説明

不揮発性半導体メモリ

【課題】微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制できるNAND型フラッシュメモリを提供する。
【解決手段】不揮発性半導体メモリは、素子分離絶縁膜10によって区画された素子領域1と、2つの拡散層間の素子領域1表面上に設けられるトンネル絶縁膜2Aと、フローティングゲート電極3Aの上面上に設けられる絶縁体4Aと、フローティングゲート電極3Aの側面上に設けられた電極間絶縁膜5Aと、フローティングゲート電極3Aの上面上に設けられる第1の絶縁体4Aと、絶縁体4A及び電極間絶縁膜5Aを介して、フローティングゲート電極3A上に設けられるコントロールゲート電極5Aとを具備し、絶縁体4Aの膜厚T1は電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚く、電極間絶縁膜5Aは絶縁体4A上又は素子分離絶縁膜10上のうち少なくともいずれか一方に、スリットを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体メモリに係り、特に、フラッシュメモリに関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性半導体メモリ、例えば、NAND型フラッシュメモリは、大容量かつ不揮発という利点を有し、近年では、携帯オーディオ機器など、様々な電子機器に使用されはじめている。
【0003】
NAND型フラッシュメモリは記憶容量を大きくするため、メモリセルの微細化が推し進められている。メモリセルの微細化が推進されるにつれて、これまでの素子サイズでは問題とはならなかった素子特性の劣化が、微細化されたメモリセルでは顕著に現れはじめ、その劣化が、メモリセル及びフラッシュメモリ全体の動作に大きな影響を及ぼしている。
【0004】
例えば、通常のフラッシュメモリにおいて、ワード線の延在方向に隣接するメモリセルは、電極間絶縁膜及びワード線としてのコントロールゲート電極を共有している。電極間絶縁膜が積層構造を有する場合、電子が積層された2つの絶縁膜界面を移動することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電荷の移動が、ワード線延在方向に隣接するメモリセルに対して、メモリセルのしきい値電圧(データ)の変動を引き起こし、メモリセルのデータリテンション特性が劣化する。メモリセルの微細化に伴って、隣接セルの間隔も小さくなるため、データリテンション特性の劣化も顕著になっている。
【特許文献1】特開2001−168306
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例に関わる不揮発性半導体メモリは、第1方向に隣接する素子分離絶縁膜が埋め込まれた素子分離領域によって区画される素子領域と、前記素子領域内に設けられた2つの拡散層と、前記2つの拡散層間の前記素子領域表面上に設けられるトンネル絶縁膜と、前記トンネル絶縁膜上に設けられるフローティングゲート電極と、前記フローティングゲート電極の上面上に設けられる第1の絶縁体と、前記第1の絶縁体上、前記フローティングゲート電極の前記第1方向の側面上及び前記素子分離絶縁膜上に設けられた電極間絶縁膜と、前記第1方向に延在し、前記第1の絶縁体及び前記電極間絶縁膜を介して、前記フローティングゲート電極を覆うコントロールゲート電極と、を具備し、前記第1の絶縁体の膜厚は、前記電極間絶縁膜の膜厚よりも厚く、前記電極間絶縁膜は、前記第1の絶縁体上又は前記素子分離絶縁膜上のうち少なくともいずれか一方において、スリットを有している、ことを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための形態について詳細に説明する。
【0009】
1. 概要
本発明の実施形態は、不揮発性半導体メモリに係り、特に、フラッシュメモリに関する。本発明の実施形態において、フラッシュメモリを構成するメモリセルは、フローティングゲート電極上にコントロールゲート電極が積層されたスタックゲート構造を有している。
【0010】
メモリセルのフローティングゲート電極のチャネル幅方向(第1の方向)の側面上には、電極間絶縁膜が設けられる。この電極間絶縁膜を介して、フローティングゲート電極のチャネル幅方向の側面は、コントロールゲート電極によって覆われる。
【0011】
フローティングゲート電極の上面上には、第1の絶縁体が設けられ、この絶縁体がフローティングゲート電極上面とコントロールゲート電極との間に介在した構造になっている。第1の絶縁体の膜厚は、電極間絶縁膜の膜厚よりも厚い。
【0012】
本発明の実施形態のメモリセルは、絶縁体がフローティングゲート電極上部とコントロールゲート電極との間に設けられることによって、フローティングゲート電極上部とコントロールゲート電極との間にカップリング容量が小さくなる。
【0013】
それゆえ、本発明の実施形態によれば、フローティングゲート電極の上部の形状に起因するメモリセルのリーク耐性の劣化やカップリング容量のばらつきは、生じにくい。
【0014】
また、本発明の実施形態において、電極間絶縁膜はスリットを有している。このスリットは、フローティングゲート電極上に設けられた絶縁体上もしくは素子分離絶縁膜上のうち、少なくともいずれか一方において、電極間絶縁膜内に設けられる。
このように、スリットが電極間絶縁膜内に設けられることで、電荷が電極間絶縁膜内を移動するのを抑制できる。それゆえ、その電荷の移動に起因して、メモリセルのデータリテンション特性が劣化することが、低減される。
【0015】
また、スリットが、素子分離絶縁膜上の電極間絶縁膜が設けられた場合には、チャネル幅方向に隣接する2つのメモリセル間において、電極間絶縁膜が除去された構造となる。それゆえ、電極間絶縁膜に起因する寄生容量は低減され、チャネル幅方向に隣接する2つのメモリセル間の相互干渉が抑制される。
【0016】
以上のように、本発明の実施形態に係る不揮発性半導体メモリによれば、メモリセルの素子特性の劣化を抑制できる。
【0017】
2. 実施形態
(1) 第1の実施形態
(a) 構造
図1乃至図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリの構造について、説明する。本実施形態においては、不揮発性半導体メモリとして、フラッシュメモリを例に、説明する。
【0018】
図1は、フラッシュメモリのメモリセルアレイの平面図を示している。図2は図1のII−II線に沿う断面図であり、図3は図1のIII−III線に沿う断面図である。尚、図2は、メモリセルMCのチャネル幅方向(x方向)に対応し、図3はメモリセルMCのチャネル長(y方向)に対応している。
【0019】
図1に示すように、フラッシュメモリのメモリセルアレイにおいて、半導体基板1表面領域は、素子分離領域STIと、x方向(第1の方向)に隣接している2つの素子分離領域に挟み込まれた素子領域(アクティブ領域)AAから構成されている。素子分離領域STIと素子領域AAはy方向(第2の方向)に延びている。素子領域AA上には、複数のメモリセルMC及び選択トランジスタSTD,STSが設けられる。素子分離領域STIには、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)構造を有する素子分離絶縁膜が設けられている。
【0020】
複数のメモリセルMCは、素子領域AA上に配置され、x方向と直行するy方向に沿って直列接続されている。以下、直列接続された複数のメモリセルのことを、メモリセルストリングと呼ぶ。
【0021】
そして、このメモリセルストリングの一端及び他端には、選択トランジスタSTD,STSが配置され、その選択トランジスタSTD,STSは隣接するメモリセルに直列接続された構成となっている。以下では、メモリセルストリングとその一端及び他端にそれぞれ接続された選択トランジスタSTD,STSを含む構成のことを、メモリセルユニットと呼ぶ。
【0022】
x方向に隣接している複数のメモリセルMCは、x方向に延びているワード線WL1〜WLnにそれぞれ接続されている。x方向に隣接している選択トランジスタSTD,STSは、x方向に延びている選択ゲート線SGL1,SGL2にそれぞれ接続されている。
【0023】
1つのメモリセルユニットの一端には、y方向に延びている1つのビット線(図示せず)が、ビット線コンタクトBCを経由して、接続される。また、1つのメモリセルユニットの他端には、x方向に延びている1つのソース線(図示せず)が、ソース線コンタクトSCを経由して、接続される。
【0024】
図2及び図3に示すように、本実施形態で用いられるメモリセルMCは、フローティングゲート電極3A上にコントロールゲート電極6Aが積層されたスタックゲート構造のMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)トランジスタである。
半導体基板1(素子領域AA)内には、ウェル領域(図示せず)が設けられている。メモリセルMCは、このウェル領域上に、形成される。
【0025】
ゲート絶縁膜2Aは、半導体基板1表面上に設けられる。メモリセルMCにおいて、このゲート絶縁膜2Aはトンネル絶縁膜として機能する。以下、メモリセルMCのゲート絶縁膜2Aのことをトンネル絶縁膜2Aと呼ぶ。
【0026】
フローティングゲート電極3Aは、半導体基板1表面のトンネル絶縁膜2A上に設けられている。このフローティングゲート電極3Aは、メモリセルに書き込まれたデータを保持するための電荷蓄積層として機能し、例えば、ポリシリコン膜から構成されている。
【0027】
x方向に互いに隣り合うメモリセルMCにおいて、それらのフローティングゲート電極3Aは、半導体基板内に埋め込まれた素子分離絶縁膜10によって、電気的に絶縁されている。素子分離絶縁膜10の上端は、フローティングゲート電極3Aの上端よりも、半導体基板1側に後退している。
【0028】
フローティングゲート電極3A上面上には、第1の絶縁体4Aが設けられている。また、フローティングゲート電極3Aのx方向に沿う側面上には、電極間絶縁膜5Aが設けられている。尚、電極間絶縁膜5Aは、素子分離絶縁膜10上にも設けられている。
【0029】
電極間絶縁膜5Aは、スリットを有している。図2及び図3に示す例において、電極間絶縁膜5A内に設けられたスリットは、絶縁体4A上面上に設けられている。このスリットによって、メモリセルMCは、絶縁体4A上面が電極間絶縁膜5Aによって覆われない構造になっている。
また、電極間絶縁膜5Aは、例えば、複数の絶縁膜50,51,52を含む積層構造を有している。図2及び図3に示す例では、電極間絶縁膜5Aの構造は、絶縁膜51が、2つの絶縁膜50,52に挟み込まれた構造になっている。積層構造の電極間絶縁膜5Aの膜厚T2は、例えば、8nm〜20nm程度である。
絶縁膜51には、例えば、窒化シリコン(SiN)、または、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化タンタル(Ta5)、酸化ランタニウム(La)、LaLiO、酸化ジルコニア(ZrO)、酸化イットリウム(Y)などの高誘電体膜が用いられる。尚、上記の酸化膜からなる高誘電体膜内に、さらに、窒素やシリコンを含んでいても良い。
絶縁膜50,52は、例えば、絶縁膜51よりも誘電率が低い絶縁膜であって、主に、シリコン酸化膜が用いられる。尚、絶縁膜51が高誘電体膜である場合には、絶縁膜50,52は、シリコン窒化膜を用いてもよい。
尚、本実施形態において、電極間絶縁膜5Aは3層構造を有しているが、これに限定されず、複数の絶縁膜が4層以上に積層された構造でもよいのは、もちろんである。また、電極間絶縁膜5Aは、高誘電体膜の単層膜でもよい。
【0030】
絶縁体4Aは、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、或いは、アルミニウム酸化膜のうち少なくともいずれか1つが用いられる。尚、絶縁体4Aに用いられる材料は、これらに限定されず、他の絶縁材料を用いてもよい。この絶縁体4Aの膜厚T1は、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚い。絶縁体4Aにシリコン窒化膜が用いられた場合には、その膜厚T1は、例えば、20nm以上、40nm以下、且つ、電極間絶縁膜5Aの膜厚より厚くなるように形成される。尚、絶縁体4Aのx方向の側面上には、例えば、電極間絶縁膜5Aが設けられている。
【0031】
ここで、図4に示すように、素子分離絶縁膜10及び電極間絶縁膜5Aに対する加工条件によって、絶縁体4Aの上面の中央部が平坦で、絶縁体4Aの上面の端部が曲面となって、絶縁体4Aの形状がほぼ台形状になる場合がある。この場合、絶縁体4Aの膜厚T1は、絶縁体4Aの下面と絶縁体4Aの上面の最も上側(ビット線BL側)の位置までの厚さである。また、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2は、フローティングゲート電極3Aの側面上に形成された電極間絶縁膜5Aの厚さである。
【0032】
コントロールゲート電極6Aは、絶縁体4A及び電極間絶縁膜5A上に、設けられている。コントロールゲート電極6Aは、電極間絶縁膜5Aを介して、フローティングゲート電極3Aのx方向に沿う側面を覆っている。尚、上記のように、が絶縁体4A上において、電極間絶縁膜5A内にスリットが設けられているため、コントロールゲート電極6Aは絶縁体4A上面に直接接触している。
このコントロールゲート電極6Aは、電気抵抗を減らすため、例えば、シリサイド膜が用いられている。但し、それに限定されるものではなく、コントロールゲート電極6Aは、ポリシリコン膜の単層構造や、ポリシリコン膜とこのポリシリコン膜上にシリサイド膜とが積層された2層構造(ポリサイド構造)となってもよい。
シリサイド膜としては、例えば、タングステンシリサイド膜(WSi)、モリブデンシリサイド膜(MoSi)、コバルトシリサイド膜(CoSi)、チタンシリサイド膜(TiSi)及びニッケルシリサイド膜(NiSi)などが用いられる。
【0033】
コントロールゲート電極6Aはワード線WLとして機能し、x方向に隣接するメモリセル間で共有されている。そのため、コントロールゲート電極6Aは、フローティングゲート電極3A上だけではなく、電極間絶縁膜4を介して、素子分離絶縁膜10上にも設けられている。
【0034】
半導体基板1内には拡散層7Aが設けられ、拡散層7AはメモリセルMCのソース/ドレイン領域として機能する。以下では、この拡散層7Aのことを、ソース/ドレイン拡散層と呼ぶ。ソース/ドレイン拡散層7Aは、y方向(チャネル長方向)に互いに隣接するメモリセルMCで共有されている。これによって、複数のメモリセルMCが直列接続され、1つのメモリセルストリングが構成される。
【0035】
直列接続された複数のメモリセルMC(メモリセルストリング)の一端及び他端には、選択トランジスタSTD,STSがそれぞれ設けられている。
【0036】
選択トランジスタSTD,STSは、メモリセルMCと同時工程で形成される。そのため、選択トランジスタSTD,STSのゲート構造もメモリセルMCと同様に、上部ゲート電極6Bが、絶縁体4B及び電極間絶縁膜5Bを介して、下部ゲート電極3A上に積層された構造となっている。下部ゲート電極3Bは、フローティングゲート電極3Aと同じ構成を有し、上部ゲート電極6Bは、コントロールゲート電極6Bと同じ構成を有している。
但し、選択トランジスタSTD,STSにおいて、絶縁体4Bは開口部Qを有し、この開口部Qを介して、上部ゲート電極6Bとゲート絶縁膜2B上の下部ゲート電極3Bが接続されている。
【0037】
拡散層7A,7D,7Sは、選択トランジスタSTD,STSのソース/ドレイン領域として機能する。選択トランジスタSTD,STSは、ソース/ドレイン拡散層7Aをy方向に隣接するメモリセルMCと共有している。これによって、複数のメモリセルMCと選択トランジスタSTD,STSとがy方向に沿って直列接続され、1つのメモリセルユニットが構成される。
【0038】
メモリセルユニットのドレイン側に設けられた選択トランジスタSTDにおいて、その選択トランジスタSTDのドレイン拡散層7Dは、層間絶縁層15内に埋め込まれたビット線コンタクト部BCに接続されている。そして、このビット線コンタクトBCは、層間絶縁層16内に設けられたメタル配線M0及びビアコンタクトVCを経由して、ビット線BLに接続される。
【0039】
また、メモリセルユニットのソース側に設けられた選択トランジスタSTSにおいて、その選択トランジスタのソース拡散層7Sは、層間絶縁層15内に埋め込まれたソース線コンタクトSCを介して、ソース線SLに接続される。
【0040】
図2及び図3に示すように、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリとしてのフラッシュメモリは、フローティングゲート電極3Aの上面上に、第1の絶縁体4Aが設けられ、この絶縁体4Aの膜厚T1が、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚いことを特徴とする。その結果、電極間絶縁膜5Aが、フローティングゲート電極3Aの上面に直接接触するように形成された場合と比較して、フローティングゲート電極3A上部とコントロールゲート電極6Aとの間に印加される電界強度を緩和及び低減できる。
【0041】
また、本実施形態において、電極間絶縁膜5Aは、絶縁体4A上において、スリットが設けられている。図2及び図3に示す例では、電極間絶縁膜5Aが有するスリットは、絶縁体4A上に設けられている。この例においては、スリットによって、電極間絶縁膜5Aは絶縁体4A上面上で切断され、絶縁体4A上面から除去されている。
【0042】
本実施形態のように、フローティングゲート電極3A上部とその上部と対向するコントロールゲート電極6Aとの間に生じるカップリング容量が、フローティングゲート電極3A側部とその側部と対向するコントロールゲート電極6Aとの間に生じるカップリング容量と比較して、非常に小さくなる。
本実施形態においては、電荷蓄積層であるフローティングゲート電極3Aに電荷を注入する又はフローティングゲート電極3Aから電荷を放出するためのカップリング容量は、フローティングゲート電極3Aのx方向(チャネル幅方向)の側部とその側部と対向するコントロールゲート電極6Aとの間に発生する容量によって、確保されている。尚、メモリセルのカップリング容量を確保するため、膜厚が厚いフローティングゲート電極3Aを用いて、そのフローティングゲート電極3Aのx方向の側面とコントロールゲート電極6Aとの対向面積を大きくすることが好ましい。
【0043】
このように、本実施形態におけるフラッシュメモリのメモリセルMCは、フローティングゲート電極3A側部のカップリング容量を主に利用して、データの書き込み/消去を実行する。このため、メモリセルの微細化によりフローティングゲート電極3A上部の曲率半径が小さくなる場合においても、コントロールゲート電極6Aとフローティングゲート電極3A上部との間に絶縁体4Aが形成されることによって、フローティングゲート電極3A上部に電界が集中するのを抑制できる。その結果として、フローティングゲート電極3A上部とコントロールゲート電極6Aとの間に印加される電界強度を低減できる。
それゆえ、本実施形態においては、メモリセルのリーク耐性が、メモリセルの微細化に伴って劣化するのを、防止できる。
【0044】
また、本実施形態のメモリセルは、フローティング電極3Aの上部は、メモリセルのカップリング容量に大きく寄与しなくなる。このため、フローティングゲート電極3A上部の形状ばらつきによって、メモリセルアレイ内に設けられる複数のメモリセルのカップリング容量がばらつくのを低減できる。それゆえ、本実施形態においては、メモリセルの書き込み電位や消去電位など、メモリセルの素子特性のばらつきを抑制できる。
【0045】
さらに、絶縁膜51に高誘電体膜を用いた場合、誘電率の高い絶縁膜51が絶縁体4A上面上から除去されているため、この高誘電体膜に起因して、カップリング容量がばらつくのを低減でき、メモリセルの素子特性がばらつくのを抑制できる。
【0046】
したがって、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)によれば、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制できる。また、本実施形態によれば、素子特性のばらつきを抑制することも可能である。
【0047】
(b) 第1の製造方法
以下、図2乃至図9を用いて、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法の一例について、説明する。図2、図5、図7及び図9は、メモリセルアレイのy方向に沿う断面を示している。また、図3、図6、図8及び図10は、メモリセルアレイのx方向に沿う断面を示している。
【0048】
はじめに、図5及び図6に示すように、半導体基板1表面に、メモリセルのトンネル絶縁膜となる絶縁膜2が、例えば、熱酸化法を用いて形成される。この絶縁膜2は、選択トランジスタのゲート絶縁膜にもなる。
絶縁膜2上には、メモリセルのフローティングゲート電極及び選択トランジスタの下部ゲート電極となる第1の導電層3が、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、形成される。この導電層3は、例えば、ポリシリコン層である。
【0049】
そして、第1の絶縁体4が、例えばCVD法を用いて、導電層3上に堆積される。絶縁体4は、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜のうち少なくともいずれか1つを用いることができる。尚、絶縁体4に用いられる材料は、これらに限定されず、他の絶縁材料を用いてもよい。絶縁体4の膜厚は、後の工程で形成される電極間絶縁膜の膜厚よりも厚くなるように、形成される。例えば、絶縁体4にシリコン窒化膜が用いられた場合には、膜厚T2は、例えば、20nm以上、50nm以下である。
【0050】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、絶縁体4がパターニングされる。形成されたパターンに基づいて、導電層3、絶縁膜2及び半導体基板1が、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、順次エッチングされ、y方向に延在する溝Uが、半導体基板1内に形成される。この溝U内に、素子分離絶縁膜10が埋め込まれ、これによって、素子分離領域STIとその領域STIによって区画された素子領域AAが形成される。
そして、素子分離絶縁膜10の上面は、絶縁体4の上面と一致するように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて平坦化される。平坦化処理の後、例えば、RIE法を用いたエッチバックによって、素子分離絶縁膜10の上面がエッチングされる。これによって、素子分離絶縁膜10の上面は、フローティングゲート電極となる第1の導電層3の上面よりも、半導体基板1側に後退され、導電層3のx方向の側面は露出する。
【0051】
ここで、平坦化処理の後、例えば、RIE法を用いたエッチバックによって、絶縁体4の上部もエッチングされる場合がある。この場合、絶縁体4の上面の端部が曲面となる。この後、後述する絶縁体4上の絶縁膜5に対するエッチングによって、絶縁体4の上部は、ほぼ平坦になる。この結果として、絶縁体4の形状は、図4に示すように、ほぼ台形状になる。
【0052】
図7及び図8に示すように、電極間絶縁膜となる絶縁膜5が、絶縁体4上及び素子分離絶縁膜10上に、形成される。この絶縁膜5は、導電層3のx方向に沿う側面上を覆っている。絶縁膜5は、例えば、積層構造を有し、以下では、メモリセルの電極間絶縁膜となる積層構造の絶縁膜5のことを、積層絶縁膜5と呼ぶ。
【0053】
積層絶縁膜5は、図7及び図8に示す例においては、3層構造を有している。積層絶縁膜5は、高誘電率絶縁膜51が、2つの絶縁膜50,52に挟まれた構造となっている。絶縁膜51には、この絶縁膜51の誘電率が、絶縁膜50,52よりも高い材料が用いられる。
積層絶縁膜5の最下層の絶縁膜(第1の絶縁膜)50は、例えば、CVD法を用いて、素子分離絶縁膜10上、絶縁体4上及び導電層3のx方向の側面上に形成される。絶縁膜50は、例えば、シリコン酸化膜が用いられる。
絶縁膜51は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法やCVD法を用いて、絶縁膜50上に形成される。絶縁膜51には、例えば、窒化シリコン(SiN)や、高誘電体膜(High−k膜)が用いられる。高誘電体膜には、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化タンタル(Ta5)、酸化ランタニウム(La)、LaLiO、酸化ジルコニア(ZrO)、酸化イットリウム(Y)などが用いられる。尚、高誘電体膜を構成する酸化膜内に、さらに、窒素やシリコンを含んでいても良い。
積層絶縁膜5の最上層の絶縁膜(第2の絶縁膜)52は、例えば、CVD法を用いて、絶縁膜51上に形成される。絶縁膜52は、例えば、シリコン酸化膜が用いられる。ここで、積層絶縁膜5の膜厚は、絶縁体4の膜厚よりも薄くなるように形成されている。例えば、積層絶縁膜5の膜厚は、10nm程度になっている。
【0054】
そして、積層絶縁膜5上に、第2の導電層61が形成される。導電層61の上面は、例えば、RIE法により、選択的にエッチングされ、絶縁体4上の積層絶縁膜5の上面が露出される。この際、素子分離絶縁膜10上方は、導電層61によって覆われている。
尚、ここでは、RIE法を用いて、積層絶縁膜5上を覆う導電層61を除去したが、これに限定されない。例えば、積層絶縁膜5上面をストッパとしたCMP法によって、導電層61を除去し、積層絶縁膜5上面を露出させても良い。
【0055】
図9及び図10に示すように、例えば、RIE法によって、絶縁体4上の積層絶縁膜5が選択的に除去され、絶縁体4の上面が露出する。これによって、後の工程で、電極間絶縁膜となる積層絶縁体5が、絶縁体4上で切断された構造、すなわち、絶縁体4上の積層絶縁体5にスリットが形成された構造になる。
【0056】
そして、選択トランジスタ形成領域において、開口部Qが絶縁体4内に形成され、導電層3上面が露出される。
【0057】
続いて、上面が露出した絶縁体4上及び導電層61上に、第3の導電層62が、例えば、CVD法を用いて、形成される。第3の導電層62は、例えば、ポリシリコンが用いられる。選択トランジスタ形成領域内において、この導電層62は、開口部Qを経由して、導電層3に接触する。
【0058】
この後、図2及び図3に示すように、メモリセルMC及び選択トランジスタSTD,STSが、それぞれ所定のゲートサイズ(ゲート長)となるように、フォトリソグラフィ技術によって、パターニングされる。そのパターンに基づいて、導電層及び絶縁体が、例えば、RIE法により順次エッチングされる。
【0059】
これによって、メモリセルMCのフローティングゲート電極3A及びコントロールゲート電極6Aが、半導体基板1表面のトンネル絶縁膜2A上に形成される。
【0060】
本実施形態においては、フローティングゲート電極3A上に、絶縁体4Aが形成され、絶縁体4Aがフローティングゲート電極3Aとコントロールゲート電極5Aとの間に介在している。また、積層構造の電極間絶縁膜5Aは、フローティングゲート電極3Aのx方向の側面上に形成される。この電極間絶縁膜5Aを介して、コントロールゲート電極5Aがフローティングゲート電極3Aのx方向に沿う側面を覆っている。
【0061】
メモリセルMCのゲート電極3A,6Aと同時に、選択トランジスタSTD,STSのゲート電極3B,6Bも、半導体基板1表面のゲート絶縁膜2B上に形成される。選択トランジスタSTD,STSにおいては、上部ゲート電極6Bが、開口部Qを経由して、ゲート絶縁膜2B上の下部ゲート電極3Bに接触している。
【0062】
そして、ゲート電極3A,3B,6A,6Bをマスクとして、ソース/ドレイン拡散層7A,7D,7Sが、自己整合的に半導体基板1内に形成される。これによって、メモリセルMC及び選択トランジスタSTD,STSが、メモリセルアレイ内にそれぞれ形成される。
【0063】
ソース/ドレイン拡散層7A,7D,7Sが形成された後、半導体基板1上に、ゲート電極3A,3B,6A,6Bを覆う絶縁膜が形成される。そして、その絶縁膜は、コントロールゲート電極6A及び上部ゲート電極6Bの上面が露出するように、エッチングされる。そして、例えば、金属層(ニッケル(Ni)膜)が、露出したコントロールゲート電極6A及び上部ゲート電極6B上に堆積され、コントロールゲート電極6A及び上部ゲート電極6Bに対して、シリサイド処理が施される。このシリサイド処理によって、金属原子(例えば、Ni原子)が、コントロールゲート電極6A及び上部ゲート電極6B内に熱拡散され、コントロールゲート電極6A及び上部ゲート電極6Bは、ポリシリコン層からシリサイド層になる。尚、このシリサイド処理は、導電層が1つのシリサイド層となるように、導電層6全体をシリサイド化しても良いし、或いは、ポリサイド構造となるように、導電層6の上部のみをシリサイド化してもよい。
【0064】
シリサイド処理の後、露出したコントロールゲート電極6A及び上部ゲート電極6Bの上面を覆うように、絶縁膜が、CVD法を用いて、再度堆積され、第1の層間絶縁層15が形成される。
【0065】
そして、層間絶縁層15に対して平坦化処理が実行された後、コンタクト形成領域内において、ソース線/ビット線コンタクトSC,BCが、拡散層7D,7Sに直接接触するように絶縁層15内に埋め込まれる。
【0066】
そして、ソース線SL及びメタル配線M0が、ソース線/ビット線コンタクトSC,BCにそれぞれ電気的に接続するように、層間絶縁層15上に形成される。
第2の層間絶縁層16が、ソース線SL及びメタル配線M0を覆うように、例えば、CVD法を用いて、層間絶縁層15上に形成される。
層間絶縁層16内に、メタル配線M0に接続されるビアコンタクトVCが埋め込まれた後、ビット線BLが、ビアコンタクトVCに接続されるように、層間絶縁層16上に形成される。
【0067】
以上の製造工程によって、本発明の実施形態に係るフラッシュメモリが完成する。
【0068】
本実施形態においては、フローティングゲート電極3A上に、絶縁体4Aが形成され、メモリセルMCは、絶縁体4Aがフローティングゲート電極3Aとコントロールゲート電極6Aとの間に介在した構造になる。この絶縁体4Aの膜厚T1は、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚くなるように形成される。
【0069】
本実施形態の製造方法においては、フローティングゲート電極3A上に絶縁体4Aを形成することで、フローティングゲート電極3A上部とその上部と対向するコントロールゲート電極6Aとの間に発生するカップリング容量が小さいメモリセルが作製される。
また、本実施形態の製造方法において、絶縁膜51を含む電極間絶縁膜5Aは、絶縁体4A上において、スリットが形成される。その結果として、フローティングゲート電極3A上方から絶縁膜51が除去される。このため、フローティングゲート電極3A上部において、特に、高誘電体膜を用いた場合、絶縁膜51に起因して、カップリング容量が生じることも無い。
【0070】
このため、本実施形態の製造方法によって形成されたメモリセルMCは、電界がフローティングゲート電極3A上部の曲率半径が小さくなった場合においても、フローティングゲート電極3A上部に集中するのを、抑制できる。その結果として、フローティングゲート電極3Aとコントロールゲート電極6Bとの間に、大きな電界強度が印加されることが無くなる。それゆえ、本実施形態の製造方法によれば、メモリセルの微細化を行っても、リーク耐性が劣化しないメモリセルを形成できる。
【0071】
さらに、図5及び図6に示すように、フローティングゲート電極となる導電層3上に、絶縁体4が形成され、この絶縁体4が、素子分離絶縁膜10を形成するためのマスク層として用いられる。この場合、絶縁体4は、メモリセルのカップリング容量を低減させるために導電層3上に残存させるため、マスク層を導電層3上面から剥離する工程がなくなる。このため、マスク層の剥離によって、導電層3(フローティングゲート電極)上部の形状がばらつくのを、抑制できる。また、上記のように、本実施形態の製造方法によって形成されたメモリセルMCは、フローティングゲート電極3Aの上部のカップリング容量が小さくなる。
それゆえ、本実施形態の製造方法によって形成されたメモリセルMCは、フローティングゲート電極3Aの上部の形状のばらつきに起因して、カップリング容量がばらつくのを低減できる。
【0072】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法によれば、微細化に起因するメモリセルの素子特性の劣化を抑制したフラッシュメモリを提供できる。また、本実施形態の製造方法によれば、素子特性のばらつきを抑制したフラッシュメモリを提供できる。
【0073】
(c) 第2の製造方法
ここで、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法において、図2乃至図10を用いて説明した例とは異なった製造方法を、図11及び図12を用いて説明する。尚、上述の製造方法と共通する工程については、詳細な説明は省略する。
ここで述べるフラッシュメモリ製造方法は、素子分離絶縁膜10を形成するための溝Uを形成する工程が、上述の第1の製造方法と異なっている。
【0074】
図5及び図6示す例と同様に、導電層3及び絶縁体4が、半導体基板1上に順次形成される。そして、図11及び図12に示すように、絶縁体4上に、マスク層40が、例えば、CVD法を用いて形成される。尚、絶縁体4とマスク層40との間のエッチング選択比を確保するため、絶縁体4とマスク層40はそれぞれ異なる材料が用いられていることが好ましい。例えば、絶縁体4は酸化シリコン膜を用いて形成され、マスク層40は窒化シリコン膜を用いて形成される。
【0075】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、マスク層40がパターニングされる。形成されたパターンに基づいて、絶縁体4、導電層3、絶縁膜2及び半導体基板1が、例えば、RIE法を用いて、順次エッチングされ、y方向に延在する溝Uが、半導体基板1内に形成される。この溝U内に、素子分離絶縁膜10が埋め込まれ、これによって、素子分離領域STIとその領域STIによって区画された素子領域AAが形成される。
そして、素子分離絶縁膜10の上面は、マスク層40の上面と一致するように、CMP法を用いて平坦化される。平坦化処理の後、例えば、RIE法を用いたエッチバックによって、素子分離絶縁膜10の上面がエッチングされる。これによって、素子分離絶縁膜10の上面は、フローティングゲート電極となる第1の導電層3の上面よりも、半導体基板1側に後退され、導電層3のx方向の側面は露出する。この後、例えば、マスク層40は除去される。
【0076】
マスク層40が除去された場合、電極間絶縁膜となる絶縁膜5が、絶縁体4上及び素子分離絶縁膜10上に、形成される。この後、図7乃至図10に示す工程と同様の工程を用いて、図2及び図3に示されるメモリセルが形成され、本実施形態に係るフラッシュメモリが完成する。
【0077】
尚、マスク層40を除去せずに、絶縁体4上に残存させてもよい。この場合、図13に示すように、フローティングゲート電極3A上面に設けられる絶縁体4A,4Bが、積層構造になる。例えば、上層絶縁体4Bはシリコン窒化膜が用いられ、下層絶縁体4Bはシリコン酸化膜が用いられる。この場合、上層絶縁体4Bと下層絶縁体4Aとから構成される積層体の膜厚T1’が、メモリセルの形成後に、40nmから60nm程度になるように、図11及び図12に示す工程において、絶縁体4及びマスク層40がそれぞれ形成される。
【0078】
上記のように、上層絶縁体4Bは、溝Uを形成する際にマスクとなるので、マスク層(窒化シリコン)が含む電荷トラップに起因して、RIE法による加工ダメージ(例えば、スパッタリング)を受け、絶縁耐圧が低下する。これを補うように、下層絶縁体4Aに電荷トラップの少ないシリコン酸化膜を用いることによって、フローティングゲート電極3Aとコントロールゲート電極6A間の絶縁耐圧を向上させることができる。尚、絶縁体4A,4Bに用いられる材料は、これらに限定されず、他の絶縁材料を用いてもよい。
【0079】
以上、図11及び図12を用いた第2の製造方法によれば、フローティングゲート電極となる導電層3とマスク層20との間に、絶縁体4Aが形成されるため、マスク層40を導電層3上面から直接剥離する工程がなくなる。また、図13に示すメモリセルの構造であれば、マスク層40を剥離する工程は不要である。このため、マスク層40の剥離によって、導電層3(フローティングゲート電極3A)上部の形状がばらつくのを、抑制できる。
【0080】
第1の製造方法で形成されたメモリセルと同様に、本実施形態の第2の製造方法によって形成されたメモリセルMCは、絶縁体4A,4Bをフローティングゲート電極3A上に設けられることによって、フローティングゲート電極3Aの上部に発生するカップリング容量が小さくなる。また、フローティングゲート電極3Aの上部に、過剰な電界強度が印加されるのを、抑制できる。
それゆえ、本実施形態の第2の製造方法によって形成されたメモリセルMCは、フローティングゲート電極3Aの上部の形状のばらつきに起因して、リーク特性の劣化やカップリング容量のばらつきが、生じにくくなる。
【0081】
このように、第2の製造方法を用いて、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)を作製した場合においても、微細化に起因するメモリセルの素子特性の劣化を抑制したフラッシュメモリを提供できる。また、素子特性のばらつきを抑制したフラッシュメモリを提供できる。
【0082】
(2) 第2の実施形態
図14及び図15を用いて、本発明の第2の実施形態について、説明する。尚、第1の実施形態で述べた要素と同一の要素については、同一符号を付し、詳細な説明については、必要に応じて行う。
【0083】
(a) 構造
図14を用いて、本発明の第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の構造について、説明する。尚、本実施形態において、メモリセルMCのy方向(チャネル長方向)の断面構造は、図2に示す構造と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0084】
図14は、本実施形態に係るフラッシュメモリのメモリセルMCのx方向の断面構造を示している。
図14に示すように、フローティングゲート電極3A上には、絶縁体4Aが設けられている。この絶縁体4Aの膜厚T1は、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚い。この絶縁体4Aによって、フローティングゲート電極3A上部とその上部と対向するコントロールゲート電極6Aとの間に発生するカップリング容量は、非常に小さくなる。それゆえ、フローティングゲート電極3A上部の形状に起因して、メモリセルのリーク耐性の劣化やカップリング容量のばらつくのを、抑制できる。
【0085】
図14に示すように、第2の実施形態で述べるメモリセルMCは、電極間絶縁膜5Aが素子分離絶縁膜10上においてスリットを有していることが、第1の実施形態のメモリセルと相違している。このように、スリットが素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5A内に設けられる結果として、電極間絶縁膜5Aが、素子分離絶縁膜10上で切断される。この構造において、電極間絶縁膜5Aはx方向に隣接しているメモリセルで共通に用いられず、電極間絶縁膜5AがメモリセルMC毎に独立して設けられている。
【0086】
これによって、電荷が、電極間絶縁膜5A内、特に、積層された絶縁膜50,51,52の界面に沿って、あるメモリセルからそれに隣接しているメモリセルに移動することが、無くなる。これによって、本実施形態のメモリセルMCは、電極間絶縁膜5A内の電荷の移動に起因して、メモリセルのしきい値電圧が変動することはない。それゆえ、メモリセルのデータリテンション特性が劣化するのを、防止できる。
【0087】
また、本実施形態においては、素子分離絶縁膜10上に、誘電率の高い電極間絶縁膜5Aが存在しないので、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5Aに起因した寄生容量が低減される。それゆえ、その寄生容量によって引き起こされるメモリセル間の相互干渉が、抑制される。
【0088】
さらに、本実施形態においては、コントロールゲート電極6Aが素子分離絶縁膜10上面に直接接触し、x方向に隣接する2つのメモリセルMC間の領域の全体が、導電材で満たされた構造となる。コントロールゲート電極6Aに用いられる導電材(例えば、ポリシリコン又はシリサイド)は、シールド効果を有する。つまり、コントロールゲート電極6Aが、x方向に互いに隣接するメモリセルのフローティングゲート電極3Aに対して、シールド材として機能する。このコントロールゲート電極6Aのシールド効果によって、隣接するメモリセル間の相互干渉をさらに低減できる。
【0089】
したがって、本発明の第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)によれば、第1の実施形態と同様に、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制できる。
【0090】
(b) 製造方法
図14及び図15を用いて、本発明の第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法について、説明する。尚、本実施形態の製造方法においては、メモリセルのx方向に沿う断面の製造工程のみを図示する。また、第1の実施形態で述べた製造工程と共通の工程については、詳細な説明は省略する。
【0091】
はじめに、図5及び図6に示す工程と同様の工程を用いて、半導体基板1表面に形成された絶縁膜2上に、メモリセルのフローティングゲート電極となる第1導電層3、絶縁体4が、順次形成される。尚、絶縁体4の膜厚は、後の工程で形成される積層絶縁膜(電極間絶縁膜)の膜厚よりも厚くなるように、形成される。
そして、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を用いて、溝Uが半導体基板1内に形成された後、その溝U内に、素子分離絶縁膜10が埋め込まれる。素子分離絶縁膜10上面は、エッチバックにより、導電層3上面よりも半導体基板1側に後退される。
【0092】
この後、図15に示すように、電極間絶縁膜となる積層絶縁膜5が、絶縁体4上、素子分離絶縁膜10上及び導電層3側面上に、形成される。そして、形成された電極間絶縁膜5に対して、異方性のRIE法を用いたエッチバックが施される。すると、積層絶縁膜5は、絶縁体4上面上及び素子分離絶縁膜10上面上から除去される。すなわち、素子分離絶縁膜10上の積層絶縁膜5に、スリットが形成される。その一方で、積層絶縁膜5は導電層3側面上に残存する。
これによって、電極間絶縁膜となる積層絶縁膜5が、絶縁体4上面上及び素子分離絶縁膜10上面上において、スリットを有し、積層絶縁膜5が、フローティングゲート電極となる導電層3のx方向に沿う側面上のみに設けられた構造となる。
【0093】
そして、図14に示すように、コントロールゲート電極となる導電層6Aが、例えば、CVD法を用いて、絶縁体4A上、素子分離絶縁膜10上及び積層絶縁膜5A上に形成される。上記のように、積層絶縁膜(電極間絶縁膜)5Aが、絶縁体4A上面及び素子分離絶縁膜上面上から除去されているので、導電層6Aは、絶縁膜4A上面と素子分離絶縁膜10上面と直接接触した構造となる。
【0094】
導電層6Aが形成された後、図2及び図3に示す工程と同様の工程を用いて、ゲート加工され、メモリセルMCのコントロールゲート電極6A及びフローティングゲート電極3Aが形成される。これと同時に、選択トランジスタSTD,STSのゲート電極3B,6Bも形成される。そして、形成されたゲート電極3A,6A,3B,6Bをマスクとして、ソース/ドレイン拡散層7A,7D,7Sが、自己整合的に半導体基板1内に形成される。
コントロールゲート電極6Aに対してシリサイド処理が施された後、層間絶縁層15,16、コンタクトSC,BC及びソース線/ビット線SL,BLが順次形成される。
以上の工程によって、第2の実施形態に係るフラッシュメモリが完成する。
【0095】
本発明の第2の実施形態の製造方法において、第1の実施形態と同様に、フローティングゲート電極3A上に、絶縁体4Aが形成される。この絶縁体4Aの膜厚T1は、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚くなるように、形成される。
このように、本実施形態の製造方法においても、フローティングゲート電極3A上に絶縁体4Aが形成されることによって、フローティングゲート電極3A上部とコントロールゲート電極6Aとの間に発生するカップリング容量が小さいメモリセルを作製される。それゆえ、フローティングゲート電極3A上部の電界集中に起因するリーク耐性の劣化や、フローティングゲート電極3A上部の形状ばらつきに起因するメモリセルのカップリング容量のばらつきを、抑制できる。
【0096】
また、本実施形態で述べた製造方法においては、スリットが素子分離絶縁膜10上に設けられた電極間絶縁膜5A内に形成されるため、電極間絶縁膜5Aは、素子分離絶縁膜10上で切断される。
このため、電極間絶縁膜5A内の電荷が、あるメモリセルからそれに隣接するメモリセルに、電極間絶縁膜5Aを構成している積層された絶縁膜50,51,52の界面に沿って移動することはない。それゆえ、電極間絶縁膜5A内の電荷の移動に起因して、メモリセルのデータリテンション特性が劣化するのを防止できる。
【0097】
本発明の実施形態の製造方法においては、スリットが、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5A内に形成され、電極間絶縁膜5Aが素子分離絶縁膜10上から除去される。これによって、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5Aに起因した寄生容量が低減される。また、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5Aが除去されることによって、x方向に隣接する2つのメモリセルMC間の領域全体が、シールド効果を有するコントロールゲート電極6Aで満たされる。それゆえ、隣接するメモリセル間の相互干渉を抑制できる。
【0098】
したがって、本発明の第2の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法によれば、第1の実施形態と同様に、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制する不揮発性半導体メモリを提供できる。
【0099】
(3) 第3の実施形態
図16及び図17を参照して、本発明の第3の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の構造及び製造方法について、説明する。尚、第1及び第2の実施形態と同じ部材に関しては、同一の符号を付し、詳細な説明については必要に応じて行う。
【0100】
(a) 構造
図16を用いて、第3の実施形態に係るフラッシュメモリの構造について、説明する。尚、本実施形態において、メモリセルMCのy方向(チャネル長方向)の断面構造は、図2に示す構造と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図16は、本実施形態に係るフラッシュメモリのメモリセルMCのx方向の断面構造を示している。
【0101】
本実施形態においては、第2の実施形態と同様に、電極間絶縁膜5Aは、絶縁体4A上面上及び素子分離絶縁膜10上面上において、スリットが設けられ、電極間絶縁膜5Aが絶縁体4A及び素子分離絶縁膜10上で切断された構造になっている。尚、本実施形態においても、絶縁体4Aの膜厚T1は、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚い。
【0102】
本実施形態のメモリセルMCは、第2の絶縁体12Aが、素子分離絶縁膜10上に形成されたスリット内に設けられた構造になっていることが、第2の実施形態のメモリセルと相違している。つまり、コントロールゲート電極6Aと素子分離絶縁膜10との間に、第2の絶縁体12Aが介在した構造になっている。
この絶縁体12Aの誘電率は、電極間絶縁膜5Aの誘電率よりも小さい。より具体的には、絶縁体12Aの誘電率は、電極間絶縁膜5Aが含んでいる絶縁膜51の誘電率よりも小さい。絶縁体12Aには、例えば、シリコン酸化膜や低誘電率膜(Low−k膜)が用いられる。尚、第2の絶縁膜12Aは、第1の絶縁膜4Aと異なる材料が用いられることが、好ましい。
【0103】
フローティングゲート電極3Aのx方向の側面とコントロールゲート電極6Aとの間のカップリング容量が確保されるように、コントロールゲート電極6Aは、電極間絶縁膜5Aを介して、フローティングゲート電極3Aの側面を覆っている。
本実施形態においても、膜厚が十分厚い絶縁体4Aが、フローティングゲート電極3A上に設けられているため、フローティングゲート電極3A上部とコントロールゲート電極6Aとの間に生じるカップリング容量は、非常に小さくなる。それゆえ、第1及び第2の実施形態と同様に、フローティングゲート電極3A上部の形状に起因して、リーク耐性の劣化やカップリング容量のばらつきが、生じにくくなる。
【0104】
上記のように、本実施形態において、電極間絶縁膜5Aは、x方向に隣接しているメモリセルMC間で共有されず、さらに、絶縁体12Aによって電気的に分離されている。これによって、電極間絶縁膜5A内における電荷の移動に起因して、メモリセルのしきい値電圧は変動しない。それゆえ、本実施形態のメモリセルにおいては、メモリセルのデータリテンション特性の劣化を防止できる。
【0105】
そして、本実施形態においては、電極間絶縁膜5Aが素子分離絶縁膜10上から除去され、絶縁膜51よりも小さい誘電率を有する絶縁体12Aが、素子分離絶縁膜10上に設けられている。これによって、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5Aに起因する寄生容量が無くなり、隣接するメモリセル間の相互干渉を低減できる。これは、特に、絶縁膜51に高誘電体膜が用いられた場合に、有効である。
【0106】
したがって、本発明の第3の実施形態に係る不揮発性半導体メモリにおいては、第1及び第2の実施形態と同様に、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制できる。
【0107】
(b) 製造方法
図16及び図17を用いて、本発明の第3の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法について、説明する。尚、本実施形態の製造方法においては、メモリセルのx方向に沿う断面の製造工程のみを図示する。また、第1及び第2の実施形態で述べた製造工程と共通の工程については、詳細な説明を省略する。
【0108】
はじめに、図17に示すように、図15に示す工程と同様の工程を用いて、積層絶縁膜5が、導電層3側面上、絶縁体4上及び素子分離絶縁膜10上に形成される。そして、絶縁体4上及び素子分離絶縁膜上に形成された積層絶縁膜5は、例えば、異方性のRIE法によってエッチングされる。すなわち、絶縁体4上及び素子分離絶縁膜10上の積層絶縁膜5内に、スリットが形成される。この際、導電層3のx方向の側面上には、積層絶縁膜5が残存する。
【0109】
続いて、第2の絶縁体12が、例えば、CVD法を用いて、絶縁体4上及び素子分離絶縁膜10上に形成される。x方向に隣接した導電層3間の領域は、この絶縁体12によって埋め込まれる。この絶縁体12の誘電率は、積層絶縁膜5を構成している絶縁膜51(窒化シリコン膜又は高誘電体膜)の誘電率よりも小さい。
上記のように、積層絶縁膜5が素子分離絶縁膜10上から除去されているので、絶縁体12は、素子分離絶縁膜10上面に直接接触するように、形成される。
【0110】
そして、例えば、RIE法又はウェットエッチングを用いて、形成された絶縁体12に対して選択的にエッチバックが施される。このエッチバックは、絶縁体12が素子分離絶縁膜10上に残存するように、実行される。これによって、図16に示すように、絶縁体12Aが、素子分離絶縁膜1上に形成される。
【0111】
尚、図16及び図17に示すように、エッチバックを用いて、絶縁体12が選択的に除去される場合、絶縁体4Aが同一の条件下でエッチングされないように、絶縁体4A及び絶縁体12Aには、それぞれ異なる材料を用いて、十分なエッチング選択比を確保することが好ましい。但し、この手法に限定されない。例えば、絶縁膜12をRIE法やCMP法を用いて除去して、絶縁体4Aの表面を露出させた後、露出した絶縁体4上のみをレジストで覆い、素子分離絶縁膜10上の絶縁体12を、エッチングしても良い。尚、絶縁体12が、絶縁体4上に残存しても良い。
【0112】
絶縁体12Aが形成された後、図2及び図3に示す工程と同様の工程を用いて、コントロールゲート電極となる導電層6Aが、CVD法を用いて、電極間絶縁膜5A上及び絶縁体4A,12A上に形成される。
【0113】
そして、導電層及び絶縁体がゲート加工され、メモリセルMCのコントロールゲート電極6A及びフローティングゲート電極3Aが形成される。これと同時に、選択トランジスタSTD,STSのゲート電極3B,6Bも形成される。
形成されたゲート電極3A,3B,6A,6Bをマスクとして、ソース/ドレイン拡散層7A,7D,7Sが、自己整合的に半導体基板1内に形成される。
【0114】
コントロールゲート電極にシリサイド処理が施された後、層間絶縁層15,16、コンタクトSC,BC及びソース線/ビット線SL,BLが順次形成される。
【0115】
以上の工程によって、第3の実施形態に係るフラッシュメモリが完成する。
【0116】
本発明の第3の実施形態の製造方法において、第1の実施形態と同様に、フローティングゲート電極3A上に、絶縁体4Aが形成されることによって、フローティングゲート電極3A上部とコントロールゲート電極6Aとの間に発生するカップリング容量が小さいメモリセルが作製される。それゆえ、フローティングゲート電極3A上部の形状に起因するメモリセルMCのリーク耐性の劣化やメモリセルのカップリング容量のばらつきを、抑制できる。
【0117】
また、本実施形態の製造方法においては、第2の実施形態と同様に、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5A内には、スリットが形成され、その結果として、電極間絶縁膜5Aが素子分離絶縁膜10上から除去されている。これによって、電極間絶縁膜5A内の電荷が、あるメモリセルからそれに隣接するメモリセルに、電極間絶縁膜5Aが含む積層された絶縁膜50,51,52の界面に沿って移動することはない。それゆえ、メモリセルのデータリテンション特性が劣化するのを、防止できる。
【0118】
そして、本実施形態で述べた製造方法において、電極間絶縁膜が除去された素子分離絶縁膜10上には、第2の絶縁体12Aが形成されている。この絶縁体12Aの誘電率は、電極間絶縁膜5Aが含む絶縁膜51の誘電率よりも低い。これによって、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5Aに起因した寄生容量が低減される。それゆえ、本実施形態のメモリセルにおいては、隣接するメモリセル間の相互干渉を抑制できる。
【0119】
したがって、本発明の第3の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法によれば、第1及び第2の実施形態と同様に、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制する不揮発性半導体メモリを提供できる。
【0120】
(4) 第4の実施形態
図18及び図19を参照して、本発明の第4の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の構造及び製造方法について、説明する。尚、第1乃至第3の実施形態と同じ部材に関しては、同一の符号を付し、詳細な説明については、必要に応じて行う。
【0121】
(a) 構造
図18を用いて、第4の実施形態に係るフラッシュメモリの構造について、説明する。尚、本実施形態において、メモリセルMCのy方向(チャネル長方向)の断面構造は、図2に示す構造と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図18は、本実施形態に係るフラッシュメモリのメモリセルMCのx方向の断面構造を示している。
【0122】
図18に示すように、本実施形態のメモリセルMCにおいて、第1の実施形態と同様に、フローティングゲート電極3A上には、絶縁体4Aが設けられている。この絶縁体4Aの膜厚T1は、電極間絶縁膜5Aの膜厚T2よりも厚い。これによって、フローティングゲート電極3Aの上部とコントロールゲート電極6Aとの間に生じるカップリング容量は、非常に小さくなる。それゆえ、本実施形態においても、フローティングゲート電極3A上部の形状に起因して、メモリセルMCのリーク耐性の劣化やメモリセルのカップリング容量のばらつきが、生じにくくなる。
【0123】
また、本実施形態のメモリセルMCにおいて、電極間絶縁膜5Aは、第2及び第3の実施形態と同様に、絶縁体4A上及び素子分離絶縁膜10上において、スリットを有し、電極間絶縁膜5Aが絶縁体4A上面上及び素子分離絶縁膜10上面上で切断された構造になっている。それゆえ、本実施形態では、電荷が電極間絶縁膜5A内の界面に沿って、あるメモリセルからそれに隣接するメモリセルに移動することは無くなる。これによって、メモリセルMCのデータリテンション特性が劣化するのを防止できる。
【0124】
そして、本実施形態においては、エアギャップAGが素子分離絶縁膜10上に設けられていることが、第1乃至第3の実施形態と相違している。つまり、本実施形態のメモリセルMCは、コントロールゲート電極6Aと素子分離絶縁膜10との間は、空気で満たされる。尚、フローティングゲート電極3Aのx方向の側面とコントロールゲート電極6Aとの間のカップリング容量が確保されるように、コントロールゲート電極6Aは、電極間絶縁膜5Aを介して、フローティングゲート電極3Aの側面を覆っている。
【0125】
本実施形態のように、エアギャップAGが設けられることで、隣接するメモリセルMC間で生じる電気的な相互作用を、抑制できる。特に、エアギャップAGの誘電率、つまり、空気の誘電率は、第2の実施形態の絶縁体12Aの誘電率よりも低い。そのため、隣接するメモリセル間の寄生容量は、2つのメモリセルMC間にシールド材や絶縁体を設けた場合よりも、小さくなる。
それゆえ、本実施形態のメモリセルは、第2及び第3の実施形態よりも、メモリセルMC間の相互干渉を抑制できる。
【0126】
したがって、本発明の第4の実施形態に係る不揮発性半導体メモリによれば、第1乃至第3の実施形態と同様に、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制できる。
【0127】
(b) 製造方法
図18及び図19を用いて、本発明の第4の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法について、説明する。尚、本実施形態の製造方法においては、メモリセルのx方向に沿う断面の製造工程のみを図示する。また、第1乃至第3の実施形態で述べた製造工程と共通の工程については、詳細な説明は省略する。
【0128】
はじめに、図19に示すように、図15に示す工程と同様の工程によって、電極間絶縁膜となる積層絶縁膜5が、例えば、RIE法によって、絶縁体4上及び素子分離絶縁膜10上から除去される。
この後、コントロールゲート電極となる導電層63が、例えば、CVD法を用いて、半導体基板1上に形成される。
【0129】
ここで、本実施形態においては、例えば、隣接するメモリセル間の間隔が、導電膜3及び絶縁体4の膜厚に対して小さくされるように形成され、その間隔に対するその膜厚の比であるアスペクト比が、大きくされる。この場合、導電層63は、積層絶縁膜5の上部側面上にのみ堆積され、素子分離絶縁膜10上には堆積されない。これは、互いに隣接する積層絶縁膜5上部において、導電層63が素子分離絶縁膜10上に堆積される前に、積層絶縁膜5側面上に堆積された導電層63同士が接触し、素子分離絶縁膜10上方の開口部がふさがるためである。これによって、エアギャップAGが、素子分離絶縁膜10上に形成される。尚、形成されるメモリセルのカップリング容量を確保するため、積層絶縁膜5側面上に形成される導電層63は、積層絶縁膜5を介して導電層3のx方向の側面を覆うように堆積される。
【0130】
そして、図2及び図3に示す工程と同様の工程を用いて、導電層及び絶縁体がゲート加工され、メモリセルMCのコントロールゲート電極6A及びフローティングゲート電極3Aが形成される。これと同時に、選択トランジスタSTD,STSのゲート電極3B,6Bも形成される。
そして、形成されたゲート電極3A,3B,6A,6Bをマスクとして、ソース/ドレイン拡散層7A,7D,7Sが、自己整合的に半導体基板1内に形成される。この後、コントロールゲート電極6Aに対して、シリサイド処理が実行される。このシリサイド処理(加熱処理)による金属原子の拡散及び導電層の再結晶化によって、図19中に示される導電層63同士の接合面(シーム)Zは消失する。
この後、層間絶縁層15,16、コンタクトSC,BC及びソース線/ビット線SL,BLが順次形成される。
【0131】
以上の製造工程によって、本実施形態に係るフラッシュメモリが完成する。
【0132】
本発明の第4の実施形態の製造方法において、第1の実施形態と同様に、フローティングゲート電極3A上に、絶縁体4Aが形成されることによって、フローティングゲート電極3A上部とコントロールゲート電極6Aとの間に発生するカップリング容量が小さいメモリセルが作製される。それゆえ、本実施形態のメモリセルMCは、フローティングゲート電極3A上部の形状に起因するリーク耐性の劣化及びカップリング容量のばらつきを抑制できる。
【0133】
また、本実施形態で述べた製造方法においては、第2及び第3の実施形態と同様に、電極間絶縁膜5Aは、素子分離絶縁膜10上でスリットが形成され、電極間絶縁膜5Aが素子分離絶縁膜10上から除去されている。これによって、電極間絶縁膜5A内の電荷が、あるメモリセルからそれに隣接するメモリセルに、電極間絶縁膜5Aが含む積層された絶縁膜50,51,52の界面に沿って移動することはない。それゆえ、電荷の移動によるメモリセルのデータリテンション特性の劣化を抑制できる。
【0134】
また、本実施形態の製造方法において、素子分離絶縁膜10上に、エアギャップAGが形成される。このエアギャップの誘電率は、電極間絶縁膜5Aが含む絶縁膜51(窒化シリコン膜又は高誘電体膜)の誘電率よりも低い。これによって、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5Aに起因した寄生容量が低減される。それゆえ、隣接するメモリセル間の相互干渉を抑制できる。
【0135】
したがって、本発明の第4の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の製造方法によれば、第1乃至第3の実施形態と同様に、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制する不揮発性半導体メモリを提供できる。
【0136】
(5) 変形例
図20乃至図22を参照して、本発明の第1乃至第4の実施形態に係る不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ)の変形例について、説明する。尚、第1乃至第4の実施形態と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、詳細な説明については、必要に応じて行う。
【0137】
上述のように、データリテンション特性の劣化は、電荷が電極間絶縁膜5Aを構成している絶縁膜51と絶縁膜50,52との界面に沿って、あるメモリセルからそれに隣接するメモリセルに移動することによって、生じる。また、隣接するメモリセル間の相互干渉は、主に、誘電率が高い高誘電率絶縁膜51によって引き起こされる。
【0138】
これらを抑制するため、第2乃至第4の実施形態においては、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5A内に、スリットが設けられ、その結果として、電極間絶縁膜5Aが素子分離絶縁膜10上から除去されていた。
【0139】
但し、素子分離絶縁膜10上において、電極間絶縁膜5Aが、その内部に界面を含まなければ、データリテンション特性の劣化を抑制できる。それと共に、素子分離絶縁膜10上において、電極間絶縁膜5Aが、誘電率が高い絶縁膜51を含んでいなければ、隣接するメモリセルMC間の相互干渉を低減できる。
【0140】
即ち、図20に示すように、絶縁膜51が素子分離絶縁膜10上から除去されていれば、積層構造の電極間絶縁膜5Aが含んでいる最下層の絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜)50は、素子分離絶縁膜10上に残存していても良い。この場合においても、電極間絶縁膜5Aは、素子分離絶縁膜10上において、積層構造による界面を含まなくなる。それゆえ、本偏見例においても、電荷の移動を防止することができる。
【0141】
また、上述のように、絶縁膜50には、例えば、シリコン酸化膜が用いられ、その誘電率は小さい。それゆえ、このシリコン酸化膜50が素子分離絶縁膜10上に残存していても、隣接するメモリセルMC間の相互干渉に対する影響は小さい。それゆえ、本変形例においても、隣接するメモリセルMC間の相互干渉を抑制できる。
【0142】
また、絶縁体4A上に、絶縁膜51を含んでいる電極間絶縁膜5Aが設けられていても、絶縁体4Aの膜厚が十分厚ければ、フローティングゲート電極3A上部とコントロールゲート電極6Aとの間に発生するカップリング容量は、十分に小さくなる。それゆえ、図21に示すように、素子分離絶縁膜10上の電極間絶縁膜5Aが除去されていれば、電極間絶縁膜5Aが、絶縁体4A上に設けられていてもよい。
【0143】
また、図22に示すように、絶縁体4A上に、電極間絶縁膜5Aの最下層の絶縁膜51が残存していてもよい。
【0144】
以上のように、図20乃至図22に示す構造のメモリセルMCであっても、第1乃至第4の実施形態で述べた効果と、同様の効果が得られるのはもちろんである。
【0145】
3. その他
本発明の実施形態によれば、微細化に伴うメモリセルの素子特性の劣化を抑制できる。
【0146】
本発明の例は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】フラッシュメモリのメモリセルアレイの構造を説明するための平面図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図。
【図4】メモリセルの構造の一例を示す断面図。
【図5】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図6】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図7】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図8】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図9】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図10】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図11】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図12】第1の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図13】メモリセルの構造の一例を示す断面図。
【図14】第2の実施形態に係るフラッシュメモリの構造を説明するための断面図。
【図15】第2の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図16】第3の実施形態に係るフラッシュメモリの構造を説明するための断面図。
【図17】第3の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図18】第4の実施形態に係るフラッシュメモリの構造を説明するための断面図。
【図19】第4の実施形態に係る製造方法の一工程を説明するための断面図。
【図20】変形例を説明するための断面図。
【図21】変形例を説明するための断面図。
【図22】変形例を説明するための断面図。
【符号の説明】
【0148】
1:半導体基板、2A:トンネル絶縁膜、3A:フローティングゲート電極、4A:第1の絶縁体、5A:電極間絶縁膜、6A:コントロールゲート電極、7A,7D,7S:ソース/ドレイン拡散層、10:素子分離絶縁膜、12:第2の絶縁体、AG:エアギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に隣接する素子分離絶縁膜が埋め込まれた素子分離領域によって区画される素子領域と、
前記素子領域内に設けられた2つの拡散層と、
前記2つの拡散層間の前記素子領域表面上に設けられるトンネル絶縁膜と、
前記トンネル絶縁膜上に設けられるフローティングゲート電極と、
前記フローティングゲート電極の上面上に設けられる第1の絶縁体と、
前記第1の絶縁体上、前記フローティングゲート電極の前記第1方向の側面上及び前記素子分離絶縁膜上に設けられた電極間絶縁膜と、
前記第1方向に延在し、前記第1の絶縁体及び前記電極間絶縁膜を介して、前記フローティングゲート電極を覆うコントロールゲート電極と、を具備し、
前記第1の絶縁体の膜厚は、前記電極間絶縁膜の膜厚よりも厚く、
前記電極間絶縁膜は、前記第1の絶縁体上又は前記素子分離絶縁膜上のうち少なくともいずれか一方において、スリットを有していることを特徴とする不揮発性半導体メモリ。
【請求項2】
前記スリットは前記第1の絶縁体上に設けられ、前記コントロールゲート電極は前記第1の絶縁体と直接接触することを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項3】
前記スリットは前記素子分離絶縁膜上に設けられ、前記コントロールゲート電極は前記素子分離絶縁膜と直接接触する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項4】
前記スリットは前記素子分離絶縁膜上に設けられ、前記コントロールゲート電極と前記素子分離絶縁膜との間には、前記電極間絶縁膜の誘電率よりも低い第2の絶縁体が設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項5】
前記スリットは前記素子分離絶縁膜上に設けられ、前記コントロールゲート電極と前記素子分離絶縁膜との間には、エアギャップが設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の不揮発性半導体メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−123890(P2010−123890A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298533(P2008−298533)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】