説明

レーザーアブレーションによる機能膜の製造法およびそれに用いるレーザーアブレーション加工用組成物

【課題】低エネルギーで金属を含む機能膜をレーザーアブレーション法により製造する方法と、それに用いる組成物の提供。
【解決手段】基板上101に、金属元素を含んでなる微粒子103と有機分散媒104とを含んでなるレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して前記組成物の層102を形成させ、レーザー光を像様に照射して、照射された部分の前記組成物を除去し、基板上に残留する前記組成物の層を焼成することを含んでなることを特徴とする、レーザーアブレーションによる機能膜の製造法と、それに用いるレーザーアブレーション加工用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザーアブレーション法により基板上に所望のパターンを形成させる加工方法、およびそれに用いるレーザーアブレーション加工用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された機能膜をパターニング加工する手段として、レーザーアブレーション法が注目されつつある。このレーザーアブレーション法とは、基板上に連続的に形成された機能膜にレーザー光を像様に照射し、レーザー光が照射された部分の機能膜を昇華、蒸発、または分解させて除去することによりパターンを形成させる方法である。この機能膜を形成する物質として種々のものが選択することが可能であり、例えば金属を含む機能膜を用いれば配線パターンなどを形成でき、また絶縁性材料により形成された機能膜を用いれば半導体素子のビアホールやトレンチアイソレーション構造などを形成させることが可能である。
【0003】
このレーザーアブレーション法は、加工しようとする機能膜が有機物、例えば樹脂からなるものである場合、特に有効である。これはレーザー光照射によるエネルギーが比較的少なくても加工が可能であるためである。このような背景から、有機物からなる機能膜をレーザーアブレーション法により加工する技術が種々検討されている(特許文献1〜3)。
【0004】
しかしながら、機能膜を形成する物質がアブレーションにより除去しにくいものである場合、レーザー光照射により発生する昇華物、蒸発物、または分解物は、加工領域の近辺に再付着しやすく、結果としてパターン周辺の汚れ(アブレーション煤)を招くという問題があった。このような問題は、機能膜として金属を含むもの、例えば金属膜、金属酸化物膜、または金属窒化物膜を用いた場合、顕著となる。
【0005】
このような問題を回避するため、例えば特許文献3には、加工される機能膜の上に一時的な保護膜を形成させ、アブレーション加工後に保護膜ごとアブレーション煤を除去するという方法が提案されている。この特許文献3には、機能膜として有機物からなる膜を用いているが、機能膜が金属を含む物である場合にも応用できることが予想される。従って、機能膜として金属を含む物を用いることで、配線パターンなどの製造に応用することもできるであろう。
【0006】
しかしながらこのような方法により配線パターンを製造しようとすると、工程数が増えるという問題点が予想され、本発明者らの検討によれば改良の余地がある。また金属を含む機能膜に対して、有機物からなる保護膜は一般的に低エネルギーでアブレーションされるため、加工領域間際を保護できない可能性がある。とくにこのような現象は、機能膜のアブレーションに高いエネルギーが必要な、金属膜、金属酸化膜、または金属窒化物を用いた場合に顕著に現れる。
【0007】
さらには、機能膜に金属が含まれる場合には、その機能膜を除去するのに必要なレーザー光のエネルギーが高いことが要求されるのが一般的である。すなわち、従来は金属を含む機能膜をパターニングする場合には、金属や金属酸化物等の被膜を基板上に均一に形成させ、その金属膜または金属酸化物膜をレーザー光で直接除去するために、高いエネルギーのレーザー光を用いていた。このために、エネルギーの高いレーザー光は機能膜の下に存在する基板をも除去してしまう危険性も高かった。
【特許文献1】特許第2840098号公報
【特許文献2】特開平5−112727号公報
【特許文献3】特開平5−185269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来のレーザーアブレーション法における問題点を鑑み、アブレーション煤の問題を起こすことなく、低いエネルギーのレーザー光により、金属を含む機能膜をレーザーアブレーション法により加工する方法、およびそれに用いるレーザーアブレーション加工用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるレーザーアブレーションによる機能膜の製造法は、
基板上に、金属元素を含んでなる微粒子が有機分散媒中に均一に分散されたレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して前記組成物の層を形成させ、
前記組成物の層にレーザー光を像様に照射して、照射された部分の前記組成物を除去し、
レーザー光照射後、基板上に残留する前記組成物の層を焼成する、
ことを含んでなること、を特徴とするものである。
【0010】
また、本発明によるレーザーアブレーション加工用組成物は、基板上にレーザーアブレーション法によりパターン化された機能膜を製造するのに用いるレーザーアブレーション加工用組成物であって、金属元素を含んでなる微粒子と、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明による機能膜の製造法によれば、金属を含む機能膜をレーザーアブレーション法により製造するのに、従来よりも低いエネルギーのレーザー光による加工を可能となる。さらには、高いエネルギーのレーザー光を用いることに起因する基板の損傷や、アブレーション煤の問題も改善することができる。
【0012】
すなわち、本発明によるレーザーアブレーション加工用法では従来の金属膜や金属酸化膜に代わり、金属元素を含む微粒子と有機分散媒とからなる、いわば機能膜の前躯体膜に対してレーザーアブレーションを施すことにより加工性を改善するものである。レーザーアブレーション加工時に有機分散媒は、金属、金属酸化物あるいは金属窒化物などの無機物だけを含む機能性膜と比較してはるかに分解されやすく、有機分散媒自身が昇華・蒸発する際に併せて微粒子もレーザー光照射領域から除去される。結果として、無機物だけからなる機能膜を直接レーザーアブレーション加工するより、はるかに低い投入エネルギーで、良好な形状に加工することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による機能膜の製造法を図を用いて説明すると以下の通りである。
【0014】
図1は、本発明による製造法を説明する概念図である。
【0015】
まず、基板101上にレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して、レーザーアブレーション加工用組成物の均一な層102を形成させる(図1(a))。基板101は目的に応じて任意に選択されるが、例えば、シリコン基板、ガラス基板、プラスチックなどが挙げられる。ここで、基板101は、後述するレーザー光に対して耐性があるものが好ましい。
【0016】
基板101上に塗布するレーザーアブレーション加工用組成物は、金属元素を含む微粒子103と、有機分散媒104とを含んでなる。ここで、金属元素を含む微粒子は、金属元素を含む物であれば特に限定されないが、金属元素としては、インジウム、スズ、亜鉛、パラジウム、白金、銀、金、銅、珪素、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、およびアルミニウムが挙げられ、微粒子はこれらの金属そのものの微粒子である他、その酸化物または窒化物などでもよい。各々の金属およびその化合物は単体でも構わないし、用途に応じて合金化されていても、あるいは微粒子が混合されていても構わない。さらには、有機物の微粒子の表面に金属を含む被膜を形成させたものを微粒子として用いることもできる。
【0017】
ここで、微粒子はレーザーアブレーション加工用組成物中で沈殿することを防ぐために、より小さいものであることが好ましく、一方で分散状態を維持するために十分な有機分散媒の含有量を少なくするためにある程度大きいものが好ましい。このために、微粒子の大きさは、0.5〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは2〜50nmである。ここで、微粒子の粒径は電子顕微鏡により観察される投影断面積から計算されたものをいう。
【0018】
また、レーザーアブレーション加工用組成物中の微粒子の濃度は、用いる微粒子の種類や、形成させる機能膜の厚さなどにより任意に選択できるが、一般に、組成物全体に対する微粒子の量が20〜95重量%、好ましくは30〜90重量%である。
【0019】
また、有機分散媒は前記した微粒子を均一に分散させることができるものであり、特に限定されない。一般に有機物はレーザーアブレーションに用いられるレーザー光の波長に対する光吸収があるため、任意に選択することができる。しかしながら、選択される有機分散媒によっては、レーザー光の吸収が少なく、本発明による効果が十分に得られないこともあるため、用いるレーザー光の波長に対する光吸収が大きいほど、レーザー光のエネルギーを低くすることができるので好ましい。具体的には、用いるレーザー光の波長に対して、吸光度が0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。
【0020】
このような有機分散媒は、金属元素を含む微粒子同士を隔離し、凝集を防止する作用を有する。金属微粒子同士が隔離され、凝集しないことにより低いエネルギーのレーザー光照射により基板上から除去できる。
このような有機分散媒は、その形状は特に制限されず、液体状の有機物であっても、また液体または固体の有機物を溶剤に溶解させたものであってもよい。さらには、常温で固体である有機分散媒を高温状態で溶融させ、金属元素を含む微粒子を分散させるものであってもよい。また、有機分散媒が、組成物中で前記した微粒子に配位結合などにより化学的に結合するようなものであってもよい。さらには、有機物が微粒子の表面に吸着または結合などして、微粒子表面を被覆するものであってもよい。
【0021】
このような有機分散媒の例のひとつは、オレフィンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、カルバゾール、クマリン、およびベンゾキノンなどの芳香族炭化水素ならびにこれらの誘導体を含む有機化合物である。これらは、単独で有機分散媒として利用できる。
【0022】
有機分散媒の他の例は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの有機重合体またはそのプレポリマーを溶融または適切な溶剤に溶解させたものである。必要に応じて用いられる溶剤は特に限定されないが、そのレーザーアブレーション加工用組成物の特性および後述の塗布方法に応じて、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などの有機溶媒から選択される。ここで、後述するように、レーザー光照射に先立って、レーザーアブレーション加工用組成物の層を硬化させるために、有機分散媒に必要に応じて任意の架橋剤を添加しておくこともできる。
【0023】
有機分散媒の他の例は、界面活性剤である。用いられる界面活性剤は、金属元素を含む微粒子の表面に電荷の作用で配向したり、化学的に結合をして、微粒子を相互に隔離した状態で微粒子を有機分散媒中に分散させる。用いられる界面活性剤は、微粒子の種類などに応じて適切に選択されるが、具体的には非イオン性界面活性剤(例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸アミド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、およびアルカノールアミン脂肪酸アミドなど)、アニオン性界面活性剤(例えば脂肪族カルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、および高級アルコールリン酸エステル塩)、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤などが挙げられる。なお、界面活性剤を用いる場合には、一般的に溶媒に溶解させて用いるが、用いられる溶媒は水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などの有機溶媒から選択される。
【0024】
有機分散媒のさらなる例は、金属と結合し得る化合物である。このような化合物は前記した界面活性剤と同様に金属元素を含む微粒子の表面に化学的に結合をして、微粒子を相互に隔離した状態で微粒子を有機分散媒中に分散させる作用を有する。このような化合物としては、例えばキレート化合物(例えばポルフィリン、フタロシアニン、2−アミノエタノール、グリシルグリシン、アセチルアセトン、エチルアセチルアセトン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸など)、金属と反応して金属表面を修飾する化合物(例えば、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ハロゲン化アルキルなど)が挙げられる。より具体的には、ラウリルスルホン酸塩、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸塩、ノボラック樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレングリコールなどが好適に用いられる。これらの化合物を有機分散媒として用いる場合には、界面活性剤と同様、一般的に溶媒に溶解して用いる。
【0025】
本発明において、レーザーアブレーション加工用組成物は前記の成分を含んでなるものであるが、その調製方法は特に限定されない。すなわち、金属元素を含む微粒子を有機分散媒に適切な方法、例えば撹拌や超音波分散等、で混合させるほか、例えば可溶性金属塩を溶媒中に溶解させてから、酸化または還元反応により微粒子を析出させてもよい。
【0026】
またこのレーザーアブレーション加工用組成物には、塗布性の改善を目的とした界面活性剤やレベリング剤など、焼成促進のための触媒などを添加することもできる。
【0027】
前記したレーザーアブレーション加工用組成物を基板101に塗布する方法としては、スピン塗布、スリット塗布、スプレイ塗布、ロール塗布、ディップ塗布、インクジェット塗布、スクリーン印刷など各種の塗布法が利用可能であり、特に制限されない。塗布により形成されるレーザーアブレーション加工用組成物の層102の厚さは、その微粒子濃度や形成させる機能膜の厚さ、用いるレーザー光の種類やエネルギーにより変化するが、一般に、0.05〜1000μm、好ましくは0.1〜500μmである。
【0028】
基板上にレーザーアブレーション加工用組成物の層を形成させた後、有機分散媒が溶剤を含む場合には、必要に応じて加熱により溶媒を乾燥する事ができる。この場合、一般には50〜150℃の乾燥が望ましい。また、有機分散媒が硬化性の重合体を含んでいたり、重合体プレポリマーを含んでいる場合には、加熱、あるいは曝射露光により硬化あるいは重合させることもできる。この場合の加熱または露光条件は、用いる有機分散媒の種類などに依存する。
【0029】
この後レーザーアブレーション加工用組成物の層102に、レーザー光を像様に照射する(図1(b))。用いるレーザーとしては、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザー(YAGレーザー)、半導体励起固体レーザー(DPSS)、エキシマレーザーなどが挙げられる。レーザーはポイントビームで照射し所望のパターンを描画してもよいし、投影光学系の中にマスクを設置しパターンを直接描画してもよい。図1に示した例ではマスク105を用いた露光を示している。照射強度、時間は装置の特性、被加工物に応じて適宜調整することができる。
【0030】
またレーザー光照射を行う雰囲気は、用いるレーザーアブレーション加工用組成物の種類などにより任意に選択できるが、例えば、大気中、非活性ガス中、反応性ガス中、溶液中、真空中などを選択することができる。
【0031】
レーザーアブレーション加工後は、レーザー照射部分が除去された機能性膜の前躯体膜が得られる(図1(c))。この前躯体膜を焼成することによって膜中有機成分の昇華または分解等が起こり、機能性微粒子同士の融合が発生し結果として、パターン化された機能膜を得ることができる(図1(d))。図1においては、理解しやすいように微粒子103が初期の形状を維持しているように示されているが、微粒子が反応または溶融して、均一な機能膜を形成してもよい。焼成温度や時間は用いられるレーザーアブレーション加工用組成物の成分、微粒子の種類、形成される機能膜の厚さなどによって最適値が異なるが、一般に150〜1000℃、好ましくは150〜600℃、で10分〜10時間、好ましくは10分〜120分焼成を行う。
【0032】
また焼成前、もしくは焼成中に、有機成分を除去し焼成を容易にする目的で、レーザーアブレーション加工用組成物の層102に紫外線を照射することも可能である。この場合は、アブレーションが起こらない程度に照射強度を調整する必要がある。この目的に用いることができるのは、エキシマレーザー、低圧水銀灯、キセノンランプなどが挙げられる。
【0033】
このようにして形成された機能膜は、金属元素を含むものであるが、用いる微粒子の特性に応じて、種々の用途に用いることができる。例えば、このようにして製造された機能膜を、配線パターンや層間絶縁膜などとして各種の電子部品、例えば半導体素子や表示素子に用いることができる。
【0034】
以下、本発明を例を挙げて説明すると以下の通りである。
【0035】
レーザーアブレーション加工用組成物1の作製
純水500gにラウリルスルホン酸ナトリウム10g、硝酸銀25gを加え完全に溶解した後、還元剤としてホルムアルデヒド2gを加えた。十分撹拌しながらアンモニアガスを吹き込み、銀コロイド水溶液を得た。その後電気透析により分散剤由来のアニオンを除去し、金属分重量濃度を40%の水溶液とした。平均粒径20nmの銀分散液が得られた。
【0036】
レーザーアブレーション加工用組成物2の作製
市販のインジウム・スズ酸化物微粒子(平均粒径50nm)50g、ノボラック樹脂(平均分子量Mw=3000)10g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)30gを混ぜ合わせた。
【0037】
レーザーアブレーション加工用組成物3の作製
市販のシリコン窒化物微粒子(平均粒径100nm)50g、ポリスチレン樹脂(平均分子量Mw=3500)20g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)30gを混ぜ合わせた。
【0038】
レーザーアブレーション加工用組成物4の作製
市販のシリコン酸化物微粒子(平均粒径100nm)50g、ポリスチレン樹脂(平均分子量Mw=3500)20g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)30gを混ぜ合わせた。
【0039】
レーザーアブレーション加工用組成物5の作製
市販の酸化亜鉛微粒子(平均粒径150nm)50g、p−ターフェニル1g、ポリエチレングリコール(平均分子量Mw=3500)9g、溶媒としてトルエン30gを混ぜ合わせた。
【0040】
実施例1
ガラス基板上にレーザーアブレーション加工用組成物1をスプレー法で塗布し、50℃のホットプレートで2分間乾燥させた。基板を可動ステージに固定後、KrF(波長248nm)エキシマレーザーの収束光(パルスエネルギー200mJ、繰り返し周波数50Hz)を当該膜に照射した。この時基板を固定したステージを1cm/秒で移動させた。結果、レーザー照射エリアのみレーザーアブレーション加工用組成物1が除去された良好なパターン膜が得られた。さらにこの膜を250℃に設定されたホットプレートで30分間焼成したところ、有機成分が分解・昇華し銀の薄膜が得られた。
【0041】
実施例2
ガラス基板上にレーザーアブレーション加工用組成物2をスピン法で塗布し、80℃のホットプレートで2分間乾燥させた。基板を可動ステージに固定後、KrF(波長248nm)エキシマレーザーの収束光(パルスエネルギー200mJ、繰り返し周波数50Hz)を当該膜に照射した。この時基板を固定したステージを1cm/秒で移動させた。結果、レーザー照射エリアのみレーザーアブレーション加工用組成物2が除去された良好なパターン膜が得られた。さらにこの膜を500℃に設定された焼成炉で60分間焼成したところ、有機成分が分解・昇華しインジウム・スズ酸化物の薄膜が得られた。
【0042】
実施例3
シリコン基板上にレーザーアブレーション加工用組成物3をスプレー法で塗布し、80℃のホットプレートで2分間乾燥させた。基板を可動ステージに固定後、KrF(波長248nm)エキシマレーザーの収束光(パルスエネルギー150mJ、繰り返し周波数50Hz)を当該膜に照射した。この時基板を固定したステージを1cm/秒で移動させた。結果、レーザー照射エリアのみレーザーアブレーション加工用組成物3が除去された良好なパターン膜が得られた。さらにこの膜を400℃に設定された焼成炉で60分間焼成したところ、有機成分が分解・昇華しシリコン窒化物の薄膜が得られた。
【0043】
実施例4
ガラス基板上にレーザーアブレーション加工用組成物4をスプレー法で塗布し、80℃のホットプレートで2分間乾燥させた。基板を可動ステージに固定後、KrF(波長248nm)エキシマレーザーの収束光(パルスエネルギー150mJ、繰り返し周波数50Hz)を当該膜に照射した。この時基板を固定したステージを1cm/秒で移動させた。結果、レーザー照射エリアのみレーザーアブレーション加工用組成物4が除去された良好なパターン膜が得られた。さらにこの膜を400℃に設定された焼成炉で60分間焼成したところ、有機成分が分解・昇華しシリコン酸化物の薄膜202が得られた(図2(a))。このとき、レーザーアブレーションにより組成物が除去された部分のガラス基板201の表面は、特に損傷が認められなかった。
【0044】
実施例5
シリコン基板上にレーザーアブレーション加工用組成物5をスプレー法で塗布し、80℃のホットプレートで2分間乾燥させた。基板を可動ステージに固定後、KrF(波長248nm)エキシマレーザーの収束光(パルスエネルギー100mJ、繰り返し周波数50Hz)を当該膜に照射した。この時基板を固定したステージを1cm/秒で移動させた。結果、レーザー照射エリアのみレーザーアブレーション加工用組成物5が除去された良好なパターン膜が得られた。さらにこの膜を400℃に設定された焼成炉で60分間焼成したところ、有機成分が分解・昇華し酸化亜鉛の薄膜が得られた。
【0045】
比較例1
スパッタ法によりガラス基板上に銀の薄膜を形成した。この試料に対し実施例1と同様の条件でアブレーションを行ったが、レーザー照射部に残膜が発生し十分なパターンが形成できなかった。
【0046】
比較例2
スパッタ法によりガラス基板上にインジウム・スズ酸化物の薄膜を形成した。この試料に対し実施例2と同様の条件でアブレーションを行ったが、レーザー照射部に残膜が発生し十分なパターンが形成できなかった。
【0047】
比較例3
スパッタ法によりシリコン基板上にシリコン窒化物の薄膜を形成した。この試料に対し実施例3と同様の条件でアブレーションを行ったが、レーザー照射部に残膜が発生し十分なパターンが形成できなかった。
【0048】
比較例4
スパッタ法によりガラス基板上にシリコン酸化物の薄膜を形成した。この試料に対し実施例4と同様の条件でアブレーションを行ったが、レーザー照射部に残膜が発生し十分なパターンが形成できなかった。基板移動速度を1mm/秒としたところ、シリコン酸化物はパターニングできたが、図2(b)に示すとおり、同時に下地のガラス基板201も一部削られていた。
【0049】
比較例5
スパッタ法によりシリコン基板上に酸化亜鉛の薄膜を形成した。この試料に対し実施例5と同様の条件でアブレーションを行ったが、レーザー照射部に残膜が発生し十分なパターンが形成できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による機能膜の製造法を説明するための概念断面図。
【図2】実施例4および比較例4により得られた機能膜の概念断面図。
【符号の説明】
【0051】
101 基板
102 レーザーアブレーション加工用組成物の層
103 微粒子
104 有機分散媒
105 マスク
202 シリコン酸化物薄膜
201 ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、金属元素を含んでなる微粒子が有機分散媒中に均一に分散されたレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して前記組成物の層を形成させ、
前記組成物の層にレーザー光を像様に照射して、照射された部分の前記組成物を除去し、
レーザー光照射後、基板上に残留する前記組成物の層を焼成する、
ことを含んでなることを特徴とする、レーザーアブレーションによる機能膜の製造法。
【請求項2】
前記の金属元素を含んでなる微粒子が、金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記金属元素を含んでなる微粒子の粒径が、0.5〜200nmである、請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
前記有機分散媒が、前記レーザー光の波長における吸光度が0.3以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項5】
前記有機分散媒が、有機重合体またはそのプレポリマーを含んでなるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項6】
前記有機分散媒が、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項7】
前記レーザー光の照射の前に、前記組成物の層に含まれる溶剤の少なくとも一部を乾燥により除去する、請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
前記有機分散媒が、架橋剤をさらに含んでなる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
基板上にレーザーアブレーション法によりパターン化された機能膜を製造するのに用いるレーザーアブレーション加工用組成物であって、金属元素を含んでなる微粒子と、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなることを特徴とする、レーザーアブレーション加工用組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法で製造された機能膜を具備してなる電子部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−13809(P2008−13809A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185863(P2006−185863)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(504435829)AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社 (79)
【Fターム(参考)】