説明

プラズマ処理装置

【課題】複数のシャワー電極が設けられたプラズマ処理装置において、生産性を高めるとともに、プラズマ処理の均一性を維持できるようにする。
【解決手段】プラズマチャンバ21,22に、複数のシャワー電極6が隙間8をあけて設けられる。複数の基板4が等間隔に並べられたトレイ5が、シャワー電極6と下部電極7との間に搬送される。成膜開始時、隣り合うシャワー電極6間の隙間8の真下に基板4がくるように、トレイ5が位置決めされる。成膜中、トレイ5は隙間8の大きさに応じた搬送速度で進行方向に移動する。トレイ5は、基板4の長さよりも短い距離だけ移動する。この間に、基板4上に薄膜が形成されるが、シャワー電極7間の隙間8の真下に発生した強いプラズマ放電の影響を受ける領域が基板4上を移動するので、膜厚のばらつきが低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル等の半導体デバイス製造において使用される、プラズマ処理によって基板に成膜するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコン太陽電池セルの製造工程において、エッチング処理、拡散剤塗布、拡散層形成、反射防止膜形成、裏面電極形成、表面電極形成などの処理をシリコンウエハに施す。反射防止膜をウエハに成膜する際には、プラズマ処理が必須となっているが、生産能力の向上、コスト削減のために、複数の基板を同時に処理するバッチ式処理が主流となっている。プラズマ処理の均一性に重大な影響を及ぼす電極については、均一性の向上という点においては、一体型であることが望ましいが、1バッチあたりの基板枚数の増加に伴う電極面積の増大により大型化が必要となり、メンテナンス性という点で課題が多い。そこで、複数の電極を組み合わせて、ひとつの電極として機能させる分割型電極が用いられる。
【0003】
また、プラズマ処理を利用したプラズマ処理装置では、生産効率向上のため、プラズマ処理を行うのに適した温度まで基板の温度を高める予備加熱チャンバと、基板に対してプラズマ処理を行うプラズマチャンバを直列に連結し、上記両チャンバ間で基板を移動させて処理を行うインライン式の構成とされる。さらに、予備加熱チャンバにおける予備加熱を行うのに必要な時間が、プラズマチャンバにおけるプラズマ処理を行うのに必要な時間よりも短い場合、予備加熱チャンバに続けて複数のプラズマチャンバを直列に連結した構成とし、所望のプラズマ処理を複数のプラズマチャンバにおける処理の組合せで行う。これによって、装置設置面積当りの生産能力を向上させることができる。
【0004】
次に、複数の電極を備えたプラズマチャンバの構造を図7に示す。なお、連結された複数のプラズマチャンバの構造は同一である。
【0005】
プラズマチャンバ1は、入口に仕切弁2、出口に仕切弁3を備えている。処理対象の基板4を載置したトレイ5が入口から出口に向かってプラズマチャンバ1内を搬送される。トレイ5には、複数の基板4が間隔をあけてマトリックス状に並べられている。
【0006】
プラズマチャンバ1内に、シャワー電極6と下部電極7とが設けられる。シャワー電極6と下部電極7とは対向して配置される。シャワー電極6は3つ設けられ、それぞれ隙間8をあけて配置される。
【0007】
各シャワー電極6は、中間板10に保持され、中間板10は上部電極板11に取り付けられている。上部電極板11は、高周波電源12に接続されている。シャワー電極6は、中間板10を介して上部電極板11に電気的に接続される。下部電極7は、接地され、ヒータを内蔵している。
【0008】
シャワー電極6と下部電極7との間でトレイ5を搬送する搬送手段13が設けられる。搬送手段13は、例えばローラコンベヤとされ、入口から入ってきたトレイ5を下部電極7上まで搬送し、さらに下部電極7上からトレイ5を出口まで搬送する。入口から出口に向かう方向が進行方向とされる。
【0009】
プラズマ処理用ガスは、ボンベ等のガス供給源14からガス供給配管15を通って、上部電極板11、中間板10、シャワー電極6で囲まれた空間16に供給される。シャワー電極6に、数百個のガス噴出孔が形成されており、供給されたガスは、ガス噴出孔を通じてプラズマチャンバ1内に放出される。
【0010】
プラズマチャンバ1は、ポンプ等の排気手段17によって内部に放出されたプラズマ処理用ガスを排出できるようになっている。排気手段17は、プラズマチャンバ1内の圧力が設定された値になるよう、排気の調整を行う。プラズマチャンバ1に装着された圧力計18の出力に基づいて、図示しない制御装置は、設定された圧力になるように、排気手段17の駆動を制御する。
【0011】
上記のプラズマ処理装置では、一体型のシャワー電極を使用せず、複数のシャワー電極が進行方向に沿って並べて配置される。このとき、隣り合うシャワー電極の間に隙間が必要になる。すなわち、プラズマチャンバの昇温は、下部電極に内蔵されたヒータへの通電により行われるが、昇温中もしくは昇温前後のシャワー電極、中間板および上部電極板の温度分布が一定でない。そのため、隣り合うシャワー電極の間に隙間を設けなければ、温度変化によりシャワー電極、中間板、上部電極板のいずれかに熱応力が加わって、変形を引き起こすことになる。この変形により、シャワー電極と下部電極との距離が変化して、正常なプラズマ処理を行えなくなる。そこで、隙間をあけることにより、他のシャワー電極の熱応力の影響を受けなくなり、シャワー電極の変形を防ぐことができる。
【0012】
ここで、プラズマ放電は、高周波電源に接続されたシャワー電極と、接地された下部電極との間で発生する。しかし、隙間周辺での放電は、他の部分よりも強くなり、不均一な放電が生じる。この不均一な放電が、対向する下部電極上のトレイに置かれた基板へのプラズマ処理に不均一をもたらす。プラズマ放電の分布も隙間の形状を反映した形となる。その結果、プラズマ処理により成膜したウエハの膜厚にばらつきが生じる。
【0013】
基板に対するプラズマ処理の均一化を図る方法としては、一体型のシャワー電極を使用する方法がある。一度に処理できる基板枚数を減らさないためには、大面積のシャワー電極を使用しなければならない。大面積のシャワー電極では、取り外しを人手で行うことが非常に困難となり、メンテナンス性に劣る。一度に処理できる基板枚数を減らせば、大面積のシャワー電極を使用する必要はなくなる。しかし、一度に処理できる枚数が減り、半導体デバイスの生産効率が低下する。
【0014】
すなわち、複数の電極を備えたプラズマ処理装置では、生産性およびメンテナンス性に優れているが、プラズマ処理の均一性を確保できない。一方、プラズマ処理の均一性を図るために一体型のシャワー電極にすると、生産性もしくはメンテナンス性を犠牲にせざるを得ないという問題があった。
【0015】
成膜処理によるプラズマ処理の均一性を向上させる技術が、例えば特許文献1に開示されている。プラズマCVD装置において、成膜中、基板ホルダを水平方向に往復移動させることにより、ガス供給条件に関係なく、膜の堆積量の違いを無くし、均一な厚さで膜を堆積することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−248461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、基板を載置したトレイが往復移動するとき、移動方向を変える際に減速して、一旦停止しなければならない。上記のプラズマCVD装置では、一体型のシャワー電極が用いられているが、複数のシャワー電極を用いた場合、トレイが往復移動しても、停止したときには、シャワー電極間の隙間の真下の位置がトレイに対して一定位置となる。その位置では、他の位置に比べて強いプラズマ放電にさらされる時間が長くなる。そのため、基板に形成される膜厚が他の箇所よりも厚くなり、均一な厚さに成膜することができない。
【0018】
本発明は、上記に鑑み、複数のシャワー電極を用いて、生産性およびメンテナンス性とプラズマ処理の均一性とを両立できるプラズマ処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、チャンバ内に、多数のガス噴出孔を有するシャワー電極と、下部電極とが対向して配置され、両電極の間で複数の基板を載置したトレイを搬送する搬送手段が設けられ、ガス噴出孔から反応ガスを供給して、シャワー電極と下部電極との間でプラズマを発生させて、基板上に薄膜を形成するプラズマ処理装置であって、複数のシャワー電極が隙間をあけて進行方向に沿って並べられ、搬送手段は、成膜中、隙間の大きさに応じた搬送速度でトレイを進行方向に移動させるものである。
【0020】
シャワー電極間の隙間の影響によってプラズマ処理が不均一になる。この隙間に対して、成膜中に基板が停止していれば、基板の一部の領域が影響を集中的に受ける。そこで、成膜中にトレイを一方向に移動させることにより、隙間の影響が基板全体に分散してかかり、均一な成膜を行える。
【0021】
このとき、隙間の大きさに応じた搬送速度でトレイが移動する。隙間の大きさは基板の長さよりも小とされるが、隙間が基板に比して大きい場合、トレイの搬送速度は遅くされ、隙間が基板に比して小さい場合、トレイの搬送速度は速くされる。なお、成膜中のトレイの搬送速度は、トレイを搬送するときよりも遅い。
【0022】
このように搬送速度を制御することにより、特定の基板だけが隙間の影響を受けることになり、複数の基板に隙間の影響が及ぶことを防止できる。したがって、隙間の影響を最小限に抑えることができる。
【0023】
トレイに、複数の基板が進行方向に沿って等間隔に並べられ、搬送手段は、成膜中に1つの基板の長さより短い距離だけトレイを移動させる。なお、成膜中の搬送速度は、隙間の大きさと基板の長さと成膜時間とによって決められる。成膜中、シャワー電極間の隙間は特定の基板だけに対向することになる。トレイが移動しても、その他の基板は隙間に対向せず、隙間の影響を受けない。
【0024】
成膜開始時に、シャワー電極間の隙間の真下に基板がくるように、トレイが位置決めされる。トレイが基板の長さより短い距離を移動して、成膜が終了したとき、隙間の真下には同じ基板がくる。隙間の真下に他の基板がくることはない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、複数のシャワー電極を用いることにより、大面積のシャワー電極とすることができ、一度に大量の基板をプラズマ処理でき、生産性が向上する。しかも、1つのシャワー電極を小型にできるので、着脱を容易に行え、メンテナンス性を向上できる。そして、このようなシャワー電極に対して、成膜中にトレイを進行方向に移動させることにより、トレイを往復移動させたときに基板の一部の領域において、プラズマ放電にさらされる時間が長くなり、膜厚が厚くなるといった問題を解消でき、基板における膜厚のばらつきを減らすことができる。したがって、プラズマ処理の均一性を維持でき、均一な厚さの薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のプラズマ処理装置の全体構成図
【図2】複数の基板を載置したトレイの平面図
【図3】プラズマチャンバの内部構造を示し、(a)は成膜開始時の状態を示す図、(b)は成膜終了時の状態を示す図
【図4】成膜開始時のシャワー電極間の隙間と基板との位置関係を示す図
【図5】成膜終了時のシャワー電極間の隙間と基板との位置関係を示す図
【図6】トレイを移動させないときにおけるシャワー電極間の隙間と基板との位置関係を示す図
【図7】従来の成膜中のプラズマチャンバの内部構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態のプラズマ処理装置を図1に示す。プラズマ処理装置は、予備加熱チャンバ20、第1プラズマチャンバ21、第2プラズマチャンバ22、アンロードチャンバ23の4チャンバを直列に連結した構成になっている。なお、第1プラズマチャンバ21および第2プラズマチャンバ22の構造は、従来の図7に示したプラズマチャンバ1と同じである。
【0028】
予備加熱チャンバ20と第1プラズマチャンバ21との間、第1プラズマチャンバ21と第2プラズマチャンバ22との間、第2プラズマチャンバ22とアンロードチャンバ23との間に、それぞれ仕切弁24が設けられている。予備加熱チャンバ20の入口およびアンロードチャンバ23の出口には、ドア弁25がそれぞれ設けられている。各弁24,25が全て閉じられることにより、各チャンバ20〜23は外部および他のチャンバ20〜23と隔離される。
【0029】
各チャンバ20〜23には、それぞれ排気手段17が設けられる。ポンプからなる排気手段17の動作により、各チャンバ20〜23内は排気されて、1Pa以下の真空状態となる。第1プラズマチャンバ21および第2プラズマチャンバ22には、ガス供給手段が設けられる。ガス供給手段は、ボンベ等のガス供給源14からガス供給配管15を通じてチャンバ21,22内に成膜用ガスを供給する。また、予備加熱チャンバ20に、供給配管26を通じて窒素が供給され、チャンバ20内が大気圧になる。
【0030】
予備加熱チャンバ20には、ランプヒータ27が設けられている。ランプヒータ27に通電すると、ランプヒータ27から発せられる赤外線により、チャンバ20内が加熱される。
【0031】
プラズマ処理装置は、処理対象の基板4としてのシリコンウェハに成膜を行う。複数のシリコンウェハがカーボン材からなるトレイ5に載置される。トレイ5は、各チャンバ20〜23に設けられた搬送手段13によって搬送される。シリコンウェハの大きさは155mm×155mm、厚さが0.2mmとされ、トレイ5の大きさは、1100mm×1650mm、厚さ10mmとされる。図2に示すように、48枚のシリコンウェハがトレイ5上に縦横に等間隔に並べられている。進行方向に沿って8枚のシリコンウェハが縦一列に並べられ、横6列とされる。各搬送手段13は、ローラコンベヤとされ、各チャンバ20〜23の搬送手段13により、トレイ5は、図1の右側から左側に向かう進行方向に移動する。
【0032】
第1プラズマチャンバ21および第2プラズマチャンバ22には、3つのシャワー電極6が設けられ、トレイ5の数十mm程度上方に各シャワー電極6が位置する。隣り合うシャワー電極6は隙間8をあけて配置される。隙間8は、進行方向に直交する方向に形成され、進行方向に対する隙間8の大きさは、約10mmとされる。
【0033】
そして、プラズマ処理装置は、図示しない制御装置によって動作が制御される。制御装置は、仕切弁24、ドア弁25、ランプヒータ27、排気手段17、ガス供給手段、搬送手段13および高周波電源12を所定のシーケンスにしたがって制御する。
【0034】
上記のプラズマ処理装置において、各チャンバ20〜23の排気手段17が動作して、各チャンバ20〜23内を1Pa以下の真空状態にしている。太陽電池セル用の複数の基板4を載置したトレイ5が予備加熱チャンバ20の入口まで搬送される。予備加熱チャンバ20に窒素が導入され、チャンバ20内が大気圧にされる。予備加熱チャンバ20のドア弁25が開けられると、搬送手段13によりトレイ5は、予備加熱チャンバ20内に移動する。移動が終了した後、ドア弁25が閉められ、排気手段26により、予備加熱チャンバ20の気圧が1Pa以下になるまで真空引きが行われる。さらにランプヒータ27により、チャンバ20内が昇温され、トレイ5が500℃程度になるまで加熱される。
【0035】
次に、予備加熱チャンバ20と第1プラズマチャンバ21との間の仕切弁24が開けられ、両チャンバ20,21内の搬送手段13によって、トレイ5が予備加熱チャンバ20から第1プラズマチャンバ21に搬送される。第1プラズマチャンバ21内において、トレイ5は下部電極7の上部に搬送される。下部電極7には、トレイ5を約500℃に保持するためのヒータが埋め込まれており、ヒータはトレイ5の有無に関わらず通電された状態となっている。下部電極7上への移載が終了した後、仕切弁24が閉められる。
【0036】
ガス供給手段は、モノシラン(SiH)・アンモニア(NH)・窒素(N)の混合ガスをガス供給配管15を通じてチャンバ21内の空間16に供給する。この成膜用ガスは、シャワー電極6のガス噴出孔からチャンバ21内に導入される。
【0037】
制御装置は、圧力計18からの検出信号に基づいて、排気手段17を制御して、設定された圧力になるようにチャンバ21内の圧力を調整する。圧力が100Pa程度に安定した後、13.56MHzの高周波電源12が起動され、高周波電源12に接続されたシャワー電極6に1000W程度の高周波電圧が、数十秒程度のあらかじめ設定された成膜時間t秒の間、印加される。シャワー電極6に高周波電圧が印加されると、プラズマが発生し、成膜用ガスが分解、活性化され、基板4がプラズマ処理される。トレイ5上の基板4上面に、反射防止膜としてのシリコン窒化膜(SiNx)が形成される。なお、トレイ5の上面のうち、基板4が載置されていない露出面にも同様にシリコン窒化膜が形成される。
【0038】
成膜時間が経過すると、高周波電源12が停止され、成膜用ガスの供給が停止される。第1プラズマチャンバ21の圧力が1Pa以下になるように、排気手段17により排気が行われる。そして、第1プラズマチャンバ21と第2プラズマチャンバ22との間の仕切弁24が開けられ、両チャンバ21,22内の搬送手段13によって、トレイ5は第1プラズマチャンバ21から第2プラズマチャンバ22に搬送される。トレイ5は下部電極7上に移動する。第1プラズマチャンバ21におけるプラズマ処理と同様のプラズマ処理が行われ、基板4上に成膜される。基板4上に形成されたシリコン窒化膜の上に、さらにシリコン窒化膜が積み重ねられる。これによって、太陽電池セルにおける所定の膜厚の反射防止膜が形成される。
【0039】
成膜が終了すると、第2プラズマチャンバ22とアンロードチャンバ23との間の仕切弁24が開けられ、両チャンバ22,23内の搬送手段13によって、トレイ5が第2プラズマチャンバ22からアンロードチャンバ23に搬送される。トレイ5がアンロードチャンバ23内に移動すると、仕切弁24が閉められる。供給配管26を通じてアンロードチャンバ23に窒素が導入され、アンロードチャンバ23内が大気圧となる。この状態で、ドア弁25が開けられ、トレイ5がアンロードチャンバ23から取り出される。トレイ5が取り出された後、ドア弁25が閉められ、排気手段17により、1Pa以下になるように、アンロードチャンバ23は真空引きされる。反射防止膜が形成された基板4は、次工程に送られる。
【0040】
ここで、各プラズマチャンバ21,22において、プラズマ処理が行われる成膜中、トレイ5は、シャワー電極6間の隙間8の大きさに応じた搬送速度で進行方向に移動される。制御装置は、隙間8の大きさ、基板4の長さおよび成膜時間によって決められた搬送速度でトレイ5が移動するように、搬送手段13を制御する。各プラズマチャンバ21,22の搬送手段13は、成膜中にトレイ5を1つの基板4の長さ以下の距離だけ移動させる。なお、成膜中の搬送速度は、トレイ搬送時の搬送速度とは異なり、搬送時よりも遅くされる。
【0041】
トレイ5が第1プラズマチャンバ21および第2プラズマチャンバ22の下部電極7上に移動されたとき、制御装置は、隙間8の真下に基板4がくるように搬送手段13を制御して、トレイ5を位置決めする。図3(a)、図4に示すように、2つの隙間8の真下にそれぞれ横一列の基板4が位置する。隙間8の進行方向下流側の先端と、基板4の進行方向下流側の先端とが合うように、搬送手段13が停止され、トレイ5は位置決めされる。これにより、隙間8の真下には、必ず基板4が存在する。
【0042】
なお、シャワー電極6の数が増えた場合、シャワー電極6間の隙間8に応じて、トレイ5に載置される基板4の間隔が設定される。すなわち、成膜開始時にトレイ5が位置決めされたとき、各隙間8の真下に基板4がくるように、進行方向の基板4の間隔が設定される。
【0043】
そして、成膜の開始とともに、搬送手段13は、決められた搬送速度でトレイ5を進行方向に移動させる。基板4の進行方向の長さをL、シャワー電極6間の隙間8の大きさをΔL、成膜時間をtとすると、搬送速度は(L−ΔL)/tとされる。基板4の長さは隙間8の大きさよりも大である。また、各列の基板4の間隔の大きさはシャワー電極6間の隙間8の大きさより大とされる。このようにトレイ5の搬送速度は隙間8の大きさに応じて決められ、隙間8が大きいとき、搬送速度は遅くなり、隙間8が小さいとき、搬送速度は速くなる。
【0044】
成膜時間tが経過して、成膜が終了したとき、トレイ5の搬送が停止され、図3(b)、図5に示すように、2つの隙間8の真下にそれぞれ基板4が位置する。隙間8の進行方向上流側の後端と、基板4の進行方向上流側の後端とが合う。この成膜中、トレイ5は、基板4の長さより短い距離(L−ΔL)だけ移動する。隙間8に対向する基板4において、隙間8の真下を通過する時間は、ΔL/(L−ΔL)×t以下となる。
【0045】
シャワー電極6間の隙間8の真下および周辺では、プラズマ放電が他の部分と比べて強くなる。ここで、成膜中にトレイ5を移動させない場合、図6に示すように、シャワー電極6間の隙間8の真下に基板4が存在すると、成膜中、基板4の一部の領域だけが強いプラズマ放電にさらされ続ける。特に、第1プラズマチャンバ21と第2プラズマチャンバ22とにおいて2回の成膜が行われるとき、第1プラズマチャンバ21と第2プラズマチャンバ22は同じ構造であるので、各チャンバ21,22において、トレイ5はシャワー電極6に対して同じ位置に停止される。そのため、合計2tの時間、基板4の同じ領域が強いプラズマにさらされる。この領域に成膜された薄膜は、基板4の他の領域に比べて厚い膜となる。したがって、1つの基板4において、膜厚のばらつきが生じる。
【0046】
上記のように、成膜中、トレイ5をゆっくりと進行方向に移動させることにより、横一列の基板4だけが隙間8の真下を移動することになり、強いプラズマ放電にさらされる領域が基板4全体に広がる。しかも、基板4において、隙間8の真下に対向する時間が短くなるので、強いプラズマにさらされる時間も短くなり、形成された膜厚が厚くならず、かつ膜厚のばらつきも小さくなる。
【0047】
例えば、トレイ5に、基板4として、厚さ200μm、大きさ155mm×155mmのシリコンウェハを48枚載せ、プラズマチャンバ21,22内で150secの間、成膜を行う。トレイ5は、搬送速度0.97mm/secでプラズマチャンバ21,22内を移動する。トレイ5を移動させながら成膜を行うと、シャワー電極6間の隙間8の真下に発生するプラズマ放電の影響が低減される。シャワー電極6間の隙間8の真下にある基板4の膜厚の標準偏差が、移動させないときの3.2から2.0に減少した。
【0048】
トレイ5を搬送させないで成膜した場合のシャワー電極6間の隙間8の真下に対向する領域を除く他の領域の膜厚の標準偏差が1.8であるので、トレイ5を移動させることにより、膜厚のばらつきを抑えることができる。
【0049】
したがって、複数のシャワー電極によって、大面積のシャワー電極とすることにより、一度に大量の基板を成膜でき、生産性を高めることができる。しかも、プラズマ処理の均一性を維持でき、基板に対して均一な成膜を行え、製品の歩留まりを高めることができる。さらに、個々のシャワー電極は小型であるので、チャンバでの着脱を容易に行え、メンテナンス性に優れている。
【0050】
また、成膜中のトレイの移動距離を基板の長さより短くすることにより、進行方向において1つの基板だけがシャワー電極間の隙間の真下を移動する。これにより、複数の基板にまたがって隙間が対向することがなく、隙間の影響を最小限に抑えることができるとともに、トレイの移動距離が大きくならないので、下部電極を大型する必要がなく、チャンバの大型化を防ぐことができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。上記のプラズマ処理装置は、太陽電池セルの反射防止膜の形成に用いられるが、プラズマチャンバに供給するガスを変えることにより、例えばp型半導体膜やn型半導体膜を形成できる。さらに、これ以外に液晶パネルや半導体の成膜に使用してもよい。
【0052】
また、成膜開始時のトレイの位置として、進行方向において、隙間の真下に複数の基板がかからないようにすればよい。このとき、シャワー電極間の隙間の大きさがトレイに載置された基板の間隔の大きさより大の場合、成膜中のトレイの移動距離は基板の長さより小とされる。これにより、進行方向において、成膜中に複数の基板に隙間が対向することを防げる。
【符号の説明】
【0053】
4 基板
5 トレイ
6 シャワー電極
7 下部電極
8 隙間
13 搬送手段
21 第1プラズマチャンバ
22 第2プラズマチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に、多数のガス噴出孔を有するシャワー電極と、下部電極とが対向して配置され、両電極の間で複数の基板を載置したトレイを搬送する搬送手段が設けられ、ガス噴出孔から反応ガスを供給して、シャワー電極と下部電極との間でプラズマを発生させて、基板上に薄膜を形成するプラズマ処理装置であって、複数のシャワー電極が隙間をあけて進行方向に沿って並べられ、搬送手段は、成膜中、隙間の大きさに応じた搬送速度でトレイを進行方向に移動させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
トレイに、複数の基板が進行方向に沿って等間隔に並べられ、搬送手段は、成膜中に1つの基板の長さより短い距離だけトレイを移動させることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
成膜開始時に、シャワー電極間の隙間の真下に基板がくるように、トレイが位置決めされたことを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
成膜中の搬送速度は、隙間の大きさと基板の長さと成膜時間とによって決められることを特徴とする請求項2または3記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−245478(P2010−245478A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95617(P2009−95617)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】