説明

保護素子およびその製造方法

【課題】製造工程中に誘起された電荷の極性によらず、不要な誘起電荷を半導体基板に逃がすことができる保護素子を提供することにある。
【解決手段】保護素子は、半導体基板10、半導体基板10上に形成された絶縁膜25、及び絶縁膜25上に形成されたワード線12で構成されたMOSキャパシタからなり、MOSキャパシタを構成する半導体基板10の一部に、半導体基板10と逆導電型のウエル領域30が形成されている。ワード線12にMOSキャパシタを構成する絶縁膜25の絶縁耐圧以上の電荷が誘起されたとき、誘起電荷が正電荷又は負電荷によって、誘起電荷は半導体基板10又はウエル領域30のいずれか一方に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上に形成された半導体装置の保護素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSキャパシタと電界効果型トランジスタを情報記憶単位(メモリセル)とする従来の半導体記憶装置の保護素子として、絶縁耐圧がMOSキャパシタに比べて相対的に低い絶縁膜を有するMOSキャパシタを保護素子とする技術が、特許文献1等に記載されている。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された半導体記憶装置の保護素子の断面図である。同図に示すように、電界効果トランジスタは、不純物拡散層102、103がソース・ドレインとして働き、二酸化シリコン膜のゲート絶縁膜107を介した2層目の導電層106がゲートとして構成されている。
【0004】
メモリセルのMOSキャパシタ(I)は、不純物拡散層103と二酸化シリコン膜の誘電体層108を介した1層目の導電層105で構成され、保護素子のMOSキャパシタ(II)は、メモリセルのMOSキャパシタ領域(I)より膜厚の薄い二酸化シリコン膜109を介して1層目の導電層105と反転層110の間で構成されている。
【0005】
1層目の導電層105に電荷が誘起すると、絶縁耐圧がメモリセルのMOSキャパシタ(I)よりも低い保護素子のMOSキャパシタ(II)で支配的に絶縁破壊が起こり、1層目の導電層105の電荷は、保護素子のMOSキャパシタ(II)を介して半導体基板101に流れて、それ以上のチャージアツプは防止されるので、メモリセルのMOSキャパシタ(I)は保護される。
【特許文献1】特開昭59−125654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に、半導体記憶装置の製造工程中において、例えばゲート電極を加工するために行われるプラズマエッチングやレジストアッシングなどのプラズマプロセスや、ゲート電極を構成するポリシリコンを導体化したり、ソース・ドレイン拡散層を形成するためのイオン注入工程、さらにはゲート電極上にコンタクトホールを開口したり、メタル配線を加工するために行われるプラズマエッチングなどさまざまな工程で電荷が誘起される。
【0007】
その際に発生する誘起電荷は、工程によって正電荷が誘起される場合と負電荷が誘起される場合があり、誘起される電荷の極性に応じて、保護素子のMOSキャパシタ(II)直下の半導体基板の導電型に依存して絶縁破壊耐圧が異なる。
【0008】
例えば、MOSキャパシタ(II)直下の半導体基板の導電型がN型の場合、1層目の導電層105に正電荷が誘起されると、MOSキャパシタ(II)直下に蓄積層が形成されるので、MOSキャパシタ(II)の絶縁破壊耐圧は、二酸化シリコン膜109の膜厚で決まる絶縁破壊耐圧を持つ。
【0009】
一方、MOSキャパシタ(II)直下の半導体基板の導電型がP型の場合、1層目の導電層105に正電荷が誘起されると、MOSキャパシタ(II)直下に空乏層が形成されるので、絶縁破壊耐圧は二酸化シリコン膜109と空乏層との直列容量で決まる絶縁破壊耐圧を持つ。
【0010】
その結果、半導体基板の導電型がN型の場合に比べ半導体基板の導電型がP型の場合には絶縁破壊耐圧は高くなる。つまり、半導体基板の導電型がP型の場合に正電荷が誘起されると誘起された電荷を逃がしにくくなる。
【0011】
このことは負電荷が誘起された場合も同様で、半導体基板の導電型に依存して絶縁破壊耐圧は異なる。
【0012】
例えば、MOSキャパシタ(II)直下の半導体基板の導電型がN型の場合、1層目の導電層105に負電荷が誘起されると、MOSキャパシタ(II)直下に空乏層が形成されるので、MOSキャパシタ(II)の絶縁破壊耐圧は二酸化シリコン膜109と空乏層との直列容量で決まる絶縁破壊耐圧を持つ。
【0013】
一方、MOSキャパシタ(II)直下の半導体基板の導電型がP型の場合、1層目の導電層105に負電荷が誘起されると、MOSキャパシタ(II)直下に蓄積層が形成されるので、絶縁破壊耐圧は二酸化シリコン膜109の膜厚で決まる絶縁破壊耐圧を持つ。
【0014】
その結果、半導体基板の導電型がP型の場合に比べ半導体基板の導電型がN型の場合には絶縁破壊耐圧は高くなる。つまり、半導体基板の導電型がN型の場合に負電荷が誘起されると誘起された電荷を逃がしにくくなる。
【0015】
従って、半導体記憶装置の製造工程中で誘起される電荷の極性によっては、誘起電荷が半導体基板101へ逃がされずに1層目の導電層105に蓄積されるおそれがある。
【0016】
誘起電荷が半導体基板101へ逃がされずに1層目の導電層105に蓄積されると、製造工程中に誘起された電荷がメモリセルのMOSキャパシタの誘電体膜中にトラップされたり、誘電体膜のTDDB特性などの信頼性劣化を引き起こしたりするという問題が生じる。さらには、半導体記憶装置の電荷保持特性を低下させるという問題も生じる。
【0017】
また、近年、ONO膜(酸化膜/窒化膜/酸化膜)に電荷を蓄積するメモリ構造を有するMONOS型不揮発性半導体記憶装置が注目されているが、製造工程中に誘起された電荷が、ONO膜からなるトラップ性のゲート絶縁膜にトラップされると、メモリセルトランジスタの閾値電圧にバラツキが生じたり、消去が完全に行えない等の問題が生じる。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、半導体装置の製造工程中に誘起された電荷の極性が正電荷、負電荷によらず、MOSキャパシタの誘電体膜の膜厚で決まる絶縁破壊耐圧により誘起電荷を半導体基板に逃がすことができる保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係わる保護素子は、半導体基板上に形成された半導体装置の保護素子であって、該保護素子は、半導体基板、半導体基板上に形成された絶縁膜、及び絶縁膜上に形成された導電膜で構成されたMOSキャパシタからなり、MOSキャパシタを構成する半導体基板の一部に、半導体基板と逆導電型の第1のウエル領域が形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記の構成にすることにより、導電膜にMOSキャパシタを構成する絶縁膜の絶縁耐圧以上の電荷が誘起されたとき、誘起電荷が正電荷又は負電荷によって、誘起電荷を半導体基板又は第1のウエル領域のいずれか一方に排出すことができる。従って、半導体装置の製造工程中に誘起された電荷の極性によらず、MOSキャパシタの誘電体膜の膜厚で決まる絶縁破壊耐圧により誘起電荷を半導体基板に逃がすことができる。これにより、製造工程中に誘起される電荷が、例えば、メモリセルのMOSキャパシタの誘電体膜中にトラップされるのを防止することができ、また誘電体膜のTDDB特性などの信頼性劣化等の電荷保持特性の劣化を防止することができる。
【0021】
ある好適な実施形態において、半導体装置はMONOS型メモリセルで構成された不揮発性半導体記憶装置であって、上記導電膜はMONOS型メモリセルから延出されたワード線で構成されている。
【0022】
このようにすると、製造工程中に誘起される電荷が、メモリセルのONO膜等にトラップされるのを防止することができ、メモリセルトランジスタの閾値電圧のバラツキを抑えることができる。また、誘起電荷によるONO膜のTDDB特性などの信頼性劣化等の電荷保持特性の劣化を防止することができる。
【0023】
ある好適な実施形態において、第1のウエル領域の表面に、第1のウエル領域と同導電型の第1の高濃度不純物拡散層が形成されており、第1の高濃度不純物拡散層の一部は、第1のウエル領域に隣接する前記半導体基板表面まで延在している。
【0024】
このようにすると、第1のウエル領域に逃がされた電荷を、第1の高濃度不純物拡散層と半導体基板とからなる電位障壁の低いPN接合を乗り越えて、比較的容易に半導体基板に逃がすことができる。
【0025】
ある好適な実施形態において、半導体基板表面に、半導体基板と同導電型の第2の高濃度不純物拡散層が形成されており、第2の高濃度不純物拡散層は、第1の高濃度不純物拡散層に隣接して形成されている。
【0026】
このようにすると、第1のウエル領域に逃がされた電荷を、第1の高濃度不純物拡散層と第2の高濃度不純物拡散層とからなる、より低い電位障壁のPN接合を乗り越えて、さらに容易に半導体基板に逃がすことができる。
【0027】
ある好適な実施形態において、第1のウエル領域と電気的に接続された導電層が形成されており、導電層は、第1のウエル領域に隣接する半導体基板と電気的に接続されている。
【0028】
このようにすると、第1のウエル領域に逃がされた電荷を、速やかに半導体基板に逃がすことができる。
【0029】
ある好適な実施形態において、MOSキャパシタを構成する絶縁膜の絶縁耐圧は、MONOS型メモリセルのゲート絶縁膜を構成するONO膜の絶縁耐圧よりも小さいことが好ましい。
【0030】
ある好適な実施形態において、MOSキャパシタを構成する半導体基板の一部に、半導体基板と同導電型の第2のウエル領域が、第1のウエル領域に隣接して形成されていてもよい。
【0031】
ある好適な実施形態において、MOSキャパシタを構成する半導体基板の一部に、半導体基板と逆導電型の第3のウエル領域が形成されており、第1のウエル領域及び第2のウエル領域は、第3のウエル領域内に形成されていてもよい。
【0032】
本発明に係わる保護素子の製造方法は、MONOS型メモリセルで構成された不揮発性半導体記憶装置の保護素子の製造方法であって、当該保護素子は、MOSキャパシタの構成をなし、MOSキャパシタは、半導体基板の保護素子形成領域に、半導体基板と逆導電型のウエル領域を形成した後、ウエル領域を含む半導体基板上に絶縁膜、及び導電膜を形成することにより形成され、導電膜は、MONOS型メモリセルのワード線の形成と同時に、ワード線を保護素子形成領域まで延在して形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係わる保護素子によれば、半導体装置の製造工程中に誘起された電荷の極性によらず、MOSキャパシタの誘電体膜の膜厚で決まる絶縁破壊耐圧により誘起電荷を半導体基板に逃がすことができる。これにより、例えば、MONOS型メモリセルで構成された不揮発性半導体装置の製造工程中に誘起される電荷が、メモリセルのONO膜等にトラップされるのを防止することができ、メモリセルトランジスタの閾値電圧のバラツキを抑えることができる。また、誘起電荷によるONO膜のTDDB特性などの信頼性劣化等の電荷保持特性の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0035】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における不揮発性半導体記憶装置の保護素子を模式的に示した図で、図1(a)はその平面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線に沿った断面図である。
【0036】
図1(a)の平面図において、2本のビット線11と、ワード線12の交差する領域に、ゲート電極と、シリコン酸化膜22、シリコン窒化膜23およびシリコン酸化膜24からなるONO膜をゲート絶縁膜とするMONOS型メモリセルが構成されている。通常は、メモリセル領域Aにメモリセルトランジスタがアレイ状に配列されているが本図ではこれを省略している。
【0037】
また、ワード線12の延在した領域に保護素子領域Bが構成されている。保護素子は、半導体基板10、半導体基板10上に形成された絶縁膜25、及び絶縁膜25上に形成された導電膜12で構成されたMOSキャパシタからなり、MOSキャパシタを構成する半導体基板10の一部に、半導体基板10と逆導電型の第1のウエル領域30が形成されている。導電膜12は、例えば、MONOS型メモリセルから延出されたワード線12で構成されている。
【0038】
ここで、半導体基板10がP型の場合には、第1のウエル領域30は、Nウエル領域となるが、通常、メモリセル領域Aに形成されるトランジスタのソース、ドレイン領域となるn+拡散層(ビット線拡散層)31は、Pウエル領域内に形成されるので、保護素子領域Bに形成されるNウエル領域(第1のウエル領域)30に隣接して、半導体基板10と同導電型のPウエル領域(第2のウエル領域)20を形成しておいてもよい。
【0039】
また、MOSキャパシタを構成する絶縁膜25は、絶縁膜25の絶縁耐圧が、MONOS型メモリセルのゲート絶縁膜を構成するONO膜の絶縁耐圧よりも小さければ、特にその材料は限定されない。
【0040】
次に、図1に示した本発明のMOSキャパシタからなる保護素子の動作について説明する。
【0041】
上述のように、不揮発性半導体記憶装置の製造工程中に電荷が誘起され、それが、例えば、ワード線12に蓄積されるが、この誘起電荷は、正電荷が誘起される場合もあれば負電荷が誘起される場合もある。
【0042】
例えば、正電荷がワード線12に蓄積された場合は、Nウエル領域(第1のウエル領域)30内に形成されたMOSキャパシタのワード線12直下には蓄積層が形成される。一方、P型半導体基板10(又はPウエル領域20)内に形成されたMOSキャパシタのワード線12直下には空乏層が形成されるので、MOSキャパシタの容量には空乏層容量も加わる。そのため、Nウエル領域30内に形成されたMOSキャパシタの絶縁耐圧は、P型半導体基板10(又はPウエル領域20)内に形成されたMOSキャパシタの絶縁耐圧よりも低くなる。
【0043】
逆に、負電荷がワード線12に蓄積された場合は、P型半導体基板10(又はPウエル領域20)内に形成されたMOSキャパシタのワード線12直下には蓄積層が形成される。一方、Nウエル領域30内に形成されたMOSキャパシタのワード線12直下には空乏層が形成されるので、MOSキャパシタの容量には空乏層容量も加わる。そのため、P型半導体基板10(又はPウエル領域20)内に形成されたMOSキャパシタの絶縁耐圧は、Nウエル領域30内に形成されたMOSキャパシタの絶縁耐圧よりも低くなる。
【0044】
上記の動作原理から、ワード線12に蓄積された電荷の極性が正負いずれであっても、絶縁膜25で決まる絶縁耐圧を超えた時点で保護素子のスイッチは作動する。すなわち、製造工程中に誘起された電荷が正電荷又は負電荷によって、誘起電荷が半導体基板10又は第1のウエル領域30のいずれか一方に排出されるので、MONOS型半導体記憶装置のONO膜中に誘起電荷がトラップされるのを防止することができ、メモリセルトランジスタの閾値電圧のバラツキを抑制することができる。また、同時にONO膜の特性劣化を防止することができ、MONOS型半導体記憶装置のデータ保持特性を向上することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
上述したように、ワード線12に蓄積された誘起電荷は、その極性にかかわらず、保護素子であるMOSキャパシタの絶縁膜25の絶縁耐圧を越えた時点で、半導体基板中に逃がすことができるが、第1のウエル領域30に逃がされた電荷は、最終的には、半導体基板10に排出することが望ましい。
【0046】
実際には、第1のウエル領域30と半導体基板10間には、PN接合が存在するので、第1のウエル領域30に逃がされた電荷は、このPN接合の電位障壁を乗り越えて、半導体基板10中に排出されることになる。
【0047】
しかしながら、一時的でも、第1のウエル領域30に逃がされた電荷が、そこに蓄積すると、第1のウエル領域30の電位が一時的に浮くことにより、MOSキャパシタの閾値電圧が上がり、ワード線12に蓄積された電荷の排出を阻害するという影響を与える畏れもある。それ故、第1のウエル領域30に逃がされた電荷は、できるだけ速やかに半導体基板10中に排出することが望ましい。
【0048】
本発明の第2の実の形態は、このような第1のウエル領域30に逃がされた電荷を、できるだけ速やかに半導体基板10中に逃がす方法を提案するものである。
【0049】
図2及び図3は、本実施形態における不揮発性半導体記憶装置の保護素子を模式的に示した図で、図2(a)はその平面図、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線に沿った断面図、図2(c)は、図2(a)のIIc−IIc線に沿った断面図、図3(a)は、図2(a)のIIIa−IIIa線に沿った断面図、図3(b)は、図2(a)のIIIb−IIIb線に沿った断面図をそれぞれ示す。
【0050】
基本的な構成は、図1に示したものと同じであるが、図2(c)に示すように、第1のウエル領域(Nウエル領域)30の表面に、第1のウエル領域30と同導電型の第1の高濃度不純物拡散層(n+拡散層)32が形成され、この第1の高濃度不純物拡散層32の一部が、第1のウエル領域30に隣接する半導体基板10(又は第2のウエル領域33)の表面まで延在している点が異なる。
【0051】
このようなn+拡散層32をNウエル領域表面に形成することによって、このn+拡散層32とP型半導体基板10(またはPウエル領域20)とからなる新たなPN+接合を構成することができる。このPN+接合は、Nウエル領域30とP型半導体基板10(またはPウエル領域20)とからなるPN接合よりも接合耐圧が低いので、Nウエル領域30に逃がされた電荷は、電位障壁の低いPN+接合を乗り越えて、比較的容易に半導体基板10に電荷を排出すことができる。
【0052】
なお、図2(c)に示すように、半導体基板10表面に、第1の高濃度不純物拡散層(n+拡散層)32に隣接させて、半導体基板10と同導電型の第2の高濃度不純物拡散層(p+拡散層)33をさらに形成しておいてもよい。
【0053】
p+拡散層33をn+拡散層32に隣接させて形成することによって、このp+拡散層32とn+拡散層32とからなるP+N+接合をさらに構成することができる。このP+N+接合は、n+拡散層32とP型半導体基板10(またはPウエル領域20)とからなるPN+接合よりも接合耐圧が低いので、Nウエル領域30に逃がされた電荷を、電位障壁の低いP+N+接合を乗り越えて、より容易に半導体基板10に電荷を排出することができる。
【0054】
なお、この第1の高濃度不純物拡散層(n+拡散層)32、若しくは、第2の高濃度不純物拡散層(p+拡散層)33は、例えば周辺回路を形成するトランジスタのソース、ドレイン領域となる拡散層の形成と同時に形成することができるので、余計な工程を追加する必要はない。
【0055】
以上の方法は、Nウエル領域30とP型半導体基板10(またはPウエル領域20)とかなるPN接合よりも接合耐圧が低いPN接合の構成を別途設けるものであるが、図4に示すように、このPN接合を構成するn+拡散層32及びp+拡散層33の表面に、導電層34をさらに形成しておいてもよい。
【0056】
この導電層34の形成することによって、Nウエル領域に逃がされた電荷を、導電層34を介して速やかにP型半導体基板10に排出することができる。なお、この導電層34は、例えば周辺回路を形成するトランジスタのソース、ドレイン領域となる拡散層上に金属シリサイド層が形成される場合には、この金属シリサイド層の形成と同時に形成することができる。
【0057】
なお、図4では、半導体基板10の表面にn+拡散層32及びp+拡散層33を形成しているが、Nウエル領域30とのコンタクトが取れれば、n+拡散層32及びp+拡散層33を形成しなくても構わない。また、Nウエル領域30と、半導体基板10(またはPウエル領域20)とを同電位にするような電気的接続が図られれば、導電層34以外の方法、例えば、局所配線等で行ってもよい。
【0058】
次に、本発明の実施形態における保護素子(MOSキャパシタ)の製造方法について、図5(a)〜(f)に示す工程断面図を参照しながら説明する。なお、図5(a)〜(f)に示す工程断面図は、図2(a)に示したIIb−IIb線に沿った断面図である。また、本工程における、第1及び第2の高濃度不純物拡散層32、33の形成工程を除けば、第1の実施形態における保護素子(MOSキャパシタ)が形成される。
【0059】
まず、図5(a)で示すように、P型半導体基板10に素子分離領域26を形成した後、保護素子形成領域Bに、P型半導体基板と逆導電型のNウエル領域30を形成する。このとき、メモリセル領域Aに、Pウエル領域を形成するのと同時に、Nウエル領域30に隣接して、保護素子形成領域BにもPウエル領域20を形成しておいてもよい。また、メモリセル領域Aには、ビット線拡散層31を形成する。
【0060】
次に、図5(b)に示すように、半導体基板10の表面に、シリコン酸化膜22、シリコン窒化膜23、シリコン酸化膜24を順次堆積し、ONO膜を形成する。このONO膜は、MONOS型メモリセルのゲート絶縁膜を構成するもので、各積層膜の膜厚は、例えば、5nm/10nm/10nm程度に形成する。
【0061】
その後、図5(c)に示すように、保護素子領域BのONO膜をエッチング除去した後、半導体基板10表面を酸化して、保護素子(MOSキャパシタ)を構成する絶縁膜25を形成する。この絶縁膜25は、その絶縁耐圧がONO膜の絶縁耐圧よりも小さくなるような膜厚、例えば18nm程度に形成する。
【0062】
次に、図5(d)に示すように、半導体基板10のメモリセル領域Aに、メモリセルのワード線12を形成する。このワード線12は、保護素子形成領域Bまで延在して形成される。なお、ワード線12は、例えば、ポリシリコン膜で形成される。
【0063】
さらに、図5(e)に示すように、保護素子領域Bの一部を開口したレジストマスク51を用いて、ワード線12が形成されていないNウエル領域30の表面にn+拡散層32(点線で示す領域)を、イオン注入により形成する。なお、n+拡散層32は、Nウエル領域30に隣接するPウエル領域20まで延在して形成される。
【0064】
最後に、図5(f)に示すように、保護素子領域Bの一部を開口したレジストマスク52を用いて、n+拡散層32に隣接してp+拡散層33を、イオン注入により形成する。
【0065】
なお、図4に示したように、n+拡散層32及びp+拡散層33上に導電層34をさらに形成する場合は、半導体基板10の表面に金属膜を堆積した後、熱処理を行い、n+拡散層32及びp+拡散層33表面をシリサイド化することにより、自己整合的に形成することができる。
【0066】
(第2の実施形態の変形例)
図6は、本発明の第2の実施形態の変形例を示すもので、図6(a)はその平面図、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線に沿った断面図、図6(c)は、図6(a)のVIc−VIc線に沿った断面図をそれぞれ示す。
【0067】
この構成の特徴は、保護素子領域Bに形成されたNウエル領域(第1のウエル領域)30と、Pウエル領域(第2のウエル領域)20を囲むように、半導体基板10と逆導電型の第3のウエル領域(深いNウエル領域)60を形成した点にある。
【0068】
このようにすると、メモリセル領域Aに対して、独立に保護素子のNウエル領域30およびPウエル領域20に基板バイアスを与えることができる。これにより、MOSキャパシタのON電圧を所望の電圧に設定することができる。
【0069】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態においては、不揮発性半導体記憶装置を例にして説明したが、もちろん、他の半導体装置においても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、半導体装置の製造工程中に誘起された電荷の極性が正電荷、負電荷によらず、MOSキャパシタの誘電体膜の膜厚で決まる絶縁破壊耐圧により誘起電荷を半導体基板に逃がすことができる保護素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態における不揮発性半導体記憶装置の保護素子を模式的に示した図で、(a)はその平面図であり、(b)は、(a)のIb−Ib線に沿った断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態における不揮発性半導体記憶装置の保護素子を模式的に示した図で、(a)はその平面図、(b)は、(a)のIIb−IIb線に沿った断面図、(c)は、(a)のIIc−IIc線に沿った断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における保護素子を示した図で、(a)は、図2(a)のIIIa−IIIa線に沿った断面図、(b)は、図2(a)のIIIb−IIIb線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における保護素子の断面図である。
【図5(a)−(d)】(a)〜(d)は、本発明の実施形態における保護素子の製造方法を示した工程断面図である。
【図5(e)−(f)】(e)〜(f)は、本発明の実施形態における保護素子の製造方法を示した工程断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の変形例を示した図で、(a)はその平面図、(b)は、(a)のVIb−VIb線に沿った断面図、(c)は、(a)のVIc−VIc線に沿った断面図である。
【図7】従来の半導体記憶装置の保護素子の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10 半導体基板
11 ビット線
12 ワード線(導電膜)
20 Pウエル領域(第2のウエル領域)
22、24 シリコン酸化膜
23 シリコン窒化膜
25 絶縁膜
26 素子分離領域
30 Nウエル領域(第1のウエル領域)
31 ビット線拡散層
32 n+拡散層(第1の高濃度不純物拡散層)
33 p+拡散層(第2の高濃度不純物拡散層)
34 導電層
51、52 レジストマスク
101 半導体基板
102、103 不純物拡散層
105、106 導電層
107 ゲート絶縁膜
108 誘電体層
109 二酸化シリコン膜
110 反転層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された半導体装置の保護素子であって、
前記保護素子は、前記半導体基板、該半導体基板上に形成された絶縁膜、及び該絶縁膜上に形成された導電膜で構成されたMOSキャパシタからなり、
前記MOSキャパシタを構成する前記半導体基板の一部に、該半導体基板と逆導電型の第1のウエル領域が形成されていることを特徴とする、保護素子。
【請求項2】
前記導電膜に、前記MOSキャパシタを構成する前記絶縁膜の絶縁耐圧以上の電荷が誘起されたとき、該誘起電荷が正電荷又は負電荷によって、該誘起電荷が前記半導体基板又は前記第1のウエル領域のいずれか一方に排出されることを特徴とする、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記半導体装置は、MONOS型メモリセルで構成された不揮発性半導体記憶装置であって、
前記導電膜は、前記MONOS型メモリセルから延出されたワード線で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の保護素子。
【請求項4】
前記第1のウエル領域の表面に、該第1のウエル領域と同導電型の第1の高濃度不純物拡散層が形成されており、
前記第1の高濃度不純物拡散層の一部は、前記第1のウエル領域に隣接する前記半導体基板表面まで延在していることを特徴とする、請求項1に記載の保護素子。
【請求項5】
前記半導体基板表面に、該半導体基板と同導電型の第2の高濃度不純物拡散層が形成されており、
前記第2の高濃度不純物拡散層は、前記第1の高濃度不純物拡散層に隣接して形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
前記第1のウエル領域と電気的に接続された導電層が形成されており、
前記導電層は、前記第1のウエル領域に隣接する前記半導体基板と電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の保護素子。
【請求項7】
前記MOSキャパシタを構成する前記絶縁膜の絶縁耐圧は、前記MONOS型メモリセルのゲート絶縁膜を構成するONO膜の絶縁耐圧よりも小さいことを特徴とする、請求項3に記載の保護素子。
【請求項8】
前記MOSキャパシタを構成する前記半導体基板の一部に、該半導体基板と同導電型の第2のウエル領域が、前記第1のウエル領域に隣接して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の保護素子。
【請求項9】
前記MOSキャパシタを構成する前記半導体基板の一部に、該半導体基板と逆導電型の第3のウエル領域が形成されており、
前記第1のウエル領域及び前記第2のウエル領域は、前記第3のウエル領域内に形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の保護素子。
【請求項10】
MONOS型メモリセルで構成された不揮発性半導体記憶装置の保護素子の製造方法であって、
該保護素子は、MOSキャパシタの構成をなし、
該MOSキャパシタは、
半導体基板の保護素子形成領域に、該半導体基板と逆導電型のウエル領域を形成した後、該ウエル領域を含む前記半導体基板上に絶縁膜、及び導電膜を形成することにより形成され、
前記導電膜は、前記MONOS型メモリセルのワード線の形成と同時に、該ワード線を前記保護素子形成領域まで延在して形成することを特徴とする、保護素子の製造方法。
【請求項11】
前記MOSキャパシタを構成する前記絶縁膜の絶縁耐圧は、前記MONOS型メモリセルのゲート絶縁膜を構成するONO膜の絶縁耐圧よりも小さいことを特徴とする、請求項10に記載の保護素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)−(d)】
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【図5(e)−(f)】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−194424(P2007−194424A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11478(P2006−11478)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】