説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】微細化された構造においても効果を発揮する歪みシリコン技術を適用した半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記半導体基板中の前記ゲート絶縁膜下に形成されたチャネル領域と、前記チャネル領域の両側に形成された第1の層、および前記第1の層の下層に位置し、ゲート電極中央側の端部の位置が前記第1の層よりも前記ゲート電極中央に近い第2の層を含み、前記チャネル領域に歪みを発生させる歪み付与層と、前記チャネル領域の両側に、少なくとも一部が前記歪み付与層と重なるように形成されたソース・ドレイン領域と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、n型トランジスタのチャネル領域を挟む位置に、Si結晶よりも格子定数の小さいSi:C結晶をエピタキシャル成長させることにより、チャネル領域に引張応力を加えて歪みを生じさせた半導体装置がある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の半導体装置によれば、チャネル領域を構成するSi結晶に引張歪みを生じさせることにより、チャネル領域中の電子の移動度を向上させ、n型トランジスタの動作速度を向上させることができる。なお、このようなチャネル領域に歪みを発生させてチャネル領域中の電荷移動度を向上させる技術は、歪みシリコン技術と呼ばれる。
【0003】
しかし、特許文献1等に記載の半導体装置によれば、半導体装置が微細化すると、Si:C結晶の体積も小さくなり、チャネル領域に発生する歪みが不十分になるおそれがある。
【特許文献1】米国特許第6621131号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、微細化された構造においても効果を発揮する歪みシリコン技術を適用した半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、半導体基板と、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記半導体基板中の前記ゲート絶縁膜下に形成されたチャネル領域と、前記チャネル領域の両側に形成された第1の層、および前記第1の層の下層に位置し、ゲート電極中央側の端部の位置が前記第1の層よりも前記ゲート電極中央に近い第2の層を含み、前記チャネル領域に歪みを発生させる歪み付与層と、前記チャネル領域の両側に、少なくとも一部が前記歪み付与層と重なるように形成されたソース・ドレイン領域と、を提供する。
【0006】
本発明の他の態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、異方性エッチングにより、前記半導体基板の前記ゲート電極の両側の前記ゲート電極から離間した領域に、第1のトレンチを形成する工程と、前記第1のトレンチの内側面を側壁マスクにより覆った後、等方性エッチングにより、前記半導体基板の前記第1のトレンチの下の領域に、ゲート電極中央側の端部の位置が前記第1のトレンチよりも前記ゲート電極中央に近い第2のトレンチを形成する工程と、前記側壁マスクを除去した後、エピタキシャル結晶成長法により、前記第1および第2のトレンチ内に、前記半導体基板を構成する結晶と異なる格子定数を有する結晶を成長させる工程と、を含む半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細化された構造においても効果を発揮する歪みシリコン技術を適用した半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。半導体装置は、半導体基板1と、半導体基板1上にゲート絶縁膜6を介して形成されたゲート電極6と、半導体基板1中のゲート絶縁膜6下に形成されたチャネル領域4と、チャネル領域4の両側に形成され、チャネル領域4に歪みを発生させる歪み付与層2と、チャネル領域4の両側に、少なくとも一部が歪み付与層2と重なるように形成されたソース・ドレイン領域3と、を有する。
【0009】
また、ゲート電極6の側面にはオフセットスペーサ6が形成され、オフセットスペーサ6の側面にはゲート側壁8が形成される。また、歪み付与層2およびゲート電極6の上面には、それぞれシリサイド層9およびシリサイド層10が形成される。
【0010】
半導体基板1は、例えば、主面の面方位が{100}、{110}のSi基板を用いることができる。なお、{100}は、(100)および(100)と等価な面方位を表す。{110}についても同様である。
【0011】
ゲート絶縁膜5は、例えばSiO、SiONや、高誘電材料(例えば、HfSiON、HfSiO、HfO等のHf系材料、ZrSiON、ZrSiO、ZrO等のZr系材料、Y等のY系材料)からなる。
【0012】
ゲート電極6は、例えば、導電型不純物を含む多結晶Siや多結晶SiGe等のSi系多結晶からなる。p型の導電型不純物としては、B、BF等が用いられ、n型の導電型不純物としてはAs、P等が用いられる。また、ゲート電極6は、W、Ta、Ti、Hf、Zr、Ru、Pt、Ir、Mo、Al等やこれらの化合物等からなるメタルゲート電極であってもよく、この場合には上面にシリサイド層10が形成されない。また、メタルゲート電極と多結晶Si系電極を積層した構造であってもよい。
【0013】
チャネル領域4は、例えば、半導体基板1の主面の面方位が{100}である場合、チャネル方向が<100>または<110>となるように形成される。また、半導体基板1の主面の面方位が{110}である場合、チャネル方向が<110>または<111’>となるように形成される。なお、<111’>は、<110>を{110}面内で45°回転させた方向を指す。このような場合、チャネル方向に伸張歪みが生じると、チャネル領域4内の電子の移動度が向上し、チャネル方向に圧縮歪みが生じると、チャネル領域4内の正孔の移動度が向上する。なお、<100>は、[100]および[100]と等価な方向を表す。<110>、<111’>についても同様である。
【0014】
歪み付与層2は、第1の層2aと、第1の層2aの下層に位置し、ゲート電極中央(ゲート電極のゲート長方向の中心位置)側の端部の位置が第1の層2aよりもゲート電極中央に近い第2の層2bを含む。
【0015】
第1および第2の層2a、2bは、半導体基板を構成する結晶と異なる格子定数を有する結晶からなる。例えば、半導体基板1がSi結晶からなる場合は、第1および第2の層2a、2bの材料として、SiGe結晶、Si:C結晶等を用いることができる。SiGe結晶を用いた場合、SiGe結晶はSi結晶よりも格子定数が大きいため、Si結晶からなるチャネル領域4に圧縮歪みを発生させ、チャネル領域4中の正孔の移動度が向上させることができる。また、Si:C結晶を用いた場合、Si:C結晶はSi結晶よりも格子定数が小さいため、Si結晶からなるチャネル領域4に伸張歪みを発生させ、チャネル領域4中の電子の移動度が向上させることができる。
【0016】
なお、第1および第2の層2a、2bとしてSiGe結晶またはSi:C結晶を用いる場合、SiGe結晶のGe濃度は10〜30原子%、Si:C結晶のC濃度は1〜3原子%であることが好ましい。SiGe結晶のGe濃度が10原子%未満の場合は、チャネル領域に与える歪みが不十分となり、30原子%を超える場合は、基板等において結晶欠陥を招き、リーク電流の原因となるおそれがある。また、Si:C結晶のC濃度が1原子%未満の場合は、チャネル領域に与える歪みが不十分となり、3原子%を超える場合は、基板等において結晶欠陥を招き、リーク電流の原因となるおそれがある。
【0017】
ソース・ドレイン領域3は、例えば、イオン注入法を用いて半導体基板1表面に導電型不純物を注入することにより形成される。p型の導電型不純物としては、B、BF等が用いられ、n型の導電型不純物としてはAs、P等が用いられる。
【0018】
オフセットスペーサ7は、例えば、SiO、SiN等の絶縁材料からなる。また、ゲート側壁8は、例えばSiN等の絶縁材料からなる。また、SiN、SiO、TEOS(Tetraethoxysilane)等の複数種の絶縁材料からなる2層構造、更には3層以上の構造であってもよい。
【0019】
シリサイド層9、10は、例えば、Ni、Pt、Co、Er、Y、Yb、Ti、Pd、NiPt、CoNi等の金属とSiとの化合物からなる。
【0020】
図1(b)は、歪み付与層2の各部の寸法を表す断面図である。図1(b)に示すように、歪み付与層2の第1および第2の層2a、2bの厚さをそれぞれY、Yとする。また、第1および第2の層2a、2bのゲート電極中央側の端部の位置をそれぞれE、Eとし、EとEのゲート長方向の距離をXとする。また、ゲート電極中央のゲート長方向の位置をEとする。なお、図1(b)においては、ソース・ドレイン領域3およびシリサイド層9の図示は省略する。
【0021】
図2(a)、(b)は、それぞれシミュレーションにより求めたチャネル領域4に発生するチャネル方向の圧縮応力と歪み付与層2の第1および第2の層2a、2bの厚さとの関係、およびチャネル領域4に発生するチャネル方向の圧縮応力と第1および第2の層2a、2bのゲート電極中央側の端部の位置の差との関係を表すグラフである。チャネル領域4に発生する応力が大きいほど歪みが大きく、電荷移動度が大きくなる。ここで、シミュレーションの条件として、ゲート長を28nm、EとEの距離を39nm、YとYの合計を100nm、第1の層2aのゲート長方向の幅を42nm、第2の層2bのゲート長方向の幅を42+2Xnmとし、ゲート電極中央の半導体基板1とゲート絶縁膜5の境界から2nmの深さにある位置における圧縮応力の大きさを計算した。なお、半導体基板1はSi結晶、第1および第2の層2a、2bはGe濃度が約20原子%のSiGe結晶からなるものとした。
【0022】
図2(a)のグラフは、横軸が歪み付与層2の第1の層2aの厚さY、縦軸がチャネル領域4に発生するチャネル方向の圧縮応力の大きさである。ここで、Xは30nmに固定した。図2(a)は、Yが約20nmよりも大きい範囲では圧縮応力の大きさにほとんど変化がないが、Yが約20nm以下の範囲では、10nmに近づくほど圧縮応力の大きさが急激に増すことを示している。なお、Yを10nmよりも小さくすることは、製造工程上困難である。
【0023】
この結果から、Yは、10nm≦Y≦20nmの範囲にあることが好ましい。すなわち、Yは、YとYの合計の10%以上、20%以下であることが好ましい。
【0024】
図2(b)のグラフは、横軸がEとEの距離X、縦軸がチャネル領域4に発生するチャネル方向の圧縮応力の大きさである。ここで、Yは10nmに固定した。図2(b)は、Xの極大値が約20nmであり、Xが0である場合よりも大きい圧縮応力が発生する範囲がおよそ0<X<33nmであることを示している。なお、Xが0である場合とは、EとEが等しい場合であり、従来のチャネル領域に歪みを発生させることにより電荷移動度を向上させる半導体装置の構造に相当する。
【0025】
この結果から、Xは、0<X<33nmの範囲にあることが好ましい。すなわち、Xは、Yとの比(X/Y)が0より大きく、3.3よりも小さい範囲にあることが好ましい。
【0026】
また、上記のSiGe結晶をC濃度が約2原子%のSi:C結晶で置き換えて、同様の条件下でチャネル領域4に発生する伸張応力を計算した結果、SiGe結晶の場合と同様に、Yは、YとYの合計の10%以上、20%以下であることが好ましく、Xは、Yとの比(X/Y)が0より大きく、3.3よりも小さい範囲にあることが好ましいことがわかった。
【0027】
(半導体装置の製造)
図3A(a)〜(d)、図3B(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0028】
まず、図3A(a)に示すように、半導体基板1上にゲート絶縁膜5、ゲート電極6、キャップ層11、オフセットスペーサ7、およびダミー側壁12を形成し、半導体基板1内にソース・ドレイン領域4のエクステンション領域3aを形成する。
【0029】
ここで、これら各部材は、例えば、以下のような方法により形成される。まず、ゲート絶縁膜5、ゲート電極6、およびキャップ層11のそれぞれの材料膜をCVD法等により半導体基板1上に積層した後、リソグラフィ法とRIE(Reactive Ion Etching)法等によりこれらの材料膜をパターニングして、ゲート絶縁膜5、ゲート電極6、およびキャップ層11を形成する。
【0030】
次に、CVD法等を用いて、半導体基板1上の全面にオフセットスペーサ7の材料膜を形成した後、これにRIE法等によるエッチングを施すことにより、ゲート絶縁膜5、ゲート電極6、およびキャップ層11の側面を覆うオフセットスペーサ7を形成する。
【0031】
次に、キャップ層11およびオフセットスペーサ7をマスクとして、イオン注入法等により半導体基板1の表面に導電型不純物を注入し、エクステンション領域3aを形成する。
【0032】
次に、CVD法等を用いて、半導体基板1上の全面にダミー側壁12の材料膜を形成した後、これにRIE法等によるエッチングを施すことにより、オフセットスペーサ7の側面を覆うダミー側壁12を形成する。ここで、ダミー側壁12の材料として、ゲート側壁8と同様の材料を用いることができる。
【0033】
次に、図3A(b)に示すように、キャップ層11、オフセットスペーサ7およびダミー側壁12をマスクとして、半導体基板1にRIE法等によるエッチングを施すことにより、トレンチ13aを形成する。なお、後の工程において、このトレンチ13a中に歪み付与層2の第1の層2aが形成される。
【0034】
次に、図3A(c)に示すように、半導体基板1上の全面にSiO等からなる膜を形成した後、これにRIE法等によるエッチングを施すことにより、トレンチ13の内側面を覆う側壁マスク14を形成する。
【0035】
次に、図3A(d)に示すように、キャップ層11、オフセットスペーサ7、ダミー側壁12、および側壁マスク14をマスクとして、半導体基板1にRIE法等の等方性エッチングを施すことにより、トレンチ13a下に、ゲート電極中央側の端部の位置がトレンチ13aよりもゲート電極中央に近いトレンチ13bを形成する。なお、後の工程において、このトレンチ13b中に歪み付与層2の第2の層2bが形成される。
【0036】
次に、図3B(e)に示すように、半導体基板1のトレンチ13a、13bの内面上の自然酸化膜(図示しない)および側壁マスク14をそれぞれウェットエッチングにより除去した後、エピタキシャル結晶成長法により、トレンチ13a、13bの内面を下地として、SiGe結晶等の結晶を成長させ、歪み付与層2を形成する。このとき、トレンチ13a、13b中に、それぞれ歪み付与層2の第1および第2の層2a、2bが形成される。
【0037】
次に、図3B(f)に示すように、キャップ層11、オフセットスペーサ7およびダミー側壁12をマスクとして、イオン注入法等により半導体基板1および歪み付与層2の表面に導電型不純物を注入し、ソース・ドレイン領域3のディープ領域3bを形成する。
【0038】
次に、図3B(g)に示すように、キャップ層11およびダミー側壁12をウェットエッチングにより除去する。
【0039】
次に、図3B(h)に示すように、ゲート側壁8、およびシリサイド層9、10を形成する。ここで、ゲート側壁8は、半導体基板1上の全面にゲート側壁8の材料膜を形成した後、これにRIE法等によるエッチングを施すことにより、オフセットスペーサ7の側面に形成される。また、シリサイド層9、10は、ゲート側壁8を形成した後、半導体基板1上の全面にNi等からなる金属膜を形成し、熱処理を施してこの金属膜と歪み付与層2およびゲート電極6の上面との間にシリサイド反応を発生させることにより形成される。
【0040】
なお、シリサイド層9が半導体基板1上に形成されないように、ゲート側壁8をその底面が半導体基板1のみならず歪み付与層2に接するような厚さに形成する。シリサイド層9が半導体基板1を含む領域に形成されると、半導体基板がSi結晶からなる場合、シリサイド反応はSi結晶中で異常成長する傾向があるため、リークを発生させるおそれがある。
【0041】
その後、図示しないが、半導体基板1上の全面にコンタクトホールを形成する際にストッパとなるエッチングストッパ膜を形成し、その上に層間絶縁膜を形成し、層間絶縁膜中にシリサイド層9、10に接続されるコンタクトプラグ、およびコンタクトプラグに接続される配線を形成する。
【0042】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、第1および第2の層2a、2bを有する歪み付与層2を形成することにより、微細化された構造においてもチャネル領域4に効果的に歪みを効果的に発生させ、電荷移動度を向上させることができる。
【0043】
また、図4(a)〜(d)に、トレンチ13aおよびトレンチ13bをそれぞれ異方性エッチングおよび等方性エッチングにより形成することによる効果を示す。図4(a)〜(d)は、それぞれ図3A(b)〜(d)、3B(e)に対応した図であり、トランジスタ周辺の素子分離領域15のトランジスタ側の側面を含めて示す図である。
【0044】
まず、図4(a)に示すように、異方性エッチングによりトレンチ13aを形成すると、素子分離領域15の傾斜した側面に半導体基板1の一部が除去されずに残る。
【0045】
次に、図4(b)に示すように、トレンチ13aの内側面に側壁マスク14を形成すると、素子分離領域15の側面に残った半導体基板1の一部の側面にも側壁マスク14が形成される。
【0046】
次に、図4(c)に示すように、等方性エッチングによりトレンチ13bを形成すると、素子分離領域15側の側壁マスク14のために、素子分離領域15の傾斜した側面に半導体基板1の一部が除去されずに残る。
【0047】
次に、図4(d)に示すように、結晶をエピタキシャル成長させて歪み付与層2を形成すると、素子分離領域15の側面に残った半導体基板1の一部からも結晶が成長するため、素子分離領域15の側面にも隙間をほとんど作ることなく歪み付与層2を埋めることができる。
【0048】
一方、歪み付与層2を形成するためのトレンチ16を等方性エッチングのみを用いて一度に形成した場合、図5(a)に示すように、素子分離領域15とトレンチ16の間には半導体基板1がほとんど残らない。このため、トレンチの16内側面には素子分離領域15の側面が露出し、素子分離領域15の側面からは結晶がエピタキシャル成長しないため、図5(b)に示すように、結晶のファセット17と素子分離領域の間に大きな隙間が形成されてしまう。
【0049】
また、歪み付与層2を形成するためのトレンチ16を等方性エッチングのみを用いて一度に形成した場合、等方性エッチングによる水平方向のエッチング量が限界に達した時点のトレンチ16の深さが最大深さとなるため、本実施の形態に係る半導体装置1と比較して、歪み付与層2の深さが浅くなり、チャネル領域4に発生する歪みが小さくなってしまう。
【0050】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、歪み付与層2の上面の高さにおいて、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の部分については、説明を省略または簡略化する。
【0051】
(半導体装置の構成)
図6(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
【0052】
図6(a)に示す半導体装置は、歪み付与層2の上面の高さがゲート絶縁膜5と半導体基板1との界面の高さよりも高い、レイズド・ソース・ドレイン構造を有する。
【0053】
レイズド・ソース・ドレイン構造を形成するためには、第1の実施の形態の図3B(e)で示した歪み付与層2を形成する工程において、結晶をゲート絶縁膜5と半導体基板1との界面の高さよりも高い位置まで成長させる。その後の工程は第1の実施の形態と同様である。
【0054】
図6(b)に示す半導体装置は、歪み付与層2の上面の高さがゲート絶縁膜5と半導体基板1との界面の高さよりも低い構造を有する。
【0055】
このような構造を形成するためには、第1の実施の形態の図3B(e)で示した歪み付与層2を形成する工程において、結晶をゲート絶縁膜5と半導体基板1との界面の高さよりも低い位置まで成長させる。その後の工程は第1の実施の形態と同様である。
【0056】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、半導体装置がレイズド・ソース・ドレイン構造を有する場合には、歪み付与層2の体積をより大きくなるため、歪み付与層2がチャネル領域4に発生させる歪みが大きくなり、チャネル領域4中の電荷移動度がより大きくなる。また、シリサイド層9と半導体基板1との距離が大きくなるため、シリサイド層9に起因するリークの発生を効果的に抑えることができる。
【0057】
また、半導体装置が、歪み付与層2の上面の高さがゲート絶縁膜5と半導体基板1との界面の高さよりも低い構造を有する場合には、次のような効果が生まれる。歪み付与層2の上面を含む半導体基板1の全面上に、チャネル領域4に歪みを発生させる機能を有するSiN等からなるストレスライナー膜を形成した場合、第1の実施の形態に係る半導体装置1の構造と比較して、ストレスライナー膜とチャネル領域4の距離が近くなるため、チャネル領域4に発生する歪みが大きくなり、チャネル領域4中の電荷移動度がより大きくなる。
【0058】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。例えば、歪み付与層2の第1の層2aと第2の層2bを、SiGe結晶とSi:C結晶のように、異なる結晶を成長させて形成してもよい。
【0059】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図、(b)は、歪み付与層2の各部の寸法を示す模式図。
【図2】(a)、(b)は、シミュレーションにより求めたチャネル領域4に発生する圧縮応力と歪み付与層2の形状との関係を表すグラフ。
【図3A】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図3B】(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置のトレンチ13aおよびトレンチ13bをそれぞれ異方性エッチングおよび等方性エッチングにより形成することによる効果を示す断面図。
【図5】(a)、(b)は、比較例に係る半導体装置の断面図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 半導体基板。 2 歪み付与層。 2a 第1の層。 2b 第2の層。 3 ソース・ドレイン領域。 4 チャネル領域。 5 ゲート絶縁膜。 6 ゲート電極。 13a、13b トレンチ。 14 側壁マスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記半導体基板中の前記ゲート絶縁膜下に形成されたチャネル領域と、
前記チャネル領域の両側に形成された第1の層、および前記第1の層の下層に位置し、ゲート電極中央側の端部の位置が前記第1の層よりも前記ゲート電極中央に近い第2の層を含み、前記チャネル領域に歪みを発生させる歪み付与層と、
前記チャネル領域の両側に、少なくとも一部が前記歪み付与層と重なるように形成されたソース・ドレイン領域と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1の層の厚さは、前記第1の層の厚さと前記第2の層の厚さの合計の10%以上、20%以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の層のゲート電極中央側の端部の位置と前記第2の層のゲート電極中央側の端部の位置のゲート長方向の距離と、前記第1の層の厚さとの比は、0より大きく、3.3よりも小さい、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記前記歪み付与層は、SiGe結晶またはSi:C結晶を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
異方性エッチングにより、前記半導体基板の前記ゲート電極の両側の前記ゲート電極から離間した領域に、第1のトレンチを形成する工程と、
前記第1のトレンチの内側面を側壁マスクにより覆った後、等方性エッチングにより、前記半導体基板の前記第1のトレンチの下の領域に、ゲート電極中央側の端部の位置が前記第1のトレンチよりも前記ゲート電極中央に近い第2のトレンチを形成する工程と、
前記側壁マスクを除去した後、エピタキシャル結晶成長法により、前記第1および第2のトレンチ内に、前記半導体基板を構成する結晶と異なる格子定数を有する結晶を成長させる工程と、
を含む半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−10382(P2010−10382A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167721(P2008−167721)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】