説明

位置合わせ方法および装置

【課題】成膜用の基板とマスクとの位置合わせ精度を向上させる。
【解決手段】基板5の側縁の中央部を、基板ホルダー1に設けられた突起3に当接させて、基板5が凸形状となるように保持することで、基板5の自重による撓みを防止する。位置合わせ用アクチュエーター4によって基板ホルダー1上に保持されたときの基板5の凸形状の稜線上にアライメントマーク5aを配置する。基板5とマスク6の位置合わせを行うときと、位置合わせ後に基板5とマスク6を密着させたときとで、アライメントマーク5aの位置変動が生じないようにすることで、位置合わせ精度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子(有機発光素子)の製造等に用いられる成膜装置において、アライメントマークを用いて基板とマスクの位置合わせを行う位置合わせ方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機EL素子を搭載する様々な大きさのフラットパネルディスプレイ装置が製造されているが、最近では、品質の安定化とコストダウンおよび生産効率の向上のために、ディスプレイに用いる基板サイズが、より大判化するようになってきた。
【0003】
基板サイズがより大判化されると、その自重による基板の撓みが大きくなり、この自重撓みが生じている状態で基板とマスクとの位置合わせを行うと、位置合わせ精度が低下し、これを原因とする不良が発生しやすい状態となり、歩留りの低下を招いていた。
【0004】
基板の自重による撓みを補正する方法は、特許文献1に開示されたように、基板ホルダーに弾性体を用いて、基板ホルダーを予め凸形状に形成し、基板を載置すると基板の重さで基板ホルダーが変形し、基板を略フラット形状に保持する方法等が知られている。
【特許文献1】特開2003−258078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来技術によれば、基板ホルダーは予め凸形状になっているが、基板を載置すると、その基板の重さによって基板ホルダーが弾性変形するため、基板を安定形状に維持して保持することができない。
【0006】
一般的に360mm×460mm程度またはそれ以上の基板の端部を支持すると、その板厚の大きさによって、例えば、板厚が0.7mm程度の基板を用いた場合は、自重撓みが大きくなる。その結果、基板とマスクとの位置合わせのために基板のアライメントマークの位置を観察したときと、基板をマスク上に設置したときとでは、アライメントマークの位置が異なるため、位置合わせ精度が劣化する。すなわち、マスク上に載置すると基板の自重撓みが無い状態になるので、アライメントマークを検出したときの状態と一致しない、という問題がある。このように、位置合わせ精度を維持することが困難であることによるタクトの増大を招いていた。
【0007】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、基板の自重撓み方向の剛性を増大させ、自重撓みによる位置合わせ精度の低下を回避できる基板とマスクの位置合わせ方法および装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置合わせ方法は、成膜用の基板とマスクの位置合わせを行うための位置合わせ方法であって、中央部に稜線を有する凸形状となるように前記基板を変形させた状態で、前記基板のアライメントマークを検出する工程と、前記マスクのアライメントマークを検出する工程と、検出された前記基板のアライメントマークと前記マスクのアライメントマークを合致させるように、前記基板と前記マスクを相対移動させる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
基板を凸形状に保持すると、基板の自重撓みが無くなり、基板サイズが大きい場合においても、基板とマスクとの位置合わせの精度を低下させることがない。
【0010】
また、基板を凸形状に保持し、その稜線上に設けた基板のアライメントマークを検出することで、基板の自重撓みが無い状態における位置合わせと同じ精度で、マスクとの位置合わせを行うことができる。
【0011】
さらに、基板を剛体の基板ホルダー等の支持部材上に凸形状に保持し、基板外形を、位置決めピン等の位置決め手段によって規制して、アライメントマークを検出するように構成すると、基板の基板保持手段への投入が容易となる。これによって、位置合わせにおけるタクト短縮に貢献できる。その後の位置合わせ動作においても、良好な精度を維持することができる。
【0012】
また、基板を、位置決め手段を設けた支持部材に予め載置しておき、そのまま位置合わせ装置に搬送することで、大判基板であっても安定して、破損や割れの発生が無い状態で、かつ基板単体で搬送する場合よりも高速で搬送することができる。
【0013】
これによって、さらなるタクトの短縮と、搬送効率の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、基板保持手段の支持部材である基板ホルダー1は、開口部2の側縁に一対の突起(突出部材)3を有し、位置合わせ用アクチュエーター4によって基板5を基板ホルダー1に固定したときに、突起3によって基板5を図示するような凸形状に保持する。このように基板5を凸形状に変形させることで基板5の自重撓みが生じないように保持し、凸形状の中央部の稜線上に配設されたアライメントマーク5a(図3参照)を用いてマスク6との位置合わせを行う。
【0016】
基板5の撓みによる位置誤差が無い状態で位置合わせを行った後、図2に示すように、基板5とマスク6を密着させ、位置合わせ用アクチュエーター4を不作動位置に後退させる。そして、図示しない蒸着源により、有機発光素子の有機発光層(薄膜層)のパターン成膜を行う。
【実施例1】
【0017】
図1ないし図3は実施例1を説明するためのもので、図3は、図1および図2における基板ホルダー1と、位置合わせ用アクチュエーター4と、基板5と、マスク6とを互に分離して示す斜視図である。
【0018】
位置合わせ用アクチュエーター4は、基板5の四隅近傍をクランプ可能な位置に配置されている。図3に示すように、基板5には、その中心線(A−A線)上に、アライメントマーク5aが配置されている。基板ホルダー1の中央部には、開口部2が配設され、ここにマスク6を配置できるようになっている。基板ホルダー1の側縁には、基板5を中心線が稜線となるように持ち上げて凸形状に支持するための突起3が二箇所に設けられている。
【0019】
マスク6は、アライメントマーク6aを有するフレーム上に画素開口部6bを含む箔を固着したもので、マスク6のアライメントマーク6aは、マスク6の中心線(B−B線)上に配置されている。基板5のアライメントマーク5aと、マスク6のアライメントマーク6aとが合致したときに、マスク6の画素開口部6bが、基板5の所定の位置に合わせられるような位置関係になっている。
【0020】
マスク6の下方には、図示しない蒸着源があり、蒸着源および位置合わせ装置を含む成膜装置全体が真空チャンバー内に配置されている。
【0021】
基板ホルダー1の材質は、SUSまたはアルミニウムであり、基板5よりも撓みが少ない剛体によって構成され、基板ホルダー1の撓み量は小さいほど好ましい。さらには、基板ホルダー1の撓み量が基板5の撓み量の1/5以下であることがより好ましい。
【0022】
図1に示すように、基板5を、図示しないハンドなどの搬送手段によって、基板ホルダー1へ載置し、その後、位置合わせ用アクチュエーター4を降下させて、基板5の端部をクランプする。このとき、基板5は、図1に示すように、基板ホルダー1上に設けられた突起3の高さSと、位置合わせ用アクチュエーター4の押圧力によって、上方に凸形状になるように変形して保持される。
【0023】
このように、基板5が平面形状から、A−A線に沿った基板中心部が上に凸となる形状に変形しているので、基板自体の重力方向への剛性が大きくなり、その結果、基板5が自重によって撓む量がほとんど無い状態を維持することができる。
【0024】
このような凸形状の稜線上に基板5のアライメントマーク5aが位置するため、基板5が凸形状になった状態でも、アライメントマーク5aが配置された位置では略平面を維持する。その結果、基板5のアライメントマーク5aとマスク6のアライメントマーク6aとの位置合わせを良好に行うことができる。
【0025】
次に、位置合わせ動作について説明する。基板5が、基板ホルダー1に凸形状に保持されており、基板ホルダー1は、図示しない本体上に設置されている。また、マスク6は、本体内のアクチュエーター(移動手段)に設置されていて、マスク面内方向(X−Y)と、垂直方向(Z)と面内回転方向(θ)に移動可能になっている。
【0026】
この状態において、CCD撮像部7とレンズ8を有するアライメントマーク観察光学系(検出手段)によって、基板5とマスク6のそれぞれのアライメントマーク5a、6aが合致するように、マスク6の位置を駆動し、位置合わせを行う。
【0027】
次に、図2を用いて、位置合わせ後の基板5とマスク6の密着方法について説明する。アライメントマーク観察光学系とマスク6を移動させるアクチュエーターによって、基板5とマスク6のそれぞれのアライメントマーク5a、6aが合致した状態になった後、マスク6をZ軸方向に上昇させ、マスク6を基板5と接触させる。その後、位置合わせ用アクチュエーター4をZ軸方向に上昇させる。
【0028】
これにより、図2に示すように基板5とマスク6が密着した状態になる。この密着状態で、蒸着源からの蒸着物質を、マスク6を介して、基板5に所定のパターンで蒸着することができる。
【0029】
本実施例では、基板サイズは、370×460mmのものを用い、突起3の高さSは1.5mmとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、これ以上のサイズの基板を用いてもよい。
【0030】
基板表面上には、トップエミッション型として、TFT駆動回路が予めパターン化されており、その上部に第1電極が配置してあるものを用いた。この第1電極上に、上記の位置合わせ方法を用いて、有機発光層R(赤)、G(緑)、B(青)を、マスク蒸着によって塗分けを行い、各色の混色が無く、良好な発光層の塗分けを行うことができた。
【実施例2】
【0031】
図4は、実施例2による基板ホルダー11を示す。本実施例の基板ホルダー11は、実施例1の突起3と同様の突起13を有し、かつ、基板5の位置決め手段として、基板ホルダー11の外周部に8本設けられている位置決めピン14を備えている。
【0032】
基板ホルダー11上に、基板5が載置され、位置決めピン14によって、基板ホルダー11の中央部に基板5が位置決めされて載置される。位置決めピン14によって、基板5内に設けられているアライメントマーク5aを、基板中心と2箇所の突起13とを結ぶ線上に、位置させることができるようになっている。
【0033】
基板ホルダー11上に基板5が凸形状に支持されたとき、凸形状の稜線上のアライメントマーク5aを用いて位置合わせすることで高い位置決め精度を得ることができる。
【0034】
図4において、位置決めピン14と基板5との間のX方向の隙間e、Y方向の隙間fは、それぞれ、0.2mm程度となるように設定すると、基板5の設置が安定化し、位置決め精度も維持できることがわかっている。なお、上記寸法は、これに限定されるものではない。
【0035】
また、例えば、装置外で基板を基板ホルダーに搭載し、この基板を搭載した基板ホルダーをストック室等に保管しておくと、基板ホルダーごとその下流の製造装置等に順次投入が可能となる。これにより、基板単体での装置への投入に比較して、基板の割れや破損等の事故を防ぐことができるとともに、基板搬送および装着に対するタクトの短縮も可能となる。
【0036】
なお、基板の位置決め手段として、基板の外形に合わせた位置決めピンを用いたが、これに限定されることはなく、例えば、矩形状のブロックを基板ホルダー上に設けて、その側面に基板端部を突き当てて位置決めをする構成でもよい。
【実施例3】
【0037】
図5は、実施例3による基板ホルダー21を示すもので、基板ホルダー21の側縁に、円弧状の断面を有する突出部材である凸部24が設けられ、基板5が、位置合わせ用アクチュエーター4によって、この円弧にならって稜線を有する凸形状となるように構成されている。
【0038】
本実施例によれば、基板がより安定して、基板ホルダー上に保持されるという利点が付加される。
【実施例4】
【0039】
図6は、実施例4による基板ホルダー31を示す。基板ホルダー31上に、突出部材である突起33と、傾斜凸部34とが設けられている。基板5が、位置合わせ用アクチュエーター4の動作によって、突起33に当接した部分を頂点とし、傾斜凸部34にならって変形し、凸形状となる。
【0040】
本実施例によれば、基板を安定して基板ホルダー上に保持するとともに、傾斜凸部の製作が比較的容易であるため、基板ホルダーの製造コストを抑えることができるという利点がある。
【実施例5】
【0041】
図7は実施例5を示すもので、基板ホルダーという形態を用いることなく、1対の基板支持台(支持部材)41a、41bを用いた構成になっている。各基板支持台41a、41bには、それぞれ突起43a、43bが設けられていて、これにより、基板5を凸形状に支持することができる。
【0042】
各基板支持台41a、41bは、嵌合穴42a、42bに通したネジ締結手段などによって、不図示の本体に固定される。
【0043】
マスク6を、本体内のアクチュエーターに設置し、これにより、マスク面内方向(X−Y)と、垂直方向(Z)と面内回転方向(θ)に移動可能とする。実施例1と同様のアライメントマーク観察光学系によって、基板5とマスク6のそれぞれのアライメントマーク5a、6aとが合致するように、マスク6を移動させて位置合わせを行う。
【0044】
上記の実施例1〜5においては、マスクを移動させて位置合わせ動作を行う例を説明したが、マスクを固定し、基板を移動させることで、位置合わせを行う方法等でもよい。
【0045】
また、突起の高さも、使用する基板サイズに応じて、任意の高さに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1による位置合わせ装置を示す模式立面図である。
【図2】図1の装置において、基板とマスクを密着させた状態を示す模式立面図である。
【図3】図1の装置を分解して示す分解斜視図である。
【図4】実施例2を示す斜視図である。
【図5】実施例3を示す模式立面図である。
【図6】実施例4を示す模式立面図である。
【図7】実施例5を分解して示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1、11、21、31 基板ホルダー
3、13、33、43a、43b 突起
4 位置合わせ用アクチュエーター
5 基板
5a、6a アライメントマーク
6 マスク
14 位置決めピン
24 凸部
34 傾斜凸部
41a、41b 基板支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜用の基板とマスクの位置合わせを行うための位置合わせ方法であって、
中央部に稜線を有する凸形状となるように前記基板を変形させた状態で、前記基板のアライメントマークを検出する工程と、
前記マスクのアライメントマークを検出する工程と、
検出された前記基板のアライメントマークと前記マスクのアライメントマークを合致させるように、前記基板と前記マスクを相対移動させる工程と、を有することを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項2】
前記基板の前記凸形状の前記稜線上に、前記基板のアライメントマークが配設されていることを特徴とする請求項1記載の位置合わせ方法。
【請求項3】
成膜用の基板とマスクとの位置合わせを行う位置合わせ装置において、
前記基板のアライメントマークと前記マスクのアライメントマークとの相対位置を検出する検出手段と、前記基板および前記マスクの少なくとも一方を移動させる移動手段と、前記基板を凸形状に変形させて保持する基板保持手段と、を有し、前記基板保持手段によって前記基板を凸形状に変形させて保持し、前記検出手段によって前記基板のアライメントマークを検出することを特徴とする位置合わせ装置。
【請求項4】
前記基板保持手段は、前記基板を支持する支持部材と、前記支持部材の支持面から前記基板の側縁の一部分を持ち上げるように配設された突出部材と、を有することを特徴とする請求項3記載の位置合わせ装置。
【請求項5】
前記基板保持手段は、前記支持面上の前記基板を位置決めするための位置決め手段を有することを特徴とする請求項4記載の位置合わせ装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の位置合わせ方法によって位置合わせされた基板とマスクとを互いに密着させ、前記マスクを介して前記基板に薄膜を成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
請求項1または2記載の位置合わせ方法によって基板とマスクの位置合わせを行い、前記マスクを介して前記基板に有機発光層を蒸着することを特徴とする有機発光素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−287943(P2007−287943A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113972(P2006−113972)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】