トンネル磁気抵抗効果素子、それを用いた磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリ
【課題】高熱安定性を有する高速超低消費電力不揮発性メモリを提供する。
【解決手段】不揮発性磁気メモリに、高い熱安定性をもつ自由層を適用した高出力なトンネル磁気抵抗効果素子を装備し、スピントランスファートルクによる書込み方式を適用する。トンネル磁気抵抗効果素子1は、CoとFeとBを含有する体心立方構造の第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308と第一の非磁性膜307で構成される自由層を持ち、自由層に(100)配向した岩塩構造のMgO絶縁膜305を介して固定層3021を積層した構造を有する。
【解決手段】不揮発性磁気メモリに、高い熱安定性をもつ自由層を適用した高出力なトンネル磁気抵抗効果素子を装備し、スピントランスファートルクによる書込み方式を適用する。トンネル磁気抵抗効果素子1は、CoとFeとBを含有する体心立方構造の第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308と第一の非磁性膜307で構成される自由層を持ち、自由層に(100)配向した岩塩構造のMgO絶縁膜305を介して固定層3021を積層した構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱安定性を有する高出力トンネル磁気抵抗素子及びそれを装備した低消費電力不揮発性磁気メモリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
将来の高集積磁気メモリに適用されるトンネル磁気抵抗効果素子として、Alの酸化物を絶縁体に用いたトンネル磁気抵抗効果素子(T. Miyazaki and N. Tezuka, J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995))よりも数倍大きい磁気抵抗比が得られる絶縁膜に酸化マグネシウムを用いたトンネル磁気抵抗効果素子(S. Yuasa. et al., Nature Material 3, 868(2004))が開示されている。また、従来の不揮発性磁気メモリは、MOSFET上にトンネル磁気抵抗効果素子を形成したメモリセルにより構成される。スイッチングはMOSFETを利用し、ビット線とワード線に通電させることにより発生する電流誘起の空間磁場を使ってトンネル磁気抵抗効果素子の磁化方向を回転させ、情報を書込み、トンネル磁気抵抗効果素子の出力電圧により情報を読み出す方式である。また、上記電流誘起の空間磁場を使った磁化回転のほかに、直接磁気抵抗効果素子に電流を流すことにより磁化を回転させるいわゆるスピントランスファートルク磁化反転あるいは同義であるスピン注入磁化反転方式があり、例えば米国特許第5,695,864号明細書あるいは特開2002−305337号公報に開示されている。特開2005−294376には、外部からの侵入磁界に対して安定にスピントランスファートルク磁化反転動作させる目的で、非磁性膜を介して複数の強磁性膜を積層した自由層を適用したトンネル磁気抵抗効果素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,695,864号明細書
【特許文献2】特開2002−305337号公報
【特許文献3】特開2005−294376号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995)
【非特許文献2】Nature Material 3, 868(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い信頼性をもつ低消費電力不揮発性磁気メモリの実現には、高出力トンネル磁気抵抗効果素子の自由層(記録層)において高い熱安定性と、スピントランスファートルク磁化反転による書込み方式とを同時に満足する技術を開発する必要がある。
【0006】
本発明は、このような要請に応えることのできる高い熱安定性を有するトンネル磁気抵抗効果素子及びそれを用いた不揮発性磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トンネル磁気抵抗効果素子の強磁性膜にBを含むCoあるいはFeの体心立方格子をもつ化合物強磁性膜を適用し、絶縁膜に(100)配向した岩塩構造酸化マグネシウムを適用し、強磁性自由層に非磁性層を挟んで反強磁性結合した二つの強磁性膜を適用する。すなわち、本発明によるトンネル磁気抵抗効果素子は、絶縁膜と、絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、第一の強磁性膜は絶縁膜に隣接し、第二の強磁性膜の磁化と第一の強磁性膜の磁化は反強磁性結合しており、強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有する。
【0008】
絶縁膜に(100)配向した岩塩構造のMgO膜を用いない場合には、磁気抵抗比は著しく低下し、磁気メモリセルあるいは磁気ランダムアクセスメモリに最低限必要な200mVの読み出し電圧が得られない。
【0009】
本発明のトンネル磁気抵抗効果素子は、磁気メモリセルや磁気ランダムアクセスメモリに適用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、高い熱安定性を有するトンネル磁気抵抗効果素子が得られる。また、そのトンネル磁気抵抗効果素子を磁気メモリに装備することにより、高い熱安定性、すなわち磁気情報の保持時間の長い不揮発性メモリを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子の第一の構成例を示した図である。
【図2】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子の第二の構成例を示した図である。
【図3】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における、第一の非磁性膜の膜厚に対して第一の強磁性膜と第二の強磁性膜の間の反平行結合の強さ(a)と書込み電流密度(b)をプロットした図である。
【図4】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)と熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図5】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)、熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図6】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)、熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図7】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)、熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図8】第一の強磁性膜と第二の強磁性膜の材料選択例と各々の組み合わせでの特性例を示した図である。
【図9】第一の強磁性膜と第二の強磁性膜の材料選択例と各々の組み合わせでの特性例を示した図である。
【図10】本発明の磁気メモリセルの構成例を示した図である。
【図11】本発明の磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示した図である。
【図12】CoxFe100-xの組成に対する結晶構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に述べるトンネル磁気抵抗効果素子では、その強磁性自由層の磁化反転(スイッチング)を空間的な外部磁界ではなく主として、トンネル磁気抵抗効果素子中を流れるスピン偏極した電流のスピンが強磁性自由層の磁気モーメントにトルクを与えることにより行う。このスピン偏極した電流は、トンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すこと自体で発生する。したがって、トンネル磁気抵抗効果素子に外部から電流を流すことによりスピントランスファートルク磁化反転は実現される。以下では、スピントランスファートルク磁化反転の起こる電流密度の閾値をJcと定義した。
【0013】
[実施例1]
図1は、本発明によるトンネル磁気抵抗効果素子の一例を示す断面模式図である。本実施例では、トンネル磁気抵抗効果素子はスパッタリング法を用いて作製した。このトンネル磁気抵抗効果素子1は、配向制御膜300、反強磁性膜301、強磁性固定層3021、絶縁膜305、第一の強磁性膜306、第一の非磁性膜307、第二の強磁性膜308、保護膜309により形成され、適当な温度で熱処理することにより磁気抵抗比が最適化される。熱処理は、400℃まで行うことが可能である。強磁性固定層3021は、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合もある。以下、強磁性固定層3021が、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合について述べる。
【0014】
配向制御膜300はNiFe(5nm)により形成したが、Ta(5nm)/NiFe(5nm)の2層膜など、上記反強磁性膜301の配向性を向上させ、安定した反強磁性結合を実現することのできる他の材料を用いてもよい。反強磁性膜301にはMnIr(8nm)を用いたが、膜厚は5〜15nmの範囲で選択可能である。また、MnPt,MnFeなど、Mn化合物で構成される反強磁性膜を用いても安定に反強磁性結合を実現できる。第四の強磁性膜302にはCoFe(2nm)を、第二の非磁性膜303にはRu(0.8nm)を、第三の強磁性膜304には体心立方格子をもつCoFeB(3nm)を用いた。第四の強磁性膜302のCoFeの組成比は、Co組成を50〜90atm%の間とした。この組成範囲において、上記反強磁性膜と安定した反強磁性結合を実現できる。第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304は、第四の強磁性膜302と第三の強磁性膜304の磁化が反強磁性結合するような材料を選択し、それぞれの膜厚は第四の強磁性膜302と第三の強磁性膜304の磁化の大きさが等しくなるように選択した。
【0015】
絶縁膜305は、岩塩構造をもつ酸化マグネシウム結晶膜であり、(100)方向に配向した膜である。絶縁膜の膜厚は0.8nm〜3nmの範囲とした。絶縁膜305の膜厚を前記の範囲とすることにより、任意の電気抵抗を選択することが可能である。第二の強磁性膜308、第一の強磁性膜306は体心立方格子をもつCoFeB(3nm)を用いた。第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308のCoFeBのCoとFeの組成は50:50〜70:30の範囲とするのが好ましい。この組成範囲では図12に示すように体心立方構造が安定に存在し、かつ絶縁膜305にMgOを適用したトンネル磁気抵抗効果素子1では、CoをFeより多く含むことでトンネル磁気抵抗比に寄与するスピン分極率を向上できるためである。第一の非磁性膜307は、Ruを用い、その膜厚は第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化が反平行結合するように選択した。
【0016】
図3(a)は、第一の非磁性膜307の膜厚に対する第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化結合の強さを表す図である。図の磁化結合が正の領域は第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308が反平行結合していることを表し、負の領域は平行結合していることを表す。図3(b)は、第一の非磁性膜307の膜厚に対する書込み電流の大きさをプロットした図である。図3(b)から、図3(a)で示した反平行結合の膜厚領域において書込み電流が小さいことがわかり、第一の非磁性膜307の膜厚は0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲を選択することが望ましい。
【0017】
上記第三の強磁性膜304、第二の強磁性膜308及び第一の強磁性膜306のCoFeBは、非結晶であってもよく、適当な温度での熱処理により結晶化させてもよい。また、CoFeBの組成比は、体心立方格子が安定となるCo組成が40〜60atm%、B組成が10〜30atm%の間とすることが望ましい。さらに、第一の強磁性膜306、第二の強磁性膜308にはCoFeB以外に、CoFeの単層膜、NiFeの単層膜、CoFe/NiFeあるいはCoFeB/NiFeさらにCoFeB/CoFeの2層膜を用いてもよい。このときのCoFeのCo組成は体心立方格子が安定である50atm%が望ましいが、50〜90%の間で使用してよい。Co組成が大きいと、面心立方格子が安定であり、トンネル磁気抵抗比は減少するが、強磁性自由層として保磁力の小さい良好な磁気特性が実現でき、スピントランスファートルク磁化反転の閾値電流密度をそれぞれの磁気モーメントの大きさに対応して変化させることができる。保護膜300は、Ta(5nm)/Ru(5nm)の2層膜で形成した。
【0018】
次に、素子加工プロセスについて述べる。素子加工にはフォトリソグラフィーとイオンミリングを用い、最小0.1μm×0.12μmの面積をもつトンネル磁気抵抗効果素子を作製した。このように作製されたトンネル磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗比は、熱処理を施すことにより増大させることが可能であり、第二の強磁性膜308と第一の強磁性膜306にCoFeBを用いた構成では、375℃以上で1時間程度の熱処理を施すことにより250%に達した。また、絶縁膜305の厚さが0.8nmから3.0nmの範囲では、100%以上のトンネル磁気抵抗比を示した。また、熱処理の温度は400℃まで上昇させても、150%以上の良好な磁気抵抗比を得ることが可能である。特に、熱処理によりCoFeBは結晶化することが確認され、結晶化した後のCoFeBが体心立方格子の結晶構造をもつ場合に、トンネル磁気抵抗比は最も大きくなった。
【0019】
酸化マグネシウムの(100)配向膜は、非晶質の第三の強磁性膜の上にスパッタ法を用いて作製することは可能であるが、多結晶構造をもつ第三の強磁性膜の上にスパッタ法を用いて作製した場合、良好な(100)配向膜を得ることは困難であり、トンネル磁気抵抗比は最大でも50%にとどまった。このことは、第一の強磁性膜306と第三の強磁性膜304が結晶のCoFeBであり、かつ絶縁膜305が(100)配向の結晶の酸化マグネシウムであるトンネル磁気抵抗効果素子1で、200%以上のトンネル磁気抵抗比が得られている素子は、必ず製膜時の第一の強磁性膜306と第三の強磁性膜304は非結晶のCoFeBであって、熱処理の過程を経て作製されたものであることを示している。このように熱処理によりCoFeB膜を非晶質から結晶化させることにより高い磁気抵抗比を得ることが可能であるが、CoFeBを350℃以下の熱処理温度で非晶質の状態で使用してもかまわない。
【0020】
上記のように、製膜時非晶質であった第一の強磁性膜306と第三の強磁性膜304を熱処理により結晶化させてトンネル磁気抵抗効果素子1を作製する方法は、従来の方法とは異なる。ただし、第一の強磁性膜306にCoFe単層膜、NiFe単層膜、CoFe/NiFe膜を使用したトンネル磁気抵抗効果素子1では、これらの第一の強磁性膜306は製膜時から結晶質であり、熱処理により第三の強磁性膜304のみが結晶化することになる。第一の強磁性膜306にCoFe単層膜、NiFe単層膜、CoFe/NiFe膜を使用したトンネル磁気抵抗効果素子1の最大のトンネル磁気抵抗比は、それぞれ、200%、40%、150%であった。
【0021】
次に、第一の強磁性膜306の膜厚t1と第二の強磁性膜308の膜厚t2の選択について説明する。ここで、t1<t2を前提とする。t1>t2の場合は、スピントルク磁化反転の書込み電流Icの飛躍的な増大が起きる。
【0022】
最初に、第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化の大きさ(それぞれ、M1、M2とする)がM1=M2と等しい場合について説明する。図4にはM1=M2=1.5Tの例について示す。この磁化の大きさはCoFeBやCoFeの値に相当するものである。図4(a)は第一の強磁性膜306の膜厚t1に対する第二の強磁性膜308の膜厚t2の比(t2/t1)とスピントルク磁化反転の閾値電流密度Jcの関係をプロットした図、図4(b)は膜厚比(t2/t1)と熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTの関係をプロットした図である。K,V,k、Tは物理パラメータであり、それぞれ一軸異方性定数、体積、ボルツマン定数、温度である。第一の強磁性膜306の膜厚t1はt1=1.5nm、2.0nm、3.0nmである。
【0023】
図4(a)から、第二の強磁性膜308の膜厚t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。一方、図4(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。ここで、一般に磁気メモリにはKV/kTの値が60以上の熱安定性が要求される。この値は記録が10年間保持されるための条件であり、現在のメモリ市場において必要十分な仕様とされている。その数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.5、t1=2.0nmのときt2/t1>0.65、t1=1.5nmのときt2/t1>0.75を選択する必要がある。
【0024】
次に、第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化の大きさがM1>M2の場合について評価を行った。ここでは、M1=1.5T、M2=1Tとした。M=1Tは例えばNiFe膜が相当する。結果を図5に示す。図5には、図4と同様に、第一の強磁性膜の各膜厚t1に対する第二の強磁性膜の膜厚t2の比(t2/t1)に対して、スピントルク磁化反転の閾値電流密度Jcと熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTをプロットした。
【0025】
図5から、M1>M2の場合も、図4に示した傾向と同様であることがわかる。すなわち、図5(a)から、t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。ここで、Jcの絶対値については、図4に示したM1=M2の場合にくらべて低減する。一方、図5(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。上記と同様に磁気メモリとして必要とされている熱安定性としてKV/kTで60以上を仮定すると、その数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.6、t1=2.0nmのときt2/t1>0.9であり、t1=1.5nmのときはKV/kT>60を実現するのは困難であった。
【0026】
次に、M1<M2の場合についての結果を図6に示す。ここでは、M1=1T、M2=1.5Tとした。図6に、図4及び図5と同様に、第一の強磁性膜の各膜厚t1に対する第二の強磁性膜の膜厚t2の比(t2/t1)に対してJcと熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTをプロットした結果を示す。
【0027】
これらの結果も前述した図4,5の傾向と同様であることがわかる。図6(a)から、t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。ここで、Jcの絶対値については、図4、5に示した場合に比べて特にt2/t1<0.5の範囲において低減する。一方、図6(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。上記と同様に磁気メモリとして必要とされている熱安定性KV/kT>60の数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.35、t1=2.0nmのときt2/t1>0.45、t1=1.5nmのときt2/t1>0.5を選択する必要がある。
【0028】
次に、M1=M2=1Tの場合についての結果を図7に示す。図7に、第一の強磁性膜の各膜厚t1に対する第二の強磁性膜の膜厚t2の比(t2/t1)に対してスピントルク磁化反転の閾値電流密度Jcと熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTをプロットした結果を示す。
【0029】
これらの結果も前述した図4から図6の傾向と同様であることがわかる。図7(a)から、t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。ここで、Jcの絶対値については、図4、図5、図6に示した場合にくらべて低減する。一方、図7(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。磁気メモリとして必要とされている安定性KV/kT>60の数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.5、t1=2.0nmのときt2/t1>0.65、t1=1.5nmのときt2/t1>0.75を選択する必要がある。
【0030】
上例のようにM1,M2はそれぞれ第一の強磁性膜及び第二の強磁性膜の磁化の大きさを与えるが、例えば、第一の強磁性膜がCoFe/NiFe、CoFeB/NiFeさらにCoFeB/CoFeのように2層により構成される場合、これらのトータルの磁化の大きさとしてCoFe,NiFe及びCoFeBの各膜厚が設定される。また、CoFe,NiFe,CoFeBの単層膜を第一の強磁性膜、第二の強磁性膜として適用してもよい。
【0031】
[実施例2]
図2は、本発明によるトンネル磁気抵抗効果素子の他の例を示す断面模式図である。このトンネル磁気抵抗効果素子2は、配向制御膜300、第二の強磁性膜308、第一の非磁性膜307、第一の強磁性膜306、絶縁膜305、強磁性固定層3021、反強磁性膜301、保護膜309により形成される。特に第一の強磁性膜306及び第三の強磁性膜304にCoFeBを用いた場合、その結晶構造は体心立方格子であり、絶縁膜305は(100)に高配向した岩塩構造をもつMgOである。さらに、第一の強磁性膜306、第一の非磁性膜307、第二の強磁性膜308の3層でトンネル磁気抵抗効果素子2の自由層が形成される。強磁性固定層3021は、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合もある。以下、強磁性固定層3021が、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合について述べる。
【0032】
本構成のトンネル磁気抵抗効果素子2では、第二の強磁性膜308は、配向制御膜300に隣接して作製され、さらにその上に第一の非磁性膜307、第一の強磁性膜306が作製されるため、平坦性に優れている。したがって、実施例1の構造に比べて第一の強磁性膜307の軟磁気特性が向上し、第一の強磁性膜306、第一の非磁性膜307、第二の強磁性膜308の3層で形成される自由層の磁気特性が改善できる。例えば、結晶化した後のCoFeBの磁化曲線の角型比が改善され、スピントルク磁化反転におけるスイッチングが円滑に起こる。絶縁膜305も平坦な膜に形成される。しかし、反強磁性膜301がトンネル磁気抵抗効果素子2の積層方向の上方に製膜されるため、当該膜の配向性が実施例1に比べ劣化するため第四の強磁性膜との間に働く反強磁性結合が弱くなり、実施例1に比べ耐熱処理特性が劣化し、400℃の熱処理によりトンネル磁気抵抗比は減少する傾向を示す。トンネル磁気抵抗効果素子2の作製方法、それぞれの膜に使用した材料は実施例1と同様である。また、このトンネル磁気抵抗効果素子2によって得られた磁気抵抗比は、実施例1とほぼ同様の200%であった。
【0033】
本実施例においての第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の各厚の選択については、図4から図7に述べた方法と同様である。
【0034】
ここで、実施例1と実施例2における第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の材料選択と図4から図7に示した膜厚の比に対して得られた結果の対応を図8と図9に表にまとめて記載した。図8は、第一の強磁性膜306に単層膜を使用した場合、図9は第一の強磁性膜に306に2層の強磁性膜を使用した場合について示した。上記のトンネル磁気抵抗効果素子と以下の磁気メモリセル及び磁気ランダムアクセスメモリを構成するトンネル磁気抵抗素子の第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308は図8と図9に示した材料を使用することが可能である。
【0035】
[実施例3]
図10は、本発明による磁気メモリセルの構成例を示す断面模式図である。この磁気メモリセルは、メモリセルとして実施例1、2に示したトンネル磁気抵抗効果素子10を搭載している。
【0036】
C−MOS11は、2つのn型半導体12,13と一つのp型半導体14からなる。n型半導体12にドレインとなる電極21が電気的に接続され、電極41及び電極47を介してグラウンドに接続されている。n型半導体13には、ソースとなる電極22が電気的に接続されている。さらに23はゲート電極であり、このゲート電極23のon/offによりソース電極22とドレイン電極21の間の電流のON/OFFを制御する。上記ソース電極22に電極45、電極44、電極43、電極42、電極46が積層され、電極46を介してトンネル磁気抵抗効果素子10の配向制御膜300が接続されている。
【0037】
ビット線212は上記トンネル磁気抵抗効果素子10の保護膜309に接続されている。本実施例の磁気メモリセルでは、トンネル磁気抵抗効果素子10に流れる電流、いわゆるスピントランスファートルクによりトンネル磁気抵抗効果素子10の第一の強磁性膜306と第一の非磁性膜307と第二の強磁性膜308で構成される強磁性自由層の磁化方向を回転し磁気的情報を記録する。スピントランスファートルクは空間的な外部磁界ではなく主として、トンネル磁気抵抗効果素子中を流れるスピン偏極した電流のスピンが前記トンネル磁気抵抗効果素子の強磁性自由層の磁気モーメントにトルクを与える原理である。このスピン偏極した電流はトンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すこと自身で発生するメカニズムをもつ。したがって、トンネル磁気抵抗効果素子に外部から電流を供給する手段を備え、その手段から電流を流すことによりスピントランスファートルク磁化反転は実現される。本実施例では、ビット線212と電極46の間に電流が流れることによりトンネル磁気抵抗効果素子10中の第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308で構成される強磁性自由層にスピントランスファートルクが作用する。スピントランスファートルクにより書込みを行った場合、書込み時の電力は電流磁界を用いた場合に比べ百分の一程度まで低減可能である。
【0038】
図11は、上記磁気メモリセルを配置した磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図である。ゲート電極23とビット線212がメモリセル100に電気的に接続されている。前記実施例に記載した磁気メモリセルを配置することにより前記磁気メモリは低消費電力で動作が可能であり、ギガビット級の高密度磁気メモリを実現可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…トンネル磁気抵抗効果素子、2…トンネル磁気抵抗効果素子、10…トンネル磁気抵抗効果素子、100…トンネル磁気抵抗効果素子、11…トランジスタ、12…第一のn型半導体、13…第二のn型半導体、14…p型半導体、21…ソース電極、212…ビット線、22…ドレイン電極、23…ゲート電極、300…配向制御膜、301…反強磁性膜、3021…強磁性固定層、302…第四の強磁性膜、303…第二の非磁性膜、304…第三の強磁性膜、305…絶縁膜、306…第一の強磁性膜、307…第一の非磁性膜、308…第二の強磁性膜、309…保護膜、41…電極配線、42…電極配線、43…電極配線、44…電極配線、45…電極配線、46…電極配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱安定性を有する高出力トンネル磁気抵抗素子及びそれを装備した低消費電力不揮発性磁気メモリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
将来の高集積磁気メモリに適用されるトンネル磁気抵抗効果素子として、Alの酸化物を絶縁体に用いたトンネル磁気抵抗効果素子(T. Miyazaki and N. Tezuka, J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995))よりも数倍大きい磁気抵抗比が得られる絶縁膜に酸化マグネシウムを用いたトンネル磁気抵抗効果素子(S. Yuasa. et al., Nature Material 3, 868(2004))が開示されている。また、従来の不揮発性磁気メモリは、MOSFET上にトンネル磁気抵抗効果素子を形成したメモリセルにより構成される。スイッチングはMOSFETを利用し、ビット線とワード線に通電させることにより発生する電流誘起の空間磁場を使ってトンネル磁気抵抗効果素子の磁化方向を回転させ、情報を書込み、トンネル磁気抵抗効果素子の出力電圧により情報を読み出す方式である。また、上記電流誘起の空間磁場を使った磁化回転のほかに、直接磁気抵抗効果素子に電流を流すことにより磁化を回転させるいわゆるスピントランスファートルク磁化反転あるいは同義であるスピン注入磁化反転方式があり、例えば米国特許第5,695,864号明細書あるいは特開2002−305337号公報に開示されている。特開2005−294376には、外部からの侵入磁界に対して安定にスピントランスファートルク磁化反転動作させる目的で、非磁性膜を介して複数の強磁性膜を積層した自由層を適用したトンネル磁気抵抗効果素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,695,864号明細書
【特許文献2】特開2002−305337号公報
【特許文献3】特開2005−294376号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995)
【非特許文献2】Nature Material 3, 868(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い信頼性をもつ低消費電力不揮発性磁気メモリの実現には、高出力トンネル磁気抵抗効果素子の自由層(記録層)において高い熱安定性と、スピントランスファートルク磁化反転による書込み方式とを同時に満足する技術を開発する必要がある。
【0006】
本発明は、このような要請に応えることのできる高い熱安定性を有するトンネル磁気抵抗効果素子及びそれを用いた不揮発性磁気メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トンネル磁気抵抗効果素子の強磁性膜にBを含むCoあるいはFeの体心立方格子をもつ化合物強磁性膜を適用し、絶縁膜に(100)配向した岩塩構造酸化マグネシウムを適用し、強磁性自由層に非磁性層を挟んで反強磁性結合した二つの強磁性膜を適用する。すなわち、本発明によるトンネル磁気抵抗効果素子は、絶縁膜と、絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、第一の強磁性膜は絶縁膜に隣接し、第二の強磁性膜の磁化と第一の強磁性膜の磁化は反強磁性結合しており、強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有する。
【0008】
絶縁膜に(100)配向した岩塩構造のMgO膜を用いない場合には、磁気抵抗比は著しく低下し、磁気メモリセルあるいは磁気ランダムアクセスメモリに最低限必要な200mVの読み出し電圧が得られない。
【0009】
本発明のトンネル磁気抵抗効果素子は、磁気メモリセルや磁気ランダムアクセスメモリに適用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、高い熱安定性を有するトンネル磁気抵抗効果素子が得られる。また、そのトンネル磁気抵抗効果素子を磁気メモリに装備することにより、高い熱安定性、すなわち磁気情報の保持時間の長い不揮発性メモリを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子の第一の構成例を示した図である。
【図2】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子の第二の構成例を示した図である。
【図3】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における、第一の非磁性膜の膜厚に対して第一の強磁性膜と第二の強磁性膜の間の反平行結合の強さ(a)と書込み電流密度(b)をプロットした図である。
【図4】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)と熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図5】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)、熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図6】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)、熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図7】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子における書込み電流(a)、熱安定性(b)の特性例を示した図である。
【図8】第一の強磁性膜と第二の強磁性膜の材料選択例と各々の組み合わせでの特性例を示した図である。
【図9】第一の強磁性膜と第二の強磁性膜の材料選択例と各々の組み合わせでの特性例を示した図である。
【図10】本発明の磁気メモリセルの構成例を示した図である。
【図11】本発明の磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示した図である。
【図12】CoxFe100-xの組成に対する結晶構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に述べるトンネル磁気抵抗効果素子では、その強磁性自由層の磁化反転(スイッチング)を空間的な外部磁界ではなく主として、トンネル磁気抵抗効果素子中を流れるスピン偏極した電流のスピンが強磁性自由層の磁気モーメントにトルクを与えることにより行う。このスピン偏極した電流は、トンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すこと自体で発生する。したがって、トンネル磁気抵抗効果素子に外部から電流を流すことによりスピントランスファートルク磁化反転は実現される。以下では、スピントランスファートルク磁化反転の起こる電流密度の閾値をJcと定義した。
【0013】
[実施例1]
図1は、本発明によるトンネル磁気抵抗効果素子の一例を示す断面模式図である。本実施例では、トンネル磁気抵抗効果素子はスパッタリング法を用いて作製した。このトンネル磁気抵抗効果素子1は、配向制御膜300、反強磁性膜301、強磁性固定層3021、絶縁膜305、第一の強磁性膜306、第一の非磁性膜307、第二の強磁性膜308、保護膜309により形成され、適当な温度で熱処理することにより磁気抵抗比が最適化される。熱処理は、400℃まで行うことが可能である。強磁性固定層3021は、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合もある。以下、強磁性固定層3021が、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合について述べる。
【0014】
配向制御膜300はNiFe(5nm)により形成したが、Ta(5nm)/NiFe(5nm)の2層膜など、上記反強磁性膜301の配向性を向上させ、安定した反強磁性結合を実現することのできる他の材料を用いてもよい。反強磁性膜301にはMnIr(8nm)を用いたが、膜厚は5〜15nmの範囲で選択可能である。また、MnPt,MnFeなど、Mn化合物で構成される反強磁性膜を用いても安定に反強磁性結合を実現できる。第四の強磁性膜302にはCoFe(2nm)を、第二の非磁性膜303にはRu(0.8nm)を、第三の強磁性膜304には体心立方格子をもつCoFeB(3nm)を用いた。第四の強磁性膜302のCoFeの組成比は、Co組成を50〜90atm%の間とした。この組成範囲において、上記反強磁性膜と安定した反強磁性結合を実現できる。第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304は、第四の強磁性膜302と第三の強磁性膜304の磁化が反強磁性結合するような材料を選択し、それぞれの膜厚は第四の強磁性膜302と第三の強磁性膜304の磁化の大きさが等しくなるように選択した。
【0015】
絶縁膜305は、岩塩構造をもつ酸化マグネシウム結晶膜であり、(100)方向に配向した膜である。絶縁膜の膜厚は0.8nm〜3nmの範囲とした。絶縁膜305の膜厚を前記の範囲とすることにより、任意の電気抵抗を選択することが可能である。第二の強磁性膜308、第一の強磁性膜306は体心立方格子をもつCoFeB(3nm)を用いた。第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308のCoFeBのCoとFeの組成は50:50〜70:30の範囲とするのが好ましい。この組成範囲では図12に示すように体心立方構造が安定に存在し、かつ絶縁膜305にMgOを適用したトンネル磁気抵抗効果素子1では、CoをFeより多く含むことでトンネル磁気抵抗比に寄与するスピン分極率を向上できるためである。第一の非磁性膜307は、Ruを用い、その膜厚は第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化が反平行結合するように選択した。
【0016】
図3(a)は、第一の非磁性膜307の膜厚に対する第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化結合の強さを表す図である。図の磁化結合が正の領域は第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308が反平行結合していることを表し、負の領域は平行結合していることを表す。図3(b)は、第一の非磁性膜307の膜厚に対する書込み電流の大きさをプロットした図である。図3(b)から、図3(a)で示した反平行結合の膜厚領域において書込み電流が小さいことがわかり、第一の非磁性膜307の膜厚は0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲を選択することが望ましい。
【0017】
上記第三の強磁性膜304、第二の強磁性膜308及び第一の強磁性膜306のCoFeBは、非結晶であってもよく、適当な温度での熱処理により結晶化させてもよい。また、CoFeBの組成比は、体心立方格子が安定となるCo組成が40〜60atm%、B組成が10〜30atm%の間とすることが望ましい。さらに、第一の強磁性膜306、第二の強磁性膜308にはCoFeB以外に、CoFeの単層膜、NiFeの単層膜、CoFe/NiFeあるいはCoFeB/NiFeさらにCoFeB/CoFeの2層膜を用いてもよい。このときのCoFeのCo組成は体心立方格子が安定である50atm%が望ましいが、50〜90%の間で使用してよい。Co組成が大きいと、面心立方格子が安定であり、トンネル磁気抵抗比は減少するが、強磁性自由層として保磁力の小さい良好な磁気特性が実現でき、スピントランスファートルク磁化反転の閾値電流密度をそれぞれの磁気モーメントの大きさに対応して変化させることができる。保護膜300は、Ta(5nm)/Ru(5nm)の2層膜で形成した。
【0018】
次に、素子加工プロセスについて述べる。素子加工にはフォトリソグラフィーとイオンミリングを用い、最小0.1μm×0.12μmの面積をもつトンネル磁気抵抗効果素子を作製した。このように作製されたトンネル磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗比は、熱処理を施すことにより増大させることが可能であり、第二の強磁性膜308と第一の強磁性膜306にCoFeBを用いた構成では、375℃以上で1時間程度の熱処理を施すことにより250%に達した。また、絶縁膜305の厚さが0.8nmから3.0nmの範囲では、100%以上のトンネル磁気抵抗比を示した。また、熱処理の温度は400℃まで上昇させても、150%以上の良好な磁気抵抗比を得ることが可能である。特に、熱処理によりCoFeBは結晶化することが確認され、結晶化した後のCoFeBが体心立方格子の結晶構造をもつ場合に、トンネル磁気抵抗比は最も大きくなった。
【0019】
酸化マグネシウムの(100)配向膜は、非晶質の第三の強磁性膜の上にスパッタ法を用いて作製することは可能であるが、多結晶構造をもつ第三の強磁性膜の上にスパッタ法を用いて作製した場合、良好な(100)配向膜を得ることは困難であり、トンネル磁気抵抗比は最大でも50%にとどまった。このことは、第一の強磁性膜306と第三の強磁性膜304が結晶のCoFeBであり、かつ絶縁膜305が(100)配向の結晶の酸化マグネシウムであるトンネル磁気抵抗効果素子1で、200%以上のトンネル磁気抵抗比が得られている素子は、必ず製膜時の第一の強磁性膜306と第三の強磁性膜304は非結晶のCoFeBであって、熱処理の過程を経て作製されたものであることを示している。このように熱処理によりCoFeB膜を非晶質から結晶化させることにより高い磁気抵抗比を得ることが可能であるが、CoFeBを350℃以下の熱処理温度で非晶質の状態で使用してもかまわない。
【0020】
上記のように、製膜時非晶質であった第一の強磁性膜306と第三の強磁性膜304を熱処理により結晶化させてトンネル磁気抵抗効果素子1を作製する方法は、従来の方法とは異なる。ただし、第一の強磁性膜306にCoFe単層膜、NiFe単層膜、CoFe/NiFe膜を使用したトンネル磁気抵抗効果素子1では、これらの第一の強磁性膜306は製膜時から結晶質であり、熱処理により第三の強磁性膜304のみが結晶化することになる。第一の強磁性膜306にCoFe単層膜、NiFe単層膜、CoFe/NiFe膜を使用したトンネル磁気抵抗効果素子1の最大のトンネル磁気抵抗比は、それぞれ、200%、40%、150%であった。
【0021】
次に、第一の強磁性膜306の膜厚t1と第二の強磁性膜308の膜厚t2の選択について説明する。ここで、t1<t2を前提とする。t1>t2の場合は、スピントルク磁化反転の書込み電流Icの飛躍的な増大が起きる。
【0022】
最初に、第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化の大きさ(それぞれ、M1、M2とする)がM1=M2と等しい場合について説明する。図4にはM1=M2=1.5Tの例について示す。この磁化の大きさはCoFeBやCoFeの値に相当するものである。図4(a)は第一の強磁性膜306の膜厚t1に対する第二の強磁性膜308の膜厚t2の比(t2/t1)とスピントルク磁化反転の閾値電流密度Jcの関係をプロットした図、図4(b)は膜厚比(t2/t1)と熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTの関係をプロットした図である。K,V,k、Tは物理パラメータであり、それぞれ一軸異方性定数、体積、ボルツマン定数、温度である。第一の強磁性膜306の膜厚t1はt1=1.5nm、2.0nm、3.0nmである。
【0023】
図4(a)から、第二の強磁性膜308の膜厚t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。一方、図4(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。ここで、一般に磁気メモリにはKV/kTの値が60以上の熱安定性が要求される。この値は記録が10年間保持されるための条件であり、現在のメモリ市場において必要十分な仕様とされている。その数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.5、t1=2.0nmのときt2/t1>0.65、t1=1.5nmのときt2/t1>0.75を選択する必要がある。
【0024】
次に、第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の磁化の大きさがM1>M2の場合について評価を行った。ここでは、M1=1.5T、M2=1Tとした。M=1Tは例えばNiFe膜が相当する。結果を図5に示す。図5には、図4と同様に、第一の強磁性膜の各膜厚t1に対する第二の強磁性膜の膜厚t2の比(t2/t1)に対して、スピントルク磁化反転の閾値電流密度Jcと熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTをプロットした。
【0025】
図5から、M1>M2の場合も、図4に示した傾向と同様であることがわかる。すなわち、図5(a)から、t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。ここで、Jcの絶対値については、図4に示したM1=M2の場合にくらべて低減する。一方、図5(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。上記と同様に磁気メモリとして必要とされている熱安定性としてKV/kTで60以上を仮定すると、その数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.6、t1=2.0nmのときt2/t1>0.9であり、t1=1.5nmのときはKV/kT>60を実現するのは困難であった。
【0026】
次に、M1<M2の場合についての結果を図6に示す。ここでは、M1=1T、M2=1.5Tとした。図6に、図4及び図5と同様に、第一の強磁性膜の各膜厚t1に対する第二の強磁性膜の膜厚t2の比(t2/t1)に対してJcと熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTをプロットした結果を示す。
【0027】
これらの結果も前述した図4,5の傾向と同様であることがわかる。図6(a)から、t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。ここで、Jcの絶対値については、図4、5に示した場合に比べて特にt2/t1<0.5の範囲において低減する。一方、図6(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。上記と同様に磁気メモリとして必要とされている熱安定性KV/kT>60の数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.35、t1=2.0nmのときt2/t1>0.45、t1=1.5nmのときt2/t1>0.5を選択する必要がある。
【0028】
次に、M1=M2=1Tの場合についての結果を図7に示す。図7に、第一の強磁性膜の各膜厚t1に対する第二の強磁性膜の膜厚t2の比(t2/t1)に対してスピントルク磁化反転の閾値電流密度Jcと熱安定性の大きさを示すパラメータKV/kTをプロットした結果を示す。
【0029】
これらの結果も前述した図4から図6の傾向と同様であることがわかる。図7(a)から、t2が厚くなるにつれてJcは増大することがわかる。また、t1が薄くなるにつれてJcは低減する。ここで、Jcの絶対値については、図4、図5、図6に示した場合にくらべて低減する。一方、図7(b)から、熱安定性は、t1,t2がともに厚くなるにつれて増大することがわかる。磁気メモリとして必要とされている安定性KV/kT>60の数値を満足するには、t1=1.5〜3.0nmの範囲においては、例えば、t1=3.0nmのときt2/t1>0.5、t1=2.0nmのときt2/t1>0.65、t1=1.5nmのときt2/t1>0.75を選択する必要がある。
【0030】
上例のようにM1,M2はそれぞれ第一の強磁性膜及び第二の強磁性膜の磁化の大きさを与えるが、例えば、第一の強磁性膜がCoFe/NiFe、CoFeB/NiFeさらにCoFeB/CoFeのように2層により構成される場合、これらのトータルの磁化の大きさとしてCoFe,NiFe及びCoFeBの各膜厚が設定される。また、CoFe,NiFe,CoFeBの単層膜を第一の強磁性膜、第二の強磁性膜として適用してもよい。
【0031】
[実施例2]
図2は、本発明によるトンネル磁気抵抗効果素子の他の例を示す断面模式図である。このトンネル磁気抵抗効果素子2は、配向制御膜300、第二の強磁性膜308、第一の非磁性膜307、第一の強磁性膜306、絶縁膜305、強磁性固定層3021、反強磁性膜301、保護膜309により形成される。特に第一の強磁性膜306及び第三の強磁性膜304にCoFeBを用いた場合、その結晶構造は体心立方格子であり、絶縁膜305は(100)に高配向した岩塩構造をもつMgOである。さらに、第一の強磁性膜306、第一の非磁性膜307、第二の強磁性膜308の3層でトンネル磁気抵抗効果素子2の自由層が形成される。強磁性固定層3021は、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合もある。以下、強磁性固定層3021が、第四の強磁性膜302、第二の非磁性膜303、第三の強磁性膜304で構成される場合について述べる。
【0032】
本構成のトンネル磁気抵抗効果素子2では、第二の強磁性膜308は、配向制御膜300に隣接して作製され、さらにその上に第一の非磁性膜307、第一の強磁性膜306が作製されるため、平坦性に優れている。したがって、実施例1の構造に比べて第一の強磁性膜307の軟磁気特性が向上し、第一の強磁性膜306、第一の非磁性膜307、第二の強磁性膜308の3層で形成される自由層の磁気特性が改善できる。例えば、結晶化した後のCoFeBの磁化曲線の角型比が改善され、スピントルク磁化反転におけるスイッチングが円滑に起こる。絶縁膜305も平坦な膜に形成される。しかし、反強磁性膜301がトンネル磁気抵抗効果素子2の積層方向の上方に製膜されるため、当該膜の配向性が実施例1に比べ劣化するため第四の強磁性膜との間に働く反強磁性結合が弱くなり、実施例1に比べ耐熱処理特性が劣化し、400℃の熱処理によりトンネル磁気抵抗比は減少する傾向を示す。トンネル磁気抵抗効果素子2の作製方法、それぞれの膜に使用した材料は実施例1と同様である。また、このトンネル磁気抵抗効果素子2によって得られた磁気抵抗比は、実施例1とほぼ同様の200%であった。
【0033】
本実施例においての第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の各厚の選択については、図4から図7に述べた方法と同様である。
【0034】
ここで、実施例1と実施例2における第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308の材料選択と図4から図7に示した膜厚の比に対して得られた結果の対応を図8と図9に表にまとめて記載した。図8は、第一の強磁性膜306に単層膜を使用した場合、図9は第一の強磁性膜に306に2層の強磁性膜を使用した場合について示した。上記のトンネル磁気抵抗効果素子と以下の磁気メモリセル及び磁気ランダムアクセスメモリを構成するトンネル磁気抵抗素子の第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308は図8と図9に示した材料を使用することが可能である。
【0035】
[実施例3]
図10は、本発明による磁気メモリセルの構成例を示す断面模式図である。この磁気メモリセルは、メモリセルとして実施例1、2に示したトンネル磁気抵抗効果素子10を搭載している。
【0036】
C−MOS11は、2つのn型半導体12,13と一つのp型半導体14からなる。n型半導体12にドレインとなる電極21が電気的に接続され、電極41及び電極47を介してグラウンドに接続されている。n型半導体13には、ソースとなる電極22が電気的に接続されている。さらに23はゲート電極であり、このゲート電極23のon/offによりソース電極22とドレイン電極21の間の電流のON/OFFを制御する。上記ソース電極22に電極45、電極44、電極43、電極42、電極46が積層され、電極46を介してトンネル磁気抵抗効果素子10の配向制御膜300が接続されている。
【0037】
ビット線212は上記トンネル磁気抵抗効果素子10の保護膜309に接続されている。本実施例の磁気メモリセルでは、トンネル磁気抵抗効果素子10に流れる電流、いわゆるスピントランスファートルクによりトンネル磁気抵抗効果素子10の第一の強磁性膜306と第一の非磁性膜307と第二の強磁性膜308で構成される強磁性自由層の磁化方向を回転し磁気的情報を記録する。スピントランスファートルクは空間的な外部磁界ではなく主として、トンネル磁気抵抗効果素子中を流れるスピン偏極した電流のスピンが前記トンネル磁気抵抗効果素子の強磁性自由層の磁気モーメントにトルクを与える原理である。このスピン偏極した電流はトンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すこと自身で発生するメカニズムをもつ。したがって、トンネル磁気抵抗効果素子に外部から電流を供給する手段を備え、その手段から電流を流すことによりスピントランスファートルク磁化反転は実現される。本実施例では、ビット線212と電極46の間に電流が流れることによりトンネル磁気抵抗効果素子10中の第一の強磁性膜306と第二の強磁性膜308で構成される強磁性自由層にスピントランスファートルクが作用する。スピントランスファートルクにより書込みを行った場合、書込み時の電力は電流磁界を用いた場合に比べ百分の一程度まで低減可能である。
【0038】
図11は、上記磁気メモリセルを配置した磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図である。ゲート電極23とビット線212がメモリセル100に電気的に接続されている。前記実施例に記載した磁気メモリセルを配置することにより前記磁気メモリは低消費電力で動作が可能であり、ギガビット級の高密度磁気メモリを実現可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…トンネル磁気抵抗効果素子、2…トンネル磁気抵抗効果素子、10…トンネル磁気抵抗効果素子、100…トンネル磁気抵抗効果素子、11…トランジスタ、12…第一のn型半導体、13…第二のn型半導体、14…p型半導体、21…ソース電極、212…ビット線、22…ドレイン電極、23…ゲート電極、300…配向制御膜、301…反強磁性膜、3021…強磁性固定層、302…第四の強磁性膜、303…第二の非磁性膜、304…第三の強磁性膜、305…絶縁膜、306…第一の強磁性膜、307…第一の非磁性膜、308…第二の強磁性膜、309…保護膜、41…電極配線、42…電極配線、43…電極配線、44…電極配線、45…電極配線、46…電極配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、
前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、
前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、
前記強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有し、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記第一の強磁性膜の厚さt1と前記第二の強磁性膜の厚さt2の比(t2/t1)が0.4から1.0の範囲にあることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記非磁性導電層は、Ruからなり、膜厚が0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲にあることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記強磁性固定層は反強磁性膜の上に形成され、前記絶縁膜は前記強磁性固定層の上に形成され、前記強磁性自由層は前記絶縁膜の上に形成され、前記強磁性固定層は、非磁性膜を挟んで反強磁性結合した2層の強磁性膜からなることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記絶縁膜は前記強磁性自由層の上に形成され、前記強磁性固定層は前記絶縁膜の上に形成され、前記強磁性固定層の上に反強磁性膜が形成され、前記強磁性固定層は、非磁性膜を挟んで反強磁性結合した2層の強磁性膜からなることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、前記強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有するトンネル磁気抵抗効果素子と、
前記強磁性自由層をスピントランスファートルクにより磁化反転させるための電流を前記トンネル磁気抵抗効果素子に流す電極と、
前記トンネル磁気抵抗効果素子に流れる電流をオン・オフ制御するスイッチング素子とを備え、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項7】
請求項6記載の磁気メモリセルにおいて、前記第一の強磁性膜の厚さt1と前記第二の強磁性膜の厚さt2の比(t2/t1)が0.4から1.0の範囲にあることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項8】
請求項6記載の磁気メモリにおいて、前記非磁性導電層は、Ruからなり、膜厚が0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲にあることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項9】
複数の磁気メモリセルと、所望の磁気メモリセルを選択する手段とを備え、
前記磁気メモリセルは、
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、前記強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有するトンネル磁気抵抗効果素子と、
前記強磁性自由層をスピントランスファートルクにより磁化反転させるための電流を前記トンネル磁気抵抗効果素子に流す電極と
を有し、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項10】
請求項9記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記第一の強磁性膜の厚さt1と前記第二の強磁性膜の厚さt2の比(t2/t1)が0.4から1.0の範囲にあることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項11】
請求項9記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記非磁性導電層は、Ruからなり、膜厚が0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲にあることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項12】
請求項9記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、スピントランスファートルクにより磁気情報を記録することを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項13】
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、
前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、
前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項1】
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、
前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、
前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、
前記強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有し、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記第一の強磁性膜の厚さt1と前記第二の強磁性膜の厚さt2の比(t2/t1)が0.4から1.0の範囲にあることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記非磁性導電層は、Ruからなり、膜厚が0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲にあることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記強磁性固定層は反強磁性膜の上に形成され、前記絶縁膜は前記強磁性固定層の上に形成され、前記強磁性自由層は前記絶縁膜の上に形成され、前記強磁性固定層は、非磁性膜を挟んで反強磁性結合した2層の強磁性膜からなることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
請求項1記載のトンネル磁気抵抗効果素子において、前記絶縁膜は前記強磁性自由層の上に形成され、前記強磁性固定層は前記絶縁膜の上に形成され、前記強磁性固定層の上に反強磁性膜が形成され、前記強磁性固定層は、非磁性膜を挟んで反強磁性結合した2層の強磁性膜からなることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、前記強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有するトンネル磁気抵抗効果素子と、
前記強磁性自由層をスピントランスファートルクにより磁化反転させるための電流を前記トンネル磁気抵抗効果素子に流す電極と、
前記トンネル磁気抵抗効果素子に流れる電流をオン・オフ制御するスイッチング素子とを備え、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項7】
請求項6記載の磁気メモリセルにおいて、前記第一の強磁性膜の厚さt1と前記第二の強磁性膜の厚さt2の比(t2/t1)が0.4から1.0の範囲にあることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項8】
請求項6記載の磁気メモリにおいて、前記非磁性導電層は、Ruからなり、膜厚が0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲にあることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項9】
複数の磁気メモリセルと、所望の磁気メモリセルを選択する手段とを備え、
前記磁気メモリセルは、
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、前記強磁性膜固定層はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜を有するトンネル磁気抵抗効果素子と、
前記強磁性自由層をスピントランスファートルクにより磁化反転させるための電流を前記トンネル磁気抵抗効果素子に流す電極と
を有し、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項10】
請求項9記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記第一の強磁性膜の厚さt1と前記第二の強磁性膜の厚さt2の比(t2/t1)が0.4から1.0の範囲にあることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項11】
請求項9記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記非磁性導電層は、Ruからなり、膜厚が0.4nmから1.4nmの範囲あるいは2.0nmから2.8nmの範囲にあることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項12】
請求項9記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、スピントランスファートルクにより磁気情報を記録することを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
【請求項13】
絶縁膜と、前記絶縁膜を挟んで設けられた強磁性自由層と強磁性固定層とを有し、
前記絶縁膜は(100)配向した岩塩構造のMgO膜であり、
前記強磁性自由層は、非磁性導電層を挟んで設けられた第一の強磁性膜と第二の強磁性膜からなり、前記第一の強磁性膜は前記絶縁膜に隣接し、前記第二の強磁性膜と第一の強磁性膜は反強磁性結合しており、
前記第一の強磁性膜と前記第二の強磁性膜はCoとFeとBを含有する体心立方構造の膜であり、前記第一の強磁性膜の厚さt1が前記第二の強磁性膜の厚さt2より厚いことを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−16820(P2013−16820A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181778(P2012−181778)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2006−122146(P2006−122146)の分割
【原出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、文部科学省、高機能・超低消費電力メモリの開発 委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2006−122146(P2006−122146)の分割
【原出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、文部科学省、高機能・超低消費電力メモリの開発 委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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