半導体膜の改良された堆積方法
【課題】均一性の高いSi又はSiGeを基板表面上に堆積する方法を提供する。
【解決手段】化学気相成長プロセスにおいて、輸送量制限領域又はその近傍で、薄膜の堆積を行うことを可能にする化学前駆体を利用する。このプロセスによれば、堆積速度が大きく、さらに組成的にも厚み的にも、通常の化学前駆体を用いて調整した膜より均一な膜を生成することができる。好ましい実施の形態では、トリシランを使用して、トランジスタゲート電極などの様々な用途で半導体産業において有用なSi含有薄膜を堆積する。
【解決手段】化学気相成長プロセスにおいて、輸送量制限領域又はその近傍で、薄膜の堆積を行うことを可能にする化学前駆体を利用する。このプロセスによれば、堆積速度が大きく、さらに組成的にも厚み的にも、通常の化学前駆体を用いて調整した膜より均一な膜を生成することができる。好ましい実施の形態では、トリシランを使用して、トランジスタゲート電極などの様々な用途で半導体産業において有用なSi含有薄膜を堆積する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、集積回路製造用のSi、Ge及び/又は炭素を含む膜などの半導体膜の堆積方法に関する。より詳細には、本発明は、化学気相成長システムにおける、厚み及び組成のより高い均一性を有するこれらの材料の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電子素子における寸法の縮小につれて、その製造に用いられる材料の物理的、化学的特性がより重要になってきている。これは、実証済みの製造装置を用いて現行の世代の素子に組み込まれ得る先端の材料において、特にそうである。例えば、エピタキシャルSi1−xGexやSi1−x−yGexCy合金を、バイポーラ及びBiCMOS素子の製造工程に組み込むことは望ましい。これらの先端の合金材料は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)のベース膜、BiCMOS素子の抵抗体、及びCMOS素子や別の様々な集積電子素子のゲート電極として使用されている。
【0003】
単結晶、アモルファス及び/又は多結晶シリコン、シリコンゲルマニウム(SiGe)合金及びシリコンゲルマニウムカーボン(SiGeC)合金を堆積する通常のプロセスは、一般に、(低圧(LP)又は超高真空(UHV)条件での)バッチ式の熱プロセス又は枚葉式のプロセスを用いて行われる。枚葉式のプロセスは、ますます重要になってきているが、幾つかの問題が残っている。例えば、ウェハ内部及びウェハ間での均一性、堆積速度、及びプロセス再現性においては、特にin situドーピングされる半導体膜で、従来の枚葉式のプロセスに対する懸念が残っている。ウェハサイズの拡大は続いているので(現在300mmウェハが製造プロセスに組み込まれている)、均一性を保持することはさらに困難になりつつある。
【0004】
日本国特許出願、特開昭60−43485号公報には、明らかに光電池の用途において、300℃でアモルファス薄膜を形成するためにトリシランを使用することが開示されている。日本国特許出願、特開平5−62911号公報には、500℃以下で薄膜を形成するためにトリシランとゲルマンとを使用することが開示されている。日本国特許出願、特開平3−91239号公報、特開平3−185817号公報、特開平3−187215号公報、及び特開平02−155225号公報には、それぞれジシランの使用が開示されており、幾つかではトリシランにも言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−43485号公報
【特許文献2】特開平5−62911号公報
【特許文献3】特開平3−91239号公報
【特許文献4】特開平3−185817号公報
【特許文献5】特開平3−187215号公報
【特許文献6】特開平02−155225号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術は、一般に、比較的低い堆積温度で、アモルファス水素化シリコンを形成するためのジシラン及びトリシランの使用に焦点を当てたものである。しかしながら、好ましくは速い堆積速度で均一性の良さを犠牲にすることなく、ドープトシリコン、低H含有率アモルファスシリコン及びSiGeなどの半導体材料を表面上に堆積する方法は依然必要である。
【0007】
本発明者等は、Si含有膜及びGe含有膜を形成するより優れた方法を見出した。該方法は、CVDプロセスにおいて、高次シラン及び/又は高次ゲルマンなどの化学前駆体を用いて示され、半導体産業に有用な、Si含有膜、特にシリコン、SiGe合金薄膜又はSiGeC合金薄膜の堆積が改良される。これらの化学前駆体は、シラン、ゲルマン及び通常の炭素源分子に比べて熱安定性に劣るものである。
【0008】
本発明の一態様によれば、特定の前駆体を使用することにより、同じ温度における通常の前駆体の場合と比べて、堆積プロセスを、輸送量制限成長領域の近傍で、又は該領域内で行うことができる。該領域内においては、望ましくない元素濃度勾配や膜堆積速度の変動など、温度に依存する不均一性、及び結果としての厚みの不均一性を避けることができる。好ましい化学前駆体には、トリシラン、及びジゲルマンが組み合わされたトリシランが含まれる。従来の化学前駆体に用いられる温度より低い温度で、且つより速い膜堆積速度での、均一な堆積が達成される。
【0009】
本発明の別の態様では、好ましい前駆体の流量を温度の関数として調整することによって、従来の前駆体(例えば、シラン)を用いた堆積と比べて、同等又はより高い均一性でより速い堆積速度を得る。シランを越えるトリシランの利点として、特に、集積トランジスタの活性層としてのSi含有膜の堆積に利用可能であることが挙げられる。
【0010】
本発明の別の態様では、このような望ましくない元素濃度勾配、厚みの不均一性及び膜堆積速度の変動を低減又は除去するように、温度、温度分布、圧力、反応体流量及び反応体分圧などのプロセスパラメータを、段階的又は動的に変化させる方法が示される。これらの方法は、高次シラン及び/又はゲルマンの使用と共に用いられる。
【0011】
本発明のこれらの態様及び別の態様は、本発明を例示するためであって、限定するためのものではないことが、以下の説明及び添付した図面から容易に明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
CVDによる基板表面上への膜堆積における不均一性においては、加熱及び温度制御システムの限界に起因する動的な温度変動が大きく影響する。一般に、堆積した膜は、厚み及び元素組成の両面で可能な限り均一であることが望ましいが、既存の堆積方法では、程度の差はあっても不均一な膜が形成される傾向にある。このような不均一性は、基板の表面にわたる温度変化に起因することが多い。基板の表面温度は、堆積速度及び得られる膜の組成に影響を与えるからである。ガス流量及びトータル圧力を含む別のプロセスパラメータにわたる不完全な制御も、膜の物理特性における不均一性に寄与していると考えられている。
【0013】
所望の膜で全体的に均一な厚みが得られるように、堆積条件、例えばガス流量、基板の回転速度、加熱エレメントへの電力分布などを経験的に調整することによって、均一性が求められることが多い。これを行うためには、まず異なる基板上にそれぞれ予め選択された堆積条件の組み合わせの下で多くの膜を堆積する。次いで、それぞれの膜内の厚み変動を測定して結果を分析し、厚み変動を取り除くことのできる条件を確認する。しかしながら、本発明者等は、この実験によるプロセスにおいては、必ずしも該プロセスを通して均一な温度分布が実現されておらず、むしろ、該プロセスによって、特定の反応温度「設定値」に対する温度変動によって生じた厚み変動が効果的に時間平均されていることを見出した。
【0014】
したがって、この経験的手法では、必ずしも堆積プロセスを通して基板全体にわたる均一な温度が得られていない。組成の均質性(又は少なくとも制御)は、三次元、即ち膜表面にわたってのものと膜厚を通してのものとの両面で望まれているので、次に組成変動の問題が提起される。これは、多くの膜がドーパントを含有し、これらドーパントの濃度が膜の電子的特性に影響を及ぼすからである。不均一な温度は、膜へのドーパントの不均一な組み込みの一因となる虞がある。同様に、組成における別の不均一性を引き起こし得る。
【0015】
好ましい実施の形態によって、この問題を解決するプロセスが提供される。それぞれのプロセスは、独立に用いられ、又は好ましくは組み合わせて用いられる。一プロセスでは、同じ温度での通常の前駆体と比べて、膜の堆積が実質的に輸送量制限成長領域内で行われることを可能にする化学前駆体を使用することを含む。所与の化学前駆体において、輸送量制限領域とは、膜堆積速度が温度に依存しない独立な温度範囲を意味する。実質的に該温度範囲内にある堆積速度は、それらの変動が輸送量制限領域、又はその近傍に留まる温度下である限り、基板表面にわたる小さな温度変動では比較的影響を受けない。これによって、通常の化学前駆体を用いて同じ温度で堆積した膜より、遙かに均一な、例えば、より高い組成均一性及び/又は厚み均一性を示す膜の形成が可能となる。これは、通常の前駆体では、輸送量制限領域内で堆積を行うには、非常に高い温度を必要とするからである。
【0016】
当業者なら明らかなように、所与の前駆体及び反応条件の組み合わせについて輸送量制限領域の温度範囲が決定され、アレニウスプロットに示される。化学前駆体トリシランについては、温度依存する堆積速度から温度依存しない堆積速度への転移点は、図10のアレニウスプロットに示すように、シラン又はジシランの転移点より遙かに低い。グラフの低い領域から転移までは上向きのリニアの傾斜であり、この温度範囲内でのトリシランの堆積は、温度の影響を強く受ける関数であって、したがって輸送量制限領域内にはないことが示されている。例えば、図10には、用いられた条件(流量25sccm、圧力40Torr(5332.8Pa))において、約525℃より低い温度では、トリシランの堆積が輸送量で制限されない(即ち、動的領域内にある)ことが示されている。これに対して、転移点より上のグラフの領域は実質的にフラットであり、この温度範囲内でのトリシランの堆積は、温度から独立しており、したがって輸送量制限領域内にあることが示されている。例えば、図10には、約620℃以上の温度では、トリシランの堆積が明らかに輸送量制限されていることが示されている。このように、転移はある温度領域にわたって起こっており、そこでは、アレニウスプロットの傾斜が減衰していることによって、輸送量制限領域の近くでは、この温度範囲内でのトリシランの堆積が実質的に温度から独立していることが示されている。例えば、図10には、約525℃以上でトリシランの堆積が実質的に輸送量制限されることが示されている。この転移点は、流量が幾分か増加するとやや高くなり、流量が幾分か減少するとやや低くなるであろうことが分かる。例えば、温度依存堆積から実質的に輸送量に制限される堆積への転移点は、トリシランの流量が増加するとより高い温度へシフトすることが経験的に求められている。したがって、トリシランを使用することによって、現在の製造方法(例えば、結晶の特性を保持するための熱割当量の維持、ドーパントプロファイルの制御など)において別の理由から望ましい温度で、実質的に輸送量制限された堆積を行うことが可能となる。
【0017】
様々なSi含有化学前駆体及びGe含有化学前駆体が、本明細書に開示した膜堆積プロセスで適切に用いられ、Si含有膜、Ge含有膜及びSiとGeとの両方を含有する合金膜、例えばシリコンゲルマニウム(SiGe、化学量論組成を意味するものではない)膜が得られる。また、これらの化学前駆体は、炭素源と組み合わせて使用されてもよく、合金膜、例えばSiGeC(化学量論組成を意味するものではない)合金薄膜を得ることもできる。本発明での使用に好適な好ましいSi含有化学前駆体には、高次の、非ハロゲン化シリコン水素化物、特に式SinH2n+2(ここでn=2〜6)のシランが含まれる。特定の例では、ジシラン(H3SiSiH3)、トリシラン(H3SiSiH2SiH3)、及びテトラシラン(H3SiSiH2SiH2SiH3)が含まれる。トリシラン(Si3H8とも表される)は、揮発性及び反応性のバランスを実現するのに特に好ましい。SiGeの堆積には、比較的低温での実質的に又はほぼ輸送量制限された堆積が好ましい(しかし必要ではない)。本発明での使用に好適な好ましいGe含有化学前駆体には、式GenH2n+2(ここでn=2〜3)の高次ゲルマンが含まれる。別の構成では、ゲルマニウム源には、(H3Ge)(GeH2)x(GeH3)(ここでx=0〜2)が含まれ得る。特定の例には、ジゲルマン(H3GeGeH3)、トリゲルマン(H3GeGeH2GeH3)及びテトラゲルマン(H3GeGeH2GeH2GeH3)が含まれる。
【0018】
好ましい実施の形態では、化学前駆体は炭素源と組み合わせて用いられる。好ましい炭素源には、シリルメタン[(H3Si)4−xCRx](ここでx=0〜3、及びR=H及び/又はD)が含まれる。好ましいシリルメタンは、ジシリルメタン、トリシリルメタン及びテトラシリルメタン(x=0〜2)であり、テトラシリルメタンが特に好ましい。その別の好ましい炭素源には、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びHCNが含まれる。これらの化学前駆体及び炭素源は、商業的供給源から購入してもよいし、当技術分野で周知の方法で合成してもよい。SiC、SiNC及びSiOC(この短縮形はいずれも特定の化学量論組成を意味するものではない)などのSi含有膜は、半導体製造業において、例えば、エッチストップ膜、ハードマスク、及びパッシベーション膜など様々に使用される。
【0019】
上記膜は、実質的に、使用される特定の化学前駆体における輸送量制限領域内の温度で、堆積されることが好ましい。特定の化学前駆体及び反応条件の組み合わせについて、輸送量制限領域は、様々な温度での堆積データから実験的に得られたアレニウスプロットから求められる。特定の条件の組み合わせで最も好ましいシリコン前駆体であるトリシランのアレニウスプロットが、上記の図10として添付されている。
【0020】
本明細書記載のような好ましい化学前駆体(特にトリシラン)を使用し、その前駆体の輸送量制限領域内で堆積温度を選択することに加えて、第1のプロセスを用いた堆積は、好ましくは、別の堆積パラメータ、特にガス流量を適切に選択することを含む。実質的に輸送量制限領域内での堆積と組み合わせて、ガス流量を適切に選択すると、高度の均一性を保持しつつ、シランと比べて遙かに速い堆積速度で膜を形成することができることが判明した。動的領域における温度でシランを用いた堆積では、膜の均一性は主として温度コントローラの設定値に依存しており、ガス流量調節器の設定値に対しては遙かに小さい程度の依存である。これに対して、実質的に輸送量制限領域内の温度で高次シランを含む堆積では、温度コントローラの設定値に対する感度とガス流量調節器の設定値に対する感度とが逆転していることが判明した。例えば、実質的に輸送量制限領域内の温度でトリシランを用いた堆積では、温度コントローラ設定値の調整は、ガス流量調節器設定値の調整に比べて膜の均一性への影響が小さい。
【0021】
本明細書記載のように堆積を行った場合、得られる膜は、好ましいことに比較の膜より均一である。本明細書で用いられるように、「比較の」膜は、高次シランの代わりにシランを用い、及び/又は高次ゲルマンの代わりにゲルマンを用いること、及び、温度コントローラの設定値とガス流量調節器の設定値とに対する上記の感度の違いを考慮に入れるように、それぞれの膜の堆積プロセスを個々に調整することを除いては、議論されるべき本発明の膜に対して意味のあるあらゆる点で実質的に同一の方法で形成される。より詳細には、異なる膜の結果を比較する場合、厚みの均一性は、下記の基準で測定される。ランダムに選択したウェハの直径を用い、この直径に沿った49点の堆積膜の厚みを測定する。ウェハ外周の3mmの排除領域内では測定しない。次いで、これら49点についての厚み測定値の範囲(例えば、±6Å)を、その49点の最大厚み測定値と最小厚み測定値とを加算した合計で割る。本明細書ではこの均一性をパーセンテージで表す。有利にも、本明細書記載の前駆体を使用した方法によって、非常に速い堆積速度が得られ、しかも驚くべきことに、非常に高い均一性と滑らかさが得られることが判明した。
【0022】
例えば、好ましい多結晶シリコン膜はトリシランを用いて形成され、同じ温度で上記トリシランの代わりにシランを使用して別個に最適化されたプロセスで形成された比較の膜より、速い堆積速度でより高い均一性を有する。同様にして、本発明者等は、トリシランで形成されたアモルファスシリコン(α−Si)膜及びエピタキシャルシリコン(epi−Si)膜について別個に実験し、これらがシランを堆積した膜に比べて優れた均一性を示すことを見出した。図15〜18及び対応する本明細書の下記の説明を参照されたい。同様に、高次ゲルマンを用いて好ましいSiGe膜を形成したが、この膜は、前記の高次ゲルマンの代わりにゲルマンを用いて形成した比較の膜より高い均一性を有する。さらに、開示されたシリコン及びゲルマニウム供給源を用いて、より低い反応温度でより速い堆積速度を実現することもできる。
【0023】
図11は、堆積温度600℃及び圧力40Torr(5332.8Pa)で、堆積速度が、(幾つかの図では、「Silcore(商標)」と表されている)トリシラン流量の一次関数であることを示す。この直線性は、これらの条件ではトリシランの堆積が実質的に又はほとんど輸送量で制限されていることをさらに示唆しており、酸化中の核形成時間が非常に短いことをさらに示唆する。図12は、図示のように堆積時間を90秒〜15秒の範囲にわたって変化させたことを除いて、同一条件下(650℃、40Torr(5332.8Pa))でトリシランを用いて堆積した膜について、測定個所の関数としての膜厚をプロットしたグラフである。図12には、一定のトリシラン流量では、広範な堆積時間にわたって、優れた膜均一性が得られることが示されており、この結果は単なる時間平均ではなく、前駆体の性質及び選択された条件による結果であり、さらに、これらの膜は厚みによらず均一であるから、放射率(又は別の厚みに依存する温度制御)の影響により均一性は変化しないことが示されている。図13は、ジボラン流量の範囲(0〜180sccm)にわたって、堆積温度600℃及び圧力40Torr(5332.8Pa)でトリシランとジボラン(ドーパント前駆体)を用いて得られた堆積速度のグラフである。図13には、トリシランを用いた堆積速度が、ドーパント前駆体の流量に対して比較的影響され難いことが示されている。
【0024】
好ましい温度範囲は、特定の化学前駆体に依存する傾向があり、熱安定性が低下するにつれて、より低い温度がより適切なものとなる。高次シラン及び高次ゲルマンについては、鎖長が長くなるにつれてより低い温度が好ましくなる。したがって、ジシラン堆積のための好ましい温度範囲は、トリシランより高くなる傾向があり、同様にトリシランはテトラシランなどより高くなる傾向にある。ゲルマンの系列についても同様の傾向が成り立つ。得られる膜における水素含有率をできるだけ下げるために、トリシランを堆積する好ましい温度は約350℃より高く、好ましくは約450℃より高い。より好ましくは、輸送量制限領域の近く又は領域内での堆積を得るために、温度は約525℃より高く、より好ましくは約550℃より高く、さらに好ましくは約600℃より高く保持される。このプロセスを約700℃より高い温度で行うこともできるが、約700℃以下の温度が好ましい。したがって、好ましい温度は、約450℃〜約700℃の範囲であり、より好ましくは約525℃〜約650℃の範囲である。特定の化学前駆体又はその混合物についても、本明細書で提供するガイドラインに従って、所定の実験を通して、最も好ましい温度範囲を決定することができる。記載の温度は熱CVDに好ましいものであることを理解されたい。特定の用途に許容される水素組み込みの濃度に依存する、プラズマ堆積法においてはより低い温度が適切である。
【0025】
堆積温度の選択は、堆積されている膜において求められる結晶性にも一部依存する。例えば、大部分が結晶性のシリコンは、約620℃〜800℃の範囲で堆積することができ、上述のように、この温度範囲は明らかに輸送量制限領域内にある。より好ましくは、ポリシリコンの堆積は、650℃と750℃の間で行われる。アモルファスシリコンの堆積にはより低い温度が使用できるが、少なくとも実質的に輸送量で制限されために(即ち、好ましい条件としては好ましくは525℃より高く)温度を選択することが好ましい。エピタキシャルシリコンは、堆積を行う表面の清浄さに大きく依存する。即ち、当業者であれば理解されるが、予め堆積したエピタキシャル膜又は単結晶ウェハの上面などの極めて清浄な単結晶表面によって、流量、圧力などに依存する広い温度範囲でのエピタキシャル堆積が可能となる。通常、適当な表面上へのエピタキシャル堆積を、500℃と1160℃との間で行うことができる。熱割当量を考慮して、約500℃〜約750℃など、より低い温度範囲を使用することが好ましい。図15〜18及び下記の対応する本明細書の記述を参照されたい。
【0026】
好ましくは、シラン及び/又はゲルマンを用いた比較の膜と比べて、より速い堆積速度及び/又はより均一な膜を得るのに効果的な温度で、化学前駆体、例えば高次シラン及び/又は高次ゲルマンを用いて堆積を行う。
【0027】
これらの化学前駆体の堆積は、当業者に周知の様々な気相堆積方法に従って適当に行うことができるが、本明細書に示された改良された化学気相成長(CVD)法のプロセス技術に従って堆積を行う場合、最もメリットがある。この開示された方法は、プラズマCVD(PECVD)、又は熱CVDを含むCVDを使用し、Si含有化学前駆体及び/又はGe含有化学前駆体を含んで構成された原料ガスを利用して、CVDチャンバ内に収容された基板上にSi含有膜及び/又はGe含有膜を堆積することによって好適に行われる。好ましい実施の形態では、ガスはトリシランを含んで構成されており、Si含有膜を堆積する。別の好ましい実施の形態では、ガスは高次シランと高次ゲルマンを含んで構成されており、SiGe膜を堆積する。
【0028】
適当な多岐管を使用して1種の(又は複数種の)原料ガスをCVDチャンバに供給してもよい。本明細書記載の実験結果は、水平ガス流のCVDチャンバで行われた。このチャンバは、枚葉式であり水平ガス流反応装置であることが好ましく、好ましくは放射加熱される。このタイプの適当な反応装置は市販されており、好ましいモデルには、米国アリゾナ州フェニックスのエーエスエム・アメリカ・インコーポレイテッドが市販している枚葉式のエピタキシャル反応装置のEpsilon(商標)シリーズがある。本明細書記載の方法は、シャワーヘッド構造などの代替の反応装置でも使用することができるが、均一性を向上させ、堆積速度を速めるメリットを得るには、Epsilon(商標)チャンバの水平で、シングルパスで、層流のガス流の構造において特に効果的であることが判明している。
【0029】
堆積に適用される温度及び圧力で、化学前駆体を、原料ガス又は原料ガスの成分の形でCVDチャンバに供給することが好ましい。CVDチャンバ内のトータル圧力は、好ましくは約0.001Torr(0.13332Pa)〜約700Torr(93324Pa)の範囲であり、より好ましくは約0.1Torr(13.332Pa)〜約200Torr(26664Pa)の範囲であり、さらに好ましくは約1Torr(133.32Pa)〜約60Torr(7999.2Pa)の範囲である。Si含有化学前駆体及び/又はGe含有化学前駆体のそれぞれの分圧は、トータルの圧力の好ましくは約1×10−6%〜約100%であり、より好ましくは同じベースで約1×10−4%〜約100%である。炭素源を使用する場合、各炭素源の分圧は、好ましくはトータル圧力の0%〜約1%であり、より好ましくは同じベースで約1×10−6%〜約0.1%である。炭素源を使用する場合、炭素源の分圧は、得られるSi含有膜及び/又はGe含有膜に、好ましくは約20%以下(単結晶材料では10%以下)、さらには約10%以下(単結晶材料では5%以下)の炭素含有率を与えるのに効果があることが好ましい。ここで、上記パーセンテージは、膜の全重量に基づく重量パーセントによるものである。
【0030】
この原料ガスが、不活性キャリアガスなどの1種の(又は複数種の)化学前駆体及び炭素源以外のガスを含んでいてもよい。代表的なキャリアガスには、ヘリウム、アルゴン、クリプトン及びネオンが含まれる。水素は、特に単結晶材料において、本明細書記載のプロセスのためのキャリアガスとして最も好ましい。また、多結晶及びアモルファス膜の堆積に窒素を使用することもできる。必要に応じて別の成分を原料ガス中に入れても良い。好ましくは、このガスは、シラン、ジシラン、テトラシラン、ゲルマン、ジゲルマン、トリゲルマン、NF3、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、及びドーパント前駆体を含んで構成される群の中から選択された1種又は複数種の化合物を含んで構成されていることが好ましい。
【0031】
ドーパント前駆体には、ジボラン、重水素化ジボラン、ホスフィン、及びアルシンが含まれる。シリルホスフィン[(H3Si)3−xPRx]及びシリルアルシン[(H3Si)3−xAsRx](ここで、x=0〜2、及びRx=H及び/又はD)は、リン及びヒ素の好ましいドーパント源である。SbH3及びトリメチルインジウムは、それぞれアンチモン及びインジウムの好ましい供給源である。このようなドーパント及びドーパント源は、本明細書記載の方法によって、ボロン、リン、アンチモン、インジウム、及びヒ素をドープしたシリコン膜、SiGe膜及びSiGeC膜など、好ましい膜を調整するのに有用である。ドーピングを行う場合、これらの材料中のドーパント濃度は、約1×1014〜約1×1022原子/cm3の範囲であることが好ましい。例えば、トータルを基準とした重量で、濃度が約1ppm〜約1%の範囲の水素中の混合物のように、非常に低い濃度のドーパント源を用いて、ドーパントを組み込むことができる。次いで、所望のドーパント濃度及びドーパントガス濃度に依存する、10〜200標準立方センチメートル毎分(sccm)の範囲の設定値としたマスフローコントローラを介してこれらの希釈混合物を反応装置へ送ることができる。また、シリコン/ゲルマニウム/炭素源と共に反応装置に送られるキャリアガス中で、ドーパント源をさらに希釈することが望ましい。典型的な流量は、約20標準リットル毎分(SLM)〜約180SLMの範囲であることが多いので、典型的なプロセスで用いられるドーパント濃度は一般に非常に低い。
【0032】
Si含有膜及び/又はGe含有膜を堆積する間、化学前駆体(及び使用する場合は炭素源)の相対的な分圧を比較的一定に保持することもでき、又は変化させて膜厚内で深さの関数としてSi及び/又はGe量が異なるグレーデッド膜を生成させることもできる。膜の厚みを約10Å〜約5,000Åの範囲とすることが好ましい。膜の元素組成を、段階的及び/又は連続的に変化させることができる。堆積時間及び/又はガス流量を変化させることによって、当技術分野で周知の対象用途に応じて膜厚を変えることができる。一定にするにせよ傾斜を持たせるにせよ、本明細書記載の方法で堆積した化合物及びドープした膜は、特定の所与の深さで、面にわたって比較的一定の組成を有する。この意味での「面」は、パターンのある基板上に膜を堆積する場合はうねっている。
【0033】
本明細書記載の膜の堆積を、毎分約50Å以上の速度、より好ましくは毎分約75Å以上、さらに好ましくは毎分約100Å以上で行うことが好ましい。得られるSi含有膜は、SiGe膜、SiGeC膜、窒化シリコン膜(SiN、化学量論組成を意味するものではない)、シリコン酸化膜(SiO、化学量論組成を意味するものではない)、シリコン酸窒化膜(SiON、化学量論組成を意味するものではない)、ボロンドープ膜、ヒ素ドープ膜、リンドープ膜、及び誘電率が約2.2以下の膜を含んで構成される群の中から選択されたものであることが好ましい。好適な低k膜を形成する方法が、2001年11月13日に出願された同時係属中の米国特許出願第09/993,024号に開示されており、その開示を参照により本明細書に組み込む。Si含有膜は、アモルファス、多結晶又はエピタキシャルとすることができる。トリシランは、エピタキシャルシリコン膜の堆積速度及び均一性を改善するのに特に有利であることが示されている。
【0034】
好ましい実施の形態によって、上述の均一性の問題を解決するためのもう1つのプロセスが提供される。このプロセスの例は図3及び実施例39に示されているが、ここでより一般的にこのプロセスを記載する。堆積膜の厚み方向の組成不均一性は、特に、基板表面温度の(静的とは対照的に)動的な変動に起因すると考えられている。CVDチャンバは、一般に、特定の膜の堆積中一定に保持される温度制御条件の設定がプログラム可能に構成された温度コントローラを備えている。この設定温度は、一般に、プロセスの初めに選択され、その膜が完成するまで保持される。上述のように、これまで、この厚みの問題は、堆積条件、例えばガス流量、基板の回転速度、加熱エレメントへの電力分布などを経験的に調整して、温度変動の厚みへの影響を効果的に時間平均することによって、取り組まれてきた。
【0035】
膜堆積の初めの5Åから1,000Åまでの組成と厚みが比較的均一な膜をもたらす温度設定値、又はより一般的に温度制御に影響を与える反応装置条件については経験的に見つけることができるが、堆積を続けていくと膜は一般に均一でなくなってくることが判明している。この理由はよく分かっておらず、本発明は、理論によって限定されるものではないが、堆積時間の関数として変化する基板の放射率及び別の特性によって、温度制御システムが影響を受けている可能性がある。換言すると、これによって、組成変動や厚み変動の一因となる温度変動が生じている可能性がある。
【0036】
不均一性な堆積へのシフトをもたらす理由がどうであれ、一層毎のアプローチを用いてより均一な膜を生成することができることが見出された。この実施の形態によれば、経験的に決めた温度設定値T1、T2、T3などのセットを一層毎に定めることができる。この経験的決定に際して、集積回路の特定の点で単一の機能を有する単独の膜を、幾つかの層に分解し、それぞれの層に最適な設定値を定める。したがって、個別に最適化した堆積プロセス中の設定値を用いることによって、成長する膜厚によって引き起こされる温度制御の変動を補償することができる。
【0037】
様々な温度設定値を用いて幾つかの個別のワークピースのそれぞれに、まず第1層を堆積し、次いで各ワークピース上の前記第1層の厚み及び組成変動を測定して、どの設定値で最も均一な層が得られるかを確認することによって、このような経験的決定を行うことができる。所望により、特定の用途に必要な均一性のレベルに応じて、例えば約50Åから1,000Åまで、好ましくは約100Åから約700Åまでと層の厚みの目標を変えることができる。
【0038】
第1層は、この確認された設定値T1において、さらに幾つかのワークピース上に用意され、第2設定値T2を経験的に求めるための基板としての役を果たす。T1の決定の場合と同様に、様々な温度設定値を用いてこれらのワークピースのそれぞれの前記第1層上に第2層を堆積し、次いで各層の厚み及び組成変動を測定して、どの第2設定値で最も均一な第2層が得られるかを確認する。上記のように、所望により、特定の用途に必要な均一性のレベルに応じて、例えば約50Åから1,000Åまで、好ましくは約100Åから約700Åまでと第2層の厚みの目標を変えることができる。最適化された第1層及び第2層によって所望の厚みと均一性を有する多層膜が形成される場合、プロセスをここで停止させることができる。より厚い膜を所望の場合は、例えば、確認された初めの2つの設定値T1とT2とで堆積された2層を備えたワークピース、1バッチ分を用意し、様々な温度設定値を用いて各ワークピースの第2層上に第3層を堆積し、各層の厚み及び組成変動を測定して、どの第3設定値T3で最も均一な第3層が得られるかを確認するなどによって、上記プロセスを継続することもできる。
【0039】
ここでは温度設定値を、温度制御変数の一例として、堆積プロセス中通常一定に保持されるものとして用いているが、上記の経験的プロセスによる堆積中に変化させるものとしてもよい。また、この経験的プロセスを、PIDコントローラの温度オフセット又はPID係数など、単一膜堆積プロセス中は通常一定に保持される別の温度制御変数に適用することもできる。
【0040】
ガス流量、ガス流分布、分圧及びガス組成などのプロセス変数においては、各層の所望の堆積条件を確認するために、温度設定値を確認する上記と同様のプロセスで、又は同じ実験中に変化させることが好ましい。好ましくは、実験計画法を用いて、均一性及び/又は堆積速度への様々なプロセス変数及びそれらの組み合わせの影響を求める。実験計画法それ自体は周知である。例えば、ダグラスC.モントゴメリ(Douglas C.Montgomery)の「実験計画及び分析(Design and Analysis of Experiments)」、第2版、ジョン・ウィリーと息子達(John Wiley and Sons)1984年を参照されたい。これらの実験計画法によって、様々なプロセス変数及びそれらの組み合わせが膜の均一性及び/又は堆積速度に及ぼす影響を求めた後、特定のプロセスにおいては、コンピュータ制御によりバッチ間又はウェハ間で一貫性を確認するよう、プロセスを自動化することが好ましい。上記のプロセス変数に対するin−situな、段階的な又は動的な調整によってプロセスを改良することが、さらに好ましい。プロセス変数を調整して膜の特性を個々に改良するこの経験的方法によれば、本明細書に記載の理論に関係なく、単一構造又は機能性膜(プロセスの観点から複数層を含む)にわたる特性を改良することが分かった。したがって、本実施の形態の機能は、理論の正しさ又は誤りにも左右されるものではない。
【0041】
所望の設定値T1、T2、T3、T4などを決めた後、単一のレシピに対して複数の温度設定値がプログラム可能に構成された温度コントローラを備えたCVDチャンバを用いて、好ましい実施の形態を実施する。温度設定値T1を温度コントローラに設定し、第1Si含有化学前駆体X1%を含んで構成された第1ガスをCVDチャンバに導入することによって、このプロセスを行うことが好ましい。ここで、X1は約0〜約100の範囲にある。次いで、チャンバ内に収容した基板上に第1Si含有膜を堆積する。好ましくは、温度設定値T2を温度コントローラに設定し、第2Si含有化学前駆体X2%を含んで構成された第2ガスをCVDチャンバに導入し、第1Si含有膜の上に第2Si含有膜を含有膜堆積して、多層Si含有膜を形成することにより、このプロセスを継続することが好ましい。第2Si含有化学前駆体は、以下に述べるように、また図3及び実施例39で示すように、第1Si含有化学前駆体と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
例えば温度設定値T3を温度コントローラに設定し、第3Si含有化学前駆体X3%を含んで構成された第3ガスをCVDチャンバに導入し、第2Si含有膜上に第3Si含有膜を堆積するなど、所望により多くの層を形成することによって、このプロセスをさらに継続させることができる。
【0043】
好ましいSi含有化学前駆体には、本明細書の別の個所で述べたように高次シラン、及びシランなどの通常の化学前駆体が含まれる。第1Si含有化学前駆体及び第2Si含有化学前駆体の少なくとも1種は、シラン、ジシラン及びトリシランを含んで構成される群の中から選択されたものであることが好ましい。第1ガス、第2ガス及び第3ガスの少なくとも1種は、本明細書の別の個所で述べたように、ゲルマン、ジゲルマン、トリゲルマン、NF3、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、及びドーパント前駆体を含んで構成される群の中から選択される化合物を含んで構成されていることが好ましい。好ましくは、ガス中の各Si含有化学前駆体Xnの量、X1%、X2%、X3%、X4%などは、堆積プロセスにおける特定の段階で、トータル容積を基準とした容積で、それぞれ個々に、約1×10−6%〜約100%、好ましくは約1×10−4%〜約100%の範囲である。
【0044】
基板の温度は、約350℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜約700℃の範囲内である。CVDチャンバは、枚葉式の水平ガス流反応装置であることが好ましい。得られる複数層Si含有膜は、マイクロドット、SiGe膜、SiGeC膜、SiN膜、シリコン酸素膜、シリコン酸窒化膜、ボロンドープ膜、ヒ素ドープ膜、リンドープ膜、及び誘電率が約2.2以下の膜を含んで構成される群の中から選択されたものであることが好ましい。好適な低k膜の形成方法は、2001年11月13日に出願された同時係属中の米国特許出願第09/993,024号に開示されている。その開示を参照により本明細書に組み込む。
【0045】
段階的又は連続的なやり方で膜の複数層を堆積することによって好ましい実施の形態に係るプロセスを実施することができる。有利にも、堆積を中断して温度設定値を調整する場合、流量、分圧及びガス組成などのプロセス変数も所望により調整して様々な組成の膜を形成することができる。例えば、堆積膜を、上記のように均質又は均一の組成としてもよく、又は、堆積膜を組成で段階的又は連続的に変化させてもよい。この中断中にSi含有化学前駆体を同一物から変更してもよく、及び/又はガスの量X1%、X2%、X3%、X4%、などを変えることもできる。好ましい実施の形態では、プロセスは、ゲルマニウム濃度における非連続的又は段階的な変化によってゲルマニウム濃度を傾斜させた膜を成長させることを含む。選択したゲルマニウム濃度の膜を互いの上に堆積させて非連続な周期性を有する超格子を用意することにより、これを実現することが好ましい。下記の実施例39及び実施例43に、この実施の形態を例示している。
【0046】
この実施の形態の「膜」が、集積回路におけるその機能の観点から総合的に単一の構造膜を構成しており、典型的には、その厚みにわたってほぼ同じ組成である。したがって、上記の段階的堆積プロセスで形成された単一膜を定義するために、同一成分には、膜の厚み方向の異なる点で同じ構成要素が異なる濃度を有するグレーデッド膜も含まれるものとする。
【0047】
膜の均一性及び堆積速度を決定する方法は周知である。堆積速度は、膜の平均厚みを時間の関数として測定することによって定められ、オングストローム毎分(Å/分)の単位で表される。好ましい堆積速度は、約20Å/分以上であり、より好ましくは約50Å/分以上、さらに好ましくは100Å/分以上である。膜厚を測定する適当な方法には、多点エリプソメトリ法が含まれる。膜厚測定用の計器は周知であって市販されており、好ましい計器には、米国カリフォルニア州サニーベールのナノメトリクス社(Nanometrics、Inc.)の計器、NanoSpec(登録商標)シリーズが含まれる。
【0048】
本明細書で用いられているように、堆積膜の均一性を指す用語「均一性」は、厚みの均一性と組成の均一性との両方を指すように用いられる。膜厚均一性においては、多点厚み測定を行い、平均厚みを求め、この平均が複数の測定点と異なる平均量を求めることによって定めることが好ましい。比較可能とするため、その結果を、不均一性のパーセンテージで表すとよい。不均一性のパーセンテージは、約10%以下であることが好ましく、より好ましくは約5%以下、さらに好ましくは約2%以下である。組成の均一性においては、電気的測定(即ち、4点プローブ)、SIMS(二次イオン質量分析法)、RBS(ラザフォード後方散乱分光分析)、分光エリプソメトリ及び/又は高分解能X線回折法(HR−XRD)を用いて求めることができる。
【0049】
図14は、堆積温度600℃において、堆積速度毎分1306Å及び圧力40Torr(5332.8Pa)でトリシランを用いて堆積したアモルファスシリコン膜のラザフォード後方散乱分光分析(弾性反跳粒子検出法、ERD)を示す図である。実線は膜の生データであり、破線は、データシミュレーションソフトウェアRUMP(商標)で、残存水素濃度0.5原子%を仮定して生成したモデルである。この生データは、おそらく吸収された炭化水素及び/又は水分に起因する僅かな表面汚染を示唆しているが、このスペクトルは、膜内の残存水素濃度が、水素濃度0.2原子%未満に相当する検出限界を下回るものであることを示唆している。
【0050】
図15は、堆積温度600℃、650℃、700℃及び750℃(それぞれ、図15の下から上へ)で、トリシランを用いて堆積した一連のシリコン膜についてのX線回折スペクトルを示す。このX線回折パターンは、600℃で堆積した膜はアモルファス膜であり、650℃で堆積した膜は部分的に結晶性のものであり、700℃と750℃で堆積した膜はさらに結晶性の高いものになっていることを示す。図16は、750℃で堆積した膜(中間層)の断面の透過型電子顕微鏡写真の写しを示しており、トリシランを用いて堆積した多結晶膜において、この膜が薄いにもかかわらず比較的高い程度の膜厚均一性を有することが示されている。この膜の制限視野回折(SAD)パターン(図17)は、膜内に優越方位が無いことを示し、これが多結晶膜であったことを示唆している。
【0051】
図18は、600℃、40Torr(5332.8Pa)でトリシランを用いて堆積したアモルファスシリコン膜の断面の走査型電子顕微鏡写真の写しを示す。この膜はカーブした基板上に堆積されており、深く狭い合わせ目にも優れた適応性があることを示している。
【0052】
別の実施の形態では、高次シランがCVD合成、好ましくは、ほぼ純粋なシリコンからSi3N4までの範囲の組成を有する窒化シリコン(SiN)材料の低温低圧CVDにも使用される。好ましい窒素源には、(H3Si)3N(トリシリルアミン)、アンモニア、原子状窒素、及びNF3などの化学前駆体が含まれる。原子状窒素は、遠隔マイクロ波ラジカル発生器を用いて発生させることが好ましい。CVDチャンバに導入する窒素源及び高次シランの相対的な量は、高次シランの代わりにシランを用いて形成した比較の膜より均一性の高いSiN膜が得られるように選択することが好ましい。好ましい実施の形態では、原子状窒素を連続的に導入し、トリシランを連続的又はパルス状に、好ましくは1回又は複数回のパルスで導入する。高次シランをパルスで導入することによってより高い膜の均一性が得られることが分かった。また、下記の実施例で実証されるように、断続したCVDによって、極めて薄く均一性の高いSiN膜が得られることが分かった。この実施の形態に従って調整されたSiN膜は、厚みが好ましくは約10Å〜300Åの範囲であり、より好ましくは約15Å〜約150Åの範囲である。
【0053】
これら窒素源を化学前駆体としてトリシランと特に低温で用いることによって、シランなどの伝統的なSi源を用いたプロセスがもたらす堆積速度よりずっと速い堆積速度で、薄膜中のN−H結合の数が最小のSiN材料の堆積が可能になる。別の高次シランでも同様の結果を得ることができる。450℃を超える堆積温度では、水素含有率は、好ましくは4原子%未満であり、より好ましくは約2原子%未満、さらに好ましくは約1原子%未満である。堆積は、上記のように輸送量制限領域で行われることが好ましい。
【0054】
別の実施の形態では、CVD合成、好ましくは酸化シリコン材料及び酸化窒化シリコン材料の低温低圧CVDにも高次シランを使用することができる。特に低圧CVD条件における、高次シランの低温/高成長速度の利益によって、シランをベースとしたプロセスにわたる製造上の利益が得られる。酸素源には、オゾン、酸素、水、酸化窒素、亜酸化窒素、過酸化水素などが含まれる。これらの材料に窒素を導入するための窒素源には、(上記のように)トリシリルアミン、原子状窒素、アンモニア、及びNF3が含まれる。このような酸素及び窒素源は、連続的又は不連続ステップで、或いはこれらプロセスの組み合わせを含む方法で使用される。上記のように、輸送量制限領域の少なくとも近傍で堆積を行うことが好ましい。トリシリルアミンとトリシランとを用いた堆積においては、好ましくは約350℃〜約750℃、より好ましくは約400℃〜約700℃、さらに好ましくは約450℃〜約650℃の範囲で行う。NF3とトリシランとを用いた堆積においては、好ましくは約300〜約750℃、より好ましくは約350℃〜約700℃、さらに好ましくは約400℃〜約650℃の範囲で行う。
【0055】
酸化物及び酸化窒化物の堆積には個別の実施例がないが、本明細書に開示され、窒化シリコン及びシリコンゲルマニウム化合物膜について上述された原理が、酸化シリコンの堆積にも同じように適用可能であることが、当業者には容易に分かる。同様に、輸送量制限堆積を実現するための温度が低く活性化エネルギーが低いというトリシランの利点は、気相堆積、特に様々なシリコン化合物材料の化学気相成長に価値がある。
【0056】
好ましい実施の形態によれば、超小型電子産業で様々な用途に有用な膜が提供される。好ましいSi含有膜は、厚みの不均一性が約2%未満であり、組成の不均一性が約2%未満である。本明細書に記載したような膜は、様々な用途、例えばトランジスタゲート電極として有用である。本明細書記載の膜は、集積トランジスタのゲート膜など、集積回路の重要な素子膜を形成するのに特に有用である。別の例には、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の半導体膜が含まれる。このような膜からこのような集積回路を形成するプロセスは、当業者には周知である。これらの集積回路は、当業者に周知の方法でコンピュータシステムに組み込むことができるので、別の好ましい実施の形態によれば、1つ又は複数のこのような集積回路を含んで構成されたコンピュータシステムが提供される。
【0057】
図1は、本明細書記載の堆積プロセスを用いた好ましいプロセスフローを示すフローチャートである。半導体基板上にゲート誘電体を形成する(ステップ100)。必要ならゲート誘電体を清浄化し(ステップ110)、そして本明細書記載のように、好ましくはトリシランを流すことを含めて、Si含有膜を堆積する(ステップ120)。また、横方向への信号伝播の改良を所望する場合、Si含有の上に任意選択の更なる金属膜を堆積する(ステップ130)。次いで、これらの複数層を、フォトリソグラフィでパターニングし(ステップ140)、製造を継続する(ステップ150)。
【0058】
図2は、図1のプロセスによって形成されたゲートスタック200を示す。半導体基板220の上にゲート誘電体210を形成する。ゲート誘電体210の上に電気的にドープされたSi含有膜230を形成し、Si含有膜230の上に任意選択の金属膜240を配置してゲートスタック200を形成する。次いで、スタック200をパターニングしてゲート電極(図2には示さず)を形成し、集積回路の形成を継続する。
【0059】
ゲート誘電体210は、誘電率が5より大きく、より好ましくは10より大きい、少なくとも1種の高k材料を含むことが望ましい。代表的な材料には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム及び酸化ジルコニウムが含まれ、好ましくは、高品質でピンホールのない膜のための原子層堆積(ALD)で形成する。有利にも、輸送量制限領域又はその近傍で、特に高次ゲルマンと一緒にトリシランを用いると、このような高k材料上への伝統的なシリコン堆積における遅い核形成時間が補償される。
【0060】
別の実施例では、トリシランを流して単結晶基板上にエピタキシャルSi含有膜を堆積する。シリコン膜とヘテロエピタキシャルSiGe、SiC及びSiGeC膜とを、本明細書記載のプロセスによって堆積することができる。
【0061】
別の好ましい実施の形態によれば、表面上にSi含有材料の堆積装置を得ることができる。該装置は、CVDチャンバ、トリシランを収容する容器、該容器から前記CVDチャンバへトリシランを通過させ得るように、該容器を前記CVDチャンバに動作可能に接続する供給ライン、及び約10℃〜約70℃、好ましくは15℃〜約52℃の範囲の温度に保持され、トリシランの蒸発速度を制御するように、前記容器のまわりに動作可能に配置された温度コントローラを備えている。適当な温度コントローラの例には、熱電コントローラ及び/又は液充填ジャケットが含まれる。好ましくは、CVDチャンバは、枚葉式で、水平ガス流の反応装置である。また、該装置が、前記容器から前記化学気相成長チャンバへのトリシランの通過を制御する前記供給ラインと動作可能に接続された多岐管を備えていることが好ましい。前記ガスラインが、約35℃〜約70℃、より好ましくは約40℃〜52℃の間の温度に加熱されて、高ガス流量での凝縮を防止するように、前記供給ラインの周囲に熱源が動作可能に配置されていることが好ましい。好ましくは、トリシランは、トリシラン蒸気を同伴するキャリアガスと一緒に使用されるバブラー、より好ましくは温度制御バブラー、さらに好ましくはトリシランを送る加熱ガスラインと組み合わせた温度制御バブラーを用いて導入されることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、ベルヌーイワンド(Bernoulli wand)ウェハ輸送システム、パージオンリーロードロック(purge−only load locks)、非スライド凹面サセプタ、「方形(square)」予熱リング、調整可能スポットランプ、及びそれぞれ独立に調整可能なガス注入口注入器を含んで構成された、ASM Epsilon 2000(商標)水平流エピタキシャル反応装置システムを用いて行った。水素及びジボランドーパントをも含んだ供給ガスで、Si含有前駆体及びGe含有前駆体をチャンバに供給した。約120sccmのH2中1%のB2H6を2slmのH2で希釈し、120sccmの該混合物を反応装置に導入し、20slmのH2及び前駆体と混ぜ、実施例に示したような流量条件で回転基板上に堆積した。堆積速度は、SIMS測定及び光エリプソメータ測定(Nanometrics)を用いて、酸素及びボロンの深さプロファイルから評価した。
【0063】
実施例1〜4
表1に示したパラメータに従って、化学前駆体としてトリシランを用いてSi含有膜を堆積した。堆積温度は700℃であり、十分にトリシランの輸送量制限領域内にあった。しかし、均一な膜を形成するには(これら特定の堆積条件では)流量が不適切であったため、得られた膜は均一でなく、(中央が薄く端が厚い)凹面形の堆積プロファイルが得られた。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例5〜15
表1に示したパラメータに従って、化学前駆体としてトリシラン及びシラン、ドーパントとしてジボランを用いて、Si含有アモルファス膜を堆積した。約120sccmのH2中1%のB2H6を2slmのH2で希釈し、120sccmの該混合物を反応装置に導入し、該反応装置でこれを20slmのH2、及び表2に示した流量のトリシラン又はシランと混合させた。その結果、トリシランの流量がシランの流量より低い場合でも、シランと比べて、トリシランを用いると、一般に所与の温度で遙かに速い堆積速度が得られることが分かった。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例16〜19
表3に示したパラメータに従って、化学前駆体としてトリシラン及びシランを用いてSi含有膜を堆積した。膜の厚みがそれぞれ約500Åとなるように堆積時間を調整した。Nanometricsエリプソメータを用いて平均膜厚を測定し、次いでこの値を堆積時間で除して堆積速度を求めた。膜厚の49点厚みマップから膜の不均一性を求めた。その結果、シランの代わりに、示した温度でトリシランを用いることによって、遙かに速い堆積速度で遙かに均一な膜が得られた。これは550℃で間違いないものであるが、劇的なことには、600℃でより間違いのないものとなっている。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例20〜38
トリシラン単独の代わりに、トリシラン80%とジゲルマン20%との混合物を用い、そして、シランの代わりにシラン80%とゲルマン20%の混合物を用いてSiGe膜を得たことを除いて、実施例1〜19を繰返した。トリシランの使用、又はシラン単独での使用の場合より速い堆積速度が観察された。
【0070】
実施例39
図3に示したフローチャートに従って、以下のように、非連続な周期性を有する超格子の成長によってSiGe膜を用意した。ex−situフッ化水素(HF)の最終清浄化を行って自然酸化膜を除去し、次いで高流量の超純度水素ガス下で基板を反応装置チャンバに導入して、Si<100>基板を用意した(ステップ300)。ウェハを60rpmで回転させ、(基板表面から汚染物質を除去するために)高流量の水素ガス下でウェハを約900℃に加熱した。ウェハを冷却し、700℃で安定化させ、輸送量制限条件でトリシラン及びトリシリルアルシンを用いて、厚み約300Åのヒ素ドープシリコンバッファ層を成長させた。
【0071】
水素流下で600℃に冷却してウェハ温度を調整した(ステップ310)。ジシラン98%とジゲルマン2%とを用いて、第1周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ320)。トリシラン85%とジゲルマン15%とを用いて、第2周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ330)。
【0072】
水素流下で設定温度を3℃下げて(ステップ340)、30秒間ウェハを安定化させた。トリシラン75%とジゲルマン25%を用いて、第3周期のSiGe超格子を成長させた(350)。
【0073】
水素流下で設定温度を3℃下げて(ステップ350)、30秒間ウェハを安定化させた。トリシラン65%とジゲルマン35%とを用いて、第4周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ370)。トリシラン85%、ジゲルマン12%、ジボラン2%及びジシリルメタン1%を用いて、炭素及びボロンをドープした第5周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ380)。水素流下で、前記反応装置を30秒間パージした(ステップ390)。トリシラン90%とジゲルマン10%とを用いて、第6周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ400)。
【0074】
水素流下で、温度設定値を650℃に上昇させ(ステップ410)、ランプバンクの相対出力を僅かに調整して、成長させるシリコンキャップ層のウェハ内均一性を可能な限り高めた(ステップ420)。ウェハを30秒間安定化させた。トリシラン100%を用いてシリコンキャップ層を成長させた。反応装置からウェハを取り出し(ステップ430)、次のウェハを加工した。
【0075】
実施例40
堆積温度650℃、圧力40Torr(5332.8Pa)で化学前駆体としてトリシランとゲルマンとを用いて、平均膜厚1,038ÅのSi含有膜を堆積した。ガス流注入口の設定値は、これまでの一連の実施例における通常のやり方で経験的に調整した。端部6mmを除いて49点を1次元的にスキャンすることによって測定したところ、得られたSiGe膜は、非均一性のパーセンテージが0.37%(8Åの範囲)であった。図4は、この膜について、測定位置の関数として膜厚をプロットしたグラフである。
【0076】
実施例41(比較)
前駆体としてシランとゲルマンとを用いて、温度600℃で(核形成層を除く)SiO2基板上にSi含有膜を堆積した。得られたSiGe膜の表面の粗さ(原子間力顕微鏡で測定)は、10ミクロン×10ミクロンのスキャン面積で226Åであった。図5及び図6に示したSEM顕微鏡写真で実証されているように、前記SiGe膜の走査型電子顕微鏡(SEM)から、アイランド型の堆積を示唆するピラミッド形のファセット粒子が明らかになった。
【0077】
実施例42
実施例41記載のように、600℃でSi含有膜を堆積したが、前駆体としてシラン及びゲルマンの代わりにトリシランとゲルマンとを用いた。得られたSiGe膜の表面の粗さ(原子間力顕微鏡で測定)は、10ミクロン×10ミクロンのスキャン面積で18.4Åであった。図7及び図8に示したSEM顕微鏡写真(それぞれ、図5及び図6と同じ倍率及び傾斜角)で実証されているように、前記SiGe膜の走査型電子顕微鏡(SEM)から、表面が遙かに均一であることが明らかになった。
【0078】
実施例43〜63
トリシランとゲルマンとを用いて、圧力40Torr(5332.8Pa)でSiO2基板(核形成膜を除く)上に一連のSi含有膜を堆積した。トリシラン流量は、表4の実施例に対して、77sccmで一定(水素キャリア、バブラー)とした。ゲルマン流(ゲルマン10%、H290%)及び堆積温度は、表4に示すように変化させた。ゲルマニウム濃度(原子%)及び得られたSiGe膜の厚みをRBSで求め、表面の粗さを原子間力顕微鏡(AFM)で求めた。表4に示した結果から、流量条件及び温度の範囲にわたって、特にゲルマン濃度の範囲にわたって、極めて均一な膜を調整可能であることが実証された。
【0079】
【表4】
【0080】
実施例64〜78
トリシラン及びアンモニア(実施例64〜77)又はシラン及びアンモニア(比較例78)を用いて、表5に示した条件下で、Si<100>基板の自然酸化膜上に一連のSi含有膜を堆積した。キャリアガス流を30slm、アンモニア流量を7slmとした。表5は、得られたSiN膜について観察された堆積速度及び屈折率(「RI」)、及び選択した膜におけるシリコンと窒素との原子比(「Si/N」)及び水素含有率(「%H」、原子パーセント)を示す。
【0081】
【表5】
Si/N及び%Hの値は、ラザフォード後方散乱(RBS)によって求めた。図19は、775℃、20Torr(2666.4Pa)でトリシランを用いて堆積したSiN膜サンプルの代表的なRBSスペクトル(2MeV He++)である。弾性反跳粒子検出法(ERD)を用いて得たERDスペクトルを図20に示す。これらの図には、生データと、シリコン、窒素、及び水素濃度の定量化が可能なRUMPモデリングプログラムに基づくシミュレーション結果との両方を示している。このシミュレーションから、この膜の化学量論がほぼSi45N51H4であることが示唆される。また、図17に示したRBS ERDスペクトルから、水素が膜全体にわたって均一に分布していることが明らかとなった。
【0082】
実施例79〜82
トリシランと原子状窒素とを用いて、Si<100>基板の自然酸化膜上に一連のSi含有材料を堆積した。市販の800ワットマイクロ波ラジカル発生器(MRG)を用いて遠隔的に原子状窒素を発生させ、該原子状窒素をCVDチャンバに供給した。表6に示した堆積温度で、流量5slm(実施例82では10slm)の窒素キャリアガスを用いて、バブラーを経由して、前記原子状窒素と共にトリシランをCVDチャンバに供給した。トリシランは、連続的に(実施例79)又はパルスで(実施例80〜82)チャンバに導入した。パルス導入においては、原子状窒素を連続的に導入し、トリシランを約1分30秒間隔のパルスで導入することによって行った。トリシランパルスのそれぞれは、上記流条件下で約6秒続けた。得られたSiN膜のそれぞれの化学量論は、ほぼSi43N54〜56H3〜1の範囲であった。
【0083】
表6は、得られたSiN膜における厚み、屈折率及び水素濃度(原子%)を示す。実施例79のSiN膜は、中央が端部より著しく厚く、均一ではなかった。また、測定された屈折率は、膜の表面にわたって著しく変動した(中央が端部より高かった)。実施例80〜82のパルスプロセスを用いることによって、均一性は改善された。原子状窒素の流量を増加すること、及び/又はトリシランの流量を低下させることによる連続プロセスを用いてることによって、均一な膜を得ることができた。
【0084】
【表6】
【0085】
実施例83
実施例80〜82について一般的に上述したように、遠隔的に発生させた原子状窒素と単一6秒パルスのトリシランとを用いて、650℃、圧力3Torr(399.96Pa)で、厚みが約18Åの薄く均一で連続なSiN膜を堆積した。図9のTEM顕微鏡写真に示したように、この膜をエポキシで被覆し、切断し、透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いて画像化した。膜/基板界面には、実質的に自然酸化がないことが分かった。
【0086】
実施例84〜87
堆積圧力40Torr(5332.8Pa)、及び様々な流量、及び表7に示した堆積温度及び堆積速度でトリシランを用いて、清浄にしたSi<100>基板上に一連のエピタキシャルシリコン膜を堆積した。表7に示したように、ラザフォード後方散乱のチャネリングスペクトルから得たχ−min値に示されるように、高品質のエピタキシャルシリコン膜が形成された。
【0087】
【表7】
当業者には明らかであるが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく上記のプロセスに様々な省略、追加及び変更を行うことができ、このような変更及び改変は、添付の特許請求の範囲で規定された本発明の技術的範囲内に属する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】好ましい実施の形態に基づくゲートスタックの形成プロセスを概略的に示したフローチャートである。
【図2】好ましい実施の形態に基づくゲートスタックを示した図である。
【図3】好ましい実施の形態に基づく堆積プロセス中に温度設定点を変える方法を概略的に示したフローチャートである。
【図4】好ましいSiGe膜において、測定位置の関数として膜厚をプロットしたグラフである。
【図5】シランとゲルマンとを用いて堆積したSiGe膜を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図6】図5に示したSiGe膜の断面を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図7】トリシランとゲルマンとを用いて堆積したSiGe膜を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図8】図7に示したSiGe膜の断面を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図9】好ましいSiN膜の断面を示した透過型電子顕微鏡写真の写しである。
【図10】上記条件の基で得られたシラン、ジシラン、及びトリシランのアレニウスプロットである。
【図11】600℃、40Torr(5332.8Pa)での酸化物基板上へのトリシラン(Silcore(商標))流量の関数としての膜堆積速度をプロットしたグラフである。
【図12】650℃、40Torr(5332.8Pa)でトリシラン(Silcore(商標))を用い、様々な堆積時間において、位置の関数として膜厚をプロットしたグラフである。
【図13】トリシランを用いた堆積において、ジボラン流量の関数として堆積速度をプロットしたグラフである。
【図14】600℃、40Torr(5332.8Pa)でトリシランを用いて堆積したアモルファスシリコン膜のRBS ERDスペクトルである。
【図15】600℃、650℃、700℃及び750℃(それぞれ、下から上へ)でトリシランを用いて堆積した膜で得られた一連のX線回折スペクトルである。
【図16】多結晶シリコン膜断面の透過型電子顕微鏡写真の写しである。
【図17】多結晶シリコン膜の制限視野回折パターンである。
【図18】馴染み易いアモルファスシリコン膜断面の走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図19】窒化シリコン膜のRBSスペクトルである。
【図20】窒化シリコン膜のRBS ERDスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、集積回路製造用のSi、Ge及び/又は炭素を含む膜などの半導体膜の堆積方法に関する。より詳細には、本発明は、化学気相成長システムにおける、厚み及び組成のより高い均一性を有するこれらの材料の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電子素子における寸法の縮小につれて、その製造に用いられる材料の物理的、化学的特性がより重要になってきている。これは、実証済みの製造装置を用いて現行の世代の素子に組み込まれ得る先端の材料において、特にそうである。例えば、エピタキシャルSi1−xGexやSi1−x−yGexCy合金を、バイポーラ及びBiCMOS素子の製造工程に組み込むことは望ましい。これらの先端の合金材料は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)のベース膜、BiCMOS素子の抵抗体、及びCMOS素子や別の様々な集積電子素子のゲート電極として使用されている。
【0003】
単結晶、アモルファス及び/又は多結晶シリコン、シリコンゲルマニウム(SiGe)合金及びシリコンゲルマニウムカーボン(SiGeC)合金を堆積する通常のプロセスは、一般に、(低圧(LP)又は超高真空(UHV)条件での)バッチ式の熱プロセス又は枚葉式のプロセスを用いて行われる。枚葉式のプロセスは、ますます重要になってきているが、幾つかの問題が残っている。例えば、ウェハ内部及びウェハ間での均一性、堆積速度、及びプロセス再現性においては、特にin situドーピングされる半導体膜で、従来の枚葉式のプロセスに対する懸念が残っている。ウェハサイズの拡大は続いているので(現在300mmウェハが製造プロセスに組み込まれている)、均一性を保持することはさらに困難になりつつある。
【0004】
日本国特許出願、特開昭60−43485号公報には、明らかに光電池の用途において、300℃でアモルファス薄膜を形成するためにトリシランを使用することが開示されている。日本国特許出願、特開平5−62911号公報には、500℃以下で薄膜を形成するためにトリシランとゲルマンとを使用することが開示されている。日本国特許出願、特開平3−91239号公報、特開平3−185817号公報、特開平3−187215号公報、及び特開平02−155225号公報には、それぞれジシランの使用が開示されており、幾つかではトリシランにも言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−43485号公報
【特許文献2】特開平5−62911号公報
【特許文献3】特開平3−91239号公報
【特許文献4】特開平3−185817号公報
【特許文献5】特開平3−187215号公報
【特許文献6】特開平02−155225号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術は、一般に、比較的低い堆積温度で、アモルファス水素化シリコンを形成するためのジシラン及びトリシランの使用に焦点を当てたものである。しかしながら、好ましくは速い堆積速度で均一性の良さを犠牲にすることなく、ドープトシリコン、低H含有率アモルファスシリコン及びSiGeなどの半導体材料を表面上に堆積する方法は依然必要である。
【0007】
本発明者等は、Si含有膜及びGe含有膜を形成するより優れた方法を見出した。該方法は、CVDプロセスにおいて、高次シラン及び/又は高次ゲルマンなどの化学前駆体を用いて示され、半導体産業に有用な、Si含有膜、特にシリコン、SiGe合金薄膜又はSiGeC合金薄膜の堆積が改良される。これらの化学前駆体は、シラン、ゲルマン及び通常の炭素源分子に比べて熱安定性に劣るものである。
【0008】
本発明の一態様によれば、特定の前駆体を使用することにより、同じ温度における通常の前駆体の場合と比べて、堆積プロセスを、輸送量制限成長領域の近傍で、又は該領域内で行うことができる。該領域内においては、望ましくない元素濃度勾配や膜堆積速度の変動など、温度に依存する不均一性、及び結果としての厚みの不均一性を避けることができる。好ましい化学前駆体には、トリシラン、及びジゲルマンが組み合わされたトリシランが含まれる。従来の化学前駆体に用いられる温度より低い温度で、且つより速い膜堆積速度での、均一な堆積が達成される。
【0009】
本発明の別の態様では、好ましい前駆体の流量を温度の関数として調整することによって、従来の前駆体(例えば、シラン)を用いた堆積と比べて、同等又はより高い均一性でより速い堆積速度を得る。シランを越えるトリシランの利点として、特に、集積トランジスタの活性層としてのSi含有膜の堆積に利用可能であることが挙げられる。
【0010】
本発明の別の態様では、このような望ましくない元素濃度勾配、厚みの不均一性及び膜堆積速度の変動を低減又は除去するように、温度、温度分布、圧力、反応体流量及び反応体分圧などのプロセスパラメータを、段階的又は動的に変化させる方法が示される。これらの方法は、高次シラン及び/又はゲルマンの使用と共に用いられる。
【0011】
本発明のこれらの態様及び別の態様は、本発明を例示するためであって、限定するためのものではないことが、以下の説明及び添付した図面から容易に明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
CVDによる基板表面上への膜堆積における不均一性においては、加熱及び温度制御システムの限界に起因する動的な温度変動が大きく影響する。一般に、堆積した膜は、厚み及び元素組成の両面で可能な限り均一であることが望ましいが、既存の堆積方法では、程度の差はあっても不均一な膜が形成される傾向にある。このような不均一性は、基板の表面にわたる温度変化に起因することが多い。基板の表面温度は、堆積速度及び得られる膜の組成に影響を与えるからである。ガス流量及びトータル圧力を含む別のプロセスパラメータにわたる不完全な制御も、膜の物理特性における不均一性に寄与していると考えられている。
【0013】
所望の膜で全体的に均一な厚みが得られるように、堆積条件、例えばガス流量、基板の回転速度、加熱エレメントへの電力分布などを経験的に調整することによって、均一性が求められることが多い。これを行うためには、まず異なる基板上にそれぞれ予め選択された堆積条件の組み合わせの下で多くの膜を堆積する。次いで、それぞれの膜内の厚み変動を測定して結果を分析し、厚み変動を取り除くことのできる条件を確認する。しかしながら、本発明者等は、この実験によるプロセスにおいては、必ずしも該プロセスを通して均一な温度分布が実現されておらず、むしろ、該プロセスによって、特定の反応温度「設定値」に対する温度変動によって生じた厚み変動が効果的に時間平均されていることを見出した。
【0014】
したがって、この経験的手法では、必ずしも堆積プロセスを通して基板全体にわたる均一な温度が得られていない。組成の均質性(又は少なくとも制御)は、三次元、即ち膜表面にわたってのものと膜厚を通してのものとの両面で望まれているので、次に組成変動の問題が提起される。これは、多くの膜がドーパントを含有し、これらドーパントの濃度が膜の電子的特性に影響を及ぼすからである。不均一な温度は、膜へのドーパントの不均一な組み込みの一因となる虞がある。同様に、組成における別の不均一性を引き起こし得る。
【0015】
好ましい実施の形態によって、この問題を解決するプロセスが提供される。それぞれのプロセスは、独立に用いられ、又は好ましくは組み合わせて用いられる。一プロセスでは、同じ温度での通常の前駆体と比べて、膜の堆積が実質的に輸送量制限成長領域内で行われることを可能にする化学前駆体を使用することを含む。所与の化学前駆体において、輸送量制限領域とは、膜堆積速度が温度に依存しない独立な温度範囲を意味する。実質的に該温度範囲内にある堆積速度は、それらの変動が輸送量制限領域、又はその近傍に留まる温度下である限り、基板表面にわたる小さな温度変動では比較的影響を受けない。これによって、通常の化学前駆体を用いて同じ温度で堆積した膜より、遙かに均一な、例えば、より高い組成均一性及び/又は厚み均一性を示す膜の形成が可能となる。これは、通常の前駆体では、輸送量制限領域内で堆積を行うには、非常に高い温度を必要とするからである。
【0016】
当業者なら明らかなように、所与の前駆体及び反応条件の組み合わせについて輸送量制限領域の温度範囲が決定され、アレニウスプロットに示される。化学前駆体トリシランについては、温度依存する堆積速度から温度依存しない堆積速度への転移点は、図10のアレニウスプロットに示すように、シラン又はジシランの転移点より遙かに低い。グラフの低い領域から転移までは上向きのリニアの傾斜であり、この温度範囲内でのトリシランの堆積は、温度の影響を強く受ける関数であって、したがって輸送量制限領域内にはないことが示されている。例えば、図10には、用いられた条件(流量25sccm、圧力40Torr(5332.8Pa))において、約525℃より低い温度では、トリシランの堆積が輸送量で制限されない(即ち、動的領域内にある)ことが示されている。これに対して、転移点より上のグラフの領域は実質的にフラットであり、この温度範囲内でのトリシランの堆積は、温度から独立しており、したがって輸送量制限領域内にあることが示されている。例えば、図10には、約620℃以上の温度では、トリシランの堆積が明らかに輸送量制限されていることが示されている。このように、転移はある温度領域にわたって起こっており、そこでは、アレニウスプロットの傾斜が減衰していることによって、輸送量制限領域の近くでは、この温度範囲内でのトリシランの堆積が実質的に温度から独立していることが示されている。例えば、図10には、約525℃以上でトリシランの堆積が実質的に輸送量制限されることが示されている。この転移点は、流量が幾分か増加するとやや高くなり、流量が幾分か減少するとやや低くなるであろうことが分かる。例えば、温度依存堆積から実質的に輸送量に制限される堆積への転移点は、トリシランの流量が増加するとより高い温度へシフトすることが経験的に求められている。したがって、トリシランを使用することによって、現在の製造方法(例えば、結晶の特性を保持するための熱割当量の維持、ドーパントプロファイルの制御など)において別の理由から望ましい温度で、実質的に輸送量制限された堆積を行うことが可能となる。
【0017】
様々なSi含有化学前駆体及びGe含有化学前駆体が、本明細書に開示した膜堆積プロセスで適切に用いられ、Si含有膜、Ge含有膜及びSiとGeとの両方を含有する合金膜、例えばシリコンゲルマニウム(SiGe、化学量論組成を意味するものではない)膜が得られる。また、これらの化学前駆体は、炭素源と組み合わせて使用されてもよく、合金膜、例えばSiGeC(化学量論組成を意味するものではない)合金薄膜を得ることもできる。本発明での使用に好適な好ましいSi含有化学前駆体には、高次の、非ハロゲン化シリコン水素化物、特に式SinH2n+2(ここでn=2〜6)のシランが含まれる。特定の例では、ジシラン(H3SiSiH3)、トリシラン(H3SiSiH2SiH3)、及びテトラシラン(H3SiSiH2SiH2SiH3)が含まれる。トリシラン(Si3H8とも表される)は、揮発性及び反応性のバランスを実現するのに特に好ましい。SiGeの堆積には、比較的低温での実質的に又はほぼ輸送量制限された堆積が好ましい(しかし必要ではない)。本発明での使用に好適な好ましいGe含有化学前駆体には、式GenH2n+2(ここでn=2〜3)の高次ゲルマンが含まれる。別の構成では、ゲルマニウム源には、(H3Ge)(GeH2)x(GeH3)(ここでx=0〜2)が含まれ得る。特定の例には、ジゲルマン(H3GeGeH3)、トリゲルマン(H3GeGeH2GeH3)及びテトラゲルマン(H3GeGeH2GeH2GeH3)が含まれる。
【0018】
好ましい実施の形態では、化学前駆体は炭素源と組み合わせて用いられる。好ましい炭素源には、シリルメタン[(H3Si)4−xCRx](ここでx=0〜3、及びR=H及び/又はD)が含まれる。好ましいシリルメタンは、ジシリルメタン、トリシリルメタン及びテトラシリルメタン(x=0〜2)であり、テトラシリルメタンが特に好ましい。その別の好ましい炭素源には、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びHCNが含まれる。これらの化学前駆体及び炭素源は、商業的供給源から購入してもよいし、当技術分野で周知の方法で合成してもよい。SiC、SiNC及びSiOC(この短縮形はいずれも特定の化学量論組成を意味するものではない)などのSi含有膜は、半導体製造業において、例えば、エッチストップ膜、ハードマスク、及びパッシベーション膜など様々に使用される。
【0019】
上記膜は、実質的に、使用される特定の化学前駆体における輸送量制限領域内の温度で、堆積されることが好ましい。特定の化学前駆体及び反応条件の組み合わせについて、輸送量制限領域は、様々な温度での堆積データから実験的に得られたアレニウスプロットから求められる。特定の条件の組み合わせで最も好ましいシリコン前駆体であるトリシランのアレニウスプロットが、上記の図10として添付されている。
【0020】
本明細書記載のような好ましい化学前駆体(特にトリシラン)を使用し、その前駆体の輸送量制限領域内で堆積温度を選択することに加えて、第1のプロセスを用いた堆積は、好ましくは、別の堆積パラメータ、特にガス流量を適切に選択することを含む。実質的に輸送量制限領域内での堆積と組み合わせて、ガス流量を適切に選択すると、高度の均一性を保持しつつ、シランと比べて遙かに速い堆積速度で膜を形成することができることが判明した。動的領域における温度でシランを用いた堆積では、膜の均一性は主として温度コントローラの設定値に依存しており、ガス流量調節器の設定値に対しては遙かに小さい程度の依存である。これに対して、実質的に輸送量制限領域内の温度で高次シランを含む堆積では、温度コントローラの設定値に対する感度とガス流量調節器の設定値に対する感度とが逆転していることが判明した。例えば、実質的に輸送量制限領域内の温度でトリシランを用いた堆積では、温度コントローラ設定値の調整は、ガス流量調節器設定値の調整に比べて膜の均一性への影響が小さい。
【0021】
本明細書記載のように堆積を行った場合、得られる膜は、好ましいことに比較の膜より均一である。本明細書で用いられるように、「比較の」膜は、高次シランの代わりにシランを用い、及び/又は高次ゲルマンの代わりにゲルマンを用いること、及び、温度コントローラの設定値とガス流量調節器の設定値とに対する上記の感度の違いを考慮に入れるように、それぞれの膜の堆積プロセスを個々に調整することを除いては、議論されるべき本発明の膜に対して意味のあるあらゆる点で実質的に同一の方法で形成される。より詳細には、異なる膜の結果を比較する場合、厚みの均一性は、下記の基準で測定される。ランダムに選択したウェハの直径を用い、この直径に沿った49点の堆積膜の厚みを測定する。ウェハ外周の3mmの排除領域内では測定しない。次いで、これら49点についての厚み測定値の範囲(例えば、±6Å)を、その49点の最大厚み測定値と最小厚み測定値とを加算した合計で割る。本明細書ではこの均一性をパーセンテージで表す。有利にも、本明細書記載の前駆体を使用した方法によって、非常に速い堆積速度が得られ、しかも驚くべきことに、非常に高い均一性と滑らかさが得られることが判明した。
【0022】
例えば、好ましい多結晶シリコン膜はトリシランを用いて形成され、同じ温度で上記トリシランの代わりにシランを使用して別個に最適化されたプロセスで形成された比較の膜より、速い堆積速度でより高い均一性を有する。同様にして、本発明者等は、トリシランで形成されたアモルファスシリコン(α−Si)膜及びエピタキシャルシリコン(epi−Si)膜について別個に実験し、これらがシランを堆積した膜に比べて優れた均一性を示すことを見出した。図15〜18及び対応する本明細書の下記の説明を参照されたい。同様に、高次ゲルマンを用いて好ましいSiGe膜を形成したが、この膜は、前記の高次ゲルマンの代わりにゲルマンを用いて形成した比較の膜より高い均一性を有する。さらに、開示されたシリコン及びゲルマニウム供給源を用いて、より低い反応温度でより速い堆積速度を実現することもできる。
【0023】
図11は、堆積温度600℃及び圧力40Torr(5332.8Pa)で、堆積速度が、(幾つかの図では、「Silcore(商標)」と表されている)トリシラン流量の一次関数であることを示す。この直線性は、これらの条件ではトリシランの堆積が実質的に又はほとんど輸送量で制限されていることをさらに示唆しており、酸化中の核形成時間が非常に短いことをさらに示唆する。図12は、図示のように堆積時間を90秒〜15秒の範囲にわたって変化させたことを除いて、同一条件下(650℃、40Torr(5332.8Pa))でトリシランを用いて堆積した膜について、測定個所の関数としての膜厚をプロットしたグラフである。図12には、一定のトリシラン流量では、広範な堆積時間にわたって、優れた膜均一性が得られることが示されており、この結果は単なる時間平均ではなく、前駆体の性質及び選択された条件による結果であり、さらに、これらの膜は厚みによらず均一であるから、放射率(又は別の厚みに依存する温度制御)の影響により均一性は変化しないことが示されている。図13は、ジボラン流量の範囲(0〜180sccm)にわたって、堆積温度600℃及び圧力40Torr(5332.8Pa)でトリシランとジボラン(ドーパント前駆体)を用いて得られた堆積速度のグラフである。図13には、トリシランを用いた堆積速度が、ドーパント前駆体の流量に対して比較的影響され難いことが示されている。
【0024】
好ましい温度範囲は、特定の化学前駆体に依存する傾向があり、熱安定性が低下するにつれて、より低い温度がより適切なものとなる。高次シラン及び高次ゲルマンについては、鎖長が長くなるにつれてより低い温度が好ましくなる。したがって、ジシラン堆積のための好ましい温度範囲は、トリシランより高くなる傾向があり、同様にトリシランはテトラシランなどより高くなる傾向にある。ゲルマンの系列についても同様の傾向が成り立つ。得られる膜における水素含有率をできるだけ下げるために、トリシランを堆積する好ましい温度は約350℃より高く、好ましくは約450℃より高い。より好ましくは、輸送量制限領域の近く又は領域内での堆積を得るために、温度は約525℃より高く、より好ましくは約550℃より高く、さらに好ましくは約600℃より高く保持される。このプロセスを約700℃より高い温度で行うこともできるが、約700℃以下の温度が好ましい。したがって、好ましい温度は、約450℃〜約700℃の範囲であり、より好ましくは約525℃〜約650℃の範囲である。特定の化学前駆体又はその混合物についても、本明細書で提供するガイドラインに従って、所定の実験を通して、最も好ましい温度範囲を決定することができる。記載の温度は熱CVDに好ましいものであることを理解されたい。特定の用途に許容される水素組み込みの濃度に依存する、プラズマ堆積法においてはより低い温度が適切である。
【0025】
堆積温度の選択は、堆積されている膜において求められる結晶性にも一部依存する。例えば、大部分が結晶性のシリコンは、約620℃〜800℃の範囲で堆積することができ、上述のように、この温度範囲は明らかに輸送量制限領域内にある。より好ましくは、ポリシリコンの堆積は、650℃と750℃の間で行われる。アモルファスシリコンの堆積にはより低い温度が使用できるが、少なくとも実質的に輸送量で制限されために(即ち、好ましい条件としては好ましくは525℃より高く)温度を選択することが好ましい。エピタキシャルシリコンは、堆積を行う表面の清浄さに大きく依存する。即ち、当業者であれば理解されるが、予め堆積したエピタキシャル膜又は単結晶ウェハの上面などの極めて清浄な単結晶表面によって、流量、圧力などに依存する広い温度範囲でのエピタキシャル堆積が可能となる。通常、適当な表面上へのエピタキシャル堆積を、500℃と1160℃との間で行うことができる。熱割当量を考慮して、約500℃〜約750℃など、より低い温度範囲を使用することが好ましい。図15〜18及び下記の対応する本明細書の記述を参照されたい。
【0026】
好ましくは、シラン及び/又はゲルマンを用いた比較の膜と比べて、より速い堆積速度及び/又はより均一な膜を得るのに効果的な温度で、化学前駆体、例えば高次シラン及び/又は高次ゲルマンを用いて堆積を行う。
【0027】
これらの化学前駆体の堆積は、当業者に周知の様々な気相堆積方法に従って適当に行うことができるが、本明細書に示された改良された化学気相成長(CVD)法のプロセス技術に従って堆積を行う場合、最もメリットがある。この開示された方法は、プラズマCVD(PECVD)、又は熱CVDを含むCVDを使用し、Si含有化学前駆体及び/又はGe含有化学前駆体を含んで構成された原料ガスを利用して、CVDチャンバ内に収容された基板上にSi含有膜及び/又はGe含有膜を堆積することによって好適に行われる。好ましい実施の形態では、ガスはトリシランを含んで構成されており、Si含有膜を堆積する。別の好ましい実施の形態では、ガスは高次シランと高次ゲルマンを含んで構成されており、SiGe膜を堆積する。
【0028】
適当な多岐管を使用して1種の(又は複数種の)原料ガスをCVDチャンバに供給してもよい。本明細書記載の実験結果は、水平ガス流のCVDチャンバで行われた。このチャンバは、枚葉式であり水平ガス流反応装置であることが好ましく、好ましくは放射加熱される。このタイプの適当な反応装置は市販されており、好ましいモデルには、米国アリゾナ州フェニックスのエーエスエム・アメリカ・インコーポレイテッドが市販している枚葉式のエピタキシャル反応装置のEpsilon(商標)シリーズがある。本明細書記載の方法は、シャワーヘッド構造などの代替の反応装置でも使用することができるが、均一性を向上させ、堆積速度を速めるメリットを得るには、Epsilon(商標)チャンバの水平で、シングルパスで、層流のガス流の構造において特に効果的であることが判明している。
【0029】
堆積に適用される温度及び圧力で、化学前駆体を、原料ガス又は原料ガスの成分の形でCVDチャンバに供給することが好ましい。CVDチャンバ内のトータル圧力は、好ましくは約0.001Torr(0.13332Pa)〜約700Torr(93324Pa)の範囲であり、より好ましくは約0.1Torr(13.332Pa)〜約200Torr(26664Pa)の範囲であり、さらに好ましくは約1Torr(133.32Pa)〜約60Torr(7999.2Pa)の範囲である。Si含有化学前駆体及び/又はGe含有化学前駆体のそれぞれの分圧は、トータルの圧力の好ましくは約1×10−6%〜約100%であり、より好ましくは同じベースで約1×10−4%〜約100%である。炭素源を使用する場合、各炭素源の分圧は、好ましくはトータル圧力の0%〜約1%であり、より好ましくは同じベースで約1×10−6%〜約0.1%である。炭素源を使用する場合、炭素源の分圧は、得られるSi含有膜及び/又はGe含有膜に、好ましくは約20%以下(単結晶材料では10%以下)、さらには約10%以下(単結晶材料では5%以下)の炭素含有率を与えるのに効果があることが好ましい。ここで、上記パーセンテージは、膜の全重量に基づく重量パーセントによるものである。
【0030】
この原料ガスが、不活性キャリアガスなどの1種の(又は複数種の)化学前駆体及び炭素源以外のガスを含んでいてもよい。代表的なキャリアガスには、ヘリウム、アルゴン、クリプトン及びネオンが含まれる。水素は、特に単結晶材料において、本明細書記載のプロセスのためのキャリアガスとして最も好ましい。また、多結晶及びアモルファス膜の堆積に窒素を使用することもできる。必要に応じて別の成分を原料ガス中に入れても良い。好ましくは、このガスは、シラン、ジシラン、テトラシラン、ゲルマン、ジゲルマン、トリゲルマン、NF3、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、及びドーパント前駆体を含んで構成される群の中から選択された1種又は複数種の化合物を含んで構成されていることが好ましい。
【0031】
ドーパント前駆体には、ジボラン、重水素化ジボラン、ホスフィン、及びアルシンが含まれる。シリルホスフィン[(H3Si)3−xPRx]及びシリルアルシン[(H3Si)3−xAsRx](ここで、x=0〜2、及びRx=H及び/又はD)は、リン及びヒ素の好ましいドーパント源である。SbH3及びトリメチルインジウムは、それぞれアンチモン及びインジウムの好ましい供給源である。このようなドーパント及びドーパント源は、本明細書記載の方法によって、ボロン、リン、アンチモン、インジウム、及びヒ素をドープしたシリコン膜、SiGe膜及びSiGeC膜など、好ましい膜を調整するのに有用である。ドーピングを行う場合、これらの材料中のドーパント濃度は、約1×1014〜約1×1022原子/cm3の範囲であることが好ましい。例えば、トータルを基準とした重量で、濃度が約1ppm〜約1%の範囲の水素中の混合物のように、非常に低い濃度のドーパント源を用いて、ドーパントを組み込むことができる。次いで、所望のドーパント濃度及びドーパントガス濃度に依存する、10〜200標準立方センチメートル毎分(sccm)の範囲の設定値としたマスフローコントローラを介してこれらの希釈混合物を反応装置へ送ることができる。また、シリコン/ゲルマニウム/炭素源と共に反応装置に送られるキャリアガス中で、ドーパント源をさらに希釈することが望ましい。典型的な流量は、約20標準リットル毎分(SLM)〜約180SLMの範囲であることが多いので、典型的なプロセスで用いられるドーパント濃度は一般に非常に低い。
【0032】
Si含有膜及び/又はGe含有膜を堆積する間、化学前駆体(及び使用する場合は炭素源)の相対的な分圧を比較的一定に保持することもでき、又は変化させて膜厚内で深さの関数としてSi及び/又はGe量が異なるグレーデッド膜を生成させることもできる。膜の厚みを約10Å〜約5,000Åの範囲とすることが好ましい。膜の元素組成を、段階的及び/又は連続的に変化させることができる。堆積時間及び/又はガス流量を変化させることによって、当技術分野で周知の対象用途に応じて膜厚を変えることができる。一定にするにせよ傾斜を持たせるにせよ、本明細書記載の方法で堆積した化合物及びドープした膜は、特定の所与の深さで、面にわたって比較的一定の組成を有する。この意味での「面」は、パターンのある基板上に膜を堆積する場合はうねっている。
【0033】
本明細書記載の膜の堆積を、毎分約50Å以上の速度、より好ましくは毎分約75Å以上、さらに好ましくは毎分約100Å以上で行うことが好ましい。得られるSi含有膜は、SiGe膜、SiGeC膜、窒化シリコン膜(SiN、化学量論組成を意味するものではない)、シリコン酸化膜(SiO、化学量論組成を意味するものではない)、シリコン酸窒化膜(SiON、化学量論組成を意味するものではない)、ボロンドープ膜、ヒ素ドープ膜、リンドープ膜、及び誘電率が約2.2以下の膜を含んで構成される群の中から選択されたものであることが好ましい。好適な低k膜を形成する方法が、2001年11月13日に出願された同時係属中の米国特許出願第09/993,024号に開示されており、その開示を参照により本明細書に組み込む。Si含有膜は、アモルファス、多結晶又はエピタキシャルとすることができる。トリシランは、エピタキシャルシリコン膜の堆積速度及び均一性を改善するのに特に有利であることが示されている。
【0034】
好ましい実施の形態によって、上述の均一性の問題を解決するためのもう1つのプロセスが提供される。このプロセスの例は図3及び実施例39に示されているが、ここでより一般的にこのプロセスを記載する。堆積膜の厚み方向の組成不均一性は、特に、基板表面温度の(静的とは対照的に)動的な変動に起因すると考えられている。CVDチャンバは、一般に、特定の膜の堆積中一定に保持される温度制御条件の設定がプログラム可能に構成された温度コントローラを備えている。この設定温度は、一般に、プロセスの初めに選択され、その膜が完成するまで保持される。上述のように、これまで、この厚みの問題は、堆積条件、例えばガス流量、基板の回転速度、加熱エレメントへの電力分布などを経験的に調整して、温度変動の厚みへの影響を効果的に時間平均することによって、取り組まれてきた。
【0035】
膜堆積の初めの5Åから1,000Åまでの組成と厚みが比較的均一な膜をもたらす温度設定値、又はより一般的に温度制御に影響を与える反応装置条件については経験的に見つけることができるが、堆積を続けていくと膜は一般に均一でなくなってくることが判明している。この理由はよく分かっておらず、本発明は、理論によって限定されるものではないが、堆積時間の関数として変化する基板の放射率及び別の特性によって、温度制御システムが影響を受けている可能性がある。換言すると、これによって、組成変動や厚み変動の一因となる温度変動が生じている可能性がある。
【0036】
不均一性な堆積へのシフトをもたらす理由がどうであれ、一層毎のアプローチを用いてより均一な膜を生成することができることが見出された。この実施の形態によれば、経験的に決めた温度設定値T1、T2、T3などのセットを一層毎に定めることができる。この経験的決定に際して、集積回路の特定の点で単一の機能を有する単独の膜を、幾つかの層に分解し、それぞれの層に最適な設定値を定める。したがって、個別に最適化した堆積プロセス中の設定値を用いることによって、成長する膜厚によって引き起こされる温度制御の変動を補償することができる。
【0037】
様々な温度設定値を用いて幾つかの個別のワークピースのそれぞれに、まず第1層を堆積し、次いで各ワークピース上の前記第1層の厚み及び組成変動を測定して、どの設定値で最も均一な層が得られるかを確認することによって、このような経験的決定を行うことができる。所望により、特定の用途に必要な均一性のレベルに応じて、例えば約50Åから1,000Åまで、好ましくは約100Åから約700Åまでと層の厚みの目標を変えることができる。
【0038】
第1層は、この確認された設定値T1において、さらに幾つかのワークピース上に用意され、第2設定値T2を経験的に求めるための基板としての役を果たす。T1の決定の場合と同様に、様々な温度設定値を用いてこれらのワークピースのそれぞれの前記第1層上に第2層を堆積し、次いで各層の厚み及び組成変動を測定して、どの第2設定値で最も均一な第2層が得られるかを確認する。上記のように、所望により、特定の用途に必要な均一性のレベルに応じて、例えば約50Åから1,000Åまで、好ましくは約100Åから約700Åまでと第2層の厚みの目標を変えることができる。最適化された第1層及び第2層によって所望の厚みと均一性を有する多層膜が形成される場合、プロセスをここで停止させることができる。より厚い膜を所望の場合は、例えば、確認された初めの2つの設定値T1とT2とで堆積された2層を備えたワークピース、1バッチ分を用意し、様々な温度設定値を用いて各ワークピースの第2層上に第3層を堆積し、各層の厚み及び組成変動を測定して、どの第3設定値T3で最も均一な第3層が得られるかを確認するなどによって、上記プロセスを継続することもできる。
【0039】
ここでは温度設定値を、温度制御変数の一例として、堆積プロセス中通常一定に保持されるものとして用いているが、上記の経験的プロセスによる堆積中に変化させるものとしてもよい。また、この経験的プロセスを、PIDコントローラの温度オフセット又はPID係数など、単一膜堆積プロセス中は通常一定に保持される別の温度制御変数に適用することもできる。
【0040】
ガス流量、ガス流分布、分圧及びガス組成などのプロセス変数においては、各層の所望の堆積条件を確認するために、温度設定値を確認する上記と同様のプロセスで、又は同じ実験中に変化させることが好ましい。好ましくは、実験計画法を用いて、均一性及び/又は堆積速度への様々なプロセス変数及びそれらの組み合わせの影響を求める。実験計画法それ自体は周知である。例えば、ダグラスC.モントゴメリ(Douglas C.Montgomery)の「実験計画及び分析(Design and Analysis of Experiments)」、第2版、ジョン・ウィリーと息子達(John Wiley and Sons)1984年を参照されたい。これらの実験計画法によって、様々なプロセス変数及びそれらの組み合わせが膜の均一性及び/又は堆積速度に及ぼす影響を求めた後、特定のプロセスにおいては、コンピュータ制御によりバッチ間又はウェハ間で一貫性を確認するよう、プロセスを自動化することが好ましい。上記のプロセス変数に対するin−situな、段階的な又は動的な調整によってプロセスを改良することが、さらに好ましい。プロセス変数を調整して膜の特性を個々に改良するこの経験的方法によれば、本明細書に記載の理論に関係なく、単一構造又は機能性膜(プロセスの観点から複数層を含む)にわたる特性を改良することが分かった。したがって、本実施の形態の機能は、理論の正しさ又は誤りにも左右されるものではない。
【0041】
所望の設定値T1、T2、T3、T4などを決めた後、単一のレシピに対して複数の温度設定値がプログラム可能に構成された温度コントローラを備えたCVDチャンバを用いて、好ましい実施の形態を実施する。温度設定値T1を温度コントローラに設定し、第1Si含有化学前駆体X1%を含んで構成された第1ガスをCVDチャンバに導入することによって、このプロセスを行うことが好ましい。ここで、X1は約0〜約100の範囲にある。次いで、チャンバ内に収容した基板上に第1Si含有膜を堆積する。好ましくは、温度設定値T2を温度コントローラに設定し、第2Si含有化学前駆体X2%を含んで構成された第2ガスをCVDチャンバに導入し、第1Si含有膜の上に第2Si含有膜を含有膜堆積して、多層Si含有膜を形成することにより、このプロセスを継続することが好ましい。第2Si含有化学前駆体は、以下に述べるように、また図3及び実施例39で示すように、第1Si含有化学前駆体と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
例えば温度設定値T3を温度コントローラに設定し、第3Si含有化学前駆体X3%を含んで構成された第3ガスをCVDチャンバに導入し、第2Si含有膜上に第3Si含有膜を堆積するなど、所望により多くの層を形成することによって、このプロセスをさらに継続させることができる。
【0043】
好ましいSi含有化学前駆体には、本明細書の別の個所で述べたように高次シラン、及びシランなどの通常の化学前駆体が含まれる。第1Si含有化学前駆体及び第2Si含有化学前駆体の少なくとも1種は、シラン、ジシラン及びトリシランを含んで構成される群の中から選択されたものであることが好ましい。第1ガス、第2ガス及び第3ガスの少なくとも1種は、本明細書の別の個所で述べたように、ゲルマン、ジゲルマン、トリゲルマン、NF3、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、及びドーパント前駆体を含んで構成される群の中から選択される化合物を含んで構成されていることが好ましい。好ましくは、ガス中の各Si含有化学前駆体Xnの量、X1%、X2%、X3%、X4%などは、堆積プロセスにおける特定の段階で、トータル容積を基準とした容積で、それぞれ個々に、約1×10−6%〜約100%、好ましくは約1×10−4%〜約100%の範囲である。
【0044】
基板の温度は、約350℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜約700℃の範囲内である。CVDチャンバは、枚葉式の水平ガス流反応装置であることが好ましい。得られる複数層Si含有膜は、マイクロドット、SiGe膜、SiGeC膜、SiN膜、シリコン酸素膜、シリコン酸窒化膜、ボロンドープ膜、ヒ素ドープ膜、リンドープ膜、及び誘電率が約2.2以下の膜を含んで構成される群の中から選択されたものであることが好ましい。好適な低k膜の形成方法は、2001年11月13日に出願された同時係属中の米国特許出願第09/993,024号に開示されている。その開示を参照により本明細書に組み込む。
【0045】
段階的又は連続的なやり方で膜の複数層を堆積することによって好ましい実施の形態に係るプロセスを実施することができる。有利にも、堆積を中断して温度設定値を調整する場合、流量、分圧及びガス組成などのプロセス変数も所望により調整して様々な組成の膜を形成することができる。例えば、堆積膜を、上記のように均質又は均一の組成としてもよく、又は、堆積膜を組成で段階的又は連続的に変化させてもよい。この中断中にSi含有化学前駆体を同一物から変更してもよく、及び/又はガスの量X1%、X2%、X3%、X4%、などを変えることもできる。好ましい実施の形態では、プロセスは、ゲルマニウム濃度における非連続的又は段階的な変化によってゲルマニウム濃度を傾斜させた膜を成長させることを含む。選択したゲルマニウム濃度の膜を互いの上に堆積させて非連続な周期性を有する超格子を用意することにより、これを実現することが好ましい。下記の実施例39及び実施例43に、この実施の形態を例示している。
【0046】
この実施の形態の「膜」が、集積回路におけるその機能の観点から総合的に単一の構造膜を構成しており、典型的には、その厚みにわたってほぼ同じ組成である。したがって、上記の段階的堆積プロセスで形成された単一膜を定義するために、同一成分には、膜の厚み方向の異なる点で同じ構成要素が異なる濃度を有するグレーデッド膜も含まれるものとする。
【0047】
膜の均一性及び堆積速度を決定する方法は周知である。堆積速度は、膜の平均厚みを時間の関数として測定することによって定められ、オングストローム毎分(Å/分)の単位で表される。好ましい堆積速度は、約20Å/分以上であり、より好ましくは約50Å/分以上、さらに好ましくは100Å/分以上である。膜厚を測定する適当な方法には、多点エリプソメトリ法が含まれる。膜厚測定用の計器は周知であって市販されており、好ましい計器には、米国カリフォルニア州サニーベールのナノメトリクス社(Nanometrics、Inc.)の計器、NanoSpec(登録商標)シリーズが含まれる。
【0048】
本明細書で用いられているように、堆積膜の均一性を指す用語「均一性」は、厚みの均一性と組成の均一性との両方を指すように用いられる。膜厚均一性においては、多点厚み測定を行い、平均厚みを求め、この平均が複数の測定点と異なる平均量を求めることによって定めることが好ましい。比較可能とするため、その結果を、不均一性のパーセンテージで表すとよい。不均一性のパーセンテージは、約10%以下であることが好ましく、より好ましくは約5%以下、さらに好ましくは約2%以下である。組成の均一性においては、電気的測定(即ち、4点プローブ)、SIMS(二次イオン質量分析法)、RBS(ラザフォード後方散乱分光分析)、分光エリプソメトリ及び/又は高分解能X線回折法(HR−XRD)を用いて求めることができる。
【0049】
図14は、堆積温度600℃において、堆積速度毎分1306Å及び圧力40Torr(5332.8Pa)でトリシランを用いて堆積したアモルファスシリコン膜のラザフォード後方散乱分光分析(弾性反跳粒子検出法、ERD)を示す図である。実線は膜の生データであり、破線は、データシミュレーションソフトウェアRUMP(商標)で、残存水素濃度0.5原子%を仮定して生成したモデルである。この生データは、おそらく吸収された炭化水素及び/又は水分に起因する僅かな表面汚染を示唆しているが、このスペクトルは、膜内の残存水素濃度が、水素濃度0.2原子%未満に相当する検出限界を下回るものであることを示唆している。
【0050】
図15は、堆積温度600℃、650℃、700℃及び750℃(それぞれ、図15の下から上へ)で、トリシランを用いて堆積した一連のシリコン膜についてのX線回折スペクトルを示す。このX線回折パターンは、600℃で堆積した膜はアモルファス膜であり、650℃で堆積した膜は部分的に結晶性のものであり、700℃と750℃で堆積した膜はさらに結晶性の高いものになっていることを示す。図16は、750℃で堆積した膜(中間層)の断面の透過型電子顕微鏡写真の写しを示しており、トリシランを用いて堆積した多結晶膜において、この膜が薄いにもかかわらず比較的高い程度の膜厚均一性を有することが示されている。この膜の制限視野回折(SAD)パターン(図17)は、膜内に優越方位が無いことを示し、これが多結晶膜であったことを示唆している。
【0051】
図18は、600℃、40Torr(5332.8Pa)でトリシランを用いて堆積したアモルファスシリコン膜の断面の走査型電子顕微鏡写真の写しを示す。この膜はカーブした基板上に堆積されており、深く狭い合わせ目にも優れた適応性があることを示している。
【0052】
別の実施の形態では、高次シランがCVD合成、好ましくは、ほぼ純粋なシリコンからSi3N4までの範囲の組成を有する窒化シリコン(SiN)材料の低温低圧CVDにも使用される。好ましい窒素源には、(H3Si)3N(トリシリルアミン)、アンモニア、原子状窒素、及びNF3などの化学前駆体が含まれる。原子状窒素は、遠隔マイクロ波ラジカル発生器を用いて発生させることが好ましい。CVDチャンバに導入する窒素源及び高次シランの相対的な量は、高次シランの代わりにシランを用いて形成した比較の膜より均一性の高いSiN膜が得られるように選択することが好ましい。好ましい実施の形態では、原子状窒素を連続的に導入し、トリシランを連続的又はパルス状に、好ましくは1回又は複数回のパルスで導入する。高次シランをパルスで導入することによってより高い膜の均一性が得られることが分かった。また、下記の実施例で実証されるように、断続したCVDによって、極めて薄く均一性の高いSiN膜が得られることが分かった。この実施の形態に従って調整されたSiN膜は、厚みが好ましくは約10Å〜300Åの範囲であり、より好ましくは約15Å〜約150Åの範囲である。
【0053】
これら窒素源を化学前駆体としてトリシランと特に低温で用いることによって、シランなどの伝統的なSi源を用いたプロセスがもたらす堆積速度よりずっと速い堆積速度で、薄膜中のN−H結合の数が最小のSiN材料の堆積が可能になる。別の高次シランでも同様の結果を得ることができる。450℃を超える堆積温度では、水素含有率は、好ましくは4原子%未満であり、より好ましくは約2原子%未満、さらに好ましくは約1原子%未満である。堆積は、上記のように輸送量制限領域で行われることが好ましい。
【0054】
別の実施の形態では、CVD合成、好ましくは酸化シリコン材料及び酸化窒化シリコン材料の低温低圧CVDにも高次シランを使用することができる。特に低圧CVD条件における、高次シランの低温/高成長速度の利益によって、シランをベースとしたプロセスにわたる製造上の利益が得られる。酸素源には、オゾン、酸素、水、酸化窒素、亜酸化窒素、過酸化水素などが含まれる。これらの材料に窒素を導入するための窒素源には、(上記のように)トリシリルアミン、原子状窒素、アンモニア、及びNF3が含まれる。このような酸素及び窒素源は、連続的又は不連続ステップで、或いはこれらプロセスの組み合わせを含む方法で使用される。上記のように、輸送量制限領域の少なくとも近傍で堆積を行うことが好ましい。トリシリルアミンとトリシランとを用いた堆積においては、好ましくは約350℃〜約750℃、より好ましくは約400℃〜約700℃、さらに好ましくは約450℃〜約650℃の範囲で行う。NF3とトリシランとを用いた堆積においては、好ましくは約300〜約750℃、より好ましくは約350℃〜約700℃、さらに好ましくは約400℃〜約650℃の範囲で行う。
【0055】
酸化物及び酸化窒化物の堆積には個別の実施例がないが、本明細書に開示され、窒化シリコン及びシリコンゲルマニウム化合物膜について上述された原理が、酸化シリコンの堆積にも同じように適用可能であることが、当業者には容易に分かる。同様に、輸送量制限堆積を実現するための温度が低く活性化エネルギーが低いというトリシランの利点は、気相堆積、特に様々なシリコン化合物材料の化学気相成長に価値がある。
【0056】
好ましい実施の形態によれば、超小型電子産業で様々な用途に有用な膜が提供される。好ましいSi含有膜は、厚みの不均一性が約2%未満であり、組成の不均一性が約2%未満である。本明細書に記載したような膜は、様々な用途、例えばトランジスタゲート電極として有用である。本明細書記載の膜は、集積トランジスタのゲート膜など、集積回路の重要な素子膜を形成するのに特に有用である。別の例には、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の半導体膜が含まれる。このような膜からこのような集積回路を形成するプロセスは、当業者には周知である。これらの集積回路は、当業者に周知の方法でコンピュータシステムに組み込むことができるので、別の好ましい実施の形態によれば、1つ又は複数のこのような集積回路を含んで構成されたコンピュータシステムが提供される。
【0057】
図1は、本明細書記載の堆積プロセスを用いた好ましいプロセスフローを示すフローチャートである。半導体基板上にゲート誘電体を形成する(ステップ100)。必要ならゲート誘電体を清浄化し(ステップ110)、そして本明細書記載のように、好ましくはトリシランを流すことを含めて、Si含有膜を堆積する(ステップ120)。また、横方向への信号伝播の改良を所望する場合、Si含有の上に任意選択の更なる金属膜を堆積する(ステップ130)。次いで、これらの複数層を、フォトリソグラフィでパターニングし(ステップ140)、製造を継続する(ステップ150)。
【0058】
図2は、図1のプロセスによって形成されたゲートスタック200を示す。半導体基板220の上にゲート誘電体210を形成する。ゲート誘電体210の上に電気的にドープされたSi含有膜230を形成し、Si含有膜230の上に任意選択の金属膜240を配置してゲートスタック200を形成する。次いで、スタック200をパターニングしてゲート電極(図2には示さず)を形成し、集積回路の形成を継続する。
【0059】
ゲート誘電体210は、誘電率が5より大きく、より好ましくは10より大きい、少なくとも1種の高k材料を含むことが望ましい。代表的な材料には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム及び酸化ジルコニウムが含まれ、好ましくは、高品質でピンホールのない膜のための原子層堆積(ALD)で形成する。有利にも、輸送量制限領域又はその近傍で、特に高次ゲルマンと一緒にトリシランを用いると、このような高k材料上への伝統的なシリコン堆積における遅い核形成時間が補償される。
【0060】
別の実施例では、トリシランを流して単結晶基板上にエピタキシャルSi含有膜を堆積する。シリコン膜とヘテロエピタキシャルSiGe、SiC及びSiGeC膜とを、本明細書記載のプロセスによって堆積することができる。
【0061】
別の好ましい実施の形態によれば、表面上にSi含有材料の堆積装置を得ることができる。該装置は、CVDチャンバ、トリシランを収容する容器、該容器から前記CVDチャンバへトリシランを通過させ得るように、該容器を前記CVDチャンバに動作可能に接続する供給ライン、及び約10℃〜約70℃、好ましくは15℃〜約52℃の範囲の温度に保持され、トリシランの蒸発速度を制御するように、前記容器のまわりに動作可能に配置された温度コントローラを備えている。適当な温度コントローラの例には、熱電コントローラ及び/又は液充填ジャケットが含まれる。好ましくは、CVDチャンバは、枚葉式で、水平ガス流の反応装置である。また、該装置が、前記容器から前記化学気相成長チャンバへのトリシランの通過を制御する前記供給ラインと動作可能に接続された多岐管を備えていることが好ましい。前記ガスラインが、約35℃〜約70℃、より好ましくは約40℃〜52℃の間の温度に加熱されて、高ガス流量での凝縮を防止するように、前記供給ラインの周囲に熱源が動作可能に配置されていることが好ましい。好ましくは、トリシランは、トリシラン蒸気を同伴するキャリアガスと一緒に使用されるバブラー、より好ましくは温度制御バブラー、さらに好ましくはトリシランを送る加熱ガスラインと組み合わせた温度制御バブラーを用いて導入されることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、ベルヌーイワンド(Bernoulli wand)ウェハ輸送システム、パージオンリーロードロック(purge−only load locks)、非スライド凹面サセプタ、「方形(square)」予熱リング、調整可能スポットランプ、及びそれぞれ独立に調整可能なガス注入口注入器を含んで構成された、ASM Epsilon 2000(商標)水平流エピタキシャル反応装置システムを用いて行った。水素及びジボランドーパントをも含んだ供給ガスで、Si含有前駆体及びGe含有前駆体をチャンバに供給した。約120sccmのH2中1%のB2H6を2slmのH2で希釈し、120sccmの該混合物を反応装置に導入し、20slmのH2及び前駆体と混ぜ、実施例に示したような流量条件で回転基板上に堆積した。堆積速度は、SIMS測定及び光エリプソメータ測定(Nanometrics)を用いて、酸素及びボロンの深さプロファイルから評価した。
【0063】
実施例1〜4
表1に示したパラメータに従って、化学前駆体としてトリシランを用いてSi含有膜を堆積した。堆積温度は700℃であり、十分にトリシランの輸送量制限領域内にあった。しかし、均一な膜を形成するには(これら特定の堆積条件では)流量が不適切であったため、得られた膜は均一でなく、(中央が薄く端が厚い)凹面形の堆積プロファイルが得られた。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例5〜15
表1に示したパラメータに従って、化学前駆体としてトリシラン及びシラン、ドーパントとしてジボランを用いて、Si含有アモルファス膜を堆積した。約120sccmのH2中1%のB2H6を2slmのH2で希釈し、120sccmの該混合物を反応装置に導入し、該反応装置でこれを20slmのH2、及び表2に示した流量のトリシラン又はシランと混合させた。その結果、トリシランの流量がシランの流量より低い場合でも、シランと比べて、トリシランを用いると、一般に所与の温度で遙かに速い堆積速度が得られることが分かった。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例16〜19
表3に示したパラメータに従って、化学前駆体としてトリシラン及びシランを用いてSi含有膜を堆積した。膜の厚みがそれぞれ約500Åとなるように堆積時間を調整した。Nanometricsエリプソメータを用いて平均膜厚を測定し、次いでこの値を堆積時間で除して堆積速度を求めた。膜厚の49点厚みマップから膜の不均一性を求めた。その結果、シランの代わりに、示した温度でトリシランを用いることによって、遙かに速い堆積速度で遙かに均一な膜が得られた。これは550℃で間違いないものであるが、劇的なことには、600℃でより間違いのないものとなっている。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例20〜38
トリシラン単独の代わりに、トリシラン80%とジゲルマン20%との混合物を用い、そして、シランの代わりにシラン80%とゲルマン20%の混合物を用いてSiGe膜を得たことを除いて、実施例1〜19を繰返した。トリシランの使用、又はシラン単独での使用の場合より速い堆積速度が観察された。
【0070】
実施例39
図3に示したフローチャートに従って、以下のように、非連続な周期性を有する超格子の成長によってSiGe膜を用意した。ex−situフッ化水素(HF)の最終清浄化を行って自然酸化膜を除去し、次いで高流量の超純度水素ガス下で基板を反応装置チャンバに導入して、Si<100>基板を用意した(ステップ300)。ウェハを60rpmで回転させ、(基板表面から汚染物質を除去するために)高流量の水素ガス下でウェハを約900℃に加熱した。ウェハを冷却し、700℃で安定化させ、輸送量制限条件でトリシラン及びトリシリルアルシンを用いて、厚み約300Åのヒ素ドープシリコンバッファ層を成長させた。
【0071】
水素流下で600℃に冷却してウェハ温度を調整した(ステップ310)。ジシラン98%とジゲルマン2%とを用いて、第1周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ320)。トリシラン85%とジゲルマン15%とを用いて、第2周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ330)。
【0072】
水素流下で設定温度を3℃下げて(ステップ340)、30秒間ウェハを安定化させた。トリシラン75%とジゲルマン25%を用いて、第3周期のSiGe超格子を成長させた(350)。
【0073】
水素流下で設定温度を3℃下げて(ステップ350)、30秒間ウェハを安定化させた。トリシラン65%とジゲルマン35%とを用いて、第4周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ370)。トリシラン85%、ジゲルマン12%、ジボラン2%及びジシリルメタン1%を用いて、炭素及びボロンをドープした第5周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ380)。水素流下で、前記反応装置を30秒間パージした(ステップ390)。トリシラン90%とジゲルマン10%とを用いて、第6周期のSiGe超格子を成長させた(ステップ400)。
【0074】
水素流下で、温度設定値を650℃に上昇させ(ステップ410)、ランプバンクの相対出力を僅かに調整して、成長させるシリコンキャップ層のウェハ内均一性を可能な限り高めた(ステップ420)。ウェハを30秒間安定化させた。トリシラン100%を用いてシリコンキャップ層を成長させた。反応装置からウェハを取り出し(ステップ430)、次のウェハを加工した。
【0075】
実施例40
堆積温度650℃、圧力40Torr(5332.8Pa)で化学前駆体としてトリシランとゲルマンとを用いて、平均膜厚1,038ÅのSi含有膜を堆積した。ガス流注入口の設定値は、これまでの一連の実施例における通常のやり方で経験的に調整した。端部6mmを除いて49点を1次元的にスキャンすることによって測定したところ、得られたSiGe膜は、非均一性のパーセンテージが0.37%(8Åの範囲)であった。図4は、この膜について、測定位置の関数として膜厚をプロットしたグラフである。
【0076】
実施例41(比較)
前駆体としてシランとゲルマンとを用いて、温度600℃で(核形成層を除く)SiO2基板上にSi含有膜を堆積した。得られたSiGe膜の表面の粗さ(原子間力顕微鏡で測定)は、10ミクロン×10ミクロンのスキャン面積で226Åであった。図5及び図6に示したSEM顕微鏡写真で実証されているように、前記SiGe膜の走査型電子顕微鏡(SEM)から、アイランド型の堆積を示唆するピラミッド形のファセット粒子が明らかになった。
【0077】
実施例42
実施例41記載のように、600℃でSi含有膜を堆積したが、前駆体としてシラン及びゲルマンの代わりにトリシランとゲルマンとを用いた。得られたSiGe膜の表面の粗さ(原子間力顕微鏡で測定)は、10ミクロン×10ミクロンのスキャン面積で18.4Åであった。図7及び図8に示したSEM顕微鏡写真(それぞれ、図5及び図6と同じ倍率及び傾斜角)で実証されているように、前記SiGe膜の走査型電子顕微鏡(SEM)から、表面が遙かに均一であることが明らかになった。
【0078】
実施例43〜63
トリシランとゲルマンとを用いて、圧力40Torr(5332.8Pa)でSiO2基板(核形成膜を除く)上に一連のSi含有膜を堆積した。トリシラン流量は、表4の実施例に対して、77sccmで一定(水素キャリア、バブラー)とした。ゲルマン流(ゲルマン10%、H290%)及び堆積温度は、表4に示すように変化させた。ゲルマニウム濃度(原子%)及び得られたSiGe膜の厚みをRBSで求め、表面の粗さを原子間力顕微鏡(AFM)で求めた。表4に示した結果から、流量条件及び温度の範囲にわたって、特にゲルマン濃度の範囲にわたって、極めて均一な膜を調整可能であることが実証された。
【0079】
【表4】
【0080】
実施例64〜78
トリシラン及びアンモニア(実施例64〜77)又はシラン及びアンモニア(比較例78)を用いて、表5に示した条件下で、Si<100>基板の自然酸化膜上に一連のSi含有膜を堆積した。キャリアガス流を30slm、アンモニア流量を7slmとした。表5は、得られたSiN膜について観察された堆積速度及び屈折率(「RI」)、及び選択した膜におけるシリコンと窒素との原子比(「Si/N」)及び水素含有率(「%H」、原子パーセント)を示す。
【0081】
【表5】
Si/N及び%Hの値は、ラザフォード後方散乱(RBS)によって求めた。図19は、775℃、20Torr(2666.4Pa)でトリシランを用いて堆積したSiN膜サンプルの代表的なRBSスペクトル(2MeV He++)である。弾性反跳粒子検出法(ERD)を用いて得たERDスペクトルを図20に示す。これらの図には、生データと、シリコン、窒素、及び水素濃度の定量化が可能なRUMPモデリングプログラムに基づくシミュレーション結果との両方を示している。このシミュレーションから、この膜の化学量論がほぼSi45N51H4であることが示唆される。また、図17に示したRBS ERDスペクトルから、水素が膜全体にわたって均一に分布していることが明らかとなった。
【0082】
実施例79〜82
トリシランと原子状窒素とを用いて、Si<100>基板の自然酸化膜上に一連のSi含有材料を堆積した。市販の800ワットマイクロ波ラジカル発生器(MRG)を用いて遠隔的に原子状窒素を発生させ、該原子状窒素をCVDチャンバに供給した。表6に示した堆積温度で、流量5slm(実施例82では10slm)の窒素キャリアガスを用いて、バブラーを経由して、前記原子状窒素と共にトリシランをCVDチャンバに供給した。トリシランは、連続的に(実施例79)又はパルスで(実施例80〜82)チャンバに導入した。パルス導入においては、原子状窒素を連続的に導入し、トリシランを約1分30秒間隔のパルスで導入することによって行った。トリシランパルスのそれぞれは、上記流条件下で約6秒続けた。得られたSiN膜のそれぞれの化学量論は、ほぼSi43N54〜56H3〜1の範囲であった。
【0083】
表6は、得られたSiN膜における厚み、屈折率及び水素濃度(原子%)を示す。実施例79のSiN膜は、中央が端部より著しく厚く、均一ではなかった。また、測定された屈折率は、膜の表面にわたって著しく変動した(中央が端部より高かった)。実施例80〜82のパルスプロセスを用いることによって、均一性は改善された。原子状窒素の流量を増加すること、及び/又はトリシランの流量を低下させることによる連続プロセスを用いてることによって、均一な膜を得ることができた。
【0084】
【表6】
【0085】
実施例83
実施例80〜82について一般的に上述したように、遠隔的に発生させた原子状窒素と単一6秒パルスのトリシランとを用いて、650℃、圧力3Torr(399.96Pa)で、厚みが約18Åの薄く均一で連続なSiN膜を堆積した。図9のTEM顕微鏡写真に示したように、この膜をエポキシで被覆し、切断し、透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いて画像化した。膜/基板界面には、実質的に自然酸化がないことが分かった。
【0086】
実施例84〜87
堆積圧力40Torr(5332.8Pa)、及び様々な流量、及び表7に示した堆積温度及び堆積速度でトリシランを用いて、清浄にしたSi<100>基板上に一連のエピタキシャルシリコン膜を堆積した。表7に示したように、ラザフォード後方散乱のチャネリングスペクトルから得たχ−min値に示されるように、高品質のエピタキシャルシリコン膜が形成された。
【0087】
【表7】
当業者には明らかであるが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく上記のプロセスに様々な省略、追加及び変更を行うことができ、このような変更及び改変は、添付の特許請求の範囲で規定された本発明の技術的範囲内に属する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】好ましい実施の形態に基づくゲートスタックの形成プロセスを概略的に示したフローチャートである。
【図2】好ましい実施の形態に基づくゲートスタックを示した図である。
【図3】好ましい実施の形態に基づく堆積プロセス中に温度設定点を変える方法を概略的に示したフローチャートである。
【図4】好ましいSiGe膜において、測定位置の関数として膜厚をプロットしたグラフである。
【図5】シランとゲルマンとを用いて堆積したSiGe膜を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図6】図5に示したSiGe膜の断面を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図7】トリシランとゲルマンとを用いて堆積したSiGe膜を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図8】図7に示したSiGe膜の断面を示した走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図9】好ましいSiN膜の断面を示した透過型電子顕微鏡写真の写しである。
【図10】上記条件の基で得られたシラン、ジシラン、及びトリシランのアレニウスプロットである。
【図11】600℃、40Torr(5332.8Pa)での酸化物基板上へのトリシラン(Silcore(商標))流量の関数としての膜堆積速度をプロットしたグラフである。
【図12】650℃、40Torr(5332.8Pa)でトリシラン(Silcore(商標))を用い、様々な堆積時間において、位置の関数として膜厚をプロットしたグラフである。
【図13】トリシランを用いた堆積において、ジボラン流量の関数として堆積速度をプロットしたグラフである。
【図14】600℃、40Torr(5332.8Pa)でトリシランを用いて堆積したアモルファスシリコン膜のRBS ERDスペクトルである。
【図15】600℃、650℃、700℃及び750℃(それぞれ、下から上へ)でトリシランを用いて堆積した膜で得られた一連のX線回折スペクトルである。
【図16】多結晶シリコン膜断面の透過型電子顕微鏡写真の写しである。
【図17】多結晶シリコン膜の制限視野回折パターンである。
【図18】馴染み易いアモルファスシリコン膜断面の走査型電子顕微鏡写真の写しである。
【図19】窒化シリコン膜のRBSスペクトルである。
【図20】窒化シリコン膜のRBS ERDスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一性の高いSi又はSiGeを表面上に堆積する方法であって、
内部に基板を配置したチャンバを用意するステップと、
450℃以上750℃以下の範囲に前記基板の温度を選択するステップと、
選択された前記温度で、トリシランを含むガスを前記チャンバに導入するステップと、
ドーパント濃度が1×1022原子/cm3以下である任意にドープされたSi膜又はSiGe膜を前記基板上に堆積するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記Si膜又はSiGe膜がエピタキシャル膜である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記Si膜又はSiGe膜が多結晶膜である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記温度が550℃〜650℃の範囲である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記Si膜又はSiGe膜を毎分50Å以上で前記基板上に堆積する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記Si膜又はSiGe膜を毎分100Å以上で前記基板上に堆積する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記Si膜又はSiGe膜は、アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜を含み、
前記アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜の前記基板にわたる厚み不均一性が5%以下である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記Si膜又はSiGe膜は、アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜を含み、
前記アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜の前記基板にわたる厚み不均一性が1%以下である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ガスが、シラン、ゲルマン、ジゲルマン、トリゲルマン、NF3、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、及びドーパント前駆体を含んで構成される群の中から選択される1種又は複数種の化合物をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ガスがジゲルマンをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記チャンバが枚葉式で、水平ガス流の反応装置である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記Si膜又はSiGe膜が、マイクロドット、SiGe膜、SiGeC膜、SiN膜、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、ボロンドープ膜、ヒ素ドープ膜、リンドープ膜、インジウムドープ膜、アンチモンドープ膜、及び誘電率が2.2以下の膜を含んで構成される群の中から選択されたものである請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記Si膜又はSiGe膜がシリコンであり、前記基板が高誘電率を有する材料である請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記膜をパターニングしてトランジスタゲート電極を形成するステップをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項1】
均一性の高いSi又はSiGeを表面上に堆積する方法であって、
内部に基板を配置したチャンバを用意するステップと、
450℃以上750℃以下の範囲に前記基板の温度を選択するステップと、
選択された前記温度で、トリシランを含むガスを前記チャンバに導入するステップと、
ドーパント濃度が1×1022原子/cm3以下である任意にドープされたSi膜又はSiGe膜を前記基板上に堆積するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記Si膜又はSiGe膜がエピタキシャル膜である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記Si膜又はSiGe膜が多結晶膜である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記温度が550℃〜650℃の範囲である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記Si膜又はSiGe膜を毎分50Å以上で前記基板上に堆積する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記Si膜又はSiGe膜を毎分100Å以上で前記基板上に堆積する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記Si膜又はSiGe膜は、アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜を含み、
前記アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜の前記基板にわたる厚み不均一性が5%以下である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記Si膜又はSiGe膜は、アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜を含み、
前記アモルファスSi膜又はアモルファスSiGe膜の前記基板にわたる厚み不均一性が1%以下である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ガスが、シラン、ゲルマン、ジゲルマン、トリゲルマン、NF3、モノシリルメタン、ジシリルメタン、トリシリルメタン、テトラシリルメタン、及びドーパント前駆体を含んで構成される群の中から選択される1種又は複数種の化合物をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記ガスがジゲルマンをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記チャンバが枚葉式で、水平ガス流の反応装置である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記Si膜又はSiGe膜が、マイクロドット、SiGe膜、SiGeC膜、SiN膜、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、ボロンドープ膜、ヒ素ドープ膜、リンドープ膜、インジウムドープ膜、アンチモンドープ膜、及び誘電率が2.2以下の膜を含んで構成される群の中から選択されたものである請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記Si膜又はSiGe膜がシリコンであり、前記基板が高誘電率を有する材料である請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記膜をパターニングしてトランジスタゲート電極を形成するステップをさらに含む請求項1記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−228724(P2011−228724A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127316(P2011−127316)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2002−578556(P2002−578556)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2002−578556(P2002−578556)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】
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