説明

エッジ検出装置およびレーザ加工装置

【課題】いかなる形状の検出対象物であっても検出対象物のエッジ位置を高精度に検出することができ、空間フィルタとしての精度が高く、配置の自由度が高いエッジ検出装置を提供する。
【解決手段】複数の波長の光を含む白色光を第1の光路109aへ発する白色光源101と、第1の光路109aに発せられた白色光に含まれる波長毎に被加工物1(検出対象物)に向けて光軸上に複数の焦点を形成する色収差集光レンズ102と、被加工物1で反射した白色光を第1の光路109aとは異なる第2の光路109bに導く光ファイバ104と、この光ファイバ104により第2の光路109bに導かれた白色光の強度を検出する検出器103と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の検出対象物のエッジを検出するためのエッジ検出装置およびこのエッジ検出装置を備えるレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリート(切断ライン)によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC,LSI等の回路が形成されている半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによって回路毎に分割して個々の半導体チップを製造している。半導体ウエーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと称される切削装置によって行われているが、レーザビームを照射して切断する加工方法も試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
半導体ウエーハにレーザ加工を施すためには、半導体ウエーハをチャックテーブル上に保持した状態でレーザビーム照射手段からレーザビームを照射しつつ、チャックテーブルとレーザビーム照射手段を加工送り方向に相対移動させる。ところが、半導体ウエーハの外周縁を越えてレーザビームが照射されると、半導体ウエーハを保持しているチャックテーブルにレーザビームが照射され、チャックテーブルの被加工物保持領域が損傷され表面精度が低下するという問題がある。
【0004】
また、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する際には、半導体ウエーハをダイシングテープに貼着した状態で分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射する。ところが、上述したように半導体ウエーハの外周縁を越えてレーザビームが照射されると、ダイシングテープが加熱されて溶融しチャックテーブルの被加工物保持領域に付着してしまう。この付着したダイシングテープによって被加工物保持領域に形成されたバキュームを吸引するための空孔が目詰まりしたり、被加工物保持領域の表面精度が低下するという問題がある。このため、被加工物保持領域に付着したダイシングテープを砥石によって削ぎ落とすことが必要となり、場合によってはチャックテーブルを交換しなければならない。
【0005】
上述した問題を解消するために、ワーク保持領域がワークと相似形で小さく形成され、このワーク保持領域の外側周囲に緩衝溝が形成されたチャックテーブルが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、様々な波長成分の光を含む白色光を、軸上色収差を有する光学系を介して検出対象物上に収束させて投影し、空間フィルタを介してこの反射光を分光器に受光させる、白色光を用いた共焦点型のエッジ検出装置も、例えば特許文献3中に示されている。これは、軸上色収差を有する光学系は、波長により屈折率が異なるので、通過する光の結像位置も異なることから、白色光中の特定の波長成分のみが検出対象物上に結像して空間フィルタを通過して分光器に入射する一方、他の波長成分の光は殆ど分光器には入射しないこととなる。よって、分光器が空間フィルタを透過して入射する光の波長を分析することにより、検出対象物との距離を検出できるというものである。
【0007】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2005−262249号公報
【特許文献3】特開2007−178309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に示される技術は、ワークの形状に合わせて個別にチャックテーブルを用意する必要があるため、コストが高いとともに、テーブル交換の手間などが発生する。
【0009】
また、特許文献3等に示されるような従来の共焦点型の検出装置においては、白色光中で検出対象物上に合焦した特定の波長の光のみを分光器に導くための空間フィルタとしてピンホールマスクが使用されるが、空間フィルタとしての精度や、各光学部品や分光器の設置作業が煩雑になり、配置の自由度が制限されるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、いかなる形状の検出対象物であっても検出対象物のエッジ位置を高精度に検出することができ、空間フィルタとしての精度が高く、配置の自由度が高いエッジ検出装置およびレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるエッジ検出装置は、複数の波長の光を含む白色光を第1の光路へ発する白色光源と、前記第1の光路に発せられた前記白色光に含まれる波長毎に検出対象物に向けて光軸上に複数の焦点を形成する色収差集光レンズと、前記検出対象物で反射した前記白色光を前記第1の光路とは異なる第2の光路に導く光ファイバと、該光ファイバにより前記第2の光路に導かれた前記白色光の強度を検出する検出器と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるレーザ加工装置は、被加工物を保持する保持面を有する保持手段と、前記保持面上に保持された前記被加工物に加工用レーザビームを照射する加工用レーザビーム照射手段と、前記被加工物を検出対象物としてそのエッジ位置を検出する上記発明のエッジ検出装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、白色光を色収差集光レンズで検出対象物に照射させてその反射光を白色光のまま検出器に受光させてその光強度を検出させているので、高さ方向に検出対象物の表面位置のバラつきがあっても、光軸上に複数の焦点が形成されることで高さ方向の焦点ばらつき幅を調整できるとともに、反射光にはエッジ位置で合焦する波長成分を必ず含むことにより、いかなる形状の検出対象物であっても検出対象物のエッジ位置を高精度に検出することができ、この際、検出対象物で反射した白色光を光ファイバで第2の光路に導き検出器に入射させているので、空間フィルタとしての精度が高く、配置の自由度が高い構成とすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態であるエッジ検出装置およびこのエッジ検出装置を備えるレーザ加工装置について図面を参照して説明する。本実施の形態は、格子状に配列された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成された半導体ウエーハ等の被加工物を検出対象物としてそのエッジ位置を検出するエッジ検出装置を備えて、被加工物にストリートに沿って加工用レーザビームを照射してレーザ加工を施すレーザ加工装置への適用例を示す。
【0015】
図1は、本実施の形態のレーザ加工装置の主要部を示す外観斜視図である。本実施の形態のレーザ加工装置20は、被加工物1を保持する保持面21aを有する保持手段21と、保持手段21の保持面21a上に保持された被加工物1にパルス状の加工用レーザビームを照射してレーザ加工する加工用レーザビーム照射手段22と、保持手段21の保持面21a上に保持された被加工物1を検出対象物としてそのエッジ位置を検出するエッジ検出装置100と、制御手段200とを備えている。また、保持手段21は、被加工物1を吸引保持するとともに、円筒部24内の図示しないモータに連結されて回転可能に設けられている。
【0016】
また、保持手段21は、2段の滑動ブロック25,26上に搭載されている。保持手段21は、滑動ブロック25に対してボールネジ27、ナット(図示せず)、パルスモータ28等により構成された加工送り手段29によって水平方向となるX軸方向に移動可能に設けられ、搭載された被加工物1を加工用レーザビーム照射手段22が照射するパルスレーザビームに対して相対的に加工送りさせる。保持手段21は、同様に、滑動ブロック26に対してボールネジ30、ナット(図示せず)、パルスモータ31等により構成された割り出し送り手段32によって水平方向となるY軸方向に移動可能に設けられ、搭載された被加工物1を加工用レーザビーム照射手段22が照射するパルスレーザビームに対して相対的に割り出し送りさせる。
【0017】
ここで、加工送り手段29に対しては、保持手段21の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段33が付設されている。加工送り量検出手段33は、X軸方向に沿って配設されたリニアスケール33aと、滑動ブロック25に配設され滑動ブロック25とともにリニアスケール33aに沿って移動する図示しない読み取りヘッドとからなっている。この加工送り量検出手段33は、例えば1μm毎に1パルスのパルス信号を制御手段200に送ることで、この制御手段200は、入力したパルス信号をカウントして保持手段21の加工送り量を検出する。
【0018】
同様に、割り出し送り手段32に対しては、保持手段21の割り出し送り量を検出するための割り出し送り量検出手段34が付設されている。割り出し送り量検出手段34は、Y軸方向に沿って配設されたリニアスケール34aと、滑動ブロック26に配設され滑動ブロック26とともにリニアスケール34aに沿って移動する図示しない読み取りヘッドとからなっている。この割り出し送り量検出手段34は、例えば1μm毎に1パルスのパルス信号を制御手段200に送ることで、この制御手段200は、入力したパルス信号をカウントして保持手段21の割り出し送り量を検出する。
【0019】
また、加工用レーザビーム照射手段22は、実質上水平に配置されたケーシング35を含んでおり、支持ブロック36に対してこのケーシング35を介して図示しないZ軸移動手段によってZ軸方向に移動可能に設けられている。加工用レーザビーム照射手段22は、ケーシング35内に配設された図示しないレーザビーム発振手段および伝送光学系と、ケーシング35の先端に配設されレーザビーム発振手段によって発振されたパルス状の加工用レーザビームを保持手段21に保持された被加工物1に照射する集光器39を具備している。レーザビーム発振手段は、YAGレーザ発振器或いはYVO4レーザ発振器からなるレーザビーム発振器等から構成されている。このレーザビーム発振器等は、制御手段200によって制御される。
【0020】
また、ケーシング35の先端部に装着されたエッジ検出装置100は、保持手段21の保持面21a上に保持された被加工物1の加工対象となるストリート上に加工用レーザビーム照射手段22に先行して検出光を照射して、ストリート上のエッジ位置を検出するためのものである。エッジ検出装置100により検出されたエッジ位置の情報は、制御手段200に送られ、当該ストリートのレーザ加工に際して被加工物1に対する加工用レーザビームの照射開始位置と照射終了位置の制御に供される。
【0021】
図2は、本実施の形態のエッジ検出装置100を概略的に示す構成図であり、図3は、図2中のA部分を拡大して示す構成図であり、図4は、図2中のB部分を拡大して示す構成図である。本実施の形態のエッジ検出装置100は、主に、白色光源101と色収差集光レンズ102と検出器103と光ファイバ104とを備える。
【0022】
白色光源101は、複数の波長の光を含む白色光を発光する光源であり、タングステンランプ、ハロゲンランプ、白色LED等を用い得るが、本実施の形態では、例えばハロゲンランプが用いられている。色収差集光レンズ102は、白色光源101から発せられた白色光を、保持手段21の保持面21a(被加工物1)側に向けて集光照射させるためのものである。ここで、この色収差集光レンズ102は、白色光に含まれる波長毎に被加工物1側に向けて光軸上に複数の焦点を形成する集光レンズである。すなわち、色収差集光レンズ102によって集光される白色光は、波長によって屈折率が異なるため、波長によって焦点距離が異なることとなる。このような色収差集光レンズ102としては、例えば開口数NA=0.68、視野角WD=1.56mmの非球面レンズが用いられている。また、この色収差集光レンズ102は、加工用レーザビーム照射手段22の集光器39と同一加工ライン上で先行する位置に位置するように配置されている。
【0023】
ここで、白色光源101と色収差集光レンズ102との間には、コリメートレンズ105、集光レンズ106、照射側光ファイバ107、コリメートレンズ108が順に配置されている。照射側光ファイバ107は、第1の光路109aを形成し、白色光源101から出射された白色光に関して色収差集光レンズ102に必要な白色光のみを安定して伝搬させるためのものである。また、コリメートレンズ105、集光レンズ106は、白色光源101から発せられた白色光を平行ビーム化させた後、集光させて効率よく照射側光ファイバ107の入射端部に入射させるためのレンズであり、いずれも色収差なしのレンズが用いられている。また、照射側光ファイバ107の出射端側には、光ファイバ104の入射端側と一体化させるファイバカプラ110が設けられ、共通光ファイバ111と連結されている。この共通光ファイバ111と色収差集光レンズ102との間に設けられたコリメートレンズ108は、照射側光ファイバ107を経て共通光ファイバ111から出射される白色光を平行ビーム化させて色収差集光レンズ102に導くための色収差なしのレンズである。
【0024】
また、検出器103は、色収差集光レンズ102で集光されて被加工物1または保持面21aで反射した白色光の反射光の強度を検出するためのものであり、通常のフォトディテクタからなる。光ファイバ104は、第1の光路109aとは異なる第2の光路109bを形成し、被加工物1または保持面21aで反射した白色光の反射光を検出器103に導くためのものである。光ファイバ104,107,111としては、コアとクラッドとからなり、例えばコア径が50μmのマルチモードファイバが用いられている。
【0025】
また、制御手段200は、ROM(図示せず)に格納された制御プログラムに従い演算処理を実行するCPU(図示せず)やRAM(図示せず)を備えるコンピュータからなる。この制御手段200は、エッジ検出装置100の検出器103によって検出された白色光の光強度の情報に基づき被加工物1のエッジ位置を判定してエッジ位置情報を取得する。この際、加工送り量検出手段33および割り出し送り量検出手段34からエッジ位置検出時点のX,Y座標値を取得することにより、エッジ位置のX,Y座標値を特定する。また、制御手段200は、レーザ加工装置20全体の制御を司るものであるが、特に、エッジ検出装置100から取得したエッジ位置情報を参照して加工用レーザビーム照射手段22を制御する。
【0026】
次いで、本実施の形態における被加工物1のエッジEdの検出原理について説明する。まず、エッジEdの検出は、基本的には、保持面21a上では焦点が合わず被加工物1の表面1a上で焦点が合うように色収差集光レンズ102によって集光させた光を保持面21a側に向けて照射し、その反射光を検出器103で受光し、受光した光強度の大小変化位置を検出することにより行われる。焦点の合っていない保持面21aからの反射光を受光した場合の光強度は小さく、焦点の合っている表面1aからの反射光を受光した場合の光強度は大きくなり、被加工物1のエッジEdの位置ではその変化が大きいためである。よって、検出器103により検出される光強度に対して所定の閾値を用いることによりエッジEdを検出することが可能である。
【0027】
このようなエッジEdの検出に単一波長光を用いた場合を考える。この場合、焦点位置が被加工物1の表面1aの高さ位置から少しでもずれると、その高さ毎にエッジEd付近に差し掛かったときの光強度の立ち上がりが変化するために、検出されるエッジEdの位置精度が悪くなってしまう。また、焦点位置から被加工物1の表面1aの高さが外れすぎると、検出そのものができなくなってしまう。
【0028】
この点、本実施の形態では、色収差集光レンズ102により白色光を集光させて保持面21a側に向けて照射させているので、単一波長光を用いた場合に比べて、被加工物1の表面1aの高さ位置にばらつきがあっても、高さ方向の焦点ばらつき幅を調整できるので確実にエッジEdを検出することができる。また、保持面21aから被加工物1の表面1aに変化した際には、焦点のピークパワーが必ず帰ってくるポイントがあるので、高精度にエッジEdの位置を検出することができる。
【0029】
この点について、図3を参照して、さらに詳細に説明する。前述したように、白色光源101から発せられた白色光は、色収差集光レンズ102を通して被加工物1を保持した保持手段21の保持面21a側に向けて照射される。この際、色収差集光レンズ102は、通過した白色光が波長によって異なる焦点距離を有する。すなわち、この色収差集光レンズ102は、白色光に含まれる波長毎に被加工物1に向けて光軸上に複数の焦点を形成する。よって、図3に示すように、色収差集光レンズ102の光軸中心直下の範囲Lには、白色光に含まれる波長毎に無数の焦点が存在することとなる。したがって、無数の焦点が存在するこの範囲L内に被加工物1の表面1aが存在するように、白色光を照射すれば、被加工物1の表面1aの高さ位置のばらつきによらず、焦点が合って反射される光が必ず存在することとなり、確実にエッジEdの位置を検出することができる。
【0030】
なお、焦点のばらつきを示す範囲Lに関しては、色収差集光レンズ102の開口数NA、材質、あるいは色収差集光レンズ102として回折レンズを用いる等の対応により、数μmから数mmまで自由に設計可能である。
【0031】
また、保持面21aや表面1aで反射される光は、光路を逆行して共通光ファイバ111(光ファイバ104)に入射する。この際、焦点の合っていない保持面21aで反射された光は、共通光ファイバ111に再結合しにくく、入射光量が少ないため、検出器103により検出される光強度は小さくなる。一方、白色光のうちで、被加工物1の表面1aの高さ位置のばらつきによらず、表面1aに合焦状態で照射された波長の光は、図4に示すように、共通光ファイバ111のクラッド111bに囲まれたコア111aに最も強く再結合する。これにより、共通光ファイバ111(光ファイバ104)で第2の光路109bに導かれて検出器103により検出される光強度は大きくなる。
【0032】
このようなエッジの検出に、例えば特許文献3中に示されたような共焦点型の検出装置を用い、白色光中で被加工物1上に合焦した特定の波長の光のみを分光器に導くための空間フィルタとしてピンホールマスクを使用することも可能であるが、空間フィルタとしての精度や、各光学部品や分光器の設置作業が煩雑になり、配置の自由度が制限されるという問題が生ずる。この点に関しても、本実施の形態によれば、被加工物1の表面1aで反射した白色光を例えばコア径が50μmの共通光ファイバ111(光ファイバ104)で検出器103側に導いて入射させているので、空間フィルタとしての精度が高く、配置の自由度が高いものとなる。また、分光器を用いることなく、単にフォトディテクタからなる検出器103を用いて光強度を検出すればよく、単純な検出系となる。
【0033】
次いで、このようなレーザ加工装置20を用いた被加工物1のレーザ加工方法について説明する。図5は、被加工物1を示す外観斜視図である。加工対象となる被加工物1は、図5に示すように、環状のフレーム2に装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなるダイシングテープ3に表面1aを上側にして貼着された状態で用意される。このような被加工物1は、特に限定されないが、例えば半導体ウエーハ等のウエーハや、チップ実装用としてウエーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス系あるいはシリコン系の基板、さらには、μmオーダの精度が要求される各種加工材料が挙げられる。本実施の形態の被加工物1は、半導体ウエーハ等をベースとし、表面1aに格子状に配列された複数の第1のストリート4aと複数の第2のストリート4bとによって区画された複数の矩形領域が形成され、この複数の矩形領域にデバイス5が形成されている。
【0034】
加工に際して、まず、保持手段21の保持面21a上に被加工物1を載置し、吸引保持させる。なお、フレーム2は、クランプ部材21bにより固定される。そして、被加工物1を吸引保持した保持手段21を図示しない撮像手段の直下に位置付け、被加工物1のレーザ加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。すなわち、被加工物1の所定方向に形成されている第1のストリート4aと、この第1のストリート4aに沿って集光器39および色収差集光レンズ102との位置合わせを行なうためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する。第2のストリート4bについても同様である。
【0035】
このようにしてアライメントが行なわれると、保持手段21上の被加工物1は、図6(a)に示すような座標位置に位置付けられた状態となる。図6は、被加工物1が保持手段21の所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図である。なお、図6(b)は、保持手段21、すなわち被加工物1を図6(a)に示す状態から90度回転させて第2のストリート4bを加工対象とする状態を示している。
【0036】
そして、保持手段21に保持されている被加工物1に形成されている第1のストリート4aを検出し、レーザ加工位置のアライメントが行なわれると、制御手段200は、このようにして被加工物1に形成されて加工対象となる第1のストリート4aに沿ってエッジ位置検出およびレーザ加工処理を実行する。すなわち、保持手段21を移動させて、図6(a)中の最下位の第1のストリート4aを集光器39および色収差集光レンズ102の直下に位置付ける。そして、エッジ検出装置100を作動させるとともに、保持手段21を加工送り方向に所定の加工送り速度に合わせて移動させる。この処理により、最下位の第1のストリート4aに関して、まず、ビーム照射開始位置となるエッジ位置A1が先行して検出される。
【0037】
制御手段200は、保持手段21の加工送りをさらに継続させ、集光器39が、エッジ位置A1に到達した時点で、加工用レーザビーム照射手段22を駆動させることで、被加工物1に対する加工用レーザビームの照射を開始させる。この際、例えば集光器39によって加工用レーザビームの集光点が被加工物1の表面1aに一致するように照射し、第1のストリート4aに沿って加工溝を形成するレーザ加工を実施する。この加工処理と並行して、制御手段200は、エッジ検出装置100によるエッジ位置の検出動作を継続し、最下位の第1のストリート4aに関して、ビーム照射終了位置となるエッジ位置B1を先行して検出する。
【0038】
そして、制御手段200は、保持手段21の加工送りを継続させ、集光器39が、エッジ位置B1に到達した時点で、加工用レーザビーム照射手段22の駆動を停止させることで、被加工物1の当該ストリート4aに対する加工用レーザビームの照射を終了させる。
【0039】
このようにして、最下位の第1のストリート4aの関するエッジ検出処理およびレーザ加工処理が終了すると、制御手段200は、保持手段21を元の位置側に移動させ、さらに1ライン分割り出し送りすることで、図6(a)中の最下位から次の第1のストリート4aを集光器39および色収差集光レンズ102の直下に位置付けて、次の第1のストリート4aに関しても、上記の処理を同様に繰り返し、エッジ位置A2,B2を検出する。
【0040】
以後、このようなエッジ検出処理とレーザ加工処理とを、以降の第1のストリート4aについても同様に並行処理として繰り返し実行する。そして、全ての第1のストリート4aに対するエッジ検出処理とレーザ加工処理とを実行したら、保持手段21を90度回転させて、図6(b)に示すような状態に位置付け、第2のストリート4bの全てについても同様に、エッジ検出処理とレーザ加工処理とを実行する。エッジ検出処理に関しては、エッジ位置C1,D1、C2,D2、・・・の如く、順次検出する。全ての処理が終了すると、被加工物1を保持している保持手段21は最初に被加工物1を吸引保持した位置に戻され、ここで被加工物1の吸引保持を解除する。そして、被加工物1は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【0041】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、被加工物1に吸収される波長の加工用レーザビームを照射することで加工溝を形成するレーザ加工例で説明したが、被加工物1を透過する波長の加工用レーザビームを照射することで改質層を形成するレーザ加工の場合であっても同様に適用することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、ダイシングテープ3を用いる被加工物1の例で説明したが、ダイシングテープ3を用いずに、被加工物1を直接的に保持手段21の保持面21a上に保持させるタイプのものであっても同様に適用することができる。この場合、エッジ位置の高精度な検出により、被加工物1を保持する保持面21aに加工用レーザビームが照射されてしまう不具合を回避することができる。
【0043】
また、エッジ検出装置100が検出するエッジ位置としては、レーザ加工用に用いられる被加工物1を検出対象物とする場合に限らず、他の部材を検出対象物とする場合であっても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態のレーザ加工装置の主要部を示す外観斜視図である。
【図2】本実施の形態のエッジ検出装置を概略的に示す構成図である。
【図3】図2中のA部分を拡大して示す構成図である。
【図4】図2中のB部分を拡大して示す構成図である。
【図5】被加工物を示す外観斜視図である。
【図6】被加工物が保持手段の所定位置に保持された状態における座標位置との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 被加工物
20 レーザ加工装置
21 保持手段
21a 保持面
22 加工用レーザビーム照射手段
100 エッジ検出装置
101 白色光源
102 色収差集光レンズ
103 検出器
104 光ファイバ
109a 第1の光路
109b 第2の光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長の光を含む白色光を第1の光路へ発する白色光源と、
前記第1の光路に発せられた前記白色光に含まれる波長毎に検出対象物に向けて光軸上に複数の焦点を形成する色収差集光レンズと、
前記検出対象物で反射した前記白色光を前記第1の光路とは異なる第2の光路に導く光ファイバと、
該光ファイバにより前記第2の光路に導かれた前記白色光の強度を検出する検出器と、
を備えることを特徴とするエッジ検出装置。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有する保持手段と、
前記保持面上に保持された前記被加工物に加工用レーザビームを照射する加工用レーザビーム照射手段と、
前記被加工物を検出対象物としてそのエッジ位置を検出する請求項1に記載のエッジ検出装置と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−127920(P2010−127920A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306846(P2008−306846)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】