トラクタ
【課題】標準モードと低燃費モードを備えたエンジンにおいて、低燃費モードでのPMを抑制する。
【解決手段】コモンレール1を備えたエンジンEと、該エンジンEの制御を行うECU100、及び作業機21を搭載したトラクタにおいて、排気ガスを浄化する後処理装置37を機体の適宜位置に設け、ECU100内にエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードラインL1と低燃費モードラインL2とから構成し、該標準モードラインL1と低燃費モードラインL2との切り換えは燃費モード変更手段36で行う構成とし、低燃費モードラインL2に切り換えるとメイン噴射Iの噴射タイミングを進角ADさせるとともにアフター噴射AIの噴射量を増量させるように構成したことを特徴とするトラクタの構成とする。
【解決手段】コモンレール1を備えたエンジンEと、該エンジンEの制御を行うECU100、及び作業機21を搭載したトラクタにおいて、排気ガスを浄化する後処理装置37を機体の適宜位置に設け、ECU100内にエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードラインL1と低燃費モードラインL2とから構成し、該標準モードラインL1と低燃費モードラインL2との切り換えは燃費モード変更手段36で行う構成とし、低燃費モードラインL2に切り換えるとメイン噴射Iの噴射タイミングを進角ADさせるとともにアフター噴射AIの噴射量を増量させるように構成したことを特徴とするトラクタの構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業機械であるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から機体に装着している作業機の状態を判定して、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−231848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の公知技術は、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成である。しかしながら、省エネモードを選択した場合において、排気ガスを浄化する後処理装置を備えた場合の対策についての記述がない。即ち、省エネモードにすると排気ガス温度が低くなるため、後処理装置内にPMが堆積しやすくなり、後処理装置の再生を頻繁に行う必要が発生してしまうという欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明では、コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と、該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、排気ガスを浄化する後処理装置(37)を機体の適宜位置に設け、ECU(100)内にエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、低燃費モードライン(L2)に切り換えるとメイン噴射(I)の噴射タイミングを進角(AD)させるとともにアフター噴射(AI)の噴射量を増量させるように構成したことを特徴とするトラクタとしたものである。
【0008】
低燃費モードライン(L2)に切り換えるとメイン噴射(I)の噴射タイミングを進角(AD)させるとともにアフター噴射(AI)の噴射量を増量させる。燃焼効率の上昇とともに排気ガス温度が上昇する。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記メイン噴射(I)を始めてからメイン噴射の最大噴射量(Q1)に到達するまでの総時間を(J1)とし、この総時間(J1)を前期時間(J2)と後期時間(J3)に分割構成し、前期時間(J2)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z2)を、後期時間(J3)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z3)に対して少なくするように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタとしたものである。
【0010】
メイン噴射の最大噴射量(Q1)に到達するまでの総時間を(J1)とし、この総時間(J1)を前期時間(J2)と後期時間(J3)に分割構成する。前期時間(J2)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率を(Z2)とし、後期時間(J3)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率を(Z3)とする。そして、Z2<Z3とすることで、急激な燃焼とならない。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記メイン噴射(I)よりも先にパイロット噴射(P)を行うように構成したことを特徴とする請求項2に記載のトラクタとしたものである。
【0012】
メイン噴射(I)よりも先にパイロット噴射(P)を行う。
【0013】
請求項4に記載の発明では、排気ガスの一部を吸気側に還元するEGR回路(41)とEGRバルブ(42)を構成し、低燃費モードライン(L2)に切り換えた場合のEGRバルブ(42)の開度を、標準モードライン(L1)のときのEGRバルブ(42)の開度よりも大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3に記載のトラクタとしたものである。
【0014】
低燃費モードライン(L2)に切り換えた場合のEGRバルブ(42)の開度を、標準モードライン(L1)のときのEGRバルブ(42)の開度よりも大きくする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、排気ガス温度が上昇するので、後処理装置(37)内でのPMの堆積量を少なくできる。
【0016】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、急激な燃焼とならないので、NOx発正量を抑制可能となる。
【0017】
請求項3記載の発明においては、請求項2の効果に加え、騒音低減となる。
【0018】
請求項4記載の発明においては、請求項1から請求項3の効果に加え、排気ガス中のPMの発生量が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクターの左側面図
【図4】トラクターの平面図
【図5】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図6】吸気から排気の模式図
【図7】標準モードと低燃費モードの噴射タイミング
【図8】エンジン負荷とPM排出量とスワール比の関係図
【図9】エンジン回転数とセンサ信号の関係図
【図10】後処理装置とバーナの模式図
【図11】エンジンとモータの配置を示すトラクタの側面図
【図12】エンジンとモータと後処理装置の配置を示すトラクタの側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
なお、後述する各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【0021】
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
このように、コモンレール1はエンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0022】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0023】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース35内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0024】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0025】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダである。
【0026】
図1に示しているECU100には本機側の制御装置200が接続している。この制御装置200には、圃場の耕耘深さを自動的に設定する耕深設定手段(自動耕深レバー)30、耕深設定手段30の機能を入り状態とする自動耕深スイッチ30a、耕深優先又は車速優先のいずれか一方を選択する選択スイッチ(30b)、及び表示手段(モニター)Mが接続している。また、図4にはこれらの配置位置が示されている。
【0027】
そして、前記自動耕深スイッチ30aが入り状態のときに前記選択スイッチ30bにより耕深優先又は車速優先のいずれか一方が選択された状態で作業機21を駆動して作業走行が開始されると、ECU100はエンジンの負荷率を検出して本機側の制御装置200に送信し、制御装置200は耕深を維持するための車速、又は車速を維持するための耕深を算出してモニターMに表示する構成としている。エンジンの負荷状態は、燃料の噴射状態とエンジン回転数センサE1から検出する構成としているが、その他の手段でもよい。
これにより、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深がモニターMに表示されるので、エンジンEに負担を増すことなく良好な作業が可能となる。また、燃料の過剰な消費を抑制可能となる。特に、エンジンにはコモンレール1を搭載しているので、適正な車速を維持するための燃料噴射制御が精度良く行われるようになり、燃費も改善される。
【0028】
また、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示する構成としている。これにより、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示するので、作業者はエンジンEの負荷状態を容易に確認することができ、状況によっては自動耕深スイッチ30aと選択スイッチ30bを入り状態として、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深を速やかに把握可能となる。
図5はエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能カーブであり、ラインL1が標準モード(パワーモード)を示し、ラインL2が低燃費モードを示している。標準モードラインL1の最大トルク点がT1で、低燃費モードラインL2の最大トルク点がT2である。この標準モードラインL1と低燃費モードラインL2の切り換え選択は、燃費モードダイヤル36(図4)で行う構成とする。燃費モードダイヤル36の形態としては、オンオフ式のスイッチ(オン状態で燃費モード)やいずれか一方に切り換える切換スイッチ等の形態でもよい。
図6に示しているように、エンジンEの排気系には後処理装置37を設けている。排気ガスは、後処理装置37を通過してマフラー38から大気中に排出される。後処理装置37は、酸化触媒(DOC)39とディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)40とから構成されている。
酸化触媒(DOC)39は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)40は粒状化物質(PM)を捕集するためのものである。DPF40の性質として、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、DPF40内にPMが溜まってきて捕集能力が低下してくる。
図7は前記標準モードと低燃費モード選択時におけるメイン噴射Iとアフター噴射AIのタイミング変更を示している。標準モードから低燃費モードに切り換えると、メイン噴射タイミングを進角ADさせて燃焼効率を向上させて燃費を向上させる。
しかしながら、低燃費モードでの燃費向上に伴い排気温度が低下してしまうので、DPF40内にPMが溜まり易くなってしまう。そこで、前述のようにメイン噴射Iのタイミングを進角ADさせたときには、アフター噴射AIの噴射量を増量させる構成とする。具体的には、メイン噴射タイミングを1度進角させると、1mm立方/st増量させる。これにより、燃焼効率の上昇とともに排気ガス温度が上昇し、DPF40内に溜ったPMが燃焼しやすくなり、PMの堆積量を減らすことが可能となる。
また、メイン噴射Iを進角するとNOxが増えるので、このNOxを減らすために、次のような制御を行う。
メイン噴射Iを始めてからメイン噴射の最大噴射量Q1に到達するまでの総時間をJ1とし、この総時間J1を前期時間J2と後期時間J3に分割する。そして、前期時間J2における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率をZ2を、後期時間J3における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率Z3に対して少なくする構成とする。これにより、急激な燃焼とならないので、NOxの発生量を抑制可能となる。また、メイン噴射Iよりも先にパイロット噴射Pを行うように構成してもよい。これにより、騒音低減となりNOx低減となる。
このパイロット噴射を入り切りする別の方法について説明する。
パイロット噴射を入り切りする燃料噴射量の境界線を、ブーストによる燃料噴射量制限させる境界線よりも高い(燃料噴射量多い)位置に設定する。パイロット噴射切り替えは、噴射量が少ない側を入りとし、多い側を切りと設定する。
これにより、フリーアクセル時は、回転が上昇しても常にパイロット噴射が行われるようになるので、回転吹き上がり時の燃焼騒音が低減される。また、パイロット噴射自体が失火に強いため、失火防止にもなる。
図6に示すように、排気ガスの一部を吸気側に還元するEGR回路41を構成することで、NOx低減効果がある。42はEGRバルブで、還元量を制御している。
このようなEGR回路41を有しているエンジンにおいては、低燃費モードを選択することで、さらにEGRバルブ42の開度を標準モードの開度よりも大きくなるように構成する。これにより、PMの排出量を低減できる。
図8はスワール比によるエンジン負荷とPM排出量との関係を示している。スワール比とは、1行程あたりの渦の回転数のことであり、スワール比が高いほど強力な渦が生成されるので、燃料と空気がよく混ざる。シリンダヘッドにスワール比を変更可能なスワールコントロールバルブ(図示せず)を設けている。スワール比を強くした場合、高負荷域ではPMが増加する傾向にあるが、中負荷以下においては、PMが減少する。
また、スワール比によるNOx排出量への影響は、低いエンジン回転数ででる。スワール比が低い場合は、低回転域でNOxが低くなる代わりに、低回転中負荷領域のPM排出量が増加するので、EGRバルブ42(図6参照)制御を閉側に補正することで、PMの排出量を減らすことができるようになる。EGRバルブ42を閉側へシフトさせるとEGR率が低下し、NOx量は増加してしまうが、元々NOx値が中央値よりも低い場合にこの制御を行うので、NOx量が規制値をこえることはない。
コモンレール圧を下げると、PMが増加してNOxが減少し、噴射タイミングを進角させると、NOxが増加して燃費が向上するという傾向がある。そこで、低燃費モードラインL2を選択した場合においては、PMが減少する領域のみを使用するため、コモンレール圧を下げて、噴射タイミングを進角させることができる。これにより、PM排出量は変わらず燃費を良化させた低燃費モードラインL2となる。
前述した図5においては、エンジンの型式毎に標準モードラインL1と低燃費モードラインL2を設定する必要があり面倒であった。
そこで、予めECU100内にトルクカーブ、メイン噴射タイミング、コモンレール圧、ガバナモード等を設定しておき、この中から型式により標準モードと低燃費モードに必要なマップを選択するように構成する。これにより、モードの設定数が減少して、組立工数が低減する。また、市場でトラクタのエンジンを別型式に積み替えた場合において、標準モードラインL1と低燃費モードラインL2の設定が容易となる。
トラクタの場合、多段変速(前進32段、後進32段)が可能になっており、路上での発進時においては高速を選択した状態で発進しようとすることもある。高速を選択した状態でエンジン低回転数で発進しようとすると、エンストの可能性があるが、エンジン高回転数で発進しようとすると、急発進してしまうことがある。
そこで、路上での発進時(ドループ制御)においては、走行クラッチがつながるときにドループ制御の変動率(負荷に応じてエンジン回転を下げる)を大きくする構成とする。さらに、低燃費モードラインL2を選択する構成とする。これにより、急発進が抑制され低燃費となる。
また、標準モードラインL1を選択した場合には、低回転時以外、吸気スロットルバルブを制御して吸入空気量を制限することで、ブースト温度上昇によるNOx排出量を抑制する。低燃費モードラインL2を選択した場合には、NOx排出量の多い高負荷部をカット(出力制限)し、吸気スロットルバルブを全開にすることで、吸入空気量増加により燃費を向上させる構成とする。
DPF40が装着されるエンジンでは、DPF40内に溜まったPMを除去するために吸気スロットルバルブを装着する必要があるが、この吸気スロットルバルブを利用して前述のように低燃費モードとすることができる。また、過給器(ターボ)の最大吸気圧を制限させる役割のウエストゲートバルブを廃止して、吸気スロットルバルブにより過給圧(空気量)をコントロールすることで、廉価な構成となる。
【0029】
また、トラクタエンジンの故障診断においては、車両の負荷(走行、PTO、油圧、エアコン等)を感知する機能を有し、エンジンの暖機状態を冷却水温により認識し、運転者によるアクセル操作が無い場合に、エンジン回転数がローアイドルにて所定時間保持される状態の燃料噴射量(ECUからの指示値)を、これまでのレベルと比較して、一定値以上異なっていれば、エンジン本体に異常発生と認識する構成とする。これにより、電気的な故障でない機械的な故障も診断可能となる。
また、前記エンジン回転数がローアイドルにて所定時間保持される状態の燃料噴射量(ECUからの指示値)を、予め設定している閾値と比較して、この閾値と比較して一定値以上異なっていれば、エンジン本体に異常発生と認識する構成としてもよい。
また、前記エンジン回転数がローアイドルにて所定時間保持される状態の燃料噴射量(ECUからの指示値)を、経年変化の傾向と一定値以上異なっていれば、エンジン本体に異常発生と認識する構成としてもよい。
また、図9に示すように、エンジンの運転中にセンサAからの信号とセンサBからの信号を比較し、その絶対値差が特定の基準(閾値)をこえると、どちらかのセンサが故障と判定するものにおいて、エンジン回転数の過渡的な変動により、双方のセンサが正常であるにもかかわらず、その絶対値差が閾値をこえてしまうと、センサ故障と診断されてしまう。
そこで、エンジンの時間的な回転変動レベル(dN/dT)にしたがって補正することで、誤診断を防止できるようになる。
また、エンジンの運転中にセンサAからの信号とセンサBからの信号を比較し、その絶対値差が特定の基準(閾値)をこえた状態が一定時間継続した場合、どちらかのセンサが故障と判定するものにおいて、エンジン回転数の過渡的な変動により、双方のセンサが正常であるにもかかわらず、その絶対値差が閾値をこえてしまう状態が継続すると、センサ故障と診断されてしまう。
そこで、エンジンの時間的な回転変動レベル(dN/dT)にしたがって故障判定時間を補正することで、誤診断を防止できるようにしてもよい。
また、エンジンの時間的な回転変動レベル(dN/dT)にしたがって故障判定される信号波形を制御用とは別の処理(フィルタリング)を施すことにより、誤診断を防止できるようにしてもよい。
図6に示す符号43は後処理装置37上流側のバーナーである。このバーナー43の制御回路を図10に示している。ポンプ46にて燃料タンクから燃料を噴射ノズル44に圧送し、高温の排気ガスに混入して燃焼させることで、後処理装置37を通過する温度が上昇し、DPF40内のPMが焼き飛ばされて除去される。そして、圧力計45の検出値が設定範囲外になると、噴射ノズル44が正常に作動していない可能性があるので、燃料噴射を中断して警告を行う構成とする。
また、後処理装置37前後の温度計47a、47bの温度から、DPF40が再生できていないと判断すれば、ECU100はエンジンを停止させてもよい。
エンジンのバランサについて説明する。エンジンのクランクとカムシャフトに設けたパルスギヤとセンサによりクランク角度を検出し、ECUで検出したクランク角度を元にして2次バランサ(図示せず)を電気モータで駆動する。
そして、アクセル開度、負荷の検出によって燃料噴射量、時期の増減をECUで行う際に、予想される角加速度の変化量をECU100で算出し、バランサの回転がエンジン回転の増減に遅れないように制御する。エンジン始動時など、バッテリからの電力を多く必要とする場合は、バランサを駆動せず電力消費を抑制する。これにより、モータ駆動であるので、騒音低減、燃費の悪化防止となる。
トラクタの走行において、エンジンとモータを併用する、所謂ハイブリッド方式の構成においては、モータ駆動のリチュウムイオンバッテリ自体の温度上昇が問題となる。そこで、バッテリの温度をECU100で監視し、所定以上の温度になると、キャビン内に送っている冷気をバッテリに当てる構成とする。また、エアコンが作動していない場合は、エアコンを作動させて行う。また、暖房が作動している場合は、一時的に暖房を冷房に切り替えて行う。このとき、冷気はキャビン内に送風しない。
また、ターボエンジンは、加減速時に応答遅れが生じる(ターボラグ)。そこで、クランクシャフトの端部にモータを連結して設け、エンジン負荷、エンジン回転数が急激に変化する条件で、モータによりアシストする構成とする。この期間中は、燃料噴射量を極力少なくして黒煙の発生を抑え、燃費を改善する構成とする。
エンジンEとモータ51の配置を図11に示している。エンジンEをボンネッと52内に配置し、エンジンEとキャビン53の間に冷却ファン48を設ける。この冷却ファン48とキャビン53の間にラジエータ49を設ける。
また、エンジンEの前方にフライホイール50を設け、このフライホイールの前部にモータ51を設ける構成とする。これにより、エンジンEとモータ51の配置が容易となる。
図12においては、モータ51をエンジンEのフロント側のクランクセンターに配置して、クランクシャフト54と直結する構成とする。そして、後処理装置37はクランクシャフト54に対してその長手方向が直交する方向にしてエンジンEの上部に設けている。そして、DPF40を再生させるときには、モータクラッチ51aを接続して、負荷をかけるとともに発電された電力をバッテリに蓄電するように構成してもよい。
また、トラクタにおいては、前輪の前方にウエイトを搭載して機体バランスを取っているが、ウエイトの代わりにバッテリを配置する構成としてもよい。
エンジンの極低温時の運転について説明する。極低温時においては噴射タイミングを進角補正するが、温度センサは冷却水温センサと吸気温センサの両方で行う構成とする。これにより、いずれか一方のセンサが故障しても、いずれか他方のセンサで制御可能となり、失火発生の頻度を少なくでき、暖機完了までスムーズな運転を行うことができるようになる。
エンジンのシリンダヘッドとホットプラグの間においては、従来は空間がほとんどない。そこで、過流室を構成する部品(ホットプラグ)の一部に切り欠きを設け、過流室壁面とシリンダヘッドの間を断熱空間とし、過流室壁面を高温に保持する。
トラクタの後部には作業機21(図3)が装着されている。ロータリの場合は、通常はエンジンからの動力でPTO軸からロータリを回転するが、高負荷のときはこのPTO軸をアシストするようにモータを取り付けている。そして、旋回時等でロータリ21を上昇させると、PTOクラッチを切りとしてロータリの回転を止めるとともに、モータとロータリを接続する。これにより、慣性で回転しているロータリの回転力を電力として回生することができる。また、ロータリの回転は速やかに停止するので安全となる。
トラクタの作業走行においては、アクセルレバーを操作してエンジン回転数を所定回転数まで上昇させて作業走行を行う。そして、枕地等での旋回時に作業機21を上昇させると、エンジン回転数は所定回転数まで低下する構成としている。しかしながら、作業速度によっては低下させるエンジン回転数(一律)により速度低下が大きくなる不具合があった。
そこで、作業速度が低い場合は、低下させるエンジン回転数を少なくして高回転数を維持し、作業速度が速い場合は、低下させるエンジン回転数を大きくして低回転数となるようにする。
また、旋回時にはステアリング操作を行うが、ステアリング操作角が小さい場合は、低下させるエンジン回転数を少なくして高回転数を維持し、ステアリング操作角が大きい場合は、低下させるエンジン回転数を大きくして低回転数となるようにする。これにより、作業効率低下を招くことなく、安全な走行が可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 コモンレール
21 作業機
36 燃費モード変更手段(燃費モードダイヤル)
37 後処理装置
41 EGR回路
42 EGRバルブ
100 ECU
E エンジン
I メイン噴射
AI アフター噴射
AD 噴射タイミング進角
L1 標準モードライン
L2 低燃費モードライン
Q1 最大噴射量
J1 総時間
J2 前記時間
J3 後期時間
Z2 燃料噴射量の増加率
Z3 燃料噴射量の増加率
P パイロット噴射
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業機械であるトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から機体に装着している作業機の状態を判定して、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−231848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の公知技術は、エンジンの出力を標準モード又は省エネモードに切り換える構成である。しかしながら、省エネモードを選択した場合において、排気ガスを浄化する後処理装置を備えた場合の対策についての記述がない。即ち、省エネモードにすると排気ガス温度が低くなるため、後処理装置内にPMが堆積しやすくなり、後処理装置の再生を頻繁に行う必要が発生してしまうという欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明では、コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と、該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、排気ガスを浄化する後処理装置(37)を機体の適宜位置に設け、ECU(100)内にエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、低燃費モードライン(L2)に切り換えるとメイン噴射(I)の噴射タイミングを進角(AD)させるとともにアフター噴射(AI)の噴射量を増量させるように構成したことを特徴とするトラクタとしたものである。
【0008】
低燃費モードライン(L2)に切り換えるとメイン噴射(I)の噴射タイミングを進角(AD)させるとともにアフター噴射(AI)の噴射量を増量させる。燃焼効率の上昇とともに排気ガス温度が上昇する。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記メイン噴射(I)を始めてからメイン噴射の最大噴射量(Q1)に到達するまでの総時間を(J1)とし、この総時間(J1)を前期時間(J2)と後期時間(J3)に分割構成し、前期時間(J2)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z2)を、後期時間(J3)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z3)に対して少なくするように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタとしたものである。
【0010】
メイン噴射の最大噴射量(Q1)に到達するまでの総時間を(J1)とし、この総時間(J1)を前期時間(J2)と後期時間(J3)に分割構成する。前期時間(J2)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率を(Z2)とし、後期時間(J3)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率を(Z3)とする。そして、Z2<Z3とすることで、急激な燃焼とならない。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記メイン噴射(I)よりも先にパイロット噴射(P)を行うように構成したことを特徴とする請求項2に記載のトラクタとしたものである。
【0012】
メイン噴射(I)よりも先にパイロット噴射(P)を行う。
【0013】
請求項4に記載の発明では、排気ガスの一部を吸気側に還元するEGR回路(41)とEGRバルブ(42)を構成し、低燃費モードライン(L2)に切り換えた場合のEGRバルブ(42)の開度を、標準モードライン(L1)のときのEGRバルブ(42)の開度よりも大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3に記載のトラクタとしたものである。
【0014】
低燃費モードライン(L2)に切り換えた場合のEGRバルブ(42)の開度を、標準モードライン(L1)のときのEGRバルブ(42)の開度よりも大きくする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、排気ガス温度が上昇するので、後処理装置(37)内でのPMの堆積量を少なくできる。
【0016】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、急激な燃焼とならないので、NOx発正量を抑制可能となる。
【0017】
請求項3記載の発明においては、請求項2の効果に加え、騒音低減となる。
【0018】
請求項4記載の発明においては、請求項1から請求項3の効果に加え、排気ガス中のPMの発生量が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクターの左側面図
【図4】トラクターの平面図
【図5】エンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図6】吸気から排気の模式図
【図7】標準モードと低燃費モードの噴射タイミング
【図8】エンジン負荷とPM排出量とスワール比の関係図
【図9】エンジン回転数とセンサ信号の関係図
【図10】後処理装置とバーナの模式図
【図11】エンジンとモータの配置を示すトラクタの側面図
【図12】エンジンとモータと後処理装置の配置を示すトラクタの側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
なお、後述する各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【0021】
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
このように、コモンレール1はエンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0022】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0023】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース35内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0024】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0025】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダである。
【0026】
図1に示しているECU100には本機側の制御装置200が接続している。この制御装置200には、圃場の耕耘深さを自動的に設定する耕深設定手段(自動耕深レバー)30、耕深設定手段30の機能を入り状態とする自動耕深スイッチ30a、耕深優先又は車速優先のいずれか一方を選択する選択スイッチ(30b)、及び表示手段(モニター)Mが接続している。また、図4にはこれらの配置位置が示されている。
【0027】
そして、前記自動耕深スイッチ30aが入り状態のときに前記選択スイッチ30bにより耕深優先又は車速優先のいずれか一方が選択された状態で作業機21を駆動して作業走行が開始されると、ECU100はエンジンの負荷率を検出して本機側の制御装置200に送信し、制御装置200は耕深を維持するための車速、又は車速を維持するための耕深を算出してモニターMに表示する構成としている。エンジンの負荷状態は、燃料の噴射状態とエンジン回転数センサE1から検出する構成としているが、その他の手段でもよい。
これにより、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深がモニターMに表示されるので、エンジンEに負担を増すことなく良好な作業が可能となる。また、燃料の過剰な消費を抑制可能となる。特に、エンジンにはコモンレール1を搭載しているので、適正な車速を維持するための燃料噴射制御が精度良く行われるようになり、燃費も改善される。
【0028】
また、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示する構成としている。これにより、自動耕深スイッチ30aが切り状態のときには、エンジンEの負荷状態をモニターMに表示するので、作業者はエンジンEの負荷状態を容易に確認することができ、状況によっては自動耕深スイッチ30aと選択スイッチ30bを入り状態として、耕深を維持するための適正な車速、又は車速を維持するための適正な耕深を速やかに把握可能となる。
図5はエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能カーブであり、ラインL1が標準モード(パワーモード)を示し、ラインL2が低燃費モードを示している。標準モードラインL1の最大トルク点がT1で、低燃費モードラインL2の最大トルク点がT2である。この標準モードラインL1と低燃費モードラインL2の切り換え選択は、燃費モードダイヤル36(図4)で行う構成とする。燃費モードダイヤル36の形態としては、オンオフ式のスイッチ(オン状態で燃費モード)やいずれか一方に切り換える切換スイッチ等の形態でもよい。
図6に示しているように、エンジンEの排気系には後処理装置37を設けている。排気ガスは、後処理装置37を通過してマフラー38から大気中に排出される。後処理装置37は、酸化触媒(DOC)39とディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)40とから構成されている。
酸化触媒(DOC)39は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)40は粒状化物質(PM)を捕集するためのものである。DPF40の性質として、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、DPF40内にPMが溜まってきて捕集能力が低下してくる。
図7は前記標準モードと低燃費モード選択時におけるメイン噴射Iとアフター噴射AIのタイミング変更を示している。標準モードから低燃費モードに切り換えると、メイン噴射タイミングを進角ADさせて燃焼効率を向上させて燃費を向上させる。
しかしながら、低燃費モードでの燃費向上に伴い排気温度が低下してしまうので、DPF40内にPMが溜まり易くなってしまう。そこで、前述のようにメイン噴射Iのタイミングを進角ADさせたときには、アフター噴射AIの噴射量を増量させる構成とする。具体的には、メイン噴射タイミングを1度進角させると、1mm立方/st増量させる。これにより、燃焼効率の上昇とともに排気ガス温度が上昇し、DPF40内に溜ったPMが燃焼しやすくなり、PMの堆積量を減らすことが可能となる。
また、メイン噴射Iを進角するとNOxが増えるので、このNOxを減らすために、次のような制御を行う。
メイン噴射Iを始めてからメイン噴射の最大噴射量Q1に到達するまでの総時間をJ1とし、この総時間J1を前期時間J2と後期時間J3に分割する。そして、前期時間J2における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率をZ2を、後期時間J3における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率Z3に対して少なくする構成とする。これにより、急激な燃焼とならないので、NOxの発生量を抑制可能となる。また、メイン噴射Iよりも先にパイロット噴射Pを行うように構成してもよい。これにより、騒音低減となりNOx低減となる。
このパイロット噴射を入り切りする別の方法について説明する。
パイロット噴射を入り切りする燃料噴射量の境界線を、ブーストによる燃料噴射量制限させる境界線よりも高い(燃料噴射量多い)位置に設定する。パイロット噴射切り替えは、噴射量が少ない側を入りとし、多い側を切りと設定する。
これにより、フリーアクセル時は、回転が上昇しても常にパイロット噴射が行われるようになるので、回転吹き上がり時の燃焼騒音が低減される。また、パイロット噴射自体が失火に強いため、失火防止にもなる。
図6に示すように、排気ガスの一部を吸気側に還元するEGR回路41を構成することで、NOx低減効果がある。42はEGRバルブで、還元量を制御している。
このようなEGR回路41を有しているエンジンにおいては、低燃費モードを選択することで、さらにEGRバルブ42の開度を標準モードの開度よりも大きくなるように構成する。これにより、PMの排出量を低減できる。
図8はスワール比によるエンジン負荷とPM排出量との関係を示している。スワール比とは、1行程あたりの渦の回転数のことであり、スワール比が高いほど強力な渦が生成されるので、燃料と空気がよく混ざる。シリンダヘッドにスワール比を変更可能なスワールコントロールバルブ(図示せず)を設けている。スワール比を強くした場合、高負荷域ではPMが増加する傾向にあるが、中負荷以下においては、PMが減少する。
また、スワール比によるNOx排出量への影響は、低いエンジン回転数ででる。スワール比が低い場合は、低回転域でNOxが低くなる代わりに、低回転中負荷領域のPM排出量が増加するので、EGRバルブ42(図6参照)制御を閉側に補正することで、PMの排出量を減らすことができるようになる。EGRバルブ42を閉側へシフトさせるとEGR率が低下し、NOx量は増加してしまうが、元々NOx値が中央値よりも低い場合にこの制御を行うので、NOx量が規制値をこえることはない。
コモンレール圧を下げると、PMが増加してNOxが減少し、噴射タイミングを進角させると、NOxが増加して燃費が向上するという傾向がある。そこで、低燃費モードラインL2を選択した場合においては、PMが減少する領域のみを使用するため、コモンレール圧を下げて、噴射タイミングを進角させることができる。これにより、PM排出量は変わらず燃費を良化させた低燃費モードラインL2となる。
前述した図5においては、エンジンの型式毎に標準モードラインL1と低燃費モードラインL2を設定する必要があり面倒であった。
そこで、予めECU100内にトルクカーブ、メイン噴射タイミング、コモンレール圧、ガバナモード等を設定しておき、この中から型式により標準モードと低燃費モードに必要なマップを選択するように構成する。これにより、モードの設定数が減少して、組立工数が低減する。また、市場でトラクタのエンジンを別型式に積み替えた場合において、標準モードラインL1と低燃費モードラインL2の設定が容易となる。
トラクタの場合、多段変速(前進32段、後進32段)が可能になっており、路上での発進時においては高速を選択した状態で発進しようとすることもある。高速を選択した状態でエンジン低回転数で発進しようとすると、エンストの可能性があるが、エンジン高回転数で発進しようとすると、急発進してしまうことがある。
そこで、路上での発進時(ドループ制御)においては、走行クラッチがつながるときにドループ制御の変動率(負荷に応じてエンジン回転を下げる)を大きくする構成とする。さらに、低燃費モードラインL2を選択する構成とする。これにより、急発進が抑制され低燃費となる。
また、標準モードラインL1を選択した場合には、低回転時以外、吸気スロットルバルブを制御して吸入空気量を制限することで、ブースト温度上昇によるNOx排出量を抑制する。低燃費モードラインL2を選択した場合には、NOx排出量の多い高負荷部をカット(出力制限)し、吸気スロットルバルブを全開にすることで、吸入空気量増加により燃費を向上させる構成とする。
DPF40が装着されるエンジンでは、DPF40内に溜まったPMを除去するために吸気スロットルバルブを装着する必要があるが、この吸気スロットルバルブを利用して前述のように低燃費モードとすることができる。また、過給器(ターボ)の最大吸気圧を制限させる役割のウエストゲートバルブを廃止して、吸気スロットルバルブにより過給圧(空気量)をコントロールすることで、廉価な構成となる。
【0029】
また、トラクタエンジンの故障診断においては、車両の負荷(走行、PTO、油圧、エアコン等)を感知する機能を有し、エンジンの暖機状態を冷却水温により認識し、運転者によるアクセル操作が無い場合に、エンジン回転数がローアイドルにて所定時間保持される状態の燃料噴射量(ECUからの指示値)を、これまでのレベルと比較して、一定値以上異なっていれば、エンジン本体に異常発生と認識する構成とする。これにより、電気的な故障でない機械的な故障も診断可能となる。
また、前記エンジン回転数がローアイドルにて所定時間保持される状態の燃料噴射量(ECUからの指示値)を、予め設定している閾値と比較して、この閾値と比較して一定値以上異なっていれば、エンジン本体に異常発生と認識する構成としてもよい。
また、前記エンジン回転数がローアイドルにて所定時間保持される状態の燃料噴射量(ECUからの指示値)を、経年変化の傾向と一定値以上異なっていれば、エンジン本体に異常発生と認識する構成としてもよい。
また、図9に示すように、エンジンの運転中にセンサAからの信号とセンサBからの信号を比較し、その絶対値差が特定の基準(閾値)をこえると、どちらかのセンサが故障と判定するものにおいて、エンジン回転数の過渡的な変動により、双方のセンサが正常であるにもかかわらず、その絶対値差が閾値をこえてしまうと、センサ故障と診断されてしまう。
そこで、エンジンの時間的な回転変動レベル(dN/dT)にしたがって補正することで、誤診断を防止できるようになる。
また、エンジンの運転中にセンサAからの信号とセンサBからの信号を比較し、その絶対値差が特定の基準(閾値)をこえた状態が一定時間継続した場合、どちらかのセンサが故障と判定するものにおいて、エンジン回転数の過渡的な変動により、双方のセンサが正常であるにもかかわらず、その絶対値差が閾値をこえてしまう状態が継続すると、センサ故障と診断されてしまう。
そこで、エンジンの時間的な回転変動レベル(dN/dT)にしたがって故障判定時間を補正することで、誤診断を防止できるようにしてもよい。
また、エンジンの時間的な回転変動レベル(dN/dT)にしたがって故障判定される信号波形を制御用とは別の処理(フィルタリング)を施すことにより、誤診断を防止できるようにしてもよい。
図6に示す符号43は後処理装置37上流側のバーナーである。このバーナー43の制御回路を図10に示している。ポンプ46にて燃料タンクから燃料を噴射ノズル44に圧送し、高温の排気ガスに混入して燃焼させることで、後処理装置37を通過する温度が上昇し、DPF40内のPMが焼き飛ばされて除去される。そして、圧力計45の検出値が設定範囲外になると、噴射ノズル44が正常に作動していない可能性があるので、燃料噴射を中断して警告を行う構成とする。
また、後処理装置37前後の温度計47a、47bの温度から、DPF40が再生できていないと判断すれば、ECU100はエンジンを停止させてもよい。
エンジンのバランサについて説明する。エンジンのクランクとカムシャフトに設けたパルスギヤとセンサによりクランク角度を検出し、ECUで検出したクランク角度を元にして2次バランサ(図示せず)を電気モータで駆動する。
そして、アクセル開度、負荷の検出によって燃料噴射量、時期の増減をECUで行う際に、予想される角加速度の変化量をECU100で算出し、バランサの回転がエンジン回転の増減に遅れないように制御する。エンジン始動時など、バッテリからの電力を多く必要とする場合は、バランサを駆動せず電力消費を抑制する。これにより、モータ駆動であるので、騒音低減、燃費の悪化防止となる。
トラクタの走行において、エンジンとモータを併用する、所謂ハイブリッド方式の構成においては、モータ駆動のリチュウムイオンバッテリ自体の温度上昇が問題となる。そこで、バッテリの温度をECU100で監視し、所定以上の温度になると、キャビン内に送っている冷気をバッテリに当てる構成とする。また、エアコンが作動していない場合は、エアコンを作動させて行う。また、暖房が作動している場合は、一時的に暖房を冷房に切り替えて行う。このとき、冷気はキャビン内に送風しない。
また、ターボエンジンは、加減速時に応答遅れが生じる(ターボラグ)。そこで、クランクシャフトの端部にモータを連結して設け、エンジン負荷、エンジン回転数が急激に変化する条件で、モータによりアシストする構成とする。この期間中は、燃料噴射量を極力少なくして黒煙の発生を抑え、燃費を改善する構成とする。
エンジンEとモータ51の配置を図11に示している。エンジンEをボンネッと52内に配置し、エンジンEとキャビン53の間に冷却ファン48を設ける。この冷却ファン48とキャビン53の間にラジエータ49を設ける。
また、エンジンEの前方にフライホイール50を設け、このフライホイールの前部にモータ51を設ける構成とする。これにより、エンジンEとモータ51の配置が容易となる。
図12においては、モータ51をエンジンEのフロント側のクランクセンターに配置して、クランクシャフト54と直結する構成とする。そして、後処理装置37はクランクシャフト54に対してその長手方向が直交する方向にしてエンジンEの上部に設けている。そして、DPF40を再生させるときには、モータクラッチ51aを接続して、負荷をかけるとともに発電された電力をバッテリに蓄電するように構成してもよい。
また、トラクタにおいては、前輪の前方にウエイトを搭載して機体バランスを取っているが、ウエイトの代わりにバッテリを配置する構成としてもよい。
エンジンの極低温時の運転について説明する。極低温時においては噴射タイミングを進角補正するが、温度センサは冷却水温センサと吸気温センサの両方で行う構成とする。これにより、いずれか一方のセンサが故障しても、いずれか他方のセンサで制御可能となり、失火発生の頻度を少なくでき、暖機完了までスムーズな運転を行うことができるようになる。
エンジンのシリンダヘッドとホットプラグの間においては、従来は空間がほとんどない。そこで、過流室を構成する部品(ホットプラグ)の一部に切り欠きを設け、過流室壁面とシリンダヘッドの間を断熱空間とし、過流室壁面を高温に保持する。
トラクタの後部には作業機21(図3)が装着されている。ロータリの場合は、通常はエンジンからの動力でPTO軸からロータリを回転するが、高負荷のときはこのPTO軸をアシストするようにモータを取り付けている。そして、旋回時等でロータリ21を上昇させると、PTOクラッチを切りとしてロータリの回転を止めるとともに、モータとロータリを接続する。これにより、慣性で回転しているロータリの回転力を電力として回生することができる。また、ロータリの回転は速やかに停止するので安全となる。
トラクタの作業走行においては、アクセルレバーを操作してエンジン回転数を所定回転数まで上昇させて作業走行を行う。そして、枕地等での旋回時に作業機21を上昇させると、エンジン回転数は所定回転数まで低下する構成としている。しかしながら、作業速度によっては低下させるエンジン回転数(一律)により速度低下が大きくなる不具合があった。
そこで、作業速度が低い場合は、低下させるエンジン回転数を少なくして高回転数を維持し、作業速度が速い場合は、低下させるエンジン回転数を大きくして低回転数となるようにする。
また、旋回時にはステアリング操作を行うが、ステアリング操作角が小さい場合は、低下させるエンジン回転数を少なくして高回転数を維持し、ステアリング操作角が大きい場合は、低下させるエンジン回転数を大きくして低回転数となるようにする。これにより、作業効率低下を招くことなく、安全な走行が可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 コモンレール
21 作業機
36 燃費モード変更手段(燃費モードダイヤル)
37 後処理装置
41 EGR回路
42 EGRバルブ
100 ECU
E エンジン
I メイン噴射
AI アフター噴射
AD 噴射タイミング進角
L1 標準モードライン
L2 低燃費モードライン
Q1 最大噴射量
J1 総時間
J2 前記時間
J3 後期時間
Z2 燃料噴射量の増加率
Z3 燃料噴射量の増加率
P パイロット噴射
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と、該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、排気ガスを浄化する後処理装置(37)を機体の適宜位置に設け、ECU(100)内にエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、低燃費モードライン(L2)に切り換えるとメイン噴射(I)の噴射タイミングを進角(AD)させるとともにアフター噴射(AI)の噴射量を増量させるように構成したことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記メイン噴射(I)を始めてからメイン噴射の最大噴射量(Q1)に到達するまでの総時間を(J1)とし、この総時間(J1)を前期時間(J2)と後期時間(J3)に分割構成し、前期時間(J2)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z2)を、後期時間(J3)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z3)に対して少なくするように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記メイン噴射(I)よりも先にパイロット噴射(P)を行うように構成したことを特徴とする請求項2に記載のトラクタ。
【請求項4】
排気ガスの一部を吸気側に還元するEGR回路(41)とEGRバルブ(42)を構成し、低燃費モードライン(L2)に切り換えた場合のEGRバルブ(42)の開度を、標準モードライン(L1)のときのEGRバルブ(42)の開度よりも大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3に記載のトラクタ。
【請求項1】
コモンレール(1)を備えたエンジン(E)と、該エンジン(E)の制御を行うECU(100)、及び作業機(21)を搭載したトラクタにおいて、排気ガスを浄化する後処理装置(37)を機体の適宜位置に設け、ECU(100)内にエンジン回転数とトルクとの関係を示す性能曲線を少なくとも標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)とから構成し、該標準モードライン(L1)と低燃費モードライン(L2)との切り換えは燃費モード変更手段(36)で行う構成とし、低燃費モードライン(L2)に切り換えるとメイン噴射(I)の噴射タイミングを進角(AD)させるとともにアフター噴射(AI)の噴射量を増量させるように構成したことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記メイン噴射(I)を始めてからメイン噴射の最大噴射量(Q1)に到達するまでの総時間を(J1)とし、この総時間(J1)を前期時間(J2)と後期時間(J3)に分割構成し、前期時間(J2)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z2)を、後期時間(J3)における単位時間当たりの燃料噴射量の増加率(Z3)に対して少なくするように構成したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記メイン噴射(I)よりも先にパイロット噴射(P)を行うように構成したことを特徴とする請求項2に記載のトラクタ。
【請求項4】
排気ガスの一部を吸気側に還元するEGR回路(41)とEGRバルブ(42)を構成し、低燃費モードライン(L2)に切り換えた場合のEGRバルブ(42)の開度を、標準モードライン(L1)のときのEGRバルブ(42)の開度よりも大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3に記載のトラクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−180773(P2012−180773A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43227(P2011−43227)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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