説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 従来のチャネル領域に不純物を注入することのみで閾値電圧を調整するよりも少ない不純物量で電界効果型トランジスタの閾値電圧を調整する。
【解決手段】 半導体装置100は、シリコン基板101と、シリコン基板101上に形成されたSiON膜113および多結晶シリコン膜106を含むP型MOSFET103を備える。多結晶シリコン膜106とSiON膜113との界面115に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属が存在する構成とし、界面115における当該金属の濃度を5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタを備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタを有する半導体装置において、トランジスタの閾値電圧を制御する方法として、従来、チャネル領域に不純物を注入し、その注入量を調整する方法が採用されていた(特許文献1)。ところが、チャネル不純物量の調整のみにより閾値電圧を制御する場合、チャネル領域に注入される不純物量の増加は、不純物散乱によるオン電流の低下やGIDL(Gate-Induced Drain Leakage)電流の増加や、基板電圧印加時の基板電流増加につながる。このため、チャネル領域に注入される不純物量が多い高閾値の低消費電力向けデバイス等において、オン電流の低下やGIDL電流が増加することがあった。また、基板電圧効果を積極的に使用する半導体装置において、基板電圧印加時の基板電流が増加することがあった。
【0003】
そこで、特許文献1では、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を有する半導体装置において、NチャネルTFTのゲート酸化膜厚とPチャネルTFTのゲート酸化膜厚とを異ならせる技術が提案されている。ゲート酸化膜の膜厚を変えることにより、NチャネルTFTとPチャネルTFTの閾値を独立して制御することができるとされている。
【0004】
一方、半導体装置の構成材料として、近年、high−kとよばれる高誘電率膜の利用が検討され始めている。high−k材料の代表的なものとしては、Zr、Hf等を含む酸化物が挙げられる。こうした材料をMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のゲート絶縁膜に用いることにより、ゲート絶縁膜の物理的な厚みをある程度厚くしても電気的なシリコン酸化膜換算膜厚は薄くなり、物理的・構造的に安定なゲート絶縁膜を実現することができる。このため、MOSFET特性の向上のためにMOS容量を増大させること、およびゲートリーク電流を従来のシリコン酸化膜を用いた場合に比べて低減することが可能となる。
【0005】
特許文献2には、このようなhigh−k材料を用いたN型MOSFETおよびP型MOSFETを含むCMOSデバイスが開示されている。ここで、N型MOSFETおよびP型MOSFETは、シリコン酸化膜等の低誘電率膜と、高誘電率膜とにより構成されたゲート絶縁膜と、多結晶シリコン等により構成されたゲート電極とを含む。ゲート電極は、ゲート絶縁膜の高誘電率膜に接して設けられている。
【特許文献1】特開平6−222387号公報
【特許文献2】特開2002−280461号公報
【非特許文献1】C. Hobbs他17名、「Fermi Level Pinning at the PolySi/Metal Oxide Interface」、2003 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載の方法の場合、ゲート酸化膜の膜厚を変えるための工程が必要となり、製造プロセス全体が複雑化してしまっていた。
【0007】
また、上記特許文献2に記載のhigh−k材料を用いたCMOSデバイスについて本発明者が検討したところ、ゲート絶縁膜を高誘電率膜で構成し、ゲート電極を多結晶シリコンで構成した場合、閾値電圧が所望の値以上に上昇することが明らかになった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来のチャネル領域に不純物を注入することのみで閾値電圧を調整するよりも少ない不純物量で電界効果型トランジスタの閾値電圧を調整する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記特許文献2のhigh−k材料を用いたCMOSデバイスについて検討した。そして、high−k材料を用いた際の閾値電圧の上昇は、高誘電率膜中の特定の元素の存在により生じることを見出した。さらに、本発明者は、high−k膜中に存在する当該特定の元素の濃度範囲とは異なる濃度範囲で特定の元素をゲート電極に接して存在させることにより、閾値電圧の調整が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板の上に設けられたSi含有ゲート電極と、
前記半導体基板と前記Si含有ゲート電極との間に設けられ、前記Si含有ゲート電極と接するゲート絶縁膜と、
を含む複数の電界効果型トランジスタを備え、
前記複数の電界効果型トランジスタにおいては、前記Si含有ゲート電極と前記ゲート絶縁膜との界面に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属が存在し、
前記界面における前記金属の濃度が5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満であり、
少なくとも1つの前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度は、他の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と異なることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0011】
本発明の半導体装置は、電界効果型トランジスタのSi含有ゲート電極とゲート絶縁膜との界面に上記金属が上記濃度で存在する構成となっている。電界効果型トランジスタの閾値電圧は、上記濃度範囲において上記金属濃度に応じて変化する。このため、これらの金属を閾値電圧変動領域の濃度で用いることにより、電界効果型トランジスタの閾値電圧の調整が可能な構成となっている。よって、本発明によれば、電界効果型トランジスタの閾値電圧を精度よく調整することができる。
【0012】
なお、後述するように、上記金属の濃度が上記範囲よりも大きい所定濃度以上の範囲、たとえば、従来の高誘電率膜中における上記金属の濃度においては、電界効果型トランジスタの閾値電圧が所望の値より高くなり、そして、上記金属濃度による変動が小さい。このため、ゲート絶縁膜に接して従来の高誘電率膜が設けられた従来の構成では、本発明の効果が得られない。
【0013】
また、前述した特許文献1の場合のように、従来においては、チャネル領域へのイオン注入量のみにより電界効果型トランジスタの閾値電圧を調整していた。これに対し、本発明においては、上記金属濃度により閾値電圧を調整することが可能であるため、チャネル領域へのイオン注入を併用する場合にも、イオン注入量を減少させることができる。このため、電界効果型トランジスタのオン電流を向上させることができる。また、電界効果型トランジスタのGIDL電流の低減や基板電圧印加時の基板電流低減が可能である。
【0014】
また、本発明の半導体装置においては、電界効果トランジスタのSi含有ゲート電極とゲート絶縁膜との界面に上記金属が上記濃度で存在するため、閾値電圧の調整をチャネル注入で行い、かつチャネル注入量を減らすことが可能となり、少なくとも1つの前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度が、他の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と異なる構成を高い歩留まりで安定的に実現できる。
【0015】
本発明によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板の上に設けられたSi含有ゲート電極と、
前記半導体基板と前記Si含有ゲート電極との間に設けられ、前記Si含有ゲート電極と接するゲート絶縁膜と、
を含む複数の電界効果型トランジスタを備え、
前記複数の電界効果型トランジスタにおいては、前記ゲート絶縁膜に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属が存在し、
前記ゲート絶縁膜における前記金属の濃度が5×1013atoms/cm3以上1.4×1015atoms/cm3未満であり、
少なくとも1つの前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度は、他の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と異なることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0016】
本発明の半導体装置は、電界効果型トランジスタのSi含有ゲート電極に接するゲート絶縁膜中に上記金属が上記濃度で存在する構成となっている。電界効果型トランジスタの閾値電圧は、上記濃度範囲において上記金属濃度に応じて変化する。このため、ゲート絶縁膜中にこれらの金属を閾値電圧変動領域の濃度で存在させることにより、電界効果型トランジスタの閾値電圧の調整が可能な構成となっている。よって、本発明によれば、チャネル不純物注入量の低減が可能である。
【0017】
本発明の半導体装置において、前記ゲート絶縁膜は、前記金属およびSiを含む構成とすることができる。こうすることにより、Si含有ゲート電極に接するゲート絶縁膜を、上記金属がSiにより希釈された構成とすることができる。このため、チャネル不純物注入量を確実に低減し、電界効果型トランジスタの閾値電圧を確実に調整することが可能である。
【0018】
本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタが、複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタを含み、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタの前記界面が、種類および濃度が共通の前記金属を含み、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる一の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる他の前記電界効果型トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度とが異なってもよい。
【0019】
また、本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタが、複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタを含み、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜が、種類および濃度が共通の前記金属を含み、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる一の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる他の前記電界効果型トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度とが異なってもよい。
【0020】
本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記界面と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記界面とは、共通する前記金属を含む構成とすることができる。また、本発明において、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記界面と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記界面とは、共通する前記金属を複数含む構成とすることができる。
【0021】
また、本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜とは、共通する前記金属を含む構成とすることができる。また、本発明において、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜とは、共通する前記金属を複数含む構成とすることができる。
【0022】
こうすることにより、Nチャネル電界効果型トランジスタおよびPチャネル電界効果型トランジスタの閾値電圧の制御性に優れた半導体装置を簡素なプロセスで作製することができる。
【0023】
本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記界面と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記界面とは、異なる前記金属を含む構成とすることができる。
【0024】
また、本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜とは、異なる前記金属を含む構成とすることができる。
【0025】
こうすることにより、Nチャネル電界効果型トランジスタおよびPチャネル電界効果型トランジスタのそれぞれの特性を向上させることができる。また、それぞれの閾値電圧の制御性をさらに向上させることができる。
【0026】
本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、前記金属としてAlを含むNチャネル電界効果型トランジスタを含む構成とすることができる。また、本発明の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、前記金属としてHfまたはZrを含むPチャネル電界効果型トランジスタを含んでもよい。こうすることにより、電界効果型トランジスタの閾値電圧をさらに確実に調節することができる。
【0027】
本発明によれば、半導体基板と、前記半導体基板の上に設けられたSi含有ゲート電極と、前記半導体基板と前記Si含有ゲート電極との間に設けられ、前記Si含有ゲート電極と接するゲート絶縁膜と、を含む電界効果型トランジスタを備え、前記Si含有ゲート電極と前記ゲート絶縁膜との界面に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属が存在し、前記界面における前記金属の濃度が5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満であることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0028】
本発明の半導体装置は、電界効果型トランジスタのSi含有ゲート電極とゲート絶縁膜との界面に上記金属が上記濃度で存在する構成となっている。電界効果型トランジスタの閾値電圧は、上記濃度範囲において上記金属濃度に応じて変化する。このため、これらの金属を閾値電圧変動領域の濃度で用いることにより、電界効果型トランジスタの閾値電圧の調整が可能な構成となっている。よって、本発明によれば、電界効果型トランジスタの閾値電圧を精度よく調整することができる。
【0029】
本発明の半導体装置において、前記電界効果型トランジスタは、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記界面と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記界面とは、共通する前記金属を含む構成とすることができる。また、本発明において、前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記界面と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記界面とは、共通する前記金属を複数含む構成とすることができる。
【0030】
こうすることにより、Nチャネル電界効果型トランジスタおよびPチャネル電界効果型トランジスタの閾値電圧の制御性に優れた半導体装置を簡素なプロセスで作製することができる。
【0031】
本発明において、複数の同じ導電型の前記電界効果型トランジスタを含み、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタの前記界面が、種類および濃度が共通の前記金属を含み、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる一の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる他の前記電界効果型トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度とが異なってもよい。
【0032】
本発明の半導体装置において、前記Si含有ゲート電極がNiまたはGeを含んでもよい。こうすることにより、Si含有ゲート電極のゲート空乏層の膜厚の低減または低抵抗化が図られる。
【0033】
本発明の半導体装置において、前記ゲート絶縁膜がSiON膜を含んでもよい。こうすることにより、Si含有ゲート電極中の不純物元素の半導体基板への拡散を抑制することができる。このため、電界効果型トランジスタの閾値電圧のばらつきを低減することができる。
【0034】
本発明によれば、所定の導電型のウェルが形成された半導体基板にチャネル領域を形成する工程と、前記チャネル領域上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属を前記ゲート絶縁膜に接するように存在させる工程と、前記ゲート絶縁膜上に、Si含有ゲート電極膜を前記金属に接するように設ける工程と、を含む電界効果型トランジスタの製造方法であって、当該電界効果型トランジスタの閾値電圧をあらかじめ設定するとともに、前記ゲート絶縁膜と前記Si含有ゲート電極膜との界面における前記金属の濃度と当該電界効果型トランジスタの閾値電圧の上昇量との関係をあらかじめ取得し、前記関係に基いて、前記閾値電圧に対応する前記チャネル領域中の不純物の注入量と前記金属の前記濃度とを決定し、決定された前記注入量および前記濃度に基づいて当該電界効果型トランジスタを製造することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0035】
また、本発明によれば、所定の導電型のウェルが形成された半導体基板にチャネル領域を形成する工程と、前記チャネル領域上に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属を含むゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜に接し、Si含有ゲート電極膜を形成する工程と、を含む電界効果型トランジスタの製造方法であって、当該電界効果型トランジスタの閾値電圧をあらかじめ設定するとともに、前記ゲート絶縁膜中の前記金属の濃度と当該電界効果型トランジスタの閾値電圧の上昇量との関係をあらかじめ取得し、前記関係に基づいて、前記閾値電圧に対応する前記チャネル領域中の不純物の注入量と前記金属の前記濃度とを決定し、決定された前記注入量および前記濃度に基づいて当該電界効果型トランジスタを製造することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0036】
本発明によれば、あらかじめ取得した上記金属の濃度と当該電界効果型トランジスタの閾値電圧の上昇量との関係に基づき、設定された閾値電圧となるようにチャネル領域中の不純物の注入量と金属の前記濃度とが決定されて、決定に基づいて当該電界効果型トランジスタが製造される。このため、所望の閾値電圧を有する電界効果型トランジスタを簡素なプロセスで安定的に製造することができる。
【0037】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【0038】
たとえば、本発明の半導体装置において、Si含有ゲート電極の側壁を覆う絶縁性のバリア膜を有する構成とすることができる。こうすることにより、電界効果型トランジスタの閾値電圧を上記金属濃度に応じてさらに確実に調節することができる。また、本発明において、バリア膜がSiおよびNを含む構成とすることができる。こうすることにより、閾値電圧の調整をより一層確実に行うことができる。
【0039】
また、本発明の半導体装置において、ゲート絶縁膜が高誘電率膜を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、ゲート電極とゲート絶縁膜との界面に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属を存在させ、界面における金属の濃度を5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満とすることにより、従来のチャネル領域に不純物を注入することのみで閾値電圧を調整するよりも少ない不純物量で電界効果型トランジスタの閾値電圧を調整する技術が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0042】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る半導体装置100の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置100は、シリコン基板101と、シリコン基板101上に設けられたP型MOSFET103とを有する。また、P型MOSFET103の外周部に、素子分離領域102が設けられている。
【0043】
P型MOSFET103において、シリコン基板101に設けられたN型の導電型を有するNウェル104内に、一対の不純物拡散領域110が設けられ、これらの間にチャネル領域105が形成されている。不純物拡散領域110は、Nウェル104表面にP型不純物がドープされた拡散層である。一方がソース領域、他方がドレイン領域となる。また、Nウェル104内に、エクステンション領域140が設けられている。
【0044】
チャネル領域105上にゲート絶縁膜としてSiON膜113が設けられ、SiON膜113上に、SiON膜113に接して多結晶シリコン膜106が形成されている。多結晶シリコン膜106はゲート電極膜であり、B等のP型不純物がドープされている。ゲート絶縁膜であるSiON膜113と多結晶シリコン膜106との界面115に、フェルミレベルのピンニングにより閾値電圧の上昇を生じる元素としてHfが存在している。Hfは、以下の低濃度領域においては、多結晶シリコン膜106表面である界面115における存在量に応じて連続的にP型MOSFET103の閾値電圧を上昇させる。
【0045】
界面115において、Hfの表面濃度は、たとえば5×1013atoms/cm2以上とする。こうすることにより、P型MOSFET103の閾値電圧を確実に上昇させることができる。また、界面115において、Hfの表面濃度は、たとえば1.4×1015atoms/cm2未満とする。こうすることにより、P型MOSFET103の閾値電圧を、所望の大きさに確実に調節することができる。
【0046】
また、P型MOSFET103において、SiON膜113および多結晶シリコン膜106の側壁を被覆する側壁バリア膜111および側壁バリア膜111を被覆する側壁絶縁膜108が設けられている。
【0047】
次に、図1に示した半導体装置100の製造方法を説明する。図2(a)〜図2(c)および図3(a)〜図3(c)は、図1に示した構成の半導体装置100の製造手順の一例を示す工程断面図である。
【0048】
まず、図2(a)に示すように、たとえば(100)面を主面とするシリコン基板101上に、公知の技術により、STI(Shallow Trench Isolation)による素子分離領域102を形成する。素子分離領域102は、LOCOS法等の公知の他の方法で形成してもよい。
【0049】
次に、シリコン基板101の表面に犠牲酸化膜107を形成する。犠牲酸化膜107は、シリコン基板101の表面を熱酸化することにより得ることができる。熱酸化の条件は、たとえば、処理温度1100℃、処理時間100秒程度とする。つづいて、N型不純物をイオン注入してNウェル104を形成する。Nウェル104は、たとえばリンを150KeV、1×1013atoms/cm2以上5×1013atoms/cm2以下の条件で注入することにより形成する。
【0050】
次に、犠牲酸化膜107の上から、Nウェル104に所定の導電型の不純物をイオン注入し、Nウェル104の表層付近にチャネル領域105を形成する(図2(a))。チャネル領域105へのチャネル不純物注入量は、後述するように、あらかじめ設定されたP型MOSFET103の閾値電圧に応じて、界面115におけるHfの存在量とともに適宜決定される。なお、チャネル領域105の下方に、N型不純物をそれぞれイオン注入することにより、パンチスルーストッパー領域を形成することもできる。このようなパンチスルーストッパー領域を形成することにより、短チャネル効果を抑制することができる。
【0051】
次に、犠牲酸化膜107の熱処理を行い、チャネル不純物を活性化する。熱処理の条件は、たとえば、処理温度1000℃、処理時間10秒程度とする。そして、Nウェル104に形成されている犠牲酸化膜107を除去する。具体的には、犠牲酸化膜107を希釈フッ酸(たとえば、HF:H2O=1:10)を用いてエッチング除去した後、純水を用いて水洗し、窒素ブローなどにより乾燥させる。
【0052】
つづいて、シリコン基板101の表面にゲート酸化膜としてSiON膜113(たとえば膜厚0.5nm以上3nm以下)をたとえば熱酸化法およびプラズマ窒化法により形成する(図2(b))。
【0053】
そして、SiON膜113の上面(P型MOSFET103における界面115)に、Hfを付着させる(図2(c))。Hfの付着は、たとえば後述するように、CVD法、ALD法(原子層堆積法)またはスパッタ法により行う。その後、必要に応じて、膜質改善アニールを実施する。
【0054】
ここで、図2(a)および図2(c)に係るP型MOSFET103の設計は以下のようにする。まず、P型MOSFET103を設ける位置や使用目的に応じて、閾値電圧を設定する(S101)。そして、設定した閾値電圧に応じて界面115におけるHfの存在量とチャネル領域105への不純物導入量とを設定する(S102)。
【0055】
P型MOSFET103の閾値電圧の上昇度と界面115におけるHfの存在量との関係はあらかじめ取得される。また、P型MOSFET103の閾値電圧とチャネル領域105への不純物導入量との関係もあらかじめ取得される。これらの関係は、たとえば実験により取得される。また、これらの関係をデータベース化しておくこともできる。たとえば、P型MOSFET103の閾値電圧の上昇度と界面115におけるHfの存在量とを関連づけたテーブルを参照することにより、界面115におけるHf濃度を決定してもよい。
【0056】
そして、上記ステップ102で設定された界面115におけるHfの存在量に応じて、あらかじめ実験により取得された関係に基づき、Hfの付着条件が決定される(S103)。以上のステップにより、所望の閾値電圧を有するP型MOSFET103の設計が可能となる。なお、ステップ103におけるHfの付着条件の決定については後述する。
【0057】
次に、SiON膜113上に多結晶シリコン膜106を成膜する(図3(a))。その後、多結晶シリコン膜106全面にBなどのP型不純物をイオン注入してもよい。多結晶シリコン膜の厚さは、たとえば130nm程度とする。
【0058】
その後、SiON膜113および多結晶シリコン膜106を選択的にドライエッチングし、ゲート電極の形状に加工する。つづいて、SiON膜113および多結晶シリコン膜106からなるゲート電極の側面および上面に側壁バリア膜111となるSixy(x、yは独立に正の整数を示す。)膜を形成し、ゲート電極の表面を被覆する(図3(b))。側壁バリア膜111の膜厚は、たとえば1nm以上10nm以下とする。そして、チャネル領域105と後述する不純物拡散領域110との電気的接続部であるエクステンション領域140を形成するため、ここでは、BF2を2.5keV、5×1014atoms/cm2の条件で注入する。
【0059】
次いで、Nウェル104の形成領域全面に側壁絶縁膜108を形成する。SiON膜113および多結晶シリコン膜106からなるゲート電極の側壁に側壁バリア膜111および側壁絶縁膜108がこの順に設けられた構成とする。具体的には、SiON膜113および多結晶シリコン膜106の側壁のみに側壁バリア膜111および側壁絶縁膜108が残るように、たとえば、フロロカーボンガスなどを用いて異方性エッチングを行う。
【0060】
次に、ゲート電極、側壁バリア膜111および側壁絶縁膜108をマスクとして、Nウェル104の表層にB等のP型不純物をドープして不純物拡散領域110を形成する。これにより、ソース領域およびドレイン領域が形成される。P型不純物として、ここではボロンを用いる。注入条件は、たとえば、2keV、5×1014atoms/cm2以上5×1015atoms/cm2以下とする。その後、非酸化雰囲気中で熱処理を行うことにより、不純物の活性化を行う。熱処理の条件としては、たとえば、1000℃以上1060℃以下の範囲とする(図3(c))。以上のプロセスにより、P型MOSFET103を有する半導体装置100(図1)が形成される。
【0061】
ただし、以上の製造工程において、界面115に上記濃度範囲を満たすようにHfを付着させた構成は、ALDまたはCVD法における従来の方法で得ることは困難である。たとえば、従来のHfを含む高誘電率膜の作製方法を界面115へのHfの付着にそのまま適用した場合、界面115におけるHf濃度が大きく、上記濃度範囲を満たす構成とすることができない。
【0062】
ここで、ALD法では、所定の原料ガスがパルス的に複数回供給される。ALD法により堆積された原子層の厚さは、ALDサイクルをたとえば40回程度繰り返して行った結果として求められる。そして、本発明者が検討したところ、ALD法において、SiO2膜やSiON膜等の絶縁膜上にHfO2を膜としてすなわち一原子層以上堆積させるためには、通常のSiO2膜上への高誘電率膜の成膜においては、この繰り返し回数を22回より大きくする必要があった。そして、一吸着層では、絶縁膜表面にHfO2が疎に付着しており、繰り返し回数が少ない場合、一原子層を構成していないことが見出された。
【0063】
なお、一原子層とは、絶縁膜の表面全面をHfO2が層状に被覆する構成をいう。これに対し、一吸着層とは、一回のALDサイクルにより付着されたHfO2を指す。一吸着層の厚さは、一原子層が形成されるより多くのALDサイクルを行って得られる膜厚をサイクル数で除して得られる大きさであり、一原子層の厚さよりも小さい厚さとなる。この場合、絶縁膜の表面に低濃度のHfがまばらに存在していることになる。
【0064】
そこで、本実施形態においては、図2(c)に示した工程(前述したステップ103)において、ALD法を用いる場合、所定の原料ガスを用い、これをパルス的に供給する回数を所定の範囲で選択する。こうすることにより、上記濃度範囲でHfを界面115に存在させることがはじめて可能となる。具体的には、原料としてHfCl4およびH2Oを用い、
(i)N2フロー、
(ii)HfCl4の化学吸着、
(iii)N2フロー、
(iv)H2Oの化学吸着、および
(v)N2フロー、
のシーケンスを順次実施する。上記(ii)HfCl4の化学吸着においては、一回のガス供給における飽和吸着量が存在するため、上記(ii)〜(iv)のシーケンスを1回以上22回以下、好ましくは1回以上15回以下の回数で繰り返す。本実施形態では、(ii)〜(iv)のシーケンスの繰り返し回数を、通常のSiO2膜上への高誘電率膜の成膜における繰り返し回数に対して顕著に少ない回数とすることにより、界面115へのHfの付着量が高誘電率膜の場合よりも顕著に少ない構成を得ることができる。このため、閾値電圧の調整が可能な範囲でHf量の調整が可能となる。具体的には、上記(ii)〜(iv)のシーケンスを10回繰り返すと、界面115に生成するHfO2中のHf濃度を4×1014atoms/cm2程度とすることができる。
【0065】
次に、図1に示した半導体装置100の効果を説明する。
図1に示した半導体装置100は、多結晶シリコン膜106とSiON膜113との界面115に微量のHfが存在する構成のP型MOSFET103を備える。多結晶シリコン膜106とSiON膜113との界面115に存在する金属量、ここではHf量に依存してP型MOSFET103の閾値電圧が上昇する。このため、P型MOSFET103は、界面115におけるHfの存在量に応じた閾値電圧Vthの調節が可能な構成となっている。
【0066】
この効果は、多結晶シリコン膜106の側壁を側壁バリア膜111が被覆する構成とした際に顕著に発揮される。側壁バリア膜111を設けることにより、側壁絶縁膜108から多結晶シリコン膜106へのOの拡散を抑制することができるため、界面115における閾値電圧の上昇をさらに確実に生じさせることができる。なお、側壁バリア膜111として、ここではSixy(x、yは独立に正の整数を示す。)膜を用いる構成を例示したが、Sixy(x、yは独立に正の整数を示す。)膜に代えて、たとえば600℃以下で成膜されるSiO2膜を用いることもできる。
【0067】
ここで、特許文献1を用いて前述した従来の電界効果型トランジスタにおいては、チャネル不純物の注入量のみを調節することにより閾値電圧を調整していた。このため、チャンネル不純物の注入量が多く、オン電流の低下やGIDL電流の増加、基板電圧印加時の基板電流の増加を招くことがあった。
【0068】
これに対し、本実施形態では、界面115におけるHfの存在量に応じた閾値電圧Vthの調節が可能となっている。このため、多結晶シリコン膜106とSiON膜113との積層構造において、チャネル領域105にドープするチャネル不純物量に加えて界面115におけるHf濃度を調節することにより閾値電圧の調整が可能となる。
【0069】
よって、半導体装置100においては、チャネル領域105にドープするチャネル不純物量の調節のみでP型MOSFET103の閾値電圧を調節する場合に比べて、チャネル不純物のドープ量を低減することができる。このため、半導体装置100では、界面115におけるHfの存在量を調節することにより、さらに広い自由度で閾値電圧を調節可能であるとともに、チャネル不純物の導入量を減少させることができる。したがって、P型MOSFET103において、閾値電圧のばらつきを抑制し、これを所望の値に安定的に調節可能である。よって、所望の品質のトランジスタを高い歩留まりで安定的に製造可能な構成となっている。
【0070】
また、非特許文献1には、SiO2膜上にHfを付着させたときに、Vfbがシフトすることが記載されている。これに対し、本実施形態では、単にHfを付着させて閾値電圧Vthをシフトさせるだけではなく、チャネル注入によって閾値電圧Vthを調整する。このため、閾値電圧Vthのチューニングをチャネル注入で行い、かつチャネル注入量を減らす必要がある。本実施形態では、界面115におけるHf濃度を5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満とすることにより、イオン注入量を効果的に減少させつつ、閾値電圧Vthを所望の電圧に確実に調整することが可能となった。
【0071】
なお、図1に示した半導体装置100においては、ゲート絶縁膜としてSiON膜113が設けられているため、多結晶シリコン膜106中に存在する不純物元素のシリコン基板101への拡散を抑制することができる。このため、P型MOSFET103の閾値電圧のばらつきを確実に低減させることができる。なお、ゲート絶縁膜の別の構成については、第五の実施形態において後述する。
【0072】
また、半導体装置100においては、チャネル領域105にチャネル不純物をドープしないか、またはドープするチャネル不純物量の低減が可能であるため、P型MOSFET103のIon(オン電流)を増加させることができる。また、GIDL電流の発生を抑制することができ、また、基板電圧印加時の基板電流を抑制することができる。このため、P型MOSFET103は、トランジスタとしての特性に優れた構成となっている。
【0073】
なお、P型MOSFET103において、あらかじめ定めた閾値電圧の値に応じて、チャネル不純物導入量を0(ゼロ)とする場合も含めて、界面115におけるHfの存在量とチャネル領域105へのチャネル不純物導入量とを調節することが可能である。
【0074】
また、図1に示した半導体装置100は、上記特許文献1に記載の方法とは異なり、ゲート酸化膜厚を変化させることなく半導体装置を製造できるため、既存の成膜プロセスの適用範囲が広く、プロセスコストの面で有利である。
【0075】
なお、多結晶シリコン膜106とSiON膜113との界面115に、微量のHf元素が存在することによる閾値電圧の上昇は、以下の原理によるものと推察される。多結晶シリコン膜106とSiON膜113との界面115にHfが存在すると、界面115においてHfが多結晶シリコン膜106中のSiと結合してゲート電極膜の表面にHf−Si結合が形成される。すると、界面115において前述したフェルミレベルのピンニングが生じる。Hfの場合、Siのコンダクションバンドから0.3eVの位置にフェルミ準位が形成される。このピンニングにより、ゲート電極膜の空乏化が生じ、P型MOSFET103の閾値電圧が上昇する。
【0076】
このとき、ゲート電極膜である多結晶シリコン膜106の空乏領域の幅は、界面115におけるHfの存在量が増加するほど大きくなる。また、P型MOSFET103の閾値電圧と界面115におけるHfの存在量とには正の相関があり、界面115におけるHfの濃度の増加に伴い閾値電圧が連続的に上昇する。このため、界面115におけるHfの存在量と閾値電圧の上昇度との関係をあらかじめ把握しておくことができる。
【0077】
また、界面115におけるHfの存在量は、ALD法における前述した(i)〜(iv)の繰り返し回数に関連づけてあらかじめ実験により取得される。したがって、P型MOSFET103に求める閾値電圧の大きさから対応するHfの存在量を設定し、設定されたHfの存在量に基づいて、あらかじめ取得されたALDプロセスの繰り返し回数と界面115におけるHf量との関連を参照してALDプロセスにおける繰り返し回数を決定し、決定された回数ALDサイクルを繰り返すことにより、所望の閾値電圧に対応したP型MOSFET103を確実に得ることができる。
【0078】
また、従来の半導体装置において、前述したように、ゲート絶縁膜としてHf等を含む高誘電率膜を多結晶シリコンゲート電極に接して設ける構成が採用されている。発明者がこの構成についてもHf量と閾値電圧の関係について検討したところ、この構成においては、P型MOSFET103における閾値調節効果が生じなかった。これは、多結晶シリコンゲート電極の表面に高誘電率膜が層状に形成されている場合、多結晶シリコンゲート電極の表面におけるHfの濃度が高濃度、たとえば1.4×1015atoms/cm2よりも高い濃度、であるためと推察される。また、高誘電率膜を作製するためには、前述したALDの繰り返しサイクル(i)〜(iv)を22回よりも多く繰り返し行う必要があった。このため、こうした成膜条件により得られるHfが高濃度存在する構成においては、閾値電圧は所望の値よりも高く、さらに飽和しているため、Hf濃度を変化させても閾値電圧の変動が生じにくく、閾値電圧を調節することができなかったものと推察される。
【0079】
なお、P型MOSFET103において、多結晶シリコン膜106とSiON膜113との界面115に微量のHfが存在する構成を例示したが、界面115に存在する微量金属は、Hfに限られず、多結晶シリコン膜106等のSiを含むゲート電極を用いた際に、閾値電圧の上昇を生じる他の金属を用いることも可能である。
【0080】
界面115に存在させる金属として、Hf、Zr、Al等のポリシリコン中でフェルミレベルのピンニングが生じることが知られた金属;
La、Pr等のランタノイド金属やY等の絶縁膜の高誘電率化に用いられる金属;および
Ta、TiおよびW等の、フェルミ準位における電位がシリコンのミッドギャップ近傍、すなわち、シリコンの伝導帯および荷電子帯の中間値の近傍に位置する金属;
が挙げられる。絶縁膜の高誘電率化に用いられる金属や、フェルミ準位における電位がシリコンのミッドギャップ近傍に位置する金属についても、前述した低濃度範囲で界面115に存在させることにより、Hf、Zr、Al等の金属の場合と同様に閾値電圧の調整が可能である。
【0081】
また、界面115には、上記金属のうち、Hf、Zr、Al、La、Pr、およびYからなる群から選択される一または二以上の金属が存在する構成とすることが好ましい。これらの金属を界面115に存在させることにより、P型MOSFET103の閾値電圧の調節をさらに確実に行うことが可能となる。また、界面115には、上記金属のうち、Hf、Zr、およびAlからなる群から選択される一または二以上の金属が存在する構成とすることがさらに好ましい。こうすることにより、より一層精度よく確実にP型MOSFET103の閾値電圧を調整することができる。
【0082】
また、多結晶シリコン膜106の導電型がP型のP型MOSFET103においては、これらの金属のうち、HfまたはZrを用いることが好ましい。HfまたはZrはポリシリコン中でフェルミレベルのピンニングが生じることが知られた元素であるとともに、多結晶シリコン膜106の導電型がP型のトランジスタにおいて閾値電圧の上昇度が大きいとされている。このため、HfまたはZrを用いることにより、P型MOSFET103の閾値電圧の調節の自由度を高めることができる。
【0083】
なお、界面115に複数の上記金属が存在する場合、それぞれの金属について、界面115における濃度を5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満とする。
【0084】
また、以上においては、界面115におけるHfの濃度を5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満とする構成について説明したが、多結晶シリコン膜106に直接接するゲート絶縁膜であるSiON膜113中に、Hfが5×1013atoms/cm3以上1.4×1015atoms/cm3未満の濃度で存在する構成とすることもできる。この構成とした場合にも、界面115におけるHfの濃度を5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満とすることができるため、フェルミレベルのピンニングを界面115において意図的に生じさせることが可能である。
【0085】
また、SiON膜113中のHf濃度を上記濃度範囲とすることにより、チャネル領域105へのイオン注入量と適宜組み合わせてP型MOSFET103の閾値電圧を所望の値に確実に調節することが可能である。なお、ゲート絶縁膜中にHfが5×1013atoms/cm3以上1.4×1015atoms/cm3未満の濃度で存在する構成については、第五の実施形態においても図7(d)および図7(e)を参照して説明する。
【0086】
また、P型MOSFET103は、CMOSを構成する一方のトランジスタとすることもできる。こうすれば、CMOS中のトランジスタのオン電流を向上させることができる。また、GIDL電流の低減および閾値のばらつきの低減が可能である。
【0087】
(第二の実施形態)
本実施形態に係る半導体装置の構成は、第一の実施形態の半導体装置100と同様である。本実施形態では、界面115へのHf元素の付着工程(図2(c))を、CVD法により行う。
【0088】
CVD法を用いる場合、SiON膜113上にHf原料をN2ガス等の不活性ガスやSiH4等のガスで希釈して供給する。なお、希釈用のガスとしてSiを含むガスを用いる場合については、第五の実施形態において後述する。Hf原料を希釈して供給することにより、供給ガス中のHf原料の分圧を低下させることができる。これにより、SiON膜113表面へのHfの付着量を低減させることができる。具体的には、供給ガス量全体におけるHfの濃度をたとえば1原子%以上50原子%以下とする。
【0089】
この後、第一の実施形態において図3(a)〜図3(c)を参照して説明したのと同様の処理を行うことにより、図1に示した半導体装置100を得ることができる。本実施形態においても、第一の実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
(第三の実施形態)
以上の実施形態においては、P型MOSFET103が設けられた半導体装置100の構成を例に説明したが、本発明の構成は、多結晶シリコン膜106の導電型がN型のMOSFETにも適用可能である。N型のMOSFETにおいても、以下の構成とすることにより、オン電流の向上が可能である。また、GIDL電流の低減や基板電圧印加時の基板電流低減が可能である。また、閾値電圧のばらつきの抑制が可能である。
【0091】
図4は、本実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示す図である。図4に示した半導体装置118は、シリコン基板101上にP型MOSFET103(図1)に代えてN型MOSFET129が設けられている点が図1に示した半導体装置100と異なる。
【0092】
N型MOSFET129においては、図1に示したP型MOSFET103のNウェル104に代えてPウェル131が形成されている。また、不純物拡散領域110に代えて、N型の不純物が拡散した不純物拡散領域117が設けられている。また、多結晶シリコン膜106にPやAs等のN型の不純物が拡散している構成とする。
【0093】
本実施形態においても、第一または第二の実施形態に記載の方法を用いて半導体装置118を製造することができる。たとえば、第一の実施形態において説明してALD法により界面115にAl原子を存在させる場合、上記(ii)のシーケンスにおいて原料ガスとしてHfCl4に代えてトリメチルアルミニウムを用いる。そして、上記(ii)〜(iv)のシーケンスを10回繰り返す。このとき、界面115におけるAl23中のAlの濃度を8×1014atoms/cm2程度とすることができる。
【0094】
界面115に存在させる金属の種類として、第一の実施形態において列挙した一または二以上の元素が挙げられる。また、N型MOSFET129においては、これらの金属のうち、Alを用いることが好ましい。Alはフェルミレベルのピンニングが生じることが知られた元素である。また、多結晶シリコン膜106の導電型がN型のトランジスタにおいて閾値電圧の上昇度が大きい。このため、Alを用いることにより、多結晶シリコン膜106の導電型がN型のN型MOSFET129の閾値電圧の調節の自由度を確実に高めることができる。
【0095】
また、半導体装置118において、界面115に存在する金属の種類をHfまたはZrとしてもよい。これにより、SiON膜113の電気的膜厚の低減が可能である。このため、N型MOSFET129のオン電流の向上が可能となる。
【0096】
(第四の実施形態)
本実施形態は、以上の実施形態に記載の半導体装置を用いたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイスに関する。図5は、本実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る半導体装置は、P型MOSFET103(図1)および素子分離領域102を介してP型MOSFET103に並置されたN型MOSFET129(図4)からなるCMOSデバイスを備える。このCMOSデバイスは、LSIの内部回路を構成する。
【0097】
図5に示した半導体装置において、P型MOSFET103の界面115とN型MOSFET129の界面115には、種類および濃度が共通する金属が存在している構成とすることができる。こうすれば、P型MOSFET103およびN型MOSFET129のいずれの閾値電圧をも上昇させることができる。このため、両トランジスタの閾値電圧の調整を界面115に存在させる金属濃度およびチャネル領域105中の不純物濃度の調整により調節することが可能となるとともに、N型MOSFET129におけるオン電流の向上効果が得られる。
【0098】
また、このとき、P型MOSFET103の界面115とN型MOSFET129の界面115の所定の金属元素の濃度が等しい構成とすることができる。これにより、製造プロセスの簡素化が可能となる。たとえば、これらの界面115にいずれもHfが2×1014atoms/cm2の濃度で存在する構成とする。この場合、P型MOSFET103の閾値電圧は0.2V高くなるとともに、N型MOSFET129の閾値電圧は0.15V高くなる。
【0099】
このため、界面115に存在させる金属量の調整によりN型MOSFET129およびP型MOSFET103の閾値を高くできる。そして、この閾値の上昇の程度を調節することにより、基板不純物注入なしの自在の調整が可能となる。また、半導体装置に対して求められる閾値電圧を界面115に存在する微量金属およびチャネル不純物量を用いて制御することによって、チャネル不純物量のみで閾値を制御する場合よりチャネル不純物量を減らすことが可能である。その結果、CMOSにおけるオン電流の増加、GIDL電流の低下、そして、基板電圧印加時の基板電流抑制が可能である。
【0100】
また、これらの界面115に、共通する金属が複数存在する構成とすることができる。こうすれば、P型MOSFET103およびN型MOSFET129のそれぞれの閾値電圧の調整をさらに確実に行うことが可能となる。たとえば、これらの界面115にいずれもHfが1×1014atoms/cm2の濃度で存在するとともに、いずれの界面115にもAlが1×1014atoms/cm2の濃度で存在する構成とすることができる。
【0101】
また、図5に示した半導体装置において、P型MOSFET103の界面115とN型MOSFET129の界面115にはそれぞれ異なる種類の金属が存在している構成とすることができる。具体的には、P型MOSFET103の界面115にHfが存在し、N型MOSFET129の界面115にAlが存在する構成とする。こうすれば、これらのトランジスタの閾値電圧の調節の自由度をより一層高めることができる。なお、このとき、P型MOSFET103の界面115にHfに代えてZrが存在する構成としてもよい。
【0102】
なお、本実施形態においては、CMOSFETの閾値電圧を制御する場合を例に説明したが、同じ導電型の複数のMOSFETが同一基板上に設けられた構成とすることもできる。この場合にも、界面115に存在する金属の種類および濃度を、第一〜第三の実施形態にて前述した濃度範囲で共通とし、少なくとも一つのMOSFETのチャネル領域中の不純物濃度が、他のMOSFETのチャネル領域中の不純物濃度と異なる構成とすることにより、CMOSFETの場合と同様の効果が得られる。
【0103】
(第五の実施形態)
以上の実施形態に記載の半導体装置においては、SiON膜113と多結晶シリコン膜106とが積層され、これらの界面115に所定の金属が所定の濃度存在する構成とした。ここで、ゲートの構造は、以下のようにすることもできる。
【0104】
図6(a)〜図6(c)および図7(a)〜図7(e)は、以上の実施形態に記載の半導体装置のゲートとして適用可能な構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【0105】
図6(a)は、以上の実施形態に記載のトランジスタのゲートの構成に対応する。図6(b)は、SiON膜113上にSi含有ゲート電極膜として、シード層であるα−Si膜121、ポリSiGe膜119および多結晶シリコン膜106がこの順に積層されており、SiON膜113とα−Si膜121との界面115に微量のHf等が存在する構成である。ポリSiGe膜119を用いることにより、ゲート電極膜の反転膜厚の低減が可能となる。また、この構成においても、Siを含むゲート電極膜とゲート絶縁膜との間、すなわち界面115に微量のHf元素が存在するため、以上の実施形態と同様に、フェルミレベルピンニングを意図的に生じさせてトランジスタの閾値電圧を調整することが可能である。
【0106】
また、図6(c)では、図6(a)に示した構成において、多結晶シリコン膜106に代えてNiSi膜123が設けられている。この構成においても、以上の実施形態と同様に、閾値電圧の調節が可能となる。また、NiSi膜123を用いることにより、従来のメタルゲート電極の場合に生じる反転膜厚の低減化が可能となる。なお、図6(c)に示した構成において、NiSi膜123の形成は、たとえば以下のようにして行う。まず、図3(c)に示した工程の後、スパッタ法などによりNiを堆積して全面に金属膜を形成する。そして、熱処理を行って、Niと多結晶シリコン膜106とを反応させて(シリサイド化反応)、ゲート電極をNiSi膜123とする。その後、絶縁膜上などに残された未反応Ni膜を薬液によりエッチング除去する。
【0107】
また、以上においては、ゲート電極膜の構成を例示したが、ゲート絶縁膜の構成についても上記以外の構成とすることができる。図7(a)〜図7(e)は、ゲート絶縁膜の構成のバリエーションを示す図である。
【0108】
図7(a)は、以上の実施形態に記載のトランジスタのゲート絶縁膜の構成に対応する。図7(b)は、チャネル領域105(不図示)上にSiON膜113、高誘電率膜127、SiON膜113、および多結晶シリコン膜106がこの順に積層された構成である。SiON膜113、高誘電率膜127およびSiON膜113の積層膜がゲート絶縁膜である。SiON膜113と多結晶シリコン膜106との界面115に微量のHf等の金属を存在させる。
【0109】
また、図7(c)は、チャネル領域105(不図示)上に高誘電率膜127、SiON膜113および多結晶シリコン膜106がこの順に積層された構成である。高誘電率膜127およびSiON膜113の積層膜がゲート絶縁膜である。SiON膜113と多結晶シリコン膜106との界面115に微量のHf等の金属を存在させる。
【0110】
図7(b)および図7(c)に示した構成において、高誘電率膜127は、酸化シリコンよりも比誘電率の高い膜であり、いわゆるhigh−k膜を用いることができる。高誘電率膜127は、比誘電率が6以上の材料により構成することができる。具体的には、高誘電率膜127は、それぞれ、HfおよびZrからなる群から選択される一または二以上の金属元素を含む材料により構成することができ、これらのいずれかの金属元素を含む酸化膜、シリケート膜等とすることができる。
【0111】
高誘電率膜127は、CVD法やALD法(原子層堆積法)等により成膜することができる。本実施形態では、高誘電率膜127としてハフニウムシリケートを採用する。この成膜は、有機ハフニウム原料ガス、酸化性ガスおよびシリコン含有ガスを用いて行う。成膜ガス中の各成分の流量を適宜制御することにより、形成される高誘電率膜127中の拡散元素の濃度を所望の値とすることができる。成膜ガスとして、たとえばHTB(Hf(Ot−Bu)4)およびモノシラン(SiH)を用いることができる。
【0112】
図7(b)および図7(c)においては、ゲート絶縁膜中に多結晶シリコン膜106に直接接触しないように高誘電率膜127が設けられている。このため、界面115に存在する金属量の調整を確実に行うことが可能な構成としつつ、ゲート絶縁膜の比誘電率を高くすることができるとともに、良好な耐熱性を付与することができる。そのため、閾値電圧の自由度の拡大およびMOSFETのサイズ縮小化、信頼性向上に寄与することができる。
【0113】
また、図7(b)に示したように、高誘電率膜127とチャネル領域105(不図示)との間にもSiON膜113を設けることにより、高誘電率膜127中に含まれる金属元素の拡散を好適に抑制することができる。このため、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0114】
また、図7(d)および図7(e)は、ゲート絶縁膜として、多結晶シリコン膜106に接する閾値電圧調整膜125が設けられた構成である。閾値電圧調整膜125は、ここでは、Hfが5×1013atoms/cm3以上1.4×1015atoms/cm3未満の濃度で存在する膜である。なお、閾値電圧調整膜125は、多結晶シリコン膜に接して設けられた場合に、閾値電圧を上昇させる元素を含む絶縁膜であればよい。このため、Hfに代えて、第一の実施形態において列挙した一または二以上の金属が存在する構成とすることもできる。
【0115】
図7(d)では、ゲート絶縁膜が、SiON膜113および閾値電圧調整膜125の積層膜となっており、閾値電圧調整膜125に接して多結晶シリコン膜106が設けられている。また、図7(e)では、ゲート絶縁膜が、高誘電率膜127および閾値電圧調整膜125の積層膜となっており、閾値電圧調整膜125に接して多結晶シリコン膜106が設けられている。閾値電圧調整膜125は、たとえば、Hf濃度が5×1013atoms/cm3以上1.4×1015atoms/cm3未満のハフニウムシリケート膜とする。
【0116】
図7(d)および図7(e)に示した構成は、以下のようにして製造される。まず、図2(a)および図2(b)を参照して前述した方法によりSiON膜113または高誘電率膜127を成膜した後、SiON膜113または高誘電率膜127上に閾値電圧調整膜125を設ける。そして、図3(a)〜図3(c)を参照して前述した工程を行う。
【0117】
閾値電圧調整膜125の成膜には、たとえば、CVD法が用いられる。CVD法において、閾値電圧調整膜125中のHf濃度を微量に調節する必要がある。このため、閾値電圧調整膜125の成膜は、高誘電率膜127の成膜条件では行うことができず、異なる条件が必要となる。そこで、原料ガスとして、有機ハフニウム原料ガスおよびシリコン含有ガスが用いられ、有機ハフニウム原料ガスがシリコン含有ガスにより希釈される。これにより、得られた閾値電圧調整膜125中のHf濃度をSiにより充分に希釈することができる。
【0118】
具体的には、シリコン含有ガスとしてモノシラン(SiH4)を用いる場合、供給される原料ガス全体のHf濃度を1原子%以上50原子%以下とする。ここで、酸化性ガスとして酸素等、シリコン含有ガスとしてモノシラン(SiH4)等を用いることができる。閾値電圧調整膜125の膜厚は、たとえば0.3nm以上3nm以下とする。
【0119】
図7(d)および図7(e)に示した構成では、ゲート絶縁膜のうち、多結晶シリコン膜106に接する層中にHfが微量に存在する構成となっている。このため、上記実施形態と同様に、Hfの濃度の調節によるトランジスタの閾値電圧の調節が可能となる。なお、閾値電圧調整膜125の原料となるシリコン含有ガスとしてジシラン(Si26)を用いることもできる。
【0120】
なお、本実施形態において、高誘電率膜127としてHf、Zrなどの酸化膜、シリケート膜、酸窒化膜等を用いることもできる。
【0121】
また、本実施形態においても、複数の同じ導電型の複数のMOSFETが同一基板上に設けられた構成とすることができる。複数のMOSFETのゲート絶縁膜中に存在する金属の種類および濃度を、上記濃度範囲で共通とし、少なくとも一つのMOSFETのチャネル領域中の不純物濃度が、他のMOSFETのチャネル領域中の不純物濃度と異なる構成としてもよい。
【0122】
また、本実施形態の構成をCMOSFETに適用する場合にも、N型MOSFETとP型MOSFETについて、ゲート絶縁膜中に存在する金属の種類および濃度を上記濃度範囲で共通とし、N型MOSFETのチャネル領域中の不純物濃度が、P型MOSFETのチャネル領域中の不純物濃度と異なる構成としてもよい。
【0123】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0124】
たとえば、以上の実施形態において、界面115に存在する金属元素の濃度は、たとえばEELS(電子エネルギー損失分光法)やSIMS(二次イオン質量分析装置)により測定することができる。
【0125】
また、以上の実施形態において、ゲート絶縁膜として、SiON膜113に代えてSiO2膜を用いてもよい。
【実施例】
【0126】
(実施例1)
本実施例では、第一の実施形態に記載のP型MOSFET103(図1)および第三の実施形態に記載のN型MOSFET129(図4)において、界面115に存在させる金属元素をHfとし、その濃度を変化させた際のMOS型トランジスタの閾値電圧変化について検討した。SiON膜113表面へのHfの付着には、前述したALD法を用いた。このとき、化学吸着シーケンスの繰り返し回数を変化させてHf付着量を変化させることにより、界面115におけるHf濃度を変化させた。
【0127】
図8は、N型MOSFET129(図4)における界面115のHf濃度と閾値電圧変化との関係を示す図である。また、図9は、P型MOSFET103(図1)における界面115のHf濃度と閾値電圧変化との関係を示す図である。図8および図9より、界面115におけるHf濃度を変化させることにより、MOS型トランジスタの閾値電圧の値の調節が可能であった。
【0128】
なお、図8および図9においては、一回の化学吸着シーケンスで界面115に付着するHf濃度が2×1014atoms/cm2である装置を用いた。
【0129】
(実施例2)
本実施例は、図5に示したCMOSデバイスに関する。本実施例では、P型MOSFET103の閾値電圧を−0.35Vとするとともに、N型MOSFET129の閾値電圧を0.35Vとする。
【0130】
このとき、P型MOSFET103およびN型MOSFET129の作製時に、SiON膜113上に1×1015atoms/cm2のHfをALD法により付着させる。これにより、P型MOSFET103およびN型MOSFET129の閾値電圧は、チャネル不純物の注入なしで、それぞれ−0.35Vおよび0.18Vとなる。
【0131】
そこで、目標の閾値電圧にするために、N型MOSFET129のチャネル領域105に、Bを5×1012atoms/cm2注入する。これにより、P型MOSFET103およびN型MOSFET129のそれぞれについて、設定された閾値電圧(それぞれ−0.35V、0.35V)を有するCMOSデバイスが得られる。
【0132】
本実施例では、P型MOSFET103のチャネル不純物の注入なしで、所望の閾値電圧が得られる。また、N型MOSFET129についても、不純物の注入量を低減することができる。このため、これらのトランジスタは、オン電流特性に優れる。また、これらのトランジスタは、GIDL電流の増加を抑制でき、そして、基板電圧印加時の基板電流を抑制できる。さらに、これらのトランジスタでは、閾値電圧を精度よく調節することが可能であり、そのばらつきが抑制される。
【0133】
(実施例3)
本実施例においては、第四の実施の形態の最後に記載した、同じ導電型の複数のMOSFETが同一基板上に設けられた半導体装置について説明する。図10は、本実施例に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。つまり、ゲート絶縁膜やゲート電極などのトランジスタ構造を同一にしながら、チャネル領域に注入する不純物量のみを変化させることにより、閾値電圧の異なる2種類のN型MOSFETを同一基板上に作成する例である。ここでは、N型MOSFET(A)の閾値電圧を、たとえば0.35V、N型MOSFET(B)の閾値電圧を、たとえば0.45Vと設定した。このように閾値電圧の異なるMOSFETを同一基板上に作成し、動作速度が要求されない回路に比較的高い閾値電圧のMOSFETを適用することは、低い閾値電圧のMOSFETのみで全体の回路を構成する場合と比較して、サブスレッショルドリーク起因のスタンバイ消費電力を削減することができ、有効である。
【0134】
まず、図10(a)に示すように、素子形成領域を確定した後にPウェル201、N型MOSFET(A)のチャネル領域202およびN型MOSFET(B)のチャネル領域203をBイオンの注入により形成する。後述するように、本実施例では、SiON膜204上に2×1014atoms/cm2のHfをALD法により付着させる。従って、この場合はN型MOSFET(A)のチャネル領域202にはBを6×1012atoms/cm2、N型MOSFET(B)のチャネル領域203にはBを9×1012atoms/cm2注入して、それぞれのN型MOSFETの閾値電圧が前記の所望の値となるようにする。
【0135】
本実施例における閾値電圧の設計の考え方を図11に示す。Hfを2×1014atoms/cm2の面密度でSiON膜204上に付着させることで閾値電圧が0.15V上昇する。N型MOSFET(A)のチャネル領域202には6×1012atoms/cm2のBが注入されているので、N型MOSFET(A)の閾値電圧は0.35Vとなる。同様に、N型MOSFET(B)のチャネル領域203には9×1012atoms/cm2のBが注入されているので、N型MOSFET(B)の閾値電圧は0.45Vとなる。
【0136】
つまり、同一導電型のN型MOSFET(A)および(B)に対し、Hfを同じ面密度となるようにSiON膜204上に付着させる。これにより、N型MOSFET(A)および(B)の、Hfに起因する閾値電圧のシフト量が同じになる。その上で、N型MOSFET(A)および(B)のそれぞれのチャネル領域への不純物導入量を変えることにより、閾値電圧が異なる2つのMOSFETを作成する。それぞれ閾値電圧が異なる3つ以上のMOSFETを作成する場合も、同様に、それぞれのMOSFETのSiON膜204に付着させるHfの面密度を同一にし、チャネル領域への不純物導入量をそれぞれ変えて閾値電圧を調整すればよい。このようにして、同一導電型で閾値電圧の異なる複数のMOSFETについて、閾値電圧の調整を、ゲート絶縁膜上への金属の付着による一定値の調整と、チャネル領域への不純物導入による個別調整の2段階で行う。
【0137】
なお、ここではHfを例に説明したが、第3の実施の形態にて述べた他の金属に変えてもよい。また、N型MOSFETで説明したが、P型MOSFETでも同様に閾値電圧を調整できる。
【0138】
前述のようにして、それぞれのN型MOSFETの閾値電圧は所望の値に設定される。Hfを付着させることにより、どちらのN型MOSFETにおいてもBの注入量を4.5×1012atoms/cm2減らすことができたことになる。この結果、反転層中における不純物散乱の効果が低減されて移動度が増大し、オン電流が増大した。また、ドレイン端近傍の縦方向電界が緩和されることでGIDLおよび基板電圧印加時の基板電流が低減された。
【0139】
図10(a)のチャネル領域へのBイオン注入に引き続き、図10(b)に示すようにSiON膜204を成膜した後、前述のようにALD法によりHfを2×1014atoms/cm2付着させて、Hf付着層205を形成する。引き続き多結晶シリコン膜206を成膜する。
【0140】
次に、図10(c)に示すように多結晶シリコン膜206のパターニングに続いて、Hf付着層205、SiON膜204のパターニングを行い、窒化シリコンより成る膜厚2nmの側壁バリア膜207を形成する。さらに、エクステンション領域を形成するためヒ素を10KeV、2×1014atoms/cmの条件でイオン注入し、N型拡散層208を形成する。
【0141】
次に、側壁絶縁膜209を形成する。引き続きヒ素を30KeV、5×1015atoms/cmの条件でイオン注入する。これによりN型拡散層208のソース・ドレイン領域における接合深さを深くする。
【0142】
以上の工程で、閾値電圧が互いに異なる2種類のN型MOSFETが同一基板上に作成される(図10(d))。SiON上にHfの付着を行うことでそれぞれのN型MOSFETにおけるチャネル領域中の不純物濃度が低減され、チャネル領域の不純物のみで閾値電圧を設定した場合と比較してオン電流が増大し、さらにGIDLおよび基板電圧印加時の基板電流が低減された。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における半導体装置のトランジスタのゲートの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における半導体装置のトランジスタのゲートの構成を示す断面図である。
【図8】実施例のN型MOSFETにおけるHf濃度と閾値電圧変化との関係を示す図である。
【図9】実施例のP型MOSFETにおけるHf濃度と閾値電圧変化との関係を示す図である。
【図10】本実施例における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図11】本実施例におけるHf付着量に対応した、チャネル領域への不純物注入量を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0144】
100 半導体装置
101 シリコン基板
102 素子分離領域
103 P型MOSFET
104 Nウェル
105 チャネル領域
106 多結晶シリコン膜
107 犠牲酸化膜
108 側壁絶縁膜
110 不純物拡散領域
111 側壁バリア膜
113 SiON膜
115 界面
117 不純物拡散領域
118 半導体装置
119 ポリSiGe膜
121 α−Si膜
123 NiSi膜
125 閾値電圧調整膜
127 高誘電率膜
129 N型MOSFET
131 Pウェル
140 エクステンション領域
201 Pウェル
202 N型MOSFET(A)のチャネル領域
203 N型MOSFET(B)のチャネル領域
204 SiON膜
205 Hf付着層
206 多結晶シリコン膜
207 側壁バリア膜
208 N型拡散層
209 側壁絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に設けられたSi含有ゲート電極と、
前記半導体基板と前記Si含有ゲート電極との間に設けられ、前記Si含有ゲート電極と接するゲート絶縁膜と、
を含む複数の電界効果型トランジスタを備え、
前記複数の電界効果型トランジスタにおいては、前記Si含有ゲート電極と前記ゲート絶縁膜との界面に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属が存在し、
前記界面における前記金属の濃度が5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満であり、
少なくとも1つの前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度は、他の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記複数の電界効果型トランジスタは、複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタを含み、
前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタの前記界面が、種類および濃度が共通の前記金属を含み、
前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる一の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる他の前記電界効果型トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度とが異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記複数の電界効果型トランジスタは、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、
前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記界面と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記界面とは、共通する前記金属を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に設けられたSi含有ゲート電極と、
前記半導体基板と前記Si含有ゲート電極との間に設けられ、前記Si含有ゲート電極と接するゲート絶縁膜と、
を含む複数の電界効果型トランジスタを備え、
前記複数の電界効果型トランジスタにおいては、前記ゲート絶縁膜に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属が存在し、
前記ゲート絶縁膜における前記金属の濃度が5×1013atoms/cm3以上1.4×1015atoms/cm3未満であり、
少なくとも1つの前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度は、他の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、前記ゲート絶縁膜は、前記金属およびSiを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の半導体装置において、
前記複数の電界効果型トランジスタは、複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタを含み、
前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜が、種類および濃度が共通の前記金属を含み、
前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる一の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる他の前記電界効果型トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度とが異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項4または5に記載の半導体装置において、
前記複数の電界効果型トランジスタは、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、
前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記ゲート絶縁膜とは、共通する前記金属を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、前記金属としてAlを含むNチャネル電界効果型トランジスタを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至7いずれかに記載の半導体装置において、前記複数の電界効果型トランジスタは、前記金属としてHfまたはZrを含むPチャネル電界効果型トランジスタを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に設けられたSi含有ゲート電極と、
前記半導体基板と前記Si含有ゲート電極との間に設けられ、前記Si含有ゲート電極と接するゲート絶縁膜と、
を含む電界効果型トランジスタを備え、
前記Si含有ゲート電極と前記ゲート絶縁膜との界面に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属が存在し、
前記界面における前記金属の濃度が5×1013atoms/cm2以上1.4×1015atoms/cm2未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
複数の同じ導電型の前記電界効果型トランジスタを含み、
前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタの前記界面が、種類および濃度が共通の前記金属を含み、
前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる一の前記電界効果トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度と、前記複数の同じ導電型の電界効果型トランジスタに含まれる他の前記電界効果型トランジスタのチャネル領域中の不純物濃度とが異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体装置において、
複数の前記電界効果型トランジスタを含み、
前記複数の電界効果型トランジスタが、Nチャネル電界効果型トランジスタと、Pチャネル電界効果型トランジスタとを含み、
前記Nチャネル電界効果型トランジスタの前記界面と、前記Pチャネル電界効果型トランジスタの前記界面とは、共通する前記金属を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれかに記載の半導体装置において、前記Si含有ゲート電極がNiまたはGeを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項1乃至13いずれかに記載の半導体装置において、前記ゲート絶縁膜がSiON膜を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
所定の導電型のウェルが形成された半導体基板にチャネル領域を形成する工程と、
前記チャネル領域上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属を前記ゲート絶縁膜に接するように存在させる工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、Si含有ゲート電極膜を前記金属に接するように設ける工程と、
を含む電界効果型トランジスタの製造方法であって、
当該電界効果型トランジスタの閾値電圧をあらかじめ設定するとともに、前記ゲート絶縁膜と前記Si含有ゲート電極膜との界面における前記金属の濃度と当該電界効果型トランジスタの閾値電圧の上昇量との関係をあらかじめ取得し、
前記関係に基づいて、前記閾値電圧に対応する前記チャネル領域中の不純物の注入量と前記金属の前記濃度とを決定し、
決定された前記注入量および前記濃度に基づいて当該電界効果型トランジスタを製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
所定の導電型のウェルが形成された半導体基板にチャネル領域を形成する工程と、
前記チャネル領域上に、Hf、Zr、Al、La、Pr、Y、Ti、TaおよびWからなる群から選択される一または二以上の金属を含むゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜に接し、Si含有ゲート電極膜を形成する工程と、
を含む電界効果型トランジスタの製造方法であって、
当該電界効果型トランジスタの閾値電圧をあらかじめ設定するとともに、前記ゲート絶縁膜中の前記金属の濃度と当該電界効果型トランジスタの閾値電圧の上昇量との関係をあらかじめ取得し、
前記関係に基づいて、前記閾値電圧に対応する前記チャネル領域中の不純物の注入量と前記金属の前記濃度とを決定し、
決定された前記注入量および前記濃度に基づいて当該電界効果型トランジスタを製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−93670(P2006−93670A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237209(P2005−237209)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】