説明

テープギャップ測定のためのポータブルゲージ及びその方法

【課題】テープギャップの手動測定は労働集約的であるため、構造物の大きな領域にわたる複数のテープギャップの測定を正確かつ効率的に実行し、しかもオペレーターの技能に大きく依存しないテープギャップの測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】表面を構成する複合テープの細片間のギャップはゲージによって測定される。表面に沿ってゲージを移動するにつれて隣接するテープ細片のエッジの位置は検出され、隣接する細片間のギャップは検出したエッジの位置に基づいて計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して複合テープ細片の敷設によって形成される複合構造物の製造に関し、より詳しくは、特に構造物の任意の領域が再加工された後のポータブルゲージ及びテープ細片間のギャップの測定方法を取り扱う。
【背景技術】
【0002】
自動化された複合テープ敷設装置(CTLM)を使用して、大型の複合構造物を製造することができる。このような比較的大型で高価な装置は、マンドレル又はその他の表面上に複合プリプレグテープを何本も同時に敷設するため、コンピュータ制御のテープ敷設ヘッドを使用する。このヘッドはテープ細片を略平行な関係で、且つエッジとエッジが接するように配置するが、隣接する細片のエッジ間に小さなギャップが生じることがある。これらのギャップが許容範囲を超える場合には、完成した構造物の品質及び/又は性能に影響を及ぼすことがある。ギャップが許容範囲を超える場合には、構造物を製造仕様の範囲内に収めるため、このような領域では再加工が必要になることがある。テープ細片の再加工後、テープのギャップが規定されている許容範囲内に収まっていることを確認するため、当該領域の再検査が行われる。
【0003】
現在、テープギャップの検査プロセスは、技師がハンドゲージを用いて個々のテープギャップを測定して行われることがある。技師は再加工したテープの長さ方向に沿って、各測定点にゲージを手動で再配置しなければならない。各測定点では、技師は膝をついて目視でギャップの値を読み取っている。この手動測定の技法は労働集約的であり、必要となる測定回数及び測定完了に要する時間の点で、大規模な構造物では実用的でないことがある。また、手動測定の精度は技師の技能レベルに影響されることがある。
【0004】
テープのギャップはCTLMのテープ配置ヘッドに組み込まれた非接触式検査機器を用いて自動的に測定することができるが、この解決策では検査プロセスを実施するためCTLMは製造ラインから外れていることが必要となる。その結果生じる装置のダウンタイムによって生産能力が低下するため、再加工されたテープ細片の検査が1回しか必要ない場合には非効率になることがある。
【0005】
したがって、構造物の大きな領域にわたる複数のテープギャップの測定を正確かつ効率的に実行し、しかもオペレーターの技能に大きく依存しないテープギャップの測定方法及び装置が必要となる。
【発明の概要】
【0006】
開示した実施形態により、大規模な複合構造物の再加工部分の検査に有用な、複数のテープギャップ測定を迅速に実施するためのポータブルゲージ及び関連する方法を提示する。本実施形態により人件費を低減し、生産フローの中断を回避することができる。前記ポータブルゲージにより、テープギャップ測定の自動的な開始、収集及び分析が可能になる。前記ゲージはテープ細片のエッジに沿って自動的に進路を操作する能動的ステアリングシステムを使用し、その結果、連続的なギャップ測定の実施中に該ゲージを迅速に移動することが可能になる。
【0007】
開示した一実施形態では、テープギャップ検査ゲージが提供されている。前記ゲージは隣接するテープ細片間のギャップを測定するための測定システムを含む。前記測定システムは少なくとも1本のテープ細片を検出するための少なくとも1個の非接触式センサーを含む。前記ゲージはテープ細片の表面に沿って前記測定システムを動かすための移動システムをさらに含む。前記ゲージは前記測定システムが取付けられるフレームをさらに含む。前記移動システムは、テープ細片表面に沿った回転運動のための前記フレームを支持するホイール、及び前記フレーム上にあり少なくとも1個の操縦可能なホイールを操縦するためのステアリングシステムを含む。前記測定システムは、2本の隣接するテープ細片のエッジに交差するレーザーラインを投影するための2個のレーザーラインプロジェクタ、及び隣接するテープ細片のエッジを検出するための2個の非接触式センサーを含みうる。前記ステアリングシステムは、サーボモーターと操縦可能なホイールとの間に結合されたサーボモーター及びリンケージを含みうる。
【0008】
開示した別の実施形態では、複合テープの細片から形成された複合構造物の表面の検査用にポータブルゲージが提供される。前記ゲージは、前記テープの特性を測定するための測定システム、及び表面に沿って該測定システムを動かすために前記構造物の表面に配置するのに適している移動システムを含む。前記特性は隣接するテープ細片のギャップを含みうる。前記測定システムは、隣接するテープ細片のエッジを検出するためのセンサー、及び検出したエッジの位置に基づいてギャップを計算するためのコンピュータを含みうる。前記測定システムは、隣接するテープ細片のエッジに交差するレーザーラインを投影するための一対のレーザーラインプロジェクタを含むことが可能で、又、前記センサーは構造物の表面から投影されたレーザーラインの2次元反射を検出するように配置される。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、複合テープの細片から形成される複合構造物の表面を検査するためのポータブルゲージに関し、テープ細片の特性を測定するための測定システム、及び表面に沿って測定システムを動かすために構造物の表面に配置するのに適している移動システムを備えている。
【0010】
上記のポータブルゲージでは、特性は隣接するテープ細片の間のギャップであってもよい。測定システムは、隣接するテープ細片のエッジを検出するためのセンサー、及び検出したエッジの位置に基づいてギャップを計算するためのセンサーと一体になったコンピュータを含みうる。
【0011】
上記のポータブルゲージでは、測定システムは、隣接するテープ細片のエッジと交差するレーザーラインを投影するための一対のレーザーラインプロジェクタを含みうる。センサーは構造物の表面から投影されたレーザーラインの2次元反射を検出するように配置することができる。
【0012】
上記のポータブルゲージは、その上に取付けられた測定システムを有するフレームをさらに含み、前記移動システムはフレームを支え、且つ構造物の表面に沿って移動するための部材を含みうる。
【0013】
上記のポータブルゲージでは、前記移動システムはテープ細片の表面に沿ったゲージの移動を自動操縦するための能動的ステアリングシステムを含みうる。
【0014】
上記のポータブルゲージでは、前記測定システムは特性測定の自動的な開始、収集及び分析のための制御装置を含みうる。
【0015】
上述のポータブルゲージは、フレームと一体になったアームをさらに備え、表面に沿ってフレームを動かす際にオペレーターが使用できるように適合させることができる。
【0016】
上記のポータブルゲージは、テープ細片の長さ方向に沿った測定システムの位置に関連する電気信号を生成するためのエンコーダをさらに備える。
【0017】
なお更に別の実施形態では、本発明は、航空機構造物を形成する複合テープの細片間のギャップを自動的に測定するゲージシステムに関し、テープ細片に沿った複数の位置の各々でテープギャップを計算し、テープ細片に沿った位置で計算されたテープギャップに関連づけるため、フレームを含むテープ細片に沿って移動可能なポータブルゲージ;一対のフロントホイール及びフロントホイールの背後のフレーム上に枢着された可動リヤホイールを含む、テープ細片に沿ってフレームを回転するためのフレーム上のホイール;リヤホイールを操縦するためのフレーム上のサーボ制御モーター;フロントホイールとサーボモーターを結合するリンケージ;フレーム上に取付けられた一対のレーザースキャナ;テープ細片のエッジに交差するレーザーラインを投影するためのレーザーラインプロジェクタを含む各レーザースキャナ;投影されたレーザーラインの2次元反射を検出するための2次元センサー;テープのギャップを表わす画像を表示するためにフレーム上に取付けられた搭載型ディスプレイ;フレームとテープ細片の初期の位置合わせに使用しうるテープ上にラインを投影するためのレーザーラインジェネレータ;テープ細片に沿って人がゲージを押す又は引く際に使用できるように適合されたアーム;テープ細片のエッジが2次元センサーの視野の範囲内にあるように、テープ細片上でゲージの位置合わせを行うためのレーザー装置;サーボモーターにステアリング信号に配信するためにゲージと一体になった制御装置、を備える。
【0018】
さらに別の実施形態では、複合構造物を形成する複合テープの細片間のギャップを測定する方法が提供される。ゲージは構造物の表面に配置され、表面に沿って移動する。ゲージ上の測定システムは、表面に沿ってゲージが移動するにつれて、テープ細片間のギャップを測定するように使用される。
【0019】
なお更に別の実施形態では、本発明は、航空機構造物を形成する複合テープの細片間のギャップを測定する方法に関し、構造物表面へのホイール付きゲージの配置;構造物表面に沿ったゲージの回転;ロータリーエンコーダを駆動するためのゲージ上でのホイールの使用;表面に沿った移動の中でゲージの位置を表わす信号を生成するためのロータリーエンコーダの使用;表面上でテープ細片の2本のエッジにそれぞれ交差する一対のレーザーラインの投影;テープ細片のエッジの検出を含む、ゲージ上での一対の非接触式センサーを使用するレーザーラインの2次元反射の検出;構造物の表面上の複数の位置の各々でテープ細片間のギャップを計算するコンピュータの使用;計算によって求めたギャップとロータリーエンコーダによって生成された信号によって示されるゲージの位置との関連づけ;非接触式センサーによって検出されたエッジに基づくステアリングゲージのステアリング信号の生成;ゲージ上でホイールの1つを操縦するためのサーボモーターの使用;及び、サーボモーターを制御するためのステアリング信号の使用、を含む。
【0020】
開示した実施形態の他の特徴及び利点については、添付図面及び添付した請求項に従って見た場合、以下の実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は開示した実施形態によるポータブルゲージで検査される複合構造物の斜視図である。
【図2】図2は図1中で「図2」と表示した領域の拡大図である。
【図3】図3は隣接するテープエッジと交差するように投影されたレーザーラインの2次元プロファイルを示す3本の隣接したテープ細片の斜視図である。
【図4】図4はテープギャップの測定を示すコンピュータディスプレイのスクリーンショットである。
【図5】図5はポータブルゲージ及び関連する制御コンポーネントの機能ブロック図である。
【図6】図6はポータブルゲージの一実施形態の斜視図である。
【図7】図7は図6に示したポータブルゲージの平面図である。
【図8】図8は搭載型ディスプレイ画面を含むポータブルゲージの別の実施形態の斜視図である。
【図9】図9はポータブルゲージのさらなる実施形態の斜視図である。
【図10】図10は投影されたレーザーラインを使用したテープ表面上でのポータブルゲージの初期位置合わせの方法を示す斜視図である。
【図11】図11はポータブルゲージ及びリモート制御装置の電気コンポーネントのブロック図である。
【図12】図12はポータブルゲージを使用したテープギャップの測定方法のフロー図である。
【図13】図13は航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
【図14】図14は航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に図1及び2を参照するに、複数の略平行な複合テープ26の細片を敷設することによって複合構造物24が製造されるが、本明細書では複合表面22を形成する「テープ細片」と呼ぶこともある。図示されている例では、複合構造物24は航空機の主翼を含み、表面22は主翼の外板を含むが、開示されている実施形態は、複合プリプレグテープ26の細片から形成される他の複合構造物に接続して使用しうる。テープ細片26は複合トウ又は複合物以外の材料のグループを含みうる。
【0023】
図2に最もわかりやすく示されているように、平行なテープ細片26はエッジとエッジが互いにほぼ接するように敷設されている。複合構造物24の一又は複数の領域内で、ギャップ28はテープ細片26の隣接する2つの間隔で示しうる。ギャップ28の幅“W”があらかじめ設定されている許容範囲を超える場合には、テープ細片26の再加工が必要になることがある。例えば、一又は複数のテープ細片26を持ち上げて再配置することでギャップ28のサイズを縮小することができる。この再加工プロセスに続いて、ギャップ28がある場合には、これが好ましい許容誤差の範囲内にあるか否かを判断するため、再検査が行われる。
【0024】
開示した実施形態に従って、ポータブルゲージ20は、ギャップ検査プロセスを実施するために、さらに具合的には、表面22を再加工した領域内でギャップ28の幅“W”を自動的に測定及び記録するために、使用しうる。検査プロセスは、各再加工領域内のテープ細片26に平行な方向30でテープ細片の表面22に沿って、技師がゲージ20を動かすことによって実行しうる。ゲージ20はアーム及び/又はハンドル34を含むことができ、これによって技師は表面22に沿ってゲージ20を連続的に押す又は引くことが可能で、一方でゲージ20はテープ細片26の1つのエッジ27をガイドとして使用してそれ自体を操縦する。隣接するテープ細片26のエッジ27に交差するレーザーライン38を表面22に投影する測定システムを使用して、ゲージ20は所定の間隔で連続回転ギャップ測定を行う。衝突するレーザーライン38は、反射した後、ギャップ測定値を計算する制御装置36によって検出及び使用される局所的な2次元プロファイルを形成する。制御装置36は配線23によって、又は無線によってゲージ20と連動させることができる。制御装置36は据え置き型とすること、又はギャップの連続測定を自動実行する際に技師が運びこむことが可能である。大規模な複合構造物24の場合には、複合テープ細片26が構造物24の別の領域内に敷設されている間に、開示したポータブルギャップゲージ20を構造物24の1つの領域内で用いてテープギャップの測定を実行することが可能となりうる。
【0025】
図3を参照するに、テープ表面22上に投影されたレーザーライン38は、テープ細片26bの両側端を横断して広がり、ギャップ28を形成し、ギャップ28を示す2次元表面のプロファイルとして反射される。図示されている実施例では、ギャップ28は隣接するテープ細片26aと26bとの間、並びに隣接するテープ細片26bと26cとの間に示されている。2次元表面プロファイルは、テープ26を敷設した方向に対応する方向30にゲージ20が連続的に移動するにつれて、連続的な位置“P”でギャップ28の幅“W”を計算する制御装置36に送信される。
【0026】
図4は、技師がリアルタイムで又はギャップ測定を行った後に録画によって、テープギャップの情報を見る際に使用される制御装置36の一部を形成するディスプレイ37を示している。ディスプレイ37の右側は、ギャップが測定されているテープ細片26に沿って測定した層の数41、ギャップの幅43及び位置45を示している。トリガー間隔47も、ギャップ測定が行われた位置45の間で選択しうる。ディスプレイ37の左側は、レーザーライン38に沿った2次元表面プロファイルに対応する2つの寸法で46において測定したギャップが表示されるグラフ44を示している。これら2つの寸法は、縦座標42の上に示されるギャップの深さ、及び横座標40の上に示される幅と側面位置を含む。
【0027】
図5はシステムレベルでのポータブルゲージ20の機能ブロック図である。ゲージ20は、テープ細片の表面22に沿ったフレーム48の移動を可能にする移動システム59を装備したフレーム48を含む。ギャップ測定システム57では、フレーム48がテープ細片26の経路上を表面22に沿って連続的に移動するにつれて、あらかじめ設定された間隔で隣接するテープ細片26(図2)間のギャップを測定する。他の実施形態では、ギャップ28は一定の移動時間または移動距離ごとではなく、連続的に測定してもよい。ステアリングシステム55は、テープ表面22に沿って移動しながら、ゲージの能動的な自動ステアリングを行う。
【0028】
次にポータブルゲージ20の付加的な詳細を図解する図6及び7に注目する。ゲージ20は概して後方エクステンション39を有する矩形のフレーム48を含む。移動システム59は、フレーム48の前方エンド51に取付けられた一対のホイール50、及び追跡用の可動ホイール52を含む。可動ホイール52は、後方フレームエクステンション39に枢着されたステアリングコラム62上に取付けられている。ステアリングコラム62は、一般的にテープ表面22に対して垂直に延びる軸53の回りに枢動可能である。ホイール50、52により、テープギャップ測定の進行中に表面22と交差するようにフレーム48を移動することができる。おおよそ3個のホイール50、52を使用して、テープ表面22に沿った移動に関して、フレーム48を支持することができる。また、移動システム59は、テープ表面22に沿ってゲージ20の移動を可能にする他の任意の様々な形式の機構及び構造を含みうる。例えば、限定しないが、移動システム59は、テープ細片表面22上でフレーム48を支え、且つ表面22の単純な又は複雑な輪郭の上でのゲージ20の移動を可能にする、スキッド、スキー又はトラックなどの他の形態の部材を含んでいてもよい。
【0029】
ステアリングシステム55(図5)は、後方フレームエクステンション39の上に取付けられた電気サーボモーター56を含む。サーボ56は、ステアリングリンク60によってステアリングコラム62上のステアリングアーム61に連結されているディスク58を回転する。ディスク58の回転運動は、リンク60及びアーム61を介して伝達され、ステアリングコラム62及びリヤホイール52を回転する。一対のレーザーラインスキャナ64、66は、市販品を含んでいてもよいが、フレーム48上に隣り合わせになるように取付けられる。各レーザーラインスキャナ64、66は、レーザーラインプロジェクタ67及びこれに対応して表面22上のライン38の2次元反射を検出する2次元非接触光学センサー69を含む。これらの検出された2次元反射は、テープギャップを計算するため、制御装置36によって使用される光学センサー69によって電気信号に変換される。
【0030】
図7に示すように、ロータリーエンコーダ68の形態の位置センサー又は同様の機器は前方ホイール50の1つに取付けられており、テープ26の経路に沿って移動するにつれてゲージ20の線形位置を示す出力信号を生成するように機能する。図6又は7には示していないが、図1に示したアーム32及び/又はハンドル34は、技師がテープ表面22に沿ってゲージ22を動かすことができるように、フレーム48に取付けてもよい。他の実施形態では、ゲージ20の移動は車載モーター(図示せず)によって駆動される自己推進型にすることも可能である。
【0031】
図8は、図4に示したものと同様に、ゲージ20の位置に沿って測定されるテープギャップ28を技師に対して表示するローカルディスプレイ画面70がフレーム48に取付けられている点を除いて、図6及び7に示したものと同様なポータブルゲージ20の代替的な実施形態を図解したものである。
【0032】
図9は、図6〜8に示したものと同様な、ポータブルゲージ20の別の実施形態を図解したものである。この実施形態では、ローカルディスプレイ画面はフレーム48に取付けられた支持ブラケット72に取付けられている。プッシュアーム32は、技師に対してゲージ20をテープ表面22に沿って動かす手段を提供する支持ブラケット72に取付けられる。アーム32はボールジョイント74によってアームの上方部分78に結合可能で、これによって技師はアーム32を押すことができ、ステアリングに作用するゲージ20には横方向の力が与えられる。レーザーラインジェネレータ80はフレーム48の前方部分51に取付けられ、テープ表面22上にライン82を投影するように方向づけられている。ライン82は、図10に示すようにテープ細片の1つにゲージ20の位置を揃えるのに使用することができ、これによってテープ細片26のエッジ27は、ギャップ測定サイクルの開始時にレーザースキャナ64、66の視野内に入る。
【0033】
次に、ポータブルゲージ20及び制御装置36の電気コンポーネントの幾つかを概略的に図解した図11に注目する。すでに述べたように、ポータブルゲージ20は、リヤホイール52、一対のレーザーラインスキャナ64、66及びロータリーエンコーダ68を制御するステアリングサーボモーター56を含む。ポータブルゲージ20は任意選択で、ステアリングの制御又はテープギャップ測定サイクルの開始に使用できるジョイスティック及び/又は電気押しボタン84を含みうる。また、すでに述べたように、ポータブルゲージ20は任意選択の搭載型ディスプレイ画面70及びレーザーラインジェネレータ80を含みうる。搭載型ディスプレイ画面70は、以下に説明する制御装置36の構成部品であるタッチ画面式ラップトップコンピュータ86上に表示可能なものと同様な情報を表示しうる。
【0034】
制御装置36は概して、USBハブを介してリモートディスプレイ画面70に接続されるタッチ画面式ラップトップコンピュータの形態のパーソナルコンピュータを含みうるコンピュータ86を含む。コンピュータ86はステアリング信号を生成し、USBハブ88及びサーボシリアルアダプタ92を介してステアリングサーボモーター56へ送信する。ジョイスティック及び/又は押しボタン84で生成される信号は、ジョイスティックコントロール94及びUSBハブ88を介して、コンピュータ86へ送信される。ロータリーエンコーダ68によって展開された直交位相信号は、直交位相アダプタ96及びUSBハブ88を介してコンピュータ86へ伝えられる。コンピュータ86はレーザーラインジェネレータ80を制御するために使用しうる。2次元レーザーラインスキャナ64、66の構成部品である光センサー69によって展開された信号は、2次元ラインセンサー制御装置90を介してコンピュータ86へ伝えられる。開示している実施形態では、制御装置36はゲージ20から分離して描かれているが、他の実施形態では、制御装置36の一又は複数のコンポーネントはゲージ20に搭載した状態で取付けうることに注意すべきである。
【0035】
次に、すでに説明済みのポータブルゲージ20を使用してテープギャップ28を測定するすべてのステップを図解した図12に注目する。ゲージ20をテープ表面22に配置するステップ100から開始し、ステップ102ではレーザーラインジェネレータ80を使用してテープ細片26にゲージ20を揃えることができる。次にステップ104では、リモートの搭載型ディスプレイ画面70又は制御装置36の構成部品であるコンピュータ86上のタッチ画面を利用して、コンピュータ86に層数及びギャップ数を入力する。次にステップ106では、ギャップ測定を開始する間隔を設定し、ステップ108では仕様の範囲を選択する。ステップ108で選択した仕様の範囲は、測定するテープギャップの形式又は感度を分類するための基準を定める。仕様の範囲は事前に定めた製造許容誤差に対応させてもよい。ステップ110では、技師がゲージ20を前方に押し出すための手持ち式アームを使用して、テープ細片26が最初に敷設された方向30(図3)に向けて、ポータブルゲージ20をテープ表面22に沿って移動させる。代替的には、既に説明したように、ゲージ20は自己推進型であってもよい。
【0036】
ステップ112では、ゲージ20の移動位置は、ロータリーエンコーダ68によって駆動されるホイールを使用して検出される。ステップ114では、テープ細片26のエッジ27の位置は、レーザーラインスキャナ64、66を使用して開始された間隔で検出される。ステップ116では、ステップ114で検出されたテープエッジ情報を使用してゲージ20のステアリングを能動的に制御する。ステップ117では、検出したテープエッジ情報は測定システム57から制御装置36へのデータとして出力され、ステップ118では検出されテープエッジの情報はテープギャップ28の計算に使用される。テープギャップの計算は、ステップ120でのゲージ20の移動位置に関連している。計算されたテープギャップは関連するゲージ20の移動位置と共にステップ122で保存され、ステップ124でリアルタイム又は再生確認モードで表示される。
【0037】
本発明の実施形態は、各種の潜在的な応用に使用可能で、例えば航空宇宙、海運及び自動車への応用などを含む輸送産業、さらには材料細片間の測定が必要となる他の産業において特に使用可能である。したがって、図13及び14を参照するに、本発明の実施形態は、図13に示す航空機の製造及び保守方法126、及び図14に示す航空機128に関して使用可能である。開示した実施形態の航空機応用は、例えば、限定しないが、機体外板、主翼外板、操縦翼面、ハッチ、フロアパネル、ドアパネル、アクセスパネル及び尾部などの複合材料を含みうる。製造前の段階では、例示的な方法126は、航空機128の仕様及び設計130及び材料の調達132を含みうる。製造段階では、コンポーネント及びサブアセンブリの製造134と、航空機128のシステムインテグレーション136とが行われる。したがって、航空機128は運航140に供するために、認可及び納品138が行われる。顧客により運航される間に、航空機128は定期的な整備及び保守142(改造、再構成、改修なども含みうる)が予定されている。
【0038】
方法126の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0039】
図14に示されるように、例示的方法128によって製造された航空機128は、複数のシステム146及び内装148を有する機体144を含むことができる。高レベルのシステム146の例には、推進システム150、電気システム152、油圧システム154、及び環境システム156のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、海運及び自動車産業などの他の産業にも適用しうる。
【0040】
本明細書で具現化したシステム及び方法は、製造及び保守方法126の一又は複数の段階で使用可能である。例えば、製造プロセス134に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機128の運航中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリと同様の方法で作製又は製造しうる。また、一又は複数の装置の実施形態は、例えば、航空機128の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機128のコストを削減することにより、製造段階134及び136の間に利用することができる。同様に、一又は複数の装置の実施形態を、航空機128の運航中に、例えば限定しないが整備及び保守132に利用することができる。
【0041】
本発明の実施形態を、特定の例示的実施形態に関連させて説明したが、これらの特定の実施形態は説明を目的としているのであって、限定を目的としているのではなく、当業者であれば他の変形例が想起可能であろう。
【符号の説明】
【0042】
20 ポータブルゲージ
22 テープ表面
24 複合構造物
26 テープ細片
27 エッジ
28 ギャップ
32 アーム
34 ハンドル
36 制御装置
38 レーザーライン
39 後方エクステンション
40 横座標
42 縦座標
43 ギャップの幅
44 グラフ
45 ギャップの位置
47 トリガー間隔
48 フレーム
50、52 ホイール
51 前方エンド
55 ステアリングシステム
56 電気サーボモーター
57 ギャップ測定システム
58 ディスク
59 移動システム
60 ステアリング
61 ステアリングアーム
62 ステアリングコラム
64、66 レーザーラインスキャナ
67 レーザーラインプロジェクタ
68 直交位相ロータリーエンコーダ
69 光学センサー
70 ローカルディスプレイ画面
72 支持ブラケット
74 ボールジョイント
80 レーザーラインジェネレータ
84 ジョイスティック/電気押しボタン
86 タッチ画面式ラップトップコンピュータ
88 USBハブ
90 2次元ラインセンサー制御装置
92 サーボシリアルアダプタ
94 ジョイスティックコントロール
96 直交位相シリアルアダプタ
128 航空機
144 機体
146 システム
148 内装
150 推進システム
152 電気システム
154 油圧システム
156 環境システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本のテープ細片のエッジを検出するための少なくとも1台の非接触式センサーを含む、隣接するテープ細片間のギャップを測定するための測定システムと、
前記テープ細片の前記表面に沿って前記測定システムを動かすための移動システムと
を備えたテープギャップ検査システム。
【請求項2】
さらにフレームを備え、
前記測定システムが前記フレームに取付けられ、前記移動システムがテープ細片表面に沿って前記フレームの前記移動を操縦する前記フレーム上のステアリングシステムを含む、請求項1に記載のゲージ。
【請求項3】
前記移動システムが前記テープ細片表面に沿った回転運動のための前記フレームを支持するホイールを含み、
前記ステアリングシステムが前記ホイールを操縦するための少なくとも1つの前記ホイールに結合したサーボモーターを含む、請求項2に記載のゲージ。
【請求項4】
前記非接触式センサーによって検出されるエッジの位置に基づいて前記サーボモーターの前記操作を制御するための制御装置をさらに備えた、請求項3に記載のゲージ。
【請求項5】
前記測定システムが2つの隣接するテープ細片の前記エッジを検出するための前記非接触式センサー2台を含む、請求項1に記載のゲージ。
【請求項6】
前記測定システムが隣接する前記テープ細片の前記エッジと交差するレーザーラインをそれぞれ投影する一対のレーザーラインプロジェクタを含み、
前記非接触式センサーが前記テープ細片表面から反射した前記レーザーラインの2次元プロファイルを検出するように動作する、請求項5に記載のゲージ。
【請求項7】
前記測定システムが前記テープ細片表面に沿って移動するにつれて、前記測定システムの前記位置を検出する位置センサーをさらに備える、請求項1に記載のゲージ。
【請求項8】
前記テープ細片の前記検出済みエッジに基づいて前記ギャップを計算し、且つ前記移動システムを制御するための制御装置をさらに備える、請求項1に記載のゲージ。
【請求項9】
前記構造物の前記表面にゲージを配置するステップと、
前記構造物の前記表面に沿って前記ゲージを移動するステップと、
前記表面に沿って前記ゲージが移動するにつれて、前記テープ細片間のギャップを測定するため前記ゲージ上で測定システムを使用するステップと
を備え、複合構造物を形成する複合テープの細片間のギャップを測定する方法。
【請求項10】
前記構造物の前記表面に沿って前記ゲージを移動するステップが、
前記表面に沿ってフレームを回転させるステップと、
前記フレームの前記移動を自動的に操縦するステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ギャップを測定する前記測定システムを使用するステップが、
前記表面に沿って前記ゲージを移動するにつれて、前記テープの隣接するテープ細片の前記エッジの前記位置を検出するステップと、
前記テープ細片エッジの前記検出位置に基づいて、前記隣接する細片間のギャップを計算するステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記表面に沿って前記ゲージが移動するにつれて、前記ゲージの前記位置を検出するステップと、
前記計算したギャップを前記ゲージの前記記録位置と関連づけるステップと
をさらに備えた、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲージの前記位置を検出するステップが、
ロータリーエンコーダを駆動するホイールと係合する表面を利用するステップと、
前記表面上の前記ゲージの前記位置に関連づけられた信号を発生する前記ロータリーエンコーダを使用するステップと
によって実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エッジの前記位置を検出するステップが、
隣接する前記テープ細片の表面及び前記エッジ全体にわたって光のラインを投影するステップと、
前記光のラインの2次元検出を行うステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記表面に沿って前記ゲージを移動するステップが、前記テープ細片エッジの前記検出位置に基づいて前記ゲージを自動操縦するステップを含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−247414(P2012−247414A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−114986(P2012−114986)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】