説明

スパッタリングターゲット及びその製造方法、並びにトランジスタ

【課題】酸化物半導体膜を成膜する成膜技術を提供することを課題の一とする。
【解決手段】金属酸化物の焼結体を含み、その金属酸化物の焼結体の含有水素濃度が、たとえば、1×1016atoms/cm未満と低いスパッタリングターゲットを用いて酸化物半導体膜を形成することで、HOに代表される水素原子を含む化合物、もしくは水素原子等の不純物の含有量が少ない酸化物半導体膜を成膜する。また、この酸化物半導体膜をトランジスタの活性層として適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。また、当該スパッタリングターゲットを用いて製造されたトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板などの平板に形成されるトランジスタは、主にアモルファスシリコン、または多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて作製される。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することができ、一方、多結晶シリコンを用いたトランジスタは、電界効果移動度が高いもののレーザアニールなどの結晶化工程が必要であり、ガラス基板の大面積化には必ずしも適応しないといった特性を有している。
【0003】
これに対し、半導体材料として酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、該トランジスタを電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば、半導体材料として酸化亜鉛、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、画像表示装置のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【0004】
酸化物半導体にチャネル形成領域(チャネル領域ともいう)を設けたトランジスタは、アモルファスシリコンを用いたトランジスタよりも高い電界効果移動度が得られている。酸化物半導体膜はスパッタリング法などによって比較的低温で膜形成が可能であり、多結晶シリコンを用いたトランジスタよりも製造工程が簡単である。
【0005】
このような酸化物半導体を用いてガラス基板、プラスチック基板などにトランジスタを形成し、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELディスプレイともいう)または電子ペーパーなどの表示装置への応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、酸化物半導体を用いて作製した半導体素子の特性は未だ充分なものとは言えない。例えば、酸化物半導体膜を用いたトランジスタには、制御された閾値電圧、速い動作速度、製造工程が比較的簡単であること、そして十分な信頼性が求められている。
【0008】
本発明の一態様の目的は、酸化物半導体膜を成膜する成膜技術を提供することを課題の一とする。また、その酸化物半導体膜を用いた信頼性の高い半導体素子を作製する方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
酸化物半導体を用いたトランジスタの閾値電圧は酸化物半導体膜に含まれるキャリア密度に影響される。また、酸化物半導体膜に含まれるキャリアは、酸化物半導体膜に含まれる不純物により発生する。例えば、成膜された酸化物半導体膜に含まれる水(HO)に代表される水素原子を含む化合物や炭素原子を含む化合物、もしくは水素原子や炭素原子等の不純物は、酸化物半導体膜のキャリア密度を高める。
【0010】
水(HO)に代表される水素原子を含む化合物、もしくは水素原子等の不純物を含む酸化物半導体膜を用いて作製したトランジスタは、閾値電圧のシフトなどの経時劣化を制御することが困難である。
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために、水(HO)に代表される水素原子を含む化合物、もしくは水素原子等の不純物の含有量の低い導電膜を、ソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用い、酸化物半導体膜の上或いは下に形成することで、酸化物半導体膜中に存在する水素、水などの不純物が上記導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体膜の純度が高まり、その結果、水素、水などの不純物に起因するトランジスタの経時劣化が抑えられるのではないかと考えた。上記導電膜は、エッチングなどで所望の形状に加工することで、ソース電極、ドレイン電極に形成できる。
【0012】
そこで、本発明の一態様は、成膜に用いるスパッタリングターゲット中の、キャリア密度に影響する不純物、例えば、水(HO)に代表される水素原子を含む化合物、もしくは水素原子等の不純物を排除することにより、不純物の含有量の少ない導電膜を成膜する。
【0013】
本発明の一態様のスパッタリングターゲットは、導電膜を形成するスパッタリングターゲットであって、水素の電気陰性度2.1よりも小さい金属材料の焼結体を含み、その焼結体の含有水素濃度が1×1016atoms/cm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様のスパッタリングターゲットは、導電膜を形成するスパッタリングターゲットであって、アルミニウム、銅、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、またはタングステンの少なくともいずれか一の金属材料の焼結体を含み、その焼結体の含有水素濃度が1×1016atoms/cm以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様のスパッタリングターゲットは、導電膜を形成するスパッタリングターゲットであって、アルミニウムに、シリコン、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウム、またはイットリウムが0.1乃至3原子%添加された金属材料の焼結体を含み、その焼結体の含有水素濃度が1×1016atoms/cm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様のトランジスタは、上述のスパッタリングターゲットを用いて作製された導電膜を活性層に接して含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様のスパッタリングターゲットの製造方法は、金属材料を焼成して金属材料の焼結体を形成し、金属材料の焼結体を機械加工して、所望の形状を有するターゲットに成形し、ターゲットを洗浄し、洗浄後のターゲットに、加熱処理を加えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様のスパッタリングターゲットの製造方法は、金属材料を焼成して金属材料の焼結体を形成し、金属材料の焼結体を機械加工して、所望の形状を有するターゲットに成形し、ターゲットを洗浄し、洗浄後のターゲットを加熱処理し、ターゲットと、バッキングプレートとをボンディングすることを特徴とする。
【0019】
なお、本明細書等において、金属材料の焼結体を機械加工して所望の形状にしたものを、ターゲットと表記することがある。また、該ターゲットとバッキングプレートを合わせて、特にスパッタリングターゲットと表記することがある。
【0020】
また、本明細書において、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0021】
また、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成として、窒素原子よりも酸素原子の数が多い物質のことを指し、窒化酸化物とは、その組成として、酸素原子より窒素原子の数が多い物質のことを指す。例えば、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素原子よりも酸素原子の数が多く、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素原子より窒素原子の数が多く、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上30原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
【0022】
また、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上の第1のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。また、「上」「下」の用語は説明の便宜のために用いる表現に過ぎず、特に言及する場合を除き、その上下を入れ替えたものも含む。
【0023】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合をなどをも含む。
【0024】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などは入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0025】
なお、本明細書において、ターゲット、酸化物半導体膜または導電膜中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)による測定値を用いる。なお、SIMS分析は、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、膜中における水素濃度の厚さ方向の分布を、SIMSで分析する場合、水素濃度は、対象となる膜の存在する範囲において、極端な変動が無く、ほぼ一定の強度が得られる領域における平均値を採用する。また、測定の対象となる膜の厚さが小さい場合、隣接する膜内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の強度の得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該膜の存在する領域における、最大値または最小値を、水素濃度として採用する。さらに、当該膜の存在する領域において、最大値を有する山型のピーク、最小値を有する谷型のピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様は、水(HO)に代表される水素原子を含む化合物や、もしくは水素原子等の不純物の含有量が少ないスパッタリングターゲットを提供することが可能である。また、そのスパッタリングターゲットを用い、不純物の低減された導電膜を成膜することが可能である。また、その導電膜に接して形成された酸化物半導体膜を活性層として用いた信頼性の高い半導体素子を作製する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】スパッタリングターゲットの製造方法を示すフロー図。
【図2】実施の形態に係わるトランジスタの平面図及び断面図。
【図3】実施の形態に係わるトランジスタの作製工程を説明する図。
【図4】実施の形態に係わるトランジスタの平面図及び断面図。
【図5】実施の形態に係わるトランジスタの作製工程を説明する図。
【図6】実施の形態に係わるトランジスタの断面図。
【図7】実施の形態に係わるトランジスタの作製工程を説明する図。
【図8】実施の形態に係わるトランジスタの作製工程を説明する図。
【図9】実施の形態に係わるトランジスタの作製工程を説明する図。
【図10】実施の形態に係わるトランジスタの作製工程を説明する図。
【図11】実施の形態に係わるトランジスタの断面図。
【図12】酸化物半導体を用いたトランジスタの断面図。
【図13】図12に示すA−A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)。
【図14】(A)ゲート電極(GE1)に正の電圧(V>0)が与えられた状態を示し、(B)ゲート電極(GE1)に負の電位(V<0)が与えられた状態を示す図。
【図15】真空準位と金属の仕事関数(φ)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す図。
【図16】電子機器の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本明細書中の図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する場合がある。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様であるスパッタリングターゲット(以下、ターゲットとも表記する)の製造方法について図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0030】
はじめに、ターゲット材料を適宜秤量し、秤量した各ターゲット材料を、ボールミル等により粉砕しながら混合する(図1(A))。本実施の形態で示す導電膜を形成するためのターゲットの材料としては、例えば、アルミニウム(Al)粉末に、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはランタン系材料など、アルミニウム膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素が0.1乃至3原子%添加した材料を用いることができる。
【0031】
なお、ターゲットに用いることができる材料は、これに限られず、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などの金属材料等を単体又は混合して適宜用いることが可能である。なお、アルミニウム、チタン、クロム、銅、またはタンタルのように、電気陰性度の小さい金属材料、具体的には水素よりも電気陰性度の小さい金属材料を用いると、酸化物半導体膜に接して導電膜を形成した際に、水分、または水素などの不純物を酸化物半導体膜から引き抜きやすいため、好ましい。また、上記電気陰性度の小さい金属材料のうち、チタンは、酸化物半導体膜との接触抵抗が低いため、特に好ましい。
【0032】
また、ターゲット材料として、導電性の金属酸化物を用いても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)等を用いることができる。または金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを添加しても良い。
【0033】
次いで、混合物を所定の形状に成形し、焼成して、金属材料の焼結体を得る(図1(B))。ターゲット材料を焼成することにより、ターゲットに水素や水分やハイドロカーボン等が混入することを防ぐことが出来る。焼成は、不活性ガス雰囲気(窒素または希ガス雰囲気)下、真空中または高圧雰囲気中で行うことができ、さらに機械的な圧力を加えながら行ってもよい。焼成法としては、常圧焼成法、加圧焼成法等を適宜用いることができる。また、加圧焼成法としては、ホットプレス法、熱間等方加圧(HIP:Hot Isostatic Pressing)法、放電プラズマ焼結法、又は衝撃法を適用することが好ましい。焼成の最高温度はターゲット材料の焼結温度により選択するが、1000℃〜2000℃程度とするのが好ましく、1200℃〜1500℃とするのがより好ましい。また、最高温度の保持時間は、ターゲット材料により選択するが、0.5時間〜3時間とするのが好ましい。
【0034】
なお、本実施の形態の金属ターゲットは充填率が90%以上100%以下、より好ましくは95%以上99.9%以下とするのが好ましい。充填率の高い金属ターゲットとすることにより、スパッタリング成膜時にターゲットへの水分等の不純物が吸着する空隙を取り除くことができる。また、スパッタリング成膜時に、ノジュールの発生を防止し、均一な放電が可能になり、パーティクルの発生を抑制できる。さらに、成膜した導電膜の表面の平滑性が良好となる。
【0035】
次いで、所望の寸法、形状、表面粗さのターゲットに成形するための機械加工を施す(図1(C))。加工手段としては、例えば機械的研磨、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、またはこれらの併用等を用いることができる。
【0036】
その後、機械加工によって発生する細かな塵や、研削液成分の除去のために、水や有機溶媒に浸漬させた超音波洗浄、流水洗浄等によってターゲットを洗浄する(図1(D))。機械加工後に洗浄を行うことで、塵や不純物を除去したターゲットを得ることができ、当該ターゲットを用いて純度の高い良質な膜を形成することが可能となる。
【0037】
次いで、洗浄を終えたターゲットに加熱処理を加える(図1(E))。加熱処理は、不活性ガス雰囲気(窒素または希ガス雰囲気)中で行うのが好ましく、加熱処理の温度は、ターゲット材料によって異なるが、ターゲット材料が変性せず、ターゲット表面又はターゲット中の水素、水分が充分に脱離する温度とする。具体的には、150℃以上であって750℃以下、好ましくは425℃以上750℃以下とする。また、加熱時間は、ターゲット中の含有水素濃度が充分低減できるだけ加熱するものとし、具体的には0.5時間以上、好ましくは1時間以上加熱とする。洗浄後に加熱処理することにより、洗浄によって混入した水素や水分等をターゲットから脱離させることが出来る。なお、加熱処理は、真空中または高圧雰囲気中で行ってもよい。
【0038】
加熱処理としては、例えば、加熱処理装置の一つである電気炉にターゲットを導入し、窒素雰囲気下において加熱処理を行った後、大気に触れないようにし、ターゲットへの水や水素の再混入を防ぎ、含有水素濃度の低下したターゲットを得る。加熱温度Tから、再び水が入らないような十分な温度まで同じ炉を用い、具体的には加熱温度Tよりも100℃以上下がるまで窒素雰囲気下で徐冷する。また、窒素雰囲気下に限定されず、ヘリウム雰囲気下、ネオン雰囲気下、アルゴン雰囲気下等において加熱処理を行う。
【0039】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、例えばLRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、上記のランプから発する光による熱輻射、およびランプから発する光で気体を加熱し、加熱された気体からの熱伝導によって、被処理物を加熱する装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。また、LRTA装置、GRTA装置は、ランプだけでなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。
【0040】
加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0041】
本実施の形態で示す金属ターゲットは、洗浄後に加熱処理を行うことで二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)による分析で、5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下か、または1×1016atoms/cm以下の水素濃度とすることができる。したがって、当該ターゲットを用いて作製された導電膜の含有水素濃度を低減することができる。
【0042】
その後、ターゲットをバッキングプレートと呼ばれる金属板に貼り合わせる(図1(F))。バッキングプレートは、ターゲット材料の冷却とスパッタリング電極としての役割をもつため、熱伝導性および導電性に優れた銅を用いることが好ましい。また、銅以外にも、チタン、銅合金、ステンレス合金等を用いることも可能である。バッキングプレート内部または背面に冷却路を形成し、冷却路に冷却液として水や油脂等を循環させることで、スパッタリング成膜時のターゲットの冷却効率を高めることができる。ただし、水の気化温度は100℃であるため、ターゲットを100℃以上に保ちたい場合は、水ではなく油脂等を用いるとよい。
【0043】
ターゲットとバッキングプレートの貼り合わせは、例えば、電子ビーム溶接で行うことができる。電子ビーム溶接とは、真空雰囲気中で発生させた電子を加速して収束させ、対象物に照射することで、溶接したい部分のみを溶かし、溶接部以外の素材性質を損なわずに溶接することができる手法である。溶接部形状および溶け込み深さの制御が可能であり、真空中で溶接を行うため、ターゲットに水素や水分やハイドロカーボン等が付着することを防ぐことができる。
【0044】
また、ターゲットとバッキングプレートを接着するためのろう材としては、金(Au)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)またはこれらの合金、低融点合金はんだ等を好ましく用いることができる。なお、ろう材には、導電性の高い金属(または合金)材料を用いるのが好ましい。また、ろう材とターゲットとの間にバックコート層を形成しても良い。バックコート層を形成することで、ターゲットとバッキングプレートとの密着性を向上させることができる。
【0045】
なお、本実施の形態において、洗浄後の加熱処理は、ターゲットとバッキングプレートとの貼り合わせ(ボンディング)の前に行う場合を例に示したが、本発明の実施の形態はこれに限られず、ターゲットとバッキングプレートとのボンディング後に加熱処理を行っても良いし、ボンディング前後に複数回加熱処理を行っても良い。なお、ターゲットとバッキングプレートとのボンディング後の加熱処理は、ろう材またはバッキングプレートの耐熱性を考慮して、150℃以上350℃以下で行うのが好ましい。また、加熱処理は、不活性ガス雰囲気(窒素または希ガス雰囲気)中で行うのが好ましい。
【0046】
また、加熱処理後のターゲットは、水分や水素の再混入を防止するため、高純度の酸素ガス、高純度の亜酸化窒素(NO)ガス、又は超乾燥エア(露点が−40℃以下、好ましくは−60℃以下)雰囲気で搬送、保存等するのが好ましい。または、ステンレス合金等の透水性の低い材料で形成された保護材で覆ってもよく、またその保護材とターゲットの間隙に上述のガスを導入しても良い。酸素ガスまたは亜酸化窒素(NO)ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、酸素ガスまたは亜酸化窒素(NO)ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素ガスまたは亜酸化窒素(NO)ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0047】
以上により、本実施の形態のスパッタリングターゲットを製造することができる。本実施の形態で示すスパッタリングターゲットは、製造工程において、洗浄後に加熱処理を施すことで、水素原子、または水素原子を含む化合物等の不純物を脱離させ、不純物を積極的に排出することができる。従って、当該ターゲットを用いて作製された導電膜が含有する不純物も低減することができる。
【0048】
当該導電膜を、トランジスタのソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用い、活性層として用いる酸化物半導体膜の上或いは下に形成することで、酸化物半導体膜中に存在する水素、水などの不純物が上記導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体膜の純度が高まる。その結果、水素、水などの不純物に起因する経時劣化が抑制されたトランジスタを形成することが可能となる。また、導電膜に用いる材料として、水素よりも電気陰性度が小さい金属を用いることで、不純物をより引き抜くことができる。
【0049】
なお、加熱処理に代えて、真空中でUVランプを照射して、水素原子等の不純物を脱離させても良く、また、UVランプの照射と加熱処理とを併用しても良い。
【0050】
なお、ターゲットをスパッタリング装置に取り付ける際も、大気にさらさず不活性ガス雰囲気(窒素または希ガス雰囲気)下で行うことで、ターゲットに水素や水分やハイドロカーボン等が付着することを防ぐことができる。
【0051】
また、ターゲットをスパッタリング装置に取り付けた後、ターゲット表面やターゲット材料中に残存している水素を除去するために脱水素処理を行うと良い。脱水素処理としては成膜チャンバー内を減圧下で200℃〜600℃に加熱する方法や、加熱しながら窒素や不活性ガスの導入と排気を繰り返す方法等がある。この場合のターゲット冷却液は、水ではなく油脂等を用いるとよい。加熱せずに窒素の導入と排気を繰り返しても一定の効果が得られるが、加熱しながら行うのがより好ましい。また、成膜チャンバー内に酸素または不活性ガス、または酸素と不活性ガスの両方を導入し、高周波やマイクロ波を用いて不活性ガスや酸素のプラズマを発生させても良い。加熱せずに行っても一定の効果が得られるが、加熱しながら行うのがより好ましい。
【0052】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製した半導体装置として、トランジスタを作製する例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ410は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用いることができる。
【0054】
本実施の形態のトランジスタ及びトランジスタの作製方法の一形態を、図2及び図3を用いて説明する。
【0055】
図2(A)(B)にトランジスタの平面及び断面構造の一例を示す。図2(A)(B)に示すトランジスタ410は、トップゲート構造のトランジスタの一つである。
【0056】
図2(A)はトップゲート構造のトランジスタ410の平面図であり、図2(B)は図2(A)の線C1−C2における断面図である。
【0057】
トランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、絶縁層407、酸化物半導体層412、ソース電極層又はドレイン電極層415a、及びソース電極層又はドレイン電極層415b、ゲート絶縁層402、ゲート電極層411を含み、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bにそれぞれ配線層414a、配線層414bが接して設けられ電気的に接続している。
【0058】
また、トランジスタ410はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0059】
以下、図3(A)乃至(E)を用い、基板400上にトランジスタ410を作製する工程を説明する。
【0060】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0061】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。なお、一般に酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、酸化ホウ素(B)より酸化バリウム(BaO)を多く含むガラス基板を用いることが好ましい。
【0062】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラス基板などを用いることができる。また、プラスチック基板等も適宜用いることができる。
【0063】
まず、絶縁表面を有する基板400上に下地膜となる絶縁層407を形成する。酸化物半導体層と接する絶縁層407は、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁層を用いると好ましい。絶縁層407の形成方法としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いることができるが、絶縁層407中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法で絶縁層407を成膜することが好ましい。
【0064】
本実施の形態では、絶縁層407として、スパッタリング法により酸化シリコン層を形成する。基板400を処理室へ搬送し、水素及び水分が除去された高純度酸素を含むスパッタリングガスを導入しシリコンのターゲットを用いて、基板400に絶縁層407として、酸化シリコン層を成膜する。また基板400は室温でもよいし、加熱されていてもよい。
【0065】
例えば、石英(好ましくは合成石英)を用い、基板温度を108℃とし、基板とターゲットの間との距離(T−S間距離)を60mmとし、圧力を0.4Paとし、高周波電源1.5kWを用い、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下で、RFスパッタリング法により酸化シリコン層を成膜する。膜厚は100nmとする。なお、酸化シリコン層を成膜するためのターゲットとして、石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを用いることができる。なお、スパッタリングガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0066】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層407を成膜することが好ましい。絶縁層407に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0067】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜し絶縁層407に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0068】
絶縁層407を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0069】
スパッタリング法にはスパッタリング用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法、直流電源を用いるDCスパッタリング法、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタリング法がある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0070】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタリング装置もある。多元スパッタリング装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0071】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッタリング装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタリング法を用いるスパッタリング装置がある。
【0072】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法として、成膜中にターゲット物質とスパッタリングガス成分とを化学反応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0073】
また、絶縁層407は積層構造でもよく、例えば、基板400側から窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁層と、上記酸化物絶縁層との積層構造としてもよい。
【0074】
例えば、酸化シリコン層と基板との間に水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタリングガスを導入しシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。この場合においても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を成膜することが好ましい。
【0075】
窒化シリコン層を形成する場合も、成膜時に基板を加熱してもよい。
【0076】
絶縁層407として窒化シリコン層と酸化シリコン層とを積層する場合、窒化シリコン層と酸化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に窒素を含むガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を形成し、次に酸素を含むガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を成膜する。窒化シリコン層と酸化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、窒化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0077】
次いで、絶縁層407上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0078】
また、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁層407が形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、後に形成するゲート絶縁層402の成膜前の基板400に行ってもよいし、後に形成するソース電極層又はドレイン電極層415a及びソース電極層又はドレイン電極層415bの形成前の基板400にも同様に行ってもよい。
【0079】
なお、酸化物半導体膜をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、絶縁層407の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。逆スパッタリングとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側に高周波電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0080】
酸化物半導体膜としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O膜や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O膜、In−Sn−Zn−O膜、In−Al−Zn−O膜、Sn−Ga−Zn−O膜、Al−Ga−Zn−O膜、Sn−Al−Zn−O系や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O膜、Sn−Zn−O膜、Al−Zn−O膜、Zn−Mg−O膜、Sn−Mg−O膜、In−Mg−O膜や、単元系金属酸化物であるIn−O膜、Sn−O膜、Zn−O膜などの酸化物半導体膜を用いることができる。また、上記酸化物半導体膜にSiOを含んでもよい。
【0081】
また、酸化物半導体膜は、InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)から選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、ガリウム(Ga)、ガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びマンガン(Mn)、またはガリウム(Ga)及びコバルト(Co)などがある。InMO(ZnO)(m>0)で表記される構造の酸化物半導体膜のうち、MとしてGaを含む構造の酸化物半導体を、上記したIn−Ga−Zn−O酸化物半導体とよび、その薄膜をIn−Ga−Zn−O膜ともよぶこととする。
【0082】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0083】
酸化物半導体膜をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲット(組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比])などを用いることもできる。また、In、Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲットとして、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲットなどを用いることができる。酸化物半導体成膜用ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0084】
酸化物半導体膜は、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板400上に酸化物半導体膜を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体膜成膜時に基板を加熱してもよい。
【0085】
成膜条件の一例としては、基板温度室温、基板とターゲットの間との距離を110mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0086】
次いで、酸化物半導体膜を第1のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層412に加工する(図3(A)参照)。また、島状の酸化物半導体層412を形成するためにレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0087】
なお、ここでの酸化物半導体膜のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0088】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。
【0089】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0090】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0091】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0092】
また、ウェットエッチング後のエッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によって除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれるインジウム等の材料を回収して再利用することにより、資源を有効活用し低コスト化することができる。
【0093】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0094】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェットエッチング法により、酸化物半導体膜を島状の酸化物半導体層412に加工する。
【0095】
次いで、酸化物半導体層412に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れないようにし、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層を得る。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層412の脱水化または脱水素化を行うことができ、酸化物半導体層はi型(真性半導体)又はi型に限りなく近くなる。これにより不純物により閾値電圧がシフトするなどのトランジスタの特性の劣化が促進されるのを防ぎ、オフ電流を低減させることができる。
【0096】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えばLRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0097】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0098】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0099】
また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体膜が結晶化し、微結晶膜または多結晶膜となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、または80%以上の微結晶の酸化物半導体膜となる場合もある。また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体膜となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体膜となる場合もある。
【0100】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0101】
また、酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上に導電膜を積層させた後、該導電膜をパターン形成してソース電極層及びドレイン電極層を形成した後、又は、ソース電極及びドレイン電極上にゲート絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0102】
なお、本実施の形態では、ソース電極層及びドレイン電極層を形成するための導電膜として、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜を設ける。当該導電膜は、含有水素濃度が低減された導電膜であるため、導電膜形成後に加熱処理を施すことで、酸化物半導体膜の純度をより高めることができる。導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、その温度を100℃以上300℃未満とすることが好ましく、220℃乃至280℃とするのがより好ましい。
【0103】
次いで、絶縁層407及び酸化物半導体層412上に、導電膜を形成する。当該導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法によって作製する。導電膜の材料としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、トリウム(Th)のいずれか一または複数から選択された材料を用いてもよい。なお、導電膜の材料に、例えばアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)等の電気陰性度の小さい金属、金属化合物または合金を用いるのが好ましい。
【0104】
また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、アルミニウムに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。例えば、酸化物半導体膜との接触抵抗が低いチタン、タングステンまたはモリブデンなどの金属材料を用いた導電膜上に、電気陰性度が小さい金属、金属化合物または合金を用いた導電膜を形成するのが好ましい。
【0105】
本実施の形態では、導電膜として実施の形態1で示したターゲットを適用した導電膜を用いているので、酸化物半導体層内、或いは、酸化物半導体層との界面とその近傍に存在する、水分または水素などの不純物が、導電膜に吸蔵或いは吸着される。そのため、水分、水素などの不純物の脱離により、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い酸化物半導体層を得ることができ、上記不純物により閾値電圧がシフトするなどのトランジスタの特性の劣化が促進されるのを防ぎ、オフ電流を低減させることができる。
【0106】
なお、上記構成に加えて、導電膜が露出した状態で、窒素、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の不活性ガス雰囲気下において加熱処理を行い、導電膜の表面や内部に吸着されている水分や水素などを取り除くようにしても良い。加熱処理の温度範囲は、100℃以上300℃未満、好ましくは220℃乃至280℃とする。上記加熱処理を行うことで、酸化物半導体層内、或いは、酸化物半導体層との界面とその近傍に存在する、水分、水素などの不純物が、導電膜に、より吸蔵或いは吸着されやすくすることができる。
【0107】
次いで、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bを形成した後、レジストマスクを除去する(図3(B)参照)。なお、形成されたソース電極層、ドレイン電極層の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。
【0108】
本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bとしてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0109】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層412が除去されて、その下の絶縁層407が露出しないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0110】
本実施の形態では、導電膜としてはチタン膜を用いて、酸化物半導体層412にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、チタン膜のエッチャントとしてはアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0111】
なお、第2のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層412は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0112】
第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層412上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満のパターンの場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、低消費電力化も図ることができる。
【0113】
次いで、絶縁層407、酸化物半導体層412、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415b上にゲート絶縁層402を形成する(図3(C)参照)。
【0114】
ここで、不純物を除去することによりi型化又は実質的にi型化された酸化物半導体(高純度化された酸化物半導体)は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感であるため、ゲート絶縁膜との界面は重要である。そのため高純度化された酸化物半導体に接するゲート絶縁膜(GI)は、高品質化が要求される。
【0115】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁膜を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質なゲート絶縁膜とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0116】
また、高密度プラズマCVD装置により得られた絶縁膜は、一定した厚さの膜形成ができるため段差被覆性に優れている。また、高密度プラズマCVD装置により得られる絶縁膜は、薄い膜の厚みを精密に制御することができる。
【0117】
もちろん、ゲート絶縁膜として良質な絶縁膜を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理によってゲート絶縁膜の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁膜であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁膜としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであれば良い。
【0118】
さらに、85℃、2×10V/cm、12時間のゲートバイアス・熱ストレス試験(BT試験)においては、不純物を含んでいる酸化物半導体は、不純物と酸化物半導体の主成分との結合が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切断され、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のシフトを誘発することとなる。これに対して、本発明は、酸化物半導体の不純物、特に水素や水等を極力除去し、上記のようにゲート絶縁膜との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定なトランジスタを得ることを可能としている。
【0119】
また、ゲート絶縁層は、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0120】
ゲート絶縁層の形成は、高密度プラズマCVD装置により行う。ここでは、高密度プラズマCVD装置は、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成できる装置を指している。例えば、3kW〜6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させて、絶縁膜の成膜を行う。
【0121】
チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)と希ガスを導入し、10Pa〜30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁表面を有する基板上に絶縁膜を形成する。その後、モノシランガスの供給を停止し、大気に曝すことなく亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面にプラズマ処理を行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面に行われるプラズマ処理は、絶縁膜の成膜より後に行う。上記プロセス順序を経た絶縁膜は、膜厚が薄く、例えば100nm未満であっても信頼性を確保することができる絶縁膜である。
【0122】
チャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)との流量比は、1:10から1:200の範囲とする。また、チャンバーに導入する希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができるが、中でも安価であるアルゴンを用いることが好ましい。
【0123】
上記プロセス順序を経た絶縁膜は、従来の平行平板型のPCVD装置で得られる絶縁膜とは大きく異なっており、同じエッチャントを用いてエッチング速度を比較した場合において、平行平板型のPCVD装置で得られる絶縁膜の10%以上または20%以上遅く、高密度プラズマCVD装置で得られる絶縁膜は緻密な膜と言える。
【0124】
本実施の形態では、ゲート絶縁層402として膜厚100nmの酸化窒化珪素膜(SiOxNyとも呼ぶ、ただし、x>y>0)を用いる。ゲート絶縁層402は、高密度プラズマCVD装置に成膜ガスとしてモノシラン(SiH)、亜酸化窒素(NO)、及びアルゴン(Ar)を用い、それぞれの流量をSiH/NO/Ar=250/2500/2500(sccm)とし、成膜圧力30Pa、成膜温度325℃にて、5kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させて、成膜を行う。
【0125】
また、スパッタリング法でゲート絶縁層402を成膜してもよい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタリングガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。スパッタリング法を用いるとゲート絶縁層402中に水素が多量に含まれないようにできる。
【0126】
また、ゲート絶縁層402は、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415b側から酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiO(x>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiN(y>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層としてもよい。例えば、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法によりスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成できる。
【0127】
次いで、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート絶縁層402の一部を除去して、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bに達する開口421a、421bを形成する(図3(D)参照)。
【0128】
次に、ゲート絶縁層402、及び開口421a、421b上に導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層411、配線層414a、414bを形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0129】
また、ゲート電極層411、配線層414a、414bは、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0130】
例えば、ゲート電極層411、配線層414a、414bの2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、または銅層上にモリブデン層を積層した2層構造、または銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタルを積層した2層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層または窒化タングステンと、アルミニウムとシリコンの合金またはアルミニウムとチタンの合金と、窒化チタンまたはチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。なお、透光性を有する導電膜を用いてゲート電極層を形成することもできる。透光性を有する導電膜としては、透光性導電性酸化物等をその例に挙げることができる。
【0131】
本実施の形態ではゲート電極層411、配線層414a、414bとしてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。なお、スパッタリングターゲットとして、実施の形態1で示したターゲットを用いてもよい。
【0132】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは100℃以上300℃未満、より好ましくは220℃乃至280℃)を行う。本実施の形態では、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。また、第2の加熱処理は、トランジスタ410上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0133】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0134】
以上の工程で、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された酸化物半導体層412を有するトランジスタ410を形成することができる(図3(E)参照)。
【0135】
また、トランジスタ410上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。例えば、保護絶縁層として酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0136】
また、平坦化絶縁層としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁層を形成してもよい。
【0137】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
【0138】
平坦化絶縁層の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)等の方法や、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0139】
本実施の形態で示すトランジスタにおいて、ソース電極層及びドレイン電極層として用いる導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製している。当該導電膜を活性層として用いる酸化物半導体膜に接して形成することで、酸化物半導体膜中に存在する水素、水などの不純物が導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体膜の純度を高めることができる。また、酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度をより低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0140】
本発明の一態様に係るトランジスタにおいて、活性層に用いられる酸化物半導体膜は、そのキャリア密度を1×1012/cm以下、好ましくは1×1011/cm以下となるようにする。即ち、酸化物半導体層のキャリア密度は、測定限界以下であって限りなくゼロにする。
【0141】
また、以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を、例えば1×10−13A以下にまで低減したトランジスタを提供することができる。
【0142】
なお、酸化物半導体との比較対象たり得る半導体材料としては、炭化珪素(例えば、4H−SiC)がある。酸化物半導体と4H−SiCはいくつかの共通点を有している。キャリア密度はその一例である。フェルミ・ディラック分布に従えば、酸化物半導体の少数キャリアは10−7/cm程度と見積もられるが、これは、4H−SiCにおける6.7×10−11/cmと同様、極めて低い値である。シリコンの真性キャリア密度(1.4×1010/cm程度)と比較すれば、その程度が並はずれていることが良く理解できる。
【0143】
また、酸化物半導体のエネルギーバンドギャップは3.0〜3.5eVであり、4H−SiCのエネルギーバンドギャップは3.26eVであるから、ワイドギャップ半導体という点においても、酸化物半導体と炭化珪素とは共通している。
【0144】
一方で、酸化物半導体と炭化珪素との間には極めて大きな相違点が存在する。それは、プロセス温度である。炭化珪素は一般に1500℃〜2000℃の熱処理を必要とするから、他の半導体材料を用いた半導体素子との積層構造は困難である。このような高い温度では、半導体基板や半導体素子などが破壊されてしまうためである。他方、酸化物半導体は、300〜500℃(ガラス転移温度以下、最大でも700℃程度)の熱処理で作製することが可能であり、他の半導体材料を用いて集積回路を形成した上で、酸化物半導体による半導体素子を形成することが可能となる。
【0145】
また、炭化珪素の場合と異なり、ガラス基板など、耐熱性の低い基板を用いることが可能という利点を有する。さらに、高温での熱処理が不要という点で、炭化珪素を用いた場合と比較してエネルギーコストを十分に低くすることができるという利点を有する。
【0146】
また、酸化物半導体は一般にn型とされているが、開示する発明の一態様では、不純物、特に水や水素を除去することによりi型化を実現する。この点、シリコンなどのように不純物を添加してのi型化ではなく、従来にない技術思想を含むものといえる。
【0147】
<酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構>
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構につき、図12乃至図15を用いて説明する。なお、以下の説明では、理解の容易のため理想的な状況を仮定しており、そのすべてが現実の様子を反映しているとは限らない。また、以下の説明はあくまでも一考察に過ぎず、発明の有効性に影響を与えるものではないことを付記する。
【0148】
図12は、酸化物半導体を用いたトランジスタ(薄膜トランジスタ)の断面図である。ゲート電極(GE1)上にゲート絶縁層(GI)を介して酸化物半導体層(OS)が設けられ、その上にソース電極(S)およびドレイン電極(D)が設けられ、ソース電極(S)およびドレイン電極(D)を覆うように絶縁層が設けられている。
【0149】
図13には、図12のA−A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。また、図13中の黒丸(●)は電子を示し、白丸(○)は正孔を示し、それぞれは電荷(−q,+q)を有している。ドレイン電極に正の電圧(V>0)を印加した上で、破線はゲート電極に電圧を印加しない場合(V=0)、実線はゲート電極に正の電圧(V>0)を印加する場合を示す。ゲート電極に電圧を印加しない場合は高いポテンシャル障壁のために電極から酸化物半導体側へキャリア(電子)が注入されず、電流を流さないオフ状態を示す。一方、ゲートに正の電圧を印加するとポテンシャル障壁が低下し、電流を流すオン状態を示す。
【0150】
図14には、図12におけるB−B’の断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。図14(A)は、ゲート電極(GE1)に正の電圧(V>0)が与えられた状態であり、ソース電極とドレイン電極との間にキャリア(電子)が流れるオン状態を示している。また、図14(B)は、ゲート電極(GE1)に負の電圧(V<0)が印加された状態であり、オフ状態(少数キャリアは流れない状態)である場合を示す。
【0151】
図15は、真空準位と金属の仕事関数(φ)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す。
【0152】
常温において金属中の電子は縮退しており、フェルミ準位は伝導帯内に位置する。一方、従来の酸化物半導体はn型であり、そのフェルミ準位(E)は、バンドギャップ中央に位置する真性フェルミ準位(E)から離れて、伝導帯寄りに位置している。なお、酸化物半導体において水素の一部はドナーとなりn型化する要因の一つであることが知られている。
【0153】
これに対して開示する発明の一態様に係る酸化物半導体は、n型化の要因である水素を酸化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高純度化することにより真性(i型)とし、または真性とせんとしたものである。すなわち、不純物元素を添加してi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去することにより、高純度化されたi型(真性半導体)またはそれに近づけることを特徴としている。これにより、フェルミ準位(E)は真性フェルミ準位(E)と同程度とすることができる。
【0154】
酸化物半導体のバンドギャップ(E)は3.15eVで、電子親和力(χ)は4.3Vと言われている。ソース電極およびドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕事関数は、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属−酸化物半導体界面において、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0155】
このとき電子は、図14(A)で示すように、ゲート絶縁層と高純度化された酸化物半導体との界面付近(酸化物半導体のエネルギー的に安定な最低部)を移動する。
【0156】
また、図14(B)に示すように、ゲート電極(GE1)に負の電位が与えられると、少数キャリアであるホールは実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近い値となる。
【0157】
このように、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高純度化することにより、真性(i型)とし、または実質的に真性となるため、ゲート絶縁層との界面特性が顕在化する。そのため、ゲート絶縁層には、酸化物半導体と良好な界面を形成できるものが要求される。具体的には、例えば、VHF帯〜マイクロ波帯の電源周波数で生成される高密度プラズマを用いたCVD法で作製される絶縁層や、スパッタリング法で作製される絶縁層などを用いることが好ましい。
【0158】
酸化物半導体を高純度化しつつ、酸化物半導体とゲート絶縁層との界面を良好なものとすることにより、例えば、トランジスタのチャネル幅(W)が1×10μm、チャネル長(L)が3μmの場合には、10−13A以下のオフ電流、0.1V/dec.のサブスレッショルドスイング値(S値)(ゲート絶縁層の厚さ:100nm)が実現され得る。
【0159】
このように、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高純度化することにより、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0160】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0161】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製した半導体装置として、トランジスタを作製する例を示す。なお、実施の形態2と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、実施の形態2と同様とすればよく、その繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明も省略する。本実施の形態で示すトランジスタ460は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用いることができる。
【0162】
本実施の形態のトランジスタ及びトランジスタの作製方法の一形態を、図4及び図5を用いて説明する。
【0163】
図4(A)(B)にトランジスタの平面及び断面構造の一例を示す。図4(A)(B)に示すトランジスタ460は、トップゲート構造のトランジスタの一つである。
【0164】
図4(A)はトップゲート構造のトランジスタ460の平面図であり、図4(B)は図4(A)の線D1−D2における断面図である。
【0165】
トランジスタ460は、絶縁表面を有する基板450上に、絶縁層457、ソース電極層又はドレイン電極層465a(465a1、465a2)、酸化物半導体層462、ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468、ゲート絶縁層452、ゲート電極層461(461a、461b)を含み、ソース電極層又はドレイン電極層465a(465a1、465a2)は配線層468を介して配線層464と電気的に接続している。また、図示していないが、ソース電極層又はドレイン電極層465bもゲート絶縁層452に設けられた開口において配線層と電気的に接続する。
【0166】
以下、図5(A)乃至(E)を用い、基板450上にトランジスタ460を作製する工程を説明する。
【0167】
まず、絶縁表面を有する基板450上に下地膜となる絶縁層457を形成する。
【0168】
本実施の形態では、絶縁層457として、スパッタリング法により酸化シリコン層を形成する。基板450を処理室へ搬送し、水素及び水分が除去された高純度酸素を含むスパッタリングガスを導入しシリコンターゲット又は石英(好ましくは合成石英)を用いて、基板450に絶縁層457として、酸化シリコン層を成膜する。なお、スパッタリングガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0169】
例えば、スパッタリングガスの純度を6Nとし、石英(好ましくは合成石英)を用い、基板温度を108℃とし、基板とターゲットの間との距離(T−S間距離)を60mmとし、圧力を0.4Paとし、高周波電源1.5kWを用い、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下で、RFスパッタリング法により酸化シリコン層を成膜する。膜厚は100nmとする。なお、酸化シリコン層を成膜するためのターゲットとして、石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを用いることができる。
【0170】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層457を成膜することが好ましい。絶縁層457に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した場合、絶縁層457に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0171】
絶縁層457を成膜する際に用いるスパッタリングガスは、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0172】
また、絶縁層457は積層構造でもよく、例えば、基板450側から窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁層と、上記酸化物絶縁層との積層構造としてもよい。
【0173】
例えば、酸化シリコン層と基板との間に水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタリングガスを導入しシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。この場合においても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を成膜することが好ましい。
【0174】
次いで、絶縁層457上に、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により導電膜を形成し、第1のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2を形成した後、レジストマスクを除去する(図5(A)参照)。ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2は断面図では分断されて示されているが、連続した膜である。なお、形成されたソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。
【0175】
ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2の材料としては、アルミニウムj(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、トリウム(Th)のいずれか一または複数から選択された材料を用いてもよい。なお、水素よりも電気陰性度の低い金属材料を含むと、酸化物半導体膜からの不純物の引き抜きの効果がより得られるため好ましい。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、アルミニウムに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0176】
本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2として、実施の形態1で示したターゲットを用いたスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0177】
次いで、絶縁層457上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0178】
次に酸化物半導体膜を、第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層462に加工する(図5(B)参照)。本実施の形態では、酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体成膜用ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。
【0179】
酸化物半導体膜は、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタリングガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板450上に成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体膜成膜時に基板を100℃乃至400℃に加熱してもよい。
【0180】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0181】
成膜条件の一例としては、基板温度を室温とし、基板とターゲットの間との距離を110mmとし、圧力を0.4Paとし、直流(DC)電源0.5kWを用い、酸素及びアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm)の雰囲気とする条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0182】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェットエッチング法により、酸化物半導体膜を島状の酸化物半導体層462に加工する。
【0183】
本実施の形態では、酸化物半導体層462に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、100℃以上450℃以下とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層を得る。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層462の脱水化または脱水素化を行うことができる。
【0184】
本実施の形態では、導電膜として実施の形態1で示したターゲットを適用した導電膜を用いているので、酸化物半導体層内、絶縁層内、或いは、酸化物半導体層又は絶縁層との界面とその近傍に存在する、水分または水素などの不純物が、導電膜に吸蔵或いは吸着される。そのため、水分、水素などの不純物の脱離により、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い酸化物半導体層を得ることができ、上記不純物により閾値電圧がシフトするなどのトランジスタの特性の劣化が促進されるのを防ぎ、オフ電流を低減させることができる。
【0185】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0186】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0187】
また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体膜が結晶化し、微結晶膜または多結晶膜となる場合もある。
【0188】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0189】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上にさらにソース電極又はドレイン電極を積層させた後、ソース電極及びドレイン電極上にゲート絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0190】
次いで、絶縁層457及び酸化物半導体層462上に、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により導電膜を形成し、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468を形成した後、レジストマスクを除去する(図5(C)参照)。ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468はソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2と同様な材料及び工程で形成すればよい。
【0191】
本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468としてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。本実施の形態では、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層又はドレイン電極層465bに同じチタン膜を用いる例のため、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層又はドレイン電極層465bとはエッチングにおいて選択比がとれない。よって、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2が、ソース電極層又はドレイン電極層465bのエッチング時にエッチングされないように、酸化物半導体層462に覆われないソース電極層又はドレイン電極層465a2上に配線層468を設けている。ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層又はドレイン電極層465bとにエッチング工程において高い選択比を有する異なる材料を用いる場合には、エッチング時にソース電極層又はドレイン電極層465a2を保護する配線層468は必ずしも設けなくてもよい。
【0192】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層462は除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0193】
本実施の形態では、導電膜としてチタン膜を用いて、酸化物半導体層462にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、チタン膜のエッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0194】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層462は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0195】
次いで、絶縁層457、酸化物半導体層462、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2、ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468上にゲート絶縁層452を形成する。
【0196】
ゲート絶縁層452は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層452中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法でゲート絶縁層452を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタリングガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0197】
ゲート絶縁層452は、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2、ソース電極層又はドレイン電極層465b側から酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。本実施の形態では、圧力を0.4Paとし、高周波電源1.5kWを用い、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下としてRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成する。
【0198】
次いで、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート絶縁層452の一部を除去して、配線層468に達する開口423を形成する(図5(D)参照)。図示しないが開口423の形成時にソース電極層又はドレイン電極層465bに達する開口を形成してもよい。本実施の形態では、ソース電極層又はドレイン電極層465bへの開口はさらに層間絶縁層を積層した後に形成し、電気的に接続する配線層を開口に形成する例とする。
【0199】
次に、ゲート絶縁層452、及び開口423上に導電膜を形成した後、第5のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層461(461a、461b)、配線層464を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0200】
また、ゲート電極層461(461a、461b)、配線層464は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。また、ゲート電極層461(461a、461b)、配線層464を形成するためのスパッタリングターゲットとして、実施の形態1で示したターゲットを用いてもよい。
【0201】
本実施の形態ではゲート電極層461(461a、461b)、配線層464としてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0202】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(例えば100℃以上300℃未満、好ましくは220℃乃至280℃)を行う。本実施の形態では、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。また、第2の加熱処理は、トランジスタ460上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0203】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0204】
以上の工程で、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された酸化物半導体層462を有するトランジスタ460を形成することができる(図5(E)参照)。
【0205】
また、トランジスタ460上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。なお、図示しないが、ゲート絶縁層452、保護絶縁層や平坦化絶縁層にソース電極層又はドレイン電極層465bに達する開口を形成し、その開口に、ソース電極層又はドレイン電極層465bと電気的に接続する配線層を形成する。
【0206】
本実施の形態で示すトランジスタにおいて、ソース電極層及びドレイン電極層として用いる導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製している。当該導電膜を活性層として用いる酸化物半導体膜に接して形成することで、酸化物半導体膜中に存在する水素、水などの不純物が導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体膜の純度を高めることができる。また、酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度をより低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0207】
また、以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。
【0208】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0209】
(実施の形態4)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製したトランジスタの他の例を示す。なお、実施の形態2と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、実施の形態2と同様とすればよく、その繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明も省略する。本実施の形態で示すトランジスタ425、426は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415b用の導電膜として用いることができる。
【0210】
本実施の形態のトランジスタを、図6を用いて説明する。
【0211】
図6(A)(B)にトランジスタの断面構造の一例を示す。図6(A)(B)に示すトランジスタ425、426は、酸化物半導体層を導電層とゲート電極層とで挟んだ構造のトランジスタの一つである。
【0212】
また、図6(A)(B)において、基板はシリコン基板を用いており、シリコン基板420上に設けられた絶縁層422上にトランジスタ425、426がそれぞれ設けられている。
【0213】
図6(A)において、シリコン基板420に設けられた絶縁層422と絶縁層407との間に少なくとも酸化物半導体層412全体と重なるように導電層427が設けられている。
【0214】
なお、図6(B)は、絶縁層422と絶縁層407との間の導電層が、導電層424のようにエッチングにより加工され、酸化物半導体層412の少なくともチャネル領域を含む一部と重なる例である。
【0215】
導電層427、424は後工程で行われる加熱処理温度に耐えられる金属材料であればよく、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜、または上述した元素を成分とする窒化物などを用いることができる。また、単層構造でも積層構造でもよく、例えばタングステン層単層、又は窒化タングステン層とタングステン層との積層構造などを用いることができる。
【0216】
また、導電層427、424は、電位がトランジスタ425、426のゲート電極層411と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層427、424の電位がGNDあるいは0Vという固定電位であってもよい。
【0217】
導電層427、424によって、トランジスタ425、426の電気特性を制御することができる。
【0218】
以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。
【0219】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0220】
(実施の形態5)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製したトランジスタの他の例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ390は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用いることができる。
【0221】
本実施の形態のトランジスタの断面構造の一例を図7(A)乃至(E)に示す。図7(A)乃至(E)に示すトランジスタ390は、ボトムゲート構造のトランジスタの一つであり逆スタガ型トランジスタともいう。
【0222】
また、トランジスタ390はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0223】
以下、図7(A)乃至(E)を用い、基板394上にトランジスタ390を作製する工程を説明する。
【0224】
まず、絶縁表面を有する基板394上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層391を形成する。形成されたゲート電極層の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0225】
絶縁表面を有する基板394に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0226】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。なお、一般に酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、酸化ホウ素(B)より酸化バリウム(BaO)を多く含むガラス基板を用いることが好ましい。
【0227】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラス基板などを用いることができる。また、プラスチック基板等も適宜用いることができる。
【0228】
下地膜となる絶縁膜を基板394とゲート電極層391との間に設けてもよい。下地膜は、基板394からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0229】
また、ゲート電極層391の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0230】
例えば、ゲート電極層391の2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、銅層上にモリブデン層を積層した2層構造、銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタルを積層した2層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層構造、又は窒化タングステン層とタングステン層とを積層した2層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層または窒化タングステンと、アルミニウムとシリコンの合金またはアルミニウムとチタンの合金と、窒化チタンまたはチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。なお、透光性を有する導電膜を用いてゲート電極層を形成することもできる。透光性を有する導電膜としては、透光性導電性酸化物等をその例に挙げることができる。
【0231】
次いで、ゲート電極層391上にゲート絶縁層397を形成する。
【0232】
ゲート絶縁層397は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層397中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法でゲート絶縁層397を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタリングガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。また、ゲート絶縁層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いても良い。
【0233】
ゲート絶縁層397は、ゲート電極層391側から窒化シリコン層と酸化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下(本実施の形態では50nm)の窒化シリコン層(SiN(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下(本実施の形態では50nm)の酸化シリコン層(SiO(x>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層とする。
【0234】
また、ゲート絶縁層397、後に形成する酸化物半導体膜393に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理を行うことが好ましい。例えば、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極層391が形成された基板394、又はゲート絶縁層397までが形成された基板394を予備加熱し、基板394に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以下好ましくは150℃以上300℃以下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、酸化物絶縁層396の成膜前に、ソース電極層395a及びドレイン電極層395bまで形成した基板394にも同様に行ってもよい。
【0235】
次いで、ゲート絶縁層397上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜393を形成する(図7(A)参照)。
【0236】
なお、酸化物半導体膜393をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、ゲート絶縁層397の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。逆スパッタリングとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0237】
酸化物半導体膜393は、スパッタリング法により成膜する。酸化物半導体膜393は、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Sn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体膜を用いる。本実施の形態では、酸化物半導体膜393をIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体成膜用ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜393は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行ってもよい。
【0238】
酸化物半導体膜393をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲット(組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比])などを用いることもできる。また、In、Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲットとして、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。酸化物半導体成膜用ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0239】
減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板を室温又は400℃未満の温度に加熱する。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板394上に酸化物半導体膜393を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、クライオポンプにより処理室内に残留する水分を除去しながらスパッタリング成膜を行うことで、酸化物半導体膜393を成膜する際の基板温度は室温から400℃未満とすることができる。
【0240】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mmとし、圧力を0.6Paとし、直流(DC)電源0.5kWを用い、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下とする条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0241】
スパッタリング法にはスパッタリング用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法、直流電源を用いるDCスパッタリング法、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタリング法がある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0242】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタリング装置もある。多元スパッタリング装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0243】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッタリング装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタリング法を用いるスパッタリング装置もある。
【0244】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法として、成膜中にターゲット物質とスパッタリングガス成分とを化学反応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0245】
次いで、酸化物半導体膜を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層399に加工する(図7(B)参照)。また、島状の酸化物半導体層399を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0246】
また、ゲート絶縁層397にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体層399の形成時に行うことができる。
【0247】
なお、ここでの酸化物半導体膜393のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0248】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。
【0249】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0250】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0251】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0252】
また、ウェットエッチング後のエッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によって除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれるインジウム等の材料を回収して再利用することにより、資源を有効活用し低コスト化することができる。
【0253】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0254】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタリングを行い、酸化物半導体層399及びゲート絶縁層397の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0255】
次いで、ゲート絶縁層397、及び酸化物半導体層399上に、導電膜を形成する。当該導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法によって作製する。導電膜の材料としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、トリウムのいずれか一または複数から選択された材料を用いてもよい。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、アルミニウムに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。なお、導電膜の材料として、電気陰性度の小さい材料を用いるのが好ましい。
【0256】
本実施の形態では、導電膜として実施の形態1で示したターゲットを適用した導電膜を用いているので、酸化物半導体層内、絶縁層内、或いは、酸化物半導体層又は絶縁層との界面とその近傍に存在する、水分または水素などの不純物が、導電膜に吸蔵或いは吸着される。そのため、水分、水素などの不純物の脱離により、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い酸化物半導体層を得ることができ、上記不純物により閾値電圧がシフトするなどのトランジスタの特性の劣化が促進されるのを防ぎ、オフ電流を低減させることができる。
【0257】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層395a、ドレイン電極層395bを形成した後、レジストマスクを除去する(図7(C)参照)。
【0258】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層399上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満のパターンの露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、低消費電力化も図ることができる。
【0259】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層399が除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0260】
本実施の形態では、導電膜としてチタン膜を用いて、酸化物半導体層399にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、チタン膜のエッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0261】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層399は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層395a、ドレイン電極層395bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0262】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0263】
亜酸化窒素(NO)、窒素(N)、またはアルゴン(Ar)などのガスを用いたプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0264】
プラズマ処理を行った場合、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層として酸化物絶縁層396を形成する(図7(D)参照)。本実施の形態では、酸化物半導体層399がソース電極層395a、ドレイン電極層395bと重ならない領域において、酸化物半導体層399と酸化物絶縁層396とが接するように形成する。
【0265】
本実施の形態では、酸化物絶縁層396として、島状の酸化物半導体層399、ソース電極層395a、ドレイン電極層395bまで形成された基板394を室温で、又は100℃未満の温度に加熱して、水素及び水分が除去された高純度酸素を含むスパッタリングガスを導入しシリコンのターゲットを用いて、欠陥を含む酸化シリコン層を成膜する。
【0266】
例えば、スパッタリングガスの純度を6Nとし、ボロンがドープされたシリコンターゲット(抵抗値0.01Ωcm)を用い、基板とターゲットの間との距離(T−S間距離)を89mmとし、圧力を0.4Paとし、直流(DC)電源6kWを用い、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下として、パルスDCスパッタリング法により酸化シリコン層を成膜する。膜厚は300nmとする。なお、酸化シリコン層を成膜するためのターゲットとして、シリコンターゲットに代えて石英(好ましくは合成石英)を用いることができる。なお、スパッタリングガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0267】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層396を成膜することが好ましい。酸化物半導体層399及び酸化物絶縁層396に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0268】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物絶縁層396に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0269】
なお、酸化物絶縁層396として、酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0270】
さらに、酸化物絶縁層396と酸化物半導体層399とを接した状態で100℃乃至400℃で加熱処理を行ってもよい。本実施の形態における酸化物絶縁層396は欠陥を多く含むため、この加熱処理によって酸化物半導体層399中に含まれる水素、水分、水酸基又は水素化物などの不純物を酸化物絶縁層396に拡散させ、酸化物半導体層399中に含まれる該不純物をより低減させることができる。
【0271】
以上の工程で、水素、水分、水酸基又は水素化物の濃度が低減された酸化物半導体層392を有するトランジスタ390を形成することができる(図7(E)参照)。
【0272】
本実施の形態で示すトランジスタにおいて、ソース電極層及びドレイン電極層として用いる導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製している。当該導電膜を活性層として用いる酸化物半導体膜に接して形成することで、酸化物半導体膜中に存在する水素、水などの不純物が導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体膜の純度を高めることができる。また、酸化物半導体膜を成膜するに際し、雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度をより低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0273】
酸化物絶縁層上に保護絶縁層を設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層398を酸化物絶縁層396上に形成する。保護絶縁層398としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いる。
【0274】
保護絶縁層398として、酸化物絶縁層396まで形成された基板394を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタリングガスを導入しシリコンのターゲットを用いて窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、酸化物絶縁層396と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層398を成膜することが好ましい。
【0275】
保護絶縁層398を形成する場合、保護絶縁層398の成膜時に100℃〜400℃に基板394を加熱することで、酸化物半導体層中に含まれる水素若しくは水分を酸化物絶縁層に拡散させることができる。この場合上記酸化物絶縁層396の形成後に加熱処理を行わなくてもよい。
【0276】
酸化物絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、保護絶縁層398として窒化シリコン層を積層する場合、酸化シリコン層と窒化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に酸素を含むガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を形成し、次に窒素を含むガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層と窒化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、酸化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。この場合、酸化物絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、保護絶縁層398として窒化シリコン層を積層した後、酸化物半導体層中に含まれる水素若しくは水分を酸化物絶縁層に拡散させるための加熱処理(温度100℃乃至400℃)を行うとよい。
【0277】
保護絶縁層の形成後、さらに大気中において、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0278】
また、ゲート絶縁層上にチャネル形成領域とする酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体層中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。
【0279】
上記の工程は、400℃以下の温度で行われるため、厚さが1mm以下で、一辺が1mを超えるガラス基板を用いる製造工程にも適用することができる。また、400℃以下の処理温度で全ての工程を行うことができるので、表示パネルを製造するために多大なエネルギーを消費しないで済む。
【0280】
以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。
【0281】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0282】
(実施の形態6)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製したトランジスタの他の例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ310は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用いることができる。
【0283】
本実施の形態のトランジスタの断面構造の一例を図8(A)乃至(E)に示す。図8(A)乃至(E)に示すトランジスタ310は、ボトムゲート構造のトランジスタの一つであり逆スタガ型トランジスタともいう。
【0284】
また、トランジスタ310はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0285】
以下、図8(A)乃至(E)を用い、基板300上にトランジスタ310を作製する工程を説明する。
【0286】
まず、絶縁表面を有する基板300上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層311を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0287】
絶縁表面を有する基板300に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。たとえば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0288】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。なお、一般に酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、酸化ホウ素(B)より酸化バリウム(BaO)を多く含むガラス基板を用いることが好ましい。
【0289】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラス基板などを用いることができる。
【0290】
下地膜となる絶縁膜を基板300とゲート電極層311との間に設けてもよい。下地膜は、基板300からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜、又は酸化窒化珪素膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0291】
また、ゲート電極層311の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。また、ゲート電極層は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法によって作製しても良い。
【0292】
また、ゲート電極層311は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極層311の2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、銅層上にモリブデン層を積層した2層の積層構造、銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタルを積層した2層の積層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層の積層構造、又は窒化タングステン層とタングステン層との2層の積層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層または窒化タングステン層と、アルミニウムと珪素の合金またはアルミニウムとチタンの合金と、窒化チタン層またはチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。
【0293】
次いで、ゲート電極層311上にゲート絶縁層302を形成する。
【0294】
ゲート絶縁層302は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化珪素層、窒化珪素層、酸化窒化珪素層、窒化酸化珪素層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。例えば、成膜ガスとして、SiH、酸素及び窒素を用いてプラズマCVD法により酸化窒化珪素層を形成すればよい。ゲート絶縁層302の膜厚は、100nm以上500nm以下とし、積層の場合は、例えば、膜厚50nm以上200nm以下の第1のゲート絶縁層と、第1のゲート絶縁層上に膜厚5nm以上300nm以下の第2のゲート絶縁層の積層とする。
【0295】
本実施の形態では、ゲート絶縁層302としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0296】
次いで、ゲート絶縁層302上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜330を形成する。
【0297】
なお、酸化物半導体膜330をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、ゲート絶縁層302の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0298】
酸化物半導体膜330は、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Sn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体膜を用いる。本実施の形態では、酸化物半導体膜330としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体成膜用ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。この段階での断面図が図8(A)に相当する。また、酸化物半導体膜330は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行ってもよい。
【0299】
酸化物半導体膜330をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲット(組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比])などを用いることもできる。また、In、Ga、およびZnを含む酸化物半導体成膜用ターゲットとして、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。酸化物半導体成膜用ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%である。充填率の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0300】
酸化物半導体膜330を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0301】
減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタリングガスを導入し、金属酸化物をターゲットとしてゲート絶縁層302上に酸化物半導体膜330を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0302】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mmとし、圧力を0.6Paとし、直流(DC)電源0.5kWを用い、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下とする条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0303】
次いで、酸化物半導体膜330を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。また、島状の酸化物半導体層を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0304】
なお、ここでの酸化物半導体膜のエッチングは、ウェットエッチングに限定されずドライエッチングを用いてもよい。
【0305】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0306】
次いで、酸化物半導体層に第1の加熱処理を行う。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防いだ酸化物半導体層331を得る(図8(B)参照)。
【0307】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えばLRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0308】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0309】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0310】
また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体膜が結晶化し、微結晶膜または多結晶膜となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、または80%以上の微結晶の酸化物半導体膜となる場合もある。また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体膜となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体膜となる場合もある。
【0311】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体膜330に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0312】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上に導電膜を積層させた後、当該導電膜をソース電極及びドレイン電極層に加工後、ソース電極及びドレイン電極層上に保護絶縁膜を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0313】
また、ゲート絶縁層302にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体膜330に脱水化または脱水素化処理を行う前でも行った後に行ってもよい。
【0314】
本実施の形態では、ソース電極層及びドレイン電極層を形成するための導電膜として、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜を設ける。当該導電膜は、含有水素濃度が低減された導電膜であるため、酸化物半導体層と接して設けて加熱処理を施すことで、酸化物半導体層の純度をより高めることができる。なお、導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。例えば、加熱温度を100℃以上300℃未満とすることが好ましく、220℃乃至280℃とするのがより好ましい。
【0315】
次いで、ゲート絶縁層302、及び酸化物半導体層331上に、導電膜333を形成する(図8(B))。当該導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法によって作製する。導電膜の材料としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、トリウムのいずれか一または複数から選択された材料を用いてもよい。なお、導電膜の材料として電気陰性度の小さい材料、具体的には水素よりも電気陰性度の小さい材料を用いると、酸化物半導体層からの水素、又は水分等の不純物の引き抜き効果をより得られるため、好ましい。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、アルミニウムに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0316】
本実施の形態では、導電膜333として実施の形態1で示したターゲットを適用した導電膜を用いているので、酸化物半導体層内、或いは、酸化物半導体層との界面とその近傍に存在する、水分または水素などの不純物が、導電膜に吸蔵或いは吸着される。そのため、水分、水素などの不純物の脱離により、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い酸化物半導体層を得ることができ、上記不純物により閾値電圧がシフトするなどのトランジスタの特性の劣化が促進されるのを防ぎ、オフ電流を低減させることができる。
【0317】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜333上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層315a、ドレイン電極層315bを形成した後、レジストマスクを除去する(図8(C)参照)。
【0318】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層331上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満のパターンの露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、低消費電力化も図ることができる。
【0319】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層331は除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0320】
本実施の形態では、導電膜としてチタン膜を用いて、酸化物半導体層331にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、チタン膜のエッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0321】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層331は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層315a、ドレイン電極層315bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0322】
また、酸化物半導体層とソース電極層及びドレイン電極層の間に、酸化物導電層を形成してもよい。酸化物導電層とソース電極層及びドレイン電極層を形成するための金属層は、連続成膜が可能である。酸化物導電層はソース領域及びドレイン領域として機能しうる。
【0323】
ソース領域及びドレイン領域として、酸化物導電層を酸化物半導体層とソース電極層及びドレイン電極層との間に設けることで、ソース領域及びドレイン領域の低抵抗化を図ることができ、トランジスタの高速動作をすることができる。
【0324】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0325】
次いで、亜酸化窒素(NO)、窒素(N)、またはアルゴン(Ar)などのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0326】
プラズマ処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層316を形成する。
【0327】
酸化物絶縁層316は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタリング法など、酸化物絶縁層316に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。酸化物絶縁層316に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、又は水素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜き、が生じ酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、酸化物絶縁層316はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0328】
本実施の形態では、スパッタリング法を用いて酸化物絶縁層316として膜厚200nmの酸化珪素膜を成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲気下でスパッタリング法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層316は、水分や、水素イオンや、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。
【0329】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層316を成膜することが好ましい。酸化物半導体層331及び酸化物絶縁層316に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0330】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物絶縁層316に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0331】
酸化物絶縁層316を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0332】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層316と接した状態で加熱される。
【0333】
以上の工程を経ることによって、まず、成膜後の酸化物半導体膜に対して脱水化または脱水素化のための第1の加熱処理によって、酸素欠乏型となって低抵抗化、すなわちn型化(n化など)する。その後、酸化物絶縁層と酸化物半導体層が接した状態で加熱される第2の加熱処理によって、第1の加熱処理で低抵抗化された酸化物半導体層331に酸素が供給され、酸素欠損部を補償する。その結果、ゲート電極層311と重なるチャネル形成領域313は高抵抗化(i型化)し、ソース電極層315aに重なる高抵抗ソース領域314aと、ドレイン電極層315bに重なる高抵抗ドレイン領域314bとが自己整合的に形成される。以上の工程でトランジスタ310が形成される(図8(D)参照)。
【0334】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0335】
なお、ドレイン電極層315b(及びソース電極層315a)と重畳した酸化物半導体層において高抵抗ドレイン領域314b(又は高抵抗ソース領域314a)を形成することにより、トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、高抵抗ドレイン領域314bを形成することで、ドレイン電極層315bから高抵抗ドレイン領域314b、チャネル形成領域313にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、ドレイン電極層315bに高電源電位VDDを供給する配線に接続して動作させる場合、ゲート電極層311とドレイン電極層315bとの間に高電圧が印加されても高抵抗ドレイン領域がバッファとなり局所的な電界集中が生じにくく、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0336】
また、酸化物半導体層における高抵抗ソース領域又は高抵抗ドレイン領域は、酸化物半導体層の膜厚が15nm以下と薄い場合は膜厚方向全体にわたって形成される。しかし、酸化物半導体層の膜厚が30nm以上50nm以下とより厚い場合は、酸化物半導体層の一部、ソース電極層又はドレイン電極層と接する領域及びその近傍が低抵抗化し、高抵抗ソース領域又は高抵抗ドレイン領域が形成され、酸化物半導体層においてゲート絶縁膜に近い領域はi型とすることもできる。
【0337】
酸化物絶縁層316上にさらに保護絶縁層を形成してもよい。例えば、RFスパッタリング法を用いて窒化珪素膜を形成する。RFスパッタリング法は、量産性がよいため、保護絶縁層の成膜方法として好ましい。保護絶縁層は、水分や、水素イオンや、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などを用いる。本実施の形態では、保護絶縁層として保護絶縁層303を、窒化シリコン膜を用いて形成する(図8(E)参照)。
【0338】
本実施の形態では、保護絶縁層303として、酸化物絶縁層316まで形成された基板300を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタリングガスを導入しシリコンのターゲットを用いて窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、酸化物絶縁層316と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層303を成膜することが好ましい。
【0339】
保護絶縁層303上に平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0340】
以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。
【0341】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0342】
(実施の形態7)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製したトランジスタの他の例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ360は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用いることができる。
【0343】
本実施の形態のトランジスタの断面構造の一例を図9(A)乃至(D)に示す。図9(A)乃至(D)に示すトランジスタ360は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造のトランジスタの一つであり逆スタガ型トランジスタともいう。
【0344】
また、トランジスタ360はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0345】
以下、図9(A)乃至(D)を用い、基板320上にトランジスタ360を作製する工程を説明する。
【0346】
まず、絶縁表面を有する基板320上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層361を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0347】
また、ゲート電極層361の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。なお、ゲート電極層は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法によって作製しても良い。
【0348】
次いで、ゲート電極層361上にゲート絶縁層322を形成する。
【0349】
本実施の形態では、ゲート絶縁層322としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0350】
次いで、ゲート絶縁層322上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。本実施の形態では、酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体成膜用ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。
【0351】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体膜を成膜することが好ましい。酸化物半導体膜に水素、水酸基又は水分がより含まれないようにするためである。
【0352】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0353】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0354】
次いで、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行う。脱水化または脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層332を得る(図9(A)参照)。
【0355】
次いで、亜酸化窒素(NO)、窒素(N)、またはアルゴン(Ar)などのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0356】
次いで、ゲート絶縁層322、及び酸化物半導体層332上に、酸化物絶縁層を形成した後、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って酸化物絶縁層366を形成した後、レジストマスクを除去する。
【0357】
本実施の形態では、酸化物絶縁層366としてスパッタリング法を用いて膜厚200nmの酸化珪素膜を成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲気下でスパッタリング法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層366は、水分や、水素イオンや、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。
【0358】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層366を成膜することが好ましい。酸化物半導体層332及び酸化物絶縁層366に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0359】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物絶縁層366に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0360】
酸化物絶縁層366を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0361】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行ってもよい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層366と接した状態で加熱される。
【0362】
本実施の形態は、さらに酸化物絶縁層366が設けられ一部が露出している酸化物半導体層332を、窒素、不活性ガス雰囲気下、又は減圧下で加熱処理を行う。酸化物絶縁層366によって覆われていない露出された酸化物半導体層332の領域は、窒素、不活性ガス雰囲気下、又は減圧下で加熱処理を行うと、低抵抗化することができる。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。
【0363】
酸化物絶縁層366が設けられた酸化物半導体層332に対する窒素雰囲気下の加熱処理によって、酸化物半導体層332の露出領域は低抵抗化し、抵抗の異なる領域(図9(B)においては斜線領域及び白地領域で示す)を有する酸化物半導体層362となる。
【0364】
次いで、ゲート絶縁層322、酸化物半導体層362、及び酸化物絶縁層366上に、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層365a、ドレイン電極層365bを形成した後、レジストマスクを除去する(図9(C)参照)。
【0365】
本実施の形態では、ソース電極層365a、ドレイン電極層365bを形成するための導電膜として実施の形態1で示したターゲットを適用した導電膜を用いているので、酸化物半導体層内、或いは、酸化物半導体層との界面とその近傍に存在する、水分または水素などの不純物が、導電膜に吸蔵或いは吸着される。そのため、水分、水素などの不純物の脱離により、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い酸化物半導体層を得ることができ、上記不純物により閾値電圧がシフトするなどのトランジスタの特性の劣化が促進されるのを防ぎ、オフ電流を低減させることができる。
【0366】
ソース電極層365a、ドレイン電極層365bの材料としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。
【0367】
以上の工程を経ることによって、まず、成膜後の酸化物半導体膜に対して脱水化または脱水素化のための第1の加熱処理によって、酸素欠乏型となって低抵抗化、すなわちn型化(n化など)する。その後、酸化物絶縁層と酸化物半導体層が接した状態で加熱される第2の加熱処理によって、第1の加熱処理で低抵抗化された酸化物半導体層362に酸素が供給され、酸素欠損部を補償する。その結果、ゲート電極層361と重なるチャネル形成領域363は、高抵抗化(i型化)し、ソース電極層365aに重なる高抵抗ソース領域364aと、ドレイン電極層365bに重なる高抵抗ドレイン領域364bとが自己整合的に形成される。以上の工程でトランジスタ360が形成される。
【0368】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0369】
なお、ドレイン電極層365b(及びソース電極層365a)と重畳した酸化物半導体層において高抵抗ドレイン領域364b(又は高抵抗ソース領域364a)を形成することにより、トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、高抵抗ドレイン領域364bを形成することで、ドレイン電極層365bから高抵抗ドレイン領域364b、チャネル形成領域363にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、ドレイン電極層365bに高電源電位VDDを供給する配線に接続して動作させる場合、ゲート電極層361とドレイン電極層365bとの間に高電圧が印加されても高抵抗ドレイン領域がバッファとなり局所的な電界集中が生じにくく、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0370】
ソース電極層365a、ドレイン電極層365b、酸化物絶縁層366上に保護絶縁層323を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層323を、窒化珪素膜を用いて形成する(図9(D)参照)。
【0371】
なお、ソース電極層365a、ドレイン電極層365b、酸化物絶縁層366上にさらに酸化物絶縁層を形成し、該酸化物絶縁層上に保護絶縁層323を積層してもよい。
【0372】
本実施の形態で示すトランジスタにおいて、酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度をより低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0373】
以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。
【0374】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0375】
(実施の形態8)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製したトランジスタの他の例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ350は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用いることができる。
【0376】
本実施の形態のトランジスタの断面構造の一例を図10(A)乃至(D)に示す。
【0377】
また、トランジスタ350はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0378】
以下、図10(A)乃至(D)を用い、基板340上にトランジスタ350を作製する工程を説明する。
【0379】
まず、絶縁表面を有する基板340上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層351を形成する。本実施の形態では、ゲート電極層351として、膜厚150nmのタングステン膜を、スパッタリング法を用いて形成する。なお、ゲート電極層を、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製しても良い。
【0380】
次いで、ゲート電極層351上にゲート絶縁層342を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁層342としてプラズマCVD法により膜厚100nm以下の酸化窒化珪素層を形成する。
【0381】
次いで、ゲート絶縁層342上に、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて導電膜を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層355a、ドレイン電極層355bを形成した後、レジストマスクを除去する(図10(A)参照)。
【0382】
次に酸化物半導体膜345を形成する(図10(B)参照)。本実施の形態では、酸化物半導体膜345としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体成膜用ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。酸化物半導体膜345を第3のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。
【0383】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体膜345を成膜することが好ましい。酸化物半導体膜345に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0384】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜345に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0385】
酸化物半導体膜345を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0386】
次いで、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行う。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の第1の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層346を得る(図10(C)参照)。
【0387】
本実施の形態では、ソース電極層及びドレイン電極層を形成するための導電膜として、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜を設ける。当該導電膜は、含有水素濃度が低減された導電膜であるため、酸化物半導体層と接して設けることで、また第1の加熱処理を施すことで、酸化物半導体膜層に存在する水素、水などの不純物が上記導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体層の純度を高めることができる。
【0388】
また、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0389】
酸化物半導体層346に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層356を形成する。
【0390】
酸化物絶縁層356は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタリング法など、酸化物絶縁層356に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。酸化物絶縁層356に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、又は水素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜き、が生じ酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、酸化物絶縁層356はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0391】
本実施の形態では、酸化物絶縁層356としてスパッタリング法を用いて膜厚200nmの酸化珪素膜を成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲気下でスパッタリング法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層356は、水分や、水素イオンや、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。
【0392】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層356を成膜することが好ましい。酸化物半導体層331及び酸化物絶縁層356に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0393】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物絶縁層356に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0394】
酸化物絶縁層356を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0395】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層356と接した状態で加熱される。
【0396】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体膜に対して脱水化または脱水素化のための加熱処理を行って低抵抗化した後、酸化物半導体膜の酸素欠損部を補償する。その結果、高抵抗化(i型化)した酸化物半導体層352が形成される。以上の工程でトランジスタ350が形成される。
【0397】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0398】
酸化物絶縁層356上にさらに保護絶縁層を形成してもよい。例えば、RFスパッタリング法を用いて窒化珪素膜を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層として保護絶縁層343を、窒化珪素膜を用いて形成する(図10(D)参照)。
【0399】
保護絶縁層343上に平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0400】
本実施の形態で示すトランジスタにおいて、ソース電極層及びドレイン電極層として用いる導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製している。当該導電膜を活性層として用いる酸化物半導体膜に接して形成することで、酸化物半導体膜中に存在する水素、水などの不純物が導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体膜の純度を高めることができる。また、酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度をより低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0401】
以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。また、本実施の形態で説明したオフ電流を低減したトランジスタを、例えば、表示装置の画素に適用することによって、画素に設けた保持容量が電圧を保持できる期間を長くできる。そのため、静止画等を表示する際の消費電力が少ない表示装置を提供できる。
【0402】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0403】
(実施の形態9)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製したトランジスタの他の例を示す。本実施の形態で示すトランジスタ380は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜をソース電極、ドレイン電極用の導電膜として用いることができる。
【0404】
本実施の形態では、トランジスタの作製工程の一部が実施の形態6と異なる例を図11に示す。図11は、図8と工程が一部異なる点以外は同じであるため、同じ箇所には同じ符号を用い、同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0405】
実施の形態6に従って、基板370上にゲート電極層381を形成し、第1のゲート絶縁層372a、第2のゲート絶縁層372bを積層する。本実施の形態では、ゲート絶縁層を2層構造とし、第1のゲート絶縁層372aに窒化物絶縁層を、第2のゲート絶縁層372bに酸化物絶縁層を用いる。
【0406】
酸化物絶縁層としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、または酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などを用いることができる。また、窒化物絶縁層としては、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などを用いることができる。
【0407】
本実施の形態では、ゲート電極層381側から窒化シリコン層と酸化シリコン層とを積層した構造とする。第1のゲート絶縁層372aとしてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下(本実施の形態では50nm)の窒化シリコン層(SiN(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層372a上に第2のゲート絶縁層372bとして膜厚5nm以上300nm以下(本実施の形態では100nm)の酸化シリコン層(SiO(x>0))を積層して、膜厚150nmのゲート絶縁層とする。
【0408】
次に酸化物半導体膜の形成を行い、酸化物半導体膜をフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。本実施の形態では、酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体成膜用ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。
【0409】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体膜を成膜することが好ましい。酸化物半導体膜に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0410】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0411】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0412】
次いで、酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行う。脱水化または脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは425℃以上とする。なお、425℃以上であれば加熱処理時間は1時間以下でよいが、425℃未満であれば加熱処理時間は、1時間よりも長時間行うこととする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下において加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層を得る。その後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の亜酸化窒素(NO)ガス、又は超乾燥エア(露点が−40℃以下、好ましくは−60℃以下)を導入して冷却を行う。酸素ガスまたは亜酸化窒素(NO)ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する酸素ガスまたは亜酸化窒素(NO)ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素ガスまたは亜酸化窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0413】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、例えば、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。また、LRTA装置、ランプだけでなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。GRTAとは高温のガスを用いて加熱処理を行う方法である。ガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。RTA法を用いて、600℃〜750℃で数分間加熱処理を行ってもよい。
【0414】
また、脱水化または脱水素化を行う第1の加熱処理後に200℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下の温度で酸素ガスまたは亜酸化窒素(NO)ガス雰囲気下での加熱処理を行ってもよい。
【0415】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0416】
以上の工程を経ることによって酸化物半導体膜全体を酸素過剰な状態とすることで、高抵抗化、即ちi型化させる。よって、全体がi型化した酸化物半導体層382を得る。
【0417】
次いで、ゲート絶縁層372a、372b、及び酸化物半導体層382上に、導電膜を形成する。当該導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法によって作製する。さらに、導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層385a、ドレイン電極層385bを形成し、スパッタリング法で酸化物絶縁層386を形成する。
【0418】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層386を成膜することが好ましい。酸化物半導体層382及び酸化物絶縁層386に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0419】
なお、本実施の形態では、ソース電極層及びドレイン電極層を形成するための導電膜として、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製した導電膜を設ける。当該導電膜は、含有水素濃度が低減された導電膜であるため、酸化物半導体層、又は酸化物絶縁層中に存在する水素、水などの不純物を引き抜くことができる。なお、導電膜に用いる材料として、水素よりも電気陰性度が小さい金属を用いることで、不純物をより引き抜くことができる。
【0420】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物絶縁層386に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0421】
酸化物絶縁層386を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度、濃度数ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0422】
以上の工程で、トランジスタ380を形成することができる。
【0423】
次いで、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減するため、不活性ガス雰囲気下、または窒素ガス雰囲気下で加熱処理(好ましくは150℃以上350℃未満)を行ってもよい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。
【0424】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0425】
酸化物絶縁層386上に保護絶縁層373を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層373として、スパッタリング法を用いて膜厚100nmの窒化珪素膜を形成する。
【0426】
窒化物絶縁層からなる保護絶縁層373及び第1のゲート絶縁層372aは、水分や、水素や、水素化物、水酸化物などの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする効果がある。
【0427】
従って、保護絶縁層373形成後の製造プロセスにおいて、外部からの水分などの不純物の侵入を防ぐことができる。また、半導体装置としてデバイスが完成した後にも長期的に、外部からの水分などの不純物の侵入を防ぐことができデバイスの長期信頼性を向上することができる。
【0428】
また、窒化物絶縁層からなる保護絶縁層373と、第1のゲート絶縁層372aとの間に設けられる絶縁層を除去し、保護絶縁層373と、第1のゲート絶縁層372aとが接する構造としてもよい。
【0429】
従って、酸化物半導体層中の水分や、水素や、水素化物、水酸化物などの不純物を究極にまで低減し、かつ該不純物の再混入を防止し、酸化物半導体層中の不純物濃度を低く維持することができる。
【0430】
保護絶縁層373上に平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0431】
本実施の形態で示すトランジスタにおいて、ソース電極層及びドレイン電極層として用いる導電膜は、実施の形態1で示したスパッタリングターゲットを用いて作製している。当該導電膜を活性層として用いる酸化物半導体膜に接して形成することで、酸化物半導体膜中に存在する水素、水などの不純物が導電膜に引き抜かれて、酸化物半導体膜の純度を高めることができる。また、酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度をより低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0432】
以上のように、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。また、本実施の形態で説明したオフ電流を低減したトランジスタを、例えば、表示装置の画素に適用することによって、画素に設けた保持容量が電圧を保持できる期間を長くできる。そのため、静止画等を表示する際の消費電力が少ない表示装置を提供できる。
【0433】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0434】
(実施の形態10)
本実施の形態は、実施の形態1のターゲットを適用して作製したトランジスタの他の例を示す。本実施の形態で示すトランジスタは、実施の形態2乃至9のトランジスタに適用することができる。
【0435】
本実施の形態では、ゲート電極層、ソース電極層及びドレイン電極層に透光性を有する導電材料を用いる例を示す。従って、他は上記実施の形態と同様に行うことができ、上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程の繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0436】
例えば、ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層の材料として、可視光に対して透光性を有する導電材料、例えばIn−Sn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の金属酸化物を適用することができ、膜厚は50nm以上300nm以下の範囲内で適宜選択する。ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層に用いる金属酸化物の成膜方法は、スパッタリング法や真空蒸着法(電子ビーム蒸着法など)や、アーク放電イオンプレーティング法や、スプレー法を用いる。また、スパッタリング法を用いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行い、透光性を有する導電膜に結晶化を阻害するSiOx(X>0)を含ませ、後の工程で行う加熱処理の際に酸化物半導体膜が結晶化してしまうのを抑制することが好ましい。
【0437】
なお、透光性を有する導電膜の組成比の単位は原子%とし、電子線マイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe X−ray MicroAnalyzer)を用いた分析により評価するものとする。
【0438】
また、トランジスタが配置される画素には、画素電極層、またはその他の電極層(容量電極層など)や、その他の配線層(容量配線層など)に可視光に対して透光性を有する導電膜を用いると、高開口率を有する表示装置を実現することができる。勿論、画素に存在するゲート絶縁層、酸化物絶縁層、保護絶縁層、平坦化絶縁層も可視光に対して透光性を有する膜を用いることが好ましい。
【0439】
本明細書において、可視光に対して透光性を有する膜とは可視光の透過率が75〜100%である膜厚を有する膜を指し、その膜が導電性を有する場合は透明の導電膜とも呼ぶ。また、ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層、画素電極層、またはその他の電極層や、その他の配線層に適用する金属酸化物として、可視光に対して半透明の導電膜を用いてもよい。可視光に対して半透明とは可視光の透過率が50〜75%であることを指す。
【0440】
以上のように、トランジスタに透光性を持たせると、開口率を向上させることができる。特に10インチ以下の小型の表示パネルにおいて、ゲート配線の本数を増やすなどして表示画像の高精細化を図るため、画素寸法を微細化しても、高い開口率を実現することができる。また、トランジスタの構成部材に透光性を有する膜を用いることで、高密度のトランジスタ群を配置しても開口率を大きくとることができ、表示領域の面積を十分に確保することができる。また、トランジスタの構成部材と同工程で同材料を用いて保持容量を形成すると、保持容量も透光性とすることができるため、さらに開口率を向上させることができる。
【0441】
また、高純度化された酸化物半導体層をトランジスタに適用することによって、オフ電流を低減したトランジスタを提供することができる。また、本実施の形態で説明したオフ電流を低減したトランジスタを、例えば、表示装置の画素に適用することによって、画素に設けた保持容量が電圧を保持できる期間を長くできる。そのため、静止画等を表示する際の消費電力が少ない表示装置を提供できる。
【0442】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0443】
(実施の形態11)
上記実施の形態2乃至10で示したトランジスタ等の半導体装置を用いてさまざまな電子機器を完成することができる。実施の形態1で示したターゲットを用いて作製したトランジスタは、高純度化された酸化物半導体層を活性層として用いているため、オフ電流を低減させることができる。また、閾値電圧のばらつきの少ない、信頼性の高いトランジスタとすることが可能である。したがって、最終製品としての電子機器をスループット良く、良好な品質で作製することが可能になる。
【0444】
本実施の形態では、図16を用いて具体的な電子機器への適用例を説明する。なお、電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。なお、実施の形態2乃至10に係る半導体装置は、集積化されて回路基板などに実装され、各電子機器の内部に搭載されてもよいし、画素部のスイッチング素子として用いることも可能である。実施の形態2乃至10に示したトランジスタは、オフ電流が低く、且つ閾値電圧のばらつきが少ないため、画素部または駆動回路部のどちらにも好適に用いることが可能である。
【0445】
図16(A)は、実施の形態2乃至10に係る半導体装置を含むノート型のパーソナルコンピュータであり、本体501、筐体502、表示部503、キーボード504などによって構成されている。
【0446】
図16(B)は、実施の形態2乃至10に係る半導体装置を含む携帯情報端末(PDA)であり、本体511には表示部513と、外部インターフェイス515と、操作ボタン514等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス512がある。
【0447】
図16(C)には、実施の形態2乃至10に係る半導体装置を含む電子ペーパーの一例として、電子書籍520を示す。電子書籍520は、筐体521および筐体523の2つの筐体で構成されている。筐体521および筐体523は、軸部537により一体とされており、該軸部537を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、電子書籍520は、紙の書籍のように用いることが可能である。
【0448】
筐体521には表示部525が組み込まれ、筐体523には表示部527が組み込まれている。表示部525および表示部527は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図16(C)では表示部525)に文章を表示し、左側の表示部(図16(C)では表示部527)に画像を表示することができる。
【0449】
また、図16(C)では、筐体521に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体521は、電源531、操作キー533、スピーカー535などを備えている。操作キー533により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍520は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0450】
また、電子書籍520は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0451】
なお、電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野に適用することが可能である。例えば、電子書籍以外にも、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジットカード等の各種カードにおける表示などに適用することができる。
【0452】
図16(D)は、実施の形態2乃至10に係る半導体装置を含む携帯電話機である。当該携帯電話機は、筐体540および筐体541の二つの筐体で構成されている。筐体541は、表示パネル542、スピーカー543、マイクロフォン544、ポインティングデバイス546、カメラ用レンズ547、外部接続端子548などを備えている。また、筐体540は、当該携帯電話機の充電を行う太陽電池セル549、外部メモリスロット550などを備えている。また、アンテナは筐体541内部に内蔵されている。
【0453】
表示パネル542はタッチパネル機能を備えており、図16(D)には映像表示されている複数の操作キー545を点線で示している。なお、当該携帯電話は、太陽電池セル549で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路を実装している。また、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置などを内蔵した構成とすることもできる。
【0454】
表示パネル542は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル542と同一面上にカメラ用レンズ547を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー543およびマイクロフォン544は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体540と筐体541はスライドし、図16(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0455】
外部接続端子548はACアダプタやUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電やデータ通信が可能になっている。また、外部メモリスロット550に記録媒体を挿入し、より大量のデータの保存および移動に対応できる。また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0456】
図16(E)は、実施の形態2乃至10に係る半導体装置を含むデジタルカメラである。当該デジタルカメラは、本体561、表示部(A)567、接眼部563、操作スイッチ564、表示部(B)565、バッテリー566などによって構成されている。
【0457】
図16(F)は、実施の形態2乃至10に係る半導体装置を含むテレビジョン装置である。テレビジョン装置570では、筐体571に表示部573が組み込まれている。表示部573により、映像を表示することが可能である。なお、ここでは、スタンド575により筐体571を支持した構成を示している。
【0458】
テレビジョン装置570の操作は、筐体571が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機580により行うことができる。リモコン操作機580が備える操作キー579により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部573に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機580に、当該リモコン操作機580から出力する情報を表示する表示部577を設ける構成としてもよい。
【0459】
なお、テレビジョン装置570は、受信機やモデムなどを備えた構成とするのが好適である。受信機により、一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことが可能である。
【0460】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0461】
300 基板
302 ゲート絶縁層
303 保護絶縁層
310 トランジスタ
311 ゲート電極層
313 チャネル形成領域
314a 高抵抗ソース領域
314b 高抵抗ドレイン領域
315a ソース電極層
315b ドレイン電極層
316 酸化物絶縁層
320 基板
322 ゲート絶縁層
323 保護絶縁層
330 酸化物半導体膜
331 酸化物半導体層
332 酸化物半導体層
333 導電膜
340 基板
342 ゲート絶縁層
343 保護絶縁層
345 酸化物半導体膜
346 酸化物半導体層
350 トランジスタ
351 ゲート電極層
352 酸化物半導体層
355a ソース電極層
355b ドレイン電極層
356 酸化物絶縁層
360 トランジスタ
361 ゲート電極層
362 酸化物半導体層
363 チャネル形成領域
364a 高抵抗ソース領域
364b 高抵抗ドレイン領域
365a ソース電極層
365b ドレイン電極層
366 酸化物絶縁層
370 基板
372a ゲート絶縁層
372b ゲート絶縁層
373 保護絶縁層
380 トランジスタ
381 ゲート電極層
382 酸化物半導体層
385a ソース電極層
385b ドレイン電極層
386 酸化物絶縁層
390 トランジスタ
391 ゲート電極層
392 酸化物半導体層
393 酸化物半導体膜
394 基板
395a ソース電極層
395b ドレイン電極層
396 酸化物絶縁層
397 ゲート絶縁層
398 保護絶縁層
399 酸化物半導体層
400 基板
402 ゲート絶縁層
407 絶縁層
410 トランジスタ
411 ゲート電極層
412 酸化物半導体層
414a 配線層
414b 配線層
415a ソース電極層又はドレイン電極層
415b ソース電極層又はドレイン電極層
420 シリコン基板
421a 開口
421b 開口
422 絶縁層
423 開口
424 導電層
425 トランジスタ
426 トランジスタ
427 導電層
450 基板
452 ゲート絶縁層
457 絶縁層
460 トランジスタ
461 ゲート電極層
462 酸化物半導体層
464 配線層
465a ソース電極層又はドレイン電極層
465b ソース電極層又はドレイン電極層
465a1 ソース電極層又はドレイン電極層
465a2 ソース電極層又はドレイン電極層
468 配線層
501 本体
502 筐体
503 表示部
504 キーボード
511 本体
512 スタイラス
513 表示部
514 操作ボタン
515 外部インターフェイス
520 電子書籍
521 筐体
523 筐体
525 表示部
527 表示部
531 電源
533 操作キー
535 スピーカー
537 軸部
540 筐体
541 筐体
542 表示パネル
543 スピーカー
544 マイクロフォン
545 操作キー
546 ポインティングデバイス
547 カメラ用レンズ
548 外部接続端子
549 太陽電池セル
550 外部メモリスロット
561 本体
563 接眼部
564 操作スイッチ
565 表示部(B)
566 バッテリー
567 表示部(A)
570 テレビジョン装置
571 筐体
573 表示部
575 スタンド
577 表示部
579 操作キー
580 リモコン操作機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜を形成するスパッタリングターゲットであって、
水素よりも電気陰性度の小さい金属材料の焼結体を含み、
前記焼結体の、含有水素濃度が1×1016atoms/cm以下である、スパッタリングターゲット。
【請求項2】
導電膜を形成するスパッタリングターゲットであって、
アルミニウム、銅、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、またはタングステンの少なくともいずれか一の金属材料の焼結体を含み、
前記焼結体の、含有水素濃度が1×1016atoms/cm以下である、スパッタリングターゲット。
【請求項3】
導電膜を形成するスパッタリングターゲットであって、
アルミニウムに、シリコン、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウム、またはイットリウムが0.1乃至3原子%添加された金属材料の焼結体を含み、
前記焼結体の、含有水素濃度が1×1016atoms/cm以下である、スパッタリングターゲット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載のスパッタリングターゲットを用いて作製された導電膜を活性層に接して含むトランジスタ。
【請求項5】
金属材料を焼成して金属材料の焼結体を形成し、
前記金属材料の焼結体を機械加工して、所望の形状を有するターゲットに成形し、
前記ターゲットを洗浄し、
洗浄後の前記ターゲットに、加熱処理を加えることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項6】
金属材料を焼成して金属材料の焼結体を形成し、
前記金属材料の焼結体を機械加工して、所望の形状を有するターゲットに成形し、
前記ターゲットを洗浄し、
洗浄後の前記ターゲットを加熱処理し、
前記ターゲットと、バッキングプレートとをボンディングすることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−122239(P2011−122239A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250831(P2010−250831)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】