説明

プラズマ処理装置

【課題】 プラズマ生成室102と基体104の処理室103との間にガスの流れを制御する仕切り板111を有する装置において仕切り板の交換なしにガスコンダクタンスの変更を行う。
【解決手段】 仕切り板111内部に仕切り板を加熱あるいは冷却する手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを利用し、基体表面におけるエッチング、アッシング、成膜、改質等を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマによる半導体製造処理がエッチング、アッシング、CVD(Chemical Vapor Deposition)等多くのプロセスに用いられている。これらのプラズマ処理装置の中にはプラズマの生成を行う生成室と、前記生成室において生成されたプラズマによって基体の処理を行う処理室とを、複数の貫通孔があけられた仕切り板により分離した装置があり、例えば特許文献1に提案されている。このような装置では、仕切り板に設けられた貫通孔の穴径や穴の長さおよび穴数に基づいたコンダクタンスにより、プラズマ生成室と基体処理室との間に圧力差が生じる。この圧力差を利用し、例えばCVD装置では、プラズマ処理室側に導入した前駆体となる原料ガスをプラズマ生成室側に回りこませないようにする方法も提案されている。
【0003】
また近年、プラズマ処理時に被処理基体へ到達する活性種のフラックスを極少量に制御する処理方法として、被処理基体をプラズマ発生領域よりもガス流の上流に設ける上流(またはアップフロー)プラズマ処理と呼ばれる方法が特許文献2に提案されている。アップフロープラズマ処理法においても活性種のフラックスを一層低く抑える方法として、基体の設置された処理室とプラズマ生成室との間に、複数の貫通孔が設けられた仕切り板を用いる方法が提案されている。この仕切り板のコンダクタンスによって生じる圧力差を利用して活性種の逆拡散を低減し、極低フラックスのプラズマ処理が可能となる。
【0004】
以下、図8によりダウンフロープラズマ処理装置の例について説明する。
ここで、101は処理容器、102はプラズマ生成室、103は処理室、104は被処理基体、105は支持手段、107はガス導入部、108はガス排気部、109は高周波電力供給手段、110は高周波電力が透過する誘電体、111は仕切り板である。
【0005】
まず、プラズマ処理装置の処理容器101内を排気手段(不図示)によりガス排気部108を介して十分真空引きする。次に、ガス導入手段(不図示)によりガス導入部107を介して所定の流量のガスを生成室102内に導入し、排気手段中に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)により所望の圧力に保持する。続いて、高周波電力供給手段109より高周波電力を放射し、誘電体110を介して放電を行い生成室102内にプラズマを生成する。
【0006】
仕切り板111にはガスが通過するための貫通孔があけられており、プラズマ生成領域において生成されたイオンや中性ラジカルといった活性種は、導入ガスと共に仕切り板111を通過し、処理室103内に流入する。
仕切り板にあけられた貫通孔をガスが通過する際、仕切り板が有するガスコンダクタンスによって、生成室102と処理室103との間には圧力差が生じる。この圧力差を利用して例えば生成室102と処理室103との間の中性ラジカルの移動量を制御することが可能である。
【特許文献1】特開平7−263353号公報
【特許文献2】特開2005−142234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで前記の仕切り板のコンダクタンスは、仕切り板上にあけられた貫通孔の穴数、穴径、穴の長さに基づく。このため異なるコンダクタンスを得ようとした場合、穴径や穴数などが異なる別の仕切り板への交換が必要となり、装置の稼働率低下を引き起こす問題があった。
そこで本発明は、仕切り板の交換を行うことなく、コンダクタンスを制御可能な仕切り板を有するプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため本発明のプラズマ処理装置は、プラズマが生成される生成室と被処理基体が配置される処理室とを備える処理容器と、前記生成室と処理室との間を仕切るように設置されるとともに処理用ガスを通過させる貫通孔が開けられた仕切り板とを有するプラズマ処理装置であって、前記仕切り板の温度を調整する温調手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、仕切り板の温度を調整することにより仕切り板のコンダクタンスを制御することができる。したがって、仕切り板の交換無しでコンダクタンスを制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、プラズマ生成室と基体処理室との間にガスの流れを制御する仕切り板を有するプラズマ処理装置において、仕切り板の温度を調整する温調手段を設ける。仕切り板を加熱または冷却することで処理ガスのコンダクタンスを変更することができる。すなわち、仕切り板の交換なしにガスコンダクタンスの変更を行うことができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態において、前記仕切り板の温度は−20℃乃至600℃の範囲内より選ばれる。温調手段としては、前記仕切り板に加熱用の発熱体(ヒータ)を内蔵する。または、前記仕切り板の内部に冷却用の媒質流路を備える。あるいは、処理容器の仕切り板を支持する部分の近傍に、処理容器を冷却する手段(冷却用の媒質流路)を設ける。
前記仕切り板の温度調整は複数のゾーン別に行うことが好ましい。前記複数のゾーンは例えば、同心を有する輪帯状のゾーンに区分する。
前記仕切り板は複数の貫通孔があけられた平板とすることができる。前記仕切り板は30W/m・K以上の熱伝導率を有する材質からなることが好ましい。
【0012】
本発明は、ダウンフロー処理およびアップフロー処理のいずれを行う場合にも適用可能である。
ダウンフロー処理においては、前記プラズマ処理におけるプロセスガスの導入はプラズマ生成が行われるプラズマ生成室側から行われる。導入されたプロセスガスは、仕切り板を通過した後に被処理基体の配置された処理室に流入し、被処理基体表面を処理した後に装置外に排気される。アップフロー処理においては、前記プラズマ処理におけるプロセスガスの導入は被処理基体の配置された処理室側から行われる。導入されたプロセスガスは、仕切り板を通過した後にプラズマ生成が行われるプラズマ生成室に流入した後に装置外に排気される。
【0013】
前記プラズマ処理は、例えば、前記被処理基体の表面をエッチング、アッシングもしくは改質する処理、または前記被処理基体の表面に薄膜堆積させる処理である。ここで、前記改質する処理は前記被処理基体の表面を酸化または窒化する処理である。
【0014】
本発明の好ましい実施の一形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置を図1から図3を参照して詳細に説明する。図1において、101は処理容器、102はプラズマ生成室、103は処理室、104は被処理基体、105は支持体、107はガス導入部、108はガス排気部である。109はマイクロ波を処理室に供給するためのマイクロ波供給手段、110はマイクロ波が透過する誘電体、111は仕切り板、112は冷却用の媒質流路である。また、図2において、202は貫通孔、203はヒータ(加熱手段)、204は温調用の媒質流路である。ヒータ203および媒質流路204は仕切り板111を温調する温調手段を構成する。
すなわち、図1の装置は、図8のものに対し、仕切り板111内部に設けられた温調手段(ヒータ203および媒質流路204)を含む温度調整機構と、処理容器101を冷却するための媒質流路112を設けたものである。
なお、各図面において、共通または対応する部分は同一の符号を付してある。
【0015】
図示しないマイクロ波発生源は、例えばマグネトロンからなり、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生する。但し、本発明は0.8GHzから20GHzの範囲の中からマイクロ波周波数を適宜選択することができる。マイクロ波発生源からのマイクロ波は、その後図示しないモード変換機によりTM、TEモードなどに変換され導波管内を伝播する。マイクロ波の導波経路には、アイソレータやインピーダンス整合器などが設けられる。アイソレータは、反射されたマイクロ波がマイクロ波発生源に戻ることを防止し、そのような反射波を吸収する。
【0016】
インピーダンス整合器は、マイクロ波発生源と負荷側とのマッチングをとる機能を果たすものである。このインピーダンス整合器は、マイクロ波発生源から負荷に供給される進行波と、負荷により反射されてマイクロ波発生源に戻ろうとする反射波のそれぞれの強度と位相を検知するパワーメータを有する。また、4Eチューナ、EHチューナやスタブチューナ等から構成される。
【0017】
処理室103は、被処理基体104を収納して真空または減圧環境下で被処理基体104に対しプラズマ処理を施す。なお、図1においては、被処理基体104を図示しないロードロック室との間で受け渡すためのゲートバルブなどは省略されている。
【0018】
被処理基体104は、半導体であっても、導電性のものであっても、あるいは電気絶縁性のものであってもよい。導電性基体としては、Fe、Ni、Cr、Al、Mo、Au、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pbなどの金属またはこれらの合金、例えば真鍮、ステンレス鋼などが挙げられる。絶縁性基体としては、SiO系の石英や各種ガラス、Si、NaCl、KCl、LiF、CaF、BaF、Al、AlN、MgOなどの無機物を挙げることができる。また、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドなどの有機物のフィルム、窓などが挙げられる。
【0019】
被処理基体104は支持体105に載置される。必要があれば、支持体105は高さや温度の調整が可能に構成されてもよい。支持体105は処理室103に収納され、被処理基体104を支持する。
【0020】
ガス導入部107はプラズマ生成室102の壁面に設けられ、プラズマ処理用のガスを処理室内に供給する。ガス導入部107は、ガス供給手段の一部である。ガス供給手段は、ガス供給源と、バルブと、マスフローコントローラと、これらを接続するガス導入管を含み、マイクロ波により励起されて所定のプラズマを得る為の処理ガスや放電ガスを供給する。プラズマの迅速な着火のために少なくとも着火時にXe、Ar、Heなどの希ガスを添加してもよい。希ガスは反応性がないので被処理基体104に悪影響を及ぼさず、また、電離しやすいのでマイクロ波投入時のプラズマ着火速度を上昇することができる。
【0021】
CVD法により基板上に薄膜を形成する場合に用いられるガスとしては、一般に公知のガスが使用できる。
a−Si、poly−Si、SiCなどのSi系半導体薄膜を形成する場合の原料は、常温常圧でガス状態であるか、または容易にガス化し得る化合物である。例えば、SiH、Siなどの無機シラン類、テトラエチルシラン(TES)、テトラメチルシラン(TMS)、ジメチルシラン(DMS)、ジメチルジフルオロシラン(DMDFS)、ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類である。または、SiF、Si、Si、SiHF、SiH、SiCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiClなどのハロゲン化シラン類である。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnがある。
【0022】
Si、SiOなどのSi化合物系薄膜を形成する場合の原料としては、常温常圧でガス状態であるか、または容易にガス化し得る化合物を用いることができる。このような化合物としては、SiH、Siなどの無機シラン類を挙げることができる。また、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、オクタメチルシクロテトラシラン(OMCTS)、ジメチルジフルオロシラン(DMDFS)、ジメチルジクロルシラン(DMDCS)などの有機シラン類を挙げることができる。さらに、SiF、Si、Si、SiHF、SiH、SiCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、SiClなどのハロゲン化シラン類を挙げることができる。また、この場合の同時に導入する窒素原料ガスまたは酸素原料ガスとしては、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、O、O、HO、NO、NO、NOなどが挙げられる。
【0023】
Al、W、Mo、Ti、Taなどの金属薄膜を形成する場合の原料としては、以下の有機金属またはハロゲン化金属を例示することができる。有機金属としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO))がある。また、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)がある。ハロゲン化金属としては、AlCl、WF、TiCl、TaCl5がある。また、この場合のSi原料ガスと混合して導入してもよい添加ガスまたはキャリアガスとしては、H、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。
【0024】
Al、AlN、Ta、TiO、TiN、WOなどの金属化合物薄膜を形成する場合の原料としては、以下の有機金属またはハロゲン化金属を例示することができる。有機金属としては、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAlH)、タングステンカルボニル(W(CO))がある。また、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)がある。ハロゲン化金属としては、AlCl、WF、TiCl、TaClなどがある。また、この場合の同時に導入する酸素原料ガスまたは窒素原料ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
【0025】
基体表面をエッチングする場合のエッチング用ガスとしては、F、CF、CH、C、C、C、CFCl、SF、NF、Cl、CCl、CHCl、CClなどが挙げられる。
フォトレジストなど基体表面上の有機成分をアッシング除去する場合のアッシング用ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、N、Hなどが挙げられる。
【0026】
本発明のマイクロ波プラズマ処理装置を被処理基体104の表面改質に適用する場合、使用するガスを適宜選択することにより、各種の処理が可能である。例えば基体もしくは表面層としてSi、Al、Ti、Zn、Taなどを使用してこれら基体もしくは表面層の酸化処理あるいは窒化処理さらにはB、As、Pなどのドーピング処理等が可能である。さらに本発明において採用する成膜技術はクリーニング方法にも適用できる。その場合、酸化物あるいは有機物や重金属などのクリーニングに使用することもできる。
【0027】
被処理基体104を酸化表面処理する酸化性ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NOなどが挙げられる。また、被処理基体104を窒化表面処理する窒化性ガスとしては、N、NH、N、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などが挙げられる。
【0028】
基体表面の有機物をクリーニングする場合、またはフォトレジストなど被処理基体104表面上の有機成分をアッシング除去する場合のクリーニング/アッシング用ガスとしては、O、O、HO、NO、NO、NO、Hなどが挙げられる。また、基体表面の無機物をクリーニングする場合のクリーニング用ガスとしては、F、CF、CH、C、C、CFCl、SF、NFなどが挙げられる。
【0029】
ガス排気部108は、処理室のガス下流側に設けられ、図示しない圧力調整弁、圧力計、真空ポンプおよび制御部と共に圧力調整機構を構成する。すなわち、図示しない制御部は、真空ポンプを運転しながら、処理室103の圧力を検出する圧力計が所定の値になるように、処理室103の圧力を弁の開き具合で調整する圧力調整弁を制御することによって調節する。圧力調整弁としては、例えば、VAT製の圧力調整機能つきゲートバルブやMKS製排気スロットバルブを用いることができる。この結果、排気部108を介して、処理室103の内部圧力を処理に適した圧力に制御する。圧力は、好ましくは13mPaから1330Paの範囲、より好ましくは665mPaから665Paの範囲が適当である。真空ポンプは、例えばドライポンプ、ターボ分子ポンプ(TMP)等により構成され、図示しないコンダクタンスバルブなどの圧力調整バルブを介して処理室103に接続されている。
【0030】
仕切り板111はプラズマ生成室102と処理室103との間に配置され、複数の貫通孔202があけられている。複数の貫通孔の穴径は同一であっても、異なるものであっても良い。また貫通孔の配置は例えば等間隔ピッチの格子状の配置であっても、同心を有する異なる径の円周上に配置であっても良い。仕切り板111の内部には仕切り板の温度を調整する温調手段が埋設されている。
【0031】
温調手段は加熱手段203および冷却用の媒質を流通させる流路204などから構成された温度調整機構の一部である。温度調整機構は、仕切り板111の温度を測定する図示しない温度計と、加熱手段203へ電力を供給する電源、冷却用の媒質の循環器および制御部からなる。また温調手段は加熱手段203のみで構成されても良い。
【0032】
仕切り板111は、温度調整機構により所定の温度、例えば−20℃以上600℃以下に制御される。
仕切り板の温度制御は、例えば図3に示すように同心の輪帯形状を有する複数の区画(輪帯状区画)301、302,303に分けて、それぞれ独立して温度調整を行ってもよい。
【0033】
仕切り板111の材料としては、半導体であっても、導電性のものであっても、あるいは電気絶縁性のものであってもよい。導電性の材料としては、Fe、Ni、Cr、Al、Mo、Au、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pbなどの金属またはこれらの合金、例えば真鍮、ステンレス鋼などが挙げられる。絶縁性の材料としては、SiO系の石英や各種ガラス、Si、NaCl、KCl、LiF、CaF、BaF、Al、AlN、MgOなどの無機物などが挙げられる。
【0034】
仕切り板111の材料としては熱伝導率が30W/m・K以上であることが望ましい。上記のような熱伝導率を有する材料で仕切り板を形成した場合、温調手段で発生した熱が速やかに伝導し、局所的な温度の偏りを生じにくくするためである。
仕切り板111近傍の処理容器101壁内には、仕切り板から伝わる熱によって処理容器101が過加熱されるのを防ぐための冷却用媒質を流通させる流路112が設けられる。冷却用の媒質としては例えば純水やエチレングリコール、フロリナートなどが挙げられ、外部冷凍機で例えば室温など一定温度に冷却されたものを流通させるのが好ましい。
【0035】
プラズマ処理は以下のようにして行う。まず、プラズマ処理装置の処理容器101内を排気手段(不図示)によりガス排気部108を介して十分真空引きする。次に、ガス導入手段(不図示)によりガス導入部107を介して所定の流量のガスをプラズマ生成室102内に導入し、排気手段中に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)により処理室103内を所望の圧力に保持する。さらに仕切り板111の温度を温調手段によって所望の温度に保持する。
【0036】
加熱手段203によって加熱された仕切り板111をガスが通過する際、ガスは仕切り板からの加熱を受けるため体積膨張する。このため仕切り板111の温度が高くなればなるほどガスは流れにくくなりコンダクタンスは低下する。また、プラズマ生成室102と処理室103との間に生じる圧力差は大きくなる。
以上のように、従来装置では所望のコンダクタンスを得るために穴径、穴数の異なる仕切り板への交換が必要であったものが、本発明においては仕切り板111の温度を調整することで所望のコンダクタンスを得ることが可能となる。
【実施例】
【0037】
以下実施例を挙げて本発明のマイクロ波プラズマ処理装置をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図4は本発明の第1の実施例に係るプラズマ処理装置の個性を示す。図4において、101処理容器、102はプラズマの生成室、103は処理室、104は被処理基体(基板)、105は支持台(支持体)、106はヒータ、107はガス導入部、108はガス排気部、111は仕切り板、112は冷却用の媒質流路である。
【0038】
処理容器101の材質はアルミニウム合金製で、内径は350mmである。仕切り板111は厚さが10mmのアルミニウム製であり、内部にヒータが埋設されている。また仕切り板111には開口径1.5mmの貫通孔が288個あけられている。媒質流路112には処理容器101を冷却するため、装置外部の冷凍機(不図示)において室温に冷却保持された水が循環している。
【0039】
まず排気系(不図示)を介して処理容器101内を真空排気し、10−2Paの値まで減圧させた。続いてガス導入部107を介して窒素ガスを1500sccmの流量で生成室102内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室103内を400Paに保持した。
次に仕切り板111に内蔵されたヒータに電力を供給し、仕切り板の温度を20℃から300℃まで加熱した。
【0040】
このとき生成室102の圧力を圧力計(不図示)で測定し、処理室103との圧力差を調べた。その結果、図5に示すように仕切り板111の温度が上昇するにつれて、生成室102と処理室103との圧力差は大きくなった。このときコンダクタンスは図6のように変化する。仕切り板温度300℃におけるコンダクタンスは、20℃におけるコンダクタンスの約半分の0.06m/sであった。これは仕切り板111の貫通孔の穴数を約半分の144穴に減らしたものを使用したときに得られるコンダクタンスとほぼ同等の結果であった。
【0041】
[実施例2]
図4に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、フォトレジストのアッシング処理を行った。ここで109はスロット付き無終端環状導波管(マイクロ波供給手段)、110は誘電体(または誘電体窓)である。
基体104は、φ12”P型単結晶シリコン基板であり、その表面にフォトレジストを塗布し、さらにイオン注入したものを使用した。誘電体110の材質は窒化アルミニウム製のものを用いた。
【0042】
まず、シリコン基板104を基体支持台105上に設置した後、排気系(不図示)を介して処理室103内を真空排気し、10−2Paの値まで減圧させた。次にヒータ106に通電し、シリコン基板104を280℃に加熱、保持した。続いて仕切り板111に内蔵されたヒータに電力を供給し、仕切り板の温度を100℃まで加熱した。さらにガス導入部107を介して酸素ガスを1000sccmの流量で生成室102内に導入した。ついで、排気系(不図示)に設けられたコンダクタンスバルブ(不図示)を調整し、処理室103内を26Paに保持した。ついで、2.45GHzのマイクロ波電源(不図示)より2kWの電力をスロット付無終端環状導波管109を介して供給し、表面波プラズマを発生させ60秒間アッシング処理を行った。
アッシング前後の膜厚変化からアッシングレートを測定したところ2.7μm/minであった。
【0043】
次に仕切り板111の温度を300℃にした条件で、同様の処理を別の基板対して行った。このときのアッシングレートを測定したところ2.1μm/minであった。
【0044】
[実施例3]
図4に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、半導体基体の酸化および窒化処理を行った。基体104は、φ12”P型単結晶シリコン基板であり、RCA洗浄により表面の自然酸化膜や重金属不純物などを除去したものを使用した。誘電体窓110の材質は石英製のものを用いた。仕切り板111は厚さが10mmのシリコン製であり、内部にヒータが埋設されている。また仕切り板には開口径2mmの貫通孔が49個あけられている。
【0045】
まず、シリコン基板104を基体支持台105上に設置した後、排気系を介して処理室103内を真空排気し、10−2Paの値まで減圧させた。続いてヒータ106に通電し、シリコン基板104を280℃に加熱、保持した。続いて仕切り板111に内蔵されたヒータに電力を供給し、仕切り板の温度を100℃まで加熱した。さらにガス導入部107を介して酸素ガスを500sccmの流量で生成室102内に導入した。ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブを調整し、処理室103内を133Paに保持した。
【0046】
ついで、2.45GHzのマイクロ波電源より3kWの電力をスロット付無終端環状導波管109を介して供給し、表面波プラズマを発生させ120秒間酸化処理を行った。次に一旦マイクロ波の供給及びガス導入を停止し、処理室103内を真空排気し、10−2Paの値まで減圧した。続いてガス導入部107を介して窒素ガスを500sccmの流量で生成室102内に導入した。ついで、コンダクタンスバルブを調整し、処理室103内を133Paに保持した。ついで、2.45GHzのマイクロ波電源より3kWの電力をスロット付無終端環状導波管109を介して供給し、表面波プラズマを発生させ60秒間窒化処理を行った。
【0047】
処理終了後シリコン基板104上に形成された酸窒化膜の膜厚と窒素の面密度をXPSにより測定した。その結果膜厚は2.4nm、窒素の面密度は8.2×1014原子/cmであった。
【0048】
次に窒化処理の際のみ仕切り板111の温度を300℃にした条件で、同様の処理を別の基板に対して行った。処理終了後シリコン基板104上に形成された酸窒化膜の膜厚と窒素の面密度をXPSにより測定した。その結果膜厚は2.3nm、窒素の面密度は3.5×1014原子/cmであった。
【0049】
[実施例4]
図7に示したマイクロ波プラズマ処理装置を使用し、半導体基体の酸化処理を行った。基体104は、φ12”P型単結晶シリコン基板であり、RCA洗浄により表面の自然酸化膜や重金属不純物などを除去したものを使用した。誘電体窓110の材質は石英製のものを用いた。仕切り板111は厚さが10mmのシリコン製であり、内部にヒータが埋設されている。また仕切り板には開口径2mmの貫通孔が49個あけられている。図4に示す装置との相違は図4のガス導入部107とガス排気部108の位置が、図7ではガス導入部707とガス排気部708のように反対になっていることである。すなわち、図4の装置では、ダウンフロープラズマ処理を行うのに対し、図7の装置では、アップフロープラズマ処理を行う。
【0050】
図7の装置において、まず、シリコン基板104を基体支持台105上に設置した後、排気系を介して処理室103内を真空排気し、10−2Paの値まで減圧させた。続いてヒータ106に通電し、シリコン基板104を280℃に加熱、保持した。続いて仕切り板111に内蔵されたヒータに電力を供給し、仕切り板の温度を100℃まで加熱した。さらにガス導入部707を介して酸素ガスを1000sccmの流量で反応室(処理室)103内に導入した。
【0051】
ついで、排気系に設けられたコンダクタンスバルブを調整し、反応室103内を400Paに保持した。ついで、2.45GHzのマイクロ波電源より3kWの電力をスロット付無終端環状導波管109を介して供給し、表面波プラズマを発生させ60秒間酸化処理を行った。
処理終了後シリコン基板104上に形成された酸化膜厚をエリプソメータにより測定したところ、平均膜厚は1.6nm、面内均一性は±1.9%であった。
【0052】
次に仕切り板111の温度を300℃にした条件で、同様の処理を別の基板対して行った。処理終了後シリコン基板104上に形成された酸化膜厚をエリプソメータにより測定したところ、平均膜厚は1.0nm、面内均一性は±2.2%であった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の仕切り板を使用するプラズマ処理装置の概略断面図である。
【図2】図1に示すプラズマ処理装置が使用する仕切り板の貫通孔と温度調整手段構造を示す概略部分拡大図である。
【図3】図1に示すプラズマ処理装置が使用する仕切り板の貫通孔の配置と温度制御区画を示す概略部分拡大図である。
【図4】図1に示すプラズマ処理装置がマイクロ波供給手段としてスロット付き無終端環状導波管を使用する例を示す概略断面図である。
【図5】図4に示すプラズマ処理装置に使用する仕切り板の温度変化に対する生成室と反応室の間の圧力差の変化を示す図である。
【図6】図4に示すプラズマ処理装置に使用する仕切り板の温度変化に対するコンダクタンスの変化を示す図である。
【図7】図1に示すプラズマ処理装置が反応室からガスを導入し生成室から排気しながら処理を行う例を示す概略断面図である。
【図8】従来の仕切り板を使用するプラズマ処理装置例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0054】
101 処理容器
102 プラズマ生成室
103 処理室(反応室)
104 基板(被処理基体)
107、707 ガス導入部
108、708 ガス排気部
109 無終端環状導波管(マイクロ波供給手段)
110 誘電体(誘電体窓)
111 仕切り板
112 冷却用の媒質流路
202 貫通孔
203 温調手段を構成するヒータ(加熱手段)
204 温調手段を構成する冷却用媒質流路
301、302、303 輪帯状区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマが生成される生成室と被処理基体が配置される処理室とを備える処理容器と、前記生成室と処理室との間を仕切るように設置されるとともに処理用ガスを通過させる貫通孔が開けられた仕切り板とを有するプラズマ処理装置であって、
前記仕切り板の温度を調整する温調手段を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記温調手段は、前記仕切り板の温度を−20℃乃至600℃の範囲内より選ばれる温度に調整することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記温調手段は、前記仕切り板に内蔵され前記仕切り板を加熱する発熱体を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記温調手段は、前記処理容器の前記仕切り板を支持する部分の近傍に前記仕切り板を冷却する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記仕切り板は内部に冷却用の媒質流路を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記仕切り板の温度調整は複数のゾーン別に行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記複数のゾーンは同心を有する輪帯状の区画からなることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記仕切り板は複数の貫通孔があけられた平板であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記仕切り板は30W/m・K以上の熱伝導率を有する材質からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記生成室側からプロセスガスを導入する手段と、前記仕切り板を通過して被処理基体の配置された前記処理室に流入し該被処理基体の表面を処理した後のガスを排気する手段とを有し、前記被処理基体をダウンフロー処理することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
被処理基体の配置された処理室側からプロセスガスを導入する手段と、前記仕切り板を通過してプラズマ生成室に流入した後のガスを排気する手段とを有し、前記被処理基体をアップフロー処理することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記プラズマ処理は、前記被処理基体の表面をエッチング、アッシングもしくは改質する処理、または前記被処理基体の表面に薄膜堆積させる処理であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記改質する処理は前記被処理基体の表面を酸化または窒化する処理であることを特徴とする請求項12に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−181912(P2008−181912A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12197(P2007−12197)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】