説明

ハイブリッド電気自動車の制御装置

【課題】車両減速時の燃費及び運転フィーリングを向上することが可能なハイブリッド電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン2と電動機6の駆動力とが自動変速機8を介して駆動輪16に伝達可能であると共に、エンジン2と自動変速機8との機械的な接続がクラッチ4によって切断可能であって、使用中の変速段においてエンジン2及び電動機6から発生すべき要求減速トルクと、電動機6で発生可能な上限減速トルクとの大小関係に基づきクラッチ4の断接を制御することにより、電動機6のみによる減速と、エンジン2と電動機6による減速とを切り換える。要求減速トルクと上限減速トルクとは電動機6が所定回転数のときに等しくなるようにして、自動変速機8のシフトダウンに関わる前進変速段に対応した要求減速トルクにおける上記所定回転数は、上記シフトダウンの際の電動機6の回転数の変動領域内の回転数とは異なるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド電気自動車の制御装置に関し、特にエンジンの駆動力と電動機の駆動力とがそれぞれ車両の駆動輪に伝達可能なハイブリッド電気自動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンと電動機とを車両に搭載し、エンジンの駆動力と電動機の駆動力とをそれぞれ車両の駆動輪に伝達可能とした、いわゆるパラレル型ハイブリッド電気自動車が開発され実用化されている。
このようなパラレル型ハイブリッド電気自動車として、エンジンと自動変速機とを機械的に断接するクラッチを設け、このクラッチの出力軸と自動変速機の入力軸との間に電動機の回転軸を連結したハイブリッド電気自動車が、例えば特許文献1によって提案されている。
【0003】
特許文献1に示されるようなハイブリッド電気自動車においては、車両発進時にはクラッチを切断してバッテリからの電力供給により電動機をモータ作動させ、電動機の駆動力のみで車両を発進させる一方、発進後の車両走行時にはクラッチを接続し、エンジンの駆動力が変速機を介して駆動輪に伝達される。
また、車両減速時には電動機を発電機作動させて回生制動力を発生させると共に、回生制動エネルギを電力に変換してバッテリを充電するようにしている。
【0004】
アクセルペダルの踏み込みが解除され、車両のブレーキが作動していない状態でハイブリッド電気自動車が減速走行しているときには、エンジンのみを動力源とした同程度の車両が同様の減速を行うときに得られる減速度とほぼ同じ減速度を得ることができる減速トルクが要求減速トルクとして設定され、この要求減速トルクが得られるように電動機及びエンジンが制御される。
【0005】
ところで電動機には、その仕様によって発生可能な回生制動トルクの上限値である上限減速トルクが定められており、この上限減速トルクまでは電動機が回生制動トルクを発生することができるようになっている。
ここで使用される要求減速トルク及び電動機の上限減速トルクは、図5の上段のグラフに示すような関係を有している。即ち、要求減速トルクは電動機の回転数が高いほど大きな値を有するようになっているのに対し、上限減速トルクは低回転側で一定の値を有すると共に高回転側では電動機の回転数が高いほど小さな値を有するようになっている。そして、電動機の回転数がNx’のときに要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなるようになっている。
【0006】
従って、電動機の回転数がNx’より大である場合には電動機が発生可能な回生制動トルクのみでは要求減速トルクを得ることができないため、クラッチを接続してエンジンの減速トルクと電動機の回生制動トルクとを合わせて要求減速トルクが得られるように制御が行われる。
一方、電動機の回転数がNx’以下である場合には、電動機から要求減速トルクに等しい回生制動トルクを得ることができるため、クラッチを切断して電動機の回生制動のみによって要求減速トルクを発生させることにより、可能な限り減速エネルギを電力に変換してバッテリに回収するようにしている。
【特許文献1】特開平5−176405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなハイブリッド電気自動車において自動変速機を使用している場合、車両の減速走行時には走行速度の低下、即ち電動機の回転数の低下と共に自動変速機の変速段がより低速側変速段へとシフトダウンされていく。
このときの自動変速機の変速段の切り換えと、それに伴う電動機の回転数の変化を図5の下段のグラフ中に実線で示す。図中に一点鎖線で示す直線は、各変速段における走行速度と電動機の回転数の関係を変速段毎に示しており、以下ではこれを変速線という。
【0008】
自動変速機のシフトダウンが行われない状態では、走行速度の減少に伴い電動機の回転数が使用中の変速段に対応した変速線上を減少方向に移動する。そして、予め設定されたシフトダウン用の変速マップに従って減速走行時にシフトダウンが行われると、シフト前の変速段に対応した変速線上から、隣接する低速側変速段に対応した変速線上へとシフトして電動機の回転数が増大する。
【0009】
即ち、例えば自動変速機が5段の前進変速段を有し、5速で走行中にアクセルペダルの踏み込みが解除されて減速走行になった場合、走行速度の低下に従って電動機の回転数は5速に対応する変速線上を減少方向に移動する。このとき電動機の回転数は、図5中の5速に対応する変速線上に実線で示すように、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなるNx’を通過する。このため、電動機の回転数がNx’を通過するときにクラッチが接続状態から切断状態へと切り換わることになる。
【0010】
また、走行速度が低下してV4’に達すると、自動変速機は5速から4速にシフトダウンされ、これに伴って電動機の回転数は図5に示すように5速の変速線上から4速の変速線上へとシフトして増大する。このとき電動機の回転数は再びNx’を通過し、回転数がNx’以下の状態からNx’より大の状態へ変動することによってクラッチが切断状態から接続状態へと切り換わる。
【0011】
4速にシフトダウンされた後も車両が引き続き減速すると、変速段が5速であった場合と同様に電動機の回転数は4速に対応する変速線上を減少方向に移動する。このときも電動機の回転数がNx’を通過するため、5速の場合と同様にクラッチが再び接続状態から切断状態へと切り換わる。
そして、走行速度が更に低下してV3’に達すると、自動変速機は4速から3速にシフトダウンされ、これに伴って電動機の回転数は図5に示すように4速の変速線上から3速の変速線上へとシフトして増大する。このとき電動機の回転数は再びNx’を通過するので、再びクラッチが切断状態から接続状態へと切り換わる。
【0012】
更に、3速へのシフトダウン後も車両が引き続き減速すると、電動機の回転数は3速に対応する変速線上を減少方向に移動し、このときに電動機の回転数がNx’を通過するため、5速や4速の場合と同様にクラッチが再び接続状態から切断状態へと切り換わる。
この後、更なる走行速度の低下に対応し、走行速度がV2’に達すると自動変速機は3速から2速にシフトダウンされ、またV1’に達すると2速から1速にシフトダウンされる。そして、このような走行速度の低下及び自動変速機のシフトダウンに対応し、これまでと同様にして、電動機の回転数が3速に対応した変速線上から2速に対応した変速線上へと移動し、更に2速に対応した変速線上から1速に対応した変速線上へと移動しながら低下していく。
【0013】
このように、車両が減速走行を行って走行速度が低下していくと、自動変速機の変速段が5速から順次シフトダウンされる際に、クラッチの切断及び接続が何度も繰り返されることになる。このようなクラッチの切断及び接続の繰り返しはクラッチの摩耗を増大させてクラッチの耐久性が低下したり、クラッチの作動に伴う振動や騒音の増大により運転フィーリングが低下したりするという問題を生じる。
【0014】
また、クラッチを接続する際には、接続をスムーズに行うためにエンジンの回転数を予め電動機の回転数に合わせる必要があるが、上述のようにして減速時にクラッチの切断及び接続が頻繁に行われることにより、エンジンの回転数も頻繁に変動させることになるため、燃費が悪化するという問題も生じる。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両減速時の燃費及び運転フィーリングを向上することが可能なハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置は、エンジンの駆動力と電動機の駆動力とが自動変速機を介して車両の駆動輪に伝達可能であると共に、上記エンジンと上記自動変速機との機械的な接続がクラッチによって切断可能なハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記電動機の回転数を検出する回転数検出手段と、上記車両の減速時に、上記車両の走行速度の低下に応じて上記自動変速機をシフトダウンする変速制御手段と、上記車両の減速時に、上記回転数検出手段によって検出された回転数に応じ、上記電動機が発生可能な減速トルクである上限減速トルクと上記自動変速機で使用中の前進変速段において上記エンジン及び上記電動機から発生すべき減速トルクである要求減速トルクとを設定し、上記上限減速トルクが上記要求減速トルク以上であるときには上記クラッチを切断して上記要求減速トルクを発生するように上記電動機を制御する一方、上記上限減速トルクが上記要求減速トルクより小さいときには上記クラッチを接続して上記エンジンの減速トルクと上記電動機の減速トルクとの合計が上記要求減速トルクとなるように上記エンジン及び上記電動機を制御する制御手段とを備え、上記上限減速トルクは、上記電動機の回転数が所定回転数であるときに上記要求減速トルクに等しく、上記電動機の回転数が上記所定回転数より低い領域では上記要求減速トルクより大きく、また上記電動機の回転数が上記所定回転数より高い領域では上記要求減速トルクより小さくなるように設定されており、上記自動変速機のシフトダウンに関わる前進変速段に対応した上記要求減速トルクにおける上記所定回転数は、上記シフトダウンの際の上記電動機の回転数の変動領域内の回転数とは異なることを特徴とする(請求項1)。
【0016】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両減速時には、自動変速機で使用中の前進変速段においてエンジン及び電動機から発生すべき減速トルクである要求減速トルクが設定され、電動機が発生可能な上限減速トルクが要求減速トルク以上であるときにはクラッチを切断して上記要求減速トルクを発生するように電動機が制御される一方、上記上限減速トルクが上記要求減速トルクより小さいときにはクラッチを接続してエンジンの減速トルクと電動機の減速トルクとの合計が上記要求減速トルクとなるようにエンジン及び電動機が制御される。また、このとき自動変速機では車両の走行速度の低下に伴いシフトダウンが行われる。
【0017】
上限減速トルクは電動機の回転数が所定回転数であるときに要求減速トルクと等しく、電動機の回転数が上記所定回転数より低い領域では要求減速トルクより大きく、また電動機の回転数が上記所定回転数より高い領域では要求減速トルクより小さくなるように設定されており、車両減速時に自動変速機でシフトダウンが行われる際には、そのシフトダウンに関わる前進変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数とは異なる回転数の領域で、電動機の回転数が変動する。
【0018】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において具体的には、上記要求減速トルクは上記自動変速機の各前進変速段に対して共通であり、上記自動変速機の全ての前進変速段のシフトダウンにおける上記電動機の回転数変動が上記所定回転数より低い領域で行われるように上記要求減速トルクが設定されていることを特徴とする(請求項2)。
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、使用中の前進変速段における車両減速時の要求減速トルクは各前進変速段に共通のものであって、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転数変動は、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数よりも常に低い領域で生じる。
【0019】
また、これとは別に上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において具体的には、上記要求減速トルクは上記自動変速機の各前進変速段に対して共通であり、上記自動変速機の各前進変速段でシフトダウンが行われる際の上記電動機の回転数変動領域が上記所定回転数を含まないように上記自動変速機の変速マップが設定されていることを特徴とする(請求項3)。
【0020】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、使用中の前進変速段における車両減速時の要求減速トルクは各前進変速段に共通のものであって、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転数変動は、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数を含まない領域で生じる。
更に、これとは別に上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において具体的には、上記要求減速トルクは上記自動変速機の前進変速段毎に個別に設定されており、上記シフトダウンの前後の前進変速段に対応してそれぞれ設定される上記要求減速トルクにおける上記所定回転数は、上記シフトダウンにおける上記電動機の回転数変動領域内の回転数とは異なることを特徴とする(請求項4)。
【0021】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、要求減速トルクは自動変速機の前進変速段毎に個別に設定されており、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転数変動は、シフトダウン前の前進変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数、及びシフトダウン後の前進変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数とはいずれも異なる回転数の領域で生じる。
【0022】
また、このように構成されるハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記要求減速トルクは、上記要求減速トルクが設定されている上記電動機の回転数領域の少なくとも一部において、高速側変速段に対応する要求減速トルクであるほど大きい値を有していることを特徴とする(請求項5)。
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、電動機の回転数領域の少なくとも一部において、高速側変速段であるほど要求減速トルクが大きい値を有することにより、自動変速機から出力される前進変速段毎の減速トルク間の差が、要求減速トルクを各前進変速段で共通にした場合に比較して少なくなる。
【0023】
更に、これとは別に上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において具体的には、上記要求減速トルクは、上記自動変速機の前進変速段が低速側となるほど上記所定回転数が高くなるように、上記自動変速機の前進変速段毎に個別に設定されており、上記自動変速機の所定の前進変速段からシフトダウンが行われる場合には、上記所定の前進変速段に対応した上記要求減速トルクにおける上記所定回転数よりも高い回転数において上記シフトダウンが開始され、上記シフトダウン後の変速段に対応した上記要求減速トルクにおける上記所定回転数が、上記シフトダウンにおける上記電動機の回転数変動領域よりも高い回転数となるように上記自動変速機の変速マップが設定されていることを特徴とする(請求項6)。
【0024】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、要求減速トルクは自動変速機の前進変速段が低速側となるほど、上限減速トルクと等しくなる所定回転数が高くなるように、自動変速機の前進変速段毎に個別に設定されている。
そして、自動変速機の所定の前進変速段からシフトダウンが行われる場合には、上記所定の前進変速段に対応した要求減速トルクにおける所定回転数よりも高い回転数においてシフトダウンが開始され、シフトダウン後の変速段に対応した要求減速トルクにおける所定回転数が、シフトダウンにおける電動機の回転数変動領域よりも高い回転数となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両減速時に自動変速機でシフトダウンが行われる際には、そのシフトダウンに関わる前進変速段に対応した上記要求減速トルクが上記上限減速トルクと等しくなる所定回転数を通って電動機の回転数が変動することがない。このため、車両減速時に電動機の回転数が上記所定回転数を通って変動することによって生じるクラッチの作動頻度が減少し、クラッチの摩耗によるクラッチの耐久性低下や、クラッチの頻繁な作動に伴う振動や騒音の増大による運転フィーリングの低下を抑制すると共に、クラッチ接続時のエンジンの回転数変動の頻度を減少させて燃費を向上させることができる。
【0026】
また、請求項2のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両減速時の全ての前進変速段のシフトダウンにおける電動機の回転数変動領域が、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数より低くなるように要求減速トルクを設定することにより、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転数変動は、上記所定回転数よりも常に低い領域で生じる。この結果、確実にクラッチの作動頻度を低減することができ、上述したような効果を得ることが可能となるのに加え、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転変動を考慮して自動変速機やクラッチなどの制御内容を変更する必要がないため、自動変速機やクラッチなどの制御の自由度を増大させることができる。
【0027】
また、請求項3のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、自動変速機の各前進変速段でシフトダウンが行われる際の電動機の回転数変動領域が、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数を含まないように自動変速機の変速シフトマップを設定することにより、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転数変動は、上記所定回転数を含まない領域で生じる。この結果、確実にクラッチの作動頻度を低減することができ、上述したような効果を得ることが可能となるのに加え、この場合には要求減速トルクについて電動機の回転変動を考慮して変更する必要がないため、要求減速トルクの設定の自由度を増大させることができる。
【0028】
また、請求項4のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、自動変速機の前進変速段毎に個別に要求減速トルクを設定し、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転数変動は、シフトダウン前の前進変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数、及びシフトダウン後の前進変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる所定回転数とはいずれも異なる回転数の領域で生じる。この結果、確実にクラッチの作動頻度を低減することができ、上述したような効果を得ることが可能となる。
【0029】
更に、この場合には車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転変動を考慮して自動変速機の変速シフトマップやクラッチの制御内容を変更する必要がないため、自動変速機の変速特性やクラッチ制御についての自由度を増大させることができる。また、要求減速トルクを前進変速段毎に個別に設定するようにしているので、それぞれの前進変速段に対して適切な要求減速度を設定することができる。
【0030】
更に、請求項5のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、このような効果に加えて、電動機の回転数領域の少なくとも一部において、高速側変速段であるほど要求減速トルクが大きい値を有することにより、自動変速機から出力される前進変速段毎の減速トルク間の差が、要求減速トルクを各前進変速段で共通にした場合に比較して少なくなる。この結果、各変速段で得られる減速度の差を少なくし、シフトダウンの際に生じる変速ショックを低減して運転フィーリングをより一層向上することができる。
【0031】
また、請求項6のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、自動変速機の所定の前進変速段からシフトダウンが行われる場合には、上記所定の前進変速段に対応した要求減速トルクにおける所定回転数よりも高い回転数においてシフトダウンが開始され、シフトダウン後の変速段に対応した要求減速トルクにおける所定回転数が、シフトダウンにおける電動機の回転数変動領域よりも高い回転数となるので、シフトダウン前の電動機の回転数と所定回転数との大小関係と、シフトダウン後の電動機の回転数と所定回転数との大小関係とは、このシフトダウンの間に逆転することになる。従って、電動機の回転数と所定回転数との大小関係の逆転、即ち要求減速トルクと上限減速トルクとの大小関係の逆転に伴ってクラッチが作動するのは、このシフトダウンの際のみとなり、確実にクラッチの作動頻度を低減することができ、上述したような効果を得ることが可能となる。
【0032】
特に、シフトダウンの際にクラッチの断接を行って変速段の切り換えを行う場合には、変速段の切り換えのためのクラッチの断接を行うだけですむため、より一層クラッチの作動頻度を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1実施形態であるハイブリッド電気自動車1の制御装置の要部構成図である。ディーゼルエンジン(以下エンジンという)2の出力軸にはクラッチ4の入力軸が連結されており、クラッチ4の出力軸は永久磁石式同期電動機(以下電動機という)6の回転軸を介して前進変速段(以下では単に変速段という)が5段の自動変速機(以下変速機という)8の入力軸が連結されている。また、変速機8の出力軸はプロペラシャフト10、差動装置12及び駆動軸14を介して左右の駆動輪16に接続されている。
【0034】
従って、クラッチ4が接続されているときには、エンジン2の出力軸と電動機6の回転軸軸の両方が、変速機8を介して駆動輪16と機械的に接続可能となり、クラッチ4が切断されているときには電動機6の回転軸のみが変速機8を介して駆動輪16と機械的に接続可能となる。
電動機6は、バッテリ18に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることによりモータとして作動し、その駆動トルクが変速機8によって適切な速度に変速された後に駆動輪16に伝達されるようになっている。また、車両減速時には、電動機6が発電機として作動し、駆動輪16の回転による運動エネルギが変速機8を介し電動機6に伝達されて交流電力に変換されることにより回生制動トルクを発生する。そして、この交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後、バッテリ18に充電され、駆動輪16の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0035】
一方、エンジン2の駆動トルクは、クラッチ4が接続されているときに電動機6の回転軸を経由して変速機8に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪16に伝達されるようになっている。従って、エンジン2の駆動トルクが駆動輪16に伝達されているときに電動機6がモータとして作動する場合には、エンジン2の駆動トルクと電動機6の駆動トルクとがそれぞれ駆動輪16に伝達されることになる。即ち、車両の駆動のために駆動輪16に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン2から供給されると共に、残部が電動機6から供給される。
【0036】
また、バッテリ18の充電率(以下SOCという)が低下してバッテリ18を充電する必要があるときには、電動機6が発電機として作動すると共に、エンジン2の駆動力の一部を用いて電動機6を駆動することにより発電が行われ、発電された交流電力をインバータ20によって直流電力に変換した後にバッテリ18に充電するようにしている。
車両ECU22(制御手段)は、車両やエンジン2の運転状態、及びエンジンECU24、インバータECU26並びにバッテリECU28からの情報などに応じて、クラッチ4の接続・切断制御及び変速機8の変速段切換制御を行うと共に、これらの制御状態や車両の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン2や電動機6を適切に運転するための統合制御を行う。
【0037】
そして車両ECU22は、このような制御を行う際に、アクセルペダル30の踏込量を検出するアクセル開度センサ32や、車両の走行速度を検出する車速センサ34及び電動機6の回転数を検出する回転数センサ(回転数検出手段)36の検出結果に基づき、車両の走行に必要な総駆動トルク並びに車両の減速時にエンジン2及び電動機6が発生すべき総減速トルクを演算し、これら総駆動トルク及び総減速トルクから、エンジン2が発生するトルク及び電動機6が発生するトルクを設定している。
【0038】
エンジンECU24は、エンジン2の始動・停止制御やアイドル制御、或いは排ガス浄化装置(図示せず)の再生制御など、エンジン2自体の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU22によって設定されたエンジン2に必要とされるトルクをエンジン2が発生するよう、エンジン2の燃料の噴射量や噴射時期などを制御する。
一方、インバータECU26は、車両ECU22によって設定された電動機6が発生すべきトルクに基づきインバータ20を制御することにより、電動機6をモータ作動または発電機作動させて運転制御する。
【0039】
また、バッテリECU28は、バッテリ18の温度や、バッテリ18の電圧、インバータ20とバッテリ18との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ18のSOCを求め、求めたSOCを検出結果と共に車両ECU22に送っている。
このように構成されたハイブリッド電気自動車1において、車両を走行させるために車両ECU22を中心として行われる制御の概要は以下の通りである。
【0040】
まず、車両が停車状態にあってエンジン2が停止しているときに運転者がスタータスイッチ(図示せず)によってエンジン2を始動すると、車両ECU22は変速機8をニュートラル位置として電動機6と駆動輪16との機械的な接続を遮断すると共にクラッチ4を接続した後、インバータECU26に対してエンジン2の始動に必要な電動機6の駆動トルクを指示すると共に、エンジンECU24にエンジン2を運転するよう指示する。
【0041】
インバータECU26は車両ECU22からの指示に基づき、電動機6をモータ作動させて駆動トルクを発生させ、エンジン2をクランキングし、エンジンECU24がエンジン2に燃料の供給を開始することによりエンジン2が始動してアイドル運転を行う。
このような状態において、運転者がチェンジレバーをドライブ位置などに操作すると、車両ECU22はクラッチ4を切断すると共に変速機8の変速段を変速マップに従って発進開始時の変速段とする。そして、運転者がアクセルペダル30を踏み込むと、アクセル開度センサ32によって検出されたアクセルペダル30の踏込量に応じ、車両を発進させるために必要な電動機6の駆動トルクを車両ECU22が設定する。
【0042】
インバータECU26は、車両ECU22が設定したトルクに応じてインバータ20を制御し、バッテリ18の直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて電動機6に供給される。電動機6は交流電力が供給されることによってモータ作動して駆動力を発生し、電動機6の駆動力は変速機8を介して駆動輪16に伝達され、車両が発進する。
車両が発進加速して電動機6の回転数がエンジン2のアイドル回転数の近傍まで上昇すると、車両ECU22はクラッチ4を接続すると共に、更なる車両の加速及びその後の走行に必要な総駆動トルクを、アクセル開度センサ32によって検出されたアクセルペダル30の踏込量と車速センサ34によって検出された車両の走行速度とに基づいて求める。そして、この総駆動トルクを車両の運転状態に応じてエンジン2側と電動機6側に適切に振り分け、エンジン2が発生すべきトルクをエンジンECU24に指示すると共に、電動機6が発生すべき駆動トルクをインバータECU26に指示する。
【0043】
エンジンECU24及びインバータECU26は車両ECU22が設定した駆動トルクを受けて、エンジン2及び電動機6をそれぞれ制御し、エンジン2及び電動機6が発生した駆動トルクが変速機8を介して駆動輪16に伝達され車両が走行する。また、このとき車両ECU22は、アクセル開度センサ32によって検出されたアクセルペダル30の踏込量や車速センサ34によって検出された走行速度などの車両の運転状態に応じ、変速機8の変速段を適宜切換制御すると共に、変速段の切り換えに合わせてエンジン2や電動機6のトルクを適切に制御するよう、エンジンECU24及びインバータECU26に対して指示している。
【0044】
次に、車両を減速走行させる場合について以下に説明する。
アクセルペダル30の踏み込みが解除されると、車両ECU22は車両の減速走行においてエンジン2及び電動機6から発生すべき総減速トルクを、回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数に応じて要求減速トルクとして求め、この要求減速トルクを適宜エンジン2側と電動機6側に振り分ける。なお、この要求減速トルクは変速機8の変速段にかかわらず共通に用いられるようになっており、車両に適度の減速度を得るために必要な減速トルクとして電動機6の回転数に対応して予め設定され、車両ECU22に記憶されている。
【0045】
これを受けて、エンジンECU24はエンジン2を減速運転状態としてエンジンブレーキによる減速トルクを発生させ、インバータECU26はインバータ20を制御して電動機6を発電機作動させることにより回生制動トルクを発生させる。
電動機6の発電機作動により、駆動輪16の回転による運動エネルギが変速機8を介し電動機6に伝達されて交流電力に変換され、車両ECU22が指示した回生制動トルクが電動機6によって発生する。電動機6によって得られた交流電力はインバータ20を介して直流電力に変換されてバッテリ18に充電され、駆動輪16の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0046】
このとき電動機6には、その仕様により電動機6の回転数に応じて電動機6が発生可能な回生制動トルクの上限値である上限減速トルクが設定されており、要求減速トルクと上限減速トルクとの関係は図2の上段のグラフに示すようになっている。
図2に示すように、上限減速トルクは電動機6の比較的低い回転数の領域では一定値となっており、比較的高い回転数の領域では電動機の回転数が高いほど小さな値を有するようになっている。一方、要求減速トルクは電動機6の回転数が高いほど大きい値を有しており、電動機の回転数がNx(所定回転数)のときに要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなるようになっている。
【0047】
従って、電動機6の回転数がNxより大である場合には、電動機6が発生可能な回生制動トルクのみでは要求減速トルクを得ることができないため、車両ECU22はクラッチ4を接続すると共に、エンジン2の減速トルクと電動機6の回生制動トルクとを合わせて要求減速トルクが得られるように、エンジン2が発生すべき減速トルクをエンジンECU24に指示し、また電動機6が発生すべき回生制動トルクをインバータECU26に指示する。
【0048】
一方、電動機6の回転数がNx以下である場合には、電動機6から要求減速トルクに等しい回生制動トルクを得ることができるため、車両ECU22はクラッチ4を切断して電動機6の回生制動のみによって要求減速トルクを発生させることにより、可能な限り減速エネルギを電力に変換してバッテリ18に回収するようにしている。
このようにして車両の減速が行われる際、車両ECU22は予め設定されたシフトダウン用の変速シフトマップに従い、車速センサ34によって検出される走行速度の低下に応じて変速機8の変速段を順次シフトダウンしていく。
【0049】
また、クラッチ4を接続する際にエンジン2の回転数と電動機6の回転数が大きく異なっていると大きなトルクショックが発生するため、クラッチ4を接続する際、車両ECU22は予めエンジン2の回転数をアイドル回転数から上昇させて電動機6の回転数にほぼ一致させるようエンジンECU24に指示し、エンジンECU24はこれに従ってエンジン2の燃料供給量を増大させてエンジン2の回転数を上昇させ、電動機6との回転数合わせを行っている。
【0050】
各変速段における走行速度と電動機6の回転速度との関係は、図2の下段のグラフに一点鎖線の直線で示すようになっており、以下ではこれらの直線を変速線という。また、シフトダウン用の変速マップにおいて変速機8の変速段は、車速センサ34によって検出された走行速度が、V4に低下したときに5速から4速に、V3に低下したときに4速から3速に、V2に低下したときに3速から2速に、またV1に低下したときに2速から1速に、それぞれシフトダウンされるようになっている。
【0051】
なお、本実施形態で用いる変速マップは、従来のハイブリッド電気自動車で用いられる変速マップと同様のものであり、図2に示す各変速段の変速線、及び車両減速時のシフトダウンが行われるV1乃至V4の走行速度は、図5に示す従来のハイブリッド電気自動車のものと同様である。
図2の下段のグラフには、変速機8の変速段が5速であるときにアクセルペダル30の踏み込みが解除されて減速走行に移行した場合の、走行速度の低下及び変速段のシフトダウンに伴う電動機6の回転速度の変化が実線で示されている。
【0052】
即ち、5速で走行中にアクセルペダル30の踏み込みが解除されて車両が減速走行となった場合、走行速度の低下に従って電動機6の回転数は5速に対応する変速線上を減少方向に移動する。そして、走行速度が低下してV4に達すると、車両ECU22は変速機8を5速から4速にシフトダウンし、これに伴って電動機6の回転数は図2に実線で示すように5速の変速線上から4速の変速線上へとシフトして増大する。
【0053】
4速へのシフトダウン後も車両が引き続き減速すると、電動機6の回転数は4速に対応する変速線上を減少方向に移動する。そして、走行速度が更に低下してV3に達すると、車両ECU22は変速機8を4速から3速にシフトダウンし、これに伴って電動機6の回転数は図2に実線で示すように4速の変速線上から3速の変速線上へとシフトして増大する。
【0054】
更に、3速へのシフトダウン後も車両が引き続き減速すると、電動機6の回転数は3速に対応する変速線上を減少方向に移動する。そして、走行速度が更に低下してV2に達すると、車両ECU22は変速機8を3速から2速にシフトダウンし、これに伴って電動機6の回転数は図2に実線で示すように3速の変速線上から2速の変速線上へとシフトして増大する。
【0055】
そして、2速へのシフトダウン後も車両が引き続き減速すると、電動機6の回転数は2速に対応する変速線上を減少方向に移動する。そして、走行速度が更に低下してV1に達すると、車両ECU22は変速機8を2速から1速にシフトダウンし、これに伴って電動機6の回転数は図2に実線で示すように2速の変速線上から1速の変速線上へとシフトして増大する。
【0056】
本実施形態では、このような車両の減速を行う際、実用上適正な範囲内で要求減速トルクを比較的小さめに設定し、図2の上段のグラフにおいて要求減速トルクが上限減速トルクと交わる点を電動機6の高回転側に移動させることにより、各変速段において上述したようなシフトダウンが行われる際の電動機6の回転数の変動が、図2に示すように、いずれも要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数Nxより低い領域で行われるようにしている。
【0057】
このようにすることにより、車両の減速時に電動機6の回転数がNxを通って変動するのは、走行速度の低下に伴って5速の変速線上を移動するときの1回のみとなり、車両減速時のクラッチ4の作動頻度が低減されることによって、クラッチ4の摩耗による耐久性低下やクラッチ4の頻繁な作動に伴う振動や騒音の増大による運転フィーリングの低下を抑制することができると共に、クラッチ4接続時のエンジンの回転数合わせの頻度を減少させて燃費を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態で変速機8のシフトダウンに用いられる変速マップについては、回転数Nxとシフトダウンに伴う電動機6の回転数変動との関係を考慮して変更する必要がないので、変速特性の設定の自由度が増す。
なお、本実施形態では、車両の減速の際に変速段が5速にあるときのみ電動機6の回転数がNxを通って変動するようになっていたが、実用走行速度の範囲内において5速の変速線上の電動機6の回転数が必ずNxより低くなるように要求減速トルク、或いは変速機8のギヤ比を設定すれば、車両減速時に走行速度の低下に伴って電動機6の回転数がNxを通って変動することはなくなり、より大きな上記効果を得ることができる。
【0059】
上記第1実施形態では、要求減速トルクを比較的小さめに設定することより、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数Nxが、シフトダウンの際の電動機6の回転数の変動領域内の回転数とは異なるようにしたが、本発明によるハイブリッド電気自動車の制御装置はこれに限られるものではない。
そこで、本発明の第2実施形態であるハイブリッド電気自動車の制御装置について以下に説明する。第2実施形態におけるハイブリッド電気自動車の制御装置の要部構成は上記第1実施形態と同様であって、図1に示すとおりである。また、車両の各走行状態において車両ECU22を中心として行われる制御についても、車両減速時を除いて上記第1実施形態と実質的に同一であり、ここでは車両減速時の制御について以下に説明する。
【0060】
第2実施形態においても、アクセルペダル30の踏み込みが解除されると、車両ECU22は車両の減速走行において車両に適度の減速度を得るためにエンジン2及び電動機6から発生すべき総減速トルクを、回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数に応じて要求減速トルクとして求め、この要求減速トルクを適宜エンジン2側と電動機6側に振り分ける。なお、この要求減速トルクは、上記第1実施形態と同様に変速機8の変速段にかかわらず共通に用いられるようになっている。
【0061】
これを受けて、エンジンECU24はエンジン2を減速運転状態としてエンジンブレーキによる減速トルクを発生させ、インバータECU26はインバータ20を制御して電動機6を発電機作動させることにより回生制動トルクを発生させる。
このとき電動機6には、その仕様により電動機6の回転数に応じて電動機6が発生可能な回生制動トルクの上限値である上限減速トルクが設定されており、要求減速トルクと上限減速トルクとの関係は図3の上段のグラフに示すようになっている。
【0062】
図3に二点鎖線で示される上限減速トルクは上記第1実施形態で用いたものと同様のものであるが、要求減速トルクは上記第1実施形態のように比較的小さめの設定はせず、電動機6の回転数に応じ、あくまでも車両の減速度が適切に得られるような値に設定されている。そして、図3に示すように、電動機の回転数がNx’(所定回転数)のときに要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなるようになっている。従って、上記第1実施形態における回転数Nxに比べ、この回転数Nx’の方が低回転側となっている。
【0063】
また、第2実施形態では、図3の上段のグラフに示す要求減速トルクと上限減速トルクとの関係が、図5の上段のグラフに示す従来のハイブリッド電気自動車の制御装置における上限減速トルクと要求減速トルクとの関係と同じになっている。従って、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数Nx’も同じ回転数となっている。
車両ECU22は、上記第1実施形態の場合と同様に、電動機6の回転数がNx’より大である場合には、クラッチ4を接続すると共に、エンジン2の減速トルクと電動機6の回生制動トルクとを合わせて要求減速トルクが得られるように、エンジン2が発生すべき減速トルクをエンジンECU24に指示し、また電動機6が発生すべき回生制動トルクをインバータECU26に指示する。
【0064】
一方、電動機6の回転数がNx’以下である場合には、車両ECU22はクラッチ4を切断して電動機6の回生制動のみによって要求減速トルクを発生させることにより、可能な限り減速エネルギを電力に変換してバッテリ18に回収するようにしている。
このようにして車両の減速が行われる際、車両ECU22は予め設定されたシフトダウン用の変速シフトマップに従い、走行速度の低下に応じて変速機8の変速段をシフトダウンしていく。
【0065】
また、クラッチ4を接続する際には、上記第1実施形態と同様に、トルクショックを防止するため、エンジン2の燃料供給量を増大させることによりエンジン2の回転数を上昇させて、電動機6との回転数合わせを行っている。
各変速段における走行速度と電動機6の回転速度との関係は図3の下段のグラフに示すようになっている。シフトダウン用の変速マップにおいて変速機8の変速段は、車速センサ34によって検出された走行速度がV4’に低下したときに5速から4速に、V3’に低下したときに4速から3速に、V2’に低下したときに3速から2速に、そしてV1’に低下したときに2速から1速に、それぞれシフトダウンされるようになっており、この変速マップが上記第1実施形態と異なっている。
【0066】
図3の下段グラフには、変速機8の変速段が5速であるときにアクセルペダル30の踏み込みが解除されて減速走行に移行した場合の、走行速度の低下及び変速段のシフトダウンに伴う電動機6の回転速度の変化が実線で示されている。
ここで、走行速度の低下に伴う各変速線上における電動機6の回転数の変化、及びシフトダウンの際の2つの変速線間の電動機6の回転数の変化は、上記第1実施形態の場合と同様にして発生するが、シフトダウンの変速マップが上記第1実施形態とは異なることにより、各シフトダウンに伴う電動機6の回転数の変動は、図3の下段グラフに実線で示すように、走行速度がそれぞれV4’、V3’、V2’、及びV1’に低下したときに発生する。
【0067】
この第2実施形態では、各変速段でシフトダウンが行われる際の電動機6の回転数変動領域が、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数Nx’を含まないようにシフトダウン用の変速マップを設定することにより、図3に示すように、シフトダウンの際にはいずれも電動機6の回転数が回転数Nx’を通って変動しないようになっている。
このようにすることにより、車両の減速時に電動機6の回転数がNx’を通って変動するのは、走行速度の低下に伴って4速の変速線上を移動するときの1回のみとなり、車両減速時のクラッチ4の作動頻度が低減されることによって、クラッチ4の摩耗による耐久性低下やクラッチ4の頻繁な作動に伴う振動や騒音の増大による運転フィーリングの低下を抑制することができると共に、クラッチ4接続時のエンジンの回転数合わせの頻度を減少させて燃費を向上させることができる。
【0068】
また、第2実施形態で用いられる要求減速トルクについては、回転数Nx’とシフトダウンに伴う電動機6の回転数変動との関係を考慮して低めに設定する必要がないので、要求減速トルクの設定の自由度が増す。
なお、第2実施形態では、車両の減速の際に変速段が4速にあるときのみ、走行速度の低下に従い電動機6の回転数がNx’を通って変動するようになっていたが、シフトダウン用の変速マップを調整することにより、4速以外の変速線上を移動するときに1度だけ電動機6の回転数がNx’を通って変動するようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0069】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、車両減速時の要求減速トルクを各変速段に共通とし、第1実施形態では要求減速トルクを比較的小さめに設定し、また第2実施形態では変速機8の変速マップを変更するようにしたが、要求減速トルクを変速段毎に設定することにより、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数が、シフトダウンの際の電動機6の回転数の変動領域内の回転数とは異なるようにしてもよい。
【0070】
そこで、要求減速トルクを変速段毎に設定するようにしたハイブリッド電気自動車の制御装置を、本発明の第3実施形態及び第4実施形態として以下に説明する。まず、第3実施形態におけるハイブリッド電気自動車の制御装置の要部構成は上記第1実施形態と同様であって、図1に示すとおりである。また、車両の各走行状態において車両ECU22を中心として行われる制御についても、車両減速時を除いて上記第1実施形態と実質的に同一であり、ここでは車両減速時の制御について以下に説明する。
【0071】
第3実施形態においても、アクセルペダル30の踏み込みが解除されると、車両ECU22は車両の減速走行において車両に適度の減速度を得るためにエンジン2及び電動機6から発生すべき総減速トルクを、回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数に応じて要求減速トルクとして求め、この要求減速トルクを適宜エンジン2側と電動機6側に振り分ける。
【0072】
この要求減速トルクは、図4の上段のグラフに実線で示すように電動機6の回転数に応じ変速機8の変速段毎に個別に設定されており、高速側の変速段であるほど大きい要求減速トルクが設定されるようになっている。
エンジンECU24は車両ECU22からの指示に従い、エンジン2を減速運転状態としてエンジンブレーキによる減速トルクを発生させ、インバータECU26は車両ECU22からの指示に従い、インバータ20を制御して電動機6を発電機作動させることにより回生制動トルクを発生させる。
【0073】
このとき電動機6には、その仕様により電動機6の回転数に応じて電動機6が発生可能な回生制動トルクの上限値である上限減速トルクが設定されており、要求減速トルクと上限減速トルクとの関係は図4の上段のグラフに示すようになっている。
上限減速トルクは上記第1実施形態及び第2実施形態で用いたものと同様のものであって、図4に示すように、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる電動機6の回転数(所定回転数)は、変速機8の変速段が1速の場合がN1、2速の場合がN2、3速の場合がN3、4速の場合がN4そして5速の場合がN5となっており、これら回転数の関係は、N1<N2<N3<N4<N5となっている。
【0074】
車両ECU22は、そのときに使用中の変速段に対応する要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数に対し、回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数が大である場合には、クラッチ4を接続すると共に、エンジン2の減速トルクと電動機6の回生制動トルクとを合わせて要求減速トルクが得られるように、エンジン2が発生すべき減速トルクをエンジンECU24に指示すると共に、電動機6が発生すべき回生制動トルクをインバータECU26に指示する。
【0075】
一方、回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数が、そのときに使用中の変速段に対応する要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数以下である場合には、車両ECU22はクラッチ4を切断して電動機6の回生制動のみによって要求減速トルクを発生させることにより、可能な限り減速エネルギを電力に変換してバッテリ18に回収するようにしている。
【0076】
このようにして車両の減速が行われる際、車両ECU22は予め設定されたシフトダウン用の変速シフトマップに従い、走行速度の低下に応じて変速機8の変速段を順次シフトダウンしていく。
また、クラッチ4を接続する際には、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に、トルクショックを防止するため、エンジン2の燃料供給量を増大させることによりエンジン2の回転数を上昇させて、電動機6との回転数合わせを行っている。
【0077】
各変速段における走行速度と電動機6の回転速度との関係は図4の下段のグラフに示すようになっている。第3実施形態で用いる変速マップは、上記第1実施形態で用いた変速マップと同じく、従来のハイブリッド電気自動車で用いられる変速マップと同様のものであり、図4に示す各変速段の変速線、及び車両減速時のシフトダウンが行われるV1乃至V4の走行速度は、図2に示す第1実施形態及び図5に示す従来のハイブリッド電気自動車のものと同様である。
【0078】
従って、この第3実施形態においても、変速機8の変速段が、車速センサ34によって検出された走行速度がV4に低下したときに5速から4速に、V3に低下したときに4速から3速に、V2に低下したときに3速から2速に、そしてV1に低下したときに2速から1速に、それぞれシフトダウンされる。
図4の下段グラフには、変速機8の変速段が5速であるときにアクセルペダル30の踏み込みが解除されて減速走行に移行した場合の、走行速度の低下及び変速段のシフトダウンに伴う電動機6の回転速度の変化が実線で示されている。
【0079】
ここで、走行速度の低下に伴う各変速線上における電動機6の回転数の変化、及びシフトダウンの際の2つの変速線間の電動機6の回転数の変化は、上記第1実施形態の場合と同様にして発生する。
即ち、減速により走行速度がV4となったときに5速から4速にシフトダウンされ、電動機6の回転数が5速の変速線上から4速の変速線上へとシフトして変動する。一方、シフトダウン前に使用していた変速段である5速に対応した要求減速トルク、及びシフトダウン後に使用する変速段である4速に対応した要求減速トルクがそれぞれ上限減速トルクと等しくなる電動機6の回転数はN5及びN4であって、図4に示すように、5速から4速へのシフトダウンによる電動機6の回転変動範囲内の回転数とは異なる回転数となっている。
【0080】
また、減速により走行速度がV3となったときには4速から3速へのシフトダウンが行われ、電動機6の回転数が4速の変速線上から3速の変速線上へとシフトして変動する。一方、シフトダウン前に使用していた変速段である4速に対応した要求減速トルクと上限減速トルクと等しくなる電動機6の回転数はN4であって、シフトダウン後に使用する変速段である3速に対応した要求減速トルクが上限減速トルクと等しくなる電動機6の回転数はN3である。そして、これら回転数N4及びN3は、図4に示すように4速から3速へのシフトダウンによる電動機6の回転変動範囲内の回転数とは異なる回転数となっている。
【0081】
更に、減速により走行速度がV2となったときには3速から2速へのシフトダウンが行われ、電動機6の回転数が3速の変速線上から2速の変速線上へとシフトして変動する。一方、シフトダウン前に使用していた変速段である3速に対応した要求減速トルクと上限減速トルクと等しくなる電動機6の回転数はN3であって、シフトダウン後に使用する変速段である2速に対応した要求減速トルクが上限減速トルクと等しくなる電動機6の回転数はN2である。そして、これら回転数N3及びN2は、図4に示すように3速から2速へのシフトダウンによる電動機6の回転変動範囲内の回転数とは異なる回転数となっている。
【0082】
更にまた、減速により走行速度がV1となったときには2速から1速へのシフトダウンが行われ、電動機6の回転数が2速の変速線上から1速の変速線上へとシフトして変動する。一方、シフトダウン前に使用していた変速段である2速に対応した要求減速トルクと上限減速トルクと等しくなる電動機6の回転数はN2であって、シフトダウン後に使用する変速段である1速に対応した要求減速トルクが上限減速トルクと等しくなる電動機6の回転数はN1である。そして、これら回転数N2及びN1は、図4に示すように2速から1速へのシフトダウンによる電動機6の回転変動範囲内の回転数とは異なる回転数となっている。
【0083】
以上のように第3実施形態では、シフトダウン前の変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数、及びシフトダウン後の変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数のいずれもが、各変速段でシフトダウンが行われる際の電動機6の回転数変動領域内の回転数とは異なるようになっており、図4に示すように、シフトダウンの際にはいずれも電動機6の回転数が、シフトダウンに関わる変速段に対応した要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数を通って変動しないようになっている。
【0084】
このようにすることにより、車両減速時には走行速度の低下に伴って電動機6の回転数が3速の変速線上を移動するときの1回のみ、クラッチ4が接続状態から切断状態へと切り換わる。このため、車両減速時のクラッチ4の作動頻度が低減されることによって、クラッチ4の摩耗による耐久性低下やクラッチ4の頻繁な作動に伴う振動や騒音の増大による運転フィーリングの低下を抑制することができると共に、クラッチ4接続時のエンジンの回転数合わせの頻度を減少させて燃費を向上させることができる。
【0085】
また、第3実施形態で用いられる要求減速トルクは変速段毎に個別に設定されており、前述したように、高速側の変速段であるほど大きめの要求減速トルクが設定されるようになっているので、変速機8を介して駆動輪に伝達される減速トルクの変速段毎の差を減らして、各変速段で減速時に得られる減速度の差を減らすと共に、シフトダウンの際の変速ショックを低減することができる。
【0086】
また、上記第1実施形態と同様に、この第3実施形態で変速機8のシフトダウンに用いられる変速マップについては、回転数Nxとシフトダウンに伴う電動機6の回転数変動との関係を考慮して変更する必要がないので、変速特性の設定の自由度が増す。
なお、第3実施形態では、車両の減速の際に変速段が3速にあるときのみ、電動機6の回転数の変動に伴い1度だけクラッチ4が接続状態から切断状態へと切り換わるようにしたが、要求減速トルクやシフトダウン用の変速マップを調整することにより、3速以外の変速段のときにクラッチ4が接続状態から切断状態へと切り換わるようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0087】
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態におけるハイブリッド電気自動車の制御装置の要部構成は上記第1実施形態と同様であって、図1に示すとおりである。また、車両の各走行状態において車両ECU22を中心として行われる制御についても、車両減速時を除いて上記第1実施形態と実質的に同一であり、減速時の変速マップを除いて上記第3実施形態と同様であるので、ここでは車両減速時の変速制御について、図5を用い以下に説明する。
【0088】
図5の上段のグラフに示すように、電動機6の回転数に応じた上限減速トルク、及び変速機8の各変速段に対応した要求減速トルクは上記第3実施形態と同じになっている。従って、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる電動機6の回転数(所定回転数)は、変速機8の変速段が1速の場合がN1、2速の場合がN2、3速の場合がN3、4速の場合がN4、そして5速の場合がN5となっており、これら回転数の関係はN1<N2<N3<N4<N5となっている。また、図5の下段のグラフには、車両減速時の走行速度の低下及び変速段のシフトダウンに伴う電動機6の回転速度の変化を、上記第3実施形態の場合の図4と同様に実線で示しているが、シフトダウンが行われる走行速度V1”乃至V4”が上記第3実施形態と異なっている。
【0089】
まず、変速機8の変速段が5速のときに走行速度がV4”まで低下すると、変速段を5速から4速にシフトダウンする。走行速度がV4”まで低下したときの電動機6の回転数は、5速の変速段に対応する要求減速トルクと電動機6の上限減速トルクとが等しくなる回転数N5より高いため、電動機6だけで要求減速度を発生させることができる。即ち、必要な減速度を確保するためにクラッチ4を接続する必要はなく、クラッチ4は切断状態のままとなる。
【0090】
同様に、変速機8の変速段が4速にシフトダウンされた後は、走行速度がV3”になるまでクラッチ4を接続することなく減速が行われ、走行速度がV3”になったところで3速にシフトダウンする。
ここで、変速機8の変速段を4速(所定の前進変速段)から3速にシフトダウンすることによって電動機6に回転変動が生じるが、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数も、図5に示すように変速段毎に異なっており、シフトダウンによって変化する。そして、この4速から3速へのシフトダウンに際しては、電動機6の回転数と、要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数、即ちクラッチ4の断接が必要となる回転数との大小関係が入れ替わることになる。つまり、4速から3速へのシフトダウンを開始するときには電動機6の回転数の方が要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数(N4)よりも高く、4速から3速へのシフトダウンが完了したときには要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数(N3)の方が電動機6の回転数よりも高くなる。
【0091】
要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数と、電動機6の回転数とは共にシフトダウンにより上昇することになるが、このように4速から3速へのシフトダウンの際には要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数が電動機6の回転数を追い抜いて上昇する。従って、変速段が4速のときには電動機6のみで要求減速トルクを発生させることができるためクラッチ4を切断するが、変速段が3速のときには電動機6のみでは要求減速トルクを発生することができないため、クラッチ4を接続してエンジン2の減速トルクと合わせて要求減速トルクを発生させる。
【0092】
この後、3速から2速、2速から1速へのシフトダウンを経て走行速度が0km/hとなるまで、電動機6の回転数が要求減速トルクと上限減速トルクとが等しくなる回転数よりも高くなることはなく、クラッチ4が接続されたままとなる。
従って、この第4実施形態においても上記第3実施形態と同様にクラッチ4の断接頻度を低減することが可能となり、このような制御は変速マップの走行速度V1”乃至V4”を変更するだけで容易に実現することができる。
【0093】
特に、変速機8の変速段を切り換える際にクラッチ4の断接を行うようにしている場合には、4速から3速へのシフトダウンの際に変速段の切り換えのためにクラッチ4の断接を行うため、要求減速トルクと上限減速トルクとの大小関係の逆転に対応したクラッチの断接をこれとは別に行う必要がなくなり、より一層クラッチ4の断接頻度を低減することが可能となる。
【0094】
以上で本発明の各実施形態に係るハイブリッド電気自動車の制御装置についての説明を終えるが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記第1実施形態では変速機8の変速マップを変更せずに要求減速トルクを比較的小さめに設定する一方で、上記第2実施形態では要求減速トルクを変更せずに変速機8の変速マップを変更するようにしたが、これらを組み合わせて変速マップ及び要求減速トルクを共に変更し、要求減速トルクが上限減速トルクと等しくなる回転数が、車両減速時のシフトダウンによる電動機の回転数の変動領域内の回転数とは異なるようにしても良い。
【0095】
また、上記第1乃至第3実施形態では、回転数センサ36で検出された電動機6の回転数に応じて上限減速トルクや要求減速トルクを設定するようにしたが、電動機6の回転数に代えて電動機6の回転数の変化に応じて変化する回転数、例えば変速機8の出力回転数などを検出し、これを電動機6の回転数に変換して用いるようにしても良い。
なお、上記実施形態では、エンジン2をディーゼルエンジンとしたが、エンジン形式はこれに限られるものではなく、ガソリンエンジンなどでも良い。
【0096】
また、上記実施形態において、電動機6は永久磁石式同期電動機としたが電動機の形式もこれに限られるものではなく、モータ作動及び発電機作動が可能なものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態であるハイブリッド電気自動車の制御装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態における上限減速トルクと要求減速トルクとの関係、及び車両減速時の走行速度の低下に伴う電動機の回転数の変化を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態における上限減速トルクと要求減速トルクとの関係、及び車両減速時の走行速度の低下に伴う電動機の回転数の変化を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態における上限減速トルクと要求減速トルクとの関係、及び車両減速時の走行速度の低下に伴う電動機の回転数の変化を示す図である。
【図5】本発明の第4実施形態における上限減速トルクと要求減速トルクとの関係、及び車両減速時の走行速度の低下に伴う電動機の回転数の変化を示す図である。
【図6】従来のハイブリッド電気自動車の制御装置における上限減速トルクと要求減速トルクとの関係、及び車両減速時の走行速度の低下に伴う電動機の回転数の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 ハイブリッド電気自動車
2 エンジン
4 クラッチ
6 電動機
8 変速機(自動変速機)
16 駆動輪
22 車両ECU(制御手段)
36 回転数センサ(回転数検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動力と電動機の駆動力とが自動変速機を介して車両の駆動輪に伝達可能であると共に、上記エンジンと上記自動変速機との機械的な接続がクラッチによって切断可能なハイブリッド電気自動車の制御装置において、
上記電動機の回転数を検出する回転数検出手段と、
上記車両の減速時に、上記車両の走行速度の低下に応じて上記自動変速機をシフトダウンする変速制御手段と、
上記車両の減速時に、上記回転数検出手段によって検出された回転数に応じ、上記電動機が発生可能な減速トルクである上限減速トルクと上記自動変速機で使用中の前進変速段において上記エンジン及び上記電動機から発生すべき減速トルクである要求減速トルクとを設定し、上記上限減速トルクが上記要求減速トルク以上であるときには上記クラッチを切断して上記要求減速トルクを発生するように上記電動機を制御する一方、上記上限減速トルクが上記要求減速トルクより小さいときには上記クラッチを接続して上記エンジンの減速トルクと上記電動機の減速トルクとの合計が上記要求減速トルクとなるように上記エンジン及び上記電動機を制御する制御手段とを備え、
上記上限減速トルクは、上記電動機の回転数が所定回転数であるときに上記要求減速トルクに等しく、上記電動機の回転数が上記所定回転数より低い領域では上記要求減速トルクより大きく、また上記電動機の回転数が上記所定回転数より高い領域では上記要求減速トルクより小さくなるように設定されており、
上記自動変速機のシフトダウンに関わる前進変速段に対応した上記要求減速トルクにおける上記所定回転数は、上記シフトダウンの際の上記電動機の回転数の変動領域内の回転数とは異なることを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
上記要求減速トルクは上記自動変速機の各前進変速段に対して共通であり、上記自動変速機の全ての前進変速段のシフトダウンにおける上記電動機の回転数変動が上記所定回転数より低い領域で行われるように上記要求減速トルクが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
上記要求減速トルクは上記自動変速機の各前進変速段に対して共通であり、上記自動変速機の各前進変速段でシフトダウンが行われる際の上記電動機の回転数変動領域が上記所定回転数を含まないように上記自動変速機の変速マップが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
上記要求減速トルクは上記自動変速機の前進変速段毎に個別に設定されており、上記シフトダウンの前後の前進変速段に対応してそれぞれ設定される上記要求減速トルクにおける上記所定回転数は、上記シフトダウンにおける上記電動機の回転数変動領域内の回転数とは異なることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項5】
上記要求減速トルクは、上記要求減速トルクが設定されている上記電動機の回転数領域の少なくとも一部において、高速側変速段に対応する要求減速トルクであるほど大きい値を有していることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項6】
上記要求減速トルクは、上記自動変速機の前進変速段が低速側となるほど上記所定回転数が高くなるように、上記自動変速機の前進変速段毎に個別に設定されており、上記自動変速機の所定の前進変速段からシフトダウンが行われる場合には、上記所定の前進変速段に対応した上記要求減速トルクにおける上記所定回転数よりも高い回転数において上記シフトダウンが開始され、上記シフトダウン後の変速段に対応した上記要求減速トルクにおける上記所定回転数が、上記シフトダウンにおける上記電動機の回転数変動領域よりも高い回転数となるように上記自動変速機の変速マップが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−237775(P2007−237775A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59387(P2006−59387)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】