説明

半導体装置

【課題】書き込みおよび消去特性が良好で、記憶情報の不揮発性が高い不揮発性記憶装置を提供する。
【解決手段】不揮発性記憶装置は、第1不純物領域1、第2不純物領域2、並びに第1不純物領域1および第2不純物領域2のいずれとも離間して形成された一組のソース領域3およびドレイン領域4、が区画された半導体基板10と、半導体基板10の上に形成された絶縁膜と、フローティングゲート30と、を有し、フローティングゲート30は、平面視において、第1部分31は第1不純物領域1に重複し、第2部分32は第1不純物領域1および第2不純物領域2の間に位置し、第3部分33は一組のソース領域3およびドレイン領域4の間に位置し、フローティングゲート30の第3部分33と半導体基板10との間に位置する絶縁膜は、フローティングゲート30の他の部分と半導体基板10との間に位置する絶縁膜よりも厚みが大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体記憶装置として、フローティングゲート構造のMISトランジスタを1個設けるだけで、不揮発性記憶素子を実現可能なFAMOS(フローティングゲートアバランシェインジェクションMOSデバイス)と呼ばれるものがある。このFAMOSでは、N型半導体基板とP型ドレイン層との間に形成されるPN接合をアバランシェ降伏させた時に発生するホットエレクトロンをフローティングゲートに注入させることで書き込みが行われる。また、このFAMOSでは、フローティングゲートに電子が注入された時の閾値電圧の変動を利用することで読み出しを行うことができる。
【0003】
一方、FAMOSにおける情報の消去は、書き込みによって注入されたキャリアをフローティングゲートから引き抜くことによって行われる。FAMOSにおけるデータの消去は、一般には、フローティングゲート上に絶縁膜を介してコントロールゲートを積層し、キャリアをトンネル効果を利用して引き抜いて行われる。
【0004】
特許文献1には、フローティングゲート上にコントロールゲートを形成することなく、フローティングゲートからのキャリアの引き抜きを可能とした半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−250948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FAMOSに記憶された情報の不揮発性は、書き込みまたは消去された状態においてフローティングゲートの電位が維持されることによって発現する。すなわち、FAMOSにおいては、フローティングゲートに対するキャリアの注入および引き抜きによって、フローティングゲートの電位が設定され、これが維持されることにより不揮発性の記憶が可能となっている。
【0007】
一方、FAMOSの読み出しにおいては、フローティングゲートをゲート電極とするMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を用いて行われる。そのため、読み出し時には、読み出し電圧が、MISFETのソースおよびドレイン間に印加される。従来のFAMOSでは、書き換え(フローティングゲートへの電子の注入および引き抜き)のしやすさの特性と、読み出し電圧の印加による、フローティングゲートの電位の変動、すなわち、記憶情報の長期的な保持(不揮発性)特性がトレードオフの関係にあった。
【0008】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、書き込み特性および消去特性が良好で、記憶情報の不揮発性(信頼性)が高い不揮発性記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明にかかる不揮発性記憶装置の一態様は、
第1不純物領域と、前記第1不純物領域と離間して形成された第2不純物領域と、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域のいずれとも離間して形成された一組のソース領域およびドレイン領域と、が区画された半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に形成されたフローティングゲートと、
を有し、
前記フローティングゲートは、互いに電気的に連続する第1部分、第2部分、および第3部分を有し、
平面視において、前記第1部分は、前記第1不純物領域に重複し、前記第2部分は、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域の間に位置し、前記第3部分は、前記一組のソース領域およびドレイン領域の間に位置し、
前記フローティングゲートの前記第3部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜は、前記フローティングゲートの他の部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜よりも厚みが大きい。
【0011】
本適用例の不揮発性記憶装置は、一組のソース領域およびドレイン領域の間に位置する絶縁膜の厚みが大きい。そのため、一組のソース領域およびドレイン領域の間に読み出し電圧が印加された場合に、フローティングゲートに対するキャリアの注入が極めて生じにくくなっている。これにより、本適用例の不揮発性記憶装置は、読み出しによって、フローティングゲートの電位が変化しにくく、記憶された情報の保持が良好である。すなわち、本適用例の不揮発性記憶装置は、書き込み特性および消去特性が良好で、記憶情報の不揮発性(信頼性)が高い。
【0012】
また、本適用例の不揮発性記憶装置は、ソース領域またはドレイン領域を読み出し専用に使用することができる。さらに、ソース領域またはドレイン領域を読出し専用に使用することができるので、例えば、ソース領域またはドレイン領域を短チャンネル効果の抑制に効果的なLDDまたはDDD構造等にすることが可能である。他方、第2不純物領域を書込み専用に使用することができるので、例えば、トランジスタの特性にあまり影響を与えることなく、第2不純物領域をアバランシェ降伏が発生しやすい不純物濃度に設定することができる。
【0013】
[適用例2]
適用例1において、
前記第2不純物領域に書込電圧を印加し、当該第2不純物領域と、当該第2不純物領域に隣接する前記半導体基板の領域との間で、アバランシェ降伏を生じさせ、発生したホットエレクトロンを前記フローティングゲートに注入することにより、前記フローティングゲートにキャリアを蓄積させる、不揮発性記憶装置。
【0014】
本適用例の不揮発性記憶装置は、フローティングゲートを第1不純物領域と容量結合させることが可能となり、フローティングゲート上にコントロールゲートを積層することなく、フローティングゲートに蓄積されたキャリアのエネルギーを制御することができる。
【0015】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第1不純物領域に消去電圧を印加し、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを前記半導体基板側に引き抜くことにより、前記フローティングゲートのキャリアを除去する、不揮発性記憶装置。
【0016】
本適用例の不揮発性記憶装置は、第1不純物領域に電圧を印加することで、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することができる。そのため、フローティングゲート上にコントロールゲートを積層することなく、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することができる。
【0017】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記半導体基板の上に形成された第1トランジスタ、および前記第1トランジスタのゲート絶縁膜よりも厚みの大きいゲート絶縁膜を有する第2トランジスタをさらに含み、
前記フローティングゲートの前記第3部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜の厚みは、前記第2トランジスタのゲート絶縁膜の厚みと同一である、不揮発性記憶装置。
【0018】
本適用例の不揮発性記憶装置は、工程数の増加を伴うことなく、容易に製造されることができる。すなわち、フローティングゲートの下の絶縁膜を形成する際に、第3部分の絶縁膜を第2トランジスタのゲート絶縁膜と同一の工程で形成し、第3部分以外の絶縁膜を第1トランジスタのゲート絶縁膜と同一の工程で形成することができる。
【0019】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記フローティングゲートの前記第3部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜の厚みは、10nm以上30nm以下である、不揮発性記憶装置。
【0020】
本適用例の不揮発性記憶装置は、読み出し電圧を高くすることができ、読み出せる電流信号を大きくすることができる。また、本適用例の不揮発性記憶装置は、低い読み出し電圧を発生するための低電圧発生回路を不要にすることができる。
【0021】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
前記半導体基板は、ウェル領域をさらに有し、
前記第1不純物領域、第2不純物領域、ソース領域およびドレイン領域は、前記ウェル領域内に区画されている、不揮発性記憶装置。
【0022】
本適用例の不揮発性記憶装置は、フローティングゲートに対する書き込み電圧BVに影響を与えることなく、MISトランジスタの閾値特性を調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態の不揮発性記憶装置100の要部を模式的に示す平面図。
【図2】実施形態の不揮発性記憶装置100の要部の断面の模式図。
【図3】実施形態の不揮発性記憶装置100の要部の断面の模式図。
【図4】実施形態の不揮発性記憶装置100の要部の断面の模式図。
【図5】実施形態の不揮発性記憶装置100の変形例の要部の断面の模式図。
【図6】実施形態の不揮発性記憶装置100の変形例の要部の断面の模式図。
【図7】変形例の不揮発性記憶装置102の要部を模式的に示す平面図。
【図8】変形例の不揮発性記憶装置102の要部の断面の模式図。
【図9】実験例および各参考例の不揮発性記憶装置における読み出し電圧を印加した時間に対する閾値電圧の変化量のプロット。
【図10】実験例および各参考例の不揮発性記憶装置における絶縁膜の厚みの逆数に対する閾値電圧Vthの変化量が10%となるまでの時間のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0025】
1.不揮発性記憶装置
図1は、本実施形態の不揮発性記憶装置100の要部を模式的に示す平面図である。図2ないし図4は、本実施形態の不揮発性記憶装置100の要部の断面の模式図である。図2ないし図4は、それぞれ、図1のA−A線、B−B線、およびC−C線の断面に相当する。
【0026】
本実施形態の不揮発性記憶装置100は、半導体基板10と、絶縁膜20と、フローティングゲート30と、を有する。
【0027】
1.1.半導体基板
半導体基板10は、不揮発性記憶装置100の基体となる基板である。半導体基板10は、例えば、シリコン基板とすることができる。半導体基板10は、例えば、P型の導電型を有することができる。本実施形態では、半導体基板10は、P型の導電型を有するシリコン基板である。
【0028】
半導体基板10には、第1不純物領域1、第2不純物領域2、ソース領域3およびドレイン領域4が区画されている。本実施形態では、半導体基板10には、素子分離絶縁膜7が形成されるとともに、素子分離絶縁膜7で素子分離されたN−ウェル6が形成されている。そして、本実施形態では、N−ウェル6の内側に、第1不純物領域1、第2不純物領域2、ソース領域3およびドレイン領域4が区画されている。なお、半導体基板10には、N−ウェル6等のウェルを設けないこと、および、さらに別のウェルを設けることが可能で、そのような場合には、適宜、半導体基板10の導電型やウェルの導電型を選択することができる。
【0029】
本実施形態の不揮発性記憶装置100では、図1に示すように、N−ウェル6の内側に、外部との電気的なコンタクトをとるための不純物拡散領域6aが形成され、不純物拡散領域6aにコンタクトC5が形成されている。
【0030】
1.1.1.第1不純物領域
本実施形態では、第1不純物領域1は、P型の導電型を有する。第1不純物領域1の平面的な形状は、特に限定されないが、例えば、長方形とすることができる。第1不純物領域1の平面的な大きさは、特に限定されないが、フローティングゲート30との間に十分な容量結合が得られる程度の大きさとすることができる。また、第1不純物領域1の平面的な大きさは、平面的にフローティングゲート30と重複する部位(フローティングゲート30の第1部分31)以外の部位に、電位が供給できるコンタクトをとるための不純物拡散領域等が配置できる程度であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態の不揮発性記憶装置100では、図1に示すように、第1不純物領域1の内側に、コンタクトをとるための不純物拡散領域1aが形成され、不純物拡散領域1aにコンタクトC1が形成されている。
【0032】
第1不純物領域1の機能の一つとしては、後述するフローティングゲート30に蓄積されたキャリアを引き抜くための電位(すなわち消去電圧VR)が印加されること、すなわち消去部となることが挙げられる。第1不純物領域1に消去電圧を印加することによって、フローティングゲート30から、半導体基板10(本実施形態ではN−ウェル6)にキャリア(本実施形態では電子)を引き抜くことができる。より詳しくは、第1不純物領域1に消去電圧を印加することによって、フローティングゲート30に蓄積された電子をトンネル効果にてN−ウェル6(半導体基板側)に引き抜くことができる。
【0033】
1.1.2.第2不純物領域
第2不純物領域2は、第1不純物領域1と離間して形成される。本実施形態では、第2不純物領域2は、P型の導電型を有する。第2不純物領域2の平面的な形状は、特に限定されないが、例えば、長方形とすることができる。第2不純物領域2の平面的な大きさは、特に限定されないが、平面視において、第1不純物領域1と対向する対向長が十分にとれる程度であることがより好ましい。また、第2不純物領域2の平面的な大きさは、電位が供給できるコンタクトが配置できる程度であることが好ましい。
【0034】
第2不純物領域2が、第1不純物領域1と離間する距離は、第1不純物領域1と第2不純物領域2の間で、フローティングゲート30に対して電子を注入でき、かつ、電子を注入あるいは引き抜く際に印加される電圧で、素子の破壊が起こらない耐圧を有する程度であれば、特に制限がないが、例えば、2μm以上5μm以下とすることができる。図2では、第2不純物領域2が第1不純物領域1と離間する距離をLとして描いた。
【0035】
第2不純物領域2は、平面視において、第1不純物領域1と対向する部位を有している。第2不純物領域2と第1不純物領域1の間の領域の上には、フローティングゲート30が形成される。後述するが、この第2不純物領域2と第1不純物領域1の間の領域の上に形成されたフローティングゲート30の部分を第2部分32と称する。
【0036】
第2不純物領域2の機能の一つとしては、後述するフローティングゲート30にキャリアを注入するための電位(すなわち書き込み電圧BV)が印加されること、すなわち書き込み部となることが挙げられる。第2不純物領域2に書き込み電圧を印加することによって、フローティングゲート30にキャリア(本実施形態では電子)を注入することができる。より詳しくは、第2不純物領域2に書き込み電圧を印加することによって、第2不純物領域2と半導体基板10(N−ウェル6)のPN接合にアバランシェ降伏を起し、その時に発生するホットエレクトロンを絶縁膜20を通してフローティングゲート30に注入することができる。
【0037】
本実施形態の不揮発性記憶装置100では、図1に示すように、第2不純物領域2の内側に、外部との電気的なコンタクトをとるためのコンタクトC2が形成されている。
【0038】
1.1.3.ソース領域およびドレイン領域
ソース領域3およびドレイン領域4は、第1不純物領域1、および第2不純物領域2のいずれとも離間して形成される。本実施形態では、ソース領域3およびドレイン領域4は、いずれもP型の導電型を有する。ソース領域3およびドレイン領域4は、一組(一対)となって、フローティングゲート30をゲートとするMISFETを構成する。したがって、ソース領域3およびドレイン領域4は、互いにその機能の交換が可能であるが、本明細書では便宜的に名称を区別して記述する。ソース領域3およびドレイン領域4の平面的な形状は、特に限定されないが、例えば、長方形とすることができる。ソース領域3およびドレイン領域4の平面的な大きさは、特に限定されないが、平面視において、互いの対向する対向長が十分にとれる程度であることがより好ましい。また、ソース領域3およびドレイン領域4の平面的な大きさは、電位が供給できるコンタクトが配置できる程度であることが好ましい。ソース領域3およびドレイン領域4が、第1不純物領域1および第2不純物領域2と離間する距離は、特に制限がないが、例えば、2μm以上5μm以下とすることができる。
【0039】
ソース領域3およびドレイン領域4は、ゲート部分において対向している。ソース領域3およびドレイン領域4の間の領域の上には、フローティングゲート30が形成される。後述するが、このソース領域3およびドレイン領域4の間の領域の上に形成されたフローティングゲート30の部分を第3部分33と称する。
【0040】
ソース領域3およびドレイン領域4の機能の一つとしては、両者が一組となって、後述するフローティングゲート30の電位を知るための読み出し部となることが挙げられる。ソース領域3およびドレイン領域4の間に読み出し電圧VDを印加することによって、フローティングゲート30の電位に対応した電流を測定することができる。これにより、不揮発性記憶装置100に記憶された情報を読み出すことができる。
【0041】
本実施形態の不揮発性記憶装置100では、図1に示すように、ソース領域3およびドレイン領域4のそれぞれの内側に、外部との電気的なコンタクトをとるためのコンタクトC2およびコンタクトC3がそれぞれ形成されている。
【0042】
1.2.絶縁膜
絶縁膜20は、半導体基板10の上に形成される。絶縁膜20は、フローティングゲート30と半導体基板10とを電気的に分離する機能を有するとともに、ホットエレクトロンを通過させる機能、およびトンネル効果によりキャリア(電子)を通過させる機能を有する。
【0043】
絶縁膜20は、少なくともフローティングゲート30の下に形成される。絶縁膜20は、フローティングゲート20の下以外の部分に、例えば、各コンタクトを避けて形成されてもよい。
【0044】
絶縁膜20の機能としては、以下のようなものが挙げられる。まず、ソース領域3およびドレイン領域4の間に配置されたフローティングゲート30の第3部分33の下に位置する絶縁膜20は、フローティングゲート30をゲートとし、ソース領域3およびドレイン領域4をソースまたはドレインとするMISFETのゲート絶縁膜として機能することができる。また、第1不純物領域1および第2不純物領域2の間に配置されたフローティングゲート30の第2部分32の下に位置する絶縁膜20は、ホットエレクトロンを通過させるように機能し、また、トンネル効果によりキャリア(電子)を通過させるように機能することができる。さらに、平面視において、第1不純物領域1と重複しているフローティングゲート30の第1部分31の下に位置する絶縁膜20は、フローティングゲート30の第1部分31と第1不純物領域1との間にキャパシタ(容量結合)を形成する機能を有する。
【0045】
絶縁膜20の材質としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなどを挙げることができる。絶縁膜20の厚みについては後述する。
【0046】
1.3.フローティングゲート
フローティングゲート30は、絶縁膜20の上に形成される。フローティングゲート30の平面的な形状および平面的な配置は、次のような作用、機能を発現することができる限り任意である。
【0047】
フローティングゲート30は、互いに電気的に連続する3つの部分を含んでいる。すなわち、フローティングゲート30は、第1部分31、第2部分32、および第3部分33を有する。以下フローティングゲート30の第1部分31、第2部分32、および第3部分33について、単に、第1部分31、第2部分32、および第3部分33ということがある。
【0048】
第1部分31は、平面視において、第1不純物領域1に重複する領域である。第1部分31は、第1不純物領域1の少なくとも一部を避けて重複することができる。本実施形態では、図1に示すように、第1部分31と重複していない第1不純物領域1に、外部との電気的なコンタクトをとるための不純物拡散領域1aが形成され、該不純物拡散領域1a内に、コンタクトC1が形成されている。第1部分31は、半導体基板10の第1不純物領域1と絶縁膜20を介して対向している。第1部分31および第1不純物領域1の間には絶縁膜20が設けられており、第1部分31および第1不純物領域1によって、キャパシタが構成されている。
【0049】
第1不純物領域1に、消去電圧VRが印加されると、フローティングゲート30に蓄積されたキャリアは、第1部分31および第1不純物領域1に容量結合が生じることにより、半導体基板10側に引き抜かれる。例えば、第2不純物領域2、ソース領域3、ドレイン領域4、およびN−ウェル6の電位を全て0Vに設定するとともに、第1不純物領域1の電位(即ち、消去電圧VR)を−20Vに設定すると、フローティングゲート30に蓄積された電子は、トンネル効果によってN−ウェル6側に引き抜くことができ、この不揮発性記憶装置100の消去を行うことができる。
【0050】
このような消去電圧VRの大きさは、印加時間によって変動することがある。しかし、消去電圧VRの大きさは、ソース領域3およびドレイン領域4の間の第3領域33における半導体基板10(N−ウェル6)との間の容量、および、第1領域31における第1不純物領域1との間の容量の比に従って適宜設計させることができる。
【0051】
例えば、消去電圧VRの印加時間を100msecとした場合に、第3領域33における半導体基板10(N−ウェル6)との間の容量、および、第1領域31における第1不純物領域1との間の容量の比が1:5の場合は、消去電圧VRの値は、−20Vとすることができ、当該容量比が1:20の場合は、消去電圧VRの値は、−18Vとすることができ、さらに当該容量比が1:100の場合は、消去電圧VRの値は、−15Vとすることができる。
【0052】
また、本実施形態の不揮発性記憶装置100は、第1不純物領域1に消去電圧VRを印加することで、フローティングゲート30に蓄積されたキャリアを消去することができる。すなわち、フローティングゲート30上にコントロールゲートなどを積層することなく、フローティングゲート30に蓄積されたキャリアを消去することができる。このように、本実施形態の不揮発性記憶装置100は、フローティングゲート30を第1不純物領域1と容量結合させることが可能であり、フローティングゲート30上にコントロールゲートなどを積層することなく、フローティングゲート30に蓄積されるキャリアのエネルギーを制御することができる。
【0053】
フローティングゲート30の第2部分32は、平面視において、第1不純物領域1および第2不純物領域2の間に位置する。第2部分32は、平面視において、第1部分31から、第1不純物領域1とN−ウェル6との境界を越えて、第2不純物領域2に向かって延出している。そして、第2部分32が延出した先端の位置は、当該第2部分32に、ホットエレクトロンを注入できる配置である限り、特に限定されないが、例えば、第2不純物領域2の端部付近とすることができる。本実施形態では、第2部分32の第1部分31から延出した先端の位置は、N−ウェル6と第2不純物領域2の境界部となっている。また、第2部分32は、平面視において、第2不純物領域2と重複してもよい。その場合には、第2不純物領域2の少なくとも一部を避けて重複することが好ましい。これは、例えば、第2部分32と重複していない第2不純物領域2の部分に、コンタクトC2を形成するためである。第2部分32は、半導体基板10(N−ウェル6)と絶縁膜20を介して対向している。
【0054】
第2不純物領域2に、書き込み電圧BVが印加されることにより、不揮発性記憶装置100への書き込みが可能である。このとき、書き込み電圧BVには、第2不純物領域2およびこれに隣接する半導体基板10(本実施形態ではN−ウェル6)の領域との間のPN接合の降伏電圧よりも大きい負の電圧が選択される。第2不純物領域2に、書き込み電圧BVが印加されると、第2不純物領域2およびこれに隣接する半導体基板10(本実施形態ではN−ウェル6)の領域との間のPN接合にアバランシェ降伏が生じ、これに伴いホットエレクトロンが発生する。このホットエレクトロンは、大きいエネルギーを有しており、半導体基板10およびフローティングゲート30の第2部分32の間の絶縁膜20を通り抜けて、フローティングゲート30に注入されることができる。これにより、フローティングゲート30にキャリアが蓄積され、不揮発性記憶装置100への書き込みを行うことができる。
【0055】
例えば、第1不純物領域1、ソース領域3、ドレイン領域4、およびN−ウェル6の電位を全て0Vに設定するとともに、第2不純物領域2の電位(即ち、書き込み電圧BV)を−7Vよりも絶対値が大きい負の電位に設定すると、第2不純物領域2およびこれに隣接する半導体基板10(本実施形態ではN−ウェル6)の領域との間のPN接合にアバランシェ降伏が生じ、半導体基板10およびフローティングゲート30の第2部分32の間の絶縁膜20を介してフローティングゲート30にホットエレクトロンを注入することができる。
【0056】
フローティングゲート30の第3部分33は、平面視において、ソース領域3およびドレイン領域4の間に位置する部分である。第3部分33は、ソース領域3およびドレイン領域4それぞれの少なくとも一部を避けて重複してもよい。また、第3部分33は、ソース領域3およびドレイン領域4それぞれと重複しなくてもよい。本実施形態では、図1に示すように、第3部分33は、ソース領域3およびドレイン領域4と重複しておらず、ソース領域3およびドレイン領域4のそれぞれと、N−ウェル6との境界位置まで形成されている。なお、ソース領域3およびドレイン領域4には、外部との電気的なコンタクトをとるためのコンタクトC2およびコンタクトC3がそれぞれ形成されている。第3部分33は、半導体基板10(N−ウェル6)と絶縁膜20を介して対向しており、第3部分33をゲートとし、ソース領域3およびドレイン領域4をソースおよびゲートとするMISFETが構成されている。
【0057】
ソース領域3およびドレイン領域4の間に読み出し電圧VB/VDが印加されると、フローティングゲート30の電位に対応して、ソース領域3およびドレイン領域4の間に形成されたチャンネルを通じて、ソース領域3およびドレイン領域4の間に電流が生じる。そして、例えば、この電流の変化を検出することにより、フローティングゲート30に蓄積されたキャリアの有無や量を判定することができる。これにより、不揮発性記憶装置100から情報を読み出すことができる。例えば、第1不純物領域1、第2不純物領域2、ソース領域3、およびN−ウェル6の電位を全て0Vに設定するとともに、ドレイン領域4の電位(即ち、読み出し電圧VB/VD)を−3Vに設定すると、フローティングゲート30に蓄積されたキャリアの量に対応した電流を検出することができ、この不揮発性記憶装置100からの読み出しを行うことができる。
【0058】
このような読み出し電圧VB/VDの大きさは、小さすぎると、チャンネルを流れる電流量が小さくなって、不揮発性記憶装置100の読み出し精度が悪くなる場合があり、大きすぎると、フローティングゲート30の電位を変動させてしまうことがあり、不揮発性記憶装置100の信頼性が損なわれる場合がある。
【0059】
なお、本実施形態の不揮発性記憶装置100は、半導体基板10に、N−ウェル6が形成されており、第1不純物領域1、第2不純物領域2、ソース領域3およびドレイン領域4は、N−ウェル6内に区画されている。そのため、フローティングゲート30に対する書き込み電圧BVに影響を与えることなく、MISFETの閾値特性を調整することが可能である。
【0060】
フローティングゲート30の材質としては、導電性を有し、キャリアを蓄積できるものであれば、特に限定されないが、例えば、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、タングステンシリサイドなどを例示することができる。
【0061】
1.4.絶縁膜の厚み
本実施形態の不揮発性記憶装置100では、フローティングゲート30の第3部分33と半導体基板10(N−ウェル6)との間に位置する絶縁膜20は、フローティングゲート30の他の部分と半導体基板10(N−ウェル6)との間に位置する絶縁膜20よりも厚みが大きい。
【0062】
フローティングゲート30の第3部分33をゲートとし、ソース領域3およびドレイン領域4をソースおよびゲートとするMISFETは、既に述べたとおり、不揮発性記憶装置100の読み出し部としての機能を有している。そのため、不揮発性記憶装置100への情報の書き込みまたは消去が行われた後、当該MISFETには、繰り返し読み出し電圧VB/VDが印加される場合がある。従来の記憶装置では、読み出し電圧VB/VDが印加される毎に、フローティングゲート30の電位が徐々に変動する場合があったが、本実施形態の不揮発性記憶装置100では、フローティングゲート30の第3部分33と半導体基板10(N−ウェル6)との間に位置する絶縁膜20が、フローティングゲート30の他の部分と半導体基板10(N−ウェル6)との間に位置する絶縁膜20よりも厚みが大きいため、読み出し電圧VDが印加される毎に、フローティングゲート30の電位が徐々に変動することが抑制される。
【0063】
これにより、ソース領域3およびドレイン領域4の間に読み出し電圧VDが印加された場合に、フローティングゲート30に対するキャリアの注入が極めて生じにくくなっている。これにより、本実施形態の不揮発性記憶装置100は、読み出しによって、フローティングゲート30の電位が変化しにくく、記憶された情報の保持が良好である。すなわち、本実施形態の不揮発性記憶装置100は、書き込み特性および消去特性が良好で、記憶情報の不揮発性(信頼性)が高い。
【0064】
また、本実施形態の不揮発性記憶装置100は、ソースまたはドレインと基板との間でアバランシェ降伏を起こす形式の記憶装置と比べて、ソース領域3またはドレイン領域4を読み出し専用に使用することができる。そのため、例えば、ソース領域3またはドレイン領域4を短チャンネル効果の抑制に効果的なLDDまたはDDD構造等にすることが可能である。
【0065】
また本実施形態の不揮発性記憶装置100は、第2不純物領域2を書き込み専用に使用することができるので、例えば、MISFETの特性にあまり影響を与えることなく、第2不純物領域2をアバランシェ降伏が発生しやすい不純物濃度に設定することができる。
【0066】
フローティングゲート30の第3部分33と半導体基板10(N−ウェル6)との間に位置する絶縁膜20の厚みは、他の部分の絶縁膜20の厚みよりも小さい範囲で、例えば、10nm以上30nm以下とすることができる。第3部分33とN−ウェル6との間に位置する絶縁膜20の厚みが10nm未満であると、フローティングゲート30の電位を安定化させる効果が不十分となる場合があり、30nmを超えると、読み出し時に検出される電流が小さくなり過ぎる場合がある。第3部分33とN−ウェル6との間に位置する絶縁膜20の厚みを上記範囲内に設定すると、不揮発性記憶装置100は、読み出し電圧VDを高くすることができ、読み出せる電流信号を大きくすることができる。さらに、これに伴い、不揮発性記憶装置100に、低い読み出し電圧VDを発生するための低電圧発生回路などを形成することを省略することができる。
【0067】
絶縁膜20を、第3部分33とN−ウェル6との間に位置する部分だけ他の部分と異なる厚みとなるように形成する方法としては、特に限定されず、例えば、適宜なマスクパターンを利用して行うことができる。
【0068】
1.5.その他の構成
本実施形態の不揮発性記憶装置100は、上述した以外の構成を適宜含むことができる。例えば、不揮発性記憶装置100は、複数のトランジスタを有することができる。このような複数のトランジスタは、例えばMIS型のトランジスタであることができ、各種の回路を構成することができる。そして、これらのトランジスタは、それぞれゲート絶縁膜の厚みが異なっていてもよい。
【0069】
図5は、不揮発性記憶装置100の半導体基板10に、第1トランジスタ40および第2トランジスタ50が形成された例を示す模式図である。第1トランジスタ40は、ゲート絶縁膜が相対的に薄いMIS型トランジスタの一例であり、第2トランジスタ50は、ゲート絶縁膜が相対的に厚いMIS型トランジスタの一例である。
【0070】
不揮発性記憶装置100は、半導体基板10の上に形成された第1トランジスタ40、および第1トランジスタ40のゲート絶縁膜42よりも厚みの大きいゲート絶縁膜52を有する第2トランジスタ50を含むことができる。不揮発性記憶装置100が、このようなゲート絶縁膜の厚みが互いに異なる第1トランジスタ40および第2トランジスタ50を含む場合には、フローティングゲート30の第3部分33と半導体基板10との間に位置する絶縁膜20の厚みを、第2トランジスタ50のゲート絶縁膜52の厚みと同一とすることができる。このときフローティングゲート30の第3部分33以外の部分と半導体基板10(N−ウェル6)との間に位置する絶縁膜20の厚みを、第1トランジスタ40のゲート絶縁膜42の厚みと同一とすることができる。
【0071】
このようにすれば、不揮発性記憶装置100を製造する際に、工程数の増加を伴うことなく、マスク等を変更することのみによって、容易にフローティングゲート30の第3部分33と半導体基板10との間に位置する絶縁膜20の厚みを他の部分の厚みよりも大きくして製造することができる。すなわち、フローティングゲート30の下の絶縁膜20を形成する際に、第3部分33の絶縁膜20を第2トランジスタ50のゲート絶縁膜52と同一の工程で形成し、第3部分33の下以外の部分の絶縁膜20を第1トランジスタ40のゲート絶縁膜42と同一の工程で形成することができる。
【0072】
不揮発性記憶装置100は、適宜な素子分離絶縁膜を含むことができる。図1ないし図4に示す不揮発性記憶装置100には、各素子を分離するために、素子分離絶縁膜7が形成されている。
【0073】
図6は、第1不純物領域1とN−ウェル6(半導体基板10)の間に、素子分離絶縁膜7が形成された例を示している。このような構成をとると、N−ウェル6と第1不純物領域1との間の耐圧を高めることができる。これにより、フローティングゲート30に蓄積された電子をN−ウェル6(半導体基板10)側に引き抜く際に、第1不純物領域1と第2不純物領域2との間でのパンチスルーを防止することができる。
【0074】
なお、ここでは、N−ウェル6と第1不純物領域1との間に素子分離絶縁膜7を配置して第1不純物領域1と第2不純物領域2との間でのパンチスルーを防止することについて説明したが、図2に示した、第1不純物領域1と第2不純物領域2との間の距離、Lを大きく確保することによって、上記パンチスルーを防止することも可能である。
【0075】
1.6.変形等
本実施形態の不揮発性記憶装置において、書き込み部、消去部、および読み出し部の配置は、上述した機能、効果等が奏される限り、なんら限定されない。上述の不揮発性記憶装置100の例では、フローティングゲート30の平面的な形状は、およそアルファべットの「T」の形状を有していた。
【0076】
図7は、変形例の不揮発性記憶装置102の要部を模式的に示す平面図である。図8は、変形例の不揮発性記憶装置102の要部の断面の模式図である。
【0077】
変形例の不揮発性記憶装置102は、消去部および書き込み部の配置が、不揮発性記憶装置100と異なる以外は、不揮発性記憶装置100と同様である。そのため、同様の構成については、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
不揮発性記憶装置102は、平面的に見て、およそ正符号の「+」の形状を有するフローティングゲート30を有している。不揮発性記憶装置102では、新たに、平面視において、第2不純物領域2にフローティングゲート30を介して向かい合う第3不純物領域8が形成されている。第3不純物領域8には、外部とのコンタクトを取るためのコンタクトC6が形成されている。
【0079】
不揮発性記憶装置102では、第1不純物領域1に対してフローティングゲート30が多少位置ズレして形成されても、フローティングゲート30と第1不純物領域1とが平面視で重なり合う部分(フローティングゲート30の第1部分31)の面積が変化しにくい。従って、第1不純物領域1とフローティングゲート30との間の電気的な容量を一定に保ちやすく、第3領域33における半導体基板10(N−ウェル6)との間の容量、および、第1領域31における第1不純物領域1との間の容量の比を設計値どおりに設定することが容易である。
【0080】
また、不揮発性記憶装置102の場合、第3不純物領域8(コンタクトC6)がない場合と比較して、アバランシェ降伏により発生した電子がコンタクトC2およびコンタクトC6間に電流として流れることができ、この電流によってチャネルホットエレクトロンが発生するため、書き込み効率を向上させることができる
そして、不揮発性記憶装置102では、書き込み動作を行う場合、例えば、ソース領域3、ドレイン領域4、およびN−ウェル6(コンタクトC3〜C5)の電位を全て0Vとし、第1不純物領域1(コンタクトC1)をフローティングに設定し、第2不純物領域2(コンタクトC2)の電位を−5Vよりも絶対値が大きい負電位に設定することで、フローティングゲート30への書き込みが可能となる。
【0081】
一方、読み出し動作については、不揮発性記憶装置102では、前出の不揮発性記憶装置100の電位設定に加えて、さらに、第3不純物領域8(コンタクトC6)を0Vとする。さらに消去動作についても、不揮発性記憶装置102では、前出の不揮発性記憶装置100の電位設定に加えてさらに、第3不純物領域8(コンタクトC6)を0Vとする。これにより、第1不純物領域1とフローティングゲート30の間の容量結合によりフローティングゲート30に蓄積された電子をN−ウェル6(半導体基板10)側に引き抜くことができる。
【0082】
不揮発性記憶装置102では、消去電圧VRの印加時間を100msecとしたとき、第3領域33における半導体基板10(N−ウェル6)との間の容量、および、第1領域31における第1不純物領域1との間の容量の比が、1:10の場合、消去電圧VRは、例えば−13V、当該容量比が1:20の場合、消去電圧VRは、例えば−12V、当該容量比が1:50の場合、消去電圧VRは、例えば−11Vとすることができる。
【0083】
2.実験例および参考例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によってなんら限定されるものではない。
【0084】
2.1.不揮発性記憶装置
実験例および参考例の不揮発性記憶装置としては、以下のようなものを準備した。
【0085】
実験例および参考例の不揮発性記憶装置は、導電型がP型のシリコン基板に、上述した平面視において、正符号「+」字型のフローティングゲート30を有するものとした。シリコン基板には、上記実施形態で述べたN−ウェル6、第1不純物領域1、第2不純物領域2、第3不純物領域3、素子分離絶縁膜7が形成され、その上に、絶縁膜20、およびフローティングゲート30が形成されている。
【0086】
実験例の不揮発性記憶装置では、フローティングゲート30の第3部分33の下の絶縁膜の厚みを20nmとし、フローティングゲート30のその他の部分の下の絶縁膜の厚みを10nmとした。
【0087】
参考例1、参考例2および参考例3の不揮発性記憶装置では、フローティングゲート30の下の絶縁膜の厚みを均一として、それぞれ、9.28nm、10nm、10.8nmとした。
【0088】
2.2.評価方法
実験例および各参考例の不揮発性記憶装置は、それぞれ以下のような信頼性評価を行った。
【0089】
不揮発性記憶装置に、それぞれ、消去電圧VRを印加して、フローティングゲート30から、キャリアを引き抜いた。実験例および参考例1〜3の不揮発性記憶装置では、消去電圧VRを−12Vとした。
【0090】
そして、各不揮発性記憶装置のN−ウェル6(コンタクトC5)、第1不純物領域1(コンタクトC1)、第2不純物領域2(コンタクトC2)、および第3不純物領域8(コンタクトC6)の電位を全て0Vとし、ソース領域3およびドレイン領域4の間に、4.6Vの読み出し電圧VS/VDを印加して、フローティングゲート30、ソース領域3およびドレイン領域4によって構成されたMISFETの閾値電圧Vthを測定した。
【0091】
各不揮発性記憶装置の測定環境の温度は、125℃とし、読み出し電圧VS/VDをかけ続けながら、閾値電圧Vthを測定した。
【0092】
2.3.評価結果
図9は、横軸に読み出し電圧VS/VDを印加した時間、縦軸に閾値電圧Vthの初期値を1とした場合の変化量をとり、実験例および各参考例の不揮発性記憶装置の測定結果をプロットしたグラフである。
【0093】
図9をみると、いずれの不揮発性記憶装置においても、読み出し電圧VS/VDを印加する時間が長くなるほど、閾値電圧Vthの変化量が大きくなっていることが分かる。しかし、フローティングゲート30の第3部分33の下の絶縁膜20の厚みが、他の部分の厚みよりも大きい実験例の不揮発性記憶装置においては、各参考例の不揮発性記憶装置よりも閾値電圧Vthの変化量が小さく抑制されていることが判明した。
【0094】
図10は、各不揮発性記憶装置について、フローティングゲート30の第3部分33の下の絶縁膜20の厚みの逆数を横軸にとり、縦軸に閾値電圧Vthの変化量が10%となるまでの時間をとってプロットしたグラフである。
【0095】
図10に示すように、フローティングゲート30の第3部分33の下の絶縁膜20の厚みが厚くなるほど、閾値電圧Vthが10%変動するまでの時間が長くなっている。すなわち、フローティングゲート30の第3部分33の下の絶縁膜20の厚みが厚いほど、フローティングゲート30の電位の変化が生じにくいことが判明した。
【0096】
以上、上述した実施形態および各種の変形は、それぞれ一例であって、本発明は、これらに限定されるわけではない。例えば実施形態および各変形は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0097】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0098】
1…第1不純物領域、2…第2不純物領域、3…ソース領域、4…ドレイン領域6…N−ウェル、1a,6a…不純物拡散領域、7…素子分離絶縁膜、8…第3不純物領域、10…半導体基板、20…絶縁膜、30…フローティングゲート、31…第1部分、32…第2部分、33…第3部分、40…第1トランジスタ、42…ゲート絶縁膜、50…第2トランジスタ、52…ゲート絶縁膜、100…不揮発性記憶装置、C1〜C6…コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1不純物領域と、前記第1不純物領域と離間して形成された第2不純物領域と、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域のいずれとも離間して形成された一組のソース領域およびドレイン領域と、が区画された半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に形成されたフローティングゲートと、
を有し、
前記フローティングゲートは、互いに電気的に連続する第1部分、第2部分、および第3部分を有し、
平面視において、前記第1部分は、前記第1不純物領域に重複し、前記第2部分は、前記第1不純物領域および前記第2不純物領域の間に位置し、前記第3部分は、前記一組のソース領域およびドレイン領域の間に位置し、
前記フローティングゲートの前記第3部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜は、前記フローティングゲートの他の部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜よりも厚みが大きい、不揮発性記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2不純物領域に書込電圧を印加し、当該第2不純物領域と、当該第2不純物領域に隣接する前記半導体基板の領域との間で、アバランシェ降伏を生じさせ、発生したホットエレクトロンを前記フローティングゲートに注入することにより、前記フローティングゲートにキャリアを蓄積させる、不揮発性記憶装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1不純物領域に消去電圧を印加し、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを前記半導体基板側に引き抜くことにより、前記フローティングゲートのキャリアを除去する、不揮発性記憶装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記半導体基板の上に形成された第1トランジスタ、および前記第1トランジスタのゲート絶縁膜よりも厚みの大きいゲート絶縁膜を有する第2トランジスタをさらに含み、
前記フローティングゲートの前記第3部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜の厚みは、前記第2トランジスタのゲート絶縁膜の厚みと同一である、不揮発性記憶装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記フローティングゲートの前記第3部分と前記半導体基板との間に位置する前記絶縁膜の厚みは、10nm以上30nm以下である、不揮発性記憶装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記半導体基板は、ウェル領域をさらに有し、
前記第1不純物領域、第2不純物領域、ソース領域およびドレイン領域は、前記ウェル領域内に区画されている、不揮発性記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−119431(P2011−119431A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275219(P2009−275219)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】