説明

不揮発性記憶装置の製造方法

【課題】微細な構造でも安定して製造可能な不揮発性記憶装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の方向に延在する第1の配線と、前記第1の方向と非平行な第2の方向に延在する第2の配線と、前記第1の配線と前記第2の配線との間に挟持され、前記第1の配線と前記第2の配線とを介して供給される電流により、第1の状態と第2の状態との間を可逆的に遷移可能な記録層と、を有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、前記第1の配線の層を形成する工程と、前記第1の配線の層の主面上に前記記録層の層を形成する工程と、前記記録層の層と前記第1の配線の層を選択的にエッチングして、前記第1の方向に延在する複数の積層体を形成する工程と、前記複数の積層体の間隙の表面に、気相成長法を用いて第1の絶縁層を形成する工程と、前記第1の絶縁層の上に、塗布法を用いて第2の絶縁層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶装置の製造方法に関し、より詳細には、素子間を電気的に絶縁する素子間絶縁層を備えた不揮発性記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタを用いたNAND型の不揮発性記憶装置においては、装置の微細化に伴い、いわゆる短チャネル効果の影響により、デバイス動作が困難となってきている。「短チャネル効果」とは、装置の微細化によってソース部とドレイン部との距離が近くなることによって生じる現象であり、具体例にはソースとドレインとの間に生じるリーク電流の増加等である。このため、トランジスタを用いた記憶装置に代わる記憶装置が求められており、その一つとして、遷移金属絶縁膜等に電界パルスを印加することで物質の抵抗が変化する特性を利用した不揮発性記憶装置(抵抗変化型メモリ、ReRAM)が検討されている。
【0003】
抵抗変化型メモリは、抵抗変化膜に電界パルスを印加することによって高抵抗状態と低抵抗状態との間を可逆的に変化させ、この特性を利用して情報を書き換え可能なように、かつ、電源を切っても情報が消えないように記憶する装置である。抵抗変化膜の高抵抗及び低抵抗の状態がそれぞれ安定であるため、不揮発性を実現することができる。抵抗変化型メモリは記憶部にトランジスタを用いないため、より高密度の集積化が可能であり、また上述した短チャネル効果の問題もない。
現在、ビット線とワード線とが交叉する部分に抵抗変化素子を配置したクロスポイント型の抵抗変化型メモリが検討されている。これによれば、セル面積を理論上NAND型不揮発性記憶装置と同じ4F(「F」は、設計ルール(最小設計寸法))とすることができる。また、抵抗変化型メモリは、複数の記録部を積層することができるため集積度をさらに上げることができるという利点を有する。
【0004】
クロスポイントセルの作成においては、配線(ビット線/ワード線)方向にセルを加工した後に、異なる素子(セル)の間を電気的に分離するため、一般に素子間絶縁層が形成される。ここで、メモリの微細化を進めると、素子間絶縁層を形成する部分のアスペクト比(溝幅に対する深さの比)が大きくなる。アスペクト比が大きい場合には、素子間絶縁層を良好に堆積することが比較的難しく、これを考慮に入れた抵抗変化型メモリの製造方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−158112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微細な構造でも安定して製造可能な不揮発性記憶装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、第1の方向に延在する第1の配線と、前記第1の方向と非平行な第2の方向に延在する第2の配線と、前記第1の配線と前記第2の配線との間に挟持され、前記第1の配線と前記第2の配線とを介して供給される電流により、第1の状態と第2の状態との間を可逆的に遷移可能な記録層と、を有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、前記第1の配線の層を形成する工程と、前記第1の配線の層の主面上に前記記録層の層を形成する工程と、前記記録層の層と前記第1の配線の層を選択的にエッチングして、前記第1の方向に延在する複数の積層体を形成する工程と、前記複数の積層体の間隙の表面に、気相成長法を用いて第1の絶縁層を形成する工程と、前記第1の絶縁層の上に、塗布法を用いて第2の絶縁層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細な構造でも安定して製造可能な不揮発性記憶装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図4〜図7は、本発明の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の製造方法を表す工程図である。本実施形態の製造方法を説明する前に、まず、本発明の実施形態に係る製造方法によって製造される不揮発性記憶装置の一例(具体例1)について、図1〜図3を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、具体例1に係る不揮発性記憶装置2の模式図である。図1(a)は、不揮発性記憶装置2の模式斜視図であり、図1(b)は、不揮発性記憶装置2の模式回路図である。また、図2は、不揮発性記憶装置2の模式断面図である。図2(a)は、不揮発性記憶装置2を第1の方向(X軸方向)から見た模式断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図である。
【0011】
図1に表したように、不揮発性記憶装置2は、基板10と、基板10の主面上に設けられ、第1の方向(X軸方向)に延在する第1の配線20(ビット線BL)と、第1の方向と非平行な(交叉する)第2の方向(Y軸方向)に延在する第2の配線50(ワード線WL)と、第1の配線20と第2の配線50との間に挟持され、第1の配線20と第2の配線50とを介して供給される電流により、第1の状態と第2の状態との間を可逆的に遷移可能な記録層44と、を備える。また、第1の配線20と記録層44との間に、これらによって挟持される整流素子30を備えてもよい。ここで、「主面」とは、第1の配線20、整流素子30、記録層44などが積層する方向(図1において、Z軸方向、上下方向)に対して垂直な面(図1において、XY面)をいう。
【0012】
また、図2に表したように、記録層44のZ軸方向両側に、記録層44を挟持する電極層42、46を備えていてもよい。ここで、記録層44と、電極層42、46とを併せて「記録部40」と呼ぶこととする。また、第1の配線20と整流素子30との間に、後述するバリア層32を備えていてもよい。
【0013】
配線L(第1の配線20及び第2の配線50)には、導電性を有する材料を用いることができ、さらに耐熱性を有する材料を用いることができる。具体的には、例えば、導電性と耐熱性とを具備するタングステン(W)が挙げられる。
【0014】
また、図1及び図2に表したように、記録層44(記録部40)と第2の配線50との間には、製造工程における平坦化工程で用いられるストッパー層52が設けられていてもよい。例えば、平坦化工程としてCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)を用いる場合には、ストッパー層52はCMPストッパー層となる。ストッパー層52は、必要に応じて設けられる。このため、例えば後述する電極層46の厚さを十分大きくして、ストッパー層の機能を電極層46に付与するのであれば、ストッパー層52を設ける必要はない。
【0015】
ここで、ストッパー層52及び第2の配線50の材料が同じである場合には、両者は一体化して第2の配線の機能を担うことになる。このような場合の第2の配線を、「第2の配線54」と呼ぶこととする。すなわち、第2の配線54は、各セルにおいて記録層44側に突出した突出部(突出部52)を有する。
【0016】
整流素子30は、整流特性を有し、記録層44に印加される電圧の極性に方向性を持たせるために設けられる。整流素子30には、例えば、ツェナーダイオード、PN接合ダイオード、ショットキーダイオード等を用いることができる。図1では、整流素子30が、ビット線BLと電極層42との間に設けられている具体例を表したが、整流素子30は、ワード線WLと電極層46との間に設けられてもよい。また、整流素子30は、ビット線BLとワード線WLとが対向する領域以外の領域に設けてもよい。
【0017】
第1の配線20と整流素子30との間には、両構成要素間の元素の拡散などを防止するバリア層32が設けられていてもよい。
記録部40については、後に詳述する。
1つの第1の配線20と1つの第2の配線50とが交叉する領域に設けられた1つの記録部40が1つの記録用単位要素であり、これを「セル」という。
【0018】
第1の配線20と第2の配線50とに与える電位の組合せによって、各記録部40に印加される電圧が変化し、その時の記録部40の特性(例えば、抵抗値)によって、情報を記録したり消去したりすることができる。なお、各セルの間には、図2に表したように素子間絶縁層70が設けられている。
【0019】
また、セルの位置を基準として配線L(第1の配線20及び第2の配線50、ビット線BL及びワード線WL)の配線延在方向外側には、図示しないコンタクトプラグが取り付けられている。コンタクトプラグは、データの書込み及び読出しを行うための読出し/書込み回路等の周辺回路と接続している(図示せず)。記録部40には、コンタクトプラグ及び配線Lを通じて電流が流され、これにより記録部40の書込みや消去等の各種動作を行うことが可能となる。
【0020】
このように、不揮発性記憶装置2は、ビット線BLとワード線WLとが交叉する部分に記録部40が設けられた、いわゆるクロスポイント型不揮発性記憶装置(メモリ)である。
なお、上記の1層型の不揮発性記憶装置2は、Z軸方向に積層してもよく(いわゆる「多層型不揮発性記憶装置」)、これも具体例1に係る不揮発性記憶装置2に含まれる。以下、1層からなる不揮発性記憶装置2を「単位装置2A」と呼ぶことがある。
また、図1では、主面において第1の配線20及び第2の配線50がそれぞれ4本設けられており、セルは16設けられているが、これらは別の数だけ設けられていてもよい。
【0021】
また、具体例1では、第1の配線20を「ビット線BL」、第2の配線50を「ワード線WL」と呼んでいるが、逆に、第1の配線20を「ワード線WL」、第2の配線50を「ビット線BL」と呼んでもよい。
不揮発性記憶装置2が多層型不揮発性記憶装置である場合、上下方向に隣接する単位装置2Aの構成要素(第1の配線20、整流素子30、記録層44、第2の配線50等)の配置関係は上下方向に同じであっても異なってもよい。特に、上下方向に対称であってもよい。
【0022】
また、不揮発性記憶装置2が多層型不揮発性記憶装置である場合、上下方向に隣接する単位装置2A間で第1の配線20または第2の配線50が共有されていてもよく、共有されていなくてもよい。また、不揮発性記憶装置2の上下方向の両端においては、同種配線(2つのビット線BLまたは2つのワード線WL)が配置されてもよく、異種配線(ビット線BL及びワード線WL)が配置されてもよい。
【0023】
次に、記録部40について、図3を参照しつつ説明する。
図3は、セルの構成の一例を表す模式断面図である。図3に表したように、記録部40は、記録層44と、記録層44を上下方向から挟持する電極層42、46とを有する。
【0024】
電極層42、46は、記録層44に対して電気的な接続を得るために設けられ、必要に応じて設けられる。また、電極層42、46は、例えば、記録層44とその上下の構成要素との間の元素の拡散などを防止するバリア層としての機能を併有していてもよい。
【0025】
また、リセット(消去)動作において記録層44の加熱を効率よく行うために、記録層44の陰極側(ここでは、ワード線WL側)に、ヒータ層(抵抗率が約10−5Ωcm以上の材料)を設けてもよい。この場合、ヒータ層とワード線WLとの間にバリア層を設けてもよい。
【0026】
次に、記録層44について説明する。
前述したように、本具体例に係る不揮発性記憶装置2は、第1の配線20と第2の配線50とに与える電位の組合せによって、各記録部40に印加される電圧が変化し、その時の記録部40の特性(例えば、抵抗値)によって、情報を記録したり消去したりすることができる。このため、記録層44には、印加される電圧によって特性が変化する任意の材料を用いることができる。例えば、抵抗値が可逆的に遷移可能な可変抵抗層や、印加される電圧によって結晶状態と非晶質状態との間で可逆的に遷移可能な相変化層などが挙げられる。
【0027】
このような材料の具体例としては、例えば、金属酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、クロム(Cr)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、トリウム(Tr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、あるいは、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までのいわゆる希土類元素などの酸化物が挙げられる。また、酸化アルミニウム(Al)、酸化銅(CuO)、酸化シリコン(SiO)等も挙げられる。
【0028】
また、複合酸化物として、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)及びチタン酸ストロンチウム(SrTiO)の他、チタン酸カルシウム(CaTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、ビスマス酸化鉄(BiFeO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、バナジウム酸ナトリウム(NaVO)、バナジウム酸鉄(FeVO)、チタン酸バナジウム(TiVO)、クロム酸バナジウム(CrVO)、バナジウム酸ニッケル(NiVO)、バナジウム酸マグネシウム(MgVO)、バナジウム酸カルシウム(CaVO)、バナジウム酸ランタン(LaVO)、モリブデン酸バナジウム(VMoO)、モリブデン酸バナジウム(VMoO)、バナジウム酸リチウム(LiV)、珪酸マグネシウム(MgSiO)、珪酸マグネシウム(MgSiO)、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、マグネシウム酸鉛(PbMgO)、ニオブ酸鉛(PbNbO)、ホウ酸バリウム(BaB)、クロム酸ランタン(LaCrO)、チタン酸リチウム(LiTi)、銅酸ランタン(LaCuO)、チタン酸亜鉛(ZnTiO)、タングステン酸カルシウム(CaWO)等が薄膜形成可能となる。
【0029】
また、カルコゲナイド系の可変抵抗材料も挙げられる。カルコゲナイドとは、Se、Te等の16族元素を含む化合物の総称であり、16族元素がカルコゲンと呼ばれることに由来する。このカルコゲナイド系材料は、電圧を印加することによって結晶状態と非晶質状態との間で変化する、可変抵抗材料の一種である。
【0030】
次に、メモリセルの記録、再生、及び消去動作を実行する場合について説明する。
記録(セット動作)は、選択されたメモリセルに電圧を印加し、そのメモリセル内に電位勾配を発生させて電流パルスを流せばよい。例えば、ワード線WLの電位がビット線BLの電位よりも相対的に低い状態を作る。例えば、ビット線BLを接地電位とすれば、ワード線WLに負の電位を与えればよい。選択されたメモリセルは、相変化等により電子伝導性を有するようになるため、記録(セット動作)が完了する。
【0031】
記録のための電流パルスは、ワード線WLの電位がビット線BLの電位よりも相対的に高い状態を作ることにより発生させてもよい。
【0032】
再生に関しては、電流パルスを選択されたメモリセルに流し、そのメモリセルの抵抗値を検出することにより行う。ただし、電流パルスは、メモリセルを構成する材料が抵抗変化を起こさない程度の微小な値とすることが必要である。
【0033】
消去(リセット)動作に関しては、選択されたメモリセルを大電流パルスによりジュール加熱して、そのメモリセルの抵抗状態を元に戻せばよい。
【0034】
(不揮発性記憶装置の製造方法)
(製造方法例1)
次に、不揮発性記憶装置2の製造方法の一例(製造方法例1)について、図4〜図7を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る不揮発性記憶装置2の製造方法は、第1の配線20の層を形成する工程と、第1の配線20の層の主面上に記録層44の層を形成する工程と、加工体をエッチングして第1の方向に延在する複数の積層体を形成する工程と、複数の積層体の間隙(エッチングにより生じた空間)に素子間絶縁層70を形成する工程と、を備える。
【0035】
ここで、素子間絶縁層70を形成する工程は、エッチングにより生じた空間を形成する表面に気相成長法(気相堆積法)を用いて第1の絶縁層70Aを形成する工程と、第1の絶縁層70Aの表面に塗布法を用いて第2の絶縁層70Bを形成する工程とを有する。気相成長法としては、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相堆積)、熱CVD、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)等が挙げられる。また、塗布法としては、例えば、スピンコート法等が挙げられる。塗布法に用いる塗布剤としては、例えば、ケイ素、酸素、及び窒素を含む材料が挙げられ、具体的にはポリシラザンやHSQ(水素シルセスキオキサン)などが挙げられる。
【0036】
また、記録層44の層を形成する工程と、エッチングする工程との間に、加工体の主面上に、第2の配線50の材料と同じ材料からなる平坦化のストッパー層52を形成する工程をさらに備えてもよい。この場合、第2の絶縁層70Bを形成する工程の後に、ストッパー層52が露出するまで加工体の主面を平坦化する。その後、加工体の主面に第2の配線50の層を形成することにより、ストッパー層52と第2の配線50とは一体化して、各セルにおいて記録層44側に突出した突出部52を有する第2の配線54が形成される。
【0037】
以下、具体的な製造方法について説明する。
図4〜図7は、製造方法例1を表す模式工程断面図である。本製造方法例では、周辺回路を作製した後の配線形成工程において、図2に関して前述したクロスポイント型の不揮発性記憶装置2を作製する。また、ストッパー層52は、第2の配線50(ワード線)と同じ材料からなり、第2の配線54が形成される。
【0038】
まず、図4(a)に表したように、基板10の上に、第1の配線20(ビット線)、バリア層32、整流素子30、電極層42、記録層44、電極層46、ストッパー層52、及びエッチングマスク60の層を、下からこの順番で形成する。形成方法としては、例えばスパッタリングや熱CVD、プラズマCVDが挙げられる。
【0039】
第1の配線20の材料としては、例えばタングステンが挙げられる。整流素子30としては、例えばPIN(p型半導体/絶縁体/n型半導体)ダイオードやMIM(金属/絶縁体/金属)キャパシタ(コンデンサ)が挙げられる。ストッパー層52の材料には、第2の配線50(ワード線)の材料と同じ材料を用いる(例えば、タングステンなど)。エッチングマスク60の材料としては、例えばSiOが挙げられる。バリア層32、及び電極層42、46は、必要に応じて設けるものである。これらの材料としては、例えば、チタンや窒化チタンが挙げられる。
【0040】
次に、図4(b)に表したように、加工体に第1の方向(X軸方向)のエッチング加工を行う。エッチングは、基板10と第1の配線20との界面深さまで行う。ここで、エッチングにより生じた領域を、「素子分離領域80」と呼ぶこととする。
【0041】
次に、図4(c)に表したように、素子分離領域80を形成する表面に、例えばプラズマCVDを用いて第1の絶縁層70Aを形成する。原料ガスとしては、例えばSiH/Oが挙げられる。これにより、記録部40や整流素子30の側面を含むセル側壁に、不純物の少ない高品質な絶縁層が形成される。
【0042】
第1の絶縁層70Aは、素子分離領域80を形成する表面と、エッチングマスク60の主面とに形成される。この結果、素子分離領域80及びその近傍に、溝90が形成される。
【0043】
ここで、プラズマCVDは、溝90の開口部90aが第1の絶縁層70Aによって閉塞される前に停止する。具体的には、開口部90aの幅(開口部幅L1)が、後の塗布工程において塗布剤が通過し得る幅(例えば、5nm程度以上)である時に停止する。以下、塗布工程における塗布剤が通過することのできる幅を、「塗布剤通過幅」という。
【0044】
なお、この段階でプラズマCVDを停止しなければ、第1の絶縁層70Aは開口部90aに比較的多く堆積すると考えられるところ、開口部90aが第1の絶縁層70Aによって閉塞された時点において素子分離領域80には空隙が生じている可能性がある。特に、素子分離領域80のアスペクト比が高い場合には、空隙が生じやすいと考えられる。これにより、素子分離領域80の絶縁性が低下するおそれがある。
【0045】
ここで、溝90を適切な形状に形成するため、プラズマCVDによる堆積の異方性を高める、すなわち、原料ガスが素子分離領域80の底面等の主面上に比較的多く堆積するようにすることができる。これにより、開口部90aは第1の絶縁層70Aによって閉塞されにくくなる。異方性を高めるには、例えば、バイアス電力やガス圧力などの工程条件を変えてプラズマ雰囲気中のイオンの比率を高めることができる。
【0046】
その後、必要に応じ、適切な開口部幅L1を確保するために、例えばCMPを用いて加工体上面(加工体の主面)の平坦化を行ったり、素子分離領域80にエッチングを行ってもよい(図示せず)。
【0047】
次に、図4(d)に表したように、第1の絶縁層70Aの表面に、例えばスピンコート法を用いて第2の絶縁層70Bを形成する。塗布剤としては、例えばポリシラザンが挙げられる。この結果、溝90には塗布剤が充填され、素子分離領域80は第1の絶縁層70Aと第2の絶縁層70Bとによって閉塞される。これにより、X軸方向の素子間絶縁層70が形成される。
【0048】
次に、図5(a)に表したように、加工体上面を、例えばCMPを用いて平坦化する。平坦化は、ストッパー層52が露出するように行う。これにより、X軸方向の加工が完了する。
【0049】
次に、Y軸方向の加工を行う。図5(b)は、図5(a)に表した加工体のA−A線断面図である。
図5(c)に表したように、加工体上面に第2の配線50の層を形成する。形成方法としては、例えばスパッタリングが挙げられる。前述したように、第2の配線50(ワード線)及びストッパー層52には同じ材料を用い、これらは一体化して第2の配線54を形成する。その後、図6(a)に表したように、加工体上面に、例えばプラズマCVDを用いてエッチングマスク60の層を形成する。
【0050】
次に、図6(b)に表したように、加工体に第2の方向(Y軸方向)のエッチング加工を行う。エッチングは、第1の配線20とバリア層32との界面深さまで行う。この結果、Y軸方向の素子分離領域80が形成される。
【0051】
次に、図6(c)に表したように、素子分離領域80を形成する表面に、例えばプラズマCVDを用いて第1の絶縁層70Aを形成する。原料ガスとしては、例えばSiH/Oが挙げられる。これにより、記録部40や整流素子30の側面を含むセル側壁に、不純物の少ない高品質な絶縁層が形成される。
【0052】
第1の絶縁層70Aは、素子分離領域80を形成する表面と、エッチングマスク60の主面とに形成される。この結果、素子分離領域80及びその近傍に、溝90が形成される。ここで、図4(c)に関して前述したように、プラズマCVDは、開口部90aが第1の絶縁層70Aによって閉塞される前に停止する。具体的には、開口部幅L1が塗布剤通過幅(例えば、5nm程度以上)である時に停止する。
【0053】
ここで、前述したように、溝90を適切な形状に形成するため、プラズマCVDによる堆積の異方性を高めることができる。
その後、必要に応じ、適切な開口部幅L1を確保するために、例えばCMPを用いて加工体上面の平坦化を行ったり、素子分離領域80にエッチングを行ってもよい(図示せず)。
【0054】
次に、図7(a)に表したように、第1の絶縁層70Aの表面に、例えばスピンコート法を用いて第2の絶縁層70Bを形成する。塗布剤としては、例えばポリシラザンが挙げられる。この結果、溝90には塗布剤が充填され、素子分離領域80は第1の絶縁層70Aと第2の絶縁層70Bとによって閉塞される。これにより、Y軸方向の素子間絶縁層70が形成される。
【0055】
次に、図7(b)に表したように、加工体上面を、例えばCMPを用いて平坦化する。平坦化は、第2の配線54が露出するように行う。これにより、Y軸方向の加工が完了する。
その後、必要に応じ、塗布法によって形成された第2の絶縁層70Bの質を改善するため、例えば400℃以下の低温アニール等の熱処理を行う。
【0056】
以上の工程により、不揮発性記憶装置2が作製される。多層型不揮発性記憶装置を作製する場合には、上記の手順を繰り返せばよい。
なお、プラズマCVDによって形成される第1の絶縁層70Aと、スピンコート法によって形成される第2の絶縁層70Bとの界面には、低温アニール等の熱処理により、第2の絶縁層70Bのポリシラザンに含まれる窒素(N)が析出する可能性がある。しかし、この窒素は絶縁性に影響を与えることはなく、絶縁性は十全に確保される。
【0057】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について、図8〜図10を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態と対比される比較例(比較例1)に係る不揮発性記憶装置2の製造方法を表す模式工程断面図である。
【0058】
比較例1では、気相成長法のみを用いて素子間絶縁層を形成する。
まず、図4(a)及び図4(b)に関して前述した工程を実施する(図8(a))。これにより、X軸方向に素子分離領域80が形成される。次に、図8(b)に表したように、素子分離領域80を形成する表面に、プラズマCVDのみを用いて絶縁層100を形成する。ここで、図4(c)に関して前述したように、素子分離領域80及びその近傍に溝90が形成されるが、プラズマCVDは、溝90の開口部90aが絶縁層100によって閉塞されるまで行う。これにより、X軸方向の素子間絶縁層が形成される。
【0059】
その後、図示しないが、図5(a)〜図6(b)に関して前述した工程を実施し、さらにその後、Y軸方向の素子分離領域80に、X軸方向と同様にプラズマCVDのみを用いて絶縁層100を形成する。プラズマCVDは、開口部90aが絶縁層100によって閉塞されるまで行う。これにより、Y軸方向の素子間絶縁層が形成される。
【0060】
この場合、前述したように、プラズマCVDによる絶縁層100は開口部90aに比較的多く堆積すると考えられる。このため、図8(b)に表したように、素子分離領域80に空隙(ボイド)94が生じる可能性がある。特に、素子分離領域80のアスペクト比が高い場合(例えば、アスペクト比が10程度以上の場合)には、空隙94が生じやすいと考えられる。この結果、素子分離領域80の絶縁性を十全に確保することが困難となる。
【0061】
これに対し、本実施形態によれば、素子分離領域80は第1の絶縁層70Aと第2の絶縁層70Bとによって閉塞され、これにより素子分離領域80の絶縁性は十全に確保される。
【0062】
次に、別の比較例(比較例2)と対比しつつ説明する。
図9は、比較例2に係る不揮発性記憶装置2の製造方法を表す模式工程断面図である。
【0063】
比較例2では、比較例1に係る問題、すなわち、素子分離領域80に空隙94が生じるという問題を解消するために、エッチングを行うものである。
まず、図9(a)に表したように、比較例1と同様に、X軸方向の素子分離領域80にプラズマCVDのみを用いて絶縁層100Aを形成する。プラズマCVDは、開口部90aが絶縁層100Aによって閉塞されるまで行う。この結果、比較例1に関して前述したように、素子分離領域80に空隙94Aが生じる可能性がある。
【0064】
次に、図9(b)に表したように、素子分離領域80にエッチングを行う。エッチングは、空隙94Aが開口するまで行う。これにより、溝90が形成される。
【0065】
次に、図9(c)に表したように、絶縁層100Aの表面に、再度プラズマCVDのみを用いて絶縁層100Bを形成する。プラズマCVDは、開口部90aが絶縁層100Bによって閉塞されるまで行う。この結果、素子分離領域80に空隙94Bが生じる可能性がある。ただし、空隙94Bの大きさは、図9(a)に関して前述した工程において発生する空隙94Aより小さくなる。その後、同様の手順を繰り返して、素子分離領域80を絶縁層100A、100B、100C等からなる絶縁層100で閉塞する。これにより、X軸方向の素子間絶縁層が形成される。
【0066】
その後、図示しないが、図5(a)〜図6(b)に関して前述した工程を実施し、さらにその後、Y軸方向の素子分離領域80に、X軸方向と同様の手順で絶縁層100A、100B、100C等を形成し、素子分離領域80を絶縁層100で閉塞する。これにより、Y軸方向の素子間絶縁層が形成される。
【0067】
このように、比較例2では、X軸方向及びY軸方向のそれぞれにおいて、プラズマCVD及びエッチングをそれぞれ複数回行うことになる。このため、工程費用が比較的高くなる。
これに対し、本実施形態によれば、X軸方向及びY軸方向のそれぞれにおいて、気相成長法及び塗布法をそれぞれ1回行うだけでよい。このため、工程費用は比較的低い。
【0068】
次に、さらに別の比較例(比較例3)と対比しつつ説明する。
図10は、比較例3に係る不揮発性記憶装置2の製造方法を表す模式工程断面図である。
【0069】
比較例3では、塗布法のみを用いて素子間絶縁層を形成する。
まず、図4(a)及び図4(b)に関して前述した工程を実施する(図10(a))。これにより、X軸方向に素子分離領域80が形成される。次に、図10(b)に表したように、素子分離領域80に、スピンコート法のみを用いて絶縁層104を形成する。これにより、X軸方向の素子間絶縁層が形成される。
【0070】
その後、図示しないが、図5(a)〜図6(b)に関して前述した工程を実施し、さらにその後、Y軸方向の素子分離領域80に、X軸方向と同様にスピンコート法のみを用いて絶縁層104を形成する。これにより、Y軸方向の素子間絶縁層が形成される。
【0071】
ここで、スピンコート法によって形成される絶縁層は、プラズマCVDによって形成される絶縁層と異なり、例えば炭素などの不純物を比較的多く含む。このため、記録部40や整流素子30の側面を含むセル側壁に、比較的不純物の多い塗布層が形成される。この結果、不純物が記録部40等に拡散し、動作特性の劣化を招来するおそれがある。
【0072】
これに対し、本実施形態によれば、セル側壁には、プラズマCVDによって形成される不純物の少ない高品質な第1の絶縁層70Aが形成される。このため、良好な動作特性が確保される。
【0073】
なお、本実施形態で用いるプラズマCVD、ALD等の気相成長法やスピンコート法等の塗布法は、室温等の比較的低温で実施することができる。このため、本実施形態によれば、熱による素子の劣化が抑制され、良好な動作特性が確保される。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によれば、高アスペクト比を有する素子分離領域80(特に、メモリセル部の側壁近傍)に、高品質な素子間絶縁層70Aを導入することができる。これにより、スイッチング特性の劣化やばらつきを抑制することができる。また、素子間絶縁層70の形成加工が比較的容易である。さらに、比較的低温で素子間絶縁層70を形成することができるため、熱による素子の劣化を抑制することができる。
【0075】
すなわち、本実施形態によれば、良好な動作特性を有するとともに加工が容易な不揮発性記憶装置及びその製造方法が提供される。
【0076】
(製造方法例2)
次に、不揮発性記憶装置2の製造方法の他の例(製造方法例2)について、図11及び図12を参照しつつ説明する。
製造方法例2は、製造方法例1と基本的に同じであるが、第1の絶縁層70Aを形成する工程と、第2の絶縁層70Bを形成する工程との間に、加工体の主面を平坦化する工程をさらに備えている。
【0077】
以下、具体的な製造方法について説明する。
図11及び図12は、製造方法例2を表す模式工程断面図である。本製造方法例では、製造方法例1と同様に、周辺回路を作製した後の配線形成工程において、図2に関して前述したクロスポイント型の不揮発性記憶装置2を作製する。また、ストッパー層52は、第2の配線50(ワード線)と同じ材料からなり、第2の配線54が形成される。
【0078】
まず、図11(a)に表したように、基板10の上に、第1の配線20(ビット線)、バリア層32、整流素子30、電極層42、記録層44、電極層46、ストッパー層52、及びエッチングマスク60の層を、下からこの順番で形成する。形成方法としては、例えばスパッタリングや熱CVD、プラズマCVDが挙げられる。それぞれの材料等は、製造方法例1に関して前述した通りである。
【0079】
次に、図11(b)に表したように、加工体にX軸方向のエッチング加工を行う。エッチングは、基板10と第1の配線20との界面深さまで行う。この結果、素子分離領域80が形成される。
【0080】
次に、図11(c)に表したように、素子分離領域80を形成する表面に、例えばプラズマCVDを用いて第1の絶縁層70Aを形成する。原料ガスとしては、例えばSiOが挙げられる。これにより、記録部40や整流素子30の側面を含むセル側壁に、不純物の少ない高品質な絶縁層が形成される。
【0081】
ここで、図4(c)に関して前述したように、素子分離領域80及びその近傍に溝90が形成されるが、プラズマCVDは、溝90の開口部90aが第1の絶縁層70Aによって閉塞されるまで行う。これにより、工程管理が容易になる。すなわち、製造方法例1においては、図4(c)に関して前述した工程において、プラズマCVDは開口部90aが第1の絶縁層70Aによって閉塞される前に停止するところ、本製造方法例ではかかる工程停止時期の制限がない。このため、工程停止時期は、比較的広い範囲から選択することができる。
【0082】
これにより、比較例1と同様に(図8(b))、素子分離領域80に空隙94が生じる可能性がある。
ここで、空隙94を適切な形状に形成するため、プラズマCVDによる堆積の異方性を高める、すなわち、原料ガスが素子分離領域80の底面等の主面上に比較的多く堆積するようにすることができる。これにより、開口部90aは比較的遅い段階で第1の絶縁層70Aによって閉塞され、空隙94の上端(Z軸正側端)は、比較的上方(Z軸正側)に位置すると考えられる。異方性を高めるには、例えば、バイアス電力やガス圧力などの工程条件を変えてプラズマ雰囲気中のイオンの比率を高めることができる。
【0083】
空隙94の幅(空隙幅L2)は、塗布剤通過幅を有してもよく、後述するディッシングの効果により、有さなくてもよい。塗布剤通過幅を有する場合、空隙幅L2が塗布剤通過幅である部分のZ軸上の位置は、ストッパー層52やエッチングマスク60などの比較的上方(Z軸正側)に存在してよく、あるいはこれより下方(Z軸負側)に存在してもよい。
【0084】
次に、図12(a)に表したように、加工体上面を、例えばCMPを用いて平坦化する。平坦化は、空隙94が開口し、溝90が形成されるまで行う。具体的には、Z軸方向において、ストッパー層52内の位置であって、開口部幅L1が塗布剤通過幅(例えば、5nm程度以上)となる位置まで行う。
【0085】
ここで、溝90が形成された後のCMPにおいては、開口部90aの部分がより多く研磨される可能性がある。本明細書において、この現象を「ディッシング」と呼ぶこととする。このため、平坦化された面(加工体上面)が、空隙幅L2が塗布剤通過幅である部分のZ軸上の位置に達する前に、すなわち、この位置よりも上方(Z軸正側)に位置する時に、開口部幅L1が塗布剤通過幅に達し得ると考えられる。あるいは、空隙幅L2が塗布剤通過幅を有さない場合であっても、ディッシングにより、塗布剤通過幅を有する開口部幅L1を持つ溝90が形成される場合があると考えられる。
【0086】
なお、平坦化を行うことにより、溝90のアスペクト比が小さくなり、後の塗布工程において第2の絶縁層70Bが容易に形成され得る。
その後、CMPで使用した薬液を、洗浄により除去する。
【0087】
次に、図12(b)に表したように、第1の絶縁層70Aの表面に、例えばスピンコート法を用いて第2の絶縁層70Bを形成する。塗布剤としては、例えばポリシラザンが挙げられる。この結果、溝90には塗布剤が充填され、素子分離領域80は第1の絶縁層70Aと第2の絶縁層70Bとによって閉塞される。これにより、X軸方向の素子間絶縁層70が形成される。
【0088】
次に、図12(c)に表したように、加工体上面を、例えばCMPを用いて平坦化する。平坦化は、ストッパー層52が露出するように行う。これにより、X軸方向の加工が完了する。
【0089】
その後、図示しないが、図5(a)〜図6(b)に関して前述した工程を実施し、さらにその後、Y軸方向の加工を上記X軸方向の加工と同様に行う。その後、必要に応じ、塗布法によって形成された第2の絶縁層70Bの質を改善するため、例えば400℃以下の低温アニール等の熱処理を行う。
【0090】
以上の工程により、不揮発性記憶装置2が作製される。多層型不揮発性記憶装置を作製する場合には、上記の手順を繰り返せばよい。
なお、製造方法例1と同様に、第1の絶縁層70Aと第2の絶縁層70Bとの界面には、窒素が析出する可能性があるが、これにより絶縁性が損なわれることはない。
【0091】
本製造方法例でも、製造方法例1と同じ効果が得られる。すなわち、高アスペクト比を有する素子分離領域80(特に、メモリセル部の側壁近傍)に高品質な素子間絶縁層70Aを導入することにより、スイッチング特性の劣化やばらつきが抑制される。また、素子間絶縁層70の形成加工が比較的容易である。さらに、比較的低温で素子間絶縁層70を形成することができるため、熱による素子の劣化を抑制することができる。すなわち、良好な動作特性を有するとともに加工が容易な不揮発性記憶装置及びその製造方法が提供される。
【0092】
(製造方法例3)
次に、不揮発性記憶装置2の製造方法の他の例(製造方法例3)について、図13を参照しつつ説明する。
製造方法例3は、製造方法例1と基本的に同じであるが、第1の絶縁層70Aを形成する工程と、第2の絶縁層70Bを形成する工程との間に、素子分離領域80にエッチングを行う工程をさらに備えている。すなわち、製造方法例2で導入された平坦化工程の代わりに、エッチング工程を導入するものである。
【0093】
以下、具体的な製造方法について説明する。
図13は、製造方法例3を表す模式工程断面図である。
図13(a)に表したように、製造方法例2に係る図11(a)〜(c)に関して前述した要領で、第1の絶縁層70Aを形成する。この結果、素子分離領域80に空隙94が形成される。
【0094】
次に、図13(b)に表したように、素子分離領域80にエッチングを行う。エッチングは、空隙94が開口し、溝90が形成されるまで行う。具体的には、Z軸方向において、ストッパー層52内の位置であって、開口部幅L1が塗布剤通過幅(例えば、5nm程度以上)となる位置まで行う。
【0095】
エッチングは、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)、CDE(Chemical Dry Etching:化学ドライエッチング)等のドライエッチングや、ウェットエッチングを用いることができる。ドライエッチングの場合、エッチング方向に異方性があるため、セル側壁部のエッチングを抑え、開口部90a近傍のみをエッチングすることができる。一方ウェットエッチングは、工程費用が比較的低いという利点がある。
【0096】
次に、図13(c)に表したように、第1の絶縁層70Aの表面に、例えばスピンコート法を用いて第2の絶縁層70Bを形成する。塗布剤としては、例えばポリシラザンが挙げられる。この結果、溝90には塗布剤が充填され、素子分離領域80は第1の絶縁層70Aと第2の絶縁層70Bとによって閉塞される。これにより、素子間絶縁層70が形成される。
【0097】
その後、図示しないが、図5(a)〜図6(b)に関して前述した工程を実施し、さらにその後、Y軸方向の加工を上記X軸方向の加工と同様に行う。その後、必要に応じ、塗布法によって形成された第2の絶縁層70Bの質を改善するため、例えば400℃以下の低温アニール等の熱処理を行う。
【0098】
以上の工程により、不揮発性記憶装置2が作製される。多層型不揮発性記憶装置を作製する場合には、上記の手順を繰り返せばよい。
なお、製造方法例1と同様に、第1の絶縁層70Aと第2の絶縁層70Bとの界面には、窒素が析出する可能性があるが、これにより絶縁性が損なわれることはない。
【0099】
本製造方法例でも、製造方法例1と同じ効果が得られる。すなわち、高アスペクト比を有する素子分離領域80(特に、メモリセル部の側壁近傍)に高品質な素子間絶縁層70Aを導入することにより、スイッチング特性の劣化やばらつきが抑制される。また、素子間絶縁層70の形成加工が比較的容易である。さらに、比較的低温で素子間絶縁層70を形成することができるため、熱による素子の劣化を抑制することができる。すなわち、良好な動作特性を有するとともに加工が容易な不揮発性記憶装置及びその製造方法が提供される。
【0100】
なお、上記では、気相成長法にプラズマCVDを、塗布法にスピンコート法を用いた場合を中心に説明したが、これら以外の気相成長法及び塗布法を用いてもよい。
【0101】
(応用例)
以下、本実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造方法の応用例について説明する。
本実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造方法を、プローブメモリに適用した場合及びフラッシュメモリに適用した場合について説明する。
【0102】
(プローブメモリ)
まず、プローブメモリに適用した場合について説明する。
図14及び図15は、本実施形態に係るプローブメモリを表す模式図である。
XYスキャナー160上には、図1〜図3に関して前述した記録部が設けられた記録媒体が配置される。この記録媒体に対向する形で、プローブアレイが配置される。
【0103】
プローブアレイは、基板230と、基板230の一面側にアレイ状に配置される複数のプローブ(ヘッド)240と、を有する。複数のプローブ240の各々は、例えば、カンチレバーから構成され、マルチプレクスドライバ250,260により駆動される。
複数のプローブ240は、それぞれ、基板230内のマイクロアクチュエータを用いて個別に動作可能であるが、ここでは、全てをまとめて同じ動作をさせて記録媒体のデータエリアに対するアクセスを行う例を説明する。
【0104】
まず、マルチプレクスドライバ250,260を用いて、全てのプローブ240をX方向に一定周期で往復動作させ、記録媒体のサーボエリアからY方向の位置情報を読み出す。Y方向の位置情報は、ドライバ150に転送される。
ドライバ150は、この位置情報に基づいてXYスキャナー160を駆動し、記録媒体をY方向に移動させ、記録媒体とプローブとの位置決めを行う。
両者の位置決めが完了したら、データエリア上のプローブ240の全てに対して、同時、かつ、連続的に、データの読み出しまたは書き込みを行う。
【0105】
データの読み出し及び書き込みは、プローブ240がX方向に往復動作していることから連続的に行われる。また、データの読み出し及び書き込みは、記録媒体のY方向の位置を順次変えることにより、データエリアに対して、一行ずつ、実施される。
なお、記録媒体をX方向に一定周期で往復運動させて記録媒体から位置情報を読み出し、プローブ240をY方向に移動させるようにしてもよい。
【0106】
記録媒体は、例えば、基板200と、基板200上の電極層210と、電極層210上の記録層220とから構成される。
記録層220は、複数のデータエリア、並びに、複数のデータエリアのX方向の両端にそれぞれ配置されるサーボエリアを有する。複数のデータエリアは、記録層220の主要部を占める。
【0107】
サーボエリア内には、サーボバースト信号が記録される。サーボバースト信号は、データエリア内のY方向の位置情報を示している。
記録層220内には、これらの情報の他に、さらに、アドレスデータが記録されるアドレスエリア及び同期をとるためのプリアンブルエリアが配置される。
データ及びサーボバースト信号は、記録ビット(電気抵抗変動)として記録層220に記録される。記録ビットの“1”,“0”情報は、記録層220の電気抵抗を検出することにより読み出す。
【0108】
本例では、1つのデータエリアに対応して1つのプローブ(ヘッド)が設けられ、1つのサーボエリアに対して1つのプローブが設けられる。
データエリアは、複数のトラックから構成される。アドレスエリアから読み出されるアドレス信号によりデータエリアのトラックが特定される。また、サーボエリアから読み出されるサーボバースト信号は、プローブ240をトラックの中心に移動させ、記録ビットの読み取り誤差をなくすためのものである。
ここで、X方向をダウントラック方向、Y方向をトラック方向に対応させることにより、HDDのヘッド位置制御技術を利用することが可能になる。
【0109】
次に、このプローブメモリの記録/再生動作について説明する。
図16は、記録(セット動作)時の状態を説明するための概念図である。
記録媒体は、基板(例えば、半導体チップ)200の上に一様に設けられた電極層210と、電極層210の上に設けられた複数のセル状の記録層220及び電極層130と、複数のセルの間に設けられた素子間絶縁層700と、電極層130及び素子間絶縁層700の上に設けられたコンタクト電極層130Cと、コンタクト電極層130Cの上に設けられた保護層130Bとから構成されるものとする。保護層130Bは、例えば、薄い絶縁体から構成される。
【0110】
記録動作は、記録層220表面に電圧を印加し、記録層220に電位勾配を発生させることにより行う。具体的には、電流/電圧パルスを記録層220に与えればよい。
再生に関しては、電流パルスを記録層220に流し、記録層220の抵抗値を検出することにより行う。ただし、電流パルスは、記録層220を構成する材料が抵抗変化を起こさない程度の微小な値とする。
【0111】
例えば、センスアンプS/Aにより発生した読み出し電流(電流パルス)をプローブ240から記録層220に流し、センスアンプS/Aにより記録層220の抵抗値を測定する。
なお、再生では、記録媒体上をプローブ240により走査(スキャン)することで、連続再生が可能となる。
【0112】
消去(リセット)動作に関しては、記録層220を大電流パルスによりジュール加熱して、記録層220の抵抗状態を元に戻せばよい。あるいは、セット動作時とは逆向きの電位差を与えるパルスを印加してもよい。
消去動作は、セルごとに行うことができ、複数のセルをまとめて行うこともできる。
【0113】
ここで、素子間絶縁層700は、本実施形態に係る製造方法を用いて作製する。これにより、前述した効果が得られる。すなわち、高アスペクト比を有する素子分離領域(特に、メモリセル部の側壁近傍)に高品質な素子間絶縁層700Aを導入することにより、スイッチング特性の劣化やばらつきが抑制される。また、素子間絶縁層700の形成加工が比較的容易である。さらに、比較的低温で素子間絶縁層700を形成することができるため、熱による素子の劣化を抑制することができる。すなわち、良好な動作特性を有するとともに加工が容易な不揮発性記憶装置及びその製造方法が提供される。
【0114】
(フラッシュメモリ)
上記では、クロスポイント型の抵抗変化型または相変化型の不揮発性記憶装置を取り上げて説明したが、本実施形態の適用対象は、かかる装置に限られない。本実施形態は、素子間を電気的に絶縁することが求められる任意の記憶装置に適用することができる。以下、本実施形態をフラッシュメモリに適用した場合について説明する。
図17は、本実施形態に係るフラッシュメモリのメモリセルを表す模式断面図である。
【0115】
フラッシュメモリのメモリセルは、MIS(metal-insulator-semiconductor)トランジスタから構成される。
半導体基板410の表面領域には、拡散層420が形成される。拡散層420の間のチャネル領域上には、ゲート絶縁層430が形成される。ゲート絶縁層430上には、図1〜図3に関して前述した記録部440(記録層(RRAM:Resistive RAM)及び上下電極層)が形成される。記録部440上には、コントロールゲート電極450が形成される。
【0116】
半導体基板410は、ウェル領域でもよく、また、半導体基板410と拡散層420とは、互いに逆の導電型を有する。コントロールゲート電極450は、ワード線となり、例えば、導電性ポリシリコンから構成される。各セル間には、図示しない素子間絶縁層が設けられている。
【0117】
図17を参照しつつ、その基本動作について説明する。
セット(書き込み)動作は、コントロールゲート電極450に電位V1を与え、半導体基板410に電位V2を与えることにより実行する。
電位V1,V2の差は、記録部440が相変化または抵抗変化するのに十分な大きさであることが必要であるが、その向きについては、特に、限定されない。
すなわち、V1>V2及びV1<V2のいずれでもよい。
例えば、初期状態(リセット状態)において、記録部440が絶縁体(抵抗大)であると仮定すると、実質的にゲート絶縁層430が厚くなったことになるため、メモリセル(MISトランジスタ)の閾値は、高くなる。
【0118】
この状態から電位V1,V2を与えて記録部440を導電体(抵抗小)に変化させると、実質的にゲート絶縁層430が薄くなったことになるため、メモリセル(MISトランジスタ)の閾値は、低くなる。
なお、電位V2は、半導体基板410に与えたが、これに代えて、メモリセルのチャネル領域に拡散層420から電位V2を転送するようにしてもよい。
【0119】
リセット(消去)動作は、コントロールゲート電極450に電位V1’を与え、拡散層420の一方に電位V3を与え、拡散層420の他方に電位V4(<V3)を与えることにより実行する。
電位V1’は、セット状態のメモリセルの閾値を越える値にする。
この時、メモリセルは、オンになり、電子が拡散層420の他方から一方に向かって流れると共に、ホットエレクトロンが発生する。このホットエレクトロンは、ゲート絶縁層430を介して記録部440に注入されるため、記録部440の温度が上昇する。
【0120】
これにより、記録部440は、導電体(抵抗小)から絶縁体(抵抗大)に変化するため、実質的にゲート絶縁層430が厚くなったことになり、メモリセル(MISトランジスタ)の閾値は、高くなる。
【0121】
(NAND型フラッシュメモリ)
図18は、NANDセルユニットの回路図である。
また、図19は、本実施形態に係るNANDセルユニットの構造を表す模式図である。
【0122】
P型半導体基板410a内には、N型ウェル領域410b及びP型ウェル領域410cが形成される。P型ウェル領域410c内に、NANDセルユニットが形成される。各セル間には、素子間絶縁層700が設けられている。
NANDセルユニットは、直列接続される複数のメモリセルMCからなるNANDストリングと、その両端に1つずつ接続される合計2つのセレクトゲートトランジスタSTとから構成される。
【0123】
メモリセルMC及びセレクトゲートトランジスタSTは、同じ構造を有する。具体的には、これらは、N型拡散層420と、N型拡散層420の間のチャネル領域上のゲート絶縁層430と、ゲート絶縁層430上の記録部440(記録層(RRAM)及び上下電極層)と、記録部440上のコントロールゲート電極450と、から構成される。
【0124】
メモリセルMCの記録部440の状態(絶縁体/導電体)は、上述した基本動作により変化させることが可能である。これに対し、セレクトゲートトランジスタSTの記録部440は、セット状態、すなわち、導電体(抵抗小)に固定される。
セレクトゲートトランジスタSTの1つは、ソース線SLに接続され、他の1つは、ビット線BLに接続される。
【0125】
セット(書き込み)動作前には、NANDセルユニット内の全てのメモリセルは、リセット状態(抵抗大)になっているものとする。
セット(書き込み)動作は、ソース線SL側のメモリセルMCからビット線BL側のメモリセルに向かって1つずつ順番に行われる。
選択されたワード線(コントロールゲート電極)WLに書き込み電位としてV1(プラス電位)を与え、非選択のワード線WLに転送電位(メモリセルMCがオンになる電位)としてVpassを与える。
【0126】
ソース線SL側のセレクトゲートトランジスタSTをオフ、ビット線BL側のセレクトゲートトランジスタSTをオンにし、ビット線BLから選択されたメモリセルMCのチャネル領域にプログラムデータを転送する。
例えば、プログラムデータが“1”のときは、選択されたメモリセルMCのチャネル領域に書き込み禁止電位(例えば、V1と同じ程度の電位)を転送し、選択されたメモリセルMCの記録部440の抵抗値が高い状態から低い状態に変化しないようにする。
また、プログラムデータが“0”のときは、選択されたメモリセルMCのチャネル領域にV2(<V1)を転送し、選択されたメモリセルMCの記録部440の抵抗値を高い状態から低い状態に変化させる。
【0127】
リセット(消去)動作では、例えば、全てのワード線(コントロールゲート電極)WLにV1’を与え、NANDセルユニット内の全てのメモリセルMCをオンにする。また、2つのセレクトゲートトランジスタSTをオンにし、ビット線BLにV3を与え、ソース線SLにV4(<V3)を与える。
この時、ホットエレクトロンがNANDセルユニット内の全てのメモリセルMCの記録部440に注入されるため、NANDセルユニット内の全てのメモリセルMCに対して一括してリセット動作が実行される。
【0128】
読み出し動作は、選択されたワード線(コントロールゲート電極)WLに読み出し電位(プラス電位)を与え、非選択のワード線(コントロールゲート電極)WLには、メモリセルMCがデータ“0”、“1”によらず必ずオンになる電位を与える。
また、2つのセレクトゲートトランジスタSTをオンにし、NANDストリングに読み出し電流を供給する。
選択されたメモリセルMCは、読み出し電位が印加されると、それに記憶されたデータの値に応じてオンまたはオフになるため、例えば、読み出し電流の変化を検出することにより、データを読み出すことができる。
【0129】
なお、図19に表した構造では、セレクトゲートトランジスタSTは、メモリセルMCと同じ構造を有しているが、例えば、図20に表したように、セレクトゲートトランジスタSTについては、記録部を形成せずに、通常のMISトランジスタとすることも可能である。
【0130】
図21は、NAND型フラッシュメモリの変形例を表す模式図である。
この変形例は、NANDストリングを構成する複数のメモリセルMCのゲート絶縁層がP型半導体層470に置き換えられている構造を有する。
高集積化が進み、メモリセルMCが微細化されると、電圧を与えていない状態で、P型半導体層470は、空乏層で満たされることになる。
【0131】
セット(書き込み)時には、選択されたメモリセルMCのコントロールゲート電極450にプラスの書き込み電位(例えば、3.5V)を与え、かつ、非選択のメモリセルMCのコントロールゲート電極450にプラスの転送電位(例えば、1V)を与える。
この時、NANDストリング内の複数のメモリセルMCのP型ウェル領域410cの表面がP型からN型に反転し、チャネルが形成される。
【0132】
そこで、上述したように、ビット線BL側のセレクトゲートトランジスタSTをオンにし、ビット線BLから選択されたメモリセルMCのチャネル領域にプログラムデータ“0”を転送すれば、セット動作を行うことができる。
【0133】
リセット(消去)は、例えば、全てのコントロールゲート電極450にマイナスの消去電位(例えば、−3.5V)を与え、P型ウェル領域410c及びP型半導体層470に接地電位(0V)を与えれば、NANDストリングを構成する全てのメモリセルMCに対して一括して行うことができる。
【0134】
読み出し時には、選択されたメモリセルMCのコントロールゲート電極450にプラスの読み出し電位(例えば、0.5V)を与え、かつ、非選択のメモリセルMCのコントロールゲート電極450に、メモリセルMCがデータ“0”、“1”によらず必ずオンになる転送電位(例えば、1V)を与える。
【0135】
ただし、“1”状態のメモリセルMCの閾値電圧Vth”1”は、0V<Vth”1”<0.5Vの範囲内にあるものとし、“0”状態のメモリセルMCの閾値電圧Vth”0”は、0.5V<Vth”0”<1Vの範囲内にあるものとする。
また、2つのセレクトゲートトランジスタSTをオンにし、NANDストリングに読み出し電流を供給する。
このような状態にすれば、選択されたメモリセルMCに記憶されたデータの値に応じてNANDストリングに流れる電流量が変わるため、この変化を検出することにより、データを読み出すことができる。
【0136】
なお、この変形例においては、P型半導体層470のホールドープ量がP型ウェル領域410cのそれよりも多く、かつ、P型半導体層470のフェルミレベルがP型ウェル領域410cのそれよりも0.5V程度深くなっていることが望ましい。
これは、コントロールゲート電極450にプラスの電位を与えたときに、N型拡散層420間のP型ウェル領域410cの表面部分からP型からN型への反転が開始し、チャネルが形成されるようにするためである。
【0137】
このようにすることで、例えば、書き込み時には、非選択のメモリセルMCのチャネルは、P型ウェル領域410cとP型半導体層470の界面のみに形成され、読み出し時には、NANDストリング内の複数のメモリセルMCのチャネルは、P型ウェル領域410cとP型半導体層470の界面のみに形成される。
つまり、メモリセルMCの記録部440が導電体(セット状態)であっても、拡散層420とコントロールゲート電極450とが短絡することはない。
【0138】
(NOR型フラッシュメモリ)
図22は、NORセルユニットの回路図である。
また、図23は、本実施形態に係るNORセルユニットの構造を表す模式図である。
【0139】
P型半導体基板410a内には、N型ウェル領域410b及びP型ウェル領域410cが形成されている。P型ウェル領域410c内に、NORセルが形成されている。各セル間には、素子間絶縁層700が設けられている。
NORセルは、ビット線BLとソース線SLとの間に接続される1つのメモリセル(MISトランジスタ)MCから構成される。
【0140】
メモリセルMCは、N型拡散層420と、N型拡散層420の間のチャネル領域上のゲート絶縁層430と、ゲート絶縁層430上の記録部440(記録層(RRAM)及び上下電極層)と、記録部440上のコントロールゲート電極450と、から構成される。メモリセルMCの記録部440の状態(絶縁体/導電体)は、上述の基本動作により変化させることが可能である。
【0141】
(2トランジスタ型フラッシュメモリ)
図24は、2トランジスタ型セルユニットの回路図である。
また、図25は、本実施形態に係る2トラセルユニットの構造を表す模式図である。
【0142】
2トランジスタ型セルユニットは、NANDセルユニットの特徴とNORセルの特徴とを併せ持った新たなセル構造として最近開発されたものである。
P型半導体基板410a内には、N型ウェル領域410b及びP型ウェル領域410cが形成される。P型ウェル領域410c内に、2トランジスタ型セルユニットが形成される。各セル間には、素子間絶縁層700が設けられている。
【0143】
2トランジスタ型セルユニットは、直列接続される1つのメモリセルMCと1つのセレクトゲートトランジスタSTとから構成される。
メモリセルMC及びセレクトゲートトランジスタSTは、同じ構造を有する。具体的には、これらは、N型拡散層420と、N型拡散層420の間のチャネル領域上のゲート絶縁層430と、ゲート絶縁層430上の記録部(記録層(RRAM)及び上下電極層)と、記録部440上のコントロールゲート電極450と、から構成される。
メモリセルMCの記録部440の状態(絶縁体/導電体)は、上述の基本動作により変化させることが可能である。これに対し、セレクトゲートトランジスタSTの記録部440は、セット状態、すなわち、導電体(抵抗小)に固定される。
【0144】
セレクトゲートトランジスタSTは、ソース線SLに接続され、メモリセルMCは、ビット線BLに接続される。
メモリセルMCの記録部440の状態(絶縁体/導電体)は、上述の基本動作により変化させることが可能である。
図25に表した構造では、セレクトゲートトランジスタSTは、メモリセルMCと同じ構造を有しているが、例えば、図26に表したように、セレクトゲートトランジスタSTについては、記録部を形成せずに、通常のMISトランジスタとすることも可能である。
【0145】
これらフラッシュメモリにおいて、素子間絶縁層700は、本実施形態に係る製造方法を用いて作製する。これにより、前述した効果が得られる。すなわち、高アスペクト比を有する素子分離領域(特に、メモリセル部の側壁近傍)に高品質な素子間絶縁層700Aを導入することにより、スイッチング特性の劣化やばらつきが抑制される。また、素子間絶縁層700の形成加工が比較的容易である。さらに、比較的低温で素子間絶縁層700を形成することができるため、熱による素子の劣化を抑制することができる。すなわち、良好な動作特性を有するとともに加工が容易な不揮発性記憶装置及びその製造方法が提供される。
【0146】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】具体例1に係る不揮発性記憶装置2の模式図である。
【図2】不揮発性記憶装置2の模式断面図である。
【図3】セルの構成の一例を表す模式断面図である。
【図4】製造方法例1を表す模式工程断面図である。
【図5】製造方法例1を表す模式工程断面図である。
【図6】製造方法例1を表す模式工程断面図である。
【図7】製造方法例1を表す模式工程断面図である。
【図8】本実施形態と対比される比較例(比較例1)に係る不揮発性記憶装置2の製造方法を表す模式工程断面図である。
【図9】比較例2に係る不揮発性記憶装置2の製造方法を表す模式工程断面図である。
【図10】比較例3に係る不揮発性記憶装置2の製造方法を表す模式工程断面図である。
【図11】製造方法例2を表す模式工程断面図である。
【図12】製造方法例2を表す模式工程断面図である。
【図13】製造方法例3を表す模式工程断面図である。
【図14】本実施形態に係るプローブメモリを表す模式図である。
【図15】本実施形態に係るプローブメモリを表す模式図である。
【図16】記録(セット動作)時の状態を説明するための概念図である。
【図17】本実施形態に係るフラッシュメモリのメモリセルを表す模式断面図である。
【図18】NANDセルユニットの回路図である。
【図19】本実施形態に係るNANDセルユニットの構造を表す模式図である。
【図20】通常のMISトランジスタを用いた具体例を表す模式図である。
【図21】NAND型フラッシュメモリの変形例を表す模式図である。
【図22】NORセルユニットの回路図である。
【図23】本実施形態に係るNORセルユニットの構造を表す模式図である。
【図24】2トランジスタ型セルユニットの回路図である。
【図25】本実施形態に係る2トラセルユニットの構造を表す模式図である。
【図26】通常のMISトランジスタを用いた具体例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0148】
2 不揮発性記憶装置
10 基板
20 第1の配線
32 バリア層
30 整流素子
40 記録部
42 電極層
44 記録層
46 電極層
50 第2の配線
52 ストッパー層、突出部
54 第2の配線
60 エッチングマスク
70 素子間絶縁層
70A 第1の絶縁層
70B 第2の絶縁層
80 素子分離領域
90 溝
90a 開口部
94 空隙
94A 空隙
94B 空隙
100 絶縁層
100A 絶縁層
100B 絶縁層
104 絶縁層
130 電極層
130B 保護層
130C コンタクト電極層
150 ドライバ
160 XYスキャナー
200 基板
210 電極層
220 記録層
230 基板
240 プローブ
250,260 マルチプレクスドライバ
410 半導体基板
410a P型半導体基板
410b N型ウェル領域
410c P型ウェル領域
420 拡散層
420d 拡散層(ドレイン)
420s 拡散層(ソース)
430 ゲート絶縁層
440 記録部
450 コントロールゲート電極
460 セレクトゲート
470 P型半導体層
700 素子間絶縁層
BL ビット線
L1 開口部幅
L2 空隙幅
WL ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する第1の配線と、
前記第1の方向と非平行な第2の方向に延在する第2の配線と、
前記第1の配線と前記第2の配線との間に挟持され、前記第1の配線と前記第2の配線とを介して供給される電流により、第1の状態と第2の状態との間を可逆的に遷移可能な記録層と、
を有する不揮発性記憶装置の製造方法であって、
前記第1の配線の層を形成する工程と、
前記第1の配線の層の主面上に前記記録層の層を形成する工程と、
前記記録層の層と前記第1の配線の層を選択的にエッチングして、前記第1の方向に延在する複数の積層体を形成する工程と、
前記複数の積層体の間隙の表面に、気相成長法を用いて第1の絶縁層を形成する工程と、
前記第1の絶縁層の上に、塗布法を用いて第2の絶縁層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項2】
前記気相成長法は、プラズマ化学気相堆積法であることを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項3】
前記気相成長法は、原子層堆積法であることを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項4】
前記塗布法は、スピンコート法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項5】
前記塗布法に用いる塗布剤は、ポリシラザンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項6】
前記記録層の層を形成する工程と、前記積層体を形成する工程と、の間に、前記記録層の上に、前記第2の配線の材料と同じ材料からなるストッパー層を形成する工程をさらに備え、
前記第2の絶縁層を形成する工程の後に、前記ストッパー層が露出するまで加工体の主面を平坦化する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の絶縁層を形成する工程と、前記第2の絶縁層を形成する工程と、の間に、
加工体の主面を平坦化する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−62418(P2010−62418A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228026(P2008−228026)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】