説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】ホットキャリア注入によって書き換えを行うスプリットゲート型MONOSメモリにおいて、リテンション特性を向上させる。
【解決手段】メモリセルM00の選択ゲート電極は選択ゲート線SG0に接続され、メモリゲート電極はメモリゲート線MG0に接続される。また、ドレイン領域はビット線BL0に接続され、ソース領域はソース線SL0に接続される。さらに、メモリセルM00が形成されたp型ウエル領域にはウエル線WL0が接続される。メモリセルM00に書き込みを行うときは、ウエル線WL0を通じてp型ウエル領域に負電圧を印加しながら、ソースサイド注入方式による書込みを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置に関し、特に、スプリットゲート型のMONOSメモリを有する不揮発性半導体記憶装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリに代表される電気的に書込み・消去が可能な不揮発性半導体記憶装置(不揮発性半導体メモリ)は、メモリカードのデータ保管用記憶装置として、また、マイクロコントローラのプログラム保管用メモリとして、現在広く使用されている。
【0003】
例えばマイクロコントローラのプログラム保管用メモリとして不揮発性半導体メモリを用いると、マイクロコンピュータを搭載する機器の開発後もしくは出荷後においてもプログラムを書き換えできることから、機器開発期間の大幅な短縮、バグの発生や仕様変更への迅速な対応等のメリットがある。このため、不揮発性半導体メモリを搭載したマイクロコントローラは、近年様々な用途に用いられるようになっている。
【0004】
マイクロコントローラ搭載用に用いられる不揮発性半導体メモリの一例として、スプリットゲート型MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)メモリがある。スプリットゲート型とは、1個のメモリセルが2個のゲート電極(メモリゲートおよび選択ゲート)を持つタイプのメモリセルを言う。また、MONOSとは、窒化シリコン膜等のトラップ性絶縁膜に電荷を蓄積して情報を記憶させる不揮発性メモリを言う。
【0005】
上記スプリットゲート型MONOSメモリは、例えば特許文献1(米国特許第5,969,383号公報)に記載されているように、書込み動作および消去動作共にホットキャリア注入によって行うことができる。また、書込み動作は、ソースサイドインジェクション(SSI:Source Side Injection)書込み方式によるホットエレクトロン注入で行うこともできる。例えば、非特許文献1(1989年アイ・イー・イー・イー インターナショナル エレクトロン デバイス ミーティング テクニカル ダイジェスト603頁〜606頁(IEEE International Electron Devices Meeting 1989, pp. 603-606))には、チャネルを流れる電子が、2つのゲート電極間のチャネル領域の高電界によって加速され、効率よく電荷蓄積領域である窒化シリコン膜中に注入されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,969,383号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】1989年アイ・イー・イー・イー インターナショナル エレクトロン デバイス ミーティング テクニカル ダイジェスト603頁〜606頁(IEEE International Electron Devices Meeting 1989, pp. 603-606)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図13は、スプリットゲート型MONOSメモリのメモリセル構造を示す断面図である。なお、ここではnチャネル型のメモリセルについて説明する。
【0009】
メモリセルは、電荷を蓄積するための窒化シリコン膜12と、この窒化シリコン膜12を挟む2層の酸化シリコン膜11、13とからなるONO膜10、n型多結晶シリコン膜など導電膜からなるメモリゲート電極16および選択ゲート電極17、選択ゲート電極17の下部に形成された酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜14、n型の不純物が導入された半導体領域からなるソース領域15Sおよびドレイン領域15Dを有する。メモリセルのソース領域15Sおよびドレイン領域15Dは、例えばp型の単結晶シリコンからなる半導体基板20に形成されたp型ウエル領域21に形成される。
【0010】
以下の説明では、メモリゲート電極16を有するMISトランジスタ(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をメモリトランジスタと呼び、選択ゲート電極17を有するMISトランジスタを選択トランジスタと呼ぶ。
【0011】
SSI書込み方式およびBTBT(Band-To-Band Tunneling)消去方式によって書き換え動作を行う従来のスプリットゲート型MONOSメモリの場合、書込み時には、ドレイン領域15D側から窒化シリコン膜12に電子を注入する。一方、消去時には、書込み時とは反対方向のソース領域15S側から窒化シリコン膜12にホールを注入する。すなわち、書込み時の電子注入と消去時のホール注入は、互いにチャネル方向の反対側から行われる。
【0012】
このため、このSSI書込み方式およびBTBT消去方式で書き換え動作を行うスプリットゲート型MONOSメモリにおいては、窒化シリコン膜12内での書込み電子分布と消去ホール分布とがずれるという問題が生じる。電子とホールの分布がずれると、書込みと消去を繰り返して書き換え動作を行った場合に、書き換え回数の増加と共に、ずれた位置に電子とホールが徐々に消し残って増え、リテンション中に窒化シリコン膜12内で電子とホールの対消滅が起こってリテンション特性を悪化させる。
【0013】
本発明の目的は、ホットキャリア注入で書き換え動作を行うスプリットゲート型MONOSメモリにおいて、リテンション特性を向上させる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
半導体基板の第1領域に形成された複数個の不揮発性メモリセルと、前記半導体基板の第2領域に形成された駆動回路とを有する不揮発性半導体記憶装置であって、
前記複数個のメモリセルのそれぞれは、
(a)前記半導体基板中に形成された第1および第2半導体領域と、
(b)前記第1および第2半導体領域間の前記半導体基板上に形成され、前記第1半導体領域側に位置する第1導電体層、および前記第2半導体領域側に位置する第2導電体層と、
(c)前記第1導電体層と前記半導体基板との間に形成された第1絶縁膜と、
(d)前記第2導電体層と前記半導体基板との間に形成された第2絶縁膜からなる電荷蓄積領域と、
を有し、
前記駆動回路は、前記半導体基板の前記第1領域、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第1導電体層、および前記第2導電体層に印加される電圧を制御することによって、ソースサイド注入法を使ったホットエレクトロン注入による書込み動作と、バンド間トンネル現象を利用したホットホール注入法による消去動作とを行い、
前記書込み動作時に前記半導体基板の前記第1領域に負電圧を印加するものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0018】
ホットキャリア注入で書き換え動作を行う不揮発性メモリセルのディスターブ耐性を悪化させずにリテンション特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1であるフラッシュメモリを含むマイクロコントローラの回路ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1であるスプリットゲート型MONOSメモリの別例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1であるスプリットゲート型MONOSメモリの書込み動作時における電圧印加条件を示す等価回路図である。
【図4】定チャネル電流の書込み・消去動作を実現する回路構成の一例を示す等価回路図である。
【図5】書込み時にp型ウエル領域に負電圧を印加した場合と、電圧を印加しない場合の電子注入領域のチャネル長方向の幅のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図6】書込み時にp型ウエル領域に負電圧を印加した場合と、電圧を印加しない場合とで書き換えを行った後に取得した消去状態のリテンションでのしきい値電圧の変化量を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態1であるスプリットゲート型MONOSメモリの書込み動作時における電圧印加のタイミング図である。
【図8】本発明の実施の形態1であるスプリットゲート型MONOSメモリの消去動作時における電圧印加条件を示す等価回路図である。
【図9】消去時にp型ウエル領域に印加する電圧と、p型ウエル領域に印加する電圧が0Vのときの消去時間で規格化した消去時間との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態1であるスプリットゲート型MONOSメモリの消去動作時における電圧印加のタイミング図である。
【図11】本発明の実施の形態1であるスプリットゲート型MONOSメモリの読み出し動作時における電圧印加条件を示す等価回路図である。
【図12】本発明の実施の形態2である複数の不揮発性メモリモジュールなどを集積して形成した半導体チップを模式的に示すブロック図である。
【図13】スプリットゲート型MONOSメモリのメモリセル構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要な場合を除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。また、以下の実施の形態を説明する図面においては、構成を分かり易くするために、平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る半導体記憶装置の一例とされるフラッシュメモリを含むマイクロコントローラの回路ブロック図である。
【0022】
図1に示されるマイクロコントローラは、特に制限されないが、公知の半導体集積回路製造技術により、単結晶シリコン基板などの半導体基板に形成されている。中央処理装置(CPU)201とフラッシュメモリ202とはバス205によって結合されている。フラッシュメモリ202には、上記CPU201で実行されるプログラムもしくはデータが格納される。上記バス205は、データを転送するためのデータバスDBUSや、アドレス信号を伝達するためのアドレスバスABUSを含んでいる。
【0023】
フラッシュメモリ202は、特に制限されないが、制御レジスタ101およびフラッシュメモリモジュール102を含んでなる。制御レジスタ101は、上記バス205におけるデータバスDBUSに結合され、上記制御レジスタの設定は、上記データバスDBUSを介して行われる。
【0024】
フラッシュメモリモジュール102は、特に制限されないが、電源発生回路(VG)103、コントローラ(CONT)104、ソースデコーダ(SLDEC)105、ソースドライバ106、ウエルデコーダ(WDEC)119、ウエルドライバ107、メモリゲートデコーダ(MGDEC)108、メモリゲートドライバ109、センスアンプ(SA)110、書込み消去制御回路111、カラムゲート(YG)112、データ入出力バッファ(DTB)113、アドレスバッファ(ADB)114、カラムアドレスデコーダ(YDEC)115、ロウアドレスデコーダ(XDEC)116、選択ゲートドライバ117、およびメモリセルアレイ118を含んでいる。
【0025】
メモリセルアレイ118は、複数の選択ゲート線(ワード線)SG0〜SGxおよび複数のメモリゲート線MG0〜MGyと、複数のソース線SL0〜SLz、複数のビット線BL0〜BLnおよびウエル線WL0〜WLmとが交差する箇所にメモリセルが配置されてなる。このメモリセルは、図2に示す構造を有するスプリットゲート型MONOSメモリである。メモリセルアレイ118は、例えばNOR型、NAND型等を採用することができる。
【0026】
フラッシュメモリモジュール102の動作(読み出し、書込み、消去等)は、CPU201からデータバスDBUSを介して制御レジスタ101に値が設定されることによって決定される。コントローラ104は、制御レジスタ101の上記値に基づき、電圧発生回路103の発生電圧を、読み出し、書込み、消去等で必要な電圧に変え、図2に示したメモリセルの選択ゲート電極17、メモリゲート電極16、ソース領域15S等に必要な電圧を適切なタイミングで供給するように、各部の動作を制御する。ウエル線WL0〜WLmには、書込みもしくは消去において負電圧を印加するために、負電圧電源を接続する。
【0027】
アドレスバスABUSより入力されたアドレス情報はアドレスバッファ114に保存され、この情報を基にロウアドレスデコーダ116、メモリゲートデコーダ108、ソースデコーダ105、カラムアドレスデコーダ115でメモリセルが選択され、読み出し、書込み、消去等が行われる。
【0028】
ロウアドレスデコーダ116は、入力されたアドレス情報を基に選択ゲートドライバ117を選択し、選択ゲート電極17の電圧を制御する。メモリゲートデコーダ108は、入力されたアドレス情報を基にメモリゲートドライバ109を選択し、メモリゲート電極16の電圧を制御する。ソースデコーダ105は、入力されたアドレス情報を基にソースドライバ106を選択し、メモリセルのソース領域15Sの電圧を制御する。
【0029】
カラムアドレスデコーダ115は、入力されたアドレス情報を基にカラムゲート112、書込み消去制御回路111の動作を制御する。書込み消去制御回路111は、書込み時に書込みデータをラッチし、書込み、消去時にビット線BL0〜BLnおよびソース線SL0〜SLzの各電位を制御する。
【0030】
センスアンプ110は、ビット線BL0〜BLnに現れる読み出し信号を増幅してラッチする。このラッチデータは、カラムゲート112に伝達され、アドレスに一致したデータのみが上記カラムゲート112を介して入出力バッファ113に送られ、データバスDBUSに出力可能とされる。
【0031】
図2に示したメモリセルの各部は、図1に示した配線と以下のように接続される。選択ゲート電極17は、対応する選択ゲート線SG0〜SGxに接続され、メモリゲート電極16は、対応するメモリゲート線MG0〜MGyに接続される。また、ドレイン領域15Dは、対応するビット線BL0〜BLnに接続され、ソース領域15Sは、対応するソース線SL0〜SLzに接続される。
【0032】
選択ゲート線SG0〜SGx、メモリゲート線MG0〜MGyおよびソース線SL0〜SLzは、それぞれ平行に延在する。また、メモリセルのドレイン領域15Dを接続するビット線BL0〜BLnは、選択ゲート線SG0、SG1等と直交する方向に延在する。選択ゲート線SG0、SG1等は、選択ゲート電極17で構成してもよいし、選択ゲート電極17に接続される他の配線で構成してもよい。図示はしないが、p型ウエル領域21は、その内部に形成された高濃度p型不純物領域、およびこの高濃度p型不純物領域に接続されたコンタクトホールを介して対応するウエル線WL0〜WLmに接続される。p型ウエル領域21は、半導体基板20とp型ウエル領域21との間に両者の電気的導通を防ぐためのn型ウエル領域22を形成することで、中央処理装置(CPU)201やフラッシュメモリの制御回路のウエル領域とは電気的に分離する。これにより、中央処理装置(CPU)201やフラッシュメモリ202の制御回路に影響を与えることなく、書込みもしくは消去の動作時にp型ウエル領域21に負電圧を印加することができる。
【0033】
なお、メモリゲート電極16を接続するメモリゲート線MG0〜MGyおよびソース領域15Sを接続するソース線SL0〜SLzは、それぞれ一本毎に独立して配線してあるが、複数本を接続して共有のメモリゲート線、ソース線としてもよい。また、ウエル線WL0〜WLmは、選択ゲート線SG0〜SGxの1本毎に独立に設けてもよいし、選択ゲート線SG0〜SGxの複数本毎もしくはメモリセル1バイト毎に設けてもよいし、すべてのメモリセルを共通のウエル線で接続してもよい。すべてのメモリセルを共通のウエル線で接続する場合にはウエル線の選択をする必要がないので、ウエルデコーダ(WDEC)119が不要となる。メモリゲート線MG0〜MGy、ソース線SL0〜SLz、ウエル線WL0〜WLm等の配線を複数本接続して共通にすることで、それぞれの線を駆動する高耐圧のドライバ数が削減されるので、メモリセル同士をより密に配置でき、チップ面積を低減することができる。逆に、配線を独立にした場合には、書込み時および消去時にウエル線への電圧印加によるディスターブを受ける時間を減らすことができる。
【0034】
図2に示したメモリセルにおいて、選択トランジスタのしきい値電圧は、メモリトランジスタのしきい値電圧よりも高く設定することが望ましい。すなわち、選択トランジスタのチャネル領域のp型不純物濃度をメモリトランジスタのチャネル領域のp型不純物濃度より高くする。または、選択トランジスタのチャネル領域のn型不純物濃度をメモリトランジスタのチャネル領域のn型不純物濃度より低くする。選択トランジスタのしきい値電圧を高くすることによって、読み出し時の非選択メモリセルのリーク電流を低減することができる。また、メモリトランジスタのしきい値電圧を低くすることによって、読み出し時の選択メモリセルの読み出し電流を大きくすることができる。
【0035】
ドレイン領域15Dについては、メモリセルの動作時にこの領域に印加される電圧が最大で1.5V程度なので、1.5Vで駆動することを前提としたMISトランジスタのソース、ドレイン構造を採用すればよい。例えば、1.5Vで動作するMISトランジスタと同程度の高濃度n型不純物領域でドレイン領域15Dを構成すればよい。また、図2に示すように、このドレイン領域15Dの選択ゲート電極17側の端部に低濃度n型不純物領域18Dを設け、LDD(Lightly Doped Drain)構造としてもよい。
【0036】
一方、ソース領域15Sについても高濃度n型不純物領域とする。また、図2に示すように、ソース領域15Sのメモリゲート電極16側の端部に低濃度n型不純物領域18Sを設け、LDD構造としてもよい。この低濃度n型不純物領域18Sの不純物濃度は、BTBTを起こすのに適した濃度にする必要がある。例えば1018〜1020/cm程度であれば好ましく、1018〜1019/cm程度であればさらに好ましい。
【0037】
メモリゲート電極16の下部の窒化シリコン膜12およびその上下の酸化シリコン膜11、13の膜厚は、メモリセルの特性を決定する重要な要素である。本発明の消去方式を採用したメモリセルでは、書込み・消去共にホットキャリア注入を利用するため、窒化シリコン膜12の上下の酸化シリコン膜11、13を厚膜化することができる。例えば窒化シリコン膜12の膜厚は3〜15nm程度、酸化シリコン膜11の膜厚は3〜6nm程度、酸化シリコン膜13の膜厚は4〜10nm程度とする。酸化シリコン膜11、13の膜厚を3nm以上とすることで、トンネリング現象による蓄積電荷の変動を抑えることができる。
【0038】
次に、本実施の形態によるメモリセルの書込み、消去および読み出し動作について順次説明する。ここでは、窒化シリコン膜12への電子(electron)の注入を「書込み」と定義し、ホール(hole:正孔)の注入を「消去」と定義する。また、ここでは、代表的な動作電圧条件を与えるため、いわゆるMISFETの0.18ミクロン(μm)世代のプロセス・デバイス技術を用いて形成したメモリセルを用いて説明する。すなわち、選択トランジスタのゲート長は0.15μmであり、1.5V系で動作するものを用いる。また、メモリセルのチャネル幅は0.25μmである。
【0039】
まず、図3および図2を参照しながら、書込み動作について説明する。図3は、書込み動作時における電圧の印加条件を示す等価回路図である。なお、図3では、簡略化のために、図1に示したメモリセルアレイ118の一部、すなわち2×2個のメモリセル(M00、M01、M10、M11)のみからなるメモリセルアレイを示す。また、メモリセルM00を選択して書込みの電子注入を行う場合の各配線への印加電圧も示す。
【0040】
書込み動作は、いわゆるSSI書込み方式と呼ばれるホットエレクトロン注入によって行う。すなわち、書込み選択されたメモリセルM00のソース領域15Sにソース線SL0の4.5Vを印加し、メモリゲート電極16にメモリゲート線MG0の9Vを印加する。また、選択ゲート電極17に選択ゲート線SG0の1.0Vを印加し、p型ウエル領域21にウエル線WL0の−1.5Vを印加する。
【0041】
ドレイン領域15Dに接続されたビット線BL0に印加する電圧は、書込み時のチャネル電流がある設定値となるよう制御される。例えば設定電流値が1μAの場合、ドレイン領域15Dに印加する電圧は0.2V程度とする。p型ウエル領域21に印加する負電圧は大きいほどよいが、選択ゲート電極17の下部に形成されたゲート絶縁膜14の耐圧が許容する範囲でしか大きくできない。ゲート絶縁膜14の耐圧をVoxとし、書き込み時の選択ゲート電極17に印加する電圧をVsgとすると、p型ウエル領域21に印加する電圧の絶対値はVox−Vsg以下としなければならない。
【0042】
上記した電圧印加条件において、書込み時にメモリセルM00のチャネル領域に流れる電流は、選択ゲート電極17とドレイン領域15Dとの電位差、および選択トランジスタのしきい値電圧によって決まる。選択トランジスタのしきい値電圧にばらつきがあると、チャネル電流にばらつきが生じ、その分、書込み速度がばらついてしまう。この書込み速度のばらつきを抑制するためには、定チャネル電流となるよう、回路的にしきい値電圧を自動制御するとよい。例えば、アイ・イー・イー・イー、ブイエルエスアイ・サーキット・シンポジウム(IEEE,VLSI Circuits Symposium)の2003年予稿集211頁〜212頁に記載された回路方式を用いると、定チャネル電流の書込みを行うことができる。
【0043】
定チャネル電流の書込み・消去動作を実現する回路構成の一例を図4に示す。図4に示すように、ビット線BL0、BL1のそれぞれの一方の端部にはpチャネル型MISFET(MP0、MP1)からなるミラー回路が設けられ、もう一方の端部にはnチャネル型MISFET(MN0、MN1)からなるミラー回路が設けられている。
【0044】
ここで、上記ビット線BL0、BL1以外の線には図3に示した電圧と同じ電圧を印加する。また、定電流源CCS1には電流I1を流し、定電流源CCS2には電流I1よりも大きな電流I2を流す。ここで、書き込み選択されたメモリセルM00が接続されたビット線BL0のビット線選択スイッチングトランジスタBS0をオン状態にすると、ミラー回路の原理でNMOSトランジスタMN0にはビット線BL0からアースの方向に電流I2が流れ、PMOSトランジスタMP0にはビット線BL0に入り込む方向に電流I1が流れる。電流I2と電流I1との差分の電流は、ビット線BL0に接続されたメモリセル(M00、M10)のうち、選択トランジスタがオン状態にあるメモリセルM00のみを介してビット線BL0に供給される。すなわち、メモリセルM00のチャネル領域に電流Ip(=I2−I1)が流れる。このように、電流I2と電流I1との差分を書込み時のチャネル電流値に設定し、ビット線選択スイッチングトランジスタBS0を反転状態にすることにより、書き込み選択されたメモリセルM00のチャネル領域に定電流(電流Ip)を流して書込みを行うことができる。
【0045】
図5は、SSI書込み時にp型ウエル領域21に負電圧(−1.5V)を印加した場合と、電圧を印加しない場合(0V)における、チャネル長方向(チャネル電流が流れる方向)の電子注入領域の幅のシミュレーション結果である。電子注入領域は、注入電子密度が1.8×1019/cm以上となっている領域と定義した。p型ウエル領域21の印加電圧が−1.5Vの場合と0Vの場合とを比較すると、p型ウエル領域21に−1.5Vを印加することで、電子注入領域のチャネル長方向の幅が広がることが分かる。これは、p型ウエル領域21に負電圧(−1.5V)を印加することで、選択ゲート電極17下のチャネル部の電子ポテンシャルが上がって、選択ゲート電極17下のチャネル部とソース領域15Sとの間の電位差が大きくなり、選択ゲート電極17とメモリゲート電極16との間のギャップ領域下およびメモリゲート電極16下のチャネル部におけるチャネル長方向の電界が大きくなった結果、電子がよりチャネル方向に加速されて電子分布がソース領域15S側へと広がったためである。
【0046】
図6は、SSI書込み時にp型ウエル領域21に負電圧(−1.5V)を印加した場合と、電圧を印加しない場合(0V)において、1万回書き換えを行った後に取得した消去状態のリテンションでの1万秒後のしきい値電圧の変化量を示すグラフである。p型ウエル領域21に負電圧を印加した場合の方が、p型ウエル領域21に負電圧を印加しない場合よりも、しきい値電圧の上昇が抑えられている。すなわち、SSI書込みでp型ウエル領域21に負電圧を印加すると、リテンション特性が向上する。書込み時にp型ウエル領域21に負電圧を印加したことで電子の注入分布がソース領域15S側へ拡がったため、書き換えに伴う電子およびホールの局在や消し残りが減少した結果、リテンション特性が向上する。
【0047】
書込み時にソース領域に印加する電圧を大きくしても、p型ウエル領域21に負電圧を印加する場合と同様に、選択ゲート電極17とメモリゲート電極16との間のギャップ部のチャネル領域におけるチャネル方向電界が大きくなり、注入電子分布がソース領域15S側へ広がる。しかしながら、書込み時にソース領域15Sに印加する電圧を大きくすると、ソース領域15Sに電流を供給するチャージポンプ回路の面積を大きくしなければならず、その結果、チップ面積が増大してしまう。
【0048】
続いて、書込み動作時における電圧印加のタイミングを図7に示す。同図は、図3に示したメモリセルアレイにおいて、書込み選択されたメモリセルM00に書込む場合の各配線への電圧印加のタイミング図である。また、書込み後のしきい値レベルを確認するベリファイリード動作の電荷印加タイミングも合わせて示してある。
【0049】
まず、時刻t1でウエル線WL0にVwellを印加し、p型ウエル領域21の電圧をVwellにする。続いて、時刻t2で非選択のビット線BL1をVblpuに昇圧する。例えば、Vwellは−1.5V、Vblpuは1.5Vとする。図3および図7には、非選択のメモリゲート線MG1と非選択のソース線SL1が0Vの場合を示したが、書込みディスターブ特性が改善するように非選択のメモリゲート線MG1もしくは非選択のソース線SL1に電圧を印加する場合には、この時刻t2で電圧を印加する。電圧印加の順序は特に制限されない。すなわち、時刻t1でのp型ウエル領域21への電圧印加と時刻t2でのビット線BL1への電圧印加は、上記と逆の順序にしても構わない。
【0050】
時刻t3以降は、メモリセルM00に接続される配線に電圧を印加していく。すなわち、時刻t3でメモリセルM00に接続された選択ゲート線SG0にVsgpを印加し、時刻t4でメモリセルM00に接続されたメモリゲート線MG0にVmgpを印加し、時刻t5でメモリセルM00に接続されたソース線SL0にVslpを印加する。例えば、Vsgpは1V、Vmgpは9V、Vslpは4.5Vとする。ソース線SL0に電圧を印加すると、メモリセルM00のチャネル電流が流れ始め、チャネル電流が所望の予め設定した電流値となるよう、メモリセルM00のドレイン領域15Dに接続されたビット線BL0の電圧が上昇する。時刻t3、t4、t5におけるメモリセルM00への電圧印加の順番は特に制限されないが、書込みディスターブ耐性が悪化しない順番とするとよい。時刻t5〜t6の間は、メモリセルM00において電子注入が行われている時間であり、メモリセルM00の書込み速度に応じた時間、電子注入が行われる。
【0051】
時刻t6以降は、時刻t5までと逆の動作を行う。すなわち、時刻t6で、メモリセルM00に接続されているソース線SL0の電圧を0Vに下げる。ソース線SL0の電圧を下げるとメモリセルM00のチャネル電流が減少するので、メモリセルM00に接続されているビット線BL0の電位も0Vに下がる。次に、時刻t7でメモリセルM00に接続されているメモリゲート線MG0の電圧を0Vに下げ、時刻t8でメモリセルM00に接続されている選択ゲート線SG0の電圧を0Vに下げる。時刻t6、t7、t8における選択メモリセルの電圧を0Vへ下げる順番は特に制限されないが、書込みディスターブ耐性が悪化しない順番とするのがよい。
【0052】
同一の選択ゲート線SG0、メモリゲート線MG0、ソース線SL0に接続された他のメモリセルの書込みを引き続き行うのであれば、電圧を下げずに続けて書込みを行う。また、別の選択ゲート線、メモリゲート線、ソース線に接続されたメモリセルの書込みを引き続き行うのであれば、そのメモリセルが接続された選択ゲート線、メモリゲート線、ソース線への電圧印加を続けて行う。そして、書込み動作が一通り終了した後、ウエル線WL0の負電圧を除き、非選択の配線の電圧を下げる。図7では、時刻t9で非選択のビット線BL1を0Vに下げている。
【0053】
次に、ウエル線WL0に負電圧Vwellを印加したまま、ベリファイリード動作へ移行する。ここでは、メモリセルM00をベリファイリードする。すなわち、時刻t10でメモリセルM00に接続されたビット線BL0にVblvを印加し、時刻t11で、メモリセルM00に接続されたメモリゲート線MG0にVmgvを印加する。メモリセルM00に接続されたメモリゲート線MG0に印加する電圧は、書込みのしきい値電圧のレベルに対応したもので、この書込みレベルの設定によって電圧値を変える。続いて、時刻t12でメモリセルM00に接続された選択ゲート線SG0にVsgvを印加する。例えば、Vblvは1.0V、Vmgvは5.0V、Vsgvは1.0Vとする。その後、ビット線BL0に接続されたセンスアンプを動作させ、メモリセルM00の書込みレベルのベリファイを行う。
【0054】
ベリファイ終了後、時刻t13でメモリセルM00に接続された選択ゲート線SG0の電圧を0Vに下げ、時刻t14でメモリセルM00に接続されたメモリゲート線MG0の電圧を0Vに下げ、時刻t15でメモリセルM00に接続されたビット線BL0の電圧を0Vに下げる。
【0055】
以上でベリファイリード動作が終わり、書込みを行ったメモリセルM00の書込みレベルが所望のレベルに達していれば書込みを終了し、達していなければ再度書込みとベリファイリードを繰り返す。書込み動作がすべて終了した後、時刻t16でメモリセルM00に接続されたウエル線WL0の電圧を0Vに戻す。
【0056】
上記のベリファイリードは、p型ウエル領域21の電圧を0Vに戻し、後述する通常のリード動作と同じ電圧条件で行ってもよいが、図7に示したように、p型ウエル領域21に負電圧を印加したままベリファイリードを行うと、書込みとベリファイリードを繰り返すたびにp型ウエル領域21に印加する電圧を上げ下げする必要がないので、書込み動作全体に要する時間を短くすることができる。また、ベリファイリードを行わない書込み動作にすることもできるが、書込みが遅いメモリセルでは十分な書込みレベルに達せず、信頼性を損なう可能性がある。
【0057】
なお、図7の説明では、書込み時とベリファイリード時にメモリセルM00に接続された選択ゲート線SG0に印加する電圧は同じであるとしたが、これに制限されない。ベリファイリードは、チャネル電流が大きいほど高速で精度を良くすることができるため、メモリセルM00に接続された選択ゲート線SG0に印加する電圧の大きさは、選択トランジスタの耐圧の範囲でなるべく大きくする方がよい。
【0058】
次に、本実施の形態によるメモリセルの消去動作について説明する。消去動作は、BTBT消去方式と呼ばれるホットホール注入によって行う。
【0059】
図8は、消去動作時における電圧の印加条件を示す等価回路図である。ここでは、図3と同じく、簡略化のために、2×2個のメモリセル(M00、M01、M10、M11)のみからなるメモリセルアレイを示す。また、すべてのメモリセル(M00、M01、M10、M11)を消去する場合の各配線への印加電圧も示す。
【0060】
図8の印加電圧条件に示すように、すべてのメモリセルのソース領域15Sにソース線SL0、SL1の6.0Vを、メモリゲート電極16にメモリゲート線MG0、MG1の−6.0Vを、選択ゲート電極17に選択ゲート線SG0、SG1の0Vもしくは−1.5Vを、p型ウエル領域21にウエル線WL0の−1.5Vをそれぞれ印加する。
【0061】
図9は、消去時間のp型ウエル領域21に印加する電圧の依存性を示すグラフである。消去時間は、p型ウエル領域21に印加する電圧が0Vのときの消去時間で規格化してある。図9から分かるように、p型ウエル領域21に印加する負電圧を大きくするほど、消去速度が速くなる。BTBT消去では、メモリセルのソース領域15Sに正の高電圧(例えば6.0V)を印加し、メモリゲート電極16に負の高電圧(例えば−6.0V)を印加することにより、ソース領域15Sの端部においてBTBT現象によるホールを発生させる。そして、このホールをソース領域15Sとp型ウエル領域21との間の電界で加速し、加速されたホールをメモリゲート電極16の負電圧で引っ張り、電荷蓄積部(窒化シリコン膜12)へと注入する。このとき、p型ウエル領域21に印加する負電圧を大きくすると、ソース領域15Sの正の高電圧とp型ウエル領域21の負電圧とが作る電界が大きくなり、ソース領域15Sの端部で発生したホールがより高電界で加速されるため、消去速度を速くすることができる。
【0062】
なお、ソース領域15Sに印加する正電圧を大きくした場合でも、ソース領域15Sとp型ウエル領域21との間の電界が大きくなるので、消去速度は速くなる。しかし、ソース領域15Sに印加する電圧を大きくすると、ソース線SL0、SL1を駆動するチャージポンプ回路やソース線SL0、SL1のドライバ・デコーダの面積が大きくなってしまう。他方、p型ウエル領域21に負電圧を印加する場合は、ソース領域15Sに印加する電圧を大きくせずに済むので、ソース線SL0、SL1を駆動するチャージポンプ回路やソース線SL0、SL1のドライバ・デコーダの面積を大きくせずに、消去速度を速くすることができる。また、消去速度が速くなる分、ソース領域15Sに印加する電圧を下げることで、ソース線SL0、SL1を駆動するチャージポンプ回路やソース線SL0、SL1のドライバ・デコーダの面積を小さくすることもできる。
【0063】
上記のように、p型ウエル領域21に印加する負電圧が大きいほど消去速度は速くなるが、選択ゲート電極17の下部のゲート絶縁膜14の耐圧が許容する範囲でしか大きくできない。ゲート絶縁膜14の耐圧をVoxとし、消去時の選択ゲート電極17に印加する電圧をVsgとすると、p型ウエル領域21に印加する電圧の絶対値はVox−Vsg以下としなければならない。選択ゲート電極17に負電圧を印加すると、p型ウエル領域21にさらに大きな負電圧を印加することができる。
【0064】
なお、上記したp型ウエル領域21に負電圧を印加するBTBT消去は、スプリットゲート型MONOSメモリだけでなく、シングルゲート型MONOSメモリに適用した場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0065】
続いて、消去動作における電圧印加のタイミングを図10に示す。同図は、図8に示したメモリセルアレイにおいて、2×2個のメモリセル(M00、M01、M10、M11)をすべて消去する場合の各配線への電圧印加のタイミング図である。また、2個のメモリセル(M00、M01)について、消去レベルを確認するベリファイリード動作の電圧印加タイミングも合わせて示してある。
【0066】
まず、時刻t1でウエル線WL0にVwellを印加し、p型ウエル領域21の電圧をVwellにする。続いて、時刻t2でビット線BL1、BL0をVbleに昇圧する。ウエル線WL0の電圧印加とビット線BL1、BL0の電圧印加の順番は特に制限されない。次に、時刻t3でメモリセル(M00、M01、M10、M11)に接続されたメモリゲート線MG0、MG1にVmgeを印加し、時刻t4でメモリセル(M00、M01、M10、M11)に接続されたソース線SL0、SL1にVsleを印加する。例えば、Vwellは−1.5V、Vbleは1.5V、Vmgeは−6V、Vsleは6Vとする。メモリゲート線MG0、MG1の電圧印加とソース線SL0、SL1の電圧印加の順番は特に制限されないが、消去ディスターブ耐性が悪化しない順番とするのがよい。
【0067】
時刻t4〜t5の間は、メモリセル(M00、M01、M10、M11)においてホール注入を行っている時間であり、メモリセル(M00、M01、M10、M11)の消去速度に応じた時間、ホール注入を行う。
【0068】
次に、時刻t5でメモリセル(M00、M01、M10、M11)に接続され1たソース線SL0、SL1の電圧を0Vに下げ、時刻t6でメモリセル(M00、M01、M10、M11)に接続されたメモリゲート線MG0、MG1の電圧を0Vにする。ソース線SL0、SL1の電圧とメモリゲート線MG0、MG1の電圧を0Vにする順序は特に制限されないが、消去ディスターブ耐性が悪化しない順序とするとよい。続いて、時刻t7でビット線BL0、BL1を0Vに下げる。
【0069】
消去動作に続き、ウエル線WL0に負電圧Vwellを印加したまま、ベリファイリード動作を行う。ここでは、図8に示す2個のメモリセル(M00、M01)をベリファイリードする例を説明する。まず、時刻t8でビット線BL0、BL1にVblvを印加し、時刻t9で、メモリセル(M00、M01)に接続されたメモリゲート線MG0にVmgvを印加する。メモリゲート線MG0に印加する電圧は、消去のしきい値電圧のレベルに対応したもので、この消去レベルの設定によって電圧値を変える。印加電圧は、例えば、Vblvは1.0V、Vmgvは−2.0Vとする。
【0070】
次に、時刻t10で、同じくメモリセル(M00、M01)に接続された選択ゲート線SG0に1.0Vを印加する。その後、ビット線BL0、BL1に接続されたセンスアンプ(SA)を動作させ、メモリセル(M00、M01)の消去レベルのベリファイを行う。ベリファイ終了後、時刻t11でメモリセル(M00、M01)に接続された選択ゲート線SG0の電圧を0Vに下げ、続いて、時刻t12でメモリセル(M00、M01)に接続されたメモリゲート線MG0の電圧を0Vに下げた後、時刻t13でメモリセル(M00、M01)に接続されたビット線BL0、BL1の電圧を0Vに下げる。図10には示していないが、引き続き、消去を行った他のメモリセル(M10、M11)のベリファイリードを上記と同様にして実行する。
【0071】
消去を行ったメモリセル(M00、M01、M10、M11)のベリファイリード動作が終わり、消去レベルが所望のレベルに達していれば消去動作を終了し、達していなければ再度消去とベリファイリードを繰り返す。消去動作がすべて終了した後、時刻t14でウエル線WL0の電圧を0Vに戻す。
【0072】
上記したベリファイリードは、p型ウエル領域21の電圧を0Vに戻し、後述する通常のリード動作と同じ電圧条件にて行ってもよいが、図10に示すように、p型ウエル領域21に負電圧を印加したままベリファイリードを行うことで、消去とベリファイリードを繰り返すたびにp型ウエル領域21に印加する電圧の上げ下げしなくとも済むので、消去動作全体に要する時間を短くすることができる。また、ベリファイリードを行わない消去動作にすることもできるが、消去が遅いメモリセルでは十分な消去レベルに達せず、信頼性を損なう可能性がある。
【0073】
ここまで説明した本実施の形態の書込み方式と消去方式は、書込み方式と消去方式のいずれか一方のみを用い、従来のSSI書込み方式もしくは従来のBTBT方式と組み合わせて実施してもよいし、両方を用いてもよい。書き込みまたは消去のいずれか一方に従来方式を用いることで、p型ウエル領域21の電圧印加に時間を要さずに済む。また、本実施の形態の書込み方式と消去方式の両方を用いた場合は、両方の効果を共通のp型ウエル領域21の電源、ドライバ、デコーダで実現できるため、チップ面積の増加を抑制することができる。さらに、書込み時にp型ウエル領域21に印加する負電圧と、書込み時にp型ウエル領域21に印加する負電圧とを同じにすれば、電源の数を減らすことができるので、電源回路の面積を小さくすることができる。
【0074】
次に、本実施の形態によるメモリセルの読み出し動作について説明する。図11は、読み出し動作時における電圧の印加条件を示す等価回路図である。ここでは、前述した書込み動作と同様、2×2個のメモリセル(M00、M01、M10、M11)のみからなるメモリセルアレイにおいて、メモリセルM00を読み出す場合の各配線への印加電圧を示す。
【0075】
図11の印加電圧条件に示すように、読み出し動作は、書込み動作および消去動作とは異なり、p型ウエル領域21に電圧を印加しない。これは、スタンバイ状態から極短時間に復帰して読み出し動作を実施できるようにするためである。読み出しを行うメモリセルM00のドレイン領域15Sに接続されたビット線BL0に1.0Vを印加し、選択ゲート電極17に接続された選択ゲート線SG0に1.5Vを印加し、ビット線BL0に接続されたセンスアンプ(SA)を動作させてメモリセルM00のデータを読み出す。非選択のビット線BL1、非選択のゲート線SG1、すべてのソース線SL0、SL1、すべてのメモリゲート線MG0、MG1には0Vを印加する。高速読み出しを行うためにより大きな読み出し電圧が必要な場合には、メモリゲート線MG0、MG1に、例えば1.5Vを印加してもよい。
【0076】
(実施の形態2)
一般に、マイクロコントローラにおいては、メモリセルの集積度を上げるためだけでなく、様々な用途から、複数の不揮発性メモリモジュールを集積することが考えられる。
【0077】
図12は、複数の不揮発性メモリモジュールMMJ1〜MMJ4などを集積して形成した半導体チップMPUを模式的に示すブロック図である。図12に示す半導体チップMPU内には、複数の不揮発性メモリモジュールMMJ1〜MMJ4、これらの不揮発性メモリモジュールMMJ1〜MMJ4を制御するためのメモリ制御モジュールCMJ、不揮発性メモリモジュールMMJ1〜MMJ4に所定の電位を供給するための電源モジュールPMJ、および演算回路部OPCが集積されている。
【0078】
このように、複数の不揮発性メモリモジュールMMJ1〜MMJ4を一つの半導体チップMPU内に集積した場合、それぞれのモジュールMMJ1〜MMJ4内のメモリセルの使い方は異なることが考えられる。
【0079】
本実施の形態では、不揮発性メモリモジュールMMJ1〜MMJ4のメモリセル構造を変えることなくその動作特性を変えることができる。従って、一つの半導体チップMPU内に集積した複数の不揮発性メモリモジュールMMJ1〜MMJ4のうち、必要な不揮発性メモリモジュールのみに前記実施の形態1の方式(書込み方式および消去方式)を適用し、他の不揮発性メモリモジュールは従来通りの方式(書込み方式および消去方式)で動作させることができる。すなわち、必要な不揮発性メモリモジュールのみに実施の形態1の書込み方式および消去方式を適用し、同時に従来どおり動作させる不揮発性メモリモジュールを一つの半導体チップMPU上に集積することができる。具体的には、より厳しいリテンション特性が要求される条件で使用するモジュールにのみ実施の形態1の書込み方式を適用し、より厳しい消去速度が要求される条件で使用するモジュールにのみ実施の形態1の書込み方式を適用する。これにより、基板バイアス印加回路等の回路面積の増大を最小限に抑えて、リテンション特性向上もしくは消去速度向上の効果を得ることが可能となる。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0081】
例えば、前記実施の形態では、メモリセルの電荷蓄積膜として窒化シリコン膜(電荷トラップ性絶縁膜)を用いたが、窒化シリコン膜の代わりに酸窒化シリコン膜、酸化タンタル膜、酸化アルミニウム膜等の電荷トラップ性絶縁膜を用いてもよい。また、電荷蓄積層として多結晶シリコン等の導電性材料もしくは導電性材料から成る微粒子(ドット)を用いてもよい。さらに、メモリセルを構成するメモリトランジスタおよび選択トランジスタは、pチャネル型のMISトランジスタで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、スプリットゲート型のMONOSメモリを有する不揮発性半導体記憶装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 ONO膜
11、13 酸化シリコン膜
12 窒化シリコン膜
14 ゲート絶縁膜
15D ドレイン領域
15S ソース領域
16 メモリゲート電極
17 選択ゲート電極
18D 低濃度n型不純物領域
18S 低濃度n型不純物領域
20 半導体基板
21 p型ウエル領域
22 n型ウエル領域
101 制御レジスタ
102 フラッシュメモリモジュール
103 電源発生回路(VG)
104 コントローラ(CONT)
105 ソースデコーダ(SLDEC)
106 ソースドライバ
107 ウエルドライバ
108 メモリゲートデコーダ(MGDEC)
109 メモリゲートドライバ
110 センスアンプ(SA)
111 書込み消去制御回路
112 カラムゲート(YG)
113 データ入出力バッファ(DTB)
114 アドレスバッファ(ADB)
115 カラムアドレスデコーダ(YDEC)
116 ロウアドレスデコーダ(XDEC)
117 選択ゲートドライバ
118 メモリセルアレイ
119 ウエルデコーダ(WDEC)
201 中央処理装置(CPU)
202 フラッシュメモリ
205 バス
ABUS アドレスバス
BL0〜BLn ビット線
CMJ メモリ制御モジュール
DBUS データバス
MG0〜MGy メモリゲート線
MMJ1〜MMJ4 メモリモジュール
MPU 半導体チップ
OPC 演算回路部
PMJ 電源モジュール
SG0〜SGx 選択ゲート線(ワード線)
SL0〜SLz ソース線
WL0〜WLm ウエル線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1領域に形成された複数個の不揮発性メモリセルと、前記半導体基板の第2領域に形成された駆動回路とを有する不揮発性半導体記憶装置であって、
前記複数個のメモリセルのそれぞれは、
(a)前記半導体基板中に形成された第1および第2半導体領域と、
(b)前記第1および第2半導体領域間の前記半導体基板上に形成され、前記第1半導体領域側に位置する第1導電体層、および前記第2半導体領域側に位置する第2導電体層と、
(c)前記第1導電体層と前記半導体基板との間に形成された第1絶縁膜と、
(d)前記第2導電体層と前記半導体基板との間に形成された第2絶縁膜からなる電荷蓄積領域と、
を有し、
前記駆動回路は、前記半導体基板の前記第1領域、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第1導電体層、および前記第2導電体層に印加される電圧を制御することによって、ソースサイド注入法を使ったホットエレクトロン注入による書込み動作と、バンド間トンネル現象を利用したホットホール注入法による消去動作とを行い、
前記書込み動作時に前記半導体基板の前記第1領域に負電圧を印加することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記半導体基板の前記第1領域と前記第2領域とが電気的に分離され、前記駆動回路が前記第2領域に接続されていることを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1領域と前記第2領域との間の前記半導体基板中に、前記第1領域および前記第2領域とは異なる導電型の第3領域を有することを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記半導体基板の前記第2領域に負電圧印加回路が接続されていることを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記電荷蓄積領域を構成する前記第2絶縁膜は、2層の酸化シリコン膜に挟まれた窒化シリコン膜であることを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記書込み動作時における前記ホットエレクトロン注入後のベリファイリード時に、前記半導体基板の前記第1領域に負電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記消去動作時に前記半導体基板の前記第1領域に負電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項8】
前記駆動回路は、前記消去動作時に、前記第2半導体領域と前記第2導電体層とに正電圧を印加することを特徴とする請求項5記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項9】
半導体基板の第1領域に形成された複数個の不揮発性メモリセルと、前記半導体基板の第2領域に形成された駆動回路とを有する不揮発性半導体記憶装置であって、
前記複数個のメモリセルのそれぞれは、
(a)前記半導体基板中に形成された第1および第2半導体領域と、
(b)前記第1および第2半導体領域間の前記半導体基板上に形成された導電体層と、
(c)前記導電体層と前記半導体基板との間に形成された第1絶縁膜と、
を有し、
前記駆動回路は、消去動作時に前記半導体基板の前記第1領域に負電圧を印加し、前記第2半導体領域に正電圧を印加し、前記導電体層に負電圧を印加することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項10】
前記半導体基板の前記第1領域と前記第2領域とが電気的に分離され、前記駆動回路が前記第2領域に接続されていることを特徴とする請求項9記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項11】
前記第1領域と前記第2領域との間の前記半導体基板中に、前記第1領域および前記第2領域とは異なる導電型の第3領域を有することを特徴とする請求項9記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項12】
前記半導体基板の前記第2領域に負電圧印加回路が接続されていることを特徴とする請求項9記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項13】
前記消去動作は、バンド間トンネル現象を利用したホットホール注入法によって行われることを特徴とする請求項12記載の不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−210292(P2011−210292A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74065(P2010−74065)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】