説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ソース/ドレイン拡散層に形成されるシリサイド層のスパイクやコンタクトの突き抜けを抑制して、接合リークの発生を低減するとともに、シリサイド層を低抵抗化した半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、半導体基板10の上に形成されたトランジスタを有する。トランジスタのゲート電極は、ポリシリコン電極14とその上に形成されたシリサイド層32から構成される。さらに、低濃度ドーピング領域16、高濃度ドーピング領域からなるソース/ドレイン拡散層20、ソース/ドレイン拡散層20上のシリサイド層30を備える。シリサイド層30の表面は、半導体基板10の表面よりも上方に位置している。また、シリサイド層30はシリサイド化反応抑制金属を含み、シリサイド層30の表面から所定の深さに至る領域において、シリサイド層30の表面から基板側へ向かってシリサイド化反応抑制金属の濃度が高くなる濃度プロファイルを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関する。特に、シリサイド層を備える半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路を形成する半導体素子、例えばMOSトランジスタにおいては、コンタクト抵抗を低減するために、ソース/ドレイン拡散層およびゲート電極上にシリサイド層が形成される。シリサイド層としては、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド等が用いられる。特に近年では、耐熱性向上の観点から、Ptを添加したニッケルシリサイドが用いられる。
【0003】
以下、シリサイド層にPt添加ニッケルシリサイドを用いた従来の半導体装置の製造方法を図9および図10により説明する。
【0004】
半導体基板60の上に素子分離領域62(Shallow Trench Isolation;STI)を周知の方法により形成する。次に素子形成領域において、熱酸化膜からなるゲート絶縁膜(不図示)とポリシリコン電極66を形成する。その後に、例えばn型不純物をイオン注入することにより低濃度ドーピング領域64(LDD領域)を形成する。
【0005】
次に全面に酸化膜を成膜し、異方性エッチングをおこなって、ポリシリコン電極の側面にサイドウォール68を形成する。次に、n型不純物をイオン注入することにより、高濃度ドーピング領域であるソース/ドレイン拡散層70を形成する(図9(a))。
【0006】
次に、全面にNiPt合金膜72をスパッタ法により膜厚8nm程度、成膜する(図9(b))。NiPt合金膜72のPt含有量は通常約5%である。
【0007】
次に、温度375℃で熱処理を行って、1次シリサイド層74、76を形成する(図9(c))。この工程で形成されるシリサイド層は、Ptが添加されたNiSiである。
【0008】
次に、王水でウェットエッチングすることにより、未反応のNiPt合金膜を除去する(図10(a))。これにより、ソース/ドレイン拡散層70の表面、およびゲート電極の表面にPtが約5%添加されたNiSiからなるシリサイド層74、76が形成される。
【0009】
次に、500℃の高温で熱処理することにより、シリサイド層はPt添加NiSiとなる。こうして、ゲート電極上のPt添加NiSiからなるシリサイド層82、ソース/ドレイン拡散層70上のPt添加NiSiからなるシリサイド層80が形成される(図10(b))。
【0010】
続いて、周知の方法により、全面に層間絶縁膜84を成膜した後、ドライエッチングでコンタクトホールを形成する。そして、コンタクトホールをW等の金属で埋め込んでからCMP法で平坦化して、コンタクトプラグ86を形成する(図10(c))。これにより、従来の半導体装置が得られる。通常は、半導体装置の上層にさらに多層配線層が形成されるが、ここでは省略する。
【0011】
上述の製造方法で形成された半導体装置におけるシリサイド層80では、添加されたPt濃度は膜中で均一な分布となる。また、シリサイド層80の表面は、半導体基板60の表面と実質的に同一平面に位置する。
【0012】
なお、上記の製造方法に(類似の)公知文献として、特許文献1が挙げられる。特許文献1ではEr添加ニッケルシリサイドを形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−067225号公報
【特許文献2】特開2005−142422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、半導体素子の微細化が進展するに従い、MOSトランジスタのソース/ドレイン拡散層70を形成する不純物拡散層のpn接合は浅くなる。そのため、ソース/ドレイン拡散層70の不純物拡散層表面に形成されているシリサイド層も薄膜化が進んでいる。これに伴い、以下のような種々の問題が生じている(図10(c))。
【0014】
シリサイド層の薄膜化を行うと、トランジスタのゲート−ゲート間のスペースが広い場合には接合リークは低減されるが、ゲート−ゲート間の距離が狭い場合には、図10(c)に示すように逆にシリサイドにスパイク90が発生し、接合リークが増加してしまう。
【0015】
また、コンタクトホールを形成するドライエッチング工程において、シリサイド層表面がプラズマに晒され、加熱される。これにより、図10(c)に示すように、ソース/ドレイン拡散層70のコンタクトの下方領域においてシリサイドのスパイク92が発生し、接合リークが増加してしまう。
【0016】
また、コンタクトホールを形成する際には、シリサイド層がドライエッチングのエッチングストッパとして機能する。しかしながら、シリサイド層の薄膜化が進むにつれて、図10(c)のように、エッチングがソース/ドレイン拡散層70のpn接合を突き抜けてしまい、コンタクトプラグ94が基板まで入り込む。これにより、接合リークが増加する場合もある。
さらに、シリサイド層の薄膜化は、シリサイド層の高抵抗化ももたらす。
【0017】
このように従来の半導体装置では、シリサイド層の薄膜化に伴い、接合リークの増加と高抵抗化が問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられたトランジスタと、前記トランジスタの拡散層上に設けられたシリサイド層と、を備え、前記シリサイド層は、シリサイド化反応抑制金属を含み、前記シリサイド層の表面から所定の深さに至る領域において、前記シリサイド化反応抑制金属の濃度が、前記シリサイド層の表面から基板側へ向かって増大しており、前記シリサイド層の表面は、前記半導体基板の表面よりも上方に位置している、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にソースおよびドレイン拡散層を形成する工程と、前記ソースおよびドレイン拡散層上にシリサイド化反応を抑制する第1の金属膜を形成する工程と、前記第1の金属膜の上に、第2の金属膜を形成する工程と、前記基板を熱処理することにより、1次シリサイド層を形成する工程と、前記半導体基板上から未反応の前記第1および第2の金属膜を除去する工程と、前記1次シリサイド層の上に2次シリサイド層を成長する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
ソース/ドレイン拡散層に形成されるシリサイド層のスパイクやコンタクトの突き抜けを抑制して、接合リークの発生を低減するとともに、シリサイド層を低抵抗化した半導体装置およびその製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
【0022】
図1は、第1実施形態の半導体装置1を示す断面図である。半導体装置1は、半導体基板10の上に形成されたトランジスタを有する。トランジスタのゲート電極は、ポリシリコン電極14とその上に形成されたシリサイド層32から構成される。さらに、低濃度ドーピング領域16、高濃度ドーピング領域からなるソース/ドレイン拡散層20、ソース/ドレイン拡散層20上のシリサイド層30を備える。シリサイド層30の表面は、半導体基板10の表面よりも上方に位置している。また、シリサイド層30はシリサイド化反応抑制金属を含み、シリサイド層30の表面から所定の深さに至る領域において、シリサイド層30の表面から基板側へ向かってシリサイド化反応抑制金属の濃度が高くなる濃度プロファイルを有する。
【0023】
シリサイド化反応抑制金属の濃度プロファイルは、
(i)基板表面の基準面から上方に向かって、低くなるとともに、
(ii) 基板表面の基準面から基板側に向かって、低くなる
濃度分布となる。
【0024】
図2および図3は、本実施形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0025】
半導体基板10の上に素子分離領域12(Shallow Trench Isolation;STI)を周知の方法により形成する。半導体基板10としては、例えばシリコン基板とすることができる。次に素子形成領域において、熱酸化膜からなるゲート絶縁膜(不図示)とポリシリコン電極14を形成する。
【0026】
その後に、BFを加速電圧35keV、ドーズ量4×1013atoms/cm、30°として注入し、続いてAsを加速電圧2keV、ドーズ量8×1014atoms/cm、0°で注入する。
【0027】
これにより、低濃度ドーピング領域16が形成される。次に全面に酸化膜を成膜し、異方性エッチングをおこなって、ポリシリコン電極14の側面にサイドウォール18を形成する。
【0028】
次に、Asを加速電圧5keV、ドーズ量2×1015atoms/cm、注入角度0°で注入し、続いてPを加速電圧20keV、ドーズ量5×1013atoms/cm、注入角度0°で注入する。これにより、高濃度ドーピング領域であるソース/ドレイン拡散層20が形成される(図2(a))。
【0029】
次に、シリサイド化反応抑制金属である第1の金属膜22を成膜する。シリサイド化反応抑制金属として、例えばPt、Ir、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybからなる群から選択される少なくとも一つの金属とすることができる。
【0030】
本実施形態ではシリサイド化反応抑制金属として、Ptを用いた。成膜法は、例えばスパッタ法とし、温度23℃で行い、膜厚は1nmとした(図2(b))。
【0031】
次に、全面に第2の金属膜24を成膜する。本実施形態では第2の金属膜24として、Ni膜を用いた。成膜法は、例えばスパッタ法とし、温度23℃で行い、膜厚は7nmとした(図2(c))。
【0032】
次に、時間90秒で、熱処理を行って、シリサイド化反応を行う(図3(a))。
【0033】
次に、王水でウェットエッチングすることにより、未反応のNiおよびPtを除去する(図3(b))。これにより、ソース/ドレイン拡散層20領域の表面、およびポリシリコン電極14の表面に1次シリサイド層26,28が形成される。
【0034】
この工程で形成された1次シリサイド層26,28は、Ptが添加されたNiSiであり、1次シリサイド層の表面から基板側へ向かってシリサイド化反応抑制金属であるPtの濃度が低くなる濃度プロファイルを有する。
【0035】
次に、加熱しながらシリコン含有ガスを供給することにより、1次シリサイド層26,28とシリコン含有ガスを反応させて、1次シリサイド層26,28の表面に2次シリサイド層を成長する(図3(c))。
【0036】
シリコン含有ガスとして、例えばモノシラン、ジシラン、トリシラン、ジクロロシラン、HDMS(ヘキサメチルジンラザン)等のいずれかとすることができる。本実施形態では、モノシランを用いた。モノシランは、温度400℃で、流量10sccmで、時間10分間導入した。
【0037】
本実施形態の製造方法によれば、2次シリサイド層の表面は、半導体基板の表面(図3ではSTI表面)よりも上方に位置する。また、1次シリサイド層26,28と2次シリサイド層を合わせたシリサイド層30,32全体において、シリサイド層30,32の表面から基板側へ向かってシリサイド化反応抑制金属であるPtの濃度が高くなる濃度プロファイルとなる。
【0038】
また、本実施形態の製造方法によれば、ソース/ドレイン拡散層20が形成され、その上側にシリサイド化反応抑制金属である第1の金属膜22が成膜される。
【0039】
熱処理を行って、シリサイド化反応を行う際、金属膜22からソース/ドレイン拡散層20に向かって、シリサイド化反応抑制金属のPtが拡散する。
【0040】
そのため、基板表面の基準面から基板側に向かって、シリサイド化反応抑制金属の濃度は低くなる。この際の基板表面を、基準面とする。
【0041】
その後、未反応のNiおよびPtは除去され、加熱しながらシリコン含有ガスを供給することにより、1次シリサイド層とシリコン含有ガスを反応させて、1次シリサイド層26の表面に2次シリサイド層が成長される。
【0042】
この時、基板表面の基準面近傍にあるシリサイド化反応抑制金属は、成長する2次シリサイド層に拡散するとともに、さらに基板表面の基準面から基板側に向かって、1次シリサイド層に拡散する。
【0043】
そのため、基板表面の基準面近傍において、シリサイド化反応抑制金属の濃度が一番高く、シリサイド層表面に向かって、濃度が低くなる。また、基板側に向かっても同様に、シリサイド化反応抑制金属の濃度は低くなる。
【0044】
続いて、周知の方法により、全面に層間絶縁膜34を成膜した後、ドライエッチングでコンタクトホールを形成する。
【0045】
その後に、コンタクトホールをW等の金属で埋め込んでからCMP法で平坦化して、コンタクトプラグ36を形成する(図1)。これにより、本実施形態の半導体装置が得られる。なお、通常は、上層にさらに多層配線層が形成されるが、本実施形態では省略する。
【0046】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0047】
本実施形態の半導体装置は、シリサイド層にシリサイド化反応抑制金属としてPtを含み、そのシリサイド化反応抑制金属の濃度プロファイルは、(i)基板表面の基準面から上方に向かって、低くなるとともに、(ii) 基板表面の基準面から基板側に向かって、低くなる濃度分布となるため、基板方向へのシリサイド化反応を抑制し、シリサイドのスパイクを抑制することができると考えられる。
【0048】
ここで、シリサイド層30とソース/ドレイン界面におけるPt濃度は、シリサイド層30の表面におけるPt濃度の1.05倍〜100倍、好ましくは1.05倍〜10倍とすることができる。こうすることで、シリサイド化反応抑制金属であるPtの作用により、基板側へのシリサイドのスパイクの発生を抑制できる。
【0049】
したがって、ゲート−ゲート間が近い場合や、コンタクトホール形成のためのドライエッチングでシリサイド表面が、プラズマに曝されて高温になった場合でも、ソース/ドレイン拡散層20のpn接合を突き抜けるようなシリサイドのスパイクは発生しない。このため、接合リークを低減できる。
【0050】
本実施形態の半導体装置では、シリサイド層の表面が半導体基板の表面よりも上方に位置する。これにより、ソース/ドレイン拡散層20が薄くても、シリサイド層の十分な厚みを確保することができる。したがって、シリサイド層は、コンタクトホール形成のためのドライエッチングにおけるエッチングストッパとしても機能し、コンタクトホールの突き抜けを防止することができる。このため、接合リークを低減できる。
【0051】
また、シリサイド層の十分な厚みを確保することができるという本実施形態の構成は、シリサイド層の低抵抗化という効果も有する。
これに対して、特許文献2にはソース/ドレイン拡散層にシリサイド反応抑制用不純物をイオン注入するか、シリサイド反応抑制用絶縁膜で覆ってから、コバルトシリサイドの形成を行っている。
【0052】
特許文献2の構成の場合、シリサイドのスパイクは防止できるものの、シリサイド層の厚みが薄くなってしまうため、シリサイド層が高抵抗となってしまう。さらに、シリサイド層がコンタクトホール形成のためのドライエッチングにおけるエッチングストッパとして厚みが不十分であるため、コンタクトホールの突き抜けが生じる恐れがある。
(第2実施形態)
【0053】
第2実施形態における半導体装置の製造方法は、1次シリサイド層26,28を形成し、未反応のNiおよびPtを除去する工程(図2(a))までは、第1実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態では未反応のNiおよびPtを除去した後、図4(a)に示すようにスパッタ法により2次シリサイド層を形成する点が、第1実施形態と異なる。
【0055】
未反応のNiおよびPtを除去した後、全面にシリコン膜40を室温でスパッタ法により成膜する(図4(a))。この時、シリコン膜40は、サイドウォール18上やSTI12上にも形成される。
【0056】
次に、温度500℃、時間30秒で、熱処理を行って、1次シリサイド層26,28からシリコン膜40へNiおよびPtを拡散させることにより、2次シリサイド層を形成する。続いて、アンモニア−過酸化水素水混合液(APM)で洗浄を行うことにより、未反応のシリコン膜を除去する(図4(b))。
【0057】
1次シリサイド層と2次シリサイド層を合わせたシリサイド層30,32全体において、シリサイド層30,32の表面から基板側へ向かってシリサイド化反応抑制金属であるPtの濃度が高くなる濃度プロファイルとなる。
【0058】
層間絶縁膜、コンタクトプラグは、第1実施形態と同様の方法により形成する。
【0059】
第2実施形態による半導体装置においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
本実施形態においては、図4(a)のように、サイドウォール18の表面上にもスパッタ法によるシリコン膜40が形成される。
【0061】
よって、この後の熱処理において、サイドウォール18の表面上のシリコン膜40にも、ポリシリコン電極14上の1次シリサイド層28またはソース/ドレイン拡散層20の1次シリサイド層からNiおよびPtが拡散により供給されて、シリサイド化される懸念がある。
【0062】
サイドウォールの表面上にシリサイド層が形成されると、低抵抗な1次シリサイド層26によりゲートとソース/ドレイン拡散層20が電気的にショートしてしまうことが懸念される。しかしながら、サイドウォール18上にスパッタ法により形成されたシリコン膜は、ドライエッチングによるCの混入がなく、アモルファス構造であるため、不均一シリサイド反応が抑制される構成となっている。
【0063】
したがって、サイドウォール18の表面上のシリコン膜40においては、シリサイド化反応は均一に進行するため、ゲート−ソース/ドレイン拡散層20の電気的ショートは生じないように制御することが可能である。
(第3実施形態)
【0064】
第3実施形態における半導体装置は、2次シリサイド層をスパッタ法で形成する点は第2実施形態と同様である。
【0065】
サイドウォールを図5に示すような略垂直な形状とすることにより、サイドウォールの表面上のシリコン膜の堆積を防止する点で、第2実施形態と異なる。
【0066】
以下、本実施形態の製造方法を図5を用いて説明する。
【0067】
第1実施形態と同様の工程により、高濃度ドーピング領域であるソース/ドレイン拡散層20を形成する。ただし、サイドウォール42は略垂直な形状となっている。近年の微細化の進展により、サイドウォール42の幅(図5(a)のd)は、45nm世代では25−30nm、32nm世代では20nm以下になる。
【0068】
すなわち、サイドウォール42は略垂直な形状になる。このような形状のサイドウォール42を有する基板上に、シリコン膜40をスパッタ法により成膜した場合、図5(b)に示すようにサイドウォール42の略垂直な側面にはシリコンが付着しない。
【0069】
シリコン膜をスパッタした後、熱処理を行って、2次シリサイド層を形成し(図5(b))、APM洗浄を行うことにより未反応のシリコン膜を除去する(図5(c))工程は、第2実施形態と同様である。
【0070】
上述のように、本実施形態による半導体装置においては、ゲート電極とソース/ドレイン拡散層20がシリサイド層により電気的にショートすることはない。
すなわち、本実施形態の半導体装置においては、ゲート電極とソース/ドレイン拡散層20との間のシリサイド層による電気的ショートを確実に防止することができる。
【0071】
本実施形態による半導体装置においても、第1実施形態と同様の効果を有する。
(第4実施形態)
【0072】
第4実施形態における半導体装置は、2次シリサイド層をスパッタ法で形成する点は第2実施形態と同様である。本実施形態の半導体装置においては、図6(c)に示すように、サイドウォールがポリシリコン電極の側壁およびソース/ドレイン拡散層20表面の一部を覆うSiO(第1の絶縁膜50)と、その表面を覆うSiN(第2の絶縁膜52)とからなる。
【0073】
さらに、図6(c)の点線a1、a2で囲まれた部分のように、SiO(第1の絶縁膜50)の端部はSiNの端部(第2の絶縁膜52)よりも内側に入り込んだノッチ形状を有する。
【0074】
以下、本実施形態の製造方法を図6〜図8を用いて説明する。
半導体基板の上に素子分離領域、ゲート絶縁膜(不図示)、ポリシリコン電極、および低濃度ドーピング領域(LDD領域)を形成するまでは、他の実施形態と同様の方法により形成される。次に、CVD法(420℃)により、SiOを10nm成膜し、続いてALCVD法(400℃)により、SiNを10nm成膜する。
【0075】
そして、ドライエッチングを行うことにより、SiO、SiNの2層からなるサイドウォールを形成する(図6(a))。
【0076】
次に、第1実施形態と同様に、高濃度ドーピング領域であるソース/ドレイン拡散層20を形成する(図6(b))。その後に、希フッ酸処理を行う(図6(c))。
【0077】
この時、希フッ酸によるSiOのエッチング速度は、SiNのエッチング速度よりも大きいため、図6(c)に点線で囲まれた領域に示されるようなノッチ形状が得られる。
【0078】
次に、第1実施形態と同様に、第1の金属膜22としてシリサイド化反応抑制金属であるPtをスパッタ法により成膜し(図7(a))、続いて第2の金属膜24としてNi膜をスパッタ法により成膜する(図7(b))。
【0079】
次に、第1実施形態と同様に、熱処理によるシリサイド化反応(図7(c))、ウェットエッチングによる未反応のNiおよびPtを除去する(図8(a))ことにより、ソース/ドレイン拡散層20の表面、およびポリシリコン電極14の表面に1次シリサイド層26,28を形成する。
【0080】
この工程で形成された1次シリサイド層26,28は、Ptが添加されたNiSiであり、1次シリサイド層26,28の表面から基板側へ向かってシリサイド化反応抑制金属であるPtの濃度が低くなる濃度プロファイルを有する。
【0081】
次に、全面にシリコン膜40を室温でスパッタ法により成膜する(図8(b))。この時、シリコン膜40は、サイドウォール上やSTI上にも形成される。点線b1で囲まれた領域のノッチにおいては、ゲート電極上およびサイドウォール上に形成されたシリコン膜は繋がっていてもよい。
【0082】
点線b2で囲まれた領域のノッチにおいては、サイドウォール上に形成されたシリコン膜40と、ソース/ドレイン拡散層20上に形成されたシリコン膜40とは、ノッチ形状により、分離されている点は注目すべきである。
【0083】
これにより、後の工程で熱処理によるシリサイド化を行った後においても、ゲート電極とソース/ドレイン拡散層20とは電気的にショートすることを確実に防止することができる。
【0084】
次に、温度500℃で時間90秒、熱処理を行って、1次シリサイド層26,28からシリコン膜へNiおよびPtを拡散させることにより、2次シリサイド層を形成する。続いて、アンモニア−過酸化水素水混合液(APM)で洗浄を行うことにより、未反応のシリコン膜を除去する(図8(c))。
【0085】
1次シリサイド層と2次シリサイド層を合わせたシリサイド層30,32全体において、シリサイド層30,32の表面から基板側へ向かってシリサイド化反応抑制金属であるPtの濃度が高くなる濃度プロファイルとなる。層間絶縁膜、コンタクトプラグは、第1実施形態と同様の方法により形成する。
【0086】
また、本実施形態による半導体装置においても、第1実施形態と同様の効果を有する。
【0087】
本発明による半導体装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態ではN−MOSトランジスタの例を示したが、本発明の構成はP−MOSトランジスタに対しても同様の効果を奏する。
【0088】
また、第2、第3、第4実施形態において、未反応のシリコン膜はAPM洗浄により除去したが、STI上やサイドウォール上に残った未反応のシリコン膜は酸化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明による第1実施形態の半導体装置を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】第3実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図6】第4実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図7】第4実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】第4実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図9】従来の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図10】従来の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 半導体装置
10 半導体基板
12 素子分離領域(STI)
14 ポリシリコン電極
16 低濃度ドーピング領域
18 サイドウォール
20 ソース/ドレイン拡散層(高濃度ドーピング領域)
22 第1の金属膜
24 第2の金属膜
26 1次シリサイド層
28 1次シリサイド層
30 シリサイド層
32 シリサイド層
34 層間絶縁膜
36 コンタクトプラグ
40 シリコン膜
42 サイドウォール
50 第1の絶縁膜
52 第2の絶縁膜
60 半導体基板
62 素子分離領域(STI)
64 低濃度ドーピング領域
66 ポリシリコン電極
68 サイドウォール
70 ソース/ドレイン拡散層
72 NiPt合金膜
74 1次シリサイド層
76 1次シリサイド層
80 シリサイド層
82 シリサイド層
84 層間絶縁膜
86 コンタクトプラグ
90 スパイク
92 スパイク
94 コンタクトプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられたトランジスタと、
前記トランジスタの拡散層上に設けられたシリサイド層と、
を備え、
前記シリサイド層は、シリサイド化反応抑制金属を含み、
前記シリサイド層の表面から所定の深さに至る領域において、前記シリサイド化反応抑制金属の濃度が、前記シリサイド層の表面から基板側へ向かって増大しており、
前記シリサイド層の表面は、前記半導体基板の表面よりも上方に位置している、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられたトランジスタと、
前記トランジスタの拡散層上に設けられたシリサイド層と、
を備え、
前記シリサイド層はシリサイド化反応抑制金属を含み、
前記シリサイド層の表面から所定の深さに至る領域において、前記シリサイド化反応抑制金属の濃度が、
基板表面の基準面から上方に向かって、低くなるとともに、
基板表面の基準面から基板側に向かって、低くなる
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記シリサイド化反応抑制金属は、Pt、Ir、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybからなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置において、
前記シリサイド層はニッケルシリサイドである半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記シリサイド化反応抑制金属はPtである半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の半導体装置において、
前記トランジスタのゲート電極の側壁にはサイドウォールをさらに備え、
前記サイドウォールは前記ゲート電極の側壁、およびソースおよびドレイン拡散層表面の一部を覆う第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の表面を覆う第2の絶縁膜からなり、
前記第1の絶縁膜の端部は、前記第2の絶縁膜の端部より内側へ入り込んだノッチ形状を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
半導体基板上にソースおよびドレイン拡散層を形成する工程と、
前記ソースおよびドレイン拡散層上にシリサイド化反応を抑制する第1の金属膜を形成する工程と、
前記第1の金属膜の上に、第2の金属膜を形成する工程と、
前記基板を熱処理することにより、1次シリサイド層を形成する工程と、
前記半導体基板上から未反応の前記第1および第2の金属膜を除去する工程と、
前記1次シリサイド層の上に2次シリサイド層を成長する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
2次シリサイド層を成長する前記工程は、前記半導体基板を加熱して前記半導体基板の表面にシリコン含有ガスを流すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリコン含有ガスは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、ジクロロシラン、ヘキサメチルジンラザンからなる群から選択されたガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
2次シリサイド層を成長する前記工程は、前記半導体基板の上にシリコンをスパッタ法により成膜する工程と、前記半導体基板を加熱する工程と、からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7乃至10いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の金属膜は、ニッケル膜である半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項7乃至13に記載の半導体装置の製造方法において、
半導体基板上にソースおよびドレイン拡散層を形成する前記工程の前に、
前記半導体基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の側壁上に前記ゲート電極の側壁、および前記ソースおよびドレイン拡散層表面の一部を覆う第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の表面を覆う第2の絶縁膜からなるサイドウォールを形成する工程と、を備え、
半導体基板上にソースおよびドレイン拡散層を形成する前記工程と前記ソースおよびドレイン拡散層上に第1の金属膜を形成する前記工程との間に、
前記第1の絶縁膜と前記2の絶縁膜とのエッチング選択比を有するエッチング液でエッチングすることにより、前記第1の絶縁膜の端部が前記第2の絶縁膜の端部より内側へ入り込んだノッチ形状を形成する工程を備えること、を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の絶縁膜は二酸化シリコンであり、前記第2の絶縁膜は窒化シリコンである半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記エッチング液は希フッ酸である半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−283780(P2009−283780A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135836(P2008−135836)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】