する。
【0075】
半導体基板120、支持部130、可動部133、固定部134、可動部側電極135、固定部側電極136、第1の電極端子141、第2の電極端子142及び配線部143、144は、第1の実施の形態に係るMEMS素子10の半導体基板20、支持部30、可動部33、固定部34、可動部側電極35、固定部側電極36、第1の電極端子41、第2の電極端子42及び配線部43、44とそれぞれ同一構造であり、説明を省略する。また、支持基板121、絶縁層122及び導体層(活性層)123は、第1の実施の形態に係るMEMS素子10の支持基板21、絶縁層22及び導体層(活性層)23とそれぞれ同一構造であり、説明を省略する。
【0076】
比較例1に係るMEMS素子110では、第1の電極端子141と可動部側電極135とを接続する第1の配線151は、第1の梁部131の上面に形成されている。従って、図16に示すように、第1の電極端子141と第1の梁部131とが一直線上にないときなど、可動部133を迂回して第1の配線151を形成するために、第1の梁部131と支持部130とを接続する接続部137を設ける必要がある。例えば、接続部137を形成するために、素子形成領域DAのY方向の長さを、図1に示したY0から図16に示したY0+Y1に増加させる必要がある。そして、素子形成領域DAのX方向の長さを、図1に示したX0と同一とする場合、素子面積がX0×Y1だけ大きくなる。
【0077】
一方、第1の実施の形態に係るMEMS素子10では、第1の電極端子41と可動部側電極35とを接続する第1の配線51は、蓋部50の半導体基板20と対向する面に形成されている。従って、比較例1に係るMEMS素子110における接続部137を設ける必要がなく、素子面積をX0×Y1だけ小さくすることができる。
【0078】
次に、図18を参照し、本実施の形態に係るMEMS素子が、製造コストを低減することができる作用効果について、比較例2と対比しながら説明する。
【0079】
図18は、比較例2に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図である。
【0080】
比較例2に係るMEMS素子210は、蓋部250以外の構造は、第1の実施の形態に係るMEMS素子10と同一構造であり、MEMS素子10と同一の符号を付して、説明を省略する。
【0081】
比較例2に係るMEMS素子210では、第1の電極端子41と可動部側電極35とを接続する第1の配線251は、蓋部250の上面、すなわち、半導体基板20と対向する面と反対側の面に形成されている。また、蓋部250の可動部側電極35と平面視で重なる部分には、開口部255が形成されており、開口部255に、第1の配線251と可動部側電極235とを電気的に接続する貫通電極239が設けられている。従って、蓋部250に開口部255を形成する工程が必要となり、製造コストが増大する。
【0082】
一方、第1の実施の形態に係るMEMS素子10では、第1の電極端子41と可動部側電極35とを接続する第1の配線51は、蓋部50の半導体基板20と対向する面に形成されている。従って、比較例2に係るMEMS素子210における蓋部250の開口部255を形成する必要もなく、製造コストを低減することができる。
【0083】
また、図1に示すように、第1の梁部31が支持部30の第1の電極端子41が形成されている側と直接接続されていないときも、第1の梁部31に接続されている可動部33と第1の電極端子41とを電気的に接続する第1の配線51の配線長を短くすることができる。また、第2の梁部32が支持部30の第2の電極端子42が形成されている側と直接接続されていないときも、第2の梁部32に接続されている固定部34と第2の電極端子42とを電気的に接続する第2の配線52の配線長を短くすることができる。
【0084】
また、本実施の形態では、第2の梁部32、固定部34が設けられている例を示したが、例えば支持部30を固定部として機能させる等により、第2の梁部32、固定部34が設けられていなくてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るMEMS素子及びMEMS素子の製造方法を説明する。
【0085】
最初に、図19から図23を参照し、本実施の形態に係るMEMS素子を説明する。
【0086】
本実施の形態に係るMEMS素子は、蓋部には凹部が設けられていない点で、実施の形態に係るMEMS素子と相違する。
【0087】
図19は、本実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す平面図である。図20から図23は、本実施の形態に係るMEMS素子の構成を模式的に示す断面図である。図20から図23は、それぞれ図19におけるA−A線、B−B線、C−C線、D−D線に沿う断面図である。
【0088】
MEMS素子10aは、半導体基板20、支持部30、第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33、固定部34、第1の電極端子41、第2の電極端子42、蓋部50a、第1の配線51及び第2の配線52を有する。半導体基板20の主面20aであって、第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33及び固定部34が形成されている領域を、素子形成領域DAと称するのは、第1の実施の形態と同様である。
【0089】
なお、図19では、図示を容易にするために、蓋部50a、第1の配線51及び第2の配線52の図示を省略している。ただし、図19において、半導体基板20の主面20aであって、蓋部50aが設けられている領域を、台座部38が設けられている領域と同一の領域Iで示す。そして、蓋部50aの第1の配線51が形成されている領域を、点線で囲まれた領域IIで示し、蓋部50aの第2の配線52が形成されている領域を、点線で囲まれた領域IIIで示す。
【0090】
半導体基板20、可動部33、固定部34、第1の電極端子41及び第2の電極端子42は、第1の実施の形態に係るMEMS素子10の半導体基板20、可動部33、固定部34、第1の電極端子41及び第2の電極端子42と同一構造であり、説明を省略する。
【0091】
支持部30は、支持部30上に台座部38が設けられている点で、第1の実施の形態に係るMEMS素子10の支持部30と相違する。台座部38は、例えばポリシリコン膜よりなる。また、可動部側電極35、固定部側電極36、配線部43、44は、台座部38の上に形成されている。
【0092】
蓋部50aは、台座部38上に、素子形成領域DAを覆うように形成されている。蓋部50aの半導体基板20と対向する面には、凹部が形成されていない。蓋部50aは、例えばガラス基板により形成することができる。
【0093】
蓋部50aは、第1の実施の形態と同様に、例えば熱圧着接合、半田接合、共晶結合等により、台座部38と接合されている。このとき、素子形成領域DAは、気密封止されていることが好ましい。
【0094】
第1の配線51は、蓋部50aの半導体基板20と対向する面に、配線部43と可動部側電極35とを電気的に接続するように、形成されている。また、第2の配線52は、蓋部50aの半導体基板20と対向する面に、配線部44と固定部側電極36とを電気的に接続するように、形成されている。
【0095】
台座部38の高さは、蓋部50aの半導体基板20と対向する面に第1の配線51及び第2の配線52が形成された場合でも、蓋部50aが第1の梁部31、第2の梁部32、可動部33及び固定部34と接触しないような高さを有することが好ましい。
【0096】
本実施の形態に係るMEMS素子の動作も、第1の実施の形態に係るMEMS素子の動作と同様である。
【0097】
次に、図24から図32を参照し、本実施の形態に係るMEMS素子の製造方法について説明する。図24から図32は、本実施の形態に係るMEMS素子の製造方法を模式的に示す断面図である。なお、図24及び図32は、図19におけるA−A線に沿う断面図を示し、図25、図26及び図31は、図19におけるB−B線に沿う断面図を示し、図27から図30は、図19におけるC−C線に沿う断面図を示す。なお、図24から図32において、図19から図23と同一部分については、同一符号を付し、その説明は省略する場合がある。
【0098】
始めに、図24に示す工程では、例えばCVD法により、例えばポリシリコンよりなる台座膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いることにより、台座膜をパターニングする。これにより、台座部38を形成する。また、台座部38上に、例えばスパッタリング法により、例えば第1の実施の形態で例示したアルミニウム(Al)等よりなる導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いることにより、導電膜をパターニングする。これにより、半導体基板20の主面20aに、台座部38を介し、可動部側電極35、配線部43及び第1の電極端子41を形成する(電極端子形成工程)。また、図示を省略するが、図19に示す固定部側電極36、配線部44及び第2の電極端子42も、導電膜をパターニングすることにより形成される。そして、第1の電極端子41と第2の電極端子42とは、蓋部50aが設けられる領域Iの外側の領域に形成される。
【0099】
次いで、図25に示す工程では、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いることにより、導体層23をパターニングし、支持部30及び可動部33を形成する。また、図示を省略するが、図19に示す第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34も、導体層23をパターニングすることにより形成される。
【0100】
次いで、図26に示す工程では、可動部33の下層における絶縁層22をエッチングにより除去することにより、可動部33を空間に懸架する。これにより、図19のY方向に移動可能な可動部33を形成することができる(可動部形成工程)。一方、第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34の下層における絶縁層22は除去しない。これにより、第1の梁部31、第2の梁部32及び固定部34を、絶縁層22を介して支持基板21に固定することができる。
【0101】
次いで、図27に示す工程では、蓋部50aを準備する。前述したように、例えばガラス基板よりなる蓋部50aを準備する。
【0102】
次いで、図28〜図30に示す工程では、図11〜図13に示した工程と同様に、蓋部50aの半導体基板20と対向する面に、導電膜54を形成し、レジスト膜55を形成してマスクパターンを形成し、エッチング技術により、導電膜54をパターニングする。これにより、第1の配線51及び第2の配線52を形成することができる(配線形成工程)。
【0103】
次いで、図31及び図32に示す工程では、蓋部50aを半導体基板20の台座部38に接合する(接合工程)。接合方法は、第1の実施の形態における接合方法と同様にすることができる。
【0104】
図19におけるB−B線に沿う断面では、図31に示すように、蓋部50aの第1の配線51が形成されていない部分と、台座部38の可動部側電極35が形成されていない部分とが熱圧着接合される。また、図1におけるA−A線に沿う断面では、図32に示すように、第1の配線51と、可動部側電極35が接合されるとともに、第1の配線51と、配線部43が接合される。
【0105】
また、第1の実施の形態と同様に、蓋部50aを台座部38に接合する際、素子形成領域DAを真空封止してもよく、素子形成領域DAを不活性雰囲気下で封止してもよい。また、上記した工程を、チップレベルで行ってもよく、ウェハレベルで行ってもよい。
【0106】
本実施の形態に係るMEMS素子も、第1の電極端子41と可動部側電極35とを接続する第1の配線51が、蓋部50aの半導体基板20と対向する面に形成されているため、素子面積を小さくすることができる。
【0107】
また、本実施の形態に係るMEMS素子も、第1の電極端子41と可動部側電極35とを接続する第1の配線51が、蓋部50aの半導体基板20と対向する面に形成されているため、製造コストを低減することができる。
【0108】
また、本実施の形態でも、例えば支持部30を固定部として機能させる等により、第2の梁部32、固定部34が設けられていなくてもよい。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
10 MEMS素子
20 半導体基板
20a 主面
21 支持基板
22 絶縁層
23 導体層
30 支持部
33 可動部
34 固定部
35 可動部側電極
36 固定部側電極
41 第1の電極端子
42 第2の電極端子
50 蓋部
51 第1の配線
52 第2の配線
53 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の主面に、前記半導体基板に対して相対変位可能に設けられた可動部と、
前記半導体基板の前記主面上に、前記可動部を覆うように設けられた蓋部と、
前記半導体基板の前記主面であって、前記蓋部の外側の領域に設けられた第1の電極端子と、
前記蓋部の前記半導体基板と対向する面に形成されており、前記第1の電極端子と前記可動部とを電気的に接続する第1の配線と
を有する、MEMS素子。
【請求項2】
前記蓋部は、前記半導体基板と対向する面に凹部が形成されており、
前記第1の配線は、前記凹部内に形成されている、請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項3】
前記凹部は、開口径が深さ方向に減少するものである、請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項4】
前記蓋部は、熱圧着接合、半田接合又は共晶結合により前記半導体基板に接合されたものである、請求項1から請求項3のいずれかに記載のMEMS素子。
【請求項5】
前記半導体基板の前記主面に設けられており、前記半導体基板に固定された固定部と、
前記半導体基板の前記主面であって、前記蓋部の外側の領域に設けられた第2の電極端子と、
前記蓋部の前記半導体基板と対向する面に形成されており、前記第2の電極端子と前記固定部とを電気的に接続する第2の配線と
を有し、
前記蓋部は、前記半導体基板の前記主面上に、前記可動部と前記固定部とを覆うように設けられている、請求項1から請求項4のいずれかに記載のMEMS素子。
【請求項6】
半導体基板の主面に、前記半導体基板に対して相対変位可能な可動部を形成する可動部形成工程と、
前記半導体基板の前記主面であって、蓋部が設けられる領域の外側に第1の電極端子を形成する電極端子形成工程と、
前記蓋部の一の面に前記第1の電極端子と前記可動部とを電気的に接続するための第1の配線を形成する配線形成工程と、
前記第1の配線が形成された前記蓋部を、前記蓋部の前記一の面が前記半導体基板の前記主面と対向した状態で前記蓋部が前記可動部を覆うとともに、前記第1の電極端子と前記可動部とが前記第1の配線を介して電気的に接続されるように、前記半導体基板に接合する接合工程と
を有する、MEMS素子の製造方法。
【請求項7】
前記蓋部の前記一の面に凹部を形成する凹部形成工程を有し、
前記配線形成工程は、前記凹部内に前記第1の配線を形成するものである、請求項6に記載のMEMS素子の製造方法。
【請求項8】
前記凹部形成工程は、シリコン基板よりなる前記蓋部の前記一の面をアルカリ性のエッチング液によりエッチングすることによって、開口径が深さ方向に減少するように、前記凹部を形成するものである、請求項7に記載のMEMS素子の製造方法。
【請求項9】
前記接合工程は、前記蓋部を、熱圧着接合、半田接合又は共晶結合により前記半導体基板に接合するものである、請求項6から請求項8のいずれかに記載のMEMS素子の製造方法。
【請求項10】
前記可動部形成工程は、前記半導体基板の前記主面に、前記可動部とともに、前記半導体基板に固定された固定部を形成するものであり、
前記電極端子形成工程は、前記蓋部が設けられる領域の外側に、前記第1の電極端子とともに第2の電極端子を形成するものであり、
前記配線形成工程は、前記蓋部の前記一の面に、前記第1の配線とともに、前記第2の電極端子と前記固定部とを電気的に接続するための第2の配線を形成するものであり、
前記接合工程は、前記第1の配線と前記第2の配線とが形成された前記蓋部を、前記蓋部の前記一の面が前記半導体基板の前記主面と対向した状態で前記蓋部が前記可動部と前記固定部とを覆うとともに、前記第1の電極端子と前記可動部とが前記第1の配線を介して電気的に接続され、前記第2の電極端子と前記固定部とが前記第2の配線を介して電気的に接続されるように、前記半導体基板に接合するものである、請求項6から請求項9のいずれかに記載のMEMS素子の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−122838(P2012−122838A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273745(P2010−273745)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】