説明

半導体装置

【課題】銅ヒューズに起因する故障または特性悪化を抑制または防止できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板1と、銅ヒューズ4と、半導体基板1と銅ヒューズ4との間に配置された銅膜からなるシール膜7,8と、銅ヒューズ4よりも上の層に形成された銅以外の金属材料膜からなり、銅ヒューズ4の両端にそれぞれに接続された最上層配線501,502と、シール膜7,8に結合され、銅ヒューズ4の周囲を取り囲む筒状に形成された銅シールリング6とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層配線構造内にヒューズが形成された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリ等の半導体装置は、金属配線層にヒューズを備える場合がある。ヒューズは、レーザ光の照射や閾値以上の電流の通電によって切断できるように構成されている。ヒューズの切断/非切断を選択することによって、半導体装置に組み込まれた電子回路の特性を調整(トリミング)したり、半導体装置内の不良箇所を切り離したりすることができる。ヒューズは、金属配線層に設けられ、金属配線と同じ材料で構成されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3974039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線の材料には、Al(アルミニウム)が広く用いられてきたが、最近では、とくに大電力を消費するパワー半導体装置において、配線抵抗の低減が望まれている。そこで、配線材料としてAlよりも導電性の高いCu(銅)を用いた半導体装置の構造が提案されている。この場合、一般的な先行技術に倣ってヒューズを形成するとすれば、銅配線層に銅からなるヒューズが形成されることになる。
【0005】
しかし、レーザ光等でヒューズを切断すると、ヒューズを構成する銅の砕片が配線構造内に飛び散る。銅は、層間絶縁膜の典型的な材料である酸化シリコン中に容易に拡散するから、半導体基板に形成された素子領域に達し、素子動作に悪影響を与えるおそれがある。また、ヒューズが銅で構成されている場合、ヒューズは、切断によって露出した表面から容易に腐食する。この腐食は、ヒューズに接続された電流経路を通って、半導体基板の近傍にまで至るおそれがある。
【0006】
これらの課題に対処するために、本願発明者は、銅ヒューズを取り囲むように筒状のシールリングを多層配線構造中に形成する構造を検討した。この構造では、複数層の銅配線層およびそれらの間のプラグ層(ビア層)によって、銅ヒューズを取り囲む筒状シールリングが構成される。これにより、銅砕片をシールリングで食い止めて、銅の拡散を抑制することができる。さらに、銅ヒューズを銅配線層のうちの最上層に形成することにより、シリコン基板から銅ヒューズまでの距離を遠くすることで、基板表面付近に形成された素子に到達することを抑制できる。さらにまた、銅ヒューズから基板表面付近の配線層までの配線長を長くできるので、銅ヒューズを起点とする腐食が基板表面付近の配線層に到達しにくくすることができる。
【0007】
しかしながら、銅は多層配線構造を形成する絶縁層内を容易に拡散するので、上記のような構造をとっても、銅砕片からの銅原子は、多層配線構造の積層方向へと拡散して基板表面に至る。また、銅ヒューズの切断面を起点とする腐食は、基板表面付近の配線層に容易に到達してしまう。
そこで、この発明は、銅ヒューズに起因する故障または特性悪化を抑制または防止できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の半導体装置は、半導体基板と、銅ヒューズと、前記半導体基板と銅ヒューズとの間に配置された銅膜からなるシール膜と、前記銅ヒューズよりも上の層に形成された銅以外の金属材料膜からなり、前記銅ヒューズの第1の部分および第2の部分にそれぞれに接続された第1接続部および第2接続部を有する配線膜と、前記シール膜に結合され、前記銅ヒューズの周囲を取り囲む筒状に形成された銅シールリングとを含む、半導体装置である(請求項1)。
【0009】
この構成によれば、半導体基板と銅ヒューズとの間にシール膜が形成されており、さらに、シール膜に結合された筒状の銅シールリングによって銅ヒューズの周囲が取り囲まれている。つまり、銅ヒューズは、下方(半導体基板側)および側方から取り囲まれている。そのため、銅ヒューズが切断されたときに銅砕片が飛び散っても、銅原子の拡散をシール膜または銅シールリングで停止させることができる。これにより、銅原子の横方向および下方向の拡散をいずれも阻止できるので、銅原子が基板表面付近に到達することを抑制または防止できるから、半導体基板に形成された機能素子が故障したりその動作特性が悪化したりすることを抑制または防止できる。
【0010】
銅ヒューズと半導体装置内の回路との接続は、銅ヒューズよりも上の層に形成された銅以外の金属材料膜からなる配線膜を介して行える。つまり、配線膜の第1および第2接続部が、銅ヒューズの第1および第2の部分にそれぞれ接続されている。銅ヒューズを切断しなければ、第1および第2接続部間が電気的に接続された状態となり、銅ヒューズを切断すれば、第1および第2接続部間の電気的接続が遮断される。銅ヒューズは、それよりも上の配線層を介して半導体装置内の回路に接続できるので、銅ヒューズと半導体基板との間に、銅ヒューズを回路に接続するための配線部を形成する必要がない。そのため、銅ヒューズの直下(半導体基板との間)をシール膜で覆うことができ、かつ、シール膜と銅シールリングとを切れ目なく結合することができる。これにより、基板表面に向かう銅原子拡散の抑制または防止と、銅ヒューズの内部回路への接続とを両立できる。銅ヒューズよりも下層の配線層だけで内部回路への接続を達成しようとすると、銅ヒューズの下方および側方を完全に覆うことができないから、基板表面に向かう銅原子拡散を回避できない。
【0011】
さらに、この発明では、銅ヒューズが接続される配線層は、銅以外の金属材料膜からなっている。そのため、銅ヒューズ切断面からの腐食の進行は、当該配線層で停止する。これにより、腐食が基板表面近傍に達することがないので、基板に形成された機能素子の故障または動作特性悪化を抑制または防止できる。
銅配線を用いる多層配線構造では、たとえば、基板表面に最も近い配線層がポリシリコン層で形成され、それよりも上層の配線層は銅配線層で形成される。この場合、いわゆるデュアルダマシン構造によって、隣接する銅配線層間の相互接続が達成される。つまり、銅配線層は、その直下の配線層に接続する銅プラグ部(ビア)を有している。そのため、銅ヒューズを、それよりも下方の配線層を介して内部回路に接続する構造をとると、銅ヒューズ切断面からの腐食は、最下層のポリシリコン層に至ってようやく停止する。そのため、半導体基板に形成された機能素子の故障または動作特性悪化を容易に招いてしまう。この問題は、銅配線層の層数を多くして銅ヒューズ切断面からの腐食経路を長くすることによって緩和されるかもしれないが、多数の銅配線層を積み上げる製造工程が必要になるから、大幅なコスト増加が避けられない。この発明の構造では、このような問題をいずれも回避できる。
【0012】
また、たとえば、銅ヒューズをレーザ光で切断するときに、レーザ光をシール膜で反射させて銅ヒューズに向かわせることができる。これにより、レーザ光のエネルギーを効率的に利用して銅ヒューズを切断できる。そのため、銅ヒューズの切断(溶断)のためのレーザエネルギーが少なくてよいので、低出力、短時間のレーザ出力で銅ヒューズを切断できる。銅ヒューズを下方から覆うシール膜は銅ヒューズよりも大面積に形成されるので、レーザ光を照射しても容易には昇温しない。したがって、シール膜を破壊することなく、銅ヒューズを切断できる。
【0013】
なお、複数枚のシール膜が、銅ヒューズと半導体基板との間に、半導体基板表面の法線方向に沿って間隔を開けて配置されていてもよい。この複数枚のシール膜は、少なくとも一つ(好ましくは全部)が、銅シールリングに結合されていることが好ましい。
請求項2記載の発明は、前記配線膜と同じ層(レイヤ)に当該配線膜と同材料で形成された外部接続層をさらに含む、請求項1記載の半導体装置である。
【0014】
この構成によれば、外部接続層と同じ配線層を用いて、銅ヒューズを内部回路に接続するための経路を形成できる。したがって、少ない製造工程数で銅ヒューズを含む半導体装置を作製できる。
請求項3記載の発明は、複数の銅配線層を備えており、前記銅ヒューズは、前記複数の銅配線層のうち最上層の銅配線層と同じ層(レイヤ)に形成されている、請求項1または2記載の半導体装置である。銅ヒューズは、当該最上層の銅配線層と同じ材料で形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、複数の銅配線層のうちの最上層に銅ヒューズが形成されるので、たとえば、レーザ光によって銅ヒューズを切断するときのエネルギーが少なくてよい。しかも、半導体基板から銅ヒューズまでの距離を大きくできるから、半導体基板に形成された素子への影響を一層抑制できる。
前述の構造の半導体装置を製造するための方法は、たとえば、第1層間絶縁膜上に銅シール膜を形成する工程と、前記銅シール膜を覆う第2層間絶縁膜を形成する工程と、この第2層間絶縁膜上に銅ヒューズを形成する工程と、前記第2層間絶縁膜を貫通して前記シールリングに結合され、前記銅ヒューズを取り囲む筒状の銅シールリングを形成する工程と、前記銅ヒューズを覆う第3層間絶縁膜を形成する工程と、前記第3層間絶縁膜に形成された第1および第2コンタクト孔を介して前記銅ヒューズの第1の部分および第2の部分にそれぞれ電気的に接続された第1接続部および第2接続部を有し、銅以外の金属材料膜からなる配線膜を形成する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の部分断面図である。
【図2】図2は、図1に示された構成の部分平面図である。
【図3A】図3Aは、図1に示された半導体装置の製造工程を説明するための断面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの次の工程を示す断面図である。
【図3C】図3Cは、図3Bの次の工程を示す断面図である。
【図3D】図3Dは、図3Cの次の工程を示す断面図である。
【図3E】図3Eは、図3Dの次の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る半導体装置の部分断面図であり、図2は、図1に示された構成の部分平面図である。この半導体装置は、半導体基板1と、半導体基板1の表面上に形成された多層配線構造2と、多層配線構造2を覆うパッシベーション膜(表面保護膜)3とを有している。半導体基板1は、シリコン基板であってもよく、その表層部には、図示は省略するが、トランジスタ等の能動素子に代表される機能素子(半導体素子)が形成されている。多層配線構造2は、層間絶縁膜11〜23、エッチングストップ層31〜42、銅配線層51〜56、ヒューズ膜4(銅ヒューズ)、最上層配線5(配線膜、外部接続層)等を含む。パッシベーション膜3は、たとえば窒化膜(窒化シリコン膜)からなっていてもよく、最上層配線5の表面を覆っている。図2では、パッシベーション膜3の図示を省略してある。
【0018】
多層配線構造2は、この実施形態では、平面視においてヒューズ膜4を取り囲む筒状(たとえば四角筒状)に形成された銅シールリング6と、銅シールリング6の底部および高さ方向途中部にそれぞれ配置された平板状のシール膜7,8(銅シール膜)とを含む。
多層配線構造2においては、層間絶縁膜11、エッチングストップ層31、層間絶縁膜12、エッチングストップ層32、層間絶縁膜13、エッチングストップ層33、層間絶縁膜14、エッチングストップ層34、層間絶縁膜15、エッチングストップ層35、層間絶縁膜16、エッチングストップ層36、層間絶縁膜17、エッチングストップ層37、層間絶縁膜18、エッチングストップ層38、層間絶縁膜19、エッチングストップ層39、層間絶縁膜20、エッチングストップ層40、層間絶縁膜21、エッチングストップ層41、層間絶縁膜22、エッチングストップ層42、および層間絶縁膜23が、半導体基板1の表面からこの順に積層されている。層間絶縁膜11〜23は、たとえば、SiOからなる。また、エッチングストップ層31,33,35,37,39,41は、たとえば、SiCNからなる。エッチングストップ層32,34,36,38,40,42は、たとえば、SiCとSiCNとの積層膜からなる。
【0019】
銅配線層51(51s,51i,51e)は層間絶縁膜12に形成されており、銅配線層52(52s,52i,52e)は層間絶縁膜14に形成されており、銅配線層53(53s,53i,53e)は層間絶縁膜16に形成されており、銅配線層54(54s,54i,54e)は層間絶縁膜18に形成されており、銅配線層55(55s,55i,55e)は層間絶縁膜20に形成されており、銅配線層56(56s,56i,56e)は層間絶縁膜22に形成されている。銅配線層51〜56は、銅を主成分とする導電性材料からなる配線(銅配線)である。これらの銅配線層51〜56は、層間絶縁膜12,14,16,18,20,22にそれぞれ形成された配線溝に埋め込まれている。より具体的には、銅配線層51は、ダマシンプロセスによって層間絶縁膜12に形成された配線溝に埋め込まれている。また、銅配線層52〜56は、デュアルダマシンプロセスによって、層間絶縁膜14,16,18,20,22にそれぞれ形成された配線溝に埋め込まれ、かつ、層間絶縁膜13,15,17,19,21にそれぞれ形成されたビア(孔)に埋め込まれている。これにより、銅配線層52〜56は、各直下の銅配線層51〜55に電気的に接続されている。
【0020】
配線溝およびビアの内壁面には、銅の拡散を防ぐためのバリアメタル層58が形成されている。このバリアメタル層58およびエッチングストップ層32,34,36,38,40,42に囲まれた領域に、銅を主成分とする銅配線層51〜56が配置されている。エッチングストップ層31,33,35,37,39,41は、配線溝を形成するために層間絶縁膜12,14,16,18に対して行うエッチングを停止させるための層である。また、エッチングストップ層32,34,36,37,38,40は、ビアを形成するために層間絶縁膜13,15,17,19,21に対して行うエッチングを停止させるための層である。バリアメタル層58は、たとえば、Ta層とTaN層との積層膜からなり、Ta層が銅配線層に接している。
【0021】
ヒューズ膜4は、この実施形態では、平面視において直線状(帯状)に形成されている。このヒューズ膜4は、最上層配線501,502(5)の間を電気的に接続している。具体的には、ヒューズ膜4の一端(第1の部分)に最上層配線501(第1接続部)が接続されており、ヒューズ膜4の他端(第2の部分)に最上層配線502(第2接続部)が接続されている。
【0022】
ヒューズ膜4の両端は、最上層配線5(上配線層)をその下の銅配線層56(下配線層)に接続するためのプラグ9を介して最上層配線501,502(5)にそれぞれ電気的に接続されている。プラグ9は、最上層の層間絶縁膜23に形成された開口に埋め込まれた金属からなる。より具体的には、層間絶縁膜23には、プラグ9に対応した開口(貫通孔)が形成されている。この開口の内面(底面および側壁面)は、バリアメタル層24によって覆われている。そして、バリアメタル層24によって囲まれた開口内にプラグ9が埋め込まれている。プラグ9は、たとえば、銅以外の金属材料を主成分とする導電性材料、たとえばW(タングステン)からなる。バリアメタル層24は、プラグ9の材料およびヒューズ膜4の材料に対する拡散を防止する性質の導電層であり、たとえば、ヒューズ膜4側から順に、Ta、TaN、Ti、およびTiNを積層した積層膜からなる。
【0023】
ヒューズ膜4は、銅配線層51〜56のうちの最も上層に形成された銅配線層56の一部によって形成されている。より具体的には、銅配線層56に対応した層間絶縁膜22には、ヒューズ膜4の形状に対応した溝が形成されている。この溝の内壁面(底面および側壁)は、バリアメタル層58によって覆われており、このバリアメタル層58によって囲まれた溝内に銅配線層56を構成する金属材料(銅を主成分とする金属材料)が埋め込まれ、ヒューズ膜4を構成している。ヒューズ膜4に接しているバリアメタル層58も最上層配線501,502間の電気的接続に寄与しているので、このバリアメタル層58もヒューズ膜の一部と見なすこともできる。
【0024】
最上層配線5は、たとえば、本体部5aと、本体部5aの下側に積層されたバリア層5bと、本体部5aの上側に積層された表面金属膜5cとを含む配線膜である。本体部5aは、銅以外の金属(たとえばアルミニウム)を主成分とする導電性材料、たとえばAlCuからなり、バリア層5bはたとえば下側から順に積層したTiおよびTiNの積層膜からなり、表面金属膜5cはたとえばTiNからなる。
【0025】
銅シールリング6は、図2に示すとおり、平面視においてヒューズ膜4を取り囲む筒状(この実施形態では四角筒状)に形成されており、銅配線層51〜56によって構成されている。以下、銅シールリング6を構成する銅配線層51〜56を銅配線層51s〜56sなどということにする。
銅シールリング6を構成する銅配線層のうち、銅配線層52s,53s,55s,56sは、それぞれ環状(この実施形態では四角環状)に形成されており、平面視において互いに重なり合っている。また、銅シールリング6を構成する銅配線層のうち、最下層の銅配線層51sと、この最下層銅配線51sから間隔を開けて(この実施形態では銅配線層2層分の間隔)を挟んで上方に位置する銅配線層54sとは、平面視において、銅シールリング6の筒形状に対応する輪郭を有する中実形状(この実施形態では四角形状)に形成されている。これらの銅配線層51s,54sの周縁の環状部分(この実施形態では四角環状部分)は、銅シールリング6の一部を構成している。そして、それらの銅配線層51s,54sにおいて、前記環状部分の内方に連続している中央部は、ヒューズ膜4と半導体基板1との間に介在するシール膜7,8を構成している。すなわち、この実施形態では、銅シールリング6とシール膜7,8とが一体化されており、これらは隙間なく結合している。
【0026】
上側のシール膜8は、ヒューズ膜4の下方に位置し、ヒューズ膜4から間隔(銅配線層55の配線層分の間隔)を開けて配置されている。そして、シール膜7,8は、平面視において、ヒューズ膜4がそれらの外縁の内方に収まるように形成されている。
銅シールリング6を構成する銅配線層52s〜56sの下部には、銅シールリング6の平面形状に対応する環状に形成された環状ビア62〜66が形成されている。銅配線層52s〜56sは、それらの直下の環状ビア62〜66を埋め込むように形成されている。したがって、銅シールリング6の内側には、銅配線層51s〜54sによって囲まれた密閉空間と、銅配線層54s〜56sによって囲まれた半密閉空間とが形成されている。この半密閉空間内(この実施形態では当該空間の上端位置)に、ヒューズ膜4が配置されている。
【0027】
一方、ヒューズ膜4の一端に電気的に接続された最上層配線502は、平面視において銅シールリング6の外方へと延びている。そして、銅シールリング6外において内部接続回路71を構成する銅配線層51〜56(以下、銅配線層51i〜56iなどという。)を介して、半導体基板1に形成された素子(たとえばトランジスタ素子)25に電気的に接続されている。より詳細には、最上層配線502は、銅シールリング6外に形成されたプラグ9を介して銅配線層56iに接続されている。この銅配線層56iは、その下層の銅配線層55iに接続され、さらに、その銅配線層55iがその下層の銅配線層54iに接続されている。同様の構造により、銅配線層56iは、最下層の銅配線層51iまで接続されている。そして、この銅配線層51iは、層間絶縁膜11に形成されたビア26内に埋め込まれた金属プラグ27に接合されている。金属プラグ27は、この実施形態では、半導体基板1上に形成されたポリシリコン配線層28に接続されている。ポリシリコン配線層28は、たとえば、半導体基板1上に形成された素子25のゲート電極を構成していてもよい。金属プラグ27は、たとえば、W(タングステン)からなる。この金属プラグ27と層間絶縁膜11との間には、バリアメタル層29(たとえばTaからなる)が介在されている。
【0028】
多層配線構造2には、銅シールリング6外において、当該半導体装置の外部との接続のための外部接続回路72(たとえば、銅配線層55e,56eを含む)が形成されている。この外部接続回路72の一部を構成する銅配線層56e(56)は、プラグ9を介して、外部接続層としての最上層配線503(5)に接続されている。
パッシベーション膜3には、最上層配線503(5)の表面に対する電気的接続(たとえばワイヤボンディングによる接続)のための開口46が形成されている。最上層配線5において開口46から露出した部分は、外部との電気的接続のためのパッド47である。さらに、パッシベーション膜3には、ヒューズ膜4の中間部の直上を含む領域(この実施形態ではヒューズ膜4の中間領域を跨ぐ矩形領域)には、パッシベーション膜3を薄膜化して形成された凹部49が形成されている。この凹部49は、開口46を形成するためのエッチング工程において同時に形成されてもよい。凹部49は、たとえば、ヒューズ膜4をレーザ加工で切断(溶断)するときの切断加工窓として利用される。
【0029】
このように、この半導体装置では、半導体基板1と銅膜からなるヒューズ膜4との間に銅膜からなるシール膜7,8が形成されており、さらに、シール膜7,8に結合された筒状の銅シールリング6によってヒューズ膜4の周囲が取り囲まれている。したがって、ヒューズ膜4は、下方(半導体基板1側)および側方から取り囲まれている。そのため、ヒューズ膜4が切断されたときに銅砕片が飛び散っても、銅原子の拡散をシール膜7,8および/または銅シールリング6で停止させることができる。これにより、銅原子の横方向および下方向の拡散をいずれも阻止できるので、銅原子が半導体基板1の表面付近に到達することを抑制または防止できるから、半導体基板1に形成された機能素子(トランジスタに代表される能動素子等)が故障したりその動作特性(たとえば耐圧)が悪化したりすることを抑制または防止できる。
【0030】
また、ヒューズ膜4は、ヒューズ膜4よりも上の層に形成された銅以外の金属材料膜からなる最上層配線501,502に接続されている。ヒューズ膜4を切断しなければ、最上層配線501,502間が電気的に接続された状態となり、ヒューズ膜4を切断すれば、最上層配線501,502間の電気的接続が遮断される。こうして、半導体装置に組み込まれた電子回路の特性を調整したり、半導体装置内の不良箇所を切り離したりすることができる。
【0031】
ヒューズ膜4、最上層配線502を介して内部接続回路71に接続されている。このように、ヒューズ膜4は、それよりも上の配線層を介して半導体装置の内部回路に接続できるので、ヒューズ膜4と半導体基板1との間に、ヒューズ膜4を回路に接続するための配線部を形成する必要がない。そのため、ヒューズ膜4の直下(半導体基板1との間)をシール膜7,8で覆うことができ、かつ、シール膜7,8と銅シールリング6とを切れ目なく結合することができる。これにより、半導体基板1の表面に向かう銅原子拡散の抑制または防止と、ヒューズ膜4の内部回路への接続とを両立できる。ヒューズ膜4よりも下層の配線層だけで内部回路への接続を達成しようとすると、ヒューズ膜4の下方および側方を完全に覆うことができないから、半導体基板1の表面に向かう銅原子拡散を回避できない。
【0032】
さらに、この実施形態では、ヒューズ膜4が接続される最上層配線5およびそれの間のプラグ9は、銅以外の金属材料膜からなっている。そのため、ヒューズ膜4の切断面からの腐食の進行は、当該プラグ9および/または最上層配線5で停止する。これにより、腐食が半導体基板1の表面近傍に達することがないので、半導体基板1に形成された機能素子の故障または動作特性悪化を抑制または防止できる。
【0033】
さらにまた、たとえば、ヒューズ膜4をレーザ光で切断するときに、レーザ光をシール膜8で反射させてヒューズ膜4に向かわせることができる。これにより、レーザ光のエネルギーを効率的に利用してヒューズ膜4を切断できる。そのため、ヒューズ膜4の切断(溶断)のためのレーザエネルギーが少なくてよいので、低出力、短時間のレーザ出力でヒューズ膜4を切断できる。ヒューズ膜4を下方から覆うシール膜8はヒューズ膜4よりも大面積に形成されるので、レーザ光を照射しても容易には昇温しない。したがって、シール膜8を破壊することなく、ヒューズ膜4を切断できる。
【0034】
さらに、この実施形態では、ヒューズ膜4は、外部接続のための最上層配線503と同一レイヤに形成された最上層配線502を介して内部接続回路71に接続されている。そのため、少ない製造工程数で、銅膜からなるヒューズ膜4を含む半導体装置を作製できる。
さらにまた、ヒューズ膜4は、最上層の銅配線層56と同一のレイヤに形成されている。そのため、たとえば、レーザ光によってヒューズ膜4を切断するときのエネルギーが少なくてよい。しかも、半導体基板1からヒューズ膜4までの距離を大きくできるから、半導体基板1に形成された素子への影響を一層抑制できる。
【0035】
図3A〜3Eは、前記第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図であり、銅配線層54の形成以後の工程が示されている。
図3Aに示すように、デュアルダマシンプロセスによって、層間絶縁膜17(第1層間絶縁膜)上にシール膜8を有する銅配線層54が形成される。より具体的には、層間絶縁膜17、エッチングストップ層37および層間絶縁膜18が積層される。その後、銅配線層54(シール膜8を含む)の配置に従って、層間絶縁膜18およびエッチングストップ層37を貫通する配線溝が形成される。さらに、銅配線層54の直下のビア(環状ビア64を含む)の配置に従って、層間絶縁膜17およびエッチングストップ層36を貫通するビアが形成される。層間絶縁膜18に配線溝を形成するときのエッチングは、エッチングストップ層37で停止する。その後、当該配線溝の底面のエッチングストップ層37が開口される。さらに、配線溝の直下の層間絶縁膜17をエッチングすることによってビアが形成される。このビアの形成のためのエッチングは、エッチングストップ層36で停止する。その後、ビア底面のエッチングストップ層36を開口するためのエッチングが行われる。次いで、配線溝およびビアの内壁面ならびに層間絶縁膜18の表面にバリアメタル層58が形成され、このバリアメタル層58を覆うように銅膜が形成される。そして、銅膜およびバリアメタル層58をCMP(化学的機械的研磨)法で層間絶縁膜18の表面が露出するまで平坦化することにより、それらが配線溝およびビア内にのみ残された状態とされる。こうして、図3Aに示す構造が得られる。図示は省略するが、銅配線層51〜53(シール膜7を含む)も同様のプロセスによって形成される。
【0036】
この後、同様のデュアルダマシンプロセスを繰り返すことによって、図3Bに示すように、シール膜8上に層間絶縁膜19〜21(第2層間絶縁膜)が積層され、その上にヒューズ膜4が形成される。また、同時に、平面視においてヒューズ膜4を取り囲み、層間絶縁膜19〜21を貫通してシール膜8に結合された筒状の銅シールリング6が形成される。
【0037】
次に、図3Cに示すように、層間絶縁膜23が形成される。層間絶縁膜23は、たとえば、SiOからなり、プラズマCVD法によって形成されてもよい。そして、プラグ9のためのコンタクト孔75に対応する開口を有するパターンのレジスト81が形成される。このレジスト81をマスクとするエッチングによって、層間絶縁膜23がエッチングされ、これにより、層間絶縁膜23を貫通するコンタクト孔75が形成される。コンタクト孔75を形成するためのエッチングは、配線層56(ヒューズ膜4を含む)で停止する。コンタクト孔75を形成した後、レジスト81が除去される。
【0038】
次に、図3Dに示すように、バリアメタル層24および電極膜82が形成される。バリアメタル層24は、層間絶縁膜23の表面(上面)、コンタクト孔75の内側壁、ならびにコンタクト孔75の底面において露出する銅配線層56の表面を覆うように形成される。このバリアメタル層24の形成後に、電極膜82が形成される。電極膜82は、プラグ9を構成すべき金属材料からなり、コンタクト孔75を埋め尽くすように全面に堆積される。バリアメタル層24は、たとえば、下側から順にTa膜、TaN膜、Ti膜およびTiN膜を積層して構成された積層膜からなり、それらの構成膜をスパッタ法によって順に堆積して形成されてもよい。電極膜82は、たとえばW(タングステン)からなり、CVD法によって形成されてもよい。
【0039】
次に、図3Eに示すように、たとえばCMP法によって、表面が平坦化され、コンタクト孔75外の電極膜82が除去される。こうして、各コンタクト孔75内にプラグ9が配置される。
その後は、図1に示すように、最上層配線5が所定のパターンに形成され、この最上層配線5を覆うパッシベーション膜3が形成される。そして、パッシベーション膜3に対する選択的エッチングによって、パッド用の開口46、およびヒューズ加工用窓としての凹部49が形成される。こうして、図1に示す構造の半導体装置が得られる。
【0040】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、ヒューズ膜4と半導体基板1との間に、2枚のシール膜7,8が形成されている例について説明したが、下側のシール膜7を省いたり、上側のシール膜8を省いたりして、一枚のシール膜が半導体基板1とヒューズ膜4との間に配置された構造としてもよい。下側のシール膜7を省くときには、銅シールリング6において、シール膜8よりも下層の部分は省いてもよい。このことは、ヒューズ膜4と半導体基板1との間に必ずしも多くの配線層を要しないことを意味する。したがって、層数の少ない多層配線構造を有する半導体装置であっても、半導体基板に形成された素子の特性に対する懸念を回避しながら、銅ヒューズを設けることができる。また、下側のシール膜7を省く場合には、シール膜7の下方の領域に回路を形成する配線を設けてもよい。むろん、また、シール膜7,8に加えて別のシール膜を追加し、3枚以上のシール膜がヒューズ膜4と半導体基板1と間に配置された構造としてもよい。
【0041】
また、前述の実施形態では、平面視において銅シールリング6の外方に素子25が形成された例を示したが、銅シールリング6の内方の領域に素子が形成されていてもよい。ヒューズ膜4と半導体基板1との間に介在されたシール膜7,8は、銅シールリング6の内方の領域に形成された素子への銅原子の拡散をも抑制または防止できる。このように、銅シールリング6の内方領域にも素子を配置することによって、素子集積度を高めることができる。
【0042】
さらに、前述の実施形態では、銅シールリング6が四角筒状に形成された例を示したが、銅シールリングの形状は、四角形以外の多角形を底面とする筒状であってもよく、円柱状、楕円柱状等の他の筒形状であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体基板
2 多層配線構造
3 パッシベーション膜
4 ヒューズ膜
5,501,502,503 最上層配線
6 銅シールリング
7,8 シール膜
9 プラグ
11〜23 層間絶縁膜
25 素子
28 ポリシリコン配線層
47 パッド
49 凹部
51〜56,51i〜56i,51s〜56s,55e,56e 銅配線層
58 バリアメタル層
62〜66 環状ビア
71 内部接続回路
72 外部接続回路
75 コンタクト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
銅ヒューズと、
前記半導体基板と銅ヒューズとの間に配置された銅膜からなるシール膜と、
前記銅ヒューズよりも上の層に形成された銅以外の金属材料膜からなり、前記銅ヒューズの第1の部分および第2の部分にそれぞれに接続された第1接続部および第2接続部を有する配線膜と、
前記シール膜に結合され、前記銅ヒューズの周囲を取り囲む筒状に形成された銅シールリングとを含む、半導体装置。
【請求項2】
前記配線膜と同じ層に当該配線膜と同材料で形成された外部接続層をさらに含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の銅配線層を備えており、前記銅ヒューズは、前記複数の銅配線層のうち最上層の銅配線層と同じ層に形成されている、請求項1または2記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【公開番号】特開2012−164830(P2012−164830A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24389(P2011−24389)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】