半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイス
【解決手段】 シリコン上にゲート絶縁層が形成された半導体センシング用電界効果型トランジスタであり、該ゲート絶縁層上に、直接的な検出部として有機単分子膜を形成して用いる半導体センシングデバイス用の電界効果型トランジスタであって、上記ゲート絶縁層が、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造を具備する半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイス。
【効果】 ゲート絶縁層からのトランジスタ部分への水分やイオンの侵入を遮断することが可能であり、液中測定用として特に好適な、高い検出感度を示す半導体センシングデバイス及びこれを与える電界効果型トランジスタを提供することができる。
【効果】 ゲート絶縁層からのトランジスタ部分への水分やイオンの侵入を遮断することが可能であり、液中測定用として特に好適な、高い検出感度を示す半導体センシングデバイス及びこれを与える電界効果型トランジスタを提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンセンシング、バイオセンシングに好適に用いることができる半導体センシングに用いる電界効果型トランジスタ、特に、バイオマイクロシステム、マイクロ化学分析システムに有効である半導体センシングに用いる電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
イオンセンシングシステム、バイオセンシングシステムは、食品製造・管理、環境計測等、広範な分野へ適用されている。イオン・バイオセンシングにおいては、一分子認識、一塩基認識等、イオン、分子レベルでのセンシングの要求がますます高まってきており、それを感知できるシステム、デバイスが必要となっている。更に、微量測定、多種同時測定のために、システム、デバイスの微細化・集積化かつオンチップ化が必要とされる。
【0003】
イオンセンシングデバイスとしては、シリコン窒化膜/シリコン酸化膜/シリコン構造を有するイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)が代表例として挙げられるが、従来のものは、pH測定のための参照電極は別途ガラス電極が用いられており、オンチップ化、微細化が図られていない。この場合、イオン感応膜であるシリコン窒化膜の膜厚が100〜200nm(ナノメータ)と厚いものが用いられている状況にある。一方で、酵素、免疫、DNAセンシングにおいては、レーザースキャナを用いた蛍光・発光によるセンシングが主流となっており、最近では電気化学反応を用いた電流・電位検出も試みられるようになってきている。また、半導体検出においては、上記のISFETとの組み合わせによる酵素、免疫センサ作製の事例が僅かにある。これらセンサにおける基本的な検出スタンスは、反応部(電極部)の実効表面積を増大させ、かつ反応物質の量を増加させるといった、いわゆる量的な効果によって検出を可能とするものである。また、レーザースキャナを用いた検出や電気化学検出は集積化・微細化によって応答感度(強度、応答速度等)が減少する傾向があり問題点を抱えている。
【0004】
このように、従来技術では、オンチップ化、微細化、集積化といった要求を満たす上で難点があり、一分子、イオン認識・検出において最大限の効果を引き出すには抜本的な改良が必要となってくるものと考えられる。更に、イオンセンシングシステム、バイオセンシングシステムにおいては、例えば、液中にセンサを浸漬し、検出部が液に接した状態を長時間維持して測定できる溶液中での測定を想定した半導体デバイスが特に必要となる。
【0005】
電界効果型トランジスタとして、本発明者らは、Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No.1A/B, 2004, pp.L105−107(非特許文献1)において、シリコン基板(P−Si(100)(8〜12Ωcm))を用いてゲート長10μm、ゲート幅1mmの電界効果型トランジスタを報告している。
【0006】
この電界効果型トランジスタは、図19(C)に示されるような、ゲート絶縁層としてシリコン酸化物膜が形成されたものである。このような電界効果型トランジスタを作製する場合は、まず、1%HF水溶液で30秒程度前洗浄したシリコン基板500を、1000℃の温度下でドライ酸化してシリコン基板500の表面に厚さ100nmのSiO2膜(フィールド酸化膜)501を成膜し(図17(A))、このSiO2膜501上にレジストをコーティングして、UVによりパターニング(露光、現像)して所定部分にレジストパターン502を形成し(図17(B))、このレジストパターンをマスクとしてSiO2膜501の下層が残る程度に1%HF水溶液でエッチングし(図17(C))、レジストパターン502を剥離して、チャンネル・ゲート部501aを形成する(図17(D))。
【0007】
次に、SiO2膜501上にアルミニウム膜(厚さ300nm)を蒸着(到達真空度 2.0×10-6Torr 電流値 30mA 成膜速度 約5nm/sec)にて成膜して、アルミニウム膜を、後述するイオン注入のマスクとして機能する所定のアルミニウム膜パターン503にフォトレジスト法により形成し(図18(A))、このアルミニウム膜パターン503をマスクとしてイオン注入(P−dope 40kV 1.0×1015ion/cm2)によりシリコン基板500の上層の所定部分にNチャンネル504,504を形成して、アルミニウム膜パターン503を剥離(50%リン酸に80℃で5mim浸漬)する。
【0008】
次に、アルミニウム膜パターン503を剥離した後(図18(B))、SiO2膜501表面をN2雰囲気下でアニール(900℃ 5min)することにより活性化処理し、このSiO2膜501上にレジストをコーティングして、UVによりパターニング(露光、現像)して、SiO2膜501のNチャンネル504,504上方に位置する部分以外を被覆するレジストパターン505を形成し(図18(C))、このレジストパターン505をマスクとしてNチャンネル504,504上のSiO2膜をエッチング(1%HF水溶液)し、レジストを除去して、コンタクト開口部504a,504aを形成する(図18(D))。
【0009】
次に、蒸着(EB蒸着 到達真空度 2.0×10-8Torr)により電極メタル層506を形成する。この場合、Ti膜(厚さ20nm 成膜時真空度 4.0×10-8 電流値70mA 成膜速度 0.13nm/sec)と、Pt膜(厚さ120nm 成膜時真空度 8.0×10-8Torr 電流値220mA 成膜速度 0.067nm/sec)とを成膜して電極メタル層506を形成し(図19(A))、窒素雰囲気下でアニール(800℃ 10min)して、電極メタル層506のTi膜とNチャンネル504,504との接合部分にTiSi2を生成させて、コンタクトを形成する。
【0010】
そして、電極メタル層506上に保護用酸化膜507(厚さ200nm)をプラズマCVD(PECVD:200W 400℃ 0.39Torr テトラエトキシシラン(TEOS) 6sccm O2 100sccm)で形成し(図19(B))、酸素雰囲気下でアニール(800℃、10min)することにより、CVD酸化膜の構造回復処理を施し、ゲート・電極接点開口508,508を、CHF3ガスを用いたリアクティブイオンエッチング(RIE)により形成して図19(C)に示されるような電界効果型トランジスタを作製している。
【0011】
このような電解効果型トランジスタを半導体センシングデバイスとして用いる場合、ゲート絶縁層上を有機単分子膜などによって修飾することになるが、図19(C)に示されるようなタイプのセンサは、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁層が露出した構造となっているため、水分やイオンなどの進入によりトランジスタ特性を損なうおそれがあり、検出部が液に接した状態で長時間測定する場合には不向きである。
【0012】
【非特許文献1】Daisuke Niwa 他2名, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No.1A/B, 2004, pp.L105−107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ゲート絶縁層からの水分やイオンの侵入によるトランジスタ特性の劣化を防止した、液中測定用として特に好適な半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
半導体センシングに用いる電界効果型トランジスタにおいては、上述したように、半導体上にシリコン酸化物が存在する構成、及びシリコン酸化物上に直接的な検出部をなす有機単分子膜が形成できる構成が採られ、半導体センシングデバイスにあっては、半導体とシリコン酸化物とが接し、かつシリコン酸化物と有機単分子膜とが接していることが、極限感度を有する半導体センシングデバイスとするために有効である。
【0015】
本発明は、シリコン上にゲート絶縁層が形成された半導体センシング用電界効果型トランジスタであり、該ゲート絶縁層上に、直接的な検出部として有機単分子膜を形成して用いる半導体センシングデバイス用の電界効果型トランジスタであって、上記ゲート絶縁層が、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造を具備することを特徴とする半導体センシング用電界効果型トランジスタ、及びこの半導体センシング用電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に有機単分子膜を直接的な検出部として形成してなる、有機単分子膜/ゲート絶縁層/半導体構造を有する半導体センシングデバイスを提供する。
【0016】
半導体センシング用電界効果型トランジスタにおいて、そのゲート絶縁層を第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造、換言すれば、シリコン酸化物/シリコン窒化物/シリコン酸化物積層構造とすることにより、シリコン窒化物層により、ゲート絶縁層を通過して侵入するトランジスタ部分への水分やイオンの侵入を遮断し、また、ゲート絶縁層もシリコン側及び有機単分子膜側共にシリコン酸化物となり、有機単分子膜との適合性も維持しつつ、従来のシリコン酸化物単層膜からなるゲート絶縁層と同等のセンシング機能を備える半導体センシングデバイスを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゲート絶縁層からのトランジスタ部分への水分やイオンの侵入を遮断することが可能であり、液中測定用として特に好適な、高い検出感度を示す半導体センシングデバイス及びこれを与える電界効果型トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態及び実施例】
【0018】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタは、シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタであって、該ゲート絶縁層上に、直接的な検出部として有機単分子膜を形成して用いる半導体センシングデバイス用の電界効果型トランジスタにおいて、上記ゲート絶縁層が、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなるシリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造を有するものである。なお、この積層構造は、積層構造を構成する上記の層と層との間に、ゲート絶縁層としての機能を妨げない程度の厚さの他の層、例えば、各層の加工の際の、エッチングの精度の向上を目的として常用されるエッチストッパ層などが存在するものであってもよい。
【0019】
このような電界効果型トランジスタは、半導体イオンセンシング、バイオセンシングデバイス用として好適に用いられるもので、シリコン上に形成されたゲート絶縁層上に、有機シラン単分子膜などの有機単分子膜を直接的な検出部として形成して、センシングデバイスとして用いることができる。即ち、このような半導体センシング用電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に有機単分子膜を直接的な検出部として形成してなる、有機単分子膜/ゲート絶縁層/半導体構造を有する半導体センシングデバイスを構成することができる。
【0020】
図1(A)は、本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタの一例(第1の態様)を示し、図1(B)はこれを用いてゲート絶縁層上に有機単分子膜を形成した半導体センシングデバイスを示す。なお、図1中、1はシリコン基板、2はゲート絶縁層、3は有機単分子膜であり、また4はゲート電極、5はソース電極、6はドレイン電極、7はチャンネル領域を示す。そして、本発明においては、このゲート絶縁層が、図1(C)に示されるように、第1のシリコン酸化物層2a上にシリコン窒化物層2bを介して第2のシリコン酸化物層2cが積層されてなるシリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造を有している。即ち、この場合、第1のシリコン酸化物層2aはシリコン基板1と接し、第2のシリコン酸化物層2cは、検出部をなす有機単分子膜が形成される面として外部に露呈しており、水分やイオン等の物質移動を遮断するように、第1のシリコン酸化物層2aと第2のシリコン酸化物層2cとの間にシリコン窒化物層2bが形成されている。
【0021】
そして、本発明の電界効果型トランジスタを用いることによって、そのゲート絶縁層上に有機単分子膜を液面と接する箇所に局所的に形成し、これを直接的な検出部とするデバイスを構成し、基本原理として表面上のイオン吸着・バイオ反応等に伴う表面電位変化を電気信号として検出する半導体センシングデバイスとすることができる。
【0022】
なお、この場合、上記有機単分子膜は、DNA、酵素、免疫等で修飾することができ、また、必要に応じてレポーター分子を用いることも可能である。
【0023】
有機単分子膜としては有機シラン単分子膜が好ましくは、所用のパターニング手法によりパターニングして形成することができる。
【0024】
この有機シラン単分子膜に関しては、有機シラン分子を用い、ゲート絶縁層上に気相化学反応又は液相反応によって形成し、有機シラン単分子膜はその最適化によって細密パッキングされた膜が形成される。
【0025】
この場合、有機シラン単分子膜としては、反応性の官能基、特にアミノ系の官能基(NH2−、−NH−、C5H5N−、C4H4N−等)又はカルボキシル系の官能基(−COOH等)を少なくとも1個含有する炭素数3〜20の直鎖状炭化水素基(アルキル基等)を有するアルコキシシランの単分子膜、非反応性の炭素数8〜20の直鎖アルキル基又はフッ素化アルキル基を有するアルコキシシランの単分子膜が挙げられる。
【0026】
この場合、アミノ系の官能基、カルボキシル系の官能基等の反応性官能基の導入は、このような官能基を有するアルコキシシランを用いるほか、このような官能基に置換可能な基、例えば−Br、−CN等のアミノ誘導基を有するアルコキシシランを用いて単分子膜を形成後、これらアミノ誘導基をアミノ基に置換する方法で導入することができる。
【0027】
なお、アルコキシシランとしては、密着性等の点でトリアルコキシシランが好ましく、またアルコキシ基としては炭素数1〜4のアルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0028】
なお、上記アルコキシシランの具体例としては、NH2(CH2)3Si(OC2H5)3、CH3(CH2)17Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3等が挙げられる。
【0029】
次に、図2〜12を参照し、本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタの他の態様(第2の態様)とその好適な製造方法について説明する。図12(B)は、半導体センシング用電界効果型トランジスタの一例を示し、この半導体センシング用電界効果型トランジスタは、以下の方法で製造することができる。
【0030】
素子分離形成工程
まず、素子分離構造を形成する。基板としてp型シリコン基板100を用いることができ、このシリコン基板100を拡散炉に入れ、酸素又は水蒸気雰囲気下で加熱して、シリコン基板100の表面にシリコン酸化物膜(熱酸化膜)101を形成し(図2(A))、次いで、加熱下、CVDによりシラン及びアルゴンガスを導入してシリコン窒化物(Si3N4)膜102を成膜する(図2(B))。
【0031】
次に、シリコン窒化物膜102上にレジスト膜を形成し、リソグラフィー法によりレジストをパターニングして、所定の部分にレジストパターン103を形成する(図2(C))。このレジストパターンが積層されている領域が素子領域、レジストパターンが積層されていない領域が素子分離領域となる。
【0032】
次に、このレジストパターン103をマスクとしてエッチングによりシリコン窒化物膜102、シリコン酸化物膜(熱酸化膜)101をパターニングし、更に、シリコン基板100の上部もエッチングしてレジストパターン103でマスクされた部分以外の部分が陥没するように陥没部(浅い溝)100aを形成する(図2(D))。この場合、この陥没部(浅い溝)100aの側面は斜度が80度程度のテーパ面とすることが好ましい。
【0033】
次に、レジストパターン103を剥離し、露呈した100aの表面(側面及び底面)に熱酸化によりシリコン酸化物膜(内壁酸化膜)101aを形成する(図3(A))。これにより、上記したエッチングにより除かれなかったシリコン酸化物膜(熱酸化膜)101と連続するシリコン酸化物膜となる。
【0034】
次に、CVDによりシラン及びアルゴンガスを導入してシリコン酸化物膜104を、基板上の全面に成膜し(図3(B))、次いで、このシリコン酸化物膜104をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法によりシリコン窒化物膜102の上部と共に研磨除去し(図3(C))、更に、露呈したシリコン窒化物膜102をその下方のシリコン酸化物膜101と共にエッチングにより除去する(図3(D))。このエッチングは選択性の観点からウエットエッチングが好適である。
【0035】
そして、最後に、露呈したシリコン基板100表面にシリコン酸化物膜(犠牲酸化膜)105を形成する(図4(A))。これはイオン注入時のメタルコンタミネーションや表面ダメージを防止するための酸化膜である。このようにして素子分離が完了しSTI(Shallow Trench Isolation)が形成される。
【0036】
ゲート形成及びエクステンション形成工程
次に、常法又はRTP(Rapid Thermal Processing)法により、シリコン酸化物膜(犠牲酸化膜)105上に、シリコン酸化物を積層して、シリコン酸化物膜(犠牲酸化膜)105から連続する第1のシリコン酸化物層となるシリコン酸化物膜106を形成する(図4(B))。この場合、シリコン酸化物膜106の薄膜化を図るためには、RTP法を採用することが好ましく。この手法の採用が、100〜130nmノードを更に下回る微細素子形成には重要である。
【0037】
次に、CVDによりセルフアライメントマスクとして機能するAl膜107を、基板上の全面に成膜し(図4(C))、更に、Al膜107上に、所望のサイズのゲートを形成するためのレジストパターン108をフォトリソグラフィー法により形成し(図5(A))、レジストパターン108をマスクとしてAl膜107、シリコン酸化物膜106及びシリコン酸化物膜104上部をエッチングにより除去し、レジストを除去することにより、ゲート部分にシリコン酸化物層106aとパターニングされたAl膜107aとの積層構造が形成されると共に、ソース/ドレイン形成部分のシリコン基板100が再び露呈する(図5(B))。
【0038】
次に、ソースドレインエクステンション(SDエクステンション)を形成する。まず、この場合、p−MOS構造として、シリコン基板の露呈した表面部に、イオン注入法により、エクステンションBF2注入及びポケット・ヒ素注入により不純物を注入して、不純物注入層109を形成する(図5(C))。
【0039】
サイドウォール形成及びソース/ドレイン形成工程
次に、CVDによりシリコン酸化物又はシリコン窒化物からなる絶縁膜110を成膜し(図5(D))、エッチバックにより、シリコン酸化物層106a及びAl膜107aの側面にサイドウォール110aを形成する(図6(A))。これにより、Al膜107a上面が再び露呈する。次に、イオン注入により、p−MOS構造として、露呈したシリコン基板の表面部にp型不純物であるホウ素を注入することにより、不純物注入層112が形成されると共に、Al膜107aにも(図6(B))ホウ素が注入され、ホウ素が導入されたAl膜111が形成される。そして、イオン注入後、熱処理による拡散プロセス(不純物の活性化)を経て、ソース/ドレインが形成される。通常、上述したエクステンションBF2注入及びポケット・ヒ素注入を浅い接合というのに対して、このソース/ドレイン形成を深い接合という。
【0040】
M0配線(Wプラグ)形成工程
次に、M0配線(Wプラグ)を形成する。まず、セルフアライメントマスクであるホウ素が導入されたAl膜111をウエットエッチングにより除去する(図7(A))。
【0041】
そして、コンタクトホールを形成するために、例えばシリコン窒化物などからなるエッチストッパ層113を、基板上の全面に形成し(図7(B))、その上に、シリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114を積層する(図7(C))。これにより、ホウ素が導入されたAl膜111が除去されて形成された空洞部にシリコン窒化物が充填される。なお、エッチストッパ層としてシリコン窒化物を用いた場合は、シリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114は、エッチストッパ層と一体でシリコン窒化物層をなすことになる。
【0042】
次に、CMP法によりシリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114の表面を平坦化した後、フォトリソグラフィー法により、ソース及びドレインのコンタクトホール115を形成する(図8(A))。なお、エッチストッパ層113の形成は、必ずしも必要はないが、所定部分のオーバーエッチングを防止する観点から、エッチストッパ層113の形成は好適である。
【0043】
次に、コンタクトホール底部のエッチストッパ層113を、エッチングにより除去することにより、不純物注入層112表面をコンタクトホール115に露呈させ(図8(B))、次いで、コンタクトホール115内面にTiバリアメタル層を形成した後、コンタクトホール115内部をメタルCVDによりWで充填し、基板上の全面にW膜116を形成する(図8(C))。そして、CMPによりサイドウォール110の上端を除去する位置まで研磨除去して、M0配線(Wプラグ)が形成される(図9(A))。これにより、ホウ素が導入されたAl膜111が除去されて形成された空洞部に充填されたシリコン窒化物層114aの上面が露呈する。
【0044】
M1配線形成工程
次に、p−TEOSを用いたCVD法により基板上の全面にシリコン酸化物(SiO2)膜117を形成し(図9(B))、フォトリソグラフィー法により、コンタクトホール118を形成し(図10(A))、コンタクトホール118内部をCVDによりAlで充填し、基板上の全面にAl膜119をスパッタリングにより形成する(図10(B))。
【0045】
次に、コンタクトホール118の上方のAl膜119上に、Al膜119を配線パターンとして形成するためのレジストパターン120を形成し(図11(A))、フォトリソグラフィー法によりAl膜119をパターニングし、レジストパターンを除去することによりM1配線(Al配線)121が形成される(図11(B))。
【0046】
パッシベーション膜形成及びゲート形成工程
最後にAl配線121を被覆するように、基板上の全面にパッシベーション膜(シリコン窒化物膜)122を形成し(図12(A))、フォトリソグラフィー法によりAl配線を露呈させると共に、シリコン酸化物(SiO2)膜117のシリコン窒化物層114a上方に位置する部分を露呈(この場合は、シリコン酸化物(SiO2)膜117の上部が陥没するように)させて、シリコン窒化物層114a上のシリコン酸化物層117aを第2のシリコン酸化物層とし、ゲート123が形成される(図12(B))。
【0047】
以上の工程により、この半導体センシング用電界効果型トランジスタを製造することができ、この態様においては、シリコン基板100上に、第1のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層106a、シリコン窒化物層としてシリコン窒化物層114a、第2のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層117aが積層されており、これらによってシリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造によりゲート絶縁層が構成されている。そして、ゲート123のシリコン酸化物層117a上に有機単分子膜を形成すれば、半導体センシングデバイスとすることができる。
【0048】
また、本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタとしては、そのゲート絶縁層内に、更に低抵抗層が埋設されているものも好適である。このようなものとしては、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造の内部、特にシリコン窒化物層の一部が低抵抗層で置換された構造のものが挙げられる。
【0049】
このような低抵抗層を形成した半導体センシング用電界効果型トランジスタ(第3の態様)とその好適な製造方法について、図13〜15を参照して説明する。図15(B)は、低抵抗層を埋設された半導体センシング用電界効果型トランジスタの一例を示す。この半導体センシング用電界効果型トランジスタの場合は、第1のシリコン酸化物層をなすシリコン酸化物層106aと第2のシリコン酸化物層をなすシリコン酸化物層117aとの間の、シリコン窒化物層をなすシリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114中を貫通して、シリコン酸化物層106a及びシリコン酸化物層117aに接する低抵抗層200が形成されており、この場合、低抵抗層200は、シリコン酸化物層106a側から不純物注入層(ホウ素が注入されたSi膜)111a、金属シリサイド層111b及びW層116aが順に積層された構成となっている。このような半導体センシング用電界効果型トランジスタは、以下の方法で製造することができる。
【0050】
素子分離形成、ゲート形成及びエクステンション形成、並びにサイドウォール形成及びソース/ドレイン形成の各工程は、上述した第2の態様(図2(A)〜図6(B))と同様とすることができ、特に、上述した第2の態様において形成したAl膜を多結晶シリコン(ポリシリコン)とすることもでき、この場合、ホウ素のイオン注入により不純物注入層112が形成されると共に、ホウ素が注入されたAl膜の代わりにホウ素が注入されたSi膜111aが形成される。
【0051】
この場合、ソース/ドレイン形成工程に続いて、シリサイド化工程を経てM0配線形成工程を実施する。
【0052】
シリサイド化工程
上述したホウ素を注入したソース、ドレイン及びゲートの抵抗を低下させ、更に、シグナル検出の高速化を図るため、シリサイド化工程を実施する。この場合、まずスパッタリングにより、基板上の全面に金属薄膜を成膜して熱処理をすることにより、不純物注入層(ホウ素が注入されたSi膜)111aの上部がシリサイド化されて金属シリサイド層111bとなると共に、不純物注入層112の上部がシリサイド化されて金属シリサイド層112aとなる(図13(A))。なお、シリサイド化に寄与しなかった金属薄膜は、ウエットエッチングの選択性を利用して除去される。金属薄膜の材質としては、Co、Ni、Pt等を用いることが可能であり、各々コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、白金シリサイドが形成される。
【0053】
M0配線(Wプラグ)形成工程
次に、M0配線(Wプラグ)を形成する。まず、コンタクトホールを形成するために、例えばシリコン窒化物などからなるエッチストッパ層113を、基板上の全面に形成し(図13(B))、その上に、シリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114を積層する(図13(C))。
【0054】
次に、CMP法によりシリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114の表面を平坦化した後、フォトリソグラフィー法により、ソース、ドレイン及びゲートの上方にコンタクトホール115を形成する(図14(A))。なお、エッチストッパ層113の形成は、必ずしも必要はないが、所定部分のオーバーエッチングを防止する観点から、エッチストッパ層113の形成は好適である。
【0055】
次に、コンタクトホール底部のエッチストッパ層113を、エッチングにより除去することにより、金属シリサイド層111b及び金属シリサイド層112aをコンタクトホール115に露呈させ(図14(B))、次いで、コンタクトホール115内面にTi/TiNバリアメタル層を形成した後、コンタクトホール115内部をメタルCVDによりWで充填し、基板上の全面にW膜116を形成する(図14(C))。そして、CMPによりシリコン窒化物膜114上のW膜116を除去する位置まで研磨除去して、M0配線(Wプラグ)が形成される(図15(A))。
【0056】
M0配線形成工程以降は、上述した第2の態様と同様とすることができ、M1配線形成、並びにパッシベーション膜及びゲートの形成の各工程を経て、このような半導体センシング用電界効果型トランジスタを製造することができる。なお、図13〜15において、上述した第2の態様と同様の工程で形成された部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この態様においては、シリコン基板100上に、第1のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層106a、シリコン窒化物層としてシリコン窒化物膜114、第2のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層117aが積層されると共に、シリコン窒化物膜114の一部が、不純物注入層111a、金属シリサイド層111b及びW層116aが順に積層された低抵抗層200により置換され、この低抵抗層200が、シリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造内部に埋設されたゲート絶縁層が形成されている。そして、ゲート123のシリコン酸化物層117a上に有機単分子膜を形成すれば、半導体センシングデバイスとすることができる。
【0058】
なお、p型シリコン基板の代わりにn型シリコン基板を用いることも可能である。この場合、ソースドレインエクステンション(SDエクステンション)の形成は、n−MOS構造として、シリコン基板の露呈した表面部に、イオン注入法により、エクステンション・ヒ素注入、及びポケットBF2注入又はポケット・イリジウム注入により不純物を導入して、不純物導入層109を形成すればよく、また、n−MOS(シリコン基板の露呈した表面部)にn型不純物であるヒ素を注入することにより、不純物注入層112を形成すればよい。
【0059】
更に、図16(A),(B)に示されるように、上述した電界効果型トランジスタ構造をシリコン基板上に複数設ければ、同時に複数のセンシングが可能なデバイスを構成することも可能である。この場合、図16(A)に示されるように、個々のセンサ部(ゲート、ソース及びドレイン)に各々ソース電極とドレイン電極とを設けることも、図16(B)に示されるように、ソース電極とドレイン電極とを共通化してセンサ部を集積することも可能である。また、基板をp型シリコン基板又はn型シリコン基板としたもののみならず、p−MOSとn−MOSとを交互に配置したc−MOSとして構成することも可能である。なお、図16中、21はゲート、22はソース、22aはソース電極、23はドレイン、23aはドレイン電極である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一例(第1の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタ及び半導体センシングデバイスを示す断面図である。
【図2】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(素子分離工程)を説明するための断面図である。
【図3】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(素子分離工程)を説明するための断面図である。
【図4】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(素子分離工程からゲート形成及びエクステンション形成工程)を説明する断面図である。
【図5】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(ゲート形成及びエクステンション形成工程からサイドウォール形成及びソース/ドレイン形成工程)を説明するための断面図である。
【図6】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(サイドウォール形成及びソース/ドレイン形成工程)を説明するための断面図である。
【図7】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図8】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図9】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程からM1配線形成工程)を説明するための断面図である。
【図10】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M1配線形成工程)を説明するための断面図である。
【図11】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M1配線形成工程)を説明するための断面図である。
【図12】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタ及びこれを製造する工程(パッシベーション膜形成及びゲート形成工程)を説明するための断面図である。
【図13】本発明の一例(第3の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(シリサイド化工程からM0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図14】本発明の一例(第3の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図15】本発明の一例(第3の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタ及びこれを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図16】基板上に本発明の半導体センシング用電解効果型トランジスタを複数設けた状態を示す説明図である。
【図17】従来の半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程を説明するための断面図である。
【図18】従来の半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程を説明するための断面図である。
【図19】従来の半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 シリコン基板
2 ゲート絶縁層
2a 第1のシリコン酸化物層
2b シリコン窒化物層
2c 第2のシリコン酸化物層
3 有機単分子膜
4 ゲート電極
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 チャンネル領域
100 シリコン基板
106a シリコン酸化物層
114 シリコン窒化物膜(シリコン窒化物層)
114a シリコン窒化物層
117a シリコン酸化物層
111a 不純物注入層
111b 金属シリサイド層
116a W層
200 低抵抗層
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンセンシング、バイオセンシングに好適に用いることができる半導体センシングに用いる電界効果型トランジスタ、特に、バイオマイクロシステム、マイクロ化学分析システムに有効である半導体センシングに用いる電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
イオンセンシングシステム、バイオセンシングシステムは、食品製造・管理、環境計測等、広範な分野へ適用されている。イオン・バイオセンシングにおいては、一分子認識、一塩基認識等、イオン、分子レベルでのセンシングの要求がますます高まってきており、それを感知できるシステム、デバイスが必要となっている。更に、微量測定、多種同時測定のために、システム、デバイスの微細化・集積化かつオンチップ化が必要とされる。
【0003】
イオンセンシングデバイスとしては、シリコン窒化膜/シリコン酸化膜/シリコン構造を有するイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)が代表例として挙げられるが、従来のものは、pH測定のための参照電極は別途ガラス電極が用いられており、オンチップ化、微細化が図られていない。この場合、イオン感応膜であるシリコン窒化膜の膜厚が100〜200nm(ナノメータ)と厚いものが用いられている状況にある。一方で、酵素、免疫、DNAセンシングにおいては、レーザースキャナを用いた蛍光・発光によるセンシングが主流となっており、最近では電気化学反応を用いた電流・電位検出も試みられるようになってきている。また、半導体検出においては、上記のISFETとの組み合わせによる酵素、免疫センサ作製の事例が僅かにある。これらセンサにおける基本的な検出スタンスは、反応部(電極部)の実効表面積を増大させ、かつ反応物質の量を増加させるといった、いわゆる量的な効果によって検出を可能とするものである。また、レーザースキャナを用いた検出や電気化学検出は集積化・微細化によって応答感度(強度、応答速度等)が減少する傾向があり問題点を抱えている。
【0004】
このように、従来技術では、オンチップ化、微細化、集積化といった要求を満たす上で難点があり、一分子、イオン認識・検出において最大限の効果を引き出すには抜本的な改良が必要となってくるものと考えられる。更に、イオンセンシングシステム、バイオセンシングシステムにおいては、例えば、液中にセンサを浸漬し、検出部が液に接した状態を長時間維持して測定できる溶液中での測定を想定した半導体デバイスが特に必要となる。
【0005】
電界効果型トランジスタとして、本発明者らは、Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No.1A/B, 2004, pp.L105−107(非特許文献1)において、シリコン基板(P−Si(100)(8〜12Ωcm))を用いてゲート長10μm、ゲート幅1mmの電界効果型トランジスタを報告している。
【0006】
この電界効果型トランジスタは、図19(C)に示されるような、ゲート絶縁層としてシリコン酸化物膜が形成されたものである。このような電界効果型トランジスタを作製する場合は、まず、1%HF水溶液で30秒程度前洗浄したシリコン基板500を、1000℃の温度下でドライ酸化してシリコン基板500の表面に厚さ100nmのSiO2膜(フィールド酸化膜)501を成膜し(図17(A))、このSiO2膜501上にレジストをコーティングして、UVによりパターニング(露光、現像)して所定部分にレジストパターン502を形成し(図17(B))、このレジストパターンをマスクとしてSiO2膜501の下層が残る程度に1%HF水溶液でエッチングし(図17(C))、レジストパターン502を剥離して、チャンネル・ゲート部501aを形成する(図17(D))。
【0007】
次に、SiO2膜501上にアルミニウム膜(厚さ300nm)を蒸着(到達真空度 2.0×10-6Torr 電流値 30mA 成膜速度 約5nm/sec)にて成膜して、アルミニウム膜を、後述するイオン注入のマスクとして機能する所定のアルミニウム膜パターン503にフォトレジスト法により形成し(図18(A))、このアルミニウム膜パターン503をマスクとしてイオン注入(P−dope 40kV 1.0×1015ion/cm2)によりシリコン基板500の上層の所定部分にNチャンネル504,504を形成して、アルミニウム膜パターン503を剥離(50%リン酸に80℃で5mim浸漬)する。
【0008】
次に、アルミニウム膜パターン503を剥離した後(図18(B))、SiO2膜501表面をN2雰囲気下でアニール(900℃ 5min)することにより活性化処理し、このSiO2膜501上にレジストをコーティングして、UVによりパターニング(露光、現像)して、SiO2膜501のNチャンネル504,504上方に位置する部分以外を被覆するレジストパターン505を形成し(図18(C))、このレジストパターン505をマスクとしてNチャンネル504,504上のSiO2膜をエッチング(1%HF水溶液)し、レジストを除去して、コンタクト開口部504a,504aを形成する(図18(D))。
【0009】
次に、蒸着(EB蒸着 到達真空度 2.0×10-8Torr)により電極メタル層506を形成する。この場合、Ti膜(厚さ20nm 成膜時真空度 4.0×10-8 電流値70mA 成膜速度 0.13nm/sec)と、Pt膜(厚さ120nm 成膜時真空度 8.0×10-8Torr 電流値220mA 成膜速度 0.067nm/sec)とを成膜して電極メタル層506を形成し(図19(A))、窒素雰囲気下でアニール(800℃ 10min)して、電極メタル層506のTi膜とNチャンネル504,504との接合部分にTiSi2を生成させて、コンタクトを形成する。
【0010】
そして、電極メタル層506上に保護用酸化膜507(厚さ200nm)をプラズマCVD(PECVD:200W 400℃ 0.39Torr テトラエトキシシラン(TEOS) 6sccm O2 100sccm)で形成し(図19(B))、酸素雰囲気下でアニール(800℃、10min)することにより、CVD酸化膜の構造回復処理を施し、ゲート・電極接点開口508,508を、CHF3ガスを用いたリアクティブイオンエッチング(RIE)により形成して図19(C)に示されるような電界効果型トランジスタを作製している。
【0011】
このような電解効果型トランジスタを半導体センシングデバイスとして用いる場合、ゲート絶縁層上を有機単分子膜などによって修飾することになるが、図19(C)に示されるようなタイプのセンサは、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁層が露出した構造となっているため、水分やイオンなどの進入によりトランジスタ特性を損なうおそれがあり、検出部が液に接した状態で長時間測定する場合には不向きである。
【0012】
【非特許文献1】Daisuke Niwa 他2名, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No.1A/B, 2004, pp.L105−107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ゲート絶縁層からの水分やイオンの侵入によるトランジスタ特性の劣化を防止した、液中測定用として特に好適な半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
半導体センシングに用いる電界効果型トランジスタにおいては、上述したように、半導体上にシリコン酸化物が存在する構成、及びシリコン酸化物上に直接的な検出部をなす有機単分子膜が形成できる構成が採られ、半導体センシングデバイスにあっては、半導体とシリコン酸化物とが接し、かつシリコン酸化物と有機単分子膜とが接していることが、極限感度を有する半導体センシングデバイスとするために有効である。
【0015】
本発明は、シリコン上にゲート絶縁層が形成された半導体センシング用電界効果型トランジスタであり、該ゲート絶縁層上に、直接的な検出部として有機単分子膜を形成して用いる半導体センシングデバイス用の電界効果型トランジスタであって、上記ゲート絶縁層が、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造を具備することを特徴とする半導体センシング用電界効果型トランジスタ、及びこの半導体センシング用電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に有機単分子膜を直接的な検出部として形成してなる、有機単分子膜/ゲート絶縁層/半導体構造を有する半導体センシングデバイスを提供する。
【0016】
半導体センシング用電界効果型トランジスタにおいて、そのゲート絶縁層を第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造、換言すれば、シリコン酸化物/シリコン窒化物/シリコン酸化物積層構造とすることにより、シリコン窒化物層により、ゲート絶縁層を通過して侵入するトランジスタ部分への水分やイオンの侵入を遮断し、また、ゲート絶縁層もシリコン側及び有機単分子膜側共にシリコン酸化物となり、有機単分子膜との適合性も維持しつつ、従来のシリコン酸化物単層膜からなるゲート絶縁層と同等のセンシング機能を備える半導体センシングデバイスを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゲート絶縁層からのトランジスタ部分への水分やイオンの侵入を遮断することが可能であり、液中測定用として特に好適な、高い検出感度を示す半導体センシングデバイス及びこれを与える電界効果型トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態及び実施例】
【0018】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタは、シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタであって、該ゲート絶縁層上に、直接的な検出部として有機単分子膜を形成して用いる半導体センシングデバイス用の電界効果型トランジスタにおいて、上記ゲート絶縁層が、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなるシリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造を有するものである。なお、この積層構造は、積層構造を構成する上記の層と層との間に、ゲート絶縁層としての機能を妨げない程度の厚さの他の層、例えば、各層の加工の際の、エッチングの精度の向上を目的として常用されるエッチストッパ層などが存在するものであってもよい。
【0019】
このような電界効果型トランジスタは、半導体イオンセンシング、バイオセンシングデバイス用として好適に用いられるもので、シリコン上に形成されたゲート絶縁層上に、有機シラン単分子膜などの有機単分子膜を直接的な検出部として形成して、センシングデバイスとして用いることができる。即ち、このような半導体センシング用電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に有機単分子膜を直接的な検出部として形成してなる、有機単分子膜/ゲート絶縁層/半導体構造を有する半導体センシングデバイスを構成することができる。
【0020】
図1(A)は、本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタの一例(第1の態様)を示し、図1(B)はこれを用いてゲート絶縁層上に有機単分子膜を形成した半導体センシングデバイスを示す。なお、図1中、1はシリコン基板、2はゲート絶縁層、3は有機単分子膜であり、また4はゲート電極、5はソース電極、6はドレイン電極、7はチャンネル領域を示す。そして、本発明においては、このゲート絶縁層が、図1(C)に示されるように、第1のシリコン酸化物層2a上にシリコン窒化物層2bを介して第2のシリコン酸化物層2cが積層されてなるシリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造を有している。即ち、この場合、第1のシリコン酸化物層2aはシリコン基板1と接し、第2のシリコン酸化物層2cは、検出部をなす有機単分子膜が形成される面として外部に露呈しており、水分やイオン等の物質移動を遮断するように、第1のシリコン酸化物層2aと第2のシリコン酸化物層2cとの間にシリコン窒化物層2bが形成されている。
【0021】
そして、本発明の電界効果型トランジスタを用いることによって、そのゲート絶縁層上に有機単分子膜を液面と接する箇所に局所的に形成し、これを直接的な検出部とするデバイスを構成し、基本原理として表面上のイオン吸着・バイオ反応等に伴う表面電位変化を電気信号として検出する半導体センシングデバイスとすることができる。
【0022】
なお、この場合、上記有機単分子膜は、DNA、酵素、免疫等で修飾することができ、また、必要に応じてレポーター分子を用いることも可能である。
【0023】
有機単分子膜としては有機シラン単分子膜が好ましくは、所用のパターニング手法によりパターニングして形成することができる。
【0024】
この有機シラン単分子膜に関しては、有機シラン分子を用い、ゲート絶縁層上に気相化学反応又は液相反応によって形成し、有機シラン単分子膜はその最適化によって細密パッキングされた膜が形成される。
【0025】
この場合、有機シラン単分子膜としては、反応性の官能基、特にアミノ系の官能基(NH2−、−NH−、C5H5N−、C4H4N−等)又はカルボキシル系の官能基(−COOH等)を少なくとも1個含有する炭素数3〜20の直鎖状炭化水素基(アルキル基等)を有するアルコキシシランの単分子膜、非反応性の炭素数8〜20の直鎖アルキル基又はフッ素化アルキル基を有するアルコキシシランの単分子膜が挙げられる。
【0026】
この場合、アミノ系の官能基、カルボキシル系の官能基等の反応性官能基の導入は、このような官能基を有するアルコキシシランを用いるほか、このような官能基に置換可能な基、例えば−Br、−CN等のアミノ誘導基を有するアルコキシシランを用いて単分子膜を形成後、これらアミノ誘導基をアミノ基に置換する方法で導入することができる。
【0027】
なお、アルコキシシランとしては、密着性等の点でトリアルコキシシランが好ましく、またアルコキシ基としては炭素数1〜4のアルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0028】
なお、上記アルコキシシランの具体例としては、NH2(CH2)3Si(OC2H5)3、CH3(CH2)17Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3等が挙げられる。
【0029】
次に、図2〜12を参照し、本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタの他の態様(第2の態様)とその好適な製造方法について説明する。図12(B)は、半導体センシング用電界効果型トランジスタの一例を示し、この半導体センシング用電界効果型トランジスタは、以下の方法で製造することができる。
【0030】
素子分離形成工程
まず、素子分離構造を形成する。基板としてp型シリコン基板100を用いることができ、このシリコン基板100を拡散炉に入れ、酸素又は水蒸気雰囲気下で加熱して、シリコン基板100の表面にシリコン酸化物膜(熱酸化膜)101を形成し(図2(A))、次いで、加熱下、CVDによりシラン及びアルゴンガスを導入してシリコン窒化物(Si3N4)膜102を成膜する(図2(B))。
【0031】
次に、シリコン窒化物膜102上にレジスト膜を形成し、リソグラフィー法によりレジストをパターニングして、所定の部分にレジストパターン103を形成する(図2(C))。このレジストパターンが積層されている領域が素子領域、レジストパターンが積層されていない領域が素子分離領域となる。
【0032】
次に、このレジストパターン103をマスクとしてエッチングによりシリコン窒化物膜102、シリコン酸化物膜(熱酸化膜)101をパターニングし、更に、シリコン基板100の上部もエッチングしてレジストパターン103でマスクされた部分以外の部分が陥没するように陥没部(浅い溝)100aを形成する(図2(D))。この場合、この陥没部(浅い溝)100aの側面は斜度が80度程度のテーパ面とすることが好ましい。
【0033】
次に、レジストパターン103を剥離し、露呈した100aの表面(側面及び底面)に熱酸化によりシリコン酸化物膜(内壁酸化膜)101aを形成する(図3(A))。これにより、上記したエッチングにより除かれなかったシリコン酸化物膜(熱酸化膜)101と連続するシリコン酸化物膜となる。
【0034】
次に、CVDによりシラン及びアルゴンガスを導入してシリコン酸化物膜104を、基板上の全面に成膜し(図3(B))、次いで、このシリコン酸化物膜104をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法によりシリコン窒化物膜102の上部と共に研磨除去し(図3(C))、更に、露呈したシリコン窒化物膜102をその下方のシリコン酸化物膜101と共にエッチングにより除去する(図3(D))。このエッチングは選択性の観点からウエットエッチングが好適である。
【0035】
そして、最後に、露呈したシリコン基板100表面にシリコン酸化物膜(犠牲酸化膜)105を形成する(図4(A))。これはイオン注入時のメタルコンタミネーションや表面ダメージを防止するための酸化膜である。このようにして素子分離が完了しSTI(Shallow Trench Isolation)が形成される。
【0036】
ゲート形成及びエクステンション形成工程
次に、常法又はRTP(Rapid Thermal Processing)法により、シリコン酸化物膜(犠牲酸化膜)105上に、シリコン酸化物を積層して、シリコン酸化物膜(犠牲酸化膜)105から連続する第1のシリコン酸化物層となるシリコン酸化物膜106を形成する(図4(B))。この場合、シリコン酸化物膜106の薄膜化を図るためには、RTP法を採用することが好ましく。この手法の採用が、100〜130nmノードを更に下回る微細素子形成には重要である。
【0037】
次に、CVDによりセルフアライメントマスクとして機能するAl膜107を、基板上の全面に成膜し(図4(C))、更に、Al膜107上に、所望のサイズのゲートを形成するためのレジストパターン108をフォトリソグラフィー法により形成し(図5(A))、レジストパターン108をマスクとしてAl膜107、シリコン酸化物膜106及びシリコン酸化物膜104上部をエッチングにより除去し、レジストを除去することにより、ゲート部分にシリコン酸化物層106aとパターニングされたAl膜107aとの積層構造が形成されると共に、ソース/ドレイン形成部分のシリコン基板100が再び露呈する(図5(B))。
【0038】
次に、ソースドレインエクステンション(SDエクステンション)を形成する。まず、この場合、p−MOS構造として、シリコン基板の露呈した表面部に、イオン注入法により、エクステンションBF2注入及びポケット・ヒ素注入により不純物を注入して、不純物注入層109を形成する(図5(C))。
【0039】
サイドウォール形成及びソース/ドレイン形成工程
次に、CVDによりシリコン酸化物又はシリコン窒化物からなる絶縁膜110を成膜し(図5(D))、エッチバックにより、シリコン酸化物層106a及びAl膜107aの側面にサイドウォール110aを形成する(図6(A))。これにより、Al膜107a上面が再び露呈する。次に、イオン注入により、p−MOS構造として、露呈したシリコン基板の表面部にp型不純物であるホウ素を注入することにより、不純物注入層112が形成されると共に、Al膜107aにも(図6(B))ホウ素が注入され、ホウ素が導入されたAl膜111が形成される。そして、イオン注入後、熱処理による拡散プロセス(不純物の活性化)を経て、ソース/ドレインが形成される。通常、上述したエクステンションBF2注入及びポケット・ヒ素注入を浅い接合というのに対して、このソース/ドレイン形成を深い接合という。
【0040】
M0配線(Wプラグ)形成工程
次に、M0配線(Wプラグ)を形成する。まず、セルフアライメントマスクであるホウ素が導入されたAl膜111をウエットエッチングにより除去する(図7(A))。
【0041】
そして、コンタクトホールを形成するために、例えばシリコン窒化物などからなるエッチストッパ層113を、基板上の全面に形成し(図7(B))、その上に、シリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114を積層する(図7(C))。これにより、ホウ素が導入されたAl膜111が除去されて形成された空洞部にシリコン窒化物が充填される。なお、エッチストッパ層としてシリコン窒化物を用いた場合は、シリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114は、エッチストッパ層と一体でシリコン窒化物層をなすことになる。
【0042】
次に、CMP法によりシリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114の表面を平坦化した後、フォトリソグラフィー法により、ソース及びドレインのコンタクトホール115を形成する(図8(A))。なお、エッチストッパ層113の形成は、必ずしも必要はないが、所定部分のオーバーエッチングを防止する観点から、エッチストッパ層113の形成は好適である。
【0043】
次に、コンタクトホール底部のエッチストッパ層113を、エッチングにより除去することにより、不純物注入層112表面をコンタクトホール115に露呈させ(図8(B))、次いで、コンタクトホール115内面にTiバリアメタル層を形成した後、コンタクトホール115内部をメタルCVDによりWで充填し、基板上の全面にW膜116を形成する(図8(C))。そして、CMPによりサイドウォール110の上端を除去する位置まで研磨除去して、M0配線(Wプラグ)が形成される(図9(A))。これにより、ホウ素が導入されたAl膜111が除去されて形成された空洞部に充填されたシリコン窒化物層114aの上面が露呈する。
【0044】
M1配線形成工程
次に、p−TEOSを用いたCVD法により基板上の全面にシリコン酸化物(SiO2)膜117を形成し(図9(B))、フォトリソグラフィー法により、コンタクトホール118を形成し(図10(A))、コンタクトホール118内部をCVDによりAlで充填し、基板上の全面にAl膜119をスパッタリングにより形成する(図10(B))。
【0045】
次に、コンタクトホール118の上方のAl膜119上に、Al膜119を配線パターンとして形成するためのレジストパターン120を形成し(図11(A))、フォトリソグラフィー法によりAl膜119をパターニングし、レジストパターンを除去することによりM1配線(Al配線)121が形成される(図11(B))。
【0046】
パッシベーション膜形成及びゲート形成工程
最後にAl配線121を被覆するように、基板上の全面にパッシベーション膜(シリコン窒化物膜)122を形成し(図12(A))、フォトリソグラフィー法によりAl配線を露呈させると共に、シリコン酸化物(SiO2)膜117のシリコン窒化物層114a上方に位置する部分を露呈(この場合は、シリコン酸化物(SiO2)膜117の上部が陥没するように)させて、シリコン窒化物層114a上のシリコン酸化物層117aを第2のシリコン酸化物層とし、ゲート123が形成される(図12(B))。
【0047】
以上の工程により、この半導体センシング用電界効果型トランジスタを製造することができ、この態様においては、シリコン基板100上に、第1のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層106a、シリコン窒化物層としてシリコン窒化物層114a、第2のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層117aが積層されており、これらによってシリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造によりゲート絶縁層が構成されている。そして、ゲート123のシリコン酸化物層117a上に有機単分子膜を形成すれば、半導体センシングデバイスとすることができる。
【0048】
また、本発明の半導体センシング用電界効果型トランジスタとしては、そのゲート絶縁層内に、更に低抵抗層が埋設されているものも好適である。このようなものとしては、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造の内部、特にシリコン窒化物層の一部が低抵抗層で置換された構造のものが挙げられる。
【0049】
このような低抵抗層を形成した半導体センシング用電界効果型トランジスタ(第3の態様)とその好適な製造方法について、図13〜15を参照して説明する。図15(B)は、低抵抗層を埋設された半導体センシング用電界効果型トランジスタの一例を示す。この半導体センシング用電界効果型トランジスタの場合は、第1のシリコン酸化物層をなすシリコン酸化物層106aと第2のシリコン酸化物層をなすシリコン酸化物層117aとの間の、シリコン窒化物層をなすシリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114中を貫通して、シリコン酸化物層106a及びシリコン酸化物層117aに接する低抵抗層200が形成されており、この場合、低抵抗層200は、シリコン酸化物層106a側から不純物注入層(ホウ素が注入されたSi膜)111a、金属シリサイド層111b及びW層116aが順に積層された構成となっている。このような半導体センシング用電界効果型トランジスタは、以下の方法で製造することができる。
【0050】
素子分離形成、ゲート形成及びエクステンション形成、並びにサイドウォール形成及びソース/ドレイン形成の各工程は、上述した第2の態様(図2(A)〜図6(B))と同様とすることができ、特に、上述した第2の態様において形成したAl膜を多結晶シリコン(ポリシリコン)とすることもでき、この場合、ホウ素のイオン注入により不純物注入層112が形成されると共に、ホウ素が注入されたAl膜の代わりにホウ素が注入されたSi膜111aが形成される。
【0051】
この場合、ソース/ドレイン形成工程に続いて、シリサイド化工程を経てM0配線形成工程を実施する。
【0052】
シリサイド化工程
上述したホウ素を注入したソース、ドレイン及びゲートの抵抗を低下させ、更に、シグナル検出の高速化を図るため、シリサイド化工程を実施する。この場合、まずスパッタリングにより、基板上の全面に金属薄膜を成膜して熱処理をすることにより、不純物注入層(ホウ素が注入されたSi膜)111aの上部がシリサイド化されて金属シリサイド層111bとなると共に、不純物注入層112の上部がシリサイド化されて金属シリサイド層112aとなる(図13(A))。なお、シリサイド化に寄与しなかった金属薄膜は、ウエットエッチングの選択性を利用して除去される。金属薄膜の材質としては、Co、Ni、Pt等を用いることが可能であり、各々コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、白金シリサイドが形成される。
【0053】
M0配線(Wプラグ)形成工程
次に、M0配線(Wプラグ)を形成する。まず、コンタクトホールを形成するために、例えばシリコン窒化物などからなるエッチストッパ層113を、基板上の全面に形成し(図13(B))、その上に、シリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114を積層する(図13(C))。
【0054】
次に、CMP法によりシリコン窒化物膜(層間絶縁膜)114の表面を平坦化した後、フォトリソグラフィー法により、ソース、ドレイン及びゲートの上方にコンタクトホール115を形成する(図14(A))。なお、エッチストッパ層113の形成は、必ずしも必要はないが、所定部分のオーバーエッチングを防止する観点から、エッチストッパ層113の形成は好適である。
【0055】
次に、コンタクトホール底部のエッチストッパ層113を、エッチングにより除去することにより、金属シリサイド層111b及び金属シリサイド層112aをコンタクトホール115に露呈させ(図14(B))、次いで、コンタクトホール115内面にTi/TiNバリアメタル層を形成した後、コンタクトホール115内部をメタルCVDによりWで充填し、基板上の全面にW膜116を形成する(図14(C))。そして、CMPによりシリコン窒化物膜114上のW膜116を除去する位置まで研磨除去して、M0配線(Wプラグ)が形成される(図15(A))。
【0056】
M0配線形成工程以降は、上述した第2の態様と同様とすることができ、M1配線形成、並びにパッシベーション膜及びゲートの形成の各工程を経て、このような半導体センシング用電界効果型トランジスタを製造することができる。なお、図13〜15において、上述した第2の態様と同様の工程で形成された部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
この態様においては、シリコン基板100上に、第1のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層106a、シリコン窒化物層としてシリコン窒化物膜114、第2のシリコン酸化物層としてシリコン酸化物層117aが積層されると共に、シリコン窒化物膜114の一部が、不純物注入層111a、金属シリサイド層111b及びW層116aが順に積層された低抵抗層200により置換され、この低抵抗層200が、シリコン酸化物層/シリコン窒化物層/シリコン酸化物層の積層構造内部に埋設されたゲート絶縁層が形成されている。そして、ゲート123のシリコン酸化物層117a上に有機単分子膜を形成すれば、半導体センシングデバイスとすることができる。
【0058】
なお、p型シリコン基板の代わりにn型シリコン基板を用いることも可能である。この場合、ソースドレインエクステンション(SDエクステンション)の形成は、n−MOS構造として、シリコン基板の露呈した表面部に、イオン注入法により、エクステンション・ヒ素注入、及びポケットBF2注入又はポケット・イリジウム注入により不純物を導入して、不純物導入層109を形成すればよく、また、n−MOS(シリコン基板の露呈した表面部)にn型不純物であるヒ素を注入することにより、不純物注入層112を形成すればよい。
【0059】
更に、図16(A),(B)に示されるように、上述した電界効果型トランジスタ構造をシリコン基板上に複数設ければ、同時に複数のセンシングが可能なデバイスを構成することも可能である。この場合、図16(A)に示されるように、個々のセンサ部(ゲート、ソース及びドレイン)に各々ソース電極とドレイン電極とを設けることも、図16(B)に示されるように、ソース電極とドレイン電極とを共通化してセンサ部を集積することも可能である。また、基板をp型シリコン基板又はn型シリコン基板としたもののみならず、p−MOSとn−MOSとを交互に配置したc−MOSとして構成することも可能である。なお、図16中、21はゲート、22はソース、22aはソース電極、23はドレイン、23aはドレイン電極である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一例(第1の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタ及び半導体センシングデバイスを示す断面図である。
【図2】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(素子分離工程)を説明するための断面図である。
【図3】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(素子分離工程)を説明するための断面図である。
【図4】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(素子分離工程からゲート形成及びエクステンション形成工程)を説明する断面図である。
【図5】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(ゲート形成及びエクステンション形成工程からサイドウォール形成及びソース/ドレイン形成工程)を説明するための断面図である。
【図6】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(サイドウォール形成及びソース/ドレイン形成工程)を説明するための断面図である。
【図7】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図8】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図9】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程からM1配線形成工程)を説明するための断面図である。
【図10】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M1配線形成工程)を説明するための断面図である。
【図11】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M1配線形成工程)を説明するための断面図である。
【図12】本発明の一例(第2の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタ及びこれを製造する工程(パッシベーション膜形成及びゲート形成工程)を説明するための断面図である。
【図13】本発明の一例(第3の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(シリサイド化工程からM0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図14】本発明の一例(第3の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図15】本発明の一例(第3の態様)に係る半導体センシング用電解効果型トランジスタ及びこれを製造する工程(M0配線(Wプラグ)形成工程)を説明するための断面図である。
【図16】基板上に本発明の半導体センシング用電解効果型トランジスタを複数設けた状態を示す説明図である。
【図17】従来の半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程を説明するための断面図である。
【図18】従来の半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程を説明するための断面図である。
【図19】従来の半導体センシング用電解効果型トランジスタを製造する工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 シリコン基板
2 ゲート絶縁層
2a 第1のシリコン酸化物層
2b シリコン窒化物層
2c 第2のシリコン酸化物層
3 有機単分子膜
4 ゲート電極
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 チャンネル領域
100 シリコン基板
106a シリコン酸化物層
114 シリコン窒化物膜(シリコン窒化物層)
114a シリコン窒化物層
117a シリコン酸化物層
111a 不純物注入層
111b 金属シリサイド層
116a W層
200 低抵抗層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン上にゲート絶縁層が形成された半導体センシング用電界効果型トランジスタであり、該ゲート絶縁層上に、直接的な検出部として有機単分子膜を形成して用いる半導体センシングデバイス用の電界効果型トランジスタであって、上記ゲート絶縁層が、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造を具備することを特徴とする半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
上記ゲート絶縁層内に、更に低抵抗層を埋設してなることを特徴とする請求項1記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に有機単分子膜を直接的な検出部として形成してなる、有機単分子膜/ゲート絶縁層/半導体構造を有する半導体センシングデバイス。
【請求項1】
シリコン上にゲート絶縁層が形成された半導体センシング用電界効果型トランジスタであり、該ゲート絶縁層上に、直接的な検出部として有機単分子膜を形成して用いる半導体センシングデバイス用の電界効果型トランジスタであって、上記ゲート絶縁層が、第1のシリコン酸化物層上にシリコン窒化物層を介して第2のシリコン酸化物層が積層されてなる積層構造を具備することを特徴とする半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
上記ゲート絶縁層内に、更に低抵抗層を埋設してなることを特徴とする請求項1記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に有機単分子膜を直接的な検出部として形成してなる、有機単分子膜/ゲート絶縁層/半導体構造を有する半導体センシングデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−98333(P2006−98333A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287286(P2004−287286)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
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